analog-corp
Japanese English
ごあいさつ 会社概要 事業内容 所在地  
ARCHIVE2011
 2011年のarchive
株式会社ANALOG   場調査から戦略構築まで現場をサポートするマイクロシンクタンク 
  エリアマーケティング・商業開発・まちづくり 

   (sano@analog-corp.com
 2011年記事ARCHIVE
首相 菅直人→野田佳彦
アラブの春

・3月 東日本大震災
・3月 九州新幹線全線開通
・7月 なでしこジャパンワールドカップ優勝
・7月 テレビ放送 地デジ化
 ・3月 JR博多シティ
・3月 二子玉川ライズショッピングセンター(東急)  FUTAKO TAMAGAWA rise Dogwood Plaza(東神)
・4月 レイクタウンアウトレット(イオン)
・10月 阪急Menns TOKYO
・10月 ルミネ有楽町店
・3月 イオンモール伊丹昆陽 
・4月 あべのキューズタウン
・4月 Nu茶屋町プラス
・5月 大阪ステーションシティ(JR大阪三越伊勢丹、ルクア)
・6月 フィレオ大阪ドームシティ
・6月 Albi
・10月 ニトリモール東大阪
 12月
■エンタテイメントの劣化の背景

 グリーやモバゲーなどの無料ゲームの制作者は「利用者が楽しめるゲームバランス」よりも「いかに有料のアイテム購入させるか」を最重点で考えるといいます。
 「射幸性」を煽るといった性格からパチンコなどと同様に風営法の規制が必要であるとの意見もあります。(2ちゃんねルの創設者ヒロユキ氏)知らない他人と楽しめる点で新しいタイプの出会い系であるという理由で、かつてはこの業界からのプロ野球オーナーへの参入にも抵抗がありました。

 表向き「無料」である事はどこかでお金を回収するシステムになっているのですが、その仕組みが見えにくくなっていることが問題を起こします。
 ビジネスモデルとして「フリー」が話題になっていましたが、無料で提供されることでコンテンツの質が落ちていることが危惧されます。

 テレビのバラエティでも時たま面白い企画があっても、過剰なあおりや、繰り返し、やたら長時間引き延ばすことで、娯楽としての価値を損ねるケースがあります。(ホコタテなんか着眼点が面白いと思うのですが30分番組をスペシャルにすると水増しされた内容になりもう見る気がしない)

 コンテンツの質・・・別に高尚なものであれとはいいませんが、娯楽としての質を落としているのは残念でなりません。

 「もの」への消費がこれ以上伸びない中で、エンタテイメントは需要が伸びる可能性を残した産業です。無料では無く、お金を払って楽しむ習慣が定着しないと劣化は止まらないのかも知れません。

                                                                             (2011年12月29日)
■残っている俗信廃れる迷信は

 迷信の意味が変わって残るパターン

 本来は、仏様に行う行為として普段はタブーとなっていた「ご飯に箸を建てない」「食べ物の箸渡しはしないについて気にする人が多いのですが、日常にご遺体を目にする機会が少ない現在では、単なる食卓のマナーとして見苦しいという意味合いが強くなっています。同じような仏様の関連では気にする人も多いのですが、気にしない人の方が多くなっています。

 残る迷信廃れる迷信

 大安、仏滅、友引などは意識する人が多くなっていますが、先勝や先負は全く意識されなくなっています。冠婚葬祭などの行事であまり強くアピールされていないためでしょう。本来の意味を知る人も少なくなっていると思います。(私も知りません)

 幽霊は信じても輪廻転生は信じられていない

 幽霊や人魂の存在を信じる人は3割、人が死ぬと天国か地獄に行くと信じている人は2割を超えています。・・・結構多い。映画などでも死者が蘇る話に人気があるのでその影響かも知れません。ただ、輪廻転生については信じている人は8.7%と4割以上の人は信じていません。あまり人気の無いモチーフなのでしょうか。
 
                                                                            (2011年12月28日)
図ー気にしている迷信(縁起担ぎ)
図1
図ー信じている迷信

図2
(日本青少年研究所 「縁起に関する意識と行動」  全国20〜80代 1,218サンプルを対象にした調査)
■年中行事の実施率〜お正月関連行事は高い実施率

 年越し蕎麦84.0% 鏡餅・しめ縄飾り72.5%と7割を超える実施率

 お正月前後の行事実施率が高くなっています。初詣、お盆の墓参りも6割を超えています。外来行事ではクリスマス62.6%、バレンタインデー55.1%等が高くなっています。ホワイトデーはバレンタインデーより実施率が低いのですが3割を超えていますが、ハローウィンはわずか4%の実施率です。

 ひな祭りに比べて鯉のぼりの実施率が低いように女性がらみのイベントに比べて男性がらみのイベントの実施率は低い傾向があります。(この調査の中では調べられていませんが、母の日に比べて父の日の実施率はとても低いのです)

 節分の恵方巻きは関西の一部の習慣でしたが、いつの間にか全国ベースで定着しています。

                                                                (2011年12月27日)
図ー年中行事の実施率
図3

(日本青少年研究所 「縁起に関する意識と行動」  全国20〜80代 1,218サンプルを対象にした調査)

■都市として東京の商業地としての魅力は世界で6位

 東京の順位は第2四半期の8位から6位に上昇

 アメリカの大手不動産会社CBCRが四半期毎に調査している商業地の賃料の調査では東京が月坪61,296円で6位に浮上しています。前回の調査(第2四半期)では8位でしたので、震災の影響から回復し上昇傾向にあります。世界の賃料は欧州の財政危機などから押し並べて横ばい基調で小売業は拡大に対して慎重な姿勢をとり続けているようです。

 ニューヨーク、香港が飛び抜けて高く、シドニー、ロンドン、チューリッヒと続きます。東京は6位。調査結果はドルベースですので、円高の分少し下駄を履いているかも知れません。

 香港は11年に年間賃料が53%上昇しています。上海とか北京、広州も不動産バブルのイメージが強いのですが、商業施設の賃料には現れていません。不動産ころがしの玉とはなっても、まだまだ商売として賃料に見合った収益を得るには至っていないのかも知れません。

                                                                       (2011年12月26日)
図ー店舗賃料上位20都市 第3四半期  (月坪 円換算)
図4

CBREの発表による年1フィートあたりのドルの数値を月坪の円として換算した

1ドルは78円として算出
■顧客接点としての「駅」の再考

 大量のトラフィックがあるところに生まれる消費 「アダム・エ・ロペ・ル・マガザン」

 ジュングループが展開するエキナカ等に展開する新しい雑貨業態が公開されています。人通りが多い場所で対象を絞って提案する店で、生活雑貨30%、服飾雑貨25%、アパレルは30%程度に抑えています。試着をせずに買えるユニフォームとワンマイルウェアが中心になります。パリのKIOSKをイメージしたコンパクトな店舗では週百円から買える雑貨も揃っています。最低5〜6坪15〜30坪までの店舗で、来年3月に開業する東京スカイツリーに1号店を出店しますが2月には首都圏の地下鉄やJR駅構内に実験店舗を出店するということです。ユナイテッドアローズの「ザステーションストア・ユナイテッドアローズ」やクロスカンパニーの「アースミュージック&エコロジーステーションストア」(50〜80坪の小型店)などアパレルメーカーのエキナカ事業への取り組みが進んでいます。

 駅によって客層やニーズが大きく違い在庫の持ち方が難しいこともいわれていますが、販売効率が高く、ブランド価値を高めるブランドに触れる機会の多さには期待が大きいようです。

 ブランドの看板代わりと割り切って出店するのか、立地特性に合わせたバリエーションを開発し多店舗展開するのか企業としての経営戦略を定める必要があるでしょう。

http://news.livedoor.com/article/detail/6117442/ へのリンク

 JR東日本のエキナカ戦略の目的

 JR東日本はエキナカ戦略を「第2ステージ」に進めます。首都圏では1日あたりの乗降客が20万人以上、地方では県庁所在地を駅を中心にエキナカ開発の候補としています。1施設あたり20ショップ以上で構成するエキュートは食品、飲食に加えて時間消費型やハレの場対応の業種業態を揃えます。 ディラは食品など日常性が強い業種やクィックサービスで構成されます。基本的にはJR東日本グループが運営し消化仕入れが中心ですが、今後定期借家方式によるテナント契約など柔軟な出店条件も取り入れるようです。

 エキナカ戦略を強める背景には収益を増やすことの他に街の玄関口としての駅のイメージアップがあります。今後戦略的に「まちづくりへのとりくみ」「三鷹〜武蔵小金井の高架下空間を統一したコンセプトで整備開発を進めるなど「線の開発」など駅の外への事業展開のギアチェンジを行い生活サービス事業を全収益の4割程度にまで高める計画の一環です。

 大阪ステーションシティの開発で自信を深めたJR西日本もいずれ駅の外へと目を向ける時期がくるのでしょうね。関西では私鉄が一歩先んじてはいますが、潜在的なポテンシャルはあります。

 ちなみにJR東日本の基準とする乗降客数1日20万人を超えるのはJR西日本では大阪、京都、天王寺、京橋、三ノ宮ぐらいです。新大阪駅(JR東海含む)、鶴橋駅あたりがそれに続くでしょうか。

 御堂筋線梅田・なんば・天王寺駅「駅ナカ」事業

 昨年12月に募集され、今年7月に運営管理者が南海電鉄と東急不動産に決定した大阪市交通局の御堂筋線「梅田・なんば・天王寺」各駅の「駅ナカ事業は「街サポートステーション エキスポ」というコンセプトで開発されます。
 梅田駅は473uで2014年4月頃にオープン、なんば駅は953uで2013年10月頃オープン、天王寺駅は627uで2013年4月頃オープンの予定です。※面積は延べ面積

 大阪市交通局は市長の交代により民営化圧力が強まり収益力アップが求められることでしょう。運輸事業以外の収益源を開拓していく必要があります。


 ある程度の乗降者数がある駅は商業者も対応を強めています。乗降客数が少ない駅でも地域にとっては重要な街の核ですから、そのような立地でも成立する事業も考えておく必要があります。

                                                        (2011年12月21日)
図−JR東日本営業収益2018年目標   (億円)                     図ー営業収益構成比  2018年目標
図5図6
(JR東日本)
■秋以降回復基調にあるも昨年を下回る訪日外客数

 円高か原発か?

 秋以降訪日客の数字はかなり回復してきています。3月の落ち込みは、東京電力原子力発電所の事故影響だと思われますが、秋以降は商用客を中心に回復してきているといわれています。
 それでも昨年より少ないのは円高の定着の為でしょうか、原子力発電所事故に対する不安の影響でしょうか。日本への渡航制限はかなり解除されていますが、まだ不安が残る上にに円高でもあるしという要因が加わったのではないでしょうか?

 もし、原発事故がなければ円高のマイナスは時間が経てば受容されていたのかも知れません。特に中国からの観光客に関してはそう思われます。

 原子力発電所事故による観光客の大きな落ち込みによる被害も決して少なくないことが伺われます。

 海外への出国者数の増加はあきらかに円高が後押しをしているようです。

 「福島へ旅行にいきましょう」

 政府による原子力発電所の「冷温停止状態」の発表を受けて観光庁では「福島へ旅行に行きましょう」キャンペーンを行うそうです。

 福島県は広いので放射能汚染が全県で危険な状態にあるわけではないのですが、「福島」とおおぐくりにすると逆効果であるように思えます。時間をかけた方が良いことも沢山あります。

 原発事故の収束をアピールすることを急ぐより、安心・安全のエビデンスを少しづつでも積み上げることを先行した方が、観光客の信頼を高めます。

 
 http://www.mlit.go.jp/kankocho/news01_000128.html へのリンク

                                                                   (2011年12月20日)
図−1 月別訪日外客数昨年との比較
図7

図−2 月別出国日本人数昨年との比較
図8

日本政府観光局(JINTO)調べ

■2012年に開業する商業施設

 大型施設は少ないが注目の立地に開業する施設が多い

 来年は今年のように大型化の商業開発は少ないのですが、注目される立地に開業する施設が目立ちます。

 5月22日に開業する東京スカイツリーの「東京ソラマチ」や、東京駅周辺といった目立った場所に新しい施設が開業します。

 東京駅丸の内に開業する「イーヨ!!」は三菱地所が丸の内に開発している永楽ビル(オフィス50,000u)の商業フロアです。地下1〜2階の2層で店舗面積は2,700u。26店舗のうち飲食18店舗、物販4店舗、サービス4店舗です。「安全・安心」「地産地消」「地域の伝統食文化」をテーマにより健やかな食文化をテーマにした店舗が並びます。大地を守る会の運営する農園カフェ&バルでは有機野菜を提供しています。
 物販では「ビアンキ マルノウチ」(イタリアブランドのサイクルショップ)が気になります。ワーカーを支援する保育所も併設されます。〜「キッズスクエア丸の内永楽ビル」 (株)アルファコーポレーション

http://www.mec.co.jp/j/news/pdf/mec111201.pdf へのリンク

 小松ストアと三井不動産が銀座で共同経営するのが「銀座コマツ」です。ユニクロとコムデギャルソンが共存するユニークな商業スペースになりそうです。銀座エリアは三井不動産の重点地区で近年いくつかの商業ビルをオープンさせています。

http://mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2010/0316/index.html へのリンク
 
 4月に開業する「東急プラザ表参道原宿」はGAPの跡地で国内初出店の「アメリカンイーグルアウトフィッターズ」を導入「トミーヒルフィガー」の旗艦店とともに屋上テラスでは緑の憩い空間を整備します。新しい施設ブランドをスタートさせる店舗と位置づけられています。

 「アメリカンイーグルアウトフィッターズ」はアメリカのカジュアルウェアブランドで日本未上陸の最大のブランドといわれています。青山商事がカジュアルウェア強化のために出資した新会社を設立します。商品はアメリカから供給・・・日本製の別注はつくらないそうです。

 ある種のマニア層にはうけるでしょうが、日本風にカスタマイズしないアメリカ商品はなかなか定着しないだろうと思います。爆発的に拡がることはないでしょう。(サイズや細部の好みが違いますからね)
 円高で価格的には競争力がついたそうです。

http://www.tokyu-land.co.jp/news/2011/index_029.html へのリンク

大阪では西区千代崎の「イオン大阪ドームSC」に注目

 阪神なんば線が開通し、活気の出てきた大阪性地区のランドマークともなるイオン大阪ドームSCが注目されます。

 ショッピングセンターの空白地帯なのである程度のベースが見込める立地です。イオンとしては環状線内側への初めての本格出店であること(都心型?)、オーナーの大阪ガスにとって発祥の地という特別な意味のある場所だけに、標準店にどんなプラスアルファを加えてくるか楽しみです。

                                                           (2011年12月19日)
表ー2012年開業予定の商業施設
図9
 繊研新聞、商業施設新聞、各社HPより
■そのスペシャリティ、本当にあなたの企業に必要ですか?

 自分のスタイルを主張することでしか「存在感」を発揮できないのか

 ある関西のリゾートホテルに支配人として招かれたJ氏。海外のリゾートホテルチェーンのアジア地区の責任者という触れ込みに、オーナー企業(固い業種)大きな期待を持ちました。「人脈が大事なこの仕事には領収書の入らない交際費が不可欠だ」というJ氏の主張に「?」という一抹の不安を持ったモノの、相手はこの業界のプロですから成る程そんなものか・・・と受け入れました。

 肝心の運営ですが、毎日自分のお客さんと一緒に飲み食いする事に熱心で、人材育成や、営業活動、広報活動にもご自分では動こうとはしません。それがこの業界のスタンダードなスタイルなのだというJ氏の主張は1年ほどでオーナーに見切られて、首を切られました。
 その後、そのホテルでの「実績」を元に他の企業の顧問に収まっておられます。

 中小メーカーが自社のデザイン開発力に自信が無いので、外部のデザインの専門家をアドバイザーとして入り込んでいただく事例があります。
 目に見えて改善されるのはいいのですが、いつの間にかその企業の商品がそのデザイナーの「作品」となってしまい、コントロールできなくなるというケースがあります。
 既存のブレーンを排除し、息のかかった仲間を送り込むとか、また、その企業の店舗にそのブレーンの持つ在庫商品を無理矢理おしこむとか。傍目に見ているといかがなものかというケースも良く目にします。(もちろんそれぞれに正当な言い分があるので一方的に食い物されているとはいいません)全面依存か決裂かの2者択一になってしまう事はお互いにとって不幸ですね。

 企業が新しい事業領域に進出しようとするときに、外部から経験のある人材を求めるというのはごく当たり前の判断です。
 外部からスキルを見込まれて組織に入るまたは契約で深く関わる「専門家」は自分のよく知る業界のスタイル、自分のスタイルを「主張」しないと存在感をアピールできないのでより過激に自己主張するのです。

 企業としては他の業界の専門的スキルは取り入れて企業を変革したいと思っても、悪い慣習(例えば、ある商業不動産開発で飲食テナント研究と称してオーナー企業の担当者が内装会社に飲み食いを強要。内装会社はその費用で利益が無くなってしまったというケースとか、ネットワーク作りという名目の外部との付き合いに熱心で店舗の開店に立ち会わず、閉店までに姿をくらますレストランの「広報」責任者とか・・・知名度を背景に様々な企業を食い散らかすように渡り歩く元カリスマバイヤーとか)まで持ち込まれてはたまりません。

 企業の組織文化を変えるためには

 逆の立場で考えると、「プロ」としては硬直した組織文化を変えるために招聘されたと考えれば、妥協はできないと考えます。慣習や思い込みを打ち破るのだと使命感を持って頑張ると・・・行きすぎてしまうのでしょうね。

 日本の人材市場に「プロ」と呼べる人材が少ないのも一因でしょう。ただし、その中でも企業経営として自社に無い専門性を取り入れないといけない局面は多くあります。スカウトするあるいは権限を委ねた委託契約を行う・・・パターンは様々ですが導入する人材のミッションを明確にして、権限の範囲をあらかじめ設定しておくべきでしょう。又、既存の社員にもそのプロを導入する目的をきちんと説明しておく必要があります。

 なんとなく、立派な経歴や知名度で選んでしまうとその人が頑張らなくても失敗しますし、頑張りすぎても組織に変調をきたします。

 

※事例は複数のモデルを元に再構成・再編集したもので、実際の特定の企業、個人について述べたモノではありません。

                                                             (2011年12月16日)
■地方経済面から大阪の小売業の動きをまとめると

 20114年に10万uとなる近鉄阿倍野店

 本日の新聞地方経済面の報道で子供や若い女性向けの売場を拡充することがわかりました。
 子供服売場は屋外スペースに遊具を置いた場所を設け子供が遊べるようにするようです。お医者さんが子育て相談をする専用コーナーを設けるなど母子が百貨店内で長時間過ごせるよう環境を整えます。もともと子供服売場が充実している店なので強みを強化しようという事でしょう。

 若い女性向けの(10代後半〜20代)の低価格なカジュアルブランドを導入した売場も設けるそうです。このターゲットの売場は現在の5倍になります。隣接するHOOPも改装しセレクトショップを誘致し相乗効果を図ります。

 レストランフロアも2フロアから3フロアに拡げて面積は2.8倍の1万u(40店)となります。先頃増床した島屋大阪店の飲食フロアが7,400u(35店)ですからそれを抜いて西日本一の広さになります。ちなみに東京の池袋西武は1層で3,000u。日本一の規模は隣接する東武で5層で51店の飲食店が整備されています。高級レストランからファミリータイプ、観光客向けの大阪名物フロアなど・・・幅広い客層に対応するようです。

 卸売市場で相次ぐ活性化策

 卸売市場を通さない流通の拡大で危機感を強めている卸売市場が飲食店の整備やアンテナショップの運営など活性化に動き出しています。9日の全国紙地方経済面に掲載された記事で卸売市場の動きが紹介されています。

 大阪なんばの大阪木津市場(民間)は建物の隣に寿司・和食横丁を設けて消費者を呼び込む計画をたて。2013年に完成の予定です。東京の築地卸売市場がモデルのようです。京都の中央卸売市場も「寿司棟」を新設するようです。昔「フードミュージアム計画」なども提案されていたようですが京都市はお金が無いので流れたのでしょうね。

 神戸市は兵庫区の中央卸売市場本場の跡地に食文化に関連した商業施設を誘致する方針だそうです。神戸ハーバーランドとホームズスタジアムの中間駅ですのでこの地域地域一体となった開発をすればいいのにと思いますが・・・・。

 大阪府中央卸売市場は駅ナカに果物や野菜を直送するアンテナショップをつくります、9〜11月に阪急梅田駅構内で出店した実験点では1日50万円の売上があったので常設店という話になったようです。

 ヨドバシカメラ「マルチメディア梅田」の次の一手

 最盛期は1,200億円あった直営部分の売上が1,000億円と縮小している「マルチメディア梅田」は直営部分を3万uに増床(コムサストアを縮小)しましたがテナント数を85店舗と現在より2割増やします。
  2015年をめどに、隣接する駐車場へ新たな商業施設を開業する計画も進めるそうです。ファッションを強化して回遊性を高める事が狙いとか。

 家電量販店はエコポイント特需が一段落して、一層の淘汰が進みます。異業種を吸収、または下位企業を異業種、外国資本が吸収するなど再編成の動きがあります。郊外では食品スーパーとの共同出店などが打開策としてあげられていますが、お互いの相乗効果がどのくらいあるのか不明です。家電量販店に来店した人が食料品を求めることはあっても食品スーパー来店者が家電量販店に来店するとは考えられません。ドラッグストアと食品スーパーほどの相性の良さはないでしょう。

                                                      (2011年12月15日)
■都市開発の新しい動きと泉北ニュータウン再生のメニュー

 スマートシティと高齢者との取り組みが必須

 関東財務局が千葉県内の都市開発の事例をまとめています。

 先頃特区申請に落選した泉北ニュータウン再生計画にも盛り込む必要のある要素があります。ひとつは「環境エネルギー問題への対応」です。自然エネルギーを効率的に利用する「スマートシティ」であることはこれからのまちづくりの必須条件です。

  千葉県の柏の葉キャンパスでは公民学連携による自立した都市経営を目指すとして、県と市大学共同で「柏の葉国際キャンパスタウン構想」が策定されています。8つの目標と26の方針の中で柱となるのが「スマートシティ」〜環境エネルギー問題への対応です。対抗校発電、生ゴミバイオマス発電などの再生可能・未利用エネルギーの導入や、蓄電・地区エネルギーの拡充、地域エネルギー管理システムの高度化などでエネルギーの地産地消を目指します。
 また、災害対策として3日分のライフラインを確保するそうです。

堺にはシャープの工場もあります。太陽光発電や蓄電、蓄熱エネルギーの街ぐるみでの有効活用、地域内のエネルギー管理システムが必要です。

 泉北ニュータウンの住宅ストックの50%が公営住宅だそうです。大阪府登坂意思がまとめた提案書を読むと「「事業者に居住者への明け渡し請求権」を付与する事ばかり強調されています。どんな街にしていくかの仮説がなければ、「公的住宅に居住する高齢者を追い出して若返りをはかるのか?」とげす菜勘ぐりをされることはあっても、夢が描かれていませんし、夢を実現するプロセスも描かれていません。

 泉北ニュータウンはいくつかのブロックに分かれています。泉ヶ丘駅前地区に地域の人を集めるのであれば、地域内をオンデマンドで効率的に運用される循環バスが結びつけるとか、地域内の自転車道を整備するとかいった目に見える対策が必要でしょう。

 「ユーカリが丘ニュータウン」は民間のデベロッパーが長期的な計画を持って開発している街で有名ですが、電気自動車、電気コミュニティバスの導入を考えているようです。スマートハウスの分譲や新世代の情報端末などの導入にも積極的です。この街は住民の要望を聞きながら段階的にまちづくりを進めたり、ライフステージの変化に対応した住み替えのサポートを行ったり、ハード面だけで無くソフト面での住民サービスを行っています。


 「高齢者」をお荷物にしてはいけない

 泉北ニュータウンの特区申請書類では高齢化が進んだニュータウンの若年層の比率を高めるために、公的賃貸住宅の居住者の明け渡しに関連する規制緩和を求めています。実務的にプロセスとしてわからなくも無いですが、どいていただいた居住者(主に高齢者)の受け皿として福祉拠点の導入補助しか、高齢者対策のビジョンが無いのはどうでしょう。「街の価値を高め、次世代に引き継ぐ」ための手段についてばかり見えていて、方向性がありません。

 柏の葉キャンパスでは東京大学高齢社会研究機構が在宅医療介護の推進、生きがい就労の支援、暮らしやすい住まいと移動手段の構築などの社会実験を行います。またユーカリが丘ニュータウンでは、NPO法人による地域の巡回パトロールや高齢者福祉施設と学童保育移設の併設などで幼老間の触れあい機会の創出を行っています。また高齢施設に訪問者が訪れやすい環境をつくり、近居を促進しています。同時に育児支援を充実し若年層の転入を促進しています。

 建て替えに邪魔な高齢者は追い出して施設に隔離するという発想では無くて、次の世代に受け継ぐ街のプレイヤーとして参加してもらうという発想です。

 高齢者は「資源」でもあるのです。

 特区申請の狙いは規制緩和で有り、その書類では規制緩和の内容をまとめているので仕方が無いのですが、大阪府、堺市のまとめた書類にはビジョンや戦略がまだまだ不足しています。

                                                                   (2011年12月14日)
■緑の整備が地域の力をつくる〜大阪市再生のひとつの道筋

 緑化率の低い都市は

 大阪市は人口1人あたりの都市公園の面積が全国の中でも最低ランクです。川崎市や東京23区も低いのですが、都市公園以外の緑(例えば皇居)が多いので緑被率では大阪市を遙かに上回ります。
 かつて薪をを取るために近郊の山の緑が壊滅状態だった韓国ソウルさえ下回っています。

 京阪神では京都の都市公園の面積が少ないのですが、寺社が多いためか緑被率は74%と緑豊かな都市であることがわかります。

 共通の「祈りの」ない都市でのコミュニティづくりは

 豊作や大漁といった共通の祈りが無い都市部では、こどもの為のイベントがコミュニティのつながりを形成していました。

 公園や街路樹、住宅回りの緑化は手間がかかりますし、コストもかかります。維持管理を行政が丸抱えで行うわけにはいかないので、地域のコミュニティでの維持管理が求められます。

 「割れガラスの理論」というのがあります。割れたガラスが放置され始めた地域は治安の悪化が始まっているというサインであるというものです。地域のコミュニティの成熟度をはかる目安として地域の公園がどの程度手入れされているかで図ることができます。

 御堂筋はいつも沿道の企業(これも市民です)が清掃しています。靫公園はかつてはブルーシートの無断居住者がいましたが、公園の整備と共に地域の人々が手入れをすることで都心のアメニティスポットになっています。店ができ、居住者も増えてきています。

 街路樹の落ち葉に対してクレームをつける住民が存在したり、行政がそれに押されて街路樹を伐採したりする街は衰退していきます。

 少子高齢化で子供の数が減少していく中で都市のコミュニティの核になるのは「公園」なのだと思います。公園の手入れを通して「新しい公共」の核が生まれます。

 「うめきた」も公園整備とともに、その公園を維持管理するのはどのようなコミュニティなのかを考えると、案外事業性の高い(差別化の出来る)街が完成するかもしれません。

                                                                         (2011年12月13日)
図ー1 1人あたり都市公園面積                図−2 都市の緑被率    
図10  図11
(2010年)※東京都は都市公園以外の公園含む    (2008年)国土交通省 海外データは関西大学調べ=大阪府資料から
■京都府と兵庫県宿泊者居住地の比較〜京都は近場に人気が無い?

 京都府に宿泊した人の居住地は関東圏、国外が多い

 国際観光都市京都は東京を中心とした首都圏や国外の宿泊者数が多くなっています。愛知県から西に居住する人の宿泊者数は少なくなっています。特に大阪府、兵庫県、奈良県といった近場の人は日帰りで京都観光はしてもわざわざ宿泊する人は少ないようです。

 兵庫県は大阪府、奈良県、和歌山県といった近隣の県の宿泊者数が多くなっています。兵庫県には関西の奥座敷有馬温泉や、城崎温泉などがありますし、姫路城や淡路島と行った観光地もあるからです。一方、兵庫県には首都圏や海外の宿泊者数が少ないのは大きな課題でしょう。

 大阪府民や奈良県民、兵庫県民は京都では特に食べ物が美味しいとは思っていないのでしょうか。京都市内では地元の新鮮な素材が少なく、日常食はつつましい・・・(というかけちんぼな)ということを知っています。東京人ほど京料理に幻想を持っていないせいでしょうか?

 丹後半島には豊かな海の幸があるのですが、あまり京都のイメージには結びついていません。

 近場の住民が京都にわざわざ泊まらないのは、温泉が少ないせいでしょうね。京阪神の中で中心地である大阪からの距離はあまり変わらないのに、宿泊者という視点で見たときに大きな違いがあります。改めて京都府と兵庫県の違いを再認識しました。

 三宮の賃料の低下は都市の観光客が少ないからである

 先週2日の記事で三宮の駅前の地下街の賃料が京都駅前の裏側より低いという事を指摘しました。8日の記事では神戸市の宿泊人数、外国人の宿泊人数の他都市と比較した少なさに課題があると申し上げました。
 兵庫県全体では観光資源が多くあるので、宿泊者も集まっていますが、中心都市である神戸はそのバックグラウンドを生かし切れていないと考えています。

 神戸市の玄関口である三宮はかつて、ダイエーグループの牙城でした。その功罪にはさまざまな評価がありました。「ダイエーが三宮を殺した」とまでおっしゃった方もおられました。特に震災後、街の機能は復旧はしましたが新しい三宮をリードする核が見当たりません。

 都市型リゾートでもあった神戸ハーバーランドは、「モザイク」を含めてイオンモールの運営に変わります。あの立地で食べて行くには北区、西区、須磨区を商圏とした地域生活に対応したSCとしての側面が必要です。一方で港神戸の観光拠点としてモザイクが果たしていた役割も少なくありません。

 イオンがどのような店作りをしていくのか大きな関心を持って注視しています。

                                                                     (2011年12月9日)
    


図ー京都府、兵庫県宿泊者の居住地(2011年7〜9月)
図12
(観光庁 宿泊旅行統計調査 2011年7〜9月より)
■宿泊旅行統計にあらわれてきている「日本の変化」

 平成23年第3四半期の調査結果の概要発表 観光庁「宿泊旅行統計調査2011年7〜9月」
  延べ宿泊者数は11,791万人泊(前年同期比-4.2%)で、うち外国人は460万人泊(同-39.1%)。
  宿泊者全体に占める外国人の割合は3.9%(前年同期6.1%


 東北地方の客室稼働率は高いが「ビジネス利用が中心」

 東北新幹線が森まで開通し、美しい国土への観光客数増加が期待されていた東北地方ですが、震災以後初めて迎えた夏休みシーズン、稼働率が高い宿泊施設はビジネスホテルを中心とした、非観光型の施設です。

 首都圏の宿泊施設の稼働率は低くは無いですが、大阪府、京都府をやや下回り、首都圏一極集中のトレンドが薄まってきています。(昨年の稼働率と比較すると東京都が微減、京都、大阪が増加しています)・・・・もちろん宿泊客数は、東京都、千葉県が圧倒的に多いのですが。

 九州新幹線の全面開通によって鹿児島県の稼働率が九州他県に比べて高くなっているのが目立ちます。観光客が増加しているのでしょう。福岡県、東京都とならんで大阪府が多くなっています。開通効果でしょうか。


図−1 府県別 客室稼働率  観光型宿泊施設(50%以上)非観光型宿泊施設の比較と
図13

図−2 宿泊人数 絶対数は千葉県、東京都が多い     図ー3 鹿児島県宿泊者の(居住地)   2011年7〜9月の3ヶ月間
図14図15

 東京の宿泊者は新宿区、港区、千代田区に集中

 市区別に比較したのが、下のグラフです。東京の宿泊者が集中しているのが港区、千代田区、新宿区です。千葉県は浦安のディズニーランドが大きく貢献しています。

 関西では観光都市でもある神戸市や奈良市の宿泊者数の少なさ(受け皿不足?)が気になります。神戸市は外国人の宿泊者数も極めて少ないのが観光都市としての課題です。

 人口規模では隣接する福岡市に負けない北九州市も都市の規模の割に宿泊者数が少ない街です。小倉城や松本清張文学館など見所もあるのですが・・・・。宿泊するまでの街としての魅力についてイメージが無いのでしょうか。

図−4 市別の宿泊者数 稼働率
図16

(観光庁 宿泊旅行統計調査 2011年7〜9月より)

                                                                      (2011年12月8日)
■東近江ファブリカ村〜つくり喜びに触れる村

 東近江の絣工場から発信する現代のアーツ&クラフツ

 2009年10月、滋賀県の地場産業である麻の工場として、昭和32年から50年以上操業してきた北川織物工場がショップ、ものづくり空間、ギャラリー、カフェ、ステージを持った複合施設に生まれ変わりました。

 海外製品との競争の中で、独自性を出すために10年前から絣工房fabricaを運営していたのですが、もっと沢山の人に絣や手仕事の良さを伝えようとファブリカ村が生まれました。

 体験教室やライブスペース、ギャラリーが様々な人に活用されています。


 滋賀県の琵琶湖の東側、湖東地方には古くから近江上布として栄えてきた麻織物の産地があります。中でも旧能登川町(現東近江市)は近江縮と呼ばれる夏の座布団地、掛け布団地を中心に生産していました。 時代が移り、生活様式が多様化し消費の形態が変化した現代、絣工房Fabricaでは、産地が得意としてきた素材(麻を中心とした天然繊維)技術(ほぐし、絣といった先染め織物)を生かし、 今感じる色を与え、洗練を加え、伝統をモダンに表現しています。

 近江の麻として発展してきた産地のこと、北川織物工場が独自に取り組んできた絣の技を、見て知って買っていただくためのギャラリー的空間として、 1999年3月、北川織物工場内に絣工房Fabricaを併設しました。

(北川織物工場 絣工房fabiricaのホームページより)

織物工場として50年間、日本人になじみの深い
麻織物を用いた寝装品、服地、
和装小物などをつくりつづけてきました。
 
東近江が築き上げた近江上布や近江ちぢみなどの
伝統産業と北川織物工場が守りつづけてきた手仕事の良さをもっと知ってもらいたい。
かつてのような活気を、地域に呼び戻したい。
そんな想いが種となり、一仕事終えた工場を
「つくるよろこびにふれる場所」
としてよみがえらせました。
それが、「ファブリカ村」です。


http://www.fabricamura.com/about/index.html へのリンク

http://www.gaido.jp/suteki/suteki.php?ID=337 へのリンク

 少し「言葉」が先走った印象を受けますが、「つくるよろこびにふれる場所」とぴうフレーズは多くの人の琴線に触れると思います。

 カフェでは週替わりでシェフが変わるランチが提供されたり、教室やイベントに活用されたり、いい感じで地域の人やアーティストに活用されているようです。

 営業は土日だけ、JR能登川駅から徒歩15分。竜王ICから30分の場所にあります。

 アートだけでは集客が難しいのですがアート+手を動かす、つくる喜びの提供は集客のヒントになりそうです。

                                        (2011年12月07日)
■職人を育てるための店〜パティスリー・ラボ・ツジ

 あべのマーケットパーク キューズモールに開業した学生運営の洋菓子店

 今年の4月に開業したあべのマーケットパーク キューズモールに開業した「パティスリー・ラボ・ツジ」は辻調グループ校(あべの辻調の方です。中之島の辻学園TEC日調ではありません)の中での上級校「辻製菓研究所」が運営しています。

 店舗面積は300uですが、調理室のスペースが広く、カフェは22席です。12:00〜18:00の運営で、平日のみの営業ですが1日平均22〜25万円を売り上げています。
 学生の実践的な教育の場が本来の趣旨ですので、カリキュラムに応じて商品が変わり定番品はありませんが、原価率が高くケーキ1個300〜350円とお手頃な価格なので行列が出来るほどの人気を集めています。

 「P.L.T.」は、辻調グループ校の上級校「辻製菓技術研究所」外部リンクへのリンクですの実習店舗。 製造から販売まで、すべて研究生が主体的に行い、「パティスリーにおける総合的知識」を体得するための施設であり、辻調グループ校が目指す教育環境を具現化した"産学直結の教育コンセプトショップ"です。 店舗運営から学ぶ活きた経験を大切に、よりお客様に喜ばれるおもてなしの向上をめざします。

http://www.tsujicho.com/plt/


 製菓業界はクリスマスやバレンタインに需要が集中し、繁忙期と閑散期の差が大きく、秋からクリスマスまでのケーキの仕込みの時期には眠る時間も無いほど多忙になり。続かない卒業生が多いと言います。

 実習で経験を積んでいれば、離職率も下がるという狙いです。


 小売業と人材育成の融合、工房的な生産施設の融合は他の業種でも「差別化」のポイントになりそうです。

 規格化された工業製品は海外生産にシフトし、価格での競争になります。そこでしか出来ない体験、そこにしかない商品でどれだけ感動を与えられるかが、小売業の差別化のポイントとなります。

                                             (2011年12月6日)
■千里ニュータウンの人口回復と泉北ニュータウンの総合特区落選

 千里ニュータウン人口3年ぶりに9万人台に

 1975年に13万人と人口のピークを迎えた後、人口が減少してきた千里ニュータウンですが、10月時点の人口が前年同月比1.0%増と人口回復が進んでいます。北大阪急行沿線の豊中市の人口が先行していたのですが、阪急千里線の吹田市域も増加が進んできています。

 老朽団地の建て替えが進行しており、0〜14才の年少人口が増加してきています。

 千里ニュータウン地区は住宅環境としては優れていますが、高齢者が多いことと、公営住宅が多いことから商業のマーケットとしては少し、魅力に欠けると見られていました。
 千里中央地区は昔の開発なので高齢者が使いやすいバリアフリーでも無く、若い年代を惹きつける新しい施設の導入も遅れていたのでそのポテンシャルを活かし切れていません。近年、民間企業がセンター地区の商業を運営するようになり、かなり改善されてきましたが・・・・・。

 千里中央の西地区にあるよみうり文化センターの改築が決まり、少しは新しい風が吹き込むかも知れません。(地域住民としては千里阪急を何とかして欲しいと思います・・・柏レイソルが優勝した今年は柏高島屋がセールをしています。数年前地元のガンバ大阪が優勝したときにも、全く無視でした。地域に無関心な店舗なのだと感じます)


 泉北ニュータウン再生へのチャレンジを

 地域活性化総合特区の審査に落選した泉北ニュータウン再生ですが、あきらめずに挑戦を続けて欲しいものです。千里ニュータウンと違い、建て替え住宅の市場性が低いため、老朽化住宅の更新が進みません。

 公開されている大阪府、堺市の提案書を拝見しましたが、どこにでも適用できる項目が並んでいて何故この場所なのかが見えないですし、将来につなげるアイデァが無いように思います。

http://www.pref.osaka.jp/attach/9707/00084226/1%20110930%20shinnseisyo%20gaiyouban.pdf へのリンク

 多世代共存であれば活動的なシニア団体とのもっと踏み込んだ協働プランを提示すればいいでしょう。あわせて「子育て支援」の強化、公的賃貸住宅を活かした社会的弱者の自立再生サポート・・・母子家庭へのバックアップ、教育の援助を含めた地域でのサポートなど他所で取り組んでいない目新しい施策が必要です。(特区として認定させるプレゼン技術の問題です)とにかく、直接、話を聞いてみたいという内容になっていないのです。

 また環境に優しいまちであるなら、太陽光発電等のグリーンエネルギーでまちの需要をまかなう。そして堺市の農家と提携したクラインガルテンの整備やファーマーズマーケットの整備。ニュータウン内の自転車道ネットワークの整備等々・・・楽しそうな計画をもっと沢山盛り込めば、審査員の印象も違ったでしょうね。提案書にアイデアが足りません。

 再度、チャレンジをして、ちゃんとまちを再生して下さいね。

 公営住宅だからできる団地再生があるはずです。

                                        (2011年12月5日)
 
■福岡の地価に見るJR駅開発の影響

 福岡市内の動向

 店舗賃料は天神地区、天神西通りで坪5万円。外資系ファストファッションの出店でわく天神西通りでは坪6万円だそうです。JR博多駅ビルの開業で消費の流出は見られたのですが、バーニーズの開店や既存店のリニューアルが続き一等地の賃料は横ばいだそうです。

 天神から少し離れた大名・赤坂は比較的落ち着いた雰囲気のエリアですが、飲食店の空き店舗の空室が埋まりつつあります。賃料は共益費込みで坪1〜1.4万円。若者が多く客単価が低いためと説明されています。

 商業地と言うより住宅地のカラーが強くなっているようです。

 博多駅周辺はJR博多駅開業の影響で地価動向はやや上昇傾向。店舗賃料は博多駅ビルの売上来客数共に予想を上回り、駅ビル内の店舗の賃料は上昇傾向にあります。ただし、利便性の劣る駅周辺では駅ビルに客を取られ打ち上げは減少傾向だといわれています。

 熊本市は、新幹線の影響で観光客は増加しているものの、熊本から福岡への流出も続いているようです。ただ、店舗については下通・上通りのアーケード街の1階部分への需要は高いのですが2階以上の借り手は極端に減少。空室率は高いようです。
 敷金が取れないためリニューアルも十分出来ない?賃料は下落傾向にあると言います。政令指定都市への移行を控えていますが、「需要者のニーズに合致したビルが少ない」という理由で需要が低迷する。オーナーが敷金が取れないという理由で投資をしない・・・・文面からはオーナーサイドの消極性が悪循環が読み取れます。

 鹿児島市では鹿児島中央駅周辺の乗降客増加のため飲食店を中心に需要が高まり賃料は高止まりの横ばい状況です。駅周辺でも特徴のハッキリしない中央町一番街アーケードより、飲食店のテナントが多いという特徴をハッキリ持つベル通りの方が強気の賃料設定ゾーンの格差がでているようです。

 おまけ  関西周辺での不動産関係者コメントピックアップ

・京都駅周辺
 「梅小路エリアで2012年に京都水族館がオープン予定であるが、周辺での土地取引は見当たらない。京都市民は歴史と伝統文化を大切にするので、元々流通業務地であった場所に出来る新しい商業施設について懐疑的な見方をする傾向がある」

 「京都駅北側の塩小路周辺は飲食店舗の引き合いが強い一階で坪2.5〜3万円が相場。京都駅南側や裏通りで坪1.5万円の水準」

・河原町地区
 「新京極のシネコンから大型書店が撤退。後継テナントとしてゲームセンターと交渉しているが相応の賃料水準(そこそこのいい値段の賃料を出せる?)今後も若者向けの店舗が集積していくだろう」

・大津
「大型商業施設に空き店舗や改装中の店舗が目立ち、苦戦していることが明らかである。学生は車が無いので電車で行ける京都駅前を利用しているようである。客単価が低迷している状況では買い回り品中心の商業施設には厳しい状況が続く」

・三宮
「センタープラザの地下は入れ替わりが激しく、坪2万円を切る賃料であれば全国チェーン店の借り入れ希望が比較的良くある」・・・賃料は京都駅前より低い水準になっていますね

・堺東
「商店街も含めた堺東駅前商業施設は物販業が厳しく、飲食業の割合が高まった。堺区鉄砲町の工場跡地(8.9万u)に大型商業施設が出店すると堺東駅前はさらに厳しい状況になる」

駅前の事務所はサラ金か学習塾ばかりです。中瓦町の再開発計画が中止になったのでこの先への展望が見えなくなってしまいました。オーナーの投資意欲もない事からの悪循環はここでも生まれています。

 街の玄関口の衰退は都市としての顔の衰退です。明治維新の後はいったんは「堺県」として独立していたのが、今度の「維新」では大阪市に併合されるのでしょうか?

                                               (2011年12月2日)
■大阪の人の動きと地価にあらわれた立地評価〜梅田、中之島、なんば、阿倍野

 震災後の関東からの転入は一段落

 東日本大震災後、関東から関西に転入する動きが顕著で、関西圏で長く続いた転出超過の傾向が転入超過に反転する動きは7月までで一段落し、10月はまた1,000人規模で転出超過となっています。ただし、りそな総合研究所のレポートでは、内容は以前とは異なっていると指摘しています。

 ・大阪圏から関西圏、中国、四国への転出が増えている
 ・大阪圏への関東からの転入数は依然として増加している

 本社機能の移転とまではいきませんが、リスク回避のためのデータセンターなどの分散、バックアップ機能の強化の動きが確実にあります。それは地価、賃料相場にも影響を与えています。

 大阪市内の主要地点の地価動向〜国土交通省 地価ルックレポートから

 国土交通省が四半期毎にまとめている「主要都市の高度利用地価動向報告書〜地価LOOKレポート」の最新版(2011年7月1日〜10月1日)から大阪市内の各エリアの評価をまとめてみました。

 梅田地区

 賃料が下げ止まり、空室率は改善されているが、オフィスはフリーレントが常態化していて需要が不足している中で実態は厳しいようです。商業は個人消費の回復などで、飲食店を中心に出店意欲が潜在的に高い地域で、好立地の賃料は維持できています。ただ、立地の悪い物件は厳しく、賃料は下落傾向にあるようです。

 西梅田地区

 オフィスは大型テナントの退去によって、空室を抱えるビルが多く、オフィス賃料は下落しています。商業は1階など視認性の高い店舗は横ばいを維持していますが、オフィスワーカーの減少の影響を大きく受ける地下街に集積する店舗は厳しい状況が続いて店舗賃料は緩やかに下落しています。
 とはいえ、安定稼働に到達して募集賃料を上げている物件や以前から高稼働を続けている物件もあるので、全部が悪いというわけではないようです。

 茶屋町地区

 大型オフィスビルの空室率は改善されたもの、中規模以下のビルや、周辺部のビルは空室を多く抱え、厳しい状況にあるようです。
 商業は1階路面店舗は引き合いが堅調で賃料水準は安定しています。とはいえ、賃貸仲介業者のコメントでは、募集条件と制約条件の乖離が大きく、賃料負担力の低いテナントが目立つそうです。茶屋町地区の大型商業ビルは苦戦していて、小型商業ビルもリーシングに相当苦戦しているという厳しいコメントがあります。

 「賃料負担力の高いテナント」が街にとってプラス面ばかりかどうかは議論があるでしょうし、梅田東小学校の跡地には複数社が入札参加を検討しているという事ですから、(大阪工業大学などを経営している学校法人常翔学園が落札しました90億円〜4,650u〜と予定価格の66億円を上回る価格でした。教育施設の建設を検討しているそうです)立地のポテンシャルは評価されているのだと思います。バブル期に再開発に失敗したので、開発が玉石混在なので悪い評価が表にでてしまい損をしています。

 中之島地区

 本社ビルや優良な大規模オフィスビルが多く、需要は底堅く、新築築浅物件への移転などで市況は回復傾向にあります。
 大型ホテルの敷地での複合開発が進めば集客にも期待できます。店舗賃料はほぼ横ばいです。

 梅田の開発の影響が大きいかとも思いましたが、環境が良く、優良なオフィスが集中しているというアドバンテージは寝強くあるようです。
 
 長堀・心斎橋

 西長堀に建設中の大型データセンターはバックアップオフィスを求める東京の企業の関心を集めているようです。ただ不動産管理業者のコメントでは「地区全体の活気が無く、引き合いが乏しく、空室が目立ち、賃料は弱含みだそうです。

 オフィス、店舗とも賃料は低下傾向。御堂筋の店舗賃料は希少性から横ばい傾向にあったのですが、客数の減少から下落傾向にあります。心斎橋筋はカジュアルブランドの出店意欲は旺盛ですが、賃料負担力に限界が有り、値崩が懸念されています。

 なんば

 オフィス賃料は下落中。店舗は震災の影響で東日本を避けた修学旅行生や、日本人観光客が増加。海外の観光客の客足も戻ってきており、店舗賃料は横ばい状況にあるようです。

 現在のなんば周辺には、大型のオフィスビルが少ないので南海電鉄の開発が進むと状況もかわると思います。

 阿倍野

 2014年開業予定の大型商業施設のリーシングが快調だという事です。4月に開業した施設の売上が好調なのが反映されているようです。背後地域のマンション用地の募集価格も高水準です。隣接する商業施設(MIO?)は空きフロア4フロアの内1フロアしか埋まらなかったそうですが、売上は好調で数%減にとどまっています。
 阿倍野筋の環境整備が進めば魅力アップにつながるので・・・・はということです。

 もともと阿倍野の後背地は優良な住宅地でしす。環境が良くなれば「正当な評価」がされるでしょう。

 このレポートは国土交通省が該当期間の取引状況を集約し、不動産者に取材したものをまとめたものです。

 http://tochi.mlit.go.jp/generalpage/5607 へのリンク

                                    (2011年12月1日) 
図ー大阪圏の転入超過数の地域別 前年比較  ※−は転出超過数
図17

(住民基本台長報告のデータを、りそな総合研究所がまとめたもの)


 11月
■2012年は東京が賑やかに〜ソラマチ、ヒカリエ、大丸東京店

 2012年開業予定の大型商業施設

 今年は今年は西日本の大型施設の話題が多かったのですが、来年は首都圏の都心で新しい施設が沢山立ち上がり、東京が賑やかになりそうです。何となくうつむき加減の首都圏の人々の心の持ちようが前向きになっていくことを期待したいと思います。

 2月には横浜伊勢佐木町の横浜松坂屋跡に大丸コム開発が運営する専門店ビル「カトレアプラザ伊勢佐木」が開業します。食品スーパーを核にしてカジュアルファッション雑貨を導入したデーリーニーズに対応したライフスタイルセンターとなります。(大丸コム開発は大丸の専門店運営会社。心斎橋の日航ホテルホワイトアベニュー、クリスタ長堀、京都御池の地下街などを関西で運営しています。今後大丸の百貨店内のテナントゾーンの運営にも関わるのでしょうか?(以前某企業の運営代行コンペご紹介したときにはPMにはあまり熱心ではなかった印象を持っています。大丸にとっては、この会社と通販事業の会社ががうまく稼働すれば新しい収益源になるはずなのです)

 12月2日の日経MJにJフロント幹部の「大丸コムを育てて、将来は中国などに商業施設を展開させたい」というコメントが掲載されています。デベロッパー事業を強化して売上346億円の東神開発(高島屋系)を目指すと言うことです。


 3月に開業のダイシン百貨店は、各方面で注目されている、時代に逆行した?チェーンオペレーションには向かない地域密着の「百貨店」です。完成したら是非見に行きたい店ですね。

 4月26日には渋谷の再開発ビル「ヒカリエ」が開業します。地下3階から5階までは東急百貨店の新店「ShinQs]が入居します。20代後半から40代の働く女性をメインターゲットにして16,000uの売場で180億円の売上を目指します。2,000席のミュージカル劇場が併設されるのが魅力です。

 5月22日には東京スカイツリータウンの「東京ソラマチ」が開業します。雑貨、スイーツ、お土産物などが中心ですが、しばらくは大いに賑わうでしょうね。周辺の下町との対比も面白く、東の通天閣と行った趣があります。

 東京の玄関口八重洲口開発の2期が完成すると大丸は48,000uとなります。丸の内側では日本郵政の建て替えや、東京駅の復元工事「東京ステーションギャラリー」が開業するなど、東京駅周辺が面白くなってきそうです。

 大阪の動きは?

 大阪では2012年末に阪急梅田本店が完成し、うめきた先行開発地域が開発する2013年に向けて梅田周辺の既存施設にも変化があるでしょう。

 市長が橋下氏になったことで、地下鉄の民営化、うめきたから関空アクセス鉄道の具体化がスピードアップします。地下鉄の駅での商業開発が東京のように進むでしょう。あわせて大阪市内に多い地下街の民営化が議論される可能性があります。(民間の商業者が運営している、ディアモール大阪、クリスタ長堀はそれなりに健闘しています。)

 以前にも検討された海遊館(水族館、マーケットプレース)の民営化もまた検討されることでしょう。京都水族館を運営するオリックス不動産、あるいは鳥羽水族館を運営している近鉄など民間のノウハウを取り入れて活性化されれば、市に寄贈されたままのサントリーミュージアムも活きてくることでしょう。

 

                                      (2011年11月30日)
表ー2012年首都圏都心部の大型店出店予定
図18
■JR博多シティ開業と天神地区の百貨店

 開業効果で百貨店のパイは拡大

 JR博多シティの開業(2011年3月)によって福岡市内の百貨店売上は全体で10数%拡大しています。天神地区の3百貨店の売上げは縮小していますが、博多阪急の売上げはその減少額以上です。他都市からの需要を吸い取る「ストロー効果」はあまりないということなので、新しい需要を掘り超したといえます。

 天神の3つの百貨店では岩田屋への影響が大きく、福岡三越への影響が軽微であることが面白いポイントです。

 買い物に行くのは天神

 とはいえ商業集積の規模は圧倒的に天神地区の方が優位日本政策投資銀行の調査でも買い物に行くのが多いと応えたのは天神駅エリアが75%で、25%の博多駅エリアを圧倒的に上回っています。
 住まいから近い、職場から近いエリアを選ぶ傾向が強いのは当たり前ですが、現在博多駅を利用している人の天神エリアの利用頻度は縮小していますが、天神エリアをよく利用する人は博多駅の利用頻度が増加しています。

 博多駅周辺の回遊の楽しみには不満があるようですが、商業施設がコンパクトにまとまっていることは好評価です。

 他地区の事例でも、(札幌、名古屋駅、京都)ターミナルに新しくできた百貨店のい利用は定着していくようです。博多駅の利用者は意外に夫婦と子供のファミリー層が多いようですから、その層に向けたサービスや店舗の充実が進めば定着していくでしょう。

                                                (2011年11月29日)
図ー天神の3百貨店(岩田屋、博多大丸、福岡三越)の売上減少額と博多阪急の売上
図19

図ー岩田屋の月別売上推移
図20
図ー博多大丸の月別売上推移
図21
図ー福岡三越の月別売上推移
図22
図ー博多駅エリアをよく利用する人の天神、博多の利用頻度の変化
図23
図ー天神エリアをよく利用する人の天神、博多の利用頻度の変化

図24


(日本政策投資銀行九州支店 JR博多シティ開業後のインパクト より)
■立地のいい小売店はチェーンストア理論を取り入れてはいけない

 チェーンストア理論がサラリーマンのアリバイ作りになるとき

 アメリカ流のチェーンストア理論を紹介した渥美先生の著作には、小売店の計数管値のあるべき姿が提示されています。私たちはつい。売上金額や利益額にばかり注目しますが、広い範囲で標準的な店舗を展開する企業は、本当はどの数字をチェックして収益をコントロールするかが重要であることを教えてくれますニトリやユニクロ、セブンイレブンと言った企業の成功はそのような理論抜きにはありえなかったでしょう。

 ところが、小売業は立地や競合店などの状況によっては「標準店」とは異なった高い売上・利益があがります。どのような顧客がいつどんな目的で利用するか、その為に必要なサービス・商品は何か競合とはどんな差別化を行うのか・・・?それがフィットすれば「非効率」に見えるサービスや、「死に筋」に見える商品揃えの重要性が見えてきます。・・・マーケティングと商人としての嗅覚や骨身を惜しまない献身が顧客との強い絆を造ります。

  店頭の在庫補充の手間を省力化するために、商品の種類を絞り込んで、絞り込んだ商品の陳列量を増やす(こまめな補充の手間を省く)といった利益をあげるためのノウハウは消費者にとって無味乾燥なつまらない売場をつくるだけです。少なくとも立地の良い店舗でそれを行うことは自分の首を絞める行為です。

  (逆に都心店舗で評判の高い売り場を複数展開して失敗する事例もありますが)

 サラリーマン化した組織ほど出来合の理論に逃げる

 チェーンストア理論やいまだに信奉者の多い「ランチエスター戦略」はマーケティングや商いのセンスが不要で、数字で説明できるため組織の上司を説得しやすいのです。
 
 いくつかの百貨店でチェーンストア理論を取り入れる動きもありましたが、成功した事例はあまり聞かれません。立地のいい旗艦店舗は多少のミスがあってもそこそこ成績を残しますが、地方店が総崩れ状態になっている店もあるように思います。


 共通フォーマットにこだわって、効率の悪い店舗をつくる?

 ダイエーは重点戦略として惣菜に力を入れているようです。「フーディアム」業態の新規出店や、既存店舗の改装を見てもそれが伺えます。

 以前にも御紹介した「フーディアム堂島店」は通行量はあっても惣菜が売れる立地ではありません。それでもダイエーの基本戦略である「惣菜の充実」路線を踏襲しているために「効率が極端に悪いコンビニエンスストア状態」になっています。

 業態は違いますが、堂島に開業している「やまや」(酒のディスカウントストア)のほうが北新地の立地特性にあっていますし、少人数で効率的にオペレーションされているので利益が残りそうです。何よりも梅田周辺で大型の酒のディスカウントストアがないため独自のポジションが手にいれられます。(オペレーションは典型的なチェーンストアなのですが、立地、競合関係などでうまくフィットしたケースですね)

                                    (2011年11月28日)

 
■東京スカイツリー人気で注目される?通天閣

 お金を払ってタワーに登る

 タワーに登るのはその下の街を一望するためでしょう。現在、入場者数は東京タワーが309万人と全国のタワーの中でも断然トップです。

 来年5月に開業する東京スカイツリーは開業時522万人。開業後30年間の平均は270万人と予測されています。首都圏の利用者が400万人という予測は、開業すれば一度は見に来るだろうという設定ですね。

 確かにリピーターというのはなかなか難しいかもしれません。

 大阪の通天閣は20万人から100万人へ回復

 最近はイベントなどにも積極的な大阪の通天閣は、一時は20万人/年間まで客足が遠のいていました。テレビドラマで取り上げられたことなどから100万人にまで回復し、新世界の串カツ人気もあり入場者数は安定しています。

 大阪市内でも北の方には高層ビルが多いので展望スポットが多くありますが、南はあまり数が無いので、多少の希少性もあります。東京でスカイツリーが話題になれば、対比されるか形で取り上げられる機会も今後も少なくないでしょう。


 地元の人間にとってあまり意識されることのない観光スポットであることは、当サイトでたびたび取り上げる「なにわ考現学」の2005年調査で、アンケートの回答カテゴリーに名前があげられていないことからもわかります。

 昨年公開された映画「トヨトミプリセス」では主人公の綾瀬はるかが通天閣・新世界と道頓堀、空堀商店街、大阪城を徒歩で移動しているように東京人の空想の中の大阪のシンボルなのでしょうか?

 この5年間になくなったレジャー・文化施設

 ちなみに「なにわ考現学」2005年版で取り上げたレジャー文化施設はこの5年間で多くの施設が無くなっています。(特にフードテーマパークもどきは壊滅です)・・・ 

 それを思うと通天閣(民間の施設です)が生きながらえているというのは、大阪の人に愛されている面もあるのでしょうね。

                                      (2011年11月25日)
図ータワーの高さと年間入場者数  折れ線グラフが入場者数
図25
2010年 月刊レジャー産業資料より
通天閣は2007年テレビ番組の背景となった直後の数値、京都タワー2007年
神戸ポートタワーは2007年神戸市
五稜郭タワーは2006年リニューアル後は112万人まで増加したことがある
東京スカイツリーは事業者の発表による予測

図ー過去1年間に利用したレジャー文化施設・これから利用したい施設

※2005年の調査では「通天閣」は当初から質問項目に設定されていない
 驚くべきはこの6年間に多くの施設が無くなってしまったことだ ●印の施設は今は無いもの

 特にフードテーマパークもどきの多くはあとかたも無い
図26
(なにわ考現学2005)
■商業集積の非物販テナントの選択ポイント

 売上に限界がある非物販事業

 売場面積あたりの売上を考えると物販事業であれば立地と顧客層がうまくマッチすれば高い効率を上げることが可能です。非物販事業の場合、例えば飲食店や美容関係のテナントは人や空間の制約があるので売上効率のアップにも限界があります。また設備への投資が大きいのでテナントが負担するのかデベロッパーが負担するのかによって賃貸条件も変わってきます。

 モノから「コト」への消費の重点の変化、ショッピングンセンターの空きスペースへの対応などの観点から非物販の事業者が商業集積の中での存在感を高めています。

 市民権を得たテナントとそうでないテナントの違い

 この10年位の間に百貨店や商業施設のテナントとして市民権を得たものとして、「10分マッサージ」「エステ、ネイルなどの美容サービス」「ABCクッキングスタジオ」「シネマコンプレックス」「ペット関連のサービス」などがあげられるでしょう。

 逆に賃料負担力がありながら市民権を得られなかったのは「アミューズメント施設」「パチンコ」などがあります。フードテーマパークも一時流行りましたが継続性のあるモノは少ないです。
 空き店舗があるとこれらの施設の売上は魅力です集客への波及効果は無くて、女性中心の商業施設利用者にとってはマイナスとなります。

 これから増えそうな非物販サービス

 大規模化する都心の商業施設でこれから増えていくテナントとしてはどのようなものが考えられるでしょうか。

 一般の結婚式の単価が326万円といわれていますが、低価格の結婚式場として伸びている「小さな結婚式」は平均18万円で20人規模の小規模の結婚式を提供しています。全国で15店舗を直営していますが、そのうち3店は商業施設内の店舗です。(ヴィーナスフォート、神戸モザイク、ハービスENT)
 賃料は月坪ベースで10,000〜15,000円でそれほど悪くないですし、年間900組の結婚式には平均20人の出席者がいるので、年間18,000人の飲食需要が生まれます。

 都心であれば、サテライトキャンパスが入居するケースも増えてきます。市場の縮小で生き残りをはかる大学などの学校が都心に拠点を持つ動きは強まっています。

 月曜日に紹介したような「工房」を併設したショップで、オーダーや修理再生への対応だけで無く、教室を開催するケースも増えてくるでしょう。手工芸品の「ユザワヤ」のようにショップに教室を併設したり、生徒の作品の展示販売会を行う展開も考えられます。

 同質化競争をしている小売業だけでは人は集まらないので、たとえ賃料負担力が劣っていても目的性があって、人を集められる(商業施設のターゲットにあった人です)機能が必要になります。

 カラオケボックスでも今のビジネスモデルとは違う業態を創れれば有りだと思います。

                                       (2011年11月24日)


図ーショッピングセンター非物販売上比率
図27
(繊研新聞 2011年8月11日記事より作成)
■ソーシャルゲームにつきまとう「不気味さ」の根源は?

