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株式会社ANALOG   場調査から戦略構築まで現場をサポートするマイクロシンクタンク 
  エリアマーケティング・商業開発・まちづくり 

   (sano@analog-corp.com
 2010年記事ARCHIVE
 ・首相  鳩山由紀夫→菅直人
・JAL経営破綻
・尖閣諸島沖中国漁船衝突映像流出
・ワールドカップ南アフリカ大会ベスト16
・上海万博
・羽田空港新国際線ターミナル
(関西の出来事)
・長居球技場の愛称が「キンチョウスタジアム」に
・平城遷都1300年祭

(商業施設)
・3月 福岡パルコ
・4月 マルヤガーデンズ(鹿児島)

・6月 イオンモールKYOTO
・7月 三井アウトレットパーク滋賀竜王
・8月 上本町YUFURA
・9月 ドンキホーテWR(会員制ホールセールクラブ)  閉店
・10月 セントレジスホテル大阪
・11月 ヨドバシカメラマルチメディア京都
・12月 茶屋町マルゼン&ジュンク堂
 12月
■2011年前半の大阪の変化

 来年オープンするショッピングセンターは大都市に集中しています。
東京では3月に「二子玉川ライズショッピングセンター」、大町の「阪急大井町ガーデンズ」、九州博多の「JR博多シティ」と注目されるプロジェクトの開業が続きます。郊外でのSC開発にブレーキがかかってきたようです。

 大阪でも3月から5月にかけて主要ターミナルで大型案件が開業します。関西がどのように変化していくか、引き続き観測を継続していきます。今までに厳しい指摘もしてきましたが、完成したモノについてはできるだけ成功して関西を盛り上げる起爆剤になって欲しいと願っています。

 今年は大変お世話になりました。来年も又よろしくお願いいたします。


(商業施設開業予定)

・3月 大丸梅田店増床オープン(6.4万uに)
・4月末 あべのキューズタウン(6.9万u)東急ハンズ、イトーヨカドー、109等
・5月 JR大阪駅北ビル 「ルクア」(2万u)「JR大阪三越伊勢丹」(5万u)
■「今後発展してさらに暮らしやすくなりそうだと思う街」のキャッチフレーズ

 メジャーセブン(大手不動産デベロッパー)のマンショントレンド調査

 興味がある方はこちらを
http://www.major7.net/pdf/trendlabo/research/013.pdf へのリンク

このアンケート調査の中で「今後発展してさらに暮らしやすくなる街」を問う項目があります。マンションなので都心ばかりではありません。おそらく会員社の抱える大型物件のある地域なのでしょうが・・・・設問項目につけられた各エリアのキャッチフレーズをみていくと、東京、大阪周辺の街で何が起きているかを一覧できるような気がします。
 正直、関西に居住していても高槻や摂津で何が変わりかけているかまでは把握していないからです。

 調査結果は上記リンク先でご覧下さい。調査項目キャッチフレーズをご紹介します。

(東京)
東京スカイツリーの建設が進む押上、墨田周辺エリア
駅前大規模再開発、商業ビルがオープンした二子玉川周辺エリア
再開発、商業ビルのオープンが続く五反田、大崎、品川周辺エリア
高層マンション群の建設が進む武蔵小杉周辺エリア
ららぽーとがオープン、マンション建設が続く豊洲周辺エリア
表参道ヒルズのある青山周辺エリア
IKEAなど商業施設の多数ある横浜港北周辺エリア
ラゾーナ川崎プラザのある川崎周辺エリア
駅前再開発やマンション建設が進む有明周辺エリア
駅前タワーマンションの建設が進む勝どき周辺エリア
コレットマーレのあるみなとみらい周辺エリア
TX開通以来開発の進む柏の葉、おおたかの森周辺エリア
駅前再開発の進む浦安周辺エリア
新丸ビル、ブリックスクエアのある丸の内周辺エリア
六本木ヒルズ、六本木ミッドタウンのある六本木周辺エリア
再開発、商業ビルのオープンが続く立川エリア
エソラ、エチカのある池袋周辺エリア
LABI(ヤマダ電機)が新規オープンした新宿周辺エリア
秋葉原トリム、ヨドバシカメラのある秋葉原周辺エリア
新しく政令指定都市となった相模原周辺エリア


(大阪)
西宮ガーデンズのある西宮北口駅周辺エリア
百貨店や高層マンションの建設が進む大阪・梅田エリア
交通の便がよく、駅前再開発も進む千里中央周辺エリア
「水都OSAKA水辺のまち再生プロジェクト」として街づくりが進む中之島周辺エリア
阿倍野駅周辺の大型再開発が進む天王寺エリア
イオンモールKYOTOやヨドバシカメラのオープンなど、再開発が進む京都駅周辺エリア
神戸三田プレミアムアウトレット・イオンモールのある神戸市北区・三田市エリア
条例で景観を守りつつ、新規商業施設の建設が進む四条周辺エリア
上本町YUFURAがオープンする上本町エリア
新規医療施設、キャンパス開設など多様な世代に対応した再開発を進める高槻周辺エリア
旭通4丁目再開発を中心とした再開発が進む三宮周辺エリア
なんばパークスがあり、緑と大型商業施設の共存する環境の難波周辺エリア
COCOEやコストコがオープンした尼崎周辺エリア
キッザニア甲子園のある甲子園周辺エリア
新大阪駅の増築と共に新大阪阪急ビル(仮称)の開発が進む新大阪周辺エリア
新駅開業や大型マンション建設など、街づくりが進む阪急摂津市駅前エリア
駅前に市立病院直結の大型タワーマンション建設が進む久宝寺周辺エリア
駅前再開発による商業施設、病院、マンションの建設が進む香里園周辺エリア
プリエ姫路のある姫路周辺エリア



 厳密に言うと、このキャッチフレーズの付け方一つでアンケートの結果が変わってしまうのですが・・・。
                                                    (2010年12月24日)
■オフィス街の書店のニーズは若い世代で高い〜国内最大の書店が茶屋町に誕生

 梅田茶屋町東急ホテル跡地の「チャスカ茶屋町」に「MARUZEN&ジュンク堂書店」が22日に開業
 
 ロケーションがターミナルから外れているのが微妙ですが国内最大級はすごいですね。安藤忠雄設計の複合商業ビルで下層階のテナントがなかなかきまらなかったのですが、折角の作品がさらしものにならなくて本当に良かったですね。

http://sankei.jp.msn.com/economy/business/101213/biz1012132023022-n1.htm へのリンク

 HMVやタワーレコードなどのCDの販売店はダウンロードが主流になったので一時の勢いはありません。本については電子書籍の普及という大きな転換期を迎えていますが、まだまだ書店での沢山の本の一覧性の楽しみは残っているようです。当社の調べでも若い人ほど、本屋さんが少ないオフィス街での本屋さんの充実を求めています。

 オフィス街での書店の充実は何故進まないか?

 大阪のオフィス街立地の書店と言えば、本町国際センタービルの紀伊国屋書店は品揃えが優れています。堂島のジュンク堂もゆっくりと本が探せます。その他の地域では下記のようにニーズがあるにもかかわらず、規模の小さい書店が多いです。
 当社最寄りの淀屋橋界隈も書店過疎地です。駅の「ブックファースト」は規模が小さく混み合っていますし、オドナのB書店は、品揃えが偏ってしまい捜し物が見つからないことが多いです(辛抱さんの本がいつまでも、売れ残りを集めたようにように山積みですし)。戦記物が揃っているのは趣味としては面白いのですが・・・・。あまり本好きの人向けの店ではないようです。(この店は建物の構造が本屋さん対応になっていないので万引きが多そうで心配です・・・というか本を持って移動すると疑われそうで、売場の構造からもが何だか居心地の悪い店です)
 

 最近の一般書店でも販促物の展示場の観が強いので、サンプリングが主目的かと見えるおまけ付きの女性誌、政治宣伝ビラを店頭に露出させる事が目的と思える「オピニオン誌」が幅をきかしています。
 (プロモーションの場として注目されているという事はそれだけ人が集まるという実績があるのでしょう)
 
 結局プロモーションのうるささをがいやであれば、旧来の小さな書店を選ぶか、アマゾンで注文した方が話が早しということになります。

 大型書店の開業・・・茶屋町はいいのですがわざわざ出かけるのは面倒。ニーズがあるので大型書店をどこかに設置して下さい。(中之島周辺の大型開発でデベロッパーさんが堂島の大型書店に、立地として可能性があるかどうか訪ねたそうです。答えはNO・・・・そりゃそうですよね自店商圏とバッティングしお客さんをとられるのですから・・・)

 書店の賃料負担額は事務所程度です。繁華街の商業ビルとしては物足りなくても、オフィス街の低層部であれば満足できる賃料収入は確保できますよ・・・。その他の文化機能との相性もいいことですし。

                                          (2010年12月22日)
図ー勤務地周辺の書店の利用とニーズ

(なにわ考現学2010)
■優勝セールで盛り上がる名古屋の大型小売店

 サッカーよりも野球が中高年を掴む?

 10月2日からの中日ドラゴンズ優勝セール、11月8日からの日本シリーズ感謝セール、11月21日からの「名古屋グランパス優勝セール」を含む延べ2週間のセール期間中、名古屋の大型店では売上、集客とも2ケタ増の店が続出したということです。
 地元百貨店の松坂屋では各セールで3億円の売上増を見込み、グランパス優勝セール以外は達成したそうです。野球ファンは百貨店の主力客層である中高年やファミリーが多く客層が重なるので効果的だったのでしょう。サッカーに比べるとファン層に拡がりがあるのでしょうね。

 関西でもガンバ大阪がアジアチャンピオンになる事よりも、阪神タイガースが連勝する方が盛り上がる人達が多いように感じます。

 百貨店以外の商業施設でも名古屋パルコでは既存客層以外の来店が増えたそうです。地域密着度が高いチームなので、「一緒に祝って何か得したい」という地域の住民のテンションの盛り上がりが街全体を活性化させたのかもしれません。名古屋のある種の閉鎖性が逆に地域限定の熱い盛り上がりにつながったのでしょうね。

 

                                                (2010年12月21日)
■「楽しんで参加する」仕組みを作ることで質の高いサービスを確保する

 NPOだから安く仕事が頼めると考える大いなる誤解

 NPO団体の方とお話をしていると、良くある外部の人の勘違いに「NPO団体だから利益を追求しないはずなので、安く仕事が頼める」とか「NPOだから報酬はいらないだろう」という誤解です。そういう人は最初から「利用してやろう」という下心があからさまなので対応していて嫌になるそうです。・・・特定非営利活動法人の「非営利」という言葉が誤解を招くのでしょうね。
 
 ただ、一般的に人は「使命感を持ってやれること」「楽しんでやること」について報酬の多寡、コストパフォーマンスにとらわれずに熱心に活動するという特性があります。NPOに参加しているメンバーは社会的な使命感を持って参加する人が多いのでその面では提供される「労役」の質は提供される報酬以上に高いことが多いのです。

 そのような人の特性をうまくビジネスに活かしている事例があります。

 「顧客」を地域観光のナビゲーターに育てる「元気なおやじ倶楽部」という仕組み

 近畿日本ツーリストなどが中心となり、経済産業省の平成19年度の「サービス産業生産性向上支援調査委託費(ビジネス性実証支援事業(観光・集客サービス分野))」賭して採択された「元気なおやじ倶楽部」というプロジェクトがあります。

都市のシニア対象の倶楽部組織により、体験型観光の着地型事業者を育成する事業
シニアが田舎を楽しむための倶楽部組織を構築し、顧客であるシニアを着地型事業者として育成する循環システムの
全国展開を目指す。


http://www.meti.go.jp/press/20070531002/service-p.r.pdf へのリンク

 私が最初にこの仕組みを知ったのは、和歌山の観光振興のために、京阪神の中高年男性がアウトドアライフを楽しんだ上で、そのインストラクターとして次に参加する人を教える・・・というプロジェクトでした。和歌山は海があり山があり川もあるのでさまざまなアウトドア活動が楽しめます。京阪神からも近いのでリピーターを確保しやすいのでしょう。このコンソーシアムに参加している企業が女性向けに行っている「新家元システム」というのも興味深いものです。

 「楽習フォーラム」という新しい家元制度

 カルチャーセンターでは講師と生徒ははっきり分かれています。茶道や華道などは昔からの家元制度があって師範代や師範へのステップアップができますが一般の習い事ではそこまでシステム化された事例はありません。

 百貨店の催事で手工芸品や手工芸の材料を販売している企業が教室を開いて技能認定、参加者が資格を取って講師になる「楽習フォーラム」という仕組みがあります。

http://www.gakusyu-forum.net/ へのリンク

 女性の好きそうな、細々とした飾りは年代を問わずにファンが多いように思えます。「楽しいことが仕事になる」というコンセプトが面白かったので、大阪南港のATCエイジレスセンターで講演をしていただいたことがあります。

 講座を受講して資格をとった講師は自分で教室を開いて「材料」を定期的に購入販売してくれます。またできあがった作品も、展示販売イベントに出展してくれます。・・・ひとつ間違うと犯罪すれすれのアムウェイのようなネットワーク販売になってしまうそうですが、微妙にそれは回避されているようでした。作品は伊勢丹で展示即売会が行われていますし、文部科学省のお墨付きをもらうなど、信用、権威づけには細心の注意が払われているように感じました。

 何よりも感銘を受けたのは「モノ」を売るために「講座」を事業として行い、「楽しんでもらっている」事です。「喜んで参加する仕組み」を創れば「商品」は流れていくと言うことです。手工芸品の「ユザワヤ」が出店するときには必ず、「教室」もセットで出店するそうです。

                                                (2010年12月20日)
  
■「ゲームセンターでメダルゲームにはまるシニア」という風景の先には

 街にあふれる高齢者の落ち着ける居場所は?

 最近のNHKのニュースでも弁当持参で1日中メダルゲームに興じる高齢者の姿が紹介されていました。高齢者のゲームセンター利用はこれからの社会の変化を示す「トレンド」なのでしょうか?

 シニアマーケティングを研究してきた立場で考えると「、これは朝のハンバーガーショップに高齢者が多いというのと同じ次元の、時間が沢山ある元気な高齢者が待ちにあふれてきている現象のあらわれだと考えています。

 メダル落としはパチンコに比べて少ない金額で長く遊べます。ゲームセンターに交流を求めて訪れるという「分析」もありましたが、今までにもある「街の中のひまつぶし」として利用されているだけです。下図にあるようにむしろ「カラオケ」の方が高齢者にも好まれています。
 ゲームの中には中毒性の高いものがるので習慣になっているのと、、過去にはパチンコで遊んでいた高齢者がパチンコ、パチスロの変化についていけなくなったということでしょう。

 高齢者の暇つぶしという側面ではアメリカ映画に出てくる、先住民居留地に設置されているしょぼい「カジノ」で遊ぶ地元の高齢者や、お金をかけたビンゴゲームに興じる閑そうな年金生活者の姿がダブルかも知れませんが、ゲームセンターには換金性はないので「カジノ好き」「ギャンブル好き」の高齢者が増えたということではありません。マクドナルドに高齢者がたむろするのと同じミスマッチが「絵になるニュース」として取り上げられているのにすぎません。

 「新しいトレンド」と勘違いして高齢者向けのゲームセンターに投資してはいけませんよ。(何年か前に、50才以下お断りの店が大阪でも話題になりましたがその後、噂はぱったりと途絶えています)

 シニア女性を掴む「時間消費型レジャー」は

 圧倒的に多いのは「旅行」ですが、その次には「ウィーキング」「園芸庭いじり」などのアウトドア系のレジャー活動率が高いのです。都市型、施設対応型でいえば「外食」「カラオケ」が群を抜いています。交流したい、時間を楽しみたいニーズを開拓するのもこのあたりの機能を軸に拡げていくのが本筋です。


  テレビのニュースや新聞の報道は「面白い」「絵になる」映像を優先します。「日経新聞の記事」「ニュース」から、「時代の先を行く事業」を構築するための「トレンド」を読み取ろうとしてはいけません。そこにあるのは、あくまでもお客さんとの話の種です。

                                                   (2010年12月17日)
図ー性別年代別の活動率

(レジャー白書2009)
■パルコのコミュニティ型店舗の好調

 パルコ既存店舗業態革新の2つの方向性

 今年の夏に発表された中期経営計画では既存店舗につおいては「都心店舗」と「コミュニティ型店舗」のい2つに分類し、「それぞれのターゲット客層に向けて商品構成や運営手法を最適化する」という方針が示されています。

 京阪神では唯一の店舗である心斎橋パルコ(18.6億円)はビルオーナーの建て替えにともない新しいビルで規模を半減して新しい業態で2013年に再開店します。京阪神地区は新規出店対象エリアとしてプライオリティが高いのですが、今のところ具体的な出店予定は公表されていません。(梅田北ヤードでは何度か名前が挙がりましたが・・・)福岡の成功で味を占めた百貨店撤退後のコンバージョンを視野にいれているのかもしれません。

 コミュニティ型店舗に注目

(同社プレスリリースより)
近隣商圏の生活者に良質な日常を提供する店舗業態
〔立地〕 東京近郊駅前立地、地方中核都市の商業地
〔商圏〕 近隣商圏
〔ターゲット〕 近隣商圏の全世代
〔商品構成〕 良質な日常をサポートするため、多機能、多目的な施設に変えていきます。
食品、雑貨、家電、スクール、スポーツなど、取り扱う業種を増やします。
〔テナント政策〕 各業種を代表する企業、これまで未取り組みの企業と取り組みます。
〔宣伝・販促〕 地域密着のイベントなど近隣からの集客を図ります。

http://www.parco.co.jp/group/pdf/file_100825a.pdf へのリンク

 構造改革のモデルになる浦和パルコは11月に全ファッションフロアが増収を確保したそうです。関東グループ(東京の郊外店)各店は集約力や来店頻度の向上が見込める「大型専門店」「スーパーマーケット」「手芸洋品店」「化粧品店」を誘致ししています。従来のファッションビルの機能を残しているということですので、その組み合わせ方を一度きちんと確認しておく必要がありそうです。

 主な導入テナント
・調布パルコ「ユニクロ」、「ノジマ」(家電)、「北野エース」(食品)
・新所沢パルコ「おかしのまちおか」
・浦和パルコ「好日山荘」「ユザワヤ」〜高齢者など既存以外の客層の来店促進にもつながったそうです
・津田沼パルコ「ジーユー」

カード会員の1ヶ月あたりの平均買い上げ頻度が2回弱に高まり、滞留時間も40分と平均より10分伸びたそうです。(繊研新聞12月15日)

 将来的には「幼児教室」「託児所」などのサービス関連やリラクゼーション施設の導入も検討されています。

 地方中核都市の商業を考えるときに、郊外の大型モールとの競合でファッション性で特化する必要があるのですが、日常的な機能の導入が同時に必要なのでパルコの地域密着型店舗の展開には注目しておきたいところです。

                                             (2010年12月15日)
■ものづくりの街の集客装置〜石切セイリュウの変身

 サンバで有名だったホテルセイリュウ2003年に倒産の後

 大阪の場末の映画館の広告で良く見たホテルセイリュウが2003年に倒産していたことを最近知りました。黒川紀章設計の温泉ホテルで、生駒山上で夜景の綺麗な東大阪の中小企業主の迎賓館と言った感じのホテルでした。ブラジルから呼んだサンバのダンサーが有名で、ここのラウンジでタニマチに接待されているオール巨人さんを見たことがあります。前の経営者はブラジルとの交流に熱心で、羽振りのいいときは大阪市内鰻谷にもでかい迎賓館のような店がありました。

 東大阪の特性を生かした集客

 東大阪市と言えば大阪府下では大阪市、堺市に続く巨大な都市です。中小工場が密集していてものづくりの街として知られています。(人工衛星を打ち上げたりしていますよね)とはいえ規模の割に街のイメージは希薄です。
 大阪の東、難波から近鉄で20分の好立地で、大阪は勿論、京都、奈良にもアクセスがよいのが特徴です。倒産した後に元従業員達がつくった新会社が再生を賭けたのは就学旅行客の誘致です。一般客の他に年間5,000人の修学旅行客を受け入れています。

 ただ奈良や大阪へ送り出すだけでは地元東大阪にはメリットがないので、地域のモノヅクリ資源に着目し、2007年には“モノづくり観光”のキーワードで修学旅行誘致のための事業を構築。おおさか地域創造ファンド(大阪中河内地域活性化推進協議会)の助成対象事業に認定されています(M−1プロジェクト)

 近年の修学旅行は周遊というより体験型の旅行が増えています。神戸市長田区の震災復興商店街体験や大阪の市場の商い体験なども有名になっています。ホテルが主体となり工場見学などの企業を開拓、し成果を上げているようです。

http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2010fy01/0020336.pdf へのリンク

 食品とかビールメーカーなど消費財のメーカーであれば工場見学に宣伝効果がありますが、BtoBが多いと思われる中小企業で修学旅行の生徒に見せて理解してもらおうという企業がでてきたり、生徒さんの方でも見てみたい、体感してみたいというニーズが生まれるということはとても面白い現象です。

 神戸ハーバーランドでクルーズの目玉が自衛隊の潜水艦を建造している川崎重工のドックであったり、名古屋市での集約施設の2位が地元企業のミュージアム(1位はもちろん名古屋城)であったりするのがとても面白い傾向です。確かに見てみたい・・・。見てもらい、体験してもらうことはそこで働く人、住んでいる人の誇りにもつながります。

                                       (2010年12月15日)

■東北新幹線青森開業にみる都市のつながり方の戦略

 12月4日の全線開通日は強風にもかかわらず46%増の乗客が・・・

 開通前に比べて大きく伸びたのですが、乗車人数は8,600人、、乗車率は30%だったそうです。初日の開業景気がすぎた平日はまた前年並みに戻ったと地元の人は寂しそうです。年末年始の予約は既に満席だそうですし、地元紙の報道では各観光地の利用者数が増えてきているとの実感もあるようなので、これからのスキーシーズンや春夏の観光シーズンの人の動きに期待が集まっています。

青森市内のホテル旅館業界は、今のところ大きな変化がないもよう。「個人客の予約は増えているが、抜群に稼働率が上がっている状況ではない」(浅虫)、「売り上げは横ばい」(酸ケ湯)と口をそろえ、県内の観光シーズンが本格化する春以降に望みをつなぐ。
 JR弘前駅によると、1〜8日の青森―弘前間の列車利用客数は上下線とも4万人弱と前年同期と比べ21%増加、下りでは同23%増となった。同駅内の弘前市観光案内所は利用者数が同3、4割増(4〜7日)で推移。市りんご公園の利用者数も5日が80人(前年比約2・7倍)、6日は61人(同約2・4倍)と大幅に伸びた。
 弘前観光コンベンション協会の今井二三夫専務理事は「全線開業で15%の入り込み増を予想したが、それを上回った。広域で観光している」と分析した。
(陸奥新報12月11日)

 東京〜青森駅の所要時間は現在3時間20分。来年3月の新型車両導入で3時間10分に圧縮されます。

 とりあえずつながったあとの「目的」の創出

 首都圏には東北出身者も多いので、また感覚が違うのでしょうが、青森と東京の間を移動する目的があまり見えません。青森については市内でしか仕事をしていなかったので認識が無かったのですが、魅力的な観光資源もあり「観光客」の誘致には色々な対策が考えられます。平日の昼間の移動目的をどう作るのか?そのあたりがポイントになると考えます。市場規模の違いから東京から青森へのビジネス目的での移動はそう多くないでしょう。青森から東京へのビジネス移動(東京市場相手の事業創出)や青森出身の首都圏の団塊世代(集団就職世代です)のふるさと回帰サポートなどの事業により移動目的を創っていく努力がもとめられます。

 伊沢八郎の「ああ上野駅」は1964年にリリース。首都圏の団塊世代の多くは「ビートルズ世代」といった広告代理店的なキャッチフレーズのライフスタイルは虚構で実態は中卒で就職しに上京してきた「集団就職世代」です。東北弁を使うことを学校で禁じられ東京人に同化することを求められた時代を経て、(関西人にはわからないのですが)故郷には屈折した愛憎があるのかも知れません。
 
 九州新幹線については関西と九州のポテンシャルの差が東京と森ほど大きくなく、かつ九州内や広島、岡山とのつながりなど多様なルートが描けるのでつながることで生まれる波及効果は大きいと見ています。
 
 鉄道がつながる事の効果

 神戸市は中国人観光客のゴールデンルートからはずれて観光客誘致に苦戦していましたが、ここに来て韓国からの観光客誘致に自信を深めているようです。現在の中国人の団体客とはニーズが違いますしね。

http://www.kobe-np.co.jp/news/keizai/0003668180.shtml へのリンク

 記事にはないですが、神戸に宿泊したときに、阪神なんば線で奈良につながっているということもプラスに働いていると思います。買い物だけでなく日本独自の文化を楽しみたいというニーズは日本になれてきた外国人観光客では高くなっているからです。
 
 京阪中之島線について活性化のアプローチはもっといっぱいあるはずなのですが、関西財界が切望してきた路線の割に活用のアイデアが乏しいように感じます。頑張って下さいね。

                                                (2010年12月14日)
■名古屋〜東海地方の元気は東京都なみ?
 東海地方の元気の自負心は東京都区部並み

 内閣府の地域再生調査の結果を見ると「住んでいる地域は元気があるか」という問いへの回答率は東海地方では6割が元気があると回答しており全国一です。これは東京都区部での回答と肩を並べています。2009年の調査ですからリーマンショック以後の回答です。他には関東、九州、東山(長野、山梨、岐阜)などが高く、北海道中四国、北陸、近畿では「元気がない」というという評価が高くなっています。
 地域別のサンプル数は多くないですし、一般生活者への調査なのでのであくまでもイメージ的なものですが、今年の名古屋は中日ドラゴンズや名古屋グランパスが活躍するな話題が多く、女子フィギュアでも女子の代表は愛知出身など街の元気を象徴する流れがあります。

 人口は増えているが余暇を楽しむ場所は少ない

 東海地方で元気がないと答えた人は、その「理由」として「美術館など余暇を楽しむ場所が少ない」と答えた人の割合が他地域に比べて多くなっています。人口は減っていませんが商店街などの賑わいが薄れているのは他の地域と同様です。名古屋への一極集中が進んでいるのでしょうか?

 また名古屋市内でも名古屋駅前の摩天楼計画など高層ビルへの集中が見込まれます。

 名古屋駅前再開発に伴い企業の移転があいつぎ、名古屋中区の東急インが閉店するそうです。集中する時は一斉に集中するのですね。面白い特性のある街です。

                                      (2010年12月13日)

 名古屋には独身女性が少ないとか,地元大学の卒業生は公務員就職しか選択肢がないとか・・・・都市なのか田舎なのか?興味深いデータが集まってきています。
図ー住んでいる地域は元気があるか(都市規模別)

図ー住んでいる地域は元気があるか(地域別)

図ー元気がない理由(地域別)

(内閣府特別世論調査  地域再生に関する調査2009年)
■買い物弱者対策〜地方の事例から都市の買い物弱者対策を考える

 買い物弱者は600万人(2005年)にまで増加

 経済産業省の推計では日常の買い物について「近くで買い物が出来ない」=「買い物弱者」の数が2001年の350万人から、2005年度には650万人にまで拡大していると報告されています。
 自動車での来店を前提とする大型スーパーが増加し、高齢者が利用しやすい徒歩圏の商店が衰退していること、地方では集落の人口が減少して商店の経営が成り立たないことがその背景にあります。高齢者の運転免許の自主返納の動きや若者の免許取得率の減少も買い物弱者を増大させる要因として指摘されています。

 店舗の売上げの減少と通販の伸びから流通業の根本的な変化につながる可能性があります。

 対策としては流通業の高度化、自治体との連携協力、NPOや自治会での互助など様々な工夫によって改善と提起され、先進的な事例がまとめられています。

 先進事例

 @客が来られる店へ、客に届く店へ
 ・全日本食品「シティマーケット」(茨城県つくば市)
  運営コストを下げて小商圏でも成立する小型スーパー(300〜500u)を展開
 ・地元農家と商店が連携し半径300mの「徒歩圏内マーケット」を開設(熊本県荒尾市)〜生鮮食品が提供され好評
 ・街全体でお買い物バスを運営(茨城県土浦市)
 ・タクシーで荷物だけでも配送(熊本県熊本市)地元タクシー会社が商店街で買い物した商品の配送を行う
 A地域の他の産業と一緒に発展する店へ
 ・農業者や地元の特産品と連携し観光を意識した複合商業施設を設置
 北海道富良野市(農産物直売所、カフェ)、長野県飯田市(レストラン、和菓子ミュージアム)、山形県山形市(茶屋、ミ ュージアム)
 B商店以外の生活に必要な機能を提供する拠点へ
 ・商店街の近くに高齢者専用賃貸住宅、交流施設、映画館の整備を行う(山形県鶴岡市)
 ・大型空き店舗をダウンサイジングし食品スーパー、NHK文化センター、診療所、屋上広場などの複合商業施設を整  備(山口県山口市)
 C地域外の大手企業や人材の力も活用する事業へ
 ・地域の公共交通機関のICカードを利用して商店街のポイントカード、電子マネーを一体化」(香川県高松市)
 ・大手企業の電子マネーと連携
 ・ポイントカードの寄附収入でまちづくりの基金に(イオン〜島根県太田市など)
 ・大手のノウハウで寂れた店舗を復活(山崎パン〜広島県大崎下島)

 地方では色々な取り組みが進んでいますね。紹介されているこれらの事例他にもコンビニと移動販売の連携とか、コンビニと新聞販売店の連携などで配達網を確保するなどの取り組みをも行われています。

 都市の買い物弱者

 大阪市周辺でもエアポケットのように日常品の買い物が出来ない地域が沢山残っています。生鮮食品が購入できない、そんな地域の住民はコンビニとファーストフードでは栄養状態が著しく悪化するという報告はアメリカなどでも」報告されています。市内では最近は大手チェーンも食品スーパーに力をいれてきたので幾分改善傾向がみられます。
 むしろ用途指定が出店を制限する郊外のニュータウンほど深刻かも知れません。

 高齢者が増えている現実を見ると、介護サービスを兼ねた宅配弁当がもっと定着していくのかもしれません。現在の業者のメニューはまだまだプアなものが多いので、大手企業の仕入れ・物流ネットワークを活用すればコストを抑えてバラエティにとんだメニューを提供できる余地があります。人件費などの配送コストがネックになりますが廃棄ロスが無いのが大きいでしょう。
 近鉄の郊外店MOMO(閉店)の店舗では定休日に施設のお年寄りを招待して買い物を楽しんでもらっていました。
 郊外店の買い物ストレスはとても高いのです。地域の高齢者限定の送迎付きの招待イベントなどを続けていけば売上につながる可能性は高いでしょう・・・どうせ平日は閑なんですし・・・。

                                          (2010年12月10日)

 ファミリーマートが買い物弱者対策としてローコストの小型店舗を開発するそうです。また、コープ神戸が高齢者向けの宅配弁当事業に参入するという報道がありました。

http://www.kobe-np.co.jp/news/keizai/0003658279.shtml へのリンク
■コンビニが変える食文化〜お菓子業界の原価率と業態間競争

 売上原価は概ね54%、原材料費は3

 事例に上げた「モロゾフ」は自社ブランドで全国展開しています。「寿スピリッツ」は各地方の土産物を生産している会社で、小樽のチーズケーキ「ルタオ」などを作っている店もグループ会社です。それぞれ業態は違うのですが、原材料費は約3割というポイントは共通しています。

 ケーキなどの生菓子は売れ残りのロス率の改善が課題でしたが、冷凍技術が発達し多くのの商品が実態としては冷凍保存されたものです。生産の繁閑が平準化され、保存が利くようになっています。(これから販売が伸びるクリスマスケーキの多くはもうすでに制作されています)

 自社で販売しているモロゾフの方が卸や通販が多い寿スピリッツよりも利益率が低いのは、旧来型の百貨店販売というチャネルに依存しているからです。デパ地下スイーツが話題になっていますが、メーカーとしては焼き菓子などの中元歳暮ギフトがとれないと生菓子では利益確保は難しいでしょう。原価率を落とすと格段に味が落ちますからコストダウンの余地が無くなります。

 コンビニは洋菓子の新しい市場を開拓した・・・のかな?

 下記のデータは少し古いので、今はもっと大きく変化しているはずです。コンビニで洋生菓子を購入しているのは20歳代の男女です。お店では1個単位の購入は難しいのですが、コンビニエンスストアでは気軽に購入可能です。
 味については美味しいと思う人も多いようです。私には「洋生菓子もどき」でしかないように思われますが、テレビにでているような「自称カリスマシェフ」が絶賛していたりします。

 洋生菓子ではありませんが、お総菜の販売でもCVS(コンビニエンスストア)の売上シェアは圧倒的です。好むと好まざるに関わらず、コンビニエンスストアで提供される「食」「味覚」は無視できないでしょう。特に、高齢者の食卓が外部化する中でこの変化は若い世代だけの課題ではなく、日本の「食文化」に関わる問題です。

 以前、ガス事業者の対電化厨房対策や生協のお手伝いをしていましたが、それぞれの競争相手は電力会社や大型スーパーではなく、コンビニエンスストアが代表する食の外部化、工業化なのだったのだなと思います。

                                              (2010年12月9日)


(有価証券報告書)

−性別・年齢別洋生菓子購入率と購入先  N=2101 1998年調査



図ー惣菜の売上高シェア

(惣菜白書)
■「シブヤ109アベノ」2011年4月に出店

阿倍野が若者の街に?

 阿倍野再開発で整備される「あべのキューズタウン」に出店が発表されていた「シブヤ」109」(4,300u)の開店は4月だそうです。初年度45億円が目標。シブヤ09より若い客層をターゲットにするようです。ちなみに、東急不動産が管理する「あべのマーケットパークキューズモール」(69,000u)全体の売上げ目標は400億円です。東急ハンズ(2,500u)、イトーヨカードー、日本最大級のユニクロ(3,300u)などが入居します。

 居酒屋「明治屋」などの地元地権者が入居する「ヴィアあべのウォーク」(8,100u)でも70店のショップがオープンします。路面電車が走りレトロな町並みが愛されてきた阿倍野天王寺ですが、意外に20代女性の利用率が高いのです。天王寺MIO、あべのHOOPが出来てからの傾向でしょうが・・・・・。

 もともと高校生の多い街ですが、小林信彦氏に猥雑と評される渋谷のような若者の街に変貌を遂げるのでしょうか?

 また、キタとミナミに対する第3極となるのでしょうか?基本商圏は5km圏。1,500台の駐車場、2,000台の駐輪場を整備します。阿倍野天王寺では自転車利用も多いのです。

                                              (2010年12月8日)  
図ー過去1年間に利用した街

(なにわ考現学2005)

■京都人が語るほど市内エリアの差は大きくない

 京都人は京都の排他性を誇りにしているようにも思える

 京都市内では永きにわたって「都市居住」が継続しています。人の流動性も大阪や東京に比べてずっと少なく、住民同士お互いのことを知っている度合いが高い・・・・都市生活が成熟しているといえます。表面上はやわらかくても、余所者を受け入れることはあまりありません。(そのあたりは過剰にオープンマインドな大阪人とは随分違います)

 京都人が良く語るのは「上」と「下」の違いで、お金持ちや文化人は京都の北の方に住み、南の方に上から目線を持っている地域論です。

 大きく、区別の世帯年収で比較すると・・・・・・そんなに大きな格差はありません。大阪市内の区別の格差に比べると実にフラットです。もちろんフローでなくストックの格差があるとか、歴史的に作られた根拠のない差別とか、通りの向こうとこちらで土地格が違うといった、外部の人にはよくわからない理由での・・・・地元の人にしかわからない差異はあるのだと推測できます。ある意味奥深い・・・・。

 京都府の人口の55%が集中するという東京都特別以外では日本一の集中度を示す都市ですからかなり、「煮詰まっている」感じがします。「暗黙の了解」を理解しない「田舎者」を軽蔑する「排他性」は一つの都市文化なのでしょう。京都人による自らの「いけず」を嬉々として語る書籍が沢山出ています。

 数字から見ると「言うほどそんなに地域に差がないやん」などとい語る大阪人は深く軽蔑されるのだと思います。

 大阪市内で低所得層の比率が高くなっている地域が増えているのは、中間層の郊外への流出と、他の地域からの貧困層の送り込みによるものです。大阪市だけではなく大きな枠組みでの取り組みが必要です。
                                                  (2010年12月7日)
図ー京都市内区別世帯年収比較

(住宅土地統計調査2008年)
■大手IT企業のファッション強化とおまけ付き雑誌の隆盛

 流通大手、メジャーブランドが楽天、アマゾン、ヤフーへ出店

 アメリカではすでに2007年にEC(電子商取引)でもっとも売れるアイテムはアパレルになっています。現在楽天市場ではファッション関係のショップは6,000点弱でシェアは15%強程度です。まだまだ伸びる余地はあるとみられています。

 大手百貨店の自前のECサイト構築ではあまり成功したという話は聞きません。アイテムの変化が少ない食料品や化粧品はそこそこ稼げても、アパレルは商品の回転が速く、自社の対応では商品の入れ替えや細かい提案のサイト構築にコストがかかりすぎるからです。例えば商品写真を1枚撮影するにも馬鹿みたいなコストがかかります。

 アパレルのECで稼いでいる企業は機動性の高さが強みです。自分たちの好きな商品を身の回りのメンバーをモデルに自分達で撮影しますからコストはかかりませんし、思い入れも強いのです。

 ファッションに興味があるが踏み出せない人へのアプローチ

 ファッション企業側のECモールへの期待はどこにあるのでしょうか?「従来の顧客とは異なる客層にアプローチできる」(ユナイテッドアローズ)「より多くの消費者と接点を持ち、各レーベルや商品の認知を高め買い物を便利に買いやすく楽しくする」(ビームス)といったように客層の拡大、開拓に注目しているようです。〜繊研新聞11月30日記事より

 大手のECサイトはファッションの購入になれていない人にもバリアが低いようです。雑誌のおまけについてくるブランドもの小物は伊勢丹の顧客は決して喜ばないでしょうね。ブランドの店舗がない地方在住者やブランドのファッションに興味があってもお店にいけない人が利用しているのだと思います。

 ファッションに自信がないが興味を持っている層に対して真剣に向き合っている企業は少ないのです。ある程度のコンサルティングセールス、アドバイスが必要になりますが、ユニクロの価格帯の商品と競争する店は販売に時間を割けないジレンマがあります。GMSのアパレルが失敗するのはいい商品を作ってもセルフでは価値が伝わらず、かといって販売のノウハウのあスタッフも配置できないからです。・・・カリスマバイヤーを高い金で雇っても現場で接客してくれるわけではありません。ECサイトでも売りっぱなしではなく、ファッションのアドバイスが出来る仕組みがあればもっと市場は拡大するはずです。

 本来は、そこに百貨店の強みがあったのですが(おしゃれに自信のない人へのコンサルティング販売)、店舗コストをカットするために人を減らしています。都心店舗であれば不動産業でもいいのですが、販売員が必要な郊外店ほど人を減らしているのは間違った政策です。

                                                       (2010年12月6日)

■大阪市内で拡大する格差の原因は高齢化だけではない

 高齢化が進むと世帯年収の低い層が多くなる

 大阪市内の過去10年間の比較を出来るようにしたのが図1〜3です。1998年には比較的差がなかった200万未満の層と1,000万円以上の層の差が年を追う毎に広がっていったことがわかります。
 人口の増えている西区では2003年に拡がった格差が緩和される方向にあります。これらは比率の比較なので人口が増えていると全体のバランスは良くなります。
 図ーでは京阪神と名古屋、東京を比較していますが、リーマンショック以前の成長を続けてい名古屋市内ではバランスがとれていたことがわかります。(この時期まで東京都も名古屋市も流入人口が増えていました)

 高齢化だけでは説明できない大阪市の「貧困」の背景

 大阪市の中でも突出しているのは西成区です。年間所得200万円未満の世帯が5割を超えています。10年前でも3割強であったのにこの伸び率は異常です。西成区内でも全体では人口は減少しているのですが一部の地域だけ伸びています。テレビなどでも報道されているように他府県、他都市から片道切符を渡されて大阪に送り込まれている・・・というのはマスコミ的な誇張ではないようです。
 生活保護世帯の数が全国一で路上生活者への対策が充実しているだけにその対象者が集まるという皮肉な結果になっています。平松市長も生活保護から就業支援に舵を切ったように対策を講じておられますが、一自治体だけの対応には限界があります。

 外国の報道で大阪のデフレ経済が面白おかしく取り上げられたり、激安スーパーの「スーパー玉○」が大阪を代表するスーパーのように紹介されたりするので大阪だけがとりわけ貧しいような印象を与えていますが、人工流出が進み、高齢化が進む都市ではごいく普通のバランスであると思います。京都市、神戸市と比較しても、おそらく「西成区」の特殊事例(沖縄に米軍基地負担が集中しているように、高度成長期以降のデフレの中での高齢化のひずみが大阪に集中しているのだと思います)を除けばバランスは変わりません。

 空間的な要因と歴史的な要因

 大阪市が「貧困」から抜け出して、先に進むためには今の「貧困」の背景を分解してそれぞれの「受益者」への応分の分担を求めることが必要です。「貧困」の「マイナス」の部分はどこかの「プラス」に依るものです。

 空間的には大阪でビジネスを行う人が居住する周辺都市です。阪神間、北摂、奈良の都市は「大阪」が良くなることでの共通の利益があるはずです。市内都市部の整備に対して応分の負担があってしかるべきでしょう。

 歴史的には現在の貧困層(特に高齢者)かつての「安く労働力」活用の遺物であると考えられます。つけが回ってきているのです。〜今、大阪には少ないのですが関東や中部に多い外国人労働者は、いずれ何らかの形で地域の財政負担になるはずです。・・・今となっては、誰に負担しろとは、いえませんが国民全体が何らかの形で利益を得ているはずです。国のお金を投入すべきでしょう。

 大阪市に出来るのは、ホームレスを使った貧困ビジネスや不正受給者の犯罪摘発、失業対策就労支援などの地道な取り組みです。

 大阪府がからむ某プロジェクトで国の補助金を打診した時に、険もほろろにあしらわれたことを思い出します。大阪ほどの都市ならば、自治体なり、地元企業がお金を用意すべきだろうという趣旨でした。国は大阪には冷たいのですよね。
(平松市長があれほど無理筋のサッカースタジオアム建設にこだわっていたのは、国のお金をひきだしてハコモノができるという風に勘違いされているからでしょうね・・・維持費はどうするのでしょうね。ワールドカップ招致に失敗したのは残念ですがナショナルプロジェクトで一時的い国の予算を引き出すより、財源以上、権限委譲を求める方が長期的にはプラスです)

 大阪を元気にするには府県を超えた周辺自治体との連携(というか取り込み)と国からの「貧困対策の国家的な取り組みとしての資金の引き出し」(=自治体の国相手の貧困ビジネスといわれてもかまいません)が必要ですし、その権利を主張しないと(いくらリストラしても)大阪の財政破綻が早まります。

 図ー6にあるように「大阪都」というものを考えるのであれば、大阪府内だけでは完結させずに阪神間や奈良の一部も再編の対象にするべきでしょう。

                                                (2010年12月3日)
図ー1 1998年大阪市内世帯年収比較

図ー2 2003年大阪市内世帯年収比較

図ー3 2008年大阪市内世帯年収比較


図ー4京阪神と東京名古屋の世帯年収比較


(住宅土地統計調査2008年)

図ー4市税収入の構成比    〜大阪市は個人市民税の比率が少ない

図ー5 納税者1人あたりの納税額〜納税者に限っても、名古屋、横浜だけでなく周辺の大都市よりも少ない

図ー6 大阪への通勤率が高い都市と納税者1人あたりの納税額〜多額納税者は郊外へ

(大阪市財政の現状と課題)

■東京、名古屋の区別の所得格差は大阪ほど大きくない

 大阪は東京の真似をしてはいけない

 感情的な東京への反発心ではなく、都市の構造が全く違います。名古屋と比較しても構造が違います。昨日の図ー3の大阪市内の世帯年収の比較について、東京版と名古屋版を作成してみました。

 東京は圧倒的に所得水準が高く、区の間の格差は年収の高い層の比率の違いです。大阪では年収200万円未満の層の比率の差であることとは全く反対です。

 名古屋市は区の間の格差が比較的少ないように思えます。これもまた大阪市とは構造が違います。

 大阪市を活性化するためには今の大阪市内を再編成するだけでは解決はできません。東京に対抗するだけではない独自のビジョンが必要になります。

                                                   (2010年12月2日)

図ー1 東京都特別区の所得格差 世帯年収の比較〜200万円未満と800万円以上  東京は格差が大きい

図ー2 名古屋市の区別の所得格差 世帯年収の比較〜200万円未満と800万円以上


(住宅土地統計調査2008年)

昨日の 図ー3と比較して下さい。
■大きな所得格差を抱えて分割は出来ない〜大阪市解体論の手順違い

 実は貧乏な大阪市民

 市場ポテンシャルとして住民の所得水準を比較すると大阪市は名古屋や東京と比べて低いのです。郊外への人口流出で中流以上の層が他府県を含めた郊外都市に流出してしまった事で富裕層、中間層が少なくなってしまいました。大阪市の財政規模が大きいといわれるのは企業が集中している為です。
 多さkしないでも、特に西成区、浪速区などを中心に世帯年収300万円未満の世帯が多くなっています。(図ー2の黒く塗りつぶした区分から下が年収300万円未満の世帯です)

 豊中市、吹田市と言った北摂地区だけでなく堺市、岸和田市と比較しても低い水準であることがわかります。

 大阪都構想の中で大阪市を分割する案が出ていたことがありました。人数あわせでグルーピングしていけば法人が少なくかつ低所得層の多い地域の行政サービスは著しく低下します。(その時には行政サービスの良い自治体への人口移動が始まるのかも知れませんが)

 ・・・金持ちが多い程住みやすい街というわけではないですが、地域に産業があって税収のある街ほど行政サービスは手厚いのです。いまでも行政サービスには大きな差があります。


 大阪都構想(広域行政)には配分の哲学が必要

 対案として税収の再分配という提案がありましたが、大阪市だけでなく大阪府下の都市、大阪府下の都市だけでなく、大阪で働いている阪神間や奈良の住民の負担はどうなるのかと議論は拡散していきます。今は地方自治体は財源の委譲を国に対して要求する立場ですが、将来的に「関西州」が実現したときには広域の財源を配分する利害調整の哲学が求められることになります。
 今。議論されている「大阪都構想」に賛同している議員さん達は利害調整の原則を明らかにしていく責任があります。

 愛着を持てて、相互扶助を受け入れられるコミュニティの範囲や規模は、コンパクトである必要があります。その意味で大阪市を分割して再編成するという筋道は間違ってはいないでしょう。分割してしまった後に残る大きな格差への対応(再配分の哲学)や、コミュニティへの愛着を無視した機械的な分割案が先走るようではデメリットの方が大きいように思います。

 所得格差が大きいのは、工業都市「大大阪」の労働力を供給してきたという歴史的な経緯もあります。自己責任とか「市場原理」で調整(サービスの良い地域への自発的な転居)される・・・などという責任放棄はしないでくださいね。

                                        (2010年12月1日)


図ー1 大阪市内世帯数


図ー2 大阪市内及び周辺都市の世帯年収比較 (%)


図ー3 世帯年収の比較〜200万円未満と800万円以上




(住宅土地統計調査2008年)


 
 11月
■経済波及効果を使うときの留意点

 数値目標の一人歩き〜わかりやすさが本質を隠す

 政策に数値目標が導入されてきたことは基準が明確になってわかりやすくていいのですが、波及効果が金額になると、それがわかりやすいだけに勘違いされることが多くなります。例えば下記の表。経済波及効果としてそれぞれアカデミックな裏付けを持って算出されたものです。

 新聞報道の見出しになっていたときには10年間の積み上げや6年間の積み上げが混在していたものを1年あたりに修正しています。見出しの金額だけではG大阪の新スタジアム建設は960億円の波及効果となっています。大抵の場合、どの位の期間かは大きく表記されていません。また、直接的な入場者や観光消費の直接的な効果だけでなく産業連関表を使った間接的な波及効果も積算されていますが、どの範囲のエリアを対象とした集計化も省略されています。奈良県の遷都1300年事業の数字は奈良県のみのものを使っていますが、関西圏への波及効果と設定するともっと大きな数字になります。

 さまざまな経済波及効果についてはその考え方や計算プロセスがあってこそ意味があるので、下記の表のように並べてしまうと(あまりやる人はいないかもしれませんが)大きく間違えます。〜政策の優先順位として大阪マラソンを新しく始めるよりタイガースを優勝させる方が効果が大きい・・・といった優先順位の勘違いがおこります。そんなに極端なことはないとしても、効果を水増ししないと「仕分けされる」という風潮はなんだか変ではないですか?

(経済波及効果を読むポイント)
・何年間での積算数字か
・初年度の数字が持続、拡大していくのかそれとも右下がりで効果が薄れていくのか
・どの範囲での経済波及効果を計算しているのか

・直接効果の算出根拠(例 観光客の伸び、等)
・間接効果の算出根拠

 数字で見ると考え方の流れや、計算者の考える優先順位がわかって面白いのですが、結果の数字は参考まで話の種として扱うのが適当だと思います。

 オリンピックの経済波及効果が良く喧伝されますが、ロスアンゼルス以来、開催都市は残された赤字に苦しんでいます。
 無から有が生まれるのではなく誰かの支出が増えている・・・と考えるべきです。観光などの外部からのお金を見込める事業でなければ、つけは自分が支払うことになるかもしれません。

                                                     (2010年11月30日)


新聞報道による
■12月4日東北新幹線全線開業〜青森と仙台、東京が近くなることの相互作用は?

 2002年の八戸駅開業の経済効果は年平均129億円〜新青森駅開業の津軽地域への経済効果は98〜161億円

 東京〜新青森駅間を1日15往復の特急が走り、最短時間3時間20分で結びます。(来年3月には3時間10分、2012年には3時間5分にまで短縮される予定です)約4時間かかっていたのが40分弱短くなります。心理的に3時間台で直通で動けるというのはかなりのプラスになるでしょう。

 八戸駅の開業で首都圏からの利用者が倍増し、経済効果が7年間で901億円、年平均129億円になり雇用創出効果が延べ9,313人に上がったと報告されています。(八戸大学)観光関連の直接効果は579億円、そのうち土産物、飲食への消費が358億円と算定されています。
 八戸は旧南部地方で弘前などの津軽地方とは仲が悪いのですが、今回ようやく津軽地方にも新幹線の恩恵が及びます。

 弘前地域(津軽)の観光客は24%から39.5%増加?

 弘前大学と弘前市の試算では津軽地域への経済波及効果は98〜161億円とされています。弘前市の観光消費408億700万円から観光客の伸び率を勘案して算出されたものです。
 確かに津軽には竜飛岬、十和田湖、八甲田山など魅力的な観光資源は数多くあるのでうまくキャンペーンが成功すれば集客可能だと思います。ただ、九州新幹線の議論が京阪神からの観光集客だけでなく九州の地域の交流なども話し合われているのに比べて、首都圏からの観光客誘致という一方通行の流れに依存していることが気になります。

 京阪神や九州でも府県間の連携が悪いという話を聞きますが、秋田や岩手との連携という話以前に青森県内でさえ昔の藩の対立名残が連携を阻害しているのは心配要因です。津軽藩と八戸藩(南部藩系)の対立・・・・エリアマーケティングで昔の藩の気質の違いとかいわれますが、なるほどと思います。

                                                    (2010年11月29日)

 
■JR博多シティ開業を巡る周辺地区の動き

  3月3日 新博多シティ開業

 新しい博多駅の商業施設「新博多シティ」は九州新幹線が全面開業する3月12日に先駆けてオープンします。JR九州が運営する「アミュプラザ博多」は「東急ハンズ」やシネコン、日本最大級のレストランゾーンを含んで店舗面積37,600uで初年度300億円の売上を目指します。また、「博多阪急」は40,000uの売場面積で370億円の売上が目標です。(当初400億円の売上げ目標が発表されていましたが下方修正されたようです)

 隣接する「博多バスターミナル」(旧「福岡交通センター」から11月1日に名称変更した西日本鉄道が運営するバスターミナルを中心とした商業ビル)は2階部分でペダストリアンデッキが直結するので大規模なリニューアルを続けています。100円ショップのダイソーが売場を移転拡大し3,400uと最大級の規模になりました。(10月29日)その跡地には「ファッションセンターしまむら」が2,000uの規模で入店する予定で、来年2月19日にオープンすると見られています。同ビルには紀伊国屋書店などの大規模店舗が入店しており、駅ビルとは違った利便性を生かした集積になっています。

 「キャナルシティ博多」(博多駅と天神地区の中間にあるショッピングセンターで、最近は観光客で賑わっています)は来年9月から10月のオープンを目指して第2キャナルシティを増床オープンさせます。「天神や博多駅では不可能な有力SPAの大型旗艦店を集積」として、「H&M」(2,372u)、「ザラ」(2,425u)、「ユニクロ」グローバル旗艦店(2,469u)、「コレクトポイント」(1,446u)、「フランフラン」(1,548u)他に日本未上陸の欧米のSPAと交渉中と発表されています。

 開業1年目は1640万人が訪れ、売上高が507億円あったキャナルも、2009年度は1230万人、415億円と、ともに8割前後に落ち込んでいた。新棟の完成で売上高は60億円前後、来場者は200万人強の増加を見込む。(朝日新聞11月24日)

 客層は韓国からの観光客中心に変わっていましたが、まあ、大きくコンセプトが崩れることなく健闘している店舗でしょう。

 小倉駅は「九州の玄関口」であり続けるか

 北九州市は人口規模もあり小倉城などの歴史文化資源も存在するにもかかわらず他の地域の人にとって印象の薄い街です。JR小倉駅は「九州の玄関口」で九州新幹線の各駅停車はすべて小倉発にはる予定です。また大分方面に向かう日豊本線への乗り換えターミナルでもあります。

 その小倉駅前にあった「小倉そごう」破綻のあとを受けた「小倉伊勢丹」は思った以上に売上不振で撤退し、その跡地を地元百貨店の井筒屋が専門店ビル「コレット」を運営しています。「ロフト」「無印良品」を導入し集客力をUP。最近では「ZARA」「ABCマート」などを導入し百貨店との差別化を図っています。
 小倉駅前にあった「ラフォーレ原宿小倉」の跡地には北九州市が「漫画ミュージアム」を設置することを検討中です。漫画文化の振興と街の賑わい作りを創出するのでしょう。

  このように記述するとデフレ業態の集積地と誤解されそうですが、駅ビルの「アミュプラザ小倉」は堅調ですし、地元百貨店の井筒屋、リバーウォーク北九州なども健在です。福岡市と人口規模では変わらないのですが、福岡県の中では福岡市に隠れて存在感が感じられません。石炭や鉄の街という男っぽい無骨なイメージが強いのですが、川と橋の美しい情感のある都市です。

 距離的には近いので福岡駅の集積ができると影響を最も受けるように思います。イメージで損をしている点では大阪にも似ています。

                                                      (2010年11月26日)
■旧来の収益構造からの転換が求められる葬儀業界〜意外に下がっていない単価が抱える課題

 ブライダル市場は件数縮小の中で単価アップ

 経済産業省が行っている「特定サービス業動態統計」の推移を見ると結婚式場業の取扱件数は縮小傾向にありますが1件あたりの単価はアップする傾向にあります。ハウスウェディングなど単価の高い結婚式が増えてきている状況を考えると背景を理解できる数値です。結婚式にお金をかけたくないカップルはリゾートウェディングやレストランウェディングなど結婚式場業を使わない形でコストを抑えることもできるからです。

  葬儀の単価は意外に下がっていない?

 いまや都市部では2割が葬儀を行わない直葬であるといわれています。高齢化が進み参列者数も減少傾向にあるので平均単価は大きく下がっているかと想像していたのですが意外に下がっていません。結婚式と違い葬式の場合、地域コミュニティが執り行う地方は別にして葬儀業者は必ず関与します。従って火葬場へ直送される「直葬」であっても遺体の移送費は業者の売上になります。2000年に比べて高くなっている単価は何を示しているのでしょうか?

 一つ考えられるのは生前予約でのオプション追加での単価アップ策です。例えば「自分らしい葬儀」のための音楽の生演奏や生花の大量陳列、遺体の保存加工(エンバーミング)など・・・・ご本人の意思での単価アップです。エンディングノートへの記入でなど生前から葬儀、それ以後のあり方を考える人が増えているので、それはそれでまっとうなニーズに応える単価アップ策でしょう。

 「立派な葬儀」「豪華な葬儀」は望まないと言うことで「家族葬」を望む人も増えています。通常の葬儀に比べて、コストは低くなるはずなのですが・・・・意外にそうではありません。オプションを追加すると通常の葬儀と変わらない価格になります。・・・このあたりに平均単価が下がらない秘密がありそうです。これは健全な商取引を逸脱している可能性もあります。多くのユーザーは50〜100万円を想定しても100万円を超える金額が請求されることになります。(寺院の費用を入れるとそれでは済みませんが)
 従来の葬儀を前提にした事業構造(設備投資、人件費、その他固定費)を変えないで「家族葬」を望むユーザーのニーズに応えてリーゾナブルなコストで葬儀を提供することはとても難しいのです。これは古い体質の温泉旅館や百貨店が抱える課題に似ています。

 葬儀業界にもユニクロやジャンカラ(湯快リゾート)の温泉旅館に似たような新しい業者が生まれてきているようです。勿論、昔からの変わらないやり方を支持するユーザーも存在するのですが、市場を新しい参入者と分けあうことになる、つまり従来のやり方では市場は限りなく縮小していくことは覚悟すべきでしょう。

                                                               (2010年11月25日)

図ー1 結婚式場業取扱件数と平均単価推移

図ー2 葬儀業者取り扱い件数と平均単価推移

(経済産業省「特定サービス業動態統計調査」)

■全国チェーンの功罪とローカルなサービスのイノベーション〜地方の旅館の再生

 地方の温泉旅館では当たり前でないこと

 九州新幹線の全面開通で京阪神からの集客に熱心な九州の温泉地に立地する中堅クラスの温泉旅館を視察して気づいたことがあります。かつてはアンノン族に人気で歓楽街色をを早い時期から排除している温泉街ですが、禁煙ルームの設定がない、大浴場更衣室に鍵付きの小物入れがない、食卓に紙のナプキンが置いていない等々の、都市部に近い温泉地では当たり前になっている細かい対応がスルーされていました。通常なら各室に置いてあるフロントへの感想を記入するアンケートも見あたりません。・・・・・あまり和風旅館を使うのに慣れていないので、これは中堅クラスのホテルのサービスとしてはごくスタンダードなのかもしれません。

 脱衣場の清掃なども運営コストを下げるためにスタッフの人数を絞って運営しているなということが伺えるものでした。同じようにコストを下げて温泉旅館を再生しているジャンカラ(湯快リゾート)の1泊7.800円の温泉旅館のサービスへの考え方とは、優先順位が違うなということを強く感じました。

 従来の顧客の求める「サービス」の内容と水準と新しい顧客(都市部の顧客、若い利用者)の求めるサービスの内容と水準が違うことに事業者は気づいていないのではないかと思います。

 地方の老舗百貨店が衰退し、イオンモールなどに代表される郊外型の大型ショッピングモールに勢いがあるのは、単に自動車商圏への対応という事だけではないような、ローカルと全国基準のギャップがあるためではないかと考えさせられます。

                                                                       (2010年11月24日)
           
■京都の集客力を関西全体に波及させる大阪の役割

 広域の観光客の集客力は圧倒的に京都が強い

 観光客数の統計には近隣の都市からの都市観光客数が含まれているので、広域の集客力がわかりにくい面があります。

図ー1の調査時期には奈良国立博物館で正倉院展が開催されていたので、京都駅から奈良を利用する人が多くなっています。〜歴史資源、文化資源の広域からの集客力は強いですね。

 90年代には修学旅行生の京都ばなれなど団体客の減少や、阪神淡路大震災で関西を敬遠する動きがあり観光客数を減少させましたが、昔アンノン族だった団塊世代が中高年になり個人旅行市場が拡大するなど個人客へのシフトが成功して回復基調にあるようです。

 また、京阪神の近隣の日帰り観光客数も京都の観光市場を支えます。(建設中の京都水族館についてはターゲット設定が不明です?修学旅行生は大阪の海遊館なども回るでしょうし、神戸大阪の市民はそれぞれ地元に大きな水族館があります。地域の教育施設なのでしょうか?・・・・京阪神はそれぞれ地域の中で観客を囲い込もうとするとスケールの小さい「観光地」になるように思います。民間経営ならではのショーアップされた水族館になり新しいエンタテイメントが提供されれば面白いのですが、公有地なので「教育施設の建前」との板挟みにならなければいいのですが)
 開業後、地元民による都市型のレジャースポットとして年間パスポートの販促に力を入れて初年度は目標をクリアしています。将来的に増築は難しいのでしょうが、梅小路にJRのい鉄道博物館が開業しますので、公園全体の集客力はアップするでしょう。

 新神戸駅利用の観光客は神戸の西のエリアを回遊

 京都駅を利用する観光客は奈良県も回遊します。新神戸駅を利用する観光客は三宮を通り越して北野と元町から西の港のエリアを利用することが多いようです。六甲山や宝塚、神戸ファッションや神戸スイーツの中心である阪神間への回遊は少ないのが意外です。もっとうまい回遊ルートの作り方があるように思います。

 全国的な集客コンテンツである「宝塚」の利用は新大阪駅経由の方が多くなっています。(確かにその方が便利なのですが)広域からの観光客を集客する神戸の観光案内施設は新大阪駅」に設置した方がいいのかも知れません。また阪神なんば線での成功のように、三宮で奈良の観光案内を行うと観光客に親切です。

 神戸の観光が低調なのはイメージの源泉であるファッションや美味しいモノがある阪神間に観光客の受け皿を形成できていない事にもありそうです。全国ブランドになったアンリシャルパンティエが芦屋の「メゾンアリンリシャルパンティエ」の店舗を売却してしまったのは象徴的です。(神戸市内ではないので神戸市は管轄外なのかもしれませんが)

 新大阪駅利用者は広域を回遊する

 新大阪駅の利用者は京都、神戸、奈良を広域に回遊する傾向があります。関西全体の観光の連携を考えるときに、大阪のポジションはとても重要です。
                                                 (2010年11月22日)

図ー1  新幹線新大阪駅、京都駅、新神戸駅 近畿圏外の観光客の立ち寄り先(単位:トリップ)

※ 調査時に正倉院展が開催されていたため、奈良県への来訪者が多くなっている
図ー2 新神戸駅利用近畿圏外観光客の立ち寄り先(単位:トリップ)

図ー3 新大阪駅利用近畿圏外観光客の立ち寄り先(単位:トリップ)

(パーソントリップ広域交通結節点調査  2006年)
■2010年に開店した店

今年開店した店について簡単に整理しておきました。1年は速くすぎますね。
表ー2010年の大型店の開店

■大阪駅「ルクア」のターゲット

 JR大阪駅北ビルファッションビル「ルクア」」の主要ターゲットは25〜34才のトレンドに敏感な女性

 JR西日本SC開発によると主要ターゲットは25〜34才のトレンドに敏感な女性で196のテナントの6割がこのターゲットです。サブターゲットは20〜24才の女性で約2割。20〜34才のおしゃれなビジネスマンを」対象にした男性向けは約2割になります。
 パウダールームを充実させたトイレや飲食店も女子会やデートに使える店を揃えるなど、女性に重点を置いた構成になっています。

 ちなみに同時期にオープンする「JR三越伊勢丹」のターゲットについては

 特定の年齢層に強いブランド力を持つ三越と、20代から40代くらいまでのファッションの店という印象が強い伊勢丹。今回は両方の顧客層をターゲットにする1号店ですので、今までにない形になると思います。
 と語られています。年代というより「伊勢丹ファン」の集積と三越の高年層への強みを活かした店と読み取れます。

 また増床オープンする「梅田大丸」は下記のように発表しています。

 新しい梅田店は、「梅田周辺で働くワークライフバランスを重視するスタイリッシュな大人」を重点ターゲットに設定。既存のお客様を大切にしながら、今まで百貨店を利用されなかった新たな顧客層の開拓に取り組みます。
<これまでの重点対象顧客>
○ ショッピングなどを目的に来街される、専業主婦を中心としたミセス層
○ 梅田周辺にお勤め、もしくは通勤途上で梅田地区を訪れる、30代から40代のOL層
<新たにターゲットに加える重点対象顧客>
○ これまであまり百貨店を利用されなかった子育て世代のアラウンド30を中心とするワーキングマザーや男性
○ 梅田東エリアや大阪駅周辺に来街しているが、百貨店を利用されていないヤング層。(次世代マーケットの開拓)


 東急ハンズなどがテナントになっていますが、やはり女性に重点を置いた構成です。

 地域一番店として2つの店でフルライン、フルターゲットを制圧する阪急・阪神百貨店やノンエージの男女に支持されているヨドバシ梅田、そして女性を主力ターゲットとするディアモール、イーマ、ハービスなどと、特に女性を巡って熾烈な競争が始まります。


 単純な年齢や価格帯だけでない自社独自の顧客分類とターゲット設定が出来た店が「差別化」を成功させるでしょうね。

                                                                 (2010年11月18日)

2014年度発表予定の「新なにわ考現学」であらためてターゲットの検証を行います。
■KOHOYO淀屋橋店が16日にオープン〜御堂筋初の高級食品スーパー

 11月26日 スーパーKOHYOが淀屋橋に開業

 朝8時から21時まで営業するそうです。大阪の中心である御堂筋の界隈には高層マンションが増えてきていましたが本格的な食品スーパーは初めての出店です。かつてはオフィスだけの単機能の街でしたが、淀屋橋オドナが開業した前後から大きな変貌をとげました。
 生鮮食品には定評がありますし、惣菜には力を入れています。オープンキッチンでできたての惣菜が並べられています。ニューヨークのデリとまではいきませんがなかなかいい感じです。(「スーパー玉出」でなくてよかったです。東京のテレビ番組では大阪のスーパーの代表として「スーパー玉出」がしばしば登場し、大阪の「猥雑」さをみんなで差別することを楽しんでいただいていますが・・・・)

 御堂筋〜中之島の都市機能が複合化することで都市としての成熟が進む

 御堂筋、中之島はオフィスしかない街でしたので、夜になると人通りが絶えて、飲食店も数少ない地域でした。淀屋橋ウェストと呼ばれた飲食店の開発と周辺地区のタワーマンションの開発で夜や休日の人の動きも活発になっています。大阪というとキタミナミの繁華街か生活感のある下町しか想起されなかったのですが、都会的で環境の美しい御堂筋、や中之島が元気になれば「大阪」のイメージもかなり変わってくるはずです。
 梅田周辺の開発が話題になっていますが、梅田は京都屋神戸をつなぐ結節点の役割が強く外向きの連携をつくるベースだと思います。淀屋橋から西の靫公園から中之島の西部地区に人が溜まり回遊することが大阪の心臓部を鍛えることになります。

 昔、橋爪伸也先生に大阪を人の顔に例えて表現する研究会のご指導を戴いていましたが(今は大層えらくなられたようですね)、それに倣って大阪を人の体に例えると、梅田は「顔」で中之島〜御堂筋は「心臓部」、ミナミは「胃袋」と「へそ」といえるかもしれません。

                                                            (2010年11月17日)

 ちなみに淀屋橋のコーヨーの惣菜は、肉の惣菜はさすがに美味しいのですが、米を使った惣菜は、あまりいいお米を使っていないので美味しくありません。あくまでも雰囲気を絶賛しているだけなので、この店の味についてはご自分でご判断下さい。
■京阪神〜どのポイントに観光客が回遊しているか?

 1日あたり来訪者にみる街のポテンシャル

 街の来訪者を比較するとき、調査主体によって計測の方法や時間帯が異なるので簡単には比較できません。2006年のパーソントリップ調査で観光地の来訪者へのアンケートをとるために、その母集団となるエリアの来訪者数を計測しています。厳密にはそれぞれのエリアの事情があるのですが、同じ基準で算出した数字ということで比較してみると面白い数字が出ています。

 昨日も俎上に載せた「神戸ハーバーランド」は1日21、739人と神戸市内の調査ポイントの中で最も多く、大阪市内のOCAT、なんばパークスを上回っています。(大阪市内新橋交差点は心斎橋のことです)少し?とはいえ、一定の来訪者数は存在するということです。

 そこで商売が成り立たないのは来訪者と商売にミスマッチがあるのでしょうね。


 京阪神回遊の戦略

 大阪国際空港も流動者は多いのですが商売は厳しいですね。この空港を利用する観光客は京都を利用する人が一番多くなっています。神戸方面は非常に少なくなっています。観光に限っていえば大阪空港を廃止しても神戸の観光には影響がないと言うことになります。

 大阪空港廃止への反対または関西国際空港へのアクセス改善に対して声を上げるべきなのは兵庫県・神戸市ではなくてむしろ京都なのでしょうね。

 神戸観光に関していえば京都との回遊が全くない点が気になります。阪神なんば線の開通で奈良との回遊は便利になりましたが、神戸〜京都をセットに出来ればもっと観光客は増えるはずです。京都へ来る人は奈良との回遊が多いようです。大阪を起点すると比較的京都、神戸、奈良、和歌山にバランス良く回遊するので、観光のゲートゾーンは大阪の梅田地区であるべきなのです。

                                                                          (2010年11月16日)
 
図ー1日あたり来訪者数

図ー2 大阪空港利用観光客の立ち寄り先


(京阪神パーソントリップ調査 2006年中間年次調査)
■広域の観光地にもなりきれない繁華街にもなりきれないハーバーランドのポジション

 神戸市内からの利用が多いハーバーランド

 神戸市内からの利用が多いのがハーバーランドの特徴です。神戸大丸などの旧居留地の68%には及びませんが、なんばパークスの大阪市内利用者を上回っています。同じ神戸のウォーターフロントでもメリケンパークにのように近畿県外の観光客のウェートが高いわけではありません。

 観光地として広く人を集めているわけでもありません。年代的には旧居留地は50代以上の利用が多いのに比べ、29歳以下の若い世代の利用が多くなっています。
 足元商圏の利用が結構多いと聞きますが、例えば京都、大阪からの都市観光客を集めるほどの魅力は今はもう失われているようです。


 本来個々で展開されるモノはアウトレットモールなのでしょうが、それにしては元町が近すぎるのかも知れません。神戸阪急の撤退はもう避けられないのかもしれません(かなり寂しくなったとはいえ必至に百貨店の矜持を保とうとしているのは痛々しいのですが)。業態転換するにしても新しい業態の創造はとても難しいので、興味深いモノになるでしょう。
 上のグラフにあるように、決して人が寄りついていない場所ではないのです。来街者と商業がミスマッチなだけなのですが。
                                                          (2010年11月15日)

 その後、イオンモールが運営をすることになり、海外SPAの大型店などが導入され、パワーセンター型のSCとして再生しました。神戸アンパンマンミュージアムなどの開業もプラスになっています。
図ー来訪者居住地

図ー来訪者年代



2006年パーソントリップ調査より
■「最後の聖域」地下街への期待

 駅ナカ、駅チカに続く最後の聖域

 「買い回りの魅力作りへ〜動き出した地下街」というテーマの記事が昨日の繊研新聞に掲載されていました。天候に左右されないことと、毎日の通過客が確実に見込めることは駅ナカや駅チカに通じる強みといえましょう。テナントさんの期待が高いようですね。

 地下街は30年〜40年前に作られたモノが多く、丁度大規模リニューアルの時期なのかも知れません。

  東京の八重洲地下街は対象をOLやビジネスマンに絞り込んだ全面改装を07年度から4年がかりですすめています。以前は飲食、ファッション、雑貨が混在していたのをゾーニングを明確にして新店も導入しています。

 大阪のホワイティうめだは1日あたりの来街者が60万人を超す通行の要所ですが、20〜30代のOLを対象にしたファッションゾーン「ファルル」をつくりました。ただ、「幅広い客層の入店が見込めるのは地下街の武器、客層が限られるファッションビルとは差別化が出来ている」と言う認識で極端な絞り込みには否定的です。

 一方京都駅前の地下街ポルタでは「駅前地下街とはいえ不特定多数を相手にしていては駄目」とミセス向けの服からヤング、ヤングアダルトの取り込みに力を入れています。・・・京都駅前はイオンもできましたしヨドバシカメラが近鉄跡に開業し、若い人の回遊が増えてきているのでそれに合わせた対応だと思います。伊勢丹があるのでおしゃれな中高年の買い場はあるのですが、もっさい中高年の買い場が京都駅前では少なくなっていくのでしょうね。(市場としてはもっさい若者の濃度が濃くなると予想しています)
 その後、京都駅周辺では、イオンモールKYOTOの開業でヤンキーファミリーの買い場が生まれました。

 通行量の多さを生かすには

 「地下街は通路として使う人が多い為厚く速度が速い、通行量の多さを生かすには歩行者の足をどうやって留めるかがポイントになる」ということでディスプレイに力を入れていると言うことです。確かに一般的に通行量の2%程度しか店に入らないという調査結果もありました。

 お客さんにアピールしようとするあまり個々の店が通路にはみ出した陳列をし出すとかえってそれぞれが目立たなくなります。(デベロッパーの統制がとれていない商業施設ではありがちですが)店舗装飾のデザインは海外のデザインをまねて、商品を見せる技術を中心に発達してきたので、お客さんの興味を喚起し、店に引き入れるデザイン技術は未成熟なのでしょうね。

 大阪の地下街のイメージ

 なにわ考現学の調査結果から見ると、「阪急三番街」「なんばシティ」(地下街ではなく駅ビルなのだそうですが)は男女、年齢を問わずに利用され支持されています。
 「ディアモール大阪」は女性の20代、30代に絞って成功しています。「クリスタ長堀」は競合の関係で女性30代の指示が突出していますが、利用率が低いのが悩みです。「なんばウォーク」は男性の60歳以上にも支持されているという幅の広さがあります。
 「ホワイティうめだ」は通行量の多い要の立地ですが、店の利用は若い女性が多いようです。立ち飲み屋さんもあるのですが、そこは「ホワイティうめだ」だとは認識されていないのでしょうね。おしゃれ感は台無しですが・・・・ほっとします。

 大梅田構想と地下街

 梅田゙の地下街は地元の人間でも迷うことがあるほど入り組んでいます。梅田についてはJRと阪急阪神が手を組んでMAPを作り集客を考えているようです。

 大阪駅の1日の乗降客数は約85万人だが、改修が完了する23年度には91万人に増えると予想されている。ただ、三菱総合研究所が今夏実施したアンケートによると、大阪圏在住者の大阪駅周辺への訪問回数は現在の年22・2回から5年後も22・1回とほとんど変わらない見込み。JR西と私鉄による“大梅田構想”が第一歩を踏み出すなか、三菱総研の水嶋高正・主任研究員は「外国人観光客の誘致が大きなテーマになるだろう」と分析している。(産経新聞11月11日)

 外国人観光客と言っても銀座やお台場、心斎橋のような中国人観光客の団体がバスで乗り付けるというイメージではないでしょう。(今から参入しても遅いですし、この街ではガイドの引率も大変です・・・外国人観光客=中国人団体と新聞記事の字面をそのまま真に受けてはいけません)
 先日も韓国からの観光客と思われるお嬢さんに「HEPファイブ」の場所を聞かれ、口頭で説明できなかったので、結局近くまで案内することになりました。韓国、台湾、香港に続き中国人も個人客が増えていきます。

 マップだけでなく外国語でのサイン表示を充実する事も必要です。迷路のような地下街で迷子になるのもまた街歩きの楽しみではあるのですが。
                                                      (2010年11月12日)
図ー地下街の利用度と好感度(2005年 なにわ考現学より)


■これから起きる小さな変化〜後退戦をどう戦うか

 スーパーの自社売場縮小は今後も進む〜大型商業施設の目に見えないダウンサイジング

 日本経済新聞の地方経済面に、関西の大手スーパーでの「衣料・住居関連品」の縮小とテナント化の記事が掲載されています。衣料品や住宅関連商品は専門店の力が強く、競争を避けて得意の食料品に経営資源を集中するのだそうです。都心の百貨店でも専門店の導入が盛んです。効率の悪い店舗を専門店に変える動きもでてきています。名古屋の名鉄百貨店はヤング館(12,000u)を閉鎖し「ヤマダ電機」を誘致します。
 
 梅田大丸も「東急ハンズ」「ポケモンセンター」などを導入したり専門店テナントを増やしていくそうです。売場面積は増床するのですが、百貨店本体のコアの事業は縮小・・・・効率の良い分野への選択と集中が進みます。これは大丸に限ったことではありません。売場面積を増やして、一杯物を詰め込んで競争力を確保しようという考え方は、もう国内では終わっています。(かつては「包み込み戦略」がもてはやされていましたが・・・・・)

 選択肢としては「ハッキリと撤収する」(赤字が続く神戸阪急についてH2Oの会長が初めて撤退の可能性を明言しました)、「競争力のあるテナントを導入する」あるいは「モノではなくコトの提供」と集客力を重視した仕掛けに空間を活用するという3つのパターンが想定されます。

 形を変えるダウンサイジング「マルヤガーデンズ」(鹿児島)

 あきらかに競争力が無くなった店舗は撤収されます。百貨店業態は今まで撤収に慎重でしたが、もう背に腹は替えられなくなっています。

 専門店の導入などの「選択と集中」策は形を変えたダウンサイジングです。大丸は慎重に自社のMDとのすりあわせを行っていますが、首都圏の郊外の元百貨店のなかには専門店テナントが頻繁に入れ替わり、100均、カラオケ、漫画喫茶などが入った雑居ビルになったモノもあります。うまくやらないと「不動産事業」の目先の収入に追われて商業施設として終わってしまうことも可能性としてあります。(ゆるやかな自殺ですね)

 鹿児島三越撤収後に元のオーナーが始めた「マルヤガーデンズ」は商業の規模としては縮小されていますが、個性的なテナント構成で来店客数は1日1万人を達成できていると言います。売上規模は退潮傾向にあった末期の鹿児島三越よりも縮小していると思いますが、赤字にならずに続けていければ成功でしょう。

 大きすぎて制御不能?

 国内の人口が縮小していく中で、生き残りのために好立地の百貨店の売場拡大が続きます。一方で「効率が悪い」と判断された店舗の撤収が今後も続くでしょう。

 都心の集中したエリアでの売場面積が拡大する中で、そこに何を入れるか、何を展開するかが課題となります。いずれにせよ面積あたりの売上効率は下がります。モノではない「コト」で魅力作りをするのか、勢いのある「専門店」とうまく協業して新しい形を作るのか・・・・

 その時に「売場面積」の大きさはかならずしも競争力にならないと考えます。以前から大阪市内の商業施設の動向をハフモデルで分析して予測することに懐疑的なのはそのことが気になるからです。
 小さくて軽い百貨店ほど、すみずみまでポリシーを徹底させた魅力的な店を作れる・・・とは思いませんか?
                                                                      (2010年11月11日)
 
■大阪視察のおすすめスポット

 2011年を前にした大阪で今見ておくスポットは?

 久しぶりに東京から大阪に来られる方にお奨めを聞かれて少し考えてみました。来年になれば大阪駅北ビルや大丸などが開業して街が様変わりするのですが、今のタイミングでというと・・・・。新しく開業した大型施設では上本町の「YUFURA」でしょうか。近鉄のターミナルの「上本町」も「阿倍野」も足元商圏に上町台地という」昔からの住宅街があるので、意外に(と言っては失礼ですが)上質の生活感があります。(現代的なものはないですが)

 後は心斎橋の「ユニクロ」の新店とか「GU」の店「H&M」などが最近出来た店ですが、これらは東京から来た人がわざわざ見て新鮮なものではありません。「心斎橋筋商店街」の客層の変貌には「興味深い」ものがあるでしょうが。
 問いかけられたときに、とっさには出てきませんでしたが「そごう」を改修した「大丸北館」は新しい百貨店の形です。来年増床オープンする梅田店のイメージの一部を見ることが出来るでしょう。

 地域に出会うのなら

 難波の南の「木津卸売り市場」・・・以前は従業員の立ちション風景が良く見られましたがトイレも整備され、毎月18日には一般客も呼び込む動きがありました。この10月には温浴施設もオープンしました。なんば千日前の飲食街に近い、そしてターミナルに近い、民営の卸売市場としてユニークな存在です。

 特に大型施設はないのですが堀江界隈は街の雰囲気が保たれています。湊町のあたりは水際が整備されて良くなっています。といっても視察で見るのは特にどこ・・というポイントはないのですが。かつてのアメリカ村のように急に注目されて雑多な物が集まりすぎて街の魅力がなくなる・・・という事はないようです。

 東京での代官山とか自由が丘といったポジションの繁華街は大阪市内では中々ありません。阪神間の夙川とか帝塚山とか・・・新町から靫公園、京町堀を見てそういった感じがすると言って下さった方がおられましたが、それは過大評価だと思います。

 ただ、街を象徴する大型店はなく、強力なデベロッパーが無いのにも関わらず街の雰囲気が守られているのは奇跡に近いことなのだと思います。逆にそこでのビジネスは一発当てて大きく飛躍するドライブ感はないようです。

  「ブリーゼブリーゼ」も梅田の繁華街の都心店と考えるから売上げが物足りないのであって、オフィス街立地で客層を絞って雰囲気を保っていると考えれば、いつか固定客も着いてくるのではないでしょうか?地域に出会う店と言うことで・・・。

 来年の春、ここも見ておいて欲しいスポット

 梅田ばかりが注目されますが、天王寺・阿倍野地区の東急不動産による再開発「あべのキューズタウン」が春に開業します。東急ハンズ、イトーヨカドーを核にして専門店が集積します。69,000uで400億円の売上を見込んでいます。阿倍野近鉄は2015年に増床し1,500億円を目指します。

 近鉄は安売り路線を取るとも言われていますが、阿倍野は足元の旧住民が多いので生活感のある品揃えは強みでもあります。単に価格が安いとか高いとか言う議論ではなく、どのような客層のどのようなニーズに応えようとしているのかという分析が必要です。

                                                             (2010年11月10日)
■公の場での写真撮影と著作権〜神戸ルミナリエはアート作品

 建築は「著作物」?〜規制される写真掲載

 冬の名物であるイルミネーションですが、神戸ルミナリエはその作り込みの素晴らしさでアート作品としての著作権が主張されても納得できる気持ちがあります。新聞雑誌に掲載する写真は指定の物を使うか、撮影許可が必要なんだと雑誌編集者に伺ったときも強い違和感はありませんでした。

 ただ、沢山あるその他のイルミネーションイベントの電飾すべてに「著作権」が主張されたら困るなあとも思います。「知的な創造」と「日常の仕事としての装飾」を誰が線引きするのでしょうか?というのはイルミネーションではないですが建築の外観を写真撮影するのに許可を求められることが増えてきていると聞いたからです。
 確かに、商業施設の店内写真についてはお客様の顔も写るのでマナーとして無許可の撮影は遠慮すべきだと思うのですが、公共の風景として姿をさらしている外観写真を規制するのは行きすぎでしょう。

 最近は食べ物のブログで料理店の料理を写真撮影して掲載しているものも多いのですが、料理の盛りつけ、飾り付けもまた知的な創造物ですから「著作権」が成立すると考えられます。お店は宣伝になると考えて黙認しているのでしょうが・・・・撮影する前に「さっさと食えよ」と突っ込みたくなります。

  「著作権」についてはコモンセンスが形成されていない

 弁護士さんでも「著作権」については専門外の方はあまり知らない領域です。例えば「ピーターラビット」は法律上は既に「著作権」の保護の期間が過ぎています。著作権を主張する団体はありますが、結構フリーに使われているケースもあるようです。

 著作権とよく似た法律として「商標権」「知的財産権」「肖像権」があります。調査資料のデータは「創造的な制作物」とは認められていないので本来は著作権の保護対象ではありません。とはいえ、我々のような企業が自主調査で得た調査結果が無断で使い回されるとビジネス上、困ったことにもなります。このケースでは「知的財産権」が侵害されたとして提訴することになります。あくまで「著作物」ではありません。

 「商標権」は最近中国でのトラブルが増えていますが、「商標登録」をしていないと権利を主張できません。

 街角のスナップ写真やへんてこな建築物の写真撮影、とんでもない公共建築物の撮影や雑誌掲載などについてすべてに著作権の網をかけてしまうのはデジタル時代の情報流通の多様化に逆行します。

 プライバシーへの配慮などのマナーを徹底するとか、食事を楽しみに来ている人の横で、食べないで写真撮影する人を店から放り出すとか、公共的なルール=「常識」を形成して、法の縛りはゆるくした方が住みやすくなります。

                                                                   (2010年11月09日)
   
■産業分類の隙間に潜む成長市場〜中食市場

 「中食」産業の市場規模は?

 外食産業と中食の市場規模については(財)食の安全・安心財団 附属機関 外食産業総合調査研究センターの調査が時系列的にも継続して整備されているので一般的には参考にされています。

 「料理品小売業」の事業所などで提供されている「弁当給食」を除いた5兆5,682億円が2009年の「中食市場」と思われています。実際には統計の産業分類の関係で、百貨店、スーパーの直営売場の数値が含まれていないとかコンビニエンスストアの売上が一部しか含まれていないとかの事情があり、実態としては別の統計と合わせて8兆円弱が「中食」の市場規模だと想定されます。11月4日の図を見ていただいてもわかるように、「中食」の伸びは著しいのですが実際はあの図以上に伸びてきているのです。

 (その中でもコンビニエンスストアの売上が1兆8千億円弱となるので下図の外食業態の売上と比べてもその存在感の強さが伺えます)

 オフィス街での弁当売りなどはこの種の統計にはあらわれにくいので、実感での変化に対して統計数字はまだまだ低く感じるかも知れません。
 
 業界でホームミールリプレースメントという言葉が流行ったのは10年くらい前でしょうか?最近はあまり聞きませんが、その考え方は定着してきたようです。惣菜の味の違いはハッキリと出ます。強いデパ地下、強い食品スーパーは惣菜に力を入れている企業であるようです。

 製造業と小売業の間

 産業分類では「製造業」と「小売業」が分かれていて「製造販売業」という概念がないようです。食品の分野では「中食市場」が伸びているように、衣料品では「ユニクロ」のように自社で商品を企画発注し販売する企業が伸びています。今までの産業分類では頭打ちでも、違ったビジネスで伸びているという業界はまだまだ他にもありそうです。

                                                                 (2010年11月08日) 
図ー外食産業売上高

(財)食の安全・安心財団 附属機関 外食産業総合調査研究センター
図ー惣菜類売上(直営)


日本食糧新聞社
■ラグジュアリー消費の復権への期待

 六本木ヒルズ、丸ビルは数%の伸び

 全般的にファッション消費は落ち込んだままではあるのですが、東京都心の「六本木ヒルズ」では4〜9月の売上が8%増と快調です。近隣の富裕層の他六本木地区のビジネスマンOLの来館者が増えているそうで、最近よくある中国人観光客頼みでないところが興味深いポイントです。繊研新聞の報道では客単価が落ちているものの客数が大幅に増えて「富裕層を中心に消費が回復している実感を受けている」と言うことです。
 美術館など文化イベントと組み合わせて集客を図っているようです。

 丸の内の商業施設は堅調で「高感度な商品を求める層が堅実に消費している」そうです。

 大阪梅田北ヤードの商業施設が目指すポイント

 一方、お台場のヴィーナスフォートは、当初はラスベガスのフォーラムショップスをイメージした環境設計で、天井の変化が売り物でした。本来今年の6月に閉鎖された跡に本格的な開発が行われるはずでしたが、不況で暫定利用が続き、アウトレット中心で中国人観光客をが中心の商業施設になっています。

 10月21日に羽田空港に開業したEDOマーケットプレースはまだ未見ですが、「パリの空港にミニチュアの凱旋門を置いたようだ」という評価も聞こえてきます。土産物屋さんの環境演出として江戸の町並みを意識したのでしょうが・・・・一時流行ったフードテーマパークもどきのものなんでしょうか。

 JR大阪駅北ビルは着々と立ち上がっていますが、大阪梅田北ヤードの姿はまだ見えてきません。オフィス、ショールーム等が中心になるで、商業施設としては六本木ヒルズや丸の内と言ったオフィス立地のハイグレードな商業ゾーンなのでしょうか・・・?。それ以外にはありえないはずのですが、残念ながらベースになる「富裕層」は関西には少ないのです。ここは京都、神戸も含めた富裕層、ないしは文化的な価値を創造する市民層がが惹きつけられる場所でなければ「不動産価値」は急降下します。
 以前にも指摘しましたが神戸、京都の人達は基本的に地元から大阪には動きません。その為には知恵を絞る必要があります。

 私は梅田北ヤード計画については何も関わりを持っていませんが、心配はしています。目先の利益を考えると商業施設が「中国人観光客の誘致」や「フドーテーマパークによる賑わい創出」・・・・といった安易な利益確保に走りそうな予感がします。

 (開業後)さすがにデベロッパーがしっかりしているのでオフィス賃料のダンピングや、商業ゾーンの液状化崩壊はおきていません。ショップ&レストランズも開業以来好調を維持しています。


 先ほどテレビで放映された米農家の方は、収穫を急ぎたいが、地面が緩んでいる中でコンバインを入れると土をかき混ぜて雑草の種が地表に出て来年、雑草が出て大変なことになる・・・と急ぎたい収穫を我慢しておられました。

 一旦落ちた不動産価値は元に戻りません。サッカースタジアムとかカジノとか一見景気が良くても将来への見識の無い話ばかりが飛び交うので、とても心配です。

 富裕層や創造的な文化人、芸術家は少ないとはいえ京阪神には存在するのですからその層を集める、きちんとした施設を作ればアジアからの持続的な集客が可能だと考えています。確かに企業として事業性は大事ですが、長い目で見ることが出来ないのなら撤収すれば良いのだと思います。
 
                                                           ( 2010年11月05日)
 
■外食産業の変遷とその時代背景

 中食が売上を伸ばす中で外食市場は縮小傾向

 宿泊施設(ホテル)の売上がピークだったのはバブル崩壊直前の1991年でした。以降ホテルや旅館での食事の市場は縮小していますが、食堂、レストランなどの売上は伸び続けていました。居酒屋チェーンや焼肉、回転寿司などの利用が手の届くレジャーとして定着したのでしょう。ただし、その伸びも1997年をピークに横ばい状況です。
 この時期半額バーガーや発泡酒が登場して話題になっています。外食消費のデフレ化が始まってたのが「売上金額」に影響を与えているのでしょうね。均一価格での食べ放題とか、販促の為の割引クーポンの発行などで客単価は大きく減少してきています。

 替わって売上を伸ばしているのが持ち帰り惣菜、弁当と言った「中食産業」です。外食を控えてお弁当を買ってきて食べるとか、景気の悪い会社の忘年会は事務所で買い込んできた乾き物+αですますという傾向が強くなってきています。

 バー、キャバレーナイトクラブも売上を縮小させています。企業の接待などもやはりバブルの時期がピークだったのでしょうね。現在はバブル前の水準に戻っています。

 喫茶店のピークは1982年頃

 統計数字では喫茶店のピークは1982年頃です。その前後に「カフェバー」ブームがありました。「ノーパン喫茶」もその前後なのですが、これはあまり関係がないでしょうね。1980年にドトールコーヒーが第一号店を出店しています。いわゆる「街の喫茶店」は同じ時期に衰退していきます。テイクアウトで職場で珈琲を楽しむようにスタイルが替わってきたのも大きいでしょう。小さな店はともかく、人を雇って運営すると人件費が高くついて採算があわないというのが大きな理由です。

 グルメ情報雑誌や食べ歩き情報が沢山提供されているのと比べると市場の縮小は意外な現実です。かつて勢いの良かったファミリーレストランが衰退してきたように、「産業化」に走った企業はいやおうなく「価格競争」に巻き込まれます。徹底的なコストダウンとサービスのシステム化に成功した企業だけが残ります。
 一方、話題になっている「美味しい店」は生業的な店、夫婦で営業している店とかが多いように感じます。味を守って続けて提供してもらうためにはある程度、人を育てて事業としての形をつけていかないと難しいのですが・・・・有名店であっても中々厳しいようです。

                                                           (2010年11月04日)

図ー外食産業の売上げ推移

(財)食の安全・安心財団 附属機関 外食産業総合調査研究センター

■中古衣料はファッション産業を活性化させる?

ブックオフスーパーバザー川崎港町 10月28日開店

 ブックオフが川崎市の国道409号線沿いに大型リユース複合業態「ブックオフスーパーバザー」をオープンしました。(1階はヤマダ電機)売場面積が4,060uと超大型です。ブックオフを核にしながら中古衣料販売を」成長エンジンとして1,000u以上の洋服、服飾雑貨売場を持っています。

 国内のアパレル市場は約10兆円と言われています。中古衣料品はその中の僅か4,000億円を占めているにすぎません。祖利益率が7割と高い中古衣料品です。川崎の店舗は開店前に400人の行列が出来て、初日の売上は1,000万円を超えたそうです。

 その後、全国展開し,2014年現在ブックオフの売上げの14.8%を占めています。近年新たに高額所得者向けの訪問買取業態「ハギトール」「ハグオール」をスタートし,貴金属などをご自宅に訪問し買取した上でヤフオクで販売するビジネスモデルを構築しています・・・・・。

 価値のある商品を持っている層と現状の利用層にはギャップがある

 ファストファッションの安い服は1シーズンで生地自体が駄目になります。リユースに適した商品はやはりブランド品、スポーツ関連の機能性の高い商品になります。子供服でもバザーではしっかりとした縫製の「ファミリア」の商品が人気です。

 リユース店の利用者はビンテージモノなどの一部の商品を除き価格に魅力を感じる人がまだまだ多いようです。おしゃれ感やファッション提案は特に大型店になるほど難しく、重さ単位の量り売りや毎週水曜日の定期的な値下げなどの販売手法に頼っている店が多いのです。
 「リユースする価値が高い洋服」を持っているのは洋服に愛着を持って購入する層で、リユース店利用には抵抗のある人が多いようです。

 ただ、ファッション商品の販売にはワードローブの整理が欠かせないので、新品販売業者との提携(下取り、新古品)で仕入れ状況は改善されるでしょう。中古品販売業者の中にはオリジナルのリメークで付加価値を上げようとする動きもあります。

 ファッション好きなはずの専門学校生の選ぶ好きなブランドで、いつまでもユニクロが上位に上げられるのは好ましい状況ではありません。お金の無い若い子がファッションを楽しめるようなリユースショップが育つことで、ファッション産業は活性化します。将来の顧客作りになりますし、現在のユーザーのタンスを整理する事で購買が促進されます。・・・・(実は今の若い子は平気で服を捨てるのですが、捨てられないのはおじさん、おばさん世代かも・・・)

                                            (2010年11月2日)
■カジノ論争と高級食品スーパーの再ローカル化
〜大きな枠組みで「小さな課題」を考えることと、小さな枠組みで「大きな課題」を考えること

 カジノの議論は「テラ銭」の議論ではない

 先日、大阪府知事の橋下氏がカジノ誘致の意向について再度発言した新聞報道がありました。「小学生から勝負師を育てる」とか「猥雑な部分は大阪が引き受ける」とか刺激的な発言ばかりが話題になりましたが。賛否についての本質的な部分での議論ができていません。

 不況でラスベガスが大変だったのは「ばくち」をする人が減ったためではなく、企業や団体のコンベンションやインセンティブツアーが激減し、ホテルや高級ショッピングモールの稼働率が落ちてしまったからです。ラスベガスはカジノが中心ではありますが、ゴルフ場やコンベンション施設、高級ショッピングモール、エンタテイメントショーなどが一体となって会議や展示会などに人を集めることで成り立っています。(シンガポールが「統合型リゾート」と名付けた街作りです)

 単にギャンブルの場であればアメリカ国内にもいくつもありますが、話題になることもないですし、地方自治体が恩恵を受けることもありません。

 国内で公認されているギャンブル関連施設(場外馬券売場、ボートピア、パチンコ屋)を誘致して活性化した街など見たこともありません。これらの施設は「街の衰退」の象徴とさえ言えます。

 もし関西に「カジノ」を誘致するとしたら、アジアを中心にどのような客層を誘致して、どんなコンテンツでお金を落としてもらるかを考えなければなりません。国際会議場、展示場、ホテル、リゾート施設観光スポットなど・・・インフラは既存のモノだけでは充分ではありませんし、「大阪」だけでは無理でしょう・・・・。京阪神の連携が必要です。来場者を楽しませるエンタテイメントは?吉本・・・グローバルに集客するなら言葉に依存したお笑いではなく音楽が中心になります。質の高い音楽とダンスのエンターテイメントを育なければ・・・・。競争力のあるエンタテイメントを育て為には「文化」「固有の文化」を提供する必要があります。・・・アジアの観光客が日本観光に求めるモノは買い物と同時に固有の文化であるという調査結果もあります。

 マカオがラスベガスのノウハウを導入して活気があるようです。中国人は「ばくち好き」ですからさぞや盛況でしょうね・・・実際に見に行っていないのでわかりませんが、多分、建物は移設できても基本的なホスピタリティについてスキルが足りないのでただ「でかいばくち場」になっていると予測しています。ディズニーでさえ中国ではかならずしもオペレーション成功しているわけではありません。

 博打のテラ銭を集めたければ、巨大なパチンコセンターを作ればいいのです。カジノの議論は「勝負師を育てる」とか「テラ銭収入」の議論ではなく、インフラ投資、府県の連携、ホスピタリティーエンタテイメント産業の育成、固有の文化の振興を包括的に検討する大きな枠組みが必要です。(ギャンブル好きと言われる群馬県民は勝負師揃いなのでしょうかね)

 国内でのカジノは関西では無く、沖縄か北海道におくべきでしょう。・・・・・還元率の低い公営ギャンブルが壊滅することも予定しておいて下さいね。


 大手チェーンに買収された高級食品スーパーが独立し、再ローカル化

 北米の流通時用を紹介されているHPで、アメリカロサンゼルスの「ブリストルファーム」が低価格チェーンの「スーパーバリュー」の傘下から独立し、ローカルチェンとして再出発するというニュースが発信されています。

 もともとはローカルスーパーであったものですが、住宅バブルの時代に大手チェーンが安売り店対策に同社買収したモノの、バブルがはじけて新店が赤字であったようです。大手チェーン「アルバートソンズ」も安売りチェーンの「スーパーバリュー」に買収され、高級スーパーである「ブリストルファーム」の存続が危ぶまれていたと言います。

 新しい経営陣は「ロスアンゼルスの地元で、ローカルスーパーとして徹底したコミットメントをお客様に実現できることを楽しみにしています」と語っているとのこと。

 食材の安心安全や素材の確かさなど環境への配慮やより美味しいモノを地域の人に提供しようという価値観は全国チェーンで大きな組織を維持しようとする企業にはなじまないのだと思います。

 高級食品スーパーは高額な商品、贅沢品を売る店ではなく、持続可能性や安心な食品という価値を提供する店です。このような大きな課題については「ローカル」であったり「限られた顧客を対象」にする小さなフレームでの対応が有効であるように思います。コミットメント出来る範囲の顔の見える顧客を対象にする事が強いアイデンティティを形成していきます。

 20年前に当時羽振りが良かった関東出身のGMSチェーンが関西で「イカリスーパー」をスタディし、「うちにある商品とほとんど同じ、負けていない」と語った事が思い出されます。

                                                (2010年11月1日)
 
 10月
■単身シニアのストックは未来の日本の資産になるか?

 30〜40代の単身者は所得による住宅格差がある

 30〜40代の現役世代では年収によって持ち家率の差がはっきりとあらわれています。特にこの年代で戸建てではなく、マンションでの持ち家になるのは世代的なものとおそらく都市部での傾向だと思います。(発表されているのは全国データ)

 50代以降で戸建てを中心に全体の持ち家率と年収300万未満の層の差があまりなくなるのは、地価が安い地方部の傾向が影響しているのではないかと推測します。都市部で供給が多い共同住宅では年収の差が残っているのがその理由です。

 リタイア後の60歳代以降では世帯年収による差は戸建てに関してはそう大きくありません。70歳代前半では300万円未満5割が持ち家一戸建てに居住しています。70歳代後半ではそれは6割になります。

 高度成長期までは一戸建ての家を構えるのが人生のゴールであったのですが、もしそれが最終的に市場価値のないゴミだよといわれるのは切ないことですね。おそらく低所得者の住宅は手入れをされていないはずなので市場価値はないでしょうし、宅地の価値も地域によっては大きく下落しています。

 将来深刻化する市場価値のない空き家の増加

 集合住宅であれば、用途転用、用途の複合(介護施設や店舗)、減築などの再生の研究がなされています。現在も多く存在し、将来も増加が予想される個人住宅の空き家は、地域の環境を悪化させる深刻な要因になります。

 地方では集落の崩壊という形であらわれていますが都市部ではどうなのでしょうか。宅地として市場価値があれば問題はありません。(それでも大阪では市場価値が残っている千里ニュータウンでも取引価格はピークの三分の一にまで下落しています。ましてや他の住宅地は・・・)一部ではデイサービスセンターになど活用されていますが、都市の住宅地での空き家活用は用途規制も多くまだまだ事例は少ないようです。

 共同住宅は住民の賛同を得るのに課題がありましたが区分所有法の改正である程度の強制力が働きます。個人資産である住宅が放置されることになると手の打ちようがありません。まちづくりのルールも人口縮小社会に対応したモノにする必要があります。(強制力を持って区画整理して空き家宅地を集約し農地に転用とか)

 一生の目標として入手した家で家族の思い出も沢山残っているのでしょうが、早いうちに換金して残った人生を愉快に楽しく過ごすことに費せる仕組みが必要です。

                                                       (2010年10月29日)

図ー単独世帯の世帯年収別持ち家率(全国)

(2008年 住宅・土地統計調査)
■お一人様と貧乏たれ相手のマーケティング

 標準家族から単独世帯等の多様な家族のあり方へ

 家庭というと親と子供4人ぐらいの標準家族がマーケティングの基本でした。平均世帯人数が2.56人にまで減少し、
 40〜50代になっても5人に1人は結婚しない(または結婚を続けていない)状態の中で、標準世帯を想定した商品開発やサービスは時代遅れになっているのでしょうね。

 家電から個電へというフレーズが象徴するように、世帯に一巡した耐久消費財を個人使用を前提にすることで飽和していた市場を拡大してきました。その路線の延長で個人向けの商品をどんどん提供していくことがこれからも正解なのでしょうか?人口はこれからの減少していくが世帯数は増えていく(つまり単独世帯が増えるということですね)だから市場拡大の余地はあるという議論も聞きます。はたしてそうでしょうか?

 単独世帯の世帯年収は同じ年代の中でも低い

 この国では年収300万円未満の貧乏タレ層が全体で3割強。単独世帯では5割を超えています。・・・・単独世帯は基本的に年収は低いのです。これは世帯年収を比較しているので世帯の中で働き手が多いほど年収が上がるので当たり前なのですが、世帯を維持するのに必要な固定的な経費である住居費、光熱費、食費などは2人で暮らしている人の半分で住むかと言えばそうではありません。

 わかりやすい事例で言えば親の家に同居していれば年収が200万円そこそこでも結構豊かに暮らせますが、1人暮らしをしていれば、食べていくのにやっとで、大きな病気をすればそこでアウトです。

 単独世帯を対象にマーケティングをすると言うことは基本的に貧乏たれを相手にしたマーケティングを組み立てると言うことです。(高齢者など住宅ストックや貯蓄があるのであるのですが、定期的なインカムが無い限りそのストックが消費に向かうことはありません。また働きざかりの世代で年収があっても教育費、住宅費の負担が高くて可処分所得は低いというケースも少なくはありません。)

 現金収入は少なくてもそれなりに生活を豊かにしたいという層は一定存在し増えてきています。レンタル、リースを活用したモノを持たないで使う仕組みや、ファッションを中心に目立ってきているリユースやリペア対応はこのような大きな流れに沿ったものでしょう。かつては血のつながった家族で共有し使い回されてきたものが、血縁関係のないコミュニティで共有される・・・という概念でまとめられるビジネスです。

  お一人様のあり方も貧乏タレのあり方も世代によって違うのですが、家族に変わる何らかの社会的な仕組みがないと個々の孤立化窮乏化がすすみ「市場」としての購買力もなくなってしまいます。
                                   (2010年10月28日)
                     

図ー1 各年代別の単独世帯比率

図ー2 年代別世帯年収 (上段は全体 下段は各年代の単独世帯の%)


(2008年 住宅・土地統計調査)
■間近に迫った梅田の変化〜大丸梅田店の「新百貨店モデル」に注目

 梅田百貨店戦争は「百貨店」業態の生き残りの試金石である

 JR大阪駅のJR大阪三越伊勢丹の開業日が2011年5月と発表されました。前後して増床オープンする大丸梅田店はまだ2011年春としか時期はわかりませんが、店舗の概要が先週発表されています。(阪急梅田本店の完成は2012年になります)

 JR三越伊勢丹は「百貨店の王道を行く」といわれています。伊勢丹らしいファッション性や三越らしい富裕層対応が展開されるのは利用者としては楽しみです。事業を継続するための収益をどこで確保するかしっかりと計画して欲しいので、当サイトでもきびしい警告を発信してきましたが、ここまでくればもう頑張って下さいとしか言いようがありません。

 大丸梅田店のテーマは「新百貨店モデル」です。従来の百貨店発想にとらわれない(という言い方自体が百貨店人らしいのですが)品揃え、販売手法を導入し効率的な店舗運営を実現しようというものです。(大丸はここ10年ぐらい売上では目立った伸びは無かったのですが、収益率はアップしていました)

 百貨店が相手にしてこなかった若い女性向けの専門店のテナント導入や紳士服量販店とのコラボなどから、さらに今回は、東急ハンズの導入、ユニクロ、ポケモンセンター、トミカショップ、ABCクッキングスタジオの導入など意欲的なテナント開拓をしています。・・・いずれも「賃料」は高くないので、駅ビルに家賃が払えるのかしらん・・・と余計な心配をしてしまいます。集客機能と割り切っているのでしょう。回遊同線、高層店舗という立地から全部を従来の百貨店MDで埋めるのには無理があるのは確かです。

 集客、収益については他業態のノウハウを導入していながらそれでも「百貨店」という名前にこだわり、「百貨店機能」を残していこうというのが中心の狙いなのでしょう。鉄道系の百貨店の一部には「百貨店」という看板を外してもいいという動きもあります。百貨店業界全体がダウンサイジングの局面にあります、百貨店の数、床面積、従業員が市場に対して適正な規模に縮小する中での対応ですが、百貨店の収益力自体はまだまだ優位性を残しています。

 百貨店の看板を外して掛け替えるか、百貨店の看板を残しながら収益源を確保して別業態のウェートを高めていくか、残存者利益を求めて勝ち残るか、はたまた新しい百貨店に進化していくか・・・・・。梅田を中心とした大阪はその実験の場であるのでしょう。

 百貨店でなければ売れない商品

 本日の繊研新聞に興味深い記事が掲載されています。紳士服の中でスーツは郊外型専門店のシェアが高いが、ジャケットは百貨店のシェアが高いと言うことです。

 スーツはビジネスマンのユニフォームなので色柄デザインのバリエーションはあまり必要でなく効率的に生産販売できるので郊外の専門店が強いのですが、ジャケットはカジュアルとしても着用されるので色、柄、シルエットにトレンドが反映されやすく豊富なバリエーションが求められ、、接客技術も必要ですし時間もかかるので百貨店向きだと言うことです。
 非効率な商品であるからこそ百貨店が強いのです。

 百貨店のコストダウン策として人員の削減が話題になります。それによって、現場の販売員を減らすことになれば本末転倒となります(といっても社員はもともと販売していないのかな)何をカットして何を残すか?各百貨店のマネジメント能力が問われます。(一律10%カットとかの無能な経営者のまねはしないように)

 事業を行っていると「縮小」しなければいけない局面があると同時に「拡大」しなければいけない局面がかならずあります。人を減らすのは即効性がある経費カット策です。多くの場合仕事のやり方や、仕組みを変えずに、単に人を切ります。それでは残った人が疲弊していきますし、今度拡大局面の時に「非効率」な仕事の仕方を残したまま頭数が増えるので「利益」は残りません。

                                                    (2010年10月27日)
■大阪から見ていると見えてこない関西の動き〜新幹線か航空機か

 鉄道か航空機かだけではない選択肢

 大阪に住んでいると、長距離の移動手段は航空機か新幹線かの二者択一であると考えがちです。時に長距離高速バスを利用するくらいでしょうか。

 大阪発であっても目的地が愛知県あたりでしたら乗用車を利用する人も多いようです。空港のない京都でしたら東京行きには航空機という選択肢はほとんどありません。愛知への移動は乗用車という人がかなり多くなってきます。
 兵庫県からでしたら、東京行きは航空機と新幹線からの選択になります。神戸空港と伊丹が選べるので飛行機の利用が多いようです。愛知や福岡への移動では乗用車が結構ウェートを占めています。

 乗用車での都市間の移動と言う感覚が薄いのでしょうね。高速道路の割引の影響で、少し行動は変化しているかも知れませんが。兵庫県から福岡県への移動に「乗用車」を使う人が結構多いのですね。

 (話は変わりますが)

 戦後にあった大阪と神戸の合体構想

 関西を論じるときに、えてして大阪人の視野が狭く、たこつぼ化してしまうのは(私だけかも知れませんが)まじめに大阪や関西について語るのは地元の人か地元出身者だけに限られてるという側面があるかもしれません。東京の人、マスコミは全く無関心か極端なステレオタイプを面白かしく取り上げる(吉本芸人かタイガ^−スファンか)時だけです。

 ごくまれに外部の目から見た指摘を受けるとなるほどと思うことも多いのです。
 大阪の鉄道の駅間の乗り継ぎの不便さが人の動きを阻害している事とか、相互乗り入れしていないことの不自然さなど、最近少しは解消されていますが地元民はもともとそういうものだと受け入れている所があります。
 CRIの11月号に大和総研チーフエコノミストの原田氏の「エコノミストから見た街 東京問題なのか大阪問題なのか」はその意味でとても興味深いものでした。(小さな誤解も含めて)

 戦後、GHQには大阪は狭すぎるので神戸と合体させようという動きがあったそうです・・・・・「大阪は狭すぎて、高級住宅地が郊外にでてしまうので税収が確保できないという弊害があり、商業地、工業地、住宅が一体となっていなければ」いけないという指摘です。なるほど肯ける面が大きいです。敗戦時に外圧で一体化されていれば,関西はどのようになっていたでしょう。

 ただし、大阪では外車が売れているという統計があるから大阪が豊かという推論は少し疑問です。大阪で外車に乗っているのは医者かヤクザです。単に関西にヤクザが多いという事なのかもしれません。地下経済のヤクザの羽振りが良くても社会的な豊かさは蓄積されません。

                                      (2010年10月26日)
図ー1 大阪から各地への移動交通手段(%)

図ー2 京都から各地への移動交通手段(%)

図ー3 兵庫から各地への移動交通手段(%)


(国土交通省 全国幹線旅客流動調査2005年)


■鉄道がつながる事の効果〜九州新幹線、阪神なんば線の事例

 九州新幹線〜直接つながることのインパクト

 来年3月12日全面開通すれば新大阪と熊本を2時間59分、新大阪と鹿児島を3時間45分でつなぐ山陽・九州新幹線ですが、2004年に熊本県八代市と鹿児島中央駅が部分開業しています。
 新幹線と特急を乗り継いで従来3時間47分かかった時間が2時間19分に圧縮されました。その結果、鹿児島から福岡への移動手段が航空機、乗用車から鉄道に大きくシフトしています。(図ー1)
 ただし、残念ながら総トリップ回数は増えていませんから、需要を喚起するまでには至っていないということでしょう。来年の全線開業で、博多〜鹿児島間は1時間20分、博多〜熊本間は35分になります。これから本当の開業効果があらわれてきます。

 熊本は福岡の通勤・通学圏になりますし、鹿児島からの通勤通学でさえ不可能ではなくなります。観光資源に恵まれた南九州では観光客の獲得に大きな期待がかけられています。国内では京阪神という大きな市場が近くなりますし、九州に多い韓国人観光客の拡大や、現在の観光ルートからは外れている中国人観光客の獲得が見込めます。

 その他ビジネススクールへの通学、予備校、通塾、通院(高度医療)、大学の単位互換、コンサートなど定期的な通勤通学に限らない需要が想定されています。

 阪神なんば線開通効果〜将来に向けて

 2009年3月の開通によって、奈良や神戸の観光客が増加し、なんば来街者が増えたことは15日に紹介した住友信託銀行の調査レポートでもあきらかです。今後効いてくると思われるのは、同レポートでも指摘されていた「通学可能エリアの拡大」です。
 首都圏に比べて府県間の移動が少ないというのは首都圏は東京に集中しているのに比べて、京阪神は都市機能がそれぞれ完結しているからです。
 京阪神のつながりを強めるのに有効なのは通学の広域化による遊び場所、友人知人の拡大です。若い子は時間があってもお金はないのですが、通学定期がある範囲は活動圏になります。交友関係も拡がります。

 若者が生み出す文化活動を活発化させるためにも府県をまたがった交流を促進する事が大事です。学校や遊ぶ場所その他、阪神なんば線沿線には人を集める「目的地」が沢山あります。

 京阪中之島線は関西財界としても悲願だった中之島西部地区へのアクセスとして期待されていたのですが、まだ大きな全体構想が完成していないので苦戦しています。

 これから施設整備が進み新大阪や関空につながるアクセスが整備された暁には、とても重要な路線として再認識されることでしょう。アクセス整備と地域開発にはどうしてもタイムラグがるので今しばらく頑張ってほしいものです。

 来月25日に発行される雑誌「CRI」に九州新幹線に開業の影響についてまとめています。関心のある方はご参照下さい。関西にとっても大きな意味がある変化がうまれることでしょう。

                                              (2010年10月25日)

図ー1 鹿児島〜福岡間の利用交通機関(2004年九州新幹線熊本県八代市〜鹿児島中央部分開業の影響)

図ー2 熊本〜福岡間の利用交通機関

(国土交通省 全国幹線旅客流動調査 2000年と2005年の比較)
■韓国からの観光客の変化から関西へのアジアからの集客の戦略を考えてみる

 北海道、九州、沖縄の満足度が高い・・・・雄大な自然は大きな資源

 中国の訪日客はゴールデンルート上の関東、関西、中部への訪問件数が多いのですが、利用者の友人知人への推薦率が高いのは北海道、沖縄、九州などのリゾート地です。都市部では利用件数が多いにもかかわらず関西の推薦率が相対的に低いのが気になります。
 心斎橋筋商店街などでの町を挙げての中国人観光客対応の取り組みが盛り上がっているので、その後満足度があがってきているといいのですが。

 韓国人観光客は地域的に近い九州の利用が多く推薦率も高いようです。「温泉」が人気です。若い人達は大阪や東京を好みますがソウル近郊のシニア層はソウルと似ている都市部よりも九州の温泉を好むようです。韓国南部では若者が手軽な高速船やフェリーを使って九州に訪れる事が多いといいます。
 韓国の地方部ではまだまだ団体旅行が多いようです。

 訪日外国人の移動は新幹線が多い・・・九州新幹線は九州にとっても関西にとってもチャンス

 国土交通省のデータでは外国人観光客の国内での移動は首都圏〜近畿圏の間を新幹線で移動することが多いとという実態があきらかになっています。
 九州新幹線が全面開通すれば、阿曽を抱える熊本と大阪が3時間で結ばれます。現在九州は中国人観光客がまだまだ少ないのですが関西と新幹線でつながることで、訪日観光客の選択肢が増える事になります。

 関空へのLCC路線の整備でアジアからの観光客が増加することと思います。勿論、関西の中での回遊も必要ですが、大きなスケールの自然が残っている九州は観光資源として魅力あるものです。

 西日本のハブになると言うことは海外からの観光需要を囲い込むのではなく、海外の需要を開拓して各地に送り出すという視点が必要なのですが・・・・・。

                                   (2010年10月22日)
図ー1訪問件数と訪問者の帰国後の友人知人への推薦率(韓国)

図ー2訪問件数と訪問者の帰国後の友人知人への推薦率(中国)


(JNTO訪日外客実態調査2006-2007)


図ー3韓国人の日本での主要活動

(韓国交通公社 2007年調査)


■会員制の百貨店とテレビで紹介されたドンキホーテの「WR」

 9月23日ラパーク岸和田(長崎屋を中心としたSC)に会員制ホールセールクラブ「WR」開業

 テレビでは会員制の会員制の百貨店として紹介されていましたが、衣料服飾雑貨、インポートブランドを中心とした会員制のホールセールクラブです。建物のうち2層を利用し13,000平米の売場面積です。メーカー希望小売価格の3〜4割引と安い会員価格で販売します。登録料は2,100円。年間20万円以上の買い物が条件です。(大阪北部の人には箕面の繊維卸商団地のSOKKに近い業態だといえばわかりやすいでしょうね)旧長崎屋の1階の食料品売場を残して衣料品・住関連売場を改装したものです。

 3年後には100億円を目指しています。衣料品47%、時計・インポート雑貨26%、住居関連・呉服15%、スポーツ14%の売上構成比を見込んでいます。ちなみにSSOKは7館体制で320億円を売り上げています。

WRは2011年1月4日に閉店しました。思うように会員が集まらなかったようです。

(箕面繊維卸商団地もパチンコ屋が乱立しマンションも増えるなど卸売り団地として転換期に来ています。箕面市は東西に扁平な形で一体感がありません。大阪府知事としては管轄外の大阪市の再編成の前に府下の都市の再編成を実現さえる方が先の課題でしょう。例えば梅棹忠男先生が提唱されていたように千里ニュータウンを千里市として独立させる。箕面市は東は茨木市、西は池田市とまとめて一体化させるなどです・・・・交通の便でも地勢的にも合理的であるのですが、何故それができないか?理由はっきりしています。財の再配分の公平化と集中投資のバランスの考え方です・・・・・箕面市は笹川良一さんのご出身地のため競艇の収入が大きく財政も豊かです。関西広域連合構想に奈良が参加しないのも同じ理由です。集中と配分についてのビジョンを示すのは官僚ではなく政治家の役割です。)

 テレビで「百貨店」と呼ばれるのも無理はないかも知れません。インポートブランドなど本物の郊外百貨店よりファッションに寄せた構成になっていますから。GMSのファッション、住部門について力のあるイオンやイトーヨーカドーは新しい売場開発を行っています。力の劣るGMSとしてはこのような業態開発も一つのあり方かも知れません。

(ドンキホーテのプレスリリース)
http://goods.donki.com/management/pdf/btob/ja/663_pdf1_20100922_wr.pdf へのリンク

 コストコが松井山手出店

 本場アメリカのホールセールクラブ「コストコ」は関西では尼崎で成功をおさめていますが、来年、学研都市の松井山手に出店することが決まりました。こちらは食料品のウェートが高いのですが、利用経験者はトイレットペーパーの価格と質を絶賛されていました。
(コストコホールセールクラブ松井山手出店の記事)
http://www.kyoto-np.co.jp/economy/article/20100925000031 へのリンク

 ダイエー凋落の一因となったホールセールクラブ「kous」の失敗は業態が日本市場にあわなかったのではなくオペレーションがうまくいかなかった所為なのでしょうね。
 中内さんの息子さん達に対する社員さんの応対は腫れ物にさわるようなものでしたから、ご長男が指揮する新事業の運営には誰も口を挟めなかったのでしょうね。

 
     
                                                   (2010年10月21日)
■売り方が変わっていく〜オーダーメイドやリメイクに注目

 デコチョコ人気

 チロルチョコをベースにして包装紙に持ち込んだ画像をもとにしたオリジナルなものを印刷して販売するデコチョコがが人気を呼んでいるようです。WEBサイトでの事業がヒットしたので銀座に店舗を出す勢いです。

http://www.decocho.com/ へのリンク

 プリクラのような感覚ですね。

 オンデマンド印刷が発達したおかげで簡単に少部数の印刷ができるようになった事が大きいようです。
https://www.yrstyle.jp/ へのリンク

 銀座のお店ではお菓子だけでなく雑貨類も取り扱っているようです。子供やペットの写真だけでなく自分だけのブランドをつくることもできると可能性が広がりますね。若い女性の利用が多いようなのですが、ケータイや爪先をデコレーションする感覚になれているので、オーダーメイドもその延長でなじみやすいのかもしれません。

 チロルチョコといったベーシックなアイテムをベースに自分らしさをプラスという延長で、ユニクロやジーユーと言った機能があって安いファッションにプラスアルファのカスタムメイドをして世界で一つのファッションを作るというビジネスも考えられます。カスタムカーやデコトラのようにね。

 ギフト業界では商品券では利益が出ないのでチョイスギフトに力を入れていましたが、名入れや写真入れ等のオーダーメードも差別化の武器になっています。下記のようにカステラに直接印刷する事も出来るようになっています。
http://shop.gift.or.jp/order/disp_baby.php?key=GPB101035&ba1=true へのリンク

 出産内祝いは体重ギフトで

 出産内祝いに子供の体重と同じ重さの商品を送るというのも流行っているようです。その先駆けはこだわりのお米屋さんが始めたこのサービスです。子供の体重と同じ重さのお米を名前入りのパッケージで贈るというモノです。
 http://www.kikutaya.co.jp/gift1.html へのリンク

  体重と同じ重さのぬいぐるみを贈るというのもありますが・・・これは少し迷惑。
 http://www.1cheer.com/bridal/baby/ へのリンク

 リメークファッションコンテスト開催(9月7日 神戸)

 先般開催された「神戸ファッションウィーク2010秋冬」で、初めての試みとして「神戸リメイクファッションコンテスト」が開催されました。全国から400以上のデザイン画が寄せられ、「おばあちゃんの使っていたレインコートと自分の折りたたみ傘を利用した、レインコートとバッグ」が大賞に選ばれました。

 http://kobe-fw.jp/ へのリンク

 「神戸の人はおしゃれで遊び心があるので、普通にリメイクするのではなく、こうしたらかわいいよとか、こんなアイデアはどうと提案すると喜んでもらえる」と語るのはトアウェストで(神戸トアロードの西側のエリア)ソーイングファクトリーを営んでいる方の意見です。

 ちなみにトアウェストでは町おこしののためのスタンプラリーなどを企画。「神戸はハイクラスのイベントは多いが、もっとリアルな感覚の人に体験型のイベントを提供したかった」という趣旨で開催している。地に足が着いた活動が続けば神戸もまた活性化するでしょうね。


 大阪都についての当面の結論

 最近特に感じるのですが、関西活性化には広域の連携が欠かせません。「大阪都」で大阪の発言力を強めることからはじめるのではなく、京都、大阪、神戸といった個性の違う都市の水平的な連携を強めることから始める事が有効だと思います。
 いわゆる「大阪都」構想?の議論で大阪府と市の二重行政を解消するという意図は推察できるますが、大阪府のスケールで考えると「あんこ」が薄まってしまいかえって強みが希薄化します。京都大阪神戸の「あんこ」を合わせてやっと首都圏に対しての存在感を示せるのですから・・・・大阪市の「あんこ」を大阪府広域に薄めるのではなく「白あん」と「粒あん」と「カスタード」をまぜて「あんこ」の魅力を高める事から始めるのが正解でしょう。数の力を背景に人を動かそうとするとかならず反作用が働きます。

 京阪神の交流をもっと強めて人の動きを活発させる必要があります。東京では日常的にもっと人が広域に動いています。梅田北ヤードは関西の交流、アジアの交流拠点になっていく場所ですが、まず京阪神の人の動き、情報の動きの拠点にして地域の魅力を高めていくことが必要です。「動き」のあるところに人は集まってきます。

                                             (2010年10月20日)

図ーギフト市場規模 〜現金を除く (億円)

■サービス業と製造業の意識の違い〜日本IE協会の経済産業省委託調査より

 サービス業の価値は目に見えない?

 サービス業の場合、提供される価値は「目に見えない」もので「提供と同時にその場消滅」する、という特徴があります。(サービスが付加価値としてのウェートが高い「百貨店」や「専門店」も広義のサービス業といえます)製造業と違って圧倒的に中小企業が多いのもその特徴です。

 サービス業では「すべての業務がお客様のために必要だから存在する」という固定観念が強く、「無駄と言う概念」が甘くなりがだと指摘されています。「やらないよりやっといた方がいい」という価値観でしょうか。(「家事」に似ているような気がします。掃除や洗濯、食事の準備など手をかけようとすると、やるべき事は無限にあります。優先順位をつけてをかけることと無駄を省くことをわけていかないと心身ともに疲れ果ててしまいます)

 お客様の満足度向上にとって「何が必要」で「何が必要でないか」明示されて、共有化されていない事に問題があるようです。サービスを受ける側の満足度が評価しにくく、不満点が把握しにくいことにもの原因がります。(客観的に不満点を把握するのに有効な手法として「ミステリーショッパー」=覆面モニターによる定期的なサービスチェッがあります。現場サイドでは「あら探し」と反発もあるようですが、価値観を共有化する為のツールとして使えば説得力を持ちます)

 目標が見えていれば組織として問題点や改善方法を共有できます。現場で共有化できていない目標、つまり何にどこまで手をかけるのかといったサービスの基準がないと、サービスの改善がトップダウンか個人対応になってしまい、製造業でよく見られるような現場からのボトムアップによる改善が実現しないのです。

 製造業とサービス業の生産性向上への捕らえかたの違い

 サービス業の場合、サービスの価値と効率が対立概念でとらえられるケースが多いので無駄、つまり付加価値のない作業を識別しにくい(手間をかけることがサービスが良いことと理解されがち)。その結果、現状の姿や問題点が定量的に把握しにくく、改善目標も具体的に示せない。問題点は個別に感覚的に認識されていて組織として共有化されていない。ノウハウを伝えるマニュアルが無く改善の活動も個人的な取り組みになります。
 製造業では製品価値と効率はお客様満足度という観点から対立するモノではないと認識されている。無駄や付加価値のない業務が明確に設定でき、改善すべき目標を組織として共有化できる。一人一人の技能水準がオープン管理できて技能向上目標が評価へ反映されるので頑張りのベクトルが揃う。ノウハウがマニュアル化され、マニュアル化しにくい勘やコツもグループ活動で共有化される。個人個人の対応ではなくグループ又は組織横断的な取り組みが出来る事が出来るのが強みです。
(「サービス産業の生産性向上に資する製造業のノウハウに関する調査研究報告書」平成19年3月日本インダストリアルエンジニアリング協会より内容を要約抜粋)〜冊子では病院、ホテルなどの業務改善事例が紹介されています。

 そういえば、対法人サービス業の会社でマネジメントをやっていたときに「業務の標準化」を図ろうとして、大変な抵抗にあったことを思い出しました。
 
 問題は「効率化」で生み出された「時間」「余裕」をを何に振り向けるかであると思います。製造業のノウハウによる生産性向上は行きすぎるとサービス業の「競争力」をそぎ取る側面もあります。徹底的に無駄を省いた品揃えで有名な「セブンイレブン」の店舗にはとりあえず必要なモノは揃っていても欲しいものはありません。

 特別なサービスの感動

 「いきすぎた効率化、無駄の排除はお客様へのサービス低下につながる」・・・という感覚は理解できます。ただし、多くの場合、自己満足であることも多いのです。とにかく心身をすり減らして一生懸命サービスすることにとらわれる事はお客様にとって何が「感動か」考えることをやめた思考停止です。(昨日の記事であげたサービススタッフへのマネージャーの指示がその典型的な事例です)
 「一生懸命」に見えることを優先し、「一生懸命考えること」をやめてしまっているのです。

 ユニクロやイケアでは、「クレーム電話」への対応が敏速で、店への連絡もきちんと行き届いている・・・あれには勝てないと百貨店の方がおっしゃっていました。個々の人材はそこそこ(失礼)でも製造業的なシステム化が進んでいるのでサービスで「感動」を与えることが出来るのです。

 上記レポートを逆に読むと、多くのサービス業、小売業は中小企業なので、経営組織が多少駄目であっても優秀な現場マネージャー、スタッフががんばれば何とかなってしまう・・という側面があります。日本有数の製造業等が小売業、サービス業を運営しても「システム」ができていないと失敗してしまうという事でもあります。

 製造業の持つ素晴らしいノウハウをサービス業、小売業に移植するにはもう一歩踏み込んだ研究が必要な気がします。

                                               (2010年10月19日)
■製造業のノウハウによるサービス業の生産性向上〜動機付けと満足度アップの課題

 サービス業の付加価値についての思いこみ

 ハイレベルのサービスはかくあるべしと言う独りよがりの思いこみをもった事業者を時々見かけます。高級な飲食店では予約されたお客様を、予約された時間に扉の近くでお迎えするのは当たり前のサービスです。
 ある飲食店では30分前からサービススタッフを扉の前でただ待機させているそうです。ある時に予約されたお客様から1時間遅れるという連絡が予約時間過ぎにあり、そのまま待機、その後さらに30分遅れるという電話があり、そのサービススタッフは2時間の間、ただひたすら待つためだけに立っていました。
 
 その飲食店のマネージャーに「生産性」という概念が無い事を象徴している事例です。もしお客様が自分の都合で遅れた時にスタッフが忠犬ハチ公のように2時間待ち続けたことを知ったときに感激するとでも思っているのでしょうか?お客様様の喜びにつながらない行動は「付加価値を生まない」無駄な時間です。お金の無駄ですし、スタッフのモチベーションも低下します。

 ある高級な料理店のサービスチェックを1年間続けていましたが、そこで起きた現象は逆の落とし穴をを示しています。予約時のお迎えは完璧です、雨が降っていればお車に傘をさして迎えにでるぐらいのおもてなしで、お客様は感激します。ところがゆっくりお食事をして閉店近くまでくつろいで楽しんだあとに支払いも席で済ませてさて、帰ろうとした時にスタッフが誰もいない・・・・帰ってもいいのかな?そんな思いで帰られたお客様が複数いらっしゃいました・・・・。それまで最高の接客をしていてもひとつでもそんなミスをするとお店の印象はだいなしです。

 おそらくお迎えするときにはスタッフにも時間のゆとりがあるのでしょう。閉店近くなると「忙しい」のでついデスクを離れてしまう事が多いのでしょう。指摘があるにもかかわらず、それが繰り返されるのはどこかに構造的な問題があるのでしょうね。閑なときは言われたことを言われたとおりにやっていればいいのかも知れませんが、忙しくなれば自分で考える必要がでてきます。

 サービス業や小売業の現場マネージャーには「生産性向上」の意識が希薄な方が多いように思います。

 忙しければ「忙しいから」基本的なことがおろそかになっても仕方がない、「人を増やしてくれ」といいますし、「暇な時間」が多ければ「冗長な作業処理」を放置します。郊外立地で平日は比較的お客様が少ない小売店で見受けられるのはお客様が少なくても、植木の手入れや細かい掃除が行き届かなくて荒れた印象が多い店です。閑なときの「冗長な接客応対」に慣れてしまって、少し忙しくなったり、新しいことをやろうとすると「忙しいので人を増やしてくれ」という要求が出てきます。

 製造業の発想はサービス業、小売業にも役に立つ

 製造業のご出身で介護施設のマネージャーをされている方のお話を伺いました。面白かったのは、 例えば介護施設は低層である方が生産性が高まると指摘です。高齢者の食堂への誘導もできるだけ階段やエレベーターの移動が少ない方が短時間で処理できるとか、夜中のおむつ替えも移動が少ないとスタッフ1人で出来るが、施設の建物の階層が増えると2人、3人必要になるとか・・・作業動線分析等のIEに馴染みのあるメーカー出身の方ならではの指摘です。

 不動産屋的な視点で「容積率いっぱいに使った方が儲かる」とか「売れないマンションやつぶれたホテルや小売店を改装して需要の底堅い高齢者施設に転用」とかのオペレーションを考えない、無責任な思いつきを語るのは自戒しようと思いました。

 飲食業・製造販売の領域では、以前にも取り上げた北海道の洋菓屋「柳月」やイタリアンの「「サイゼリヤ」は生産段階で作業動線の分析や在庫管理を取り入れています。

 サービス業、小売業での「生産性向上」はかなり遅れた分野です。「付加価値を生む業務」と「付加価値を生まない業務」の「仕分けが出来ていない(その結果、冗長でメリハリのない接客が丁寧な接客と勘違いされている)事やマネジメントに意識がないことなどがその背景にあります。その為システムとして整備されていないのです。

 私は「百貨店のローコストオペレーション」に不安を感じています。ローコスト化はもっと出来るし、やるべきだと考えるのですが、哲学やシステムのない人員削減はどこかにしわ寄せがいきます。かつての「そごう」は他店に比べてとても少ない人員で運営されていました。(テナント丸投げ)・・・ローコスト店舗を歌って開店した「神戸西武」はすぐに閉店し、その跡の器に入った店も惨憺たる成績です。ハードが店舗運営のロースト化に対応していないのです。(使いにくい構造)

 サービス業の生産性向上についてはあらためて続きを論じたいと思います。

                                                 (2010年10月18日)
■「エキゾチック」「ロマンチック」だけでない神戸が面白い

 大阪の人は休日に神戸に出かけるけれど神戸の人は大阪には出かけない

 ファッション雑誌の撮影は大阪に比べて神戸が多いのです。「絵になる」場所が近くに集まっている上に人通りが少ないのがその理由です。旧居留地、北野、阪神間の町並みなど「神戸」といえばそのような絵になる場所を想起する人が多いと思います。

 神戸の元々の中心地は「新開地」でした。昭和32年までは市役所もこの場所にありました。三宮から元町にはあまり人が住んでいるイメージはありませんが、新開地、神戸駅から西、新長田あたりには人が住み、生活している匂いがします。大阪とも京都とも違ったダウンタウンの匂いがします。

 ロマンチック神戸、エキゾチック神戸の観光の売りは「夜景」と「ファッション」「スイーツ」であるようです。昨年3月に発表された”「みなとまち神戸」の都市イメージを生かした観光圏形成に向けた資源活用調査報告”(国土交通省神戸運輸管理部)のレポートを見てもその点が強調されています。。
 
 神戸の資源活用として「夜景」とか「「スイーツ」とか「ファッション」といった「漠然としたおしゃれっぽいもの」は列挙されていますが、新長田で住民が頑張っている「ぼっかけ」の名物化や修学旅行生の地元商店街体験と言った試みが、(鉄人28号とかも)全くスルーされているのは何故なのでしょう。

 訪日客は異人館(上海の方にはもっとスケールが大きい異人館があります)とか旧居留地には興味が無く「日本らしいもの」を求めているので、神戸は人気がありません。(酒蔵とか神社とかが人気スポット)
 神戸は対外的にアピールするセルフイメージから歴史とか生活臭のあるものを極端に排除する特性があります。神戸人がこよなく愛する地元神戸はその「セルフイメージ」に沿ったものです。

 「大阪の人は休日に神戸に出かけるけれど神戸の人は大阪には出かけない」と言われます。前述の報告書では宿泊を促すために周辺地域との交流が課題とされてますが、「宝塚、芦屋、西宮」など阪神間をからめると大阪が近くて関西圏として括られて埋没すると・・・・・危惧したコメントがあります。・・・・イメージ先行で実態が無い(本当はあるのです)から大阪に対して敬遠する気持ちが働くのかも知れません。まず足が地に着いた神戸の生活の魅力を掘り起こす必要があると思います。〜実際に面白いのですから。

 阪神なんば線〜広域につながる事の経済効果

 住友信託銀行が4月に発表した阪神なんば線の経済効果は1,963億円と発表されています。

 @開通による運賃支払い増加額 14億円
 A神戸から奈良への観光客増加  5.4万人増加 3.4億円
 B奈良から神戸への観光客増加  6.9万人増加 6.9億円
 C開通をきっかけに阪神沿線からミナミに出かけた人の消費増加 36.5万人増加 11億円
 DUSJ利用客増加 4万人増加 3.1億円
 E海遊館利用客増加 1万人増加 3,500万円
 F京セラドーム 利用客増加 10万人増加 5億円

 ・百貨店のシェア  梅田46.3%→45.5% 難波心斎橋 32.0%→32.9%
 ・武庫川女子大学 奈良県の志願者数30.9%増加。推薦入試受験者数大阪が兵庫を抜いて1位に。

 つながることはお互いのメリットになるのです。神戸は都市としてのアイデンティティを明確に持てば自信を持って関西広域の都市圏連合が実現するのですが。セルフイメージの虚実を自覚する事が大事です。

  (おまけです)
JR三越伊勢丹は神戸方面のお客様を集客できるか

 JR大阪駅の新しい百貨店は基本は沿線が商圏となるでしょう。西は、西宮、芦屋まで・・・。地元は警戒しているようですが神戸への影響は少ないと思います。可能性があるのは神戸市以西の加古川や姫路などの地域。京都線沿線の高槻など。西宮阪急、芦屋大丸がある程度競合するのだと思います。

 阪急阪神のウィークポイントは「美術工芸」や「高級品」など、あくまでも中流層の百貨店なのです。三越の得意分野ですが、本店以外でこの強みを打ち出して成功した事例はあらいません。
 またこの地域では「大丸」のブランド力もあなどれません。三田や丹波篠山、加古川、姫路など少し離れた地域のお客様を外商を含めて囲い込めるかどうかが課題になります。富裕層のボリュームはフローだけでなくストック(不動産資産含む)のボリュームも首都圏に比べて少ないのが実態です。富裕層はだいたい車で移動しますから駅立地とはいえ駐車場の使いやすさは重要な要素です。

  阪神間の富裕層は神戸大丸を利用するので、敵は阪神阪急や梅田大丸ではないのかも知れません・・・・。そちらにシフトするとターミナルの流動客がとれないので、方向性を明確に設定する必要があります。

                                        (2010年10月15日)































図は再掲載 以前にも紹介したデータです 10年以上前のデータですが大きな傾向には変化はないと思います)
朝日新聞社が市内百貨店を調査した調査結果です。
■早急にボタンの掛け違いを修復する必要がある神戸ハーバーランド地区

様変わりした神戸ハーバーランド地区の大型施設

神戸ハーバーランドは、三宮から南西約2kmに位置し、JR神戸駅の東側に接する旧国鉄湊川貨物駅を中心とした約23haの区域です。
ハーバーランドの整備計画は、大都市の課題であるインナーシティの再生、産業の高度化やソフト化など産業構造の変換に対応する担い手として、また、市民生活の多様化、個性化に対応した新しい形の商業・文化施設の整備、さらに、ウォーターフロントの再生など、都市機能の更新を図る大規模再開発としての都市拠点整備事業です。
(神戸ハーバーランド株式会社WEBサイトから)

 開業時の姿を残しているのは「神戸阪急」と「モザイク」だけです。特に神戸西武跡「ファミリオ」は残念なぐらい悲惨な状況になっています。元オーガスタプラザ跡の万葉倶楽部は低層部の商業施設はともかく温浴施設という着眼点はいいと思います。「ファミリオ」は今後、閉店したニューオータニ神戸の宿泊機能とあわせてエコノミーな中国人団体向けの施設(ホテル、中華バイキング、免税店など)に改装するしか生き残りの途は無いように思います。(トイザラスや時間制アミューズメント、フードテーマパーク、生鮮ディスカウンターなど、想定される範囲のテナントが手を引いた以上この方向性しかないでしょう。ミナト神戸の観光力アップにもつながりますしね)
 ニューオータニ跡はその後ゴルフ場を経営するホテル事業者に買収されました。

 利用者の商圏は開業時に比べてぐっと縮小しています。その一方でモザイクなどのウォーターフロントを訪れる観光客は底堅いモノがあります。まったく相容れない2つの客層にわかれていて、「Hare」の「イズミヤ」の利用者と「モザイク」の利用者は存在しても「都心型」の施設のターゲットは極めて少ないのです。
 「神戸阪急」はところどころ綻びはあるものの「都心型百貨店の矜持」を守るやせ我慢を続けています。売上数値は郊外型百貨店と変わりません。

 「都心拠点」という位置づけを払拭する

 この立地は明らかに観光立地が中心となるべきです。神戸市の苦手な中国人の団体観光客を惹きつける大型店、あるいはアウトレットモールが似合う街に全体的にデザインし直す必要があります。

 この立地では、ダイエーがホールセールクラブ「KOUS」を作って失敗したという苦い経験がありますが、これはダイエーの問題だと思います。尼崎にあるホールセールクラブ「コストコ」は今度、松井山手に出店します。日本でもホールセールクラブが受け入れられる土壌ができています。
 岸和田にできたドンキホーテの会員制激安百貨店「WR」も検討に値します。

http://www.sankeibiz.jp/business/news/100929/bsd1009290501001-n1.htm へのリンク

 WRは翌年には閉店しています。ブランド品を安く売るだけではビジネスが成立しない時代になっています。ハーバーランドはその後イオンモールによるZARA等の大型海外SPAの誘致で盛り返します。

 神戸市としては「煉瓦倉庫」にこだわりを持つなど横浜市を意識しているのかも知れません。神戸市は残念ながら横浜市ほどのポテンシャルはありません。(大阪市も同様です)本来、京阪神でお互いの機能分担を図るぐらいで丁度いいバランスです。「大阪都」の議論よりも京阪神の都市連合の方が実効性が高い連携効果が得られます。(「阪神港」がスーパー中枢港に選定された成功例のように・・・)

 そういえば神戸西武開店前に西武の関係者にも、横浜と神戸は違うと誤解を正した覚えがあります。「港町」「中華街」でなんとなく似ているように思うのかも知れませんが、都市としてのポテンシャルは違うモノです。神戸は神戸の身の丈に合わせて神戸の良いところを活かしていくまち作りを行うべきだろうと思います。

 餅は餅屋へ

 ハーバーランドの中で「モザイク」は劣化せずに続いています。大阪の天保山マーケットプレースもこのように商業のプロに運営委託するか譲渡すればもっと良くなるのにと思います。
 北野工房の街でも来場者数が落ちてきているようです。10年サイクルでプロによる店舗の見直しが必要です。千里ニュータウンの中央センターである「「セルシー」「せんちゅうパル」も民間の商業者の運営になってから活気が出てきています。

                                          (2010年10月14日)

表ー神戸ハーバーランド施設年表



図ー神戸西部地区の百貨店売上比較 (億円)

■「農業公園」の本分〜淡路ファームパークイングランドの丘

 美しい企画提案書が思い浮かぶ「淡路ファームパークイングランドの丘」

 体験施設、レストラン、ご当地名物、動物とのふれあいなど・・・この施設には色々な要素が少しずつ「幕の内弁当」のように詰まっています。京阪神の消費地にも近いので入場者数はそこそこキープされています。昨日たまたま訪れたこの施設は農林水産省の補助金で建設されたものです。なんだかいかにもという「美しい企画提案書」が目に浮かぶような施設です。

 この夏の猛暑の所為か花や野菜の生育は思い通りにいっていないのでしょう。農業公園とはいうものの「庭園」はなんだかうらさびしい印象があります。規模がコンパクトな割に手入れが行き届いていない・・・・。たまたま端境期なのかも知れません。
 とはいえ温室もまた規模が小さい割に手入れが今ひとつです。農業公園にしてはなんだか、緑の手入れが全般に粗っぽい印象があります。

 小動物のふれあいコーナーでは係員が一生懸命子供達に動物とのふれあいをサポートしていましたし、淡路島バーガーはバイトの学生がハエを追い払いながら一生懸命手作りをしていました・・・・。体験コーナーでは「宝石堀」や「貝殻からの真珠の取り出し」(別途加工料聴取)といったぱっとしない遊園地のような体験イベントが開催されてしました・・・・。パンフレットに記載されていた「石窯パン工房」は祝日であるのにお休みのようでした。これは入場料を取る施設なのでしょうか?

 農産物の直売所も狭く種類が少ないのは不思議です。
 補助金がなくなると立ちゆかない施設でしょうね。

 税金を投入して地域の農業を活性化するのが目的なら重点の置き方が違うはず

 京阪神に近いという好立地のためか入場者数はそこそこキープしています。税金を投入した農業振興施設であるなら運営の重点を変えていく必要があります。「コアラ」が集客の目玉なのかも知れませんが、日中はずっと眠っている動物だのみでは前年比17%減の数字があらわすように集客力が低下するばかりです。

 まず庭園や花壇の手入れをきちんとすることです。(大阪市内の靫公園や中之島公園はみごとに手入れされています)それから産地直売所を拡大充実すること。レストランや体験学習施設は地元のリピーターも集められるように魅力あるもに再構築する必要があります。お客さんがこないので施設を閉じてしまうと寂れた感じが伝染して他の施設まで陳腐化します。

 それにしても何故「イングランドの丘」なんでしょう。園内にいるコアラやワラビーや「蠅」からの印象はオーストラリアなんですが。バブルの時にあちこちに出来た、そして各地のコンペ提案でさんざん提案した机上のプランがまだ生き残っていたのかと・・・うそ寒くなる感慨があります。

                                            (2010年10月13日)
図ーファームパーク入場者数   (千人)
■「時間」をどう取り扱うか?〜これからの商業立地を考える

 本当はおしゃれに自信が無い人が多数派なのに

 駅ビルがここまで力をつけてきたのは、何故でしょう。30年以上前の調査では駅ビルは10代、専門店は20代、百貨店は40代以上と年代別の棲み分けがなされていました。お金があまりなく、かつファッションセンスに自信がまだ持てない若い子が利用者の中心だったのです。ファッションセンスに自信のある一部の人達は路面の専門店を利用していました。

 多くの百貨店や専門店は、おしゃれに自信のない人にとってある種の「ダサイ奴は入ってくるなバリア」をはっています。それでも百貨店はお金を持っている人にとっては一種のガイドの役割を果たすので、「おしゃれに自信のない人は」結構いいお客様(カモ)だったのです。「伊勢丹で全部揃えれば」おしゃれな人として自信を持つことが出来ます。

 現在の、ユニクロやしまむら、それから通販(カタログ、テレビショッピング)を支えているのもこれらの層です。(もちろん、おしゃれ上級者やおしゃれだけどお金のない人もユーザーですが)・・・・お洒落になろうという向上心は無くしていますが。

 駅ビルのお店は「安くて」「そこそこおしゃれで」かつ「店の利用のバリアが低い」という特徴があります。コアなお客様は今でもビギナー層だと思います。近年、デフレが進んで若い人がファッションにお金を使えなくなってきたことと、一方で男女雇用機会均等法以後、忙しくてゆっくりお買い物に時間を使えないOL層が駅ビルでの買い物を増やしたことで、メーカー側も駅立地を「お客様が集まってくる場所」として評価。売れるブランド、売れる販売員を投入してきたことで善循環が始まったといえます。JRも駅ビルの事業に注力し始めたこともあり、「駅立地」の優位性が確立しました。
 「活況を示しているところ」「人が多そうな所」にメーカーは市場があると過剰に評価する錯覚がおきるのです。メーカーもデベロッパーは自分の顧客がどんな人か想像できないので雪崩を打って「人が集まりそうな場所」に出店をするのです。

 断片化した時間を活かす商業施設が伸びる

 このように、「駅ビル立地」はいくつかの要素がからみあって発展してきたのですが、ブレイクした一番の要因は多忙になったキャリア女性の退勤時の移動のすきま時間、断片化した時間に利用できる利便性が利用者によって「発見された」ことが大きな要因だと思います。専業主婦が減少し、働く主婦が増えたため「休日に都心にお買い物」というパターンより都心では平日にお買い物というパターンが増加してきています。・・・・・・購入場所の変化は、OLさんの通勤着、仕事着がカジュアルになっていること,非正規雇用の増加とも関係しているのでしょうか?

 テレビショッピングやWEB、通信販売もこの流れに沿ったものです。あるメンズブランドの通販業者は「おしゃれに自信のある人はうちのビジネスの対象じゃない」と断言します。通信教育の空手やエジソンバンドの世界からあまり進化していないのかも知れません。

 時間を消費するショッピングモール

 時間をキーワードにして分類すると、ひたすた規模を追求する郊外の大型ショッピングモールは「時間消費の場」です。映画、食事、アミューズメントが揃い家族が一日時間を「つぶせる」消費の場です。特に地方都市に住む人達にとって、都会の風を感じることができますし、ワンストップで何もかも消費できます。

 ショッピングモールもアウトレットモールも来店者はみんなカジュアルウェアで楽しんでいます。京都のイオンモールで感じたことですが、駐車場のワンボックスカー率が異様に高いのです。
 ワンボックスカーは家庭のリビングルームの延長だといわれていますが、モール全体もリビングルームの延長のようなくつろいだ雰囲気があります。「おしゃれに自信がない人」も気を遣わずに楽しめる世界です。

 「立地創造型」という言葉がありましたが何もない場所に全国どこにでもある大型ショッピングセンターをつくるのは、ビジネスとしては成功してきましたが「創造」とは違った世界です。

 「時間創造型商業立地」

 高齢化が進み消費が成熟していく中で「創造的な時間をすごせる場所」がこれから求められる商業立地だと考えています。アメリカのポートランドの事例などをスタディしていると「行ってみたい」「住んでみたい」と強く感じます。それは有名ブランドでもなく、巨大ショッピングセンターでもない人を惹きつける魅力です。

 お金を使わなくても愉快に過ごせる場所というのが原則なので投資対象としては魅力がないかもしてませんね。(当社を設立するときに大阪市内中を歩き回って、西区京町堀の今のビルを発見しました。古くて小さいビルですが、手入れが行き届いて快適です。古い中小ビルは歯抜けになっているモノが多いの中でほとんどテナントが埋まっているのはそれだけの価値があるのだろうなと思います。少し長いレンジで見ると有力な投資対象ともいえます))

 住宅地でもダウンタウンでも固有の文化の匂いがする場所に可能性があると考えています。

 お互いにどれだけとんがっているかを競争するようなファッションではなく服装やインテリアのセンスを磨ける場があれば物販やスクールの需要が生み出せると思っています。

                                            (2010年10月12日)
■1時間20分かけて出かける目的は〜「生の感動」だけが人を動かす

 九州新幹線全線開通〜福岡に人を集まる目的増加率トップは「コンサート」

 鹿児島〜〜博多間は現在新幹線の部分開通によって2時間12分で結ばれています。来年3月の全面開通によって所要時間は1時間20分にまで短縮されます。
 鹿児島の人が福岡に出かける目的として全線開通後に増えるモノを聞いて、現状との差をグラフ化したのが下図です。(ややこしいですねが、便利になって増える活動の増加度合いとみてください)

 上位にあげられているのがコンサート22.8%、観劇21.1%、スポーツ観戦20.0%です。どれもその場に行かなければ味わえない「生」の感動を提供するモノです。特に10代20代では「コンサート」がとても高い結果が出ています。30代、50代でも高いですよね。10月5日の記事で述べたように「音楽」は集客に重要な要素です。

 買い物とかグルメは当たり前に楽しむとの前提なので変化率は少ないのでしょうね。

 大阪への集客を増やすのに、トップが「カジノ」とか「巨大サッカースタジアム」といった思いつきで語るのは困った傾向です。

 カジノには「テラ銭」を当てにすることの善し悪しとは別の次元で問題があります。カジノを中心とした都市の集客は「コンベンションセンター」「大型ホテル」「ゴルフ場を始めとしたリゾート施設」がセットになっていて成り立つビオジネスモデルです。大阪にはそれだけの大型施設を建設する土地はありません。またそれだけの投資は今の大阪市ではできないでしょう。民間が整備するにしても大阪は地価が高すぎます。
 ラスベガスはもともと砂漠に(マフィアによって)作られた街です。「カジノ」は日本国内では米軍基地の巨大な跡地に国費で基本的な施設整備を行える沖縄以上の適地はありません。
 日本の多くの政治家はその点を勘違いされています。巨大なパチ屋ができてそのあがりを税収に出来ると勘違いしているのでしょう。

 「巨大サッカースタジアム」の愚劣さについてはもう何度も触れています。もうそのあたりの思いつきの「打ち上げ花火」は打ち切ってこれからの大阪の議論を始めないとだめでしょう。


 京阪神からの観光客誘致に熱心なのは「熊本」

 開業への期待が高まる九州各県に比べて関西ではまだまだ盛り上がりに欠けます。今後JRを中心に旅行商品の売り込みが活発になっていけばもう少し変わってくるのでしょうが・・・・。九州ではとりわけ熊本県が熱心に観光キャンペーンを行っています。

 ビジネスでの人の動きがどうなるか、これからに注目したいところです。九州エリア間の出張が日帰り中心になると中州が寂れるかも知れませんね。
                                             (2010年10月08日)

図ー九州新幹線開通後に福岡地区訪問目的 現状との差
 =時間が短縮されたときに増加する福岡に出かける目的

(「九州新幹線全線開通の影響調査」地域流通経済研究所・鹿児島地域経済研究所 鹿児島市民)
■新生「岩田屋三越」は九州新幹線を追い風に出来るか

 2011年3月 博多〜新八千代間開業 アジア〜九州〜関西の鉄道交流圏

 九州新幹線全線開通にともなって、大阪と鹿児島間が最速3時間47分で結ばれることになります。運賃は18,000円。航空機で現在2時間20分(バス移動含む)、28,420円に比べて大幅にコストが圧縮されます。全日空が予定している格安航空会社では既存料金の半額を想定しているので、最安値で5,350円という話もでているようです。
 また九州とつながりの深い韓国では今年11月からソウル〜釜山間の高速鉄道が全線高速化され4時間40分から最短で2時間18分で結ばれることになります。釜山から博多港は高速線で2時間55分。ソウルと九州がより近くなります。(大阪から釜山やソウルまででしたらまだまだ航空機が便利ですが、韓国内の移動で慶州などの古都と鉄道で結ばれるのはとても楽しみです)

 関西圏と九州圏がつながることの効果については次回のCRIの記事で分析したいと思います。ここでは九州エリア内の交流について考えてみたいと思います。

 岩田屋三越の誕生とその未来

 10月1日、三越伊勢丹ホールディングス傘下の岩田屋と福岡三越が経営統合し「岩田屋三越」が発足しました。大阪では阪急阪神の本拠に殴り込む三越伊勢丹は福岡市では逆にJR博多シティに出店する阪急を迎え撃つ格好になります。
 阪急の売上げ目標400億円だけでなく東急ハンズやシネコン、専門店が集積する駅ビルが脅威になっているのかもしれません。JR九州の予想では全体で600〜700億円を想定しています。
 JR九州が鹿児島で開発した「アミュプラザ鹿児島」は開店前の160億円の予想を上回り202億円の実績を上げていて天文館通に大きな影響を与えています。

 今年6月の売上では岩田屋は2年ぶりに前年比を上回る実績をあげていますが、福岡三越は前年比10%減、9月には20%減と低迷が続きます。企業風土も歴史も違う両店の経営統合は軋轢も生みますが、生き残りをかけた唯一の選択肢なのです。

  私が見た限り福岡三越はターミナル百貨店として活気のある食料品を残して、専門店ビルに業態転換するか、阪神や京王のようなシニア層をターゲットにした大衆百貨店を目指すしか無いと思います。何よりも低層階にバスターミナルを抱えて導線が分断され、店舗の形が良くない。
 地元での「三越ブランドの威力」にも疑問符がつきます。鹿児島三越の失敗を教訓にすべきです。「三越は美術工芸などに強みを持っています」との認識は今後の方向性をミスリードします。

 天神には今後バーニズと言った高級店やファストファッションのやアバクロ、H&Mが出店するでしょう。岩田屋三越は百貨店の枠を超えた発想で取り組まないと大変なことになります。統合効果で十数億円の経費節減ができてもそれだけでは未来はないです。

 (余談ですが「銀座三越」の増床オープンの初日の売上は7億円と新聞発表されていますが、実際は3億4,000万円だったそうです。オープンにの2日前に開かれた「従業員・ご家族様内見会」と前日に開催された「外商お得意様販売会」の売上が初日にONされた数字であるといわれています。昔のそごうの売上数字みたいですね。特別招待会で売上を作っていた頃の・・・・。ちなみにオープン翌日の日曜日の売上は2億7,000万円と厳しい数字でした。業界ではオープン日の売上の100倍が年間売上げといわれています。三越銀座店の目標は630億円。なかなか大変ですね。本当に頑張って下さいね)

 新博多駅ビルの顧客層は?

 関西で強い「阪急」ブランドも九州では相手にされないと考えた方がいいでしょう。ただし、立地を活かして駅ビルならではの天神とは違った顧客層を掴めば目標売上は達成できるでしょう。
 九州新幹線が全面開通すると熊本と博多が35分で結ばれます。普通に通勤通学圏になります。

 天神は週末にバスで遊びに来て1泊して楽しむ場所です。若者を中心にその楽しさの要素を駅では代替できません。福岡駅は用事があって往来する人が空いた時間に買い物や食事をする場所です。ちょうど京都でのJR京都駅と河原町の比較に似ています。わざわざ行きたい場所ではないかもしれないが、使い勝手の良い便利な場所なのです。

 以前、福岡駅前の大型商業施設の企画をしたときに、色々事業者に取材をしました。その中でこの立地では「学習塾」がいいという話もでました。今でも九州全域から小学生がわざわざ通ってくるそうです。新幹線が出来ればもっと通学者、通塾者が増えるでしょうね。九州大学のビジネスマン向けの講座も駅立地で集客増を図っているようです。

 観光客、出張ビジネスパーソンの利用も大事な要素です。関西からでも福岡は日帰り出張圏なので天神まで遊びに行く時間はありません。駅ビルは断片化した時間の受け皿となるのが強みです。

                                                 (2010年10月07日)
■心斎橋租界〜今そこにある国際化に「自己責任でどうぞ」とは言わせない

 ユニクロとセントレジスホテル

 心斎橋パルコの向い、昔マクドナルドの店舗があった場所に、2,640uのグローバル旗艦店「ユニクロ心斎橋店」を1日に開業しました。開店時には1,000人の行列が出来たといいます。品揃えも600種類と世界最大級で英語や中国語を話せるスタッフが常駐するそうです。お隣は「ZARA」のショップです。心斎橋パルコもビルの建て替えに伴って業態転換するそうです。(来年9月に営業終了し6,127uの営業面積から、延べ面積4,800uに縮小して2013年に開業予定。96年には60億円あった売上は2010年2月期には18.6億円まで減少していました)今春開店した「H&M」は開店時は行列がすごかったですが、今は普通に買い物が出来ます。心斎橋筋商店街の通行者層は明らかに変わってきています。

 心斎橋は中国人観光客の団体のツアーバスの立ち寄り地点でもあるので、地区全体で中国人観光客への対応を強めていきます。来街者数が昨年春以降10〜15%の伸びを示しているそうで、連休中は30%増えたといいます。H&Mなどの話題店の開業もありますが、やはり中国人観光客の増加が目立ちます。当サイトがオープンした2008年に「ミナミから国際化が始まる」と記述しましたが、もはや国際化は今ここにあります。
 中国人観光客だけを対象にしたスタンプラリー・抽選会や、買い物付き添い、ポーターなどのコンシェルジュサービスなど「良い印象、評判を各固たるものにすること」に真剣です。

 本町の超高級国際ホテル「セントレジスホテル」も心斎橋に近く、中国人の富裕層が大きなターゲットになっていると想定されます。

 「やっぱり!なんば心斎橋」・・・なのか?

 少し前の外国人観光客といえば「韓国」「台湾」からの来訪者が多かったのを思い出します。両国は経済力を身につけてまたたく間に洗練されてきて、特に若い子はとてもおしゃれです。今はまだ、中国人は少しやぼったい雰囲気がありますが、もっと洗練されてきたときに、この街もまた都市として進化していかないと、経済力がついて洗練されたときの中国人に愛想を尽かされ、取り残される可能性もあります。
 中国人独自の好みもありますし、中国ブランドのレベルも上がっています。都市としても成長市場「中国」にに世界中から投資が集中しているだけにこれからの変貌も急激だと予測されます。
 ユニクロのグローバル旗艦店の1号店は国内では心斎橋ですが、この5月に上海に1号店を出店しています。

 今月号の「Meets」は「やっぱり!なんば心斎橋。」というテーマです。久しぶりに読むので楽しみにしてページをめくったのですが、胸が焼けそうな脂っこい「庶民料理」の飲食店や飲み屋の紹介が中心で・・・もうお腹がいっぱいの企画です。
 地元誌でさえステレオ対応の企画にならざるを得ないのかな・・・。庶民的な人の魅力だけでないこれからの発展の芽が仕込まれればいいのですが。

 大丸の存在感が際だつ商店街

 それを考えるとあらためて、心斎橋での大丸の存在感を感じさせます。大丸心斎橋店は大阪の百貨店の中で一番欧米高級百貨店に近い雰囲気を持っています。ヴォーリズ設計の建物の所為でしょうか。免税手続き金額が大丸各店でトップだとか。
 旧そごうを改装した北館にはセレクトショップや若者向けの専門店を導入したり、周辺に路面店を貼り付けるなど百貨店の枠を超えた取り組みに最も熱心なのですが、その反面、本館はオーセンティックな百貨店の雰囲気をこわしてはいません。伝統の良い面を守りながら時代対応に積極的という理想的なスタンスを保っています。(例え本社を東京に移しても大丸があったことは忘れないでおきたいものです)

 2014年になって心斎橋地区の再開発の話が出ています。大丸からは「白紙」という発表ですが、それは建物をぶっつぶして高層化し、オフィス、ホテル,マンションなどとの複合活用で「不動産価値」を最大限に活かすかも・・・・という意思表示でしょう。
 天井低いし,設備もぼろいし、大丸に愛着をもつ年寄りはもう死んでいくだろうし・・・・中国人好みのかっけー高層ビルをたてて「株価」をあげようぜ・・・第一、他所はみんなやってるしね〜乗り遅れてはだめじゃん・・・・・なんていう会話が役員会で交わされているかも・・・・という酷い想像はしたくないですが。


 心斎橋筋商店街はとてもプライドの高い商店主も多いのですが、(天満繁昌亭でにぎわう天神橋筋商店街を日常品中心の商店街なのでうちとは違うと少し上目線で語っていました)そのプライドの所以である「伝統の力」を残して時代対応を積極的にしていかないと、観光客の賑わいの人が引いた後に何も残らないということになってもそれは「「自己責任」ですからね。

                                               (2010年10月06日)

     
中国人観光客を対象にしたスタンプラリー抽選会
■大阪に必要なハコモノ〜ライブエンタテイメントが人を動かす

 大都市に人を集めるために必要な要素は

 基本的にはモノやサービスを消費するだけでなく、創造していく機能が必要だと思っています。学校や起業のためのインキュベートなどが考えられますが、何かと評判の悪いハコモノの中でも大阪に必要とされるものがあります。

 図ー1は東京23区と大阪市を比較した規模別のホール数です。特に1500席から3000席未満のホールが大阪市内に少ない事がわかります。(現在フェスティバルホールが工事中で厚生年金会館が閉鎖中なので特にプロモーターは苦労しているようです)関西から西日本を市場として考えるとあきらかに不足していることがわかります。

 図ー2にあるようにコンサート市場に関しては2000席以上のコンサートの比率が高いのです。興業の観点から考えると東京で開催したコンサートをその規模で大阪に持ってくると、コストダウンがはかれます。

 利用者サイドのニーズから考えても需要はあります。レジャー白書で女性の参加率を比較すると音楽会・コンサートの参加率が高くなっています。(図ー3)音楽は、美術館やスポーツ施設より利用者の裾野が広いのです。

 私どもの調査でも中高年のご婦人で「福島」の利用率が高くなっています。「シンフォニーホール」の影響は強いと考えています。(アフターイベントの街利用にはなかなかつながらないのですが・・・)

 都市の活力はライブエンタテイメントの魅力から

 大阪を若々しい創造的な人々が集まる魅力的な都市とするためには、地道な努力を継続する必要があります。行政は財政難を理由に「ハコモノ」=施設建設への投資は抑制的です。その一方「大型サッカースタジアム」の建設が大まじめで論議されているのは不思議です。ワールドカップ以外のコンテンツが継続的に提供されるでしょうか?

 ショッピングについてもリアル店舗ではなく、WEBサイトで購入される機会が増えています。音楽もCDではなくダウンロードで購入されます。わざわざ外出して出かけようという気持ちにさせるのは「生」のライブの魅力です。
 路上ライブやミニコンサートも楽しいのですが、演出に知恵とお金をかけたライブのステージは人を集める力になります。東京と大阪で公演できればアーティストや興行主としても舞台の演出にお金をかけてもペイします。舞台芸術のソフトについても飛躍的に進化します。大阪のハコはご覧のように小さいのですが大きくなれば、西日本全域だけでなく、中国、韓国からも集客が見込めます。

 1500席から3000席までのホールであれば、関西での市場性はあります。

                                           (2010年10月05日)
図ー1 規模別のホール数比較

(ぴあホール劇場スタジアムを集計)

図ー2 コンテンツ別の市場規模 ホール規模別の市場シェア(日本全国)

(ぴあライブエンタテイメント白書2009から作成)

図ー3 女性の年代別余暇活動参加率



表ー大阪と東京の1000席以上のホール比較




■バックミラーを見ながら猛スピードでドライブ〜イオンモールをあまり過大評価してはいけない

 賑わいの重心は変わったのか?