 ソーシャルゲームは「下流食い」ビシネスなのか?

 テレビの宣伝を見ることはあっても「無料オンラインゲーム」のユーザーはごく一部の人だと思っていました。モバゲーがプロ野球を買い、グリーとAuがそのモバゲーを提訴するといったニュースが無ければ、多くの人の関心を集めることは無かったと思います。

 ネット上,オンラインで無料で楽しめる。ゲームを進めるのにアイテムを購入して課金されるフリーミアムモデルであるというビジネス上の知識ではわからない「闇」の部分があるようです。

 「サラ金(消費者金融)→パチスロ→法律事務所→ソーシャルゲームとTVCMに出稿する広告クライアントの主流は21世紀以降移り変わってきたけども,業態は違えど“これらのビジネスターゲット”が全く変わっていないことに注目すべき」というツィッター上でのつぶやきに反応し、ITジャーナリスト・キュレーターの佐々木俊尚氏が、上記の発言に触発されて「パチンコのような射幸心も? ソーシャルゲームはますます下流食いビジネスへ」とツィッター上で発言されたのです。

 日本のソーシャルゲームは匿名の出会いを求める出会い系サイトの側面があるといわれています。

 とはいえ、今「元気のいい業界」はこの業界で、投資家の注目も集めています。

 利用者像

 家庭用ゲーム機のヘビーユーザーはソーシャルゲーム利用者と層が違うと言われています。空いた時間に携帯電話などで気軽に利用できるひまつぶしとしてゲームのライトユーザーが多いようです。

 東京ゲームショー来場者はコアなユーザーが多いので少し一般ユーザーとは違うのかも知れませんが、そこでの調査はソーシャルゲームのユーザー像を知る手がかりとなるかもしれません。

 モバゲーとグリーを比べると、男性の利用が多いモバゲーと女性の利用が多いグリーという違いがあるようです。ソーシャルゲームを利用している人はだいたい2割。半数は無料での利用だけという状況です。

 課金プレイを行っている人は男性では10代前半と20代後半以上の中年層が多く、女性では10代と30代が多くなっています。ゲームのヘビーユーザーである10代後半から20代の女性は少ないですね。

 課金金額は40代男性と20代後半女性の平均金額が高いのが特徴的です。(サンプル数に偏りがあるので、読み取りに注意)・・・・自由に使えるお金が多い人ほど気が大きくなって使ってしまうのかもしれません。全般に女性はケチというかコスト管理がしっかりしていると思います。

 サンプル数が11の中の9.1%(つまり1人)10〜12才の男の子が月に13,000円使っています。例外値ともいえますが、マスコミに取り上げられ社会問題になるのは少数の例外値でも極端なケースです。

 「フリー」という仕組みは今のビジネスを考える上で欠かせない視点です。

 ただ、何(サービス、もの)に対して対価を支払っているか、いくら支払うのかわからない事が「不気味」さを感じさせる要因となります。確かにゲームのアイテムを購入する対価として課金tが発生するのですが、そのゲームを終了するまでにいくら使うのかは見えていないと思います。そして、一旦お金を支払って購入すると、支払い続ける(もちろん購入者の意思で)ように仕向けられることもその時点では見えていません。

 ソーシャルゲームを「下流食いビジネス」とした佐々木氏への反論として「三国志のゲームに医者や社長もはまって100万円以上使っているという・・・」というIT企業社長の反論があったようです。それは「商品先物取引」と一緒で下流に引きずり込むビジネスであることをはしなくも現した言葉です。

 フリーミアムというコンセプトは伝統的な商業にもつながる重要な考え方が含まれると考えています。ただし、提供者には高い倫理観が求められます。小売業者にはそれなりに「商人道」(嘘でも)があります。長期に渡ってのお付き合いで収支とんとんとするとかね。

 ソーシャルゲームバブルやスマホバブルに浮かれるIT業界にそれが無いのは、「スピードをもって成長しなければならない」という「呪い」にとりつかれているからだと思います。「投資会社に注目され資金が集まる」のも善し悪しですね。

                                   (2011年11月22日)

図ーソーシャルゲーム利用率(東京ゲームショウ2011 来場者調査)
図28

図ーソーシャルゲーム課金プレイ状況と課金金額(1ヶ月)
図29


■鉄道高架下の活用〜立地に対応した機能集積

 「2k540 AKI−OKA ARITISAN」

 「2k540 AKIーOKA ARITISAN」とはJR山手線、秋葉原駅と御徒町駅間の高架下に昨年オープン(2010年12月)したものづくりをテーマにした「工房とショップが一体となった商業施設です。秋葉原と御徒町の2つの街の間に新たな人の流れをつくる職人(ARITISAN アルチザン)の街です。

 既にオープンしている32店舗に加えて、今年の9月29日にはあらたに17店舗が加わりました。ジュエリーや革製品、帽子、テキスタイル、木製雑貨、傘、焼き物、家具に伝統芸、テーマを持ったカフェに新たに漆塗りアクセサリー、豹柄の雑貨専門店、万華鏡販売店などが並びます。5,000uの施設に1日7,000〜8,000人が訪れます。
 当初のターゲットは20代、30代の女性と想定していたようですが、平日は中高年中心で,男性も多いそうです。スーツ姿の男性やOLさんも目立っているとか。週末は家族連れ、カップルが訪れます。外国人観光客も多いようです。

 施設が立地する台東区内では皮革製品会社(全国の32%のシェア)や宝飾関連業者が集積しています。そういった地域特性に加えて、東京では若いクリエイター、アーティストが東京の東に集まるトレンドがあり、浅草橋や蔵前には「セントラルイースト東京」と呼ばれる一帯もあります。

 高架下の空間を活かして、一つの大きな館では無く小さな棟がいくつも連なるオープンな空間としたのも周辺地域を散り込む工夫です。

 工房と店舗の一体化
 
 工房と店舗が一体となることで生産者(職人)とお客さんがやりとりを出来るというのは大きな魅力です。関西でも神戸の「北野工房の街」や京都の町屋での工房などそこにしか無い魅力でお客さんを集めています。長浜黒壁もそのような考え方で仕掛けられたものです。

 とはいえ「仕掛け」だけで作られた施設は長続きしません。その立地にあった「ものづくり」との連携が必要だと思います。

 8月27日の日本経済新聞東京地方版ではものづくりとの連携の事例として、千葉県新松戸駅駅近くに地元のマブチモーターが寄附した「新松戸未来館」の発明教室の事例や、埼玉県の県内のものづくり関連の施設を巡るスタンプラリーの開催などを紹介しています。

 農産物など1次産業の6次産業化(商品開発、生産や販売、観光への拡大)が議論されていますが、2次産業もまた観光や販売などの領域を超えた連携が求められているのかも知れません。

 需要が縮小している日本酒の蔵元さんでも新しく開発した商品の直接販売や、スイーツの教室開催などで人を集めている事例があります。このような先端的な取り組みは地域を越えて注目されています。

スイーツにと入り組む丹後半島の蔵元
http://www.hakurei.co.jp/kengaku/#sweets へのリンク


                                                   (2011年11月21日)
■大分の小売業の動き、梅田のこれから

 大分の新しい動き

 大分商圏での大型郊外SCは「トキハわさだタウン」(64,500平米)253億円、「パークプレイス大分」(56,000u)258億円mの2つしかありません。今年の3月には中心部の大分パルコ40億円が閉店しましたが、2015年にはJR九州が新大分駅ビル(30,000u)の開業が予定されています。

 新しい駅ビルは延べ床面積11万3,600u。地下1階から地上22階。地上の1〜4階がシネマコンプレックスを含む商業専門店ゾーン。その他、ホテル、温浴施設が入居します。

 商業ゾーンの売上げ目標はグループの「アミュプラザ鹿児島」と同規模の31,000u。売上も同じ程度の216億円前後が目標となります。

 「パークプレイス大分」は今年3月に2,200uを改装しパルコ閉店によるヤング層の吸引を図りました。6月の高速道路無料化で客数減を予測していましたが、集客はさほど落ち込まなかったようです。(繊研新聞)

 「トキハわさだタウン」は昨年4月に開業以来の6,300平米の改装を行っています。効率の悪い直営ゾーンを縮小し、ユニクロ、無印良品、ABCマートを規模拡大しました。
 今後、大型雑貨店、フードコートの充実、スイーツの強化など見て回るだけでも楽しく,集客や滞留時間の延長に貢献する機能の強化を図るようです。ギフトの充実や細やかな接客サービスなど百貨店直営の良さを強く押し出すそうです。

 閉店した大分パルコはDCブランドブームの時の勢いが一番良かったようです。最近閉店した四条河原町阪急やGMS系の都市型店舗として成功といわれていた「ビブレ21」もDCブランドの集積で売上を上げていました。
 昔のDCブランドは横のつながりが強く、出店するときはパッケージで出店していたので、ある意味、デベロッパーは「楽」というと語弊がありますが、テナントに任せることが出来た分、自前のノウハウ蓄積ができなかったのだと思います。

 最近の改装は「ユニクロ」「無印良品」「H&M」「ZARA」「ABCマート」などの即効性のある大型店頼みであることが気になります。トキハのようにテナント拡大と共に、直営売場の効率化など商業者としての自前のノウハウの蓄積、伝承に着目したいと思います。

 ヨドバシマルチメディア梅田北の大型商業施設

 ヨドバシカメラは2015年をめどに大型の商業施設を開業します。もともと出店の時にに取得していた土地で,オフィスビルの計画もありました。詳細は未定ですが店舗面積は5万平米と現在の店舗と同規模の施設が開業します。昨年開業した京都店ではユニクロ,ABCマートなど90のテナントを誘致しています。

 家電専門店から商業施設転換への事業構造転換が加速すると報道(日経新聞)されています。JRと阪急電車の駅の中間の好立地です。うめきたグランフロント大阪の商業施設(42,000u)への影響だけで無く既存の施設にも影響は大きいでしょう。

 梅田に無い機能を大胆に取り入れる事が期待されます。
 
                                                  (2011年11月18日)
           
■さらに競争が激化する九州の小売業

 福岡消耗戦?(日経新聞地方経済面11月17日)

 今朝の日経新聞九州版で九州流通業の「生き残り戦争」について取り上げています。九州新幹線全線開業で人の流れが変わり、相次ぐ新展開業がオーバーストアを招いているという指摘です。
 JR博多シティは3月に開業し10月までに3,800万人の来館者を集めました。(初年度目標3,650万人)

 700m離れたキャナルシティ博多はJR博多シティ開業の3月の売上は21%減、4月、5月は16%減と大きな傷手を受けました。
 9月末にイーストビル(第2キャナルシティ)18,000平米を開業。「ZARA」「H&M]「ユニクロ」などのカジュアル衣料の大型店を集積10月の来館者数が前年比70%増の185万人となりました。

 売上も全館予算達成と好調なキャナルシティですが、「核テナント」(カジュアル衣料の大型店)だのみの集客に不安の声も聞かれます「核テナントが撤退したら広い売り場を別のテナントで穴埋めするのは容易ではない」
 特に外資系のテナントはドライです。売れるとなると近くにも出店し,撤退も早いのです。

 福岡市ではルイヴィトンの店舗が博多リバレインと福岡三越に入店していました。天神岩田屋の横に開業した「レソラ天神」(NTT都市開発)に「バーニーズニューヨーク」(2,800平米)とともにルイヴィトンが出店し、博多リバレインと福岡三越の店舗は閉店しました。

  博多リバレインの専門店街「イニミニマニモ」はルイヴィトンの跡に博多織りを使った雑貨専門店を誘致。予算比1割増と好調のようです。九州ならではの食材や工芸品に商機と脱「高級ブランド」を探っています。
 福岡三越のヴィトンの跡は自主編集の売場になって居ます。ヴィトンの売場であればこのように何とかなりますが、大型店ではなかなかこのような穴埋めは難しいでしょう。(神戸ハーバーランドの「神戸西武」跡はテナントも二転三転し売上歩合の条件でもテナントは埋まらなかったようです)

 天神地区の逆襲はまだ力不足

 天神コアも9月に全体の3割を改装、JR博多シティ開業後、売上は前年を下回っていましたが改装後は9月は8%増、10月は5%増と好調です。福岡パルコは改装する8月までは2ケタ減ですが、改装後は数%減と回復しています。新しく出店したバーニーズや、改装した店舗は好調ですが、岩田屋、天神地下街、イムズなどは前年割れが続いています。

 他の地域の動向

 福岡に隣接する小倉の駅ビルは昨年比1〜1.5%と大きな影響は受けていません。距離としては博多まで新幹線で16分ですが、もともと博多・天神に流出していた層は別にして、あらたに流出が増加したとはいえないでしょう。

 大分ではパルコの閉鎖はありますが、既存施設改装及び駅ビルの開業の動きがあります。〜あらためてまとめますが。郊外店では高速道路の無料実験終了の影響が懸念されていましたが、思ったより影響は少なかったようです。

                                                 (2011年11月17日)
■景品表示法とインターネット上の無法広告〜モバゲーは本当に大丈夫?

 インターネット消費者取引の景品表示法上の問題点及び留意事項について

 10月28日に消費者庁が発表したペーパーはネット上で新しいビジネスモデルとしてもてはやされているいくつかの手法が「景品表示法」に抵触すると判断される可能性を示唆したものです。

@フリーミアム free(無料)+Premiium(上質)を組み合わせた造語
  〜モバゲー、グリーなどの「無料ゲーム」やニコニコ動画などのネット放送

 基本的なサービスを無料提供し、確保した顧客基盤を元に有料の付加サービスの購入に誘導するビジネスモデル。ゲームは無料ですが、アイテムを有料で購入しないと一定のレベルから先へ進めないというものです。ある程度の判断力のある大人相手であればいいのですが特に子供相手に「完全無料」を強く謳いすぎると購入金額がふくれあがって社会問題になります。

 事業者がサービス無料を強く訴求すると「景品表示法の不当表示」となると指摘されています。(最近のテレビ広告は無料ゲーム、サラ金(カードのリボ払いも同じ)、サラ金精算の弁護士、新興宗教、商品先物取引、など危ない業種が増えています。ネット上ではそれなりのリテラシーを持つ人が大半なので被害は少ないですが、テレビを見ている人は高齢者、子供などナイーブな人が多いので本当に大丈夫かと心配になります)

 モバゲーのプロ野球界参入に否定的だったのは、このビジネスの裏表がわかる「楽天」だけでした。おそらく多くの企業はその危うさをわかっていないのだと思います。(通話料無料で売り出しているソフトバンクはある意味同じ穴の・・・・・)

 ニコニコ動画は数百円でプレミアム会員として登録され、ニコニコ生放送の混み合う人気コンテンツを優先的に見たり、時間をずらして視聴することができます。巨人軍の清武オーナーの記者会見は28万人が視聴していました。有料番組などもありますが、対価がハッキリしているので知らず知らずのうちに度を超すことはありません。

 A口コミサイト 〜旅行やグルメなどの口コミを掲載するサイト

 事業者自身が利用者を装って嘘の記述をしたり、原材料として使われていないていない「こだわり食材」をあたかも使われているように表記して絶賛することは不当表示となると指摘されています。

 基本的にネットで見る人はあくまでも話半分で読んでいますし、第三者を装った書き込みがばれると逆効果になるので実害は比較的少ないと思います。むしろ口コミサイトの運営事業者がどこで収益を得ているかを開示する必要があります。グルメサイトでは口コミ対象からは広告費をとらないケースもありますが、その場合広告費を支払った同じの地域の同業者の広告を大きく載せるなど・・・・・まあ、ある種のソフトな脅かしで広告出稿を求めるケースもあるようです。広告を出稿しないと競合店の広告を大きく掲載する・・・・。

 Bフラッシュマーケティング 〜特典付きクーポンを一定数量、期間限定で販売するビジネスモデル

 昨年末のグルーポンのおせち騒動で有名になったビジネスモデルです。問題となる事例として二重価格と原材料の嘘(天然鮎とうたいながら養殖鮎を使用・・)などが指摘されています。

 特に「お得感」を打ち出さないと消費者の購入に結びつかないので72%OFFとかいった表示になります。
 
 USライス大学の調査で、共同購入型クーポンに対する評価として、「利益が出た」と回答したクライアントは55%もいた。「利益を失った」と評価したのは27%に過ぎなかった。飲食店のように原価率の高い業種より。サービスやイベントなど、利用者が多ければ利益も積み上がる業態に適した販促手法のようです。
 クーポン客に占める新規顧客の割合は80%弱。クーポン価格以上の支出をした人は35.9%なの即効性のある効果は見られます。ただし、その後リピート率は19.9%なので持続的な効果は今ひとつです。(データはJAGATのホームページの記事より。コメントは当社の見解です)


 Cアフィリエイトプログラム(バナー広告での販売での成功報酬)
 Dドロップシッピング(ネット上での販売代行システム)

 これらのビジネスモデルでも不当表示と不当表記が問題とされています。WEB上での取引で、生産者、販売者の顔が見えない、居場所が見えない事が多く、責任の所在が不明確です。ネット上の大げさな煽りで販売する事が「成果」に結びつくと、感覚が麻痺してくるのだと思います。


 通販事業の計画をしたときに、新聞は表現の規制がかなり厳しくコントロールされているのに、折込チラシは規制の目が及ばないのでかなり自由度が高い(節度をなくすと危ないことになります)事を知りました。WEBサイトはそれ以上だと感じました。

 ・・・百貨店が通販事業を展開するならば、そのあたりの信頼度の保証という点で強みがあるだろうなと考えています。

                                              (2011年11月16日)
■羊羹文化不毛の地関西に「羊羹コレクション」をあえてこの時期にぶつける「勇気」とは

 羊羹文化不毛の地関西

 家計支出で「羊羹」への支出を比較すると,関東圏の都市に比べて,関西の都市の羊羹支出がとても低い事に気がつきます。
 和菓子のメッカであるような京都でさえ,千葉市より低い水準です。大津市は「でっちようかん」が有名で関西では唯一家計支出が1,000円を超えています。(金沢、松江など和菓子文化の盛んな街でも羊羹は意外に人気はありません)

 新町の廣井堂の栗蒸し羊羹など美味しい羊羹もあるのですが、羊羹文化は関東ほど定着していません。

 まだ,滋賀県、京都を商圏とするJR京都伊勢丹で開催するなら多少の可能性はあっても,神戸、大阪ではまず即効性はないでしょう。

 あえて「羊羹コレクション」を開催する意図は?

 JR大阪三越伊勢丹がの今朝のチラシの片面全面を使って「関西初 羊羹コレクション」の広告が掲載されています。関西に「羊羹文化」を定着させて他の百貨店とは違ったJR大阪三越伊勢丹のロイヤリティを確立するとか、羊羹のある暮らしという新しいライフスタイルからの全店への波及効果を意図して、あえてこの市場にぶつけたのでしょうか?(アフリカで靴を売り、南極で氷を売るという奴だな)

 新しい食文化の浸透には時間がかかります。根気よく続ければファンも拡がっていくでしょう。その意味でこの催事に意義が無いとはいいません。

 今のJR大阪三越伊勢丹のおかれている状況を考えると、販促費をこのようなイベントに投下するという判断はないでしょう。阪急梅田本店が工事中である今の間に、できるだけ固定客を増やさなければいけない時期ではないでしょうか。特にボーナス商戦を控えて11〜12月商戦で売上を獲得しないといけない時期です。

 グループの他の店ではヒットした催事なのかも知れませんが、この市場でこれはないでしょう。単に、機械的に他店の催事を使い回しているとか、販促費を重点分野に集中するという判断ができないから、このチラシにお金をかけるとかいう理由であれば・・・・・もう勝負は終わったようなものです。

 この危機感の無さはなんなのでしょう?市場に真面目に向き合って下さい。

 折角、関西に無い個性の百貨店が生まれたのに、残念でなりません。

                                               (2011年11月15日)
図ー2010年 ようかんへの家計支出
図39

(家計調査年報)

図ー百貨店の食品イベントの月別変動

図40

バレンタインデーのある2月とクリスマス、正月準備のある12月のウェートが高い
(各社資料より)
■テナント企業から見た駅ビル・駅チカ立地の評価

 専門店集積運営のノウハウとは?

 テナントの商品構成や,販促、陳列にある程度関与できる百貨店の売場と異なり、駅ビルやショッピングセンターなどの専門店の集積は、テナント企業に委ねる部分が大きく、デベロッパーが.毎日の運営に関与できる余地は少ないです。

 ユニクロや家電量販店などある程度の規模がありフロアを一括で借り上げることが出来る企業は、立地条件、導線、賃料で出店の可否が決まりますが、店舗規模がそれほど大きくない専門店では、「どこが運営するか」が検討材料の大きなウェートを占めます。

 デベロッパーがどこまでテナント間の秩序を統制できるか?再開発物件などで多いのは、営業時間もばらばら、通路へのはみ出し陳列も常態化し、業種業態のゾーンとしての配置もバラバラであるケースです。(ほとんどはもともとの地権者であるので所有権を持っていることから起きることなのですが)

 極端なケースは別にして、ありがちなのは、開業当初は外部のコンサルの力も借りてそれなりにゾーン毎のコンセプトが守られるのですが、売上げ不振でテナントが抜けた後の埋め方にプロとアマチュアの違いが歴然としてあらわれます。

 商業者であれば「商品」や「サービス」の内容が理解できるので,どの店なら適当でどの店ではマッチしないかの判断ができます。また、事業者とのネットワークも広く持っています。

 そうで無い場合、意思決定者の判断基準は「賃料負担力」のみです。「賃料負担力」があって出店意欲の旺盛な業種業態は、あまり周辺の店舗に歓迎されないものが多いのです。(例えば貴金属買取とかサラ金とか、パチ屋と・・・か)

 鉄道事業者にとって最近は商業施設運営は大事な収益源ですから、人材も投入され、商業施設運営に関してはプロの部類に入ります。若手は勉強熱心ですし、必要であればトップをスカウトする事も厭わないようです。

 ノウハウを積み重ねてPM事業まで受注できる会社が増えています。良いテナントが集まることで立地としての価値が高まる善循環ですね。

 駅チカ物件で要注意なのは「再開発」ビルです。・・・・

 イオンが都市型駅前物件にいまひとつ力を発揮できない理由

 特に地方都市の巨大なショッピングモールでは、抜群の強さを見せるイオン系の専門店集積ですが、都市型のショッピングセンターでは充分に力を発揮できていません。パルコとの連携を進めようとしたのもイオン系の専門店ビルフォーラスが業態として確立していないからです。

 実際、大分のフォーラスは、近くにある古いパルコよりずっと優れた店舗ですが、同じフォーラスの店舗名で姫路で運営されている店は建物も古く、姫路の駅前開発が進むとかなり厳しい状況になるでしょう。組織としてのノウハウの共有化がなされていないのだと推測します。

 地方都市へ行けばその街にない全国的な有名チェーン店やその街に無いレストラン街が集積されたイオンのショッピングモールは新しい都心とも言うべき魅力があります。

 例えば京都駅の南側で運営している店舗は(途中段階からのPM物件であるのですが)、マスコミには都心店として伊勢丹とあわせて河原町に対抗という取り上げ方がされていましたが、大阪の阿倍野キューズモール(イトーヨカドーが核店舗)と同じく、たまたま、駅の近くに立地している「郊外型のショッピングセンター」です。その業態での儲け方はノウハウとして確立しているはずです。

 イオンがファッションビルの業態を確立するためには、郊外店舗の成功の方程式を捨てて新しいノウハウを確立する必要があります。
 郊外店舗の成功は「チェーンオペレーションの徹底」と「徹底的な地域密着戦略」といった相反する方向性の統合にあるとみています。店舗の規模も大きいので「包み込み戦略」で競合を上回る売場ボリュームで圧倒できます。もともと商圏ポテンシャルが小さい立地が多いので、包み込む戦略が正解なのです。

 都心店舗では「競合との差別化」という要素が必要になります。いいかえれば絞り込むために「切り捨てる」発想が求められます。同じ会社の中で価値観の違う業態を並立させるのは結構厄介です。

 神戸ハーバーランドの阪急、モザイク跡の運営をイオンが受けましたが、この立地は「郊外型」なので得意パターンでしょう、北区や須磨区、西区のお客様をつかめばある程度成功すると思います。
 本格的な投資をしないと、この街は衰退するばかりなので、悲惨な状況になっている神戸西武跡(オーナーは違うけれど)も含めて仕切り直しをしてくれればいいなあと思います。

                                                 (2011年11月14日)
■大阪中心部の市場の拡大はわずか〜恩恵は阪急電鉄へ?

 9万u面積が増加した大阪地区百貨店の売上げは200億円像

 第2四半期で予算に届かないのは近鉄百貨店阿倍野店(-2億円)、島屋大阪店。「震災による節電や節約志向が影響」とのことですが、これは理由になっていない・・・ちゃんと本質的な要因に向き合った方がいいですよ。(なんばシティは改装以後全館で5%増です)

 大丸大阪心斎橋店が計画を5億弱上回っています。梅田店の影響が予測より少なかったのでしょうね。

 阪急、阪神は1割減ぐらいの影響を織り込んでいたようですが意外に影響が軽微だったので予想を上回っています。阪急はインターナショナルブティックの婦人服が5%増。紳士服が7%増と伸ばしています。

 大丸大阪梅田店は半期で昨年を超える入店客数です。売上は79%増・・・ただし、昨年は増床工事があったので売上はそれ以前に比べて縮小したものとの比較です。(それ以前の売上規模は600〜640億円の店舗でした)婦人服やレストランなどのいスペシャリティゾーンが好調です。
 ただし、入店客が増えて売上の伸びたレストラン街は,新しく増えた30代の客層には全くマッチしていません。早急に(ターミナルビル部分を含めて)全面改装する必要があります。

 JR大阪三越伊勢丹はイセタンメンズや、ベビー子供服の集積など独自性が有り、伊勢丹で買う理由が明確な売場は予算に近い水準で推移しているそうです。伊勢丹の顧客化には時間がかかります。しばらくは大家さん(JR西日本)に家賃を思いっきりまけてもらう交渉をする事ですね。

 阪急電鉄「大阪ステーションシティ」の集客増で増収

 関西私鉄の4〜9月の決算が出そろっています。JR大阪駅の商業施設開業効果は阪急電鉄にも恩恵があったようです。沿線の神戸市の人口増もあり増収。阪神なんば線が依然好調な阪神電気鉄道も増収だったようです。阪神タイガースの不振を補ってあまりあるプラスで5%の増収です。

 近畿日本鉄道は,京阪電気鉄道、南海電気鉄道は人口減や東日本大震災の影響もあり減収トレンドが続いているということです。沿線の就業人口が減ったことも大きいようです。

 JR西日本の数字はでていませんが、台風の影響のマイナスや新幹線のプラスマイナスの影響があるので、大阪駅の乗降客の増加がどの程度収益に貢献しているかは見えにくいかも知れません。JRとしては神戸線沿線で駅を増やして競合している私鉄から乗客を獲得しようという動きはあるようです。

                                        (2011年11月10日)
図ー大阪市内百貨店売上比較
図41
繊研新聞11月10日掲載記事より作成
■視点を変えて「駅ナカ・駅ビル」立地を考えてみる(1)

 駅立地のブームに少しだけ「距離」をおいてメリット、デメリットを考える

 アメリカから輸入されたチェーンストア理論については,必ずしも全面的に信奉する立場ではありませんが、渥美俊一先生の書籍は折にふれ読み返すと気づかされるモノがあります。

 商業者の立場で駅ナカ・駅ビルへの出店については否定的な評価をされています。

 チェーンストアの店舗評価で見えやすい「年商」を評価するのでは無く「総資本回転率」つまり投資額の何倍の年商を確保しているかで判断すべきだとい視点があります。

 テナントが出店するときに支払う「保証金」は通常坪10〜20万円の相場ですが、駅ビルへの出店となると坪300万円を超えるそうです。「エキナカ・エキビルへの出店は、JR駅での乗降客を取り込むことにより,坪あたりの販売効率が良くなり大繁盛しているように見える。だが、チェーンストア作りという観点からはエキナカ・エキビル」に出店したと途端に過剰な投資が増加することで企業の多店舗化を進める能力が一気にダウンしてしまう」
 
賃料の面でも月坪賃料が高くなると(駅物件は結構強気ですからね)固定費が上がっていくら販売効率をあげても黒字にならないといわれています。・・・これは渥美先生のご意見ですからね。

 テナント企業にとって話題性と集客力のある駅ビルへの出店は利益だけではない,販促媒体としての意味があるとは思います。

 賃料に関しては、フロア貸しができる総合店の場合月坪5,000円〜7,000円(優良店の場合3,000〜4,000で交渉すると言われています)と渥美先生は月坪12,000円とか最高25,000円を支払っている事例があるとおっしゃっています。・・・実際もっと高い賃料を払っているケースは少なくないでしょう。外部に発表されるわかりやすい「売上」とか「集客」では見えないチェックポイントがあります。

 デベロッパーの視点から駅立地を考える

 鉄道駅は従来、運行部門の意向で、できるだけ迅速に人を移動させるかという事が最重要課題でした。駅で人が長時間滞留することはもってのほか・・・だったようです。

 人口減少の中、鉄道企業の事業収入の中で不動産事業のウェートは高まっています。ターミナル一等地では立地の価値に見合った最大の収益をあげることと、鉄道沿線のイメージアップにつなげて沿線での不動産事業収益(住宅開発等)や,商業デベロッパーの実績を背景にした沿線以外の地域での「PM事業」の展開のショールームの役割があります。・・・・従って「有名な店」を好立地・集客力を背景に高い賃料でリーシングするというミッションがあります。

 一等地であれば、ある意味広告費と割り切れるテナント企業もありますし、集客数に目がくらむ計数管理の出来ないテナント企業もあるので何とか形はつくれますが、その「運営ノウハウ」集客力が劣る立地では転用できません。

 高い賃料を負担し続けるためにはテナントはそれなりの収益を確保し続ける必要があります。当然ですね。それが人件費カット、原材料費カットによってもたらされた利益では・・・続かないですよね。デベロッパーは本当の意味でテナントと運命共同体でないと今の魅力を維持し続けられない、つまり生き残れない。

 おそらく駅ビルの「ルミネ」はそこまで立ち入って運営しているので駅の外へ出てもやっていけるのでしょうね。

 話は少し飛びますが、

 第3者の立場で申しあげると、駅ビル(または商業デベロッパー)は百貨店業態の導入でイメージアップを図れるときは、賃料を下げてあげてくださいね。高い品物を売っていたり、内装にお金をかけるので賃料負担力のある業態のように見えますが・・・・高コスト体質低利益の絶滅危惧業態ですから。

(それにも関わらず、百貨店経営者の頭の中には高い利益をあげている旗艦店の基準が、すりこまれています。それではいけないと考える経営者はいきなりチェーンストア理論に走ってしまう両極端になってしまうことが「問題」です)

 テナントとの運命共同体・・・からのひとつの事例です。


 この稿は続きます。消費者から見た駅ビルとか何故商業運営のプロ中のプロであるイオンモールが駅近くの業態で成功事例が少ないのか・・・とかまだ論じることが残っていますので。

                                            (2011年11月09日)


 ユナイテッドアローズのエキナカ業態「ザ・ステーションストア・ユナイテッドアローズ」(エチカ表参道)は駅立地で買い上げ率の高いヘアアクセサリーやストアオリジナルの雑貨、ミントやチョコレートまでオリジナル商品を揃えるようです。4割はウェアですが、価格帯を抑えた「グリーンレーベルリラクシング」が中心だということです。・・・それでも客単価4.000〜5,000円とは・・・お高いですね。これぐらいでの設定で無いと家賃が払えないのでしょうね。
■業態・立地別にみた来店客1人あたりの売上金額比較

 百貨店旗艦店は7,000円から1万円

 日本橋三越、新宿伊勢丹、松坂屋名古屋店ともにとても高い水準です。(外商売上も含まれるのでしょうが)大丸心斎橋は規模的にも位置づけでも旗艦店ではないようです。神戸か京都で比較してみましょうか?大阪は阪急でさえ3,000円台ですから数字の計上の仕方自体が違うのだと思います。

 ターミナル立地の百貨店は2,000円〜3,000円

 大丸梅田店とJR三越伊勢丹の来店客1人あたりの数字はかなり低い水準です。開業景気のためか来店客数が多すぎるのだと考えられます。来店客をお買い上げ客に出来ればいうことないのですが、そのためのMDや販促の仕掛けは後手に回っています。

ある意味、顧客でない来店者が多すぎるのはマイナスとも言えます。

 都心型SC キャナルシティは別格?

 キャナルシティは組織的に観光客の動員を図っている所為でしょう。平均的には1,000円台の後半です。

 ルクアの開業時はショップも大変だったようです。接客、カード獲得などの対応が少しおろそかになってしまったかもしれません。なんばパークスも低いですね。公園のような感覚で利用する人が多いのでしょうね。

 郊外SC、アウトレットモール

 だいたい2,000円前後。都心より目的性の高い来店者が多いのでしょう。アウトレットモールは大手のデータがないのですが、軽井沢プリンスアウトレットモールの4,500円が目安になりそうです。

 オフォイスビル立地

 800円から1,000円と言ったところです。この数値からJR大阪駅の北側に建設中のうめきた先行開発地区「グランフロント大阪」の商業施設(42,000u)の売上を予測すると150〜180億円と見ています。1日の来街者数が約5万人(当社推計)としてこの数値をかけあわせると概ねこの範囲におさまるはずです。

 もちろん、面積や,業種業態の組み合わせ,イベント開催によって異なりますので断定は出来ません。

 今のところ例えば「バナナリパブリック」とか「GAP」「ZARA」等のフラグシップ店舗と「オフィスワーカー中心の飲食街」の組みあわせと想定されます。丸ビルの240億円と比べてどうでしょうね。やや厳しいかな?
 この予想は大ハズレでした・・・その理由は 新なにわ考現学2014年の大阪イメージ(近日発表をご覧下さい)

 うめきたには知恵を絞ってもらって何か楽しいサプライズを期待したいところです。
(フードテーマパークもどきの ラーメン博物館とか焼きそば博物館みたいな・・・はだめですよ。すぐ飽きられますから)

 ショップ&レストランの年間売上げは436億円と目標の400億円をクリアしました。オフィスワーカーというより都市への観光客をうまくつかんでいるようです。話題づくりもうまくいっているので,商業施設としてはスタート順調です。1日の来街者数が平均15万人ですから,(当社予測の3倍弱),売上も3倍近くです。

                                                (2011年11月08日)
図ー来店者1人あたりの売上金額比較   ※購入者ベースの客単価ではありません
図42
レジャー産業資料2011年10月号
レジャー産業資料2009年8月号  新しいデータがないものは08年の数字を使用
比較のため「くすはモール」と「なんばパークス」は08年と10年の両方を掲載
それぞれほぼ同じ数値なので 年次の違うデータの比較に有効性があると判断しました。
■入店客が多すぎて見失うものはないのか?〜1人あたりの売上比較

 入店客1人あたりの売上トップは伊勢丹新宿店

 伊勢丹新宿店の数値は群を抜いています。大阪では阪急梅田本店、大丸心斎橋店が3,000円を超えています。ターミナル立地の百貨店では2,000〜3,000円が標準です。

 話題のJR大阪駅の大阪ステーションシティはどうでしょう。
 JR京都伊勢丹では、2,695円/1人であるのに比較すると、大丸梅田店1,255円/1人、JR大阪三越伊勢丹967円/1人はややものたりない数字です。大丸東京店の1,697円/1人の水準はキープしたいところです。

 ルクアの889人/1人はなんばパークスの977円/1人に近いモノですが、ミッドランドスクエアの1,677円/1人と比較してどう判断すればいいのでしょうか・・なんばパークスは環境を楽しむ要素が強く、ターミナル型の高回転率を求める施設では無いように思えます。

 ルクアの客単価は目標の85%だそうです。

 乗降客数の多い大阪駅の立地では、買い物客で無い人の来店が多すぎて誰が「顧客」なのか見失ってしまう可能性もあります。
 
 JR大阪三越伊勢丹プライドにこだわらずに売上目標金額を下方修正したのはある意味、店舗のポリシーを曲げない勇断なのだと思います。

                                                   (2011年11月07日)

図ー入店客1人あたりの売上金額比較

図43


月刊レジャー産業資料2011年10月号の入れ込みランキングより
JR大阪三越は5〜10月の実績
ルクアは11月に新聞等で発表された修正目標に基づく
■JR大阪駅ルクアの買い上げ率は25%

 開業景気が落ち着いても月間300万人の来場者

 JR大阪駅の来場者数は5月が52万人。6〜8月は400万人だったのが、9〜10月は300万人代前半に落ち着いてきたそうです。
 「開業景気は8月で終わった,今後は館の魅力とリピートの獲得できっちりと集客する必要がある」ということだそうです。最終的には250万人ベースで落ち着くのだと思いますが、まあ十分ではないでしょうか。(年間目標を1900万人で設計していたのですから、それ以上の数のお客様には本来の対応がおろそかになるのでしょう)

 買い上げ率が25%というのも通行者が多いという駅ビル立地を考えると妥当なところでしょう。ウィンドショッピングを楽しむ人や雰囲気を楽しむ人が多くいる店ほど長く愛されると思うのですが・・・まあ駅ビルといのはせわしない業態です。(大丸梅田店で買い上げ率30%〜目標は38%です)

 カード会員13万人獲得

 半年間で獲得したポイントカード会員は13万人(目標20万人)。20〜34才の女性を中心に16〜39才で8割を占めるそうです。・・・・若い子は会員制での囲い込みが大変です。情報誌を郵送するようですが、ケータイでこまめにコンタクトを取った方がいいような気がします。

 購買者はテナントのショップのファンが多いので,百貨店カード顧客とはまた忠誠心が異なります。5倍ポイントキャンペーンが想定を下回ったのもそれを現しています。

 駅ビルのショッピングパターンは百貨店とも違う背景はもう少し考えてみたいと思います。

                                              (2011年11月4日)
■駅ナカ事業は一段落は?〜JR東日本4〜9月の連結決算

 エキナカ事業の踊り場

 JRグループの4〜9月の連結決算が発表されています。
 JR東日本の駅スペースの活用事業として話題を呼んでいた「エキュート」を運営するJR東日本リテイリングは震災の影響で品川、東京などの売上が減少。(下図参照)営業収益は前縁同期比11億円減少しています。

 駅ビル事業の方は売上高0.3%増、営業利益4.9%増と健闘しています。特にルミネは営業収益276億円5.1%増、営業利益50億円11.7%増と好調です。

 キオスクを運営するJR東日本リテールネットが厳しくて、営業収益1003億円の1.4%減。営業利益は29億円で13.6%の減です。営業利益率が低くて、減少率も高くなっています。

 駅構内のキヨスクの利益率は高いと思っていましたが、以外に益率が低いのに驚きました。

 駅ナカの施設利用者は男性と20代女性

 下図にもあるように駅の改札内の商業利用者は男性と18〜29才の若い女性が多いようです。

 お父さんのお小遣いがカットされる中、駅構内で購入される商品も需要のある商品・サービスに転換していく必要があります。

 タバコは今後喫煙者は減少するでしょう。漫画もケータイの普及とともに部数を減少させています。・・・今のメインターゲットであるおじさん需要を喚起するべきなのか、わかいお姉ちゃんを中心とした女性需要を取り込むべきなのか・・・・立地、駅の利用者層によって答えはひとつではないでしょう。

 人は何故スポーツ新聞を買うのか?WEBでのニュースの方が早いですし、サッカーなどだとWEBサイトの方が詳しく、濃い情報が入手できます。    より広く勝利を共有したいという事なのでしょうか?
 その背景を突き詰めたところにもヒントがありそうです。

                                                   (2011年11月02日)


図ー駅商業施設買い物での利用状況   (駅ナカ:駅改札内 駅ソト:駅ビル等)
図44
図ー駅改札内の購入商品
図45
(JR東日本2009年調査)首都圏の18〜49才の男女

図ーJR東日本ステーションリテイリング エキナカ事業の4〜9月売上
  品川、東京の減少は震災による出張客減少が影響していると思われる
図46
■衝動的に利用されることが多い業態は?

 あらかじめ予定を立てて利用する店舗は?
 
 百貨店、ファッションビル、ショッピングモールは前日までに計画して利用されることが多いのですが、駅ビルはコンビニエンスストアや駅売店に近くて、計画して利用すると言うより、お店を見たときや、移動中に利用することを決めることが多いという調査結果が公開されています。

 基本的に利便性が中心にあるのですが、調査を行ったJR東日本では、家と会社の中間点である「駅」で気持ち切り替えスイッチが入る「気持ちスイッチ消費」や、仕事が終わったときに「1日を仕事だけで終わらせたくない」時の気軽な「ストレス解消消費」、仕事帰りの自分への「小さなご褒美消費」などが生まれると分析しています。

 買い物を目的とした消費で無く、交通結節点での「切り替え」の気分に基づいた消費であるという事です。

 異空間では無く隙間空間である駅ビル

 百貨店やファッションビルは「家」でも「会社」でもない異空間を提供します。映画館で見る映画のようなモノです。駅ビルでの消費はそれに比べるとスマートフォンで見るユーチューブ映像のようなものです。生活の時間の中の隙間を埋める消費という点では深夜のテレビショッピングに近いポジションです。

 価格帯の違いだけは無いのだろうと直感します・・・少し時間をかけて考えてみます。

                                          (2011年11月01日)
図ー来店の意思決定タイミング  (N=2314)
図47
図ー駅ビル等で購入する商品・サービス   (N=2314)
図48
(JR東日本2009年調査) 首都圏の18〜49才の男女
 
 10月
■少し落ち着いてきた「あべの」

 あべのキューズモールは小休止

 阿倍野キューズモール内のショップではアルバイトの首切がどんどん進んでいるようです。開業景気が音着いて、足元商圏中心の平常運転モードにもどってきたのでしょう。核店舗がイトーヨカドーですし、東急ハンズの規模もごく小さいモノです。またSHIBUYA 109も規模はそれほど大きくなく、大阪市内にすである店舗が中心なので、遠方からの来街者が減少し、日常使いのショッピングセンターの姿に戻ったのだと思います。

  高校生が中心の街なのでそれほど消費余力はあらいません。東京で高校生相手のモンキービジネスがなりたつのは、次から次へと群馬や茨城など地方の高校生がお小遣いを握りしめて来街するからです。高校生1人あたりの可処分所得は知れているので、阿倍野のように固定的な来街者のみを相手にした店では厳しいでしょうね。(ヤングマーケットはね)


 あべのハルカス2014年春開業

 近畿日本鉄道は2014年開業をめどに日本一の超高層ビルを建設中です。「大阪マリオットホテル」や美術館が入居します。オフィスは6万2,000u。奥村組や関西電力の入居が予定されており、50%程度は埋まったという事です。(シャープ本社を誘致する話もありましたが・・・・結果的にいくつかのシャープ系の営業会社が集約されています)
 近鉄百貨店は10万uと日本一の売場面積になります。現在工事で縮小した4万8000uで営業中ですが、13年中に低層階を一部先行開業させる予定です。
 ハルカスの来館者数は1日13万人を想定しています。

                                         (2011年10月31日)

 あべのキューズモール半年で240億円との発表

 年間目標400億円の6割に当たる240億円を半年間で売り上げたと発表されました。10〜80代の幅広い客が訪れていて、カード会員の87%fが大阪市内、特に地元阿倍野区を始めとする市内南部の足元商圏のお客様が多いと言うことです。

 既報のようにヤング向けのショップは厳しいようですが、日常性の高い都心型のショッピングセンターとして、競合する大型スーパーの少ない大阪市内南部のファミリー、おばちゃんのリピーターがとれているようです。

 あべのは住宅地の中にあるターミナルで、再開発の住宅地に流入してきたファミリーも多いので、その需要に応えたということでしょうね。

                                          (2011年11月02日)
■JR大阪三越伊勢丹目標4割減の衝撃〜勝者のいない百貨店戦争

 各社痛み分けなのか? 4〜9月の実績

 全体のパイが大きくならないと、新しい店が出来た分だけ売上は縮小します。百貨店業態も地盤沈下してるので、4〜9月期の売上金額で阪急、阪神の数%減(阪急4.7%減の583億円、阪神4.6%減の439億円)は当初想定の10%減に比べると検討していると言っていいでしょう。 

 JR大阪三越伊勢丹の売上げは152億円。年間目標を550億円から350億円に引き下げました。もともと堅実な目標でスタートしていました。(東京のコンサルが700億円とお見立てされた水準は、おそらく三越伊勢丹のスタッフも狙っていた数字だと思います)

 これは早急に抜本的な対策をたてるべき数字です。事前にきちんとしたマーケティング分析をしていればこんなことにはならなかったはずです。小倉の失敗を繰り返すのでしょうか。

 「本店の風」はここまで吹きません。長期的には伊勢丹ファンを固定化するカード顧客の開拓と、三越ファンを掘り起こす阪神間及びJR沿線の「地方」への外商営業の徹底しか無いでしょう。

 短期的には三越伊勢丹の良さを知ってもらうためには「入店客」「お買い上げ客」を増やす事です。地下の食料品は「伊勢丹スタイル」ではなく福岡三越で実現しているターミナル百貨店の地下食料品売場に変える事です。食料品の改装は即効性があるので、やるなら早く着手したほいうがいいです。

 ファッションについてはゆったりした売場を活かした「フロアでのファッションショー」「トークショー」を頻繁に開催し東京のモデルを呼んでくるとか在阪の百貨店との違いを明確にしないと埋没します。阪急梅田本店8万4,000uが完成するまでにカード顧客を獲得できなければ撤退を考えた方がいいほど崖っぷちなので、ハードをいじれないのならイベントに投資するべきです。(大丸梅田はガールズ系のもでるのトークショーなどに熱心ですがもう1ランク上を・・・)

 関西の顧客は意外に「東京」に抵抗はありません。

 大丸梅田店 発表されない数字

 各社、4〜9月の売上金額を発表していますが、大丸梅田店だけが前年比しか新聞に載っていません。対前年比55.7%増・・・・素晴らしい数字です。ただし年間目標を670億円から640億円に下方修正しています。これはいったいどうしたことでしょう。大丸梅田店の昨年の売上は373億円です(改装工事などの影響)それ以前の売上はだいたい600億円前後でした。いったん下がったから大きく伸びたように見えるのです。

 入店客数は前年比2.1倍ですが買い上げ率は30%弱だそうです。大丸松坂屋の平均は55.7%なので半分くらい?売場面積が1.6倍になり、賃料負担率が1.6倍になります。JRの資本が入っているわけでは無いので定価で支払っているとすると、テナント導入で人件費を下げても、利益確保は厳しいとみるべきでしょう。

 来店客の買い回り率が悪いと、催事客にレストランチケットを配ったりしているようですが、買い回り率が低いのは来店客層が多様化しているので「買いたい店が」ないからでしょう。

 大丸梅田店ですぐに出来ることは、レストラン街の再構築です。東急ハンズやポケモンセンターに来たお客さんが食事や喫茶が出来る店があまりにも少ない。隣のルクアのレストラン街があんなに賑わっているのに・・・
(2005年に「レストラン街が充実している百貨店」のイメージ評価が15.0%あったのに2014年には5.8%に減少しています)

 14階が大丸のレストラン街で15〜16階が大家さんの大阪ターミナルビルのレストラン街です。きちんと調整して。どちらかのフロアをカジュアルダイニング、(ルクアのレストラン街かヨドバシ梅田のレストラン街のレベル)に改装する必要があります。

 食料品売場も弁当嫌惣菜の中食をもっと前面に出すべきでしょう。軽食の集合体でもいいでしょう。サウスゲートビルの滞留時間が増えれば、売上確保の手だてもあります。

                                              (2011年10月28日)
図ー大阪の百貨店の4〜9月の売上と対前年比 年間売上げ目標
図49
(日経新聞、各社IR資料から作成)
■御堂筋の食品スーパー〜ダイエー フーディアム堂島とコーヨー淀屋橋

 食品スーパー、都心部に続々出店

 9月1日、ダイエーは近畿地区の直営店舗としては3年半ぶりの新規出店となる「Foodium堂島」(655u、24時間営業年中無休)を御堂筋沿いの北区堂島1丁目の梅田新道ビル1階にオープンしました。

 この地区は梅田周辺のオフィス街に詰める会社員の通勤路に当たる上、住民の8割が1〜2人世帯。周辺にはコンビニエンスストアは多いのですが食品スーパーは空白地帯です。デリカ売場を中心に”中食”カテゴリーの圧倒的な品揃えと、惣菜の70%は店内加工といったできたて感が売りです。

 「通勤前の朝食」「ランチタイム」「帰宅後の夕食」といったビジネスパーソン対応と単身者向けの小容量の品揃えでの周辺居住者対応、オフィスでの「来客需要」,繁華街の「業務需要」〔北新地にの入り口ですからね)に対応するという事です。イートインコーナーがあり、通勤者が朝ここで食事が出来るようになっています。(私が見た夕刻には紙袋に家財道具をつめこんだ自由移動者のおじさんがカウンターで食事中でしたが・・・)

 昨年11月には御堂筋沿いの淀屋橋にスタイルKOYO淀屋橋店が開業しています。KOYOにはオープンキッチンがあり見るからに出来たて感があるのですが、フーディアムは陳列だけで、でかいコンビニといった印象です。しかも同じ商品を沢山並べているので間延びした印象を受けます。

 都心部の食品スーパーの空白地帯に出店が進んでいます。が今年4月には土佐堀1丁目にライフ土佐堀店(2,402u)がオープンしています。
 こちらは規模も大きく、周辺のマンション居住者をターゲットにした店ですが、オープンキッチンと焼きたてパンなど惣菜類が充実しています。おいしそうなのです。

 KOYOについていえば高質な食品スーパーマーケットとして定評があり、明らかにコンビニとは違った高質感があります。フーディアム堂島をこの2店舗と比較するとマーケットの読み間違いを感じます。

 フーディアム堂島の立地は

 地図を見ていただいてわかるように、梅新交差点の3差路の根元に立地しています。例えば、ランチタイムの需要として東側、東北側さらに南にも大きなバリアがあり来店を阻害しています。

 通勤者の人通りは多いのですが、朝はともあれ帰宅時にここで購入して梅田ターミナルまで歩くことは考えられません。梅田まで行けば阪神百貨店があります。何故ここで買う必要があるのでしょうか?淀屋橋のKOYOは店で買い物した後に地下鉄に乗って帰宅しますので夕方の買い物客も多いのです。

 フーディアム堂島の周辺は住宅地ではありません。また、価格訴求の店では無いので住んでいる人も買い物は梅田へ行きます。店内ベーカリーやオープンキッチンも無いので「出来たて感」も乏しいのです。惹きつける要因がありません。(山崎のランチパック25品目の品揃え?等は差別化ポイントにはなりません)

 周辺の事業所に多いのは北新地の料飲店への就業者です。普通の事業所とは行動時間帯やパターンが異なります。

 立地から考えられる業務用の需要への対応も徹底していません。チーズ、輸入食品、おつまみの品揃えが平凡で,あまり店(バーとか)で出したく無い商品が多いように思います。

 ダイエーとしては久しぶりの出店で力がこもっていると想像していたのですが、拍子抜けする店舗となっています。立地の読みを間違えたのとターゲット設定が拡散しているのが間違いのポイントです。何を考えている店かが見えてこないのです。

 どこかで仕切り直す必要がありそうです。

                                                (2011年10月27日)

図50

■百貨店顧客のロイヤルティ形成要因について〜富士通総研の研究レポートを読む

 百貨店顧客のロイヤルティ

 富士通総研経済研究所が10月に発表した研究レポート「ロイヤルティとコミットメント〜百貨店顧客の評価に基づく実証分析から」で百貨店のロイヤルティ=「特定の商品、ブランド、店舗などを反復的に繰り返し利用する程度」を高める要因を調査データに基づいて因子分析で解析しています。

 百貨店業界ではこのようなでーたにもとづいた顧客データの数理分析を活かせない体質があります。かつて、全国の地方百貨店で顧客分析をお手伝いしていましたが、日常の業務の中で根付かなかったのは業界に共通する体質があるのでしょうね。

 基本的に「数字」というのは「対前年比の売上」しか頭の中に入らない・・・といっては言い過ぎかも知れません・・・・個人の資質と言うより組織文化の問題だと思います。

 ロイヤルティ説明因子

 分析は百貨店の利用について、「婦人服」「食品」「化粧品」の3つの商品ジャンルについて分析しています。

 婦人服のトップは「ブランド&のれん」ロイヤリティ全体の3割弱がこの要因に依っています。2番目の「サービス」は接客など商品販売に付帯するサービスのこと、3番目は「商品自体の良さ」。4番目の「非価格コスト」は時間やわずらわしさといいた代償(コスト)がひくいということだろう。5番目の「非消極的要因」は他業態で購入することへの抵抗(めんどう)等で百貨店自体の積極的な魅力では無いという解釈がされています。

 食品についてはトップが「ブランド&のれん」2番目に「利便性と雰囲気」と続きます。

 化粧品は「利便性と雰囲気」がトップになっています。

 年代別に分析すれば次世代顧客形成の参考になりますし、競合店との比較で自社のポジション設定の議論が出来ます。自社商圏内で他業態のユーザーを含めて比較すれば商圏のユーザーボリューム,潜在ユーザーのボリュームが推計できます。

 百貨店業界では「数字」といえば「対前年比売上」と「月坪売上」しかないと思い込んでいる人が多いのですが、先の戦略を考えるための道具ともなるのですよ。

 (この分析レポートはWEB上で公開されていますので検索してください)

                                               (2011年10月26日)
図ー婦人服の8つのロイヤルティ形成要因とその説明力  ※全体の何%をその要因で説明できるかの指標
図51

図ー食品の7つのロイヤルティ形成要因とその説明力
図52
図ー化粧品の7つのロイヤルティ形成要因とその説明力
図53

富士通総研経済研究所imiネット2,000人のアンケート調査データの因子分析による
■キャナルシティ博多イーストビル出足好調〜残っている数少ない立地創造型SC

 立地創造型SC

 かつて立地創造型ショッピングセンターという言葉が流行りました。駅前ターミナルや、繁華街では無い商業立地で無い場所に集客の仕掛けをつくって新しい街をつくるようなショッピングセンターのことで,バブルの時のウォーターフロント開発などで多用されたコンセプトです。(今でもイオンなどの大型ショッピングモールやアウトレットモールなどもそのような立地を選びますが,少しニュアンスが違うのは、仕掛けで人を集めるという点です)

 かつての「つかしん」「長浜楽市」「マイカル本牧」などを想定してもらえばわかりやすいかも知れません。

 キャナルシティ博多は、1996年4月20日に開業した再開発プロジェクトで、約3万4,700平米の敷地に、ショッピングモール、映画館、劇場、アミューズメント施設、2つのホテル、ショールーム、オフィスなど、さまざまな業種業態が軒を連ねる複合施設です。コンセプトは「都市の劇場」。

 曲線的で色彩豊かな建物が並ぶ街の中央には、約180mの運河(キャナル)が流れ、ダイナミックな噴水のショーが時間の流れを知らせます。
水辺のステージでは、パフォーマーによるイベントや音楽ライブが日々開催され、常に街の中には賑わいが溢れ、誰もが楽しみ、集い、憩うことのできるエンターテイメントシティなのです。
(同社HPより)

 博多シティの開業で大きな影響を受けたキャナルシティ

 この3月の博多シティの開業で,キャナルシティ博多も大きな影響を受けました。売上高は3月はマイナス21%、34〜8月も10%前後の減少が続いていました。天神地区でも福岡パルコの6〜8月の売上は15%減、百貨店3店が12%減、ソラリアプラザも2割減と大きな影響を受けています。

 9月30日キャナルシティイーストビル増床

 イーストビルは延べ床1万8000uの3階建てで、「ユニクロ」「ZARA」「H&M」「コレクトポイント」という低価格カジュアルファッション店舗の旗艦店級の大型店を導入しています。イーストビルだけで年間集客200万人。60億円の売上げ目標を設定しています。

 開業1週間の集客数は前期比25%、売上も前年比2ケタ増、平日の集客も多く、平日だけなら2割増と好調です。〜その間700メートル離れた博多シティの来店客数が1割減少したといいます。

 全体の施設の開業後,15年経っていながら、集客を続けているのは素晴らしいと思います。中国、韓国の団体客が目立ちますが、観光客などの集客の工夫と環境の維持に手間とお金をかけていることが成功の要因でしょう。

 ファストファッションと既存店舗の連携に課題を残しているようですが、既存のサウスビルも5億円投資して改装を進めていくようです。

                                        (2011年10月25日)
■訪日外客数が回復しない理由〜円高、,原発だけでない各国の事情

 訪日外客数は前年比24.9%減 要因は放射能汚染への懸念と円高(JINTO)

 東日本大震災の影響で大きく落ち込んでいる訪日外客数は徐々に回復傾向にあるものの、昨年に比べて大きく減少しています。東京電力の原子力発電所の事故の影響で放射能汚染に対する懸念が以前と強く、子供連れの家族旅行や富裕層の回復に影響しているといわれています。日本政府観光局では被災地から離れた北海道、関西、九州、沖縄への訪日旅行が回復傾向にあると分析されています。

 米ドル、ユーロ、香港ドル、豪ドル、カナダドルに対する円高が強まったことも影響があるようです。原油高により燃油サーチャージが引き上げられたことも遠距離路線=欧米からの訪日を阻害する要因です。(タイとインドからの外客は増えているようです)

 国別の分析も報告されており、それぞれの事情も頭に入れておく必要があります。

 韓国の事情

 東京電力の原発事故による食への不安と共に、世界経済の先行き不安によるウォンの急落が背景にあります。また物価高騰による家計圧迫も消費マインドを冷え込ませています。1月以来9ヶ月連続で4%台の高い物価上昇が続いています。

 韓国SBSテレビでで放映された「女性の香り」が沖縄を舞台にしており、沖縄旅行が人気を集めているようです。

 中国の事情

 中国経済は堅調で外国旅行意欲も旺盛なのですが、日本全域への安全性への注意喚起が続いています。クルーズ船も8月から再開し日本政府や自治体のセールスも活発化しています。
 7月に沖縄への数次ビザ発給が開始されました。沖縄のマンションの分譲が好調なのは原発が無い事と中国人の需要が生まれたことが原因かも知れません。

 台湾の事情

 台湾は震災後にいち早く多額の献金を集めるなど親日性の高い国です。日本への渡航に関する韓国も6月までに解除されています。とはいあえ安全。安心への不安は完全に払拭されていないので首都圏への訪日旅行は回復していません。
 円高・台湾ドル安に対してユーロ安。台湾ドル高の状況にあり、欧州への旅行者が増加しています。

 香港の事情

 日本への渡航に関する注意勧告は(福島、宮城、岩手、茨城)を除いて6月に解除されました。

 香港ドルに対する円高が進み滞在費の上昇が訪日意欲にマイナスの影響を与えています。

 タイの事情

 今回の洪水で日本とのつながりの深さが改めて認識されたタイですが、経済は成長基調にあったので、訪日外客は伸びていました。富裕層の安全安心への不安はまだ払拭されていないとのことですからビジネス客が増えているのかも知れません。円よりはドルやユーロの方が安いので訪日旅行には割高感もあります。

 欧米等の事情

 豪州は国内経済順調でしたが8月以降急激に円高が進んでいます。原発30km圏へ退避勧告は続いていますし、80km圏と本州北部沿岸地域を高度に注意を払う地域と評価しています。

 アメリカは国内経済への不安もありますが原発80km圏からの退避勧告は9月も継続しています。

 カナダは緩やかに経済成長を続けていますが、先行き不安と8月以来の急激な円安、燃油サーチャージが日本行きだけが突出しているため敬遠されているようです。(日本行き690カナダドル、中国330ドル、香港262ドル、韓国240ドル・・・ってこの差は何?円高で有利に燃料調達できないのでしょうか?)