 文化施設のテナン入居を打診のために取材していて、「都心のイオンモールなら出店したい」というお話がでました。「イオンモール」そんなにすごかったのか?と意外な発言に衝撃を受けました。

 大型店舗の出店が規制されていた時期に「狸や狐がでる立地」に大型の店舗を開発してきた中で、地方都市にはない「都会の空気」を運んできたのがイオンモールに代表される大型のショッピングセンターです。車で1時以上かけて移動するのは地方都市では当たり前の日常で、マクドナルドもスタバもない旧市街地よりも映画館やゲームセンター、飲食街が揃った新しい街を利用するようになったのは当然の流れです。

 車移動で広域商圏から集客するモデルで、「空白の市場」を開拓したのです。

 近年、その大型モーを都市近郊にも出店するようになってきました。越谷のイオンレイクタウンや伊丹や北花田へのイオンモールの出店です。

 確かに、誰でも「人が集まっている」という実績を目にすると「いい立地」だと思います。その結果、いいテナントも集めやすいのです。前述の文化施設も「イオンモールなら人が集まる」とご判断されたのでしょう。・・・ただし、集まる人の客層は音楽中心のその文化施設に適合しているかどうかはわかりません。「ワンボックスカーでおでかけする。ジャージを愛用する若いファミリー層」が郊外のモール来店者の中心です。好むと好まざるに関わらず、地方都市のやんちゃな若者の「聖地」なのです。

 東京や大阪の都市部では商圏の人口密度は高いのですが、車の移動に時間がかかり、大規模な駐車場の入出庫に時間がかかります。地方では目新しいテナントでも都市部では平凡なテナント構成に見える事もあります。そのギャップはかなり大きいのです。

 都市部での賑わいを形成する人の動きは基本は徒歩でターミナルと、日常生活の目的地(学校、職場)からの徒歩圏が活動範囲です。加えて、音楽、演劇、エンタテイメント、などには人を惹きつける力があります。(アウトレットパークはある種のエンタテイメントだと考えられます)地方都市では他に目的地がないので郊外のショッピングモールに広域からの集客が可能ですが、都市部では無理です・・・・というのが業界では常識的な見方だと思っていたました。
 先端的なはずのマスコミが意外に見た目の賑わい「過去の事例で人が集まっている」ということで「これからの店にも人が集まる」と考える人が多い事に少しびっくりしました。

 元気よく出店しているから、これからも元気な会社かというと・・・そうとも限りません。(私は昔の飛ぶ鳥を落とす勢いの時のダイエーやマイカルの社内の活気のある雰囲気も知っています。)

 「バックミラーをみながら猛スピードで走る」

 かつて「未来学」というものが提唱されたときに語られた比喩です。時代の変化はますますそのスピードをあげています。先を読むために「バックミラーを見る」=過去の歴史や、その法則性を分析して先を読むのは必要なプロセスだと思うのですが、現実はそうでなく、すぐ前に起こったことが、その先にも起こるという短絡的な見方で将来を判断される事が多くなってきたように思います。

 イオンモールの強み

 誤解の無いように申し添えておきますと、イオンモールは社会貢献や環境問題に配慮の高い先見性のある良い会社です。これから中国での大型モールの開発などに実績をあげて行かれることと思います。自転車に対して理解があるのも好感度アップのポイントです。他のSCのように売上数値を公開していないので誤解される事が多いようです。(いい意味でも、悪い意味でも)他の会社と同じくウィークポイントもあるということなのです。

 下図で比較したように売上上位店舗は規模も大きく、駐車台数も多い店舗です。ただし、SC業界のトップ店舗はより小さい規模でより多くの売上を上げています。・・・だから悪いというわけではありません。外国人観光客をつかまえる「ソラナカ」施設や、ルミネなどに代表される駅ビル、アウトレットモール、特定の立地だけで成り立つ百貨店を核にした上質なショッピングセンター(二子玉や西宮北口、くずは)などの沢山の優良なプレイヤーが数ある中の一つであるという事です。

 商業について、普段あまり考える習慣がない「メディアの関係者」には、少し前の出店、集客の勢いが印象的なのか「イオンモール」がすごいと過剰に評価する傾向があるようです。・・・そういった言葉を直接伺って、少しびっくりしてしまいました。念のために数字を調べなおしましたが、私の評価は間違っていないと思います。

 もちろん、過小評価するのも間違いです。優秀なスタッフが気がついていても、大きすぎる、成功し過ぎることで軌道修正できないウィークポイントもあるということです。(それは都市部の店舗に顕著に見受けられます)
                                                (2010年10月04日)

図ーイオンモール売上上位店舗とショッピングセンター売上上位店舗の比較


(イオンモールは200年 決算資料〜売上は年次不明、SCは繊研新聞調査  イオンモールがアンケートに回答していないため、年次は異なるがおおまかな傾向を比較した)

表ーイオンモール各店の売場面積、駐車台数、営業収益、売上規模

イオンのIR資料より抽出 営業収益と売場面積の時期がずれていることに注意
売上規模はWEB検索で上位店舗をピックアップ  あくまでも目安です
「ならファミリー」はPM物件なので500億円の売上規模があってもイオンモーとしての営業収益は低くなっています。

イオンレイクタウンはイオンモールが運営する「KAZE」」等とは別にイオンリテールが運営する「MORI」棟がありあわせて21.8uになります。目標売上は850億円ともいわれています。ジャスコや専門店ビルフォーラスはイオンリテイルが運営しています。
■収益の仕組みを変える〜苦境に立つラジオ業界から考える

 ラジオが陥る負のスパイラル

 インターネットを通じてお音楽をダウンロードする習慣が一般化した結果。ipodやケータイで好きな音楽を聴くのでラジオを通じて音楽を聴く時間が少なくなっている。
 それでも、関西圏の個人聴取率は06年の9.3%から09年の8.6%へと0.7%の減少にしか過ぎません。

 ラジオの音質は確かに良くないのですが、地域に密着した話題や機動性では他のメディアに比べて魅力的であったはずです。ユーチューブやユーストリームの映像や報道が地上波テレビの映像を上回る魅力を持っているように、コンテンツが魅力的であれば支持する人も必ず増えていきます。

 ラジオ広告費は最も多かった1991年の2406億円から2009年には1370億円にまで縮小しているそうです。そのため番組制作費・人件費を削減せざるを得なくなり、番組の質が低下・・・・それで聴取者が離れていくという「負のスパイラル」に陥っているということです。(総務庁の研究会 資料から)

 地域に特化したコンテンツか商品力のあるキラーコンテンツか

 総務省の「ラジオと地域情報メデイアの今後に関する研究会」はなかなか面白いのですが、どうしても今までのような「広告収入」を前提とした議論が中心になっているように思います。(民間ラジオもサポーターから薄く広く受信料をとってという議論もあるようですが)

 利用者からいえば、ラジオはパソコンも不用な気軽な情報源で、災害時など、いざというときの大事な情報インフラです。津波情報を大臣がツィッターで発信していましたが、高齢者にはやはりラジオでないと伝わりません。

 関西で聴きたくても聴けないのは久米宏や吉田照美といった特徴のある内容の濃い情報発信の出来るキャスターの番組です。(お金を払っても聴きたい人はいるはずです)

 一方で、大阪市内のイベント・・・例えば本日から3日間開催される「〜River!リバー!りばー!」や、8日から3日間開催される「船場まつり」、10日の「御堂筋カッポ」などローカルなイベントの告知と密着取材など・・・・ユーストリームで結構画像が公開できているので、音声であれば「コストをかけずに」できるはずです。

 http://www.osaka-info.jp/suito/river_river2010.html へのリンク

http://local.yahoo.co.jp/detail/event/i87263/ へのリンク

 放送局はデジタル化などの投資負担が大きいと聞きます。本来はコンテンツにお金をかける。知恵を絞る競争をすることで業界が活性化するはずです。コストをさげればより小さい企業からも広告収入がられます(情報誌の「枚方ウオーカー」などのように)、コンテンツに魅了かあれば少しぐらいの利用料を支払う聴取者もいるはずです。収益の仕組みを変えてコストダウンを図れば、まだまだ魅力のある媒体だと思います。

 とはいえ市場が小さすぎるので、今の人員体制、今の給与体系では維持できない。これは他のマスコミにも当てはまるのですが。若い人がもっと簡単に参入できる市場になれば面白いことがいっぱい出来そうです。

                                                                                             (2010年10月01日)
 
 9月
■「人が集まる場所」という神話

JR大阪駅の1日平均乗降客数が、改装完成後の23年度には最近の約85万人から6万人増えて91万人になると年間3.1億人

 JR西日本の試算が発表されました。年間にすると3億人!単純に年間の人の動きを比較するととんでもないことになってしまいます。毎日定期で乗降している人がいるので60〜100万人がターゲットとなります。(それでも大変な数です)駅ナカビジネスは「空白市場」が発見されたので大きく伸びましたが、一通り開拓された後の伸びしろは大きくはないと考えています。

 よく誤解されがちなのはイオンモールのような郊外SCの賑わいです。食料品購入の週2〜3回利用者層が多いので年間1830万人としても御殿場プレミアムアウトレットの1,000万人、伊勢丹新宿店の3,000万人とは単純に比較は出来ません。

 プロモーションを仕掛ける、出店を検討するときに単に人数を見るのではなく、利用頻度や利用者層を見極めなければ間違えてしまいます。大阪でいえば、梅田に圧倒的に人の動きが集中していますが、20代、30代の女性が「歩いて楽しい」と評価しているのは、人の数が圧倒的に少ない堀江であったりするのです。(図ー2)

 単に人が多くても自社に関係のない人が沢山いてもプラスにはなりません。案外、人の多さに目がくらんでしまう人が多いのに驚きます。

 とはいえ、人の少ない場所、あるいは、あるいは観光地のように人の動きに季節差、時間差が大きい場所ではつい店舗自体もひっそりとして寂しく感じることがあります。

 人の流れが途絶える場所での商売の基本

 基本は「店内の動き」を作ることです。「製造販売」であれば忙しく立ち働く姿が活気をもたらします。またイベント開催などで「顧客」を集めたり、ファンのサロン的な空間をつくる。店頭だけでなくWEBサイトでの販売のウェートをあげるなどの収益確保も必要です。

 どうしても繁華街立地の店舗になれてしまうと、その視点で評価しがちですが、コスト構造を見直せば業種業態によりますが商売は成立します。顧客との深いつながりを前提としたそのようなビジネスでないと大手ショッピングモールに飲み込まれることになります。

 昨日のテーマに関わりますが、観光地での「テキ屋」的な安物衝動買いビジネスは、あまりそれが行きすぎると観光地の価値を損ないます。焼き畑農業のようなものです。

                                              (2010年09月30日)

図ー1年間入れこみ数の比較

(レジャー施設は「レジャー産業資料」2009年の数値、空港は2008年、SCは2006年の数値)

図ー2歩いていて楽しい街

(なにわ考現学2005)
■「何故土産物屋では駄目なのか」観光地立地の商業の課題

 テーマパークで売りたい・・・

 お土産物の食品を作っているメーカーでは、テーマパークのお土産として卸すのが一番利益率が高いようです。商標利用料はとられるとしても、ネズミや猫の絵がついているだけで普通の観光地、SAにで売るよりも2倍高く値付けされて売れるからです。
 生鮮食品は地元の産品が売れますが、お菓子類は全国展開しているお土産物専用の菓子メーカーが作っています。また全国ブランドのお菓子のご当地バージョンというのも増えてきています。

 お土産物のマーケティング

 お土産物というのはギフト商品の一部として発展してきました。旅行を楽しんできた事のおすそ分けとして、職場や近隣コミュニティに配られたモノで、「観光地の記号」と「相場の価格帯」で選択されることが多かったのです。

 ギフト市場全体で儀礼ギフト、義理ギフトが退潮傾向にあります。バレンタインデーでも「義理チョコ」という言葉が死語になりつつあります。ギフトでも自家需要に近い品質と満足感が必要になってきています。お土産物についてもセンスとクォリティが求められてきています。

 観光立地の商業施設がお土産物屋の集積では駄目な理由

 観光地立地ではどうしても曜日の変動、季節の変動が大きく、商品のロス率も高くなります。どこの観光地もリピーターが中心になってきていますから、お客様の目も肥えてきます。
 土産物用に作られた商品はロス率の高さをカバーする為に、原価率を下げた質の低い商品が多くなります。売場にそのような」商品が並び出すとリピーターは近寄らなくなり、初見の客からぼったくるような店が多くなってきます。

 昨日久しぶりに訪れた某施設は、元々テーマ性をもった店舗を集めたフェスティバルマートを意図したモノでした。地元客向けの飲食店、フードテーマパークなどいくつかのてこ入れもされていました。2階にカジュアルなサンダルで人気のある「クロックス」の正規店舗が入店しているのはかつてのストアコンセプトの名残でしょうか。
 2層の商業施設の内1階部分は各店がばらばらのスナックコート(テキ屋スタイルの店)土産物の店舗で埋め尽くされています。その中で「クロックス」のパチモノの店が正規店と軒をつらねて堂々と商品を並べているのにはびっくりしました。ここは東大門市場なのか?

 その後に神戸そごうのヴィトンの店舗の同じビルの中に「ブランド買取」の店が並んでいるのを見てびっくりしました。もう,あの会社では「何でもあり」ですね。(ビルオーナーはそごうとは別会社です)

 統制がとれていない闇市のような商業施設は再開発される必要があります。この店舗はかつては民間の商業者が運営を「担当していたしていた3セクでしたが、現在は中途半端な運営形態です。公営であるなら神戸の「北野工房のまち」のように、必ずそこに職人が常駐してそこでつくる施設でないといけない・・・といったような縛りをかけて魅力を維持する事も可能でしょう。

 空き床をつくると前年に比べて賃料収入が落ちるという強迫観念があるのだと思います。目先の売上だけを追うと、将来「ぺんぺん草も生えない」状態になります。早急に民間の商業者の手を借りてリニュアーアルするか、公営であれば公共性の高い、しっかりとしたコンセプトを持った、(目標賃料収入を下げた)施設にするべきでしょう。

 税金で作った以上「土産物屋」では駄目なのです。

                                                                  (2010年09月29日)
■セントレジスホテル10月1日開業〜2012年に向けてホテルも激戦化

 10月1日「セントレジスホテル大阪」開業

 大阪のど真ん中、本町のかつて総合商社のイトマンがあった場所にアメリカスターウッドグループの最高級ホテル「セントレジスホテル大阪」が開業します。1泊7万円からと「ザリッツカールトン大阪」の2倍以上の宿泊料です。
 円高とはいえ、このクラスのホテルに宿泊する人には、あまり関係ないのかもしれません。プールとチャペルは併設されていないそうです。

 新しいホテルは「船場」の要所にあります。大阪船場は愛着を持つ市民が沢山存在するエリアです。このホテルをきっかけにして街がまた活性化すればいいのですが・・・。御堂筋をはさんだ向は東芝の古いビルです。東芝といえば東京の数寄屋橋にある旧数寄屋橋阪急(現モザイクボックス)のビルを建て替える計画もあり、千里ニュータウンの社宅の分譲マンション化など不動産活用に動き出している企業です。本町をさらに西へ四ツ橋方面に向かうとオリックス不動産の高層ビルも立ち上がっています。ターミナルばかりが注目されますが、御堂筋を中心とした本町界隈は東西南北の移動の利便性が高い地区です。(府庁が引っ越すWTCや海遊館につながる地下鉄中央線や観光拠点である大阪城にもつながります。

 かつて日航ホテルの開業で心斎橋の西が変わったように、安物の壁が極限まで薄いことで評判の某ビジネスホテルチェーンではなく、このクラスのホテルが存在する意味は大きいのです。

 http://www.stregisosaka.co.jp/ へのリンク

 大阪市内のホテル開業計画

 主な計画を表にまとめました。宿泊特化型が多いのですが、梅田北ヤードの「インターコンチネンタルホテル」と京阪電鉄の中之島でのラグジュアリーホテル計画が注目されます。この他にも中之島のリーガロイヤルホテルの新館建設の時期など既存ホテルの競合への対応も予測され、厳しい競争が始まります。

 レストランやブライダルについては、かつてはホテル業界が一歩先んじていたのですが、路面店の充実、ハウスウェディングやリゾートウェディングの台頭によりホテルの強みを失ってきました。

 冠婚葬祭に限らず人の集まる機会の商機(部屋貸し、宴会会食需要)を開発する企業努力が必要になります。

 今後の大阪市内への出店についてホテル運営者は慎重です。御堂筋沿いであればと、物件を公募している企業でも、実際には東京以外への出店を控えています。宿泊、飲食、宴会が揃いブランド力のあるフルライン型のシティホテルはもう、地方では成立しにくくなっています。百貨店と状況はよく似ています。

 駅前の再開発で自治体の首長さんはどうしても「高級ホテル」を誘致したい欲望を持ちます。・・・・とはいえそういった事情で、ホテルの普通の出店は困難になっているので、何か別のイメージシンボルを考える必要があります。

                                        (2010年09月29日)

 海遊館といえば、水道橋博士がツィッターで盛んに感心しているアイマックスシアター「ハッブル3D」をやっと見に行くことが出来ました。CGだけでなく実写が多く使われていて感動的です。東京の芸人さんの情報で改めて知る・・・大阪の人間は大阪のことが見えていないのだなあと思いました。マスコミにのらない情報は地元の人間でさえ知らない。これは良くないですね。・・・それにしても天保山マーケットプレースは完全に「土産物屋」になっていました。かつて、どこにでもあるよう土産物屋にだけはしないでおこうと苦労された先人(公務員、民間出資者)の努力を良く知っているだけに「わややがな」感を強く感じます。

 リニューアルの時期が来ているのです。抜本的に手を入れないでその場対応の応急処置をするから、イージーなテナント構成になってしまいます。

 空いた床を埋めないと収入減になるので、その場その場の対応を繰り返さざるを得ないつらい事情は拝察されますが、しっかりとした商業者を入れて、定期的にリニューアルを繰り返す事が必要です。
表ー大阪市内のホテル計画

(週刊ホテルレストラン 2010年6月4日号をベースに再調整再構成)
「インターコンチネンタルホテルは2013年開業というニュースもある)

  
■日本の食材と化したキムチ市場の未来

 漬け物はご飯の友から進化する?

 漬け物はご飯には欠かせないおかずです。地域地域に、生活に根付いた美味しい漬け物があります。日本国内の漬け物生産量では意外にもキムチが断然トップになっています。伝統的なお漬け物が、あくまでもご飯のおかずにとどまっているのに対して、2004年頃から定着した「キムチ鍋」に代表されるように麺類や鍋物にもあうキムチが国民食になってきています。

 本場韓国の味から日本の味へ

 「冬のソナタ」が地上波で放映されたのが2004年。この年、韓国から日本へのキムチ輸出量がピークを迎えます。翌年、中国産のキムチに寄生虫の卵が発見されたのを機に、韓国から日本へのキムチ輸出量は減少していきます。韓国では安い中国産が料理店で提供される卓上の無料のキムチに利用され、韓国産が輸出に回っていたのですが、輸入食品へのアレルギーでダメージを受けました。(どこかで中国産の材料を使っている可能性も否定できません)

 ちなみに、日本の漬け物も、道の駅で売っているような安い漬け物や山菜はすべて中国産でした。(現在、原材料の表記は国内産のものが増えていますが・・・・)

 嗜好の変化、食卓の変化にあわせた日本産のキムチ文化を

 キムチも、大手メーカーが調味液につけてつくる大量生産品ではなく手作りで作られたモノには、独特の美味しさがあります。白菜や大根といった定番の素材だけでなく地場野菜や海産物で作られたキムチも新しい味覚として楽しめます。

 キムチにすると漬け物はご飯だけでなく、サンドイッチやピザ、鍋などにも活用範囲が拡がるので地域興しとして面白い取り組みが出来るかも知れません。ピリ辛のあくの強さが気になるかも知れませんが、乳酸菌での発酵は自然なうま味を引き出してくれます。

                                          (2010年09月27日)
図ー1 漬け物生産量


図ー2 キムチ国内生産量他院・韓国からの対日輸出量の推移

(食品需給研究センター)
■東京から日本は見えない〜格差10対1の錯誤

 東京の企業が間違えるシニアの資産格差

 有料老人ホーム事業について、東京では数千万の一時金の高級物件が成立するのに、関西ではそのような高額物件が難しいというお話を伺いました。東京の感覚で関西に出店する業者はことごとく失敗する。・・・・高齢者の資産はほとんど不動産なので、換金価値の高い住宅地が多い首都圏と、換金価値の高くない関西では市場の力が10対1ほどの格差があるのが現場の実感ということです。

 かつて富裕層マーケティングについてスタディした時に、東京にいるような「IT長者」や「成金層」は少ないが伝統的な代々の金持ちは関西にもそこそこ存在するという議論がありましたが、トップクラスに続く「金融資産は少なくても居住住宅を資産とする層」の厚みの格差にまでは、我々の議論が深められていなかったように思います。

 居住住宅を売却して現金化するのは人生の終末期ですが、その段階で東京とそれ以外のエリアの格差が一層顕在化するというわけです。

  東京の業者が関西に進出して失敗するのは首都圏での成功パターンをそのまま関西に持ち込むからです。

                                                   (2010年09月24日)
■信州大学が農産物直売所のノウハウを伝授する学校を開校

大学が果たす地域の輝きを磨き上げる役割

地域活性化につながる農産物直売所を担う人材を育てようと、信州大が「信州直売所学校」を開講した。大学教授や成功している直売所の運営者らを講師に迎え、講義や研修などを行う。8月6日から来年1月27日まで毎月2〜3日間、計14日を予定し、全国から集まった直売所運営者や生産農家、Iターン希望者や学生など40人の受講生が学んでいる。こうした取り組みは全国でも珍しいという。

 生産者が価格を決めて直接売る直売所は、新鮮さや安全性、価格の安さなどから人気を呼び、年々増加。同学校によると、08年現在で県内の産直市場・直売所は季節限定も含めて計568カ所。全国では約1万4000カ所といわれる。道の駅に併設されるなど、観光名所としても脚光を浴び、特産物を使ったジャムやジュースなど加工食品の販売も活性化している。

 同学校は「農商工の三つが連携して、地域振興につなげる」と強調。直売所の運営者だけでなく、生産、加工、販売の連携をコーディネートできる担い手を育てたいという
(毎日新聞9月4日  地方版)


本年度の事業では、地域連携(農商工連携)の重要なキーポイントである直売所に焦点をあて、多角的視野を持つ農商工連携事業を担う次世代・連携キーパーソンの育成を行う研修事業です。
実際のカリキュラムは、文理融合の内容を目指し「応用生命科学」、「生物機能科学」、「環境ツーリズム学」、「生活環境学」、「人文学」、「社会科学」(文化、歴史、マーケティング、ブランディング等)と多岐にわたります。本研修の受講は無料で、30名を公募で決定します。

会見で、地域ブランド分野長の村山教授は、「地域ブランド構築の手法を通じて“地域が輝くためのお手伝い”をしたいと考えている。」と述べ、本人材育成事業を実施した後、具体的に見据えている連携の成果として、「新たな産品ブランドの創出」、「新たな流通の創出」、「Iターン、Uターンの創出」、「雇用の創出」、「地域のブランド化」などを挙げ、さらには「これらによる経済波及効果の創造」等を目指し、『小さくても地域に根ざした産業を育てていきたい』と事業への豊富を述べました。

また、会見には村山地域ブランド分野長に加え、7月から新たに本事業のために着任した毛賀沢明宏 農商工連携コーディネーターや、実際に直売所の経営をされておられる株式会社産直市場グリーンファームの小林史麿氏、そして生産者 直売所 アルプス市場 アルプスフラワーガーデンの犬飼浩一氏が同席しました。毛賀沢コーディネーターからは、本事業の概要説明が行われ、小林氏、犬飼氏からは、直売所の現状と喫緊の課題等についての説明がありました。

(信州大学 平成22年度 農商工連携等人材育成事業の採択について)

 産地直売所の野菜は「旬」のものは手に入りますが。旬をはずれたもの、形が不揃いなものも多いのです。消費者がその価値をきちんと評価できるようになればモノの流れも変わっていくでしょう。
 ただ、加工食品は不味くて、洗練されていない商品が多すぎるように思います。
 シェフやパティシィエ、製菓学校などと組んで、いいものを作ろうという動きがあります。そこには鮮度管理、商品ロスの発生対策などあらたな課題が生まれてきます。大学がカバーできる領域に加えて、売り切る仕組み作りが必要になってくるでしょう。


流れが変わる・・・だからこそ源に遡り新しい流れをつくる


 今、阪神百貨店で「楽天市場うまいもの大会 @阪神」が開催されています。WEBを通じて世の中に知られるようになった商品が「リアル店舗」で販売されます。おそらくかなりの人気を集めることでしょう。ただし、楽天系のグルメは「つくったもの」が多くて長く愛されるかどうかは不確定です。

 モノや情報の流れはあきらかに変わってきています。だからこそ、その「源」に遡って、エンドユーザーへの新しい流れの経路を創っていく必要があります。
http://corp.rakuten.co.jp/newsrelease/2010/0917.html へのリンク


                                     (2010年09月22日)
■新博多駅ビル開業のインパクトが下方修正された理由

 新博多駅、駅ビルの売上予測は約900億円

 日本政策投資銀行九州支店は新博多駅駅ビルの売上げ規模を900億円と試算しています。天神地区は180億円の売上減少と推計されています。昨年11月に発表されたレポートでは1,300億円と推計されていましたから400億円の減少です。(天神の売上減少予測値は前回は301億円でした)

 基本は「ハフモデル」を使った推計なのです。前回との相違点は以下の4つのポイントです。

 1.商業統計のデータの年次(前回は2004年、今回は2007年)
 2.分析対象圏の拡大(20km×20kmから30km×30kmへ拡大)
 3.福岡パルコ、バーニーズニューヨクの天神地区への出店
 4.売場面積(前回10万u、今回8.5万u)

 福岡市では都心の居住人口が増大しています。天神地区は売場面積の増大に比べ販売額は減少しているようです。※パルコ、バーニーズ開店前。
 新博多駅ビルの売上げ目標は核店舗の阪急百貨店が400億円と発表していますから、東急ハンズ、アミュプラザ(駅ビル)」を合わせても700〜800億円前後と予測されますから、売上推計の試算の修正は妥当な水準でしょう。


http://www.dbj.jp/ja/topics/branch_news/2010/files/0000005430_file1.pdf へのリンク

http://www.dbj.jp/ja/topics/branch_news/2009/files/0000003448_file1.pdf へのリンク


 天神の商業集積は強力・・・博多新駅ビルは京都の成功事例を研究する必要

  上記レポートの中で、4都市の中心商業地を比較していますが天神地区の販売額はとても大きいものです。
※天神地区は広範囲に拡がるため2メッシュの合計値であることに注意が必要です。

 博多新駅ビルは京都駅で」R京都伊勢丹と駅ビルが成功したように、既存の商業集積から利用者を奪い取るというよりも、足元の通勤通学者及び沿線の顧客の需要をいかに獲得するかから考えるべきでしょう。

 実務者が業務に使うために分析を加えるとしたら。都心の商業施設の売上予測にハフモデルだけは不適当であるとは考えます。せめて品目別利用者層を想定し、いくつか区分して積算する事が必要です。例えばイオンとバーニーズを売場面積で比較しても意味はありません。
(日本政策銀行の分析はハフモデルだけではなく多面的にレポートされているので参考になります)

 エリアとターゲットが明らかになれば販売促進、顧客作り、商品政策について「選択と集中」が可能になります。多面的な魅力がある天神に対して存在感を示すには思い切った政策が必要になるでしょう・・・。

                                               (2010年09月21日)

 開業後、天神地区の苦戦が伝えられています。天神の規模が大きいだけに博多駅の影響を過小評価していたようです。
 商業施設は規模に関わらず、絶えず情報発信が必要です。

地方都市の中心商業地の比較
図ー商業中心の販売額(億円)、売場面積(万u)比較  1kmメッシュ ただし天神は2つのメッシュの合計値

(2006年 商業統計)

■「大阪を住んでみたい街にしたい」と本気で考える

 大阪市はひとつではない〜都市のサイズについて考える

 いわゆる「大阪都構想」について疑問に思うのは、単に人口規模を20〜30万にあわせて区切るという行政の効率からの視点で語られていることです。

 大阪市の市内人口は265万人。市内総生産は兵庫県、北海道を上回ります。これだけの規模であるからこそできることと、これだけの規模になってしまったから出来なくなってしまうことを天秤にかけて、よりコンパクトなまとまりを持って特徴のある都市作り、個性を生かした都市作りをしたほうがいいんじゃない・・・という筋道の議論であればまだ広い理解が得られるのではないかとも思います。

 昨日のアメリカオレゴン州ポートランドの情報を収集していて、「住んでみたい」と強烈に惹きつけられる魅力を感じました。もし関西でこのような都市になれるとしたらどこに可能性があるか?「芦屋」「千里」「西宮」・・・ポートランドで人口57万ですからそのサイズの行政区にに企業や大学、などが集中している事が望ましいのでしょうね。

 大阪市内では無理なのでしょうか?「ごちゃごちゃして」「お金儲けのことしか考えていない」「下司のまち(by梅棹忠夫先生)」なので「カジノ」でギャンブル好きの中国人観光客を集客するのをがお似合いなんでしょうか?

 タワーマンションが建築されるようになり、都心回帰が進んでいます。とはいえ全国的に人口減少が進む中で「交流人口」の拡大が目標とされ今まで「集客都市」について知恵を絞ってきました。
 新しく大阪市内のタワーマンションに住む人は「梅田」(に代表される都市の中心部)への利便性で選んでいるだけで船場、天満、本町、谷町などの地域に対しての興味はないように思えます。
(住んでみたいまちランキング)
http://www.oricon.co.jp/news/ranking/44258/ へのリンク

 雑誌「「大阪人」が毎号地域をテーマに特集を組むように、大阪の各区はそれぞれの歴史分化を持っています、その地域で生まれ育ち、その地域で働いている住民が多く存在し、その街のカラーを作っています。大阪市といっても一つではありません。

 「大阪あそ歩」はそんな地域の特性を活かした「観光資源」の活用です。
http://www.osaka-asobo.jp/machiaruki/list_10autumn.html へのリンク

 住んでみたい街づくり

 広く全国や海外か「住んでみたい」と憧れるような街にするためには文化的、環境的な特徴付けを明確にしていく必要があると考えています。一つの鍵が「大学」です。その街で4年間過ごし愛着を持てば、卒業後も定住が期待できます。

 シリコンバレー、フードバレーやポートランドの事例でも明らかなように地場産業の振興のために大学の研究機能、創造的な役割の重要性ますます高まっています。知的で創造的な住民を集めるためにも大学を中心とした研究機能は必須です。
 
 大阪市内で現在進められている大型プロジェクトでは業務機能、商業機能のあり方は議論されることはあっても、居住機能のあり方か「住んでみたい街」としてどのような特徴を持たせるかという視点での検討が遅れているように思います。

 色々な特徴を持った住んでみたい街ができれば、「大阪」「関西」全体のイメージを変えていけるのにと思います。

                                            (2010年09月17日)
■アメリカ人が選ぶ全米で最も住みやすい街には消費税もファーストフードもない

オレゴン州ポートランドが注目される理由

 アメリカ北西部にあるオレゴン州ポートランドは、人口はおよそ57万人、面積は約375平方キロメートルで、大阪市より大きく横浜市より小さいくらいの広さですが、アメリカの雑誌で「全米で最も住みたい街」 「全米で最もサスティナブルな街」としてトップにあげられているそうです。

 そうなった背景について日経BPのエコJAPANでは次のように解説しています「ブッシュ政権誕生以来、政府の反動的な政策に反対する多くの人々が西海岸に移り住んで来た。特にオレゴン州やワシントン州といった北西部には、環境とのかかわりや社会のありようについて、それまでの文明が向かっていたのとは異なる(オルタナティブな)道を探そうという雰囲気があって、それがサステナビリティの世界的潮流に共鳴してきたと思われる」

 観光ガイドではポートランドは消費税のないショッピング天国で、農産物などの食物も豊かなため、環境に優しい持続可能性に配慮した地元企業を応援する意識が市民の間にも強く、ファーストフードの店舗も数えるほどしかないといいます。スターバックスコーヒーでさえ、出店に反対の声があがっていたそうです。

 ユニークな施設・機能

 PNCA(倉庫だった建物を活用しているサスティナビリティを基礎とした教育方針を持つ美術大学)
 http://www.pnca.edu/ へのリンク

 持続可能性に関心の高い地元企業や市民とのネットワークを組んでカリキュラムを作成。(フードバレーでも触れましたが大学がまちづくりや事業に大きな役割を持っていることが興味深)

 パール・ディストリクト(地区)の再開発
 倉庫街の再開発でが、とりこわしてあらたに建築するのではなく、建物本体を残して事務所や店舗や住宅などに 改築して、文化的な雰囲気に満ちた心地良い街並みを作り上げた。改築や改装は多くの場合、新たに建て直す よりも費用がかかります。それでも“街の記憶”をとどめながら、節度ある開発を行う道を彼らは選んだのである。
 (日経エコJAPANより抜粋要約)

 この町は1980年代には高層ビルが沢山建ち、そのことで世界の注目を集めたこともあるそうです。写真で見る限る、歴史環境や周辺の農産物、地元企業の資源を活用したいい感じのコンパクトな街になっています。

http://eco.nikkeibp.co.jp/style/eco/column/masuda/080822_portland01/index.html へのリンク


The ReBuilding center (家のリフォームや立て替えなどでいらなくなった建材等を無料で引き取り、超お手頃価格で提供するNPOとボランティアにより運営されているリサイクルセンター)

http://www.cafeblo.com/jizoku/ へのリンク

 ファーマーズマーケット

 ポートランドでは半径60マイル(97km)以内の食材を使ったメニュー作りが盛んといわれています。それだけ農産物が豊かなのでしょう。


 ついさっき「グリーンネイバーフッド」米国ポートランドにみる環境先進都市のつくりかたと使いかた という本の広告を見て少しネットで調べただけで面白そうな情報が沢山出てきました。(本は早速注文します)

http://www.senken.co.jp/book/respective/m_gnh.htm へのリンク


 アメリカという国には本当にいろんな価値観が併存しているのですね。また57万の規模の都市で企業も市民も意識の高い人があつまってユニークな都市を造ることは可能なのですね。何かわくわくしますね。

 大阪でも「カジノ特区」とか「サラ金特区」とかで人を集めるよりも、創造的な考え方の人を集める特徴付けが出来ればもっと活性化するのにと思います。「梅田北ヤード」のナレッジキャピタルに巨大サッカースタジアムをつくるだけの資金があるのいなら・・・・・・1回限りの打ち上げ花火よりも持続可能性があると思うのは私だけでしょうか。

                                              (2010年09月16日)
■覇者のピットフォール〜流通革命は消費者を幸せにしているか?

 ウォルマート式出店戦略

 某展示会での大手流通チェーンのバイヤーさんの肩で風を切る振る舞いを伝え聞くにつけ、かつてのダイエーやマイカルの商談室の風景を思い出して懐かしく思いました。ダイエーの中内さんがメーカーか価格設定の主導権を奪い取るという理念と行動は多くの消費者の支持を受けて一時は日本の小売業のトップに立ちました。彼らは何故、消費者の支持を失ってしまったのでしょうね。

 いわゆる「流通革命」は結果的に私たちを幸せにしてくれたのでしょうか?GMSの不振と地域に根付いた食品スーパーの好調を見ていると、その功罪は相半ばしていると考えるのが妥当かと思います。

 東京の築地卸売市場の移転で仲卸が集約され、大規模化した結果、全国チェーンのGMSにとって有利になる反面、街のお寿司屋さんなどに卸している問屋さんがつぶれてしまうことに関連し・・・・「そうなったらお寿司屋さんはイオンやヨーカドーから仕入れればいい」と放言した副知事がいるそうです。

 米国でウォルマートが出店した街の小売店が壊滅する事に対して「生産性の低い店舗は淘汰されて、つぶれた店の店主はウォルマートに(安い給料の)パートで雇ってもらえばいい」という理屈を連想させます。

 某商業デベロッパーさんがイオンモールには勝てないといっておられます。個別物件の地域内の採算性でなく、大きなエリア300km圏の中でのシェアをどれだけとれるかが行動基準になっているので、特定の店舗の採算性を度外視するウォルマート流の仕組みを取り入れていて、テナントにも全店での収益を前提にした条件提示をする。=(思い切った好条件も提示できるし、こちらが対抗すると採算のいい他店からの退店をほのめかすことも可能であるからです)・・・・それはそれで素晴らしい事です。

  美味しくて安い店がすぐに店を出せない理由

 食料品に関して「美味しくて」「安い」店の多くは家族経営で、手作りの業態が多いのです。チェーンストアや大手の流通に乗せるための生産ロットを拡大するのは簡単なことではありません。急激に人気を集めて、あちこちの店の店頭にならんだ商品があっという間に消えてしまうのはよく見かける出来事です。

 チェーンストアの拡大は均質な商品を安く大量の行き渡らせるのには適しています。少子高齢化が進み人口が減少していく社会の中で伸びていく商品は他では手に入らない希少性のあるものです。

 商業統計で商店数が激減する中で、かつては一定の確率で存在していた店主の強いこだわりのある品物を揃えていた店とその店に商品を提供していたメーカーがどんどん絶滅しているのだなと実感します。

                                               (2010年09月15日)
■ミニチュア模型と村おこし〜四万十町にミュージアムをつくる海洋堂

 マニア向けの模型作りから始まった「海洋堂」 

 大阪府門真市に本社のある海洋堂は昭和39年にホビーショップとして開業しました。昭和57年から焼きたてパン屋さんのように自分達が作った商品を販売したいとオリジナル商品を扱うようになりマニア向けのフォギュアモデルガレージキットの制作から2001年のチェコエッグブームで大ブレイクしました。マニアの世界ではグローバルな知名度を持つ企業です。

 模型の製作技術は高くて、アメリカの自然史博物館からも制作依頼がくるほどです。

 http://www.kaiyodo.co.jp/ へのリンク

 四万十町で取り組む「ワルガキプロジェクト」

 社長の宮脇氏は81歳のご高齢ですが、「老人パークをつくろう」と四万十奇想天外プロジェクトを進めています。社長のお父上がたてられた「神社の再興をきかっかけに「300体のカッパのフィギュアが並ぶカッパの谷自然パーク」「廃校した小学校を利用した海洋堂ホビー館」〜海洋堂コレクションの集大成「押し入れのコレクションをあつめた個人のコレクションの集合〜小さなミュージアム」〜四万十川全域に展開、などなど・・・・

 65歳以上の老人限定のサポーター募集などユニークな村おこしを進めています。

 ホビーの世界でマニアとともに事業を拡大してきた小さな会社ですが、四万十川の清流を守るという大きな動きにつながっていく姿。小さなモノ、辺境のモノ、世の中の傍流であったオタク的な世界が世の中を動かしていく姿には感心します。・・・・「どうですか皆さん」と壇上で自慢げに鼻をひくつかせる事のない、市井の人の動きが世の中を少しでも良くしていく力なのでしょう。

http://www.kisotengai.jp/warugaki.php へのリンク

                                                 (2010年09月14日)
■源にふれろ〜上流に遡ることで強くなる説得力

 WEB世論と世論調査の乖離にあらわれる「情報」の産直市場

 ツィッターと呼ばれている140字のつぶやきに対して評価は大きく分かれています。評価しない人は徹底的に嫌うのが面白い傾向です。テレビや新聞で名前が売れた著名人も自分でつぶやきを始める人が少なくなりません。

 特にジャーナリストや文化人、政治家のつぶやきを追いかけていると、早くて率直な本音を知ることが出来ます。マスメディアはどうしても大多数に知らせるための規制やバランスの配慮がされているだけに、ストレートな情報が伝わりにくいのと、どうしてもメディアの中枢が存在する東京の狭いサークルの価値観に染まっているバイアスが感じられます。

 より生の情報については私たち自身が本物と偽物を見分ける選択眼を鍛えることが求められますが、編集の手を加えずに放送されるユーストリーム(アイフォンから生中継される画像)で見応えのあるコンテンツが提供されるなど情報の世界でも「産地直送」が一定の地位を占める傾向が強まっています。・・・・百貨店業界はメディアの中の大手新聞社のような危機にさらされているのです。

 生産者と消費者がダイレクトにつながるのは「価格」だけが動機ではありません。より源流に近づくことで、安心感が強くなるのです。

 大規模調査の信頼性は揺らいでいるのか

 調査の専門家として考えることがあります。最近メディアの行う調査と街頭での市民の反応やWEBでの反応の違いを基に、「1000人程度の調査」が信頼できるのかという声が聞かれます。きちんとした手続きと調査対象の設定を間違えなければ「信頼できる」と断言できます。ただし、社会環境の変化一つの調査だけでは限界があります。

 世論調査はよくスープの味見に例えられます。大きな鍋のスープを全部飲まないでも、良くかき混ぜれば一口味わえばスープの味は把握できます。良くかき混ぜる作業がランダムサンプリングです。

 今は、鍋は大きなひとつの鍋ではありません。いくつもの形で素材も味付けも違う鍋が並列しています。新聞とテレビしか情報源が無い人と、自分で情報を集めて考える人とでは意見や態度は違います。
 世の中にはどんなカタチノ鍋があり、その大きさはどのくらいかを考えるところから調査が始まります。

 東京にいることの優位性が情報を見えにくくする

 人間の情報の判断には身近にいる人達との普段の意見のやりとりが強く影響します。民主党の代表選挙を巡る報道の混乱の背景には「邪悪な陰謀」があるというよりも、東京のマスメディア特にテレビの中の出演者の「お友達同士」には「O候補は悪・・・昔から悪だから」という認識が空気として存在していることが伺えます。

 東京の優位性は情報発信する人が集中していることにあります。狭い交友関係の中での情報のやりとりはディープな裏情報も得られますが、間違った情報を(お互い無意識に)こだまのように増幅してしまう危険性があります。

 情報が見えにくくなることで、連想するのは、展示会などでの百貨店、大手チェーンストアのバイヤーさんの行動です。基本的にベンダーは商品を扱って欲しいので一生懸命ちやほやしてくれます。その関係の中では「偉くなった」様な気がするので、いまだに肩で風を切って現実を見ない。・・・・今も昔も熱心なバイヤーさんは情報源や交友関係も自分から拡げていますが、あえて「自動的に自分が偉い立場に立てる場所(人間関係)」から外へ出なくても毎日の仕事は過ぎていくので、そこまでする人は少ないでしょう。

 商品も、情報もその気になれば源流をたどることが出来る時代です。一部のスキルを持った人達だけでなく、新しい流通ルートをビシネスにする動きも強まっています。その中で「中間流通」」の立場に立ったときにどんな付加価値を与えることが出来るか・・・「大手新聞」や「百貨店」の生き残る途は決して自ら産直業を始める(WEB販売を始める)ことだけではありません。・・・・若くて野心のある起業家と同じ土俵で勝負しては勝てないのですから。

                                                   (2010年09月13日)
■少しづつ縮小していく中元歳暮市場とコミュニケーションの変化

 この10年間縮小を続ける中元歳暮市場

 特に縮小しているのは法人での中元・歳暮であるようです。百貨店外商部や法人ギフト関係者の感覚では毎年5〜10%減少してきたという事です。個人の中元歳暮は百貨店から他業態にシフトしている事があげられます。価格を重視する人は量販店やWEB、手軽さを重視する人はCVS等、選び抜いたこだわりを重視する人は産地から直接贈るようになってきています。最近の調査では「産地直送市場」というカテゴリーが8.3%のシェアを示しています。(きっと首都圏の調査でしょうね,関東は生産地が意外に近いですから)

 百貨店にとって中元歳暮は決して利益率の高い商機ではありません。ただ、普段のロイヤリティが結果に表れることと、新規顧客獲得のチャンスであることからとても重要な市場です。消費者が「生産者」というより上流とのつながりを深めていくことが「百貨店」の価値を減少させるという傾向は「百貨店」の商品選択眼という機能が低下している、お客様にとって情報源として、また品質の信頼性の保証機関としての魅力が薄まっていることのあらわれです。配送料無料や割引などの価格競争に走ったツケでしょう。

 法人ギフトの縮小は不況による経費カットばかりが原因ではないと思います。商取引中での「モノ」のやりとりといものがなんとなく敬遠されるようになってきている傾向があらわれてきているのだと思います。義理や人情や貸し借りといったウェットな人間関係が徐々に影響力を失ってきている。(あくまでも徐々にですが)

 ビジネスでの考え方が変わってきているのだと思います。(良いことばかりではありませんが)とはいえ、現在伸び盛りの中国市場では人間関係作りがとても重要です。違法にならない関係の作り方として、ちょっとしたギフトは必要な潤滑油でしょう。

                                           (2010年09月10日)

図ー中元・歳暮の市場規模推計値

月刊ギフトによる推計
(厳密な統計ではなく各年の取材による定性的な推計値)

図2010年 中元の購入場所

(NTTナビスペース  2010年7月調査)
■「食」を軽視できない百貨店〜利益を残す経営構造は出来ているのか?

 食料品への依存が進む百貨店

 かつては大阪梅田で妍を競っていた阪急と阪神がともに食料品に強い事もあり、東京の百貨店に比べて、大阪の百貨店には食料品を重視する傾向がありました。

 百貨店業界誌ストアーズレポートが掲載した2009年の部門別売上高の数値を見ると、食料品はターミナル立地、郊外立地の百貨店を中心に現在大きなウェートを占め始めている事が伺えます。

 阪急は工事中なのでやや食のウェートがさがりますが東急本店、東武、大丸東京店などターミナル立地の百貨店で3〜4割前後のウェートになっています。(かつて「「食品館」で一斉を風靡した西武池袋は最近イトーヨカードーのPB商品を揃えているようですが、食料品のシェアは2割程度に抑えています)

 お客様の百貨店の提供する食への期待も追い風になっているのだと思います。ただ、百貨店人はメーカーの提供する「ブランド」を引っ張ってきて場所を提供するビジネスに慣れ親しんでいますから、自前で商品を調達する成城石井やディーン&デルーガ、いかりスーパー、パントリーなどのグルメスーパーほど、収益をあげる力はありません。

 ターミナル立地、郊外立地では「食」の魅力による集客は必須です。とはいえ、食料品のシェアをあげると利益率は下がる(百貨店の組織のコストでは)というジレンマもあります。

 百貨店の王道を行くJR大阪三越伊勢丹はおそらく「食」の競争力が決め手になる

 2011年に梅田に開業するJR三越伊勢丹は、ファッションか美術画廊を備えた百貨店の王道を行くといわれています。伊勢丹のファッションの強みと三越の強みを活かす・・・ということでしょう。

 JR京都伊勢丹では食料品が3割、レストランが1割、あわせて4割が食関連です。三越も食料品のウェートが3割と意外に高いのです。

 食に関しては地域性が強いので、阪急、阪神、大丸との戦いは厳しいものになるでしょう。閉店した心斎橋そごうの食料品売場について過去にコメントした通りです。
 
 結果として,一部の売場(野菜、冨澤商店)は良かったものの、冷たくて,活気の無い東京風の食料品売場になってしまいました。旧そごう心斎橋店と同じ過ちです。
                                         (2010年09月09日)

図ー売上に占める食料品の比率


図ー売上に占める食堂・喫茶の比率



■名古屋に専門店ビルが少ない理由

 都心百貨店で進む専門店の導入

 大丸・松坂屋の「うふふガールズ」の成功など、百貨店に専門店ブランドを導入する動きが活発になっています。70年〜80年代の百貨店リニュアールブームの時にも専門店ブランドをを取り入れる動きはあったのですが、バブル経済の好況の中で再び百貨店と専門店の分化が進んだのでしょう。

 百貨店内部の人にとって「百貨店初」の導入は大冒険なのでしょうが、購入する消費者から見れば、百貨店が勝手に線引きをしているだけにしか見えていない事を自覚するべきでしょう。

 さて、毎年繊研新聞が実施する全国主要SCアンケートは、同じ基準で継続して公開されている調査として唯一のモノとして重宝しているのですが、名古屋市について調べようとして少し驚きました。市内で掲載されているのが「名古屋パルコ」だけだったのです。・・・・名古屋にファッションビルは存在しないのか?

 名古屋の専門店ビル

 名古屋といえば「名鉄セブン」のナナちゃんとか、銀座にも店がある「名鉄メルサ」が有名でしたし、ロフト、東急ハンズ、コンランショップなどもあるのですが、ファッションビルとして独立したものがあまりありません。

 栄地区では三越の別館「ラシック」、一応百貨店の「丸栄スカイル」がファッションビルの機能を果たしているようです。「名古屋パルコ」はかなり大型の店舗です。(392億円と池袋パルコの324億円を上回ります)名古屋市内で海外ブランドの路面店は大津通に集中しています。

 名古屋駅周辺では「名鉄セブン」「名鉄メルサ」は「名鉄百貨店」となっています。島屋の入っている駅ビル「JRセントラルタワーズ」や「ミッドランドスクエア」に集積があります。

 繊研新聞の調査はアンケートなので、名古屋地域の専門店ビルでは自分の店だけ公表すると損するという判断があるので掲載されていないのかもしれません。ただ、こうしてリストアップすると名古屋地区では百貨店と専門店ビルが渾然一体となって運営されているケースが多いようですね。(時代の先をいっている?)

 東京とか京阪神の常識が通用しない面白さを感じます。機会があれば名古屋をじっくりとフィールドワークする必要がありそうです。

                                    (2010年09月08日)

 その後判明した事実は名古屋商圏には20代の女性が圧倒的に少ない・・・・・ということでした。他地区からの女性の流入が少ない・・・のですね。それではファッションビルは難しいでしょうね。
■経営規模の大規模化多角化が進む農業〜農林業センサス発表

 農家数は5年前に比べて16.9%減少

 本日発表された農林業センサスで農家数は163万1千戸と5年前に比べて33万2千戸、16.9%減少し、農業就業人口は260万人と75万人(22.4%)減少しているようです。5年前に比べて1経営体当たりの耕地面積が増加しており、法人化している農業経営体は2万2千経営体と3千経営体(16.0%)増加しています。

 農産物の加工に取り組む事業者が42.6%増加

 農産物の加工にとり組む農業経営体は3万4千経営体となり5年前に比べて42.6%増加しています。観光農園は16.9%増、貸し農園体験農場は44.8%増、農家民宿は34.25増、農家レストランは50.5%増となっています。

 行政の施策のバックアップもありますが、実際に商品開発として、サービス業小売業として「成功」しているのはどれだけあるのでしょうか確かめてみたいものです。ソフトのノウハウが充分でないので、洗練されていないパッケージで、かつ致命的に「美味しくない」事例を少なからず目にするからです。

 農林業センサスはこのページ

http://www.maff.go.jp/j/tokei/census/afc/about/pdf/census10_zantei.pdf

 首都圏に多い産地直売所

 同レポートにあらわれた興味深い傾向が、産地直売所の施設数です。首都圏に集中しています、京阪神では意外に少ない事がわかります。

                                            (2010年09月07日)


図ー地域資源を活用した施設  産地直売所数(2010年 農林業センサス)








■「虹は消えた」〜広告代理店的ビジネスモデルの変化の時期

 財界にも不評〜誰も望まない梅田北ヤードサッカースタジアム計画

 関西のニュースに強い産経関西によると関西財界首脳はあまり乗り気ではないようです。大阪市をホームタウンとする、現在現在セレッソ大阪にしてもわざわざ規模の小さい長居第2スタジアムで試合を開催してコストダウンを図っているので8万人収容のスタジアムを望んでいるわけでもありません。・・・いったい誰が強く望んでいるのでしょうね。

 関係者の話を総合すると、広告代理店大手の電通が中心になってメデァに広めているようです。現在テレビ、新聞などのマス広告が低調な中、「オリンピック誘致」や「ワールドカップ誘致」で発生する莫大な受注は、成功しても、失敗しても支払われます。大きく膨らませれば大きく膨らませるほど「美味しい」商売になるということなのでしょう。・・・・・ここではありがちな電通悪玉論を語るのが趣旨ではありません。(彼らはただ、時代が変わっているにもかかわらず、従来の成功体験の呪縛から逃れられずに職務に励んでいるだけです)広告業界の昨年のニュースを見ても大型倒産とか売上の大幅減少とか明るいニュースはありません。今までの収益モデルが変わっていく変換期、移行期にあります。

 梅田北ヤードの「サッカースタジアム」のごり押しはその移行期にあらわれた環境への不適応、つまり変わらなければいけない時期に従来の行動パターン、思考パターンンから抜け出せない行動のあらわれです。潜在的に10の可能があっても2か3としか認知されていない、評価されていないものの認知、イメージの定着をサポートするのではなく、「0」のものを「10」と偽ってビジネスを作ってしまっているのです。

 「広告業界」はなくなっても「広告代理店的機能」は必要とされている

 長い間、マーケティングの実務をしていましたが、大手広告代理店との直接のおつきあいはほとんどありませんでした。広告業界がなくなっても別に困らないのですが、社会的にその機能が必要でなくなるかといえば、そうでもないと思います。

 「コンストラクションマネジメント機能」イメージ形成や、コミュニケーション計画で、異なった分野のクリエイターの方向付けやコントロールを行いプロジェクトを完成させる機能。

 「イメージ形成」当事者が潜在的に保持している可能性を引き出し、好意的なイメージを確立するためのサポート。今後は国内だけでなく国際的なプロモーションにも習熟する必要があります。

 ・・・・ゼネコンの経営改革と同じように、発注者側の意識、認識が変わる必要があり困難も多いでしょうが、「何が出来るか」を突き詰めていくと存在価値は決して無くなりはしないと思います。(報酬基準は変わるかも知れませんが)

 

 地方自治体の首長はワールドカップの誘致より地元サッカーチーム。サッカーファンはまだまだ市民の一部だとしたら、地元スポーツチームを強くする、愛されるようにする事に資源を集中した方がいいと考えています。
 浦和レッズは年間70億円の予算(鹿島アントラーズ、ガンバ大阪40億円)で地元への経済波及効果が127億円と試算されています。を地元負担がも求められるスタジアム建設費1,000億円は利益を生まないただの「容れ物」です。
 新しい建築物に対して手放しで好意的に評価する傾向のある建築系のいくつかのブログにおいても「スタジアム」に関しては「?」の意見が多いようです。
                                      (2010年09月06日)

 2013年のセレッソの快進撃と2014年のウルグアイ代表の加入でセレッソ人気がもりあがっています。ワールドカップ後も人気を維持定着できれば、あるいはスタジアムが有効だったかもしれません。ガンバ大阪はサポーターの募金で自前のスタジアムを建設します。セレッソ大阪はどうでしょう・・・・・長居競技場がセレッソのスポンサーであるヤンマーの命名権買収により、ヤンマースタジアム長居となりましたが。
■減築とコンバージョンによる魅力づくり

 「ストック活用時代の夜明け」なのか

 9月1日綿業会館で行われた「向ヶ丘第一団地ストック再生実試験竣工記念シンポジウム」は1ヶ月弱の告知期間にも「関わらずとても盛況でした。昭和35年に建てられた団地の躯体を利用した再生は、多くの制約条件(住棟レイアウトの固定、階高や壁厚などのスケルトンの質が低い)といったハンディキャップにもかかわらず、思い切った実験が行われています。(コストの制約が少ないということもありますが)

 プロジェクトに関わられた方達のお話の中で内装等をそぎ落としたときの「躯体のちから」という言葉には、発見がありました。正直建て替えではなく「再生」、増築ではなく「減築」という事業には懐疑的な気持ちがありました。建て替えた方が設備や構造も最新式になるしコストもかからないのではないか。容積率に余裕があるなら「増築」して床面積を増やさないと投資が回収できないのではないか・・・・・・。

 千里ニュータウンなど一部の地域を除いて「空き住宅」が増えている現在、「量」の拡大は新しい空きスペースの拡大にしかつながらないと考えられます。「減築」によって画一的な無個性なスペースが減り、個性的で魅力的なスペースが増えるとすると、これは必ずしも経済合理性に反したモノではないのかもしれません。

 ルネサンス計画「住棟異端委での改修技術の開発」の現地公開は来年2月まで続いています。
 興味のある方は現物をご覧下さい。下記URLからお申し込みできます。
  http://www.ur-net.go.jp/west/Renaissance

 京都「新風館」10年目に向けての好調

 歴史的建築物の保存について、建築関係者が思うほど一般の人の関心は薄くて、新しいビルのまわりにビルの外皮をはりつけてお茶を濁したりするケースが目立ちます。(東京駅前の郵便局など)
 きちんと手入れされたビルで、どこか時代の風格が残るモノであれば、自然と市民の愛着が残るモノですが、そうでないものも少なくありません。

 京都の商業施設「新風館」は大正末期の建築物で、1983年京都市の登録文化財第一号に指定され景観保全のために取り残されることになりました。当初は改築してホテルとかオフィスビルの計画もあったようです。

 烏丸御池というのはオフィス街で商業施設として集客できる立地とは考えられていませんでした。昨日、お話を伺う機会があったのですが、運営会社の方は現在のテナントさんと一緒になって立ち上げたといいます。普通にリーシングしたらとても大変だったでしょうね。
 当初は3年でつぶれるだろうともいわれたそうですが来年10年目を迎える現在、好調で、抜け落ちるテナントさんもほとんどないようです。

 建物はファサードの一部を活かして新しく建築されたもので、2004年にグッドデザイン賞を受賞するなど多くの賞を受けています。従来の建物と新しい建物が調和し、イベントに活用できる中庭が大きな魅力です。10年たっても新鮮です。


 過去の歴史文化に根ざしたデザインを活かして、新しいデザインを加えていくという行為は制約が多いものの、大いなる創造性を感じさせます。

 今ある文化を根こそぎ約尽くす事で新しいモノを創造できるという焼き畑農業的な幻想からいいかげん解放されるべきなのだと思います。
                                                                                    (2010年09月03日)
■新スタイルお散歩百貨店「京阪百貨店すみのどう店」10月8日オープン

 JR住道駅前に「京阪百貨店すみのどう店」が10月8日に開業

 京阪百貨店は食料品売場の直営化が強みです。旗艦店の守口店以外は食料品中心の小型店舗で4店舗展開しています。(守口店、くずはモール店、枚方店、京阪モール店)本来であれば、京都または大阪市内に旗艦店を持ちたいところですが、なかなか思うようにはなりません。現在は中之島線延伸で中之島の開発に注力しています。

 JR学研都市線住道駅は京阪沿線と一部競合している沿線外の立地です。1日の乗降客6,6000人と」沿線では京橋に次ぐ乗降客数を示しています。今回京阪百貨店が出店する「ポップタウン住道」は地元のデベロッパーが古くから開発していたSCで、ダイエーを核にした地元対応型の店でした。最盛期には130億円あった売上が70億円までシュリンクしていたようです。今回京阪百貨店を核にすることで200億円の売上を目指しているそうです。(京阪百貨店は売場面積1万uで売上げ目標は70億円です)

 住道エリアは伸びる地区?

 周は、団塊ジュニアを中心としたニューファミリー層の比率が高く、それらの年代層が居住するマンション開発が盛んな地区です。大阪、梅田へのアクセスが意外に良い立地ですが、エアポケットのように取り残されていた沿線です。

 他所から人が吸引できる立地ではないですから足元の商圏をしっかりつかまえていくことが大事です。郊外SCのキーテナントの百貨店はうまくいっていないところが多いです。デロッパー自社または自社の系列の鉄道であればいいのですが、ともすれば「百貨店」であることの吸引力を利用されて利益が残らない・・・・。京阪百貨店は新しい百貨店だけに、チャレンジングな姿勢でこのジンクスを打ち破って成功することを願っています。

                                             (2010年09月02日)
 

 西武百貨店が郊外店の「抜本的な店舗改革」に着手するそうです。大型専門店(タワーレコード、アカチャンホンポ、ユニクロ、ロフト)の導入など、MDや取引条件などで寿裏有為の百貨店型でない運営手法を取り入れて、地域密着の複合商業施設として集客力、生産性の向上を目指すとか・・・・・。

 百貨店内部の人にとっては「革新的な」取り組みなのでしょうが、お客様にとってみれば、特に目新しい驚きはないでしょうね。(着実に収益向上につながれば目新しい驚きがなくてもいいのですが)百貨店のSC化といえるでしょう。

 百貨店が自前でオペレーションできる複合商業施設であればいいのです(大分のトキハわさだタウンなどはそうですし、島屋のSCなどもそうです)外部のデベロッパーのSCの「核店舗」に百貨店が出店するのは自殺行為だと思います。収益部門を自前で抱えていてこそ低収益部門を維持できるのですから。
                                                   (2010年09月03日)
■関西活性化の明るいニュース〜ものづくり復権の兆し

 工場立地の関西回帰

 日本政策投資銀行関西支店が発表したレポートによると、関西の製造業の設備投資が堅調なようです。リーマンショックのあと、首都圏、東海地方の投資は大きく落ち込んでいますが、関西の投資は底堅く推移し、2010年の設備投資額は首都圏を凌駕し、70年代の後半に追い抜かれ、以来大きく引き離されていた東海地方のシェアに肉薄しています。(関西19.9%、東海20.1%、首都圏13.2%  全国シェア)

 これは景気の動向に左右されることが無く、太陽電池・リチウムイオン電池関連の投資が進められていたためで、関西の製造業の投資マインドは全国に比べて高いということです。

 工場三法の改正や自治体の誘致活動の成果がじわじわと効いているようです。単年度の投資だけでなく設備投資のストックも大都市圏(東海、首都圏、関西)の比較で75年には首都圏が突出して東海、関西が拮抗していたモノが80年以降東海が大きく伸びて現在はトップです。首都圏は少しづつシェアを下げてきており、上向き傾向を示す関西が首都圏に近づいてきています。

 関西のパネル、電池産業は競争力もありこれからの伸びが期待できます。関西のものづくりに明るい兆しが見え始めてきました。

(その後の失速はご承知の通り・・・・・単独の業種に依存するのでは無く多様な産業の育成が必要ですね)

 非製造業の設備投資は一段落

 同じ調査で、非製造業については不動産、卸売り・小売りが減少し3年連続で縮小しているようです。

 地域の産業が活性化すれば、また新しい動きがでてくると思います。ビルの建設や新しい店のオープンは目に見えてわかりやすい変化ですが、人が賑わう活気が生まれるのは「産業」が元気である必要があります。

 先日のスーパー中枢港の指定と合わせて明るいニュースですね。あとは交通インフラの整備が進めば、地域の産業の連携がうまく回り始めるのですが・・・。

無念です
                                           (2010年09月01日)

 
 8月
■「無料ゲーム」にはまる主婦像?団塊ジュニア世代のひまつぶし需要?

  文化は飛び石的に共有される

 カラオケで歌われる歌について、年齢が近い世代ほど共有できない・・・知らないという現象があります。20歳前後の世代が歌ううたを30代〜40歳前後の世代にでは知らない・・・という飛び石的な共有化ともいうべき実態です。
 核家族化が進んで、親子の間では歌やアニメ、ドラに出演しているタレント名は共有されていますが、家族にその世代がいなければ共有されないという事なのだと思います。(20歳の知人が40歳の人達とカラオケに行く機会があった時に嵐もELTも安室奈美恵の歌も全く知られていなかったようです)

 ヒット曲や流行のサイクルが短い事と、全世代に知られるという「国民的ヒット」というものがなくなった所為なのでしょう。耳にしたことがあっても関心がなく記憶に残らないのでしょう。まだ、家族内にファンがいれば関心を持つ機会もあるでしょうね。

 世代の分析を仕事にしていますが、団塊世代や団塊ジュニア世代について、自分自身と考え方や行動について感覚として共感できる領域が少ないのはその所為かもしれません。(個人としての好き嫌いではないですよ)
 それだけに世代分析は慎重にしておかないとステレオタイプでわかったような、それでいて本質を外した決めつけに陥る可能性があります。

 無料ゲームにはまるのは主婦?

 ニフティ、スクエアエニックス等の調査によると無料ゲームのユーザーの76.9%が女性、しかも30歳以上の女性が61.7%を占めるそうです。いわゆる「F2層」ですね。全体の31.8%が主婦。F2層の中の39.5%が主婦なのだそうです。

 団塊ジュニアとよばれるのは1970年代前半生まれ、真性団塊ジュニアとよばれる団塊世代を親に持つ世代が70年代後半生まれだと定義されています。(中学生時代にファミコンと夕焼けニャンニャンブームがあった世代)

 調査はパソコンの無料ゲームを対象にしているようです。興味のあるジャンルのトップが「ゲーム」ついで「音楽・映画」、「ダイエット・運動」と続きます。「携帯ゲーム・占い」は13.5%と結構下位なので、テレビで大量に宣伝している無料携帯ゲームのユーザーは中高生が中心なのも知れません。

 若い主婦が無料の暇つぶしにはまるのは・・・かつての無料の暇つぶしの王道であった「テレビ」が面白くない、衰退しているでいなのでしょうか???もっともらしい理屈をつけても今ひとつしっくりしません。
 多面的に分析しないと結論はでませんが、面白い現象だと思います。

                                 (2010年08月31日)

■生業から「正しい企業化」に向けて〜食品製造業が踏むべき正しい検討ステップ

 小さな企業が次のステップに踏み出すとき

 食品の製造業には、地方の小さな企業が多いようです。家族経営に毛が生えたような生業で、地域に密着したこだわりの商品をつくることができる強みがあります。地方活性化という観点から農工商連携への取り組みが進んできたり、地域物産の販路の拡大などで地方から全国へ展開し事業を広げるチャンスが訪れています。

 色々なきかっけで急激に事業を拡大する機会はあると思います。

 1次産業を軸とした地方の活性化のためにも製造から販売を担うメーカーが持続的に発展することが重要なポイントになります。

 下図のチャートはある意味「教科書的」な検討手順と思われるかも知れません。いくつかのケースをお手伝いした経験から、この手順を踏んで検討しておかないと、必ずどこかで足踏みするか、または従来の事業の範囲で進化せずに終わることになると断言いたします。

 わかりやすいことにしかお金をかけない・・・せめて時間をかけて考えてみて下さい

 大手企業の新事業開発では、きちんとこの手順を踏むことが当たり前になっていますが、こういった手順になれていない経営者は面倒で形になって見えにくい検討にお金を使うより、大手広告代理店によるマスコミ広告や、有名タレントの起用、有名クリエイターの起用など「わかりやすい」対策には時間とお金を投資する傾向にあります。まあ、人のお金ですからどう使おうと自由ですが。

 後付でもかまいませんし、外部にお金を使わなくてもいいですから下記の検討項目について、自社内であらためて、じっくり考えてご覧になることをお薦めいたします。

                                                 (2010年08月30日)



■「名古屋摩天楼」?建て替えラッシュの名古屋駅前地区

 名古屋駅前の超高層ビル計画

 2011年  名古屋三井ビルディング新館 地上14階
 2013年  名古屋中央郵便局跡地の日本郵政ビル 地上41階(200m)
 2012年  新中経ビル 地上17階
 2013年  超高層ツインタワービル「グローバルゲート」37階と18階の2つのタワービル(ささしまライブ24地区)
 2015年  「大名古屋ビルヂング」建て替え 地上38階
 2016年  「名古屋駅新ビル」地上46階

 200メートル級の超高層ビルの建設ラッシュでまるで、噂に聞く上海やドバイを思わせる勢いです。
 アジアの都市では超高層ビルが好まれます。オフィスも住まいも密集して生活するのは、一説には「通勤手当」の習慣がないので職場の近くに住まうのだとい指摘もありました。帰宅後食事をすませて街に出かけるので夜遅くまで街が賑わっていましたが、今はどうなのでしょう。

 確かにこれだけのビルが立ち並べば名古屋駅周辺は大変なことになるでしょうね。

 リーマンショックのあと製造業は緩やかに回復基調にあったとはいえ、円高で製造業の先行きは決して順風満帆ではありません。・・・・とはいえ景気の悪い時期に採算性を調査していれば後であわてることもないので丁度良いのかも知れません。

 建築ラッシュの背景には名古屋駅前のビルが築40年と建て替えの時期をむかえていることが大きいようです。現在平均空き室率10%台の名古屋の賃貸市場でも今後の伸びに期待するモノがあるのでしょう。

 リニアへの期待?東京のベッドタウン?

 リニア新幹線ができれば東京と40分圏で結ばれると「東京のベッドタウン化?」を本気で期待している人が名古屋には結構おられるようです。時間的には通勤圏ですが、移動コストが高いですし、同じお金を払って移動するなら「軽井沢」とか文化性と環境のいい場所を選ぶのではないかと・・・他地域の人は思っているはずです。時間距離+名古屋独自の魅力を作ってくださいね。きっと沢山あると思います。

 岐阜でも高層化

 読売新聞によりますと岐阜でも高層ビルの建設ラッシュが続いているそうです。
 2012年 問屋町西部南街区市街地再開発組合 37階建と11階建のツインビル
 さらに柳ヶ瀬商店街の 島屋南市街地再開発準備組合は34階建の施設構想を掲げているそうです。


 クレーンが立って大きなビルが立ち上がるのは確かにワクワクさせる光景ですが、その中身が見えないときには決して手放しで喜べないモノがあります。当初の用途で埋まらないときに何に転用するのか?・・・超高層ビルは使い勝手が良くないですし、万が一の自信でライフラインが途絶えたときに結構大変でした。

 名古屋の都市の風景を変える「摩天楼」にケチをつける気はありません。うまく完成して新しい名古屋のランドマークになればいいですね。   今からでも遅くないので中身をしっかりと考えて下さいね。

名古屋の事業者は堅実で,景気の低迷に伴いいくつかのビルの竣工は延期されています。
                                                       (2010年08月27日)
■「生業」から「事業」へは正しいか?〜食品産業の拡大の注意点

 「生業」から「事業」は正しいか

 かつてお手伝いした全国展開のFCギフトショップの経営改革のテーマは「生業」から「事業」へ・・・でした。家族経営の小さなショップが多く、事業としての形が整っていない店舗が全国に数多くありました。経営効率も悪く見えましたし、「良い人材」を集めるのにも「生業」的な経営では限界があるというのが趣旨でした。

 地方の、特にギフトショップといった人間関係がキーになる業種で果たしてそれが正しい解決策であったかどうか考え直す必要があるかも知れません。店舗の家族経営を云々する以前の問題として、本社のトップの「家族経営」?が災いしてか、後にその会社の経営権は大手企業に売却されました。

 食品製造業が事業を拡大する為の検討フロー

 現在、複数の小規模食品製造業(メーカーというのもおこがましい規模ですが)の事業化の為の検討を企画中です。食料品は地域の風土に根付いたモノです。定型的で安直な事業化フローではいかんだろうと考えています。

 地方の食品スーパーが大手スーパーと互角以上に戦っている状況がテレビでも紹介されていました。大手メーカーに対して、優位性をつくる精算はあります。

 また、考えが整理できたら簡易版のフローをアップしておきます。

                                           (2010年08月25日)

■S町町役場新築の機能構成〜検討フロー

 四国S町の町役場計画

 お世話になった方が引退されて移住された先で、町役場改修の検討会に参加されているとのことで、情報提供の依頼がありました。(ボランティア)・・・都市からの移住者の知恵を活かそうとはなかなか意欲的な自治体ですね。設計事務所がコンサルに入っているので、建築計画からの検討は進んでいるのでしょうが、どんな機能が必要か?というのは他所の成功事例を集めても正解はありません。

 検討フローをにらみながら、町民にとって何が必要かじっくり考えようと・・・まだお返事が出来ていません。すいません。

 これをやるとあの補助金が使えるかなとか、余計なことを考えてしまうのは悪い癖です。

 ここではありませんが、ある地方に行くと、駅前にコンビニもない田舎なのにやたら立派な体育館や文化ホール、科学館?が立ち並ぶ町があります。やたら凝ったデザインのされた駅の待合室では地元の中学生がたむろして携帯ゲームを楽しんでします。電源立地の豊富な資金などでハコをつくれば中身がついてくるというものでもありません。むしろさむざむしく荒涼とした風景が強調されます・・・本当に。お金があることも幸せにはつながりません。
 
 ということでYさん決して忘れているわけでなく、少しづつ考えていますので今しばらくお待ち下さい。

                                                        (2010年08月24日)
図 町役場機能検討フロー

■定着した「アウトレットモール」はレジャー施設として機能

 多くのショッピングセンターが売上を落としている中  アウトレット業態は堅調

 先ほど発表された繊研新聞のショッピングセンターアンケートの売上数値を見ると、各施設とも売上を落とし、上位100施設が月坪30万円を割り込む状況の中、アウトレットモール業態は堅実な数字を示しています。

 積極的に増床を行っている施設が売上を伸ばしています。反面、都市に近い施設はやや伸び悩んでいるようにも見えます。鶴見のはなポートブロッサムは2007年には売上が公表されていましたが、その後ランキングには入ってきていません。

 非日常的な空間で行くだけで楽しいアウトレット

 アウトレットモールには観覧車もなければ、ネズミもいないですし、アミューズメント施設も併設されていません。それにもかかわらず、朝日大学が実施したイメージアンケートでは「行くだけで楽しい」「非日常空間」と評価されています。

 良く、昔の百貨店は1日楽しめる遊園地みたいなモノだったといわれますが、モノが並ぶだけでも充分ワクワクする環境は作れるのです。店員が歌ったり、踊ったりしなくても楽しい空間は作れるのです。

 昔、昔百貨店で入場料を取ったらどうだろうかという議論もありました。下図の独立大型店として例示されている「コストコ」は会費をとる会員制のホールセールクラブです。今の百貨店に「入場料」をとる自信はあるでしょうか?

                                                          (2010年8月23日)

 アウトレットにも外国人団体観光客が

 団体客で訪日する中国人の4%、香港人の7%、タイ人の14%がが御殿場とりんくうのアウトレットに来場しているそうです。全体の来場者の中ではまだ数%ですが今後の伸びが予測されます。「中国人の観光客は」香港人に比べてアウトレット商品に関する認知はまだ低いようです。高級ブランド品が国内で定着していないとアウトレットの価値はわからないようです。

 売れている商品は台湾、香港、シンガポールの観光客はスポーツシューズアパレル、バッグなどのブランド品。中国人には化粧品、薬品、ほ乳瓶や粉ミルク、紙おむつやみそ、醤油などの食料品であるという違いがあります。

 中国人が来日したときに日本製の「月餅」を大量に買い込むという話も聞きます。中流層以上では自国の食料品に対する不信感が強いようです。

 アウトレットでの対応はまだ始まったばかりですが、今後の増加が期待されます。

 東京の銀座や大阪のミナミなどはもう外国人観光客を対象にした観光商業が中心になっていますが、地元の人間としては楽しめない商業地になっています。観光産業はこれからの基幹産業ですが、地元の人間が中心に楽しめる商業施設・商業地も残しておいて欲しいものです。〜就学旅行客である中高生向けの新京極のお土産屋や、東京からの観光客向けのぼったくりの店を展開しながら、地元の客向けの店を残している京都人の知恵を学ぶべきでしょう。

                                                  (2010年08月25日)

図ーアウトレットモール売上げ推移

繊研新聞全国主要SCアンケート調査より  ※「プレミアムアウトレット」チェルシージャパンは2008年から調査に参加

図ーアウトレットモールその他の業態のイメージ

朝日大学マーケティング研究所 2010/4調査
首都圏の20〜50代の男女を対象にした調査
■ノンアルコールビールの発想の転換

 低アルコールビールの苦闘

 特に、飲酒運転の規制が強くなって以来、アルコール分を抑えた低アルコールビールが一部では人気を呼んでいました。ただ、製法に工夫をこらしてもどうしてもアルコール分は残ります。アルコール分が低くても大量に飲めば体内にアルコールが吸収されます。飲酒運転のチェックにひっかかりますし、アルコールに弱い人は運転に支障をきたします。(また、アルコール分を無くしてしまうと、のどごしのうま味がなくなってしまうというネックもありました)

 ノンアルコールビールの発想の転換

 現在、ノンアルコールビールというイメージで販売されている商品は、製法に大きな発想の転換がありました。「ビール」からアルコールを抜くのではなく、ビールのような味わいの清涼飲料水を「ノンアルコールビール」として商品化しているのです。

  昔でしたら、やはり「「ビール」とは違う味という抵抗があったのでしょうが、最近は「発泡酒」どころか「第3のビール」とよばれているビール風のお酒に慣れてきた所為か、(実際にそれらの商品の味は良くなってきていますしね)「ノンアルコールのビール風飲料」も結構いけるなと感じるようになってきたことも、追い風になっているのでしょうね。

 ごくたまに旅先などで「地ビール」を」を飲むと「本当のビール」はやはり美味しいなあとしみじみ思いますし、みんなが本当のビールを普通に飲んでいた時代を懐かしく思いだします。(今はもう会社のお金で飲み食いする時代ではありませんし、デフレ時代の家計の中ではビールどころか発泡酒でも贅沢品になっています)

                                                     (2010年8月20日)

■梅田2011年問題の結果を予測するための「ハフモデル」的な思考からの脱却

 関西人は物見高くない?

 先日、在京の関西出身の方とお話をしていて「関西人は新しい施設を単に見学に行くような物見高さがない」という結論に達しました。東京ではまだ回りに何もない「スカイツリー」を見に多くの人が訪れているのに比べて、新しい施設を見物に行く人が圧倒的に少ないようなのです。後日、別の方に「大阪のOLは定期券のある範囲でしか行動しない」という定理を伺って、腑に落ちることがとても多くありました。
 
 東京では銀座で飲んでいて、知り合いが新宿にいても平気で呼び出すともいいます。大阪でいうとミナミで飲んでいて三宮の「連れ」を呼び出す・・・位の距離があります。  
 土着性が強いので保守的なせいか、行動圏が固定される傾向が東京より強いのかもしれません。

 商業ビルの売上げ傾向〜好調なのは?
 
 年に一度調査される繊研新聞の専門店集積調査は、商業ビルの売上げを比較できる唯一の指標として毎年楽しみにしています。先日、2009年度の結果が掲載されていました。アウトレット系は好調なものの全体に売上は低調です。 比較的好調なのは駅ビル系のギャレ大阪、エストでしょうか。なんばパークスは増床効果で売上が伸びています。

 沢山の人が流動する通路に面している「ディアモール大阪」「ホワイティ梅田」「クリスタ長堀」などは売上の減少率が低いようです。心斎橋OPAももやや減少傾向にあるとはいうものの3年間の推移ではまずまずです。

 繁華街の床面積を全体の規模で単純に比較する「ハフモデル的」な思考はもうやめよう

 2011年問題で梅田に大型店が開業することで、梅田の一極集中が進むという報告書が、大学の先生の監修で発表されていました。
 通常は郊外SCが出店するときにその影響度を測るために経済産業省が基準とした、「ハフモデル」(売場面積を吸引力として、居住地から複数の商業集積への距離との関係で売上を予測するモデル)をベースにしたモノです。ハフモデルは今までも売場面積だけではで、店舗の魅力を現すことは出来ないとの限界が学会でも指摘されています。

 特に都心の店舗においてはほとんど意味がないと考えています。もちろん、一つの叩き台としては、思考実験の材料としての意味があるレポートですが、面積が増える=吸引力が高まるという図式がイメージがあまりにもわかりやすい為か、誤った印象のまま世間に伝わっているように思います。

 増える面積が大事なのではなく、どのような商業、誰をターゲットにした商業がどのように展開されるかが都心部のエリア間の競争力を左右します。

 下図を眺めていると、「毎日の流動者を対象にしている施設」「お金はあまりないけれどおしゃれしたいお姉ちゃんを対象にした施設」「ラグジュアリーな時間を過ごしたいひといが利用する施設」「おしゃれな人しか利用しないので気持ちよく買い物出来る施設」などの色分けができるはずです。

 それぞれのターミナルで定期券を持って移動している層の中での上記ターゲットの構成比をながめると、そのターミナルに何が欠けているかが明白に現れます。もう一歩ほんの少し手間をかけるだけで繁華街の力関係がみえてくるはずです。

 京都駅前にイオンモールができても京都の大丸、島屋にはまったく影響はありません。伊勢丹にも直接影響はありません。遠く離れた滋賀県竜王のアウトレットは伊勢丹に大きな影響を与え、大丸、島屋にも少し影響を与えます。・・・都市の商業集積の相互作用とはそのようなものなのです。

   ( ・・・・京都河原町阪急跡に出店する「丸井」は今までの関西での店舗の中で一番いい立地に出店したと思います。丸井らしさの本領を発揮し存在感を示してもらえば、面白くなると期待しています)
関西人はなかなか動かないので立地選択がすべてです。
                               (2010年08月19日)

図ー大阪市内の商業ビル売上推移と商業面積    ※左軸売上 (百万円)  右軸売場面積(u)


繊研新聞記事、売場面積については大型小売店総覧から補足


■人の移動と地域の気質

 東京からの転入者が住むのは西宮、北摂

 新しく転入してくる人が、以前どこに住んでいたのか、つまりどこから転入してきたのかを見ると、郊外都市の住民気質が伺えます。東京からの転入者が多く住んでいるのが、西宮市と豊中、吹田などの北摂です。(図では割愛しましたが単身赴任者は大阪市に住むことも多いようです)

 豊中、吹田には千里ニュータウンもあり全国からの転入者が多く、初期の分譲住宅購入者にはホワイトカラーが多かったので「東京的」?と評価する人もいるようです。・・・あまり土着性がないので転入してくる人も抵抗なく溶け込んで住みこなせるのでしょう。

 阪神間・・・・大阪と神戸の境界は?

 大阪と神戸の間の郊外都市は西宮市あたりを境界に大阪通勤者と神戸通勤者にわかれます。転入者でみても尼崎市は大阪圏、西宮市はやや神戸が強いものの拮抗しています。芦屋市は神戸からの転入者が多いようです。川西市は日生ニュータウンから梅田駅まで直通電車が通るようになったように大阪とのつながりが強くなっています。

 かつては人口伸び率が高かった三田市は神戸市からの転入者が多くなっています。大阪の企業の幹部が家を構えるとき、選ぶ立地が時計回りに変化してきたといわれています。かつては芦屋などの阪神間、そして北摂、間をとばして奈良方面の学園前、生駒さらにその南へと・・・良好な住宅地を求めて奈良市、生駒市へと転入していました。その名残があらわれています。
 奈良の中でも生駒市は奈良県内より大阪府からの転入者が多くなっています。

                                                      (2010年08月11日)

図 ー関西の郊外都市の転入者 転入前の住所(2009年)

■2年目をむかえファンづくりが進む阪急西宮ガーデンズ

 立場によって評価が分かれる阪急西宮ガーデンズ

 某チェーンストア向け専門誌の記事で、テナントに「集客数のわりに売上が伴わない」と評価されていた阪急西宮ガーデンズですが、運営している阪急阪神ビルマネジメントのでは「高くても見合う価値があれば売れる傾向、接客で差がつく施設」で比較的高額な商品を売る専門店が高い伸び率で推移していると分析しています。特に伸びが高いのが「西宮阪急とシネマコンプレックス」だそうです。

  同じ阪急でも堺市のイオンモールに北花田に出店した阪急は苦戦しているのとは対照的です。郊外立地のショッピングセンターという業態でも、立地環境やテナント計画、運営者によって全く違った種類の商業施設となります。

 日本のショッピングセンターは大手数社に集約されてきています。基本はチェーン展開で規模で勝負することになります。テナント企業もチェーンストアオペレーションで効率化をはかりますから、いくら地域密着をかけ声として掲げても同じような店になります。

 百貨店がショッピングセンターに出店して成功しているのは、運営会社として東神開発を持つ島屋と、この西宮での阪急ぐらいでしょうか。立地条件が限られるので都市部に多くなります。(地方では大分のトキハわさだタウン、天満屋のいくつかの店は郊外で専門店街もうまく使っていたように思います)大手デベロッパーのSCに百貨店が出店して成功した事例はまだありません。何故でしょうね。

 サンキューレターとコト提案で顧客をつなぐ

 西宮阪急も1〜3月の入店客数は前年割れでした。この時期売上は2ケタ増だったといいますから、買い上げ率や、客単価、買い回り性が大きく向上したといえます。特に、婦人服と化粧品の伸びが高いようです。
 購買客に対するサンキューレターの発送やディスプレイの毎日の修正など地道な努力が成果を上げています。
 毎日、各所で行っている実演販売などのコトコトステージも平日の需要を創造しているようです。

 かつてラフォーレ原宿を成功させた方に集客のコツを伺いました。お客さんに対して毎日何か働きかける「猫じゃらし」のように動きのある店を目指したそうです。お客さんは何か動きのあるモノに反応して下さるそうです。

 客数の少ない郊外店だからこそ

 郊外の小売店の接客のあり方について考えていたことがあります。

 都心店に比べて、特に平日はお客様の少ない郊外の小売店では、ゆっくりご説明できる時間があるというメリットがあります。買う気で探し物をしているお客さんはいいのですが、まだ下見のつもりのお客様にとって、店員さんが獲物をねらう提灯アンコウのように待ちかまえられているとなかなか店に入りにくいですし、声をかけづらいところがあります。

 店舗スタッフは、お客様の前でじっくり待っているのではなく、何かしらテーマを見つけて忙しく立ち働いている必要があります。掃除であったり、模様替えであったり・・・・自分でやること、やらなければいけないテーマを設定して、お客様をさりげなく観察しながら動くことです。駄目な店員はじっと待ちかまえていたり、奥に引っ込んで見えない場所で事務作業をしたり、どこかに消えてしまったり・・・たまに来店するお客様の為に緊張感を維持できないのです。
 ということで、客が来ないと文句ばっかりいってないで、自分で考えて動いて下さいね・・・

 平日の演歌ライブ・・・そこまでまでやるか西宮ガーデンズ

 西宮ガーデンズ好調の背景には「阪急ファンが多く住んでいる立地」ということもあります。百貨店の売上げのカード構成比が55%と高くなっています。(首都圏の伊勢丹アイカードなみですね・・・通常3割程度です)
 屋上で週末に実施しているガーデンズライブでは昨年秋から平日に演歌ライブも実施しています。幅広い年代層に対応しようということです。(開店時のハンガーにかけた婦人服のセールといい)高級志向風でありながら泥臭いところも押さえる芸当は、東京の百貨店では少し真似が出来ないかも知れません。たぶん・・・・。伊勢丹の屋上で演歌ショーなんか想像できませんよね。

                                                          (2010年08月10日)
■「チャレンジキッチン」という起業支援の試み

 料理人の独立開業の新しい試み

 2010年4月、開業した「ホテルエルセラーン大阪」は四ツ橋筋に面して、北新地につながる立地のホテルです。その地下1階の飲食店の内4店舗は「で第2回チャレンジキッチン」で選出され独立開業を果たした店舗です。

 チャレンジキッチンとは、公募したチャレンジャーから技術力や事業計画を審査し、選ばれた料理人に投資コストや、独立開業のアドバイス、開業後のプロモーションをサポートするプロジェクトで、大阪市内の商業施設のプロデュースで有名な株式会社ケイオスの澤田氏が提唱し、2006年の心斎橋「UNAGIDANI BLOCK」に継ぐ2回目の公募となります。大阪ガスが協賛し、「食の都・大阪推進会議」が公演して、事業主(ビルオーナー)が主催して開催されます。

 カフェ「カフェラヴニール」、イタリア料理「イタリアンスタイル110アルフォンテ」、オーストラリア料理「モダンオーストラリアンレストラン&ワイン ワイルドデリ」、日本料理「かこみ」の4店 いずれも20〜25坪のコンパクトな店です。

 若手の料理人が自分の店を持ちたいという気持ちを後押しするサポートとして、事業主からの初期投資の融資、開業準備のサポートなどが提供されます。

 商業施設の飲食テナント集めの難しさは「出て欲しいような特徴のある店」は多店舗展開するには人材育成の面や、オーナーの目を光らせるキャパシティに限界があり、条件次第で出店してくれる店は、チェーンオペレーションの徹底された特徴の無い店であるというジレンマがあります。

 意欲と技術のある料理人を早い段階で囲い込む?うまいやり方かも知れません。料理界は未だに「徒弟制度」の名残が残る業界です。業界に風穴をあけるのかも知れません。

http://www.chaos-chaos.com/challenge-kitchen/dojima/index.html へのリンク


 店舗銀行〜所有と経営と運営の分離

 飲食店の経営管理の難しさは、現金商売であるだけに運営スタッフの不正や、調理人の食材仕入れの不正が起こりやすいことです。経営者がずっとついている訳にもいかないので、多店舗化する企業はシステム化、セントラルキッチン化を徹底するか、宗教的なハイテンションで店員を洗脳するか・・・・などの方法で不正防止に励みます。

 株式会社ジャスマックの葛和社長が行っていたのは飲食業の所有(投資)と経営(企画、システムマネジメント)、運営(日常の運営)の分離です。投資家を募って、小さな店舗が集積した飲食ビルをつくり、店までつくってしまいます。独立したい、店を持ちたい人を募って、店の運営を任せて、会社は店舗のリース料を徴収します。店の売上げは上げれば上げるほど店長のもになるので食材の無駄もなくして必死に働くという仕組みです。

 投資家には銀行金利より良い配当を出していました。飲食店経営の苦労から考えられたシステムです。

 チャレンジキッチンも店舗銀行も若い料理人にはひとつの選択肢として可能性を開くモノです。すべての人に向いたシステムではありませんが、うまく利用すれば成功するかもしれません。チェーン店ばかりではつまらないと思う消費者にとっても違った選択肢を提供してくれます。
http://www.tenpoginko.com/ へのリンク
                                     (2010年08月09日)
図ー外食費都市比較
大阪、京都は外食費が少ない・・・・京都人もしっかりケチですよ

(家計調査)
■調理界今年のメニュー動向予測〜アメリカ人もジャンクフードばかり食べているわけではないらしい

全米レストラン協会「2010年の注目メニュー動向」

 2009年10月に米国調理人連盟所属の調理人1,857人からの回答を元にまとめた結果が今年初めの週刊ホテルレストラン誌に紹介されていました。

 上位を占めたキーワードは「地産」「持続性」「栄養志向」それぞれ社会現象となっています。レストランは地産食材を使い始め健康によい料理のために地元の市場で食材を仕入れています。物流が未発達だった昔のように地元の市場に仕入れを依存する動きなど原点に戻ることで消費者に喜ばれています。

 「持続性」の対象は肉、魚、酒類までも含んでいます。環境に優しく、産地と食卓を直接結びつけることで鮮度、運送費の抑制、地場産業の育成といったメリットをもたらします。

 その他のキーワードとしては「栄養」「子供の健康」「農産物」「新種の果物」「一口サイズ」「ハーフポーション」「抗アレルギー」「非デンプン食」「農園ブランドの食品」「地域の民族料理」「新技術による加工肉」などとともに「簡便化」「少量化」「低価格化」もあげられています。

 アメリカ人といえばジャンクフード一辺倒で、でかいハンバーガーばかり食っている国かと思いますが、レストランで食事をする層では日本と変わらない先進的な食意識が見られます。低所得層だけではなく中流の上の層までもハンバーガー中毒で味覚中枢が残念な国民なのかと思っていましたが、実はそうでもないようです。

 メニューのトレンド

 「アミューズブーシュ」(オードブルの前の突き出しのような一口料理)、「前菜にミニバーガー類」(げっ)、「添え物にキノアと野菜のブレゼ」(穀物と野菜の蒸し煮の)「朝食とブランチに伝統民族料理」「一口サイズのデザート」「自家製アイスクリーム」「郷土料理と民族料理の融合」「手作りチーズ」「地ワイン・地ビール」「特性アイスティーとオーガニック珈琲を使ったノンアルコール飲料」「料理の風味を活かしたカクテルや手作りリキュール」・・・・・・・
 
 日本の料理店でも一口サイズのアミューズが流行っていますね。味がわからなくて食べた気がしないのですが、手が込んでいるのはわかります。ゴマを入れた変形グラスにプレッツェルのようなものが差し込んであったオードブルは、ゴマを食べきるのが大変でとても苦労しました・・・(というかちゃんと毎回、ちゃんとゴマを取り替えているんだろうな モード和食 S)

 その店でしか食べられない手づくり素材、一口サイズというのがポイントが高いようです。
 
 調理手法のトレンド

 「液体窒素による冷凍・冷却」「「ブレージング」(蒸し煮)「真空調理」「燻製」「コンフィ」(提案の油で長時間煮たような揚げ物)
などであるらしいです。

 余談ですが、詐欺で捕まった富裕層マーケティングの権威とその受け売りで商売をしておられた方が、「富裕層マーケティングは一部の方だけを対象にしたものではなく、一般消費者のマーケティングにも役に立つ」というお話をされる時のつかみが、「チキンナゲットはフレンチのコックが富裕層のために作った料理が元になっている」というエピソードです。従って富裕層のことを研究すればマーケットの先読みが出来るという幼稚な屁理屈です。
 実はどこにもそのような事実はないのです。くず肉を成形した鶏肉のさつまあげのようなチキンナゲットが富裕層の為に開発されたという事は考えにくいですよね。

 上記調理手法の新しいトレンドは野心的な調理人を経て、街の居酒屋メニューに登場するのは、そんなに遠い先のことではありません。居酒屋さんの新しいメニュー開発へのどん欲さは見習うべきモノがあります。20年以上前、ニューヨークで見つけた「フローズンマルガリータ」が「かき氷風チューハイ」に形を変えてすぐにとり入れていました・・・早かった。

                                                   (2010年08月06日)
■「うどん」と「そば」の境界線と「製造販売」業態考

 関西はうどん、関東はそば・・・

 よく言われることです。東京には立ち食い蕎麦のチェーンが街のすみずみに出店していますが、大阪では駅の中、しかも立ち食いうどんであることが多いように感じられます。
 家計調査でも、事業所統計でもそば・うどん店はひとつにまとめられています。

 農林水産省の統計を元に下図を作成しました。香川、埼玉、群馬のうどん生産量がずば抜けています。讃岐うどんとは違ったタイプの「うどん」が関東にあって、(水沢うどんとか)それはそれで美味しいモノです。大阪のうどんの生産量は意外に少ないです。

 そばは長野が飛び抜けています。山形、茨城、兵庫が続きます。うどんと比べて全体の生産量が少ないのは何故でしょう。この統計は「小麦粉」の統計なので「そば」での小麦粉使用量が少ないのは当然なのですが、参考値で付けられたそば粉の使用量を比較しても、「うどん」対「そば」と対比されるほどの量ではありません。

 食品製造業より製造販売が多い蕎麦店?

 理由の一つとして、うどんや中華蕎麦は比較的メーカーが製造したモノを店舗で提供するパターンが多いのに比べて、蕎麦屋さんは店で手打ちする製造販売業が多いのかな・・・とも思います。(実際の店舗数はそうでもないかもしれません。)

 その場で作ったモノをそこで売る、和菓子やさんや惣菜屋さんなどに多い業態ですが、中小の店舗が生き残るのにはそれしかないのだろうと思います。・・・最近はコンビニの弁当も店舗で調理して提供するという実験が始まっていますが。

 蕎麦に関しては十割蕎麦などは職人の技術がなければ提供できません。

 手打ちうどんというのもとても美味しいモノですが、蕎麦打ち好きの団塊世代の皆さんも蕎麦打ちは初めてもうどん打ちというのはあまり格好が良くないと思っておられるのか、あまりメジャーではありません。

 北海道は原材料だけでなく製品までつくらないと・・・

 小麦粉、そば粉の産地である北海道で、うどん、そばの生産量が多くありません。原材料より製品した方がより付加価値が高くなります。ブランド開発を含めてぜひうどん、そばに挑戦して下さい。北陸や兵庫県の北部の名物蕎麦屋さんでは、そば粉は北海道産のそばを使っているとか・・・・地産地消じゃないじゃん・・・。
 
 宮崎名産の肉巻きおにぎりの肉はチリ産だという話もあります。違法ではなくても正直な商売を続けないと信用を失います。顔の見える店で製造販売されていると、少しは信頼性が高まる気持ちがします。

 (店頭で調理しているのは、業務用の冷凍食材という可能性もありますが・・・・某有名外食チェーンの役員が、冷凍コロッケに衣を付け直すと手作りコロッケとして高く売れて、すごく儲かるんだぜと嬉しそうに教えてくれました。・・・その有名大手流通系の外食企業はもう無くなってしまいましたが)

                                                     (2010年08月05日)

図ー2008年 府県別 小麦粉使用トン数  うどん志向、そば志向の比較


※用途別のトン数で1000トンを下回る府県は割愛しています。鹿児島や宮崎などはうどん、そばをあまり食べないのでしょうね。
 家計調査ではそばとうどんがまとめられているので、それぞれの嗜好が分析できません。
事業所統計でも「そば・うどん店」とひとくくりになっています。

■「阪神港」国際コンテナ戦略港湾へ・・・府と市の連携が必要な時期に何を優先するのか

 「グリーンベイ」を国際的なブランドにする阪神港の一体運営

 京浜港は当確として、後背地の産業が充実している中部圏の伊勢湾港を押さえて戦略港湾に選定されました。今後、来年度の民営化を経て経営統合され、経営の効率化と荷主との直接交渉による価格競争力の強化などライバルである釜山に流れているコンテナ需要を獲得する経営努力が必要になります。

 関西の行政の枠を超えた連が成功すれば、今後の空港の一体運営や大阪湾全体の地域産業、官民学の連携への道筋が描けるはずです。関西全体での「経営」が考えられるはずです。


 国土交通省は3日、国際的なハブ(拠点)港を目指して予算を重点配分する「国際コンテナ戦略港湾」を選定する有識者委員会を開いた。同委員会の結果は公表されなかったが、関係者によると、京浜港(東京、川崎、横浜港)と阪神港(大阪、神戸港)の選定が適当とする報告書をまとめ、長安豊国交政務官に提出した。週内にも同省の政務三役会議で最終決定する。

 同委員会は、京浜、阪神両港が関東、関西の2大経済圏を背後に持つことに加え、貨物の取扱量が多く、港湾運営計画に民間資本を導入していることなどを高く評価した。正式決定されれば、政府は大型船舶が着岸可能なターミナル整備や、港湾運営の24時間化、海外に比べて割高とされる入港料の見直しなどを検討する。
(毎日新聞8月4日)


 
政局ではなく実績を積み重ねて信頼を・・・

 
港湾を活かすために、各生産地と港湾、空港を結ぶ交通インフラが重要です。行政の垣根を越えた協力が必要です。府、市、県、それぞれの思惑があってその調整は大変でしょうがゴールが共有化できれば説得と妥協でものごとは少しでも良い方向に進みます。
 いずれにしても実現には20年30年かかる事業です。「大阪都」問題で大阪府と大阪市の不協和音が政局になり、興味本位に話題になっています。(男の子はそういう歴史シミュレーションのゲームのような国盗りごっこが好きなのでしょう)

 人気は一時的なものです、力づくの変革は簡単にひっくり返ります(長野県の田中康夫知事の県政改革の事例がそれを証明しています)、実績を重ね、方向性に信頼が得られれば、必ず後を引き継ぐ人も生まれてきます。
 広域の関西州実現という大阪府知事の志を実現するには多くの人の賛同が必要です。

 実績を積み重ねていく大きなチャンスです。大阪府と大阪市が連携すれば関西活性化、地方活性化をリードしていけるのですが・・・・。

 神戸がもっと元気になるために

 神戸の観光客数が3015万人と28年ぶりに3,000万人を超え、回復基調にあるようです。今年の夏は人口ビーチ「神戸ブラージュ」も開催されます。音楽やマリンスポーツのイベントも開催されるようで、3,200uの海浜に1、600立米の砂が投入されます。

 会場である新港第1突堤は1921年に整備された神戸港最古の近代埠頭(ふとう)です。、貨物のコンテナ化で2007年にはすべての倉庫が撤去され、市が再開発を進めていましたホテルと映画館の複合商業施設が計画されていましたが、現在は頓挫しています。

 さんのみや阪神の食品館が閉店したり、ハーバーランドのニューオータニが昨年閉店したままだったり、マイナスのニュースもありますが、一方で動きだしているプロジェクトもあります。


 神戸市中央区の中突堤にレストランや宴会場などが入居する複合商業施設が2012年秋にもオープンする。
冠婚葬祭会社「日本セレモニー」(山口県下関市)と、不動産会社「サムティ」(大阪市淀川区)が、ポートタワー西側の土地約1万2500平方メートルに6階建てビル(延べ約1万5000平方メートル)を建設する。

 計画では、1階に服飾店や複数の店の洋菓子を食べることができる「スイーツテラス」などがあり、5、6階には港の眺望を生かしたレストランやバーが入る。宴会場や結婚式場も予定している。
(読売新聞)


 神戸市は」、いくつか頓挫しているプロジェクトや開業後20年を迎え契約切れで撤退が予想される「ハーバーランド」について、今から再開発計画、まち作り計画の練り直しを行うべきでしょう。旧オーガスタ後の建物も温浴施設に改装されるようですが、旧西武跡や旧ニューオータニ跡、旧ダイエーや神戸阪急が入っているダイヤニッセイビルなど個々の企業がつぎはぎで対策を講じても限界がありますし、決して良い街にはなりません。

 観光、業務は好調なようですし、民間マンションの分譲も始まったようですから当初の計画を実情に合わせて描き直す事が必要です。

                                               (2010年8月4日)
■「フードデザート」(食の砂漠問題)は社会的なロスを生み出す

 フードデザート問題 (food deserts issues : 食の砂漠問題)

 フードデザートとは,社会・経済環境の急速な変化の中で生じた生鮮食料品供給体制の崩壊と,それに伴う社会的弱者層の健康被害を意味する社会問題です. 近年欧米諸国では,フードデザート(food deserts)が問題視されています.スーパーストアの郊外進出が顕在化したイギリスでは,1970-90年代半ばに,inner-city / suburban estateに立地する中小食料品店やショッピングセンターの倒産が相次ぎました(Guy 1996).その結果,郊外のスーパーストアに通えないダウンタウンの貧困層は,都心に残存する,値段が高く,かつ野菜やフルーツなどの生鮮品の品揃えが極端に悪い雑貨店での買い物を強いられています.イギリスでは,彼らの貧しい食糧事情が,ガンなどの疾患の発生率増加の主要因であると指摘する研究報告が多数見られます
(フードデザート問題研究グループホームページより)

http://www18.atwiki.jp/food_deserts/pages/1.html へのリンク
 

 中山間地域、限界集落での買い物先の撤退や、都会でも郊外ニュータウンの店舗閉鎖や都心部での商店街の衰退など、車を持たなかったり、WEBを使いこなすスキルを持たない高齢者が日常の買い物に困っている実態は理解していましたが、先進国に共通課題だったのですね。

 アメリカではフードデザート地域にジャンクフードの店が出店し、住民の健康被害につながっているようです。商店の閉鎖は地域の治安も悪化させます。(もちろんジャンクフードも適正な量、バランスをとって食べていれば、健康被害につながるものでないことはつながるものでないことはいうまでもありません。

 ドイツなどでは商店街、町並みを保護するために商店の出店はかなり厳しく規制されていると聞いていましたが、現在日本で起きていることは欧米で起きていて、社会格差の是正や社会的弱者排除の問題として政策課題になっているということらしいです。

 個別の企業の効率個々が追求することが社会全体にとってプラスになるのではなく、より弱い立場にたつひとに対してひずみをもたらすという構図が見えてきます。

 そのような課題に「名前」を与えられるとわかりやすく、議論もしやすいですね。

 ビジネスで考えるとどういう影響があるでしょう。行政による規制または、不採算地域での食料品販売に対する助成が想定されます。

 日本の場合は高齢者の単身者、高齢の夫婦を対象として想定されるのですが(欧米の場合は移民などの社会的弱者の排除の問題も大きいようです)単にモノを届けるだけで解決できるのか、よくわかりません。商店街を中心にした人とのやりとりや、百貨店などの非日常の場で自分で選んで「買い物」する楽しみなどについては、規制や助成金では回復できない、失われた生きがいであるように思います。

 そのあたりの高齢者琴線にふれる事業の仕組みが構築できればビジネスチャンスはあると思います。

                                             (2010年8月3日)

■「ホテルブランド」の価値と建設ラッシュの行方

 ホテル「ブランド」の変遷

 ホテル業界は「ブランド戦略」をドラスティックに変えていく傾向があるようです。百貨店などはある意味で地元での「なじみ」が資産ですから、名前を変えると大変な失敗をす事例も沢山あり、店名変更は慎重です。

 ホテル事業は経営と運営の分離が進んでいます。また世界的に事業の買収が進んでいて「ホテルブランド」も所有者が変わり、位置づけも変わっているようです。「メリディアン」はエールフランスが経営していたこじんまりした快適なホテル」(NY)でしたが、現在は団体客向けの」中級ホテルらしいですし、日本ではそれなりにグレード感のある「シェラトン」もまた中級の団体向けホテルブランドであると言うことです。

 東京では外資系の高級ホテルが沢山オープンしていましたが、関西は都市のポテンシャルの割に、経済が停滞していたせいか、しばらく競争があまり激しくはありませんでした。(それでも40年前は「ロイヤルホテル」と「プラザ」ぐらいしか高級ホテルがなかったことを思えば大変な競争であることは確かなのですが)

 都市ホテルは不動産投資としては儲かりません。儲かるのは法外な運営委託料を取るオペレーターだけです。それでもなおかつ「高級ホテル」が計画されるのは「都市の格」意識する人にとって「価値」があるからです。

 これから開業する「国際級ラグジュアリーホテル」

2010年10月 「セントレジスホテル大阪」(本町)スターウッドグループの最高級ブランド
2012年 中之島京阪電鉄ラグジュアリーホテル      不明?
2012年 中之島三井不動産ホテル(ビジネスホテル?)
2013年 「インターコンチネンタルホテル大阪」(梅田北ヤード)
2014年 「近鉄 阿部野橋再開発ビル」 国際級外資ホテル  マリオット都ホテル
2018年 朝日新聞フェスティバルタワー西館 国際級ホテル  リーガロイヤルに決定

 これらのホテルは着々と出来ていくでしょう。関西の経済が活性化して、人の動きが活発になれば、これでも「足りないかもしれない」という可能性も無いとはいえません。

 ただ、ホテル単体の経営だけでなく、人の移動目的の創出や、滞在させる動機付け、そして施設のブランドの定着など、街のプロモーションについても投資計画に組み入れておく必要があります。

 立地は大事ですが、ただ良い場所に良い施設を設置しただけでは集客は難しいでしょう。

 下図は少し古くなってしまいましたが「好きなホテル」の調査結果です。関西では伝統のある「リーガロイヤルホテル」はシニア層には好感度が定着していますが、若い層には「ザ・リッツカールトン大阪」に引き離されています。「有名」というだけでなく、企業の意図を持った「ブランディング」の戦略を構築、実践する必要があります。

                                   (2010年08月01日)
図ー好きなホテル(女性年代別)  2005年の調査

(なにわ考現学05)

ホテル名変更
・全日空ホテル→2008/10/1 「ANAクラウンプラザホテル」へ
・ホテルアンビエント堂島→2008/4「堂島ホテル」 
                 セラヴィリゾート泉郷が一括借り上げしていたが現在は提携ホテル
・都ホテル大阪→2007/4「シェラトン都ホテル」 近鉄とスターウッドが提携
・三井アーバンホテル大阪ベイタワー2007/7/1 「ホテル大阪ベイタワー」に名称変更
・ホテルシーガルてんぽーざん大阪→2006/1/4 運営会社が島屋からホロニックへ移管

 
 7月
■百貨店跡地の活用法〜コピス吉祥寺10月開業

 伊勢丹吉祥寺店跡地はオールターゲットのライフスタイル型専門店ビル

財団法人武蔵野市開発公社(東京都武蔵野市、理事長:井上良一)と三菱商事都市開発株式会社
(東京都渋谷区、社長:一村一彦)は、2010 年10 月にF&F ビル(伊勢丹吉祥寺店跡地)に開業
予定の複合商業施設の名称を「コピス吉祥寺」に決定しました。

武蔵野市最大の商業エリアであり、豊かな自然と都会的な感性が交錯し、自分らしい暮らしを楽
しむ人々が集う街・吉祥寺に「コピス吉祥寺」が誕生します。コンセプトは“吉祥寺スタイル・コ
ミュニティ”。地域の方々が気軽に立ち寄れる時間消費型・滞在型商業施設と位置づけ、街全体の活
気づくりに貢献する“まちの中核”となる施設を目指します。ターゲットは20 代後半〜30 代前半
のニューファミリーとその親の3 世代を中心に、世代を超えて支持・共感されるライフスタイルと
トレンドの提案を発信してまいります
(三菱商事都市開発 プレスリリースより)

 この3月に閉店した吉祥寺伊勢丹が開店したのは38年前、70年代の初めです。団塊世代を中心にした「若者マーケット」が注目され、やがて彼らが家庭を持った頃に「ニューファミリー」と呼ばれるようになりました。

 東京郊外の中型店は業態転換されることが多いようです。郊外拠点で複数の百貨店があった町田でも、町田大丸がプラザビーミーという専門店ビルに業態転換され、その後大丸の手を離れて丸井になっています。町田東急も専門店ビルに業態転換されています。吉祥寺に74年に開店した近鉄も2001年に閉店、2007年からヨドバシカメラになっています。

 規模の小さい郊外百貨店は経営が厳しいの店頭の不振だけが理由ではありません。百貨店の利益構造は店頭で頑張っても利益が残らない構造になってしまっています。中元歳暮、外商、催事で赤字を補填しているテナントも少なくありません。

 郊外店はその利益を補填する部分を持っていないため収益が残りません。雑誌でそこそこ売れていても広告が入らないので廃刊してしまうというケースに似ています。逆に言うと売れていなくても広告収入だけでペイするのが昨日紹介した富裕層向けの雑誌です。

 ニューファミリー?ひさしぶりに聴く懐かしい言葉

 閉店した伊勢丹の土地に開業する「コピス吉祥寺」のニュースリリースに懐かしい言葉が掲載されています。「ニューファミリー」・・・・・70年代に夫婦を中心とした核家族で「友達家族」とかも呼ばれた消費者像です。施設コンセプトには単に若いファミリーとは違った生活行動、生活意識を想定しているのでしょうか?そうだとしたらどんな新しいコンセプトなのでしょうね。

 テナントは地元地元の高級スーパー「三浦屋」、「ジュンク堂」「アローズ」「キディランド」「石井スポーツ」「セオリー」など108店。延べ床面積が46,000平米ですから売場面積は旧伊勢丹ぐらいでしょうか。8月下旬に発表される概要が注目されます。

 関西にも中小規模の百貨店がまだ数多く残っています。業態転換と収益の仕組み作りが課題になっていくでしょうね。百貨店の看板を外すことのデメリットも残り少ないとはいえまだ存在しますので悩むところです。

                                                 (2010年07月30日)

図ー伊勢丹郊外店の売上げ、売場面積比較

図ー吉祥寺の百貨店比較


(週刊東洋経済  2009年売上)

■「富裕層の宴」の幻〜詐欺師の見分け方とニューリッチにそそぐ愛

 富裕層マーケティングはいかが

 金融資産1億円以上の超富裕層を対象にしたマーケティングで売り出したU氏が未公開株を巡る詐欺容疑で逮捕されたのは昨年の6月でした。ニューリッチに関する著書も多く、マーケティング業界の大御所であるM先生や、大手市場調査会社K社がこのU氏の会社と組んで出された富裕層に関するマーケティング調査資料の販売を以前関わりのあった会社がお手伝いしていたことがあったので逮捕は・・・・実は驚きでもなかったです。もちろん資料集自体は監修も分析もきちんとしたものでしたが、間接的に聞くU氏の言動が、なんというか「派手好き」というか「絵に描いたようなうさんくささ」が漂うモノだったからです。

 2006年の春にU氏が主催する春の「花見の宴」が行われました。和をテーマにして桜を観賞するというものです。U氏の発行する雑誌の読者(高額納税者等の名簿から一方的にただで送りつけるモノですが)400人を招待した大規模なモノでした。
 本当の富裕層は、人的なネットワークでつながっていて、不特定多数の読者招待になんか集まったりはしませんが・・・・・・。

 その宴の会場が「有栖川宮記念公園」といのも暗示的です。関係ないですが・・・2003年に「有栖川宮」を名乗って結婚披露宴を開催400人の招待客から祝儀をだまし取った事件が結審したのもこの400人のパーティが開催された2006年でした。

 和をテーマにして茶道や華道の家元を呼び、日本文化びいきの外国人を呼べば、それなりの格好がつきます。その「富裕層の宴」の話を聞いたときは「呉服屋さんの招待会」みたいと・・・成金趣味がおかしくて仕方がなかったことを覚えています。

 和服を買っても普通の人は着る機会がありません。(本当の富裕層や粋筋のかたは別ですが)、数百万する着物を買った農家の主婦の方を京都の古いお寺で開催するイベントに招待し、楽しんでもらい、また着物を買ってもらう・・・・ある種の呉服屋さんはそういった商法で生き延びています。(時々破産する販売会社もでますが)

 愛情を持って「ニューリッチ」に接する

 そのような商売が通用するのは、お金に不自由しない境遇にありながら、お金の使い方になれていない層というのが存在するからです。ブランド商品を購入することは簡単にできても、「文化」や「教養」は簡単には身につきません。
 「文化」ぽいものや「教養」ぽいものはお金で買えたりします。
 実際の富裕層は簡単にはお金を使ってくれません。「ニューリッチ」・・・80年代は不動産関係、90年代はIT関係〜そしてFXとか外資系の金融関係の方々がお金を使ってくれるのです。

  お金の分だけ楽しんでもらえればいいのです。貧乏人としては心の中の反発や軽蔑ではなく、愛情を持って接するべきです。六本木ヒルズに住んで、壁いっぱいに漫画本を並べて漫画喫茶にしている起業家さんとか、近年急激にお金を手にした中国人の富裕層とか・・・・・

 いつの時代でもニューリッチ層がうまれて入れ替わっていきます。かつては百貨店がそれらの層の受け皿になってきました。エスタブリッシュメントに憧れる人達がお金を払えば入れる世界の提供がが百貨店の役割でした。

 いつのまにかエスタブリッシュメントだけを相手にする商売だと勘違いを始めたのが凋落の始まりでした。

 未公開株上場の詐欺で逮捕されたU氏の会社や雑誌は別の方が引き継がれているようです。それだけまだまだニーズがあるのでしょうね。

 未公開株の上場・・・の話は古くから良くあります。リクルート出身の有名人がからんで、ソニーの役員が出資していることを売物にしたポイントサービスの会社とか、創業後数年間にわたって投資家から集めた出資金が唯一の収入源であったマーケティング会社とか。
 ・・・・欲に目がくらんでその手の会社に出資してはいけません。

 派手な話には気をつけて下さいね。

                                                   (2010年07月29日)
■農水産業と食料品製造業の連携の弱い地域は

 1次産品の商品開発の可能性が高いのは

 内閣府が昨年発表した「地域の経済2009」では「環境と農業を再生の原動力に」と謳われています。農水産業と食料品製造業の連携の強さをお金の額で分析すると下図になります。フードバレーなどの産学連携に熱心な栃木県は連携の比率が高いというのが面白い点です。同じようにフードバレーを謳う北海道は農業産出額が桁違いに大きいので、連携を表す指標が小さく出ています。

  元の図表でも地方都市がピックアップされています。大都市を抱える、または、大都市に近い府県は「商品化」が進んでいます。

 この図で見ると、今後の商品開発のポテンシャルが高そうなのは、鹿児島、宮崎、熊本、青森、山形、秋田、高知、島根といった地域でしょうか。

 農水産業と食料品製造業の連携を強化すれば、食料品製造業の付加価値もたかまりますし、農水産物自体の販促にもつながります。

                                          (2010年07月28日)
図ー食料品生産と食料品製造業の連携


(地域の経済2009をもとに作成  首都圏、中京圏、近畿圏を除いた地方圏)
■「車」にお金をかける人々の激減〜百貨店は都市部の旗艦店が大幅売上減

 都市部で減少する「車にお金をかける人」

 東京などの都市部では「車」にお金をかける人々はわずか5%台にまで減少しています。「友人との交際」や「旅行」など良く言われる「コト消費」に重点を置いている姿が明確にあわられています。
 若者の車離れというコトは良く言われていますが、この「経済産業省の調査では50代、60代1割の人が車をダウングレードしたと答えています。エコカー減税や購入補助金などの税金を投入していてもこの有様です。

 百貨店では都心旗艦店が大幅減

 本日報道された、2009年度の百貨店売上げ高の集計で、上位100社の減少額が9.3%なのに対し1位から10位までの上位10社の減少幅が11.4%と百貨店の経営を支える大型旗艦店、1,000億円以上の店舗の落ち込みが目立っています。富裕層の消費でさえ減速していると言うことでしょう。

 消費税の増税の議論の前提として「国内景気が回復基調」という論議がありますが、先日の地価公示の発表などをみても国内消費は全く回復していないということでしょう。全体の支出が減少している中で、先に見たようにさらにお金の使い方が変わってきているので都心の物販店である百貨店が苦戦しているのだと思います。

 このようなときこそマーケティングが重要になってきます。今までの「ステイタス感」の基準が変わってきています。

 業態間競合の中で快調に伸びてきていた通信販売業界もここにきて新規の顧客開拓に苦戦し、既存顧客のリピーター作りに一斉にシフトしてきています。

 安定していると思える固定客であっても、そのニーズを掴んで対応していかないと離れていきます。変化はそれほど激しいのです。過去の経験則、自分の時間では読み解けない変化です。その備えは出来ていますか。
                                (2010年7月27日)
図ーお金をかけるもの

「消費者購買行動調査」n=3,000   2002年経済産業省
■関西・九州一体観光の時代へ〜地元で高まる九州新幹線の経済波及効果への期待

 2003年3月 九州新幹線鹿児島ルート開業 大阪〜鹿児島4時間圏に

 近畿圏と鹿児島県を移動する人は年間73万人。そのうちJR利用者は6.7万人と1割弱です。九州新幹線が開業すると利用者は36万人まで伸びてJRの増収効果は100億円とも予測されています。

 電通の調査では来春の全線開通を知っていたのは大阪、東京でそれぞれ9%。大阪鹿児島間の直通運転を知っていた人はわずか16%でした。九州地区での期待や盛り上がりに比べて、まだまだ都市圏での認知率は低いようです。
 それでも、開業後に利用したいという人は大阪では4割を超えていて、これからの盛り上がりには期待できそうです。まだ運賃や運転本数が未定でPRしにくいという事情もあるようです。

 外国人旅行者についても、今まで九州の温泉地やゴルフ場を訪れていた韓国人客らが新幹線で京都、神戸や大阪を観光するのではと予測されています。

 九州の食の認知度、意向度

 認知率トップはチャンポン・皿うどん(博多ラーメンと拮抗していますね)。食べてみたいモノのトップは「完熟マンゴー」当時テレビで良く取り上げられていましたからね。訪れてみたい県のトップは「鹿児島県」53.2%、2位は「宮崎県」50.5%、3位は「長崎県」で49.7%です。宮崎など九州の東は新幹線開業の恩恵は受けないのですが、タレント知事の県産品PRが調査当時はアピールしていたのでしょうね。

 熊本県、鹿児島県では関西での情報発信を強めています。今まで九州の人の目は首都圏を向いていましたが、これは関西にとっても地域との交流を深めるチャンスです。

                                                 (2010年07月26日)


図ー九州の食 知っているモノベスト10


図ー九州の食 食べてみたいモノベスト10


(財団法人 地域流通経済研究所  2007年 大阪府民400s対象の郵送調査)
   天神祭宵宮の風景 7/24

天神祭の人出は125万人といわれています。京都祇園祭は24万人。多ければいいと言うわけでもないですが、もっとアピールしてもいい数字です。(ちなみに岸和田だんじり祭は54万人、博多の祇園山笠で70万人前後 参加者の気持ちの入り具合がちがうのでしょうね)
■「マイデパートメントストア」新・銀座三越9月11日オープン

 銀座・有楽町地区最大の百貨店は売場面積36,000u

 田舎モノにとって、銀座というのは意外にランドマークがありません。「服部時計店」?「和光」?「銀座の柳並木〜とてもしょぼい」?・・・「資生堂」?老舗が集積しているのはわかります。どこかに高級クラブ・バーが集まっているのだろうなと想像は出来ます。お上りさんにとってはやはり「「百貨店」、銀座のエッセンスを集めた「百貨店」がないと収まりが悪い。

 その意味で銀座を代表するのは「松屋銀座店」がありました。コンパクトではありますが、粋な品揃えをしていたお店です。それでも25,000uでは銀座のエッセンスを集約するには小さな規模です。

 今まで23,000uで営業していた銀座三越が9月11日に約1.5倍の規模に増床してオープンします。レストランフロアを11〜12階に新たに設置するなどサービス機能が強化されています。銀座インフォメーション、ベビー休憩室、外国人観光案内所、クロークサービス、ハンズフリーサービスの導入などを積極的に行っています。
 上質で高品質衣料を長く着続けていただくためのメンテナンスサービス、リペアサービスなどからも銀座の客層の中の大人と同時に幅広い観光客を対象にしていることが伺えます。
 
 2013年松坂屋増床

 jフロントリテイリングのフラッグシップ店舗となる店が2013年に開業します。松坂屋は名古屋、大丸は大阪の店というイメージが強いでしょうから、地元の人にどう受け止められるかが課題です。三越には百貨店業態の再生という想いがあるようですが、jフロントリテイリングとしてはは百貨店業態の枠にはとらわれない商業集積づくりが予想されます。

  東京の百貨店が関西に進出して失敗するのは、行動の端々にあらわれていた「傲慢さ」「根拠のない優越感」が災いしていたのだと思います。jフロントとしてその逆に、過剰に「銀座」ブランドへの思いこみや、「フラッグシップ店舗」という事の気負いで時代遅れの「百貨店」を作ろうとすると失敗するでしょう。

 有楽町西武の跡地にはヤマダ電機、ラオックス、ユニクロ、パルコ、フォーラスなどの名前が挙がっていますが、これからどう変わっていくのでしょうか・・・・・中国人観光客の存在は無視できないのものです。彼らを呼び込むためにも、「銀座」の価値を守る「銀座らしい」まち作り(銀座テーマパーク?〜かつてミナミにあった俗悪で悪意に満ちた「道頓堀極楽商店街」のようなものでは困りますが)をどこかに残しておかないと新宿みたいな街になってしまいそうですね。
                                                        (2010年07月23日)

プランタン銀座は9月1日から段階的に改装を予定している。20〜30代の女性の通勤・オフィススタイルに対応した婦人服や美容品を拡充する。


(銀座の商圏)
銀座地区の百貨店の中心商圏は、中央区、千代田区、港区、文京区、新宿区、渋谷区の6つの区である。利用客の交通は、営団地下鉄銀座線、営団地下鉄丸の内線が主流である。その他都営地下鉄大江戸線開通の効果も大きい。それ以外では、北は足立区、東は台東区、南は大田区・品川区、西は世田谷区までが商圏となる。
都心以外では、東部は、営団地下鉄東西線沿線で、船橋、千葉、幕張までが商圏でなる。北部は、営団地下鉄日比谷線経由で越谷、草加までが商圏となる。また、京浜東北線沿線は浦和までが商圏で、大宮は商圏からはずれる。西部は、新宿、渋谷の手前であるが、営団地下鉄丸の内沿線では中野まで伸びる。神奈川県は小田急線経由で川崎までが商圏となる。東海道線は鶴見までで、横浜は商圏からははずれる。
近年、有楽町周辺に若い客層が増加している。また、汐留、丸ビル、六本木ヒルズ等の地区からの銀座来街者も多い。土日は、観光地の要素が大きく、地方からの来店客・外国人客も多い。特に、中国・台湾・香港・韓国等のアジア諸国の客が増えている。


(銀座の客層)
銀座地区の百貨店の顧客は、20代後半から30代前半と、50代の2つのグループから構成されており、男女売上比率は、女性が7割、男性が3割となっている。第一の顧客層は50代の高所得者層である。母親とその娘が利用客というケースも多く、銀座ブランドを好み、渋谷等若者の街と異なる点に魅力を感じている。第二の顧客層は銀座に勤めている女性で、年齢は20代から30代である。その他、最近では海外からの利用客も多く、とくに、韓国・台湾の客層が増加している。
(中央区の百貨店ヒアリングより)

図ー銀座周辺の百貨店の売上げ

週刊東洋経済に掲載された2009年度の売上
■掲載記事の話題その後ー過去に取り上げた記事のその後の状況フォロー

 国際コンテナ港(6月23日)に阪神港も指定される

 国土交通省は16日、アジアのハブ(拠点)港を目指し集中的に整備する「国際コンテナ戦略港湾」に、京浜港(東京港・川崎港・横浜港)と阪神港(神戸港・大阪港)の2港を指定する方針を固めた。国際競争力強化のため来年度以降、超大型船に対応する水深18メートル級のコンテナ岸壁などを整備する。(神戸新聞7月17日)

 70年代に世界2位の取り扱いがあった神戸港の復活・・・という小さな目標ではなく、ベイエリア全体の活性化につなげていことを目標に置いて考える事が必要です。中部、中四国ぁら北陸との連携をはかることで、日本の地方を元気にしていくビジョンが求められます。

 WEBでのやりとりが活発になることで「モノ」の動きが広域化、個別化しています。これからこの傾向はますます強くなるはずです。関空、神戸空港とあわせて広域の物流のインフラが揃えば、関西の持っているポテンシャル、(生産、消費、大学の集積、ホスピタリティ、歴史資源)が有機的に結びついていきます。

 鹿児島天文館地区「マルヤガーデンズ」開業後の状況(5/18)

 昨年5月に撤退した鹿児島三越の後を受けて4月28日に「マルヤガーデンズ」が開業しました。もともと鹿児島三越は地元経営百貨店の「丸屋」だったので、もとの経営者にもどっただけなのですが、中心商店街の衰退に拍車をかけるかと思われた三越の撤退の悪影響を最小限に抑えた様です。
 テナント間の格差が激しいものの「ゆったりとした気持ちの良い空間としての評価は得られた」そうです。地元百貨店「山形屋」との回遊も良好で売上を伸ばしているようです。客層が予想より幅広い分、限られた面積の中での対応が課題です。

 来年3月、九州新幹線が開業すると鹿児島〜博多間が最速80分で結ばれます。福岡・博多との都市間競争の観点からも、規模とは違った競争をしかける必要があります。京都でも「新風館」が落ち着いた空間で人気を集めているように、環境で人を集めることも重要です。(坪効率は悪いですけれどね・・・・固定資産税の減免措置があればいいのですが)

 姫路の老舗地方百貨店の苦闘(2009年4/7)

 姫路の中心市街地に立地する「ヤマトヤシキ」が定休日を週に1回に増やしているそうです。本店は老朽化し、面積も大きくない百貨店ですがなんとか持ちこたえているようです。中心商店街は駅から姫路城に向かうアクセス道路なので、通行量はそれなりにあるのですが郊外大型店との競争や駅前の商業集積の進行などマイナスの要素がかさなります。

  加古川そごうの後を引き受けて2店体制になっています。加古川住民に聴くと加古川の人は決して姫路には足を向けないそうです。

  姫路城(改修中)という集客装置があるので観光客は多いのですが、地元の産業が回復しないとなかなか厳しいでしょう。百貨店は店頭売上以上に贈答品や外商で利益を稼いでいます。逆に言うと「店頭の賑わい」で収益を上げ構造がつくれていなのです。姫路では勝ち組に見える駅前の山陽百貨店も、ロフト等の導入で人が入っても、それが利益の飛躍的なアップにはつながってはいないのです。

 関西圏で残る数少ない地方百貨店であるだけに、ヤマトヤシキの動向には今後も注目しておきたいと思います。

                                                       (2010年7月22日)
■「ほっとできる場所」の世代差

 20代女性と40代女性と60代女性の世代差

 20代女性と40代女性は共通して「梅田阪急周辺」「天王寺・あべの」といった盛り場を「ほっとする街」としてあげています。60代女性は対照的に「中之島・淀屋橋」が突出しています。

 「御堂筋・心斎橋周辺」は各年代共通していますが、おそらく60代では御堂筋の緑のイメージがあり、20代、40代では心斎橋筋の賑わいのイメージがあるのだと思います。


 「ほっとする」という設問の設定が曖昧なものなのですが、都心の人混みがいやだという人の声を良く聴きますが、意外に人が多い場所に「ほっとする瞬間」が生まれるのかも知れません。
 別の調査で将来の住まいについて聴いてみましたが、圧倒的に便利な都会に住みたいという人が多い結果が出ています。
 
 ターミナル〜繁華街からデートスポットまで

 大阪市内の街について、キタとミナミの対比だけでは描き出せない特性があります。都心と周縁部の使い分けが世代によって分かれてきています。例えば、60代のほっとする街としての「JR福島駅周辺」とはいったいどんな街なのか?梅田から西へ徒歩圏です、いくつかの可能性はあります。若い子向けの新しい店は増えていますが、60代という年代にアピールするポイントというのが、簡単に答えがでないだけに想像力をかき立てます。(図ー1)

 ほっとする街であることが商業的に、不動産ビジネス的にどれだけの価値があるのか、都市の国際競争力の向上にどれだけ寄与するのか・・・数値化することはできません。それでも、それぞれの個人の「ほっとする場所」がどれだけ配置されているかで都市への愛着度が左右され、ひいては国際競争力が高まる・・・・・という事は全くない・・・・でしょうが、「国際競争力」なんかどうでもいいやという違った次元での価値が高まる事は間違いないと思います。

                                                   (2010年07月21日)
 

図ー「ほっとできる街」女性年代別の比較

(なにわ考現学2005)

図ー「デートに利用したい街」女性年代別の比較

(なにわ考現学2005)

■消費される「地域ブランド」〜飽きられるのも早い中での差別化

 決算前の「北海道物産展」

 北海道物産展は百貨店の催事の中の定番で、確実に売上が見込める企画です。かつては百貨店各社はその開催時期を調整して重ならないようにしていたと言われています。最近は売上の前年比割れに「背に腹は替えられない」ようで、決算前になると売上を作るために各社一斉に「北海道展」を始めます。・・・遠くない先に飽きられますよ。

 日経リサーチが公開している地域ブランド調査では「地域ブランド」の総合評価のトップは北海道でした。ちなみに2位は京都府、3位は沖縄県、4位は京都府、5位は大阪です。(地域ブランド戦略サーベイ2008)

 ブランドの中身が変わる

 かつては「北海道物産展」は特産の農産物や海産物が主流でした。今は、誰も知らない新しい「弁当」や「お菓子」が中心になってきています。北海道の小樽の「ルタオ」のチーズケーキ、花畑牧場の「生キャラメル」といった具合に、北海道の中の特定の地域の、誰が作ったのかといったところにまで細分化されています。(お米のブランドに似ていますね。「新潟産コシヒカリ」ではアピールしなくなって「新潟県魚沼産の○○さんがこのような生産方法にこだわって作ったコシヒカリ」という表記がされている世界です)

 花畑牧場は経営が芸能プロダクションと言うこともあり、ヒットした後にはは稼げるときに稼いでしまおうという経営姿勢で「ブランド」を消耗品としています。「生キャラメル」は一時の勢いはなく、昨年は「北海道工場の派遣切り」の話題が報道されていました。

 同社の場合はある意味、確信犯なのでしょうが、各地域で地方活性化の切り札として、税金も投入して開発されている「地域ブランド商品」が同じように消耗品となってしまってはつらいものがあります。


 地域ブランド商品の開発

 地方にある、良い素材などの資源を活かして、新しい特産品を作ろうという動きは各地にあります。行政のバックアップもあるのですが、商品として成功するためにはいくつかの課題があります。

1.都市部の消費者の嗜好にあった商品開発

 情報量が多く、舌の肥えた都市部の住民にも評価される工夫がもうひとつ必要なケースが多いようです。素材が良くても残念な商品が少なくありません。

2.パッケージデザインや量についての誤解

 素朴なデザインが有効な場合もありますし、洗練されたデザインが効果的な場合もあります。何となくデザインするのではなく、意図を持ったデザインが必要です。地方の場合、デザイナーとのネットワークがなく、良いパートナーに巡り会えないことも多いようです。また量が多すぎても、もてあます素材もあります。

3.流通ルートの確保
 生活者にどのようなルートで届けるかも大きな課題です。大量にさばけても、ブランドを消費する=育てようとしないルートではなく息長く育てていけるチャネルが大事です。

 かつて、旧そごう心斎橋店の地下に「良い食品を作る会」(現在解散)のショップがありました。全国の本当によい食品を作ろうという生産者のネットワークの商品を集めたモノでした。そごう閉店後、ご担当者が博労町に「いてふや」という食品専門店を開いています。小さな店ですが安心して変える美味しい品物を揃えています。
 http://www.kh-itefu.com/free1.html へのリンク

再開後の「そごう」には倉敷の「平翠軒」の商品が少しだけ並んでいましたが上記のショップはもうありませんでした。
http://www.heisuiken.co.jp/ へのリンク

 行政あるいは電源立地関係の地域振興団体が都心にショップを設けることもありますが、立地的に商業には向かない立地であるので、あまり効果はないと思います。


 一時的なブームに流されるような売り方ではなく、自前で直販を続けるのと、地域あるいは全国の同じ考え方を持っている生産者と組んだ形で、百貨店の催事から独自のショップ、コーナーを構える事で「世界観」を壊さない売り方をしていくことが必要です。

 30年以上前に国産のDCブランド(デザイナーキャラクターブランド)が市場に定着していく中で、いくつかのブランドが揃ったかたちの出店を続けることで、高感度なブランドイメージを定着させた故事にならうべきでしょう。

                                                  (2010年07月20日)
■三井アウトレットパーク滋賀竜王グランドオープン〜影響を受けるのは?

 店舗面積27,000u 店舗数165店、駐車台数5,000台 アウトレット空白地帯の大型商業

 7月8日にグランドオープンした「三井アウトレットパーク滋賀竜王」は滋賀や京都はもとより、大阪・奈良・三重・岐阜・福井などを含めた広域からの集客が想定されています。名神高速「竜王インターチェンジ」から約500mのアクセスですから高速道路利用を前提とした「ドライブタイム90分圏」約1,000万人をターゲットとしています。
 中国人観光客の誘致にも積極的です。

 http://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2010/0413/index.html へのリンク

 ラグジュアリーブランドも揃っており,海外の免税店みたいという声もあります。

 関西地区ではりんくうタウンや三田には大型のアウトレットがありますがこのエリアは丁度空白地帯です。岐阜や名古屋、北陸からも人が呼べる立地なので絶妙なポイント設定だと思います。

 影響を受けるのは?

 商圏が重なり、影響を受けると見られる京都の商業施設でも評価が分かれるようです。(繊研新聞)河原町オーパは「客層が違うのでそれほど影響はない」と見ています。来館者のアンケートでも関心は高いのですが、京都に住む大学生の車の保有率は少ないので、「ヤング層は年に何回も行かない」と予想しています。

 一方京都駅前のポルタでは「京都から近く、いいブランドが揃っているので京都の商業施設とパイを奪い合うことになる」と見ています。・・・・先日京都駅前に開業したイオンも車での利用抑制を訴えているだけに、自家用車の利用で選択肢を考えたときに竜王を選ぶ可能性は高いです。

 最も影響を受けるのは「JR京都伊勢丹」でしょう。滋賀県、京都南地区という商圏がもろに重なり合っていますし、いいブランドのアウトレットがある事で打撃を受けるのはこの店です。開店以来、成長を続けてきたこの店も、かなり苦しい戦いを強いられることになります。「JR」対「自動車」の交通手段の戦いにもなります。

 心情的には環境負荷の低い鉄道利用が主流になって欲しいのですが、滋賀県の商圏は今まで人口が伸びてきていた「若い世帯」が多い商圏なので、自家用車の利便性が優勢でしょう。アウトレットパークは買い物環境としても気持ちがいいので、駐車場のオペレーションさえうまくおこなわれれば優位性はゆるがないでしょう。ブランどものが安いですしね。

 今や、日本の百貨店の頂点に立った,「三越伊勢丹」の打ち出す次の一手が楽しみですね。わくわくして見守りたいモノです。

                                                (2010年07月16日)
■環境という贅沢さの価値を残す〜ルネサンス住宅

 「環境」配慮は建物よりも住棟が配置されている環境の維持に強いインパクトがありました

 UR都市機構の住棟単位での改修技術の開発「ルネッサンス計画1」の見学をしてきました。(一般でも参加できますし、WEBで申し込めますのでぜひご覧下さい)工事中の現場は見せていただきましたが工事が完成し、内装や設備も入った状態で見ると又違ったインパクトがあります。

 改修技術の実証実験が趣旨なので、住宅としての評価は酷でしょう。制約条件の中での処理の工夫に感心しました。中でも外部空間を取り入れた間取りの住宅はいいなと思います。というのも、旧公団の団地は住棟間の間隔が空いていて植栽も整備されているので緑の環境が豊かなのです。

 おそらく、建て替えたたほうがコストは安いのだろうと思います。減築をしたり天井高をあげたり、住戸をまとめたりして改修するのは、建築廃材で環境負荷を高めることのマイナスより、、住棟をとりまく環境ができるだけ壊されずに残るという事に価値があるように思います。

 「環境配慮」というとどうしても「リユース」とか「リサイクル」」などのストイックな取り組みに焦点があたりますが、長い時間かけて育てた環境を残すという贅沢さが「エコ」を付加価値にするポイントの様な気がします。

                                        (2010年07月15日)
    
■「開かれた国」は良いことばかりではないけれど・・・

 ドイツのエジルはトルコ系・・・「外国人」が目立つサッカーの現場

 少し古いデータですが欧米主要国の国籍別外国人労働者数を比較すると次の様な数字になります。

 ドイツ=外国人労働者合計362万人(1.トルコ100万人、2.イタリア40万人 3.ギリシャ21万人)
 フランス=合計162万人(1.ポルトガル37万人、2.モロッコ20万人、3.アルジェリア20万人)
 英国=合計130万人(1.アイルランド18万人、2.中東欧7万人、インド7万人・・・・かなりばらついています。
  2001年〜2002年 OECDの統計

 国自体がオリンピック村のような多民族国家アメリカ合衆国は1156万人の移民の内メキシコ系が263万人、フィリピンが62万人です。

 欧州も少子高齢化に悩んでいますし、高度な人材については獲得競争が始まっています。移民政策でも、どの国でも高度な技能を持った移民は積極的に受け入れる方向にありますが、単純労働者の受け入れは国によって見解が分かれます。経済界は労働力不足への対応から積極的ですが、英国、オランダ、ドイツなどの政府は過去の経験から経済に府の影響を与えると危惧しています。

 日本で就労する外国人労働者は50万人(2009年)、そのうち半数は中国人で、20%がブラジル人です。府県別に見ると東京都に25%、自動車産業が集中する愛知県で12%となっています。

 技術者の人材派遣を行っている企業は国内の人材不足に対応し、中国やベトナムなどの大学と組んで人材育成に取り組んでいます。安く便利に使ってやろう・・と考えると学生にとって魅力がなくなるので長期的な取り組みが必要になります。

 なし崩し的に外国人労働者(単純作業)が増えてしまうのも、ツケを後世に回すようで不安があります。単に「金儲け」の場所ではなく、文化や風土に愛情や憧れを持ってメンバーに加わる・・・という社会風土ができるかどうか。昨日のフードバレーでも機能の集約、交通の便だけでなく、生活環境、文化環境、交通の便について質の高い立地であるからこそ世界から研究者が集まって来るのだといわれています。

 外国人にとって、その国の魅力度の指標の一つが、観光客ともいえます。

 外国人訪問者の多い国・地域は

 1位はフランスで7930万人、2位は米国で5803万人、3位はスペインで573万人、4位が中国5304万人、5位はイタリアで4273万人です。・・逆に外国への出国者数が多いのはドイツ、英国、米国、ポーランド、中国の順です。アメリカ人は意外に外国へ旅行する人が少ないようです。

 日本が好きでリピーターとして訪れる韓国や台湾の人達も少なくありません。中国人には団体旅行で、いい印象を持ってもらえるかどうかはわかりませんが、個人旅行で訪れる富裕層には日本の不動産を買おうかという方もおいでになるので、少なくとも「好き」であり「価値」を認めてもらっています。

  旅行者、そして短期滞在の学生や企業の研究者に愛着を形成するところから「開いていかないと」、お金儲けのチャンスがあるからと投資資金や、お金を儲けたい人達を集めることに注力すると、日本持つ「価値」(良い治安やホスピタリティー)も失われることになります。・・・とにかく人を集めさえすればなんとかなると勘違いすることだけは避けたいモノです。
                                                    (2010年07月14日)
■世界が注目するもうひとつのオランダ〜「フードバレー」は地域再生の切り札になるか

 北海道の半分の面積、人口1600万人のオランダが世界をリードしているのはサッカーだけではない

 「フードバレー」といっても谷間にあるのではなくシリコンバレーをもじった「食品・農業・健康をテーマとした専門知識の集積地」といった意味合いで2002年頃から研究開発と起業家精神を強くアピールするためにこのニックネームが使用されるようになりました。。

 オランダの東部、ワーニヘンゲン市は人口3万のうち2割に当たる6,000人が国立の農業大学であるワーニヘンゲン大学を中心とした「ワーニヘンゲンUR」(UR:大学と市場志向の研究機関が協力体制を組んだ組織)の研究者です。
 半径30km圏に1,442社の食品関連企業、69社の科学関連企業、21の研究機関と高等教育機関が集積する巨大な食品の産業クラスターです。

 食品の生産から流通、消費の分野すべてが研究対象で、世界の食品企業(ハインツやキッコーマン等)と大学が共同で研究開発を行っています。研究者の多くは外国人で、大学ではビジネススクールも設置し、ベンチャー企業の育成にも取り組んでいます。研究者の数はあわせると15,000人とも言われています。(人口数を考えるといくら何でもこの数字は多すぎますが・・・少なくとも知的レベルの高い住民のシェアは高いようです)
 年間50億円といわれる研究予算の8割は民間企業の予算であるようです。

 オランダのフードバレーに関しては視察報告や紹介も多いようですが、私が見た限りでは下記サイトの大阪府の方のレポートが一番まとまっているように思います。
http://creativecity-j.gscc.osaka-cu.ac.jp/ejcc/viewarticle.php?id=42 へのリンク
(PDFファイルをダウンロードできます)

 日本国内の「フードバレー構想」

 日本国内の、地方活性化計画でこの「フードバレー」に注目して視察研究が進んでいます。「フードバレー」を謳っている地域は「静岡県富士宮市」「栃木県」「新潟県」「北海道」「北海道十勝市」など数多くあります。

 農商工連携事業などの政策もあり、地域の地場産業としての食品工業や農業生産者を中心に期待が高まっているようです。オランダと違うのは大学、研究機関の力が今ひとつ活かされていないことでしょう。個々の技術分野でのエキスパートはおいでになっても生産、開発、商品化、流通、ビジネスとしての仕組み構築には学際的な連携が必要になります。

 オランダは、ワークシェアリングが進んでいて、失業率は3%台です。また、都市内交通機関でも自転車の活用が進んでいます。思い切って社会の仕組みの改革を設計し実行できる社会的な土壌がある事が、各分野の連携を進め、多くの外国人研究者を受け入れる街をつくるベースにあるように思います。

 表面的にまねて、今あるモノを寄せ集めるだけでなく、思い切って組み替える力がないと「フードバレー」もどきのものはできても、国の補助金だのみの、魅力に欠ける集積になってしまいそうな気がします。

 何とか面白いモノができればいいのですがね。

                                               (2010年07月13日) 
■言葉を届ける媒体はどこにあるのか〜WEB時代の雑誌の活用

 休刊雑誌のWEB化

 関西一週間は休刊しましたがWEB版として一部情報提供を続けるそうです。先に休刊した「京阪神エルマガジン」はスタッフブログの形で発信を続けていますし、ライフスタイル雑誌の「RIS」もWEB版で続けていくとして休刊しました。

 情報誌はWEB情報にスピードや網羅性で勝てないのでしょうか?

 地域情報紙の休刊が続く中で、より小さなエリアに絞った「枚方ウォーカー」や「○○ウォーカー」は好調といわれています。WEBサイトで編集されている情報は意外に地域対応のきめ細かさに欠けています。多くの地域ポータルと称するサイトは最初はいいのですが、こまめなメンテナンスができていないので情報が古くなっていることも多いようです。

 きちんと定期的にメンテナンスされていて、プロが編集する読みやすいページであれば、ブランド力のある雑誌がWEB化されれば見に来る人は多いと思います。問題はお金の取り方でしょう。

 雑誌の到達力

 特徴のある(読者を選ぶ)雑誌が、どの程度の読者を獲得しているか調べてみました。
 シニアを対象としたライフスタイル雑誌で約10万部。(公称20万部の雑誌もありますがおそらく10万部でしょう)
 おやじ向けのファッション、ライフスタイル雑誌で5万部。おばさん系のセレブ雑誌で10万部。天然系のライフスタイル雑誌で5万部程度です。複数の雑誌を購入してるかどうかは不明ですが、おおまかな市場規模のイメージはつかめます。休刊した関西1週間は一時35万部あった部数が8万部に減少した結果廃刊となったそうですが、単に部数の面ではこれらの雑誌とあまりかわりません。・・・・結局、広告がとれるかどうかが雑誌継続の生命線のようです。

 書店の店頭に沢山並んでいる「天然系のテイスト」が今、流行しているのかと思い調べてみましたが、実際その人達が多数派ではありませんでした・・・・。マイナーであっても支持する人の熱狂度合いで市場としては魅力的になる市場もあるので一概に「量」だけでは判断できませんが・・・・。出版社、編集者というのは「マーケティング」の意識は薄いのかも知れません。

 普通の女性向けのファッション誌で部数は10万から30万部です。

 総合雑誌の時代は終わったとも言われていますが、その代表格の文藝春秋と肩を並べているのは、スポーツとか趣味に関するテーマを扱う雑誌です。

 地域、ライフスタイル、趣味などお客様の顔が見えている雑誌が残っていくでしょうね・・・・商業施設と同じですね。

                                                (2010年07月12日)

図ー特徴のあるライフステージ、ライフスタイルを対象にした雑誌の発行部数


図ー発行部数40万部以上の雑誌


■「100円パン」人気〜食卓と売場それぞれにおける意味

 阪急ベーカリー「100円パン」の売場を拡大

 阪急ベーカリーは尼崎阪神や桃山台、緑地公園の阪急オアシスで「100円パン」に特化したベーカリーを出店してきました。阪急オアシスの中でも新しい実験店である千里中央店のパン売場を昨日「100円パン」業態に転換していました。
 
 100円パンをチェーン化して成功していたのは草津市に本店があった「ぶうらんじぇ」でした。30uの店で日商60万円をあげていて行列が出来る店として5年前にはテレビや新聞にも沢山取り上げられていました。梅田や難波にも店舗を出店していました。ロス率を下げることで低価格を実現との事で、全品100円でデニッシュ、調理パンを中心にフレンチのシェフがレシピを作った味の良さと相まって人気を集めていました。(その企業はトラブルを起こしてなくなってしまいましたが)その100円均一のビジネスモデルを踏襲してつくられたのがこの100円パンです。

 大型スーパーのベーカリーでも一部、100円コーナーをつくるなど、取り入れる動きがありましたが、焼きたてパンが全品100円という圧倒的な迫力には対抗できないようです。これは果たして貧困層を対象としたデフレ業態なのでしょうか?

 食べ物にはその人の好みが強くでますが、パンに関しては3段階「手作りのこだわりパン」(高い)、「手作り風のパン」(そこそこの値段)「スーパ店頭に並ぶ小麦粉をけちったてふくらましたすかすかパン」(安い)の3段階しか無いように思います。職人のパンを除けば、特に低価格帯のパンは100円と200円に味の違いはそれほど大きく差が開いてはいません。(チェーン店でも高いパンはそれなりにそこそこおいしいですよ勿論)

 阪急ベーカリーの100円パンはボトムのプライスでありながら焼きたてでそこそこ美味しいという「価値」が評価されています。スーパー玉出の弁当などのように下流層向けのデフレ食品ではないところがみそです。中高生のおやつや、パンの味にこだわらない人の朝食には充分なクォリティです。高級を目指す食品スーパーの売場に並べても不自然ではありません。

 価格だけでみると間違える

 100円であるから成功した業態でないことは、中途半端に参入した大手スーパーの事例が成功していないことからも伺えます。(取引先をたたいて安く納品させても原価率が下がった食品が美味しいはずがないでしょう。ちなみに「ぶうらんじぇ」の事例では食材の原価率が40〜50%の商品もあったといいます)

 ホームベーカリー毎年2ケタの伸び

 一方で、家庭で手作りパンをつくるホームベーカリーの売上がここ数年2ケタの伸びを示しているといいいます。コストは結構かかりますが、米粉や、玄米の米粉、全粒粉など健康にいい食材を使って、さまざまなパンを焼き上げることが出来ます。

 美味しいパンやさんが近所にあればいいのですが、阪神間にでもすまなければそれも望めません。コストをかけても安全、安心で美味しいパンを食べたいという需要も一方であります。本当に毎日の食卓に役に立つスーパーを目指すのであれば、これらの商品を店頭に揃えることも必要だと思います。

 商圏のお客様の生活への想像力があれば競合が激しい中でもビジネスチャンスがあります。特に食品の場合、店の都合でコストダウンした結果、質が低下すれば、はっきりと厳しい評価がくだされます。
〜駅から少し離れた住宅街に昨年開業した「高級」スーパーで、寿司などの惣菜をおそらく店内で調理していたのを「業者」に切り替えたのでしょうね。コンビニの弁当のような惣菜が並ぶようになりました・・・、売れ残ってロスが多かったのだと想像されます。最初は、よく利用していましたが、最近は全く利用しなくなってしまいました。

 首都圏では高級スーパーとして認知されている店で帰るのはコンビニの弁当以下の惣菜とはがっかりです。一応その店は大型開発の高級マンションの1階に立地しているのですから、食材の質を落とす・・・以外のコストダウンの方法を考えるべきだったでしょう。
 その後その「高級」スーパーは売却されてイオンが運営しています

                                                (2010年07月09日)
■「ご当地エンタ」が人気の背景〜東京発だけでは届かない

 ご当地エンタが人気なのは「リア充」になりたいユーザーの共感〜日経エンタテイメント

 日経エンタテイメント8月号で「ご当地ヒットを探せ」という特集が組まれています。最近人気のエンタテイメントでは「○○といえばどこどこ」といったように特定の地域とのリンクが特徴的だと指摘しています。過去のブームではお台場であったり渋谷、池袋、秋葉原といったような首都圏が中心で、「東京を中心に流行が絶頂に達しそれが全国に拡がる」というのが圧倒的であったのに、最近は特定の地域で局所的にブームが起こり、そのブームの高まりを東京が後追いで伝えるという「逆転現象」が起きていると伝えています。

 事例としては新潟に地元ファン1万人を集めた「ヒルクライム」のコンサートや滋賀県の琵琶湖烏丸半島に3万人を集めたTMレボリューションのコンサート、映画「桜田門外ノ変」のオープンセットを有料公開している水戸市の事例が取り上げられています。またよしもと新喜劇の地方活性化事業のエリア開発センターの紹介やAKB48の名古屋版SKE48をピックアップしています。

 ネットの世界で使われる「リア充」、現実の生活で友人や恋人がいてリアルな生活が充実している人が格好いいという考える(当たり前じゃないですか)人が増えて(だからそれが当たり前なんだけど)見る、聴くだけでなく参加したいと考えるユーザーが多いというのがご当地エンタが流行る背景にあるそうです。

 この分析の当否はともかく、この雑誌で紹介レ手いる地方ローカルの番組が結構沢山あるのが面白いですね。放映エリア外でもWEBで見ることが出来るようにしたらいいのにと強く思います。

 大阪にいると東京への対抗意識ばかりが強くて、東京にいるのとは違った意味で「日本」が見えていないのかも知れません。
 仙台を舞台に作品を発表する伊坂幸太郎のように自分の生まれ育った街を舞台に作品を発表するクリエイターがすこしずつ増えてきていることも確かです。

 地域の暮らしは都会とは同じようで違う

 各地域の地方紙・ブロック紙のシェアを比較すると、思っている以上にそのシェアが高いことに驚きます。また地域によって食べられているお米の産地も違います。全国で新潟産のコシヒカリが食べられているわけではありません。

 大阪人は東京への対抗意識ばかりで物事を考えがちですが、それぞれの違いを尊重した国と都市のありかたを考える時期にきているのだと思います。「東京」のまねっこばかりを考えていてはいけないのだと思います。

                                            (2010年07月08日)

図ー府県別新聞購読者地方紙・ブロック紙のシェア

(月刊FACTA2007年7月号)

図ー居住エリア別決めている米の産地

(農林水産省食料品モニター)

■本当はすごい「大坂城」の集客力〜武家、陸軍から官庁群によって遮られた景観

 天守閣の入場者数では名古屋城、姫路城を上回る集客力

 地元の人はコンクリートで出来たレプリカで、しかも秀吉の建てた「大坂城」ではないので、結構ひややかです。潜在的には世界レベルの魅力があると評価しながら、今ひとつ実力が発揮し切れていないという印象が強いようです。

 大阪城周辺は戦前は陸軍が押さえていました。そのせいで空襲で多くの歴史的な資源が灰になってしまったということが大きいかも知れません。

 それ以前は代官所、武家屋敷がならんでいたのですが他の城下町のようにその風情は残っていません。

 大阪が綺麗に見える場所の多くは国や、大阪府の官庁か、国家公務員の共済組合のホテルといったように一般市民がなじめる場所ではありません。

 陸軍の旧砲兵工舎のあとに整備された大阪ビジネスパークが人気なのは水と緑に加えて、唯一市民が美しい大坂城を眺めることができるエリアであることも大きいのです。

 大阪の美しい風景を代する大坂城周辺を活性化しようという動きがいくつかあるようです。天満橋の八軒屋浜から中ノ島の美しい風景につながっていけばうまく成功すると思います。10月には大阪ウォークがまた開催されます。

                                                   (2010年07月07日)
図ーお城の天守閣入場者数(2008)

(全国城郭管理者協議会)

図ー大坂城観光地としての評価 

(大阪商工会議所)

図ー大阪城訪問目的

(大阪商工会議所)


■ニーズから考える大阪キタの大規模開発〜ナレッジキャピタルのもう一つの顔

 キタ周辺に欲しい施設のニーズとバイオ、ロボット、通信技術の融合を

 梅田北ヤードの計画には人間の気持ちがこもっていません・・・ちっとも楽しそうでは無いのは何故でしょう。インフラ整備や国立競技場など国の投資を期待してかかげる構想に気持ちというか背景は痛いほどわかりますが、採算のとれるまちづくりには税金の投入ではなく、市民の「楽しそう」という感覚を喚起する夢が必要です。

 ニーズから引き出されるキーワード

 ・ファッション〜先端ファッションのデザインとテクノロジー(島精機、セーレンなどの世界的な企業)の融合
 ・アミューズメント、エンタテイメント〜吉本だけじゃない生のエンタテイメント
 ・アンチエイジング、リラクセーションへテクノロジーが実現するサービス
 ・先端医療〜高度医療ツアーの受け入れ
 ・大阪〜関西〜アジアの歴史文化の集積と商品開発への展開

 ・短期滞在型コンドミニアム〜部貸しではなくコミュニティ体験、体験学習、アート製作、エステ、合宿など生活の場

 女性が欲しい、面白いと思うものを配置すれば街と融合します。リサーチパークやビジネスパークの発想では地価の高い立地に配置する意味がない。

 今までに何度も「女性の時代」とか「女性の感性を活かす」とか聞かされてきましたが、雇用機会均等法で、「おっさん化した女性」は増えましたが、いまだにこのような大きな計画では、トッピングのいちご位にしか扱われていないように感じます・・・・。が実態はどうでしょう。

                                                (2010年07月06日)サラダ記念日      

図ーキタ周辺に欲しい施設

各年代で特徴的なニーズ(要望率30%以上を抽出)

なにわ考現学2005より加工(大阪市内通勤者対象の調査)
■男型の商業施設と女型の商業施設

 圧倒的に20代女性に支持されているのは・・・

 ディアモール大阪、阪急三番街、心斎橋OPA、なんばシティ、あべのHOOP、天王寺MIO

 駅に近い利便性の高い店が多くなっています。

 男女の支持が拮抗しているのは

 なんばパークス、ユニバーサルシティウォーク

 物販というより環境や雰囲気が楽しい商業集積ですね。

 20代男性の支持が女性より高いのは

 ヨドバシ梅田、梅田ロフト、東急ハンズ、ビッグステップ、ビッグカメラ、鶴見はなポートブロッサム、天保山マーケットプレース・・・

 非ファッション系ですが、ビッグステップ、天保山マーケットプレース、鶴見はなポートブロッサムがこのグループに分類されてしまうのはどうなのでしょうね。デートスポット?ファッション商品の力が弱いともいえます。
 ビッグステップはアメリカ村自体が男性の街になっていますからそのことが反映されています・・・すぐそばのOPAとは客層が全く違っていました。

 はなポートブロッサムは同じアウトレットのATCマーレーと比べて女性の支持が低いですね。

 たった数年前の調査ですが、現状では勢力図も大きく変わっていることと思います。

 出資者をつのってでも、89年から続けていた「なにわ考現学」を復活させたいのですが・・・持ち出しの調査を誉めて下さる方はいても、お金を出す企業はとても少ないのが関西の現状です。

 ということで2014年 新なにわ考現学の発表の準備に着手しています。ご期待下さい。
                                                  (2010年07月05日)

図ー好きな専門店20代男女比較   ※2005年調査


(なにわ考現学2005)

・HEPナビオは阪急メンズ館に改装
・GARE大阪は大阪駅工事の為閉鎖
・あべのラセレナも駅工事のため閉鎖
・ブリーゼブリーゼ、オドナ等はこの時点では未開店
■ゴールデンルートツアーの原価構造

 訪日客2,000万人時代に向けて中国人観光客は600万人を想定

 中国人への個人向けのビザ発給を中流層にまで拡大することで、今個人観光客が増加することが想定されています。中国では2000年に団体観光の訪日観光査証を解禁しました。2009年7月には富裕層に限定して訪日個人観光査証が解禁されています。

 多くの人達はまずは名所一通り回りたいという希望から大阪〜東京を5泊で駆け抜ける「ゴールデンルートツアー」を利用しています。品質よりも安さを優先したために安かろう悪かろうの劣悪なツアーになっており、買物先もツアー会社が囲い込んだ免税店で買い物をさせて、地域の店は意外に潤わないともいわれています。

 ゴールデンルートツアーの原価構造

 日本政策投資銀行が「訪日中国人観光客の現状と今後」というレポートをまとめています。
 その中で5泊6日のゴールデンルートツアーの原価構造を推計しているのですが、宿泊費は1泊5,000円、飲食費は1日1,000円、です。これでも10万円のツアーですから、中国人一般の人とっては安くないのでしょうね。

 別のサイトで紹介されている実態では華僑系の格安のツアーには65,000円のものもあるようです。観光客は200〜300万円の買い物予算を持って訪日しますから、自分達の息のかかった免税店で、買い物をさせて、ヤマダ電機などには絶対につれていかないそうです。
 これでは日本に対してあまりいい印象は残さないしょいうね。本日の朝刊でも中国人客の購買は一過性のモノという分析がありましたが、リピーターを増やしていく努力を今からでも仕込んでおく必要はあります。

 「関西広域連合での一括したPR」

 中国への観光PRは規制も有り、民間レベルでは難しい面が多いようです。同レポートでは、現在の自治体のPRにでは個々ばらばらの訴求になり、周遊型の観光がメインの中国人に対してルートとしての提案がしにくい点、不効率であると分析しています。

 「広域的な観光推進組織に自治体、民間から人材・資金を集中させ、一括して現地メディア・エージェント向けのPRを行うことが最も効率的な方法」と提言されています。

 関西の活性化のための広域の連携は観光集客でも求められています。

 日本政策投資銀行のレポートは同社の関西支店のページからダウンロードできます。

                                        (2010年07月02日)

 中国人観光客でも個人で来日する場合は、自由にお買い物を楽しんでおられます。日本国内の百貨店での買い物は年間400億円にまでなります。現在「化粧品」は消費税は課税扱いなのですが、これが衣料品などと同じように消費税が他税になれば売上は50億円から75億円にまで伸びると想定されています。  (7月5日)

■走る人〜来年秋開催される大阪マラソンに期待されるもの

 市民ランナーが増えている〜無料から消費市場へ

 昨年、大阪国際女子マラソンを主催している産経新聞の記者の方に伺ったのですが、定期的に走ることを習慣としている市民ランナーがここにきて増えているそうです。「マラソン」「ジョギング」は無料で出来るスポーツですが、シューズ、ウェアなどの周辺市場が動いているようです。

 東京で言えば皇居でしょうが、大阪では大阪城公園で走る人が多いようです。JR西日本が昨年7月に始めたランナー向けのサービス施設「ランナーズプラス」も好調ですし、近くのホテルニューオータニ大阪でも今年1月にフィットネスクラブのロッカーやシャワールームを活用して快適なジョギング、ウォーキングライフをサポートする「ランナーズクラブ」を設立しました。 大阪城公園そばのKKRホテルでもランニングのための宿泊プランを提供しています。

 以前もご紹介しましたが、淀屋橋のミズノの1階にミズノがランナーズステーションが開業し、中ノ島公園等を走るランナーをサポートしています。

 色々な人と話をしていると、走っている人や自転車通勤をしている人は結構おいでになります。大流行とはいえなくても中ぐらいで確実な市場がそこにあります。

 大阪マラソンに期待される、多くの人を巻き込んだ一体感のあるお祭り

 2011年10月〜11月に開催される「第一回大阪マラソン」の参加者募集がこの7〜8月に発表されます。コースは9月には確定するそうです。3万人が参加するイベントですのでコースの設定も大変でしょうが、市民、府民が走っていて気持ちが良く、かつ全国に紹介したい風景を映し出す必要があります。

 11億7,000万円のコストをかけるのですから大阪の良いイメージを発信するチャンスにしないともったいないでしょう。(国土交通省の調査での住みたい街で大阪はまったく挙がってこない)もちろん、参加する市民、府民が楽しめることが第一なのですが、来年は大阪駅周辺の施設も完成し全国メディアが大阪」に注目する年です。この機会に大阪の歴史文化や、美しい面も全国に見てもらえればと願っています。

 マラソンを実際に活動している人とそうでない人にはギャップがあります。あまり関心がない人を引き寄せる仕込みをどこまで実現できるかが大事です。

                                            (2010年7月1日)

 
 6月
■新感覚のエンタテイメントディナーショー「ルナ・レガーロ」について知らなかったのは

 この春から東京で話題のサーカスとレストランの融合イベント「ルナ・レガーロ」が11月から中之島で開場・・・

 仕事上の必要にかられて久しぶりに「ぴあ」を購入して初めて知りました。こういうイベントだそうです。

 http://www.ktv.co.jp/event/luna/ へのリンク

 ロシアの「グレートモスクワサーカス」の公演に観客が「レストランの客」として参加する観客参加型のエンタテイメント・ショーらしいです。料理は関西テレビの番組「料理の鉄人」のシェフイ達が和洋中の枠を超えたコースを提案という設定でフレンチの鉄人坂井シェフや、イタリアンの落合シェフ、中華の陳健一が企画に参加するなどなかなか豪華な企画ですね。平日16,000円、休日18,000円という価格設定ですから、料理に内容はあまり期待しない方がいいかもしれません。

 それでも「企画書」をみればわくわくする内容だろうと思いますから、もっとこんなイベントが沢山、関西でもチャレンジされれば楽しいなあと思います。中之島の特設会場で開催・・・・・・・中之島界隈が活性化するのは大歓迎です。

 ただし、鉄人シェフは今までの関西進出はことごとく失敗していますし、イベント経費を考えると利用者にとって決して高くない料金の内、食材の原価は全体の1割程度ということは事前に覚悟しておいた方がいいでしょう。

  シアターレストランの場合、ショーと食事は時間を分けて提供されますが、このイベントは同時進行ですから結構せわしないかもしれません。

 告知についての最適手法は?

 チケットの販売が7月からという事もありますが、今回あのイベントについて、実はたまたま知りました。確かにテレビはあまりみないですし、新聞も読まなくなっているとはいえ、中之島ウォッチャー、レストランビジネスウォッチャーとしてはお恥ずかしい限りです。・・・・ただ、開き直っていえば、大人の市場に対して告知が十分ではないと言うこともいえます。

 どんな媒体、どんな告知手法を使えば、中之島に大人の需要を吸引できるのでしょうね。情報誌やテレビ、新聞では偏った層にしか伝わらない現在のメデァの環境、広告の環境について考えさせられる材料になりました。
 やり方を変えないといけないのですね。

                                                    (2010年06月30日)
無事終了いたしました 味わいのいあるステージでした
※コスパの高いレストランイベントのご案内  
 大阪北浜のミシュラン2つ星のフレンチ「ルポンドシエル」で、実力派ジャズシンガー中本マリのパーソナルなジャズライブが60名限定で1日だけ開催されます。7月24日 18:30から食事 20:15からライブ   料金はワンドリンク税サ込みで20,000円。料理、ライブのコスパが高いことは請け合います。詳しくはこちらへ・・・

http://www.pont-de-ciel.co.jp/lepontdeciel/ へのリンク


■収益の仕組みを仕込まなかったウォーターフロント開発をリセットするべき

 サントリーミュージアム 大阪市へ

 既報の通り、ユニークな企画展で親しまれていたサントリーミュージアム(大阪市港区)が12月で閉館します。民間企業の譲渡先を探していたそうですが、見つからず最終的に大阪市に寄附するということです。図ー2にあるように大阪では20〜30歳代の女性で利用率が公営のどの美術館よりも高い施設でした。サントリーならではの企画力が集客につながっていたのだと思います。

 サントリーミュージアムの立地は海遊館、天保山ハーバービレッジ、旧ホテルシーガル天保山が整備された大阪港のウォーターフロント開発の核となるエリアで、水と緑のアメニティ評価では中之島,OBPと並んで大阪を代表するエリアです。

 資金を投じて整備された地域ですが、官主導の色が濃いせいか「収益」の仕組みが組み込まれていません。そのため、個々が頑張っても少しずつ集客力が落ちてきます。本来は水族館が民間に売却されれ隣接する商業施設「天保山マーケットプレース」にも再投資が行われ、地域全体の集客力が向上したはずなのです。売却資金で、大阪港にある「レンガ倉庫」の耐震補強の資金が確保でき、新しい集客装置が整備できたはずなのです。

 公営商業施設では収益はあがらない

 天保山マーケットプレースは商業者から派遣されていた人材がいなくなり、半ば公営施設となってしまった結果、土産物屋街色がより強くなり若い女性の支持を失っていくことになりました。(図4)商業施設は収益の確保の鍵を握る最も重要な事業です。やはり専門家を責任者とすべきだったでしょう。

 今回、サントリーミュージアムが公営化されることに、同様の不安が残ります。

 行政があまり「収益」を考えると民業圧迫と非難されます。インフラ整備は行政で整えたのですから、大阪港地区全体の集客と、どこで収益をあげるかの仕組み作りを考えるために一旦リセットして、民間の商業者の知恵を入れる時期だと思います。

 水族館の運営についても近鉄やオリックス不動産のように実績をあげている企業は複数あるので、オープンな入札が可能でしょう。

                                         (2010年6月29日)
旧サントリーミュージアムの現状

大阪市は、旧サントリーミュージアム〔天保山〕について、平成25年1月31日にオリックス不動産株式会社と定期建物賃貸借契約を締結しました。また、新たに施設の名称が決まりましたのでお知らせします。

 大阪市では、大阪府市都市魅力創造戦略の一環として、天保山・築港地区を世界的な国際集客観光拠点にすべく、クルーズ客船の母港化や、民間活力の導入による集客観光拠点の創出等の施策を進めております。その一つとして、旧サントリーミュージアム〔天保山〕について、民間事業者の創意工夫やノウハウを活かして天保山・築港地区の魅力向上、活性化に資することを期待し、一般競争入札により建物を貸し付けする手続きを進めてまいりました。

 当施設は、平成6年11月の開業以来多くの人々に親しまれ、近年では「ツタンカーメン展」や「ONE PIECE展」など話題の催事を開催し、天保山・築港地区の地域活性化に貢献してまいりました。

 オリックス不動産株式会社には、これまでの歴史を継承しながら、海遊館や天保山マーケットプレースなどの各施設との連携により当施設を運営し、天保山・築港地区の地域活性化に貢献していただきたいと思います。

 今後も引き続き天保山・築港地区を国際的な集客観光拠点として活性化していくことをめざしてまいります。

新しい名称について
賃貸借契約の締結にともない、オリックス不動産株式会社との協議の結果、下記の名称でオープンすることが決まりました。

新名称「大阪文化館・天保山(英語表記:Osaka Culturarium at Tempozan)」

図ー1 この1年間に利用したレジャー施設

海遊館は各世代に利用されている

図ー2 この1年間に利用したミュージアム

 年代で分かれる利用施設

図ー3緑や水のアメニティの充実した街


図ー4 好きな商業施設


 IMP=大阪ビジネスパーク内の商業施設 インターナショナルマーケットプレースという当初のコンセプトの略
 OAP PLAZA=帝国ホテルのある大阪アメニティパーク内の商業施設 帝国ホテルとは無関係
 鶴見はなぽーとブロッサム=花卉市場の敷地を利用したアウトレット 三井不動産
 天保山マーケットプレース=当初はウォーターフロントの中核となる商業を想定 現在は・・・・土産物屋の集積に近い
 ユニバーサルシティウォーク=有名テーマパークのショッピング街
 ATCマーレー=ATC内の空きスペースを利用したアウトレット テナントは良く変わるが20〜30代では天保山マーケットプレースより好感度
 が高い

(なにわ考現学2005)大阪市内通勤者対象の調査
■大丸・松坂屋百貨店中古ブランド品買取・販売事業へ〜リユース市場は成長市場

 中古ブランド品買取販売ビジネスに進出する大丸・松坂屋

 大丸松坂屋百貨店が7月1日から、不用になったブランド品を消費者から買い取り、ネットで安く販売する事業を始めるそうです。

 買い取り対象になるのは「ルイヴィトン」など国内外の有名ブランドで、バッグ、時計、衣料品などを中心に約250ブランドを計画。

 大丸松坂屋は現在、リユース品の在庫はないので、専用の通販サイト「ソーシャルネット」を7月1日に開設し、下取りを開始します。

約1カ月後からネット販売をスタート。同社では、百貨店顧客はタンス在庫が豊富な消費者が多いと見られることや、ネット販売市場の成長を見込んで事業化を決めたそうです。

 査定は、提携先の専門業者が実施。実店舗では対応できないため、通販サイトを通じての下取りに限定されます。

 商品の売買に際しては、同社と利用者が売買金額の2・5%ずつを負担し、複数ある指定のNPO団体に寄付する仕組みで初年度5億円の売上の5%、2,500万円がNPOに寄付され環境保護活動に活かされる見込みです。
 リユース市場の参入において、「査定と寄付の両面で、百貨店の安心感が強みになる」(同社)と考えているようです。

先日の記事に書いたようにエコ市場を支えているのは環境意識の高い賢い消費者ではなく、新しもの好きのお調子者です。環境保護に寄付するよりその5%で事業基盤を整備した方が、持続性が高まり結果的に環境保護に役立つと思うのですが・・・・。

環境会計のようなものをまったく意識しない企業も困りものですが、事業の仕組みの中に「寄附」とかを組み込むのはよく考えた方がいいでしょう。利益が出たときに還元すればいいのです。普段5%の値入率の上下でで攻防を繰り広げている小売業としてはどうでしょうね。 

 国内アパレルの年間市場は10兆円

 国内のアパレル市場は10兆円といわれています。家電市場の6兆円を上回っているのは意外に思われるかも知れません。中古衣料市場は4.000億円でわずか3〜4%にすぎません。衣料品のリサイクル率はわずか8%で他業界に比べて遅れています。廃棄されるモノやタンス在庫を活用すれば中古衣料販売は「眠れる市場」なのだそうです。

 郊外型紳士服チェーンの関心が高く、リユースショップの専業店とFC契約を交わしている店が多くなってきています。青山商事が「セカンドストリート」(売上135億円)とFC契約、コナカが「ドンドンタウン」(40億)とFC契約を交わしています。ユナイテッドアローズは「キングファミリー」(53億)と共同でスーツ下取りキャンペーンを実施し、2,500枚を回収、そのうちの4割を販売したそうです。

 ファッション業界は毎年流行を変えることで需要を作りだしてきました。ヴィトンなどのスーパーブランドであればともかく、2〜3年前の流行遅れの服が売れるのか?またユニクロやしまむら等のチープな洋服は2年目のシーズンに実用に足るのか?といった疑問があります。

 基本はリサイクル=再資源化でしょう。ファッション商品として販売できるのは、毎年新作を求める中毒患者がささえるスーパーブランドか、ごく一部のインベストメントクロージング、そして子供服の世界だけでしょうから、パソコンや自動車ほど中古品市場は大きくならないと見ています。

 本当に環境のことを考えるのなら新品市場から変わらないとだめですし、そのような商品揃えをしないで「環境」を語るのは片手落ちでしょう。

                                                      (2010年6月28日)
■誰もが危惧していながら口に出さない経営を置き去りにしたスタジアム構想の一人歩き

 数百億円の建設費が想定されるサッカースタジアム構想は誰に夢を与えるのか?