                                                (2011年10月24日)
図ー訪日外客数の推移
図54
(日本政府観光局 JINTO)
■欧州危機の中、2015年ミラノ万博に向けての開発計画

 2015年ミラノ万博

 欧州の経済危機の中でイタリアの国債の格付けも下げられています。先行き不安が高まる中で、旅行などの娯楽消費は減少し、健康・美容への支出が増えているといいます。ファッションへの消費も相変わらず高いといいます。

 ミラノ市はイタリア第2の都市です。2015年に万博の開催が予定されており、それに向けていくつかの再開発計画が進んでいます。都市の課題は環境問題で工業都市であったため、環境汚染が激しく、緑も少なかったといいます。(人口1人あたりの緑地は12uなのを19uにすることが目標になっています。ちなみに大阪市では現状4.1u/1人、目標が7u/1人です・・・・)
 
 万博に向けて現在8つの開発プロジェクトが進行しています。

 万博に向けた再開発計画

 「シティライフ再開発事業」(旧国際会議場跡地)は磯崎新氏を交えた共同事業体グループの提案で、2006年に着工しています。計画地面積25.5万平米、昼間人口15,000人、居住人口5,000人、雇用人口5,000人のプロジェクトです。(ちなみに梅田北ヤード「うめきた」の先行開発地域「グランフロント大阪」で7万u、2期計画で17万uです)

 住居、オフィス、中小商業施設、各サービス機能で構成されています。コンペの条件として、「非衛生的な産業機能と大規模なショッピングセンターは除外」「計画地面積の50%以上の公共緑地スペースを確保すること(13万u」「3,000台駐車スペースを確保すること」が義務づけられたそうです。

 ご参考までに梅北の「グランフロント大阪」の商業ゾーンはこんなイメージで検討中です。(大阪日日新聞10月67日より)

 商業施設は大阪駅に最も近いA、Bブロックの低層部と大阪駅北口広場地下。店舗面積は合わせて約4万2千平方メートルに及ぶ。5月にJR大阪駅ビル内にオープンしたファッションビル「ルクア」(2万平方メートル)の2倍を超える広さで、約300店が入る。

 「これだけの面積があるのだからターゲット層は絞らず、いろんな方に来ていただけるようにしたい。百貨店にはない面白さを提供できる都市型ショッピングセンターを考えている」
 キーワードは「フラッグシップ(旗艦店)」。これまで梅田エリアで十分な売り場面積を確保することが難しかったファッション、服飾雑貨店の大阪本店となるような形態にこだわることで「百貨店では見せきれなかったテナントの世界観や商品のストーリーを知ってもらえる」と説明する。
 A、Bブロックともにレストランフロアを設けるなど、「飲食」も充実させる。幅広い客層を引き付ける店選びをし、大阪初出店を含む約70店をそろえる。
 「期待していただきたいのは夜のシーン」と谷口副部長。仕事帰りのOLやサラリーマンが気軽に立ち寄れるよう、B級グルメなど価格帯を抑えた親しみやすい料理を提供。「いろんな人が集い、食事をしながら、コミュニケーションを楽しむオープンな場」も検討しているという。

 現在、テナントの募集や営業形態についての話し合いが進んでおり、開業1年前までには固めたい考え。施設の名称は「ぼちぼち考えていこうという段階」だ。
 グランフロント大阪 「都心に残された最後の一等地」として開発が進む大阪駅北地区「うめきた」(約24ヘクタール)の先行開発区域で、約7ヘクタールに4棟の高層ビルが建つ。南から3ブロック構成で、Aブロックはオフィスや商業施設、Bブロックはホテルや商業施設など、Cブロックは分譲住宅。知的価値を生み出す複合施設「ナレッジキャピタル」(Bブロック)もでき、「うめきた」の中核施設として注目を集める

 
 「うめきた」でも2期計画では緑地をうまく使った施設配置を考えるのでしょうね。

 「アルファロメオ工場跡地再開発」(ポルタ・ヌォーバ計画)※「新しい門という意味でトリノに同名の駅があり靱本町に同名のピザ屋がありますが、関係はありません。

 オフィス、住宅、美術館、コンベンションセンター、商業施設で構成。「アミーコ デッラ アンビエンテ」(エコフレンドリーという意味)を意識し、都市中心部とは思えない多くの緑化エリアを持ちます。

 「縦型にそびえる公園をイメージした住宅」が注目されています。(どんなのでしょうね)商業施設は大型モールタイプでは無く生活密着型の店舗が入る予定です。

 緑地のと入り入れがポイントです。うめきたの先行開発地域も現在はビル建設の途中で見えませんが、駅前広場から街までの緑化がうまく成功すれば,新しい回遊を生むでしょう。

                                            (2011年10月21日)

 大阪市会副議長の海外出張報告及び商業施設新聞9月20日号のイタリア不動産河見一成氏の記事を参考にしています。開発計画については建築雑誌に紹介されているかも知れませんので探してみて下さい。

 うめきたの商業施設は休日の集客が課題だと考えています。ファミリーやカップルなど,今までの梅田に無いゆったりとした環境も魅力ですが・・・例えば池袋のサンシャインシティアルパは8月に改装オープンしたビルの上層階の水族館との連携を深めて売上を20%増加させています。サンシャイン水族館は改装オープンで年間来館者を70万人から110万人増やすことを目的としていますが、8月9月の2ヶ月間ですでに60万人を集めて快調に推移しています。(サイバーアートセンターのコンテンツもまだまだ不明です)
 うめきたは開業後1日平均15万人の来場者を集めています。大きな仕掛けが無くても人を集めるというのは・・・・大成功ですね。

 あと、駐車場を確保して団体客の誘致も必要です。旗艦店といってもH&Mなどのファストファッションなのか、ラグジュアリーブランドなのかによって異なりますが、街のコンセプトからラグジュアリーブランドとなるでしょう。アジアの富裕層を集める仕掛けとプロモーションが必要です。海外へのセールスを早期に立ち上げる必要があります。

                                               (10月24日補足)
 
 ランニング等のコースやランニングステーション、自転車専門店もぜひ、駅利用者だけで無く、周辺居住者にも目を向けるべきです・・・結構マンションも増えてきますしね。
                                                (2011年10月28日)
■「世界の都市総合力ランキング2011」に見る大阪のポジション

 都市間競争でクリエイティブな人や企業を惹きつける都市の磁力が「都市の総合力」

 最近、あまり顔を見ない竹中平蔵氏を所長にした森記念財団都市戦略研究所が2009年から毎年調査している「都市総合力ランキング2011」(年末発行予定)のニュースリリースが発信されました。

 世界の代表的な都市を6つの分野で評価し、都市の魅力を評価した貴重な資料です。

以下の6つの分野について69の指標で比較したものです。(有識者の評価)
 
経済 市場の魅力、経済環境、ビジネス環境、法規制・リスク
研究・開発 研究環境、受け入れ体制・支援制度、研究開発成果
文化・交流 交流・文化発信力、宿泊環境、集客、買い物と食事、交流実績
居住 就業環境、住居コスト、安全・安心、都市生活機能
環境 エコロジー、汚染状況、自然環境
交通・アクセス 国債交通インフラ、国内交通インフラ

 大阪の強み弱み

 ニュースリリースでは大きな分野でしかわからないのですが、強みとしては「研究・開発」が12位にランクされ評価が高いのと、「居住」が3位にランキングされるなど極めて高い評価を得ていることです。良い環境の後背地をもちコンパクトにまとまっていることが高評価につながったのでしょうか?

 弱みとしては「文化・交流」(24位)と「交通アクセス」(19位)「環境」(23位)があげられます。これから戦略的に強化していかないといけない課題が見えてきます。

 3つの空港と新幹線といった広域のアクセスはまずまずなのですが、市内のターミナルの乗り継ぎの不便さ、空港アクセスから市内交通の乗り継ぎの悪さなどかねてから指摘されている課題が反映されています。

                                              (2011年10月20日)

図−1総合ランキング  35の都市の中で大阪は15位です
図55
図−2 経済指標  大阪は21位ですが ベルリン、ロサンゼルス、ソウル、シカゴと並んでいます
図56

図−3 研究開発指標 大阪は11位となかなかいい線を行っています。「うめきた」の開発に期待です。

図30
図−4 文化・交流 大阪は24位と低いのですが、資源は沢山あります
図31
図−5 居住  大阪は3位です
図32
図ー6 環境 大阪は23位
図34
図−7 交通・アクセス 大阪は19位
図35
(GPCI2011 (財)森記念財団 のプレスリリース掲載データより作成)
■百貨店が街のシンボルであった時代〜銀座三越と帝都復興

 帝都復興と新しい銀座の誕生

 関東大震災から6年経った1930年「帝都復興祭」が開催され市内の人出は200万人を記録したといいます。東京の43%が焼け野原になりましたが、1100万坪の焼け野原の内900万坪で区画整理が行われました。

 銀座通りは震災2ヶ月後にはバラック建築で開店し、1929年には銀座通り1丁目から8丁目までで250軒の店舗が営業していたといいます。中でも人を集めていたのは松屋と松坂屋の百貨店で2つの店を会わせて1日15万人の来店客数があったといいます。

 夜になると銀座1丁目から4丁目の来た銀座の東側には夜店が200軒以上建ち並んで身動き出来ない大雑踏であったといいます。・・・昔の繁華街の方が夜の人通りが多かったようです。住まいと街が近接していた所為でしょうね。

 銀座は劇場の街でもありました。東京劇場、新橋演舞場、歌舞伎座、帝劇、映画館も多く映画演劇の総収容人員は5万人以上になります。同じような劇場の街、浅草は松竹が強かったのに対し銀座は東宝系の劇場が強かったようです。
 カフェーとバーは関東大震災以後急増します。夜10時半に劇場がはねた跡、観劇していた中年紳士が芸妓と一緒に大カフェに繰り出すという風景が見られたそうです。

 1930年三越銀座店開店

 三越銀座店が開店したのは1929年4月10日。営業時間は当初午前9:00から午後9:00でしたが、大恐慌の影響で裕福なファミリー層が減少し、歓楽街となってきた銀座に来る若い男性客が増えたので閉店が11:00まで延長されました。(メンズ館というわけではないのですが〜営業時間を延長して少しでも売上を稼ぎたいというの昔から変わらない発想です)

 とじゃいえ三越の客層は女性が中心で、当時は百貨店が新しい流行の発信地でした。百貨店が発信したファッションが当時の女性のファッションを和装から洋装へと変化させていきました。

 ターゲットの年代層は幅広く人妻から女学校まで、女学校ごとの浴衣を提案して「跡見女学校好み」とか学校毎のブランディングを行っていたといいます。(きめ細かいヤング対応ですね)

 近くの劇場で舞台女優さんが身につける以上は三越が提供していました。(メディアとのタイアッププロモーション)パリからファッションデザイナーを初めて招聘したのも三越です。

 この時代に避暑地(葉山、湘南等)へ食料品の宅配も行っていました。汽車便や自動車便で都会暮らしで必要なレベルの食料品を避暑地まで宅配していたそうです。

 基本的に顧客サービスの内容は昔と変わらない・・・・本来、三越には先進的なサービスを提供する遺伝子があるはずですね。

                                        (2011年10月19日)

※AD STUDIES 「銀座の復興と三越」和田博文氏の記事と、そこで紹介されている 小野田素夢氏「銀座通」(1930年)の記述を参考にさせていただきました
■インドネシア2億人の市場をターゲットにした「JKT48」〜ASEANでの日本イメージ

 東南アジアにとって重要度の高い国は?

 シンガポール、マレーシアは華僑の多い国ということもあって中国が重要と考える国が多いようです。フィリピン、ベトナムでは米国の影響が強くあらわれています。
 インドネシアでは日本の重要性が高いのですが、その反面、日本のイメージはあまり浸透していません。この調査は外務省が5年おきに行っている調査なのですが、、この時点での「韓国」の重要性は」2%とあまり高くありません。韓国の文化戦略(国家ブランド委員会による対外イメージ向上戦略)は2009年に始まっています。

 人口2億人という大きな人口ボリュームを持つインドネシアは成長市場として」注目されています。日本のクールジャパン戦略はシンガポールを拠点に進められていますが、欧米化の進んだシンガポールと比べてイスラム国として独自の文化習慣を持つインドネシアでの「JKT48」(AKB48のインドネシア版)は難しい環境にあえて挑戦するという意味で興味深い取り組みです。

 コンテンツへの共感と国への信頼感は必ずしもリンクはしないも

 シンガポールやマレーシアのショッピングセンターでは韓国ブランドの化粧品や衣料品が席巻し、「韓流」ドラマや映画の人気も高いといわれています。少女時代や東方神起の事務所は数年前からタイ、マレーシア、カナダでオーデションヲ行っています。創業者イ・スマン氏は「私たちは3段階の韓流を創りだした。第一段階は韓流商品のそのままの輸出、第2段階は韓国人と外国人の合作商品の輸出。第3段階は現地の事務所と合弁会社を作ってそこから付加価値を生み出して両国が共有すること」といいます。

 JKT48の試みはいきなりその第3段階に突入しようというモノでしょうか?

 アメリカ占領軍の政策はアメリカ文化を大衆に浸透させることで占領の統治をより進めやすくすることであったといいます。韓国や中国が日本のコンテンツを制限してきたことも「大衆文化」の浸透による影響力の強まりを嫌ったからだといいます。

 ただ、外務省の調査結果を見ると、コンテンツの浸透が必ずしも「信頼感」や「あこがれ」につながるモノとは限らないことを示しています。

 文化への関心が高く、アニメやファッションなどのイメージの高いタイで日本が「かっっこいい(COOL)」だという評価は調査国の中で最低です。日本文化へのイメージが低いインドネシアで「重要なパートナー」として日本のポジションが高いのです。

 相互理解のためにコンテンツの役割は重要であることは間違いないですが、コンテンツは万能ではないし、AKB風のB級グルメの「仕掛け」に走りすぎると効果は期待できないのです。

                                                 (2011年10月17日)

図ーASEANに取って重要なパートナーはどこ
図36

図ー日本のイメージは
図57

外務省 ASEAN主要6カ国における対日世論調査 2008年2月 ※5年おきの調査

韓国が国家ブランド委員会を設立し官民挙げてのブランド戦略を展開したのは2009年以降
次回調査ではこの調査ではあまり存在感が無かった韓国がそれなりの重要なポジションを占める可能性もあります。
■大阪百貨店戦争の神戸への影響など〜大きな声で語られる通念に惑わされてはいけない

 買い物先は通勤通学先と比例する

 都市への買い物の流出について、兵庫県の都市を次の3つのパターンに分類することが出来ます。ひとつは自市内で完結するパターン。周辺市町村からの流入もあります。神戸市と姫路市がそれにあたります。

 ふたつめは県内の都心で神戸市に流出するパターン。明石市、加古川市がそれに相当します。加古川市はヤマトヤシキの店もありますから市内のウェートも高いのです分類は難しいのですが、明石市ははっきりとこのパターンを示します。

 3つめは阪神間の都市のように近くの大都市、大阪と神戸が拮抗しているパターンです。通勤通学先として大阪市が多いので大阪の影響を強く受けています。

 大坂百貨店戦争と神戸の百貨店

 5月以降の小売業の動向を分析する限り、梅田での大阪ステーションシティの影響は極めて地域限定的なものだと結論づけていいでしょう。あたかもオセロゲームのように梅田商圏が拡がって、梅田一極集中が進むような言説が少なからずありましたが、梅田のエリア内の力関係の変化と、もともと基盤が広くて薄い心斎橋への梅田商圏からの流れが止まったことくらいでしょう。

 長期的には囲碁のように少しずつ力関係の変化が影響してくるでしょうが、今駄目になっている店は、もとから駄目になる理由がありそれが顕在化したにすぎません。

  神戸の百貨店の売上げが落ちているとしたらその変化ははそれ以前から始まっているのです。

 人を動かす要素は「遊び」

 下の図で、地域内で完結している姫路市民も神戸や大阪に出かける機会はあります。それは「買い物」でなく人とあったりコンサート、観劇、スポーツ観戦などの「遊び」の目的の時です。JR大阪スーテションシティに沢山の人が訪れていても意外に「購買率」が低いのは「買い物」に来ているのでは無く「遊び」に来ているからなのです。

 博多駅との違い

 他の地域では突出した地域の一極集中が当たり前に進んでいるので、京都や神戸の消費が大阪に集中すると錯覚した人が多かったようです。歴史的な背景をもつライバル意識もありますが、簡単に言えば大阪に出向かなくても京都や神戸で大概のモノが充足するからです。梅田で新しい独自の売場が出来打ていれば別ですが、単に同質のモノが増えただけなので出かける動機付けにならないのです。

 九州の中で福岡が突出しているのは「遊ぶ」機能が充実しているのと、小売店の品揃えが「福岡市」と他都市で大きなギャップがあるからです。私が過去に見た限りでは「熊本市」と「北九州市」以外の都市は「福岡市」と対抗できるようなレベルにはありません。

 ごくシンプルなメカニズムなのですが、一極集中が当たり前の東京の思考パターンに絡め取られると見えにくくなるようです。

                                      (2011年10月17日)

 分野は違うのですが「通念」に絡め取られている事例として「超円高」による企業の階が流出の「危機?}があります。確かにごく一部の業種の事例では「大変」なことなのですがあたかも日本全体の危機のように語られています。 

 大阪市信用金庫が府下の中小企業1306社を対象に行ったアンケートでは「大きな悪影響」は僅か3.8%で、「ある程度悪影響」が20.4%、「特に影響なし」70.8%、逆に「むしろ好影響」5.0%と「大きな悪影響」よりも多くなっています。新聞報道のニュアンスと大きく違いますね。
 自社の海外移転を検討する企業は僅か4.6%です。

 「通念」はメディアの中で増幅します。何となく「世の中のトレンド」になりやすい「わかりやすさ」がありますので何も考えないと落とし穴に落ちます。

図ー兵庫県内の主な都市の商品購入場所(「ファッション商品=被服及び履き物」購入先と通勤通学先)
図58
通勤地=2005年国勢調査 「被服及び履き物の購入地」=2009年全国消費実態調査

図ー兵庫県内の百貨店売上高の推移
図59
各社IR資料から  表示年の決算なので売上は主に前年度のもの
大丸、そごうは2月決算 阪急は5月決算
■中国人観光客についてのニュースが少ない今年の大型連休

 国慶節(10月1〜7日の大型連休)中国人は海外で1630億円を消費する

 今年の中国の連休では220万人が海外旅行に出かけ、1人あたり7.4万円、総額1630億円のお金を海外で消費すると推計されています。(中国観光研究院)

 今年人気なのは韓国で7万人と前年比2割アップだそうです。またオーストラリアも中国人観光客の誘致に力を入れていて、今年は2割増といわれています。

 今年の日本への観光客は前年の6割にとどまります。東日本のラオックスの売上は昨年の半分にとどまっています。一時に客足は戻っているとは言え、団体客は少なく個人客が多いようです。しかも、子供の姿が見えない。・・・・実際に関東各地で放射線の計測値が高いことも有り、敏感に反応しているようです。

 銀座の百貨店の売上げは計画を上回っているようですから、東京では個人客、富裕層に的を絞った方がいいのかもしれません。やりようはあるはずです。

 西日本、沖縄は好調

 中国系のクレジットカードの売上傾向では9月の時点で、」西日本、関西や九州では順調に回復し過去最高額を示しています。日本全体の中で3割だったシェアが5割に達しているといいます。大阪のホテル稼働率も9割らしいですから、流れは変わっているのだと思います。

 沖縄では2012年度から始まる振興計画に基づいて観光にも注力しています。台湾などアジアからのクルーズ船を誘導したり、中国人富裕層向けの数次ビザの発給などが後押しをしています。

 富裕層向けに医療サービスとパッケージされた観光ツアーなどにも力を入れています。中国人にも高評価で、これからアジアでお金を稼ぐ拠点として沖縄の立地を活かすべきでしょう。・・関西にもチャンスが開けてきそうです。

 さまざまな局面で、首都圏への一極集中の構造が機能しなくなってきた現在、からそれぞれの地域の特長を活かした未来を描く糸口になっていけばいいのですが。

                                       (2011年10月14日)
■HEPファイブとイーマはルクア開業のダメージから回復できていない

 売上前年比比較

 HEPファイブとイーマの落ち込みが目立ちます。新しく開業したルクアと客層が重なっている事もあり、物販、飲食共にダメージが続いています。なんばシティは改装効果で検討していますが、心斎橋OPAも梅田と阿倍野の挟撃の影響を受けています。

 百貨店では阪急本店が94.4%と前月の92.8%から回復しています。(但し昨年は前年同月比が87.3%ですから悪かったのが少しだけ持ち直したともいえます)阪神本店が前年比91.8%と前月の92.5%より減少しています。もちろん、早急な対策が必要ですが、昨年の前年同月比が103.8%ですから昨年の伸びの反動もあります。

 秋冬物かtらクリスマス商戦に向けての各社の立て直し戦略が注目されます。

                                              (2011年10月13日)
図ー大阪市内9月のファッションビル売上(前年同月比)
図60
繊研新聞 10/13

■PFI法改正はビジネスチャンス拡大以上の意味がある

 震災復興のスピードアップを狙ったPFI法改正

 今年5月末、改正PFI法案が可決されました。PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)法は民間の資金やノウハウで社会インフラを整備、管理し財政支出の圧縮を墓売るための法律です。1999年に施行されて以来337件のPFI事業が行われ、総事業規模が4.7兆円にのぼります。

 今回の改正の注目点は2つあります。

 ひとつは「コンセッション方式」の導入。国や自治体が公共施設の所有権を持ったまま、その運営権を民間に売却し、経営を委託できる方式の導入です。「公共施設運営権」は譲渡可能な財産権を持ち、この権利を担保にして事業者が資金調達を行うことが出来ます。
 民間事業者がサービス内容や利用料金を決められる仕組みですから運営の自由度が高いのも魅力です。

 当面、被災した仙台空港の再建への活用が期待されています。上下水道や学校などの運営でも期待されているということです。

 既存施設への適用も可能です。コンセッションフィーは過去の投資額から算定されるのでは無く、将来見込まれる事業収益かの現在価値として対価が評価されます。過剰投資の債務を別の形で整理すれば、純粋に民間の運営で事業を再生させることが可能になります。・・・・・あれやこれや関西にもいっぱい資源がありそうです。
 行政が所有権を保持し続けますので、公共性からの逸脱にはストップを欠けられます。二束三文でたたき売るのとは別の選択肢が生まれます。


 もう一つのポイントは、「Unsolicited Proposal」(要請されない提案)です。以前のPFI法では、事業の初動は国や自治体からしかスタート、公募できませんでした。改正後は民間が、国や自治体に提案を持って行くことが出来るのです。「案件」の設定を行政だけで無く民間から持ち込むことができることです。すごくないですか?

 「提案を受けた公共施設の管理者は、当該提案について検討を加え、遅滞なくその結果を当該民間事業者に通知しなければならない」そうです。

 「ある手つかずの領域に案件のポテンシャルが眠っていることを見抜くことが、専門家で無いために出来ない」という事は諸外国でもあるそうです。・・空港や交通インフラ、エネルギーなど行政の枠を越えた発想での提案も理屈の上では可能になります・・・。

 ビジネスチャンスが生まれる業界は?

 この改正をビジネスチャンスととらえる業界は、まず金融業界と商社です。インフラ運営への投資だと固いファイナンスが組めますしね。

 建設事業者にも注目されています。工事の受注だけでなく事業性を見抜く目と運営力が求められますが、公共の土地や施設の活用は仕事をつくためにも重要です。「考える人」「交渉できる人」の存在感が増すので請け負いだけでない事業のノウハウを持つ大手ゼネコンが有利なのかも知れません。

 公的なインフラを民営化するという考え方は一時ブームでしたが、小泉改革のマイナス面が見えてから少し退潮気味です。ロボコップの世界で警察が民営化され邪悪な企業にかもにされているイメージもある程度あるのかもしれません。もちろん「邪悪な企業」「邪悪な役人」などというものが普遍的に存在するわけではありません。(組織が駄目になっている行政や企業は存在するのかも知れませんが・・・)

 「民営化すればすべてOKというわけでは無い」にしても、この仕組みは多くの可能性を感じさせます。新しい官民協力の形が見えそうです。

 例えば、ビジネスの世界でキャリアを持った親たちが自分たちの理想の保育所や学校を地域で運営する・・ということも、理屈の上では可能なはずです。柔軟な行政と住民層のレベルが高ければ実現できそうです。ユーザー主導の社会インフラというのも新しいビシネスチャンスを生みます。

 大阪府は泉北ニュータウン再生や関空アクセス道路に活用することを申請しています。インフラ整備、まちづくりからみじかな生活インフラまで・・・面白いことが出来そうですね。

                                          (2011年10月12日)
■関西から関東・東北への動きがみられるものの東京圏の転出超過傾向は続く

 大阪圏(大阪・兵庫・京都・奈良)の転出超過数が6ヶ月ぶりにマイナスに

 3月4月の移動シーズンには大阪圏、東京圏、名古屋圏ともに転出超過(転入者が転出者を上回る数)がプラスでした。6月以降、東京圏では長引く原子力発電所の事故の影響で転出者が増加し続けていました。

 自動車産業が復調している名古屋や、本社機能の分散化によって転入者が増加していた大阪はその後も転入超過数がプラスで推移していました。下図の1月2月のように東京への転入超過は続くモノの大阪、名古屋の転入超過数がマイナスになるのが「震災前」の姿でした。

 りそな総合研究所の分析では、大阪圏への転入者数は依然増加傾向に有り、震災後数ヶ月経った東北や関東への移動が様子見から再開されたのが大阪圏の転出者数の増加の背景にあるとみられています。

 震災前に続いていた「東京一極集中」への動きが再び動き出したとは考えられない・・・・ということです。

                                         (2011年10月11日)
 

図ー三大都市圏転入超過数の推移
図61
(住民基本台帳人口移動報告)
■八丁堀の4店舗体制が崩れる〜広島

 選択と集中?広島と岡山駅周辺の開発が赤字店を閉店に

 紙屋町・八丁堀と言えば中四国地方随一の繁華街です。ビジネス街、歓楽街、商業集積が密集していて百貨店も4つの百貨店が妍を競っていました。

 先頃、その中で3番店の座を広島三越と争っていた天満屋広島店が来年2月に閉店することがわかりました。売場面積が1.8万平米と中々難しい規模でした。昨年10月に丸善&ジュンク堂を導入しましたが赤字が続き、食料品売場とレストラン街を残して1〜6階をヤマダ電機に賃貸するようです。

 新聞では郊外との競争を理由としてあげていますが、おそらく、広島駅前の再開発の進展と天満屋本店のある岡山駅前でのイオンモールの進出が後押ししたのだと思います。

 郊外SCが中心とするファミリー層は百貨店顧客とそれほどバッティングしませんし、天満屋自体がアルパークや緑井店を展開しています。都市では、博多や大阪の駅の開発を見ても百貨店の一つの柱である「OL層」への影響が無視できません。

 天満屋は岡山本店を現状の2.9万平米から1.7倍の5万平米に増床します。中四国全体に拡げた戦線を縮小し優良店に集中するのだといわれています。

 広島三越のlこれから

 地元の女性では「そごうは若者に人気のブランドが多い.iョは高年齢層の信頼が厚く、贈答品はiョの袋で贈りたい。三越も全国の老舗中の老舗。天満屋は昔から親しみがあるが、独自性が薄れてきた」と評価されています。

 売上のシェアを見ると、広島都心では広島そごうとiョへの集中が目立ちます。広島三越は隣接する天満屋の顧客・売上を獲得できればいいのですが厳しい戦いが続きます。

                                               (2011年10月07日)


図62
図ー2010年度の売上
図63

(繊研新聞)等
■南海電鉄が難波に百貨店誘致?

 南海会館ビル建て替え

 なんばでもゼップオオサカの誘致など、着々と街を変えていく動きがありましたが、「うめきた」の話題に押されてスポットライトが当たることが少なかったように思います。阿倍野での近鉄の開発が先行していたのでより目立たなかったのかも知れません。

 なんばの商圏を浸食していたのは梅田より、阿倍野・天王寺です。今回の計画についての新聞報道が「うめきた」に対抗と見出しを付けていますが、実際には阿倍野を意識する必要があります。

 29階建ての高層ビルは8階までの低層部に百貨店、専門店街を誘致し外国人向け?野「娯楽施設を設置。高層階はオフィスビルになるようです。既存の「スイスホテル南海大阪」と並び立つ形になります。

 2013年に「うめきた」の先行開発地域「グランフロント大阪」(マンション名ではないですよ)が開業、2014年には阿倍野に百貨店や外資系のホテルが入居する日本一の超高層ビル「あべのハルカス」が開業します。

 「百貨店」?はどうなるのでしょうね。常識的に考えると島屋の別館(館内にあるGOKAI=ヤング売場は別館にした方が活きると思いますが)でしょう。川勝さんの時代であれば「西武」という話もあり得たのでしょうが・・・。勝手に予測するとヤング中心の百貨店+東神開発が運営する専門店集積=島屋SCという形が無難な落としどころでしょう。

 御堂筋の変化に注目

 御堂筋の国から市への移管が現実的なものになってきています。関西経済同友会も活用の提言を出しています。キタの開発と対照して難波の動きが見えてくれば、「御堂筋」への注目度が高まってきます。

 御堂筋では長堀通りから南の街の劣化が心配ですが、南端の拠点難波がこのように整備され、新歌舞伎座の跡地利用が具体的に進めば環境は改善されていくと思います。

                                             (2011年10月06日)
 
■人が集まる事で生まれてくるモノ〜集まる人の目的と頻度は違っていても

 大丸梅田店は日本一の集客数になる?

 駅立地の商業施設と有料のテーマパークなどを同じように比べることには無理がありますが、月刊レジャー産業に掲載された入れ込みランキングをノンジャンルで並べてみると、立地的にターミナルで無くても人を集めている施設が見えてきます。

 2010年のランキングでは東武百貨店(西武百貨店は同誌のアンケートに答えていないのでランクインしていません)阪神が上位なのですが、イオンレイクタウンが郊外立地でありながら3位にランクインしています。
 イオンを中心とした巨大SCにアウトレットを集積し、ひとつの街となっていることがみてとれます。

 ちなみに今年改装した梅田大丸の入店客数がこのままのペースでいけば5100万人になるともいわれています。出入り口を増やし、東急ハンズ、ポケモンセンターを導入した成果でしょう。今後、入店客に長い時間すごしてもらえる機能の強化があれば売上につながると思います。(具体的に言えば、新しく獲得したお客様が使える飲食喫茶機能が館内にありません)

 伊勢丹新宿店は駅からは離れているにも関わらず、ターミナルの京王より多い入店者数を示しています。単に通行者では無く、目的を持って訪れる人が東京ディニーランドより多いという事は大変なことですね。大丸心斎橋店、銀座三越も駅立地ではないのですが、人を集めています。

 郊外SCではKUZUHAモールが東京の玉川高島屋scを上回る集客数を持っています。(ちなみに阪急西宮ガーデンズの来店者も年間1700万人らしいです)


 集客した人の顔をよく見ること

 駅、ターミナルの場合は同じ人が毎日通っている分が延べ人数が多いので一概に下図だけでは比較できませんが、どんな人がどんな目的で来ているかを分析すれば、まだまだ隠されたビジネスチャンスが見えてくるはずです。

 人を集める仕掛けに手間暇をかける事をしなくなっているのですが、逆に人が集まる場所でなければ出来ないことを新しく始める仕掛けも少なくなっています。結果的に目先のニーズ対応の同質化競争が起きています。

 人が集まる場所で無ければ出来ないことは沢山あります。こうやって見ると大阪の梅田は日本の中でも、その数少ない場所なのだということが良くわかります。

 京橋花月と天満繁昌亭

 大阪で第4の乗降客がある京橋に開業した京橋花月から吉本が撤退するという報道があります。立地的には「悪い」天満繁昌亭が継続しているのに対して、何故うまくいかなかったのでしょうか?平日昼間はお客さん一人ということもあったそうです。人=流動者がいるから「成功」が約束されているわけでもないのです。

 京橋には人一倍強い思いいれがあります。「うめきた」に対するOBPの立ち位置を含めて、京橋〜OBPエリア全体で戦略を考えないといけないでしょうね。
                                           (2011年10月05日)
       
図ー2010年の入れこみランキング      
図64
(月刊レジャー産業資料 10月号記事に当社調査を加えて作成)

■震災後の夏レジャー消費にあらわれた変化

 「震災自粛ムード」の影に隠れた消費押し下げ要因

 東日本大震災以後、首都圏を中心に自粛ムードが働いて消費を押し下げているという錯覚が根強いですが、阪神淡路大震災の経験で言えば、被災地から離れた地域での「自粛」は短期間で消滅します。(良いか悪いかという議論は別です)今回は、原子力発電所の事故が収束していない点と、首都圏で余震が続いているという事情はありますが、消費を押し下げている要因は別にあります。個別の消費行動は別にして大きな経済は「心理」では動きません。

 ひとつは円高・株価の低迷による逆資産効果。子ども手当廃止、増税議論による将来への不安。高速道路休日割引廃止による長距離移動の制限。外国人旅行者の減少。等々。

 8月の後半は天候も不順で良い材料はない中で、レジャー業界は健闘していたようです。

 この夏のレジャー行動について今月の「月刊レジャー産業資料」で興味深い傾向が報告されています。

 平日需要を支えるシニア層

 今年の夏はゴルフ場で平日プレイが伸びていたといいます。夏休みの長期化、向上の休日のシフトなどもあるのでしょうが、シニア世代のプレイが週末から平日にシフトしているといいます。
 ゴルフ人口の5割が50代以上、60代以上に限定しても3割を占めます。リタイアした団塊世代を中心に平日の利用、1人プレイでの利用(接待ではないということですね)が増えているそうです。

 ゴルフのプレイスタイルも変わっていくのでしょうね。およびそこから拡がるビジネスチャンスも変わっていくのでしょうね。

 カラオケ施設(シダックス)でも平日昼間の需要を支えているのはシニア層だそうです。売上の1割ですからそれほど比率が高いとは思えませんが、記にいた店舗にはリピートして通うという特性は市場の下支えになります。

 安近短を志向するファミリー層

 消費抑制要因ファミリー層を直撃しています。比較的長い夏休みも遠くへ出かけるより近場で楽しむ傾向が強まっています。カラオケも都心店は2次会利用、法人需要が落ち込んでいますが郊外店のファミリー需要が伸びたと言います。休日昼間の利用は家族での食事も兼ねているため飲食単価が5割にのぼり客単価があがります。夜間のパーティーや団体利用の減少を昼間の需要、ファミリーの需要がカバーしています。

 レジャー施設では他に「動物園」が好調でした。

 夏休みを長めに設定していた企業も多いようです。JTBのレポートでも、昨年に比べると旅行者数は減少していますが、過去5年間では2番目に高い旅行意欲が見られました。

 国内旅行は7,458万人(昨年比211万人減)。海外旅行は228万人(昨年比14万人減)。国内旅行の費用は34,600円と900円のマイナスですが、海外旅行は234,000円と昨年比11,900円のプラスとなっています。

 旅行日数は長短2極化が進んだという事です。

 消費意欲抑制政策のの逆風の中で、お金を使えるのはどの層か?見極めが必要です。

 この8月のホテル稼働率、東京では71.9%でしたが、大阪では9割を超えたそうです(日経新聞)。西日本、東海地方から家族連れなど国内客が増えているそうです。一時的な変化なのか?定着させることが出来る変化なのか・・・・?

                                             (2011年10月04日)
■B級グルメの課題〜ゆるキャラとAKB風の会いに行けるアイドル

 地域活性化の切り札として期待されるB級グルメイベント

 9月30日のみずほ地域経済インサイトで、」静岡県の地域活性化事例として「富士宮やきそば」をとりあげB級グルメイベントの課題をまとめています。

 B級グルメイベントとしてすっかり定着した「B−1グランプリ」(今年は11月に姫路で開催されます)は2006年に青森県八戸市でスタートしました。当初は参加団体は10団体・来場者数2万人でしたが、翌年の静岡県富士宮市では21団体・25万人が参加し、一気にメジャーになりました。

 昨年の神奈川県厚木市でのイベントには46団体・44万人が参加したそうです。経済波及高は36億円ともいわれています。

 八戸の郷土料理「八戸せんべい汁」を使った地域興しとして八戸せんべい汁研究所が開設されたのは2003年です。2006年に同じように郷土料理で地域興しを図っている10団体で始めたのがB−1グランプリで初回の優勝者が「富士宮焼きそば」でした。2回目は富士宮市で開催され「富士宮焼きそば」が2連覇を果たしました。

 もともと伝統料理でもないが、地元で親しまれている住民の評価が高い料理が中心だったのですが。人気を呼び、「地域活性化の切り札」として注目を浴びてくると、地域経済効果を狙ってにわかにつくられた「創作系」とよばれる出展者が増えてきているようです。外食産業の経験がない事業者(NPOや自治体職員が地域住民に充分親しまれていない「商品」を出店する、受賞によるパブリシティ狙いの動きが多くなってきているというのです。

 富士宮焼きそばでもその集客を地域の商店街で活用し切れていませんから、急ごしらえの名物では、地元で食べ歩きをする楽しみさえおぼつかないが現状です。

 同レポートでは「経済効果を期待して、B級グルメを活性化ツールとしたい地域が多いと思われるが、創作系に頼る(=仕掛けが先行)のはリスクが高い・・・例え何かの理由で人気になっても口コミやリピーターは増えず一過性に終わる可能性が強いと思われる。と結論づけています。

 マスコミ受けを狙う地域活性化

 同じように、マスコミに取り上げられて人気をよんだ事例にあやかろうというのが「ゆるきゃら」であったり「ご当地レンジャー」(戦隊もの)、最近でAKBまがいに会いに行ける「ご当地アイドル」であっったりするのでしょうね。

 地元で盛り上がって、自分対が楽しんでいる分には、別にいいのでしょうが、「受け狙いでは地元にも定着しないでしょう。同じような風景が全国で見られます。

 地域興しにはマスコミの活用=全国からの注目が必要だと思います。考えていることは間違っていないのですが、手段が目的になると本末転倒でしょう。

                                             (2011年10月03日)
 9月
■梅田の既存専門店ビルの巻き返しの方向性

 イメージ調査に見る各施設の強みと弱み

 2005年調査ですから、少し古いのですが、梅田でルクアの開業で影響を受けているといわれている専門店集積のイメージ調査を分析すると、それぞれの強み弱みがはっきりします。

 ファッション性評価で男女とも若い世代で支持されているのがHEPファイブです。今回ルクアは男女の売場をミックスして展開していますから、一番影響を受けたのだと思います。

 イーマは規模は小さいですがそのファッション性は若い女性を中心にしっかりと支持されています。

 ディアモール大阪はどうしても通路部分の比重が高いので、独自の環境や「世界観」よりも「利便性」の印象が強く出ています。ハービスやヒルトンプラザと連携してお「大人の街」西梅田を形成していました。

 「通路」としての特性を活かしたゾーン別の機能再配置、環境整備までできればいいのですが。通行者像と顧客像の整理すりあわせが必要です。

                                        (2011年09月30日)

図ーおしゃれな人が多い施設
図65
図ー新しいファッションが発見出来る施設
図66

図ー大人が楽しめる施設
図67
図ー会社帰りに利用しやすい施設
図68

(なにわ考現学05 大阪市内通勤者を対象にしたイメージ調査から当社が加工)
■梅田にまだまだ足りないものは

 梅田に無いもの

 JR大阪ステーションシティ開業前に特に飲食店にフォーカスして梅田の商業施設をフィールドワークしました。駅ビルができてどのように変わったか?・・・あらためて見直してみて、これだけ集積が増えてきてもまだまだ欠落している要素が多いことを再確認しました。

 たとえばポケモンセンターに来店したファミリーはどこで食事が楽しめるのか?梅田北ヤードがもし成功して外国人研究者やビシネスマンが来街するようになったときに、どこに連れて行きたいか?(「もし」は余計ですか?)それぞれの飲食の集積にストーリーが無いのも不思議です。
 最近はテーマ性を持たせたゾーニングを行う集積が少なく悪く言えば「高級雑居ビル」良く言えば多様な顧客ニーズに対応した街場の賑わいを演出する商業集積が多くなっているようです。

 飲食業はもともと路面店が強い業態ですから、ビル内での展開には限界があるでしょう。それでは他の業態はどうでしょうか?

 大阪のオフィスビルは供給が需要を大きく上回るペースで進んでいきます。商業施設もまた飽和状態ともいわれています。

 利用者の立場で考えれば、まだまだ足りないモノが沢山あります。

 大阪市内通勤者対象の調査から、今回特に男性にスポットライトをあててニーズの高いモノをピックアップしました。

 梅田北ヤード「うめきた」の先行開発地域「グランフロント大阪」が来年開業すれば梅田周辺の通勤者人口が増加します。

 もしコンセプト通り外国人研究者や、ビジネスマンが多数訪れるようになれば、もっと必要な機能が増えます。
(以前、アメリカ人の設計者に食事はどこがいいか聞いたら「シャロン」と一言・・・・・。外国人向けでも接待用の店だけでなく日常使いの店も必要なのですね)

                                            (2011年09月29日)

図ーキタ周辺に欲しい施設 男性年代別に特徴的なモノ(30%以上の項目)
図69

図ーキタ周辺に欲しい施設 女性年代別に特徴的なモノ(30%以上の項目)※再掲
図70


大阪市内通勤者対象の調査「なにわ考現学2005」から当社が独自に集計したものです
転載、引用はご自由ですが必ず「ANALOG−CORP hpより」と出所を記載して下さい

■百貨店ヤング対応の軌道修正

 大丸心斎橋うふふガールズのターゲット修正

 大丸心斎橋店のうふふガールズは百貨店のヤング対応の取り組みとして先行してきたもので、近年の百貨店のヤング対応の魁といってもいい事例です。心斎橋筋周辺の1日10万人と言われる通行者を百貨店が取り込めていないという着目点からスタートしたものです。大丸は以前はビッグステップの運営にも関わっていたのである程度のノウハウは持っていたのと考えられます。

  この春のルクアやあべのマーケットパークキューズモールの開業は大丸心斎橋店の「うふふガールズ」の地下2階の売上に大きな打撃を与えました。同じブランドがあるなら足場の良いターミナルで購入します。専門店ビルであれば集積力も高く、雑貨やカフェなども充実していますしね。

 地下1階の20代対象のゾーンは売上回復しているので、地下2階の対象年齢も20代対象の売場に変更していきます。心斎橋周辺も長堀通りより北はオフィスゾーンなので通勤しているOLが中心になるのでしょうか。ちなみにクリスタ長堀はそのターゲットで成功しています。

 百貨店の強みは依然としてキャリア層と40〜50代ミセス

 百貨店のヤング対応売場で規模が大きい博多阪急の博多シスターズで5,800uです。大丸梅田店の「うふふガールズ」も5,100平米ありますが、他の百貨店のヤング特区は2,000u規模にすぎません。集積力では専門店ビルにかないません。雑貨やカフェといった非物販部門の充実にも差があります。

 以前にも指摘しましたが、百貨店のおばちゃん向けの売場を通ってヤング売場にいアクセスするルートは若い子にとって、期待感を持たせるような楽しい環境ではありません。
 百貨店のヤング対応売場で購入しているのが30代のベビーカーを押しているミセスであったり40〜50代のミセスの利用であることがいくつか報告されています。(島屋「gokai」、名鉄「メゾン・ドゥ・ナナ」)

 伊勢丹本店の「イセタンガールズ」はリクルートスーツを強化するなど「きちんと感」のあるファッション提案で母娘での来店、購買の強化を図っています。その結果21才以下の購買が10%増で同時に50〜60才が3%増となっているようです。

 移り気なヤングに腰を据えた対応が必要

 各社ともカード会員の獲得には力を入れていますが、10代〜20代前半のヤング層の関心事の急激な変化への対応に苦慮しています。ジェットコースターのような変化を追い続けることは必要だという認識ですが、業界では売上や顧客化のための対応ノウハウが不足しているとも語られています。

 
                                           (2011年09月28日)
■円高に関する通念を疑う〜なぜ円高還元セールが盛り上がらないか?

 円高還元セールを期待できない背景

 円高局面では「円高還元セール」が盛り上がってきたのですが、今回の円高ではそれほど大々的なセールは行われていません。中国をはじめとする新興国では賃金の上昇が続きインフレ傾向にあります。海外の物価の上昇率が円高の効果を相殺しているといわれています。(日本総研リサーチアイ9月26日より)

 円高がプラスに働いている事例として、アジアで生産するOEMを手がける商社が、円高が現在の水準であれば「原料高」や「人件費の上昇」を吸収できるのですがもし1ドル90円の円安になれば対応できなくなるといいます。もし、円安になればアジアのインフレの影響で国内の物価が高騰します。ウィン安を政策的に誘導してきた韓国政府も国内の物価高騰に耐えられなくなり、、ウォン安誘導政策を転換しています。

 今までの経験では判断できない変化が起きています。

 円高の競争力低下は限定的という視点

 日本総研が9月12日に発表したレポートでは「円高の競争力低下は限定的」という視点が提起されています。2000年代に入って日本の輸出先のうち欧米はそれぞれ1割強にすぎません。アジア向けの輸出が急増し、中東などアジア向け以外も底堅い増加を示していると言います。

 今回の円高はドルやユーロの全面安です。東アジアの通貨もドルに対して増価しています。名目上は10%のギャップがあるようですが、物価や人件費の上昇を勘案した実質ベースでは3%程度だといいます。(ここでも新興国のインフレが影響しています)競争力低下は日本が主力とするアジア、中東に関しては極めて限定的なのです。

 最近自動車メーカーがアジア向けの低価格車に生産の重点を置き始めています。

 企業の海外移転は日本の産業の「空洞化」を呼ぶ悪なのか?

 生産拠点を海外に移すメーカーが増えています。「電力不足」「円高」などが理由にあげられていますが、それらは単に。表向きの理屈です。市場が伸びている地域に生産拠点を置くことは、普通に合理的な判断ですし、地元の人間の雇用を増やし、経済力を高めることは「市場」を創造することにつながります。

 ブラジルのように中産階級が増える国が繁栄していきます。国内の市場がこれからは伸びないですし、欧米の市場ももう伸びることはなさそうです。新興国を中心に市場をつくるしかないでしょう。

 地方で、半導体や自動車工場を誘致して雇用を生み出したつもりになっても、そこでなければできない産業であると簡単に移転してしまうという事例は以前にもご紹介いたしました。

 海外ラグジュアリーブランドの日本市場のとらえ方

 リーマンショック、東日本大震災以後減速していたインポートブランドの旗艦店の出店が再び活発になってきました。世界のラグジュアリー市場は20兆円といわれています。お客様は日本人20%、アメリカ人22%、中国人23%。今後中国人の比率はこれからさらに伸びるでしょう。

 GDPの伸び率がラグジュアリーマーケットの成長率に比例するといわれています。ブラジル、インド、ロシア、中国これらの地域の市場が伸びていく中で、旅行客の購買は大きなウェートを占めています。

 日本の消費者は品質基準に厳しく、アジアにフィットした商品開発の実験室として重視されています。製品開発やサービス開発、新しいブランドビシネス開発の拠点として位置づけられているようです。

 欧米のラグジュアリーブランドが日本に再進出してくるのは、ユーロに対する円高という状況では日本人の購買力が相対的に高まっているともいえます。日本国内の価格は欧州産のモノは下げられるはずですが下がっていません。

 いずれ、中国市場でも一部の富裕層だけでなく中流層に「ブランド」を売る時代が来ます。その時にこそ日本市場での経験が生きる事でしょう。意外にマーケティングの企画力が日本のパワーであるのかも知れません。

                                        (2011年09月27日)
■不意動産市場に関する厳しい予測とこれからに向けての考え方の転換

 供給過剰が数年続く大阪オフィス市況〜過去の発想を超えたアイデアが必要 
                     大阪オフォイス市場の現況と見通し〜ニッセイ基礎研究所

 不動産市場に関していくつかのレポートが発表されています。ニッセイ基礎研究所の大阪のオフィス市場予測では2008年から2010年の間に新たに17万坪供給されたオフィスが、2011年から2014年の間に新たにに17万坪供給されると予測されています。(北ヤード、中之島、、天王寺等〜大阪中央郵便局の建て替えは含まない)。

 大阪の空室率は11%と1990年代半ば以降最も高い水準にありますが、それでも主要政令指定都市の中では最も低い水準です。東京は別格として他の政令指定都市の中では減少しているとはいえ需要はあるので、東京に比べ地価が低い分投資効率が高いという判断なのかも知れません。

 大阪市の生産人口は2010年の170万人から、2015年には161万人、2020年には156万人に減少すると予測されています。(国立社会保障人口問題研究所)オフィスの大量供給が予測されている2012〜2014年には生産年齢人口は大幅に縮小します。

 ニッセイ基礎研究所の予測ではオフィスの賃料は2011年から2012年に僅かながら上昇する可能性がありますが、一方2012年から2014年のオフィスの大量供給に対しては需要が供給を吸収しきれず、オフィス賃料の低下傾向は続くということです。

 東日本大震災の後に例年を上回る転入超過がありましたし、首都圏のバックアップ機能が必要との声も根強くあります。大阪のオフィスワーカーの減少はリストラのための首都圏への本支店の集中のための削減ターゲットとされてきた要因も強いと言われています。

 震災等のリスクは大阪にも存在します。震災の後の台風の被害での帰宅難民の発生や、依然として払拭されない放射能への不安から、東京への集中圧力は弱まっていくことでしょう。かといって自動的に関西へ集中することも考えにくいでしょう。

 関西での集積が少ないと言われる成長産業の集積が鍵になります。西日本の各地域や海外との連携の強化、人材の集積を誘導する仕組みが必要になります。

 少子高齢化がもたらす住宅地価の低下
                             住友信託銀行調査月報10月号

  65才以上の高齢者人口の増加は住宅地価を押し下げる要因になるそうです。30〜44才の住宅購入適齢期の人口が増えると住宅地価が上昇することの裏返しでしょう。少子高齢化が進む中で今後景気が回復しても住宅地価全体では下落が進むと見立てられています。

 大きな流れ、全国的なトレンドとしては下落が進みますが、住宅地価は地域間格差が大きいため、東京や大阪の都市圏では地価公示での上昇地点が多く見られます。

 都市と地方の地域間格差をかかえつつ、長期的には東京を含めた都市圏でも高齢化によって需要が縮小し、住宅地価の低下は避けられないと分析されています。

 今後住宅地価が上昇する局面があったとしても、上昇するエリアは縮小していくと見られています。


 下落幅が縮小している平成23年都道府県地価調査
         第一生命経済研究所 定例経済指標レポート 2011年9月22日

 長期に渡るトレンドとは別に、直近の地価を動きを分析しているのがこのレポートです。

 全国の地価の下落幅は昨年の-3.7%から-3.4%へと下落幅が減少しています。これは一昨年の-4.4%から2年連続の下落幅の縮小です。

 地域別に見ると住宅では大阪圏は(-3.6%→-1.8%)、東京圏(-4.1%→-2.3%)、名古屋圏(-1.3%→-0.7%)と全国の-3.2%に比べて下落幅を縮小させています。東日本より西日本でより下落幅が改善されています。地方圏に限れば(-3.6%→-3.7%へwと下落幅は拡大しています。

 商業地でも全国平均で(-4.0%)ですが大阪圏(-5.3%→-2.6%)、東京圏(-4.1%→-2.3%)、名古屋圏(-2.9%→-1.1%)と都市部で回復傾向にあっても地方圏では横ばい状況です。

 都市部でも立地によって競争力に変化

 東日本大震災の影響で、都市部でも立地によって改善が進む地域と横ばいの地域に2極分化傾向が見られます。耐震性と行った安全基準の重視とと立地では湾岸部より高台や地盤の固い地域への土地需要が増えています。さらに台風などの影響で水はけの良い立地というのも条件に加わってきています。

 立地の選定基準が変わってきますし、立地による格差がますます大きくなっていきます。

 全体的に土地への需要は縮小するとしても住宅や、商業に求める基準が高くなってくると適した土地はごく限られた土地になります。その中で、関西、大阪はいくつかのアドバンテージを持っていると考えます。関西の資源を活かすためには「マーケティング戦略」がしっかりしていないといけません。

 働き方、住まい方、商売の仕方について新しい仕組み、イメージを持たないと従来の不動産事業の発想では「縮小する市場」といった大きな流れの中で流されていくことでしょう。

                                             (2011年09月26日)
図ーオフィス新規供給面積  (坪)
図71
(ニッセイ基礎研究所不動産投資レポート 2011年9月22日)より


■2011年問題の現状〜人の流れに変化はあったのか?

 客数関西一になるのか「大丸梅田店」

 8月19日付の日経新聞地方版で大丸梅田店の年間来店客数が5,100万人となりそうで、昨年トップの阪神百貨店4,560万人を追い抜く勢いだそうです。入り口を14カ所から37カ所に増やし、上層階に「ポケモンセンター」「東急ハンズ」「トミカショップ」「ABCクッキングスタジオ」を配置した効果も大きいのですが、大阪駅北ビルの開業と阪急百貨店の増築工事が長引いていることで人の流れが変わっていることも大きな要素です。

 4月以降の売上は阪急百貨店を抜いて関西一となるなど増床の投資効果は目に見えてあがっています。ただし、来店客の買い上げ率は30%であり、売上は増収目標の8割増に届かない6割増で推移しています。

 売場を1.6倍に増やしたのにも関わらず、社員数を半減させ、収益の改善をはかろうとしています。

 一方苦戦を伝えられるJR三越伊勢丹は、自主編集売場の「リスタイル」は好調ですが、婦人服の定番ブランドの苦戦が続いていると言われています。同じブランドの商品であればカード優待割引のある近くの店で購入しますから、これはまあ、いたしかたないともいえます。阪急阪神のクレジットカード会員は160万人なのに対してJR大阪三越伊勢丹は10万人に届いていないのですから・・・・・。

 ルクアは相変わらず好調です。男女の垣根を越えたショップや飲食フロアが人を集めているようです。中山社長を先頭にお客様のことを自ら動いて知ろうと努力したことが成果となって現れているのでしょう。
 テナントも近隣のSCからスタッフを移動させており、お客様もついてきているようです。女性用トイレの充実などJRの駅でのサービスに対抗して阪急梅田駅でも有料のパウダールームを設置しています。

 西梅田のファッションビル「ブリーゼブリーゼ」のカード会員は13万人。25〜40才の女性が多く、競合激化の中で顧客ターゲットをこの年代の女性に絞り込んでいくようです。9月16日には「コンランショップ」をオープンさせていますし、生活雑貨の「ナチュラルガーデン」も導入しています。

 コンランショップは売上は高くなくても根強いファンがいます。ブライダルやギフト需要にしぼっているということで、立地の強みを持つ「ルクア」とは違った個性を構築していきそうです。

 心斎橋は埋没するのか

 梅田の変化に対して対抗手段を講じた難波島屋やあべのは影響をうけていませんが、挟撃する形をうけた心斎橋は苦戦しているといわれています。大丸は京都、神戸は復調していますが心斎橋店は前年割れが続いています。百貨店客はそう簡単に動かないのですが、今まで心斎橋にしかなかったブランドが梅田やあべので購入できるとわざわざ心斎橋にまではでてこないという事です。
 NMB48を使ったイベントなどでてこ入れをはかったのですが、6月は13%減の748万人の来街にとどまっています。中国人観光客も減少しているのが応えたのかも知れません。

 周辺ではラグジュアリーブランドの路面店が並ぶ御堂筋の賃料が低下しており、人通りの多い心斎橋筋商店街の路面を下回っているそうです。今後ルイヴィトンが移転しプラダが出店するそうですが、来年大阪市に移管される御堂筋の歩ける街としての環境整備が急がれます。

 歩道の拡幅や自転車道の整備、沿道の環境整備が進めば、御堂筋は良くなるポテンシャルが潜在しています。

 郊外の百貨店の業態開発を

 近鉄枚方店の来年2月での閉鎖が発表されました。ピーク時の97年には199億円あった売上が今年の2月期には81億円にまで落ち込んでいました。
 SC化するにも店舗面積が1万2800平米と狭いので対策を打ちづらいのかも知れません。商圏内のくずはモールの充実によって影響を受けてしまったのでしょう。
 近鉄は桔梗が丘店(40億円)の運営フロアも縮小し、テナント導入により百貨店業態の維持を断念するそうです。経営資源を阿倍野に集中するそうです。枚方店の閉店で旧丸物百貨店は完全に消滅したことになります。

 郊外型の中小型店の新しい業態開発が必要ですね。

                      (2011年09月22日)

■代替補完機能以上の経済波及効果を持つ北陸新幹線

 東海地震で分断される東西導線を補完するのは

 東日本大震災で想定されていた以上の被害を経験したので、ずっと警告されている東海地震発生時の対応策の議論が現実的な課題となっています。この8月に関経連と北陸経済連合が共同で発表した「北陸新幹線による東海道新幹線の代替補完機能評価」では、東海地震によって東海道新幹線が分断された時には、鉄道による移動では1日20万人に影響し、経済損失額は1日50億円にのぼると試算しています。
 もし、北陸新幹線が大阪まで全線開通していればそのロスは半減されるそうです。

 北陸新幹線が全線開通すると東京〜大阪間を3時間30分で結びます。

 試算では「中央新幹線」(これも東海道新幹線のバイパスとして想定されています)の代替機能が勘案されていないことと、経済損失額の中で「旅行需要の減少」を設定している点は、正直無理があると思えます。中央新幹まで影響を及ぼす震災被害があるときには「観光旅行」はしないでしょう・・・・。たとえ鉄道が通っていたとしても。

 とはいえ、今回の東日本大震災でも日本海側から物資や人が流動したことが回復を早めた経験もあります。激しい震災は中央新幹線にも影響を与える可能性があります。北陸新幹線の整備は関西が首都機能をバックアップするためにも必要です。

 その議論の際には、代替補完機能だけでなく、将来に向けた経済波及効果に目を向ける必要があります。

  日本海の成長可能性

 様々な政治課題や領土問題を抱えているとはいえ、環日本海の国や地方は今後の成長の可能性があります。ロシアは現在一番消費性向の強い国民を持っていますし、北朝鮮もいずれ体制が変わるでしょう。中国の東北地方はまだ貧しいですが資源はあります。モノと人の交流が進めば、北陸はその玄関口になります。

 多くの障害はあるとしても、確実に交易は活発になっていきます。

 太平洋側の都市では意識されないですが、日本海側から見た日本地図は北陸地方では結構目にします。一度日本海側から日本地図を眺めてみて下さい。

 関西が本当に首都圏の代替機能を果たすには、東京ばかりでなく、地方を通じて海外とのつながりを深めていく発想も必要になってきます。東京の縮小コピーが「代替機能」であるとは思えませんよね。

                                               (2011年09月21日)
■エイチ・ツー・オーと近鉄百貨店の業務提携の意味するもの

 百貨店再編の次のステージとなるのか

 エイチ・ツー・オーリテイリング(売上4.650億円)、近鉄百貨店(売上2、958億円)が8月10日に情報基盤整備に関する業務提携を発表しました。

 当面はPOSシステム、商品仕入れシステムの共同利用から始め「次世代システム」の共同開発に取り組むという話です。お互いに鉄道系の百貨店であり商圏も重ならないので、将来的な経営統合を予測する見方もあるようです。

 百貨店の経営統合によるスケールメリットは意外ににありません。jフロントリテイリング大丸もグループ店舗の一時集中仕入れによって商品調達を容易にしようと試みましたが、百貨店は地域密着性が高い業態である為に、商品構成については地域対応に軌道修正しています。

 同じ京阪神とはいえ、近鉄沿線と阪急沿線では上顧客の質や、購買行動は全く異なります。百貨店の商売のスタイルも必然的に違ったモノになります。
 新聞報道によれば商品調達の連携は考えていないようですが、顧客分析についてはシステムの共同開発を考えているようです。(日経MJ 08/12)

 企業文化のすりあわせの困難さは阪急百貨店と、阪神百貨店以上のものがあるかもしれません。

 システムの共有化という作業は簡単なモノではありません。商品区分、売上計上の区分、顧客分類の区分など百貨店業界の中でも揃っていないので揃えて比較することでお客様の姿が見えてきます。お互いに違った文化背景を持つスタッフ同士で議論することで、自分の姿が客観的に見えるメリットがあります。
 これはとても大きい効果があります。商品分類はマーチャンダイジングのスタートですが、何故、その分類になっているか?あらためて考え直す良い機会でしょう。(情報処理の仕組みをシステム会社に発注する仕様を作る作業が”気付き”を生み出してくれます。丸投げしちゃだめですよ。)

 お客様に対して、どのような品揃えで対応するか、どのようなサービスで対応するかは、各「阪急」「阪神」「近鉄」ストアブランドの文化で対応方針が違うことを前提に考えればいいと思います。

 3つ以上のフォーマットのノウハウがあれば立地商圏によって使い分けることも可能です。

 エイチ・ツー・オーと島屋の提携が中断したのは無理にその部分「店の見え方」を統合しようとしたからではないかと思います。(お互いにプライドもありますしね)

 (JR大阪三越伊勢丹の軌道修正のスピードが遅いのは伊勢丹主導とはいえ三越の顔を立ててとかの遠慮があるからかもしれません)

 もし経営統合のメリットがあるとすれば

 先般、近鉄百貨店は専門店の運営組織の分離独立を発表しています。

 大丸梅田店に顕著なように百貨店業態は、都市型SCの核店舗となっていく傾向があります。百貨店業態だけで対応できないニーズに対してテナントを導入して対応する・・・・。
 テナントオペレーションと百貨店の対面接客では必要なスキルや評価基準が異なります。商品やお客様に向き合う部門と、広く商圏のニーズや競合の状況を分析して最適なパーツとしてのテナントを入れ替えて、不動産収入をあげていく部門は別のスキルだと考えています。

 前者に関しては各店舗の地域性、独自性を活かす事が必要ですが、後者に関しては共通のノウハウやネットワークが活かせるでしょう。
 もし将来的に鉄道系の百貨店の経営統合があるとしたら、それぞれの専門店運営会社と、鉄道の不動産事業部門の協業化から始めると効果が大きいのです。各社には不動産専業会社とは違ったノウハウがあるはずです。

                                        (2011年09月20日)
 
 近鉄グループの「近商ストア」はセブン&アイグループとの提携に進み商品供給も受けます。エイチツーオーとの間に商品供給の契約はありませんから、セブン&アイを通じてそごう・西武と連携を深めていく可能性も残されています。特に近鉄百貨店は中小型郊外店が多いので「近商ストア」をベースにした食料品中心の業態開発も考えられます。


 
■文化戦略は国際競争力を左右する〜世界に売れるコンテンツを

 テレビ番組輸出額195億円、アジアにフィットした番組を供給する韓国

 韓国のテレビ番組輸出額は2010年度で約195億円、日本の輸出額の2倍です。2004年には74億円と当時の日本の輸出額82億円を下回っていたのですが、政府の補助(ローカライズ費用の70%を援助)と日本の六分の一と言われる安い制作コスト。アジア諸国との視聴習慣のフィット(アジアでは連続ドラマは100話以上の長期間にわたるのが普通らしいです)などから大きく輸出額を伸ばしてきています。

 輸出先も日本を始め中国、台湾、フィリピン、ベトナムなどアジア圏が中心です。実は、この輸出先のアジア圏では、「韓国製品が格好いい」という割合がとても高くなっています。これらの国の少女達のあこがれはソウルにいって韓流のPOPアイドルになることです。

 金額自体は大したことがないのかもしれませんが、波及効果がとても大きいことがわかります。

 
 韓国は国内市場が小さいので、低い単価でも海外販売の意欲が高いといいます。・・・・ものづくり産業にも似ていますね。日本の中ではアジアが伸びているとはいいながら、高単価の商品が売れるアメリカや欧州にばかり注目が集まって、アジアをあまり意識してこなかったツケがまわってきています。

 企業が提供するテレビ番組も国内だけでなく、海外で二次使用、三次使用が出来るコンテンツにお金を使った方がいいかもしれません。

 経済産業省の推計では国内のコンテンツ市場(音楽、映像、ゲーム等を含めて)の市場規模は日本では3兆6000億円なのに対して、韓国では9600億円です。ガラパゴスだってビジネスは成立はするのでしょうが・・・波及効果を考えないといけません。

 海外展開しているコンテンツはゲーム分野

 文化庁の調査で、分野別の海外展開状況がまとめられています。国内市場に対する輸出額は 映像分野で1%未満、音楽分野でも1%未満、ゲーム分野ではほぼ100%と国内市場に匹敵する輸出額があります。

 映像分野、音楽分野では企業規模が小さくて海外展開の体制がとれないというのがその理由・・・らしいです。

 海外に通用するコンテンツ制作のリスクが負えないとか。

 経済産業省の調査でも今後メディアは旧来の紙媒体からWEBへと移行するそうですから、小さなグループまたは個人が海外に直接発信することは十分可能です。経済産業省のレポートでもこれからの注目事例として「初音ミク」を提供しているクリプトン・フューチャー・メディア社をとりあげています。

                                               (2011年09月16日)
 
図ー地上波TV番組の輸出額
図72
図ー地上波テレビ番組の輸出先
図73
図ー韓国製品が格好いいと思う割合〜韓流圏(韓国テレビドラマ普及地域)と非韓流圏に大きなギャップ
図74


(平成22年度クールジャパン戦略推進事業 メディアコンテンツ分野における戦略構築及び
 他分野への波及効果調査 調査報告書   経済産業省より)
■韓国で一番住みたい街ソンミサン・マウル〜共同育児施設から生まれた自立的コミュニティ

 育児の協同組合から生まれたコミュニティ

 「ソンミ山マウル」はソウル麻浦区ソンサン洞にある小さい山(標高60m)ソンミ山の裾野に位置する地域のことです。画一的な幼稚園教育に疑問を感じた25組の共稼ぎ夫婦がお金を出し合い。1994年に韓国で最初の共同育児協同組合「子どもの家」を立ち上げました。

 子供達の成長に伴い学童保育やフリースクールが作られました。
2001年には食の安全を求め、生協(麻浦ドゥレ生協 現在3,000世帯が加入)を設立。その後、地域の裏山ソンミサンに貯水池をつくるという開発計画が持ち上がり、生協を中心とした反対運動は、ソンミサン周辺の地域住民全体に広がって、開発は中止となりました。
 コミュニティとしてのまとまりとつながりが生まれ住民の80%以上が様々な活動にかかわるようになったそうです。

 自分たちで始めた活動
 
@車の整備の家
Aおかずの家・・・共働きが多いため、栄養士と料理の得意なママたちが始めた「まちの台所」。配達は子どもが行い、子ども自身も顧客拡大のための工夫をしていたそうです。
B小さい木・・・ アトピーの子どもでも食べられるアイスクリームがあり、大人はコーヒーの飲めるコミュニティカフェ。店が狭く運営は赤字続きでしたが、出資金や融資を募り、店内のインテリアも寄付してもらった。すると、収入は3倍になったそうです。
Cコミュニティの再生の場としての小劇場 
 生協の祭りをきっかけに、「遊びながら共感する場を」「家から5分で行ける劇場がほしい」「静かに!と子ども に制限しない劇場を」と、コミュニケーションの場として劇場を作りました。
 演劇やドキュメンタリー、写真など様々なサークルがある。もちろん、プロの芸術家の協力も得て、ワークショッ プを行うなど住民とともに作り上げ、お互いにエネルギーを感じ高めあうことに成功。

 「人をつなげていくことができるのは、人びとの生活に根差した文化ではないだろうか」と分析されています。

 ソウルでは平均居住年数が2〜3年といわれていますが、定住する人が多いと言われています。

 「市民運動」がプリミティブな輝きを残す

 日本では現在、「「市民運動」に対するイメージはやや冷笑的になっています。「市民運動出身」の首相の評判が悪かったせいでしょうか?「ソンミサン・マウル」のお話も少しうまくできすぎているようにも思えます。
 ただ、地方分権が語られ、震災後の復興でも「絆」の重要性が再認識されています。国政の政権交代でも思ったよりも世の中が良くならない事を知った以上、誰かに期待することではなく、自分たちで出来ることをやるしかないのだと思います。

 自分たちが欲しいものは自分たちが作り上げる、まっすぐな気持ちでの取り組みは、これから必要な事です。特に「子育て」「環境保全」「食の安全」という課題が人を協力させる動機付けとなっていることは興味深いものです。「住みたいまちづくり」のモデルケースとなると思います。

                                           (2011年09月15日)

■文化芸術の経済効〜IT産業はコンテンツが勝負

 「メディア」は「文化芸術産業」ではないけれど・・・・

 「創造的産業」が特に国際的な競争の中で重要な要素となることには異論がないでしょう。下の図は経済産業省が「コンテンツ産業の現状とコンテンツ政策について」というレポートの中で産業としての規模を比較するために使っているデータです。およそ10年前の統計値です。

 コンテンツについて経済規模を図るときに、「出版」「テレビラジオ」といったメディアの売上を指標として取り上げるのは過去においては妥当な判断だったと思います。この10年でメデァを取り巻く環境は大きく変わってしまいました。

  地デジ化されて多チャンネルが提供されているテレビでは多くの時間帯でテレビショッピング等の「創造的」とは思えないコンテンツに埋められています。出版についても書店に並ぶ多くの本は、政治的プロパガンダや試供品サンプルの包装紙のような雑誌によって占められています。メディア産業には創造的なコンテンツを生み出す力は無くなっています。

 創造的なコンテンツ発信の場は急速にWEBに移行しています。下図の2000年時点での創造的産業の産業分類を見ても、多くはITの世界に移行しています。

 国内のIT産業はコンテンツ産業という意識はない

 アメリカは別格としてアジアの「創造的産業」は2000年の時点で日本を上回る就業者比率でした。アジアでは既存のメディアが発達途上であったが為に新しいメディアWEBなどのIT産業が「創造的産業」の担い手を吸収する余地があります。
 
 日本のIT産業、特に大手企業には自分たちがコンテンツ産業であるという意識はありません。基本は技術屋さんです。

 個人レベル、ベンチャー企業レベルではコンテンツの創造と結びついた動きができても、産業レベルではどうでしょうね。IT業界の「電通」という会社を紹介されたことがありますが・・・・・その会社は「人材派遣業」がコアコンピタンスなんだなと・・・思いました。

 視点を変えれば伸びる余地は沢山あるのに・・・。

 昨日任天堂の3DS新作発表が映像で配信されていました。この会社はコンテンツの創造を事業の中心としていると感じさせられます。例えば、マスコミが成長企業と持ち上げる携帯ゲームの配信会社のゲームは、既存のゲームのパチリが中心で、携帯ならでは遊びをどれだけ創造しているのでしょうか?料金課金システムが新しいビシネスモデルであったというだけの事です。

                                     (2011年09月14日)
図ー各国の創造的産業の対GDP比 比較  (2002〜2003年)  経済産業省
図75
図ー創造的産業群の就業者国際比較 (2000年)  「創造的産業群の潮流」より
図76

(「立法と調査」2011年9月号 「文化芸術の持つ可能性」筒井隆志氏 掲載数表からグラフ作成)

■都心の利便性での飲食の売上はどこに消えたのか?