 多くの人が寝不足気味でありながら勇気づけられて1日をスタートしたこの朝。大阪市長の平松氏はご自身のツィッターで、大阪駅の北ヤード地区でのサッカースタジアム建設について語っておられます。市有地でもない土地ですし、建設は国が主体となった国立競技場を想定しているので実現までのハードルはかなり高いです。しかも万が一建設にこぎ着けても、運営コストは地元負担となる可能性もあります。

 ガンバ大阪が万博公園に建設を150億円で建設を予定していた新スタジアムについても、地元吹田市が運営コストの負担を嫌って進んでいません。国立競技場になるとJリーグのチームのホームタウンとはなれません。数百億円と言われている建設費を回収するどころか、毎年赤字を垂れ流す事になります。静岡県のエコパスタジアムは建設費300億円で5万人を収容するスタジアムですが、毎年8億円の維持管理費がかかかっています。2002年のワールドカップで地元に引き渡されたされたスタジアムはほとんどが赤字で苦しんでいます。

 住宅地にある神戸ホームスタジアムは建設費230億円ですが民間事業者の提案を受けてスポーツクラブやレストランを導入し、年間2,300万円の施設使用料が入ってくると言います。

 Jリーグの調査では欧米のスタジアムは都会の中の緑の空間として位置づけられ、併設されるホテル、病院、、託児所、ショッピングセンターのテナント収入から維持費をまかなうといいます。

  大阪駅前という好立地ですから民間に運営をまかせれば、テナント収入は期待できます、広大な芝生空間を公園と考えれば環境は抜群でしょう。誰が誰のお金で建設するのか?それによっては用途に縛りがでてくるでしょうし、何よりも建設コストが何故数百億円になるのか精査が必要でしょう。ガンバのスタジアムで150億円、鹿島が計画している新スタジアムが162億円、・・・・


 大阪ドームの経営は?

 京セラどーむ大阪と名称が変わった大阪ドームMぽ当初から球場ではなく「多目的ドーム」として計画されていました。阪神なんば線でより便利になりましたが、イベントが無いときは閑散としています。ドーム内の」商業やVIP席の販売も苦戦しています。コンサートやイベントでの利用など頑張って運営されていますが、収支はどうなんでしょうか?公開されているはずなので検証は可能です。

 開業当初に色々な収益向上策を一緒に考えましたが、Jリーグの報告書にあるようなVIPルームの販売などは思い通りには進まなかった記憶があります。サッカーファンよりプロ野球ファンの方が圧倒的に多いにもかかわらず、その結果ですから、サッカースタジアムの経営はよほど知恵を絞る必要があります。

 経済団体などの提言にもあったような自然公園の整備、、広大な芝生広場でも周辺環境はずいぶんよくなると思いませんか?実現するかどうかわからないワールドカップの開催時の2〜3試合のためだけに数百億円を投資するのはいかがなものか・・・・おそらくほとんどの関係者はそう思っているはずです。

 何故、市長はそれを掲げ続けるのでしょうか?完成後の経営について誰が真剣に考えているのでしょうか?関経連の下妻会長でさえ「大阪オリンピックの時と一緒で、サーカー場建設も、刀おれるかも知れんが、折れるまでやったらどや」と負け戦を予想したコメントをされています。

戦をしかけるなら勝つ為の策を講じないと駄目でしょう。ちゃんとやりましょう。まっとうな事業計画を組んでね。

                                                             (2002年6月25日)



欧州におけるサッカースタジアムの事業構造調査 2008年より  Jリーグ


■これから開業する商業施設

 上本町YUFURAは8月26日グランドオープン

 上本町にあった近鉄劇場は、もともとは映画館でした。1985年に近鉄劇場としてオープンしてメジャーな劇団、東京の演劇の公演や、小劇団の公演など意欲的な運営を行ってきましたが、赤字続きで2004年に閉鎖されました。

  難波にあった「新歌舞伎座」は経営者が移り変わり、この上本町に移転することとなりました。(現在の劇場の跡地はなんばでは一等地なので何らかの形で商業開発が進むはずです)

 近鉄劇場の跡地に近鉄の創業100周年シンボル事業として、「大阪新歌舞伎座」を核として「ショッピングゾーン」「オフィス」で構成する複合ビル「上本町YUFURA」が8月26日に開業します。
 延べ床面積38,000u、ショッピングゾーン売場面積10,000u、近商ストアの高級スーパー業態「ハーベスト」、ユニクロ、ABCマート、ABCクッキングスタジオなどのテナントが入った「都心カジュアルライフ支援型商業施設」だそうです。売上目標は60億円。年間400万人の来客を想定しています。

 メインターゲットは実年齢30〜50代の中で30代のマインドを持つ都市生活ファミリー、サブターゲットはオフィスワーカー、学生などの来街者と設定されています。・・・・よくある設定ですが、今、この時代で「30歳代のマインド」というのをどう定義づけているか?とても「気になるところです。20年前の30歳代のマインドとあきらかに違ってきているので単に若々しい人という「イメージ」だけでは語れないはずです。
 テナントミックスに現れている・・・ともいえますが、規模が小さくて大きなターミナルでない立地の商業施設(例えば京橋、天満橋、淀屋橋等)のありかたとして、入ってくれるテナントを集めたというのではこれから課題がいっぱい出てきそうです。

 京都駅前ヨドバシカメラは10月開業

 京都駅前の近近鉄百貨店跡に開業するヨドバシカメラは10月オープンです。38,300平米の店舗面積で、ファッション関連のテナントも入るそうです。京都では四条河原町のビブレが7月閉店、四条河原町阪急が8月閉店ですが、後に入る商業施設がどのようなモノになるかが注目です。新風館を経営するNTT都市開発が11月をめどに四条烏丸にオフィスと商業の複合ビルを建設します。大人のOL層がターゲットと言うことです。3,470uですからそんなに大きなモノではありません。(新風館で5,000u)

 四条大橋から烏丸までの四条通の車線を1車線にしてトランジットモールにする計画が3年後をめどに進められています。四条通の来街者数は平日10万人、休日14万人とここ数年変わっていません。ゲーム、パチンコ、カラオケ、風俗店の新規出店規制も進み、良い感じの街になっていくと思います。一時は地上げの後遺症で虫食いの土地に現金商売が張り付くのが心配されましたが、さすがに京都は地元の商店主が地域に居住していることもあり、街の品格を維持する力があります。


 トランジットモールは社会実験も進められ、その効果が実感されています。実現すると良い街になると思います。ぜひ実現して欲しいものです。

                                                                 (2010年06月24日)
     
■関西活性化の試金石となる「国際コンテナ戦略港湾」指定

 1〜2港に絞られるハイパー中枢港

 国土交通省は国際海運の競争力を高めるため、国が整備予算を重点投資する港湾を1〜2港に絞って重点投資することを決めています。コンテナ取扱高では、シンガポールなどアジア各国の港が日本の各港を大きく上回っています。
 アジアの主要港に対抗できるハブ(拠点)港湾として、整備する港湾が7〜8月に決まります。

 立候補しているのは京浜港、伊勢湾港(名古屋・四日市)、北部九州港、そして阪神港の4つの港です。震災以来シェアを低下させている神戸港は大阪港や湾の各港と連携して「阪神港」として参戦しています。

 港を選ぶのは荷主なのですが国の重点投資からはずれると、最新設備が整備できず、いわば特急が止まらない駅のような存在になります。

  今のところ「京浜港」は当確ともいわれています。何故これ以上首都圏に機能を集中させたいのかよくわかりません。羽田をハブ空港にして観光客やビジネスマンを集めた3次産業の都市が首都圏にふさわしいように思えます。

 関西復権に波及効果が大きいハイパー中枢港指定

 拠点港になればグリーンベイ、パネルベイと呼ばれている大阪湾岸の産業だけでなく日本海側、中京圏から物資を集約するインフラが整備されます。西日本の貨物を集約するために、日本海側かえあ陸路で阪神港まで運ぶ中継地点「インランドポート」の計画も浮上しています。

 懸念となっている阪神高速淀川左岸線の採算も一気に向上します。関西圏及び中部圏を一体化する大きな鍵になるプロジェクトです。

 韓国では空港は仁川、港湾は釜山とハブが離れています。関空と阪神港は一体化した物流ハブとして競争力を持ちます。

  カジノ構想より遙かに実現性が高く波及効果が大きい事はあきらかなのに、に大阪府知事の熱はそれほど高くありません。港湾については神戸港が主導権をとっていると思っているのでしょうか?関心があることと無い事の差が極端ですね。ブレーンがいないのでしょう。

 

(産経新聞の記事 産経新聞は大阪版はいい記事を掲載していますね)


http://www.sankei-kansai.com/2010/06/18/20100618-025150.php へのリンク

                                                   (2010年06月23日)
■環境に優しくない人達がエコ市場を支える

 衣替えは新たな消費のきかっけ

 ブランド品の買取を行っている不要品買取サイト「ブランディア」が発表したサービス利用状況では、「衣替え」の時期である3〜5月の利用が前後の時期に比べて多く、衣替えの時期に不用になった衣料品を買い取りにだしている実態が伺えます。不要品を販売した代金は「新しいブランド品の購入」が21%、「新しい商品の購入」に15%、「家族イベントに利用」が12%で、新しい消費につながっているようです。

 消費には何らかのきかっけが必要です。百貨店などで実施している靴や服の下取りセールが好調なのは、いっぱいになったワードローブを整理することで新しい需要を生み出すというモノです。

 リユース市場を支えるのは環境に優しくない人達

 何回か使って飽きてしまったモノを捨ててしまうのには後ろめたい思いがします。「リユース市場」は「もったいない意識が高い」「環境への配慮を考えた」消費者に支えられているのではなく、新しい物好きで、飽きっぽい人達〜=環境に優しくない人達に商品供給が支えられているのではないでしょうか。

 例えば「車」とか「パソコン」「デジタルガジェット」などで新しい商品が発売されるとすぐに飛びつく人達って、あなたの回りにおいでになりませんか?

 そのおかげで価値のある商品を手頃な価格で購入できる恩恵を被っています。現在「中古品市場」が弱い、住宅や家具などの市場もリユースされるに足価値のある商品が提供されれば市況はもっと活性化するでしょう。

                                                                     (2010年06月22日)
■外食産業〜市場規模が縮小している中で伸びる商品は

 外食産業市場規模23.9兆円(2009) 10年連続縮小傾向

 外食産業総合調査研究センターが推計した外食産業の市場規模は2009年で23兆9156億円と1994年のピークである29.1兆円から縮小傾向にあります。減少幅が大きいのは「国内線機内食」や「事業所の給食」など意識的に切り詰められている部門です。また飲料主体の「料亭・バー」なども毎年減少しており企業の交際費の締め付けが厳しくなっている事が伺えます。

 飲食店や料理品小売業は増減の幅は比較的小さい金額で推移していますが、今回は基本的に減少傾向です。

 サラリーマンのお小遣いも減少し、昼食も移動販売の格安弁当ですませる人が増えています。中食と呼ばれるテイクアウトの食料品に関しても節約志向が強まり、食料品の売場でも簡単に料理を作れる味付け調味料や、おかずにもう一品加える「おつけもの」が伸びています。

 節約疲れの反動消費で伸びるジャンルは?

 ファッションの分野では。ある意味期待も込めて「節約消費」に飽きた消費者の脱「価格一辺倒」の動きが話題になっています。
  縮んでいる外食産業や食料品の世界で、節約疲れの反動・・・といいた少し付加価値の高い商品が動くジャンルはあるのでしょうか?

 「響」をソーダ割りで飲ませるサントリーの戦略
 ソーダ割りというと高いウィスキーではもったいないの国産ウィスキーでも、トリスとまではいいませんが「ホワイト」、から「角」どまりというイメージを持つ人は多いと思います。今、サントリーでは「山崎」や「響」といった高いウィスキーをソーダ割りやカクテルベースで楽しませる戦略をとっています。昔はボトルを何本開けたというような量を競う事も多かったのですが、今の若い人は特に量を飲まないので、そのような飲み方でも無理をしない範囲での支払いでおさまります。
 
 お豆腐でもスーパーでは安売りで40円、50円の目玉商品がある一方で、少し高めのお豆腐が、移動販売だけでなくスーパーの店頭にも沢山並んでいます。

 外食産業、特にチェーン展開している店では集約のためにクーポンをまいて単価ダウン、利益ダウン競争の負のスパイラルに入っています。
牛丼戦争と呼ばれている低価格化競争でも、他店の価格によって自社の価格を下げるような逆オークションの状況はまもなく終焉すると見ています。お客さんが1回の食事に使える金額の範囲で、どこまで美味しいモノが提供できるか、きちんと利益を残して再投資できるかが課題です。
 市場が伸びているときは他社のコピーでもそこそこやっていけますが、縮小しているときほど、消費者の立場にたって考えを深めていく必要があります。
                                                  (2010年06月21日)

外食産業市場規模
http://www.gaisyoku.biz/pages/data/data_market_201005.cfm へのリンク
 
■アメリカ村は大人の街に変わっていけるか〜若者ターゲットへのアプローチ

 ビッグステップ1階に関西初出店の「アルマーニエクスチェンジ」がオープン 6月5日

 「アルマーニ エクスチェンジ」は1991年にスタートしたアルマーニのカジュアルファッションライン。都会に住み、音楽やダンスカルチャーなどに関心の高い18〜35歳をメーンターゲットに据え、「都会的で個性的なスタイルの親しみやすいコレクション」を展開する。国内では日本法人のプレシディオ・ジャパン(東京都中央区)がこれまで渋谷、横浜、船橋、流山、越谷と関東に5店舗を展開しており、6店舗目となる「心斎橋店」は関西初出店となる。(なんば経済新聞)

 売場面積は約100坪、ターゲット層はビッグステップの20〜24歳に比べてやや高めの年代になっています。ミナミに開業する店のニュースは安物のファストファッションの店ばかりでしたので少し変化が見えてきた話題です。
 「アルマーニ」という記号は「高級感」がわかりやすいので、そこそこ幅広い層に受けると思います。アメリカ村の地盤沈下は家賃の高騰によるものですから、いくつyか点在する大人向けの店が集積として意識されるようになれば、変化が生まれるかも知れません。

 若者が「消費者」としてポテンシャルのあった時代とは違うアプローチを

 若者市場注目された時代と比べて、今の若い世代の可処分所得は大きく縮小しているのだと思います。同じ世代の中で可処分所得が高い層と少ない層に分かれ、どの世代でも後者が多数派になっているように見えます。

 市場を個人単位に分解するのではなく、そのファミリーがどのクラスに属するかによって消費行動が違ってきます。もちろん、親子一緒に買い物にくるとかいうライフスタイルばかりではないのですが、例えば、今の時期にブランドのバッグを好む若い女の子の母親も海外高級ブランドのバッグを好みます。

 その意味で「アルマーニ」なんかはわかりやすく、世代を超えた支持を得ています。

 「富裕層マーケティング」とか「母娘消費」とかにまとめてしまうと多くの要素が抜けてしまいます。80年代に個人のライフスタイルでグルーピングして百貨店などの戦略ターゲットを設定していたのですが、今なら、ファミリーのライフスタイルでターゲット設定を行った方がより店作りに役立つかもしれません。価値観の背景や消費行動の背景がよく見えるはずです。

                                                        (2010年06月18日)
■イオンモールKYOTO開業後の数字は

 ・グランドオープン以降は週末10〜14万人と高い集客力を示していると報道されています。先週土曜日の写真は6月11日の記事参照
 ・徒歩客が85%  確かに広告やチラシでも徒歩での来店を呼びかけていて、駐車場は半分くらいの入りでした
 ・来店客層は 朝方は地元客、昼はファミリー、夜は学生やOLと幅広い

  駅チカの立地なので夜の集客、平日の集客を見込めるのが強みですね。
                                              ( 6月11日の記事補足)
■二重行政の解消か、広域関西の連携か?〜「大阪都」構想が議論にならない理由

 太田房江前知事が提唱していた「大阪都」

 新聞を読むと「大阪都」という言葉がよく出てきます。橋下知事が最近強く訴えているテーマらしいのですが、WEBで調べても今ひとつ、よくわかりません。政治的なマターなので識者も慎重に評価を避けているようです。府、市どちらも敵にしたくない・・・もちろん、私もそうです。

 それでも、構想を説明するのではなく東京都知事や副知事をよんでパーティーをする(中止になりましたが)のは逆効果ですよ。首都である東京の事情とは全く違いますし、都の都市経営が成功事例と思えません。いつまでも東京都のような浪費が許されるような時代ではありませんしね。両氏のように上から偉そうに押しつけるスタイルは、関西人には最も嫌われるキャラクターです。(2014年時点では 石原さん、猪瀬さんも都政からはいなくなりました・・・・・蜜月時代だったのですね今から見ると)

 大阪府と大阪市の二重行政の解消について、余計なキャッチフレーズを外して議論するというのであればもっと活発な意見交換が巻き起こるはずです。前述の理由(政治的な抗争)にまきこまれたくないので議論がおきにくいような気がします。

 大阪都20区構想という大阪市区部と周辺都市の再編成案?がwikiに掲載されています(当時)。人口30万人単位で行政区をまとめようという数あわせであり、、歴史や文化、人の流れを考慮しない机上の空論です。それぞれの区長を公選するという点が売りですが、区会議員が生まれることによって議員の数が圧倒的に増えることになり「議員業」で生計を立てている方々には嬉しい構想です。

 日本各地で同じ県でもいまだに昔の「藩」の区域の違いが生活のベースになっていたりします。「廃県置藩」をまじめに語る人も結構居ます。WEB上に公開されているあの地域のまとめ方は大阪や堺などの町の歴史を知らず、何の愛情もない誰かが数あわせだけでくくりなおしたものです。しかも納税者にとって効率が悪い((無駄なコストがかかる)。「構想」として叩き台とするにしても質が低いモノです。(最近、都市の将来構想について、劣化が著しいのはどういった事情によるもなのでしょうか?北ヤードのサッカースタジアムといい京都の水族館といい、当初の構想で「夢」を与えるよりも突っ込み処の方がが多すぎます)

 行政のトップを補佐する政治家が必要〜府、市の行政の部門長は政治家、民間人がなるべき

 先日の平松市長と猪瀬副知事のやりとりをみていて、お互いの裏付け数字を提供しているのはそれぞれの行政区の官僚の方なのですね。国のようにトップを補佐する「大臣」がいない。もちろん官僚の方々が悪いわけではないのですが、新しい政策を進めるのには、今までのやり方にしがらみのないリーダーが主導する必要があるように思います。区長を公選する事よりも、市長、または知事を補佐する民間の専門家が権限を持って各行政組織のトップに立つ方がより「民意」を反映出来るのでは無いかと思います。

 スーパー中枢港に阪神港が残れるかの瀬戸際

 神戸新聞によると京浜港は当確で、阪神港(大阪、神戸、泉北)がいい感触。中京港、九州港は難しいとの事です。まだ決定ではないので予断を許しませんが、もし決まれば神戸だけではなく阪神港としてのまとまりが功を奏したといえます。

公開されている選定結果と評価得点 評価が高いのは京浜よりは阪神です
(当選)阪神港 769点
(当選)京浜港 729点
(参考)伊勢湾 553点
(参考)北部九州 277点



 今は広域連携の実績を積み重ねていくべき時期なのです。

 大阪府が積極的に働きかけている関西の広域連携は、大阪が東京のように突出して「一人勝ちしようという意図」がないから進むという側面があります。二重行政の解消は必要な課題ですが、このテーマは平松市長に委ねて、大阪府は広域行政の連携の呼びかけに注力する方が実現性が高いように考えます。

 橋下知事の最大のチャームポイントは「私心」が無いことです。大阪府が大阪市を吸収して権力と資金を奪いたいという「衣の下の鎧」が見えたとあらぬ誤解されると、周辺府県の支持も得られず、府民の高い支持率も離れていくことでしょう。
 応援していますから頑張って下さいね。
                                                        (2010年06月17日)
その後、区割り案は5区案がメインとなっています。維新の退潮で先行きは不明です

表ー大阪都20区構想 ? 数あわせのゲリマンダー  (出典:WIKIなのであまり本気にしないように)
大阪都20区構想
20区再編案 面積 人口 人口密度 備考
(km?) (人) (人/km?)
01都島区 22.68 295,420 13,026 大阪市
旭区
北区
02福島区 33.81 280,550 8,298 大阪市
此花区
西区
港区
03大正区 43.45 324,826 7,476 大阪市
浪速区
住之江区
中央区
04天王寺区 18.14 304,258 16,773 大阪市
阿倍野区
西成区
05西淀川区 40.13 443,227 11,045 大阪市
東淀川区
淀川区
06東成区 21.13 347,273 16,435 大阪市
城東区
鶴見区
07生野区 23.68 339,242 14,326 大阪市
平野区
08住吉区 19.09 294,015 15,401 大阪市
東住吉区
09堺区 52.31 279,125 5,336 堺市
西区
10中区 58.38 276,929 4,744 堺市
南区
11東区 39.3 274,912 6,995 堺市
北区
美原区
12豊中市 36.38 386,623 10,627 特例市
13吹田市 36.11 353,885 9,800 特例市
14守口市 12.73 147,465 11,584
15八尾市 41.71 273,487 6,557 特例市
16松原市 16.66 127,276 7,640
17大東市 18.27 126,504 6,924
18門真市 12.28 131,706 10,725
19摂津市 14.87 85,009 5,717
20東大阪市 61.81 513,821 8,313 中核市
大阪都20区 622.92 5,605,553 8,999
東京都23区 621.35 8,489,653 13,663
大阪都全域 1,894.31 8,817,166 4,655
■韓国の百貨店の集中力の持続から「ナレッジキャピタル」について考える

 1988年ソウルオリンピック開幕前

 韓国が大きく飛躍した時期、ソウルオリンピック開幕の直前に、ソウルに通っていたことがあります。韓国の老舗百貨店が海外、特にアジアの百貨店のノウハウを必死に吸収しようとしていた時期でした。百貨店に限らず、韓国のメーカーに、週末アルバイトで雇われた日本の大企業のエンジニアが定期的に通っていた時代です。
 貿易の規制があり、バナナが貴重品で、コーヒーは喫茶店でもインスタントコーヒーが提供されていました。

 韓国の企業の特徴は財閥グループの影響力が強く、トップダウンが浸透することです。(対照的に台湾の企業は中小企業色が強いです)

 百貨店業界ではロッテが韓国で百貨店の経営に乗り出し、ロッテワールドという屋内型テーマパークを開業するなど百貨店業界に変革の嵐が吹いていた時期です。財閥系の老舗「新世界百貨店」ではトップの意向で、日本の百貨店のノウハウと「IT化」「システム化」に大きな関心をよせていました。(日本の百貨店でも「課題」とはされていても使いこなしていなかった・・・・今でも・・・・のですが)

 韓国の百貨店の先進性

 先日の報道で韓国の百貨店の先進性について紹介されていました。「支払いは携帯端末で店頭決済されいちいちレジに持って行って待たされる事はない」「ロッテ百貨店の売上の75%が自社カード決済」・・・当然、顧客データに基づくCRMも進んだ対応が可能で各社ともVIPマーケティングに注力しています。(余談ですが、ロッテの売上の11%は海外で、今後3割程度に引き上げたいという考えがあるようです)この間,IMFショックなどもありながら粘り強く続けていたんですね。

 20年前以上の時点では日本が先行していたはずのシステム化は韓国に学ばなければなりません。

 文系と理系に断絶がある経営判断

 さて、ナレッジキャピタルですが、私の印象では「情報」「通信」「映像技術」と「ロボット」の基礎技術について集約されているのはわかります。ただ、企業活動の 中でどの分野でどう使われることで生活がどう変わるのかのイメージが残念ながらみえません。折角、梅田に隣接しているのですからソフト面での先進性を強く出さないと「理系」の人だけで完結している世界のように見えます。

 日本の文系の経営者は「IT」に対して過剰に期待するか、過剰に貶めるかに二分されます。「IT」に過剰に期待し無駄な投資をしたので「ITバブル」が生まれ、そしてはじけました。

 韓国の百貨店の経営者が20年前に構想したことを実現させるまで続けた持続力には敬意を払いたいと思います。
                                                               (2010年06月16日)

最近のIT業界の流行は「クラウド」と「ビッグデータ」です・・・・・・・。本当に次から次へと  2014年


■梅田百貨店戦争の勝手予測〜食料品の棲み分けの構図はこうなる

 高い坪効率が求められる中での「食料品」の意味

 梅田などのターミナルでは地価が高く、高い坪効率を求められます。従って、その地価に見合う業種業態を集積すると必然的に「同質化競争」になり、同じような商品の売場面積がいくら増えても集客量は増えません。
 
 関西の百貨店では伝統的に食料品売場が重視されてきました。通常でしたら「食料品」は決して売場面積あたりの利益率は高くはありません。設備コストも高くつきますし、ロスも大きい。それでも、ギフト商材だけでなく、スーパーや市場の店に対抗する日常の食料品が強い店が全体の店の売上も高い・・・日常の利用による「親しみ」が売上につながるという顧客との「関係作りのツール」になっているようです。

 さて、東京から進出するジェイアール大阪三越伊勢丹はどんな食料品売場を作ってくるでしょう。増床する梅田大丸は生き残りをかけてどのような食料品売場を作ってくるでしょう。市場の現状のポジションをみながら勝手に予測してみました。

 働く主婦を対象に利便性を追求する梅田大丸の食料品

 ヨドバシカメラの地下に、「グルメデア」という食料品売場がありました。鮮魚のグローサリーが特徴で、阪急、阪神が妍を競う梅田地区の中でそこそこ売上をあげていて、食料品の専門家にもグローサリーの品揃えが評価されていました。
 ヨドバシとの賃料が合わずに退店したそうですが、このエリア内にまだまだ「穴」があるのだな感じさせました。また、生鮮、特に鮮魚を持って梅田を回遊しないので、導線がはまれば阪急、阪神と棲み分けて共存できるのかも知れません。

 梅田大丸は店舗のターゲットとして働く主婦に狙いを定めています。退勤時のあわただしい時間の中で毎日の食事の材料を提供する・・・成城石井やイカリの惣菜等に使いやすく、事前加工した生鮮を強化する事になるでしょう。
 この店で行列が出来ているカレーパンのようにおやつにもなる出来たて食品なども必要でしょう。いくつかの店の異なったタイプのパンをまとめて購入できる売り場があったのですが、他の店にない特徴でした。導線からJR利用者が中心になります。
 三越伊勢丹の戦略によっては軌道修正することになるかもしれません。編集による利便性の追求と大丸ブランドの安心感がポイントです。

 三越伊勢丹は東京スタイルを貫けるか?

 三越伊勢丹はかなり「関西商圏」を意識して悩んでいると思います。それぞれの本店の食料品売場の強みをどこまで出していくのか。かつ、JRのターミナル立地を活かしたデイリーな食料品をどこまで強化するのか。心斎橋そごうが「西武流」の売場作りを生かし切れずに撤退したことを横目に見ると、「三越らしさ」「伊勢丹らしさ」を前面に打ち出す決断をするのではないかと思います。日常の食料品はJRの駅利用者をきちんとつかまえることができれば十分です。(先日見た福岡三越の上層階は天井が低くていまひとつでしたが、食料品売場は活気があって良い売場でした)

 面積の制約がありますが、上層階の「伊勢丹」売場新宿本店のファンを獲得するのであれば、美術工芸品のようなVMDの伊勢丹らしい売場をつくることが得策であるはずです。阪急阪神にとって、食料品での勝ち負けよりもそちらの方が「脅威」であると思います。

 とはいえ食料品全体がその雰囲気ではモノは売れません。申し訳ないですが扱っている商品もあまり特色がないですし。メリハリを付けられてはいかがでしょうか。

※当記事は公開情報及び今まで公にされた企業戦略の読み取りに基づくモノで、内部情報、極秘裏情報に基づくモノではありません。また、該当企業の経営者が合理的判断をするかどうかも不確定ですので、もし予想が外れたらごめんなさい。

                                                                (2010年06月15日)

 今から考えると、チョコレートやお菓子の一部に「伊勢丹らしい」売場はありましたが、他の食材(コモデティ)についてはもっともっと市場感覚を出した方が良かったですね。
 無くなったあとに懐かしく思い出される売場がいくつあったでしょうか・・・・。2014年


図ー1 梅田の店舗 食料品の棲み分けMAP

(analog作成)

図ー2お使いものを購入する店



図ー3日常の食料品を購入する店



図ー4安心な食材を購入できる店

(なにわ考現学2005より)
■「みやげもの」と「地域発のこだわり品」との境界線

 行列が出来る店の「政権交替」

 阪神百貨店の地下で、永らく行列が出来る店の王者であったバウムクーヘンの「クラブハリエ」は、昨年開店したラスクの「ガトーフェスタハラダ」にその地位を追われ、行列店の「政権交代」がおこっています。
 「クラブハリエ」の商品は流行モノ狙いではないので、行列がおさまってもブランド価値は損なわれないと思います。「クラブハリエ」は滋賀県近江八幡市の和菓子屋「たねや」の経営ですし、「ガトーフェスタハラダ」は群馬県高崎市の和菓子屋さんからうまれた会社です。

 「みやげもの」となった神戸洋菓子と近江八幡日牟礼ビレッジの境界線

 かつて神戸西武があった場所はそのごいくつかの変遷がありました。「神戸洋菓子博品館」(1997〜2001)「神戸ハーバースイーツビレッジ」(2004〜2007)といったスイーツをテーマにしたフードーテーマパークがあったことを覚えている人もおられるでしょう。神戸といえば「美味しい「洋菓子」というイメージが強かった時代があったのです。

 スイーツのテーマパークは失敗したようです。その後、神戸の洋菓子のイメージが「みやげもの」のような安っぽいモノになってしまったことがとても残念です。(もちろん全国展開している有名店で神戸発というものいはまだまだ沢山あります)安易に「神戸」のイメージを食いつぶした「神戸洋菓子博品」がその象徴かも知れません。(神戸スイーツハーバーはフードテーマパークのオーソリティであるナムコが運営して、全国の洋菓子を集めるというコンセプトなので、少し意味合いが違います。失敗した理由の半分以上は、神戸西武が計画されたときの構造、立地、導線が悪かったからだと思います)・・・本当の神戸洋菓子の店は出店していなかったそうです。神戸の実力あるパティシェを取り込め無ったことが失敗要因だと言われています。

 「クラブハリエ」と「たねや」の店がある近江八幡は創業の地です。明治8年といいいますから京都大阪の和菓子屋さんとしては新しい方です。
(昭和33年創業の「叶匠寿庵」よりは歴史があります。たねやの百貨店出店は昭和51年の西武大津からです)

 近江八幡の「たねや」「クラブハリエ」の店舗はヴォーリズの建築と地元の歴史文化をうまく取り入れ、お菓子でも他の店が地域名産の「みやげもの」として売っている商品もひと味違う売り方をしています。

http://taneya.jp/shop/shiga_himure.html へのリンク

 小樽のチーズケーキ「ルタオ」の経営母体が鳥取の土産物専用の菓子メーカーであるように、たとえ利用者が観光客が中心であっても、パッケージ、デザイン、素材のこだわり、そして物語性を付加することで「みやげもの」を超える市場を獲得出来ます。
 目安は都会の百貨店のプロパーの売場で売れる商品かどうかです。

                                                      (2010年06月14日)

2014年には、ヴォーリスの建築物を壊すことで「不動産価値」が高まる、「資産価値」が高まると思い込んでいる百貨店も存在するようです。
■「歩く街」京都駅前の郊外型フォーマットのショッピングセンター

 イオンモールKYOTO 6月4日オープン

 京都駅の南側の中断していた開発プロジェクトのPMを引き受けた「イオンモールKYOTO」が6月4日にオープンしました。

JR京都駅南側の大型ショッピングセンター(SC)「イオンモールKYOTO」が4日開業した。開店の午前9時までに約1500人が列を作り、幅広い世代の来場者でにぎわった。京都市内の商業施設で3番目の規模となる大型SCの開業により今後、四条エリアの老舗百貨店や大阪市内の商業施設との競争が激しくなりそうだ。

年間の来場者数は1000万人を見込む。イオンモールの村上教行社長は4日の記者会見で「海外からの旅行客や修学旅行生に利用してもらえれば、2年目はさらに来場者数を増やせる。(再開発の進む)大阪・梅田エリアとの都市間競争に負けないようにしたい」と意気込んでいた。

(日本経済新聞6月5日の記事 引用)

 電車の利用を呼びかけ、駐車場の案内をしていませんが、駐車場は1,125台分整備され、商圏設定は5km圏64万人となっています。

テナントの業種構成から考えても自家用車利用客は2〜3割はあると推計されます。京都市内は車で移動するにはストレスフルで繁華街である四条河原町への来街者のうち自家用車利用はわずか7〜8%です。

 あと、蛇足ですが、この構成で海外観光客とか修学旅行生を吸引するのは難しいでしょう。少し無理のあるコメントです。

 水族館計画で梅小路公園の駐車場が2.5倍に

 当サイトでも既報の京都水族館計画ですが、水族館建設にともない自動車540台分、バス30台分の整備が必要と、公園内に駐車場を増設するという報道が京都新聞5月24日に掲載されています。
 水族館に関しては「イルカショー」が海外の環境保護団体の格好の攻撃材料になるので、欧米観光客が多い京都市に敢えて持ち込む必要はないと考えています。規模も小さいですしね。その議論とは別にして、駐車場整備というのはどうなんでしょう。

  京都駅周辺に一大駐車場を整備して、そこに自家用車を止めてしないに誘導するというパーク&ライドの構想があるのならともかく少し不安です。

 駐車場を整備しても広域からの吸引が増えるのではなく、近隣住民の自動車利用が増えるので、京都の場合、他所からの流入による地域の収入は増えずに、車のためのインフラ整備費用が増えるだけです。

                                                 (2010年06月11日)



撮影 6月12日(土)
公共交通機関利用の宣伝が徹底しているためか駐車場については、半分ぐらいの入りでした。
店舗だけでなくオープンスペース(椅子を置いてある)も沢山あり、冷房が効いていて休憩するには最適です。
ゲームセンターもあるし・・・・。

駐車場には大型のワゴン車が多く、リビングルームの延長でくつろいだ雰囲気の家族連れが中心的な客層です。
(テナントもその層向けのテナント構成ですし)

四条河原町というより、やはり郊外SCが競争相手だと思います。
図ー来訪者交通アクセス比率

(2006年パーソントリップ調査)
■スーパーマーケットは大型化により衣料品、家庭用品の売場が壊れていった

 設備投資が利益を生むメーカーと設備投資が即利益につながらない小売業

 小売業、サービス業に身を置いていると逆に見えないのが製造業では工場や物流センターに投資することが利益を生むという原則です。新しい機械が入れば生産性が高くなりより、より利益をあげられる・・・・。(今はそれが逆にメーカーの足かせになる面もあるのですが)
 ものが無かった時代、大量生産、大量消費の時代はそれが絶対的な正解でした。

 いわゆる「チェーンストア理論」というのはそのメーカー的な考え方の小売業への転用だった様な気がします。徹頭徹尾、送り手側の都合で商品の調達から供給までの合理的な仕組みをつくりあげ安くて、良い品を供給する事、そのために商圏を拡げてその商圏内のシェアを獲得することをシステム化する・・・・極端な形でまとめるとそんな思考の上に成り立っています。

 商品量と価格・・・それが大規模スーパーを衰退させた行動原理です。大手スーパーのイオングループは本日から5日間一斉値下げを開始します。昨年12月には期間中の売上が前提平均30%増とまりましたが、第2弾の3月のセールでは思ったほどの効果はなく、セール後の反動が大きかったようです。少し売上が回復し始めた時期だっただけに逆効果だったという声もあるようです。(イオンは地域密着の取り組みや、地域貢献にも熱心な企業なのですが、トップ企業になってしまうとその多様性が見えにくくなります。)

 小売業、特に全国チェーンのスーパーではメーカーからの直接仕入れや自社ブランド商品の開発で、配送センターや商品開発に投資をしていました。ところがその「投資」がMDの展開を制約することになるのです。食品などで、地域のお客さんが求める商品ではなく自社PBを押しつける事例などにその弊害が現れています)メーカーはプロダクトアウトでも良い製品を生む可能性がありますが、小売業がプロダクトアウトになるとおしまいです。

 大型化により「いらない商品」が増えていったスーパーの衣料品、家庭用品

 大手スーパー各社は、食料品中心の小型店舗出店にシフトしています。食料品は地域差があきらかにでますので、やりようによっては業績を回復しやすいのだと思います。

 かつて、大型化によって競合と差別化を図ろうとしたなかで、衣料品、家庭用品売場がいたずらに大きくなって、利用者にとって欲しい商品が売場に並ばなくなった・・・というか商品量はあっても探しにくくなったのかもしれません。ある程度の規模の店でもこましな実用衣料とか電球とかは全く置いてありません。地域の中で必要な商品を品揃えするのではなく、利益率が高い、売れ筋に「絞り込んでいる」ためミスマッチに気がつかない悪循環です。(ちなみに商品を置いていない店舗は某GMS再生の、モデル店舗といわれている「優良店」らしいのですが)

 大型化の中で店舗の担当者がマネジメント出来る以上の商品量になり、地域対応の品揃えより「価格」と「量」に競争の源泉を求めてきた報いなのかもしれません。

 かつて、下着会社のセールスマンだった高齢者から「夏の長野県で長袖下着を売った」と、昔の手柄話を聞かせていただいた事がありました。帰省して帰ってきている子供に持たせて帰らせるのだそうです。・・なるほど、衣料品であっても地域特性はあるのですね。現場のセールスマンならではの感覚です。

 現場の方にはそのような知見が沢山あるはずです。チェーンストアの「品揃え」を本部で決めるという仕組みがGMSを衰退させたのです。

                                                             (2010年06月10日)
■周回遅れのトップランナー〜ゆるやかに回復しつつある消費と百貨店

 日本以外では回復基調が鮮明に

 欧州に新たな不安要因があるとはいえ、世界的な不況は底を打ち、中国や韓国といったアジアだけでなく、アメリカでもラグジュアリー市場を中心に回復基調にあるといわれています。不況突入前の水準に回復はしてませんが、少しずつ消費に関する指標は伸びています。

 国内でも、島屋の特選売場は計画比3%増ということで、「オーセンティック」と「エレガンス」で他社と差別化していくそうです。専門紙をチェックしていると経営破綻するアパレルがある一方で、婦人服の中堅専門店は持ち直している・・・とか個別の好不調はあっても、一時のような全滅状態ではないようです。

 マスコミ業界は不況のまっただ中なので紙面はとげといげしいですし、当社の主力取引先であった行政関連や建設業界は不況業種なので、身の回りでは景気回復は実感できませんが街の空気は少し変わってきています。

 また日本の政策に極めて強い影響力を持つアメリカ政府が内需振興で景気回復するように声明を発表しています・・・・・。

 価格対応だけでない独自の価値を持つ店を

 百貨店催事での「激安スーツ」が売れ残るなど、価格だけで動く時代は終わりつつあります。
 価値と価格と利用機会のかけ算で商品が選ばれます。横並びで「価格対応」の売場を導入した百貨店とかはこれからどうするのでしょうか?阪神百貨店などはずっと大衆百貨店路線で一貫していましたから「ぶれ」はないですが、目先の売上をつくるために「価格訴求」に走った店(は、またすぐに方向転換して「高付加価値」商品に走るのでしょうね。(どこが悪いというわけではなく、大抵の百貨店がそうです)

 お客様の価値観とずれた売場

 お客様の価値観として、「安いモノを沢山買うより、良いモノをひとつ買う方が好き」という考え方が、性年齢を問わずに多くあります。多くの百貨店の店頭には「高いモノ」は沢山あっても長く使いたいような「良いモン」はあまり」置いていません。高くても安くてもどんどん買い換えてもらはないとなりたたない事業構造になっているからです。

 各種調査でもお客様の環境への意識はとても高いです。ただ、ビジネスには結びつけにくいというのが通説でした。昨年夏から始められたワールドの衣料品引き取り・100%リサイクル事業はかなり反響が高く、大丸など全国の百貨店に拡がっています。

 使い捨てのライフスタイルからの脱却はお客様との長いつきあいを前提としている百貨店業態にとって、とてもあった切り口であると思います。

 さて、それではGMSはどうすれば再生するのか?私はGMS業態が衰退した原因は巨大店舗化、商圏の拡大にあったと思います。食品だけでなく、衣料品、家庭用品も小商圏対応の品揃えに徹すれば活路が開けると考えています。・・・詳しくはいずれ稿を改めます。


                                                            (2010年06月09日)
図ーお買い物意識年代別比較


なにわ考現学2005 大阪市内通勤者対象のアンケート調査より
■失われた近過去の記憶〜印象の強さでねじまがる時空

 若い人にとって「バブル以前」の日本は空白の歴史

 若いメディアの担当者の方が、ある外国料理メニュー(カルボナーラです)のルーツを調べていて、1984年と聞かされて信じなかったそうです。
 バブル経済の時期に色々な新しいモノが入ってきたと理解しているようなのです。その時代に華やかに遊んでいた層はもう50歳前の40代後半・・・。
 私たちにとって実体験してきた80年代は歴史として振り返られるには中途半端で、すべて派手な話題のあった「バブル期」に起きたこととと捕らえられているのです。

 ネットで調べてもその時代の記述は少なく、ネット上にないものは「無かったこと」となっているようです。・・・とほほという打ち合わせをいたしておりました。全国ネットのテレビ局のご担当者でその認識ですからね。

 印象の強さでねじ曲がる記憶

 記憶が印象の強さでねじ曲がるというのいは、丁度戦後の様々な風俗の流行が「団塊世代」が引き起こしたもので、団塊世代は社会的影響力があるんだとおいう「誤解」にも似ています。

 もっと昔の話は歴史としてならいますが、20〜30年前の近過去は、個人の記憶さえ歪んでいるように思います。

 ご参考までに「食」に絞った出来事年表を添付しておきます。

 文頭のある外国料理は1983年のパスタブームの時に一般化したメニューでした。バブルの前に、今の豊かな食生活の基盤が出来ていて、現在は不況等で食生活がやせ細ってきているようにも思えるよねと・・・寂しい気持ちで議論を終えました。

                                                       (2010年06月08日)

表ー食関連の年表


■東京都副知事の根拠のない誹謗中傷とツィッターの力

 大阪市の水道局職員の平均年収が1,000万というとんでもないデマを垂れ流す副知事

 東京都副知事の猪瀬某氏が「大阪市の水道局の平均年収が1,000万円」と発言(約10時間前)、それに対し、市民のツィッターの反論から平松大阪市長が正式に抗議されたそうです。作家でもありマスコミにも影響力がある副知事の発言としてはとても思慮を欠くモノです。だいたい職員の「平均年収」が「1,000万円」なんて普通に考えればあるわけないでしょう。
 それでは、みんな水道局に転属されたがって大変でしょうね。(もし、あるとすれば幹部の平均年収かな)小学生の算数が出来ない人物がトップにすわっていて東京都の都市経営は大丈夫なのか?と思います。

 今回の事件が画期的なのは、今まで、面白おかしく嘘を垂れ流されていた「大阪」についての言説が、ツィッターというツールが普及することで即時に正されたことです。今までは、マスメディアが東京に集中する中で、関西の情報発信が思うように進まなかったのですが、けなされ損でした。少なくとも今回のようなあきらかな過ちについては猪瀬某氏も気がついて言葉を控える事でしょう。ましてや、平松市長直々に抗議されたそうですから・・・・。

 猪瀬某氏の発言の意図はよくわかりません。関西、大阪についてマスメディアに取り上げられる事が少ないのは、東京の人にとって関係ないからであることは想像できます。逆に言えば東京ローカルの話題はテレビでやっていてもぽとんど見ないようになってきました。

 今回猪瀬某副知事は何か大阪を引き合いに出して何ををごまかそうとしておられたのでしょうか。

 ※その後、平松市長の数字による反論に対して、猪瀬某は答えていません。論点をすり替えて水道事業に関わる人員の数について、また大阪市を非難しているようです。勘違いや無知は誰にでもあることです。素直のに過ちを認めてその上で次の議論にはいるべきでしょう。
 単に、比較論で言えば、東京都知事の給与を名古屋市長並みに引き下げれば、都民に大きな還元が出来るとか・・・つまらない屁理屈の応酬になります。

 それにしても、大阪市も東京都も水道局の平均人件費は民間に比べて恵まれた待遇であることは確かですが・・・・・。公務員には表に出ない様々な「優遇策」もあると言われていますしね。

                                                         (2010年6月8日)
■今再注目すべき、「チェーンストアの将来への川氏の予言」

 ハードウェアとシステムがあれば社長とパートだけで会社が運営出来るという誤解

 ある時期、人材派遣業も扱っていましたので、業界をとりまく環境・空気について考えたことがあります。世の中で非難されている業界ですが、いくつかの企業は人を大切な資源として育てて、専門的なスキルを必要な機関提供するという本来の姿にしていこうという考え方を持っていました。

 ただ、発注側の多くのニーズは、必要なときに必要な人手を低コストで調達しようという消耗品のい調達と同じ感覚であったことは間違いないでしょう。その背景には「ハードウェアとシステムがあれば、社長とパートだけで会社が回る・・・という錯覚が、世の中全体に蔓延していた時期があったからです。

 今から10年近く前に、ある勉強会で元ダイエーの副社長、食品スーパーマルエツの社長として企業を立て直した川一男氏をお招きしてお話を伺ったことがあります。(現在はシージーシーグループの副会長で流通科学大学の理事をなさっていらっしゃいます)

 価格が下がっても」消費量が増えるという時代ではなくなり、規模の経済メリットを追求しながら多店舗展開し、チェーンストア理論でどこの誰にも同じサービス、同じ商品を提供していくシステムは終わった・・とお話しされました。

 数値分析と現場感覚の融合を

 物事やその変化を「数字」で分析することで多くの事柄が見えてきます。その当時の私の本業は地域のポテンシャルや、商品の売れ行き状況、マーケットのセグメントごとのボリュームや質を分析し、戦略や利益をあげるシステム構築のお手伝いをすることです。どちらかというと本部の企画部門の方とのやりとりが多かったのですが、川氏のお話には目を開かれる思いがしました。

 「本部には脳と口しかない。カスタマーの気持ちを代弁できるのは目と耳と鼻があり、匂いと音と動きがしっかりと見える現場の人間、そういう人間がいないと満足度を高める仕事は難しい」デジタルデータを分析して出た結果を解釈し行動に移すには現場の感覚がないと間違えてしまいます。反面、抽象化されたデジタルデータでないと見えてこない変化もあります。

 現場が考える習慣を持たないと、今求められている「地域対応」は実現しません。講演を聴いてから10年近くたった現在、多くの大手チエーンストアは「地域対応」の実現に苦しんでいます。現場で考える人が育っていないのです。

 開店時、改装時がピークでどんどん荒れていく店舗

 長い間、新店オープンやリニューアルプロジェクトのお手伝いをしてきて思うことは、大抵の店は「開店」時がピークで後は荒れていくことが多いなあということです。最初は什器も新しく、商品も目玉商品や、かなり力をいれてお願いしたテナントがはいって華々しくオープンするのですが、その後だんだん駄目になっていく・・・。予算としても」改装時には大きな予算を確保して外部のデザイナーやマーケッターを活用できるのですが、・・・・・・。外部のスタッフとしてもお手伝いできなくなります。

 マルエツでは「開店したときが一番悪いと思ってくれ」といつも言ってこられたそうです。「今が一番いいと思ったら仮説の修正は起こってこない、従業員全体でいい店に変えていって欲しいというメッセージを送り続けたそうです。

 学ぶとまねるの違いがわからない

 よそのデータ(優良企業のデータ)と比べるとき、現場を知らないととんでもない間違いをしてしまいます。

 例えば・・・・・

 イトーヨーカ堂が無着色のたらこが売れないので着色たらこに切り替えたことがありました。その理由は部長が替わったことで前任者と違うことをやりたかっただけのようです。イトーヨカー堂が変えたと言うことで1ヶ月たたないうちに首都圏のスーパーのたらこが全部着色のたらこに変わり、メーカーが着色料を集めるのに大変だったということです。「まねる」事は簡単にできますが、「学ぶ」姿勢があれば「何故」と考えて、このような笑い話にはつながらなかったでしょう。

 現場で考える、現場で学ぶ為には「消耗品」として扱われる人材では不可能です。コンビニエンスストアがこれからアップグレード化、ミニSC化していくような構想は描けますが、それを運営していく人材をどう確保していくかを考えると、今の仕組みの中では難しいかも知れません。


                                                                     (2010年6月7日)

「「ビッグデータ」という言葉が一人歩きしている現状は間違っています。
■郊外の鉄道駅に集積される商業機能とコンビニエンスストアのこれから

 西武鉄道東久留米駅にオープンした駅チカの複合商業施設

 西武鉄道株式会社(本社:埼玉県所沢市、社長:後藤高志)では、5月29日(土)、池袋線東久留米駅北口に連絡通路を併設した商業施設「Emio(エミオ)東久留米」〔店舗運営・管理:株式会社西武プロパティーズ(本社:埼玉県所沢市、社長:田島幸夫)〕をオープンします。
 北口と駅コンコースを結ぶ新たに設置する連絡通路には、すべてのお客さまが快適にご利用できるようエレベーター・エスカレーターが設置されます。また、建物内には中庭を設けるなど、開放された明るいつくりとなっており、駅ご利用のお客さまのみならず、地域の皆さまにもご利用いただける便利な通路となります


 乗降人員5万人の郊外駅には駅前のスーパー、コンビニ、少し離れてイトーヨーカドーがあるので通常の商業機能では中々面白い構想ができなかったのでしょう。注目したのは託児施設と、子供向けのカフェ、そして駐輪場の整備です。

 2007年に阪神香櫨園駅に開業した「香櫨館」はヨガ、フィットネスと健康カフェといった美と健康に特化した施設でした。高級住宅地とはいえ乗降客1万人なので、商圏にあった絞り込みがされています。

 従来の「駅」開発は不特定多数が毎日定期的に流動するという前提で、不特定多数向けの業態が中心になっていましたが、これから着手される駅の開発は、不特定多数ではなく、商圏の特性に合わせて絞り込んだ機能を提供する必要があります。

 コンビニエンストアのこれから

 かつては若者の単身者をだけをターゲットに発展してきたコンビニエンスストア業態ですが、ここに来て進化の隘路に入ってきたように思います。100円コンビニ、ナチュラルコンビニ・・・最近よく見る牛丼のトッピングのように、表面的にお色直しをしても、コンビニ業態単体では次の展開が見えにくくなっています。

 手薄な生鮮品を補強するために地方では移動販売業者と組むという方法もとっていますし、買い物弱者のための「訪問コンビニ」なども行っていますが、あくまでも社会貢献の一環で、次のブレイクスルーを見いだせるモノではありません。

 おそらくは、駅に集約され始めている地域のニーズに即したサービス機能とコラボした出店戦略も人いつの途でしょう。コンビニの商品だけではワンストップで用事が済みませんからね。

 その時の致命的なネックは、コンビニで提供されているスイーツや惣菜が、おそろしく不味いことでしょう。これは流通構造から考えるとやむをえないのですが、例えば香櫨館を利用する主婦がコンビニのスイーツを食えるか?エリモを利用する子供のアレルギーを気にするお母さんがコンビニの食品を子供に与えられるか?といったことへの想像力があれば言い訳はできません。

 アップグレードしたコンビニが成立せられるかどうかは未知の世界です。ただし、日本にローソンが進出したとき、ローソンはアメリカと同じパーティーフードの店で、店舗で固まりのハムやソーセージをカッティングしていました。

                                            (2010年06月04日)
【「Emio 東久留米」店舗一覧】(店舗面積 1547.79 u)


香櫨館施設概要




■食べ物の付録付きのシニア雑誌「にほん日和」

 シニア雑誌の新しい潮流になるか?

 株式会社ベネッセコーポレーション(本社:岡山市、以下ベネッセ)は、活動的な50歳以上の人々を「アグレッシブエイジ」と名付け、この方々の生きがい増大を支援する新規事業「LTV(ライフタイムバリュー)事業」に着手します。そして、その事業第一弾となる「にほん日和」を2010年9月からスタートします。

 50歳以上とはまた大ざっぱなくくりです。雑誌「サライ」の成功以来、シニア層向けの雑誌は沢山創刊されていますが、飛び抜けて成功した雑誌は見あたりません。シニア層は活字好きなのですが、家族や、仕事の状況などで関心事や可処分所得が全く違うので雑誌のテーマ設定が難しいのです。それに、雑誌の生命線ともいえる「広告」が集まらない・・・・シニア層でもお金持ちを対象とした雑誌であれば、投資や旅行などの広告が期待できますが、幅広いくくりではなかなか難しいターゲットです。同社のライフタイムバリュー事業は「生きがい増大事業」だそうです。「ライフタイムバリュー」の意味が少し私の解釈とは違うようですが、(一回こっきりの購入ではなく長期間のご愛顧によって収益を確保するというと言う意味と思っていました)ユニークな切り口です。

 「にほん日和」では、毎月、日本国内のいろいろな地域の食や自然、歴史や祭りなどの魅力を紹介するヴィジュアル雑誌、特産品の食べくらべセットなど地域の「特産フーズ」の付録、「ポケットガイド」や「全国いいとこマップ」などの付録、という3点をお客様のご自宅に直送し、日本の「地域」の魅力を紹介していきます。

 付録付きの雑誌は珍しくありませんが、「特産フーズ」の付録というのがちょっとした驚きです。


 食という切り口で全国の埋もれた逸品を発掘したいとずっと考えていました。シニア層は美味しいモノであればお取り寄せもよく利用しているので着眼点は面白いモノです。全国いいとこマップという「旅行」ガイドと全国の美味しいモノという情報は親和性も高いように思います。

 http://ltv.benesse.ne.jp/nihon/index.html へのリンク

 どこまで情報を掘り下げられるかがポイントでしょう。紹介ページを見る限り少し、内容が薄いのではないかと心配します。付録もまだ魅力がないですしね。本格的なスタートまでに改善されることでしょうが。 2011年9月に休刊しています

 放送と通信の競合・・・と似たような構図

 今まで、一方的に情報を送り出してきた「放送」の世界でも地デジ化が進むと双方向のやりとりが浸透してきます。今やニュースはツィッターやWEBなどの通信で得るという人も増えています。映像や文章、オピニオンも「受け手」から発信する手段が増えています。
 アイフォーンを使えばユーストリームで映像を生中継できます。

 このベネッセの事業も、おそらく編集者が情報を一方的に取捨選択して発信するのではなく、読者からの情報をいかに取り入れらかが成否を分けます。正直言って、東京の編集プロダクションが有りネタをまとめてテーマ設定し、駆け足で取材するよりも、現地の人の法がよりディープで正確な情報を持っています。いまや、そこまでの情報の密度が求められる時代なのです。

                                                  (2010年6月3日)
■好調「福岡パルコ」に見る新生パルコの戦略

 天神地区、旧「岩田屋本館」跡に開業した福岡パルコの好調

 この3月に福岡天神の旧岩田屋本館跡地に開業した福岡パルコ。売上は計画比1.5倍のペースで好調だそうです。岩田屋、福岡三越、博多大丸、天神地下街、ソラリア、など超激戦区である天神で、目標としている110億円を上回る可能性が見えてきました。

 関西では存在感の薄い「パルコ」ですが、関東地区及び、名古屋、広島、札幌では100億以上の売上をあげています。

 「脱・既存ファッションビル」を掲げ食品、雑貨など衣料品以外のウェートが7割を占めます。通常パルコの都心店では5割が衣料品ですからかなり実験的な店です。「新生パルコ1号館」と位置づけられていて、売場面積に対して店舗数が多い、比較的小さな店がきっちりと分けられることなく意図的にごちゃごちゃ並んでいる「宝探し感覚」が受けているといわれています。もうお仕着せのゾーニングは通用しない・・・・ということ老若男女幅広い層を集めています。

 パルコは大阪を意識してるのか?

 かつて今のヨドバシカメラの場所のコンペに、パルコは三越と組んで応募していました。今はどうなんでしょうね。福岡パルコのフォーマットは梅田出店を意識した実験のようにも見えます。
 不採算の大分パルコを閉店していながら、どうしようもない心斎橋の店を何故いまだに維持しているのでしょうか?

 旧セゾングループにとって関西は鬼門のようです。西武、そごうはかなりあわただしく店を閉めてきたのでその「しこり」を残しています。パルコはいずれ、大阪、しかも梅田に出店機会を求めているのだと思います。イーマの76億、NU茶屋町の88億、ディアモールの125億を超える売上は取れる自信はあるはずです。

 おそらくは、商業に慣れていないデベロッパーとの賃料交渉次第です(月坪7,000円なら成約すると思います)。もちろん、梅田を制圧する阪急阪神グループがだまってはいないでしょうが。土地を持っていてそれを活用するノウハウがない企業がいくつかある中で、進出は防ぎきれないでしょう。東急ハンズが大丸の上層階に出店します。ロフトはすでに茶屋町に出店しています。あと、実績のあるプレイヤーはどれだけ存在するでしょう。
 梅田の2011年問題では百貨店以外の有力なプレイヤーがどの場所にどのような条件で迎えられるかでゾーン間の競争の力関係があきらかになります。「パルコ」は」今の梅田にない業態です。「フォーラス」か「OPA」あるいは「丸井」の可能性もありますが、本命はパルコでしょう。
 2014年現在、この予測はハズレです。パルコはjフロントの傘下になりましたが梅田出店の噂は今の所ありません。
                                                  (2011年06月02日)
図ーパルコ売上高(2009年)  億円
■都心の商業施設に求められる日常性

 ターミナルに欲しい施設、勤務地に欲しい施設

 都心での買い物難民が話題になっています。都心居住が進んでいる中で失われた商業インフラがまだまだ回復していないので、日常の買い物に困っている人が多いという事実です。先日も、船場のタワーマンションで開業されている事務所を訪問したのですが、もともと住居用の建物なので半数以上は住居として使っておられるのですが、日常の買い物施設が不便で、生協などの宅配を利用されている方が多いそうです。
 若い夫婦だけでなく、高齢のご夫婦も多いということで、医療施設などは便利でも生活施設が不足しているということです。

 大阪市内通勤者に聞いたターミナル、勤務地の近くに欲しい施設として書店などと並んで「食品スーパー」も各年代で多くあげられています。

 都心百貨店から消えてしまったもの

 デパ地下が話題になった背景には、都心居住者によってそうざいや食料品が日常の買い物先として利用されるようになったということがあげられます。(大阪の百貨店では従来からそうなのですが、全国的に見るとこれは特殊でした)

 百貨店からなくなったものとして寝具や実用衣料があげられます。

 「ファッションセンターしまむら」は郊外で実用衣料や寝装品、子供服の安売りで伸びているチェーン店です。安くてトレンドを意識した商品も充実してきており、東京都内でもファッション衣料に特化した店を高田馬場や三軒茶屋に出店し成果を上げてきました。

 5月20日に南千住のララテラスにオープンした店舗は売場面積730uですがファッション特化ではなく郊外店と同じ品揃えで出店した「標準店」です。今期は出店計画45店の内15〜20店は首都圏を始めとする都市部への出店を計画しています。立地にあわせてファッション特化型から標準店までバリエーションを揃えるようです。

 賃料は今まで月坪4,000円程度であったのが誘致のネックでしたが。(月坪売り上げ7〜8万円の5%が基準)
都市部に関しては売上見込みに合わせてコスト上昇も織り込むとのことで、宣伝効果も見込んでの出店もありうるようです。

 営業時間はパートさんが家に帰って家族と食事できる時間をげんそくとし、通常7時まで、遅くとも8時までという原則を守るというのが面白いところです。
 有名モデルとコラボしたファッションだけでなくトレンドを意識しながら値頃感を持った布団カバーなどが売れているそうです。 〜繊研新聞 2010年6月1日の記事を参考にさせていただきました

 価格に逃げない

 売上が厳しくなると、現場ではどうしても価格訴求に走りがちです。営業時間を延ばして、休業日を減らして少しでも売上金額を積もうとして、より採算性を悪化させていきます。

 しまむらについては「安売り」のイメージが強かったのですが、店舗運営ポリシーをみていると、安く提供できる商品を作ってはいるけれど、競合店などを意識しないで、自社のペースで休業日、営業時間を守っているので、安易に利益を削ることはしないで、しっかりと利益を残してかつ従業員のロイヤリティを上げているなと思います。
 

 都心からなくなっってしまった「商材」は顧客のニーズがなくなってしまったものではなく、商業者(百貨店やGMS)が安易な効率化を図った結果「利益が上がらない商品」とされてしまったものなのです。

 その行動基準が変わらない限り、百貨店、GMSの復活は見込めないでしょう。
                                                     (2010年6月1日)

図ー1 ターミナルに欲しい施設


図ー2 勤務地周辺に欲しい施設


(大阪市内通勤者対象の調査  なにわ考現学2005)

 
 5月
■日本式収納術とエンディングノートの価値

 収納のDNA

 午前中の会議で日本人の収納のDNAについての話題が出ました。日本人は整理分類をきちんとして、整理分類した収納場所から取り出したモノを使った後に戻すといった体系的な手順が苦手なのだそうです。だからどこの家に行っても散らかっているのが当たり前であるとか。

 とにかく使いそうなモノは自分なりのルールで手近に置いていて(散らかしていて)、来客とかがある時にはまとめて何かに詰めて、目に見えないところに押し込む・・・・思いあたる節は大いにあります。インテリアはすっきりと何も置かないのがよしとされ、欧米にあるような細々としたものを飾るのは苦手です。何しろ、来客時には細々としたモノは納戸にまとめて押し込んで、外向きの顔をすっきりさせるのですからね。

 「人生」の記録?・・・エンディングノートの本当の姿

 シニアのボランティア団体ニッポン・アクティブ・ライフ・クラブの会員さん達が、もしもの時に残された人に迷惑をかけない為に高齢者が必要なことを書き記す実用的なノート、「エンディングノート」を作成する時に実務作業をお手伝いしたことがあります。
 
 お陰様で話題にもなり好評でした。直売で10万部以上刊行されたでしょうか。
 第2段として「自分史ノート」をつくろうかという話もありましたが、今ひとつ乗り気ではなく立ち消えになりました。

  先週、老いた両親の引っ越し作業をしていて、「家」には本人以外には意味を持たないゴミのようなモノが大量にストックされている事を実感しました。このストックを一つ一つ「成仏」させ、捨てる決心をさせることが大変な仕事でした。

 老人世帯が亡くなった後の遺品整理に結構需要があるそうです。身内が見ると捨てられないので自動的にゴミになるのですが、多分、自分にとってだけ大事な「ゴミ」のようなもに対する想いを書き出すことがエンディングノートの実用的な連絡ノートとは違ったもうひとつの価値なのかも知れません。

 記録して残すのではなく、供養して捨てさる・・・・厚顔無恥な人間であれば隠したい過去を隠したまま自らの人生をねつ造し、しがみつくのでしょうが、「供養して」捨て去るのが多くの日本人の美意識なのかも知れません。人に見せびらかすのではなく、しまい込んでやがて捨て去るという収納のスタイルに似ています。

                                                                (2010年5月31日)

■名駅周辺の地殻変動の兆し

 JR名古屋駅松坂屋跡は島屋増床と家電量販店の誘致

 JR東海は19日、日本郵政グループとともに推進している「名駅1丁目1番地区におけるまちづくり基本構想」で計画する「名古屋駅新ビル」について、既存のJRセントラルタワーズ(タワーズ)と一体化し、ジェイアール名古屋タカシマヤの増床や、大型専門店などの誘致を目指す構想を明らかにした。(日本繊維新聞)

 「まちづくり基本構想」では、日本郵政グループなどとともに2つの高層ビルを開発を予定していましたが、日本郵政の建て替えは市況の悪化に伴い延期される見通しです。(大阪駅前の中央郵便局も延期となり東京ディズニーリゾートの出店が撤回されましたね)

 JR東海が担当する新ビルは、今のタワーズに隣接する名古屋ターミナルビルを今年9月に営業終了し松坂屋名古屋駅前店も8月29日に閉店します。新しいビルの施設は2017年にかけて順次開業する予定です。
 延床面積約26万平方b、高さ約220b、地上46階・地下6階建てとなります。

 ビルのテナント構成は、1―14階の低層部分を商業施設、15―25階の中層部分をホテル、26階以上をオフィスとする計画。2階で名古屋駅と日本郵政グループなどが開発する駅北側のビルと連絡、15階ほか複数のフロアでタワーズとの連絡通路を設けるそうです。

 商業施設では、フロア数・面積などは未定ですが、ジェイアール名古屋タカシマヤの増床フロアを誘致するほか、家電量販店などの大型専門店を誘致。飲食店はカジュアル性の強い店舗を配置する計画です。
 
 リーマンショック以降大きな打撃を受けていた名古屋地区ですが、開業の頃にはそのショックも和らいでいるかも知れません。

 リニア新幹線で東京のベッドタウンを目指すより、名古屋らしい生活文化を発信出来る店が増えてくれれば楽しいのですが。産業都市だけでない名古屋の顔がみたいですね。

                                                     (2010年5月28日)


図−名駅と栄周辺百貨店売上高と売場面積比較

週刊東洋経済 2010年3月13日号
■シニア女性が「好きな街」の条件

 60代女性が特に好きな街〜中之島、福島、OBPの共通項

 他の年代の女性に比べて、60歳代の女性が特に強く「好き」と評価する街があります。中之島・淀屋橋、JR福島周辺、OBPです。

 その共通項は、クラシックのホールがあるという点です、フェスティバルホール(改築中)、シンフォニーホール、いずみホール。

 クラシックのホールなど大阪人には求められていない。おばちゃんはヒョウ柄の服とスパッツで盛装して吉本か杉良太郎、せいぜい韓流スターの公演に押しかけるのが関の山と・・・・大阪人の知的水準をことさら貶めるのはいったいどこのおっさんでしょうか。

 ここには顕在化していないビジネスチャンスが沢山あります。60代のおばちゃんの文化嗜好から生まれるビジネスには国際競争力がありそうです。

                                                                 (2010年5月27日)

図ー好きな街(年代比較)

(なにわ考現学05)
■外での食事に求めるモノは?

 豊かなお財布は豊かな食生活に通じるのか?

 ある仕事で、毎月マスコミ関係者を対象に、食事についてインタビューしています。普通より高収入な方達ですし、情報量も豊富ですからからさぞや、高級なお店で食事をされているかと思うのですが、そうでもなく、ポルトガルのレストランでのよだれの出でるような食卓に着いて語ってくださる方から、ごく普通のお店の選択で高級店などあまり利用しないという人まで個人差があります。

 その取材を通じて感じるのは、一定以上のレベル(金額)を「超える」と味だけでなく、「雰囲気」「オーナーとのコミュニケーション」美しい盛りつけ」「ゆっくりと過ごす時間」が食事の楽しみでのウェートが高くなるということです。当たり前のことですね。それでもその要素を楽しむには「お金」を持っているだけでは駄目なような気がします。

 ある意味での「教養」が必要なのです。外食に限らず、日本国内のアッパークラスの消費には「教養」が求められるものが増えていくことかと思います。お金だけでは元気のいい中国の人にはかないません。

 吉野家がマクドナルドに負けるわけ

 週刊ダイヤモンドの「外食」特集が話題になっています。牛丼の価格競争に巻き込まれた吉野家は、良いモノを高く売る戦略にシフトしたマクドナルドに抜かれたと言う記事が掲載されているようです。

 吉野家の牛丼を久しぶりに食べてみました。「まずい」・・・業績不振は単純に味が落ちたからでしょう・前回の吉野家の業績不振時もつゆを粉末に変えたりして味を落とした時でした。この客体の商品は意外に味が勝負です。
 時々「味がいまいちだから逆に毎日食べられる。わざと味を落としている」と寝ぼけたことを言う経営者もいます(少なくない)が、この価格帯の商品は味が落ちれば客は離れます。・・・・関西の某ラーメンチェーン。

 ハンバーガー業界は市場規模6,000億円、牛丼業界は2,000億円です。対してうどん業界は1兆円。ラーメンも1兆円。日本人は麺好きなのですね。

                                                (2010年5月26日)
■「大阪嫌い」?物語〜ミナミだけが大阪ではありません

 大阪には「じゃりんこチエ」しかいない?

 東京のマスメディアには困ったものです。大阪の女の子はみんな「ジャリンコチエ」か「久本某」かその亜流とレッテルを貼る「馬鹿な視聴者」にはわかりやすいと考えているようです。東京のローカル番組のミスコンにエントリーした女性が、本人のパーソナリティーとは関係なく勝手に「なにわっ子○○ちゃん」とキャチフレーズをつけられたと嘆いていました。・・・よく似た話は沢山聞きます。

 さて、大阪らしい街として映像が浮かぶのは、通天閣と串カツ、道頓堀の巨大看板と考えるあなたはかなり、マスコミに毒されています。

 関西の女性はキタ(梅田地区周辺)とミナミ(なんば千日前〜道頓堀)ではどちらかというとキタを好む傾向にあります。この場合のキタとは、」阪急周辺からディアモール、ハービスのある西梅田地区のことを示していると考えられます。

 ミナミ派は男性の20〜30歳代?とはいえ、圧倒的にキタが優勢かというとそうでもないのが面白いところです。


 大阪のファッションが遅れていると考えるのは男性

 「東京と比べて・・・・」という問いかけ自体がコンプレックスの裏返しであるように思いますが、とにかく男性は東京に比べて遅れていると考えているようです。大阪の女性は・・・・と見ているんでしょうね。逆に女性は「決して負けてないで」と自己評価している?のでしょうか。

 少なくとも「ヒョウ柄」とか「こてこて」といったステレオタイプはダウンタウンの商店街出来る普段着であって、キタで遊ぶときのおしゃれ着はまた違った装いになると思います。

 わかりやすい「面白そう」部分だけピックアップされた情報を元に店作りをすると失敗しますので、特に関東から大阪へ出店される企業はご注意下さい。(もう何度も警告してきて、語る方も飽きてきたのでもうこのネタでのお話はいたしません)

 最近、人は何故、知らない事柄についてステレオタイプで反応するのかを考えていました。情報を集めて自分で判断するのが面倒くさいのでしょうね。また人に伝えるときに、かみ砕いて一から話し出すと、くどい文章になり時間がかかるのが面倒くさいとうことでしょうか。

 昨日のテーマにもつながりますが、「面倒くさい」事をおろそかにする企業は永遠に「「競争優位」など確立できません。業務プロセスの効率化にはさまざまな面倒くさいことへの対応が必要になるということです。

                                           (2010年5月25日)
図ー1 大阪に関する意識@

図ー2 大阪に関する意識A

なにわ考現学2005 大阪市内通勤者調査
■「光り輝くダイエーの復活」は実現するのか?

 ストックフレーズの羅列で「競争優位」を実現するという中期経営計画

 この5月に発表された「ダイエーグループ中期経営計画」は「経営資源の選択と集中」を始めどこかで聞いたような決まり文句(ストックフレーズ)は沢山ちりばめられていますが、小売業として何をもって競争優位を確立するのかが見えません。小売業がわかっていない人が経営学の教科書を引き写して作成したような計画書で、投資家はこれで満足しているのでしょうか?

 再生計画の折りに、借金を、返すのにめぼしい資産を切り売りしてしまいました。

 GMS同業他社も同じような売上げ不振に苦しんでいる中、新しいオーナーが改装資金を提供しても、他社に追いつくのが精一杯で「優位性」を確立するのは至難のわざです。
 (営業利益率を比較するとダイエーは-0.1%、同じGMSのイトーヨカドーは0.1%ですが、ダイエーが重点を置く食品を中心とした食品スーパーではマルエツが2.3%、優良店で話題のオオゼキは7%であるという比較がネット上のマネーコラムで指摘されています・・・固定費の差と同時にMDの精度が違うのでしょう)

 ご飯の美味しくなるスーパー=食品中心のスーパーへの転換は立地の優位性のある、いくつかの店では健闘していても、チェーンストアオペレーションができるほどシステム化は出来ていません。・・・・逆に変に「システム化」しない地方スーパーが堅調ですね。

 ディスカウントストア、食品スーパー、SSMを柱にGMSから再編という事ですが、それぞれの業態ではそれぞれに収益をあげている強い競合がいるので、なかなか「競争優位」とまではいかないと思います。

 ダイエーに限らずGMS各社とも利益率の低下に悩んでいます。「GMS」という業態が高コストの時代遅れの業態であると言うことでしょうか。

 大型の総合スーパーは時代遅れ?

 量販店各社とも新規出店は小型店が中心で、GMSからの転換が進んでいます。大型の総合スーパーは大量生産大量消費の時代の産物で、時代遅れなのでしょうか?

 ネット利用者の伸びが気になっています。経済産業省の調査ではインターネットを利用する消費者の93.2%がネット販売を利用されています。テレビ通販32.5%、カタログ通販68.9%に比べて極めて利用率が高くなっています。

 3ヶ月間で5.7回利用し、平均利用金額は51,300円だそうです。男女とも、40代の多忙な層、子育て層、要介護者の入る層などの利用が多くなっています。
 ネット販売の利用者は外出しにくい買い物弱者だけでは無いと考えています。今の大型スーパーは店側の都合で効率化がはかられていて、お客様が探している商品、欲しい商品は店頭に並んでいないことが多いのです。しかも、価格が高い。また、休日の駐車場の混雑を考えると買い物が苦痛になります。ネット販売が伸びているのは、品揃えと価格、そして買い物の苦痛からの解放が大きな理由だと思います。

 とにかく大きなハコに大量に品物を揃えるということではお客様を満足させることは出来ません。

 たとえ住まいに近い立地にコンパクトで効率の良い店をつくったところで、その商圏内のお客様が何を求めているか、何をべースに競争優位を確立するのかを、きちんと精度の高いマーケティングできる量販店はほとんどないと思います。
                                        (2010年5月24日)
■変わる潮目と変わらない原則

 消費者に「節約」飽き傾向があらわれる?

  大企業でボーナスが昨年比アップするなど一部で「景気回復」を思わせる動きがあります。某百貨店が企画した1万円をきるスーツが売れ残り、3〜4万円台に売れ筋が移行するなど、、遅れて景気回復の影響が出る紳士スーツに動きが見られるようです。
 一方で、新聞への広告出稿量が驚異的な伸びを示していた化粧品通販の出稿量が落ち着いてきたといいます。過当競争が進んだことと、この夏の参議院選挙に向けた紙面からの通販用の割安な広告枠が縮小した影響があるのではと観測されています。

 昨年12月頃から潮目は変わり、「安さ」を求める消費トレンドは終わったと語るのはワールドの寺井社長。特に好立地の百貨店に注目だそうです。
 「百貨店はデフレに弱い。価格が下げ止まったことで、駅前の好立地にあり、幅広い客層を持つ都心百貨店は業績が回復するのでは」ということです。

 多分に期待値が混じっているでしょうが、節約一辺倒のトレンドは変わりつつあるのだと思います。

 アメリカでは元気の良かった頃の西武がモデルにしていた「ブルーミングデールズ」がアップスケール小売業として復活し好調であるそうです。経営しているメーシーズは他店でも「地域特性に合わせた品揃えやマーケティング、買い物経験を提供する〜マイ・メーシーズ戦略で好調な業績を上げているそうです。

 中国富裕層を掴むのは「子供戦略」が重要

 一人っ子政策の影響で、中国人家庭での子供への溺愛傾向が強まり、日本のアニメやマンガに親しんでいる子供の意向が「訪日の動機」につながるという興味深いレポートが報告されています。

http://inbound-ss.jp/column/000084.html へのリンク

 小学生だけでなく、豊かな時代に育った若者層は日本のアニメ、マンガ、、ドラマに強い思いがあります。日本のオリジナルなコンテンツを集客及びビジネスにいかしていく必要があります。

 接客には徹底が必要

 当社の近所にはミシュラン三ツ星のレストラン「H」があります。先日その前を通りかかった時に、スタッフ総出でお客様の車をお見送りしてる光景に出くわしました。

 大事なお客様なのでしょうね。お客様もタクシーのまどから手を振って答えておられます。お見送りに感動されたのでしょう。

 車が5メートルほど進んだときに、お見送りスタッフの態勢があきらかに解除されました。お辞儀をやめて店での方向にむいて、やれやれといった感じです。お客様の車は信号で止まっていて、まだしばらくは手を振って折られるにもかかわらず・・・・。「残心」という言葉をお勉強すればいいのに?

 そのお店はお値段も高いですが、心のこもったかつ親しみやすいサービスが評判のお店です。

 その日は大事なお客様を送り出して緊張したのでしょうね。その気持ちが続かずに思わず緩んでしまったのでしょう。接客サービスは100%出来て当たり前の世界です。

 ちょっとした気のゆるみが普段の精進をだいなしにするのだなとあらためて実感させられました。

                                          (2010年5月20日)


■「買い物客の53%がネットを見てから買い物」をする時代になると店頭の重要性は高まる

 アメリカのネット販売は今後5年間年率10%の勢いで伸びて5年後には買い物客の53%が
 ネットを見て買い物をする(調査会社フォレスターリサーチ調べ



 アメリカは国土が広大ですから昔から通信販売の伝統があります。かつては、シアーズの分厚いカタログによってアメリカの豊かな消費文明に圧倒されたこともありました。「ランズエンド」のカタログ通販を良くできた仕組みと絶賛した百貨店の社長がいました。

 WEB通販は「24時間注文可能」「店舗がない分経費カットされ価格が安い」「送料無料、返品自由」といった利便性と低価格で伸びていると思われますが、それだけが支持される理由ではありません。有名ブランド、ラグジュアリーブランドでもWEB通販の比率が高まっています。

 「店に在庫していないスタイルやサイズ」が売上を伸ばす要因だそうです。

 日本でも食料品や健康関連、美容関連といった定番の通販利用だけでなくファッション関連で伸びている企業があります。
 お兄系のファッションに特化し、統一された「世界観」を訴求し年間14億円の売上を上げているサイトがこれです。
http://www.rakuten.ne.jp/gold/ever-green/ へのリンク

どこで買うねんと思えるファッションでも一定のファン層は存在します。店頭では扱えない市場でも広域の市場をまとめれば大きな市場になるということでしょう。

 店頭が重要になる理由

 店頭ではいくつかの制約があります。店の広さは好立地を選択すれば、思うような広さは確保できません。サイズ揃えや商品のスタイルのバリエーションも絞り込む必要があります。

 また、販売員についても商品への知識と愛情を持ったスタッフを沢山揃えることは不可能です。本来は、わざわざ来店いただいたお客様には十分時間をかけて接客したいところです。ユニクロのようにセルフ販売にシフトしてしまえばいいのでしょうが、特にファッションを扱う企業はものだけでなく接客する時間もも重要な「商品」といえます。

  それでも、付加価値の高い高級ブランドであれば、接客に時間をかけても元が取れます。一番頭が痛いのは、セルフが基本の安売りブランドと、高級ブランドの中間で、こなれた価格でこだわった商品を提供しようとする店です。

 webを見て来店していただくことのメリットはこの店頭の物理的制約を緩和することです。

 ある程度「お店の世界観」にシンパシーを感じて来店していただいたお客様を相手にすることで、最初の説明が省略できて、本来の接客の応答に専念できます。

 またwebという回路でもつながればwen経由で、サンクスレター、ダイレクトメールを送りやすくなります。通販の配送ルートにのせれば品切れ商品、お取り寄せ商品の配送が簡単になります。


 店頭とWEBの融合で「顧客」を創造していく動きはこれからも強まるでしょう。

                                                  (2010年05月19日)
■駄目になってしまった百貨店の再生法〜鹿児島マルヤガーデンズ

 鹿児島〜博多が1時間20分 鹿児島〜新大阪が4時間 九州新幹線2012年3月開業

 鹿児島市の人口は60万人。福岡市の132万人の約半分の規模です。来年3月に九州新幹線が開業すると福岡と1時間20分で結ばれ、通勤圏ともいえる距離になります。
 
 鹿児島市の地元百貨店「丸屋」が三越の経営になったのは昭和59年(1984年)のことです。鹿児島三越と店名を変えて営業を続けていましたが、最近10年間売上が低迷し、鹿児島商圏の競合激化と福岡への流出を想定し、2008年5月に営業を終了しました。

 地元百貨店「山形屋も売上は縮小傾向にありましたが、改装投資も行い、収益改善の策を図りながら踏みとどまっています。

 地元密着の何でも揃う大型店「山形屋」に対し、東京のデパートである事を強みとした「鹿児島三越」は老朽化した店舗と「プライド」のギャップの中で、商圏の将来性に見切りをつける事を選びました。

 「三越」という店舗について関西の人間が思い浮かべるイメージは、大阪北浜にあった「三越劇場」や「特別食堂」の品格です。たまに東京の店に行くと、戦前の上流層とそれにあこがれた中産階級の生活の匂いがして、好ましい雰囲気であります。ただし、店頭でモノを買おうとは思いませんが・・・・。鹿児島の人にとって「三越」はどのようなイメージだったのでしょうか?

 駄目になったのは「三越」という企業なのでしょうか「百貨店」という業態なのでしょうか?

 結論を言えば古い「三越」が代表する旧来の「百貨店業態」のモデルが駄目になったのだと思います。(大好きな三越の名誉のために申し添えておけば、福岡三越はターミナル立地でこなれた売場をつくっていて天神の中でも存在感を示しています。この会社に変化対応能力がないとは思いません。企業としての投資の優先順位の判断で鹿児島の閉店という選択は間違っていないと思います)

 ユナイトメントストアを標榜する「マルヤガーデンズ」

 もともと「丸屋」を開業した株式会社丸屋本社が、この4月28日に三越鹿児島店跡地に「マルヤガーデンズ」という商業施設を開業しました。
 コンセプトは人と人、人とモノ、モノとコトが有機的につながり合い、みんなが自然に集まる場所作り。「デパートメントからユナイトメントへ」というものです地下1階から地上9階の全フロアにコミュニティスペースをつくり合計で550平米の空間を地域の人が自由に使える場所にしています。自然光や緑をふんだんに取り入れ、託児施設も完備しています。

http://www.maruya-gardens.com/concept/ へのリンク


 丸屋は百貨店を三越に移管後も地元でブライダル等の事業を継続していたので、地域の地盤沈下を食い止めたいという思いが強いのです。

 百貨店以外の地元企業が地方百貨店の再生にのりだすケースは増えています。くまもと阪神、岡山島屋店がなくなったあとでも、例えば和歌山の丸正跡地も地元の企業が活用しています。

 地方百貨店は地域の資源であることは東京にいると見えてこないのです。

                                         (2010年05月18日)
図ー鹿児島の百貨店の売上げ推移

(ストアーズレポート他)
 2008年5月三越鹿児島店営業終了

※2001年にJR鹿児島駅に開業したアミュプラザは年間200億円(2007)の売上で三越を上回る
  イオン鹿児島は260億円といわれている。三越等の立地する天文館通のマイナスは80億円にとどまっている。
■大阪都心集客の為に必要なものは「買物施設」ではない

 人を集めるのは「買物施設」の売場面積の拡大ではない

 私どもの調査では、大阪都心に充実して欲しい機能として「ショッピング」をあげたのは20代の女性だけと言ってもいいぐらいの結果が出ています。もはや、買い物はわざわざでかける目的とはなっていないのです。

 文化機能、音楽やアートへの充実要望が40代以上の大人の年代で高くなっています。

 百貨店各社とも「モノ」から「「コト」へという方向性は認識され、取り組みも見られます。かつて、そのキャッチフレーズを掲げた都心百貨店もありましたが、サービスやコトに関わるカウンターサービスの利幅の薄い手数料しか収入が無く、もう無くなってしまいました。

 人を循環させる装置となる「文化施設」の役割

 バブルの時期には公共や企業が競って文化施設を建築しました。容れ物はお金をかければつくれますが、運営ノウハウに投資されることがなかったため、「文化施設=金食い虫のお荷物」のイメージが強く残っています。(もちろんサッカースタジアムもそうです・・・)
 
 いくつかの文化施設はきちんと運営されていますし、集客の効果も上げています。特に貸しホールだけでなく、自主企画で運営できる体制があれば、その都市への集約を始めとする人の循環に効果をあげていくはずです。

 人が動く場所で商売はできても、人を集めるチカラはない

 都市再開発でテナント候補への出店以降の取材を重ねても、ほとんどの業種で、「うちは人が動く場所には出店できても、人を集めるチカラはありません。何人ぐらいの人が動く場所ですか?」と聞かれます。

 都心集客に必要なのは文化のソフトです。良質なお客様を集めれば、その次にその関係の中でのビジネスが拡げていけます。もうひとつ「グルメ」は大事な要素です。

                                                (2010年5月17日)
図ー大阪都心部への充実要望(女性年代別)


図ー年代別の特徴的な充実要望


なにわ考現学2005(大阪都心通勤者への調査)から加工
■素材の味に還る〜野菜の煮物が愛される理由

 「我が家の味」世代による違い

 料理をする人は、食べる人が喜んでくれる料理を「得意料理」とする事が多いのです。「我が家の味」として誇れる料理にもその傾向が現れています。

 子供が小さい30代では「ハンバーグ」や「スパゲティが上位に来ます。子供が喜ぶ料理が自慢の種なのでしょう。意外に思ったのは定番のカレーライスをおさえて「餃子」「肉じゃが」が各年代に上位にあげられていることです。特にお袋の味「肉じゃが」を押さえて、「餃子」がトップです。〜東京の特徴なのでしょうか?