 非物販のウェートが高いショッピングセンター

 阪急三番街、なんばシティ、ヒルトンプラザ、ホワイティ梅田は売上総額と物販売上の差が大きいので、非物販(主に飲食だと思います)のウェートが高い店舗です。

 2008年の売上と比較した減少金額を分析すると、阪急三番街、ホワイティ梅田そして、ヒルトンプラザでは非物販=飲食の売上減少額が大きくなってます。
 ヒルトンプラザは別にして、三番街、、ホワイティ梅田はわざわざ出かける飲食店というより、立地がいいので利便性で選ばれることが多い店が中心だと思います。ホワイティはサラリーマン中心、三番街は買い物中の主婦やOLさん中心という違いがありますが、ある意味、流行廃りに左右される店ではないので、この店から逃げたお客さんがどこを利用しているかが気になります。

 大阪ステーションシティの開業は今年ですから、新しい駅ビルの影響ではないでしょう。(平日も混み合っているそうですが)

 阪急百貨店の建て替え工事が梅田の人の流れを変えているのでしょう。郊外で西宮ガーデンズが開業した事などにより、都心への来街頻度が減っていた事も影響しているのでしょう。

                                     (2011年09月13日)

図ーショッピングセンター売上 〜物販売上と衣料品売上(2010年)
図77
図ーショッピングセンター売上2008年か2011年の減少金額 〜非物販の減少が大きい三番街、ホワイティ
図78

(繊研新聞データより当社作成)
■団塊女子が観光市場をけん引する?市場ボリュームが大きい60代女性

 観光旅行におけるボリュームゾーンは60代女性?

 観光目的の旅行消費額は宿泊で約1.4兆円(四半期)、日帰りで5,500億円といわれています(観光庁)
 そのうち60代女性は宿泊で1,597億円、日帰りで837億円と他の年代に比べて高い数値を示しており、ボリュームゾーンと分析されています。

 参加者数が多いのがその背景にあります。消費単価は前後の年代に比べて高くはないのですが、参加人数が多いのがボリュームアップの要因です。

 韓流ブームを支えているのもこの年代なのかもしれません。人数が多く、活動力もあるので、消費単価の低さはカバーできるかもしれません。

 良いものにお金を使ってくれるのは、50代、70代の年代の女性ですので、自社の戦略との適合性を考えて評価すべきでしょう。確かにボリュームは魅力ですが、たとえば宿泊観光の飲食費は60台は50代の半分です。

 男性では30台と50代に宿泊観光の山があります。土産・買い物と飲食費にお金を使っています。

 3月以降は様相が変わっているかもしれませんが、外国からの観光客に期待ができない以上、性年代別の意外に大きい違いに着目して、観光商品の開発をきめ細かく行う必要があります。

                                      (2011年09月12日)
 
図ー2011年1〜3月観光目的の旅行の消費動向(観光庁)
図79
図ー2011年1〜3月の観光目的の旅行消費額
図80
旅行・観光消費動向調査(2011年1〜3月)観光庁
■大手航空会社のLCC参入と百貨店の脱百貨店戦略

LCCへの大手航空会社の取り組みの背景

 LCC(ローコストキャリア)への大手航空会社の参入が話題になっています。今月の月刊JTMレポートに「日本におけるLCC成功の要件とは」という記事が掲載されていますが、百貨店業界の「脱百貨店戦略」にも通じる課題が指摘されている点が興味深いのでポイントをご紹介いたします。

 今年2月にANAが香港の投資会社と本邦初の本格的なLCC「ピーチ・アビエーション」を設立し関空を中心に国内線の運行を決定しました。また7月にはマレーシアのLCC「アアアジア」と共同で「エアアジアジャパン」を設立し、成田を拠点に国内線、国際線の運行を開始すると発表しました。
 またJALも「ジェットスター」等と「ジェットスタージャパン」を設立し、来年末までに運行を開始します。

 大手航空会社がこぞってLCCに参入するのは空港整備が進み発着枠が拡大する中で、低運賃運行で需要開拓を狙う意図があります。放置するとアジアなどの海外のLCCに市場を侵食される可能性があります。

 従来の航空会社の業態では、コストを比較的気にしない業務用旅行やマイレージ会員を中心に質の高いサービスでプレミアム需要を獲得します。一方で消費者には簡素なサービスでも低価格を求めるレジャー市場を中心としたニーズがあります。海外であるようなバス代わりの利用と割り切れば、機内サービスなどは最低限で充分です。

 ターゲットと需要機会を絞り込んで経営の効率化と市場への適応を図る戦略なのです。

 価格が高くなりすぎてサービスの内容が一部の顧客のニーズとずれてきた百貨店さんが、若者向けの専門店ブランドのゾーンを導入したり、大型専門店をテナントとして導入するのに似たパターンです。価格のこなれた専門店ビルに利用客が流れてしまえば、将来の顧客予備軍も百貨店に寄りつかなくなっています。

 大手航空会社LCC参入の失敗要因

 従来、大手航空会社がLCCに参入して失敗してる事例が多くあります。既存の航空会社の手法、成功体験を持ち込みLCCの手法と足して2で割るようなやり方をしたため、満足なコスト削減にいたらなかったということです。グループ内の「過剰人材」の受け皿として利用するとLCCの機能が果たせなくなります。

 成功している「ジェットスター」は「カンタス航空」が創設したものではなく航空ベンチャーが設立したものです。カンタスの信頼感や機材などの基礎的なインフラを活用しながら成功したので人材交流はほとんどありません。

 百貨店の都市型SC化の課題

 百貨店が弱い部門や市場についてテナントを導入する都市型SC化は避けられない課題です。梅田では大丸にその傾向が顕著に現れています。

 テナントを管理する不動産事業のスキルや目標は小売業とは違ったベクトルを持ちます。
テナント管理が中心になったある店舗ではスタッフが商品に関心を持たなくなる傾向が現れると言います。

 例に挙げた大丸は経営改革で関節業務を合理化して店頭の接客時間を重視するための制度改革を行ってきました。少人数でテナント管理を行う「効率化」とはあきらかに違う方向性を向いています。

 「うふふガールズ」や梅田の店舗をみても「SC」部門のウェートが高まっているにも関わらず、最新の組織図にはそれが反映されていません。

 百貨店店舗のラインにぶら下がるのではなく、別の事業部門、できれば{島屋の東神開発にように}別会社の組織で運営されるべきでしょう。将来的にはイオングループの収益源がGMSではなくモール運営であるように、都市型SC運営会社の中の百貨店部門として逆転された位置づけになる事を視野にいれるべきでしょう。

 おそらく銀座松坂屋の建て替え構想はそれに近いものになるはずです。

 既存の百貨店事業の純化のためにも、戦略にあわせて組織設計を再構築するべきなのです。

                                     (2011年09月09日)
■銀座の大型開発が進む〜観光客ばかりでない集客を

 銀座・有楽町が若返る

 銀座といえば東京のOLさんの利用率ナンバーワンの商業集積としても、歴史文化からも日本を代表する街です。エリア内の1日の乗降客数は92万人といわれています。

 海外ブランドの路面店が軒を連ねていますが、リーマンショック以後はファストファッションの出店が目立ちます。昨年の有楽町西武の閉店が話題になりましたが、このエリアは老舗専門店の店舗は多いのですが、百貨店のオーセンティックな大型店は意外に少ない地域です。三越銀座店が改装でその路線を目指していましたが、規模は大きくありません。プランタン銀座や松屋といったOLさんをターゲットした百貨店が強い地域です。

 松坂屋は改築しますが家電量販店のラオックスをいれたり、ファストファッションのフォーエバー21を入居させるなど中国人観光客を意識したショッピングセンター型の店になっています。改築後もその路線が強まるのかも知れません。あの三越でさえ苦戦しているのですから首都圏でブランド力のない松坂屋、大丸では「旗艦店」となる店は難しいと思えます。阪急もメンズに特化した売場に業態転換します。

 
 ルミネが街を変える

 都市型のショッピングセンターでは一番勢いのあるルミネが銀座をより一層若返らせるでしょう。銀座・有楽町は渋谷、新宿とは違ったテイストの若者の街になっていくのかもしれません。西武跡が一時噂のあった家電量販店でなくて良かったですね。中国人観光客は回復基調にあるようですが、今回のように何かのきかっけがあると一斉に引いてしまうのでは、ちょっと気をつけないといけません。

 今後は規模の大きい松坂屋跡の開発も気になりますが、街のターゲット的にはモザイク銀座跡の東急不動産の商業ビル開発の方向性が注目されます。

                                    (2011年09月08日)

図81
※ギンザコマツビルの開業が2012年1月になるという情報もあります
※2010年には銀座松坂屋にラオックスが出店〜中国人観光客対象の店舗
 銀座初の家電量販店と話題に・・・有楽町は銀座とは「違う」のでしょうね
■外食産業のお国柄〜ジェトロサービス産業基礎調査から

 カジュアルレストランに復活の兆し〜アメリカ

 アメリカの外食産業の8割は従業員19人以下の小規模企業が占めています。ファーストフードやレストランチェーンの発祥の地であったりするのですが、屋台や家族経営の小さな店が圧倒的に多いようです。

 アメリカの外食産業のトップはマクドナルドで売上高227億4,470万ドルで利益が45億5,100万ドルと利益率が2割となっています。2位のヤムブラウンズは「KFC」「タコベル」「ピザハット」の他に「A&Wレストランズ」「ロングジョンシルバーズ」などのブランドを持っているのですが、売上108億3,600万ドルに対して利益が10億7,100万ドルとなっており、利益率は9.8%ですから、マクドナルドの利益率の高さがよくわかります。
 3位はスターバックスコーヒーで97億7,460万ドル。利益額は3億9,080万ドルと利益率は低くなっています。
 スターバックスは他産業との連携に熱心で、ホテルグループのマリオットホテルインターナショナルと組んだり、書店チェーンのバーンズ&ノーブルの店舗内のカフェに出店したりしています。

 景気低迷はまだまだ続いていますが、安くてサービスの早いカジュアルレストランには人気が集まっています。

 「オリーブ&ガーデン」アメリカ最大のイタリア料理レストランチェーンはおかわり自由

 「オリーブ&ガーデン」は外食産業売上4位のダーデンレストラン社の経営する700店舗と全米最大のイタリア料理チェーンです。30〜40代の女性が主要顧客で、安くてボリュームのあるメニューを売り物にしています。
 パンだけでなく前菜のサラダとスープ、パスタまでおかわり自由です。

 アメリカナイズされたイタリア料理でパスタは良く茹でてありチーズはたっぷりかかっています。アメリカ人好みの揚げ物も多く高カロリーなメニューが中心です。だからこそアメリカ国内では広く受け入れられたのかも知れません。

 イタリアトスカニー地方の家庭の夕食をイメージして「人は、日常から離れリラックスし、大事にされていると思えるような心癒す場所を探している」という行動心理学者のアドバイスに従い「ここでは皆がファミリー」をスローガンにしています。

 名物メニューがラザーニャのフリッターで1,030カロリー・・・・・アメリカのアラフォー女子はよく食べるのですね。

 飲み屋から食事中心の飲食店へ〜ドイツではトルコ系のスナックが伸びている

 ドイツでも外食産業は家族経営の小規模店が多いようです。飲食店では飲み屋やバー、ディスコが減少し、食事中心の飲食店・・とはいえ小規模なスナック類ですが・・・が伸びています。

 ドイツで人気のあるのはマクドナルドなどのファーストフードの他、トルコのスナックである「ドェーナー」(おそらくケバブと呼ばれている、そぎ切り焼き肉のサンドだと思います)、カレーソーセージ?、ピザ、アジアフードだそうです。消費者はスナック支出の33%をドイツ的なスナックに、25%をトルコ的なスナックに支出していると言います。
 「ドエーナー」ケバブは約4ユーロで通常のレストランの半分ぐらいの支出でパンにたっぷりと野菜と肉の挟まったサンドイッチが食べられます。トルコの移民が多いのが普及の理由でしょうが、ビッグマックが4ユーロなので野菜が多い分ヘルシーに思えるのかも知れません。

 景気が悪くなると外食費を切り詰める傾向があらわれます。現在外食産業で最も強いトレンドはテイクアウト、特にクィックサービスのパン屋や肉・ソーセージ屋が注目されています。

 都市部の若い層は、食事を外食でしかも軽食で済ませる傾向が強いそうです。ベルリン住民の半数が一人暮らしですから、日本で言う「中食」や「軽食」の市場が大きくなるのは当然かも知れません。

 ジェトロが海外各国のサービス産業に関しての調査報告を発表しています。小売業、外食産業、対面サービス、教育などアメリカやヨーロッパだけでなくアジア各国の特性をまとめているので、比較すると面白いです。

 小売業、サービス業も国内だけでなく海外で利益をあげていく戦略が必要ですから、これからにそなえてバックグラウンドをあらためて整理しておくの事も必要でしょうね。

                                  (2011年09月07日)
■開業半年を迎えたJR博多シティの好調の背景

 9月5日の記者会見で開業半年間の動向があきらかに

 全館の来店客数は半年間で3,068万人で想定の66%増になっています。1日あたりの来店客数も平日14.1万人、休日22万人と想定の10万人を大きく上回ります。
 開業後6月には天神地区のセール攻勢もあって400万人を切る位に落ち着いていたのですが、7〜8月の夏休みはまたペースを戻しています。

 アミュプラザ博多では9〜10階の飲食店街が好調で全館売上げ191億円の内、45億円を稼ぎ出しています。雑貨のウェートも高いのが駅ビルの特徴です。JR大阪ステーションシティ「ルクア」の売上構成比は公表されていませんが、来店客の内「雑貨」と「食品・レストラン」で62〜66%を占めていると、中山社長がインタビューで語っています。

 利用年代も40代までで6割を超えています。来店客数が想定の66%増なのに対して、売上は計画比20%増(アミュプラザ)、8%増(博多阪急)となっていますから客単価は想定よりかなり低いモノであることがわかります。

 博多阪急は食料品が好調

 入店客数が想定の1.5倍の1,820万人。売上は計画比8%増の200億円。年間目標が370億円ですから売上は好調ですが客単価が低いことは確かです。食料品の構成比は28%。梅田阪急に比べれば食料品の比率は高いように思えますが、福岡市内の百貨店(郊外店含む)の食料品の売上構成比はだいたい28%前後ですから特に食品に偏っているというわけでもありません。平均的です。

 梅田と違って福岡では新参者ですから、食料品などで店に馴染みを作ることまでは成功といえます。若い層を中心にファッション関連の取り込みを強化する必要があります。秋以降クレジット会員の拡大に取り組むそうです。

 全体的に、福岡県外客は3割にとどまっているようで、通勤通学などで定期的に駅を利用する若い世代を中心に支持が広まっているようです。

 駅立地の商業で若い世代の客層の郊外店との競合にナーバスになる人もいますが、あまり気にする必要は無いと考えています。

                                          (2011年09月06日)
図ーアミュプラザ博多売上構成比
図82
図ーアミュプラザ博多来店客層
図83

図ー博多阪急「食料品の売上げ構成比」 28% 都心店と郊外店の中間のバランス
図84
9月5日の発表資料  他店の売上げは百貨店調査年鑑、ストアーズレポート等掲載資料
■大阪ドーム周辺がようやく動き出した

 フィレオ大阪ドームシティ 6月にオープン

 京セラドーム大阪に隣接した大阪市交通局の跡地に、大和ハウス工業によって「フィオレ大阪ドームシティ」がオープンしました。大阪の西の拠点として期待されていたこのエリアも阪神なんば線の開通で利便性がより高まり、開発がようやくスタートしました。

 「フィオレ大阪ドームシティ」は健康・スポーツをテーマに15の店舗で構成された複合商業施設です。「ウェルネスコンプレックス」をコンセプトに健康・スポーツ・安心をテーマに、フィットネスクラブ、ボウリング場、調剤薬局(隣接地に多根病院があります、その他飲食店やしまむら、西松屋などの専門店で構成されています。

 飲食+ボウリング駅工事で取り壊された「パドゥ」の店舗構成に似ています。

 延べ床面積は14,123u。売上げ目標は年間35億円です。デイリー商圏は1km圏4.9万人。ウィークリー商圏は3km圏33万人と設定されています。マンスリー商圏は5km圏75万人・・・は少欲張りすぎでしょう。ただ、隣接する大阪ガス所有地の計画が進めば、エリアとしての集客力は高まるでしょうね。


  2013年にはイオンを核としたショッピングセンターと大阪ガスの商業ゾーンが開業

 ドームに隣接した大阪ガスの敷地では28,00uの敷地でイオンを核としたショッピングセンターが、13,000uの敷地に大阪ガスの情報発信拠点を核とした商業ゾーンが計画されています。少し、中断していたのですが、2013年をめどに再起動したようです。

 大阪市内のイオンのショッピングセンターはFM局に取材したときも集客力を評価し、情報発信拠点として期待されていました。

 この商圏は大型店の空白地帯でもあり、生活圏を背景とした売上は見込めますし、さらに広域のアクセスや集客装置もあるので「イオン」の顔として新しい挑戦に期待したいところです。
 大阪市内では鶴見とか福島に大型施設がありますが広域に注目される都心のポイントに「イオングループ」の顔が見えるのは初めてです。イオンにとっても大事なプロジェクトだと思います。

 

                                          (2011年09月05日)

■バームクーヘンと明太子〜農から発信する食の提案

 明治26年創業の新しい醤油会社がタレでブレイク

 明太子の通信販売や自然食レストラン「茅乃屋」の母体である、「くばら醤油」は明治26年の創業ですから醤油メーカとしては新しい会社です。
 1980年頃からタレなどの調味料のOEM販売をはじめ、1999年に発売した自社PB商品「やきとり屋さんのキャベツのうまたれ」で全国的なヒットをとばし転機を迎えます。

 本当に美味しい明太子

 1989年には本当に美味しい明太子を作ろうと「椒房庵」といブランドで、一本釣りされたスケトウダラからとれる厳選されたたらこでつくられた「明太子」を岩田屋天神店で発売します。
 原価が高いため、当初9年間は赤字であったといいます。94年には通信販売もスタートしています。明太子の他に「天然出汁のパック」も人気で、九州のギフトの定番でもあるようです。

 2002年にはスローフーズ課を設置し、2004年には農業生産法人を立ち上げて農作物の生産も開始しています。食品の味、原材料にこだわると、農産物の生産まで手を伸ばす必要があります。もともと醤油の製造も農家かから始めていますから、農作物への想いは特に強かったのだと思います。

 博多から車で30分。明治の家を移築した茅葺きの自然食レストラン「茅乃舎」

 2005年には、糟屋郡久山町医猪野に西日本最大級の茅葺き屋根を持つテーマレストラン「茅乃舎」をオープンします。(九州では郊外にこんな風にお店を構える事例が結構ありますね)

 自家製の農産物で作られたメニューにの一環として別棟でやはり地域の素材にこだわった「バウムクーヘン」や「コンフィチュール」も販売されているというわけです。

 九州は自然の恵みが豊富ですし、都市と生産地が近いのでこのような業態が生まれてくる背景があります。
 いきなり「東京」でなく地方の拠点都市だからこそ出来ることです。

 「茅乃舎」の店舗は博多駅や東京ミッドタウンにも出店しています。

                                          (2011年09月02日)
■空港で買い物をしているのは中国、台湾人の観光客?

 ロシア人は刹那的な快楽を求める

 テレビでも紹介されていましたが、今世界で一番消費活動が盛んで海外旅行にもお金を使うのはロシア人だと言います。観光庁の調査で日本に来日する外国人で1人あたりの消費額が一番多いのもロシア人で21.7万円。その次はフランス人で17万円。三番目は中国人で15.3万円です。韓国人は6.7万円と最も少なくなっています。(台湾人 8.7万円、香港人8万円 来日慣れした国はあまりお金を使わなくなります)

 来日人数で言えば、ロシア人、フランス人は少ないので、やはり中国人観光客が一番重要なターゲットになります。

 ロシア人がお金を使うのは、インフレを経験して「通貨を信用していないからだといいます」お金があれば使って楽しむとか・・・・・・。

 中国人が買い物をする場所は

 中国人が買い物をしている場所は百貨店、ショッピングセンターの他に、家電量販店、空港の免税店が多いのが特徴です。
 成田や羽田の商業施設の高い売上は中国人観光客が支えているのでしょうね。

                                        (2011年09月01日)
図ー国籍別買い物場所
図85
観光庁「訪日外国人の消費行動調査」2011年5〜6月
 8月
■「ダイバーシティ東京」台場に劇場型都市空間が誕生

 東京台場 青梅Q街区の名称が「ダイバーシティ東京」に決定

 お台場に新しく建設されるビルは敷地面積3万3,000u、14万2,000uの商業施設と6万4,800平米のオフィスビルが建設されます。(三井不動産、大和ハウス工業、サンケイビルの共同事業)
 
 コンセプトは「劇場型都市空間」・・・・フジテレビが常時イベントを開催するフェスティバル広場があるそうです。関西の放送局では廃れた夏休みイベント「お台場合衆国」を」のようなものを通年でやるのでしょうか?三井不動産が運営する商業施設に「新ゼップ・トウキョウ」(仮称)が入るので音楽イベントではないでしょうね。韓流タレントのイベントかな?

 その他にもエリア最大のフードコートやボウリング場、大型衣料品専門店が出店するそうです。

 イベントの仕掛けなどで集客するのは中々大変ですが、コンテンツ、ノウハウを持つテレビ局と音楽ホールという容れ物があるので、仕掛けの種が尽きることはないでしょうね。

 この手のイベントで集客する施設は継続していくのが大変です。大阪にあった「道頓堀極楽商店街」も結構、力が入っていましたが,あっという間に無くなってしまいました。(パチンコ屋さんが本業に回帰)、そういえば新世界の遊園地「フェスティバルゲート」もすぐに無くなりました。(これもパチンコ屋さんになるそうです)イベント頼みの施設は賞味期限が短いという前提で事業計画を組んだ方がいいでしょう。

 台場は近場の「リゾート地」

 台場の来訪者は、ファミリーと、恋人・友人のカップルに2極化しているようです。午前中に来て夕方に帰るファミリー客と夜遅くまで滞在するカップル客のニーズをサービスに反映しているのが開業10周年を迎えた「アクアシティお台場」です。午後5時までは3000円の買い物で駐車代金無料〜車で来街するファミリー客への配慮です。夜景を背景に無料の写真撮影・・・カップルへの配慮です。テーマは「東京リゾー島」。昔,バブルの時代にはやった「アーバンリゾート」に比べるとぐっと庶民的です。例えば、「デックス東京ビーチ」の集客の目玉は「東京たこ焼きミュージアム」「トリックアート迷宮館」「マダムタッソー東京」(期間限定の蝋人形館)です。

 トリックアートは面白いのですが1度見たら充分ですし、お金を払ってまで見るモノかどうか意見が分かれるでしょう。

 その他にも「大江戸温泉物語」(温浴施設もありますし、確かにこれだけ揃えば結構退屈しないかも知れません。イベント次第ですが。

 震災以降、中国からの観光客は減少していますが、近場で楽しみたいいう近隣の住民の「リゾート」として楽しそうですね。

 ヴィーナスフォートも地元住民対象のテナントを入れて、販売員の研修を行っています。

 ファミリーのお出かけスポット1位は「池袋」?

 記事の中で紹介されていた訪問者数ですが、ファミリーの1位が「池袋」というのが面白いですね。百貨店が2つあるし、メトロポリタンプラザもルミネに変わって好調ですし・・・街並みは個性的ですし。

 考えられる理由として一番大きいのは今年8月に全館リニューアルした「サンシャイン水族館」の存在です。(ナムコナンジャタウンもありますし)2009年の入場者総数は70.7万人。都市型水族館としては「エプソン品川アクアスタジアム」の82.3万人には及びませんが、立派なものです。

                                               (2011年08月31日)
図ー1都3県の居住者のお出かけスポットベスト10  訪問者人数(万人)
(ファミリー)                      (カップル)
図86
繊研新聞8月30日号に掲載された「日経リサーチ首都圏センサス」 2010年10月の調査
首都圏のモニターへのアンケート調査からの推計値
■中国におけるインターネットの影響力〜中国人は誰を信用するのか?

 マスコミを信用しない中国人

 先日の鉄道事故でも、一旦埋めた鉄道車両を掘り返すきっかけとなったのはインターネットでの映像配信でした。マスメディア上での情報は政府当局が規制・コントロールしていることもあり、消費者はあまり信用していないようです。
 中国人が情報を得るために最初に利用する媒体として圧倒的にインターネットのウェートが高くなっています。CCTV(中国中央電視台 NHKのようなモノでしょうか)は9.1%と3位になっています。ちなみに媒体接触時間でもインターネットはテレビに継ぐ、時間数で利用しています。新聞は普及率も低く、接触時間も短くなっています。

 広大な国土を持つ中国では多様な人種、文化が混在していることもあり全国一律に伝わる媒体はインターネットと言うことになるのでしょう。
 世界主要国の普及率でもブラジル、ロシアと並んでいてIT大国とされているインドに大差を付けています。ネットユーザー数では世界最多の3億8,400万人で日本の4.2倍です。

 今後、内陸部でも進む普及
 
 中国国内でも北京、上海などでの普及率は高いのですが、内陸部ではまだまだです。それでも2割を越えていると影響力は大きいです。北アフリカのジャスミン革命〜ツィッターやフェイスブックを通じた情報の拡がりによる「政権交代」が記憶に新しいのですがあの地域でも普及率はそんなに高くないのですが、ネットカフェなどが普及していて、ネットからの情報が口コミで国民に伝わったと言います。

 ジェトロのレポートでは中国では全国を網羅するマス媒体が信用されていないのでWEBを使って、影響力の高い人から発信するのがプロモーションとして有効という趣旨の分析を行っています。読者を通じた二次的な口コミの拡大にはイベント等の別の仕掛けが必要であるという事でした。

 基本的に「口コミ」を拡大するのがインターネットメディアの強みです。中国のような規模の大きい国で「口コミ」が最有力というのも面白い現象です。

                                  (2011年08月30日)
図ー中国人が情報を得るために最初に接触する媒体の比率
図87
図ー世界主要国のインターネット普及率比較(2009年末)
図88
図ー中国各省のインターネット普及率

図89

(日本貿易振興機構 「中国におけるインフルエンサー実態調査」2010年9月)

■店の中しか見ない店は地域インフラの価値を放棄している〜黒ネクタイを置かないコンビニ

 都市の買い物難民・・・・必要なモノが揃わない梅田の不条理

 梅田がオーバーストアで飽和状態だという人はきっと、買い物をする気で梅田を探し歩いたことが無い人だと思います。・・・・たぶん。

 この夏、さすがにクールビズを導入しようと当社のドレスコードを緩めました。(昨年までは盛夏でもジャケット、ネクタイ着用) 探した商品は台襟付きの清涼感のあるポロシャツ、クールタイプのジーンズです。

 スーパースーツカンパニーなどの量販店には確かに、機能の高いシャツやポロシャツがありますが、どうしても「制服」感がぬぐえない・・・若い人には実用的でいいのかも知れませんが、中年男性にはそぐわないものです。
 
 百貨店ではブランド別のショップには少しずつありますが、価格が高い割にセンスが良くないというか、ハッキリ申し上げておしゃれ感がない。・・・セレクトショップは若すぎるかチープすぎる。(その意味では伊勢丹が最もましなのですが)

 ジーンズ売場にいたっては百貨店の中に紳士向けのジーンズ売場はもうありません。(某メンズ館の案内のお姉さんはわざわざジーンズを「デニム」と言い換えて・・・・売場の隅っこに少しだけある事を教えて下さいました)4つも百貨店があるのに・・・。いったい誰が飽和状態のオーバーストアなんて語っているのでしょう。

 理由は推測できます。中年男性のカジュアルに近い服は売れないのです。セレクトショップが中年向けにショップを作ったこともありますが、あまりうまく言ってないです。ゴルフウェアか高級ブランドのショップで購入できる富裕層かでなければ、ユニクロかスポーツ・アウトドアショップで購入すればいいと割り切っているのでしょう。百貨店の客ではないからという理由で・・・。
 そのことによって自ら、百貨店の客で無くしていることには気がつかないのでしょうか?メーカーがそのような商品を作っていないというのが実際的な理由でしょうが,お客様により近いのはメーカーでしょうか?小売り店でしょう。

 自分の店の売場効率の数字しか見ていないので、そういった「市場の需要」があっても対応しない商品がどんどん増えていきます。「地域インフラ」「社会的なインフラ」としての役割を果たせない百貨店は、過当競争が原因ではなく、顧客から見放されて淘汰されていくでしょう

・・・何故「ダイシン百貨店」が色々なメディアで繰り返し紹介され、評価されているのでしょう。

 黒ネクタイをおかないコンビニ・・・・POSデータの誤った活用

 急なお葬式があり、出先で黒ネクタイを探すことになりました。JR駅のKIOSKには置いてあることは知っていますが、残念ながらJRは通り道では使いません。
 こんな時こそ、コンビニエンスストアだといくいつかのコンビニに飛び込みましたが、どこのコンビニにもありませんでした。

 いくらなんでも葬儀場の近くのコンビニにあるだろうと探しても無い・・・。POSデータを「分析」して「死に筋」を排除した「成果」でしょう。店の内部の効率は上がって「利益率が改善」されたように見えるかも知れませんが、地域の人にとっての「地域インフラ」としての存在価値は著しく毀損されています。

 「ダイシン百貨店」や九州のホームセンター「ハンズマン」はお客様から要望のあった商品はほとんど揃えています。地域にとって無くてはならない店として「競争力」は高いですし、価値を感じるからマスコミにも何度も紹介されるのです。

 コンビニエンスでも立地に合わせて品揃えをして成功している店はありました。サンクス・ベイエリアの70店舗は、セブンイレブンが日商67万円なのに日商150〜200万円以上の店がごろごろとあるといわれていました。海で泳げるエリアでは様々な草履をアソートして販売。キャンプ場の近くではローソクからパジャマまで。
 トラック運転手の多い地域ではアダルトビデオ、アダルト本。工事現場の近くでは1回切りで消費される350mlの酒類。地域の需要に応える店をつないでナショナルチェーンにする考え方で本部のために店があるという発想では無いことが強みです。

 お客さんの方を見ないで、「売上結果などの過去の数字しか見えない上司」の方を向いて仕事をしている限り、店舗は衰退していくことでしょう。

                                    (2011年08月29日)
■開業5ヶ月〜九州新幹線の影響

 地元金融機関の分析

 http://www.fukuoka-fg.com/tyosa/201109/all.pdf へのリンク

@百貨店の売上動向
 ・博多阪急を加えた福岡市内4社の売上増加率は20%=福岡市内の百貨店市場は2割拡大している
 ・既存の3店だけに限ると売上減少率4%=既存店の減少率以上に拡大している
 ・九州の他地区の百貨店の売上げ減少幅は小さい=他地区の市場を侵食しているわけではなさそう

 ・消費活動が活発化した可能性は低そうだ+外国人観光客もクルーズ等が中断中なのでプラスにはなっていない

 ・百貨店以外の業態が浸食されている可能性が高そうだが データはまだ揃っていない

AJR博多シティの求心力
 ・JR博多シティ(博多阪急、東急ハンズ、アミュプラザ博多)の来店層、購入層とも20代の男女が多い(株式会社ジーコム)
 ・福岡市は25〜29才の女性人口が男性人口を1割以上 上回っている、女性の多い都市
 ・3ヶ月以内の利用意向(リピート率)は8割と非常に高い=市場に完全に受け入れられている

B輸送手段に対するニーズ
 ・九州新幹線の乗車率は目標より低いが、利用者数は以前に増して増加している
  博多〜熊本35%増の218万7千人(3ヶ月)1日平均2万3,800人)
 ・影響を受けると思われた高速バス「福岡〜熊本」線は利用者数6%増
 ・人の移動のニーズを掘り起こした

 博多阪急 成功の理由(当社分析)

 利用者、購入者の分析を見ていて面白い傾向が伺えます。利用者・購入者とも50代以上よりも20〜40代の女性の比率が高いのです。
 逆説的ですが福岡市では百貨店ブランドとしての「阪急」は全く意識されていない事が逆にプラスになったのだと思います。
 
 おそらく百貨店ブランド商品も「博多大丸」「岩田屋」「三越」に押さえられていて集まらなかったのが良かったのでしょうね。阪急は伊勢丹のように自社のスタイルにこだわらないですから、現実的な品揃えになったのだと思います。

 利用者が「百貨店」と思って利用しているかどうか聞いてみたい所です。期せずして脱百貨店を果たせたのかも知れません。
20〜30代の購入率がアミュプラザより高いのですからね。
 
                                                  (2011年08月26日)
図ーJR博多シティの利用状況(女性)
図90
(株式会社ジーコム)

■増え続ける情報の中でお客様に確実に届くメッセージとは

 増え続ける情報流通量とそれにおいつかない消費(受信)量

 総務省の情報通信白書では2004年以来、通信や放送等で情報の流通量に比べて、情報消費量(認知された情報量)の伸び率は低くなっています。増えた情報はゴミとなって受け取られることなく消えていきます。

 情報通信産業の市場規模では通信、特に移動体通信の市場規模は伸びていますが、民間放送は横ばいに近い状態です。気になるのは「映像・音楽・文字情報制作業」に分類される映像情報制作・配給、新聞、出版、ニュース配給などの市場規模縮小傾向にあることです。

 地デジでチャンネル数は増えていますがコンテンツの内容は薄くなっています。公共放送でさえ、「ネットの動画投稿サイト」に投稿される素人の無料の映像で番組をつくっています。

 統計データはそのような現実を数字で表しています。

 お客様に確実に届くメッセージは?

 お店にしても、商品にしても企業のメッセージをお客様に確実に届ける必要があります。情報の洪水の中で受け止めてもらうのにはやはり、受け手が自分に向けて発信されていると思えるメッセージを伝えることと、受け手の方から探してでも求められるコンテンツの提供が有効です。

 ネットなどの「通信」は一見有効そうですが、例えばネット通販でものを買った後に、ブロックしても送られてくる山のようなダイレクトメールは開封せずにゴミ箱行きです。

 景品目当てに購読していた企業のメルマガも内容がつまらないので解約しています。手法としてはCRMという考え方は正解なのでしょうが、ファンでもない企業から大量に送られてくるメッセージは、多くの企業が同じような手法をとっているだけに陳腐化しています。

 その中で、まだ読み続けているのはWEBサイトでは糸井重里さんの「ほぼ日刊イトイ新聞」、通販雑誌では「通販生活」などの無料か(ほぼ無料に近くても)きちんと編集されたコンテンツです。リクルート「R25」は対象年代が離れているのと、リクルート風のパブリシティ臭の強い記事が面白くないのであまり熱心な読者ではないのですが、たまに読みます。

 媒体選択や手法の問題ではありません。メール送信や、手書きのダイレクトメール送付などの定番となったアプローチはコンテンツから見直し必要があるでしょう。

                                    (2011年08月25日)

図ー流通する情報量と消費される情報量の前年比伸び率〜流通する情報量の拡大に追いつかない情報の受信
図91

図ー日本の情報通信産業の部門別実質市場規模〜映像情報制作、新聞、出版、ニュース配信などコンテンツ制作業は縮小
図92


総務省「情報通信白書 平成23年版」
■強いお店の理由〜お客さんが見えている店が強い

 来館頻度を高めた「たまプラーザテラス」

 「たまプラーザテラス」は1982年に開業した「たまプラーザ東急SC」を前身とします。2006年の駅の再開発事業にともない。駅と一体となったSCとして生まれ変わって2010年10月に全館開業しました。
 「たまプラーザ東急SC」は、もともとは全館東急百貨店としても計画されていたようですが、高額品中心では収益は難しいとして専門店中心に運営されていたようです。

 日常的地域密着型施設として、ファッションテナントもデイリーカジュアルを対象にした専門店を中心としています。「ライフスタイルコミュニティセンター」をコンセプトに物販、飲食のほか保育園、学童保育、FMやテレビのスタジオを備えているのが特徴です。

 食料品の他に生活サービス機能を備えた事で地域住民の来館頻度が高まって客数が増えたことと、開放感のあるオープンモールが整備されたことで滞留時間が増えたことがプラスに働いています。


 面積が増えたので売上金額は増えて当然なのですが、 東急田園都市線沿線で二子玉川とも競合するにも関わらず、うまく棲み分けの出来る施設になっています。

 空港の商業のお客さんは・・・

 成田空港ターミナルビルの売上は705億円です。羽田空港のビッグバードの数字は公開されていませんが、約1,000億円といわれています。名古屋セントレアの商業施設は123.7億円ですから羽田、成田のポテンシャルがとても大きいことがわかります。

 同じような目的で移動中の人が多い事が、特異な市場を形成しています。例えば海外旅行用の水着の集積とか・・・・。

 お客さんが見えている商業施設が強い。これが2つの事例の共通点です。

 今後LCCが普及し、海外であるようにバスの感覚で航空機が利用されるようになると商業立地としての空港の価値はまだまだ高まる可能性があります。

 空港といえば空港周辺の開発について、空港をつくるまでは「エアフロント」の可能性について色々なプランが研究されていましたが。空港が出来たとたんにそんな議論がぱたりと聞こえてこなくなりました。

 空港を作ってしまえばいいのか?そんなことはないはずです。

 りんくうタウンの分譲に苦労されていることはよく理解していますが、進出したいと思わせるストーリーづくりが必要です。関空開業前は色々と知恵を絞ったのに工事が終わると静かになりました。

****************

 余計な事を付け加えると、梅田北ヤードのテーマである「ナレッジキャピタル」も、オフィスビルのテナントが埋まり、街開きされる頃には、誰も口にしなくなるかもしれません。・・・・そうならない事を心から願います。 活発に運営されており集客にも貢献されているようです。失礼いたしました。
http://kc-i.jp/about/ へのリンク


 飾りじゃないのよコンセプトは・・・・・・

 先日無くなられた小松左京先生が関わられた大阪万博でテーマとなった「人類の進歩と調和」は学識経験者などの突き詰めた議論の末に決定されました。決まった事で企業の担当者は「これでお題目が出来た」と実務に着手したといいます。
 「お題目」として棚上げして進めたかったのでしょうが、それは重要な成功の鍵でした。今でも伝説として語られるほどエポックメイキングなイベントになったのは「人類の進歩と調和」というテーマが隅々まで浸透していたからだと考えます。

 当時、泥沼化していたベトナム戦争、冷戦状態にあった世界。「進歩」の先に「調和」を目標として設定していたメッセージは今でも色褪せてはいません。誤解されている「未来学」も単に楽観的なバラ色の未来を描く「提灯持ち的な学問」ではなく、現実に絶望することなく長いレンジで未来を見据えて、大事なことの選択をしようというものであったと思います。

 「ナレッジキャピタル」については未だに良くわかりません。それでも自分たちがそれを選んだ以上、尻すぼみにならないようにして欲しいものです。浸透させるタイミングは多分、今だけです。頑張って下さいね。

                                                            (2011年08月24日)
■核店舗を含むSCのパワー比較〜2005年から2010年の変化

 売上を伸ばしているSC(核店舗含む)

 この5年間、多くの小売業が売上を縮小させている中で、売上を伸ばしているSCがあります。「ルミネ新宿」、「ルミネエスト」、「たまプラーザ」です。
 売上の減少幅の少ないSCは「相鉄ジョイナス」「ららぽーとTOKYO−BAY」「アルパーク」(広島)です。

 横浜駅前の「相鉄ジョイナス」の売上が断然トップですが、横浜島屋とSCがどのように連携しているかは不明ですが、上位15位のSCを見ていると、島屋はショッピングセンターとのコンビネーションが良いことが実感されます。島屋大阪店も核店舗ではないですが、「なんばシティ」、「なんばパークス」と共同販促や棲み分けを行っています。

 この年度ではまだ集計されていませんが大阪ステーションシティの「ルクア」と「JR大阪三越伊勢丹」も一体となったショッピングセンターとして集客しています。

 梅田地区のショッピングセンターのこれから

 阪急阪神グループも西宮の「阪急西宮ガーデンズ」では百貨店業態とSCの連携に成功しています。さて梅田はどうでしょう。内情はわかりませんが、優先順位がまだ見えません。どこで「阪急三番街」に手を付けるかのタイミングが注目されます。

  阪急百貨店の完成、うめきたの先行開発地域の開業時期には次の布石を打っておく必要があります。

                                       (2011年08月23日)

図ー核店舗を含むSC売上 2005年と2010年の比較  ※アンケート調査なのでイオンなど回答がなくなったSCももある
図93

図ー核店舗を含む売上上位15位 2005年〜2010年の変化
図94
(繊研新聞)
■10年間のショッピングセンターの変化

 2006年開業ラゾーナ川崎が上位に

 2010年度の売上では成田空港のターミナルビルがトップですが、利用者層が通常と違うので別格とすると、2006年に開業したラゾーナ川崎が686億円とトップにあるといってもいいでしょう。10年前は「川崎BE」が15位にランクインしていました。「川崎BE」2010年にも226億円の売上がありますから、川崎駅前には商業のポテンシャルがもともとあったのでしょう。東京のベッドタウンとして、また工業都市として人口密度が高い地域です。

 10年間のベスト15の顔ぶれを眺めていると、駅、ターミナル立地が安定していることと、アウトレットが強い集客力を発揮していることが伺えます。

 リーマンショックの後、強いダメージを受けたのは百貨店ですが、ショッピングセンターもまた大きなダメージを受けていました。(下図)

 六本木ヒルズの現状は?

 2005年に存在感の高かった「六本木ヒルズ」の姿が見えませんが、この繊研新聞の調査はアンケートなので、回答がなかった為です。森ビルから切り離されたので回答が無くなったのだと思われます。。
 この施設も通常のショッピングセンターとは利用者層、利用のされ方が違うので、その動向に注目していたのですが、オープンでなくなったのは残念です。リーマンショックのダメージは結構大きかったのかもしれません。

 核店舗を加えてみると様相が変わって見える

 この調査では核店舗の売上げを除く専門店集積の売上が集計されています。百貨店とSCが一体となっている店舗では合算した数字で競合との関係を見た方が正確に捉えられます。

 玉川高島屋SCは約917億円。阪急西宮ガーデンズで693億円。郊外ターミナル立地ではやはり百貨店業態が入ると強いですね。(当社算出値を掲載していましたが、繊研新聞にアンケート結果が記載されましたので修正します)

 百貨店業態の存続については悲観的な見方も強いのですが、郊外の鉄道ターミナルの良い立地を選べば,SCと相乗効果を発揮しそうです。

                                         (2011年08月22日)

図−SC売上ベスト15 10年間の変化  
図95

(繊研新聞  アンケートなので協力していない企業の数値は含まない 核店舗の売上げは除く)

図ー過去10年間の売上高前年比

図96
日本ショッピングセンター協会、百貨店協会、チェーンストア協会の集計
■フレームを変えて考えないと百貨店の再生はない

 コカコーラの再成長の伝説

 「選択の科学」(シーナ・アイエンガー)にコカコーラのCEOのロベルト・ゴイエズタの伝説的なエピソードが紹介されています。就任間もない頃上級副社長との会合に出たゴイエズタは、全世界のソフトドリンクの市場の中で同社が45%のシェアを獲得したと浮かれているのに対して、「何を持って成長とするか」という概念に異議をとなえてこう提起したそうです。

 「人間の1日の水分摂取量は」「世界の人口は」「ソフトドリンク市場ではなく飲料水市場全体で見た場合、我が社のシェアは何%か」その答えはわずか2%だったそうです。

 問題を違う枠組みでとらえ直すことによって、視野を広げ、独創的な考えかをするように経営陣にハッパをかけ1981年に43億ドルだった同社の時価総額は1997年には1520億ドルまで成長しました。現状の市場に対する考え方を変えるだけで成長の余地が拡がったのです。

 私たちが情報をどのようにとらえるか、またはどのように情報を提示するかによって、選択に対する見方や判断が大きく変わるようです。新しい情報に出会ったり古い情報を見直す度に、それが提示される方法(フレーミング)に影響されます。

 大阪2011年問題の競争のフレーム

 梅田への一極集中が新聞報道ではクローズアップされていました。縮小している阪急百貨店の売上げはどこに消えたか?私の元にも
問い合わせがありましたが、阪神間のターミナルに出店した阪急西宮ガーデンズ(西宮阪急)の存在が大きいと思います。開店当時、東京のファッションマーケティングの大家の先生の評価はさんざんでした。(JR三越伊勢丹の売上げを700億円とお見立てされた方です)

 何度も繰り返しますが、梅田の商業施設の集積力が増加するから梅田への一極集中が進むと事前に予測された方は、自らその予測のあやまりを検証されるべきだと思います。(梅田へのオフィスビルの集中が人の動きを変えるという効果はあります。どんな人が集まるかで、そこの商業の性格が決まってくるでしょうね)

 消費者は日常の生活行動の導線の中で消費する商業施設を選択します。
 郊外でも地域の交通拠点となる立地のショッピングセンターは好調です。(くずはモールとか泉北パンジョとか・・・)梅田のショッピングセンターはルクアや阿倍野キューズモールの開業の影響より、来街者の導線上の施設と競争しています。

 地方都市では、日常の生活行動の移動が自家用車をベースにしている為、車商圏での広域集客が可能になります。京阪神ではアウトレットモール以外では、わざわざ出かけてくる人を集客できないのです。
 
 かつては「梅田百貨店戦争」と呼ばれたように百貨店は百貨店の業態同士で競合していましたが、シニアを除く若い世代では百貨店とショッピングセンターの業態の違いを超えて競争の中にあります。

 百貨店の再生、特に地方百貨店の再生を考えるときに、競争相手が拡がっていることのマイナスだけでなく、自社の顧客という強みを活かすことを考えると活路が開けます。

                                        (2011年08月19日)
図ー梅田及び郊外のSCの売上(2010年)  ※ルクアは2011年の売上げ目標  単位:百万円
図97

(繊研新聞 ) 核店舗の売上は含まれていません。阪急西宮ガーデンズは百貨店を含むと売上は676億円になる。
■地デジ化の中で切り捨てられる情報難民

 テレビが無くてもネットで情報収集が出来る・・・・のは都会だけ

 地上波テレビはほとんど見ないという人が増えています。ユーチューブやニコニコ動画で動画コンテンツを楽しめますし、情報収集にはWEBの方がスピーディだからです。地デジへの切り替えでテレビを持たないという人がどれだけ増えるかが注目されています。

 とはいえ、ブロードバンドの普及率を見ると、都会と地方の格差が大きく開いています。特に東北と並んで西日本の普及率の低さが目立ちます。難視聴対策を兼ねたCATVもやはり都市部での普及率が高くなっていますが、福井県、山梨県、富山県、徳島県など一部で高い普及率を示す県があるものの、地域の格差はブロードバンド以上に大きくなっています。

 地デジ難民はチューナーだけの問題ではない

 都市部に住んでいると、地デジの問題はチューナーの普及で解決すると思いこんでいますが、実は地方によっては地デジの電波自体が配信されないまま放置されている地域があります。テレビを買い換えてアンテナを建てても今まで普通に視聴できていた放送が受信できないのです。何で? 地デジの電波の到達範囲が狭いので、地域によっては届かないままにされているのです。

 CATVがあれば解決する問題ですが、費用は自己負担ですし、下図のように地方部では普及率は低いのです。

 せめてブロードバンド回線があれば手だてはあるのですが、それも地方部ほど遅れています。

 この何年か続いている弱者の切り捨て政策の一環でしょうか?