 50代では「野菜の煮物」が圧倒的

 年代別では50歳代で「野菜の煮物」がトップです。素直に考えると加齢により「こってり」したものより、「さっぱりしたもの」を好むように変化したかもしれません。先ほどの誰が喜ぶかを考えたときに、子供が離れた後には、自分達が美味しいと思うメニューを「我が家の味」にあがえるようになったのかもしれません。おそらく70年代にあたりでは「おかあさんはやすめ」メニューが得意料理だった世代のはずですから。

 素材の味重視に還ったときに「野菜」というのは最も手軽に「こだわれる」食材です。(値段が高くても、しれています)産地の生産者と消費者がつながるのも「野菜」が一番日常的なつながりをもてる素材です。
 若い世代が我が家の味と誇る「餃子」「肉じゃが」もまた野菜の役割が大きいメニューだといえますね。
                                 (2010年05月14日)
図ー我が家の味と言えばどんな料理か


農林中金 調査  東京圏の主婦400人


■少しずつ形が見えてきた2011年梅田戦争〜限られたパイから最大の利益を得るためのジレンマ

 本当に梅田の集客力は高まるのか?

 各社のインタビューを拝見してると、梅田の集客力が高まることを前提に語られている方が多いようです。本当に集客力が高まるのでしょうか?
 各社がそれぞれ独自の個性を発揮して新しい市場を生みだし、「効率の最大化」だけに走って同質化競争に陥らない限り、潜在的な需要を獲得できるでしょうが、売場面積が増えることで他地区から人が集まると考えているなら、それは明らかに間違いです。

 地方都市では旧中心市街地に対して駅前に商業が集積して、旧繁華街が壊滅状態になるとういう現象はおきます。(和歌山のぶらくり丁、新潟の古町など事例は沢山あります)

 梅田地区の流動者数は床面積の増大では増えません。人は行動圏に沿った範囲で動きます。難波から梅田まで、用事のある人しか動きません。商業はかつてはその「用事」=移動目的でした。今はそれだけのチカラはありません。
 移動目的となる要素、文化やエンタテイメント、グルメははっきりいって、賃料負担能力は低いモノです。各社とも意識的にそれを強化しようとしていますが、普通採算がとれるビルにしようとすると集客力は低下します。いずれ、必ずその判断が働きます。

 もちろん、インタビューに答えられたたレベルのトップはその点、十分承知しているはずです。勿論、根拠、目算も無しに来街者が増えるという事を前提にされているのではないのでしょうが・・・・。

 
 梅田は分割される

 2011年以降、梅田地区は人の流れに沿って分割されます。西梅田地区、阪急阪神・茶屋町地区、大阪駅、それぞれの中で購買行動が完結するのかどうか、どう連携するのかは各社の戦略によります。
 
 
                                               (2010年05月13日)

 さて、実態はどうなのでしょう?近日中に「なにわ考現学2014」をリリースいたしますので、お楽しみに・・・・。
    

  大阪駅・梅田周辺の大型店のトップの戦略  (繊研新聞連載インタビューより)
■都市の「エンタテイメント」マーケティングの戦略構築を

 集客都市の競争力構築はエンタテイメント機能の充実から

 都市の活力は人の流動者数の拡大にかかっています。その街でどれだけの「楽しい体験」ができるかによって、集客力が左右されます。
 大阪の文化、エンタテイメント施設の中で女性に好感を持たれているモノを表にまとめてみました。
 遊園地は若い人の利用率が高く、好感度も高くなっています。大阪観光の目玉であるユニバーサル・スタジオ・ジャパンも全年代に好感度は高いモノの若い世代での支持率が高い傾向にある。またホールで好感度が高いフェスティバルホールは40代以上での好感度が高い傾向にあります。これもレジャー白書の活動参加率の傾向(年代別の変化曲線)と一致します。〜図1と図ー2の比較

 海遊館は民間が運営するという考え方を再度検討してはどうか

 大阪観光のもうひとつの目玉である「海遊館」は各年代まんべんなく好かれています。これは一見良いことのように思えます。逆に言えば、利用率の高い(図ー2参照)20代、30代でもっと高い支持があってもおかしくないのに出来ていないことの裏返しでもあります。

 水族館は、野生動物を展示するという意味で教育施設です。これは、国際的な流れでもあります。(以前、私は京都水族館計画のイルカショー構想に過激な自然保護団体の攻撃リスクを指摘いたしました)

 とはいえ、都市の住民にとって野生動物の自然な姿に触れることは大きな癒しであり、楽しみです。

 海遊館は一時民間に売却されるという話がありました。様々な都合、理由で中断していますが、都市の資源として活かすにはマーケティング力のある民間の運営に委ねることが大阪市民の利益にもつながります。

 再度、民間への売却を検討することを考える時期ではないかと思います。今のマーケットプレイスも、民間が取り組めば、もっと活性化できるはずです。

 ラスベガスは賭場だけで反映しているわけではない

 都市の活性化を議論する際、カジノや大型スタジアムと言った大型投資が目玉として語られることが多いのですが。その運営、活用戦略に関しては誰も語ってくれません。

 ラスベガスのような街は賭場をつくれば完成するのではなく、各年代が楽しめるエンタテイメント施設、スポーツ施設、コンベンション会場がセットになることで集客しています。もしも、それを集客の目玉にしたいのならセットになるそれらの施設、あるいはエンタテイメントのソフトをどのように構築するのか、世界中から資金を集めるための競合(例えば中国)との差別化をどうはかるかのマーケティング戦略が必要です。

 おそらく日本国内で「カジノ」が解禁されるとすれば、東京でも大阪でもなく米軍基地が縮小した後の沖縄なのでしょうが・・・・。

 カジノはともかく、大阪はどのような魅力で人を惹きつけ、そして関西で人を循環させるベースになれるのか?
真剣に戦略を構築する必要があります。

                                      (2010年05月12日)
表ー1好きなエンタテイメント施設(女性年齢別)
網掛けは10%以上の項目
   (なにわ考現学2005)

図ー1 好きなエンタテイメント施設(女性年齢別)
海遊館は各年代に平均して好かれているが・・・
   (なにわ考現学2005)

図ー2 余暇活動参加率

水族館等の利用率は20〜30代が飛び抜けて多い傾向。・・・通常、嗜好性の高いエンタテイメント施設は利用率型が高ければ好きと回答される傾向がある。
(レジャー白書2008年)
■家族の食卓〜グルメ層の年代別比率

 家庭の1ヶ月の食費は「4〜6万円未満」が4割弱と最も多い

 先頃は発表された農林中金の調査では、家庭(東京都)の1ヶ月の食費は平均、6万2,260円。4〜6万円が37.3%と4割弱、6〜8万円未満が26.8%とあわせて三分の二を占めています。食料品を扱うときに、平均値を相手にしても仕方がありません。

 注目したいのは年代別の数字です。30代の世帯では家族人数が少ないこともあり7割が6万円未満です。この年代で8万円以上使う9.1%の層は他の層とは選択する食品が違うはずです。

 40代で26.9%いる月額8万円以上の層、50代で20.3%いる10万円以上の層。(図ー2)これらの平均値以上の支出を行うのはどのような人で自社の商圏にどれだけ存在するのか?
 食料品は限られた商圏内での商売です。一層きめの細かいマーケティングが必要になります。

 大手GMSの小型店舗がうまくいかないわけ

 郊外の大型モールから食料品を中心とした小型店にシフトする動きがありました。大手チェーンの食料品スーパーがいまひとつうまくいかないのは商品調達力が伴わないのと、マーケットに対してより精度の高いシステムが組めないことが原因です。

 いいものを並べた高級食品スーパーを頑張っても、商圏内に需要がなければ続きませんし、価格一辺倒でやっていくにも鮮度管理の徹底が必要になります。価格だけでやっていけるなら「スーパー玉出」がもっとシェアを伸ばしているはずです。

 (食料品ではないですが、家庭用品・家具で伸びていると言われるN社の店頭がかなり荒れています。確かにNBに比べて安い製品もありますが、棚板のない書棚や、天板にひびが入った家具などゴミのような商品が安くなっているとはいえ、プロパー商品と同じように並べられています。某GMSの食品ワゴンセールでの生ゴミのような見切り品と同じようなすさんだ空気を感じさせます)


 食料品は限定商圏のなので、その中に「グルメ層」がどれだけいるかを把握することが大切です。基本は良いモノを安くですが、差別化になる「良い食材」をどれだけ置けるかで店のイメージが決まります。
                   
                                                       (2010年05月11日)

図ー1 「1ヶ月の家族の食費」


図ー2 「1ヶ月の食費累計値の比較」


2010年3月 東京近郊の母親を対象にした調査(農林中金)
■アトリウムが導線を分断〜大阪駅ルクアを巡る人の動き

 JR大阪駅新北ビルの専門店ゾーン「ルクア」2011年5月に開業

 「ルクア」の概要が専門紙に発表されていました。約2万uの店舗は270億円の売上を目指します。メインのターゲットは25〜34歳のトレンドに敏感なOL層。サブターゲットは20〜24歳の若い女性、20〜34歳のおしゃれなビジネスマン。客単価8,000〜10,000円を想定しているそうです。

 「日常生活における手の届くぜいたく、高感度で洗練されたライフスタイルの提案」をコンセプトに、地下1階=スイーツなどのフードとコスメ、1階〜6階=レディスファッション・雑貨、7階=メンズファッション、8階=リビング雑貨・ファッション・美容室、9階=書籍・文具・趣味雑貨、10階=飲食で展開する。全196店舗を予定。

 2〜5階のファッションフロアにはレディス・メンズの大型複合店(265〜660uとコンパクトですが)を導入、男女カップルでの買い物を誘導。サブターゲットのヤングレディスフロアは6階で展開するようです。〜大丸梅田店のヤングも5階と差別化のポイント考えられるヤングが結構冷遇されていますね。

 駅ビル中央の巨大アトリウムが回遊導線を分断する危惧

 アトリウム・・・・昔流行りましたね。これを最初に見たときには、とても感動しました。建築関係の人はいまでも好きなんですね。

 あらためてビルの配置図を見直しましたが、JR大阪三越伊勢丹との連絡通路は、地下、5階、7階、そして10階なんですね。真ん中には巨大なアトリウム・・・。JR大阪駅ですからいつも人がいっぱい流動してるでしょうね。

 対して、地下、1階、2階は地下鉄、阪急とつながっています。平面図をみていないので何ともいえませんがヨドバシ梅田との回遊とか、梅田地区での鉄道乗り換え状況から考えると、このビルは阪急との回遊が多くなりそうです。アトリウム広場で東西がつながっているとはいえ南北の流動者が川のような流れをつくりバリアになるはずです。

 回遊が良くなれば、阪急の売上を取るという事は期待できそうですが、同じ駅ビルの中のJR大阪三越伊勢丹との回遊は少し難しいかも知れません。

 商業施設を建設する場合、早い段階で「商業の専門家」それもできるだけ、コンサルより実務者をいれたほうがいいとつねづね申し上げているのですが、普通の工程では建築が先行してしまいます。

                                              (2010年05月10日) 
■「百貨店」の構成要素が変わる〜残された資源の活用法

 大型商業施設の盛衰と立地のポテンシャル

 中心商業地域の街としての衰退が地方百貨店を弱らせています。人の流れの変に対して、今の百貨店の機能では単独で集客をはかれるほどの吸引力はなくなっています。そのような街では大抵の場合、街の商業者の商売への意欲が減退し、テナントに貸す意向もない場合が多いのです。地域の「核」とはいえ百貨店単体では今のお客様の求めるものに答えることは出来ません。
 確かに、郊外店に対抗するために安く利用できる駐車場の整備も必要でしょう。ただし、街に魅力がなければ人は集まりません。

 閉店した百貨店の跡地の利用状況を整理してみると、駅前などの人が集まる立地では「家電量販店」などの利用が多く、そのまま大型店として利用されていますが、少し、立に課題がある店、公共等のてこ入れがあってもなかなか大変そうです。

 百貨店の変化〜欠落している機能の補完

 百貨店が、自前で整備できない機能を他の企業のノウハウなどを取り入れて整備することは、いまとなっては珍しいことではありません。
 東急ハンズと複合したり、ファッションビルノウハウを取り入れたり、ユニクロをテナントとして入店させるなどの動きです。(新宿島屋に入店したユニクロは1,650uと百貨店内店舗最大の規模を誇ります。もともと、ユニクロが内装にかけるお金は意外に高いのです、フローリングやモニターディスプレイにかなりのお金をかけた店のようです)

 4月30日には松坂屋銀座店に「フォーエバー21」(3,000u)がオープン。低価格衣料品でヤング市場の開拓を狙います。3月には東武池袋店に「ZARA」が開店しています。レディス中心のコンパクトな店舗です。同店は「GAP」「ユニクロ」「バナナリパブリック」などを5年前ぐらいから導入済みです。東武百貨店は根津社長が「百貨店」の呼称をとってもいいとおっしゃるぐらい、新しい店舗導入に積極的です。

 関西の百貨店では大丸以外はまだ及び腰です。その中で、阪神は百貨店プロパーで独自の大衆路線をとっているユニークな店舗です。

 今後、百貨店の生き残りのために、現在欠落している機能としては「ヘルス&ビューティ」へのもう一歩踏み込んだ取り組み(運営企業が百貨店の取引の審査基準にあわないケースが多いようです)、それとあわせて「医療」の取り込みが大事になります。

 生活の楽しみとそれを支えるサービスのワンストップでの提供が生き残りの鍵となるでしょう。
 その他にも「ペット関連」「旅行」「産地直送品」など今伸びているジャンルの商品の百貨店クォリティを提供することが必要になります。

 そうすればダイレクトマーケティングで販売のチャネルも拡がっていくはずです。「百貨店の目利き力=セレクト}というのは高齢者層(お金を持っている)にはまだまだ信頼されているからです。

                                        (2010年05月07日)

表ー百貨店跡地利用の事例

■小さなトレンドは世の中を少しづつ変えるのか

 産地直売市場は1兆円?

 農産物の生産者が直接販売する産地直売市場は1兆円市場であるという説があります。少なくとも、今農業に取り組む人達の中には単に商品を既存の流通ルートに供給するだけでなく、自分たちで直接新しい商品を開発し、消費者に届けたいという動きが無視できない流れになっています。

●有限会社多田農園(北海道上富良野)
 規格外のニンジンの活用策として、高糖度ニンジンを原料とした冷凍ニンジンジュースを開発、パッケージを元大手化粧品メーカーのデザイナーに依頼、目を引くパッケージをもとに首都圏のアンテナショップ、デパートで販売し販路を拡大しました。
 世界規模の」有機農業ネットワーク機関(WWOOF)に登録し宿泊施設をつくり全国の修学旅行生の受け入れを行っています。大学等と連携しヘルスツーリズム事業を検討中とのことです。
 
 年商2,000万円の小さな事業ですが、「健康」というコンセプトと「旅行者」の受け入れによる関係作りで大手メーカーと違ったポジションを獲得しています。

 国内の旅行市場も名所旧跡巡りではなく新しい目玉が必要になっています。健康によいものの生産にを体験することは「安心・安全」を保証する鍵となります。

 陶芸の街のライフスタイルショップ「スターネット」

 栃木県益子市は陶芸の街として知られています。その街で服や陶器、雑貨を扱うショップが地元の野菜の直売所やレストランを併設しています。
 「スターネット」には年間5〜6万人もの人々が訪れます。オーナーの馬場さんは「トキオクマガイ」という最先端のモードの世界で働いておられた方です。大量生産、大量消費型の生活スタイルから、きちんと暮らしと向き合う生活、農業や陶芸と言った手仕事をデザインのチカラでモダンにアレンジし現代にも生き残っていくようにプロデュースしようとい始めたそうです。

http://www.starnet-bkds.com/aboutus/index.shtml へのリンク

 とはいえ「都市の創造性」がなければ「地域」の産物を光らせることはできない

 上記の事例は、経産省の報告書やファッションの業界紙から拾い出したモノです。時代は確かにエコや健康にトレンドが流れています。その中で、地域の産品をブラッシュアップするのは、都市で磨かれたデザインであったり、都市を通じた情報発信であったりするのです。

 デフレ経済中で都市が生み出す「創造性」のエネルギーが弱くなっているように思います。

 梅田北ヤードで提唱されている「ナレッジキャピタル」について、私はよく存じ上げません。ただ、常々主張しているように関西、大阪を活性化するには地域(日本国内の地方、そしてアジアの地方)のチカラを活性化する知識やデザインの創造性のノウハウを提供する場で合って欲しいと思います。

 もちろん地場のモノづくりの活性化も重要です。ただ、関西全域にわたって地域を活性化するノウハウを提供できれば結果的に大阪の産業も活性化します。「国際金融センター」や「カジノ」だけが地域活性化の道筋ではありません。

 世の中の小さな動きの中に、今は見えていない大きな市場の芽が潜んでいます。

                                                   (2010年05月06日)
 
 4月
■オフィス立地の商業施設の評価基準・・・他

 朝日新聞新ビルの屋上に「ひらまつ」が出店(2013年)

 現在建設中の中之島フェスティバルタワー37階に、ひらまつが自社で展開する五つのブランドを集結。「ひらまつ」「ポール・ボキューズ」などの本格的なフランス料理と、「ASO(アソ)」のカジュアルなイタリア料理のダイニングを併設する新しいタイプの店になるそうです。約840平方メートルに計270席を設け、結婚パーティーなどもできるということです。大阪の旗艦店となります。

 レストランというのはかなり地域性が強いもので、ものです。今までに関西に進出した他の地区の有名シェフの店は成功していません。

 これは近い地域内でも神戸の店が大阪で成功しない、大阪の店が神戸で成功しないというケースが多いです。

 特に東京で人気の「シェフのキャラクターが強い店」の場合、細かいところに目が行き届かないという理由が主な原因だと思います。

 ひらまつの場合、企業として全国展開しているので、その心配はないのですが、東京と大阪の価格帯の違いは最初に織り込んでおく必要があります。大阪の場合例え中之島という大阪で最高の立地の、グランメゾン業態でさえ一般的には、ワインと料理、2人で5万円までです。東京では1人あたり5〜7万円でもお客さんはいるでしょうが、関西ではその金銭感覚では無理です。(もちろん、超金持ちもおいでになりますが・・・・・)

 祇園の御茶屋さん、新地のクラブの支払いを考えたら安いモノなのですが。

 オフィス立地の商業施設への評価

 西梅田、桜橋に2008年に開業した「ブリーゼブリーゼ」についの商業についてあまり景気のいい話は聞こえてきません。実態は私にもわかりません。最上階の「ビストロ」は好調だとは聞きますが、他の店についての売上の公表はありません。サンケイビルの決算を見てもオフィスやホールは順調に利益をあげているようです。基本的オフィスビルと複合した商業施設についてターミナルの専門店ビルと同じ尺度で評価するのは間違った考え方であると思います。
 淀屋橋のオドナについても同様です。

 オフィスビルのデベロッパーは商業機能を低層部に入れることを嫌がっていました。賃料が安定しない、とか管理が複雑になるとか、経験がないとか、ようするに面倒なのです。そのため、古くに開発されたオフィスビルは、ビル内のオフィスワーカー向けの利便施設だけしか入っていません。

 ビジネス外での商業機能(物販、飲食)の導入の目的は、そのエリアの価値をあげることを主目的とするべきなのです。若いオフィスワーカーの評価が高いのは「梅田」です。ステイタスや伝統だけでは「エリア」の評価をあげることはできません。もちろん、赤字になることは論外ですが、単に売上がいいという理由でテナントを選ぶのではなく、そのエリア、そのビルの価値をあげるかどうかが判断基準になります。

 従って、単に売上が梅田地区のファッションビルより悪いからといって、それだけでブリーゼブリーゼが失敗作であると評価を下すのは間違っています。


 梅田の阪急阪神〜予算を上回る勢いで推移

 阪急梅田本店は営業面積が27,000平米と大幅に縮小しています。面積40%減でありながら減収は20%にとどまり、この景気低迷下で好調を維持しています。

 阪神百貨店も入店客数は7%増、店頭売上は8%増と好調。55歳以上と30歳代の狭間で落ち込んでいた45〜55歳の利用者が増えているそうです。阪急のお客さんが流れ込んでいるのでしょうね。現状では面積が一番店なので、今のうちに阪神の良さを実感してもらって、2011年以降の競争激化に備えていきたいモノです。
 食料品売場の行列はバームクーヘンからラスクに移行しました。このように常に新しい名物、目玉を打つ出していく必要があります。

 
 野菜、お米は顔の見える生産者から直接購入
 
 都市部にいると気がつきませんが、、お米や野菜について、生産者から直接購入したり、産地の直売所での購入がばかにならないシェアを占めています。特に、北関東、中国四国、九州でその傾向が顕著です。大型のショッピングモールでも生産者の直売所を導入する動きが強まっていますが、これから都市部でも生産者から直接購入する動きが強まりそうです。

 大型店が揃ったニュータウンでも生産者の定期的な市がひらかれています。都市部の大型店でも対応が必要です。某社のおせち企画ではひとつひとつの材料に生産地と生産者の顔をのせて好評だといいます。生産者との繋がりを具体的に実感させる必要があります。

                                                                                                       (2010年04月30日)
図ー野菜、お米の購入先


社団法人JA総合研究所調査
お米(2009年)野菜(2008年)全国対象調査

■大丸梅田店の増床の概要が発表されました

 24,000u増床し64,000uとなる大丸梅田店は都市型のSCになる

 新しい店舗は買い上げ客数増を重点にした店舗になります。10〜15階の高層階には「東急ハンズ」を中心にアメニテイやカルチャー分野の中小型店が導入され集客力の向上が図られます。5階には心斎橋北館の「うふふガールズ」(ヤング向けの低価格商品を中心としたライフスタイル提案フロア)3.800uが入ります。衣料品、服飾雑貨、カフェ、ビューティーゾーンなど従来の百貨店とは違った客層を取り込みます。

 百貨店のターゲットはキャリア女性と有職主婦(30〜40歳代)

 地下2階から2階は有職主婦の時間節約型ニーズに対応し、雑貨と食品を重点的に構成するようです。3〜9階の品ぞろえの幅は広げますが、今のフロアコンセプトは変えません。特選は雑貨を強化するようです。

                                                                   〜繊研新聞4月28日記事より

 ロフトが女性客中心なのに対して東急ハンズは男女とも吸引できます。店舗規模はやや小さいものの、他にまねができない分、集客力はあるでしょう。楽しそうな店舗が集まった、かわいい幕の内弁当のようなお店になりそうですね。

                                                                                           (2010年04月28日)

ターゲット層の評価を聞いてみました。

うふふガールズは地下鉄の駅と直結しているので使いやすいが、「百貨店」の5階まではわざわざいかない。(若い女性をターゲットとした島屋の5階の現状を考えれば確かにそうでしょうね)多分、HEPファイブと似たラインになるのだろうけれど、エストや茶屋町と回遊しにくいのではという意見でした。なるほど。うふふガールズキャラクター稲垣早希ちゃんについては明確な評価を避けた模様。・・・・・・・まあ、ファッションゾーンですからね。

 
■古民家モール「ぶどうのたね」〜縮小市場からうまれたユニークな小売りの形態

 呉服業界の市場規模は2003年の6,270億円から2009年の3,210億円まで半減

 呉服離れが進んでいます。レンタル着物、成人式の用の派手な着物や中古着物のリサイクルなど色々工夫をこらしていますが市場の縮小は止まらないようです。
着物を着たいという人は居ますが、業界の多くは成人式のコスプレ用の高い振り袖を売ることに関心が強く需要を開拓しきれていません。強引で詐欺的とされる販売手法をとっていた「たけうちグループ」などが破綻してますます業界への不信感は高まっています。

 地方都市非都心立地でのユニークな着物販売が伸びている理由

 福岡県うきは市の田園地帯に「ギャラリー&カフェぶどうのたね」という商業集積があります。古民家が建ち並ぶオープンモールです。くらしギャラリー「ぶどうのたね」、カフェ「たねの隣」、調味料雑貨を扱う「となりの売店」、和菓子「葡萄家」、きもの「田中屋」で構成されています。この田中屋ではこの10数年間売上を維持しているそうです。和を中心としたライフスタイル、世界観が明確な集積です。客層は30歳代の女性が中心で、この年代で着物を欲しいと思う女性は着物の個性や、着物作りの過程でうまれるストーリーを重視するので、自然に囲まれた穏やかな雰囲気の中で、和菓子、和雑貨と言ったものに囲まれた「着物の暮らし」のイメージはとてもいい感じの相乗効果を発揮しています。

 http://www13.ocn.ne.jp/~tane8667/budoya.html へのリンク

 離れた場所に顧客を誘導するために、年に1〜2回福岡都心のギャラリーで展示会を行うそうです。営業時間は日が落ちるまでというのも自然と共生していて農業や地域の風土にあった食品を選ぶ最近の若い世代の価値観にぴたりとあてはまります。

 一方、都心の呉服店では「アゲハ」風(キャバクラ嬢風)の派手な振り袖のレンタルを宣伝しています。どちらのビジネススタイルが持続性のあるモノか、どちらのスタイルを選ぶかは各企業、各経営者の価値観で分かれるでしょうね。

                                                                                  (2010年04月27日)
■2011年問題〜売場面積の差でキタの圧倒的優位を語る議論の誤謬

 利用者は巨大ターミナルを好んでは利用しない

 乗り換えの利便性によってターミナルで乗り継ぐ人は多いのですが、好んで人混みを選ぶ人は意外に少ないモノです。阪神なんば線で神戸方面から大阪ミナミ、大阪方面から神戸へと梅田乗り換えを経由せずに利用する人が増えています。かつて南海天下茶屋駅まで阪急〜地下鉄堺筋線がつながったときに、難波駅を通らずに大阪市内〜京都へへ入っていけるということで、そこで乗り換えてしまい、難波までの乗車客が減少したことを覚えています。
 ターミナルへ行けば、色々な店舗も揃っていますし、人は人が集まっているところにひかれるという本能があると勝手に思っていましたので、その事実を聞いたときは意外でした。

 ターミナルを利便性で仕方なく利用しているのですが、用事がなければ好んで利用されているわけではないのです。むしろ日常的には「人混みは嫌い」という層が結構多いということです。

 商業の売場面積が増えれば「選択肢が増える」というわけではない

 例えば梅田に出れば、阪急、阪神、大丸を比較できて一番お安く、一番気に入った商品を発見できるのでしょうか?

 かつてはそんなこともあったようです。各社とも効率を追求するあまり、同じ戦略をとり商品の代わり映えはしません。同じような売場、同じような商品が並んだ店の面積が増えたところで、集客力にはつながりません。(厳密にいうと阪神だけは少し違いますが)
 ヨドバシカメラが出来たときは、梅田に違う需要を生み出しましたが、百貨店の増床はほとんど新規需要を呼びません。既存の需要の再配分が行われるだけです。

 経産省の大型店規制のベースになる「修正ハフモデル」は商業集積の床面積と居住区からの距離を変数にした引力モデルです。このモデルの苦手なものは各商業集積の魅力度を売場面積だけで表している点です。都心の店はそれこそ面積で表されない魅力度の違いでなりたっているようなものです。

 そういったモデルを背景にしなくても、つい百貨店の面積が増えるから集客力も増えるという錯覚を前提に語ってしまいがちです。

 ターミナルの高い家賃が「冒険」を抑制し、魅力的な業態が生まれない

 駅ナカ、駅チカのターミナル周辺の賃料はびっくりするほど高いです。それにつられて周辺部の賃料も高い水準にとどまります。たとえば飲食店に関して、安くて美味しいものを食べようとすると梅田から、福島、中之島、北浜と言った周縁部まで足を伸ばさないとみつかりません。ターミナル周辺部で提供されるのは原価率が低くて、お客さんの回転率の高い飲食店が中心になります。

 人混みの中、同じような商品が延々と続く売場の中を歩いて、食事や喫茶も人が一杯で落ち着ける場所がない。だれがそんな場所に好んで出かけるんでしょうか。

 都心には都心でしか成り立たない業態もあります。例えば焼きたてのたこ焼き屋とか・・。常に焼きたてを揃えているのは人の多い場所でしか成立しません。「縁日ビジネス」ばかりが集まっても集客力は高まりません。

  何度も繰り返し同じ事を発信しているのですが、世間の風潮は面積の増えるキタが優位との論調が多いようです。
                                                                                    (2010年4月26日)

■リストラ効果と需要の盛り上がりで回復基調にあるアメリカの大型小売店

売上高は横ばいでもリストラ効果で粗利益が改善

 リーマンショック以降2年近、区続いた市場の低迷の中で、不採算部門の売却、店舗閉鎖、人員削減、在庫調整などリストラをすすめてきたアメリカの大型小売店ですが、昨年8月から回復の兆しを見せている消費市場により大手50社のうち赤字企業は半減して8社となっています。

 好調なのはディスカウントストアでだる「ウォルマート」や「ターゲット」、そしてブランドものを低価格で提供するオフプライスストア「TJマックス」の店名で北米、欧州に展開するTJX。アメリカ国内では縮小傾向ですが海外に進出している専門店の「GAP」や「リミテッド」などが利益率をあげています。低価格品ばかりではなくラグジュアリーの専門店「ノードストローム」(日本の百貨店の接客サービスのお手本とされている店です)も好調です。

 日本ではアウトレットのチェルシージャパンが絶好調

 日本でもブランド製品が安く買えるアウトレットが好調です。8施設のアウトレットを運営するチェルシージャパンの売上が当初計画を上回る2047億円を達成しています。
 御殿場が556億円。佐野340億円。鳥栖207億円。土岐183億円。りんくう269億円。来場者は30代が40%を占めていて20代と40代がそれぞれ20%。50代以上の来場促進が課題といわれています。低価格志向とはいえユニクロやシマムラだけでは満足できない需要が確実に存在しています。

                                                         (2010年04月23日)
  

(アメリカの大型小売店09年決算資料から)
■都心の核にな商業施設はオールターゲット

 地域一番店はオールターゲットを包み込む

 百貨店に限らず、地域の核になる商偉施設はすべてのターゲットを包み込むものです。梅田でいうと阪急、阪神、大丸は年代による利用率の差がありません。百貨店ではありませんが、ヨドバシ梅田、阪急三番街も同様です。

 大丸でも心斎橋店は立地の関係もあり20代女性に特化しています。近鉄上本町は逆に60歳代の女性に特化しています。

 専門店でも阪急ファイブ、エスト1、ビッグステップ、OPA、あべのHOOPは20歳代に特化した店であることがわかります。天王寺MIOも同様です。JR大阪駅の新しい専門店街も天王寺MIOと同じようなターゲット構成になると考えられます。

 新しい大阪駅の商業施設は全体ではオールターゲット


 JR三越伊勢丹と専門店で構成される駅ビルは、トータルではオールターゲットになると思います。ただし、専門店、三越、伊勢丹とそれぞれの得意分野が違うので、最悪のケースは中途半端な規模の商業の寄せ集めになる懸念があります。

 既存の梅田の核になる施設と総合力で戦えるかどうかは微妙であると想定されます。個別の得意分野での戦いでは既存の施設の力が浸透しています。駅からの利便性だけではそれをひっくり返すのはかなり難しいでしょう。

 新規ヤング層の獲得に成功した大丸心斎橋店だが

2009年11がつに北館を開業しヤングの取り込みを図っている心斎橋大丸ですが、もともと大丸は南館などで女性に力を入れており、利用者は20〜30歳代のウェートは高い店です。従来の百貨店を利用するヤング層ではなく、新しい層を開拓する意図があるのだと思います。心斎橋本館の入店客は1日平均4.6万人(3.7%増)、北館の入店者数は3.4万人。開業から2月末まで3.5ヶ月の売上予算90億円に対して65億円と客数ほどは売上は伸びていないようです。


 新しいヤング売り場の会員制クラブ「うふふガールズ」のキャラクターはエヴァ漫才(新世紀エヴァンゲリオンのコスプレ漫才)の桜の稲垣早希ちゃん  って・・・・
確かに、ある意味女性にも支持されて「かわいい」けれど・・・
大丈夫か大丸!  ギャラの安さだけでだけで芸人さんをモデルに選んでいていいのか・・・・・。

                                                               (2010年04月22日)


図ー1 過去1年間に利用した百貨店〜年代別の特化指数 女性全体を1.00とした指数 ※利用率ではないのでご注意

図ー2 過去1年間に利用したショッピングビル 年代別の特化指数 女性全体を1.00とした指数

女性全体の利用率を1.00としたときの各年代の利用率の全体に対する比率をあらわしている。グラフが1.00に近い場所に集約されているほど
バランス良く、各年代に利用されている。グラフが外側に拡がっている年代に特に良く利用されている。(例えば、ビッグステップは20代に良く利用されている事がわかる)
なにわ考現学2005より加工
■京都駅前のショッピングモールは新しいターミナル型商業施設になれるか

 イオンモールKYOTO 6月4日グランドオープン  駅前だけど駅前でない立地

 京都駅の南側、PHPのビルや新都ホテルの裏側の3万uの敷地にイオンモールKYOTO(4.5万u)がオープンします。経営破綻したジョイントコーポレーションの計画していた建物を、施工した清水建設からPMを受託した物件です。イオンモールが一から企画したモノではないのですが、都市部のターミナルにおいて郊外型SCの構成での商業施設が、どこまで支持されるのかとても注目されます。

 シネマコンプレックスとユニクロ、ソフマップ、無印良品、大垣書店、ゼビオスポーツ、マナベインテリアハーツなどの大型専門店。ペットショップやテレビ番組グッズを集めたエンタテイメント型店舗、鮮度と質が売り物の食品スーパー、コーヨーなど、ある意味都市部のターミナルでは欠落している機能がどのようにアレンジされているか?

 ターミナル型商業の今後の可能性を占うモデルケースとなるかもしれません。・・・ただ、JR京都駅は郊外から市内に流入する拠点ではありますが、京都市域内の居住者が回遊する拠点ではないので、梅田などのターミナルとは単純に比較はできません。

 京都人は徒歩で移動する

 京都駅の1日の利用者はJR34万人、新幹線5万人弱、近鉄8.6万人、地下鉄10.8万人と市内では最大の利用者数です。(ちなみに繁華街河原町の鉄道利用者は阪急6.8万人、京阪4.8万人です)それでも、JR京都伊勢丹が健闘しているとはいえ商業集積としては河原町の存在感が圧倒的です。

 パーソントリップ調査での移動手段をみると京都都市圏では、「鉄道」15.6%、「バス」4.0%、「自動車」32.4%、、「二輪」24.0%、「徒歩」23.4%と自動車は勿論ですが、二輪と、徒歩の比率が高い事が注目されます。京都では都心居住が残っていて、中京区、上京区、下京区といった中心部に住んでいる世帯が多く、高額所得の富裕層もこれらのエリアに集中しています。ほぼ徒歩圏です。お買い物も四条〜河原町を回遊します。

 もしこれらの人がイオンモールを利用するとしたら自動車で郊外SCにでかけるような感覚であって、私たちが考えるターミナル利用とは少し意味合いが違います。

 商圏は半径5km圏の30万世帯とされています。駐車台数1,125台、駐輪台数1,200台です駐車場がやや少ないかも知れません。南の方面は人口密度が少ないのでかなり広範囲から集客する必要があります。北の方にはすでに「イオンモール京都ハナ」がありますので北からの車の集客はあてにはできません。

 伊勢丹利用者がどれだけ京都駅のミナミに回遊しているかが観察の鍵です。

 JR京都伊勢丹は滋賀県や京都の南、大阪方面からJRを使って入洛する流動者をベースにしています。それらの人々が駅から徒歩5分のイオンモール京都をどのように利用するか?そのあたりが注目です。人は結構ものぐさです。

 郊外SCの機能を都心で展開するときのアレンジ

 各地に建設されていた大型のショッピングセンターは何もない地域(郊外、地方都市)であればそれなりに都会的な空気もあり、時間がつぶせるようにみえるのですが、都心部の機能集積、情報密度の中に置くと間延びして冗長でになり、とても時間を過ごしたくなる空間とはいえません。間が抜けて見えるのです。(都心で成功しているヨドバシカメラには情報性や密度の高い機能集積があります・・・確かにゆとりとか、品のある空間とはいえないので行政はいやがるのですが・・・)

 ただ、同質化競争が確実に想定される梅田周辺の開発の中で、これからは、今までにない機能、業態の展開を真剣に考えておく必要があります。

                                                                               (2010年04月21日)
■都市における「ヨドバシ的」な商業施設の存在感と百貨店の課題

 キタ、ミナミ、天王寺阿倍野を俯瞰してあらためて印象的なヨドバシ梅田の存在感

 都心のランドマークは「百貨店」でした。商業統計の商業集積地別の集計結果をみても、百貨店がエリアの中で圧倒的なポジションを占めています。かつては若い人から年配者まで幅広い層を集めていましたし、何でも揃う、安心してお買い物が出来るという事でまず第一に選ばれていました。

 今でもまだその地位は変わらないのかも知れません。しかし、大阪のキタ、ミナミ、天王寺・阿倍野の比較をすると、ヨドバシ梅田の存在感が際だっています。1,200億円という売上はそれまで梅田にはほとんど無かった売上です。

 利用者像をグラフ化した図ー2でみても20代から60代までの女性にも利用されている商業施設であることがわかります。

 もちろん、ファッションや食料品などと単純売上金額を比較しても意味はないでしょう。百貨店が、効率を追求して切り捨ててきた商品群はお客様にとっては必要なモノであったという事でしょう。ヨドバシにいけばある意味で生活に必要な商品はすべて揃うので年代や社会階層を問わずに利用する人が多いのだと思います。

 百貨店が本当に「お客様」のことを考えていたのなら、自分達の社内のシステムを変えてでも供給していたはずです。変わりたくない、社内内部の都合を優先してきた結果が今の衰退を招いたのであると考えるべきでしょう。

 都心に今後増える商業開発のヒントもここにあります。

 ※図ー1は大型店舗を中心に一体として運営されていると見られているものを抽出しています。特にミナミの特性として路面店が面的に拡がっている特徴は拾い切れていません。その点には留意してご覧下さい。

                                                                                  (2010年04月20日)

図ー1 主要商業集積年間販売額比較(商業統計 2008年)

※島屋は「なんさん通り商店会」、大丸、そごうは「心斎橋筋商店街振興組合」に含まれている

図ー2 過去1年間の商業施設利用率 女性20歳代と60歳代の比較  (なにわ考現学2005)より


■梅田周辺専門店と回遊導線の変化

 大阪駅北ビル「ノースゲートビルディング」の開業による回遊導線の変化

 大阪駅ビルには伊勢丹三越5万uと専門店2万uが予定されています。専門店は20〜30代前半のアラサーをターゲットとした200のテナントとシネマコンプレックスが入居します。
 百貨店以外の専門店は現状では西梅田は大人をターゲットにしたエリアですので大阪駅とはバッティングしません。影響を受けるのはHEPファイブです。いわゆる駅ビルの客層、価格帯をある程度の規模をもって取り組んでいる商業施設は梅田地区では欠落している部分です。かつてはミナミと棲み分けしていた部分です。エスト1〜HEPファイブが受け皿になっていますが、駅ビルに2万uで集積すれば、20代の若い子のながれは変わるでしょう。現在、この年代層は飲食店も梅田界隈ではヨドバシカメラの上層階にながれています。(阪急東通りとは夜の街でかつ治安にも不安があります)

 ノースゲートビル〜ヨドバシといった大阪駅周辺での回遊が多くなると想定されます。阪急村といわれる阪急の駅周辺では「阪急三番街」の再構築と、茶屋町での若者の集積のパワーアップが必要であると思います。百貨店の競合については阪急百貨店の増床と阪急阪神の連携である程度の勝算はあるでしょうが、ターミナルでの商業の競争は百貨店業態だけの競争ではないので、まちづくりの主導権を握り続けるには課題が残ります。

 梅田北ヤード地区の商業施設は?

 起工式が行われた梅田北ヤード地区ですが、商業、ホテルの中身が明らかにされていません。サーッカースタジアムの構想もあるようですが基本的にはショールーム、オフィスが中心になると思われます。商業のターゲットは若者よりはオフィスワーカーが中心になります。現在の梅田の回遊導線はJR〜地下鉄〜阪急が中心ですから、現状の回遊同線から少し離れる立地になります。

 新しい駅などの計画もあるようですが、流動者数から考えると、桜橋のブリーゼブリーゼや淀屋橋のオドナ程度のポテンシャルを想定して置いた方がいいでしょう。つまり、近隣のオフィスワーカーの利用が中心で広い集客は想定できないものになると思います。〜就業人口2万人ですから来街者数は5万人程度と考えられます。計画では10万人ですけれどね。

 開業1年で年間53,00万人突破・・・目標の1日10万人の1.5倍の平均15万人の来街者が記録されています。・・・・オフィス入居率は5割と言われていますから、ショップ&レストランやナレッジキャピタルが「百貨店」なみの集客を実現したということですね。(JR大阪三越伊勢丹3,010万人、ルクア4,000万人)商業施設が大健闘したと言えます。2014年

 
スタジアムをつくっても商業施設のお客さんにはなりません。住宅とオフィスの周辺の利用者を対象にするのが理屈にあった身の丈(商業規模)であるべきと考えます。

 百貨店戦争ばかりがクローズアップされますが、トータルの商業床が増えても、結果的に棲み分けることで落ち着くのでしょう。残念ながらキタへの一極集中というほどの魅力アップになるかどうかは何ともいえません。

                                                                            (2010年04月19日)
図 梅田周辺商業集積の売場面積と年間販売額(左:年間販売額 右:売場面積)  ※阪急阪神及び梅田大丸、大阪駅はひとつの集積にまとめて集計されているため図からは割愛 表参照


(商業統計 2008年 商業集積地別集計から抽出)

年間商品販売額(百万円) 売場面積(u)
阪急村 阪急32番街 1,767 1,143
阪急17番街 3,492 2,328
阪急三番街 34,153 17,104
ナビオ阪急 7,243 8,421
HEP FIVE 27,680 13,690
Nu CHAYAMACHI 7,643 7,391
茶屋町アプローズ周辺 18,713 11,594
阪急かっぱ横丁 769 876
ウメチカ ウメダ地下センター商店街 11,415 5,641
中心大型店 阪急百貨店及び阪神百貨店及びアクティ大阪及び大阪駅構内 388,364 152,088
大阪駅周辺 大阪駅前地下街 1,817 455
新梅田食堂街 345 83
エスト1番街 11,728 5,403
新梅田シティ 1,201 899
ヨドバシカメラ 111,180 42,458
西梅田 ダイヤモンド地下街 8,093 4,215
ヒルトン プラザ テナント会 6,250 4,983
ハービス大阪 2,593 2,333
ハービスENT.ヒルトンプラザウエスト 15,858 12,070
大阪マルビル商店会 3,337 2,352
大阪駅前ビル 大阪駅前第一ビル振興会 4,774 2,768
大阪駅前第二ビル振興会 4,059 3,464
大阪駅前第三ビル振興会 5,257 4,889
大阪駅前第4ビル振興会 7,296 2,820


■景気回復が立ち後れている大阪に2つのハイクラスホテルが開業

  セントレジスホテル大阪10月1日開業

 御堂筋本町に開業する「セントレジスホテル大阪」のサービス概要が発表されました。
 1泊5.5万円〜6.5万円の客室の他スイートルームが15万円〜80万円の4タイプ。2人までなら1室料金で利用できますからかなり、国際クラスのホテルとしてはお得な価格設定です。エグゼクティブフロアの設置、チャペルの建設はとりやめたそうです。(産経新聞3月25日の記事から)
 スターウッドグループの最高級ホテルにしては価格設定を手堅く押さえた内容です。リーマンショック前の東京の高級ホテルの設定が高すぎるというだけなのですが。

 大阪府下初の国際サービスアパートメント

 同じく、今年の秋には南海電鉄が難波の南海ホテル跡にインターナショナルサービスアパートメント&ホテルの「フレイザーレジデンス南海大阪」を開業します。114室の客室でターゲットは国内外のビジネストラベラー、レジャートラベラーだということです。広い客室にコストパフォマンスの高いサービスでファミリー層の吸引も狙っています。


 大阪の場合、欧米のビジネスマンの利用というよりアジアの観光客が中心になると考えられます。以前、台湾の事業化をアテンドしたことがありますが、お金はあっても1台のタクシーに5人の人が乗り込もうとする、合理性があります。サービスアパートメントの柔軟な使い勝手は評価していただけるのではないかと思います。


 薄日が差しているといわれている景気動向ですが、大阪だけはまだまだ回復基調が見られないといわれています。どん底の時期に堅実に計画されていれば、景気回復の時期にはしっかり利益をあげていけるはずです。

 関西を元気にするためにも国際クラスのホテルの開業は楽しみなニュースではあります。

                                             (2010年04月16日)
■小売りチャネルの多様化が変える生活空間の選択

 小売りチャネルの多様化

 商業統計にあらわれる「小売り販売」のシェアで店舗販売のウェイトは高まっている。(94年75.5%→07年82.8%)減少しているのは訪問販売(12.5%→6.2%)、協同購入であるといわれています。

 一方で店舗数自体は減少していますから、広域を商圏とする大型店に集約されてきていると考えられます。その為特に地方では高齢化が進んでいるため、大型店にでかけられない高齢者や、人口が減少している限界集落の住人を対象にした「移動販売・仮設店舗」に注目が集まっています。

山村の限界集落に移動コンビニ  2008年 鳥取江府町 ローソンと提携した移動販売
http://www.47news.jp/CN/200804/CN2008042301000217.html へのリンク


 コンビニの店舗があるというのも、都市部では当たり前でも地方に行けば大変な事です。街のランドマークにもなります。コンビニの他の商店がなくなってしまった地域で、」コンビニの駐車場に週3回決まった時間に鮮魚の移動販売の店舗を呼んで好評をはくしているという事例もあります。(鳥取県南部町 ローソン南部会見店)鳥取ですから境港直送の鮮度のいい魚が入手できるというのは魅力ですね、。

 都市部においても、一部のニュータウン、団地で、地区センターの商店が撤退し、日常の買い物の便が悪くなっている地域があります。用途の規制があるため自由な出店が出来ないので、相対的に物価も高くなります。
 ニュータウンの団地でも野菜や鮮魚の移動販売が多くの利用者を集めています。「限界団地」というべき高齢化、過疎化が進む団地も今後増えてくるでしょう。

 都市部ではネットスーパーとまではいいませんが、お買い上げ品の無料宅配は必須になります。そのサービスがない住宅地には「住めなく」なります。

 通販の販売額は増加

 国土が広大で通販でなければモノが選べない?アメリカと違い、日本ではあまり急激には伸びていなかった通信販売ですが、99年には2兆2,700億円だった市場規模は08年には4兆1,400億円と倍近い伸びを示しています。(日本通信販売協会)
 セシールや千趣会と言った総合通販、ファッション商品は比較的関西や関東の都市圏に多く、食料品や素材を活かした化粧品などは地方の企業が強みを持っています。

 特に九州地区では94年小売りシェア1.7%が07年には3.4%まで伸びています。地元の産品を使っている産地直送の強みといえます。また全国的に知名度の高い「ジャパネットたかた」も長崎の企業です。

  地方発の商品を全国に販売するのに、通販、ネット通販は有効な手段です。生産者と販売者が近い場所にあることで訴求できるメリットも数多くあります。地方のプライド、雇用を生む出すという意味でもこれからますます伸びていくと思われます。

 逆に都市から通販で購入できるファッションや、書籍,CDは都市から地方への移住者の文化的なモノニーズに応えてくれて、定住者を増やしていける要素になるかも知れません。雑誌の多くは東京や大阪といった都市部でしか入手できないことを都会の人間は実感として理解できないのです。そのことに直面すると愕然としていたはずです。
                                              (2010年4月15日)
■ニュータウン立地の郊外百貨店 パワー比較から

 ニュータウンの高齢化と百貨店の課題

 昭和40年代以降に開発された郊外のニュータウンは高齢化の進行が深刻な課題であると言われています。郊外住宅地の中心に立地している郊外百貨店の3km圏の高齢化率を比較してみると。確かに須磨ニュータウンの中心にある須磨大丸や泉北ニュータウンの中心の泉北島屋、周辺に公団の団地が多く存在する北花田阪急の高齢化率(世帯に占める65才以上世帯の割合)は33%と他の地域に比べて高くなっています。

 大規模ニュータウンの代表的な事例である千里ニュータウンの中心にある千里阪急の3km圏では意外に高齢化率が低くなっています。

 都市計画論の格好の題材である千里ニュータウンの高齢化は、新聞でもたびたび取り上げられます。私たちはついそのエリアでは高齢化が進んでいると思いがちですが、商業の商圏として分析すると、間違えてしまいます。

 近年、駅近くの集合住宅が次々に建て替えられてきており、30〜40歳代の子育て世代の流入が増えている。ニュータウンの中でも駅周辺だけは大きく市場構造が変化してきているのです。

 ニュータウンの課題は建て替えが進んでいない公営住宅、賃貸住宅の更新と一戸建て住宅の世代交代の促進です。千里周辺の古くからの高級住宅地(緑が丘、上野坂)ではそれなりのコミュニティも形成され、たたずまいも維持されていますが、ニュータウン内の戸建てはうまく世代交代が進んでいないように思えます。
 居住者の高齢化が進む公営住宅も、建て替えには時間がかかるでしょう。駅チカの物件は手数をかけても採算がとれるので、郊外と言うより準都心的な高層住宅群となっていきます。

 ニュータウンの変化に対応できない千里阪急のジレンマ

 かつては郊外店の中でも非常に効率の高い店舗で知られていた千里阪急ですが、商圏の環境変化に対応できているとはいえません。

 千里大丸プラザ(旧大丸ピーコック千里中央店)が50代ミセスとその娘の層に照準をあてて改装しましたが時期が早すぎた(建て替えで新住民層が流入する前)で失敗してしまい、ユニクロ,GAPといった専門店の導入とおばちゃん向けの婦人服にシフトした先例もあり、いまだに効率が良すぎて動けない・・・その中でじりじり売り上げが低下しているというジレンマを抱えています。その後ヤングミセス向けの「オトカリテ」に業態転換。食料品売場はイオンに売却されました。

 手前どものような貧乏タレと富裕層が混在しており、焦点が絞れないのだと思います。本気を出したらできる子なんですけれどね・・・
  
 市場の密度は低いが郊外型の広範囲の集客をはかる泉北島屋

 千里ニュータウンより遅れた時期に開発が始まった大阪南部の堺市を中心とした「泉北ニュータウン」の状況は千里より深刻かも知れません。高齢化が進む中で新しい住民層の流入が少ない。大阪都心に直結している千里に比べて乗り換えが発生し、交通の便に難がある泉北ニュータウンは、特に駅から離れた地区を中心に空き家が増えています。

 泉北高速鉄道泉ヶ丘駅前に立地する泉北島屋は、足元3km圏の世帯数や、高額所得者数は少ないものの、売上は健闘しています。売場面積、駐車場も一定の規模があり、専門店についても商業デベロッパー(東神開発)の管理がきちんとしているために、ニュータウンの中心センターでありながら、郊外SCとしての吸引力を持っているいえます。

 千里中央地区の専門店は、最近阪急電鉄系のPM会社が管理していますが、ながらく3セクの管理であっただけに地区全体の魅力作りが遅れているという違いもあります。

 阪神間はやはり富裕層が多い

 西宮阪急の3km圏、芦屋大丸の3km圏は年収1,000万円以上の富裕層が多いせいか規模と比較するとよく売れているお店だと思います。(西宮阪急はもっと売れるポテンシャルがあると思います)

                                       (2010年04月14日)
図ー1 郊外百貨店3km圏の高齢世帯比率



図ー2 郊外百貨店の売上げ(目盛は左・棒グラフ:百万円)と3km圏の世帯数(目盛りは右:折れ線グラフ:世帯)


図ー3 郊外百貨店の売上げ((目盛りは左:百万円)3km圏の年収1,000万円以上の高額所得者数(世帯)
     世帯数に占める高額所得者率(目盛りは右:%)

■「土地のグランプリ」にあらわれている「不動産業界」視点の落とし穴

 マンション買うなら借りるならどの街が幸せか

 セオリーというMOOK本が定期的に住宅地の格付けをまとめた本を発表しています。東京の出版社ですから関東には土地勘があっても関西地区については土地勘がないせいでしょうか、地元の人間の実感と違った評価が掲載されているのが興味深いので良く読みます。

 なんでやねんと突っ込みをいれて読むのが正しい楽しみ方です。

 何故、そのようなギャップがうまれるのか考えていたのですが、土地価格というのが取引事例から算定されるように、いくらで売買されたという「過去の事例」が最大の評価ポイントになっているのだと気がつきました。

 従って、取引事例の少ない「千里ニュータウン」などは今までランクインしたことがなかったのですが、最近供給が増えてきたせいか急に上位にランクインされるようになっています。

 評価は「市場」が行う・・・・「市場原理主義」というシステムなのでしょうか。住んでいる人が愛着を持っていて絶対に手放さないという地域は決して上位に上がってきません。何か変ですね。少なくとも表紙に謳っている「どの街が幸せか」とは違った基準での評価を行っているわけです。

 マーケティング発想が業界の中でぬきんでるポイント

 マーケティングが企業行動の中で重視されていない業界に限って、他社の数字といったあまり将来につながらない「情報」を求めます。気休めですね。

 お客さんが幸せになる立地条件は実はひとつの基準でははかれません。ライフステージによっても変化します。
取引事例も確かに重要な要素ではありますが、お客さんを幸せにする住まいを提供したいと考えるならそれだけではだめです。業界の中でその発想がないのであれば、それをやれた企業が抜きんでた企業になることが出来ます。

 デベロッパーさんの集まりでお話しすることもありますが、担当者は多忙でそこまでのミッションを意識したことがないようです。これは経営者の課題といえます。
                                           (2010年04月13日)
■若い女性に利便性・快適性が評価されているJR〜駅の強みが突破口になるか

 鉄道イメージの中で唯一「阪急」を上回っているのがJR

 イメージ調査では、圧倒的に阪急が他を引き離しているのですが、「駅の利便性・快適性」への評価では、唯一異変があります。JR環状線の評価が特に20代、30代の女性で高くなっているのです。大阪市内通勤者への調査ですので、ここでいう「駅」とは大阪駅または天王寺駅の事であると考えられます。とはいえ、JR西日本は一時かなり力を入れて駅の環境整備を行っていました。

 大阪駅では有料のパウダールームを導入するなど女性向けの対策に力を入れています。かつて利用されていなかった駅構内での飲食や物販店の開発整備にも熱心です。駅と直結した駅ビルの開発も進んできているので、そのターゲット層である若い女性に評価されています。

 その評価は鉄道への好感度にはつながりませんが、ターミナルでの存在感は強みになります。阪急、阪神の梅田駅からは若い層を対象とした専門店ビルは少し離れてしまいます。


 特にJRの利用者に関しては、新しい大阪駅は若い層を対象にした駅ビルは、間違いなく成功するでしょう。JR大阪駅全体の商業施設はそこからどれだけ客層を拡げられるかが課題です。今のままでは、百貨店が利益をあげるには一定の時間がかかるでしょう。

                                              (2010年04月12日)
図ー利便性・快適性の高い駅が多い鉄道  (大阪市内通勤者)

  (なにわ考現学05)
■「大阪百貨店戦争」という「祭」が終わった後の「百貨店」の役割と三越伊勢丹への期待

 「大阪百貨店戦争」を面白く取り上げる東京のマスコミ

 東京に住んでいる人間にとって、関西の話題には全く関心がない・・・というのはまあごく自然な気持ちの持ちようでしょう。いくらまじめに関西の情報発信をしても、あまり取り上げていただけない。検索しても関西の話題は新聞の地方版にしか取り上げられていません。

 その中で、2011年問題、大阪百貨店戦争については日経流通新聞や雑誌などでも繰り返し報道されています。百貨店業界の衰退について語られる文脈の中で必ず引き合いに出されますから、大阪を取り上げてもらうには格好のコンテンツなのかも知れません。

 かつて大丸梅田店が出店したときも「梅田百貨店戦争」というニュースで盛り上がりました。変化はあるでしょうが、駄目になる店があるとしたら、競争相手が増えたから駄目になるのではなく、市場の変化に対応できないから駄目になるのです。

 私はこの「「祭」は関西活性化の動きを広報するチャンスだと思っています。また競争が激しくなる百貨店が生き残るために変わる方向性の中に、関西活性化を促進するネタが仕込めると思っています。

 JR大阪三越伊勢丹を利用できる可能性

 ここで、三越伊勢丹について厳しい意見を述べているのは、極論の形であれ「事実」を認識して欲しかったからです。

 いくら市場調査を重ねても、トップには本当に耳の痛い意見は伝わりません。
 (これはいくつも経験しています。市場調査を直接トップに報告しない限り、途中で無害化され、丸められてしまいます)しっかりとシビアに考えないと、地域に排除されたという被害妄想を抱えて撤退することになります。

 JRと三越伊勢丹が組むことは、関西の住民にとっては利用価値は高いのです。

 JR大阪三越伊勢丹の特徴


 現在発表されている情報では、衣料品から雑貨、食品までフルラインを揃えた百貨店ですが、「アイテムごとにかなりの規模にしたい」とのことで、特定分野の商品を集積することで独自性をアピールしたいということです。
 
 伊勢丹の強みである化粧品売場を強化、阪急梅田本店に負けない品揃えを行います。また6階では三越の強みである美術工芸品を1フロアで展開する予定です。全国の有名画家の作品を集め、文化催事場を併設します。そこでは、西日本を中心とした芸術家の文化展などを開催する予定になっています。

 活用の可能性

 JRは、私鉄に比べて沿線とのつながりが薄いのですが、少し広い地域に対して大阪を紹介したりする集客の為の活動は積極的です。また、鳥取や福井方面、和歌山、または中国地方からのアクセスはJRになりますので積極的に集客をはかっていただけると関西全体の人の流れが活性化していきます。
 また、百貨店が地域物産展を行うときに出店している地域の物産展を行うことが多いのです。

 東京にに旗艦店を持つ、伊勢丹、三越が東京の店で大阪や関西地区の物産催事を開始してくれれば大きなプラスになります。

 梅田地区の百貨店の全体のパイは大きく膨らむことはないでしょう。それなりの売上規模で成立する変化が求められるかも知れません。それでもこの変化は「関西の活性化」「百貨店業態体の活性化」につながっていく変化だと前向きに考える必要があります。
 
 開業後の動向はほぼ当社の予測通りです。
                                         (2010年04月09日)
■情報発信コストが大きくコストダウンしたことで発信の中身が勝負になる

 アイフォーンで自宅の部屋に家具が出現?「拡張現実」でインテリアの売り方が変わる?

 欧州で配布されているイケアのカタログにはARマーカー(コードが印刷されたシート)が入っていて、自宅の部屋にそのシートを置いてiphonで覗くと、その映像の中に家具が出現するという仕組みができあがっているそうです。(販促会議2010年5月号p53の記事)

 自分の部屋で色々なインテリア家具を置いた状態を試してみることが出来るのでこれはかなり強力な販促ツールになります。家具とかカーテン、カーペットのインテリアは店頭で見ていいと思っても自宅に置くと印象が違ったりします。どの位の精度なのか試してみないとわかりませんが、面白い活用ができそうです。

 情報発信コストが大きく変わる

 当社は、「IT」ブームには批判的でした。流行言葉「WEB2.0」「クラウド」「ビッグデータ」等々WEBや高価なシステム導入で問題がすべて解決するという安直な発想には、はっきりと異議申し立てを行いたいと考えています。

 ただ、近年の通信環境の変化には情報発信コストの飛躍的な低下によって、発信に投下した資本より、発信内容によって勝負がつくという、いい競争環境が形成されてきたと思っています。
 知恵で勝負できる部分が大きくなっている・・・しかも新しい通信手段、例えばツィッターは一部のマニア層だけでなく幅広い層(の中でも利用者と費利用者の差はありますが)に利用されているという点に、今後の可能性を感じます。

 以前にも触れました「セカイカメラ」による街の歴史情報の発信や、ユーストリームなどを使った簡便な生中継など・・・。

 大阪商工会議所は、大阪スタイリングエキスポを10月に開催します。ファッションを基点に住、食の分野まで「OSAKA STYLING」の切り口で国内外に発信するものです。シンポジウム、デザインコンテスト、百貨店での展示などが中心になるようです。・・・おそらく、間違いなく東京のマスコミの扱いは小さいでしょう。地元テレビ局もそんなに熱心ではないかもしれません。広告費にお金をかけるなら、イベントの内容や発信内容に工夫をして自分たちで発信していくことをおすすめします。

 京都大学の先生の論文で大阪と東京のマスコミ情報発信量の対比がまとめられています

 新聞   東京76%:大阪9.4% (全国5大紙 どこで記事が書かれたか)
 テレビ  東京発81%:大阪発9%(民放)  大阪発の情報が10%を超える府県=6府県
 テレビ  東京95%:大阪 2% (NHK)
 雑誌   東京89%:大阪2%(定期刊行物出荷額)
 海外マスメディアによる発信量 東京85%:京阪神3市 3%)


 以前、AERAの記者の方の取材を受けた事があります。その方は関西のネタをおもしろがって下さり、定期掲載したいように言われていましたが、デスクの判断では没になったと聞きます。ニュースバリューがないのでしょうね・・・確かに東京に住んでいたら関心ないでしょう。

 もちろん関西は官民一体となった東京や世界への既存マスメディアへの広報活動は必要です。ただ、少ない予算を大手広告代理店の売上げにするぐらいなら、自前で情報発信を強化していくことの方が費用対効果が高いです。

 関西には歴史資源が豊富です。その気になればコンテンツはいくらでも発掘できます。顔の見えにくい「放送メデァ」より「通信」から広がるメデァの方が「人の魅力」が強みの大阪のアピールにもつながります。

                                               (2010年4月8日)

■利用されていても愛されない鉄道とは

 関西地区では圧倒的に高い阪急沿線のイメージ

 利用されていれば、ある程度の「愛着」は獲得できます。百貨店と違い交通手段はほとんど選べないので、利用が愛着につながるとは限りません。

 長年にわたって関西のイメージ調査を行ってきましたが、鉄道イメージに関しては「阪急」の独りがち状態です。他社は車両や駅舎を整備しても中々イメージにはつながらなかったようです。阪神間の高級住宅地のイメージは阪急神戸線が総取りして高い好感度につながっています。

 「おけいはん」戦略の成功

 その中でイメージの改善に成功しているのは京阪電鉄です。2000年からCMのイメージキャラクターとして登場させている「おけいはん」は沿線に住む架空のキャラクターの女性で、現在は4代目だそうです。
 沿線の観光スポットをキャラクターが探索するなど、沿線案内と住民イメージを体現したモノです。

 下図にあるように、沿線の住民層のイメージが鉄道のイメージと高い相関関係があります。

 阪神タイガースという全国ブランドを持つ阪神でさえ、利用率と好意率のギャップがあるなかで、京阪のギャップ解消には注目されます。〜京阪電鉄の沿線利用者にも「イメージ評価」は低かったんですよ。

 その意味ではイメージ戦略としては成功した事例と考えていいでしょう。

                                                   (2010年04月07日)

図ーいつも利用している鉄道、好きな鉄道


(なにわ考現学2005)
図ー2 鉄道沿線イメージ

■レクサスとナガシマリゾート

 年間利用者数1,140万人 中部圏の一大リゾート集積「ナガシマリゾート」

 「ナガシマリゾート」は三重県桑名市の木曽川の河口部に長島温泉を中心に。遊園地、温浴施設、「なばなの里」(植物園+レストラン)、「ジャズドリーム」(店舗面積3万uのアウトレットモール)の集積です。

 遊園地にしても温泉にしても植物園してもこれでもかこれでもかという位てんこもりに「機能」が集積されています。2006年度の入場者数は1140万人と遊園地では最大です。(「なばなの里」「ジャズドリーム」を含まない05年度の入場者数でも778万人と、その年2位の東京ドームシティの720万人を上回っています)(ちなみに「ジャズドリーム長島単体の年間入場者数は800万人で軽井沢のプリンスショッピングプラザの850万人と肩を並べます)

 機能の多彩さと利用料金のお得感のわりに、日本全国での注目度が低いのは何故でしょう。一生懸命「いいもの」をかき集めて沢山提供しているのに「不当に」評価が低いのは、トヨタのレクサスに似ているように思います。

 物作りの担い手が考える「いい商品」と世間の評価のギャップ

 もの作りをされるかたに共通してある志向パターンは、「いいもの」をつくれば必ず理解される・・・という信念です。中京圏を商圏とする「ナガシマリゾート」にも3次産業でありながら、2次産業的な価値観が色濃くでている様な気がするのは、地域気質に対する偏見でしょうか?

 温泉には、沢山の露天風呂があります。「なばなの里」には沢山の花が手入れされています。遊園地には沢山の「高機能」な遊具が整備されています。

 レクサスが機能に比べてベンツなどとの比較で「不当」に低く評価されているのは何故でしょうか・・・。

 何でも揃う「ナガシマリゾート」に一つだけ欠落しているモノがありました。小ずるいネズミや、間抜けな犬、無表情な猫のようなキャラクター商品が皆無なのです。(少しだけウサギがいましたが)ソフトで不可価値をつけよう、物販で利益をあげようといった事を切り捨てた潔さ?が全体を通底しています。う〜ん。

 もっと、「ソフト」で価値をうみだそうとしてもいいんじゃないですか?と利にさとい関西人は思います。中京圏はもっと関西と仲良くしたら(いやでしょうけど)グローバルにもっとステイタスがあがるのに、もったいないなあ。

                                                   (2010年4月6日)

  
■「親密さ」をつくる戦略

 CRMの誤解

 カスタマーリレーションシップマーケティングという戦略があります。教科書的にいえば、新しい顧客を獲得するコストより、既存の利用者から売上を上げる方がコストが安く効果が上がるという考え方をベースに、購買履歴の分析からそのお客様にあっった商品、サービスの組みあわせを読み取り、売場やダイレクトメールに反映させたり、購買額に応じたポイント付与や割引額のインセンティブを与えることで、お客様を囲い込もうというものです。

 分析手法などの研究は進んでいて、面白い結果も読み取れるのですが、実際のアクションとしては、ダイレクトメール送付のら宛名ラベル打ち出しか、ポイント付与や、割引のランク付けなどの「お得感」のインセンティブに使われる事が多いようです。

 成功している単品通販のスタディを集中的に続けて気がついたのは上記のやり方は「本末転倒」であり、アプローチが間違っていると言うことです。

 成功している単品通販の企業が送るダイレクトメールの目的は、「顧客との親密さの創造」です。手書きの近況レポートや、生産の現場を見せる情報が中心で、その中に商品の紹介も入っている・・・。
 お客様との良好な関係作りの為に、お客様データがありその分析があるはずなのですが、つい「価格訴求」の誘惑に負けてしまうと、ポイントの大盤振る舞いとなりダンピング競争が始まってしまいます。

 今まで手段(顧客行動分析、利益貢献度に応じたインセンティブ)と目的(顧客との親密性、ファン作り)を取り違えて議論を続けてきたのではないかと思います。

 よく利用する百貨店が好きな百貨店

 全国各地で百貨店についての消費者調査を続けてきました。「好きな百貨店」「よく利用する百貨店」の名前を挙げてもらうと、「好きな百貨店」は「利用する百貨店」の中から選ばれます。「よく利用するけれど好きな百貨店ではない」ケースは存在しますが、「あまり利用しないけれど好きな百貨店である」というケースはほとんど存在しません。・・・・日常の利用が「親密感」を形成し、「好感度」のベースになります。

 関西の百貨店が食料品に力を入れている理由の一つはそこにあります。

 地方の百貨店と全国展開する有名百貨店が競合して、どうしてこんな店に負けるのかと、外部の人間が誰でも思うような地方百貨店が残り、有名店が閉鎖される事も起こったりするのです。

 ちなみに下図は少し古いデータですが、大阪市内通勤者に聞いた「嫌いな百貨店」のワースト3です。北浜にあった旧三越は「三越劇場」の文化催事はよく利用させてもらい、個人的には大好きな百貨店だったのですが、30〜40代の女性、60代の女性で「嫌い」ポイントが高くなっています。

 ビジネス街立地であり利用する機会が無かったので、百貨店利用の多いこれらの層の行動権から離れており「親密感」が形成されないまま終わったのだと推測されます。小さいけれど悪い店では無かったのですが・・・。

 もちろん地方には、不満を持たれつつ、しかたなく利用されている「百貨店」もありましたが、そんな店は逆に対策を講じればすぐに効果がでたものです。
]
 「親密さ」をつくるツールとしてのツィッターの有効性

 ツィッターに注目が集まっています。最近のスマートフォンの普及で一気に火がついた感じがします。つぶやいている人をフォローしていると、有名人でも意外な側面があらわになります。意外といい人とかいう発見もあります。

 社内のスタッフとの意思疎通に悩む経営者にはお勧めします。

 関西の情報発信についても中央のマスメディアが取り上げてくれることは絶望的に難しいです。顔を合わせないでも親密なやりとりが出来るこのようなメディアもうまく活用できるのではないかと思います。HPをまめに更新するのがにがてな方も簡単に更新できます。

                                                  (2010年04月05日)

 図ー嫌いな百貨店(市内ワースト3)    なにわ考現学05


※三越大阪店は北浜にあった旧大阪店
■大阪流通業の近未来予測へのもう一つのアプローチ

 今後10年間の変化に関しての仮説

 
 基本的な市場ボリュームの変化

 関西圏の人口は、3大都市の都市圏の中でも唯一長期低落傾向にありました。今後の伸びですが、工場三法の制約を外れて大阪湾岸の「グリーンベイ」の工場・研究所立地促進や学費負担が厳しい中での学生の東京流出の抑制などで減少傾向は緩和される見通しです。
 ただし、全国的に少子高齢化が進んでいる中で、市場ボリュームは縮小傾向にはあることは間違いないです。
(人口問題研究所の予測は過去の傾向の延長で推計しますから、特に市町村レベルでは変化の時期には正確性が落ちます)

 都心回帰傾向は継続します。若い人多くの居住地選択は利便性を重視します。いわゆる郊外住宅居住者は減少します。都心の高層タワーマンションの供給は一段落しますが、交通の利便性の良い立地での住宅供給は続くだろうと考えます。ただし、その交通アクセス経路従来のようにターミナルに集中するものとは限りません。梅田や難波などのターミナルを通らない鉄道路線で市内に入るルートができると、ターミナルを通らずにそちらを選ぶ人が意外に多いのです。

 観光客、特にアジアからの観光客は今後10年間は増加し、その購買力は都心の商業に大きな影響を与えます。現在、観光客はミナミを利用する人が多いです。団体客が迷子になりにくいとか、バスを止める場所があるとかいった理由が考えられます。今後、個人客が増えれば、キタの利用が増えると考えられます。(迷路のような地下街に、案内サインの整備が必要です)

 人の動きの変化

 大きく見れば、自家用車の利用は減っていくかも知れません。ただし、現在のキタ、ミナミでには駐車場は不足しており、駐車場の整備が集客にプラスになります。(阪神間居住の富裕層は都心でも車で移動します。市内でも福島とかターミナル周縁部での集客には路駐がしやすいとか駐車場が見つけやすいと言った背景があります)

 阪神なんば線の好調で運行本数が増えれば、沿線の大型開発(ドーム前)とあいまって既存のターミナルを通らない人の流れが増えていきます。
 WTCへの府庁の移転が実現すれば南港コスモスクエアも活性化します。

 団塊世代がリタイアし、都心への通勤人口は減少します。活動的な高齢者は家に引きこもるのでなく移動しますが、動き方は多様化します。

 効率的に動くときには選択されるターミナルの利用率はシェアを下げていくと見ています。

 消費行動の変化

 大量生産品の大量消費には各世代で飽きられています。この10年間で国内がバブルになることはないでしょうから、どこで買っても同じ商品は価格で選択されるでしょう。ただ、趣味やレジャー、アンチエイジングに関連する商品は「低価格」だけが判断基準となることはないでしょう。

 時間消費、コト消費と呼ばれているモノ、ファッションでも雑貨関係が伸びています。これらの消費で収益をあげるには長い時間の中で収支を考える必要があります。高い坪効率を求められる都心ターミナル立地ではなかなか思い切った展開が出来ないのです。

 都心ターミナルでしか展開できない高付加価値の商品は、今後WEBとの競合が激しくなると予測しています。。

 これらはの仮説を突き詰めて10年後の市場ボリュームを見た上で、立地、業態の力関係を予測すると、自社の戦略を立てるのに役に立つ分析ができます。

                                (2010年04月02日)

 予測はあくまでも現時点での情報に制約されます。結果が当たらないこともよくあります。ただ、自社が、先を考えるときに、どんな要素を説明変数として選択するのか、その中で何を重要と考えるのかを検討するプロセスはきっと経営の役にたつはずです。


大阪流通業の未来予測作業ステップ



■実務家の為の「大阪流通業界の近未来予想」の読み方

 大阪商工会議所が発表した3大ターミナルの集客予想

 大阪商工会議所と言えば「大阪都市圏買い物動向調査」を定期的に刊行され、基本データとして大変重宝して使わせていただきました。

調査は1996年以来途絶えていて、商工会議所としての小売業の為の情報発信もあまりなかったのですが、3月30日に「大阪流通業の近未来予測調査研究会」から「大阪流通業の近未来予想調査研究」が発表されました。

 2011年問題が話題になる中、大阪の3大ターミナルの集客予想をまとめるという、タイムリーな企画で、注目される分析だと思います。。

 3大ターミナルの買い物客数は2004年の870万人から、2020年には951万人へと約9%増加するそうです。キタは507万人(プラス19%)、ミナミは287万人(マイナス9%)、天王寺・あべのは156万人(プラス24%)とキタは好調ですがミナミの地盤沈下が進むということです。

 販売額換算でキタは17%増。ミナミは10%減。天王寺・あべのは22%増。

 65才以上の高齢者は買い物客の3割となることが予想されています。

 詳細は文末につけたアドレスをクリックしていただけば、大商のサイトで公開されています。

 大商が提言する今後の取り組み案は以下の3つに集約されています。

 @国内外からの誘客の推進
 A商業機能の多様性の維持・推進〜商店街の振興・活性化〜
 B「まちとの融合」を通じた商業活性化〜エリアごとの個性を育み、創造する〜

 提言についてはまったく異論はありません。

 実務家の為の調査結果の読み方

 この調査結果については、きちんと筋道をたてたものですし、一つの学術的な見識として尊重されるべき立派なものです。但し、実務家としては活用に一工夫を加えたいところです。
 
 小売業の経営企画スタッフで、上司に中期計画を求められているのなら、この数字をコピペするのではなく(その方が社内稟議も楽なのですが)もう少し踏み込んだ分析が必要です。


 この予測は修正ハフモデルに基づいて予測されています。この手法は郊外SCの出店にはよく使用されていますが、都心店の売上予測には、あまり使われません。
 基本的な考え方は商業集積の魅力度と住居からの距離で利用先を配分するのですが、都心店の場合、商業集積のくくり方と距離設定(車での時間距離、電車での時間距離)が複雑になり、考え方を変えると数値ががらりと変わってしまいます。
 (できれば、このレポートも試算の元データを公開して下さると、利用者が色々と試算できて、さらに有益な役に立つ資料となったのですが)

 次に上げる視点を加えて自社の立場で予測をされることをお勧めします。

 ・都心への流入手段の分担率の予測。(鉄道路線の新設も織り込んで)
  〜3月17日の当社記事も参考にしてください。

 ・「観光客」の購買行動の予測スタディ
  百貨店商品に関しては観光客の購買行動が大きな影響を与えます。

 ・業態競合の予測
 (このレポートでは主要百貨店のトップに取材されています。それぞれ実績や見識のある方々が、今までにない市場の変化をどう考えておられるか、どう予測されているか・・・公開されていない識見はとても興味深いです。できることなら、関西から撤退される百貨店幹部のご意見やイオン、I&Yなどのデベロ ッパーご意見、や WEB販売で売上を伸ばしている若い方のご意見なども聴取して予測に織り込めばもっと素晴らしかったと思います。〜正直、百貨店業界の中で市場の変化に気がついている人は、ごくわずかです。
見えていない人に聞いても仕方が無いと考えるか、何が見えていないかを分析することに意味があるかよく考える必要があります。私は何が見えていないかに興味があります。)

 郊外対都心だけでなく,WEBとの関係、アウトレットモールとの関係など、まだまだ変化は続きます。

 ・ターミナルの優位性が今後どこまで持続するかについてのスタディ
 ターミナル立地は今まで手つかずであったので、伸びています。確実にしばらくは伸びます。ただし、商業は「変化」が必要です。ターミナル立地の商業施設のリニューアルの制約、高層化されていることでの高いリニューアルコストを考えると、10年ぐらいのサイクルで有力立地は交替していきます。
 

 これらについて、自分で資料を集めてこのレポートに加味して考えて下さい。特に百貨店の買い物客で高齢者の割合は今でも3割を軽く超えているはずです。2020年にはどうなっているか・・・。自社の業態にとって それどんな意味を持つか・・・・。

 

 レポートにけちをつける意図は毛頭ありません。(考えるためのよい材料を提供してくださいました)

 特に、今、小売業の実務レベルではこのテーマは関心が高いはずです。一般解として公開されているモノを、そのままコピペするのではなく、自社の課題、自社のポジションからきちんと再構築して活用される事が望まれます。

 大商としても会員の小売業者のために元データを公開して下さることが大事です。今後も、予算の許す限り、会員者が考えるための調査を実施し公開してください。

                                             (2010年04月01日)

http://www.osaka.cci.or.jp/Chousa_Kenkyuu_Iken/press/220330.pdf へのリンク
 
 3月
■地方の活性化に「関西」ができること

 販路拡大には関西がお手軽

 手元に1枚の古新聞があります。2009年4月20日付の高知新聞。見出しは「販路拡大 関西がお手軽と言う見出しの記事で、県外の販路開拓にはいきなり関東に出るのではなく関西で「商品」を磨いてから東京に発信するのがお得という記事です。

 関西は関東に比べて比較的商品管理がしやすく、輸送コストも割安で「商品力がつく」「納入ルートの勉強になる」と好評のようです。県が主催する商談会では「出展料と交通費を合わせても、日帰りなら5万円ですむ」というメリットもあります。

 大阪商工会議所や、大阪産業創造館地方の商材を発掘するための商談会を主催し、大手流通の仕入れ担当者と地方の業者のマッチングに力を入れています。

  農商工連携事業に国の補助金が沢山でていますが、特に地方の農業者などは「商品」に対するイメージがわきにくいので苦労することも多いです。市場に近い(都市住民が多い)、流通企業や多様な消費財メーカも多い関西は地方の活性化のためにできることは沢山あります。

 昨年地方の地場産業の方の新規商品開発に大阪市内の専門学校生のアイデアを活かすお手伝いをして、あらためて人が集まる都市がはたすべき役割を再認識しました。

 こえなければいけない行政の壁

 地方自治体の産業振興策はどうしてもエリア内の事業者が対象になります。(地域住民の税金で運営しているのですから当たり前ですが)本来は国の政策が広域の産業振興に何らかのバックアップをしてしかるべきなのですが、前例が少ないのか中々難しいところです。(大阪府の新規産業創出事業に関して国の補助金を某ルートを通して打診したのですが、けんもほろろの扱いを受けました)

 橋下知事の「関西州」構想には期待していたのですが、最近おっしゃっている「大阪都」についてはイメージも不明で、意味がまだわかりません。東京の真似をするのならそれはちがうでしょうね。

 電気自動車は世界に売れる商品

 米子の会社と京都のベンチャー企業が一緒になって電気自動車の開発製造に着手したというニュースが発表されました。

http://www.excite.co.jp/News/it/20100323/Jic_20100323_019.html へのリンク


 関西発で東京進出を目指すのではなく、関西発で成長市場のアジアに発信するという筋道が見えてきたら、着工が始まった「梅田北ヤード」が活きてくるのです。


  関西が地方のために何が出来るか、関西がアジアのために何が出来るかから考えないと、東京の亜流でしか生きられない、情けない地域になってしまいます・・・。

                                                      (2010年03月31日)                            
■イメージの中の大阪マップの世代差〜ビジネスの中心

 大阪のビジネスの中心は・・

 大阪市内に通勤するビジネスマンに聞いた大阪のビジネスの中心地のイメージです。「中之島・淀屋橋」「御堂筋本町」など大企業が立ち並ぶエリアをあげたのは30代以上の男性。それに比較して20代の男性は市内の交通の要所である梅田阪急周辺がトップになっています。

 梅田阪急周辺には現在、それほど大きな事業所は集中していません。「中心」というのを「移動」をベースに考えるか、自社あるいは代表的な大企業の所在地として考えるのか・・・世代の価値観違いなのか、役職、仕事の内容の違いなのか興味深い傾向です。24日の記事で大阪の街を自慢したいときにつれていく街の項でも見たように、特に若い男性は人の賑わいを重視するようです。

                                (2010年03月30日)
図ー大阪のビジネスの中心地は?

(なにわ考現学2005)
■大人のキッザニアになれなかった「私のしごと館」〜働くモチベーションについて

 ららぽーと甲子園のキッザニアは目標の80万人に足らず、70万人の利用者

 キッザニアという子供向けの職業体験型テーマパークがあります。子供達が実際の職業を模したミニチュアの街で体験して楽しむというモノです。メキシコ発祥で東京では年間90万人の利用者があり、テレビなどでも取り上げられています。

 昨年の3月にららぽーと甲子園に開業して1年になります。インフルエンザ騒ぎの影響もあり、目標の80万人は届かず70万人の利用者となっています。ちなみに東京のキッザニアは2006年に開業し、年間90万人の利用者があります。

  遊園地のアトラクションとは違い、予約して体験するという施設なので、高い回転率は期待できません。体験できる職業施設は各企業のスポンサーが提供しています。初期投資が抑えられますから、長期にわたる事業計画がたてられます。

 一度体験すると次は別の職業を体験したいという子供達がいますからリピーターも確保できるというビジネスモデルです。

 良く言われるのは大人版のキッザニアは出来ないのかという発想です。

 「私のしごと館」今月末閉館

 http://www.shigotokan.jp/ へのリンク

 誰もが思うのは今月で閉鎖される「私のしごと館」です。お金をかけてつくったのにもったいない話です。 公共が運営することでの制約があるのと、立地が悪いこともあり事業としては難しかったのでしょうね。
 今後、すべての大学で「キャリア教育」が義務づけられるという方針がだされています。それぞれの大学の教育方針もあるでしょうし、大学教員、大学職員のスキルの問題もあり、制度を作っても実効性のある教育訓練ができるかどうか疑問です。

 外部の就職コンサルタント会社の講師も、実はそんなにスキルは高くない人が多いのです。せいぜいマナー訓練か、型どおりの面接テクニックを教えるのが精一杯です。


 大学進学率が50%を超えている中で、少子化が進んでいるとはいえ、かつての大卒者の職業の求人はそんなに多くないのです。その中で企業がコア人材として求めているのは、表面的なテクニックではなく何のために働くかというモチベーションです。(とはいえ最低限のマナーさえ身につけていない学生も多いのですが)

 社会インフラとしての働くモチベーション

 企業が、真剣に人事制度や社員のモチベーションをあげる仕組み作りに向き合うとかなりの経営資源をそこに割くことになります。商業、レジャー、サービス、介護など人間を相手にした高度な感情コントロールが必要な仕事は社員のモチベーションが商品力、差別化の武器になるのですが、多くが中小企業なのでトップマネジメントがそちらに忙殺されると、営業が後回しになり、いい会社が出来たときには会社がたちゆかなくなるというジレンマが生まれます。しかも、トップが取り組まないと解決しない問題なのですよね。

 人材派遣事業をやっていたことがありますが、ある意味、それを金で解決する仕組みが「人材派遣」だったのです。ピンハネだけを目的とする悪質な業者が価格競争を武器に跋扈したことで、また規制が強化されましたが。本来はプロが人的なしがらみにとらわれずに働ける仕組みが「人材派遣」のあるべき姿でした。

 かつて、高級官僚だった人が冗談で「日本には安い賃金で働く外国人労働者がいないので、競争力のために安く働く層を作り上げるのだ・・・」と語っているのを聞いたことがあります。

 成長を前提としない社会の仕組みの中で働くことのモチベーションをどうつくりあげていくか・・・・大学に義務づけるだけでは解決しない問題です。年功序列制を捨ててしまった企業にもその方法論は見えていません。

                                       (2010年03月30日)

■「地域再生」と「大学再生」の鍵を握る「高齢者」活性化

 東京大学が取り組む高齢化団地「地域再生」事業

 昨年10月、東京大学が千葉県柏市、都市再生機構と共同で、急速に高齢化が進む市内の団地を舞台に地域再生事業に乗り出すと発表されました。
 1964年から賃貸が開始された「豊四季台団地」は総戸数4,666戸で、高齢化率は全国平均の23%を大きく上回る39%です。(関西の千里ニュータウンで30%、東京の多摩ニュータウンは13.7%です)独居高齢者の孤独死も少なくないようです。

 「東京大学高齢者社会総合研究機構」という学内の横断的な研究組織が研究と実践の場としてこの団地を選びました。自宅で最後まで過ごせる在宅医療システムの構築と、就労や社会貢献などを柱にした、高齢者の生きがい作りプロジェクトに取り組むそうです。具体的には野菜や果物の生産や加工流通を手がける企業を誘致し、働きながら収入が得られる仕組みをつくるとか、学生や子供も交流できる多世代交流カフェの運営等々です・・・。
 (高齢化率:人口に占める65才以上の高齢者の割合)

 前回ご紹介した「「団地再生」は技術的な面での実証実験です。都市計画、建築の観点からは社団法人「団地再生支援協会」が全国の大学生や高等専門学校の卒業生を対象に理念、計画、デザインの卒業設計を募集しています。今年、3月の締め切りの分で7回目になります。

 駅前再開発の分野でも「再開発」の再開発が必要といわれています。住宅建設も新しく開発する市場は縮小するので、時代にあった「事業分野」の開発は必至です。(商業、オフィスや工場、物流施設も変わっていくことが容易に想像できるはずです)建設業界が活路を求める海外事業も結構リスキーなようですしね。

 中国の高齢化率は2050年には30%を超える  「高齢者」活性化は未来産業

 高度成長期の日本の高齢化率は1970年で7.1%でした。中国は8.5%であるのが2020年には17%、2030年には30%になると予測されています。(人口政策によって高齢化率のスピードは落ちているそうですが、高齢化率を減少させると言うことは高齢者の人口を減らす?か、人口ボリューム全体を増やすかしかありませんから、「高齢者」の市場は拡大します)

 シニアマーケティングは「シニア」だけを考えていると間違ってしまう

 シニアの全国的なNPO団体「ニッポン・アクティブシニア・クラブ」(NALC)と一緒にシニアマーケティング普及のお手伝いをしていた時期があり、様々なシニアマーケティングのスタディをしました。結構「シニア」で失敗している企業も多いです。
 その理由は「お金持ちで」「時間持ち」であるところの「シニア世代」だけを対象にマーケティングを考えるという落とし穴にはまるからです。

  確かにそれまでの広告代理店的なマーケティングではこの世界にはF1世代しかいないような、マーケティングが行われ、あたかも存在しない人のように扱われていたことも事実ですが、「シニア」だけを考えるのではなく、3〜4割は65才以上ももいる社会全体に対してのマーケティングを創っていくことが必要だったのだと思います。

 大学も18才から20代前半の若者だけが学ぶ場から、全く別にシニア大学をつくるのではなく、幅広い世代が学べる場であり、その中にシニアも沢山いる・・・というビジネスモデルが必要です。

 ダイバーシティという概念がごく一部の領域でしか語られていないのでは事業機会を逃すことになります。

                                                    (2010年03月29日)

■島屋大阪店の好スタートと予想通りの破談

 予想以上の売上増・客数増の島屋大阪店第一期改装

 2日のオープン後、3週間の入店客数は前期比2割増、売上も2割増で、強化した婦人ファッションは面積増以上の売上の伸びを示したそうです。(繊研新聞)

 注目される5階のヤングゾーンは売場面積1.6倍に対し、売上は前年比112%増(売上倍増以上と言うことでしょうね)

 見た目の印象では、20代が35%、30代が30%、母娘での来店が35%だそうです。ヤングをとらえ切れていないという開店時の当社の分析そのままですが、5階に配置したヤングは若い服を求める30代や6階の子供服、4階の婦人服との買い回りを想定したもので「狙い通り」だということです。
 社内の抵抗も大きかったという売場です。まあ、顧客層としてはそんなところなのかもしれませんが、せめて半分ぐらいは本来のターゲットの20代を吸引したいところです。

 今秋の二期改装で、全体の8割方完成するそうです。楽しみですね。
 少し厳しいことを付け加えておくと、今までに当然やっておくべき事ができていなかったので、少し動けば成果が現れたとうことです。梅田地区のように激しく競合する店舗が無く、今までのお客様の支持に安住してきたので変われなかったのです。


 エイチツーオーリテイリングとの破談について

 百貨店はあくまでも「地場産業」ですから全国規模のスケールメリットはあまりありません。阪急と阪神、大丸と松坂屋、伊勢丹と三越のように一方が一方を飲み込むような形であればうまくいきますが、店舗数と規模でまさる島屋と、MDと経営システムでまさる阪急とではお互いにプライドが高いので、一方が一方を飲み込むという形にはなりません。

  この結果は想定の範囲といえます。特に先行していた他の事例が必ずしも成功していないということも大きな要素です。

 もし、今後いままでに何度か噂にのぼった私鉄連合が実現すると、島屋にとってははちょっと厳しいかもしれません。京阪、近鉄にとってH2Oと組むのが最も自然な形ですね。

 百貨店が店を閉めるときは驚くほど地域に気を遣います。スクラップするときの店の閉め方で企業力が伺えます。三越の店の閉め方についていくつか考えることがありますので、いつかゆっくりと論じてみたいと思います。

                                                 (2010年03月26日)
■「団地再生」に心を動かさせられる理由〜向ヶ丘第一団地ストック再生実証実験

 ルネッサンス計画〜住棟単位での改修技術の開発

 リフォームをやったことのある人ならわかっていただけるかも知れませんが、住宅等の建物は開けてみないとわからないところがあります。昔の住宅公団の団地ならまず変な事はないのですが、長い年月の手入れの仕方によっては思いもよらぬ劣化が進んでいるかも知れません、机の上で考えた修復計画が現場ではうまくいかない事もあるかも知れません。

  日本の住宅の寿命は平均31年といわれています(戸建て・集合)今まではストックとして強く意識されたことがなかったのですが、ストック住宅の活用をうたった住生活基本法(2006年)あたりから中古住宅流通の市場も少しずつ活性化してきているように思います。

 また、若い世代を中心に「中古」に対する抵抗感が無くなってきていることも背景にあります。環境意識が頭の中の観念的な「行動原理」ではなくごく自然に定着しています。(かといって、環境によいからといって価格の高いモノを選ぶわけではないのですが)

 URは今までに住戸内のリフォームは数多く手がけてきました。「リニューアル住宅」として設備を更新したり、2戸をあわせて1戸にするとかの改装ですね。昭和40年代までに建てられた団地は、狭くて、天井高が低い、断熱性能が劣り、エレベーターが無くて、配水管が劣化しているなど、個別のリフォームでは対応しきれない住棟単位での課題を抱えています。
 住棟単位での再生の技術開発の実験として東京と大阪でルネッサンス計画という実験が行われています。

http://www.ur-net.go.jp/rd/rn1/plan/index.html へのリンク

 個人の資産価値と公共の資産価値

 容積率に余裕がないとか立地に人気がないといった理由で建て替えのできない集合住宅は沢山あります。大規模修繕には少なくない経費がかかりますから、それに少し上乗せすることで住環境が向上し、資産価値があがるという絵が描ければこのよいうな再生のニーズは高まるでしょう。
 
 ただ、千里ニュータウンなどの売れる立地での建て替えをみていると、個別の資産価値はあがるとしても、街としての価値は少しずつ損なわれているようにも思います。
 集合住宅の所有者の立場で見るとジレンマではあります。自治体は容積率の制限などを法律以上に強めていますが、公的な集合住宅から建て替わているのでちぐはぐな印象があります。

 向ヶ丘住宅を実際に見て

 昨日、工事中の堺市の向ヶ丘住宅を見学させていただきました。いくつかの手法の実験なので全体としての提案ではないのですが、所々に残る以前の住戸との対比で、、かつて住んでいた人達の生活や愛着が継承されている様が伺えました。

 根こそぎ新しいモノと入れ替えるのではなく記憶を伝える事で、新しい住まいにも暖かみがでるように感じます。樹木や棟配置のゆとりも今からでは得難い価値となります。

 「減築」によって得られるゆとりも、実は、実際に体感してみないとわからないものです。6月以降には見学も出来るようです。


 少し関連する補足

分譲マンションとして初めて「長期優良住宅認定」を取得した「ブランシェラ吹田」と「ブランシェラ浦和」は即日完売したそうです。集合住宅の耐久性能について市場での認識が高まってきたと期待したいところです。〜2月のマンション市場動向CRI4月号より
                                                      (2010年03月26日)


■「愛着」をキーワードにすると市場原理で見えなかったブレイクスルーが見えてくる

 経済合理性だけで動かない意思決定の背景

 経済行動を予測するときに、前提として人間は合理的な意思決定をすると考えると、しばしば裏切られることが多いようです。
 それは思いこみとか錯覚によるあやまった合理性に基づく判断が起こりうるという事ばかりではありません。予測のパラメーターとして期待される便益をいかに効率的に入手するかという、その意思決定時点での合理性を考えるだけでは足りないのです。
 通常、無視されがちな「愛着」とか「親密さを維持したいという」本能的な要因が意外に強いのです。言い換えれば、「時間軸」によって構成される要素、つまり、ある期間の中で獲得できる価値(それは通貨だけではありません)の最大化というパラメーターを加味する必要があります。

 価格重視から「価格は高くても、愛着を持って長く使い続けてもらえるもの」

 これは雑貨の展示会「プラグイン・アクセス」の中で展示された商品のキーワードです。ファストファッションの台頭で価格志向が強まっています。大量生産大量消費は地球環境への関心が高まる中であきらかに時代に逆行した動きです。

 とはいえ、デフレ経済の中、いくら環境に優しいとはいえ、価格の高いモノを選ぶ人は実際に少ないでしょう。

 今年度経済産業省の連携体支援事業に認定された「100年使い継ぐ、天然素材を使った人に優しい長寿命な家具の販売とサービスの事業化」は消費ではなく、愛着に重点を置いた事業です。

 「愛着」は商品開発や都市計画において新しい視点を提供してくれると思います。

                                                     (2010年03月25日)
図−1 家具購入時の重視ポイント  (N=934)



図−2 家具購入時の重視ポイント比較〜どちらをより重視するか  (N=934)



図−3消費意識       (N=934)




近畿経済産業局の平成21年度事業活動促進支援(新連携支援事業)の支援を受けて実施した調査です。
データはプレスリリースから引用しました。2009年秋実施
■ちょっと自慢してもいいかもしれない関西の文化資源と地方復権の突破口

 関西には世界に誇れる文化資源が多くあるが・・・

 地元の人間、特に大阪人は意識していないのですが、世界に誇れる日本の文化として上位に上げられて項目は関西エリアに豊富に存在します。内閣府の世論調査でも近畿圏の住民はそれを意識してかどうか、全国平均より%が高くなっています。

 「文化では飯は食えない」という昔からの固定観念が強い人は、東京に対抗した大阪とか、東京のバックアップとしての大阪とかいう重いが強く、この豊富な資源を活かす知恵を集めようとはしません。

 グローバル化が進むと言うことは多分、世界に通じる文化、尊敬される文化が競争力の源泉になると言うことです。以前にもご紹介しましたが神戸を訪れた中国人の観光客は、日本人にとってはエキゾチックな異人館より地域に根ざした天満宮に関心を示しているという事実。このことをしっかり分析して次の戦略を立てていく必要があります。

 地方が弱かったのはメディア芸術やポップカルチャー

 関西を含む地方が弱かったのはメデァ芸術やポップカルチャーです。特に若い世代でプライドの源泉となっている新しい文化について、ツィッターやユーチューブなどを活用すれば地方からでも発信されるようになってきています。

 安くあげて面白い番組をつくる関西のテレビ局等のノウハウを活用し、地方からの発信を関西がサポートすれば、東京からの発送とはまた違ったメディア芸術が生まれる可能性があります。

 昨日論じた中之島、御堂筋についても同じなのですが、メインストリームの大人の落ち着いた文化を守り育てることと同時に、若い世代がプライドと夢を持って活動できるようになれば面白いことが出来そうです。

(関西のグローバル企業はパナソニックや任天堂、シマノだけではありません。規模は大きくないものの世界的な知名度を持つ「京都アニメーション」「海洋堂」も関西の企業です。あまり関西財界では話題にもなりませんが・・・)

 今、地方初の単品通販商品が大きく売上を伸ばしていたり、ユーチューブやツィッターを使って中央のマスメデァを通さずに世界に発信する人が増えてきていたりすること等。情報や文化、ビジネスの中央集権構造が崩れ去ろうとしています。
 
                                                  (2010年03月24日)
 
図−1世界に誇れる日本の文化  (2009年内閣府世論調査)


図ー2 世界に誇れる日本の文化 年代別

■「大阪を自慢したときに案内する街」〜いつか中之島の肩の力が抜ける日に

 大人すぎる街?中之島

 20日に1周年を迎えた阪神なんば線に関しては明るい話題が多く報道されています。

 よく比較される京阪中之島線はどうでしょうか。中之島西部地区への鉄道は関西の悲願でもありましたが、まだまだ施設整備が途上でもあり1年間の結果を見てどうこういうべきでは無いかも知れません。

 読み応えのあるフリーペーパー「月刊島民」が定期的に発行され、大阪大学の中之島センターも鷲田誠一学長が「中之島塾」や関西学術会議のシンポジウムなどに熱心に取り組んでいて地道な取り組みが進んでいます。

 冬のイルミネーションや「水都2009」などのイベントも積極的に開催されていて注目度もますます高まっています・・・なのに何故「火がついた感じ」がしないのでしょうか?

 市民のプライドになる街を目指して

 図は2005年の調査での「大阪を自慢したいときに案内したい街」の回答率です。男女とも50代、60代とそれ以下の層に大きなギャップがあります。

 20代の男の子は「こてこて(?)」の大阪を代表する「千日前・道頓堀」が圧倒的です。都市の賑わいを自慢したい気持ちが強いようです。同じ20代でも女性はそれに加えて堀江、西梅田、天保山、南船場など「おしゃれな都市環境」を自慢したいのだと思います。

 50代、60代では圧倒的に中之島から御堂筋を上げています。「こてこて(?)」だけでない美しい街を自慢したいのです。都市のイメージ戦略としてはそれが正しいと私も思います。

 この調査以降、京阪中之島線が開業しイメージは大きく変わっているのでしょうか?

 中之島のプロモーションは大企業中心の島内だけしか見ていない?

 マンハッタンの夜景はブルックリンからブルックリンブリッジを通してみるのが美しいですよね。

 中之島の島はもともと関西を代表する大企業が集積しています。ビジネス街のイメージが強いのです。


 中之島のプロモーション活動もどこか役所や大企業が主導するような「堅い」ものが多いように思います。(意思決定を主導する人が60代以上だったりしますから若い人の感覚は実感できないのです。大きな組織の中の若手スタッフは上司の意見を尊重しますから、まあ若い人の共感を得るアクションは実行されません)

 細長い中之島の対岸では色々な街の動きもあります。天満橋にはギャラリーも集積しています。福島や京町堀には若い人の小さな店や会社が集まっています。・・・・新しい大きなビルにはグローバルに事業を展開する大企業が入るとしても、美術館や大阪大学、関西を代表するホール(工事中)という貴重な資源があるのですから、それを活用してこれから伸びていく若い小さな企業を中之島周辺に集める事が大事です。(文化施設は金食い虫ではなく、産業振興の資源です)
 その人達向けのショップや飲食店が充実すれば、より幅広い年代が楽しめる「肩の力が抜けた街」になっていくと考えています。
 
                                        (2010年03月23日)

図ー1 大阪の街を自慢したいときに案内したい街としての中之島・淀屋橋


図ー2 性別・年代別の「大阪の街を自慢したいときに案内した街ランキング(20代と60代の対比)


(なにわ考現学05)まだ中之島線も、淀屋橋odonaも朝日放送・ほたるまちも出来る前の評価です。
■アメリカ村再生に向けてのたったひとつの冴えないやり方

 「アメリカ村」の地盤沈下の背景

 日本のアイビーファッションの開拓者であったヴァンジャケットの発祥の地であり、70年代のサーファーブーム、ウェストコーストブームの波に乗り、若者のファッションのメッカでもあったアメリカ村では深刻な地盤沈下が見られます。
 御堂筋の西側には中々人が回遊しないと言われていましたが心斎橋OPAは好調です。入店客の40%が購入するといわれる目的性の高い店舗を集めているといわれます。アメリカ村はOPAや大丸北館のある心斎橋から堀江、立売堀に向かう「通り道」でしかないとさえ言われています。

 アメリカンカジュアルというのが今のトレンドではないのかもしれません。ファーストフードとジャンカラ(関西で圧倒的なシェアを持つカラオケチェーン)、古着屋が並ぶアメリカ村の利用層、支持層は20代の男性に極端に偏っています。女性には全く人気がないのですね。

 「アメリカ村」のイメージ資源を活かすたったひとつの冴えないやり方

 アメリカ村という地域ブランドの力はなくなっているのでしょうか。図ー5に注目して下さい。アメリカ村の黄金の日々を知る40代、50代の男性にとってアメリカ村は今でも「新しいファッションを発見できる街」として生き続けています。
 アメリカの西海岸を音楽を中心としたサブカルチャーシーンがファッションやライフスタイルをリードした時代。その時代に活躍したアーティストを囲む音楽のワークショップが少人数ながら熱いファンの支持で続いていると聞きます。その大人の世代にアピールする今でも色あせない音楽、大人も着こなせるアメリカンファッション、カルチャーを集積すれば、街の熱い熱気が蘇る・・・かも。

 残念ながら不動産ビジネスとしてはおすすめしません。同世代としてはとても共感できても、若い世代や女性には拡がりがないからです。冴えない親父が集まっているとしか評価されないでしょう。街にとって愛着は資産ですが、愛着をベースにしながら新しい時代に対応して変わっていくことも必要です。

 「アメリカ村」ブランドの再構築を

 街のブランドとして定着している「アメリカ村」の名前は維持するとしても、その中身を大きく入れ替えて再構築する必要があります。
 例えば家具の「イケア」はかつては北欧のモダンな高級家具のイメージが強かったのですが、今はデザインは北欧のデザインで品質はニトリといった使い捨て家具としてその内容が変わっています。
 GAPの展開しているブランド「バナナリパブリック」もかつてはリゾート感のあるカジュアルファッションが中心でしたが、最近はビジネスシーンでも着用される少し高めのカジュアルウェアも揃っています。

 ある程度、イメージの継続性を維持しながら、若い女性にも好まれる街に変身していく必要があります。その中でおじさんの愛着に対応する要素が少しだけ入っていれば、幅広い年代の支持を獲得できるはずです。

                                          (2010年03月18日)


図−1 最近1年間の利用〜アメリカ村の利用は若い男性が中心

図−2 好きな街〜アメリカ村に好感を持つのは利用率の高い若い男性

図−3 嫌いな街〜60代以上には特に嫌われる

図−4 おしゃれな人が多い街〜若い男性とかつての栄光を知る50代男性に評価されるアメリカ村

図−5 新しいファッションが発見できる街〜かつての栄光を知る50代男性に評価されるアメリカ村

図−5 歩いていて楽しい街


なにわ考現学05
■梅田のターミナル回遊状況と百貨店間の回遊について

 従来から定着している阪急〜阪神百貨店間の回遊

 図ー1にあるように阪急利用者の24.4%は阪神を利用していますし。阪神利用者の31.6%は阪急を利用しています。先日の改装で両店の回遊同線は改善されましたから、その比率はもっと高まってきています。
 それに比べて大丸梅田店は、その利用者の2割は阪急、阪神にも回遊していますが、阪急利用者の10%、阪神利用者の14.7%しか大丸には回遊していません。

 ターミナルの回遊

 JR大阪駅利用者の33.4%は阪急に乗り換えます。また阪神に乗り換える人は7.3%です。新しくできる三越伊勢丹はJR利用者と地下鉄御堂筋線利用者が中心的なターゲットになります。
 阪急からJRに乗り換える人は30.2%、阪神からJRに乗り換える人は20%です。

 三越伊勢丹の開業の影響予測

 2011年に開業するJR三越伊勢丹の影響で、各百貨店のポジションはどう変化するでしょうか。郊外SCでしたらハフモデルなどの手法で仮に予測できますが、単純に面積比で案分はできません。上記の回遊実態をパラメーターに加えて推計すれば少し確度があがります。



 簡単なフェルミ推定の練習問題です。ぜひ御挑戦下さい。

 百貨店の魅力は売場面積だけではありません。新宿伊勢丹は駅から離れていても小田急や京王、島屋より良いお客様を集めています。とはいうもののターミナル百貨店では沿線客の囲い込みが最も大きな課題になります。

 大サービスでパラメーターをもうひとつおまけしましょう。

自宅最寄り駅の交通沿線別百貨店の占有率(1995年)


 これだけのパラメーターがあればある程度の確度での予測が出来るはずです。がんばって推計して下さい。

                                        (2010年03月17日)
図ー1 梅田の百貨店来店者が他の百貨店を利用する割合(%)
 1995年 
図ー2 梅田の百貨店来店者が他の百貨店を利用する人数(1日)
 1995年
 図ー3 梅田ターミナル乗り継ぎ状況 2000年京阪神パーソントリップ調査

■神戸都心の再生に必要なこと〜大阪駅開発の影響を受けるのは三宮

 震災で失ったもの(阪神淡路大震災のことです)

 あの震災以降、15年の月日がたちましたが、神戸の街から無くなってしまったものは沢山あります。神戸で遊んでいた人は、口を揃えて愛着のあった店が無くなってしまった(直接被災していなくても店を閉めたり移転したりしています)事を嘆いています。
 旧居留地周辺はバーニーズが出店したり、ホテルができたり少しは動きがありますが、神戸の顔である三宮に今ひとつ精彩がありません。

 トアロード周辺や新長田(鉄人28号)など若い子や地域の動きはありますが、それと対比ようなする形でコアになる大型開発が必要です。(4番バッターばかりでは野球が出来ない=大型開発ばかりでは地域は面白くない、のですが神戸には4番バッターが不在です)

 三宮駅の開発を進めるためには阪急神戸線の地下鉄乗り入れが必要

 かねてから阪急電鉄は神戸市営地下鉄との相互乗り入れを計画していました。須磨ニュータウン、西神ニュータウンから梅田に直接乗り入れができれば、住宅地需要がもっと増えていきます。角社長はその乗り入れを前提に阪急三宮駅の建て替えを検討すると明言しています。

(あまり土地はないみたいでけれどね。いっそJRと共同で建て替えるというのはいかがでしょうか、JRは駅ビルで稼いでもらえますから、百貨店はこだわらないでしょう・・きっと)

  三宮駅が建て替えられれば阪急百貨店は三宮に移転し、ハーバーランドの神戸阪急は縮小、業態転換になると考えられます。ハーバーランドは都心型の商業の立地ではなくなっているので、新しくグランドザインを描き直すチャンスにもなります。(その後撤退が正式に発表されました)

  神戸市が難色を示している理由としては、直通されると三宮が素通りされるのではないかという危惧と、湾岸部の神戸高速から阪急が撤退することにあるようです。

 三宮が再生するためには沿線の住民を増やすことと、核になる地域に密着した大型店舗が必要です。
(かつては良くも悪くもダイエーグループと神戸そごうがその役割を果たしていました)

 大阪駅の開発で影響を受けるのは神戸

 JR大阪駅の開発で最も影響を受けるのはJR神戸線沿線を中心とした神戸方面です。専門店ゾーンは鉄道沿線に関係なく人を集めるでしょうし、おそらく成功するでしょう。三越伊勢丹と大丸梅田店といった百貨店はメインのお客様はJR沿線になります。三越伊勢丹は京都に店がありますから、阪神間から神戸方面が重点商圏になります。

 大丸も、梅田店、芦屋店、神戸店が沿線にありますから存亡に関わる争いになります。

 阪急阪神は西宮北口、尼崎にそれぞれ地域店舗を出店し、足元を固めています。

 一番先に影響を受けるのは神戸そごうでしょう。ドライなそごうは採算が悪化すれば即撤退です。
三宮はますます地盤沈下します。早く手を打っておく必要があるのですが・・・。   
今の所神戸そごうは健闘しています。もともと大阪まで出かける層はそごうを利用していなかった・・・・のでしょうね。2014年 
                                               (2010年03月16日)

     



■3月20日第二京阪道路開通のインパクト〜都市間のつながりをつくるということ

 京都伏見区と門真市がつながる

 第二京阪道路は、20日午後3時に未開通区間の枚方東インターチェンジ―門真ジャンクション間の16.9キロが開通し、全線がつながります。 完成すれば、大阪南部・和歌山方面と滋賀・名古屋方面との往来が便利になり、大阪京都間のバイパスがつながり、
 吹田ジャンクション付近の慢性的な渋滞も緩和される可能性があるといわれています。

 パネルベイからグリーンベイへ進化を続けている大阪湾岸にとって滋賀県や名古屋の産業集積とのつながりが強まる今回の開通は大きな意味があります。

 これからの整備が期待される淀川左岸線や第二名神建設へのはずみがつくことが期待されています。

 立地創造型のインフラ整備より効果が早く現れる「つなぐ」インフラの整備
 
 道路行政やハコモノ建設については最近、風当たりが強いようです。国土交通省の提灯を持つつもりはありません(一銭もお金をもらっていませんからね)が、全く何もない場所に使い道の見えていない施設をつくるような投資、投資によって需要を創造しようというものではなく、それぞれのポテンシャルのある都市どうしをつなぐ道筋をつくることは、成果が目に見えて現れてきます。

 大阪湾岸と京滋地区、中京地区間のアクセスが向上すれば関空のポテンシャルがもっと活かされて来るはずです。

 「道路」というとイメージが悪く、メディアの注目度も今ひとつですが、この開通は関西経済の再生のひとつの転換点になると思います。
 
 阪神なんば線開業1年

 15日付の神戸新聞の記事で20日に開業1周年を迎えた阪神なんば線についての記事が掲載されています。

 神戸と奈良で観光客誘致に明暗が分かれている

「20日で開通1周年を迎える阪神なんば線(尼崎‐大阪難波)。神戸・三宮から乗り換えなしに結ばれた奈良ではホテルの宿泊客が増えるなど「新線効果」が続くが、神戸は昨年5月の新型インフルエンザ感染確認以降は低調で、明暗が分かれた格好だ。奈良は平城遷都1300年祭開催でさらなる集客をもくろみ、神戸の観光団体は1周年を記念するキャンペーンを展開するなど巻き返しに躍起だ」

 「神戸港のレストラン周遊船「ルミナス神戸2」を運営するルミナスクルーズ(神戸市中央区)の広報担当者は「開通直後は好調だったが…」と顔を曇らせる。奈良県在住者の利用は09年3月が前年同月比で3割増、同4月は6割増と大きく伸びたが、新型インフルエンザ感染が確認された5月以降は客が戻らず、09年の1年間では前年比3割減と落ち込んだ」

 「有馬温泉観光協会も大きな効果はないと首をかしげる」

 神戸以西への人の流れ

 「一方で、山陽電鉄は好調を維持している。姫路や明石など沿線と奈良方面との行き来は三宮などで乗り換える必要があるが、開通に伴う乗客9万6千人増、1800万円の増収見込みに対し、実際は約11万人増、3千万円の増収となった。

 「同社は神戸以西にも足を延ばす人が増えたのではとみる。昨年に続き、奈良で山陽沿線をPRするチラシを配るといい、播磨地域と奈良とのさらなる交流活発化への期待が広がっている」(括弧内記事の引用)


 神戸の観光については以前もその課題を論じたことがあります。どこかで、観光戦略の切り替えが必要なのだと思います。

 阪神なんば線のドーム前のイオンの開発がいよいいよと動き出すという噂があります。・・・・・2013年に開業いたしました

                                               (2010年03月15日)
■スーパーと百貨店の境目の難しさ

 副都心「千里中央」の波乱

 永い間、時代の流れのエアポケット状態にあった千里中央地区が千里中央地区整備ビジョンのコンペ以来、動いています。(2006年着工2010年完成)
 特に食品に限定しても、先日ご紹介した「阪急オアシス千里中央店」がそれまでの食品一番店であった「千里大丸プラザ」を脅かしています。2005年のダイエー千里中央店の改装はキッチンをオープンにするなどそれなりにインパクトがあったのですが、現在は競争に埋没しています。
 阪急オアシスは百貨店の椙岡会長の強力なバックアップもあり、価格面でも強い競争力を持っています。食品に関しては食品スーパー「阪急オアシス」は百貨店の戦略の中に組み入れられています。(その後、阪急オアシスは決して安くない価格になってきました。大丸ピーコックの食料品はそれなりに健闘しています。一つの理由は催事販売は百貨店、生鮮はオアシスという無意識の棲み分けが力を分散させる結果になった為ではないかと見ています)

 千里大丸プラザは百貨店ではない

 地元の人でも「大丸」と勘違いしている人もいますが、千里大丸プラザは百貨店ではありません。大丸ピーコックというスーパーマーケットから業態転換した専門店ビルです。(この店は食品だけでなく、衣料品、雑貨も揃えたミニ百貨店的な店でした。関東の人の持つ大丸ピーコックのイメージとはイメージが違います)

 大丸が専門店的なオペレーションを導入して「百貨店」の枠を超えようとしている中、スーパーから専門店に、踏み出した千里大丸プラザにはまだ迷いが見られます。専門店ビル運営のノウハウ、平場のポピュラープライス商品の品揃え、食料品のオペレーション・・・成功したモデルがつくれれば百貨店にもっと活かせるはずです。

 デフレの時代だからこそ、もっと伸びていいポジションにあるのに何とも歯がゆい店舗です。スーパーが「ジュニア百貨店」を創ろうとして失敗するのとは別の要因がありそうです。一度詳しく分析して見ますが、百貨店の運営するスーパー特有の高コスト体質が染みついているのがネックだと思います。

 ということで2013年にピーコックはイオン傘下になりました  
 
                                               (2010年03月12日)



2002年に「大丸ピーコック」は「千里大丸プラザに改装」GAPなどの大型専門店が導入され専門店ビルとなった。現在はユニクロも入っています。同時期に開業した千里中華街はいまは跡形もありません。だからまがいもののフードコンプレックスは駄目と言っているのに。
2005年にはダイエー千里中央店が「高質食品専門店」に改装。
2008年 ヤマダ電機LAB千里中央。
2009年 阪急オアシス千里中央店が「高質食品専門館」(ややこしいね)として開店。初年度目標15億円。
■街ナカのインフラとしてのサービス機能の再配置

 走る人〜街のナカのサービスインフラ

 今年に入って複数の人(30代)からランニングをはじめていて、回りでも走っている人が多いと聞きました。東京では皇居周辺を走る人が多く、着替えようのロッカーやシャワーを備えたサービス施設が人気を呼んでいます。じわじわと増えている自転車ツーキニストにも利用されているようです。
 そういえばミズノの淀屋橋店にこの1月から有料のランニングステーションが開設されています。

ミズノが、大阪・淀屋橋の大阪店の地下に、市民ランナーのための「ミズノランニングステーション」を開設した。仕事が終わった後のアフター5に、大阪市役所近辺の中之島や大阪城周辺でジョギングを楽しむ人が増えていることから、シャワー、着替え用ロッカー、シューズ用ロッカーを備えた施設を作り、ジョギングコースの情報提供なども行う。1回600円の利用料がかかるが年間1000円の登録料金を払って個人会員となれば400円で利用できる。会員限定の個人契約ロッカーは別料金で月3500円。平日は午前11時〜午後9時半で、土・日、祝日は午前8時半〜午後5時半の営業とする。月間1000人の利用を目指し、シューズやウエアの販売促進に役立てたい考えだ。
(2010年1月25日 読売新聞)


 昨日ご紹介したJRの駅ナカでの着物の着付け+レンタル窓口もそうですが、「あったらいいな」という利用者ニーズが存在しても、不動産事業としての採算性や運営者の事業性から中々実現しないサービスがあります。

 販促・プロモーションの一環として引き受ける事業者があれば一時的には実現しますが、どこでもできるわけではありませんし、継続性には疑問があります。さすがにミズノの取り組みは本店の本業に関わるものなので、簡単には撤収しないでしょうが、かつて百貨店が競って「拡百貨店」とか「脱百貨店」ということで取り入れた非物販、サービス事業は今は、影も形もありません。

 街のカタチの変化と物販、サービス、飲食機能の再配置

 郊外の大型ショッピングセンター建設が一段落して、ターミナル駅での商業開発が進んでいます。今後、最寄りの駅や高架化した鉄道の高架下でより賃料の低い床が供給されていくでしょう。

 住宅の都心回帰や、郊外住宅地での駅周辺への移転などの傾向を考えると、物販やサービス、飲食、娯楽機能の再配置がまた次の段階で進んでいくと見ています。今、人気のある立地(賃料の高い立地)がすべての業態にとって良い立地ではなくなります。

 都心の商店街での若者の起業の動きやシニアの活用、NPOなどの特定非営利法人など株式会社と違った採算ベースをもった事業体の動き、若年失業者対策など、いくつかの要素がからんでくるので、簡単に既存の不動産事業のモデルでは描けません。過去の事例や経験則はあまりあてにはなりません。

 基本はその地域の集客の総量ではなく、どんな人が、どんな機会に集まっているかのマーケティングです。大きな社会の流れとミクロの立地を掴めばある程度、未来は読めます。

                                              (2010年03月11日)

 東武宇都宮店が買い物の有無にかかわらず、駐車場の料金を1時間無料にして、中心市街地にお客様を集めているそうです。公共性を取り入れた「無料」を取り入れることで、自社の利益も拡大させる。一つの方法かも知れません。郊外SCの無料駐車場のコストは「誰が」負担しているのでしょうね。

                                              (2010年03月15日)
■JR西日本の「駅ナカ戦略」が人の流れを変える

 私鉄王国関西で存在感を高めてきたJR西日本

 東京に比べて関西ではJRの存在感は希薄でした。例えば、山手線と大阪環状線は形は似ていても都市交通の役割は全く違います。それを読み違えて環状線の駅近くに進出した東京の企業(ホテル)は、後から誤算を知ることになり、苦戦をしていました。関西はかつて、私鉄王国でした。

  旧国鉄からJRになって京都、大阪、神戸を中心とした幹線の料金を下げて、新快速などの導入で利便性を図った結果、私鉄のターミナルの乗降客数が下がる中、JRはシェアを上げてきました。
 現在建設中の大阪駅、駅ビルも百貨店を含んで大きな商業集積が形成されますので、ますますJRの存在感は高まります。

 「アンジェルブ」で通勤女性をつかめるか?

 大阪駅構内に、「アンジェルブ」という女性向けの有料休憩スペース(トイレ)があります。

「アンジェルブ」は、「駅でゆっくりと化粧直しがしたい」、「待ち合わせまでの時間をゆっくり過ごせる場所がほしい」という女性のお客様のニーズを反映し、平成18 年12 月23 日にオープンいたしました。1 時間300 円で、ゆったりと化粧直しやヘアメイクが出来るパウダーブースや着替えのできるフィッティングブースなどをご利用いただけ、アロマの香る店内では、最新の化粧品サンプルやヘアーアイロンのお試しや無料ハーブティのサービスなどを用意しています。20〜30 代の会社員を中心に、お化粧直し、お着替えやご休憩にと幅広くご利用いただいており、平成22 年1 月には、開業からの延べ利用者数が16 万人を突破いたしました。(JR広報資料)

 これまで化粧品の試供品やパナソニックの美容機器、ワコールの下着のパンフレットを置いていたのですが、3月以降は企業の担当者が直接、利用者に商品説明を行い、その声を販売戦略や商品開発に役立てるそうです。パナソニックは、ヘアスタイリストが同社製品を使って利用者のヘアアレンジを行うほか、ワコールは試着イベントを実施しています。(神戸新聞2月12日)

 4月1日からは着物のレンタル及び着付けサービスを始めるそうです。

http://www.westjr.co.jp/ICSFiles/afieldfile/2010/02/26/20100225_angelbe.pdf へのリンク

有料のパウダースペースをを販促プロモーションの場に使うのまでは、簡単に思いつきますが、その延長(だと思います)で着物の着付けとレンタルまでするというのは、利用する女性にとってもありがたいサービスです。

 同じ発想でいろんなサービスが提供できそうです。

 事業として考えると、どこでもできるものではありません。昔ならば百貨店がこんなサービスを始めそうですね。(知らない間に担当者が変わって撤退するでしょうが・・・短期的に儲かるモノではありませんからね)
 今、こんなことを実現するのがJRであるということに注目したいところです。JRの駅は単に通過する場所からの変身が着実に進んでいます。人の流れはこれからどう変わっていくのでしょうか。

 駅ナカに開発に縦割り組織が変わる

 JR西日本では物販、飲食など別々の子会社が駅ナカで施設運営を行っています。3月8日にJR宝塚駅に開業した「駅マルシェ宝塚」ではそれぞれの会社が統一したコンセプトで830uの店舗を運営します。
 外から見て、当たり前の対応ですが、これからの駅ナカ開発で、従来の縦割りではなく連携がはかられた運営が実現すれば、競争相手にとっては脅威です。駅の機能が充実してくると利便性だけでない立地の力が発揮されてきます。

  本日は阪急電鉄開業100周年

 JRの苦手な沿線開発で実績のある阪急電鉄は、今日で開業100年を迎えます。阪神電鉄との経営統合を成功させ、梅田の駅ビルも着々と建設中です。
 梅田北ヤード開発、西淀川の中島開発(大規模住宅地)や神戸三宮の駅ビル開発(神戸市営地下鉄と阪急神戸線の相互乗り入れが前提)などまだまだ投資しなければいけない案件が山積みです。
 京阪、南海、近鉄など関西の私鉄のトップは地域での存在感が大きいのですが、もっともっと連携できることがあるように思います。

 ちなみに京阪電鉄の開業100周年は今年の4月15日です。 両社とももおめでとうございます。

                                               (2010年03月10日)
■東洋経済に名指しされたあぶない百貨店(近畿)それぞれの事情

 百貨店スーパー大閉鎖時代?

 産業として百貨店、スーパー、ゼネコン、新聞社、テレビ局、広告代理店は転換期にあり、雑誌でもその低迷取り上げられる機会が多くなっています。

 特に、百貨店は生活に身近な産業であるので頻繁にその危機が取り上げられることが多いように思います。3月13日号の東洋経済では「次の閉店はどこ」とuあたりの売上を、閉鎖される店舗と比べて不安を煽っています。店舗の立地や規模、不動産の賃料、顧客層などを考えると一律にこの指標だけでは判断は出来ません。

 もちろん、業界は変革の時期にあり、売上が低迷している店舗には何らかの手を打つ必要があります。閉鎖というのは簡単ですが、百貨店は顧客や地域との関係が資産ですから、ドライにスクラップアンドビルドできない業態です。

 あぶない百貨店への1分間レシピ

 近畿の百貨店について、ワーストと名指しされた百貨店について簡単に改善レシピを出しておきます。

「神戸阪急」
 神戸ハーバーランドで西武百貨店は早々に撤退しましたが、阪急としては、何としても神戸地区に橋頭堡を残しておきたいので放り出せない店舗です。(震災以来神戸には阪急百貨店ブランドはここ以外ないのです)
 ハーバーランドという立地がもう観光客しか集められなくなっています。100円ショップの導入や食料品の強化など、従業員数を絞った中奮闘していますが、アウトレットや並行輸入のセレクト店、通販の元気のいい店の実験実店舗など百貨店の枠にとらわれない、そして将来的には百貨店にも導入する可能性の高い業態を取り入れる実験室として考えれば面白いことが出来ます。・・・大変な環境の中、百貨店らしい店rを維持していましたが、正式に撤退が決まりました。イオンが跡を引き受けるようです。


「西武大津店」「西武八尾店」「西武高槻店」
 ドライな西武が撤退をしないのはそれなりの事情があるのでしょう。いずれも郊外店で、ショッピングセンターの核店舗といえます。従業員数をもっと減らせます。関西にマザーシップ店舗がないので後方部門を集約して合理化できないのはネックですが、本店がある関東でしたら取引先にも強く出られますが・・・・運営コストを下げて成立するフォーマットをつくらないと、郊外店だけでは厳しいところです。

「近鉄百貨店桃山店」「近鉄百貨店東大阪店」「近鉄百貨店草津店」
 西武と違って本店がありますので、東大阪、桃山店は、従業員数を絞ったローコスト店舗になっています。売上が低くても利益が確保できればいいのです。
 草津はどちらかと言えば滋賀県の「地方百貨店」です。人口も伸びている地域で、地元の富裕層も多いですから、もっと地域を深く掘り下げて利益をあげていく必要があります。JRの沿線の関係で伊勢丹と競合しています。
 桃山店は2014年9月の閉店が発表されています

「阪神御影」
 食料品中心ですが、従業員も少なく効率のいい店です。商圏の市場ポテンシャルがあるので狭い地域で商売になります。

「ヤマトヤシキ」
 姫路の繁華街立地です。JRの駅前の開発が進み、競合の山陽百貨店がロフトを導入したり、駅の高架下に新しい商業集積が出来たりして苦戦しています。ただ、従来の郊外の大型SCとの競合とは違うので中心市街地に人を回遊させる工夫は出来るはずです。化粧品に特化したり、食堂街を改装したり、路面店を出店したり対策は講じていますが中々数字になって現れてきません。
 特にシニア層に支持されていて、地元の老舗としての信用と愛着が資産です。
 店舗増築や自前の新店出店などの大型投資に走るよりも、資産を活かしたビジネスモデルを組み立てて、人を活性化していく必要があります。見た目の低迷によって、「負け犬」意識がしみつくと物事は前向きには進みません。ハードが古い為もあり店頭がなんとなくくすんでいる、老舗の落ち着きとはまた違います。
 このポジションの地方百貨店継続でき、将来に夢を持てるような方向性が描ければ、「地方」は再生していけると思っています。
                                                   (2010年3月9日)

 

図ー1 uあたり売上高と年間売上高(08年10月〜09年9月)〜最低の神戸阪急でu32.6万円弱、年間売上108.5億円

図ー2 売場面積と前年同期比〜最悪は閉店する四条河原町阪急の-19.0%

図ー3 従業員数と1人あたり売上金額〜阪神御影は正社員9人と超ローコスト店舗

(東洋経済3月13日号掲載の数値より作成)
■心斎橋・銀座東西の老舗繁華街の変貌と、もうもどれない変化対応への覚悟

 銀座、心斎橋がカジュアルファッションのメッカになる理由

 「この不景気はあくまでも景気循環の中の一時的な現象で、いつまでも100円ショップやユニクロなどの安物の店が流行るわけではない・・・いずれ良いブランドの価値が再認識される時期が来る」そのような楽観的な期待ををしている経営者がいまだに存在します。

過去の成功体験にしがみつく中高年ならばともかく、これから事業を広げようとしている若い経営者や百貨店マンからそのような言葉を聞くとがっかりします。

 確かに安物一辺倒、低価格だけを訴求している店はいずれ淘汰されるでしょう。ただし、シビアな価格設定の中でも創造性に満ちた新しい事業モデルをつくっている企業は沢山あります。かつてのダイエーなどのGMSや発祥の頃の百貨店にしても当初はそれまでのビジネスモデルを破壊する革新者として登場してきたものです。

 さて、最近元気のいいファストファッションの大型店は何故か、東京では銀座、大阪では心斎橋に旗艦店をもってくる事が多いように感じます。地価が下がっていることと、一定の商業床の規模を埋める業態が他には見たら無いからといえます。

 知名度の高い商業集積である事で、外国人観光客のお買い物にも便利であることもあげられます。

 街が大きなショッピングセンターとして想定され、歩いて回遊させることができることも魅力です。核店舗である百貨店があり、専門店、飲食店も揃っています。またエリアとして中国語のガイドブックをつくるなどの対応ができていることも大きなポイントです。

 今、街を活気づけているのはヤングとアジアの観光客

 都心で活気のある繁華街は、ヤングとアジアの観光客をしっかりとつかまえています。
 その街にいくら歴史的なイメージがあってもむき出しの商売気がでてしまうと劣化していきます。大阪で言えば千日前、道頓堀から東心斎橋などです。心斎橋はまだかろうじてバランスが維持されています。活気が人を呼ぶという好循環が期待されているのでしょう。

 ただし、老舗が入れ替わって大型店に変わっていく先にどのような街のアイデンティティを創っていくのか、もう昔の心斎橋にはもどれないと考えて将来像を描いておく必要はあると思います。街のイメージや環境という資産を食いつぶしているのですから、その間に次の世代に残す資産は何かを考える必要があります。

 銀座についても同じような印象があります。昔の「銀座」のイメージの幻にひきずられて、オーセンティックな百貨店の旗艦店を創ろうという動きには、正直よくわからないところがあります。確かに何年か前の都民アンケートでは「銀座」のイメージは高いのですが・・・・そして心斎橋筋商店街よりは市場のポテンシャルはるかに高いのですが、先入観にとらわれずにフラットな視点で見直した方がいいような気がします。

                                                  (2010年3月8日)

 とはいえ、大丸心斎橋店を建て替えるのには反対です。古いものと新しいもののミックスが面白いのです。
H&M
     8日時点入店で30分待ち

コレクトポイント         ZARA            ユニクロ
   

同時刻、アメリカ村の風景 通行人より放置自転車の方が多い  ゼニアのショップが浮いています
 

アメ村に出店するなら、古着屋、ジャンカラ、ファーストフード、等中高生向けのショップがおすすめ?
かつての何か発見できそうなワクワク感は今はもうありません。
ビッグステップの孤軍奮闘に期待。同じ若者層でもOPAとは客層は全く違います。
中国人の観光客も足を踏み入れません。
 3月5日  心斎橋オーパ改装オープン

 別館「きれい館」1階が「かわいい発見ゾーン」として女子校性をねらったティーンズフロアに・・・。大丸北館、島屋5okai、H&M新規出店などのヤング市場での競争激化に対して、さらに年代の低い女子高生と言った「ニッチ市場を攻め続けるようです。今秋には2階もティーンズフロアに切り替える予定ということです。
 本館にも6つのショップがオープン。「手の届かないあこがれとはちがった、等身大の魅力が求められている」とブログやネット販売の仕掛けなど「総合プロデュースに優れた店が今のトレンド」と新業態の店舗を導入しています。

 3月6日 H&M戎橋店(900u)オープン

 6日の土曜日、かつて有名建築家のデザインで存在感のあったキリンプラザ跡地の「ラズ心斎橋」の核テナントとして「H&M」の戎橋店がオープンしました。開店前には雨の中2500人の行列ができたようです。900uとコンパクトな店舗なので同社は手応えの良さに関西でフルラインが揃う2,000uの大型店を出店したいという意向を示しています。


2007年11月 心斎橋ソニータワー跡の商業ビル「ラポルト」にZARA開業
2010年2月 国内カジュアルショップ(ローリーズファームなど)の大手「コレクトポイント」が891uの旗艦店を開業

現在、2145uの巨大店舗をかまえるユニクロが今秋4,620平米の規模の国内最大の旗艦店を開店予定
  
■街の空気の読み方〜儲けたい空気とクリエイティブな空気

 街の空気

 繁華街や商業集積を観察しいると「街の空気」ともいえる、雰囲気、店の傾向が読み取れます。大きく分けて、儲けたいという気持ちが前面に出ている店が多い街と、どちらかと言えば、文化的な雰囲気、クリエイティブな雰囲気が前面に出ている街に分かれます。

 かつては大阪南のアメリカ村やヨーロッパ通りと呼ばれた東心斎橋地区はどちらかといえば既存の繁華街から少しは離れた「クリエイティブ」な匂いがする街でした。今でもこのエリアで起業する若い人達は少なくないのですが、どちらかと言えば既存の成功事例をなぞったものをベースにして、パワーと目立つことで早く儲けたいという志向を持つ店が多いように感じられます。

 道頓堀や千日前から「文化的」(別に高尚なモノではない)雰囲気が消えて、儲けたいというむき出しの気持ちが出た店が増えているのが、徐々に拡大しているのかも知れません。

 もちろん、当初はパワーで伸びている業態が、一定の規模になったときに、洗練されていくというサイクルが繰り返されてきたのが過去の歴史なのでそれが価値の低い劣ったモノだとは思いません。
 いくらおしゃれでクリエィティブな店であっても利益をあげていかなければ継続しません。

 ただ、出店の立地を評価するときに、交通量が多いとか、地価が高いといった要素だけで街を評価すると自社の事業との適合性に齟齬が出てくる可能性があります。出店調査では、どうしても通行量などの数値的な情報を重視しがちですが「街の空気」を読むことも必要です。

 100円パンの儲けの仕組み

 100円ショップでは原価率が20%のものから60%のものまで、それぞればらつきがあって、トータルで利益が出るようになっています。確かに、通常の原価率で20%の商品ばかり並んでいても全く面白くない売場になるでしょうね。

 最近阪急ベーカリーが尼崎阪神や阪急オアシス内で展開している100円パンが人気を呼んでいます。

 思い出されるのは、以前に話題になっていたその先駆けともいえる店は「ぶうらんじぇ」という草津の店舗がチェーン展開していたものです。30uで日商60万円という脅威の効率で話題になっていました。パンのレシピは京都祇園のフレンチのシェフが作成し、当初の原価率は50〜60%であったそうです。

 安いことは確かにインパクトがあり集客につながりますが、期待以上の価値を提供できるかどうかでリピーターが獲得できるかどうかが分かれます。

 文化性、クリエィティブ力は日本が国際的な競争に勝ち残る鍵

 儲けたと言う気持ちでつくられる製品では日本はもう中国やベトナムには勝てません。物作りでは文化性、クリエイティブ力が差別化の鍵だと言われています。

 まち作りでも同じ事です。多くの人に共感を持たれる街が高い負荷価値を生みます。収益性と文化性のバランスは短期的な動きに左右される市場の競争原理だけでは担保されません。
 商業者は大きく儲けてから街に還元するのではなく、小さな儲けの中から少しずつでも街に還元していく仕組みが大事です。

                                                         (2010年03月05日)



■生活協同組合が生き残るみち

 物流インフラを整備した楽天は生協のシェアを奪いとると宣言

 配送センターなど物流のインフラを整備し、出展企業に対してのサービスを強化している楽天は、先日行われた出展者向けのカンファレンスで伸びてる食料品のシェア拡大に注力し、将来的に生協のシェアを奪い取ると宣言したそうです。

 生活協同組合は協同購入の仕組みで、安全安心な食料品を提供することで、買い物に出かけにくい子育て中の世代を中心に伸びてきていました。最近では生活時間の多様化や地域のつながりの希薄化により、協同購入より個人宅配のシェアが高くなって来ています。

 昔の世代は自分達が出資して、自分達に必要な商品を購入するという参加意識、一体感が強かったので、阪神間のコープこうべの組合員は高級スーパであるいかりとコープを併用することはあっても、決してダイエー(全盛期の)は利用しなかったのです。一時は社長直轄のプロジェクトで生協をターゲットにした攻勢をかけていましたが歯が立たない状況でした。

 各GMSがネットスーパー、宅配事業を強化しています。また、安全安心にこだわった通販として、オイシックスやらでっしゅぼーや一定のシェアを持っています。さらに生産者からの直接のお取り寄せも増えています。

 楽天はショッピングモールなので、テナント企業の商品力、企画力に依存しています。WEBでの発注になれない高齢者には中々受け入れられないでしょう。生協の利用者(現在は高齢者が中心)のシェアを奪うことは難しいでしょうが、中途半端なネットスーパーよりは存在感があるものになると思います。


 生協の生き残りは

 生協は競争力のないリアル店舗を閉鎖していくべきでしょう。商品開発及び組合員とのつながりを強化することに注力し、コストのかかる配送などは「楽天」でも「アマゾン」でも「佐川」でもいいですからアウトソーシングするべきです。どうせ、自宅前に保冷ボックスをおいてくるだけなのですから。その分、組合員とのコミュニケ−ションに注力し、組合員発想のサービス、商品を強化していく事です。(冠婚葬祭、アンチエイジングケア、介護サービス、見守りケアホームセキュリティ等々)

 特に地方の生協の場合、地場産品の商品化を生産者と共にすすめていける信頼関係や情報網があるはずです。全国や中国、アジアに商品卸の販路を広げていく事も視野に入れるべきでしょう。・・・おそらく現在受けている優遇処置などを失うかも知れませんが、資源を活かして新しい事業分野に取り組むべきです。

 不得手な分野で競争しようという考えを切り替える事が大事です。

                                                             (2010年03月04日)
■新しい顧客の吸引に課題〜島屋大阪店増床1期

 おばちゃんでいっぱいの開店日の賑わい

 開店日は、地下の食料品売場と7階、8階、9階のレストランフロアを中心におばちゃんで一杯でした。食料品は新しい売場と今までの売場との再配置微調整が必要だと思います。レストランフロアもカウンターで食べるお店とおもてなしのお店の環境によるゾーニングが出来ていないように思えますが、まあミナミらしいと言えばミナミらしいのかもしれません。
 とりあえず、ミナミが動き出すシンボルとしてまずまずのスタートでしょう。

 「5kai」の誤算

 なんばはターミナルとしてはキタに続く規模ですが、周辺のオフィス集積はキタとは違って薄いのです。その為、サラリーマン、OL層の立ち寄りが少ない。そういった背景があって、ラグジュアリー(富裕層のおばちゃん)とヤングがターゲットになります。従来弱かったヤング層を強化したのが5階のヤングゾーンである「5kai」です。」

 初日の来客を見る限り、中々厳しい状況です。ターゲット層にヒアリングすると、「ここにしか無いといったブランドがない」「洋服が中心でサービスやカフェが少ない」「5階にあがるまで関係のないフロアを通っていくのがめんどう」といった意見が聞かれます。
 一番賑わっていた「シェルター」に対しても百貨店初出店かも知れませんが「心斎橋OPA」にある店舗なので、わざわざこれ目当てにはこない」と語っています。

 なるほど手厳しい意見です。各百貨店ともヤング層への対応を強めていく中で、モノの充実とともにコトの強化も図っていく流れがあります。その中でのオープンなので、もっと大胆な提案があれば良かったのにと思います。

 この間オープンした大丸北館(うふふガールズ)と比較されますしね。・・・百貨店業界の中の人は業界の常識を越えられないのでしょうか。

 とにかく、地域存在感を高める大きなハコは出来ましたので、これから人の流れを考えていく必要がありそうです。

 新歌舞伎座の行方

 難波の変化は街の中の人の流れを変えています。新歌舞伎座跡地の再活用はまだ見えていませんが、その裏手は、かつてはちょっと怖い場所でしたが、かなり明るい通りになってきています。湊町との回遊導線ができていますからこれからもっと良くなっていく兆しが見えます。

                                                       (2010年03月03日)

 2009年6月に閉館した大阪市中央区の旧新歌舞伎座の建て替え工事「ベルコ難波ホテルプロジェクト」がいよいよ始まる。既存建屋の解体関連工事は鹿島建設が担当している。現在は建物の周辺を仮囲いが覆い、養生棚(落下防止棚)を設けている。冠婚葬祭王手のベルコ(本社・兵庫県西宮市津門川町1−1、齋藤斎代表)が12年3月に用地(約2200平方b)の取得を済ませており、既存建物の解体後に結婚式場やホテル、同社の本社などの機能を備えた複合施設を建設する。御堂筋の反対側の敷地には小規模な飲食店が軒を連ねているが、こちらも立ち退きが進んでおり、一体的な開発になりそうだ。 2014年3月 建設ニュース
■啓蟄の期待がかかる3月のオープン店舗

 阪神なんば線開通から1年 いち早く動き出したなんばと神戸の新店舗

 昨年3月20日に開通した阪神なんば線。開通1周年を記念して様々なイベントも企画されているようです。奈良の平城遷都1300年祭はもうスタートしているのですが、4月24日の平城宮跡の会場でのイベントが始まるとさらに注目度が高まるでしょう。

 3月にはなんばと神戸で注目の店舗がオープンします。ダイナミックな景気回復の実感ははまだまだ先でしょうしが、消費マインドとしては「不景気気分」には少し飽きがでてきているようです。今の中国のように消費が過熱することはないだろうと思いますが、低価格対応一辺倒では中国からの観光客も寄りつかなくなってしまいます。

 3月にオープンする島屋大阪店の増床もバーニーズ・ニューヨーク神戸店(なんか、ラフォーレ原宿松山店みたいですね)ともにおテロワールとか地域密着をテーマに掲げているのはとても興味深い傾向です。

 島屋大阪店増床第1期は本日開店

 2011年春のグランドオープンに向けて島屋大阪店の増床1期が本日オープンします。全体が完成すれば22,000uの増床になり売場面積は78,000uになります。450億円の投資で売上を320億円増加させる計画となります。(百貨店270億円、レストラン50億円)
 東京の人の「島屋」イメージとは違い、おばちゃんが親しみやすいカジュアルでかつ高級感もある百貨店です。ヤング、ヤングアダルトのファッションに難があったと思いますが、「既存顧客の支持を盤石にし、次世代の主力となる顧客層にアプローチ」ということで5階のヤング売場に力をいれているようです。

 同時に既存の顧客の買い回り向上をうたっています。梅田や新宿と違って周辺に競合店舗がないあので全方位をカバーすることが必要です。


 食い倒れの街大阪というものの、なんば周辺には安くてうまいものはありますが、ゆっくりと食事が出来る店は少ないのです。
 特にお酒を飲まないおばちゃんには利用できる店はほとんどなかったのです。その意味で「食文化の都心」大阪を代表するレストランゾーン「なんばダイニングメゾン」はおもてなし料理からカジュアルな店舗までバランスよく揃えられています。「淀屋橋ウェスト」でオフィス街の商業化に先鞭をつけ、なんばシティの「なんばこめじるし」でいままでにない、特色のある個人店の集積を実現させた株式会社ケイオスの澤田氏の起用が成功したといえるでしょう。

 秋には2期改装がオープンします。同時期に南海電鉄が経営するサービスアパートメントが開業する予定で、なんば周辺の雰囲気がまた変わっていくでしょう。※「フレイザーレジデンス南海大阪」ファミリー、カップルによく利用されています。

 3月11には隣接した「なんばパークス」のリニューアルが完成します。メインターゲットである「洗練された大人の女性」を対象とした物販ゾーンに63店舗出店し物販店舗の総数が250店舗となります。

 5日にはバーニーズ・ニューヨーク神戸が神戸居留地25番館にオープン

 伊勢丹が始めたバーニーズ・ニューヨークは06年から住友商事の子会社になっています。2013年にセブン&アイホールディングスが買収 神戸そごうの親会社ですね

 神戸に開店するのは銀座店とほぼ同じ規模の2,800u。メンズ、婦人服、ブライダルサロンも併設されます。「神戸の生活者は、神戸で過ごすこと、消費することの愛着がとりわけ他の地域より強い」「東京はファストファッションに一時的にトレンドが流れているが、神戸の消費者は神戸的な上質ファッションや消費にこだわっており、高級品に適した市場」「愛着の強い神戸の消費者に向けて神戸ならではの店にこだわった」とのコメントが新聞に掲載されています。

 確かに意識・行動特性はきちんとリサーチされているなあと思います。ポテンシャルというか、地域内の厚みは意外に小さいエリアなのですがこの規模の店舗であれば問題ないかも知れません。京阪神3都市で、神戸や京都の人間は大阪にでないですが、大阪の人間は京都や神戸に動きます。街の使いわけを行います。

 今の京阪神にないタイプのコンセプトですから、なんば線の沿線である大阪南や奈良、姫路方面からも集客可能だと思います。

 啓蟄の時期少しずつでも消費が動き出してくれればいいですね。
 


 百貨店ブランド力の地域限定性について あなどってはいけない

 先日、加古川在住の方とお話をしていて、「そごう」のイメージのとらえ方の大阪人と神戸以西の住民とのギャップにあらためて気づきました。大阪人にとって「そごう」ブランドはまあ、「2流」のイメージですが、加古川そごう、かつての神戸そごうを利用していた現地の人にとっては決して「2流」ではないようです。
 やはり「実際の利用の経験」の積み重ねは大事です。広告や販促だけではロイヤリティは形成できません。

 その意味で今心配なのは「伊勢丹三越」の大阪店、「阪急百貨店」の博多店、「大丸松坂屋」の銀座店です。
 皆さん頭ではわかっておられても、長い期間をかけてつくられた地元のロイヤリティとアウェイのギャップは想像以上に大きいと考えるべきでしょう。新規出店の賃料負担のあしかせへの対策もあわせて、経営の焦点をしぼっていく必要があります。

                                                                                                                              (2010年03月02日)
■「シャワー効果」「噴水効果」の基本原理と都市プロモーションへの展開

 「シャワー効果」「噴水効果」とは

 かつて、百貨店業界では「シャワーl効果」「噴水効果」という概念について語られることがありました。「シャワー効果」というのは上層階での文化催事などで人を集客し、上層階にあがったお客様があたかもシャワーのように各フロアに降り注ぎ、普段は人の少ない上層階にも人が回遊するというイメージで、「噴水効果」というのいは食料品売場が充実するとそのお客様が上層階のフロアにもお立ち寄りいただけるという販促効果があるというものでした。

 来店客調査などで、来店当日の回遊状況をみると、食品を買ったお客様がファッションフロアにお買物に行かれる比率が少ないなあとか、催事に来られたお客様が買物をしないのは売場で催事と連動し品揃えや販促をしないからだと・・・当時は短絡的に考えていました。

 多分、「文化催事」などのシャワー効果は当初の発想は販促的な意図で、お店にお客様を集めれば、後は売るのはそれぞれの現場の責任という趣旨だっただと思います。(活け花の展示会などがあるとおばちゃんが沢山来場し、百貨店の売上げに貢献したそうです。・・・大阪の心斎橋にかつて大丸と今は無きそごう百貨店が並んでいたときに、そごう百貨店に活け花を出展していたおばちゃん達は休憩時の買い物はお隣の大丸にでかけていたという生の体験談も聞きましたが・・・やはりお店に魅力がないと商売にはつながらないということでしょうか)

 百貨店もまた縦割り型の組織であって、異なった商品を扱う部門間の調整が大変で全店的に展開するプロモーションは困難が多く、これらの言葉はあまり聞かれなくなりました


 LTV(顧客生涯価値)をあげるためのプロモーションとしての「シャワー効果」「噴水効果」

 短期的な接点での購買だけでなく顧客の長いスパンでの購買行動の中で自店のシェアを高める、顧客の意識の中でのポジションを高めるというLTVの視点から考えると「シャワー効果」「噴水効果」にはそれぞれの意味があります。

 お客様の中で「私の百貨店」としての位置づけを獲得する事が大事なポイントです。

 百貨店で開かれていた「文化催事」は、社会的な文化インフラが整っていない時代には大きな価値がありました。80年代の西武百貨店はポップカルチャー、サブカルチャーや現代アートを紹介し、それに共感する顧客層を掴んでいました。基本的なイメージを形成するのに、広告や商品政策と連動して、「体験」させる場所が必要であり、それを担ったのが催事場でした。

 食料品塗り場からの「噴水効果」みある意味は。購買頻度高い食料品の購入という「行動」によってお客様の中での店へのロイヤリティのシェアを上げていくことが重要なポイントになります。大根を買ってからファッションフロアでウィンドショッピングすような直接的な効果をねらうのではないのです。人の心には自分の「行動」を「正当化する」仕組みがあります。
 購買行動を繰り返すことによって「親密度」があがります。

 ただし、そこではあくまでも「阪急」で買った、「阪神」で買ったという「店」の利用を想起させることが必要です。その意味で、池袋西武」がイトーヨーカドーのPB商品を売ることは間違いです。お客様には西武で買ったのではなくイトーヨカドーで買ったという刷り込みを与えるだけです。安い価格の商品、日用品を扱うのは正しいのですが、スーパーのブランドを売ることは止めた方がいいでしょう。

 「体験」でメッセージがきちんと定着する。「行動」を起こさせることで親密度が高まる

 最近、単品通販で伸びている企業の事例を取材していて「CRM」かスターマーリレーションマーケティングについてあらためて考えるところがありました。その目でかつて語られていた「シャワー効果」、「噴水効果」を見直してみると少し違った見え方をしてきたので以上まとめました。
 
 関西〜大阪にどのように人を集めて、どのように循環させるか、元気にしていくかについて、しつこく考えています。(誰からもお金はもらっていませんから、逆にタブー無く語れます)

 基本的には百貨店業界、通販業界の「利用者作り」「顧客作り」の考え方を取り入れれば着実に大阪の顧客は増やせると思っています。それに使える(ハードやソフト等の)資源もリストアップし戦略的なポジションを策定していきます。当ページまたはCRIの連載で少しずつ発表できればと思います。

 関西〜大阪の情報発信については他の地域に比べてマスコミもありますし、WEBでの情報発信環境が飛躍的に伸びていますのでコストをかけずに出来る道筋はみえてきそうです。
 (先週、Uストリームで生中継された2つの番組、著名ジャーナリストなどが参加した座談会をみていると画質や音質に課題はあるもの、コンテンツに力があればかなり多くに人に届くことがわかったのが収穫です。〜ミニFM局やケーブルテレビのコンテンツがつまらないのはマスコミごっこをしょぼい予算でやっているからでしょうね〜先月紹介した「セカイカメラ」も一部のマニア向けでなく本当に届けたい層に拡がる可能性がありそうな気もしています)
 

 お金をかけたイベントで集めた人を、どのようにリピーターにしていくか、その観点をもてば地方を活性化させる活路は見えてきます。

                                             (2010年03月01日)
 2月
■1980年前後に業界で輝いていた百貨店

 中国企業が狙う日本の小売業

 本間ゴルフが中国企業に買収されたそうです。中国企業による買収と言えば家電量販店の「ラオックス」が印象的です。そのラオックスを買収した中国の家電量販店グループが、銀座と浅草に店舗を持つ「松屋」の筆頭株主の座をユニクロと争っていると報道されたのはついこの間でした。

 銀座松屋の不動産価値は2,000億円近くになるのに対し、松屋の株の時価総額が1,000億円とかなりお買い得なようです。ヨドバシカメラのような家電を中心とした総合店舗とすると改装イメージまで報道されていましたが・・・その後どうなんでしょう。有楽町西武の跡地の話題のように家電製品とファストファッションの街になっていいのか・・・・中国人観光客も家電製品ばかりでなく高級ブランド品や化粧品などを購入するようになってきています。将来を考えるとブランド価値の維持が必要でしょう。

 松屋は70年代後半の百貨店のリニューアルブームの一方の雄でした

 その松屋は1970年代後半からから1980年代にかけての百貨店のリニューアルブームの先駆けでした。

 マークロゴを一新し、デザイナーブランドや雑貨を充実させ、文化戦略も若がえらせて、当時のおばちゃん層から当時の若い世代(団塊世代が30歳代でした)へとターゲットを切り替えて業績を大きく改善させました。

 松屋と西武百貨店のリニューアルの成功は全国の百貨店にリニューアルブームを引き起こし、そのモデルとなったものでした。
 そのその松屋が中国企業に買収され家電百貨店になるかもというニュースは、例えるとすれば昔別れた女房が政治家の愛人スキャンダルに巻き込まれたようなショックと喪失感を引き起こします。(実際は、多分実現しないと思いますが)

 その松屋を建て直したのが、伊勢丹出身の山中社長でした。百貨店経営の神様とも言われた山中社長はその後、東武百貨店に招かれ、東武グループのプリンス根津公一氏を指導(帝王教育)します。
 池袋東武はいち早くユニクロを導入するなど従来の百貨店にとらわれない改革を行い。紳士服のはるやまを取り入れた様に新しい専門店との取り組みを強める大丸と並んで百貨店進化の方向性を示す企業として注目しています。

 池袋西武再生の課題

 イトーヨーカドーのPBが並ぶことで議論を呼んでいる池袋西武ですが、ヨーカドーのPB商品の扱い自体は枝葉のことであると思います。商品として、ターミナル立地である以上「日配品」は品揃えされているべきですし、今はどこにの百貨店にもも見られない「実用衣料」も必要なのです。ただ、百貨店出身者からイトーヨーカドーに再生の主導権が移ったことを象徴的なので話題になっているだけです。その背景には西武が対応しないといけない本質的な課題があります。

 食料品塗り場の日配品は大丸であれば大丸ピーコック、阪急であれば阪急オアシスなどのSMのノウハウがはいっています。ただ、表面上は見えないだけです。それをあからさまに見せるときに夢を売る店としてどうよ・・・というのが議論でしょう。確かにそれはNGでしょう。

 大丸心斎橋北館のニュースリリースで「百貨店初」というショップを強調したのは、それは百貨店業界内だけの快挙であって、お客さんにとっては全く意味がないと論じたことがありました。例えば、ユニクロが入っていても利用者的にはノープロブレムです。

 西武百貨店は、お客さんの求めている価格帯やお客さんのもとめている生活シーンにすなおに対応すればいいのだと思います。特に池袋西武はグループの収益源なので、実用商品にも安直に手を抜かないで西武らしさをだしていかないと自滅していくでしょう。

 かつて、和田社長が百貨店にチェーンストア理論を導入するとし号令をかけました。
 結果としてもともと商品力、発信力の弱い地方店舗がばたばたと倒れてしまいました。

 トップの力量は・・・・

 たまたま、今回取り上げた企業のトップには実際にマーケティングの報告をしたことがあります。大丸の奥田さん、東武の根津さんはとても素直かつ熱心に報告を聞いて下さいました。和田さんは報告を途中で遮り、自説持論を講義して下さいました。自信家であること、周囲の人達がとても気を遣っていたことが強く印象に残っています。

 ひとつは人の話を素直に聞く事、マーケティングに対して理解があること・・・そこにあらわれたトップの力量が企業の明暗をわけています。百貨店業態の課題より経営者の資質が企業を危機に追いやるのでしょう。

                                                  (2010年2月26日)
■地方百貨店には存在意義が無くなったのか?

 元気のいい商業施設は郊外型SCから都心の駅ビル、広域のアウトレットモールへシフト

 概況としては郊外型SCの出展数が少なくなり、JRなどの駅ビルや高速道路1,000円の恩恵を受けた超高域商圏対象のアウトレットモールが元気であるというのが定説です。また都心の中型百貨店の閉店が相次いでいて、人員削減の嵐が吹く百貨店業態には未来がないように報道されています。

 もともと百貨店が文化やサービスを提供できていたのは、利益率の高い宝飾品や高級ブランド、アパレルなどの利益と、償却の住んだ好立地の本店があればこそで、売上げ好調の時でも利益率は低かったのです。
 何故、そのような商売を続けていたのでしょう。経営者が高潔な人格なので社会奉仕しようとしていたのでしょうか、それとも人のいい人間ばかりが百貨店に集まっているのでしょうか?

 百貨店経営者が自覚的であるかどうかは別にして、百貨店の資産は「顧客」です。2割の顧客が売上の8割をつくります。その2割の核になる顧客をつくるために、常に新しい利用者を集客し、その中から店に「愛着」を持っていただく人を育て上げ、ていく装置が必要です。それが百貨店の店舗です。

 その答は商売の王道であって、今、元気のいい業態にもあてはまる基本原則です。今伸びている「単品通販」の世界でもその原則は有効です。よく知らない人は「価格訴求」のチャネルで「安物買い」の人が利用すると勘違いしていますが、それは認識不足です。


 イトーヨカドー鈴木さんダイエー中内さんが「百貨店」に挑戦し失敗した理由

 イトーヨカドーの「ロビンソン百貨店」、ダイエーの「プランタン」はことごとく失敗しています。(プランタン銀座は例外)百貨店ブランドが揃わなかったことが失敗の理由としてあげられていますが、それは表面的な事象です。
 チェーンストアの追求するする合理性は短期でのリターンを求めます。GMSの人間にはお客様は「合理的な行動をする経済人」として見えますが、愛着醸成とかいった働きかけは「合理性」を超えたところにあります。

 地方百貨店の苦境と次の時代へのブレイクスルー

 地方百貨店の苦境は、主要な顧客が高齢化したことと、次の世代に愛着をつくって来られなかった事にあります。
対策は大きく3つ、高齢化した顧客へのサービス強化とそれに基づく、子世代、孫世代への波及。2つめは「子供」を通じて30〜40歳代を掴むこと。3つめはリクルート〜ブライダルのサポート。地方ならではのサポートが必要で、都市の百貨店とは違ったきめの細かさが必要です。
 それぞれのエリア特性や競合状況によって微調整は必要ですが、収益源を非店頭に求め、WEBを使った全国を相手にしたビジネスも必要です。面白いことが出来るはずです。
 百貨店業界では給与カットや人員削減はまだまだ進むでしょうが、次のステージに向けた戦略を持った事業の再構築が必要でしょう。

                                              (2010年2月25日)
   
■アジアの旅行者に強い「銀座」ブランド〜家電製品ばかりでない日本の強み

 春節(旧正月)特需で賑わう百貨店

 2月の13日から19日は旧正月です。韓国や中国ではこの期間が休みになり、海外へ出かける人が増えます。一昔前まではアジアからの観光客は家電製品を買いあさったモノですが、現在は違います。高級ファッションブランドやスキンケア化粧品などが人気で、百貨店は中国人観光客で多いに賑わったようです。

 アジアの観光客に人気の銀座

 東京へ観光客の中で満足度の高い街のトップは圧倒的に「新宿」です。その次にアジアの観光客に人気が高いのは「銀座」が挙げられています。決して秋葉原ではありません。中国人観光客には北海道や東北の温泉地も人気があるようです。東京都内では浅草やお台場も人気があります。

 銀座はファストファッションの大型店が集積し、街の様相が変わって来ています。有楽町西武の後にはユニクロとヤマダ電機が候補にあがっているといわれています。かつて東京都の調査では利用率は新宿や池袋の後塵をはいしていたものの、おしゃれな街イメージはダントツで好評価でした。

 10年前の調査です。過去のイメージの遺産でアジアからの観光客にも満足いただいていますが、今後より目が肥えてくるアジアの観光客に変わらずに満足いただけるでしょうか?地域ブランドを戦略的に維持していく必要があると思います。

 関西では心斎橋筋商店街が銀座に似たポジションかも知れません。(梅田は新宿ですね)心斎橋筋〜ミナミは核になる百貨店が大丸心斎橋店、島屋大阪店がなんとか踏ん張っています。銀座は核になる百貨店がありません。松屋は中国企業に買収されるという噂ですし・・・プランタンにしても三越、松坂屋、阪急にしても中型店で一番店と言えるフルラインの都市型百貨店ではありません。

 色々と課題があるとしても「百貨店」は街の最後の防波堤だと思います。各社とも雪崩を打つように人員削減に走っている現在、百貨店が自信をなくすのも無理はないのですが・・・・・・・。

                                                       (2010年2月24日)
図ー外国人旅行者が最も満足した街(東京)

図ー外国人旅行者の買い物内容(東京)


2008年東京都「観光客数等実態調査」より
■「拡張現実技術」で街の記憶を呼び起こせ

 アイフォーンを使った情報提供実験「ピナクリ」(渋谷)

 AR「拡張現実」とはVR「バーチャルリアリティ」と対をなす概念で、現実の空間において位置情報にひも付けした付加価値情報を提供する技術です。東急電鉄が昨年12月から今年3月まで渋谷で行っている街中ソーシャルブックマークサービス「ピナクリ」の実証実験は、アイフォーンの位置情報機能を使って、渋谷の街中でピナクリを立ち上げて、アイフォーンを街の風景に向けると書き込まれた「エアタグ」(セール情報や、街情報)が吹き出しの中に表示されるらしいです。現実の環境に付加情報としてバーチャルな物体を電子情報として合成提示するということなのですが、グーグルマップなどの画像ではなく、現実の風景に色々な情報が映し出されるというサービスということです。

 アイデァとしては面白いですが、うざったい宣伝が表示されるだけなら飽きられるでしょうね。

 誰がどんな情報を提供するか

 小商圏での街情報の提供というのはコンテンツの提供が課題です。分譲マンションの住民向けポータルサイトで提供されている情報は、穴だらけでしかも古い。コンテンツのメンテナンスには手間とお金がかかります。渋谷ほどの街なら情報提供したいスポンサー=商売人は沢山いるでしょうが・・・・・・・PR・売り込みの情報は面白いですか?

 フローの情報、つまり常に更新される新しい情報は、例えば「食べログ」や「ツィッター「ユーチューブ」」のようにユーザーが自分たちで更新していく情報発信が主力になっていくでしょう。多くの人に共感されれば、情報の影響力が強まります。

 可能性があるのはストック情報、街の記憶や歴史の情報提供です。例えば大阪の中心の「船場地区」には沢山の歴史資源や、地域に愛着を持っている住民や元住民が沢山います。船場の歴史や船場での記憶について喜んで語ってくれるでしょうし情報提供してくれるでしょう。

 大阪は歴史資源を大切にしない街だと言われています。AR技術を使えば「街の記憶」を次の世代にも伝えることができるのにと思います。コンテンツを発信したいシニアにはアイフォーンもARもまだまだ知られていないでしょうね。

 全国規模では「セカイカメラ」が面白い実験を行っています。ツィッターと同じく利用者がコンテンツを増やしていくものですね。その場でのフローだけではなく、体系立ててストックされていくとシニア世代にも使いやすくなりますね。

 ピナクリ
http://pinaclip.jp/ へのリンク

セカイカメラ
http://support.sekaicamera.com/ja へのリンク


                                                      (2010年2月23日)
■そのアイデアは古い〜変えないモノと変わっていくモノ

 「変える」為に変わるのではなく、より高みを目指すから変わっていく

 大層な話ではありません。ある店の中華料理の料理人の話です。料理人というのは意外と他の店のことを知らない、勉強しない人が多いようです。絶対的に君臨する料理長と料理町に従う10数人の調理スタッフ。料理長の包丁ワザなどの技術は素晴らしいものの、料理の創意工夫への意欲はなく、十年一日のごとく同じようなメニューを提供しているそうです。確かにうまいけれどもいつも同じ料理で驚きがない。・・・客足はだんだんと遠のいているようです。

 一方で「モード料理」というジャンルが一時人気を呼んでいました。ガラスの花瓶に一杯ごまを詰めて、プリッツではなくスパゲティの唐揚げを一本さしてあるとか、ガラスの皿の下で活きている沢ガニが動いているとか、大きなお皿の真ん中に泡立てたスープがほんの少し載っているとか・・・・奇をてらった器とか盛りつけで「楽しませてくれる」・・・金返せと言いたい料理がありました。奇をてらうバリエーションにも限りがあるので、ちっとも感動はなく、そのアイデアは古いといいたくなる料理です。

 いつも新しいメニューを考えているのは「美味しさで感動させたいから」

 一方、芦屋の某串カツ屋のおやじはいつも新しいメニューを必死に考えていると言います。多分、新しいモノを出そうとしているとか、話題性で注目されようとしているのではなく単に美味しいモノを食べさせてびっくりさせたいという店主の探求心から来るモノだと思います。その店は3ヶ月くらい先まで予約で一杯だそうです。

 何だか色々考えてしまうエピソードです。(寓話ではなく実話です)

                                                   (2010年2月22日)
■博多・天神2010

 2011年博多駅駅ビルが開業します。東急ハンズと阪急百貨店が入居する計画です。
 鹿児島新幹線が1時間20分で博多駅と鹿児島中央駅を結ぶとき、博多駅周辺はどう変わるのでしょうか。

 福岡市を訪れたのは数年ぶりです。

 キャナルシティ博多が意外ににしっかりとメンテナンスされていたのには感心しました。さすがにジョンジャーディ設計の環境は劣化していません。
 お手入れは大変でしょうね。

 開業時の話題性や、迷路のような作りで連想されるのが「素人の思いつきで」ろくに事業性調査も行われずにつくられた「フェスティバルゲート」(大阪)ですが、大違いです。・・・「素人の思いつき」といえば大阪梅田北ヤードのサーカースタジアム構想も、もう少し事業性評価調査をちゃんとやってから構想を打ち上げないと、同友会の山中さんも危惧されていたように、全国で赤字に苦しむサッカースタジアムがあるのに、それに対して 何の解答もない今の構想では市民の支持は得られません「バブルの失敗に学習していないハコモノ行政」といわれてもしかたがありません。平松市長ともあろう方が・・・・。

 地元の百貨店「岩田屋」の旧館はパルコに変身中です。かつてのAサイド,Zサイドと呼ばれた新館は、そのまま「伊勢丹」になっています。(店名は岩田屋ですが)すごく格好いいですがお客さんはあまり入っていません・・・・・業績は順調です。同じグループの三越=福岡三越は何だか阪神百貨店に似ています。大阪梅田の阪神、阪急の棲み分けのように、福岡三越はカジュアル大衆百貨店として生き残るのでしょう。(375億円/3.8万u)

 博多大丸はますます一番店の貫禄がでてきています。(公表されている売上は772億円/5.4万uで、岩田屋の連結売上高990億円を下回りますが、久留米店、外商サロンを含めた数値で現状の面積は4.85万uとうことから考えると一番店は博多大丸でしょう。入店者の数や客層を見ても残念ながら他店に差をつけています)

 この中に出店する阪急はどのポジションをとるのか、天神と少しだけ距離があるので、ブランド揃えなどそれなりにしっかりとした店は作れそうです。(しっかり賃料交渉をして利益を残して下さい)売上げ目標は400億円/4万u。

 九州では鹿児島市で昔からの繁華街「天文館」からJRの駅ビルへと人の流れが変わっています。博多駅周辺はの商業集積がまだまだ薄いので天神に対して大きく逆転することはないと思いますが、日常の来街者をきちんと掴めば、商売は可能です。

 ただ、地元をなめないことです。かつて九州に進出した大阪のエンタメ企業が「博多の人間は口では調子がいいこと言うが、実行力がない」と評したそうです。
 
 このように上から目線でみていると失敗します。彼らは「大阪」をリスペクトしていません。失礼があるといけないので調子を合わせてくれる言葉を鵜呑みにしてはいけません。これは大阪に進出する関東の企業にも同じ事がいえます。

 上記の岩田屋が伊勢丹の傘下に入ったときに岩田屋色が払拭されたことを歓迎するような論調もあったようです。地元のおばちゃんの支持が無い百貨店は駄目です。(伊勢丹色は好きですけれどね。大阪駅の店にもぜひBPQCとコンランショップを入れて下さいね、絶対見に行きます。買えないけれど・・・・・)

 うまく大阪スタイルがとけ込めれば、関西への関心度も高まって、少しは関西をリスペクトしてくれるかもしれません。

                                         (2010年2月20日)


   
博多駅 東急ハンズ      博多駅 阪急百貨店

  
キャナルシティ博多      旧岩田屋→パルコ     福岡三越

■「食文化」の保守性を超えるのには時間をかける必要がある〜東京から見た関西イメージとのギャップ

 食行動はとっても保守的

 東京は全国各地から人が集まっていますから、新しい食文化をニュートラルなポジションから受け入れる素地があります。関西で成功した料理人が東京へ進出しても成功している例が結構あります。逆に、東京の有名料理人が関西に進出してもほとんどの場合失敗しています。食の鉄人で有名になったあの人やこの人も惨敗しています。

 これをもって「上方」の食文化の歴史や優位性を語るのはナンセンスです。(まあ、鉄人の料理が美味しいかどうかは別ですが)食材や調理人はやはり豊かな都市に集まります。その意味で関西の業界関係者も美味しいモノは東京に集まっていることは認めています。

 「食」というのはとても保守的な分野なのです。京阪神の3都市でもそれぞれ街の特徴があり、その土地の住人は自分の街が一番うまいと思っています。大阪の有名シェフが神戸へ進出しても成功しませんし、またその逆に神戸のシェフが大阪へ進出しても成功しません。
(まあ、有名シェフの場合本人が店に顔出すかどうかという質が保たれるかどうかという課題もあります)

 京都は美味しいのか?