 BS放送という手段はありますが、BSではローカルのニュースが少ないので地方の住民には役にたたないのですよね。

 とりあえず臨まれることは光回線のブロードバンドを全国に張り巡らせることでしょうか。通信で情報を行き渡らせて、かつ田舎でも在宅ワークが可能になりますからね。総務省はなんだかそのような政策を掲げていたような気がしますが。東北の復興に際しても情報インフラの重点整備は有効でしょう。

 都市に住んでいると見えないことはまだまだ沢山ありそうです。

                                                       (2011年08月18日)

図ーブロードバンド普及率,CATV普及率
図98
情報通信白書2011年 総務省
■2011年問題の前の大阪市内SC地殻変動

 2001年の勢力図〜まだ強力であった阪急三番街

 10年前のショッピングセンターの売上を比較すると、阪急三番街が突出していたことがわかります。「阪急村」という言葉もまだ残っていた時代です。2004年にはハービスENT、ヒルトンプラザウェストが開業し梅田のエリアの中でも西梅田地区の新しい動きに関心が集まります。2005年の売上高の減少幅は、難波ターミナルの「なんばシティ」や天王寺ターミナルの「天王寺MIO」に比べても大きく減少しています。

 2011年問題以前の課題

 今年5月に大阪ステーションシティが開業しました。新聞報道によれば大きく影響を受けているのはHEPファイブ、ディアモール大阪だといわれています。ルクアの売上げ目標は年間250億円。売上は好調なので300億円弱まで伸ばす可能性もあります。下図の2010年のHEPファイブ、なんばシティ、天王寺ミオの売上に肩を並べることでしょう。

 影響を受けているといわれている梅田のショッピングセンターはそれ以前から売上を縮小させています。確かに消費市場全体が縮小傾向にあるので、右肩あがりの売上増加は考えられない時代なのかも知れません。

 投資に見合った売上増が見込めないと考えるのであれば、売上が縮小しても利益を確保するという不動産運用の考え方もあるでしょう。ただし、市場の変化に対して対応する「変化」をしないと市場の中でのポジションを失い、「劣化」の進行が進むと不動産価値もなくなってしまいます。

 ちなみにHEPファイブは売上金額は大きく縮小していますが、賃料収入は横ばいです。変動部分は縮小しても固定部分のウェートを高めることで収益を確保しています。(阪急リート投資法人の決算説明会資料をご参照下さい)

 梅田の既存SCはテナントの入れ替えだけでは済まない再生が必要なタイミングだと思います。

                                           (2011年08月17日)
図ー大阪市内主要SC 売上高推移 2001年〜2005年〜2010年  単位:百万円
図99
図ー梅田の主要SC5年間の売上げ推移  単位:百万円
図100
(繊研新聞主要SC売上高ランキング)
■「マジョリティ&マイノリティ」現役女子大生のファッションユニット

 ダンスパフォーマンスでファッションを発信する女子大生ユニット「マジョリティ&マイノリティ」

 2005年、芸術系大学を卒業した「ikko」さんがファッション情報を発信していく手段として、各イベントで自作のTシャツを着てダンスパフォーマンスでアピールすることから始まりました。その活動を通じて女子大生をスカウトして現在24人の女子大生+OGのユニットになっています。08年にはセレクトショップへの卸売りが始まり、2010年には神戸岡本に自身のセレクトショップ「プレイルーム」を開業しています。

 「女子大生」をフックにしてファッション企業との協業が活発になって全国的にも注目されているそうです。「女子大生」ブランドは何時の時代も効くのですね。

 大学生をコンセプトにしたは「秘めた力をもっていて爆発力がある」「大学生は色々経験できる時期だし、自分の人生、世の中のこと、日本のことなど一番考える。普通は情報を受け散る立場になりがちだけど、そういう時期こそ発信する側に立って欲しい」ということです。元気がいいですね。

 神戸岡本は「読モ」(読者モデル)文化の発祥地で大学生の多い学生の街だから東京進出の予定はないそうです。
  〜繊研新聞8月8日の紹介記事より

 「女子大生」を売りにするのはあざといなあと思いますが、地域文化を活かして全国発信していく活動は支持したいと思います。・・・関西の文化発信のコンテンツとして有力かも知れません。

 現役女子大生の評価ではダンスはダンス研究会、ファッションは「服飾研究会」の方が優れているということで一刀両断で切り捨てられました。その学生達の発信も全国的になれば面白いかもしれませんね。

                                        (2011年08月11日)
 夏期休業のため次回更新は8月17日になります。
■WEB時代の「ノードストローム」、「ZAPPOS」の顧客作り

 次世代経営の最先端を行く最も尊敬される企業「ZAPPOS」

 「そのユニークかつ先進的な経営が、ハーバード・ビジネス・スクールほか各所で注目されている米国企業ザッポス・ドット・コム。日本では知られざる先進企業だが、「革新的な経営で急成長中の米国のオンライン小売である(靴を中心にアパレル、アクセサリーなどを扱う)」・・・・アメリカの靴ネット通販市場で三分の一のシェアを誇り今でも成長を続けている企業で、2009年にアマゾンに12億ドルで買収されたそうです」。

 その特徴は「社員・顧客・社会に熱愛される会社」でその徹底的な顧客サービスが話題になっています。「たまたま靴を売っているにすぎないサービス・カンパニー」とし事業が定義され、「年中無休24時間体制のコンタクトセンター」「発注の翌日に商品を届ける配送システム」「購入後1年以内であればいつでも返品を受け付ける返品ポリシー」・・・特にコンタクトセンターでは顧客を満足させるためなら何時間話してもかまわないというのが他にない独自性です。

 コンタクトセンターは返品や苦情処理対応の処理業務の窓口ではなく、それぞれの顧客との心のつながりを築く、個と個のふれあいの唯一の」感動体験が生まれることを目指しています。

 ザッポスの「コアバリュー」 共有される価値観は以下の10項目

1)サービスを通してWOW(と言いたくなる体験)を届ける
2)変化を受け入れ、変化をドライブする
3)楽しさと少し変わったものを創造する
4)冒険好きで、創造的で、オープン・マインドであれ
5)成長と学習を探究する
6)コミュニケーションによりオープンで正直な関係を築く
7)ポジティブなチームとファミリーの精神を築く
8)より少ない資源でより多くの成果を
9)情熱と強い意志を持て
10)謙虚であれ


 ザッポスの「顧客リピート率は75%、新規顧客の43%が口コミを通じた紹介顧客です。「顧客サービス」が「最も効果的なマーケティング」になっています。

 サービスの姿勢、顧客の向き合い方は「絶対にノーといわない百貨店」である「ノードストローム」に似ています。返品ポリシーや現場への権限委譲による顧客への徹底的な対応など・・・経営者の一人は8年間「ノードストローム」で働いていたという事です。

 ノードストロームウェイ

 「ノードストローム」は1901年にシアトルで靴の専門店として創業しました。1960年代には郊外のショッピングセンターに出店するアパレル中心の百貨店になっています。顧客サービスが卓越していることで有名です。

 「返品はいかなる事情においても上司の許可無く受け付ける」「お客様が求めている商品が売場にない場合ライバル店から購入してでも要求に応える」「自分の売上目標は自分で管理」・・・・等

 ノードストロームの仕組みの特徴はお客様との接点である「販売員」に権限を与え、誇りを持たせて自分で創意工夫するプロに仕立て上げる事にあります。アッパーミドルのお客様に対して百貨店としての理想のサービスを実現します。


 それに比べて2011年に「顧客が選ぶベストカスタマーサービス第一位」に輝いたザッポスのコアバリューを読むと楽しさとか冒険的とかいった言葉(例えばグーグルとかパタゴニアのような社風の匂いがします)にあるようにもっとカジュアルで「楽しむ」姿勢が強調されています。

 ネットで購入するような客層とはツィッターやメール、電話での接点になりますからよりフレンドリーであることが求められるのでしょうね。リアル店舗とWEB通販の違いでしょうか。

 ザッポス+ノードストローム  のキーワードで検索すると沢山記事が出てきます詳しくはそちらの紹介記事をご参照下さい。

 ザッポスがSNSをうまく活用していると聞いたので調べてみたのですが、告知、広告ツールとして使っているより、共感を創造するツールとして活用しているのだなと理解しました。


                                            (2011年08月10日)
 

■不動産投資の視点での商業施設観と商業者の持つ不動産事業の感覚

 投資において良い商業施設は

 今月の月刊プロパティマネジメント誌では「持続可能な商業施設とは何か」というテーマで特集が組まれています。不動産投資として固いと見られていたオフィスビルが競争の中で必ずしも安定した収益があげられなくなっている中で、運営の妙によって大きな投資がなくてもテナントの入れ替えで収益の上がる商業ビルに注目が集まっているようです。

 百貨店に出店することで付加価値をつけていた専門店事業者が路面店に出店するとしたら百貨店に支払っていたコストを不動産の賃料に回せるので、賃料負担力が増加し新たな不動産市場が生まれるという視点も納得が出来るモノです。

 梅田大丸について私の評価が厳しいのは目玉テナントである「ポケモンセンター」「ABCクッキングスタジオ」「東急ハンズ」は別に梅田大丸でなくてもJR大阪駅の中のいい場所であればどこでも良かったということです。
 当然、賃料の交渉では不利になります。確かに集客効果はお店を潤していますが、サブリースしている15%の床からはほとんど利益はでていないでしょう。販促費として経費に組み込めればいいのですが、販促費は販促費で使っているはずです。(ポイントカードの値引きもまた販促コストです)・・・不動産事業としての感覚がまだ甘いと思います。

 かつて「旧そごう」は流通業ではなく不動産業だと業界では認識されていました。自社の社員ではなく取引先に店頭の運営も委ねていたからです。場所貸し業で少ない社員で運営していたからです。今から考えるとそれでも「百貨店」の体裁を保っていたのは大したものですね。

  記事の中で印象に残ったのはザイマックスキューブの東浦氏のコメントです。「投資においてよい商業施設とは、一定の期間にわたり投資に見合った収益が見込める施設であり、多額の投資を行って、多くの人を集め高い売上を得ている商業施設が必ずしも良い商業施設とは限りません。
 ですから商業事業者向けの雑誌で時折発表されるショッピングセンターのベスト10,ワースト10などは必ずしも投資家やアセットマネージャーの評価とは一致していないと思います」。

 このような投資家の心理を活用すれば短期的に利益をあげられなくても中長期に安定した小売り業態というものも受け入れられる余地もでてきそうです。・・・・以前からも考えていたのですが、オフィスと複合した商業施設ほど全体の収益が上がりさえすれば、がつがつと利益を追う必要がないので面白い実験ができるのでしょう。

 再投資が必要な3セク開発物件

 大阪でバブル前後に開発された3セクの商業施設の多くから当初参画していた百貨店出身のスタッフが引き上げられて、不動産事業畑のスタッフが中心となって運営されるケースが増えています。
 売上が低迷しているのを心配していたのですが、上記の発想でいえば投資に対して収益が確保されていれば失敗ではないのかも知れません。
 事実「百貨店の人間を全部返したから人件費を「大きく圧縮できた」という自賛の声も聞きましたし・・・。保守的なプロパティマネジメントでも一定の収益は確保出来ているのだと推測できます。

 ただし、商業施設は10年単位でリニューアルしないと価値が低下していきます。80年代から90年代に開発された物件はこの間、リニューアルされずに放置されてきました。2011年問題もあらかた趨勢が決まってきましたので、このあたりでリニューアルに着手する時期だと思います。

 不動産事業者の観点もとても大事ですが、流通業界のノウハウもうまく活用して街を街を面白くして欲しいものです。
                           (2011年08月09日)
■築50年の住宅を住まい方から再生するURのルネッサンス計画〜「たまむすびテラス」

 多摩平の森 ルネッサンス計画2「住棟ルネッサンス事業」の街区名称は「たまむすびテラス」


 URの賃貸住宅の再生プロジェクトについては以前改修技術の実験として堺市の向ヶ丘第一団地の実験をご紹介いたしました。建築関係の方々に反響が大きかった記事です。東京では「ひばりが丘」団地で実験が行われていましたが、そのルネッサンス計画の2が進んでいます。「住棟の新たな活用方というソフト面での再生手法」の実験です。
 
 民間事業を募集し、民間事業者に賃貸、民間事業者が回収して活用する計画です。日野市の多摩平団地では次の3つのパターンで実験が始まっています。

 1.団地型シェアハウス「りえんと多摩平」

  3DKを3部屋に区切った住宅ですが、共用部分が充実しています。共用キッチン、ラウンジ(シアタールーム)、シャワーブース、ランドリコーナー、アトリエ、気持ちよさそうなのは屋外のウッドデッキです。
 カーシェアリングなども整備されています。2棟のうち1棟は中央大学が一括借り上げしています。3月に竣工し入居開始しています。

 関西ではまだシェアハウスは一般的ではないですが、東京で複数事業展開しているリビタが運営しているそうです。

 2.菜園付き共同住宅「AURA243 多摩平の森」

 ゆとりある団地環境を活かして貸し菜園と専用庭群を併設しています。今年の7月に竣工し入居開始しています。


 3.高齢者専用賃貸住宅・多世代住宅「ゆいまーる多摩平の森」

 「最期まで自分らしく暮らせるコミュニティづくり」を目指して、24時間365日のスタッフ常勤、協力医体制、介護事業者との連携(小規模多機能施設)などでチーム作りをおこなっています。今年の9月に竣工、入居開始予定です。


この3つの実験の総称が「たまむすびテラス」です。
http://www.ur-net.go.jp/east/pdf/ur2011e_0608_tamamusubi_01.pdf へのリンク
http://www.asahi.com/suumo/ah_journal_item_4860.html へのリンク

 地域に応じた活用の可能性

 関西でも多くの老朽化した賃貸住宅団地があります。千里ニュータウンなどで交通の便がいいところでは売却建て替えもスムーズですが、そうでない団地も沢山あります。

 シニア住宅、菜園付き住宅というのはスタンダードな活用法ですが、地域特性に応じた展開方法は色々ありそうです。特にURの団地群は住棟回りの環境がすばらしいので、単に更地にして建て替えというのも、不動産資産の有効利用という観点とは違った意味でもったいないと思います。

 たまむすびテラスでは団地と同じ樹齢50年のけやきの木がうまく活かされているのが印象的です。

                                            (2011年08月08日)

■高級ブランドを新しく創造した「フランツ」のブランド戦略

 OEM企業であった台湾の会社が洋陶磁器でハイブランドを確立するまで

 1984年に創業した海暢グループは1995年には世界で一番の工芸品メーカーにまで成長しました。各国の陶磁器のOEM生産で技術力はあってもオリジナリティのない商品が中心でした。洋風陶磁器の本場はヨーロッパであり、アジア発で洋陶磁器の高級品をブランディンするなど考えられない事です。

 2001年に「フランツ」ブランドを立ち上げるまでに1997年から研究開発に着手しています。世界中にこのブランドのファンは多く、クリントン元大統領やバーブラストライサンド、などもファンだといわれています。デザインは東洋的なモチーフと西洋陶磁器の伝統的な技法をミックスした独自の個性を持っています。
 カップとソーサーで1客2万円という価格はマイセンなどの5万円に比べるとお値打ち感がありますが、決して安いモノではありません。ブランドがスタートした当時は世界的な不況で高額品が売れず、安い「中国製品」が席巻していた時期です。高額品市場に参入するにはリスクのあるタイミングです。

 流れるような形状で「生物」のフィギュアを組み合わせた独特なデザインはとても印象的です。(WEBサイトをご覧下さい)デコラティブでありながら器としての使いやすさはきちんと押さえられています。

http://www.franzcollection.com/ へのリンク

 フランツのマーケティング戦略〜価格競争から価値競争へ

 フランツは見本市でのバイヤーとの交渉を基本として、派手な広告宣伝は行っていません。試しにWEBで検索してみましたが、ほとんどヒットしません。営業、や宣伝は販売先に任せています。製品はとても特徴がハッキリしているのであえて広告をする必要がないのかも知れません。

 ターゲットとなる国の人の髪型、皮膚の色、五感、顔の輪郭、服装まで調べて製品には反映させ、WEBサイトの構成も国によって変えています。

 陶磁器業界は中国の安い製品によって価格競争が巻き起こり、韓国や台湾でも多くの企業が淘汰されています。フランツのように価格競争から抜け出して価値競争に入らないと生き残ってはいけません。


 韓国では株式会社韓国陶磁器が高品質高価格、高機能、韓流スタートのコラボで独自の戦略を展開し、株式会社ヘンアムチャイナウェアは日本のノリタケのOEM技術を活かして高付加価値の商品の製造に乗り出しているそうです。

 高い付加価値の商品を開発するには技術開発への投資やデザインへの投資が必要です。高級品ではあるもののトップブランドの、マイセンの5万円に対して2万円という価格設定は絶妙のポイントをついています。ギフトが多いということですが、ギフト商品としても使いやすい価格帯ですね。

 フランツは関西では京都島屋、そごう神戸、近鉄阿倍野店で取り扱っているそうです。今回フランツのことを知ったのは、岐阜県産業振興センターの地域深耕部の河村主査のレポートによってです。
 http://www.gpc-gifu.or.jp/chousa/houkoku/22/22toujiki.pdf へのリンク


 同じように価格競争に巻き込まれている業界は他にも沢山あります。グローバルに通用するハイブランドを目指していkつか考えている案件がありますので、とても興味深く読ませていただき、その概要を中心にまとめてみました。

 ソニー、ホンダなど量産品メーカの日本ブランドがかつての勢いを無くしています。中小企業発でも世界に認められる「ブランド」が創れる(フランツの母体企業は工芸品としては世界一とはいえ従業員500人ほどの中企業です)という事例はとても勇気づけられるモノです。

                            (2011年08月04日)
■3ヶ月目の「大阪百貨店戦争」〜心斎橋への影響は薄れてきた

 5月には影響を受けたが6月、7月と回復している京都店、神戸店

 大丸の月別の売上伸び率推移を見ると、4月19日の梅田大丸の開業では京阪神の他店は大きな影響を受けていないですが、5月4日のJR三越伊勢丹の開業では心斎橋店、京都店、神戸店がそれぞれ売上の伸びがマイナスになっています。6月、7月の推移を見ても京都店、神戸店はプラスに転じておりマイナスの影響を感じさせません。

 心斎橋店も売上は以前マイナスですが、そのマイナス幅は縮小しています。昨年は2009年の北館開業もあり心斎橋店だけが大きく売上を伸ばしていたのでその反動もあるのかも知れません。

 JR沿線の芦屋大丸は全く三越伊勢丹開業の影響を受けていません。(逆に言うと沿線の芦屋のお客様を三越伊勢丹が獲得できていないという見方もできます)芦屋大丸は西宮阪急の開店の時の方が影響が大きかったのかも知れません。


 大阪ステーションシティ開業で一部で予測されていた広域への影響あまりなかったのでしょうね。

 心斎橋クリスタ長堀は競合激化の中で前年比を伸ばす

 心斎橋で大丸コム開発が運営している地下街「クリスタ長堀」の4〜6月の売上は前年比1.1%のプラスでした。不振の飲食店を除く衣料品では2.2%の伸びです。
 
 「競合が激しくなっても、心斎橋で働く女性は多いし、数はそれほど変わらない。毎日通る通行客に利用してもらい。固定客かできれば競合は関係ない」(繊研新聞8月1日 神田敏広クリスタ事業部営業部長 談)

 施設利用者に要望を聞くモニター調査やなど消費者と施設や店舗をつなぐ手法に地道に取り組んでいるそうです。

 今期売上は2%増の78億円を目標とします。

 大阪ステーションシティ開業3ヶ月

 今日で開業3ヶ月を迎える大阪ステーションシティですが、JR大阪三越伊勢丹とルクアの売上は共に104億円で三越伊勢丹は目標の550億円の19%、ルクアは目標の250億円の42%ということで明暗が分かれていると報道されています。
 来店客数は三越伊勢丹が1080万人、ルクアが1330万人。通路として使われることが多いルクアには買い物客でない人も多く含まれているそうです。

 固定客が多い既存百貨店の売上げが底堅い一方で、HEPファイブやディアモール大阪への影響が大きく落ち込みが目立っているようです。

 ファッションビルはテナント次第の所もあります。開業前に対策を講じなかった梅田のファッションビルが今後、どのような対策をとるか、これからリニューアルやイベントでの巻き返しが始まることだと思います。
(阪急、阪神、鉄道と流通それぞれ仲良くしないとね)

 三越伊勢丹に関しては、むしろ意外に健闘しているとみています。あくまでも伊勢丹のスタイルを崩していないので、そのスタイルを支持する顧客が定着すれば、棲み分けは可能です。低めに設定した売上目標をさらに落とすわけにはいかないので、食料品売場などもう少し手直しは必要です。もう少し「売る気」を前面に出しても伊勢丹らしさは崩れないと思うのですが。
 JR沿線の芦屋など重点地域を決めてカード客を拡大することです。駅の乗降客数はJRが一番多いのですから、まず乗降客をつかまえることです。

                                                  (2011年08月04日)

梅田での商業多様性の保護の観点からなんとか応援したい気持ちが甘いコメントとなっています。寂しいですね。

図ー2011年4月〜7月の大丸各店の売上げ伸び率(4月梅田大丸、5月三越伊勢丹開業)
図101

図ー大丸 店舗別7月の売上前年比(2010年と2011年の比較)
図102

(Jフロントリテイリング月次営業報告)

図ー開業3ヶ月の大阪ステーションシティの売上(億円)、入店客数(万人)
図103
(繊研新聞 8月5日)
■世界の中の日本ブランド〜コンテンツの力をもう一度考える

 メイドインジャパンイメージを利用している「韓国ブランド」

 世界の中でに日本ブランドがどのように認知されているか、中国と、アメリカと英国での調査で「日本のものだと思うブランド」を比較してみました。アメリカと英国で4〜6割の人が「ヒュンダイ」や「サムスン」を日本の企業だと勘違いしています。品質面や技術力で自信をつけている韓国企業が日本製品のイメージをうまく利用しているといっていいでしょう。
(ヒュンダイの発音はアメリカ人にはホンダと紛らわしいそうです。別に韓国企業が意図的にやっているわけではないですが、耳で聞くブランド名も大事な要素であるということだそうです。)〜福岡県サンフランシスコ事務所 仲谷氏の「Mottainai日本ブランド」の記事をベースにしています。
 とはいえ、昔の日産のセドリックの英文字ロゴはキャデラックととても紛らわしいものでしたから,何時か通った道なのですが

 逆にユニクロや資生堂、味の素、キッコーマンは日本製品と言うよりアメリカでは自国製と思われているのだろうと思います。

 同じ会社が調査した世界の企業のブランド価値ランキングで、トップはコカコーラですが日本、韓国企業は、11位にトヨタ、19位にサムスン、20位にホンダ、33位キャノン、34位ソニー、38位任天堂、65位ヒュンダイ、73位パナソニックとなっています。ソニーのポジションが私たちが考えるより落ちています。デザインに力を入れているサムスンがソニー、パナソニックより上位にランキングされているのは象徴的です。

 アジアの市場で日本製品より韓国製品が人気なのは、価格が安いというコトもありますが、韓流ドラマがアジアで沢山放映されていて、親しみのある韓国のファッションに人気が集まっているといいます。韓国は国策としてコンテンツを輸出していますからその効果が浸透していると言えます。アジアではメイドインジャパンイメージは不必要なようです。中国ではサムスン、ヒュンダイともに、日本ブランドとは誤解されてはいません。

 世界で人気の日本のコンテンツ

 フランスで開催されている「ジャパンエキスポ」は今年で11回目になります。7月1〜4日の4日間で17万人の来場者があったそうです。漫画、アニメ、ゲーム、音楽、ファッション、などのポップカルチャーと武道や茶道といった伝統文化をあわせて紹介するイベントです。

 来場者は10代が5割、20〜24才が3割で、オタク層が集結しています。ネットで集めた日本情報をリアルに体験したいと言うことでしょう。漫画、アニメに強い関心があるようです。
 はたして市場全体にどれほど影響力があるかは未知数ですが、日本を知ってもらう足がかりにはなりそうです。

 アジアで開かれた「アニメ・フェスティバル・アジア」には5万人の来場者がありました。イベントの趣旨からアニメ、漫画への関心度が高いのですが、音楽も人気です。

 フランスでゴスロリが人気だといってもメインストリームのファッションには影響がないと無視しがちですが、サブカルチャー的な文化から大きな影響力があるものが生まれています。情報の発信源が多様化している中で「一部のもの」と決めつけることはできないと考えるべきでしょう。(オタクのおもちゃとしてスタートしたAKB48が一定の社会現象になったように)

                                                     (2011年08月03日)
図ー日本のものだと思うブランド〜中国、アメリカ、英国の比較
図104
(2011年インターブランド社調査)

図ー興味のある日本のコンテンツ 来場者調査(10〜20代の現地のオタク層対象の調査)
図105

■努力しないで誉められるカリスマへの道

 東京ガールズコレクション的なそしてAKB48的なフィクションの中の日常としての「カワイイ」

 東京ガールズコレクションはモード系のコレクションとは違いリアルクローズ(日常で着る服)がプロのモデルとモデルみたいなのタレント、読者モデルが登場する一種の興業です。手の届くおしゃれな世界。

 AKB48も毎日会えるアイドルとして売り出されたユニットで、一部マニアと自分もアイドルみたいになりたい女子小中学生に支持されています。(社会現象として話題になってはいてもAKBの客層が偏っているので、もしドラの映画化もイケメンパラダイスのリメイクも不振なのです)
 その後、AKBは社会現象となりNHKニュースでも他の大事なニュースを差し置いて報道されるようになっています。AKBががすごいのかNHKが「ある意味」すごいのか・・・・

 手の届く「憧れの世界」として日常生活と違った「世界」ではな日常生活の延長にあり自分もなれる「カワイイ」「憧れ」の世界です。ほといんどデコ状態のメイクでプリクラを撮れば自分もその世界の主役になれます。

 ファッション雑誌も読者モデル、「読モ」を良く取り上げます。3つのメリットがあります。ひとつはモデル料が安い。ファッションアイテムは読者自腹である。そして読者にといって身近な人を取り上げることで読者を惹きつけるフックになるからです。最近は中学生はおろか、小学生まで「読モ」になりたいと考えています。(ハナコ世代の親が自分も一緒におしゃれを楽しんでいます)

 アラフォーまで蔓延する「女子」共通の気分をつかまえろ

 日常の延長に「憧れ」の世界を持っているのは女性のアラフォー世代にまで共通する「気分」です。ケータイのデコ、ダイエット、ヨガ、料理人、などそれぞれの世界で影響力のあるのは趣味が高じて名前が売れた「カリスマ」です。お掃除のカリスマ、収納のカリスマといった人もおられます。

 以前取材した手工芸教室は受講料、材料費収入だけでなく技術を身につけてきた生徒を階級のある講師に認定する「新家元制度」をビジネスモデルにしていました。百貨店などの会場での即売会での収入も馬鹿にはありません。

 かつての職人やアーティストのような「修行」や「努力」をショートカットして「有名」になる「憧れられる」。こんな事例を見せられたら結構沢山の人がその道に流れていきますよね。

 かつてメインストリームであった「アート」や「モード」がよりイージーな「サブカルチャー」や「お笑い」の世界に浸食されています。「アート」や「モード」が担っていた最先端の創造はより等身大に切り取られて供給されないと受け入れる層が限定されてしまいます。

 百貨店が提供する「コト」は

 百貨店が若い世代を取り込むときに、若い子に支持されているショップを入店させるとか、モデルに登用するとかいうレベルにとどまっているのは、百貨店の考える「権威」「憧れ」が旧世代の感覚にとどまっているからです。

 AKBの劇場をつくれとはいいませんが、百貨店が導入する「コト」は自己表現からカリスマへの道を示す何かの仕組みが必要なのです。

 実は上記の気分は形は違ってもより上の年代にも浸透しています。例えばインテリ老人女性に人気のある「白洲正子」は、趣味人としてのライフスタイルが人気を呼んでいたのです。手の届きそうなライフスタイルに憧れるミーハー的な心情が商売の種になります。

 当然、世の中で一家をなす人はそれなりに人知れず修練を積んでられることと思います。ポイントはいかに楽そうに「かっこよく見えるようになる」かです。

 昨日取り上げた「泉ヶ丘地域活性化ビジョン」でもNPOとか学生のパフォーマンスとか教科書的な集客策を並べていますが、根本にある「欲望の方向性」をとらえなければ成功はおぼつかないでしょう。・・・もちろん持続的なまちづくりはそれだけではないのですが、「気分」に対応した住民参加型の仕掛けも必要です。・・・まあ一過性のイベントに終わる可能性もあるのですが・・・・

                                                        (2011年08月02日)

■泉北ニュータウン再生の鍵となる「泉ヶ丘駅前地域活性化ビジョン」について考える

 中心のない南大阪、中心のない堺市

 以前、「大和川以南は大阪ではない」でも触れましたが、大阪の南部には地域の中心になる核がありません。それぞれの歴史性を持った地域はそれぞれの地域内で完結しているので都心となると一気に「大阪」まで出てしまいます。

 都市の規模で言えば堺市が突出していますが。大阪に近い場所にあるのと、堺市自身に求心力がないのうえに、市内でも盛り場が分散しています。百貨店の売上げが繁華街のパワーを示すと仮定すると、堺市内では泉北ニュータウンの中心地区である泉ヶ丘が最もパワーがあることになります。

 島屋堺店が立地する堺東駅前地区は高層の市役所もあり本来的には中心地区となるべき街なのですが、駅前再開発、大型ホール計画が頓挫してしまい、次のビジョンが見えなくなりました。

 南海電鉄、地下鉄、泉北高速鉄道がつながる堺市内の中百舌鳥地区が大阪府の副都心構想に設定されていましたが、進捗は見られません。

 泉北ニュータウン泉ヶ丘駅前の再生の方向性

 泉北ニュータウンは千里ニュータウンに遅れること5年。昭和42年(1967年)に入居が開始されました。1,557万uの敷地に計画人口は18万人、54,000戸の住戸が計画されました。現在人口は13.9万人、戸数は58,800戸となっています。駅前のマンションを中心にファミリー層の転入はあるものの、10〜30代の転出が多く10年後には人口が9割、20年後には75%になると推計されています。
 65才以上の人口は現在24.5%、。10年後には37.7%。20年後には41.7%になるそうです。千里ニュータウンなどと同じく公的賃貸住宅が5割を超えており、住民の流動性が低くなっています。

 今年の2月に「泉ヶ丘駅前地域活性化ビジョン」が泉北ニュータウン再生府市等連絡協議会から発表されています。(大阪府と堺市のメンバーが中心で周辺市域の関係者は参加してません)

 ポイントは定住人口減は仕方ないとして「交流人口」を増やそうということのようです。

 NPOや社会起業家のチャレンジオフィス開設支援や生活・福祉・環境・農業に関連する事務所やサテライトオフィスの立地促進・・・この場所でなければならない必然性はあまりありません。高感度な「遊」や、みどりを楽しむ環境・・・・というのも具体的なイメージがわかない。

 周辺部に大学が集積しているのと元気な高齢者が住民に多いという事からの発想ですが。あらたに人を呼び込む魅力としては弱いものです。

 もちろん「人を呼び込む}=交流人口を増やすという目的の建て方自体を棄却して「そこにいる人達が楽しく暮らす」というゴールを設定するのであればもっと自由に考えられるかも知れません。(結果的に住みたいと思う人も増えるでしょう)

 人口減少の対策としてプロジェクトを設定する限り、どこの地域でも同じような代わり映えしないメニューが並びます。思い切って発想を変えてみることです。そこにいる人達が愉快に暮らせる街を目指すことです。

 さらに言えば泉北島屋の売上げを支えているのは堺市民だけではないはずです。広域の都市の連合でまちづくり考える視点が必要です。その為に大阪府が関わっているはずですから。堺市内の今年か考えないということであれば有効な手だては講じることができません。(隣接する大阪狭山市、河内長野市にはお金持ちも住んでいますし)

 堺市南区は農業生産が盛んな地区です。ハーベストの丘などもあります。朝市が計画されているようですが、定期的なファーマーズマーケットや岸和田や泉佐野の漁港からあがった魚のフィッシャーマンズマーケットが開かれれば、大阪南部の住宅地からお客さんが集まってくることでしょう。
  
 いや勿論、報告書の盛りだくさんのメニューの中にはそのようなアイデアが沢山盛り込まれているのですが、人口は減る、住戸数は減らしていくという覚悟が見られないのです。

 街の施設や住宅の老朽化、スラム化を防ぐ事が目的であっても、人口を増やすことだけを第一義とはしない。そう考えてみませんか?

                                      (2011年08月01日)

図ー郊外百貨店の売り上げ
図106
(東洋経済 2010年  2009年の売上)
 7月
■「減築」の思想と東北漁村の復興

 減築のメリット

 都市の人口縮小によって、住む人が少なくなった地域では人が住まなくなった住宅がスラム化するなど荒廃してくるために取り壊して更地にしたり、集合住宅の回数を減らして環境を維持するのが減築の目的です。

 都心部で生まれた空き地は「都市農園」(コミュニティガーデン)として活用されています。我が国でも都市部で人の住まない住宅が増えていますが、撤去し有効活用するための法的整備は立ち後れています。

 集合住宅の減築の実験の事例としてUR都市機構の実験住宅については以前もご紹介いたしました。

 今年の3月に国土交通省から「減築による地域性を継承した住宅・住環境の整備に関する研究」というレポートが発表されています。そこでいくつかの研究論文から減築の効果を以下のように整理しています。(戸建てについての研究で家屋をつぶして更地にするケースは含まれていません)
 
 高齢者住宅の減築に関わる居住者の思いと社会の要請


 社会的な効用として廃棄物を出さないメリットは大きいと思います。居住者に取っての効用は「減築」でなければ実現できないものは少なく、移転又は改築でもその効用は変わらないでしょう。

 唯一減築でなければ実現しないのは「住み慣れた住まいに住み続けられること」だろうと思います。

 戸建ての減築のきっかけはライフステージが高齢化して、居住している世帯人数と家の広さがミスマッチになってきている事からです。
 高齢者の多くは、住み慣れた住まいに住み続けたいという気持ちの人が少なくありません。

 経済合理性から言えば、すべて更地にして、社会的に必要とされる用途に土地利用を転換(集合住宅、緑地、公共施設)新しいバリアフリー住宅に住んでいただくのが最も効率的であると思います。住んでいる人の気持ちは合理的な判断ではありません。(団地の建て替えの話し合いでも、今住んでいる古い住宅のスペックにこだわる高齢者も少なくなく、理解してもらうように説得するのにとても苦労しています)

 社会的な合理性と居住者の快適性の確保の妥協点が「減築」という仕組みの役割なのかも知れません。環境負荷の低減はある種の大義名分のような気もします。

 東北の漁村集落の集約化大規模化への抵抗

 漁村の多くは限界集落に近く高齢化も進んでいました。今回の震災で被災しなくても遠くない将来には集約、近代化が必要だったのかも知れません。宮城県が外部のシンクタンクに依頼して作成した計画では被災した漁港を集約し、外部資本もいれて大型化しようというものです。合理的な考え方だと思いますが・・・・・・・それだけでいいのでしょうか。

 地元の住民の方のご意見がどうなのかは私にはわかりませんが、おそらく抵抗は少なくないでしょう。無理矢理に押し切るのではなく大人の知恵を出して解決できたらいいなあと思います。

                                          (2011年07月29日)
表ー減築の効用
図107


■消えゆく夕刊紙と「駅売店」の進化の方向性

 夕刊紙が売れなくなった背景

 少し前に夕刊フジのリストラが話題になりました。かつては実売40万部あった発行部数が、20万部からから損益分岐点の13万部までに落ち込んでいることだ理由だそうです。公称150万部ですからどれだけ部数を水増ししているのでしょう。

 ちなみに公称の部数で関西では日刊ゲンダイを上回っているものの、東京では日刊ゲンダイ、東京スポーツを下回っています。

  団塊世代が大量退職してサラリーマン文化yともうべき夕刊紙や週刊誌の部数も全体的に減少しています。お父さんのお小遣いも半分ぐらいに減少していますし、電車の中の時間つぶしも今や携帯電話が主流です。座席で一斉に携帯電話の画面をかざしている姿は妙な風景ですけれどね。

 駅の売店の売れ筋

 駅の売店というとおばちゃんが神業のように注文をさばく、高効率店舗の代表格でしたが、最近はPOSレジを導入している店も多く、神業の出番が少なくなっています。
 売店の売上の主体は新聞、雑誌、たばこで3割から多いところでは7〜8割を占めます。いずれも男性サラリーマンが主要利用者で縮小傾向にある市場です。


 最近はコンビニタイプで商品領を増やした店舗や、女性向けの品揃えを強化した店舗、焼きたてパンなどの専門店の導入など生き残りのための工夫を凝らしてリニューアルする店舗も多いようです。

 縮小したとはいえ男性サラリーマン相手に朝夕の限られた時間に効率的にさばいていく店舗の売上げは馬鹿にならないものがありますし、業態転換して効率があがる店ばかりではありません。

 それぞれの駅の利用者層を時間帯別に分析して最適の業態を配置し、品揃えを工夫する必要があります。

 他所でうまくいっている業態が自社の駅で適合するかどうかはわかりません。曜日別、時間帯別にMDを変える対応も必用になってきます。画一的な対応での効率化をはかる仕組みよりも、個別の対応をサポートし全体を効率化する仕組み作りが必要です。

                                                    (2011年07月28日)
図ー夕刊紙の公称発行部数(東京・大阪)
図108
ABC調査及びWEBサイト

図ー駅売店の進化 概念図
図109



■若者が旅をしなくなった理由

 観光市場の67%を支える日本人の国内宿泊旅行

 22.1兆円と試算されている観光市場のうち、日本人の国内宿泊旅行は14.9兆円と67%をしめています。海外からの訪日外国人旅行に力をいれているとはいえ、1.2兆円で5.5%にしかすぎません。円高や東京電力原子力発電所事故の影響もあり、今後急速な拡大は見込めません。(長期的には、誘致を続ける意味はあるでしょうが・・・)

 急激に低下した20代女性の旅行回数

 観光庁のレポートでは2005年から2009年の5年間で20代女性の国内宿泊旅行の回数が急激に低下している調査が掲載されています。また、海外出国率でも20代女性の出国率が低下しています。

 既婚女性の国内宿泊旅行の減少は、お金が無くなって貯蓄に回すようになったとのなったとの理由が多いようです。大学生は休暇が減って友人と休日がかさならなくなったとの回答が多く見られます。

 大学のカリキュラムは3年生ぐらいまでは週に5日通学するようになっているようですし(ベネッセ調べ)、就活の長期化が上級生の時間を圧迫するのでしょう。・・・・・この5年間の変化と言えば、やはり就活の長期化でしょう。
 日本経済の活性化のためにも採用方式の見直し、新卒一括採用や、採用時期の早期化は是正すべきでしょう。

 欧米の若い人はバックパッカーも多いですし、韓国の若い子も20代で年間宿泊観光旅行4回以上の子は日本人の4倍ですし(8.2%〜23.3%)0回の子は日本人32%に対して11.5%と三分の一です。

  旅行商品がボリュームの多いシニア中心になってきている傾向があります。若い人達の旅行を開拓するために商品開発も大事ですが、長期にわたって就活に費やす時間が有益かどうか考えると、採用のシステムを見直した方がいいように感じます。

 新卒一括採用を擁護している同じ口で「日本の若者が内向きになった」と避難しているわけですからね。

                               (2011年07月27日)
■嵐が起きる5分前の世界〜百貨店店舗別売上2010・2005

 婦人ファッションは圧倒的に強くても紳士ファッションが弱い大丸

 大阪百貨店戦争が始まる直前の2010年の店舗別売上高が繊研新聞に掲載されています。改装中の阪急梅田本店は全店売上げでは一番店の座を死守しています。めだっているのは大丸心斎橋店、神戸店、京都店の婦人ファッションの売上です。

心斎橋店は北館の「うふふガールズ」が新しい客層を開拓し、京都、神戸にも「うふふガールズ」が展開されるなど婦人ファションに注力した成果でしょう。その分、紳士ファッションがおいついていないとか、身の回り品(靴、バッグなどの洋品雑貨)のウェートが低くなっています。

 各地域の一番店(阪急、島屋大阪店、西武池袋では身の回り品の売上は婦人服・洋品にならんでいます。大丸社内の集計区分が他店と違うのかも知れませんが、バランスとして婦人服・洋品への偏りが見られます。

 740億円(2005年)あった阪急百貨店の衣料品の売上げの行方は

 2005年度には阪急百貨店の衣料品の売り上げは740億円ありました。全店でも2005年から2010年(改装中)で500億円の売上が縮小しています。市場のシュリンクもありますが、それらの売上げはどこに流れているのでしょう。

 今回提示したデータでは出所が違うので比較しにくいので、もう少しデータを探してみます。仮説としては西宮ガーデンズなどの郊外店、それと大丸に流れていると考えられるのですが数字だけではなんともいえないところがあります。

 JR大阪三越伊勢丹はどれだけそのニーズを掘り起こせるでしょう。集客は厳しいようですが、じっくりと「顧客作り」をすすめていると考えられるのでこの1年間の間にどれだけ稼働率の高いカード客を増やせるかに勝負がかかっています。


 大阪ステーションシティは百貨店、専門店街が一体となって市場を開拓する相乗効果が働いています。対する阪急・阪神、エイチツーオーはまだ阪急と阪神、鉄道と流通のしこりが残っているようで(ディアモール大阪についてのウィキペディアの書き込みがずっと放置されているように・・・・内輪もめを示唆する内容が残っています)残念ながら、まだ一体となった動きがとれていないように見えます。

 さて、来年度の状況はどうなっているでしょう?全国の注目が集まっています。

                              (2011年07月26日)

図ー2010年 京阪神の百貨店店舗別売上高比較   ※右の目盛りが全店売上高
図110
(繊研新聞  2011年7月26日)

図ー百貨店店舗別売上高 2005年  ※右の目盛りが全店売上高
図111
(百貨店調査年鑑 ストアーズ社)
■近隣対応を強める首都圏の商業施設

 ヴィーナスフォート 生活に根ざしたテナントを拡充

 震災以後の首都圏の商業施設では、地域密着型の店舗の売れ行きが堅調で、足元商圏の需要を掘り起こす動きが活発になってきているようです。

 本日の繊研新聞の記事によると、あのお台場ヴィーナスフォートでさえ、近隣に増えているマンション住民の顧客化に力をいれていて、ペットショップ、家電量販店、ニトリなどを導入し、スタッフの接客レベルアップに力をいれているそうです。

 吉祥氏のパルコもパルコ内部の位置づけとして都心型から地域密着型に変更されて、食物販の導入、やデイリーファッショテナントを拡充して地域に根ざした館を目指しています。ロンロンから業態転換したアトレ吉祥寺も売上の4割が食品で、日常ギフト対応の雑貨ゾーンと会わせて地域密着度の高い店です。

 ヴィーナスフォートなどは震災後の外国人客の減少を背景にしていることが伺えますが、震災後首都圏の消費者で顕在化している買い方の変化「日常未着型購入」「地元志向」」が背景にあり、今後東京都心部を例外にして都心周辺の店では地域密着対応が進むようです。

 来月末発行のCRIの原稿のために梅田周辺の動きを整理していましたが、都心であっても盛り場が分散化傾向にあり、繁華街を支える商圏(例えばターミナルであれば沿線顧客、後背地である」オフィス街、学校など)の顧客をしっかりと掴む政策を打ち出さないと厳しい時代になっていると感じました。〜東京の都心部はいまだに例外なのでしょうかね。


   
                                                    (2011年07月25日)
■地下鉄5分では「回遊効果」は期待できない〜福岡・天神の再生に向けて

 開業4ヶ月、予想以上の賑わいを見せるJR博多シティ

 今年3月2日に開業したJR博多シティは5月までの3ヶ月間、アミュプラザは予算比2割増、博多阪急も計画比8%増と、好調です。政策投資銀行が昨年9月に予測した900億円にかなり近づく実績を上げるのではないかとみられています。

 主婦層では「食品」が評価され、ファッションはやはり天神という意識は強いでしょうが、博多駅周辺の事業所や博多駅を経由して通勤するOL層はJRは日常の導線上にあるJR博多シティの利用が多くなるのでしょう。

  西鉄天神駅の1日の乗降客数は13万人。JR九州の博多駅乗降客数は1日19万人(山陽新幹線は含まない)。JR博多駅の人の流れは天神に引けを取りません。

  天神地区は長期的には足元の就業者が減少傾向にあり、高速バスなどの広域からの集客に依存する割合が高くなっていたといいます。今回も九州新幹線の全面開業で博多駅から5分の天神への回遊を期待する声もあったようです。

 昨年の福岡パルコの開業で。地域の集客力向上に期待が集まっていましたが、エリア全体の売上増は実質的に1%にとどまり、そのパイを取り合う結果になったようです。

 天神再生に向けて

 かつては「全ての道は天神に通ず」ともいわれて交通環境からも集積力の大きさからも、何もしなくてもお客さんが集まってきたので、その頃の感覚から抜け出せないのだと思います。今回も、JR博多シティ開業前に改装などの手をうったのはソラリアプラザだけで、その他の店は何もしないで「回遊効果」を受け身で待っていたようです。

 もともと過当競争で売場面積の割に販売効率が低下しているともいわれていた天神地区です。地域のライバルが淘汰されれば自社の売上があがるとでも考えていたのでしょうか?さすがに「7月からのセールでは協働PRを行い、ポイント還元率を引き上げるなどの対策にのりだしたようです。

 大阪のJRステーションシティの開業でも同時期に対策を講じた島屋、なんばシティはダメージは少ないですが、心斎橋はかなりダメージを受けています。

 商業施設の運営について面白い喩えをした人がいました。「お客様を猫だとすると、いつも”猫じゃらし”を動かしていないと、こちらを向いてくれなくなる」・・・猫じゃらしは失礼としてもいつも新しい情報発信や、商品などの「動き」がないと浮気されるということのたとえでしょう。

 「変わらない価値」を提供するのは老舗の価値でしょうが、自社のお客様が何に関心を持っていて、どう応えるか?という絶え間ない自分自身への問いかけがないと、お客様に見放されていきます。

 永らく地盤沈下が続いていた「天神」の商業者は、JRが駅ビルができるまではきっと「郊外大型SC」を売上低迷の元凶だと思っていたはずです。「我々には無料駐車場がないのが売上低迷の理由だ」と・・・。

 かつての栄光にすがり、お客様に向き合わず、他人の動きのおこぼれに期待する限り、天神の衰退は止まらないでしょう。

 
                                              (2011年07月22日)
図ー福岡市内大型店の売上げ(既存店は2010年度、JR博多シティ(アミュプラザ、博多阪急は2011年目標)
図112
図ー福岡市内大型店前年度からの売上減少率
図113

■人の回遊導線のシンプルな原理〜「用事」がなければ寄り道しない

 梅田ターミナルの流れの変化

 梅田ターミナルの人の流れは基本的に地下鉄御堂筋線梅田駅と阪急梅田駅、JR大阪駅を中心に流れています。下図は20年前の梅田の人の流れです。阪急に向かう人の流れは同線が絞られていたこともあり、阪急百貨店横のコンコースとホワイティウメダのノースモールに集中していたことがわかります。

 その後1995年のディアモール大阪の開業以来の西梅田地区の開発(ハービス、ハービスENT、ヒルトンプラザウェスト)によって西梅田地区が「大人の街」として存在感を高めていきました。堂島、中之島地区の通勤者の利用と大人をターゲットにした「洗練されたプロパティマネジメント」で約5万人程度の流動者が回遊するようになりました。

 梅田の回遊導線を変えた大きなエポックとしては2001年のヨドバシ梅田の開業でしょう。開業当初は1日22万人。今でも10万人前後の来店者がいます。主に地下鉄御堂筋線北からの地下の入り口とJR大阪駅からの横断が中心でしたが、現在大阪駅北ビルの開業に伴い地上からのアクセスは遮断されています。

 1日の乗降客数が250万人ともいわれる巨大ターミナルとはいえ、人の流れは目的や習慣によって決まっているので、梅田ターミナルに隣接しているからといって人を呼べるとは限りません。

 5月4日のJR大阪ステーションシティの開業初日には50万人の人が集まったと報道されていますが、三越伊勢丹とルクアを合算していますので実質20数万人前後だと考えられます。その後も20万人前後の来店客があると発表されています。もちろん店舗の魅力もありますが、現在阪急百貨店の増築工事で下図の@のルーが制約されており、JR構内を迂回して流動しているのが目視でも確認されています。
 
 グランフロント大阪の来街者数は?

 JR大阪ステーションシティの中では伊勢丹の地下の食料品売場が地下鉄駅に通り抜けるルートになっているのですが、よく知られていないのか、食料品売場に活気がないためかあまり人が流れていません。もったいないなあと思います。(三越伊勢丹にとってですが)

 昨日はじめて「うめきた」先行開発地域グランフロント大阪の来街者目標が10万人だと知りました。古い資料ですが下図の梅田の人の流れとその後の変化を考えると、やはり厳しいでしょう。人は用事のある目的地にしか動きません。1日250万人のターミナルであればその程度の人間は集まるだろうと考えるのは間違いです。

 梅田の新しい街として注目されていた西梅田エリアで一番人通りの多いディアモール大阪ですら流動者数は実数で約5万人(推計値)です。他の事例から考えるとグランフロント大阪への来街者(通勤者含む)は5万人を上回らないと考えられます。(例えばOBPへの通勤者3.5万人に対して総来街者は8万人弱です)

 その上で、どのように集客するか考える、仕組みを作る必要があります。

                                           (2011年07月21日)
 
R大阪駅北側の再開発地域「うめきた」の大型複合施設、グランフロント大阪が昨年4月のオープンから1年を迎え、25日に記念式典を開いた。開業後1年の来場者数は5300万人と発表。目標の3650万人の約1・5倍で、東京スカイツリータウンの5080万人を上回った。

 大阪では高さ日本一のビル、あべのハルカスも全面開業し、商業施設などの競争が激化している。グランフロントが集客力を維持するには、訪日観光客の取り込みなどが課題となる。

 飲食、物販など266店の売上高は、開業から3月末までで436億円。初年度目標の400億円をクリアしたが、施設の規模や来場者数の割に少ないともいわれる。  (2014年4月 産経ニュース)

 オフィス部分の入居は2014年時点で50%。1日の平均来場数は15万人。400億円の売上は東京六本木ヒルズに並びます。オフィス立地の商業では無く、核店舗の無いショッピングセンターだったという事ですね。素晴らしい実績ですね・・・・失礼いたしました。

図ー梅田ターミナルの人の流れ(1991年)
図114 ・梅田では大きな流れが阪急梅田駅と阪神前の間にある
図115
この数字は1991年の休日の計測  新聞社による調査
その後1995年にディアモール大阪が開業  過去の新聞発表から1日約5万人の流動者 通行量では10万人強と推計される。
2001年にはヨドバシ梅田が開業 平日8〜10万人、休日10〜15万人の来店者
■関西の未来を占う梅田北ヤード先行開発地域

 「うめきた」は全体で「グランフロント大阪」は先行開発地域

 世の中には高層ビルマニアという趣味を持つ人がいます。ビルの写真を掲載したサイトを見るのはとても楽しいです。
 そういったサイトは建築行政マンにもファンが多いと聞きます。 街が新しくなることは素直におもしろがってもいいのだろうと思います。

 そのマニアが注目する・・・梅田北ヤードの動きがわかりません。先日全体の愛称が「うめきた」と発表されたのに続いて先行開発地域「グランフロント大阪」という呼称が広告で使われはじめています。
 短期間に次から次へと新しい「名前」があらわれてしかも一貫性がない。なんだかなあ・・・巨大サッカースタジアム計画が中止になり緑地化が計画されていることは言祝ぐべきlことだと思います。(女子サッカーのワールドカップ優勝があるとワールドカップ誘致にも心が動きますが、誘致のために長居スタジアムを改修すればいいだけのことです。普段はがらがらなんですから。)いや最近はセレッソのフォルラン効果でそうでもないようですが・・・

 梅田百貨店戦争は阪急百貨店の全面改装後に来年末(再来年)にオープンすると一応の決着は見ると思います。

 そのつぎに気になるのは現在工事中の梅田北ヤード(愛称:うめきた)の先行開発地域(グランフロント大阪)の影響です。人の流れをどう変えていくのでしょう。

 六本木ヒルズ、東京ミッドタウンのような大型複合開発が大阪駅のすぐ北にできる

 ナレッジキャピタルとかコンセプトで語られるとよくわからなくなるのですが、要するに、六本木ヒルズのようなものが大阪駅の北にできるという風に考えればわかりやすいと思います。残念ながら「なんばパークス」や「キャナルシティ」を設計したジョン・ジャーディーは今回設計に参加していませんが、大阪の至宝である安藤忠雄先生が駅前広場を設計しています。
(かつて人気のあったジョン・ジャーディーの迷路のようなデザインは商業施設の効率としてはどうかとも思える部分はありますが、都心にリゾートの感覚の異空間をつくる力はあります。今回は純国産のデザインですが、先行開発地区の低層部の商業の空間デザインがどんな驚きを与えてくれるか注目したいところです。まさか吹き抜けの巨大さだけではないと思いますが・・・)

 大規模開発を比較すると東京の汐留は狭い敷地に建物を詰め込んで6万人を超える就業人口が押し込まれています。それと比べると、六本木ヒルズや東京ミッドタウンの就業者数や、来街者数と同じ人数が設定されています。

 OBPよりも就業人口は抑えめです。(内閣官房の資料に準じています。公表はされていませんが、その後計画変更があったかも知れません)

 六本木ヒルズは学校やテレビ局、美術館シネマコンプレックスと、売場面積43,000uの商業施設で人を集める仕掛けが組み込まれています。商業施設は開業当初は4百数十億ありましたが、2008年に385億円と発表されてから売上金額は公表されていません。高級ブランドのショールームのような店舗が多く、リーマンショック後にかなり影響をうけたと聞きます。

 さて、「うめきた」の先行開発地域である「グランフロント大阪」はどうなるでしょうね。

 オフィスは大阪を代表する企業の本社を誘致中と報道されています。ナレッジキャピタルのコンセプトにあうのかどうかは不明ですが、何とかうまるでしょう。住宅も何とかなるでしょう。

 大阪の最大のターミナルである梅田ですが10万人の来街者をコンスタントに集めるにはもっと街の魅力が必要です。

 駅前広場や緑地が整備されればある程度回遊は増えますが、駅の北側はヨドバシカメラまで人は動いても「グランフロント大阪」までは「用事がない」と評価される可能性もあります。

 OBPの昼間人口が15万人と発表されていますが実際の流入者の計測では自動車での流入を含めて8万人。そのうち4万人弱は通勤者です。その数字から推計するとグランフロント大阪のオフィスに用事のある人を含めて、就業者以外の来街者は5万人程度と想定されます。

 商業施設の顧客設定はオフィス就業者プラス来訪者をマックスとするのがいいでしょう。
 六本木ヒルズのような集客装置がないので、ターミナルの横にあるからというだけの理由で人が回遊すると考えてはいけません。

 六本木ヒルズのように開業時に派手に話題にならなくても着実に定着していけばいいのです。

 うめきたは大阪の、京阪神の、関西のこれからを左右する大事なプロジェクトなのでぜひとも成功して欲しいと願っています。

 結果は大成功で新聞報道では1日平均15万人の人を集めているようです。何が魅力なのか?よく勉強させていただきます。

                                       (2011年07月20日)

 「グラン」+「フロント」というのは英語表記としてどうなんでしょう。フランス語と英語の「ちゃんぽん」という説があります。まるで分譲マンションのネーミングのようで、ネイティブスピーカーから見ておかしくないですか?
 街としてできれば海外の企業にも沢山進出して欲しいのでよく考えた方がいいと思います。「うめきた」では駄目なんでしょうか?計画の中のマンションの名前に使えばいかがですか?イーストウッドの映画で「グラントリノ」という名作がありますが、トリノはイタリアのデトロイトといわれた都市の名前ですからね。

 
 

表ー大規模開発の比較
図116
大阪ビジネスパーク 地区総面積26万u 延べ床98万u 就業人口3.8万人  昼間人口15万人
(OBP開発協議会WEBサイトより)

図ーグランフロント大阪(先行開発地域の施設構成) 延べ床面積
図117
図ー六本木ヒルズの施設構成
図118
商業施設営業面積43,000u 売上385億円/2008年 2007年は400億を超えていた〜2009年以降は公表を中止
■九州新幹線開業後の人の流れの変化

 九州新幹線の開業でGW期間中の博多〜熊本の利用者は前年比50.7%増

 3月12日の開業後、震災後の自粛ムードの中で、鹿児島への観光客はキャンセルが相次ぎました。もともと1月に新燃岳噴火があったため宿泊客数が落ち込んでいたのですが4月以降回復基調にあるようです。

 今年のゴールデンウィーク期間中(4月28日〜5月8日)の新幹線の利用客数は博多〜熊本間は33.4万人で前年比50.7%の増加、熊本〜鹿児島中央間は19.7万人で前年比79.9%となりました。

 6月に熊本駅で地元のシンクタンク「地域流通経済研究所」が新幹線乗降客にアンケート調査を行っています。

 熊本駅利用者の四分の一が九州以外の府県

 利用者の最も多いのが熊本県で45.5%です。はじめて新幹線を利用した人は34.4%(目盛りは右側です)。図表に表示していませんが、毎日利用する人も9.5%と高い割合で存在します。熊本県には利用頻度の高い層も多いのですが、「はじめて」という人も開拓できていると言うことでしょう。

 関西、関東、中国地方からも「はじめて」の人を多く集めています。

 利用目的は全体では「仕事」が最も多いのですが特に福岡、関東に目立ちます。「観光」は関西、中国地方、その他で高くなっています。関東から「観光」で訪れるには少し遠くて割高なのかも知れません。「買い物」は熊本県民が多くなっています。福岡へでかける時に使われているのでしょうか。JR九州の割引の企画切符の影響とも分析されています。3月3日に博多駅に開業したJR博多シティの効果もあるのでしょう。

 ちなみに地元銀行の調査で主婦にとってJR博多シティで一番魅力的なもののトップは「食料品」でした。大阪に開業した駅ビルとは少し性格が違うようです。


 その他ではその他九州地域居住者で「コンサート、ライブ」目的の利用者が多いことが目を引きます。(これは持論になりますが)生のコンサートは人を動かすエンジンとなります。

                                      (2011年07月19日)
図ー新幹線熊本駅乗降客居住地とはじめて利用した人の比率(折れ線グラフ・右目盛り)
図119
図ー居住地別の新幹線利用目的
図120

地域流通経済研究所 2011年6月末の九州新幹線熊本駅利用者へのアンケート調査 N=801

図ーJR博多シティで一番魅力的に感じるもの
図121
(西日本シティ銀行 2011年4月 主婦対象の調査 N=492)
■「昭和の百貨店」ダイシン百貨店のマスコミの扱いに見るシニアマーケットへの偏見

 「半径100メートル シェア100%主義」東京大田区大森「ダイシン百貨店」

 東京大田区JR大森駅近くの商店街に立地する「ダイシン百貨店」は「昭和風の地方百貨店」「中高年向けの昔ながらの百貨店」として良くテレビや雑誌に取り上げられます。

 顧客が求めるものがひとつであれば最高のサービスになるとうポリシーの中で、「柳家のポマード」「花柄の炊飯器」「ポップアップトースター」「缶入り歯磨き粉」「カラオケ録音用のカセットテープ」など「レトロ」な商品がいかにも「昭和風」で絵になるのでしょう。

 百貨店とはいうものの百貨店協会に加盟している「百貨店」ではありません。売上80億の売場は、どちらかというと昔の大型スーパーに近い構成です。「昭和の地方百貨店」は稚内とか秩父、大館などを含めて全国くまなく見てきましたが、いかに地方といえども「百貨店」と名乗る店はもう少し違った匂いがあります。
 平成になって23年目ですから、「昭和」も「地方百貨店」も知らないスタッフが誤解に基づいて表現しているのだと思います。「映画3丁目の夕日」の珍妙な昭和30年代の風景に似た思いこみでしょう。

 顧客の7割が50代以上。ファッション商品の品揃えは40〜60代中心という設定を聞いて、「巣鴨の商店街のようなもの」と思いこんで紹介されているのかも知れません。シニアマーケットは5才刻みでニーズや好みが変わってきます。また肉体年齢と精神年齢の個人差がひどく大きくなるのです。多くのシニアマーケティングが失敗するのは「年寄りだからこんなもんでいいだろうと」十把一絡げに考える事から始まります。

 「昭和レトロ趣味の色眼鏡」による誤解と「百貨店」への誤解、「シニア市場」に対する誤解のため、この店の本質的な強みを伝えていません。

 徹底的な地域密着の強み

 この店のすごいところは徹底的な地域密着の品揃えとサービスです。商圏で高齢者単身者が多いとみると、豚肉1枚、2切れずつの刺身盛り合わせ、いなり寿司2小売りといった商品の小分け対応を行いますし、前述の「レトロな」商品も顧客のニーズに対応した品揃えの結果なのです。近くの住民のワンストップショッピングの為に効率の悪い品揃えも厭いません。買い物弱者には無料の即日宅配サービスも行っていますし、地域を循環する送迎バスも運行しています。

 顧客ニーズへの徹底的な対応といえば九州のホームセンター「ハンズマン」を彷彿させます。

 ある意味、通常のチェーンストアの逆張りなのかも知れませんしかし、商いの原点からするとこちらの方が王道であり、店側の都合をおしつける、今のチェーンストアのあり方が邪道なのでしょう。

 ダシイン百貨店の内容についてはググると一杯記事がでてきますので、そちらをご覧下さい。

                                             (2011年07月15日)

■SHIBUYA109の低迷とSHIBUYA109ABENOの好調〜近隣の女子中高生とヤングミセスが支えるABENO

 海外からの観光客、地方からの観光客が激減し、売上が1割落ちたSHIBUYA109

 渋谷を訪れる観光客は激減しています。中国を始めとしたアジアからの観光客が激減し、地方から東京へ遊びに来るマインドも冷えていると言われています。東京電力の原子力発電所の事故の影響は東京の商業のビジネスのあり方も変えてしまうようです。それでも1割減程度で済んでいるという見方もできます。109ネットショップは2ケタ増ですから「109」のブランド価値は衰えてはいません。

 SHIBUYA109ABENOは堅調

 この4月に阿倍野キューズモールに開業したSHIBUYA109ABENOは地元の女子中高生やヤングミセスの利用が多く、開店以来好調を続けています。(大学生やOLには評判は良くないのですがね)もともと私学が多い立地ですし、住宅地も近いのでコンパクトな店舗ですが「109」の世界観が好きな女性には使いやすい店舗なのだと思います。(いわゆるヤンキーさんですけどね)

 109は他の地方でも展開されています。(金沢、静岡)地方ではすべて「マルキュー」ではなく半分は一般的なSCブランドで構成されているそうですから、渋谷のとんがった店舗をアレンジするのにABENOの店は適当なモデルとなるかも知れません。「都心以外の109にABENO発の人気店を持って行くことであらたな掘り起こしができる」と考えておられます。
(地方ではヤンキー文化が根強いですからね・・・・まじめな話)

  以上商業施設新聞の7月5日号の東急モールズデベロップメントの大石社長インタビューから引用した情報をベースにしています。


 京橋花月の跡地利用にエールを送る

 京橋花月がこの11月で撤退するようです。平日の昼間が苦戦していたそうです。京橋は梅田、難波、天王寺に次ぐターミナルなのですが、いまひとつ核になりきれていない街です。中高生が多く、住宅地が近いという特性は阿倍野・天王寺にも似ています。OBPというオフィスゾーンとの連携が今ひとつとれていないのが、街が伸び悩む原因です。

 京橋花月のコンテンツが梅田、なんばに準じたものであったことがミスマッチだったのでしょう。

 500席のホールはコンパクトで良くできています。自主公演を交えた貸しホールとして面白いしかけができる空間だと思います。京橋の開発には少なからぬ思い入れがあります。当初、「花月」が入ると聞いて少し違和感もありました。これを機会に学生やOBPのOLさんを中心に集客する面白いしかけができると考えた方がいいと思います。           大衆演劇の劇場となりました。
                                                         (2011年07月14日)


■アメリカでさえ地産地消の動きが拡がっている〜ファーマーズマーケットが増加する理由

 肥満の国アメリカでもファーマーズマーケットが伸びている

 ウォルマートが地域小売業を駆逐し、ファーストフードが国民食になっているアメリカでは、「肥満人口」の比率がどんどん高まっています。

 米NPO「アメリカの健康基金」が、2008〜10年の期間、BMI(体格指数)が平均30以上の「肥満人口」の比率を調べた。首位のミシシッピ(34.4%)をはじめ、高い比率を記録したのは2位のアラバマや4位のテネシーなど、ほとんど南部の州だった。  米の国勢調査で貧困層が多かった州とおおむね重なっており、こうした州では糖尿病や高血圧症の患者の比率も高かった。貧困層が、安く栄養の偏ったもので食事を済ませがちなのが主な原因とみられる。(朝日新聞7月12日より)

 実はそんなアメリカでも農家が生産した収穫物を直接販売する「ファーマーズマーケット」が増加しています。中小農家の生き残り策として農務省も大々的にバックアップしているようです。カリフォルニア州、ニューヨーク州など西海岸、東海岸、中西部の大都市近郊に多く、肥満者の多い南部州とは対照的な市場があるのだと思います。

 ファーマーズマーケットがこれだけ増えたのには2つの要因があるといわれています。一つはアメリカ人の(一部の)健康意識の高まりです。ファーマーズマーケットでは有機農産物が主に扱われています。2つめは食品汚染による食中毒事件の増加です。トマトやピーナツバターへのサルモネラ菌の混入や、牛挽肉のOー157事故など多発する食中毒が顔の見える生産者が提供する安全、安心な食品を求める消費者ニーズに応えているということです。

 ハンバーガーのパテにも大腸菌が沢山ついているそうですが、火を通すから問題ないという人もいるそうです。(マクドナルドではありません)
 最近は商品が足りなくなると産地偽装なども増えているそうです。こういった話題ではよく中国がやりだまにあげられますが日本でも、中国でも、アメリカでも小ずるい人間はどこにでも存在するということでしょうね。

 販促策はコミュニケーション

 顔を合わせた人間のコミュニケーションが信頼という強みのファーマーズマーケットですが、販促費も年間数万程度だということです。一番多いのは「標識・看板・横断幕」で80.9%。「新聞」80.2%、「パンフレット・ちらし」65.6%と続きます。おそらくマーケットの開催は地元のニュースになるし口コミで拡がっているのでしょうね。

 関西ではまだ少ないですが、関東や九州ではファーマーズマーケットは日本でも多くなっています。お米は生産者から買うという人の割合も結構高いです。

                                       (2011年07月13日)
図ーアメリカにおけるファーマーズマーケットの数の推移
図122
(米国商務省プレスリリース)
■口コミとスマートフォン〜飲食店の顧客作りの課題

 口コミを作るための仕組みと口コミで伝えられるべき「中身」(コンテンツ)の検討を・・・

 飲食店は顧客数の減少と客単価の縮小に悩んでいます。販売促進の取り組みとして飲食店情報サイトやHP、ブログ。ツィッターなどのWEB情報の活用にも取り組んでいますが今ひとつ効果は上がらないようです。

 少し前に話題になったクーポンサイトも訴訟沙汰が起こっているように、収益改善にはつながらないようです。

 政策金融公庫の調査では圧倒的に「口コミ」の効果が高いようです。「口コミ」は今目の前にいるお客様、利用者から発信される情報です。お客様に満足していただき、人に紹介したいと思える店へのシンパシーを形成する事が最重要課題です。