 東京の人には京都=京料理=美味しいというイメージがあると思います。下図は大阪通勤者の食に関する都市イメージです。20代女性では「美味しい」というイメージが定着していますが60代女性では神戸より低いですね。

 ミシュランにのるような高級料亭は別にして、京都で日常的に食べる食材のイメージは「漬け物」「茶漬け」「湯豆腐」「あんかけうどん」「ラーメン」などが浮かびます。(もちろん、これは大阪人の偏見でが入っています)
 新鮮な食材が無い地域ですから質素で倹約家であるというイメージが関西の人間には定着しています。・・・・ところが東京の人には、「京料理」「舞子はん」「ミシュラン」といったイメージがすり込まれているので・・・・・・絶対にこんなイメージはないはずです。

 その中で、20代の女性の美味しい街イメージの背景は興味深いです。「情報誌の紹介記事の充実」「学生の街京都ならは若い子向けの店の充実」「LOHAS的なライフスタイルの浸透による京野菜などのヘルシーな食材のへの注目」・・・・錦市場に八百屋さんの経営するレストランがあります・・・・値段の割にもの足りねーと思うのはおじさんだからでしょう。若い子にとってはヘルシーでおしゃれな料理なのかも。

 昔あった心斎橋そごうは東京人の食の勘違いの博覧会のようでした

 残念ながらなくなってしまった「心斎橋そごう」は、かつて食品館で一世を風靡した西武百貨店のノウハウが集約された「グレードの高い」店でした。特に食品売場は関西の市場にないものを導入しようとしたチャレンジングなものでした。もっと時間をかけ定着を図っていけばそれなりに受け入れられたかもしてません。(利益が上がるかどうかは別ですが)

 東京はいろんな地方の人間の集まる場所ですし、関西人も多いので、大阪の店が進出してもそこそこスタイルを変えずにやれます。
 東京の企業の関西進出はそれでは駄目なのです。

 JR大阪駅には無様な失敗をして欲しくない
 
 JR大阪駅は乗降客の56.1%が定期客です。東京駅や、京都駅とは違います。地元の市場に対応した商業施設であることを強く望みます。東京から見えている感覚で京阪神をとらえると必ず失敗しますし、東京で評価されている「いいもの」が受け入れらるには多少時間がかかるという事を織り込んでおく必要があります。健闘を祈ります。

・・・・・・だからいったじゃない
                                                                (2010年2月18日)

図ー都市イメージ比較(大阪市内通勤者)

(なにわ考現学05)
■「変化」の先にある景気回復後の世界の姿

 

まだまだ先が見えない中で、少し底を打ってきた景気がこの先どのように市場を変えて、ビジネスチャンスを変えていくのでしょうか。

1.中国、韓国といったアジアからの観光客抜きにラグジュアリービジネスはなりたたない・・・マスマーケティングはすぐに通用しなくなる

  中国では富裕層はまだまだごく一部で、一代で財をなした層が多く、洗練された消費行動はまだまだこれからとはいうものの「モノ」の購   買意欲は旺盛です。ただ、急速に成長していますから彼らの最先端は、お金を持っていますし、消費意識も国内のリーダー層よりも先鋭化 しています。少し前の日本人と考えて、マスマーケット扱いするとリピーターは獲得できません。

2.自分のスタイルを完成することを追求するだけでなく、顧客との多くの接点を拡げていく小売業が残る  

  情報源がマスコミからさらにWEB媒体等を通じて拡がっていく中で、世の中に流通する情報は「くず」の情報を含めて、総情報量が増えます。その中でロジカルに選別して吟味して情報が選択されるのではなく、インプットされる前段階で直感的に自分に合う世界かどうかを判別し、その後に情報を吟味するというプロセスをとります。世界観の表現と、そこに居る人が自分が知っている人に似ているかどうかが、意外にポイントになります。

  例えば、今話題になっている「スノーボード」の国母選手の着こなしについて、識者の評価を見ると、「全く受け付けない人」と「個人的な好き嫌いは別にしてあれrもありではないか」とする人に2分されています。
 国母氏自身についてしらなくても、おそらく、身近にあのようなファッションをしている人がいるのと縁がないのとで評価が分かれるのだと思います。

  個人レベルでは「自分に関係ない価値観」を持っている人に関心を持たなければいけない必要性はありませんが、小売業、消費者相手のビジネスに関わる人は、自分にすべての情報が見えているわけではないということに自覚的であるべきでしょう。・・・・・百貨店の人はシニアはもちろん、若い人でも意外にものの見方が固まった人が多いように思います。・・・・何故でしょうね。

  良い商品、良いサービスを提供していれば必ず価値を認めてもらえるという姿勢は独自性をつくりために大事ですが、同時に価値観の異なった人にも知ってもらうきかっけや、コミュニケーションの回路を沢山つくることが大事です。

 「自分と関係がある」という第一印象を持ってもらうために、表現だけでなく、人のつながりといったきかっけも無視できない要素です。WEBを 使っても「関係作り」は可能です。

 単に短いつぶやきを集積したツィッターが何故面白いかを考えているうちにこんな事を考え始めました。掲示板と違って、議論のベースを共 有している人同士のリアルタイムのやりとりを見ているうちに誰の言葉が信用できそうか、はっきり見えてきます。

                                                           (2010年2月17日)
■「こだわり」は徹底されないと感動を呼ばない

 「こだわり消費」のさらなる追求

 食品について、産地だけでなく、生産者の顔や、こだわりの生産方法を表記するというパターンの売り方はかなり、一般化してきました。価格以外の差別化のポイントをどう打ち出すか、各社とも苦労されているようです。ただし、みんながやりだすと「差別化」にならないという「こだわり」のインフレーション現象が起きてしまいます。

 昨日、ラジオパーソナリティーの谷五郎さんにお話を伺ったお話ですが。猪肉についていつも頼んでいるお店があるそうですが、猪肉は雌で処女の猪でないとだめだそうです。
 そこの店主は猪肉を仕入れるときに、猟師のところに出向き、鉄砲の弾がどの角度ではいったか、どこまで入り込んでいるか手を突っ込んで確かめるそうです。銃弾が飛び散ると、肉に血が回って味が落ちるということです。

 普通は猟師に電話をして届けさせるだけだそうですが、そこまでやるかという位こだわれば、感動を呼びます。

 野菜を売り物にしているフレンチの食材であるアスパラガスは生産者が土をなめて確かめるところから取り寄せるという事です。

 農家では昔下肥をなめて熟成度合いを確かめたといいます。そういう一生懸命な思いでつかうられた食材へのこだわりは付加価値を高めてくれます。

 「こだわり偽装」と農業のマーケティング

 ただ、「こだわり」が記号として、付加価値を生むとこだわりを偽装する頭のいい人がでてきそうです。例に挙げた猪肉の場合、腑に落ちる合理的な理由がありますが、関連性の不明なこだわり=物語をいくつもかけあわせて、不当に高い値段をつけることは避けたいことです。・・・マーケティングの意味をはき違えていると思います。

 農業の世界ではマーケティングが遅れています。国内の農業は今後3つの方向性にわかれていくと考えています。

 ひとつは「企業化」が進んだ大規模農業、2つめは専門店的な特徴をもった農業、3つめはそのニッチで隙間商品をうめていく兼業農家とアマチュア農業。面白い商品がうまれてくるのは半分アマチュアの農家の作物からではないかと思います。こだわりを徹底すると、最初は食べていけないということは明白だからです。

                                                (2010年2月16日)
■富裕層はどこに消えたのか?

 人口の2%である富裕層(金融資産1億円以上)が日本の金融資産の2割を占めていた(2005年)

 つい3年前までは「富裕層マーケティング」が世の中を席巻していました。1個10円のガムを沢山売るビジネス、1回100円の手数料を積み上げるビジネスより、40億円のプライベートジェットを1機売るビジネス、10億円の資産を預かって1%の手数料をもらいながら運用するビジネスが対比されて、今の日本には後者のビジネスモデルがないという比喩で新しいビジネスの可能性が語られていました。

 現在の不況の中で「富裕層マーケティング」について触れる人が少なくなってきましたが。)
個人的に腹が立つとしても、確かに富裕層という市場は存在するので、冷静にチェックできる今、検証しておくことも大事だろうと思います。

 富裕層の金融資産は08年9月から半年間で約3割減少

 野村総研の調査では、超富裕層で27%減、富裕層で31%減、準富裕層で29%減、アッパーマス層で19%減、マス層で16%減となっているそうです(分類基準は下図参照)。
金融資産を現金で持つ人は超富裕層では2007年には23%だったものが、37%に増加しているそうです。資産5億円以上の層ですからたんす預金と言ってもスケールが違います。

 富裕層が話題になった2005年で金融資産5億円以上の超富裕層は97年に比べて減少しています。本当の超富裕層セレブは早い時期に海外に流出していたのかもしれません。

 自家用ジェットとか、海外の寄宿制の学校にこどもを留学させるとかいう世界は、単にのぞき見して楽しい「おとぎ話」であり、国内でマーケティングの対象としてと知恵を絞る対象であったか疑問です。(住宅とか、投資物件とかのターゲットではありますが)

 金融資産5000万円以上の「準富裕層」。金融資産1億円以上の「富裕層」つまりそこいらにいらっしゃる小金持ちが富裕層「マーケティング」の対象だといえます。野村総研の調査では金融危機で一番痛手を受けている層です。

 かつての中流層である、アッパーマス層から富裕層の消費が活発化しないと「景気回復感」はうまれないでしょう。
資産減少のダメージは受けていても資産はあるのですから、これらの層へのマーケティングはますます重要性を増します。「富裕層」という呼び方は誤解を受けるので変えた方がよいでしょう。

                                                      (2010年2月15日)
 

 
図ー個人の純金融資産 階層別の資産(兆円)


図ー階層別の世帯数


野村総合研究所様の調査資料から作成しました
■情報環境の変化を味方につける大阪の情報発信と固定客作りの発想

 関係がなければ関心もない

 今までは、テレビや雑誌などのマスメデァの影響力が大きかったので、全国に発信される情報は「東京」が中心でした。確かに、東京に住んでいれば、関西や大阪のことは関係無いので、関心の持ちようはありません。〜当たり前の話ですよね。それでも、関西発の情報発信を強めなければと色々と苦労してきたのが今までの経緯でした。

 関西地区のテレビや新聞も色々頑張って地域を盛り上げる情報を発信していましたが、エリア内でのい発信なので、私たちが思うほど東京を始め、他の地域に知られてはいません。昨年、東京のメディァの取材を受けたときに、ギャップがあることが当たり前であることが腑に落ちました。

 首都圏に住んでいれば関西と関係が無くても、生活は完結します。基本的に東京へはどんどん人が流れ込んでいますから、人を集めるためのアピールや、関心を持ってもらうための広報活動は必要ありません。マスメデァによる関西、大阪の情報発信を働きかけても、吉本とかタイガースと言ったわかりやすいネタしか扱いようがありません。

 マスメデァの転換期と限りない人口集中を前提とした東京型の成長モデルの終焉

 最近、テレビのCMが変わってきたのに気づきませんか。パチンコ屋さん、サラ金屋さん、形を変えたサラ金のカード会社のリボ払い、債権整理の弁護士さん、・・・やたらと多い通販番組、もうすぐ宗教団体も解禁されそうです。

 CM料金が安くなっているんですね。事例に上げたほかにも地域密着の小さな企業も広告がだしやすくなっているようです。全国紙の広告もそうですね。

 いくら情報発信量が増えても、コンテンツは圧倒的に東京発のマスメデァの番組や紙面の方がはるかに、質が高かったのです。最近、NHKでもユーチューブの映像紹介でコーナーを使っています。素人であっても、アイデアや丁寧さは見劣りしません。ニュースにしてもツィッターで発信されているフリージャーナリストのニュースの方がはるかに真相に肉薄しています。広告収入が減少しているためか、コンテンツの質の差が無くなってきています。

 大阪の情報発信はもう、大阪に関心のない東京経由だけに頼る必要は無いのだと思います。知恵を使えばコンテンツを練り上げることができます。

 とにかく、大阪に少しでも関わりを持った人にどのように継続的なコミュニケーションをとっていくかが大事です。WEBだけでなく、色々な方法が考えられます。そして、大阪だけでなく大阪に関わりのある関西、そいてその周辺部の動きもその情報ルートに載せて発信することです。
 
 大阪に関わりのある「コアな固定客」を拡大することで、大阪に関心の無い人達も興味を持ってくれるようになります。

 マスメデァに限らず、東京の都市インフラは人口の無限の増大による成長を前提としたモノです。そう簡単に舵を切り替えることはできません。東京では企業で言う固定費、インフラ等の固定コストがこれから都市経営を圧迫していきます。
 何が何でも集中させて一人勝ちする発想から次の時代の発想に切り替えが早いほど有利です。

                                                                  (2010年2月12日)

■大阪をもっと知ってもらうマルチコネクション戦略

 メディアミックスの本当の意味を理解しないといけない

 広告代理店業界の元気がないそうです。あの電通の社長が「電通がこんなことまでやるのかといわれることまでやらないといけない」と檄をとばしたそうです。

 マスメディアの接触率が低下して、ネット広告が伸びているそうです。
 テレビ、雑誌とWEBの連動を狙った広告も目立ちます。(続きはネットでというやつです)。アルファブロガーを通じたキャンペーンや、ツィッターを使った告知などが話題になっています。大抵失敗していますけどね。
 マス広告と同じ感覚でコミュニケーションを組み立てようとしているから、都合のいい情報をいかに一方的に送りつけるかしか考えていないからです。

 情報もまた集中したところから送りつけるモノではなく循環させるモノとして考えないといけません。先進的な小売業、ブルックスブラザースやサックスはWEBを顧客の気持ちや情報を吸い上げるツールとして使っています。

 ネット=無秩序 通販=価格訴求の安物という先入観は捨てること

 私は、情報媒体では「新聞」、小売業では「百貨店」はこの社会に必要なインフラでこの先も無くならないと思っています。情報や商品についての目利きや、品質保証をできるの、その為のプロがいるのはこの業態だけだからです。

 無料である情報があふれかえっても、何がより正確か、セレクトする基準、目が必要です。ただ、情報にしても、モノの販売にしても一方通行の時代は終わっています。上記の対極にあるネットやWEB通販はある意味、顧客サイドからの流れを象徴しています。
 (通販がいかにお客様の反応にダイレクトに対応しているかについては稿をあらためます)

 ・・・・・・大阪の情報発信になぜマルチコネクションが必要かの本論はまた次回

                                                              (2010年2月10日)

■すでにダイレクトにつながっている都市と地方の生活と生産

 生産者と消費者はすでにつながりを持っている

 主食である「お米」について購入先をうかがうと「直接取り寄せている」と答えるひとは意外に多いです。特に地方に行けば行くほど、そのような傾向にあります。農林水産省の調査を見ても地域によっては4割を超える人が、直接的に生産者から入手しています。

 首都圏、近畿圏でも2割前後の人が何らかの形で直接入手しています。

 今のところ、生産者にもそのつながりを利用して、地域の産品に拡げようという発想はあまりないかもしれません。

 最近の通販業界の動向を分析していると、「総合通販」よりとても強い商品の「単品通販」から商品の扱いを拡げている事業が伸びています。お米は確実にリピーターなのでその関係から「地域の産品」を拡げていけるのにと、もったいない気がします。

 もちろん、お米に比べて野菜などは鮮度管理や「商品化のセンス」が求められるので、地域の生産者にはハードルが高いものです。ましてや加工食品については農水省の補助金があっても「商品化」が出来ていないケースが多いので、もっとハードルが高い・・・つい商売の話になってしまいましたが、地域と都市部に「モノ」の流れのつながりがあるという事は、都市と地方のまちづくり、村おこしに関しても大きな機会があると思います。

 都市から地方に提供できるサービス

 先日、大阪市内の専門学校の生徒さん達に、地方の産物を使ったスイーツ作りに参加してもらう事業をお手伝いしました。

 地元紙にも取り上げられ反響の大きかったプロジェクトです。

 都市には若い人材が集まります。そこで身につけたスキルやセンスを地域の良いものの商品化に役立てる。そんなしかけをどんどん実現していけば「大阪」にももっと地方から「敬意」を払ってもらえるのにと思います。繰り返しいいますが、一人勝ちしようという発想では何も得られない。

 集中から循環へ、すべての解決策はその転換にあります。

                                                                   (2010年2月9日)
図ーお米の購入先

図ーお米を直接購入する比率(直接購入、産地直売、縁故の合計)


林水産省食料品消費モニター 2008年
■「ヒト」を循環させるという発想での大阪の都市づくり

 定住促進、集客の一方通行ではなく人の動きの循環をつくる

 「三大都市圏への人口集中がとまる」という新聞の見出しはいったいどうなんでしょう。三大都市圏である大阪圏の人口は23年間毎年1万人以上の」転出超過が続いていたはずです。名古屋圏は7年ぶりの転出超過だそうですが、正しい表記は「東京圏への人口集中にブレーキがかかる」という表記になるはずです。・・・あまり大阪のことを真剣に考えていない事がありありとわかります。

 大阪圏は人口減少が続いています。日本として人口は減るつつある中で、何とか大阪に人を集めようと知恵を絞ってきました。何度もいいますが、今ままでのように大阪に都市機能、投資を集中させるために人口も集中させようという発想は切り替えていく必要があると思います。

 集めるばかりではなく「人」を送り出すという視点で考えていけば、周辺地域からの支持も得られますし、東京、名古屋とは違った都市の魅力が形成できます。

 「交流人口」は人の往来であるはず

 定住人口に対してよく使われる「交流人口」は単に観光客の誘致ではないはずです。人が行ったり来たりする、何度もくり返し、お互いに訪問しあうというイメージで考えていく必要があります。

 農業や林業など土地の恵みを中心にした産業の復権のために、産地直送などの安定した購買者層としても都市住民という位置づけだけでなく、一時的な労働力であったり、「商品化」するためのブレーンであったりという形での人材のミックスも考えられます。人材の偏りの解消も地方分権を進める中では必要です。

 「文化首都」の取り組みなどをみても、ユニークで歴史資源のある街を順番に広域エリア全体でバックアップしていく仕組みを運営していく事務局を引き受けて世界に発信していけば、大阪経由で発信されるユニークで魅力的な街についての情報コンテンツが沢山用意できます。


                                                        (2010年2月8日)
■「ヒト・モノ・カネが循環する大阪」作りの為の情報戦略@

 「情報発信」の重要性と、受け取ってもらうための戦略

 永らく、大阪には情報発信力がないと言われていました。マスメディアは東京に集中し、雑誌などの出版を支えるライター、デザイナーや印刷屋さんも大阪では少なく、関西の雑誌でも東京で制作するとも言われていました。

 関西の情報発信量をまとめた総務省のの統計数字を見ると、関西、中でも滋賀県の発信量が大幅に増えています。(おそらくWEB関連の統計の取り方が変わったのだと思いますが)それにしても中部は低調ですね。

 統計数字ほど、関西、滋賀県の注目度が高まったという実感はないですね。発信した情報が受け取ってもらえないのでしょう。WEBを使えばコストをかけずに簡単に「情報」受発信できるだけに、影響力を与える情報をどう届けるかの戦略が必要です。

 新しいメディアの可能性

 我々のように古いタイプの人間は、中々新しいメディアに対しての正しい評価が出来ません。過度に期待するか、ほとんど無視するかの両極端です。
 今週、週刊朝日の記事をきっかけとした、検察の出頭命令を巡る騒ぎはマスコミでは一切報道されていませんが、ジャーナリストのツィッターによってリアルタイムで衆目のしるところとなりました。正直、つぶやきの配信について馬鹿にしていましたが、これをきっかけに政治家のツィッターを見ると面白いし、本音が出やすくてこれから何をしようと考えているか鎧をまとわない「思考」がみえてとても面白い。

 人に勧められてSNSの一つであるMIXIも初めてみたのですが、これもまた面白い。某巨大掲示板と対極の攻撃性が排除されたゆるやかな空気もまた人間の命にとって必要なモノだと思います。よくMIXIに掲載した内輪向けの映像が外部に流出して攻撃されたりしていますが、つい無防備になるような親密でフレンドリーなやりとりがこの仕組みのルールであるようです。

(その後、SNSは私には合わないことがわかり、お休みしています。ビジネスのつながりのSNSの御案内もいただくのですが,全てお断りしています。・・・・LINEもフェイスブックも参加しませんので悪しからずご了承下さい)

 2chと比較して考えるのは、WEBを使ったコミュニケーションでは「けんか」というか何か建設的な結論に到達するための「議論」はできないなということです。
 顔をあわせている、あるいはそれに近い価値観を共有しているコミュニティであれば相手に対して「きつい」ことがいえますが、おそらく、どんな仕組みであってもWEBだけのやりとりでは、お互いに踏み込んだコミュニケーションが形成されないということです。

 情報発信量が増えてもお客様に届かないという事からどう変えていくのか。

 私たちは大阪を元気にする為に、大阪に「集客」することだけを考えてきました。来ていただくだけでなく、顔をつきあわせたコミュニケーションをとる。そいてさまざまなWEB媒体を使った定期的な情報発信を行う。

 それだけではなく、他所の地域にでかけた大阪人が、そいこで大阪を紹介する、その地域のいいものを大阪に持ち帰って紹介する・・・。そういった継続的な情報の循環システムまで考えた観光キャンぺーン戦略が必要です。

 SNSと自社サイトをリンクさせるアメリカの小売業

 「小売業にとってSNSは好機であると同時にチャレンジだ。マス市場とメディアが断片かし、過去のように大衆に到達するのが簡単でなくなるからだ。その代わり、SNSを通じてもっとパーソナルに届き、情報や買い物体験を共有できる」

 シアーズは「アイシアーズコミュニティ」を設け、シアーズのサービスや商品を討論したり、批評や提案する場を提供。

 ウォルマートのサイトでは客に商品の批評を書き込んでもらい、「フェースブック」※SNSのひとつとリンクさせてそこでも批評を見られるようにしている。
 
 トリー・バーチのウェブサイトには本人によるスタイルガイドのコーナーがありツィッターと、フェースブックにそれぞれリンクさせている。バーチ氏は自分で何が話されているかチッェクしている層です。

 WEBがすべてを解決するわけではありませんが、お客様との関係性を構築するために活用が増えていくことは間違いありません。私が調査した事例でも、飲食店は新しい顧客を獲得するためというより、既存のお客様をつなぎ止めるためにWEB・ケータイを使っているケースが多いようです。

 マスメディァの方でも時代変化に対応する動きがでてきています。昨日取材した興味深い事例は、また後日に、ご紹介いたします。

 本日のまとめ

 「情報発信」は量を拡大する事を目的とする時代は終わっている。顧客とのより深い関係作りのために、自分たちの情報を一方的に発信するだけでなく相手(地方)の情報)も受信し、発信していく必要がある。
 コミュニケーションで大事なのは「顔合わせる」事。大阪へ来てもらう機会、大阪人が出かける機会を大事にし、大阪のことをもっと知ってもらう市民レベルの活動を強化する。・・・その上でWEBをもっと活用といいことがあるかも・・・・・。

                                                 (2010年2月5日)
図ー関西各府県の情報発信量

図ー関西、関東、中部の情報発信量


(資料)総務省「情報流通センサス」
(注) 発信情報量とは、各メディアの情報発信者が1年間に送り出した情報の総量。
2009年版関西経済白書 関西データベース((財)関西社会経済研究所掲載のデータを加工しました
■「新しい顧客」はどこから来たのか

 「新たな顧客、自店競合なし」(繊研新聞 2010年2月1日)・・・・?

 昨日の記事は2月1日の上記記事をベースに考察したモノです。

 大手量販店にとっての「新たな顧客」?って以前はどこで購入していたのでしょうか?
 おしゃれというのに慣れていない様子から、百貨店顧客が格安商品に流出してきたというわけではなさそうです。確かにスーツ9,800円が7,800円になったのを買いに来た「20才台の若者」というのは紳士服量販店や若者向けの専門店からのスイッチという事が想像できますが、ジーンズを初めてはくような60歳代の団塊世代や40歳代・・・って。どこで服を買っていたんでしょう。

 商店街の洋品店とか、チラシの通信販売、しまむらとか安売りの専門量販店?・・・その意味でユニクロはおしゃれな若い人(ファッション専門学校生で利用ブランドの1位でした)からおしゃれに無縁な中高年まで幅広い層をうまくつかめていますね。

 量販店ではついでに他の商品を買うような、波及効果はなかったようですが、ある種のフックをしかければ、新しい客を呼べる(呼び戻せる)事がわかりました。
 客層を考えると大手量販店の衣料品の建て直しは、百貨店出身のカリスマバイヤーではなく、もっと泥臭い商品構成を組み立てられる人の方が適任なのかもしれません。
カリスマバイヤー 藤巻さんのご冥福を謹んでお祈りもうしあげます 揶揄してすいませんでした)

 クリエィティブクラスだけではない顧客設定

 創造的でセンスの良いクリエィティブクラスを集めるのが都市の活性化につながると思いますが、ビジネスを考えるときにはダサイけれどそこそこお金を持っている(格安ジーンズしか買えないのではなく、格安だから買いやすいだけです)人達をどう楽しませるかがお金を街に落としてもらうための課題です。

 数百万円の着物を購入される客様がどんな方かご存じですか・・・・「洗練」された見るからに富裕層という方ばかりではありませんよ。

                                                           (2010年2月4日)
■激安ジーンズは誰が買うのか

 激安ジーンズ880円は誰が買っているのか?

 昨年8月に発売されたイオンの880円ジーンズですが、購入者は半分が60歳代の団塊世代。次が40歳代ので、いずれも「ジーンズはくのが初めての方」との事です。1ヶ月遅れで880円ジーンズの販売を始めたダイエーでも同じ傾向のようです。???団塊世代ってジーンズを制服とするような「スニーカー世代」「ビートルズ世代」ではなかったのでしょうか?

 テレビで大々的に宣伝したことが動員につながったとの事です。

 広告代理店が新しい消費者像として描き出した「団塊世代」イメージは本当にごく少数の人達にしか当てはまらないモノでよく言われるように実際はリアルタイムでビートルズを聴いていたのはクラスの中でも1〜2人で、ほとんどは橋幸夫とかを聴いていたのが実態なんでしょうね。ジーンズ、当時はジーパン(最近は「デニム」といわないと通じないようですが)はまだ作業着のイメージがあって、「おしゃれ」に縁遠い多数派の人達はやっと最近になってはき始めたのでしょうか?スーパーでしたら敷居も低いですしね。

 おしゃれは先端層だけの楽しみではない

 業界にいると対、先端層の動向にばかり注意が向きます。おしゃれに関心がないと自覚しているダサイ人々は実は多数派であり、何かのきっかけがあれば「おしゃれ」に気が向く可能性だってあるのです。実はお金だったらあるのかもしれません。激安ジーンズはある種のバリヤーを解除し、そのような人々を店に呼び込む呼び水となっているのだと思います。

 ファッションに関わる人は「ダサイ」人々を憎悪しています。特にGMSや一部の百貨店はダサイ人のおしゃれ心を喚起し、需要を捕まえる必要があります。その鍵はテレビであり身近なイメージのある芸人さんであるように思います。

 その後激安ジーンズは市場から姿を消しました。一体何だったんでしょうね。
                                                     (2010年2月3日)
■百貨店の現金売上について

 掛け売りの比率の違いの背景

 各社の決算資料を比較して掛け売り、現金売りを比較しましたが、それぞれの会社の決算処理の考え方の違いまで踏み込まないとミスリードしてしまいます。

 島屋の掛け売りが7割、現金売上が3割という数値と大丸の掛け売りが14.8%、現金売りが85.2%と言う数値を単純に比較するととても大きな違いに見えましたが、島屋と阪急の現金売上の推移をみてみると3〜4割でそれほど大きなギャップはありません。

 下図の大丸の現金シェアと自社カードのシェアをあわせると100を超えるので、大丸では自社カードを現金売上としていて、島屋、阪急はカード売上は現金売上に含んでいないのでしょう。島屋が極端に掛け売りが多いというような誤解を与えてしまい大変失礼いたしました。

 大丸は1998年から1999年にかけて店舗の売上げを大きく減少させています。法人売上、一部の外商の掛け売りを思い切って圧縮したのだと思います。ポイントカードの導入も早かったですから、利益を出すための経営改革には一歩先んじたものがあります。

 有楽町西武の家賃負担

 有楽町西武の閉店は家賃負担が大きという事が指摘されています。有楽町阪急の大家さんが阪急阪神東宝グループの東宝であるので融通が利く反面、西武は朝日新聞社が大家さんで交渉が出来なかったという記事もでています。

 確かに百貨店にとって家賃負担は大きな課題です。とはいえ有楽町阪急が112億円上げているのに対し、有楽町西武は50億円の売上であったそうですから、大家さんの所為にしてはいけないでしょう。


                                                          (2010年2月2日)

図ー現金売上の比率(各社決算資料より)


図ー売上に占める自社カードの比率(各社決算資料より)



■賑わいと売上は比例しないというものの・・・売上をささえる見えない顧客層

 ターミナル百貨店は入店客数も多いけれど
 
 西武有楽町、四条河原町阪急と都心の目立つ場所にある百貨店の閉店のニュースに、世の中では百貨店への不安が一般のニュースの中でも取り上げられています。
 各社が発表している有価証券報告書から入店客数と売上高を抜き出してみても、入店客数のわりに売上が不振な店であったことがわかります。閉店が検討されている松坂屋名古屋店は名古屋駅のターミナルにあって入店客は多いのですから、何か対策が立てられそうな気がしますが、おそらく建て替え後の賃料負担が厳しかったのでしょうね。

 数値を見ていると、苦しいと言われる神戸阪急が入店客数が少ない割に検討しているのが伺えます。また、西武が撤退する有楽町で残っている阪急の意外な入店客数の少なさが注目されます。駅前立地でも施設間の競争が激しいことが伺えます。

 大丸は入館者数が多い、梅田、東京、札幌よりもターミナルではない心斎橋、神戸、京都の方が売上高は高くなっています。・・・・外商が強いのかなと思えますが、有価証券報告書には実に意外な数字が掲載されています。

 掛け売り客と現金客

 外商が強い島屋では掛け売りが7割になっています。大丸の掛け売り率は14.8%と全く逆転しています。そして、各社のカード売上を比較すると、伊勢丹は53.5%、阪急阪神で40.4%、三越が37.5%、大丸は69.4%となっています。(島屋は未公表)

 おそらく、大丸の経営改革の中で外商の掛け売りをカードに切り替えてきたのでしょうね。三越、伊勢丹は掛け売り率を公表していませんが、おそらく三越もかなり掛け売りの比率が高いだろうと想像されます。(カード比率の高い伊勢丹との統合で、これからの調整が大変でしょうねよく調べると三越の現金売上は7割を超えていました。各社それぞれの売上計上の考え方の違いであって、表面的な数値では比較できません。大変失礼いたしました。

 外商の掛け売りは利益率も低く、外商担当者が売上を自分の資産として囲い込む(=共有化させようとしない)ので経営者としてはなんとかオープンに合理化していきたい領域です。

 掛け売りという商習慣はなくなっていくでしょうが、1対1のつながりをベースにした顧客とのつながりが百貨店の資産でもあります。大丸はその意味で掛け売りからカードへの切り替えに成功しているのかも知れません。

 梅田の2011年問題は店頭だけでなく、アイカードでのCRMに定評のある伊勢丹と、カード比率を高めている大丸、そして鉄道グループの総合力とPITAPAとの連携で攻勢を強めているエイチツーオー(阪急阪神グループ)のカードによる顧客囲い込み、CRMの戦いにも注目しておく必要があります。
                                                     (2010年2月1日)

図ー入店客数(年間  万人) 

図ー百貨店売上高 (億円)  


図ー都心百貨店売上高比較(億円)



2009年に発表された有価証券報告書から作成  〜百貨店はその後大きく売上を落としているのはご承知の通り
 1月
四条河原町阪急の凋落に見る百貨店にとってのキャリアヤングマーケットの変化

 HANAKO世代が食い散らかしたキャリア市場

 有楽町西武の閉店の報に続く四条河原町阪急の閉店のニュースは百貨店業界のひとつの曲がり角を示しています。2つの店に共通しているのはヤングキャリアというお金を持っているOL層を対象にした店舗だと言うことです。百貨店のイメージターゲットはこのキャリア層と40〜50歳代の裕福なミセス層が中心でした。(実際は60〜70歳前後のシニア層が高額商品の購入者ですが)

 かつてはこのライフステージにはHANAKO世代と呼ばれた消費意欲の旺盛な人達がいました。四条河原町阪急はブランド商品の品揃えでこの世代の需要を掴んでいたのです。
 京都駅前へのJR京と伊勢丹の出店、や消費不況という外部要因はありますが、この店が低迷したのはHANAKO世代向けの勝ちパターンから抜け出せなくて、その次の世代の価値観に対応できなかった事にあります。
(そういえばHANAKO WEST も廃刊になりましたね)

 HANAKO世代の支出は加齢によってファッションからアンチエイジング化粧品、体型補正肌着、韓国等へのエステ旅行などに分散しています。まあ、そこにお店の舵を切り替えるという対応策もあったでしょうが、・・・・百貨店には難しいかも知れません。

 その次の世代は、派遣で働くヒトが多いため、キャリアになってもお金が使えるようになるひとも少ないのですが、もともと古着やユニクロをコーディネイトして着こなしたり、ファッション好きでもさらに若い世代が利用する駅ビルの安いブランドも利用したりしますので、それまでの「キャリア」とは全く違う対応が必要になります。

 規模が小さいことを理由にしてはいけない、百貨店の枠を外せば可能性はある立地

 規模が小さいことを不振の原因にあげる報道がありました。同じ規模のOPA河原町店は126億売っています。四条河原町阪急の影響で一時は85億まで売上が減少していた藤井大丸は138億円売っています。

 丸善の跡地がジャンカラになったようにパチンコ屋やカラオケが跡地に入ることを心配する向きもありますが、ビルのオーナーが大企業ですので短期的な収益を欲張らなければ、採算のとれる商業施設は可能な立地です。

 心斎橋大丸の北館や名古屋三越のラシックのように島屋と連動するのが一番街にとって望ましいのですが。百貨店流のオペレーションは変わっていかなければなりません。

 余談

 「紀ノ国屋」がJR東日本に買収されましたね。「成城石井」などの高級スーパーの先駆けともいえる店はオーナー経営者の強いこだわりがあってこそ魅力があったのですが、次々と買収されていきました。サラリーマンが経営する「高級スーパ」はつまらないなあというのは偏見でしょうか。

                                                   (2010年1月29日)

図−四条河原町阪急の売上げ推移(億円)



図ー京都の百貨店の売上げ推移(億円)




■「仁川」は通過点ではない〜経済自由区と並行して文化芸術に投資

 「ハブ空港」として経済面にばかり注目される仁川の文化政策

 仁川は韓国第三の都市で古くから港湾都市として栄えてきました。中華街もある街で横浜とか神戸に似た都市です。最近では「ハブ空港」についての議論が盛んで注目されていますが、「仁川空港」が国際的なハブ空港として整備されたのは2002年の日韓ワールドカップを前にした2001年のことです。それ以来急激に存在感の強い空港となっています。

(日本ではワールドカップの後に何が残ったんでしょうね。各地方に建設された閑古鳥の鳴く巨大スタジアム?)

 もともとはソウル市のベッドタウンとして都市開発が進んでいた街で、ソウル市と地下鉄でつながっています。ソウルとは40km離れており、約1時間の距離でしたが高速鉄道の整備で40〜50分の距離に近づきます。

 2003年には「経済自由区域」に指定され外資系の企業を積極的に誘致する政策がとられています。さらに2009年には韓国政府が毎年1カ所選定する「地域訪問の都市事業」に選定され観光資源の整備開発を行っています。

 韓国ではソウル市にすべてのものが集中しています。ソウルと40分でつながってしまうと、通過するだけの都市になってしまうだろうと思っていたのですが、そうではないようです。規制緩和された経済特区までは我が国でもよく聞く話ですが、文化・スポーツ・観光に投資する事で町を発展させるという発想はあまりないようです。
 (需要の無い伝統文化はなくなってしまえ・・・という文化人嫌いの人はいますが)

 ちなみに国家予算の中での文化への支出は日本が0.12%、中国が0.3%、豪州が0.77%、韓国が0.95%と国家政策としてのウェートが違うという背景もあります。(この数字は文化庁が公表したもので予算取りの思惑もあるでしょうから、多少割り引いた方がいいでしょうね)

 仁川の取り組みの具体例

 ・イタリアのミラノ市と共同で「ミラノデザインシティ」を整備、展示館、科学博物館、音楽院などミラノにデザイン関連施設を誘致整備
 ・都市の景観整備マニュアルを作成し看板や広告のデザインを管理
 ・文化芸術施設設置の容積率緩和
 ・文化観光資源のPR(チャイナタウン、世界文化遺産の文化祭り、ロックフェスティバル等)

 ・文化遺産、無形文化財を発掘し伝統文化と現代芸術の調和を図る国際イベントの開催
 ・文化芸需財団は、地域の小学校から芸術創作教育を行う

 大阪に必要なのは国際的に通用するオリジナルな文化の発信

 大阪が世界中から創造的な人材を集めるには、オリジナルな文化の発信です。以前ご紹介しましたが。神戸への観光客は「異人館」より「神社」に関心を持つとおいうエピソードからも見せかけでなくオリジナルなものが外国人を惹きつけると言う「教訓」を読み取れます。

 日本でのハブ空港での議論でも、経済的な優遇策、規制緩和までは考えられても、そこに創造的な人材を集める仕組みにまでは考えがいたっていないように思います。規制緩和、自由競争だけでない構想力を持った戦略が必要です。

 このままでは何もかも後手に回ってしまいそうです。

                                                   (2010年1月28日)
■百貨店は必要がないから無くなるのか?

 有楽町西武の閉店のニュースを巡って

 百貨店の売上げ低迷のニュースが続く中で、有楽町西武閉店のニュースはマスメディアで大きく取り上げられています。

 すでに一昨年から、いくつもの百貨店が閉鎖されてきています。東京の読者にとっては一等地である有楽町での有名店の閉店なので関心が高いのでしょう。これでまた「外資系の証券アナリスト」とかが百貨店の業態としての市場のニーズはなくなったとかコメントされるのでしょうね。

 (我が国のマスコミの世界では年俸の高さと見識や知識が正比例するというわかりやすい原則が活きているようです)

 基本的には都心の一等地に高い家賃をはらってテナント入居する百貨店は永久に黒字にはなりません。

 企業グループとしての戦略(というか面子)あるいは、オーナーサイドが何としても百貨店を入れたいという強い思いがある場合を除き出店してはいけないのです。

 大きく損をしない採算ラインが高いので、お店の選択肢として選べる範囲が限られます。高額品がどんどん売れる時期であればいいのですが、そうでなくなるととたんに苦しくなります。
 名古屋駅前の松坂屋はビルの建て替えの話が出ている中で撤退が検討されています。名古屋では駅前での開発が進み中央新幹線開通を前にしてでの意思決定です。

 最近大丸が始めているようなローコスト運営での専門店ビルであればまだ可能性があります。
 丸井も閉鎖した店舗の跡地を専門店ビルにするという計画を持っています。「百貨店」の運営コストが高すぎるのです。一方でそれが百貨店の魅力でもあるのですが、その魅力を持って時代対応ができる店舗のモデルをいくつ作れるかが「百貨店」生き残りの鍵です。

 好調「ルミネ」の百貨店化

 商業ビルの中で好調に推移しているJR東日本のルミネはお客様のニーズに応えてファッションから雑貨まで百貨店同様の商品を揃えられるようになってきています。食品もありますし、後は化粧品だけといわれています。テナントビルですが接客訓練にも力を入れています。20〜35歳の層の百貨店ともいえる店舗になっています。

 百貨店という業態が不必要になったのではなく、百貨店が時代対応を怠ったり、間違えた戦略で採算のあわない運営を続けた結果、持ちこたえられない店舗が出てきたというのが本質であると思います。

 経済新聞に代表されるメディアの報道もその本質を理解していないので、明日にも百貨店が無くなるような記事が多いのです。

 昨日お招きいただいた某新聞社のパーティで某百貨店の店長が「実はうちは売上増が続いているんですよ」とこっそりと教えて下さいました。私にはその理由がよくわかります。そんな話はどこにも報道されていないので世の中的には「無いこと」になっています。

                                                    (2010年1月27日)




■地域密着を謳うJリーグでは「東京」の影が薄い〜スポーツとエリアマーケティング

 東京の都市の規模が地域への愛着を薄めている?

 地域密着を謳うJリーグが発足したときに、人気実力ともにナンバー1のビッグクラブであった「ヴェルディ川崎」は、当初チーム名にスポンサー企業の名前を入れることに強くこだわっていました。
 2000年には念願のホームタウンの東京移設が実現しましたが、人気、実力ともに低迷しJ2が指定席になってしました。Jリーグの地域密着の理念から意図的に東京にビッグクラブを持たせなかったという説もありますが、全国を視野に入れたマーケティングを考えるクラブとサポーターの関係がぎくしゃくしていたという事が東京に有力なサッカークラブが根付かない原因のような気がします。

 現在東京をホームタウンとする「FC東京」は地域企業である「東京ガス」が母体です。その為かサポーターと目線が近いのかも知れません。東京のマスコミによくでている「サッカー通」のタレントはJリーグより海外のサッカーチームに詳しい人が多いようです。

 東京という都市のスケールが地域として愛着の対象となるには大きすぎるのかもしれません。

 百貨店と「Jリーグ的」なもの

 かつて、Jリーグが地上波テレビでも放映されるほど「メジャー」な人気があったころ、「ガンバ大阪」の万博スタジアムへ向かう乗換駅である千里中央にある「千里阪急」の店長にこれだけの人が集まっているのに「この店」は何も関わりを持とうとしていないと話した事があります。
 その時の趣旨としては

・若い年代をつかめていない百貨店の駄目さ具合
・世の中の新しいダイナミックな動きに呼応していない百貨店の対応力の硬直性
・地域の人に深く入りこめていない地域対応の遅れ

といった課題をいいたかったのですが・・・・同意はされても、具体的な対応はとりようもなく、(従ってビジネスとしてお手伝いしようもなく)・・・時代は変わっても、
手堅い売場作りが今も続いています。

 百貨店の宿命的な課題なのかな・・・・と思っていましたが、WEBでしらべるとさすがに浦和伊勢丹は「浦和レッズ」を店頭に取り込んでいました。(さすがに伊勢丹は素早い)肝心のレッズが最近低迷気味ではありますが・・・・。

 見るだけでなく参加する事もあるスポーツはうまく利用すると「ヒト」「モノ」「カネ」を循環させる推進力となります。(かといって、先にビッグスタジアムを建設してから後知恵で仕組みをでっち上げるのは駄目ですよ・・・・)
          (2010年01月26日)
■「ヒト」「モノ」「カネ」の資源は、集めることでなく循環させる知恵が競争力になる

 家具産地の成長を支えた物流の仕組み

 九州福岡県の大川市と言えば日本有数の家具の産地として知られています。戦後の高度成長期に全国に大川の家具が浸透していった理由の一つに地元の「Y運輸」の存在があるそうです。

 注文を受けた家具メーカーは個別に配送の手配をするのではなく、このY運輸が一旦集約し、家具を混載して配送したのだそうです。現在でも各メーカーから一旦ここに集められて各地の家具卸や家具屋さんに配送されています。送り先が特化されているので物流の効率化が図られたと言うことです。

 大手の系列というわけでなく、別々のメーカーのものを送り先別にまとめるという仕組みが、昭和30年代〜40年代頃に実現されていたという点がとても興味深いです。

 「ヒト」「モノ」「カネ」を集めてどうするか?

 都市の再生を考えるときに、どうしても「ヒト」「モノ」「カネ」を集めるための仕組みから発想しがちです。

 東京の一極集中で「効率」は高まるといわれていますが、それだけで、何か新しい価値が創造されているでしょうか?
 
 もうそろそろ発想の出発点を変える時に来ているようです。
 集めた「ヒト」「カネ」「モノ」をどう循環させていくか?その知恵を持つ都市が魅力的になり、「ヒト」「カネ」「モノ」が集まる都市になると思います。

 他所の成功例をみて「国際金融センター」「カジノ」「ハブ空港」「巨大ターミナルビル」「超特大アウトレットモール」「国際観光都市」「FAZ」「国際貿易センター」などのゴールを設定しても実態はついてこないでしょう。


 さて、それでは具体的にどうするか少し落ち着いて考えてみて、この場でもご報告いたしましょう。

                                                (2010年1月25日)
■「関西復権」は「関西」という概念を超えるところから始まる

 愛着を持てる「地域」の地理的限界

 「大阪ガス」は京都では何故「京都ガス」ではないのかと嫌みを言われるそうです。愛着をもてる地域というのは日常の行動圏や知り合いのいる範囲が最小単位でしょう。
 大阪府内でも泉州南部の住民が、大阪市内に通勤していると、「毎日大阪まで通って大変やねえ」と感心されると聞いたことがあります。

 彼の地における「大阪」は異国のようなものであるようです。

 そういう皮膚感覚からすると「関西」という概念はいったい何なのでしょうね。

 「関西」というエリア設定については、はっきりとした境界線があるわけではありません。

 どちらかといえば東京を中心とした「関東」に対する比較で語られる為の概念であるという説もあります。「復権」について語られるのも結構古く、最近話題の「道州制」について関西経済連合会が提言したのは実に1955年に遡ります。1964年には「東京・大阪2眼レフ論」が語られ、1968年には松下幸之助による「地域独立論」が発表されています。

 戦後の国の政策の中では工場等の地方分散とともに、生活水準の向上を「工業生産の効率化」で実現する風潮が強まり、「合理化」「効率化」の中で地域の持っていた風土が表面的には均質化してきました。

 私たちは何故「関西復権」について飽きずに語り続けるのか?

 最近、「関西」を語る論調でも東京への対抗意識をあからさまに語る論調は少なくなってきました。「関西復権」っていってもどこに戻るのかという疑問を提示する人も少なくありません。

 ただ、産業や学術研究、文化などのポテンシャルがあるにも関わらず、「正当に評価されていない」「活かされていない」というふがいなさに対すいらだちは、私たちの中にまだまだ根深くあります。「関西復権」について飽きずに語り続ける背景にはそんな思いがあります。
 
 「正当に評価されていない」という思いの背景にはマスコミの東京集中論が根拠としてあげられています。正直、東京のマスコミは「関西」には全く興味がありません。当たり前ですね、関係ないのですから。関西は面白おかしいエキゾチックなステレオタイプへのからかいの対象でしかありません。

 WEBを通じて個人が情報発信ができるようになった現在、もうそれは言い訳にはなりません。

 東京と違うものから東京的なものと違うものへの転換

 関西州の旗印が周辺の自治体の支持を得るためには、東京(関東)に対抗する関西という考え方では他の地域の指示は得られません。

 イメージとしては京阪神がお互いに悪口を言いながら同じテーブルで会議をするという頼りない核をもちながら、愛着を持たれる小さな自治体がゆるゆると連合してお互いの足りない補いあったり、共同で日本の他の地域と連携したり、海外と結びついたりするといった「EU型」というか「関西型」のモデルをつくる事になるんでしょうね。

 東京のバックアップ機能を持たせたミニ東京をつくることではありません。

                                  (2010年1月22日)
■「中央新幹線は名古屋止まり?」報道を考える

 中央新幹線は2025年に東京名古屋まで開通

 JR東海は2025年をめどに「自己資本」で東京名古屋間の開通を目指しています。名古屋大阪間はさらにその20年後の2045年といわれています。時速500kmを超える超伝導リニアは東京と名古屋間を40分で結びます。今月の7日に関西の報道番組で、この20年間の遅れが関西の危機で関西までの乗り入れを絶望視する番組が放映されました。

 JR東海の事情を考えると、東海大地震のバックアップとを整備しておきたいと言う思惑と、超電導技術の実用化で海外での競争に勝ちたいという思惑が強く働いているのだと思います。下記のレポートを見ても、需要量は東京〜大阪ルートの半分以下す。建設コストが多少かかっても、関西まで開通させないとおそらく採算にはのらないでしょう。

 大阪までの開通には自社だけでは難しいことをアピールすることで、国ないしは関西の自治体や財界から投資を引き出したいのだと思います。

 中部州の「首都」になれない名古屋は東京の衛星都市を目指す?

 関西を考えるのに、お隣の中部圏を見たときに、最大の都市「名古屋」の孤独が浮かび上がってきます。中部の静岡、長野は明らかに関東甲信越のエリアに属しています。三重県、岐阜県、などは関西の影響も強そうです。

 国際的に通用する産業の基盤もあり、人口も伸びている名古屋市ですが、中部圏の首都というと地政学的にも不利です。某大学の先生がおっしゃるように東京の衛星都市を目指すのでしょうか?

 関西の場合、京阪神というくくりで「首都機能」が見えそうですし、規模的に大阪市がトップでありながら、ゆるい連合体というスタイルが結構受け入れられているように思います。

 九州なら福岡、北海道なら札幌というミニ東京的な中核となる都市が思い浮かびます。さて、その他の地域はどうでしょう。

 関西スタイルというか「ゆるい」ネットワークの中に名古屋市、愛知県を引き込まないと、本州では大東京州が旧ソ連のロシアのように圧倒的に力を持ってしまい、地方分権と言っても1強多弱の構図でかたまってしまう気がしてなりません。

                                         (2010年1月21日)
表ー中央新幹線東京名古屋間、東京大阪間比較表(南アルプスルート)

図ー中央新幹線 東京名古屋間を1.Oとした時の東京大阪間の係数

 中央新幹線調査報告書(09年12月24日 運輸施設整備機構、東海旅客鉄道)
■梅田にあえて脱ターミナルの発想を

 流動人口を増やすだけでない発想を

 梅田北ヤード計画で、大型サッカースタジアム案が検討されているのでしょうか?ワールドカップに向けて集客施設の整備がアイデアとして検討されているのでしょうね。いったいどこのチームが普段使うのでしょうか?J1に復帰したセレッソ大阪はコストダウンのために普段は長居の第2グラウンド(小さい方)を使いますし、我がガンバ大阪はサポーターもお金を出して万博にスタジアムを建設します(予定)。

 シムシティではあるまいし、スタジアムをつくれば、自動的に地価があがるものではありません。まず、サポーターに愛されるチームがあり、サポーターもお金を出す機運が醸成されてこそのスタジアムでしょう。

 図のように日本国内では新宿駅の乗降客数が圧倒的です。世界的にトップクラスの人の流れです。梅田は都市の規模から考えるとかなりの人の流れが集中しています。どうしてもこの「流動者」に目が向きますが、それだけではいけないでしょう。

 梅田に足りないもの

 昨日の図にもあるように、梅田は昼間人口(通勤・通学者)では東京駅周辺に劣ります。夜間人口は新宿、池袋、渋谷より少ないのです。そして駐車場台数も圧倒的に少ない。
 これが何を意味するかと言えば、見かけの規模のわりにバランスが悪く、商売の効率が悪いと言うことです。

 住居を整備し、かつ駐車場を整備すれば都市の24時間化が進みます。安心して24時間活動できる基盤ができれば、ビジネス立地としても付加価値が高まります。そして短い滞在期間でおもいきり楽しみたい観光客へのサービスが高まります。

 個別の事業収支では決して儲からない「住宅」「駐車場」が街を活性化させます。(大きな流れでは自動車で移動する文明は変わっていくでしょうが・・・)関西の街の多くはターミナルではありません。

 神戸で楽しいのは三宮駅周辺だけでなく元町や北野に拡がる街です。また、京都で楽しいのは四条河原町だけではありません。

 大阪ではミナミもなんばから心斎橋に拡がるエリアが楽しいのです。(一層の治安回復が望まれますが)それらの要素を梅田にも取り入れる絶好の機会が梅田北ヤードの広大な敷地の開発なのですが・・・・。商売の現場の意見をもっと取り入れた方がいいのではないでしょうか。

 色々利害や経緯があるのでしょうが、行き詰まったときは原点に返って考え直すことをおすすめします。頑張って下さいね。

                                                      (2010年1月20日)

図ー1 1日あたりの乗降客数


(駅乗降客数ランキングより引用しました。)

 http://d.hatena.ne.jp/keyword/%b1%d8%ca%cc%be%e8%b9%df%b5%d2%bf%f4%a5%e9%a5%f3%a5%ad%a5%f3%a5%b0 へのリンク
図ー2 1日あたりの乗降客数推移  私鉄王国は昔の話


■あなたは梅田をほんの少しか知らない〜変わりゆく梅田の一部と全部

 梅田百貨店戦争の恐怖?の既視感

 梅田の2011年問題がマスコミを賑わしています。百貨店はあきらかにオーバーストアになって生き残り競争が始まる・・・のでしょうか。梅田大丸が出店するときも大きな騒ぎがありました。結果的に、それなりに共存してきました。

 おそらく2011年以降、何らかの淘汰が起こるでしょうが、それは「百貨店」という業態の転換期が来るだけのことだと思います。百貨店業界の内部ではいまだに競合は「他の百貨店」という発想から抜け出してはいません。

 梅田周辺にはまだまだ欠落しているものがある

 梅田が大きくなる方向は、中小商店を圧迫し、京阪神の限られたパイを独占する事で成し遂げられるのでしょうか?おそらくそうではないような気がします。効率を考えて、上澄みの美味しい部分だけをとろうとすると可能性を狭めることになります。

 人が集まる場所でしかできないことがあります。梅田北ヤードでも「スタジアム」以外にもっと面白い、関西に求められている機能があるはずです。それを考えるためには、「イメージ」や「先入観」を捨てて街の姿を知る必要があります。

                                                            (2010年1月19日)

各繁華街1km圏の比較
図ー1 人口、昼間人口   梅田は新宿に似たところがあります。銀座を含む有楽町から東京は昼間人口がとにかく多い。

図ー2 小売業販売額  梅田は百貨店が集積しているイメージが強いのですが、まだまだ欠落している市場があります。

図ー3 売場面積  新宿どころか、池袋、なんばより売場面積は少ないのです。

図ー4 小売業の駐車場は梅田、なんばとも多くありません。名古屋駅はさすがですね。

図ー5 飲食店の数だけはやたら多い。名古屋栄や新宿より密集しています。



(国勢調査、商業統計などの統計データをまとめた市販のGISソフトで集計)
■寄せて上げる「上げ底都市」から持ち回りで発信する「文化首都」の発想へ

 大阪から見えにくい「関西周辺」の動き

 以前、「東京から日本は見えない」というシリーズで分析を行ったことがあります。実は大阪にいても油断すると、同じように「関西」が見えないという落とし穴があるように思います。マスコミが人口や産業の活力で日本第2の都市の座を名古屋に奪われる・・・といった「東京を中心とした日本地図の地政学」の議論に流れがちなのは、私たち自身の考え方のフレームが旧態依然のままであるからでしょう。

 「文化首都」という仕組みがあります。EUの中で指定した加盟国の都市で、一年間にわたり集中的に各種の文化行事を展開する事業です。ギリシャの文化大臣メリナ・メルクーリ(当時)の提唱により、1985年より「欧州文化首都」制度が発足しています。

 当初は結構メジャーな都市が中心ですが、最近のラインナップはかなり渋めのものになっています。

 「日本まんなか共和国」という自治体の地域連携があります。ウィキの記述では次のように説明されています。「1997年以降、近畿ブロック知事会と中部圏知事会議の両方に入れられている福井県・滋賀県・三重県の3県による連係事業が行われていたが、1999年に当時の北川正恭・三重県知事が、岐阜県を含めて発展させる本共和国構想を提案し、2000年6月に設立となった。尚、愛知県は含まれていない。

 観光誘致活動では、日本国内における観光案内は元より、2005年には中国・上海で行われた観光に関する博覧会へ「日本中央共和国」の名で出展した。
交流は、文化やスポーツなどの企画に留まらず、産業、環境、福祉、医療、男女共同参画など多岐に亘り、従来の地方の枠組みに類似した形態の連携を行っている。」

 その日本まん中共和国でも「文化首都」を決めて持ち回りで観光・文化イベントを実施しています。福井県、滋賀県、三重県、岐阜県という京阪神と、名古屋にはさまれた自治体が独自の情報発信を行っているという点には注目したいところです。

 「関西州」の都市機能は京阪神だけのための機能集中ではなく関西および周辺部のための機能集中

 「東京」は日本全国からの富と情報を寄せ集めているので、経済力、情報発信力であれだけの高みにあります。(他所者に蹂躙された東京先住民の反乱が「谷根千」への注目なのでしょうね)

 首都圏の都市や自治体はどこまでもその「東京の機能」に依存しようとしていると見えます。
 「名古屋を東京の衛星都市に」といった理解不能な言葉が出てくるのもその流れに沿ったモノでしょう。

 関西は京阪神が機能分担している連邦型の都市であるとはいうものの、京阪神中でも大阪に経済機能が集中しているだけに、周辺自治体から積極的に参加しようという機運が高まりにくくなっています。

 大阪にある種の機能が集中するのはある意味、理由があります。ただ、その機能は関西圏及び、中四国、中部の周辺地域にもメリットのあるモノであるというストーリーが必要です。

 特に集客・観光の選択肢をつくるのに、関西全域での「文化首都」選定など「周縁部」の元気を盛り上げる事から始めることが必要です。

                                                     (2010年1月18日)

表ー欧州文化首都
1985年 ギリシャ・アテネ
1986年 イタリア・フローレンス
1987年 オランダ・アムステルダム
1988年 ドイツ・ベルリン
1989年 フランス・パリ
1990年 イギリス・グラスゴー
1991年 アイルランド・ダブリン
1992年 スペイン・マドリッド
1993年 ベルギー・アントワープ
1994年 ポルトガル・リスボン
1995年 ルクセンブルグ
1996年 デンマーク・コペンハーゲン
1997年 ギリシャ・テサロニキ
1998年 スウェーデン・ストックホルム
1999年 ドイツ・ワイマール
2000年 ベルギー・ブラッセル
フランス・アビニョン
スペイン・サンチャゴ・デ・コンポステラ
イタリア・ボローニャ
ノルウェー・ベルゲン
ポーランド・クラクフ
フィンランド・ヘルシンキ
アイスランド・レイキャビク
チェコ・プラーク
2001年 オランダ・ロッテルダム
ポルトガル・ポルト
2002年 スペイン・サラマンカ
ベルギー・ブルージュ
2003年 オーストリア・グラーツ
2004年 フランス・リール
イタリア・ジェノバ
2005年 アイルランド・コーク
2006年 ギリシャ・パトラス
2007年 ルクセンブルグ・ルクセンブルグ
ルーマニア・シビウ
2008年 イギリス・リバプール
ノルウェー・スタバンガー
2009年 オーストリア・リンツ
リトアニア・ヴィリニュス
2010年 ハンガリー・ペーチ
ドイツ・ルール
トルコ・イスタンブール
2011年 フィンランド・トゥルク
エストニア・タリン
2012年 ポルトガル・ギマランイス
スロヴェニア・マリボル

表 日本まんなか共和国 文化首都
2002年度 大垣市(岐阜県)
2003年度 小浜市(福井県)
2004年度 伊賀地域(三重県)
2005年度 近江八幡市(滋賀県)
2006年度 美濃市(岐阜県)
2007年度 越前市(福井県)
2008年度 東紀州地域(三重県)
2009年度 東近江市(滋賀県)
■リユース、リメークが事業になる時代とユニクロにアウトレットが無い理由

 10年間で4倍に成長したリユース市場

 青山商事がリユース事業に参入するようです。業界大手「セカンドストリート」とFC契約し、総合リサイクルショップと、衣料品・服飾雑貨専門のリユースショップを開店します。狙いは空き店舗の活用なのですが07年には3452億円に拡大したリユース市場での可能性を探るところにあります。

 青山商事は店舗のスクラップアンドビルドが激しい業態です。空き店舗をすぐに閉鎖できないときには今までは、100円ショップをダイソーのFCで出店していました。100円ショップと並行する選択肢として手持ちの駒を増やそうと言うことでしょう。

 火曜日の繊研新聞ではファッションリメークのメーカー「タオズ」が紹介されています。サイズと感度が今に適合していない古着を解体して作り直してアレンジをする企業で。1,000枚以上の量産体制も可能です。アパレルの多くがより安い生産先をもとめて中国からベトナム、バングラデシュなどに活路を求めるのとは相反する動きです。

 良いモノ、使えるモノであれば中古品であることには抵抗がない世代が消費の中心になってきていること市場を変えていきます。

 ユニクロにアウトレットがないのは何故?

 これだけアウトレットが出ている中でユニクロのアウトレットというのはまだありません。
 ユニクロ自身が店頭での機動的なマークダウンで売り切る力があるというのが大きな理由ですが、ユニクロの商品の機能は1年しか賞味期限がないように感じられることが大きいです。ベーシックな商品なのですが、正直ユニクロの衣料は2年目、3年目にはひどく劣化し、原材料としてリサイクルされることはできても、リユースしようとか、リメークしようという意欲を持たれることがない「使い捨て商品」からまだ脱却出来ていないのかも知れません。最近はデザイナーとのコラボでデザイン性の高い商品を出したりしていますから少しずつ変わっていくのでしょうが、「無印良品」や「GAP」との違いは売り切ってしまう力というポジティブな面だけではないように思います。

 これからはどんどん「消費」されない時代になります。その中で売れる商品は「愛着」や「使い継げる」質+αの要素が必要になってきます。
 
 衣料品の「ユニクロ」、家具の「ニトリ」、外食の「サイゼリア」にはそのような情緒的な要素を排除した「理系」の効率主義の匂いを感じます。

 アウトレットで買う物は「機能性」だけの価値ではなく、「ブランド構築」に投資された知的な営み、投資によって構築された「価値」を買っているのです。ユニクロは成長のためのビジネスモデルは」つくれましたが、「価値」づくりはまだ、端緒に就いたままです。

車でも失礼ながら世界のトヨタの車の車内は、低価格車の内装はプラスチックモデルのような感じがします。(高級車はとてもラグジュアリーです。中間があまりないように思います)悪口をいう意図ではありません。何を優先するかという文化の違いが興味深いのです。
 確かにオーバークォリティの無駄が省かれた機能的な美しさはあるのでしょうが・・・・・・・。

                                                 (2010年1月15日)

■「東京にとっての最大の衛星都市」が名古屋の目指す夢なのか?

 名古屋とばしから18年、名古屋と大阪の立場が逆転・・・・したのか?

 1992年3月14日に東海旅客鉄道(JR東海)が東海道新幹線で運転を開始した「のぞみ」は、1日2往復のうち、下りの一番列車(「のぞみ301号」)が新横浜駅に停車して名古屋駅と京都駅を通過するダイヤが組まれたました。これがいわゆる「名古屋とばし」騒動の始まりでした。当時、全国的なイベント興業も名古屋で開催されないことが多く、日本の三大都市の一つである「名古屋」を無視するとは何事かと、地元企業のJR東海に対して地元から大ブーイングが起こったのです。

 その当時、京都に停車しないことは京都観光の地盤沈下の象徴としても話題になっていましたが、大きな抗議行動には至らなかったらしいです。

 1月7日の毎日放送の報道番組で、リニア新線が名古屋までの開通になることが、関西の危機であると報道されました。(番組ホームページで内容が見られます)名古屋と大阪の立場が逆転した・・・というのがテーマでしょうか?
http://www.mbs.jp/voice/special/201001/07_26291.shtml へのリンク

 問題提起の論旨自体には色々な議論があると思います。(私は基本的には大阪と名古屋は日本第2の都市を巡るライバル争いをすることは全く意味がないと思っています)

 その中で気になったのは「これはもう東京にとって最大の衛星都市が40分のところに近づいてきている。(東京は)これを利用しない手はないと思うでしょうね」という名古屋の大学の先生の言葉です。名古屋を衛星都市と表現しておられます。

 名古屋の人達の潜在意識に「東京の衛星都市」という発想があるのでしょうか?少し不思議です。
 
 同じ記事でトヨタが「世界最大の自動車メーカー、トヨタも中部国際空港との関係も睨み、一昨年から国内の営業と東京にあった海外部門のおよそ3,000人を名古屋にシフトさせた・・・」とあります・・・これは明らかに「東京=国内市場」ではなく名古屋と海外を直接つなぐという地域の自立の意思のサインであると見えます。私には名古屋の人達が「衛星都市」と自分たちを貶めるとはとても思えないのです・・・ただ実はよくわからない。

 関西復権を論じる中で、最も近い経済圏である中部の「意思」はとても気になるところです。

 中部経済圏は関東圏への親和性が高い

 中部経済連が実施した「道州制のアンケート」があります。中部5県(愛知、長野、、岐阜、三重、静岡)の自治体や企業に対する調査で「道州制が実施されたときにどこの州に属するか」を聞いたものです。中部州が8割です。関西州は1%なのに対し、関東州は8%となっています。
 確かに長野の一部は東京への距離が近いですし、静岡もまた関東の影響が強そうなイメージがあります。名古屋が地理的に西に位置しているので地図上ではそうは見えませんが「中部圏」としては東京への親しみが強いのかも知れません。

http://www.chukeiren.or.jp/policy_proposal/pdf/091102_dousyusei_gaiyou.pdf へのリンク

 リニアで40分・・・・東京での情報収集は便利になります。ただ、ものづくりのための物流や、空港の活用(関西〜中部の使い分け)やスーパー中枢港などの活用を考えると「関西」との連携を強めることが名古屋にとって有利なのではと考えます。レポートを見る限り「関西」は視野の外であるようです。

  関西を含めて中部以西の経済団体が共同で政策提言をするための調査をお手伝いしたことがありますが、やはり自然の流れとして、資金的にも関西の団体が中心的にお世話をしておられました。昨年の流行語でもある「政権交代」による「地方分権」の流れをきちんと進めるために、関西の役割は大事です。

 中部空港は貨物便が片道しかうまらないので、効率が悪いと敬遠されています。帰りの便に積み込む荷物の量が少ないのがネックになっています。関空が24時間空港として物流のハブになれば使い分けもできるのにと思います。

 関西連合を主導する大阪府知事は、地域の覇権を求める野心が希薄なのでリーダーシップをとりやすいでしょう。この方が在任中に中部都市圏と欧州型の対等な連合が実現できればいいのですが。


                                                     (2010年1月14日)
■ショッピングセンターは「人工の理想郷」から「手入れの行き届いた生活の場」へ変わる

 ショッピングセンターは「夢の国」

 東京に住んでいると実感しにくいかも知れませんが、地方に行くと大型ショッピングセンターは最新の買い物と娯楽、飲食施設が揃った「人工的な楽園」であるのだなあと感じます。
 一方、中心市街地の百貨店は建物が古ぼけていて、年寄り向けの高い商品しか置いていないし、映画館や飲食店も街の中に散らばっていて、何より自宅から来るまで行きにくい・・・・。

 東京の目で見ればありきたりの飲食チェーンも、地方にとっては雑誌でしかみたことのない「東京の匂い」のする珍しい飲食店になります。

 90年代には工場の跡地利用や新規のデベロッパー参入でで各地に多くのショッピングセンターがつくられました。80年代のバブル期の勢いを引きずったのか年に100件の新しいショッピングセンターが開業した計算になります。

 2000年代には勢いが落ち着いたモノの、2006年から2008年。リーマンショックでの金融引き締めまでは開設件数が増えて、面積も大規模化していました。

 不動産投資として「商業」はリターンが良くて早いと判断した投資家のお金が集まっていたのでしょう。投資家にとっても「夢の国」だったといえます。

 09年のショッピングセンター新規オープンは前年比35%減

 ショッピングセンターの新規オープンは前年に比べて35%減の57件です。01年以来の少ない件数で、売場面積も縮小しています。原因は「まちづくり三法」「景気後退」などが上げられていますが、一番の要因は不動産業界にお金が回らなくなっている事です。商業に限らず、住宅、オフィスなどでも不動産業界には融資が絞られているようです。
 積極的に事業を拡大していた中堅の新しいデベロッパーが倒れて、積極的に動けるところが少なくなっています。そして、選択肢として成長が著しい中国への投資が優先されるという事情もあります。

 ショッピングセンター内部から変わり始める時期

 とはいえ、本当のところショッピングセンターは変わる時期に来ていたのだと思います。この10年間に閉鎖したSCは約170と言われていますが、実際は閉鎖したわけではなく、規模を縮小しSC協会の定義に当てはまらなくなったのだと言われています。

 テナントが空いた後には何が入るでしょう・・・物販、サービス、その他、それまでのショッピングセンターには無かったタイプの生活利便施設が考えられます。

 一方、百貨店や商店街のショッピングセンター化という傾向も指摘されています。都心のオフィス街のショッピングセンターはオフィスワーカーのみならず、近隣の都心居住の住民にとって大事な生活インフラになっています。

 一つのハコの中だけでなく、一定のエリアや、住居を含めた生活空間をお守りするマネジメント。ショッピングセンターの運営ノウハウが「手入れの行き届いた生活の場」を維持運営するノウハウにつながっていくのだと思います。

 規制などの外部要因ではなく、ショッピングセンターの日常業務の繰り返しの中での変化への対応が、結果的に大きな社会の変化につながっていきそうな気がします。

                                                  (2010年1月13日)



図ー1ショッピングセンター新規開設数

図ー2 00年代年次別 ショッピングセンター新規開設数 推移

図ー3 年次別新設ショッピングセンター平均店舗面積


(日本ショッピングセンター協会)
■関西広域連合に及び腰な「奈良県」のおそれ

 広域連合のメリットと埋没へのおそれ

 先日報道された「関西広域連合」の発足に際し、大阪、兵庫、京都、滋賀、和歌山、鳥取、徳島の2府5県が参加を表明したのに対し、奈良県、三重県、福井県は「メリットが少ない」と参加を見送ったという話です。三重県は中京都市圏にも近いですし、福井県は北陸圏ともいえるのでまだ理解できるのですが、大阪府のベッドタウンであり、緊急医療も大阪府にも依存している奈良県が「メリットがない」と判断したのは奇異に感じられます。

 奈良県の成り立ちを振り返るとその及び腰の背景がうかがえます。明治維新後しばらく、大阪府の一部であった奈良県は、予算配分などで後回しにされたという思いが地元に強くあったようです。
 大阪府からの分離独立が悲願であったのに、広域連合の中では大阪府の影響が強すぎて再び「埋没」してしまうという危機感があるのだろうと推測します。
 京都府や兵庫県ほど発言力の強い財界人が少ないのもその理由かも知れません。

 関西経済圏と中部経済圏の連携を

 地図を眺めて考えて思うのは、関西はもう少し中部経済圏との連携を意識するべきだということです。大阪と名古屋の間の高速道路沿いには物流拠点や工場が結構多く立地しています。
 近畿日本鉄道がネットワークをはるこのエリアは日本の国土の中で結構面白いポジションを占めています。

 奈良県や三重県のおそれは関西広域連合の中で力の弱い県は、京阪神を頂点とするピラミッド構造の底辺に押しやられるのではないかという不安でしょう。
 関西広域連合を推進する大阪府知事の言動を見ている限り、大阪府を頂点とする「覇権」を握ろうとしているとは思えません。ネットワーク型の連合体で重なり合う部分を共有し、足りない部分を補完しようという発想に思えます。

 「関西」という枠では不安であるなら、その先の「中部」との連合を想定すると、ネットワークのイメージがピラミッドからネットワーク型のものであるという形が鮮明になると思います。

 大阪湾のグリーンベイの集積は中部地区の自動車の未来にも密接に関わりますし、外国人観光客の誘致、固定客化についても連携を図ることは有益だと思います。〜どちらが日本で2番目の都市になるかという覇権争いから抜け出せないのなら連携は出来ませんが、ネットワーク型のつながりを強めるのであれば将来の展望が開けます。

                                                  (2010年1月12日)
■観光型商業の活路としてのWEB活用?

 WEBをアナログの手に

 インターネット技術の活用については、やたらと可能性について礼賛する人達と、そっぽを向いてしまう人達に大きな断層があります。技術者はどうもスペックであるとか技術の先進性に酔ってしまう傾向があるのに加え、何か新しい切り口が商売にならないかと考える「文系」の悪質なマーケッターが「新しげな装置」を利用しようと持ち上げるために、次から次へと名前を変えて出てくる技術が使いこなせないままバージョンアップしていきます。

 以前、ご紹介しましたが、プロの編集者がレイアウトしたWEBの画面はずいぶんと見やすいもになります。(すごい技術が必要なわけではないのですが、技術者の発想には無い工夫です)

http://gourmet.suntory.co.jp/zenkoku/trend/index.html へのリンク

このページなど2段組になっているだけでずいぶんと読みやすい。アナログな世代の我々にも読みやすいですよね。これを編集者に教えてもらったときに目から鱗が落ちた想いがしました。

 特にWEBの世界にはアナログな世界でのクリエイターが口をだしにくい雰囲気ができあがっています。

 観光型商業の活性化にローテクなWEB技術を活用すればいくつかのネックが解消される

 観光型商業の課題は大きく2つあると考えています。ひとつはオフシーズンの閑散期対策。2つ目は固定客づくりの戦略。

 オフシーズンのお客様が少ない時期でも、施設や観光資源は動いているということを発信していかないと、施設が痩せていきます。何故か、人も施設も見られていないと「生命力」が衰えていきます。シーズンオフの集客には費用対効果が低いので媒体を使いにくいという事情もあります。WEBを使えば低コストで発信が出来ます。

 また、固定客をつくっていくためには常に情報発信が必要です。ダイレクトメールもいいのですが、WEBを使えば動画も送れます。GOOGLEやユーチューブを使えば軽い画面でビジュアルな案内、バーチャル体験も提供できます。

 ポータルとして、雑誌をめくるようにアナログなイメージで検索できる技術が活かされていないので、観光案内、観光施設の顧客との関係作りに活かせるだろうと考えています。

                                               (2010年1月8日)
■「文化」の持つ排他性と「野暮」を許容する大阪の風土の功罪

 「下衆のまち」「野暮のまち」の文化戦略

 「谷根千」の事例を見ても、暗黙のルールを理解できない「野暮」なものを排除する仕組みが街のクォリティを維持していることがわかります。ある意味「お金で買えないモノはない」と考える「野暮」な人を排除し、お金という目に見えるモノではなく、目に見えない暗黙の価値観にレスペクトを持つ人を選別するのが街の文化をつくるということです。

 その仕組みをうまくつくっているのが「京都」でしょう。六本木ヒルズはその仕組み作りに失敗しました。

 先日あるマスコミの人とお話していて「茶の湯」と「フランス料理」の類似性を指摘され、腑に落ちるところがありました。高級フランス料理(もちろん日常的に地域で食べられているものは別ですが)はある種の約束事や調理方法の理解や共感があって初めて楽しめる(価格に納得できる)ところがあります。フランス料理に比べて、イタリア料理のイメージは素材の新鮮さや、素材の良さというわかりやすさがありコスパが高く感じられます。(最近は異常に高いイタリア料理も多いのですが)
 ワインが普及しないのはワインを楽しむ「文化」が浸透しないからだと言われています。「通」にしかわからないのがネックになって拡がりません。逆にわかりやすくするとその価値が損なわれるというジレンマもあります。

 大阪はかつて梅棹忠夫先生に「下司のまち」と厳しく批判されました。排他的ではなく他者を受け入れる懐の広さが大阪の魅力なのですが、逆にそれはあまり尊敬される戦略ではありません。

 大阪の「ぼけつっこみ戦略」

 実質的な価値がないものが「文化」の錦の御旗で他者を排除する・・・・大阪には、そんな仕組みに我慢できないというという風土も確かにあります。
 関西の3都市の中で大阪は新しいモノを受け入れて「他者」を排除しないという役割分担をするという考え方もあります。橋下知事はどうもそのように考えておられるふしがあります。

 大阪市内ではよくキタとミナミが対比されていました。東京的で格好つけのキタに対して、「大阪らしく」て土着性の高いミナミ・・・。その役割分担もそろそろ機能しなくなっています。これから島屋の改装で「大阪の文化」を前面にだした売場が整備されます。大阪らしくてリスペクトされる「文化」再興の核になっていくと期待されます。

 キタの中でも格好をつけない「ヨドバシ」が成功しているように、今後の商業集積の高密度化に従って欠落している大衆的な集積が比率を高めていくと」見ています。大きな地域で役割分担するのではなく」、それぞれの集積の中、あるいは周縁部の地域の中(中崎町や福島、京町堀、天満橋、船場地区)でそれぞれテイストの違った「文化」が根付けば、その人にあった「文化」を選択することが出来るようになります。

 大阪人の性分にはあわないのでしょうが、文化にそぐわないモノが排除されるというソフト仕組みができるのか、共存しながら文化をつくっていこうとするのか・・・・後者を選ぶときに1人でぼけとつっこみをする難しさを克服する必要があります。

 東京の秋葉原と大阪の日本橋の大きな違いは、その集積量だけでなく、秋葉原の中心には「風俗」(3次元の)は排除されていて、ゾーニングがきちっとしているのに対して、日本橋は街の周縁部に風俗が入り込んでいる印象があります。これでは中国人の観光客が安心して歩けないです・・・。
 ちなみに梅田北ヤードには巨大なDFSを誘致するのが一番効果的だと思っているのですが誰も相手にしてくれません・・・。

                                                              (2010年1月7日)
■東京の路面店に学ぶ「地域の価値」をつくる「文化」の役割

 惜しまれて終刊した「谷根千」の残したモノ

 東京都文京区から台東区に位置する谷津、根津、千駄木の一帯は「山の手」でありなが下町情緒があり、沢山の文化人が住んだ歴史も持つ地域です。住民は編集者や大学関係者など知的好奇心の旺盛な人が多いそうです。週末は史跡や商店街を巡る観光客が多いのですが、、地元の住民の常連客が多く年齢層も20代から50代、60代まで幅広い層が訪れます。

 1984年に3人の女性が始めた地域雑誌「谷根千」によってこの地域が一つの固まりとして認識されるようになりました。残念ながら昨年8月に終刊になりましたが、ネット版の谷根千ネットは引き継がれて続いています。

http://www.yanesen.net/info.html へのリンク

 谷根千の特徴として、強力なリーダーシップを持つ人がいるわけではない自然発生的な街であるのですが、「マナーを守らないよそ者ははっきりと拒絶される」そうです。見えないバリアが店の質を保っているのでしょう。
 元々この地域はファッションの生地や副資材を買う場所が近くて、職人さんも多く住んでいる地産地消のエリアです。

 人が人を呼ぶ形で店が増えてきていて全国から人が訪れる街となっています。
  (繊研新聞記事 「人が人を呼ぶ 谷根千に見る路面店の可能性」より)

 一方でアマンリゾートが出店している地域があり、もう一方では歴史文化を愛している人達がまち作りを行っている。この2つの要素が入り交じっているのが東京の魅力なのでしょう。

 地域に根ざした専門店の魅力

 地方都市でも、その地域の中で地域の人々に愛されて続いている専門店も数多くあります。その地域に住み、その地域のお客様に愛されていることが魅力になっています。
 ただ、その魅力を広く発信し、集客しようとすれば逆に魅力を失うというジレンマもあります。地元のお客様だけでは経営が苦しいという市場のポテンシャルの問題は大阪市内でも感じます。うまく組み合わせていく知恵が必要です。

                                                     (2010年1月6日)
■元気のいい業態は「商売」の基本が徹底されている

 活気のある市場は「ユニクロ」だけではない

 初売りの賑わいの中で、12月の百貨店売上げの減少率の低下が記事として報道されています。ヒートテックがヒットしたユニクロは2ケタの伸びと言われている中で、少しだけ明るい話題なのでしょうか?

 元気のいい業態として「ネット通販」が話題になっています。ネットを通じたBtoC(企業対消費者)の売上は09年度の6兆5,744億円が、2014年度には11兆9,573億円と1.8倍に拡大するといわれています。(野村総合研究所調査)

 通販自体は好調なモノと頭打ちのモノに分かれてきているようです。テレビ通販などは一時の勢いがなくなっているようですが、新聞広告を使った単品通販は堅調だと聞きます。

 単品通販では顧客の使用状況に合わせてタイミング良くDMなどのアプローチを行い、2〜3回購入を続ける固定客を形成するとかなりの確立で継続していくそうです。売りっぱなしではなく、タイミングを見てその人にあったお声をかけて利用者を固定客にしていく・・・。通信販売とはいうものの「商売」の基本についてオーソドックスな手順を踏んでいるといえそうです。

 理由のある消費にはお金を惜しまない

 ユニクロのヒートテックが売れています。売れている理由は価格だけでしょうか?
 ワコールのクロスウォーカーが売れています。歩いているだけで体脂肪を燃焼する肌着ですが、肌着だけでなくウォーキングのスターターキットも売られています。ウォーキングなどお金のかからないスポーツの筆頭です。今まででしたらせいぜいシューズを売ることしか発想が拡がらない市場ですが、肌着と歩数計、DVD、カレンダーをセットで販売し、市場を拡げています。
 同じようにお金のかからないはずの「マラソン」でも周辺の市場が拡がっています。女性の市民ランナーが確実に拡がっているようです。シューズ、ウェア、大会参加・・・高い服は買わなくても結構お金を使っています。

 ヒートテックは薄くて温かいので、冬のおしゃれの幅が拡がります。その上安い・・・とはいってももっと安いインナーは世の中にいっぱいあります。もっと高い機能性保温肌着も世の中にいっぱいあります。あたたたかくておしゃれという機能に価格が後押しした形で拡がっています。

 百貨店で売っている商品は何故高いのでしょうか?百貨店側の事情ではなく、お客様に提供できる価値に裏付けられた「価格」なのでしょうか?

 売上げ不振の百貨店の専門店詣でが続いています。何故、その専門店なのか?「価格」しか見ていないのではないでしょうね。少し心配です。
           
                                                       (2010年1月5日)


■20年先のアジアと日本〜ベトナムの人口が日本を抜き、インドの人口が中国を抜く

 20年先のアジアの構図に対する想像力を

 今年、GDPで日本は中国に追い抜かれます。中国は「世界が狙う最有力小売市場」といわれています。
 1人あたりのGDPはまだまだ低いのですが、人口が圧倒的に多いので全体としてのパワーが生まれています。年末に上海に行かれた方のお話を伺っても「富裕層」の数はまだ少なくて、固まって住むエリアも特に無いようで、広くて大きなところに分散しているようです。新興の富裕層が多い所為もあって、お金の使い方が成熟していない印象を持たれたようです。
 そういえば、日本から中国へ進出している小売業もGMS系の「百貨店」が成功しているケースが多いですね。

 その中国も20年先には人口数でインドに抜かれます。これから高齢化も進む中、1人あたりのGDPをあげていく方向で成長を目指していくでしょう。社会階層が分化していく中で、どれだけの中間層を形成できるかが課題です。

 20年先に人口が伸びていて、若い国=「成長市場」はインドとベトナムです。日本にとって韓国がアジアでの手強い競合になっているように、中国が「新興市場」に対する競合となっている・・・・アジアの中のお互いの役割分担と競争のポイントについて考えておく必要があります。中国市場の質も変わってきます。中国社会での「成熟消費」に対応する商品の提供が必要になります。

 関西は特にアジアとの関係が生命線ともいえますが、関西で持たれているアジアのイメージは90年代からあまり進化していないように思います。

 梅田北ヤード、WTC周辺、関空周辺のこれからの構想の中で、アジアとどう関係を創り上げていくか・・・・今計画する構想が稼働し出す時期にはアジアの構図も変わっていく時期になります。海外に進出するメーカーの問題だけではなく、関西のまちづくりの構想の中でアジアの将来を見据えておく必要があります。

 シンガポールはアジアの富裕層の集積場

 国土も狭く、人口も少ないシンガポールですが、貿易、情報、物流の中継点でもあり、インドネシア、ブルネイなど資源国のの富裕層やベトナム、インド、中国の富裕層が集まってきています。東アジアの国の間の距離は我々のイメージより近い。特にこの地域の富裕層はインド人であったり中国人であったりします。民族的なつながりも強くあるのです。
(ちなみに中東のハブであるドバイの人口の6〜7割はインド人だそうです。中国とインドは人口の多さだけでなく、海外の人的ネットワークという点でも我々にはかなわないところがあります)
 
 関西のアジアとの交流を掲げたプロジェクトの内容は世界の潮流に10年遅れているように思います。
 カジノでマカオに勝てるのか?ショッピングでシンガポールや香港に勝てるのか?後追いの構想では追いつけません。
 日本ならではの強み、関西ならではの強みを生かしながら集客、交流を促進していく必要があります。

 
                                                        (2010年1月4日)

図ー1 総人口の推移  (千人)


図ー2 中位年齢の推移  (歳)


図ー1人あたり国内総生産(GDP)   米ドル


数値は総務省統計局  繊研新聞 2010年1月1日掲載数値

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