 その他のツールもその課題に沿って活用方法を考えると期待される効果が整理されます。

 まず、初めてのお客様(==将来に顧客においでいただくためのツール。(値段の訴求だけでいいのですか?グルーポンなどのように超格安で来店していただいたお客様は継続的に利用していただく顧客にはなりません)利用者側からするとどんな雰囲気の店で、どんな素材の料理が提供されていて、客層はどんな人達で、値段がいくらか・・・特に会食や夕食では事前に調べて利用します。昼食利用は近隣の人達ですから手配りのチラシや看板で充分です。

 お客様に再度来店していただく販売促進策。ダイレクトメールやツィッター、ブログなどで旬の食材や新メニューなどをご案内する事です。人任せにするのではなく店主が得意な手法で継続して発信する事が重要です。
 並列して比較するモノではないですね。

 情報を広く求めよう

 飲食店の経営者は情報源の拡がりが少ないように思います。同業者の店を見に行くとか書籍テレビの2次情報に依存していることが多いという調査結果が出ています。同じ視点での同質な価値観での情報がぐるぐると循環している閉じた世界です。

 サービス業は拘束時間が長いので、どうしても情報のインプット先が狭くなってしまいます。それでも顧客としっかり対話できているオーナーであればいいのですが、同業者や周辺業者の「おともだち」としか情報のやりとりをしないとモノの考え方がいびつになってしまいます。
(いうまでもなく「おともだち」と「顧客」は違います。それが区別できない店が多いのは意外に北新地ではないでしょうか・・・)

 課題は大抵現場に転がっていますので、顧客の視点に立ったコンサルティングが提供されていればいいのですが、飲食関係のコンサルタントはいろんな出自の人がいることもあり、あまり頼りににされていないようです。(情報入手先 5.3%)

 スマートフォンを活用した顧客対応を

 飲食店に限らず、経営者は新しいギミック(特に自分がよくわからない)ものに弱いのです。IT企業の多くは何か新しい解決策(ソリューション)がありそうという幻想(イリュージョン)で商売をしている側面もあると思います。もちろんそうでない側面も沢山あります。

  さて、海外ニュースでスマートフォンを顧客作りに活用という記事を発見したので、早速ピックアップしてみました。ハードロックカフェがオーダー受注にスマートフォン経由のシステムを導入したというものです。なあんだ。
 
 特に飲食店の経営者にはツィッターでの情報収集から始められる事をお奨めします。スマートフォンでしたらパソコンを立ち上げる必要がありません。これは思うオピニオンリーダー(できれば自分の意見や価値観と異質な人を含めて)の発信を受信してみて下さい。
 この業界((マーケティング)に入ったときにでくるだけ沢山の業界紙、誌を読もうと思いました。自分の価値観や情報源と違う世界があることを知るだけでも大事です。

 その次ぎに、お客さん向けに毎日考えていることや旬の食材などについてつぶやく習慣を始めて下さい。ツィッターでもフェイスブックでもいいです。メルマガほど押しつけがましくなく、興味を持ったら読んでもらえるをメディアで発信を続けて下さい。

 顧客とのつながりができたら、例えば客の少ない雨の日にあまりそうな食材を、その日だけのサービス価格で提供するとか、新しいメニューの試食会の案内を発信するとかの日時を限定したサービスが可能になります。安売りクーポンをばらまくよりよほど効果的です。

 ただし、親密になってもお客様は「おともだち」ではないのでけじめはつけておきましょうね。

 常連客へのサービス

 お店が常連客に対して行っているサービスは、割引と言うよりは「食事のお好みを聞いてメニューにないものでもできる限りお出しする」「毎回ではないが良い魚を入手できたときに、サービスでお出しする」「メールやニュースレターで限定企画のお知らせする」などのコミュニケ−ションに関するサービスが多いようです。

                                                         (2011年07月12日)

図ー販売促進に向けた集客への取り組み
図123

図ー経営の参考情報の入手先
図124

「飲食店の経営取り組みと消費者意識調査」(2011/7 日本政策金融公庫)
■コンテンツ産業の可能性と関西での展開〜文化で何とか食べていけるために

 コンテンツ産業の市場規模は世界全体で130兆円〜日本は12兆円で米国に次いで2位

 ここでいう「コンテンツ産業」は映像(映画・アニメ)、音楽、ゲーム、書籍等の製作・流通を担う産業の総称と定義されています。「我が国のコンテンツ”クールジャパン”として海外からも高く評価されており、コンテンツ産業は海外展開を通じた成長を見込める有望な産業」とされています。12兆円の市場規模は2020年には20兆円に達する見通しといわれています。

   「コンテンツ産業の現状と今後の発展の方向性」2011年6月 (経済産業省商務情報政策局メディアコンテンツ課)

 コンテンツ市場の内訳を見るとテレビ、新聞、雑誌などのマスメディアのウェートが高くなっています。「コンテンツ」のソフト自体の仕様ではなくメディアの市場が大きい・・・ともいえます。かつては番組のフォーマットを海外に販売していたこともあるようですが、最近のテレビ、新聞などに国際競争力がある「コンテンツ」が提供されているとはとても思えません・・・背景にはマス媒体の広告費の縮小があるのだろうと思います。ユーチューブの投稿映像を編集して番組にしていたり、コミック原作のテレビ番組が多くなっています。

 マスメディアはコンテンツを広範囲に知ってもらうための装置になっても新しいコンテンツを創造する機能は期待できなでしょう。

 今後この市場を伸ばしていくためには、クリエイティブな才能の育成と、商品化のマネージメントスキルの育成といった2つの面での人材育成が必要と、上記レポートでも論じられています。特に若い人材がチャレンジしていく中で食べていけるだけの収入を得る仕組みが必要でしょう。

 関西でコンテンツ産業を育てるために

 京阪神を中心とした関西にはコンテンツのソフトの基礎になる文化的なストックは豊富にあります。ただ、コンテンツ産業がマスメディアの広告費に依存している時代が続いたために、広告主は効率の良い東京からの発信にシフトした為、関西の人材は東京へ流出してきたのです。テレビの番組制作費でも桁が違うと言われていましたからね。

 コンテンツ産業の肝の部分は「ソフトの魅力」です。最近元気のいいコンテンツは例えば「東京ガールズコレクション」であったり「会いに行けるアイドル(AKB48)」であったり「ご当地B級グルメ」であったりライブ感のある参加型のものが目立ちます。今まではとは違ったメディアミックスが必要なのです。

 マスメディアが劣化している中で関西のストックを活かしながら若い創造的な人材に活躍の場を与えていけば関西発のコンテンツ産業が伸びていく余地は十分あります。

 具体的な構想はおいおい論じていきますが、キーポイントのひとつは学校(大学、専門学校)であり、加えてステージと、ネットの放送局(ニコニコ動画のニコ生ではコンテンツによっては5〜10万人の視聴者があります)の整備です。
 組み合わせで世界に向かって情報発信できる手段を持つことです。お茶の間のテレビでWEBサイトが見られるようになるこれからがチャンスです。

 人によっては「学校」とか「文化」「劇場」は金食い虫としか考えないでしょうが、産業の力を強めて、ビジターを招くためには「博打場」よりよほど効果的であると考えます。(本当のカジノのメリットはショーなどのステージでのコンテンツ産業の収入源になるとのことなのですが・・・・・)

                                                (2011年07月11日)
図ー国内コンテンツ市場の全体像
図125
経済産業省による09年の市場規模

図ーマス媒体広告市場の推移  (億円)
図126
(経済産業省 特定サービス産業動態統計)
■GMSの生き延びる策のひとつは商圏特性に応じたSC化

 黒字の食品スーパーが上層部の赤字を穴埋めしていた「さぎ沼とうきゅう」

 昨日ご紹介した東急ストアの業態転換について本日付の繊研新聞に詳しいレポートが掲載されています。商圏が縮小していく中で黒字の食品スーパーが赤字の上層階(衣料品、住居余暇品、日用雑貨)の赤字を穴埋めする収益構造になっていたようです。

 GMSはかつては家電や日用雑貨、実用衣料などの商品の価格が安くて、ワンストップショッピングができるということで、団塊世代の均質な市場で圧倒的な競争力を持っていましたが、今はどこのチェーンも食料品以外の売場の収益をあげるのに打つ手がない状態です。ダイエーの経営再建も食料品への特化という方向で進められていましたよね。

 東急ストアは業態転換に当たって近隣住民へのアンケート調査などのマーケットリサーチを徹底して行いコアターゲットとなる30〜40歳代が何を求めているか分析したそうです。
 鷺沼と自由が丘は全く商圏や商圏特性が違います。年齢構成、客の可処分所得、駅乗降客、平休日の来街者などの商圏特性や顧客増に応じて、リーシング内容を変えています。新しく作られた生活雑貨と日用衣料品の新業態「マイライフマート」(過剰人員の受け皿でもあったようですが)の商品構成や内容もまったく変えています。

 大手スーパーのイトーヨカドーも元伊勢丹のカリスマバイヤーを承知して衣料品の改革を図りましたが、うまくいかなかったようです。・・・これは戦略を間違えましたね。伊勢丹であれば伊勢丹が好きな人だけを相手にしたファッションを提供する事で魅力が高まるのですが、GMSの衣料品の基本は「実用品」なのです。

 ユニクロでさえ、j+などデザイナーとのコラボは中止しています。ユニクロの強みは機能性と価格、それとファッションの邪魔にならないファッション性です・・・・スーパーの衣料品は中途半端に「ファッション」を意識して逆に垢抜けなくなっています。
 また、どんなに有能なデザイナーの商品でもGMSの商品群においたとたんに価値が色褪せます。(時々、昔の有名ブランド商品がGMSの中でコーナーを持っていますが、零落した印象が還って痛々しい)
 
 SC化することでテナントの組み合わせできめ細かい商圏対応が可能になる

 デベロッパーとテナントはつながりが強くて、だいたい組み合わせが決まってきます。きめ細かい地域対応を行うためには立地、商圏特性に応じてテアンントの組み合わせ、テナントの業態展開を変えていく必要があります。
  GMSの業態転換で収益部門の食品スーパーと組み合わせるテナントも安易にワンパターンにすると結局全体の魅力が失われます。

 直営でなければリスクは少なくなりますが、逆に細かいMDのコントロールが聞かなくなります。デベロッパーとなるGMS側としては、今まで以上に商圏特性や顧客の利用状況、各店の売上げ分析などの情報の分析や共有化が必要になります。「指導する」根拠を明確に持たないと説得力がなくなります。

 「ワンストップショッピング」は顧客の貴重な時間を節約しつつ、時間を楽しむ商品やサービスを提供する2面性からなりたっています。(郊外の大型モールでの買い物は駐車場の出し入れ時間を含めて時間をくいつぶす    苦役となってきています)
 その為にも顧客のニーズを深く掴んでいく必要があります。

                                              ((2011年07月08日)

 ファストファッションの伸び悩み

 一時あれだけ話題になった「H&M」や「「フォーエバー21」といったファストファッションはその勢いが落ちています。心斎橋の店もかなり空いています。最新のファッションを安く提供できるという触れ込みでしたが、品質面で日本の消費者には今ひとつ受け入れられないようです。しまむらの方がよほど質がよいということでしょうか。(新聞のヘッドラインはいいときは大きく取り上げられますが、悪い傾向についてはあまり大きく取り上げないので要注意です)
その後、アベノミクスが話題になる中で,デフレ業態がまだまだ元気な様子が伝えられています
■GMSの業態転換モデルの順調な滑り出し〜東急ストア「フレル」業態

 東急ストア既存GMSをSC業態に業態転換
                       〜「フレルさぎ沼」(4月下旬)「フレル・ウィズ自由が丘」(5月中旬)


 東急ストアは中型のGMS業態転換モデルとして、日常性をコンセプトにした「フレル」業態をリニューアルオープンしています。駅前物件でこの規模のGMSが時代に合わなくなってきてるケースが多いので、その成否に注目したいと思います。

 「フレルさぎ沼」は川崎市宮前区の東急田園都市線鷺沼駅前の店舗で1978年に開業した9,000uの4層の店舗です。新しい店は「スーパーマーケットと親和性の高いテナント」で構成されており、核店舗である東急ストアは1,900uにすぎません。

 コンセプトは「マイデイリーパレット」毎日の私をちょっと楽しくする出会いがある商業施設を目指しています。
 商圏人口は半径3km圏で約32万を想定。年商は110億円が予定されています。ターゲットである30〜40歳代の来店は2ケタ増であったそうです。総菜店やスイーツショップ、イタリアンレストラン、ニッセンの運営する「スマイルランド」(首都圏初出店)など生活雑貨などのライフスタイルショップが強化されターゲットの生活シーンを想定したテナント構成になっています。・・・従来顧客のシニアミセスには戸惑いもあるようです。1ボックス315円の当日配送サービスは評判がいいようです。

 配送サービスの価格設定について。関西でチェーン展開している食品スーパーが配送業者をひとつの業者にまとめて安くさせようとしていましたが、むしろ地域地域、店舗店舗でそこに強い業者と組んで安くさせる方がベターだと思うのですが・・・。配送という顧客接点からのアプローチも店舗単位で考えさせればいいのです。

 「フレル自由が丘」は自由が丘駅徒歩1分の立地で1981年に開業した「自由が丘とうきゅう」5,000uを改装したものです。半径3km圏の41万人を商圏人口とし、約60億円を売上予定としていました。改装前は半径2km圏が1次商圏でしたが、改装により商圏は5km圏にまで拡がったそうです。1階のイタリアンやベーカリーショップが集客に貢献しているようです。

 今までは、自由が丘に広域から集まってきていた来街者をとりこめていなかったのですね。

 コンセプトは「マイフェバリットストア」自由が丘生活者と来街者が等身大で楽しめる時間を提供する事を目指しています。
 東急ハンズの女性向けライフスタイルショップ「「ハンズビー」やカルチャー教室「東急セミナーBE」などグループ力を結集して月坪売上は28.6%増と好調です。
 
 イタリアンフードマーケット「EATALY」ではスタンディングバールを設けてカフェやパニーノ、イタリアンジェラートを提供しています。来街者の多い街なのでいい着目点かも知れません。

 駅立地の商業施設、GMSの中型店の改装の方向性、テナント導入での業態の活性化

 この事例は以上の3つの課題を検討するときのベンチマークになります。

 駅立地の商業施設に関しては、ターミナルなどの駅の活用はある程度方向性は見えていますが、5〜8万人規模の駅の活用は立地や駅の特性によって考え方がまだ固まっていません。(東急鷺沼駅 約6万人 東急自由が丘駅 13.6万人)地方都市ですと特に郊外のショッピングモールとの競合を気にするデベロッパーも少なくありません。

 駅前に多く残る旧タイプのGMSの改装は多くの場合、食品スーパーへの業態転換が選択されますが、お客様にとってのワンストップショッピングの利便性をどう考えるか整理しておく必要があります。賃料収入だけでテナントリーシングすると、商圏は拡がらないままです。

  テナント導入での業態の活性化ではどこに効果を求めるかが問われます。例えば、ターミナル立地の百貨店が大家さんに賃料を払った上で、例えば東急ハンズのような業態をサブリースするしたら・・・通常、百貨店が求める3割の利益を確保できているのでしょうか?下手をすると赤字になります。それでも集客装置と考えられればいいのです。何が本業でどの顧客のどの生活シーンが自社の価値を提供する領域かを明確にさえしていればOKです。(東急ハンズはオフィス賃料程度の賃料は出せるようですが、商業床に比べると低い水準です)

 昔のGMS業態が果たしていた基本的な生活のワンストップショッピングはやはり必要な機能だと思います。郊外の大型ショッピングモールは無駄な時間がかかりすぎてかつ面白くない、貴重な時間はもっと別の事に使いたいと思う人もこれから増えていくと考えています。

                                      (2011年07月07日)
■アジアの都市のコストと市場の魅力

 アジア主要都市の人件費比較から〜ソウル、香港、台北の購買力は突出している

 ジェトロがまとめているアジア主要都市の人件費比較を見ると、香港、ソウル、台北の中間層(管理職)の賃金水準と向上ワーカーの賃金水準が高いのが目立っています。香港では少し格差が目立ちます。

 アジアで製造を行う製造業にとっては賃金水準が上がるのは頭が痛いことですが、流通・小売業にとっては中間が厚くなると日本の小売業のノウハウが活かせるので、好ましい傾向でもあります。マーケットが拡大してるともいえます。

 今までにもアジアに出店している小売業の事例はありますが、滞在している日本人であったり、一部の富裕層が購買層になるので、単に冷房があるところに涼みに来るような一般大衆相手の商売と大きな乖離がありました。
 超富裕層相手のビジネスはニッチとしては面白いですが、小売業の本流ではないです。

 中国やインドでも沿岸部を中心に賃金が上昇しているとはいえ、まだまだ購買力ベースでは香港、台北、ソウルには及びません。北京、上海といった大都市でも中間層はまだまだ薄いのだなあと感じます。

 韓国新世界百貨店が藤巻幸夫氏とコンサル契約

 韓国の老舗新世界百貨店が伊勢丹のカリスマバイヤーからフクスケ足袋、イトーヨカドーと華麗に転身を重ねてきた藤巻幸夫氏とコンサルティング契約を結びました。新世界百貨店は日本の小売業のノウハウ導入には熱心で、過去にもアブアブ赤札堂出身の大久保孝氏をコンサルに招いたり、西武百貨店と業務提携をして人材育成の協力を求めたりしています。

 日本の小売業がアジアに進出する動きが再び強まってきています。ソウルではある意味「日本」ブランドが通用します。(過去の戦争での行いへの反感と日本文化への憧れの二律背反ですが)かつては日本でもアメリカの流通事情の紹介がありがたい時代もありました。アメリカ企業との提携が差別化ポイントになったことも懐かしい思い出です。いずれ韓国で日本ブランド、日本のノウハウが珍重される時代も終わるでしょう。かつてサムスンなどのメーカーに日本のメーカーの技術者が週末毎にアルバイトに通っていましたが、もうその姿もあまり見かけません。
 
 実質的なノウハウとして日本の小売業、小売業関係者が提供できるノウハウはどこにあるのでしょう。イオンモールのような大規模ショッピングセンターはある程度マニュアル化されたセオリーがあると思います。
 システムというより属人的なノウハが中心なので欧米のような契約で業務範囲が明文化できるかどうか・・・・前述の大久保氏は自らソウルに住まい「店長」、子会社の社長と現場で動いておられました。お嬢さんもわざわざ梨花女子大(ソウルの超名門校)に入学させていたほどです。

 藤巻氏は1〜2ヶ月に一回訪問し指導するというと報道されていますが、日本の小売業の名誉のためにも是非、ソウルに移住するぐらいの注力をしてノウハウを全て投じて明洞の新世界百貨店本店のリニューアルを成功させて欲しいものです。

                                                          (2011年07月06日)
図ーアジア主要都市月額賃金の比較  (米ドルベース)
図127
ジェトロ2010年調査
■郊外駅前に人を呼び戻した「くずはモールリニューアル」の次のステップ

 郊外の駅前再生の成功例

 樟葉枚方市内でも北に位置し、京都府と境を接しています。1972年に公団男山団地9,000戸(京都府八幡市)、京阪電鉄のローズタウン5,500戸のタウンセンターとして駅前に「くずはモール」が開業しました。

 ダイエー、イズミヤといった2つのスーパーと松坂屋の1D2Sを核としたオープンモール型のショッピングセンターは日本ではあまり数が多くないタイプのショッピングセンターでした。

 21世紀を迎えて、ニュータウン住民の高齢化、郊外の駐車場が完備したショッピングセンターとの競合などから駅前の空洞化が進み、夜間には通勤通学の帰宅者しか通行していないということで治安上の問題も指摘されていました。

 駅に至る道路は常に混雑していたので自動車によるアクセスを促進することが難しいといった課題もありました。

 乗降客が1日に59970人というのは同じように百貨店を持つ堺市の堺東駅の59,000人、同じく泉ヶ丘駅の46,000人と比べると遜色はありませんが、西宮北口の93,783人などと比べると決して多くはありません。通勤通学者プラスの集客が必要です。

 2005年に全面的に改装オープンした結果、年間来店者1720万人、総売上333億円(2007年)と大きく売上を伸ばしました。単純平均で1日4.7万人ですから乗降客の実人数3万人を大きく上回る集客力です。

 商圏人口は半径5km圏50万人。平休日比は1:1.6から1:2と休日の来店が増えています。来店手段としては公共交通;マイカー:自転車徒歩がほぼ均等にわかれています。2,000台の駐車場は平日2〜2.5開店、休日4回転と心配されていた駅前への交通集中は慎重な動線計画によって回避されています。

 オープンモールから3層のサーキットモールへの変更、松坂屋の撤退に伴う京阪百貨店による専門店運営などの変化と共に、駅前の高層マンション699戸の開発が若い世代を街に呼び込んだともいえるでしょう。(購入者の半数が30〜40歳代)マンションは当初は広域からの購入を見込んでいたようですが8割が半径5km圏のエリアの居住者だったそうです。

 このエリアは広域の道路が整備されていて、長岡京や伏見区、宇治市からの来店も多いようです。逆に郊外型の大型SCとの競合が心配されていましたが、旧くずはモールの環境をうけついだ高いアメニティもあってほとんど影響はないようです。

 2013年増床リニューアル

 3月に発表された増床計画では、旧松坂屋の西館を建て替えて、営業面積を5万uから7.2万uへ増床。衣料や雑貨、インテリアを中心にしたテナントを集めるほかに、家電量販店やシネマコンプレックスの誘致も検討していると言うことです。
 売上げ目標は現在の320億円から500億円規模に引き上げることを目指しています。
 ヤング層の来館が多くヤング向けの商品を強化するとも聞いています。

 駅には体育文化施設も揃っていますし、くずはのパブリックゴルフコースもありますので街全体として、時間消費型の機能が強化されることになります。


 駅であることの強み

 同じ程度の乗降客数である堺東駅前がなかなかうまくいかないことや、ターミナルでなくても駅立地の優位性がどこまで、どれだけあるか考えさせられる事例です。

 特に、地方や郊外の駅前開発で、郊外SCとの競合のポイントが車利用客の争奪戦ばかりにスポットが当たるのをみていると。例え、駅立地では駐車料金が無料でなくても充分棲み分けができるのはずだと思います。
 まあ、お客様に聞くと「駐車場を無料にして」という要望があがってくるのですけれどね。

                                                    (2011年07月05日)
■立地ポテンシャルを読むときの注意点〜統計は鵜呑みにできない

 住宅ローンが家計を圧迫しているエリアは?

 郊外住宅地の調査では、住宅を購入した家庭では住宅ローンを払うために家計を節約しているのでまあり商業施設のお客さんにはならないという話は良く聞きます。

 総務省の実施している全国消費実態調査では世帯年収や貯蓄額、消費支出、ローンについて市・区レベルで集計されているのでローンに関係する項目をピックアップして比べてみました。

 大阪都市圏では藤井寺市、宝塚市、京田辺市がローン比率も高く、負債金額も大き世帯が多いようです。経験値からしても違和感のない結果ですので大きな間違いは無いと思います。

 元のデータを加工していて大正区のエリアの数値が異常な値を示していることに気がつきました。ここでは取り上げていませんが4,000万円以上の貯蓄を持つ世帯が5割を超えていて、給与住宅に住む人が8割弱います。(住宅土地統計調査の数値と大きくかけ離れています)サンプル調査ですが、通常にきちんとサンプリングされていればこのような偏りはでません。

 私自身は大規模調査の現場管理から離れて長いのですが、現場での調査の管理がかなり甘くなってきているのだと推測されます。国勢調査ですら回収率が落ちていますし、先日行われていた。パーソントリップ調査もかなりアバウトな実査だったという印象があります。
 通常、集計段階でもチェックが入って再調査あるいはデータの補正が行われるモノなのですが、スルーされて公開されています。コストダウンもあって調査の実施段階はかなりルーズになっているのかもしれません。

 統計は鵜呑みにできない・・・・のか

 統計嫌いの人は一部のサンプリングで全体はわからないとして統計数値を攻撃します。実際にはサンプリング調査でもきちんとランダム性を確保してサンプリングされていれば問題なく使えます。

 またおかしな数字があれば分析の段階で排除されます。

 この調査は各調査区で12サンプル抽出し拡大推計しているモノなので本来は市区別に分けて集計した数値は使ってはいけないのだと思います。ただ、私自身もお客様も世帯年収や、資産、貯蓄額など市場のポテンシャルを測る数値が知りたいのでつ、このような統計数値を探し出して使います。

 最近は地図上にデータを落とし込むデータベースが使いやすくなっています。500mメッシュ毎に世帯年収などを色分けするのは簡単です。
 ただ、それらにしても元のデータは公的な統計です。そこからさらに推計するのですが、実際の所、統計数値を元に全国を同じ基準で補正するのは無理です。地域によってその数値の背景は違います。


 いくつかの統計数字を比較して、自分でも調べて、かつ現地を歩かないと、間違えてしまうことも多くなりそうです。商業でも、住宅開発でもピンポイントのエリアのポテンシャルが鍵になることも多いからです。

 先述した事情で公的な統計数字もかなり誤差が大きくなっていますので、注意が必要です。簡単にマップ化できるようになてきただけに、気をつけないといけません。

 東京の雑誌の住宅地評価のランキングで、大阪周辺の高額所得者居住地として、いきなりあまりしっくりとしない地名があげられていたのも、おそらく、推計の段階での錯誤があったのだと考えています。

                                              (2011年07月04日)

図 総世帯に占める住宅ローンのある世帯             図ー総世帯に占める負債が1,500万円以上ある世帯比率
図128
2009年 全国消費実態調査  総世帯の集計

図ー貯蓄額が3,000万円以上、4,000万円以上の世帯の比率〜大正区が突出している?これはありえない・・・。
図129


■高級スーパーにならぶ楽天ランキング1位の「割れおかき」への違和感〜新しいMD論入門編

 ネットで価値を創造することの困難

 淀屋橋の食品スーパー「コーヨー」はオフィス街の中の高級食品スーパーとして定着しています。昨日、店頭を見ていて楽天ランキング1位という「割れおおかき」の大袋が並んでいて、激しい違和感を感じました。・・・この商品、確か近くのスーパー銭湯の売店に並んでいたものと同じ・・・・。製造元は地方の菓子メーカーで、メーカーとしてこだわりを前面に出したモノではなく、安さ、お得感で訴求している商品です。

 楽天ランキングは知られているように、キャンペーンで価格訴求すればある期間「1位」になれます。「1位」にすることがビジネスモデルです。美味しいとか口コミで広まっている商品ではなく、「こだわりの食品スーパー」のエンドに山積みする商品ではありません。

 コーヨーは生鮮や惣菜はまだいいのですが、お菓子、パンが苦手なようです。一部「成城石井」の商品もコーナー化していますが、お菓子売場には地方のメーカーの安い商品も沢山並んでいます。(同じように高級スーパーを志向する阪急オアシスの菓子売場も地方メーカーの安いだけの商品が多くて〜カステラの端とか〜、お菓子・スイーツに関しては全く信頼できない店になっています・・われおかきも置いています)

 一部の商品・売場でストーリーが崩れると全体の店への信頼性にも波及します。

 ネットで商品を売るときの最も手っ取り早い方法は、リアルな市場で名前の売れている=価値の認められているブランド商品を安く売ることです。あるいは、リアルな市場でよく売れている商品によく似た商品を安く売ることです。

 WEBの販売ページに誘導するにはとにかく「価格訴求」でサイトへの来訪者を増やすことしかありません。WEBモールの「ランキング」で上位に表示される、価格比較サイトで上位にランキングされる・・・その為のアクションが「WEBマーケティング」で一般的な「マーケティング」とはかなり違ったものです。

 (「アフィリエイト」ブロガーによる誘導という手法もありますが、それについては稿をあらためます)

 そのような背景を背負った「割れおかき大袋づめ」を大きく取り上げることで、店全体のストーリーに狂いが生じます。〜少し高くても美味しいモノを揃えている店から安くて量が多い商品を置く「よしや」のような店として認識されます

 MD(商品政策)というと価格帯、ターゲット別等の商品の幅と奥行きで計数化されることが多いのですが。それぞれの商品の持っている背景となるストーリーをどう組み合わせるかという視点が欠けています。

 「割れおかき」という品種をある価格帯で揃える事が大事なのではなく、例えば「もち吉」の割れおかきを数量限定で提供するといった「作り手のこだわり」の背景を見せる必要があるのです。「楽天1位」はブランドにはならないのです。


 通販で成功しているメーカーは、生産者のこだわりや素材へのこだわりについて、イメージ作りから徹底的に行っています。

 百貨店がWEB通販で持つ強み

 百貨が運営するWEBモールは中々成功事例が少ないと言われています。店頭で扱っている商品を安く売るわけにはいないので、「価格訴求」の勝負には勝てないからです。

 百貨店がシニア層中心に持っている「信頼」は競合との差別化の武器になります。例えば「割れ梅干し」を三越が通販で販売したとすると、三越がセレクトしたという事だけで一定の質が担保されたように受け止められます。
 これは大きな武器になります。食料品に限らずこだわった商品は小ロットで売り切れ御免のケースが多いのでひとつひとつのメーカーのこだわりや信頼性をWEBサイトやチラシで定着させるには膨大な時間がかかるわりに販売者の売上利益は大きくありません。

 販売者の信用である部分について消費者への説明に関しては最初からクリアできるということは大きいアドバンテージです。(メーカーとして、信頼してもらえるというスタート地点から話を始められます

 少しづつでも息長く売っていきたい商品は楽天モールより百貨店を選びます。

 小売業者がメーカーを選別する必要があるように、メーカーも小売りチャネルを選別する必要があります。

                                               (2011年07/01)

 「楽天ランキング」はWEB上のショッピングモールの代表例としてあげただけで、特に同社に問題が集中しているとかいうわけではありません。
 6月
■京阪神の百貨店支出の県外流出状況〜京都は婦人ファッションの大阪依存が強かった      

 滋賀県の百貨店消費は県外流出の比率が高い

 滋賀県には近鉄草津店、西武大津がありますが、京都方面や大阪方面に通勤している人も多いので流出率も高くなっています。大阪のベッドタウンといわれている奈良県よりも流出率が高くなっています。
 滋賀県、奈良県は地元の富裕層も多いので意外にお金を使ってくれる人が多いのです。毎月の消費支出も大阪より高くなっています。
(滋賀県29.8万円 京都府26.4万円 大阪府26.2万円 兵庫県29.2万円  奈良県32.0万円 和歌山県 25.7万円)

 兵庫県は百貨店消費の県内完結率が高い

 兵庫県は京阪神で最も百貨店消費が県内で完結している比率が高くなっています。大阪へ流出しているのは化粧品。神戸ファッションのプライドがあり、洋服は県内で購入するようです。好みも明らかに違いますからね。化粧品は大阪の百貨店での購入も多いです。

 京都府は兵庫県に比べると府外流出が高い、特に婦人服は京都市内の百貨店だけでなく大阪の影響を強くうけています。

 奈良県も大阪の影響が強い地域ですが、特に婦人服が大阪へ流出しています。

 和歌山県も婦人服、化粧品、食料品の百貨店消費が大阪へ流出しています。かつては和歌山近鉄の他にも丸正、大丸和歌山店などがあったのですが、今は近鉄と島屋の小さな支店だけしか百貨店は残っていません。

 新しく梅田に開業したJR大阪三越伊勢丹は沿線の中で神戸方面のお客様をどう取り込むかが鍵ですが、もともと大阪に対して「対抗意識の強い地域だけに顧客拡大は容易ではないでしょう。

                               (2011年06月30日)
図ー百貨店消費の府県外流出率〜奈良、京都、和歌山は大阪へ流出している
図130

2009年全国消費実態調査 購入地域集計から加工  2人以上の世帯の集計値
■クリエイティブ産業に関する関西のストック整理のためのワークシート

 「関西型」?のクリエィティブ産業育成のためのワークシート

 24日の論考でいい放しではつまらないので、整理を進めるためのワークシートを作成して公開いたしました。関西の文化のストックを活用したグローバルな情報発信のためにも、関西のビッグプロジェクトや地域活性化に携わる方々は一度中身を埋めてみて下さいね。
                                            (2011年06月29日)

 コンテンツを伝統文化とオーセンティックな文化、ポップカルチャーといった文分類を行うと
時間軸も反映されてきて、「資源」がどう継承されて次の世代に形を変えて花開くかがストーリーとして整理できる利点があります。

 ジャンル分類は様々な考え方があるますが、少なくとも分類レベルは揃えなくてはいけません。ジャンルを越境することで新しい文化が生まれます。

 コンテンツの中身を埋めて整理するワクワクする作業は皆様に残して置いてありますので。ご自身で埋めてみて下さい。

図131
■感性サービスを売る食ビジネス

 顧客の感性に直接訴えかけることで顧客に選択されるサービスが付加価値向上につながる

 「感性」という概念についてはよくわからないのですが、経済産業省は業務効率化による収益性向上には限界があるとして上記のように述べています。「平成22年度 感性サービス送出促進事業感性サービス撰」でしょう回されている事例の中で「食」に関連するビジネスをいくつかご紹介します。

「比叡ゆば」(株式会社比叡ゆば本舗 ゆば八)

・スーパーシェフに食材として売り込み、精進料理以外での調理法と共に海外進出
・各界の著名人へ社長が直接アプローチしテレビ、新聞、雑誌で広く紹介される
・料理講習会、ゆば釜工房体験見学ツアーの開催
・地元食材の利用(国産大豆)
・大学の非常勤講師など社長による各地の講演活動
・「三色刻みゆば」「湯葉で包んだお味噌汁」「豆乳おからうどん」「豆乳おからパン」などの新発想の商品

「たねや」

・近江の風土や伝統、文化を大切にした「鄙美」を京都の「雅美」と対照して提唱 農作物の素材が身近にある環境、生活文化の美しさを訴求
・県内外の33店舗は1店舗1店舗異なるイメージ〜近江の特色と出店地域の特徴を掛け合わせた独特の美を演出
・ITによる需要予測,WEBアルバムによる店舗管理
 〜以前、メリーチョコレートカムパニーの原 前社長に取材したことがあります。お菓子業界はロスが多くて利益を圧迫するのですが、需要予測をきち
 ん組み立てて、かなり高い精度で需要を予測し、高い水準の利益率を実現しておられました。今はロッテに吸収されてしまいましたが。


「がんこフードサービス」

・平成2年から文化財や歴史ある邸宅をできるだけ原型のまま残して日本料理を展開する「屋敷シリーズ」を展開。高級料亭を思わせる落ち着いたたた ずまいにもかかわらず、値段は「うまくて安い、そして楽しい」の理念を引き継ぐ。

 豪商辻本家の屋敷を利用した「平野郷屋敷」を始め「高瀬川二条苑」「三田の里」「和歌山六三園」「宝塚苑」「岸和田五風荘」の6店舗を運営。
 ほとんど改装しないため、サービス導線が歩行率であったり、庭園の整備や照明など手間がかかりますが、冠婚葬祭の利用や予約比率の向上で食材ロスや人件費の効率化が図れ、教育効果もあったようです。

 お屋敷の利用は豆腐料理の「梅の花」などにも先例があります。都心でも旧遊郭を利用した百番チェーンの「飛田百番」なども観光スポットになっていますね。

                                                  (2011年06月28日)
■中国向けのEC市場に商機

 中国のインターネット利用者の過半数は日本やアメリカの商品やサービスをネットを通じて利用している

 中国のネットユーザーの過半数が日本やアメリカの商品・サービスをネットをつうじて利用しています。前年の調査に比べて1割伸びており、市場規模は2177億円になります。日本からの購入額は968億円。2020年には3,826億円から1兆2,581億円の市場規模になると推計されています。

 利用者層は男女とも30歳代が多くなっています。女性では10代、50代でも半数近くがWEBサイトでの購入を経験しています。

 日本からの購入で多い商品は「衣類アクセサリー」、「書籍・雑誌」「医薬・化粧品」「食品・飲料・酒類」などです。利用頻度も月に1回くらいを中心に高くなっています。
 
 日本人がアメリカや中国のサイトを利用するよりもずっと大きな比重を占めています。

 人口に占めるインターネットユーザー数も34.3%まで普及しています。4億5,730万人のネットユーザーが存在する大きな市場です。課題も多いでしょうが面白い市場であることは確かです。

 中国からの購入はブルーオーシャン

 日本人がアメリカから購入している322億円に比べて中国から購入している24億円は非常に低い金額です。アメリカ人は中国から653億円と日本から購入している613億円を上回る購入実績があります。
 日本では中国製品への信頼性は低いのですが、「衣類・アクセサリー」「音楽・映像ソフト」「スポーツ用品」などアメリカ人が購入している商品の中身を精査すると、逆に日本で中国商品をダイレクトに販売するビジネスの形が見えるかも知れません。商品への信頼性の担保が鍵になります。


                      (2011年06月27日)
図ー日本・アメリカ・中国のネット利用者が国を超えてWEBサイトで購入する利用率 %
  (BtoC)
図132


図ー越境電子取引(BtoC)の市場規模 日本・アメリカ・中国の比較  単位億円 
図133
平成22年度 我が国情報経済社会における基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告書 経済産業省
■関西のクリエイティブ産業に関するストックについてきちんと整理しないと大変なことになりそうだ

 関西のコンテンツに関するリーダー達の認識不足

 たまたま、目に触れただけで、下記レポートを取り上げたのには他意はありません。「クリエィティブ産業に関する関西のストック」について大事な課題なので参考にしようとダウンロードしただけなのですが・・・・。(経済産業省 委託調査からダウンロードできます)

 どこからつっこんでいけばいいのでしょうか?これでは整理になっていません。ジャンル分けのレベルもばらばらですし、事例についてもマニアックな80年代のヒップホップグループがあると思えば、漫画は手塚治虫だけですか・・・・?メガアートは奈良の大仏ですか?????太陽の塔の方がしっくりしませんか?まじめに作成されたレポートは思えません。

 関西であるなら「映画産業」や京都の「漫画ミュージアム」「京都アニメーション」もグローバルな競争力のあるストックですね。「任天堂」「カプコン」や「吉本興業」はスルーですか?「海洋堂」は?音楽はヒップホップだけですか?例えばチアーリーディングの強豪校があるのをご存じですか?

 意図があってピックアップしたモノであればOKですが、どうもそうではないようです。このテーマであれば、それぞれ突っ込みどころが沢山あると思います。なんでスポーツに「大阪プロレス」が入っていて「セレッソ大阪」「ガンバ大阪」が入っていないのか・・・とか。

 関西の文化のコンテンツについては一度アカデミックな手法で、きちんと網羅的に整理してからその活用を考える必要があります。大事な資源ですからね。リーダー層に知見も思い入れもなくて単に国の施策に乗ってお金を引き出せるから同調していると疑われても嫌ですよね。

 おそらく、この調査報告書は工場跡地の活用計画にからんだ調査だったのでしょう。とりまとめも土木建築系のコンサルなので得意テーマでは無いと思います。何故土木屋さんが文化を語るのか?少なくとも土木屋さんが語るべき文化はポップカルチャーではないでしょう。
 
 誤解の無いように言えば、個別の会社(コンサル)とか部局を揶揄しているのではなく関西を活性化する文化コンテンツが、この事例に限らず全般的にに軽んじられていることが情けないのです。

 多くのプロジェクトで抽象的な言葉だけが一人歩きしています。だから「ナレッジキャピタル」も腑に落ちないし、心に響かないのです。

 ただし、所轄官庁を始め関西の都市作りのリーダーが集まって委員になっているのですから、文化に関連するコンテンツへの認識がこのレベルにとどまっていては、資源としての活用はおぼつかないでしょう。大事なテーマですから、手を抜かずにちゃんとやりましょうよ。

                                                           (2011年06月24日)

「関西型のクリエイティブ産業」って何?


図134
図135
平成22年度関西のコンテンツ等を核とした人的ネットワーク構築に関する調査事業報告書  平成23年2月 p7より
■「大丸」の経営改革と百貨店のこれから

 「梅田百貨店戦争」に生き残る道

 4月、5月の京阪神の商業施設の売上を評して「一極集中」と断ずるのは早計でしょう。新しい施設、改装した施設がそれぞれ売上を伸ばせば
既存施設は影響を受けます。

 梅田周辺に回遊する人をどう惹きつけるか、開業ブームが一巡した後に真価が問われます。
 大丸梅田店は東急ハンズ、ABCクッキングスタジオ、ポケモンセンターの導入などが話題になり5月の入店客数は前年同月比2.5倍になりました。
これから入店客を売上につなげて、利益につなげていく仕組みがうまく稼働するかがポイントになります。2009年、旧そごうに「うふふガールズ」を中心とした北館をオープンさせた心斎橋店は5月の売上は前年比マイナス9.4%でした。

 大丸は旗艦店をもたない百貨店グループ

 大丸という店は関西では老舗でステイタスもある店ですが、グループの旗艦店というものを持ちません。

 売上で言えば心斎橋店が883億円。神戸店が803億円。京都店が693億円。伊勢丹新宿店、島屋東京店、西武池袋といった地域での圧倒的な一番店がありません。阪急阪神のようにドミナントエリアもあろません。(強いて言えば、一番店の神戸店と新長田店、須磨店、、芦屋店のある神戸地域でしょうか・・・あと京都。神戸、京都での大丸のブランドロイヤリティはかなり高いです)

 東京では東京店はデパ地下を利用する店としてOLさんに人気がありますが、ひょっとすると「百貨店」としては認知されていないかも知れません。jフロントリテイリングとして本社を東京に移してイメージのギャップを実感されたのかもしれません。「井の中の蛙大海を知らず」として「目から鱗が落ちた」のかも知れません・・・・目の中から鱗が落ちたのではなく、逆に目の中に鱗が飛び込んできたのかもしれません。

 いっそ香港か上海に本社を移すのならともかく、東京という中途半端にグローバル化された立地から「世界」を見ることでお思い違いをしてしまう事があります。本当に良い意味で「優良な地方百貨店」の集積である大丸が「セントラルバイイング」を取り入れて日本全国の店舗をコントロールできると考えたのは錯覚だと思います。(西武百貨店も業務改革のために一時チェーンストア理論に凝っていましたね)

 たちの悪い「経営コンサルタント」(チェーンストア理論とかランチェスター戦略とかね)の口車に乗ったとしか考えられません。

 神戸大学経営学部がまとめたディスカッションペーパーで紹介されている大丸の経営改革の経緯をみても、コンサルタント誘導の匂いが濃厚です。まあ、いいこともたくさんしてきたのですれどね。

表ー大丸の経営改革
図136
(神戸大学 経営学部 ディスカッションペーパー 2011年5月から抜粋整理しました )文責は当社

 現場では、ファッションなどの専門知識ではなくマネジメントとしての専門性が求められている・・・とのことです。「自主運営売場「共同運営売場」「委託運営売場」からさらにテナント運営の比重が高くなっていくのではないかと思います。銀座松坂屋は森ビルと一緒に建て替えて複合ビルとなりそうです。

 百貨店の枠を越え社員の能力の洗い直しと、評価基準の設定をしていかないとこれから伸ばす領域と従来の百貨店業務のスキルとは求められている内容が違います。もともと優秀な社員さんが多いので、再教育を早くしてあげないと・・・希望退職でのリストラは社内に人材が残らない緊急避難なのであまり乱発しない方がいいですよ。(これは大丸に限りませんが)

 人事制度改革で顧客接点である店頭重視で接客に高い評点をあたえていましたが、販売者は本人がバイイング行うべきだと思いますし、「解放」されるべきではないと考えます。また、今後伸ばしていくのだと思える「不動産事業」では法務であるとかBtoBの交渉といったと言った販売とは別のスキルが必要になります。

 例えば、人材を資産と考えるのであれば、「人的資源の棚卸し」から事業展開を考える発想も必要です。このメンバーならどの事業が強いか・・・。(その場合、給料は下がる可能性もありますが・・・)

                                                 (2011年06月23日)
■盛り場としての「ミナミ」のこれから

 新しいなんばと劣化していく千日前、道頓堀、心斎橋

 梅田の百貨店戦争が話題になっていますが、ターミナルとしての「なんば」も変わってきています。なんばCITYのリニューアルオープンと島屋の増床によって駅周辺の環境は格段に良くなってきています。阪神なんば線の延伸もあって近鉄難波駅周辺(湊町から堀江)も良くなっています。17日の記事でもとりあげたように足元の住宅開発も進んでいます。

 梅田開業の影響はどうだろうと久しぶりに難波一帯をフィールドワークしました。難波周辺は飲食店の集積度が高く、庶民が楽しめる安くておいしい店が集まっている事で知られていました。
 反面、ゆっくりと落ち着いて食事できる店が少なかったのがネックなのですが、島屋のレストラン街の整備で随分よくなりました。

 一方千日前、道頓堀から心斎橋などの古くからのミナミの飲食店が一段と「劣化」しています。

 人の賑わいは相変わらずなのですが(中国人観光客も減ってはいないと思います)。

 激安業態が外食業を衰退させ 地域情報誌が地域を衰退させる

 宗右衛門町はかつては北新地と肩を並べる格式のある町でした。その南に隣接する千日前は刑場・墓地の跡地で風俗と奉公人、お上りさん向けの飲食店が多かったので、今の状態は歴史的にも同じカテゴリーの店舗集積なので違和感はありません。

 その領域が宗右衛門町を越えて東心斎橋まで猥雑な飲食店が浸食しているという点については従来から危惧されてきました。古くからの老舗が脱げだしている現象です現在、さらに劣化が進んでいるのは「たこ焼き屋」の増殖とチェーンの安売り業態の台頭です。

  島田紳助がテレビ紹介した店、ユッケで沢山の人が亡くなった事で有名な「焼肉えびす」はチェーンストア理論で知られるペガサスクラブの会員であった事はよく知られています。「焼肉えびす」などに代表されるチェーン展開の安売り店は低コストの食材とアルバイトの安い人件費で原価を抑えて価格とイメージで地域シェアをあげる「チェーンストア理論」で運営されています。

 看板がやたらでかくて手書き風のよく似たデザイン、アルバイトスタッフのテンションをあげて演出された店舗は、美味しいモノを安く提供しようという動機でなく、金儲けの手段として最もてっとりばやいから飲食業を選んだ経営者によって運営されています。この種のチェーンストアはクーポンや広告などの販促費にはお金を使ってくれますから、地域情報紙でもこの種の店を好意的に取り上げます。

 安くて不味い店が増殖する悪循環です。

 見えない従業員?変貌するミナミ

 商業統計から飲食業の調査がカットされたので、地域の飲食店の状況を知るのには事業所統計を使うしかありません。2006年の事業所統計での町丁別飲食店従業者数と卸売り小売業の従業者数をグラフ化したのが下の図です。

 北新地の飲食業の集積が大阪で一番密度が高いのがわかります。盛り場は物販と飲食のバランスがとれているので、難波5丁目(島屋)や芝田町1丁目(阪急)などは飲食店の従業者数も多いのですが、物販の従業者の比率が高くなっています。

 抽出したミナミの街の飲食業の従業者が意外に少ないことに驚きます。考えられる理由としては北ではビルが密集しているため密度が高くなるのに比べてミナミは低層ビルが多い。ミナミでは安売り業態が多いので時給で働くアルバイト従業員を正社員に換算すると少なくなる。外国人などの不法就労者が多くて、統計調査に正しくこたえていない・・・といった事が考えられます。事業所統計は調査員のおばちゃんが一社ずつ訪問して回収するので、特に回収が困難なスポットがあることも想像に難くありません。常識的に考えてキタに比べてこんなに飲食店の従業員が少ないはずがありません。

 千日前、道頓堀で「たこ焼き屋」がやたらと増殖しているのは観光客相手の商売と考えると仕方がないことだと思いますが、千日前のアンタッチャブルなエリアが道頓堀から旧島之内エリア心斎橋まで拡がって来ていることを危惧します。千日前から竹林寺が移転してからは歯止めが無くなったのかも知れません。限定されたエリアに封印されるべきものが漏れ出しています。(私はオカルト派ではないので霊的な封印が解けたとはいいませんが・・・・)

 今回あらためて大丸心斎橋店は頑張って周辺に路面店を配置しているなと思いました。また心斎橋筋商店街でも昔ながらの商売を続けている老舗もいくつか残ってはいるようです。但し、点がつながらなくなっているので街を回遊するルートが形成されていません。大丸を起点に御堂筋の路面店から南船場、アメリカ村、堀江への回遊コースを定着させる必要があります。

 心斎橋は梅田の集積のために地盤沈下するのではないのです。飲食店、物販店に限らず、その土地で顧客を作って商売を続ける意思を持った経営者が少なくなり、当面、利益をあげてさっさと勝ち逃げしようというタイプの店が増えているからです。
               
                                    (2011年06月22日)


 激安メニューのつくりかた

 飲食店の営業利益率は20%を超えると優良店といわれています。実際には安売り店ほど30%以上確保するビジネスモデルになっています。(ラーメン屋では良心的な店で4割、そうでない店はいくらなんでしょう)光熱費や家賃はどの業態でもほぼ変わりません。コストカットの源泉は「原価費」と「人件費」にあります。もっとも、廃業した店の什器をそのまま使う「居抜き」だと初期投資が圧縮できますし、家賃も値切れますので、そこから「コストダウン」していくことも必要です。

 人件費に関してはアルバイト中心でシフトをコントロールすることと、「名ばかり店長」の正社員を残業代無しで働かせることで切り詰められています。社員で待遇に問題があるのなら個人事業主として売上ノルマを与えて契約する手もあります。焼き肉屋や鍋など調理に技術が入らない業態に安売り業態が多くなっています。

 原価を抑えるための手だてとして、表向きの理由として「海鮮問屋が経営している」とか「牛を一頭買いして無駄なく活用している」などであれば通りがいいです。最近はもともと原価の安い「鶏」料理の店が多くなっています。

 原価率は通常25%程度、3割を超えるととても良心的な店だと思います。

 「激安メニューの恐怖」といった類の暴露本では、中国産の食材、大豆絞りかすで増量した本場のシュウマイや、ペット用の材料である廃鶏の手羽先、工業用の塩を使った中国産の漬け物、ナタデココで作られた代用イカなどの胸の悪くなるような事例が紹介されています。ここ最近増えている激安中華料理店は1〜2で荒稼ぎして逃げることを目的としているので要注意だそうです。(WEBで検索していると島田紳助氏の推薦する激安中華料理店の案内がみつかりました)

 食べログなどで紹介されている神戸市新開地の安いと評判の中華料理を食べたことがありますが・・・・「安くて美味しい」といわれるものは理由がはっきりしない限り口にしないでおこうと決めました。・・・・・常識的な価格設定の範囲で選択することが無難でしょうね。
図ー飲食店従業者数1,000人以上の町の総従業者数に占める、飲食業、卸小売業の比率  盛り場の飲食業占拠率の比較
図151
(事業所統計 2006年)
※町丁目別集計の中で、飲食業1,000人以上の町丁目を抽出(北区、中央区)〜必ずしも面積あたりの密度を反映しているわけではない
 その地域の中での従業者総数に占める「飲食業従業者」「卸小売業従業者」の比率を算出し、その地域がどのような性格を持つ地域かを比較した
■西梅田地区はJR大阪ステーションシティの影響を受けるのか?

 ルクアの影響は同じブランド、ショップ間のカニバリズム

 JR大阪ステーションシティの中でもとりわけルクアが好調なようです。特に同じブランド、ショップの既存店への影響は大きいと言われています。同じような層をターゲットとしているHEPファイブ、イーマ、ディアモールが打撃を受けていることは6月14日の記事でも報告しました。様々な記事を見ていても、特に同じブランドを展開している店の売上げが厳しいようです。

 西梅田地区への影響は?

 梅田北ヤードの商業施設の内容がまだ公表されていませんが、人の流れが変わることで「西梅田地区」が影響を受けるという分析をするコンサルタントもいます。確かに供給が増えれば売上が拡散することは間違いありません。とはいえ、「西梅田地区」は私たちの調査にあるように「大人の街」として認知され利用されています。駅ビルである「ルクア」とは利用機会も違います。MD的にも2005年の調査での「イーマ」「HEPファイブ」「心斎橋OPA」が近いのですが、西梅田の多くの施設とは違うモノであることがわかります。下の図にあるように年代別の棲み分けが既になされています。

 「ルクア」の強みは利便性(会社、学校帰りでの利用のしやすさ)と若い世代にとって新しいファッションを発見できて、見て回るだけで楽しい店であることです。ファッションや食事などで大人が楽しめる施設であるかどうかといえば・・・・・?です。百貨店がその役割を果たせていればいいのですが。

 もちろん分けあうパイが小さくなることは確かですが、「西梅田地区」が、自動的に壊滅的な打撃を受けることはなさそうです。

 梅田北ヤード地区で「なんばパークス」や「キャナルシティ」のような環境の作り込みがあれば影響が大きいかなと考えていたのですが、今のところ発表されている計画では経済合理性を重視した「手堅い」高層ビル群なので、影響は極めて軽微でしょう(OBPとまでもいかずに新宿の西口のようなイメージでしょうか?次の計画は随分先になりますしね・・・・・)

 今の梅田の中心地区に欠落しているのは「大人が楽しめて」かつ「ゆったりと過ごせる施設」です。

 東京のコンサルタントの先生がおっしゃるように「西梅田」と「心斎橋」が影響を受けるという事は、単純に当てはまるわけではありません。ただ、「会社帰りの買い物に便利」で利用されているディアモール大阪は店舗の戦略を見直した方がいいですし、桜橋の「ブリーゼブリーゼ」は業態転換を考えた方がいいとは思います。

                                                (2011年06月21日)

図ーターゲット層の比較
図152

図ー利便性とアメニティ
図153

図ー時間消費のイメージ
図154
(なにわ考現学2005)
■「百貨店を核にしたSCの善戦」からみた瀕死の三越伊勢丹食料品売場の抜本的な改革の方向性

 百貨店を核とするSC善戦が示唆する営業戦略の方向性〜ストアーズレポート2010年10月号

 好調を伝えられていたSCの売上にもかげりが見えてきています。2009年度には全体で1.2%減、既存店ベースでは6.8%減となっています。6月8日の当サイトの記事に追加したように、アウトレッモールでさえ2ケタ減となっている店舗があります。

 その中で百貨店を核にしたショッピングセンターが比較的好調だそうです。百貨店業界誌「ストアーズレポート」2010年10月号ではそのポイントを3つあげています。

 ひとつは立地環境に恵まれていること。首都圏や関西圏などの大商圏を背景にしたターミナル立地にあることがあげられています。(横浜の相鉄ジョイナス、札幌のステラプレイスなどの都心や柏ガーデンモール、浦和コルソ、モザイクモール港北、阪急西宮ガーデンズといった郊外拠点など)
 
 ふたつめの要因としては若いファミリー客が中心の郊外型SCと比べて客層が幅広いことがあげられています。日常消費から非日常まで対応できることが環境変化に対応できる鍵だそうです。

 3つめの要因(私はこれが一番強いと思っているのですが)核になっている百貨店が人気になっている「北海道展」を始めとして様々な魅力あるイベントを実施し広域から集客する努力を払っていることが大きいようです。モノだけでなくコトへの対応も図って郊外型SCと違った魅力を提供している事も大事な要素です。

 現在のデパ地下の集客力はテーマを持ったイベントやイベント的な商材によって集客する事にあります。かつては手みやげギフトが最大の強みでしたが、定番の手みやげギフトだけでは差別化ができなくなっているのです。

 集客が最大の課題です。郊外のショッピングセンターの「核店舗」であれば「集客」に利用されるだけで百貨店のメリットはほとんどありません。東村山のSCに出店した三越が即時撤退したのは記憶に新しいですしですし、先日撤退を発表した神戸阪急もハーバーランドという立地は郊外SCのようなものでしょう。

 JR大阪三越伊勢丹食料品売場の抜本的な改革の方向性

 JR大阪ステーションシティの中でJR大阪三越伊勢丹は「集客装置」です。ファッションに関しては長い時間をかけて「伊勢丹ファン」を作っていけばいいのですが、今のところ「駅全体」では成功していても「百貨店」としては苦戦しているはずです。いくつか理由はありますが、「食料品売場」の戦略的な位置づけを間違えていることも大きいのです。

 東京流の商売に慣れている三越伊勢丹にとって、食料品売場は「ギフト」売場なのです。そのため、キレイで、ステイタスがあり、特に東京で一流とされているモノを強く打ち出しています。・・・・旧「そごう心斎橋店」を失敗させた「西武」の和田元社長と同じ落とし穴にはまっています。

 生鮮(野菜)で市場的な雰囲気を取り入れ頑張っておられると思いますが、点でしかありません。生鮮の客、惣菜の客、洋菓子の客は上の売り場の客と違うと思っているのでしょうか?もっと人を集めて賑わいを作らないと・・・カード客も増えません。普段は食料品で利用額を増やして、割引額を上げて上のフロアの商品を安く買う・・・関西のお客さんはそうなのです。大丸も、阪急阪神もそれがわかっているからこそ食料品売場に力を入れています。

 いわゆるシャワー効果は来店当日などの短いサイクルであらわれるのではなく長いレンジであらわれます。関西は、正直田舎の市場ですからお金を使うのは数年に一度の生活イベントの時期(成人式、結婚式等)にまとめて消費するのです。1年単位のカードデータの分析では見えないサイクルです。

 というわけで「食料売場の戦略的な位置づけ」を見直せば抜本的な改革の方向性は自ずから見えてきます。すぐに始められることは「食品催事」の展開です。食料品売場に空いている無駄なスペースも沢山ありますし、催事で新しい商品が入れ替わると、来店回数も増えます。

  
                                                   (2011年06月20日)

■大阪圏の住まいの変遷〜活気のあるエリアの移り変わり

 昔の住まいが残る街

 昭和35年以前の住まいが残っている街は大阪市内の「東成区」「生野区」「西成区」「東住吉区」「阿倍野区」などです。(空襲による戦災を免れた周縁部が多いのが特徴です)意外に郊外地域、「岸和田」とか「富田林」などのルーラルな地域でも地域は古い住宅は少ないようです。「場所」「コミュニティ」への愛着は強くても「住まい」への愛着は薄いのでしょうか?「芦屋」も古い住宅が少なくなっています。 「阿倍野区」や「東住吉区」は古い街並みも残っている、昔の大阪、戦前の市民生活を想像させる地域です。

 70年代の大阪の拡大

 万国博覧会後の70年代に建てられた住宅は郊外地区、大阪南部に拡がっています。「堺市」は泉北ニュータウンの開発、「泉南市」「阪南市」は関西国際空港の開発をにらんだ住宅開発が進んでいました。「住之江区」では南港ポートタウンの住宅開発が大きいようです。
 「大正区」は区画整理事業で居住環境の改善が大規模に進められた結果です。

 大阪の南北問題の解決という事で南の地域の開発に期待がかけられた時期だったのでしょう。

 最近の開発

 都心回帰の流れが強まり、「福島区」「浪速区」「鶴見区」での住宅開発が目立ちます。郊外では「池田市」でマンション開発が増加しています。
 市内「中央区」で住宅開発がピークだったのは2001年〜2005年、地価の高騰とともに開発は市内でも都心周縁部へシフトしています。

 大阪通勤圏で「三田市」「生駒市」が伸びていたのは80年代のバブルの時期でした。下の表には現れていませんが、その時期に大きく住宅数が増えています。当時の住宅購入者がリタイアする時期にその2世がこのエリアを選ぶかどうか?今後の動きが注目されます。岸和田や貝塚といった土着性の高い地域の居住者は大きく住まいのエリアを移すことはないのですが、一時に増加した新住民がどこまで地域に愛着をもっているか?興味深いポイントです。
                                                         (2011年06月17日)
    
図ー大阪通勤圏の住宅が建てられた年(住宅不動産統計)  現在の住宅の建築時期 年代別の比率

(1969年 昭和35年以前)               (1970年代)                        (2006年〜2008年)
得137
■中国の電力不足について
 
 中国での電力不足の懸念

 国内での電力供給量の不安を受けて、工場の海外移転が話題になりますが、例えば移転先の候補である中国では電力は安定的に供給されてるのでしょうか?

  中国の発電は水力と石炭火力が中心です。中国全域で発生している渇水のため、水力発電には期待できません。過去10年間の経済成長にあわせて電力消費量も増大してます。生活が豊かになると夏場の空調の利用も増加し、ますます電力への需要が拡大しています。
 現在石炭輸送の幹線である鉄道が改修工事中で石炭の生産が減少しています。それにともない価格が上昇し、電気料金が政策的に値上げせずに抑制されていることもあって発電業者は減産しており伸びる需要に応えられない状況です。

 また沿海部では発電所の建設が抑制されてきたこともあり、あらたに建設したとしても電力不足は長期化します。石炭火力発電所は地球温暖化を促進するので抑制されていたともいわれています。(大和住銀投資顧問 ステラジスとコラム 114号より引用させていただきました)

 中国でさえこの状況ですから、チャイナプラスワンといわれるアジアの国々での電力供給が日本国内より安定しているとは想定できません。

 原子力発電所事故の前は原子力発電所プラントの輸出がビジネスチャンスとされていましたが、進出する企業のインフラ整備という意味合いもあったのだと思います。
 海外でも安定的に電力を調達できる仕組みを作らないと企業の海外進出もできません。

 国内での電力不足がストレートに工場の海外移転に結びつくというわけでもないようです。代替エネルギーの開発と省エネ技術をこの機会に輸出できるだけの商品に磨き上げることが必要になります。

 電力不足を理由にした工場の海外移転を心配する人は中国では毎年、夏に1週間停電することを知っているのかな?
                                          
                                                             (2011年06月16日)
■東京圏集中時代の終焉の始まり〜いくつかの「予測」の検証とともに

 東京、千葉、神奈川などの首都圏への転入者数が減少

 4月は卒業、就職や入学などの人の動きが多い時期です。今年は大阪から東京圏への転出が減少したためか大阪圏でのい転入超過数が昨年に比べて大きく増加しています。(出ていく人が減って入ってくる人が増えました)

 名古屋圏は昨年はリーマンショックの後遺症で製造業に元気が無く転出超過でしたが、今年はプラスに転じています。(図ー1)

 東京圏は毎年転入超過が続いていましたが、昨年に比べて減少しています。特に千葉、東京、神奈川で転入者数が減少しています。(図ー2)
 
 震災の被災地では宮城県、福島県で大きく転出者が増えています。岩手県、青森県では転出者が目立たないのは復興のスピードと原子力発電所事故の影響が大きいのだと思います。宮城県は仙台が東北の中心都市であっただけに転入者数の減少も目を引きます。

 迅速な復興対策が必要です。首都圏からの人口流出もしばらく継続すると考えて、日本国内の都市機能の多極化への投資も急がれます。

 銀座の高級ブランドの路面店の家賃相場がリーマンショック前には月坪30万円といわれていたのが最近は月坪10万円台にまで下落しています。再び国内外のブランドの出店意欲が戻ってきているとはいえ、賃料水準が元に戻るには時間がかかるでしょう。(防災投資をきちんと行うことと、放射性物質の安全性について、急いで「安全宣言」ををするとその後に何か出ると信頼を失うので、しっかりと時間をかけて「観光客」にむけて水や食品の安全性を担保すべきです。これは被災地の農家の支援とは別の次元の判断です)

 不安からの首都圏離れについてはCRI6月号でも指摘したとおりです。

 いくつかの予測の検証

 梅田百貨店戦争を含めて、いくつかの予測を行ってきました。「予言」ではなく単にデータを読んで過去の傾向から類推しただけなのですが。実際の結果との照合を行えば今後の予測の精度が上がります。いくつか結果が出てきているものがあるので中間的検証しておきます。

 「JR大阪三越伊勢丹」の苦戦

 特に食料品売場は洒落にならない状況です。夕方の時間帯なのに閑散としています。当サイトでも何度も警告しましたし、西武が主導した心斎橋そごうの失敗を踏襲しています。

 売場で商品が前面に出てこない、冷たい、価値の伝え方がうまくない・・・・。「関西の客は田舎もので低レベルだから良いものがわからない」といった類の毒づき方をして大阪から退場した某百貨店と同じ道をたどることを危惧します。(すいません、正確にいえば、郊外にまだお店を維持されていますね)

 ファッションに関しては大阪の老舗百貨店の指導もされているファッションマーケティングの大家が550億円ではなく700億円売れますとお見立てされているので、何とか良くなるのかも知れませんが・・・・

 発表された5月の売上は低めに設定された目標には届いていません。


 梅田百貨店戦争は京都、神戸、ミナミなどの広域には影響がない〜(大商の調査へのセカンドオピニオンとして)

 ミナミは島屋の改装やなんばCITYの改装などもありあまり大きな影響を受けていません。心斎橋地区は明らかに影響を受けていて大丸やOPAの売上が減少しています。神戸、京都に関しては「大丸」の5月の売上が減少しています。ポルタやOPAの売上も減少していますが、4月27日に開業した京都マルイの影響が大きいと思われます。

 京都マルイのハウスカードの30代以上の割合は7割です。他の地域では20代以下が7割なので幅広い層に支持されています。観光地京都ですが6割が京都府民と地元客が多いのが特徴です。買い上げ客数の8割が食品、雑貨、靴、本のフロアに集中しているのは売上や坪効率より再入店や利用頻度を重視しているためです。毎月消費者モニターを継続するなど地域密着政策をとっています。

 伊勢丹も公式発表しているように京都は梅田の影響がないようです。神戸に関してはもう少し状況を見てみたいと思います。西宮、芦屋は大阪の通勤通学圏なのでJR沿線は獲得できそうですが、もっと西の神戸人は梅田に出てくることはないのです。さんちかや三宮オーパのマイナスは少ないので、気になるのは神戸大丸の落ち込みだけなのですが。(6月7日記事)

 外れた予測〜マクロ経済については安易な予測は慎みます

 小売業に関してはほぼ予測は外れませんが、震災復興での投資と原油高、小麦の高騰での値上げラッシュでインフレ傾向が強まると予測したのはミスでした。政府は復興に関して投資や将来計画より増税に熱心で、「特需」も発生しませんでしたし、海外の経済情勢から「円安」にはならなかったので、物価はじりじりあがってもデフレから脱却はできそうにありません。専門外のことについて予測するのは今後慎みます。

                                           (2011年06月15日)

図ー1 住民基本台帳 転入超過数(転入者数−転出者数) 4月は移動シーズンなので人の出入りは激しい
図138
図ー2 2011年4月の転入者数と転出者数(住民票を移動させた人のみ)
図139
(住民基本台帳)
■ルクア開業の影響はHEPファイブ、イーマに

 5月は梅雨入りと台風の影響で全般的に不調・・・ルクア開業のダメージも

 梅田でのルクア開業の影響でHEPファイブやイーマの落ち込みが全体より大きく落ち込んでいます。HEPファイブは入館客数が9%減、売上は16.2%の減少です。イーマ、ディアモールも落ち込みが大きいようです。

 心斎橋のオーパの落ち込みも目立ちます。なんばシティのリニューアル、天王寺の阿倍野キューズモールの開業とあわせて挟撃されてしまったと思われます。心斎橋地区は大丸も不調でした。中国人観光客の減少も影響しているのかも知れません。

 ルクアの仕掛けとカード会員

 ルクアの店作りのポイントは男女の区別で区切られていないフロア構成です。品揃えを厚くした雑貨も狙い通り好調だそうです。ポイントカードの会員は10万人、JR三越伊勢丹のクレジットカードの会員は6万5,000人だそうですか施設全体で十数万人のカード会員を獲得しています。(ちなみに博多阪急のカード会員=クレジット+ポイントカードは27万人だそうです。それに比べると少なく見えますが、博多阪急は食品利用者向けのカード会員が多いのだと思います)

 ルクアのカード会員は近隣都市だけでなく、堺市や奈良市の多さは想像以上ということです。

 大阪市内への通勤通学者が多いことが影響していると考えられます。若い人は行動範囲は広いのですが、定期券の内エリアにはなかなか頻繁には来街しません。

 JR大阪三越伊勢丹は当初の売上は厳しくても季節毎にファッションテーマを打ち出していくスタイルは固定客を作ると思います。カード会員は阪神間と北摂で半分以上ですが、阪急沿線の豊中市や池田市は少ないようです。ターミナル百貨店は沿線利用客が高いウェートを占めます。

 利用者の声では大丸梅田店の食品が頑張っているということですが、基本的に駅へのアクセスが悪いのでハンディを背負っています。

                                               (2011年06月14日)

図ー京阪神のファッションビル5月の売上(前年同月比)〜ルクアの影響でHEPファイブ、イーマ、ディアモールに打撃
図140
(繊研新聞 2011年6月14日)
■「大和川から南は大阪ではない論」を検証する

 ボーダーを越えて

 大阪以外の人には馴染みがない議論でしょうが、大阪市と堺市の間に流れる大和川は都市文化を区切るボーダーとして知られています。

 流通関係者の間には「大和川から南にはMDはない」というのが定説になっています。都市型の商品政策が通用しないというというのです。

 かつて東京から進出してきた某GMSの担当者は、地元競合店の「後進性」について顔をゆがめて「遅れた田舎だと」吐き捨てるように語っていました。(栃木県人にいわれたかない)

 大阪は摂津、河内、和泉の3つに国からなっています。大和川の南に位置する堺市はこの3つ国の境にあるので堺と呼ばれています。

 摂津と和泉の境界はかつては堺市内の大小路通りでした。東へは竹内街道を通じて奈良へとつながっているとおりでした。江戸時代に大和川が現在の場所に付け替えられてからは大和川が摂津と和泉の境界線となっています。

 「大和川から南は大阪ではない」論

 WEB上で「大和川から南は大阪ではない」という言葉を目にしました。具体的な根拠や論考は見つけられなかったのですが、その背景や当否については検証する価値があると堺市出身の私は思いました。

 堺市で行われている「反大阪」の歴史教育。堺市民は小学校の頃から南蛮貿易で栄えた商人の自治都市としての「黄金の日々」と信長、秀吉、家康による自治都市堺市の凋落の歴史を学びます。
 安土桃山時代、東洋のベニスと呼ばれた反映と信長による武装解除、秀吉による大阪市内への商人の強制移住、江戸幕府体制下での大和川付け替えによる土砂の堆積を原因とする国際港湾機能の衰退・・・。さらに秀吉による利休切腹など、大阪府下にありながら「反大阪」教育による秀吉への反感の蓄積・・・・というのは地元を離れて始めて実感しました。

 「大阪都構想」とかでの大阪市と堺市の一体化再編というのは地元民にとっては唐突に感じられるのも無理はありません。
案の定、堺市長選では「都構想」にNOが突きつけられました。

 泉州は上記の竹内街道などを通じて奈良とのつながりが深いという歴史的な背景があります。南北朝時代には南朝の港湾として堺が交易の窓口になっていました。

 中世の自由都市堺と、江戸初期の堺の財力は莫大なものがあり、それが後世の日本に与えた影響は莫大である。中世の日本において一貫して大都市といえるのは京都だけであり、当時陸運の便利がよい京都に商人が集中していた。一方で堺は積極的に海運のため、全国の主に海岸の中小都市に莫大な投資を行った。その当時既に繁栄していた博多、鹿児島、大分などはともかく、それ以外の全国の多くの都市について、その発展の基礎部分に中世の堺商人の投資が大きな影響を与えているともいえ、それは大阪、名古屋、東京なども例外ではない。(ウィキペディア)

 大和川の南の「都市」であった堺市にはそれなりに「自負心」が残っていました。歴史的背景から、幕末の廃藩置県の時に河内、和泉と奈良県は「堺県」としてスタートしています。(後に大阪府と合併し奈良県が分離されました)

 大阪とは人のつながりが薄いディープサウスの市町村

 現在の人の交流状況はどうでしょう?国勢調査の通勤通学データで、大阪市内への通勤者の人口に占める割合を検証してみましょう?

  目安を10%としてみると、大阪府南部の「岸和田市」「貝塚市」「泉佐野市」「泉南市」などは大阪市内とのつながりが薄いと言うことがわかります。奈良県の「生駒市」や「王子市」、兵庫県の「芦屋市」や「西宮市」の方が流入者の割合が高くなっています。(地場産業があり、地元に働く場所があるという事の裏返しでもあるのですが、通勤通学の縁は人の交流度合いを示す指標となります)

  これらの市町村は別に「大阪」でなくったてかまわない・・というわけです。

 「大和川から南は大阪ではない」論は堺市は大阪市への通勤通学者は多いものの歴史的背景から「アンチ大阪」の潜在意識があり、さらにその南の地域は独立した生活圏を構成しているので「大阪」ではない。ということで信憑性が高くなって来ました。

 「北摂は大阪ではない」論だったの?

 あれれ、良く見返してみるとネットに書いてあったのは「北摂は大阪ではない」だったようです。元ネタがよくわからないのですが、折角検証してきた作業が・・・・水泡に帰しそうです。

 確かに船場を中心とした大阪市街地と北摂の豊中、池田とは街の成り立ちは違いますが、街を歩いていると豊中の旧市街地と住吉、東住吉の市街地は雰囲気はよく似ています。

 「大阪」と遠いのは独自の文化を持ってきた「岸和田」「貝塚」「泉佐野」といった市町村なので議論の順番が変だなと思います。とはいってもタイトルしか読んでいないので、逆説的に展開されているのかもしれませんが・・・・。あまりそのようなテーマのたて方には意味がないと思えます。

 ただし、常々思うのは住宅都市としての「千里ニュータウン」と都市交流拠点としての「梅田北ヤード」は大阪市、大阪府という行政の縄張りから切り離してオール関西の資産として「まちづくり」に活用できたらいいなと考えています。

 実は、この文章を書き始めて「トヨトミプリンセス」を素直に応援できない自分の潜在的な感情が発見できました。世の中で「商人が一番偉い」と言う感情も、商人の自治都市への誇りをたたき込まれた堺市の「反大阪」、{反秀吉」教育の賜かもしれません。

 ナショナリズムというのはいくらでもこじつけられますね。「○○は大阪ではない」とかいう言葉を用いるのは排除を前提とした不毛な議論だと思います。

 

                                                    (2011年06月13日)
図ー人口に占める大阪市内へ通勤・通学している人の割合(15才以上)  2005年
図141
(国勢調査2005年)
■海外観光客誘致のお手本だった別府杉の井ホテルが九州エリア密着の成功事例として紹介されている

 海外観光客誘致のお手本だった別府「杉の井ホテル」の変身

 大分県別府市は1年間に市の人口の2倍以上の外国人観光客が訪れています。その8割は韓国人観光客です。温泉が珍しい韓国からの観光客誘致をリードしていたのは杉の井ホテルの初代社長でした。1993年頃から直接韓国を訪問し観光客を集めてきたのです。日本人の団体観光旅行市場が縮小していく中で活路を海外に求めたのです。

 従業員への語学教育など受け入れ体制にも留意したもので、この民間の動きが行政をリードし、2000年の立命館アジア太平洋大学の誘致や別府大学の留学生の受け入れにもつながっていきました。

 別府杉の井ホテルは1997年にそれまでの売上のピークを迎えました。ただ、大型投資がたたって2001年には民事再生法を申請するほどおいつめられました。2002年には加森観光とオリックス不動産による新体制がスタートしました。

 当時の宿泊客は九州・中四国エリアが60%、残り4割がその他の国内と海外客が占めていました。現在、中四国・九州からの集客が8割、その他国内が8%、海外は12%です。
 
 08年頃からの円高ウォン安の影響を受けて減少傾向にあった韓国から観光客から日帰り客を含む国内顧客の直接開拓にシフトしたのは2008年から直営化したオリックス不動産です。

 直行バスプランや日帰り客の獲得などは、老舗温泉旅館の再生に実績のある「湯快リゾート」や「大江戸温泉物語」の手法に通じるものがあります。  再生の詳細は月刊レジャー産業資料2011年6月号(総合ユニコム)をご覧下さい。

 宿泊キャンセル25,000人 打撃を受けた別府

 東日本大震災で外国人観光客は4月で6割減です。別府市の震災後キャンセルは約2万5千人。キャンセルに次ぐキャンセルだったそうです。その内訳は関東・東北方面から2,500人。韓国からのキャンセルが1万人です。

 杉の井ほてるの4月のキャンセルは9500人。いち3000人は海外客で韓国人が中心です。雑誌では「ほぼ影響ない」と語っておられたようですが、韓国の旅行代理店に九州は被害がないと説明会を開催する予定です。当面は国内市場の集客に集中するといいます。週末はほぼ国内個人客の利用で満室になるので、インバウンドは平日のみに限定しています。・・・広域の集客にも配慮しながら地域のリピーター確保に重点を置くのは健全な考え方だと思います。

 そういえば、経営主体のオリックス不動産は「江ノ島水族館」でも同様のポリシーで成功していましたね。

                                                (2011年06月10日)
図ー2011年1〜4月の訪日街客数
図142
図 2011年4月の国別訪日外客数
図143
日本政府観光局
■ターミナルの商業施設とオフィス街の商業施設〜立地に合わせた商売を

 好調ルクアの客層と買い上げ率

 JR大阪駅のルクアは開業1ヶ月で41億円を売り上げて好調です。年間目標は250億円だそうです。(年間目標550億円の三越伊勢丹が同時期45億円ですから、年間目標を上回る可能性はあります)

 「通路として利用している人や大阪駅が生まれ変わって観光に来た人も多い」という要因からも平日12〜15万人、休日20〜22万人を集客しています。
 客層は30歳前後を中心に20代前半から40代と幅広区、エリアは吹田市がトップで茨木市、豊中市、尼崎市が続きます。JR沿線が多いですね。とはいえ、百貨店に比べて来街者の回遊性が高い層をターゲットにしていますから、沿線以外の利用者も多いようです。

 流動客が多いため買い上げ率は22%と想定していた30%を下回ります。

 客単価は全体で3,400円。これは飲食、雑貨が多いためで、衣料品だけに限定すると11,000円〜12,000円です。男女複合のセレクトショップ「アーバンリサーチ・ストア」「トップショップ/トップマン」が好調です。月坪は平均63万円と高いです。

 梅田の商業集積では阪急三番街はシニア中心ですから影響はないでしょうが、HEPファイブを始めいくつかの店が影響を受けそうです。

 ブリーゼブリーゼの立地ポテンシャル

 客層ではHEPファイブやディアモールが影響を受けそうですが、エリアとしての魅力アピールや回遊が期待できる立地なので対策が立てられそうです。

 一番心配されるのは桜橋の「ブリーゼブリーゼ」です。売上げ実績は一切公表されていませんが、開業時の目標売上が100億円とこの立地にしては高く設定されています。

 毎日人が流れているディアモールと比較しても高い設定です。おそらく50億〜60億円あたりだろうと推定されます。淀屋橋のオドナと同じようなオフィス立地の商業施設という認識が必要です。

 オフィス立地の商業施設でもかつての東京であれば、「新丸ビル」(来街者2,500万人、売上260億円)。「東京ミッドタウン」
(来街者3,500万人 売上306億円)※2007年 といった数値が見込めます。(通勤者と共に、観光客の来街が見込めたからです。ちなみに2012年5月22日に開業する東京スカイツリーの入場者数は250万人、付属する商業施設「東京ソラマチ」52,000uでは2,500万人の来場者数を期待しています)

 オフィス立地ではオフィスワーカー及び」周辺の通勤者を対象にする店舗を最小限付帯させるという従来の考え方から、少しだけ変化が見られます。大阪市内でも淀屋橋周辺や中之島などで都心居住も増えているため、食品スーパーの出店が目立ちます。また、飲食店に関してはターミナルでは利便性を目的とした利用はあっても落ち着いて食事が出来る店はほとんどありません。そのため食事を楽しむ人は周縁部へ目的性の高い店を利用するようになっています。

 ブリーゼブリーゼでも最上階の「ビストロなのにやたら値段の高いフレンチ」だけが好調だそうです。この立地では坪効率が低くても固定客を掴み、目的を持って来店していただけるお客様を対象にした商業集積をつくるのが正解です。

 かつての東京のように都市観光客が集まることは想定しないで、周辺の通勤者+目的客の為の施設を整備するという前提で事業計画を組むべきなのです。その意味で最初の目標設定は間違っています。

 少数の特定層をあいてにすると丁寧な接客ができますし、販促費も抑えられます。お買い上げ率、客単価をあげていけば、ぼろ儲けは出来ないにしてもビル全体の不動産価値を維持することが出来ます。・・・・・不動産業界のトップの成功体験にはそのようなビジネスモデルの経験がないので、実現は難しいかも知れませんが・・・・・。

                                                   (2011年06月09日)
図ー梅田周辺商業施設売上ボリューム比較〜ルクアは阪急三番街に次ぐ存在感を示す
図144
ルクアは2011年度目標 ブリーゼブリーゼは開業時の目標(期待数字)おそらく70億はいってないと思われます
その他は2009年度の実績  ギャレ大阪は今年3月で閉店しました
■勢いのあるアウトレット業態の翳りの始まり

 4月29日イオンレイクタウンに隣接してレイクタウンアウトレットが開業

 埼玉県越谷市に開業したイオングループ初のアウトレット業態「レイクタウンアウトレット」(26,740u)は29日に開業し、ゴールデンウィーク期間11日間で110万人の来場者があったそうです。(1日平均10万人!)震災後の関東地方としては高いい集客力を示しています。
 ラグジュアリーブランドやアウトレットブランドの定番商品はそろわなかったようですが、通販のオットー、ファストファッションのキットソン、コンランショップのアウトレットなどここにしかない商品も多く、人気を集めています。

 コンランショップのアウトレットなどは近くにあれば是非利用したいです。

 アウトレット業態の翳り

 先日、久しぶりに買い物に出かけました。(自粛してたわけではありませんが)神戸近郊のアウトレットモールですが、あらためて、商品の品揃えの翳りを感じました。アクタスのアウトレットに置いてある商品は近くのディスカウントショップにもある定価500円の傘ですし、丸井のプライベートブランドのショップには値頃感のあるクールビズ商品が並んでいますが、化繊のシャツやジャケットはどこか量販店(GMSや紳士服量販店)の商品の匂いがします。
 機能的でそこそこのおしゃれ感はあるのですがどこかチープな工業製品の画一感をかんじさせるものでした。・・・・後で聞けば、製造している工場は同じだということです。

 ラグジュアリーブランドの商品は決して安くなく、かつ少し奇抜な色合いの商品だったりします。これでは百貨店のカード割引をつかってプロパーで購入した方が選べるだけ満足度が高いかも知れません。

 アウトレットモールの増加に伴い、アウトレット向けに製造された商品が並ぶことが多くなっているという噂が実感できました。
カジュアルなスタイルでショッピングできる(犬や子供連れでも大丈夫)、ブランド品がお手頃な価格で購入できるという魅力で伸びてきたアウトレットモールですが、過当競争の中で転換期が始まってきているように感じました。

 プロパーが元気で新しい感覚の商品をどんどん売り出さないとオウトレット商品が供給されません。最近、ショップが手堅く売れる商品しか扱わない傾向が強まり結果的にどこの店も同じようなファションしかならんでいない・・という状況とシンクロしています。

                                            (2011年06月08日)

三井不動産の合うトイレット事業の3月決算が発表されています
・大阪鶴見(9,350u 76億円) 9%減
・神戸(22,750u 203億円) 14%減
・多摩南大沢(21,120u 180億円) 9%減
・長島(30,000u 296億円)7%減

新規出店で増収ですが、既存店はおしなべて減収です。
                                        (2011年06月16日)追記
■JR大阪三越伊勢丹の売上げ45億円はどこから創出されたか?

 売上86億円、来館者数1020万人  JRの近距離切符利用者11%増

 6月6日の繊研新聞の報道では三越伊勢丹の5月の来館者数は480万人で売上は45億円。ルクアの来館者数は540万人で売上は41億円だそうです。(朝日の報道から3日間で随分来館者が増えていますね?三越伊勢丹の年間目標550億円に対し、単純に12倍すると540億円で少し足りない?)

 各社の5月の売上は伸び率でしか発表されていませんが、専門業界誌の昨年の記事などから推計すると下図のような売上となります。
 
 阪神の売上げが大丸大阪梅田店とJR三越伊勢丹の合計売上げを下回っているのがショックです。人の流れが(阪急の工事もあり)変わっているのかも知れません。昨年は大丸大阪梅田店の30億に対し阪神は82億ありました。早急な対策が必要でしょう。

 アミュプラザ博多(3月2日開業)は3ヶ月で1,716万人 年間目標の47%を達成

 JR博多シティは開業時の勢いは衰えていますが平日11.3万人。休日17.8万人と集客は好調です。博多阪急は開業3ヶ月で110億円と計画比8%増の売上で入店客数は1,053万人と想定の1.5倍です。(比較すると大阪駅のポテンシャルの高さをあらためて実感させられます)

 この施設の場合、天神地区の売上がこちらに移行しているという状況が明確です。

 あべのキューズモールは電車利用の10代が中心

 4月26日開業のあべのキューズモールは1日平均7〜8万人。土日で13万人のペースが続いていると発表されています。
 年齢層は「20〜30代を中心に10代から40代以上と幅広い」とコメントされていますが、10代の高校生とシニアの比率が高いのだと思います。1,500台の駐車場が満車になったのは開業以来3日だけで,多くは通勤・通学定期を使って来店しているようです。

 1人あたりの客単価は「思ったより低い」ということです客数が多いので開業1ヶ月の売上は56億円と予算を上回っています。


 JR大阪ステーションシティの売上は大阪のミナミから奪い取られたという観測は当たらないと思います。大丸の京都、神戸、心斎橋の売上は縮小していますが、これはどちらかといえば自社競合の可能性が高いです。(カード値引きによる店舗ロイヤリティは結構強力です。同じものならカード値引きのある店で購入します)

 JR沿線で切符の利用者が増えているので、あらたに喚起された需要であると考えられます。(JR京都伊勢丹には影響はなかったのでしょうか?)

 伊勢丹らしさをキープしていくためにも売上げ目標を550億円と低めに設定したのは正しい選択だと思います。伊勢丹の顧客、カード会員を地道に増やして行かれる事をお奨めいたします。

                                                      (2011年06月07日)


図ー大阪の百貨店 5月の売上比較〜阪神の売上は大丸梅田、三越伊勢丹の連合軍を下回る
図145
図ー5月売上前年との比較
図146


新聞発表及びストアーズ誌の記事を元に推計
大丸梅田と心斎橋の売上は年間売上げに応じて案分している。
■大阪ステーションシティ開業後1ヶ月〜三越伊勢丹メンズ館の立ち上がり好調

 5月4日のJR大阪ステーションシティの開業で影響を受けたのは?

 6月3日の朝日新聞の報道では5月4日の大阪ステーションシティ開業により京都、神戸などの既存の百貨店が苦戦し大阪駅に賑わいが集中していると伝えています。

 5月の百貨店売上げでは1.6倍に拡張した大丸梅田店が前年比73.6%。同じく3月3日に4割増床してリニューアルオープンした島屋大阪店(なんば)が前年比4.7%と売上を伸ばしています。

 一方同じ梅田に立地する阪急梅田本店は-4.5%、阪神梅田本店は−4.6%%と売上を減少させています。三越伊勢丹開業時の報道では客数、売上共に伸びているとの新聞報道がありましたが、土曜日の日数が1日少なかったこと、月末の台風の影響が大きかったということです。同じ時期の京都の島屋は-3.3%、大丸京都店が-4.6%となっていますから、百貨店消費のベースはマイナス数%であったのかもしれません。

 三越伊勢丹の売上げは未公表ですが、「想定内」にとどまったということで来店客数のわりに売上は今ひとつ伸びていなかったのでしょう。中では自主編集売場のメンズ館が好調だということです。

 大丸梅田店は増床した面積以上に好調な伸びを示しています。。ポケモンセンターや東急ハンズ、ユニクロが客層を拡げているようです。一方大丸神戸店は-7.4%、大丸心斎橋店が-9.5%と売上を百貨店平均より大きく減少させています。

 エリアとして梅田の集積に影響を受けているためなのか、大丸の企業の中での食い合いなのか、もう少し推移を見守りたいと思います。

 ルクアと三越伊勢丹の来店客数の差は業態の勢いの差なのか?

 JR大阪ステーションシティの中でほとんど一体となっている商業ビルの中で、三越伊勢丹は450万人、ルクアは500万人と1割くらいの入店客数の差があります。ルクアの方がより地下鉄や阪急に近い場所にあるとか、若い層を吸引しているとかいった理由が考えられます。百貨店業態と専門店業態の勢いの差を現しているような気もします。(大丸梅田店も専門店の導入で勢いがついているようです)

 同じ時期に開業した阿倍野キューズモールの入店客は430万人と公表されています。

 マスコミ報道にみうけられる「集積規模が大きいから、大阪梅田の独り勝ち」という認識は単純すぎると考えています。

                                          (2011年06月06日)
■消費マインドの縮小は意外な地域に影響を及ぼしている〜家計調査消支出の比較

 首都圏の家計支出の落ち込みは百貨店売上げの縮小と符合している

 被災地仙台での家計支出の落ち込みは納得できますが、近隣の盛岡では意外に堅調です。首都圏では東京都、千葉県、埼玉県での落ち込みに比べ、横浜市の消費支出は伸びています。昨日提示した百貨店の売上げも横浜は落ちていません。
 
 意外に影響を受けているのは名古屋市です。(百貨店の売上げも縮小しています)自動車産業の生産が震災の影響でストップしていましたので先行きへの不安がより強かったのかも知れません。

 京都、神戸、大阪は伸びています。婦人服の伸びが大阪で高いのは百貨店改装の影響だと思います。

 福岡市では全体の消費支出は減少しています。(自動車、精密機器の生産の遅滞が影響しているのでしょう)ただ百貨店の開店で婦人服の支出の伸び率は高くなっています。

 復興が最優先の被災地はともかく、少なくとも首都圏では消費マインドの低下が消費を減少させている用に思われます。決して好調な大阪は好景気であるというわけではないですしね。

                                                 (2011年06月03日)

図ー4月の家計支出前年比(2011年/2010年)         右の数値は全体の消費支出
図147
■梅田百貨店戦争の影響はどうやら京都にあらわれているようだ〜百貨店4月売上速報

 被災地仙台とともに東京地区の落ち込みが目立っている

 百貨店の4月の売上ですが、被災地である仙台の落ち込みは想定される結果ですが、その中で子供服・洋品の伸びが大きいのが注目されます。

 3月3日に博多阪急が開業した福岡市では3月に続いて売上は伸びています。但し、店舗数調整後の数値はマイナスなので、天神地区に百貨店が売上をおとしているということです。菓子、惣菜などのデパ地下商材が伸びているのは「阪急」効果なのでしょうか。レストラン街も伸びています。

 東京の消費はこの時期依然回復していません。5月も一部で回復の声も聞かれますが、消費者心理の落ち込みはマスコミ報道以上だと思います。東北出身の方も多いですし、続いている余震と放射能が影を落とします。化粧品が意外に数字を落としているのは中国人観光客による大量購入が影を潜めた所為と思われます。婦人服、化粧品は地域顧客の実需の回復は早いはずです。

 梅田百貨店戦争前半戦は京都地区に影響があらわれている

 京都の河原町町阪急が閉店したのは昨年8月、丸井による再開は4月27日です。4月の前年比ということでは店舗数減少の影響もあると思います。(店舗数調整後は-1.8%とややマイナス幅が縮小します)それでも大阪、神戸に比べて京都地区の百貨店の売上げはマイナス基調です。
 4月19日にグランドオープンした梅田大丸の増床リニューアルは京都方面に影響が現れています。

 京都人、神戸人は大阪に何が出来ようが買い回りに来ることはありません。従って梅田百貨店戦争の影響はないと読んでいたのですが、考えられる要因は2つ。京都に多い大丸のカードホルダーが開業時のお買い得商品を狙って流入した。そしてもうひとつはJR沿線の京阪間、滋賀県の大津草津方面の顧客がJRを使って来店している。

 後者の要素が強いと見ています。元々このエリアの住民は「京都人」ではないので大阪への反発心も少ないですし、京都駅で乗り換えて四条河原町にでるなら新快速で大阪に出てもあまり変わらないという意識もあります。

 遊びで大阪に出てきますから「食堂・喫茶」の利用率も高いのです。

 JR三越伊勢丹が開業した5月、さらに6月の数字を見ていけば結論はでます。

                                       (2011年06月02日)

図ー全国百貨店売上高前年比比較(4月)  店舗数調整前〜新展開業の福岡の伸びが大きい
図148

図ー京阪神の百貨店4月の売上高前年比〜京都の落ち込みが目立つ 梅田大丸の影響か?
図149

図=百貨店売上げのアイテム別構成比〜婦人服のウェートが高い
図155
境界を超える事にしか活路はない〜大梅田と「千里市」あるべき姿での再編成

 「大梅田」構想は行政では出来ない視点を提示している

 関西経済連合会が2008年に発表した「大梅田構想」は梅田地区の集積を関西経済の起爆剤にしようという広域の視点でまとめられているという点で行政区域内の課題としか扱えない行政にはできない提言であったといえます。

 もし大阪市がまとめると大阪市内の資源の活用ということが中心になるでしょうし、大阪府がまとめると大阪府内の資源の活用が中心になるでしょう。それは当たり前の話です。

 大阪府の橋下知事は当初関西圏全体の視点で発言されていたので期待していたのですが、最近は大阪の広域行政、大阪市の分割という・・・あまり緊急性が高くないテーマに関する動きが多くて少し残念です
。(いわゆる大阪都構想の中での大阪市の分割再編の議論はあまり緊急性はありません。特に大阪市は生活保護世帯を多く抱えており、先般も平松市長が政府に申し入れたように、生活保護コストを国が負担する仕組みを作らない限り、一部の地域に過剰にその負担がかかるので、性急に分割することは望ましくありません)

 梅田の立地で大きな構想を組み立てる時には、それは大阪市だけの課題でも大阪府だけでの課題でもなく、京阪神を中心とした関西全体の資源の活用と活性化戦略が必要です。(現在東北復興という大きなテーマを抱えた国に大きな期待をしてはいけません)関西の国立大学や国立民族学博物館そして関西広域連合と密にやりとりが必要です。

 行政でその枠組みを作れない時に、行政区のしがらみがない経済団体がその責を果たすのが次善の手だてであるのですが、権限もなくお金も出さないので、あまり踏み込めない・・・提言だけで終わってしまいます。

 千里市であればいいのにといつも感じる住民としての意見

 国立民族学博物館の梅棹忠夫先生は千里ニュータウンを「千里市」として豊中市、吹田市、箕面市から独立させればいいと、かねがねおっしゃっていました。どの市も中心部は別の場所にありニュータウン内の整備にはあまり熱心ではありません。住民も行政区が違えばサービスや利用施設も違うので一体感や一体となった都市計画も進まないのです。・・例えば老朽化した団地の建て替え時の容積率の緩和処置も行政によって違います。

 本来は、生活圏や人の交流をベースにして行政区が再編成される事が望ましいと思います。

 国立民族学博物館やガンバ大阪、太陽の塔といった、国際的に通用する地域の貴重な資源を地域で活かせないのも、行政区が分断されていることも大きいと思います。吹田市という行政区域の枠では優先順位が低くなるのでしょうね。

 梅田北ヤード「うめきた」は独立行政区とするべきである

 千里ニュータウンの失敗した側面を教訓にして、梅田北ヤード地区は大阪市から独立した特別行政区として徴税権やまち作り規制について地域の事業者に委ねるべきです。

 TMOではなく権限を持った行政区として関西広域連合の直轄領とするのです。(今の関西広域連合が関西州ではないことは承知していますが)そうすれば関西の各自治体も本気になって取り組んでくれるでしょう。

 いわゆる「大阪都構想」のように大阪市内をいくつかに分割するとかいうちまちました話ではなく、人の流れや産業のつながり単位でエリアを区分けし、地域で責任を持ってマネジメントするということで日本国内のどこよりもダイナミックな事ができます。

 アフリカの国々は直線で分割されています。植民地時代の宗主国の思惑と力関係でおしつけられた境界です。日本でも廃県置藩という言葉が良く語られるように、歴史的なつながり文化的なつながりそして人のつながりで行政区を再編成しようという考え方もあります。

 関西州をイメージした関西広域連合の直轄地としての「うめきた市」であれば関西の自治体、大学からその知恵と人材を集積する良い動機付けになると思います。(関西広域連合は行政単位ではありませんが)
 
 平松市長のブレーンが「うめきた」のい大仏を建立する計画をお持ちのようですが、新しく大仏をつくるのはもったいないので万博公園にある「太陽の塔」を移設すれば街のシンボルとして関西統合の願いを集めたモニュメントになります。

 「大阪万博」の理念である「人類の進歩と調和」という、なじみのある大きなほら話をテーマにしたほうが「ナレッジキャピタル」という舌を噛みそうな、こなれていないキャッチフレーズより効果的かも知れません。

                                       (2011年06月01日)


 海外では経済情報を集めているジェトロが日本の諜報機関の一つと見なされていると聞きます。その意味で国立民族学博物館も研究者が民族の文化や現地事情を収集している諜報機関で、実は陸軍中野学校のアジアやシベリアの工作活動のための民族の研究の流れを受けている・・・という妄想もわいてくるほど政治的な価値がある研究施設です。(中国、ロシアは少数民族への融和策が国を治める重要な課題です)

 先日捕鯨国の方が来館し捕鯨文化についてやりとりをしたという記事を見て国際会議でのロビー活動に使えるなと思いました。みんぱくとは関係ないですが、クロマグロの規制が通りそうになった時に規制を進めるアメリカに対抗して「リビア」の代表を通じて中東諸国の支持を獲得したという話を聞き、大国との付き合いだけでなく、小さな国々とのネットワーク構築の重要性を再認識させられました。
 5月
■日本進出に失敗した外資系企業〜失敗の理由

 日本での事業拡大に失敗した外資系の外食産業

 1970年は外食産業における外資進出元年とも言うべき年でした。というより、「外食産業」が生まれた年と言えるかも知れません。大阪万博のアメリカ観にロイヤルが出店、初めて大量調理に挑戦しました。(アメリカの大手ハワードジョンソンがでる予定でしたが、突如中止を受けたものです)冷凍食品や電子レンジ調理が駆使され、外食が産業化された魁だったのです。

 この年にはケンタッキーフライドチキン、翌年にはマクドナルド、ミスタードーナツなどおなじみの企業が進出しています。

 その後の進出企業の中で意外に日本の外食産業(レストラン西武等)と組んだ企業が失敗し、異業種でも本気で取り組んだ企業と組んだ組んだ企業が成功しています。店舗の立地戦略もアメリカと日本では違います。ロードサイド立地を中心にするアメリカに対し当初のパートナーであった藤田商店の藤田田社長は三越銀座店を1号店としました。アメリカの商品をそのまま展開しダンキンドーナツ(レストラン西武)に対し、ミスタードーナツは積極的なプロモーションと商品開発でドーナツ業界で独走しています。

 バーガーキングの失敗はJTなど日本の企業は短期的に大量出店して知名度とシェアを獲得しようとしたのに対し、短期的な利益確保を求める英国の親会社が投資に難点を示しその調整に時間がかった結果意思決定が遅れ撤退につながりました。マクドナルドが初期には藤田田社長のリーダーシップでアメリカンノウハウを活用しながら日本流の立地戦略で成功したのと比べると対極的です。

 1980年代はアメリカの外食産業も新しい業態をつくってはその権利を売って大金持ちになるというバブリーな時代でした。アイデアひとつで「目新しい業態」を創って売り逃げる・・・・。80年代の進出企業は「技術提携」が多く、ノウハウ料をしっかりと取るというパターンが多くなっています。(表にはありませんがスチュードベイカーズという店ではローラースケートに乗ったお姉ちゃんが接客し、時間が来れば店員が歌を歌っておどるというものでした。・・・・びっくりするけど飽きますよね。そういえば店員さんが歌って踊るというお茶目な百貨店もありましたね、もうなくなりましたが・・・いや無くなっていないって)


 日本のマーケットに精通し、本国と渡り合えるパートナーを得た外食企業は成功しています。異なる文化の中で育ったフードビシネスが定着するには物流面で強みのある商社や、外食産業が有利かというとそうでもないのです。

 「日本の外食トレンドは米国より10年遅れている。1990年代に米国で成長したカジュアルダイニングマーケットは、今後日本でも確実に拡がっていく」と自信を示しているのは「アウトバックステーキハウス・ジャパン」のジョエルシルバー氏。2000年に進出して5店舗ですから爆発的ではなくても一応は定着しているのでしょうね。でも進出当時思ったほどではないのでは?

 かつてアメリカ産牛肉の自由化を巡って激しいやりとりがありましたが、自由化された後に日本人が沢山ステーキを食うようになったかというとそうでもない。恩恵を受けたのは吉野家の牛丼が安くなって定着したという事でしょうね。

 海外で成功したフォーマット(自分たちが良いものだと思っているもの)をそのまま押しつけても成功しないということです。


 TPP推進と送発電分離の議論の浮上

 TPP推進の狙いは農産物の関税撤廃ではなく日本の市場の「非関税障壁」である社会制度や法体系をアメリカの基準に合わせるようにという圧力であると見るべきでしょう。食の習慣は簡単には変わりません。マクドナルドがどんなに定着しても、相変わらず昼食におにぎりを選ぶ人も少なくありません。
 「既得権益」で「保護された市場」例えば医療保険については「自由化」された医療で高額になる先端医療のサービスを受けるための「医療保険」の市場が米国の企業にビジネスチャンスを与えます。

 東京電力の福島原子力発電所の事故処理に関連して「送電」と「発電」の分離がクローズアップされています。どちらかといえば「新自由主義」に批判的で現政権に批判的な人がその方針を支持しています。

 「発電事業」を「分離」した場合TPPの参加していない中国系企業の参入は制限できても、米国企業の参入は制限できない仕組みになっているのでビジネスチャンスが生まれます。・・・米国の陰謀論を採らないにしてもタイミングが悪すぎるように思います。

 東京電力へのバッシングからの流れが地震当初に想定していたストーリー通りになってきているように思います。

 外食産業のこれから

 70〜80年代の外食産業の成長期にはアメリカの業態を研究する事で優位に立てた事もあります。その時代にアメリカのフードショーを見学するツアーに参加しましたが見るモノが全て新鮮でした。
 今はファミリーレストランも衰退し、チェーン店は価格競争が中心で、シェフのキャラクターを前面に出した個店や素材、地域食材に特徴のある店が人気を集めています。

 アメリカでもコンセプトで人を驚かせて人気を集めるような店がめっきり少なくなった様な気がします。人気のカップケーキやドーナツといったスイーツ類はあきらかに日本人と嗜好が異なりますしね。
 最近オープンしたJR大阪ステーションシティにでもいかにもといったチェーン店はあまり多く見られません。

 「産業化」=コストダウンしたものにどのような付加価値をつけていくのかが勝負です。「ビュッフェレストラン」化か「梅の花」化か2つの方向性が見えています。

                                                 (2011年05月31日)
  
図 外資系チェーンの進出状況 1996年スターバックス出店まで
図156
スターバック以降の主な進出企業
・「タリーズコーヒー」
・「シアトルズベストコーヒー」
・「セガフレード・ザネッティ」
・「TGIフライデーズ」
・「アウトバックステーキハウス」
・「陳麻婆豆腐店」
・「クリスピークリームドーナツ」
■これからのビジネス文化の変化とくらしに与える影響

 執務環境の変化

・冷房温度が高めに設定されることでオフィスファッションは「省エネルック」〜「クールビズ」から「スーパークールビズ」へ。

 官庁や大企業を中心に冷房温度を高めに設定する動きはさらに強まります。ノーネクタイだけでなくジャージ素材やTシャツも許容されるようです。亜熱帯にふさわしいドレスコードが一般化するのでしょうか?冷房が普及していない時代には開襟シャツや、麻素材のスーツが夏の定番だった時代もあります。

 女性の仕事着のカジュアル化はかなり先行しています。服装や外見で相手の社会階層を判断することが難しくなりそうです。

・在宅ワークなどWEBを使ったやりとりが進み、住まいの選択肢が拡がります。

 フレックスタイムの導入や執務時間のシフトが大胆に進んでいます。工場も土日操業が普通になりそうです。WEBを使えば業務のある程度の部分は在宅又は事務所から離れた場所でも処理、対応できるようになります。

 女性が働きやすくなることと、毎日定時に決まった場所に通勤するという習慣が無くなれば、住宅の選択の幅が拡がります。逆にオフィスも都心でなくリゾート立地や地方都市立地が成立するようになります。

 ぬぐいきれない放射性物質の不安

 微妙な問題なので雑誌の原稿では触れませんでしたが、放射性物質が首都圏でも検出されていることは「直ちに健康被害は無い」としても薄ぼんやりした不安を与えています。科学的に正しいかどうかは別にして、ターミナルでの節電や繰り返される関東地方での余震とともに「首都圏離れ」の気分を増幅します。

 一時避難で関西に拠点を移すことはあってもそれがそのまま関西移転につながるかというとなんともいえません。ただ、確実に言えることは関西あるいは地方圏から首都圏へ本社機能を移そうとする流れにブレーキがかかるだろうと言うことです。

 関東で生まれ育った人が他の地域へ移転することは無いでしょうが、首都圏に在住していてルーツが地方都市にある人はルーツである地方に回帰する動きが強まるでしょう。
 問題は仕事だけですが、例えば典型的な対事業所サービスで都市型の産業であった印刷屋さんですが、ネットで発注して宅急便で納品というパターンが増えていませんか?安く早く仕上がるので垂れ幕とか少部数のポスターはネットで注文しています。 

 首都圏の魅力であった情報の集中は多くの部分がWEBに置き換えられるでしょう。もちろんWEBで置き換えられない、人と人が対面でやりとりする情報交換の場は必要なのですが、消費市場が伸びている中国のパワーが気になります。
 工場の海外移転ばかりが話題になりますが、都市の情報交流機能の海外流出の方がダメージが大きいと思います。

 中国でも今夏電力不足の深刻化が懸念されています。毎年夏には電力が不足し輪番停電制がが取られているようですが、今年は特に需給ギャップが深刻なようです。石炭火力が中心なのですが石炭価格の高騰が原因であるようです。いち早く節電技術、省エネでも豊かに暮らす方法を日本で開発し、これから発展していく国々に伝えていく必要があります。

 理屈とか大義名分だけでは人の行動は変わりませんが、強い不安とかやむにやまれぬ事情があれば変化は確実に起きます。東京にも上海にもない関西の強みはどこにあるか考えれば明治維新以来長期にわたって低迷している関西の活路が見えるかも知れません。
                                       (2011年05月30日)

 首都圏の小売業の売上は戻っていますが、地元の需要が中心で、都心などでは地方からの買い物客が激減しているようです。首都圏の小売業は地域の需要を確実に押さえる方向にシフトすべきです。
■「WEBマーケティング」への勘違い

 「マーケティング」をWEBを使って展開するのがWEBマーケティング?

 先日、ある人とお話ししていてある勘違いに気がつきました。〜”「WEBマーケティング」のスペシャリストだから「マーケティング戦略提案や分析」が得られると期待していたがまったく何も出来ない・・・”   「WEBも駆使できる」「マーケティングの専門家」だと思いこんでいらっしゃたようです。

 もちろん世の中にはそのような専門家もいるのでしょうが「WEBマーケティングの専門家」の多くは、WEB上の販売サイトにいかに多くの消費者を誘導できるかという技術の専門家であることが多いのです。検索エンジンで上位に表記されたり、影響力のあるブロガーのアフィリエイトをセットしたり、でっち上げた人気ランキングの上位に商品を表記させたり、価格比較サイトで上位に表記されるように価格をこまめに入れ替えたりといった手間と技術を提供しているだけで、「もしドラ」を読んで期待しているとしたらその「マーケティング」の世界とは異次元の話です。

                                                   (2011年05月27日)

■大阪遷都44日間の夢〜または大坂城炎上でお宝をゲットしたのは誰か

 大坂城炎上と宝物の行方

 慶応4年(明治元年)1月鳥羽伏見の戦いを大阪城で指揮していた徳川慶喜は、敗戦の報に大阪城を逃げ出し天保山から沖合の船に乗り込み江戸へ逃げ出した。開場された大坂城に長州藩士が火を放ち、大半が焼け落ちました。(これには諸説在ります。蛤御門の変といい、長州人には火を付けるのが好きというイメージがありますね)

  焼け落ちた大坂城から略奪された宝物は役人の手によって「宝春院」に集められます。

 「宝春院に集まった「戦利品」は 落札にかけるというのでまた大騒ぎ。Aさんはじめ またもや大坂中から 商人が集まりました
ところが 値は決まっても なかなか品物が出てこない。おかしいと思っていると 萩の船頭達が船にことごとく運び込んでいる
付値があまりに安いというので 役人が 自国の船頭に買わせ長州に持ち込ませたんだそうです」(幕末百話)


 長州藩が火を付けてお宝をゲットしたという筋書きでしょうか。

 44日間の大阪遷都の夢

 3月、倒幕御親征の名目で明治天皇が西本願寺津村別院にご滞在になりました。その背景には大阪遷都をほのめかし、大阪の商人たちにご用金をせびりとる維新政府の思惑がありました。
 実際に大久保利通などは「京都は腐敗と因習に満ちている。人心を一新して新政府の基盤を固めるには大阪遷都こそ必要。外国公使への接見にも便利だし、海軍創設にも都合がいい」と大阪遷都論を唱えていました。その議論の中で一時的に大阪に行幸頂、関東の戦いの見通しがつくまで滞在を願う」として大阪に滞在になったといいます。滞在の間、東本願寺なんば別院に太政官代(政府)がおかれていたとの説もありました。
 その結果、遷都の経済効果を期待した大阪商人は300万両の会計基金や度重なる御用金の供出にもこたえ、維新政府の財政基盤を支えました。お金を出した割に維新政府からは冷遇され,歴史ドラマにはならない・・・尊敬されない。まるでどこかの国のようですね。
 御滞在はわずか44日間でした。

 結果的に、政情不安な関東以北を押さえるということで江戸に遷都されたのですが、もし大阪が首都になっていたら、皇居は大阪城で蔵屋敷が密集していた中之島が官庁街。大阪都は奈良、堺から阪神間まで含む広域に拡がっていたでしょう。

 「だまされる奴が間抜けなんだ」・・・ということでしょうか。そういう言葉を口にする人とはあまり関わらない方がいいです。

 大阪はいつまで沈み続けるのか
 
 その後、蔵屋敷の廃止による諸藩貸し付けの金融経済の衰退のダメージや,開港した川口港の水深不足による商社の神戸の移転などかつての「天下の台所」の勢いは無くなってしまいました。いったい大阪の経済の「地盤沈下」はいつまで続くのでしょうか?

「大阪百年」(毎日新聞社)昭和43年、「幕末百話」(岩波文庫)を参考にしています。

                                     (2011年05月26日)
■消費の転換期に注目しておきたい「リユース」市場の拡がり

 書籍、ゲーム機についで衣料品のリユース市場が存在感を示している

 書籍のリユース市場はブックオフがつくったといっていいでしょう。不要品の6割がリユースショップに流通しています。昔からの古書店とは客層が違います。ゲーム機やゲームソフトもまた遊んだ後はリユースショップに流れています。

 衣料品も不要品発生件数が多いのですが、CtoC(消費者個人間のやりとり)も多いのですが24.7%がリユースショップを通じて流通しています。中古衣料の流通は世代間の意識の差がありそうながありそうな気がします。中古衣料が広く流通しだしたのは団塊ジュニア世代以降だと記憶しています。

 衣料品はリユースだけでなくリメイクのショップも増えてきています。

 家具のリユースの展開

 長寿命家具のブランド作りのお手伝いをしている関係で、家具のリユース市場も気になります。オフィス家具についてはかなり中古家具の量も増えてきているように思います。家庭で使う家具は天然木・天然塗装の商品であればかなりのところまで再生可能ですが、メラミン塗装は一見丈夫ですが、剥がれてくると再塗装が大変です。「ピアノと同じ塗装ですよ」とピカピカの家具を買うと長くは使えないとうこともあります。とはいえ、流通数が増えてくると再生技術も進化してきますので、発生数やリユース率を見る限る今後伸びていくことが伺えます。

 その他のリユース

 車関連はなんとなく想像できますが、スポーツ用品のリユース市場は?釣り竿なんかではショップがありますが・・・おそらくゴルフ用品なのでしょうね。自転車もまだまだ使い捨て感覚の安物が多いため中古品のリユース市場はマニア向けだけなのでしょうね。パソコンは不要品になった時点でかなり型落ちになってしまうライフサイクルの短い商品ですので意外にリユースショップへの流通が少ないように感じます。

 エネルギーを使わない社会になっていくときに、「リユース市場」にまだ可能性が残されていると見ています。

                                       (2011年05月25日)
図ー過去1年間の不要品発生数
図157

図ー不要品のリユースへの流通
図158
(2011年 平成22年度環境省使用済み製品のリユース促進事業研究会報告書)
■さて評判はどうでしょう?少しずつ聞こえてくる声

 人出が引いた阿倍野キューズモール

 開業時は多くの人出があったあべのキューズモールですが、お客さんの集中は一段落したようです。施設内のカフェもひまだそうです。もともとの構成がイトーヨカドーと専門店街のようなものですから、地元商圏内のお客さんの日常使いがとれればいいのです。(東急ハンズ、シブヤ109は規模が想像していたより小さいので広域から人を呼ぶ力はありません)
 1ヶ月の来館者数が430万人、年間の目標が1,700万人ですから、開業時の人の集中が落ち着いたのも無理はありません。開業時のペースが続けばとんでもないことになりますものね。この時期神戸や奈良からの広域の集客もあったようです。シブヤ109が珍しかったのでしょうか?6月1日追記。

 大阪ステーションシティ〜百貨店に好意的なのは東京のファッションマーケティングの大御所

 梅田百貨店戦争ばかりが話題になっていますが、開業した百貨店を絶賛しておられるのは東京のファッションマーケティングの大御所氏、伊勢丹三越の500億円の目標は低めで700億はいくだろうとか、大丸も670億円は低すぎるとお墨付きを与えておられます。一方、西梅田、心斎橋は影響を受けて衰退していくだろうというお見立てです。

 影響が京都、神戸、や難波天王寺には及ばないという説に同意いたします。阪急の開店が来年中という目標なのでその分、確かに有利でしょうが、多分にビジネス上のリップサービスが混じっているように感じられます。

  別のファッションディレクターの女性は「自主編集の売場では多くの人を集客するものの得意のファッションフロアでは活気を感じず、何故か顧客と売場に大きな距離感を感じた。新店オープンのお祭り気分も、ワクワク気分も感じられなかった」と評しています。何人か聞いた業界関係者も「大絶賛」というわけでもありませんでした。

 確かに三越伊勢丹は好きな人は大好きと思える三越伊勢丹らしい売場です。東京在住のファッションマーケティターは高い評価になるのでしょうね。多分、視点が同じなので評価が高いのでしょう。

 ルクアに関しては「各アパレル独自の限定品のラッシュで活気あるものとなっている」という専門家の評価や、「これでミナミまで行かなくても好きなショップでお買い物できる」というユーザーの評価が賑わいを裏付けています。
 
 梅田大丸について新しく取り込もうとしているターゲット層の女の子に「大丸」というストアブランドの価値を一生懸命話してもあまりピント来ないようです。ステイタスやシックなファッション性といったブランド資産は有効には機能していないといえます。神戸大丸、京都大丸、心斎橋大丸、芦屋大丸との関係の中で梅田大丸をどう位置づけるかなのだと思います。

 正直に言って北ビル(三越伊勢丹、ルクア)に行列が出来ているのに比べて少し寂しい店内を憂います。

  ※私の目には寂しく見えていたのですが、開業1ヶ月の新聞発表では1日平均15万6千人と、計画比1.7倍の来店者があるそうです。売上も計画比1.3倍。ポケモンセンター効果でファミリー客が増えていて、子供服は156%増だそうです。東急ハンズ 目当ての男性客も増加し、12階のリビングは168%増、紳士服、60%増と好調です。1日の来店客が2.6倍に増えているので客数に比例したものではないですが、婦人服も97%増と伸びています。ただし、インターナショナルブティックは予算を下回っているとのことで、従来の百貨店の収益とは違った形で収益を獲得して行く体質転換がどこまで出来ているかが鍵です。

   6月1日追記。それにしても新聞は記者発表を掲載するだけでなく自分の目でも取材すればいいのにと思います。

 ただし、「行列が出来ている」というのは商売ではなく、まだこの人出は物見遊山であることの証なので、そこまで心配することはないでしょうが。

 誌面リニューアルした「大阪人

 平松市長がツィッター上で興奮して新しい誌面を紹介しておられたので期待していましたが、表紙にメジャーな有名人の名前が並ぶ事は嬉しいのですが。

 以前にも増してプロパガンダの色合いが強くなっているのは意外でした。元タウン情報誌の有名編集者が入っているのにも関わらず「うめきた」の紹介がまるで広報パンフレットのようでした????お金をとって広報誌を売るのかな?
 (「月刊島民」は無料ですけど面白いのに・・・)

 これからに期待しましょう。

 神戸ハーバーランド阪急跡はイオンモールがリーシング

 旧オーガスタビル跡や旧西武跡についてもいろいろな企業がリーシングに動いていましたから、食い散らかされた後のかなり手垢のついた立地です。

 イオンモールのリーシング力で集積としての魅力が生まれればいいのですが・・・・。普通に考えればアウトレットモール、それが出来ないなら北区、西区を商圏とした日常性の強いショッピングセンターです。さすがに見事に再生を果たしました。

 新開地に近いのに全く新開地の色をを付けなかったのが失敗の一因だと思います。

                                                         (2011年05月24日)
■国鉄大阪駅と梅田ステン所

 駅の名前

 JR大阪駅(旧国鉄大阪駅)は最初から「大阪駅」という呼び方が正式名称でした。明治の初めには「駅」という言葉自体に昔からの「宿場」のイメージが強かったので外国人技師が「ステーション」呼ぶのにならって「すてん所」と呼ぶのがかっこいいという風潮があり、元々の地名である「梅田」がくっついて「ウメダステンショ」とさらに「梅田ステン所」という呼び方が一般化していたため、明治の観光案内地図にそう表記されていたようです。JR梅田貨物駅は大阪駅と区別するために初めから「梅田」という名称が使われていたようです。

 それまでの大阪の中心地は大阪城でもなく、船場でもなく、市内で最も人通りが多くて、街道の起点があり、その場所から各地への道筋が通っていた拠点だった「高麗橋」でした。東の大坂城、西の船場の間にあって江戸幕府のお触れを告げる「高札場」があったのは高麗橋で、豊臣時代には大阪城の天守閣がまっすぐに見通せました。三越の前身の三井呉服店の大阪支店や虎屋、スルガヤなどの有名店が立ち並んでいた中心街です。明治になって日本で二番目の鉄橋が架けられました。

 大阪駅までの距離を示すのに、「高麗橋から人力車で3銭」と例示されています。

 大阪駅は当初、堂島につくられる予定でしたが地元の反対で、当時の西成郡曾根崎村、通称「梅田千日」とよばれていた墓地付近に設置された経緯があります。当初周りは田んぼや畑が一面に拡がっており、汽車見物に弁当持参で行楽に来る人たちがいたといいます。

 古い地図を見ていると張り巡らされた堀と「市場」「蔵」の配置で物流の要となった都市の骨格が見えてきます。今の地図の鉄道や道路網のようなものでしょうか。かつては都である京都へつながる物流の幹線である淀川の水運が大動脈であり、大阪の街はそれにそって機能が配置されていたことが見えてきます。いわゆる「東西軸」は大阪城を基にした城下町の構造よりもっと深いものに根ざしているように見えます。

                                               (2011年05月23日)
  
■大阪の戦後1行年表での時系列の整理
■戦後〜万博まで

1945年 大阪大空襲 死者1万4,000人 大阪市人口107万人(1935年は298万人)
1946年 南海地震(M8.1) 1432人死亡
1947年 大阪城本丸紀州御殿火事で焼失  米軍に接収されていたため消火できず
1948年 大阪梅田地下街開業 大阪城公園開園〜翌年天守閣公開が始まる 戦前は陸軍が使用
1949年 京阪電鉄、阪急から分離独立
1950年 ジェーン台風 大阪市の21%が浸水 死者行方不明者200人。 この後盛り土や防潮堤などの対策が進みます。
1951年 関西電力発足(発送電と配電の一体化)同じ年「サカエ」ダイエーの前身「サカエ薬局」開業。
1952年 読売新聞が大阪での発刊を始める 民間初の視聴率調査実施
      この年占領軍に接収されていた施設が返還されます。大阪大空襲で焼け残った主立ったビルが接収されていましたので
      やっと戦前の姿に戻れるか・・・・?という期待もありましたが、このころから大阪発祥の財閥系の大企業が本社を東京へ
      移転し始めます。大阪の地盤沈下の始まりです。

      (主な接収ビル)
      ・日生ビル 米軍南西司令部
      ・瓦斯ビル 下士官宿舎
      ・新大阪ホテル 米軍将校宿舎  (今のリーガロイヤルホテルです)
      ・そごう  大阪PX     PXは軍人向けの売店 接収されていたためそごうの戦後の再建が遅れてしまったといいます
      ・住友ビル  PRセンター
      ・伊藤万ビル 女子部隊宿舎  今は建て変わってセントレジスホテルになっています
      ・日赤病院 大阪米軍病院
      ・綿業会館ビル MP・CID本部  MPはミリタリーポリス 憲兵隊のようなものです
      ・靱飛行場 軍連絡用飛行場  今の靫公園
      ・阿倍野、住吉、箕面の高級住宅街の民間住宅は将校用宿舎にあてられる
   占領下の大阪については信頼できる資料が少ないのでいずれ整理しておく必要がありそうです。

1953年 「市内交通は市営主義」を破って初の民間バスセンターが設置された
1954年 我が国初の国際見本市を開催 大阪港の輸出入の存在感は高かった時代です 以降東京と、大阪で交互に開催
1955年 堺市の臨海工業地帯造成開始 
1956年 通天閣再建 神武景気の時代
1957年 ナンバ地下街開業 主婦の店ダイエー1号店開店
1958年 伊丹飛行場が占領軍から返還され大阪空港に  特急こだま運転開始(大阪〜東京6時間50分)
1959年 防潮堤完成 四天王寺五重の塔復興
1960年 高層ビルブーム 大阪市人口301万人〜やっと戦前の水準に戻ってきました
1961年 環状線 西九条〜天王寺間開通 完全環状運転の開始は1964年から  第2室戸台風
1962年 繊維不況大阪経済は繊維から電気機械器具にシフト  千里ニュータウン街開き
1963年 名神高速 尼崎〜栗東間開通 ハイウェイ時代に。 サントリー瓶詰め生ビール発売
1964年 東海道新幹線開通 地下鉄御堂線 梅田〜新大阪まで延伸
1965年 大阪府初の公害白書 スモッグ観測が始まる 名神高速道路 小牧〜西宮間全線開通
1966年 西成区暴動 堂島地下街開業
1967年 万国博覧会起工式 山陽新幹線鍬入れ式
1968年 阿倍野地下センター開業
1969年 大阪市電が廃止される 阪急三番街開業
1970年 日本万国博覧会  虹の街(なんばウォーク) 船場センタービル開業 大阪市の人口298万人横ばいから減少へ
    
 災害の歴史を調べようと資料をまとめてみました。南海地震についてはもう少し遡ってしらべてみましょう。地震よりも水害に悩まされてきたことがよくわかります。

 今ホットな話題になっている電力の発電と送電の分離ですが50年代までは戦争中の名残もあって別々の事業体だったのですね。年配の人は今でも「関西配電」と呼ぶ人も多いですしね。

  大阪の地下街は戦後早い時期から整備されてきたこともあらためて実感できます。記憶の中でイベントが前後しているので整理しておくと新しい発見があります。(といっても40年代、50年代はリアルタイムの記憶にはないのですが)

■〜1990年 花博まで

1971年 光化学スモック ニクソンショック
1972年 千日デパート火災 阪急ターミナルビル完成
1973年 石油危機 阪急梅田駅拡張移設工事完成 大阪国際ビル竣工
1974年 プチシャンゼリゼ、なんなんタウン開業
1975年 大阪市人口227万人  石油危機以来の不況、人員整理、一時帰休、管理職指名解雇、採用内定取り消しが頻発
1976年 大阪丸ビル、駅前第2ビル竣工
1977年 国立民族学博物館が完成 南港ポートタウン街開き
1978年 大阪都心部夜間人口減少 アメリカ村ブーム なんばCITY完成
1979年 大阪駅前第3ビル竣工
1980年 上本町ハイハイタウン開業〜意外に最近
1981年 神戸ポートアイランド完成 大阪駅前第4ビル竣工
1982年 大阪21世紀協会発足
1983年 梅田大丸、アクティ大阪開業
1984年 国立文楽劇場 プランタンなんば開業
1985年 阪神タイガース21年ぶりの優勝
1986年 OBPツイン21 ニューオータニ開業 心斎橋2丁目劇場オープン
1987年 国鉄民営化 NTT上場〜ブラックマンデー
1988年 瀬戸大橋開通 南海、阪急球団身売り ソウルオリンピック
1989年 瀬戸大橋開通  消費税導入 バブルピークに
1990年 国際花と緑の博覧会   バブル崩壊

                                        (2011年05月20日)
■環状線と山手線の違いを理解することが関西の市場を知る糸口になる

 鉄道沿線イメージでは「阪急沿線」への好感度が圧倒的

 「プリンセストヨトミ」と並んで映画公開中なのは「阪急電車」です。前者が「大阪」を「舞台にしているのに対して後者は阪神間を舞台にしています。大阪でもない神戸でもない独特のエリアです。

 梅田百貨店戦争を解き明かすには「沿線力」の分析が重要です。同じエリアを並行して走っていても阪急と阪神JRでは鉄道のイメージが全く違います。JRも駅の改良や車両の改善などでイメージアップをはかっていますが、時間のかかる作業ですし、戦略も必要です。今回のJR大阪ステーションシティの開業もまたひとつの契機になるでしょう。

 環状線と山手線の違い

 以前にも述べましたが、東京の企業が関西に進出するときに必ず間違えるのが、環状線は山手線のようなものだと勘違いすることです。

 大阪の環状線は市内でも「庶民的な」エリアを通っています。地元になじめれば面白いものが沢山ありますが、余所者が楽しめるかというと微妙です。鶴橋の焼肉屋、玉造のカフェ、対象の沖縄料理屋、西九条の居酒屋、天満の商店街・・・地元の案内がなければ発見できないでしょう?山手線は東京の主な繁華街を結んでいます。渋谷、新宿、池袋、有楽町、秋葉原・・・。

 環状線は住民や勤め先がある通勤者など用事のある人しか利用しない路線です。

 山手線には私鉄のターミナルがJRの駅に間借りするように存在しますが、環状線の駅と私鉄の駅の接点は極めて少ないのです。乗り換えの便も決して良くないですしね。JRと私鉄,JRと地下鉄の相互乗り入れがないのは線路の幅の違いがあって物理的に不可能であるためといわれています。
 戦前には東京の私鉄は山手線の内側にはいることがゆるされなかったそうですが、関西の私鉄のターミナルは環状線の内側にありました。

 山手線の駅・沿線の持つポテンシャルと環状線の駅・沿線が持つポテンシャルは量も質も異なるものです。

 また山手線は宮城を中心とした円を描き東京の中心を形成しているのと大阪城は決して大阪の中心ではありません。阪神間、京阪間、奈良と大阪の間、そして千里といった居住地域の文化を背景に働く場所としての都市機能が中心にあります。関西の市場を知るには沿線文化の占めるウェートがとても高かったのです。

                                                    (2011年05月19日)
図ーいつも利用している鉄道
図159

図ー好きな鉄道、嫌いな鉄道
図160
図161

図ーおしゃれな住民が多い鉄道、庶民的な鉄道
図162
図163
(なにわ考現学2005)から加工
■ウィスキーの復権と嗜好品としての「お米」の可能性

 マニア訴求からハイボール路線へ

 しばらく前までは「ウィスキー」はマニアの嗜好品でした。かつては「サントリーオールド」がサントリーの屋台骨を支えていたのですが、若い世代がビール、発泡酒どころか「チューハイ」や「梅酒」など軽い飲み口のお酒を好むようになったことと、中高年が「健康」を意識して焼酎のお湯割りやウーロン茶割りなどを飲むようになり、ウィスキーのフレーバーを楽しむ人は少数派になっていたのです。

 サントリーでも蒸留所での「ブレンド体験」に作家を招いてオリジナルウィスキーを作らせたり、「正しい」水割りの作り方を講習したりしてウィスキーへの関心を高めようとしていましたが、結局それはもともと「ウィスキー」や「ウィスキーにまつわる物語」が好きなファン層に対するプロモーションであり、利用者の拡大にはつながりませんでした。

 ある時期から、ハイボールの訴求を始めたことでウィスキーが再びブレイクしました。店頭でのハイボール訴求の中心である「角瓶」は一時品薄になるほどで、「山崎」や「「響」といったハイクラスのウィスキーでもソーダ割り「ハイボール」が推奨されていたようです。ちゃんと作ったハイボールは確かにうまいですしね。

  裾野が広がれば「ウィスキーにまつわる物語」や銘柄による味わいの違いなどの奥深い世界に関心を持つ人も増えてくると思います。あとはそのマニアックな世界に女性をどう引き込むかだけですね・・・・。チョコレートの味を引き立てるウィスキーバーとか。

 ワインに例えられる嗜好品としての「お米」

 ワインについては女性のマニアも多く存在します。「テロワール」(テロワール(Terroir)とは、「土地」を意味するフランス語terreから派生した言葉。もともとはワイン、コーヒー、茶などの品種における、生育地の地理、地勢、気候による特徴をさすフランス語である。 同じ地域の農地は土壌、気候、地形、農業技術が共通するため、作物にその土地特有の性格を与える。ウィキペディアから引用)という言葉もワインについての語りから一般化してきました。(私はテレビドラマ「神の雫」で覚えました)

 私たちが毎日食べているお米も「新潟産コシヒカリ」とかいった産地とブランドと価格で選択していますが、同じ新潟産、同じ魚沼産でも田の場所や日当たり、水、生育法によってまったく違った味わいを持っています。

 世の中には1kgで1万円というお米も存在します。生産者、生産法までこだわって直接取り寄せているマニアックな消費者もいればホームセンターで売られている格安のお米を選択する消費者もいます。現在は市場は2極化しているのだと見ています。

 確かにコシヒカリにこだわるとか新潟産にこだわるという理由もあげられますが、多くの消費者は価格帯で選んでいるとみています。1kg1万円は極端としても「嗜好品としてお米を選んで、毎日ではなくても「良いお米」を選択するというスタイルが定着しないと、今後TPPとかで輸入障壁が撤廃されると日本のお米は滅んでいきます。

 ウィスキーの復権のひそみに倣えばマニアックな層への訴求はほどほどにして、毎日の料理に合うお米を使い分ける、とか、美味しく炊いたご飯は美味しいといったことを手軽に経験してもらう必要があります。

 例えば、炊飯機能付き弁当箱所有者にご飯の味を引き立てる「ご飯の友」と一食分の無洗米パックを届けるとか・・・・?美味しく炊いたご飯のお店で体感してもらうとか(現在の外食産業のお米は不味いものです)。米粉パンがあれだけ人気なのはやはりやはり「米」に惹きつけられる魅力があるからだと思います。

 昔のようにお米でほとんどのカロリーを摂取する時代ではないので、「嗜好品」としてのポジショニングを確立することが大事です。

                                             (2011年05月18日)
■大阪ビシネスパークの再生と「うめきた」の課題

 OBPは緑と水のアメニティ」はあっても「歩いていて楽しい街」ではなく「ほっとできる」街でもな

 京橋駅と大阪城公園にはさまれた大阪ビジネスパークは、大阪城を眺めるには絶好のロケーションで、街もスーパーブロックの大きな街区毎に整備された美しい街です。もともとは陸軍の砲兵工しゃの跡地です。

 1日に8万人以上の来街者があります。近隣の主婦はパート勤務で自転車で来街するので不法駐輪も目立ちますが。道路が広いのですっきりはしています。

 俯瞰して全体を眺めると綺麗な街並みです。大阪城公園の緑や川の流れ、何よりも大阪城が美しいので、かつての調査(1989年)では「大阪らしくなく」て「好き」と評価する人が多かった街です。「働いてみたい」「デートで利用したい」という評価も高かったのですが最近の街イメージはあまり芳しくありません。

 多くの来街者は街を俯瞰して眺めません。歩いていて見える風景や、歩いていて休めたり、楽しめたりする風景をもとに街の印象が決まります。この街の多くの施設はあまり外に向かって開かれていません。ブロックの中、施設の中に囲い込んでいる印象が強い商業集積になっています。

 計画時点で住宅機能を排除したので、既存のオフィス街の様に昼間人口だけの街になっているので、夜が楽しくありません。また路地がない街なので、小規模な店舗、、ユニークな個人営業の店が存在しないのでチェーン店ばかりになっています。

 当初は京橋を中心とし周辺地区にそのよう施設がしみ出してくることを想定していましたが、京橋は旧来の商業の集積がありすぎて新しい店がうまれなかったのが誤算でした。京阪モールの当時の社長さんと色々と仕掛けはしてもなかなか地元の盛り上がりは生まれませんでした。

  大阪ビジネスパークの周辺も大阪城公園、森ノ宮の鉄道用地、大阪府庁など官庁街など大きな土地所有者が多く、自然発生的な拡がりが生まれませんでした。大阪城周辺は大阪鎮台(陸軍の拠点)が置かれていたので、陸軍ゆかりの施設が多く、官公庁関係の施設が集積していて、ある意味面白みがありません。
 ちなみに谷町筋には軍服を製造する職人が集まっていた名残で紳士服メーカーが多く集積していました。アパレルの町の割におしゃれではないのは「軍服」〜「背広(昔のサラリーマンの制服)」という流れであったせいでしょうね。大阪城近くにある私学の追手門学院は陸軍の士官の子弟が多く通っていた学校です。

 梅田北ヤードに高層オフィスの集積が生まれるとますますOBPの独自性が失われ、存在感が低下していきそうです。開発から時間が経緯し、そろそろ建て替えの時期にある物件もあります。。大阪府庁の移転などを契機に大阪城公園の活用が検討されています。

 「水と緑のアメニティ」が評価されていながら「歩いていて楽しくない」「デートで利用したくない」「ほっとできない」といったマイナス面を改善した街の再構築が必要なタイミングであると思います。課題は明らかなので方向性は見えているはずです。

 「うめきた」の課題

 全体のパースを見る限り、あきらかにOBPの轍を踏むような印象が強い街並みです。歩行者目線で何が見える街なのか・・・もう建物が建っているのに未だに明らかではありません。新宿西口の高層ビル街のようなあじけない街になるのでしょうか。あまり心がはずまないのは何故か?・・・・これから長い期間をかけて歴史を刻んでいくのでしょうが・・・・・。その街でどんなビジネスライフ、オフビジネスライフが過ごせるの?歩く街並みはどんな楽しさと発見にあふれているのか?

 もう建物が立ち上がっているのにその姿が見えません。

期待が大きいので厳しい意見になります。大変でしょうが今後の健闘を祈ります。
 
  ※余談ですが、JRの土地だったのに何故、「梅田」「の名前が入った「梅田北ヤード」と呼ばれているのか随分不思議でしたが、JR貨物の駅は「大阪駅」ではなく「梅田駅」だったのですね。古い地図ではJR(国鉄)の駅は「梅田ステーション」と表記されています。・・5月23日の記事参照

                                                         (2011年05月17日)
 
図ー大阪ビシネスパークの「街イメージ」」力の凋落 1989年〜2005年
図164
図ー性年齢別のOBPの街イメージ@
図165
図ー性年齢別のOBPの街イメージA
図166
(なにわ考現学2005)
■5月14日〜15日靫公園バラ祭

 靫公園50周年を契機に始まった住民主導のイベントです。数年前まではブルーシートのテントも立ち並ぶ公園でしたが、バラ園が整備され美しい公園になっています。

 東京の商業設計者が関西で東京の自由が丘に似た街を探していて、この周辺の街並を見て感動されていました。(「自由が丘」もいうほどすごい街でもないのですが・・・・夙川とか香櫨園、甲東園の方がきれいですよ・・・とはいえエアポケットのようないい感じの街になっています。

 この街のオフィス住民となって5年目ですが初めて参加させていただきました。(といっても見るだけですが)手作り感があって、お天気が良くて気持ちのいいイベントでした。

 中之島などの「水都おおさか」も中止しないで手作りで毎年続けていけばいいのにとも思います。

 「祈りのない祭がイベントだ」と言う言葉を長浜黒壁の館長から伺ったことがあります。靫公園内には楠永神社がありご神木があります。別にご神木に捧げる祭ではないのですが、バラなどの緑を通じて自然に感謝なのでしょうか?「うめきた」(梅田北ヤードのことらしいです)に「大仏」を建立すべしという説がありますがやはりそこには地を鎮める「神社」のほうがふさわしいのかも知れません。ほら小さなビルの屋上にお稲荷さんとか奉ってあったりするではないですか。

 もともとこのあたりの小島には沢山神社があって天皇の即位後の儀式「八十島祭」が執り行われていました。平安時代から鎌倉時代ですからそんなに古い時代の話ではありませんが・・・・

  「バラ祭」は「ばらまつり」ではなく「ばらさい」と呼ぶそうです。

                                       (2011年05月16日)
■当たり前の判断としての百貨店閉鎖

 神戸ハーバーランドは郊外立地

 2012年9月の契約満了を持って神戸阪急(33,278u 年商90億円?)が撤退することが明らかになりました。早々と撤退した神戸西武に比べてよく我慢をしてきたと思います。
 
 神戸ハーバーランドは「副都心」というよりあきらかにリゾート立地、郊外立地ですから、いくらオープン時に多くの商業施設を集めても定着はしませんでした。大きな吹き抜け「ロタンダ」を売り物にした神戸阪急は震災の時三宮・元町が被害を受けたときには持ち直しましたが、浮上できませんでした。

 ロタンダは人の回遊を阻害し結果的に散漫な印象をあたえていたと思います。無くなってしまったオーガスタビルや梅田のブリーゼブリーゼなど売場の真ん中に大きな吹き抜けがある商業ビルは決してうまくはいっていません。神戸阪急に3万uを超えるだけのボリューム感が感じられないのはそのためです。

 後継テナントにイオンの名前があがっているようです。神戸市北区、西区のエリアからの集客が見込めますし、足元でマンション開発が進んでいますからうまくいくといいのですが。

 この立地ではかつてダイエーがKou’sという会員制ホールセールクラブを運営してました。コストコが受け入れられている現在、早すぎたのかそれとも形だけ真似てもうまくいかないのか検証しておく必要があるでしょう。「立地創造型ショッピングセンター」という言葉が大まじめに論じられていた時代です。ダイエー、阪急、西武、島屋(旧オーガスタビル)といった当時そうそうたる企業が取り組んだプロジェクトが失敗するとは誰も思わなかったのも無理はありません。その後の軌道修正に長い時間がかったということでしょう。

 新宿三越の名前が無くなり新宿は4つの百貨店の競争に・・・

 新宿三越アルコットが2012年の3月を持って閉店し、ビッグカメラへ一括賃貸するそうです。既に新宿三越南館(ミュージアム型百貨店と呼ばれた店です)は大塚家具になっていますからこれで新宿から三越の百貨店の痕跡が消えます。(新宿アルタは2000年にダイビルへ売却されています)新宿三越アルコットはテナント集積型の都市型ファッションビルで2万uの売場面積で114.9億円の売上がありました。

 新宿には鉄道系の小田急、京王と伊勢丹新宿本店、新宿島屋(丸井を百貨店に分類する人もいますが)がしのぎを削り、新宿アルコットは三越の百貨店業態から2005年に業態転換したものです。
 かつてロフトの社長だった安森氏がロフトが」新宿アルコットに出店するときに、あの「三越」に出店かと緊張感と感慨に身が震えたと語っておられました。東京圏の人にとって「三越」とは特別の名前なのでしょうね。

 地方に出た三越が成功しないのは、二番手、三番手となる売場面積の小ささとともに、東京での高い評価とそれ以外の地域での普通の評価のギャップが大きすぎるのだと思います。ある時期は日本一であった百貨店の、手仕舞いの時期のプライドと品位を持った今後の身の処し方に注目したいと思います。・・・ビックカメラかあ

 新宿三越が積極的に動いていた時代にお手伝いしたこともあり、旧岡田体制の重しが取れ生まれ変わった魅力のある百貨店を創ろうとしていた時代を知っているだけに、新宿から三越の名前が消えることは残念でなりません。
 
  来年2月には「八王子そごう」が閉店し、夏には旧数寄屋橋阪急「モザイク阪急銀座」が閉店します。」また百貨店の凋落がマスコミの話題になるのでしょうね。
                                      (2011年05月13日)
■オフィスビルの梅田集中について

 オフィスゾーンとしての梅田地区の人気

 昨年4月に完成した梅田阪急ビルは、入居率4割と低迷していました。東芝670人、クラレ600人と優良企業が入居していましたが、リクルートが4フロアに1,000人規模で入居し、入居率は7割程度までに回復しそうと報道されたのは3月の始め、震災の前でした。

 近畿圏のオフィス需要はリーマンショック後本社機能の東京移転、関西支店営業所の縮小などで長く低迷していました。梅田周辺の大規模開発で大型オフィスビルが増加し、空き室率の増加が懸念されていました。

 JR大阪駅のノースゲートビルディングには伊藤忠商事が本町から移転してきます。8フロア、1,000人の就業者が増えます。オフィス仲介業者のレポートでは今年竣工の大型ビルはほぼ満室で竣工を迎えるものがあるそうです。オフィスワーカーの人の流れが変わるかも知れません。

 通勤者の調査では特に女性に「梅田」「心斎橋」地区で働いてみたいというイメージが強く人気があります。梅田地区は大阪市内では賃料が高いのですが、東京や名古屋駅前に比べると相対的に割安感があります。大型ビルの大企業相手の交渉では表に出ないディスカウントもあるといいます。

 まだまだ続く梅田周辺の開発

 梅田北ヤード先行開発地域の「グランフロント大阪」や駅前の中央郵便局建て替えなどの開発が今後も続きます、先日大阪市が阪急梅田東駅再開発を発表しました。梅田東小学校跡地の売却と容積率の緩和です。阪急イングス、ヤンマー本社ビルが再開発地域に含まれます2014年をめどにうめきたとつながる道路を整備します。

 おそらくこの道路計画と並行して老朽化している新阪急ホテル旧館の土地の活用が検討されるはずです。梅田で今元気のいいヨドバシカメラとルクアに対面した好ポジションにあるからです。(パチンコ屋さんがネックですが)人の流れも工事の関係もあってJR〜阪急の歩道橋が一番混み合っています。百貨店の工事は、いくらなんでも2013年には完成するでしょうから。その後の課題かも知れません。

 伊藤忠商事が梅田移転の理由を出張の多い商社にと行って効率的な立地と判断したように、業種によって立地の評価は異なります。梅田に集中が進むと玉突き式に他のエリアにも影響が出ます。美術館やホール、公園のある中之島は少し落ち着いた業種が、東京とのつながりが深い企業は新幹線が便利な新大阪へ・・・立地イメージも街の雰囲気も変わっていくのかも知れません。

 オフィス機能について国内での需要を取り合っていても仕方がありません。関西の自治体や経済団体が関西への集客キャンペーンを始めるようですが、ビジネスの場としての関西の強みもあわせてアピールできたればいいのですが。

 オフィスビルが集中すれば対事業所向けの専門サービス業、イベント、展示関係の業種も活性化します。また住宅も増えていきます。人の流れが活性化して初めて小売業の売上も伸びていきます。小売業の売場面積が増えることで集客力が高まるという考え方は都心部では当てはまらなくて、順番が逆なのです。

                                             (2011年05月13日)
  

図ー大阪市内働いてみたい街ランキング〜梅田、心斎橋は女性に人気が高い
図167
(なにわ考現学2005)

図ー大型ビルの平均賃料〜梅田は東京に比べて割安感がある
図168
図ー大阪市内地域別の平均賃料〜梅田は市内ではトップレベル
図169
(三鬼商事 MIKI OFFICE REPORT)より作成
■ゴールデンウィークの人出にみる消費マインドの回復

 首都圏ではGWは近場で買い物

 首都圏では4月29日に開業した埼玉県越谷市のイオンのアウトレットモール「イオンレイクタウンアウトレット」が連休中の10日間で約110万人を集め、売上高も当初見込みを2割上回りました。ターミナルや郊外の商業施設は客足を伸ばしましたが都心店の一部は高額品が不振で前年実績を下回ったようです。

 二子玉川の「二子玉川東急フードショー」は8日の母の日に開業以来最多の5万人が訪れたそうです。(開業初日は9万人、2日目は8万人でした)
 西武池袋店は5月3日には25万人、4日には24万人を集めています。(通常の土日で20万人)子供向けの催事を行いファミリー客の動員に成功しました。三越日本橋店も高額品は低迷しているものの、住関連用品を中心に前年並みの売上を確保しています。

 駅ビルは地方客、観光客需要は落ち込みましたが近隣の顧客のお買い上げが多かったようです。ルミネは売上は2.5%増ですが、客数は2.4%減少。客単価が4.8%伸びたのは一時の買い控えの反動かも知れません。

 東京ディズニーランドは再開がGW直前になったため、入園者数は前年割れ、3割を占める地方客の出足が鈍かったようです。(空いているという評判はあったのですが、やはり敬遠されたのでしょう。大阪のユニバーサルスタジオジャパンは2ケタ増、、長崎のハウステンボスは4割アップ。外国人客が減少する中で動員数を伸ばしています)

 東北地方は観光客は2〜9割減、健闘した観光地も「復興支援」で訪れた「ボランティア」の利用が多かったといいます。JR東日本は利用者27%減、JR西日本は増加しているものの1%増。好調なのは九州新幹線が全線開通したJR九州の23%増です

 
 関西は大阪駅の開業景気と国内観光客の堅調で人出は伸びる

 JR大阪駅の大阪ステーションシティ(JR大阪三越伊勢丹、ルクア、梅田大丸)の全面開業が周辺施設の売上も伸ばしているというのは既報の通りです。JR大阪駅の利用者は大型連休中1日あたらい平均12.8万人と前年比12%の伸びです。京都駅でも7%増、神戸駅でも1%増と人の動きを活発化させています。

 なんばや心斎橋、天王寺でも客数売上高は伸びています。27日に開店した京都のマルイは来店客数、売上高も予想を上回っています。島屋京都店は来店客数は5%増。神戸大丸は来店客数4%増、売上高10%増です。広域での影響はほとんどありません。あべのキューズモールの連休中の200万人の人出はイオンレイクタウンアウトレットを上回ります。入居するユニクロは銀座、新宿西口を抜いて日本一になったといいます。局地的ではありますが首都圏と関西の小売りポテンシャルの差はかなり縮まっています。〜震災前は圧倒的な差がありました。

 インフラの投資は東日本へ重点が置かれるでしょうが、民間の不動産投資は西日本にシフトした方がいいかもしれません。

 梅田の既存商業施設では「同じストアブランドで新施設に出店したテナントの売上が厳しい」という声もあるようです。狭いエリア内で同じターゲットの同じブランドの商品については奪い合いがあって当たり前です。

 りんくうのアウトレットモールでは中国人の観光客の団体が戻ってきています。アウトレットモールでは北海道千歳のアウトレットモール・レラは本州からの来店者は減少したものの道内のお客様と一部海外客の利用も回復してきているようです。香港、タイ、台湾が中心で中国の回復はまだだということです。

 外国人は半減しても関東からの旅行客で堅調な京都観光

 東北方面へ旅行を予定していた人が京都へと変更した例が多かったのでしょうか外国人観光客が半分に落ち込んだ京都も観光は堅調でした。同じく外国人の団体が多かった南紀白浜も直前の予約で近場の利用者が増えたようです。

 九州は地域競合が激化

 JR博多シティは10日間で237万人を集め、5月4日には開業来最高の34.3万人入館者数を記録しています。(博多どんたくもあり観光客数が増えたためでしょうが、池袋西武や大阪よりすごい集中です)

 旧繁華街である天神地区は、岩田屋三越が入店客数、売上ともに前年比10%のマイナス、イムズも入館者2ケタ減、売上は1ケタ減の数字です。「天神全体の人出が少ない」状況です。ソラリアは客数11.9%減少。天神コアは6.8%の減少です。

 福岡博多はいい街ですし、天神は面白い繁華街です。長い目で見れば天神の人出は回復するとは思いますが、予想されていた以上に影響は大きいようです。百貨店のお客様は岩田屋三越や博多大丸は強いのですが若者の動きに影響がありそうです。

 ・・・・駅ビル的な集積だけでは面白くない

 食に関して、いつも教えをライターの曽我さんがゴマやンのコラムで下記のような事を述べておあられます。

http://wadaman.com/modules/column/index.php?content_id=79 へのリンク

 梅田・大阪駅周辺に沢山飲食店ができましたが、他の地域から来られたお客様をご案内することはあっても自分自身では絶対に利用しないなあと思う気持ちを、うまくいいあらわしてくださっています。我が意を得たりであります。

 新世界「だるま」の串カツなんて、ひたすら脂っこく胸が焼けるだけの代物を大阪名物として紹介するような、東京のマスコミへの媚びはもう止めて欲しいと思います。・・・ということで駅ビルよりは地元の繁華街を心情的には応援しているのですが、「天神」でさえ勢いが無くなっていくのでしょうか・・・・・。

                                     (2011年05月12日)
■震災による変化とこれからの不動産市場

 東京の不動産市場 戸建ては1,000万円ダウン、マンションも560万円ダウン〜価格大暴落の不安

 週刊現代5月21日号に非常に厳しい見通しが掲載されています。東京都内、特に湾岸部も液状化被害は深刻です。東京湾の形状から大きな津波の被害は少ないものの、液状化被害を目の当たりにして、人気のあった湾岸部のタワーマンションを避ける傾向があらわれています。東京都内のマンションが軒並み価格を下げている中で、内陸部で液状化の不安がない多摩地区のマンショは上がっています。

 震災時に帰宅難民が大量に発生したこともあり、最寄り駅までバスを使うエリアの戸建てやマンションが暴落する可能性は高いという見方が紹介されています。(液状化とは直接関係ないのですが、全般に値を下げている中でもともと不人気な物件が玉突き式に影響を受けるということでしょうか。

 高層マンションでも価格が高くても人気の高層階から安全を重視し低層階へ引っ越す人もあらわれてきたようです。人気のあった湾岸部の価格が低下し、かつ高層マンションの上層階と低層階の価格差が圧縮される動きがでてくるようです。

 不動産業界全体への影響〜東京海上不動産投資顧問株式会社の分析

 不動産投資コンサルタントは東京の不動産業界への影響を次のように分析しています。緑文字は当社コメント。

 1.東京一極集中の減速、需要の分散

 オフィスビルについて本社機能の一部を大阪や福岡に一部移転する動きがあるようです。外資系の企業の移転は短期オフィスが中心であるようです。東京のオフィス市況が回復するのは2012年以降だとか。

 2.立地とビルスペックによる需要の変化

 耐震性の高い新しいオフィスビルへの移転が進むそうです。湾岸エリアの住宅やオフィスは今後需要の減退が進むと見ているようです。液状化の影響は大きいようです。

 3.不動産市場への資金流入の減少

 4.各セクター事の影響

 商業

 消費者心理の落ち込みにより売上は低迷しているとみています。阪神淡路大震災では回復に1年かかったと 
 の分析から不動産市況の回復は2012年以降と分析しています。

 小売業に関して言えば回復はもう少し早いと思います。若者ファッションを中心に売上が回復していますし、タ
 ーミナル駅周辺では照明を落としていても繁華街にいけば自粛はしていない・・・首都圏では本音と建て前の
 使い分けが極端です。知事さんがおっかない為でしょうか?
 中国人観光客はしばらく戻ってはこないでしょうが。


 ホテル

 外国人観光客対象にしたホテルは厳しいようです。回復には時間がかかるのでどのようにして収益を維持する
 のか?持ちこたえられるのか?分析では詳しくは触れられていませんが、単価3万円以上のラグジュアリーホ
 テルは厳しいでしょうね。

 
 オフィス

  震災前には需要拡大が期待されていましたが、回復は2012年以降になるとの見通しです。
  同レポートのいう需要の分散が進めば、首都圏では新築、築浅へのリプレース需要が中心になり、名古屋、
 大阪、福岡、あるいは復興の司令塔になるかもしれない仙台などに事業所が分散するのでないでしょうか?
 不動産の投資先も分散しておかないと、集中することで同じリスクを抱えることになりませんか?


 中央新幹線ができれば東京から1時間圏の名古屋が東京のベッドタウンに・・・という名古屋の大学の先生のコメントが現実味を帯びてきましたね。

                                           (2011年05月11日)
■幕の内弁当のように伊勢丹エッセンスがつまったJR大阪三越伊勢丹

 気合いの入ったおhしゃれをしたマダムが集積

 少し落ち着いたと思われるJR大阪三越伊勢丹を拝見してきました。駅立地の百貨店は梅田大丸やJR京都伊勢丹のように細長い売場が多いのですが、正方形のコンパクトな売場で見渡しやすい印象です。

 オープン時のチラシではもっと若い層にシフトしたファッションなのかと想像していましたが、やや年代が高く伊勢丹、三越らしいファッション売場になっています。楽しみにしていたヤング売場伊勢丹ガールは地下で少し隔離された場所にあり、規模もそれほどではありませんでした。

 お客様もおしゃれをしたマダムが目立ちます。(平日夕方です)おしゃれをして買い物をするという楽しみを提供してくれる店として存在感を持って行くのでしょうね。催し売場では大きなクローバーサイズの婦人服を中心としたセールでおばちゃんを集めていました。

  食料品売場では野菜に力を入れているのがわかります。市場感覚で声をあげた対面式の売り方は阪神百貨店を意識したものでしょう。(野菜は確かにいいものですけれど電車のに乗って持って帰るかな?)惣菜や和洋菓子も珍しいものが入っていますが、買って帰りたいものがない・・・・今の食料品売場のトレンドとは少し違った独自の路線ですね。

 ルクアは予想通りの集客パワー

 大阪ステーションシティ全体としては空中広場やシネコンなどがはいって集客、滞留が工夫されています。JR大阪三越伊勢丹もギャラリーやコンセプトカフェなどが配置されていますし、顧客サービスも充実しエスカレーターもストレス無く上下移動できるように配置されています。

 それに比べるとルクアは商業施設としての工夫や新しい仕掛けはありませんし、店舗のゾーニングもあまり意図がないように感じられます。それでも店舗の集積力で、ターゲットとなる若い層を多く集めています。実利をあげるための施設だなと感じられます。

 10階のレストラン街は百貨店とルクアがつながっているのですが、ルクア側の店は一杯なのですが、百貨店のやや価格が高めの店は空席が目だちます。

 百貨店に関しては鉄道沿線利用者のロイヤリティは高いのですが、若者については沿線はあまり関係ないのです。ここまで集積すると、既存のファッションビルへの影響は大きいでしょう。

 JR大阪三越伊勢丹は有名料理店のランチ限定のお弁当のような店です。三越、伊勢丹のいいところが楽しめますが・・・・百貨店単体で継続的に収益をあげ続けるのは大変だと思います。大丸梅田店と合わせてJRステーションシティ全体の「集客装置」として位置づける良いのですが。(賃料は思いっきり安くしてもらうべきでしょうね)
 

 阪急百貨店が盤石かというと、そうでもありません。工事が長引くと人の導線が変わってしまいます。食料品の催事で対抗していますが、昨日も客数は少し少ないようです。全館の開業までの間は、西宮、川西、千里などの郊外店を強化する、店外催事、今までにあまりやっていない阪急阪神グループの商業施設(鉄道系を含む)との連携を強化する等の考えられる手段をすべて打たないとお客様はもどってこないでしょう。

 毎日放送「VOICE」では百貨店では阪急有利とのコメントをしましたが、先行きはそう甘いものではありませんよ。

 http://www.mbs.jp/voice/special/201105/03_53.shtml へのリンク

 

 阪神百貨店についても食料品やおばちゃん向けのファッションはともかく、強みの一つであるヤングカジュアルファッションはルクアの影響を正面から受けることになります。特にディアモール、ハービスなどの西梅田近隣の商業施設と連携した戦略の組み直しが必要になるでしょう。

 JRが駅を中心とした総合力で勝負に出ているときに、対抗する阪神阪急の鉄道と流通ががばらばらでは勝てるわけはありません。

代表写真

                                           (2011年05月10日)
■似ている事で勘違いされる立地評価の落とし穴〜50万人の賑わい「大阪ステーションシティ」

 終日の大賑わい「大阪ステーションシティ」

 開業初日は入場制限があったそうですから本当はもっと沢山の来店者があったのかもしれません。1日50万人はすごい数字で、周辺の百貨店も賑わいの恩恵を受けたようです。当日のチラシを見ると阪急は「北海道物産展」阪神は「まるごと猫フェスティバル」とあえて直接対決を避けているようでしたが、阪急ではメンズ館を含めたラグジュアリー系ブランドが、阪神ではミセス婦人服やサイズ売場など得意分野の売上が好調だったようです。梅田大丸は例年よりも「家族連れの来店が目立った」というのはポケモンセンターやトミカショップの効果でしょうか。

 「梅田への一極集中が進む」という説が大学の先生や経済団体の見解で多数派をしめていて、当社のように影響は限定的とする見方は少数派です。根拠とされている売場面積比較はハフモデルなどの分析では売場の魅力、吸引力の指標として暫定的に用いられているにすぎないもので、売場面積では飽和状態にある都心部の商業施設の分析には単純にあてはめてはいけないと考えます。

 実際に開業日4日の状況でも心斎橋大丸、難波島屋、阿倍野近鉄はほとんど影響を受けていません。

 梅田北ヤード(うめきた)に商業施設として4〜8万uが整備されるかも・・・とJR大阪駅周辺への商業の重心移動に期待する見方もあるようですが、今、集客力があって梅田周辺に欠落している小売り機能は誘致できないでしょう。(賃料設定とオフィス街のコンセプトから)以前も申し上げたようなオフィスワーカー向けの飲食と一部のブランドショップの裏面店が整備されるイメージだと思います。まだ大阪中央郵便局の建て替えの方が店舗集積の可能性がありそうです)・・・オープン後は広域からの観光客も集めて順調に売上を伸ばしているようです。
 
 人の動き、消費者の心理を読み込んだ立地評価を

 JR大阪駅はJR博多シティとは桁違いの人の多さがあります。乗降客数も伸びています。確かに西日本では最大の好立地ではあるのですが・・・東京の人の見方は少し過大評価にも感じます。

 5月3日に放送された毎日放送「VOICE」でもコメントしましたが、ターミナル百貨店は沿線利用者に支えられているという法則があります。1989年以来調査分析していた大阪のイメージ調査でも「阪急沿線」のイメージ評価の高さは突出しています。番組で語った「阪急優位説」はその沿線ポテンシャルと、高級イメージとは裏腹に身も蓋もなく実利を追える阪急百貨店の柔軟性に由来するものです。

 JR沿線の立地評価に偏りがあるのではないか?

 思い出したことがあります。前回の関西ブームの時に東京からハイクォリティのホテルが進出してきました。大阪環状線の「弁天町駅」に三井系の「ホテル大阪ベイタワーホテル」と桜宮の「帝国ホテル大阪」です。
 それぞれのホテルの方から直接伺った話ですが、「大阪の環状線を東京の山手線と同じようなものだと思っていた」そうです。
 都心を環状に囲む鉄道ですが、その沿線ポテンシャルや市民にとっての意味合いは全く違います。山の手線は都民及び東京都訪問者のメインの導線ですが、大阪環状線は沿線の住民しかつかわないローカル路線です。

 ひょっとして、東京から来られた商業施設のご担当者は「環状線」を「山手線」と混同して考えているのではないか?そんな気がします。

 もちろん大阪梅田周辺の流動者は桁違いですし、新しい百貨店の魅力でわざわざ訪れるファン層は獲得できるでしょう。消費者は店が思っているより面倒くさがりなので同じ商品なら慣れていて、帰宅に便利な店で購入します。山手線の駅立地とは明らかに違うものです。

 環状線と山手線は形が似ているだけに思い違いをしやすいのです。意外に見落としやすいポイントです。

                                    (2011年05月09日)
表ー5月4日開業時の人の動き  繊研新聞5月9日記事より  50万人の内訳です
  あべのキューズモールは平均26.5万人が来場するそうです・・・・少し影響が出たのでしょうか
図170

図171
■梅田百貨店戦争2011年の読み解き方

 どの百貨店が勝ち残るかという問いかけの不毛

 梅田に4つの百貨店ができて「どの百貨店が勝ち残るのか」という問いかけを受けました。「百貨店」という枠内で考えれば「阪急百貨店」の強みはあります。テレビでコメントしたように鉄道ターミナルの百貨店は沿線客の利用をかなりのシェアで押さえています。(三菱総合研究所が関西の鉄道沿線利用者の百貨店利用率の調査を発表しています。検索してみて下さい)

 その意味で肥沃な商圏を走る鉄道を押さえている「阪急百貨店」は沿線に配置した郊外店を含めて圧倒的な力を持っています。加えて1983年の梅田大丸出店時第一次梅田百貨店戦争のさなかに阪急、阪神、梅田大丸こぞって若返り、ファッション感度をあげる店作を行いました。その結果売上が上がらない見るやすぐにMDを変更し、当時「米の飯」であった40歳以上のミセス向けの商品にすぐに切り替える柔軟性(身も蓋もないんですけど)を持っているのが恐ろしいところです。

 阪神百貨店は独自のポジションを維持しています。食料品の強みと「大百貨店」としての位置づけ、東京の京王百貨店にも共通するシニアへの強みがあります。

 梅田大丸、JR三越伊勢丹は基盤となる沿線顧客を取り合うことになります3店をあわせると売場面積は巨大になりますが、梅田大丸のポケモンセンター、東急ハンズ、ABCクッキングスタジオなどテナント部分やJR三越伊勢丹の三越部分と伊勢丹部分などターゲット層や利用目的が異なる売場が混在しているので顧客の回遊性は阻害されます。戦力が分散されると考えています。

 新宿伊勢丹は日本一綺麗な百貨店ですし(建物は古いけど)、ターミナルから離れていても人を集める魅力があります。ただ、今回の店舗については面積の制約もあり、デコレーションケーキのデコレーションだけ、アイスクリームのトッピングだけが目立っている印象があります。この店の収益源=「米の飯」はなんなのでしょう?

 百貨店の米の飯の変化

 198年の事例で申し上げたようにかつての百貨店には「米の飯」といえる百貨店ファンがいました。フォーティアップとよばれていた40代〜のミセスと20代の独身キャリアです。
 冒険して失敗してもそのターゲットに戻れば売上が見込めたのです。

 今、どうでしょう40代のアラフォー女子は大人のファッションを選んでくれるでしょうか?かつての中年ミセスはシニア層にな可処分所得のレベルやお金の使い道は一様ではありません。40代でも昔のような「マダム」(古いね)は少なくて、アンチエイジングにいそしむ独身の「女子」が少なくありません。彼女たちのファッションは・・・結構若い子と近いモノがあります。

 若い女性のファッションはどうでしょう。かつてお嬢様ファッションで売り出した「JJ」に登場する「おしゃp」(おしゃれプロデューサー)は量販店の安物ファッションをコーデする「ファッションカリスマ」だったりします。モードを担う層は激減し「等身大」のおしゃれ(ZARAやH$M等)が主流になり、海外ブランドのユーザーは本当のお金持ちか水商売関係のお姉さんだけになっています。

 これでは百貨店でファッションは売れませんよね。今回の梅田百貨店戦争で一番漁夫の利を得るのは、若い女性からアラフォー女子をつかめる「ルクア」なのだと思います。

 経営的側面も無視できない

 百貨店の経営の側面から考えると、自社系列の鉄道の所有地に立地してい百貨店に比べて、家賃を払って入居している百貨店はかなり厳しいでしょう。(全国どこでもそうです。確かに賑わいはあるのですが、持続するための収益維持は大変だと思います)百貨店業態は収益力のある業態ではありません。
 かといって単純に「人件費」をカットすればいいというわけでありません。「コスト」であれば削減対象になります。しかし、百貨店業態にとって「人件費」=それに見合う人材は収益を生む「資源」であったはずです。目先の出費の抑制であれば将来の収益を縮小させる事に他なりません。

 問題は人件費に見合う収益を生み出せない構造の改革ができるかどうかにあります。時代にあわなくなって「コスト」でしかなくなった「人」は削減するしかないという判断はある意味正解かも知れません。ただし、将来を担う若い人材に「希望」を与えられない構造を温存することは好ましくありません。

 老舗百貨店を退職して家庭用品のWEB通販でめちゃくちゃに利益をあげている人がいます。決して百貨店の人材の「質」が悪いわけではないのです。
 
 JRが何故、全館「ルクア」にしないで百貨店を2つも設置しているのか?「百貨店」でなければ実現できない集客力がそこにあるからです。

 当面はJR大阪駅の賑わいは続くでしょう。派手な賑わいの陰で、「百貨店」の中で、どこがこれからの米の飯を確立するか・・・それが勝負を分けます。良くも悪くも戦略を持たないことが強みの「阪急百貨店」も決して盤石ではありません。

                                                 (2011年05月06日)
■これからの梅田の変化〜姿の見えない うめきた「グランフロント大阪」の商業

 5月4日ノースゲートビルディング開業〜2013年? 阪急百貨店梅田本店全館グランドオープン
 〜その先は?


 5月4日はJR大阪駅にどれだけの人が集まるか楽しみですね。梅田で先月29日にはヌーちゃやまちプラスがオープンしています。アパレルが中心の「ヌーちゃやまち」を補完する雑貨を中心とした店です。ターゲットは20〜30代の女性、カップルという設定ですから、やや大人がターゲットになります。

 阪急百貨店梅田本店の全館開業は2012年を目標としていますが、2013年にずれ込むことも考えられます。2013年春には梅田北ヤード先行開発区域プロジェクトの複合施設(オフィス、ホテル、コンベンション施設、分譲住宅、商業施設)の開業が予定されています。ホテルはインターコンチネンタルホテルがホテルと長期滞在型のレジデンスをオープンすることが発表されていますが、延べ床8万u(売場面積は5万u前後でしょうか)の商業施設の概要はまだ公表されていません。「うめきた」というのが地域の愛称だそうです。

 競合を考えるとオフィスワーカー向けの飲食が中心で、いくつかのブランドショップの大型店が入るといったイメージでしょうか?家賃が高くなりそうなのであまり面白い店は期待できそうにありませんが、地域の環境づくりでゆっくりとできる空間が形成されればいいですね。(少し高くても、空いていて、ゆっくりとお茶を楽しめる場所が梅田周辺には少ないですから)・・・面白い店は北梅田とか福島などの周辺部で増えてくるはずです。良い起爆剤になりそうですね。
 
 元気のいい商業と梅田に欠けている商業機能

 東京では都心に近い郊外にアウトレットモールが開業しています。埼玉県越谷市のイオンレイクタウンにレイクタウンアウトレットが4月29日に開業しています。開店前に1万人が集まったという事で、連休中に100〜120万人の来館者を見込んでいます。イオンではアウトレット事業を新たなフォーマットに加えるということです。
 また29日には港北東急SCにマルキュー系のブランドだけで構成したシブヤ109アウトレットが3,000平米の規模で開業しています。開店には200人が並び小学生が目立っていたそうです。

 アウトレットには勢いがありますが、さすがに梅田地区にはそのままの形では展開できません。ただ、あきらかに同じようなターゲットを狙った同質化競争をおこしていますから、梅田に欠落しているポジションの施設には可能性があります。・・例えば中高生向けのファッション、ホームセンター、製菓・製パン材料の専門店等々。これらの施設は梅田北ヤードにはそぐわないものです。

 梅田から一駅離れた立地であれば意外に影響は少ないですが、梅田の中心から少し離れた大型商業施設は業態の再検討を含めた転換が求められます。(具体的にはブリーゼブリーゼとかです)人を定期的に訪問させる仕組み作りを考える必要があります。商業をあきらめて学校にするとか・・・。

                                             (2011年05月02日)
 
 4月
■東京の地名がブランドになる?

  東京の地名がブランド力をあげる・・・?

 26日のテレビ番組で27日にオープンした京都の丸井について、京都人は意外に東京ブランドに弱いので「成城石井」とか「ロブバティ自由が丘」といった地名を付けたブランドを導入しましたと紹介されていました。実際に導入されているのはこの2つだけなので説得力に欠ける解説ですね。「成城石井」は多分もう4文字で固有名詞になっていて「成城」という地名は関西では意識されていないと思います。また「自由が丘」も東京ほど広く知られていない・・・。
 「浅草今半」とか「銀座資生堂」とかいったメジャーな地名ならともかく・・・まだ「クーヘンスタジオ治一郎」のように人名を入れたブランドの方が特別感があります。

 実際はあべのマーケットパークキューズモールの「SIBUYA109」の紹介につながるようなのですが、京都人と違って大阪人は東京ブランドは特にあこがれもないのですが・・・・どうしよう。おそらく「SIBUYA109」は「成城石井」や「鶴橋風月」や「松阪牛」(ちがうか)のように地名とセットでブランドになっているのです。「ラフォーレ原宿松山」とか「ラフォーレ原宿小倉」といった先例もありましたしね。

 109に関してはエストやOPAに欲しいブランドは入っているから今更あべのまでは行かないという声もありました。とはいえ、あべのの地元女子高校生には便利なのかもしれません。(港北のSIBUYA109アウトレットの開業には小学生の行列ができていたそうです。ターゲット層は意外に年齢層の低い層なのでしょう)

 地名や人名をブランドに加えることで「特別感」を出すという手法は理解できます。その場合、知名度が高いか、「え それどこ」というひっかりがあるほうがインパクトがあります。その意味で「自由が丘」はやや中途半端かもしれません。地域特産品のブランドで地名を使うことはよくあります。

                                                        (2011年04月28日)
■小売業大阪春の陣〜ミナミの逆襲

 なんばCITYリニューアル

 ターゲットイメージは「都心ワーカーで、仕事もプライベートも充実させたい女性」だそうです。「いつきてもじぶんらしい再旬スタイルを発見できる親しみやすさと新鮮さを提案」。なんばに今まで無かったセレクトショップが集積している事が特徴なのでしょうか。外の公道上で4日に大阪駅に開業するルクアのパンフレットを配っていました。駅ビルのターゲット層が丁度バッティングするのでしょうね。

 20過ぎの大学生に聴取したところ、〜地下のメインストリートのお店は「安い」店が多い感じで、ここだけで揃うものではない。なんばパークスや丸井、心斎橋などを回遊して買うだろうとの評価でした。〜逆言うと駅ビルのように凝縮された利便性には欠けるのかも知れません。

 それにしてもメンズのゾーンの寂れ具合は尋常ではありません。導線が悪い場所なので島屋と連動して何らかの仕掛けをしるとか対策を考えないと・・・MDの幅もないですしね。

 あべのマーケットパークキューズモール

 あべの・天王寺は渋谷に似た街です。おしゃれなイメージの渋谷のほうではなく闇市跡やラブホテル街のあった方の渋谷ですけれどね。渋谷の後背地にあたる「松濤」にあたるのが住吉・阿倍野の高級住宅地でしょうか。セゾングループのいなかった渋谷が阿倍野・天王寺ともいえます。

 あべのマーケットパークキューズモールはたまたま大阪有数のターミナルに立地していますが、その実態は郊外型のショッピングモールです。高校生の多い街なので開店時には老若男女の幅広い層が来店していました。若いお姉さんだけが集まっていたなんばなんばCITYとは対照的です。

 東急ハンズがコンパクトなフォーマットで出店しています。(これでロフトとハンズが揃いました)ABCクラフトのでかい店も入っているのでギフト関係に特化したような印象を受けました。
 
 シブヤ109はテレビの「ニュース映像」ではギャルばかりが移っていましたが、中高年のご夫婦やおばちゃんも回遊していてミスマッチです。((導線を遮断したらいいのに)
 シブヤ109ではないのですが109風の店でTシャツ2枚500円のセールをしていておばちゃんが群がっていました。

 地域に欠落していた要素を埋め合わせるという意味で悪くはないのですが、近くの人でないとわざわざはいかない。紀鉄百貨店も自転車客の多い店でしたから商圏としては間違いない。計画の設定として1次商圏は徒歩15分圏で11万人。2次商圏は車で15分圏で人口は51万人。と設定されています。3次商圏でもなんば以南の大阪市内ですから設定商圏は広くはありません。

 計画資料で20〜40代の人口構成比が高いとされていますが、これ再開発の住宅建築が進んだ足元だけの話で、阿倍野区、住吉区は高齢者も多いですよ。

 電車通りにあった「明治屋」(居酒屋)も地権者のエリア「VIAあべのWALK」にそのままの外観で移転しています。かつてあべの銀座にあった「チキンラーメン」を客に出していた食堂はもうありません。かつてあべの銀座にたむろしていたおっちゃん達はどこへ消えたのかなと思います。・・・これはただの感傷です。東京の渋谷でも同じ思いがしますが。

 東京から阿倍野に視察に来られるなら近鉄の東にある「山ちゃん」のたこ焼きをお召しがりください。・・・「道頓堀大たこ」「アメリカ村甲賀流たこ焼き」「くくる」などのように宣伝はうまくないですが、たこ焼きの味がします。

                                                 (2011年04月27日)
図172       図173  図174  図175
なんばシティが開業したなんば駅   あべのキューズモールへ向かう人々  中高年も多い
                       図176  キューズモール  キューズモール2
                        明治屋(居酒屋)も移転しました  ファミリーイベントが多いですね
■1983年の梅田百貨店戦争−2

 1983年という年は

 5月4日のJR三越伊勢丹の開業に向けて「梅田百貨店戦争」が話題になっています。東日本大震災配慮してか派手なイベントは控えられていますが、19日の梅田大丸の全面開業にも17万人のお客様が集まっています。(今まで少しずつ開業していたのですが)全く、新しい店舗がお目見えするのですから、かなり多くの人々が集まってくるでしょうね。

 さて、「梅田百貨店戦争」というのは今回が初めてではありません。2月22日の記事でも述べたように1983年のアクティ大阪と梅田大丸の開業時にも大きな話題を読んだテーマです。

 1983年はどのような年だったかというと。首相は中曽根さん。日本経済はオイルショック以降の長期の低迷からようやく脱して回復の糸口を掴み始めた時代です。
 無印良品が世の中にあらわれて、「カフェバー」という味はともあれ環境を売り物にした飲食店がブームでした。DCブランドブームの中「丸井」が若い層にDCブランドの高い洋服を分割払いで手の届くものにし、「月賦百貨店」から「おしゃれなファッションビル」のステータスを獲得した時代です。
 ショップの店員さんがハウスマヌカンと呼ばれてファッションをリードした時代でもあります。

 若返り戦略とあっというまの軌道修正

 新しく出店した梅田大丸の中心ターゲットは「35〜40歳の若い感覚を持った女性」で、対抗して改装した阪急梅田店のターゲットは「25歳前後のキャリアと30歳前後のヤングミセス」でした。団塊世代がちょうど30歳前後でニューサーティとか呼ばれていた時代です。「大衆」の時代は終わり「分衆」(博報堂用語)「少衆」(電通用語)の時代であると考えられていて「多様化した価値観」に対応した売場作りが必要だと煽られて、若返りをはかろうとした時代といえます。

 結果的に売上は厳しくて当時40歳以上のシニアミセスを対象にした商品にあっと言う間に大きくシフトしました。その変わり身の早さときたら・・・・・。
 80年代後半はバブルの時代で「グレードアップ消費」、「豊熟消費」という中で価格の高い海外高級ブランドをい売りまくる時代となり、ターゲット論については曖昧にごまかされたままです。この時期にきちんと決着をつけていなったつけが今に至るまで「マーケティング不在」という形で百貨店衰退に拍車をかける原因になっています。
 
 あれだけ素早く方針転換できたのは、百貨店の担当者には本当は自分たちの飯の種は「中高年のミセス」であることがわかっていたからだと思います。ただし、2011年の現在彼らの考える「中高年のミセス」は」いません。アラフォーの女性は結婚もしないでふらふらと遊び回っています。しかも、ばりばりキャリアで稼いでいる人より派遣などで収入が不安定=高いモノは変えないというか「欲しくないもん」というLOHASのライフスタイルが染みついています。
 頼みの団塊世代もシニアになっても、簡単にはお金を使ってくれません・・・・・・。

 さて、2011年の梅田百貨店戦争について見るべきポイントはどこか・・・・それは、来週の更新でまとめます。

                                                 (2011年04月26日)
■高齢者の食について考えること

 高齢者世帯の食生活について

・「宅配弁当」は結構高い割に美味しそうではない

 業者によって違うのでしょうが、数百円の価格は、宅配の人件費を考えると高くはないのですが、味にばらつきがありそうです。高齢者世帯の見守りも業務として含まれるのでしょうが、毎食では飽きてきそうです。かといってスーパの個食惣菜も割高になると思います。「買い物難民」となって近くにに小売店が無くなってしまったとか、買い物こに出かけることが困難になった高齢者世帯も少なくありません。

・食卓のセットをパッケージ化

 高齢者といっても個々人の状態はことなるのですが、認知症が進んで調理が困難になって来たときに、調理を助ける形でのパッケージされた食材の提供が有効でしょう。炊飯ができる弁当箱が発売されていますが、一人分の無洗米をパックして置いて水を入れてスイッチをいれるだけで炊飯できるようにすることは簡単にできます。炊きたてのご飯が一番のご馳走にもなります。
 レトルトのおかずや冷凍食品、、保存食品を組み合わせると訪問頻度を減らして、逆に訪問面接時間をゆっくりととれます。

・小規模多機能ホーム向けのBtoB

 大規模な施設介護から、住まいの近くの住宅、小規模な施設でケアする形も増えてきています。利用者の状態は」様々なので、個々の状態に合わせた食事を提供できるような給食、食材配達の事業がこれからも伸びていきそうです。

 高齢者施設が低層であるべき理由

 メーカーご出身で色々な種類の高齢者施設の現場に携わったかたから伺ったことがあります。食事時間に入居者を食堂に移動させるのにエレベーターの移動は最小限にしないと時間のロスがばかにならないといいます。2〜3層までの低層が人の動き方で効率的なのだそうです。夜間のおむつ交換のための移動も少なくてすむのでスタッフの人数が少なくて済むそうです。

 高層住宅やホテルの高齢者施設へのコンバージョンは難しそうですね。

 サービス業特に、特に福祉サービスの業界人には作業動線の効率化とか無駄取りとかの視点が決定的に欠けています。さすがにメーカーの方の着眼点は違うなと感心しました。

 高齢社会が進み、高齢者向けのサービス業の重要性は高まります。業務効率を高めて、サービススタッフが余裕を持って仕事が出来る環境を整えることがサービスの質を高めることにつながります。まだまだイノベーションが可能な分野なのかもしれません。

                                                     (2011年4月25日)

■出鼻をくじかれた二子玉川ライズショッピングセンター

 3月19日二子玉川に新しい大型商業施設がオープン

 東京都と神奈川県の境目に位置する二子玉川では1969年に駅の西口に開業した二子玉川ショッピングセンターが街のイメージをリードしてきました。劣勢に立った東口地区で再開発計画がスタートしたのは1982年。「都市から自然へ」のコンセプトの元にコンラン&パートナーズのデザインイメージで計画が進められていましたが、91年のバブル崩壊、09年のリーマンショックなどの洗礼を受けて、開業に至るまでに30年近い歳月がすぎてきました。

 当初17日のオープンの予定でしたが、震災の影響で開業日をずらして19日にオープンしました。延べ床面積12万u、営業面積は3.16万uで、東急百貨店の食料品売場「東急フードショー」、「東急ストア」、「オッシュマンズ」「ヴィレッジヴァンガード」などの大型専門店や専門店街で構成されています。
 今後2014年に2期事業として「シネコン」「オフィス」「ホテル」が計画されています。
 同じタイミングで駅高架下の「ステーションモール」と島屋の東神開発が運営する「ドッグウッドプラザ」(ユニクロ、ロフトなど)もリニューアルオープンしました。

 商圏は縮小してスタート

 当初の設定では商圏は5km圏で112万人の商圏人口を想定していましたが、予定されていた開業イベントも中止され、今のところ3km圏が商圏です。初日9万人、2日目8万人の来店者数は、想定の4.9万人を超えるモノではありますが、例えば阪急西宮ガーデンズの来店者数12万人に比べると、少し寂しいかも知れません。(核店舗の違いはありますが、二子玉川全体の商業集積量は西宮とは比較になりません)

 短縮営業の影響もあるでしょうね。派手なイベントを自粛しても福岡や大阪駅では予想以上の人が集まっています。首都圏でも若者のファッション消費は回復基調にあるというモノの、まだまだ震災の後遺症、東京電力の原子力発電所の事故の影響はあるように聞いています。

 名古屋以西の西日本で個人消費を活性化させるしかないのでしょうね。

                                                 (2011年04月22日)
■大丸梅田店増床グランドオープン〜開業以来の来館者数

 4月19日大丸梅田店増床全館開業

 19日に全館グランドオープンした大丸梅田店は1983年の開業以来、過去最高となる17万人の来館者を集めました。先日のJR博多シティの25万人には及びませんが、63,000uと現在の梅田では最大規模の店舗に開店前には3,000人の行列が出来て、売上高は前年比4倍以上、予算比で2割以上と好調なスタートを切りました。
 ターミナル立地の強さをあらためて感じさせる展開です。

 来週26日には天王寺駅前に「あべのキューズモール」が開業し、同日になんばシティがリニューアルオープンがします。5月4日にはJR大阪駅の「ルクア」と「JR三越伊勢丹」が開業します。いよいよですね。震災の影響で派手なイベントは行われませんが、それぞれの施設の開業時には多くの人が訪れると思います。東京から視察に来られるなら連休後の方がいいと思います。西日本はあきれるほど通常モードです。


 大丸梅田店の印象

 「百貨店なのに・・・・」とうたわれている従来の都心百貨店にないスペース。「トミカショップ」「ポケモンセンター」「ABCクッキングスタジオ」等のボリューム感が意外に少ない印象を受けました。「うふふガールズ」のフロア以外は「百貨店」の枠を大きく逸脱していないように感じます。飲食フロアが大行列で、「百貨店のお客様」であるシニア層がゆっくり食事ができるスペースがないという梅田の欠落点をうまく埋めているなと思わせます。これから「集客」を「利益」につなげていくために頑張らないといけない点は沢山あるでしょうね。

                                                  (2011年04月21日)


 パルコは3期ぶりの増収増益ですが、イオンの要求通り社長交代を受け入れたようですね。フォーラスやビブレに関しては立地や施設の状態、顧客からの評価ををみながら適切な業態転換をはかっていく必要がありそうですね。建物が老朽化している物件も少なくないので、看板を付け替えるだけでは駄目です。
■地域再生を失敗させる方法

 地域振興策が地域を殺した・・・のか

 バブル経済の時期のバラマキ行政の結果の地方の財政破綻については今更論じるまでもないでしょう。地方自治体の多くに自主的な政策立案能力がなかったためと総括されていますが、ほんの少しだけ末端で関わった立場で言うと、「人材」の質の問題ではなく責任体制が明確でない組織設計の問題だったのではないかと考えています。中央の官僚や大手企業の社員が例えばリゾート事業に関して、ずばぬけて優秀というかというと・・・・・そうでもないですしね。

 今でもまだまだそのような事例があります。環境に優しい自然エネルギーの活用という事で巨大な風力発電装備が、地方に思い財政負担を強いています。落雷の多発地帯に建設してふうしゃをに雷を直撃されるとか、元々風が吹かないところに建設するなど、事前調査を行わずに建設して発電量の低下に見舞われている・・・・修理も出来ないというケースが少なくないのです。


 ビジネス先行型の開発で地方の雇用創出・・・・・・・それでも試行錯誤中

 地方の地域資源を利用したビジネス開発の成功事例がいくつか話題になっています。「上勝町の葉っぱを売るおばあちゃん達」や「馬路村のゆずビジネス」・・・・まあほとんどそればかりなのですが。

 独立行政法人労働政策研究・研修機構が今年の2月に「中山間地の雇用創出」というレポートを発表しています。その中で地域振興策の成功事例を紹介されています。
 その中から、逆説的に「失敗する要因」を抽出してみます。

1.行政が金を出すが口もだす

 産業・人口の集積がない中山間地域では民間だけで会社の設立は無理です。民間と公的部門の出資で第三セクター方式で進むことが多いのですが行政から経営に疎い公務員が重要なポスト入れ替わり立ち替わりつくような、昔の3セク開発のようなことをしていて成功した事例はありません。確かに地方で就職する人はまず公務員を目指すので優秀な人材が集まるのだろうとは思いますが・・・・。

2.熱い思いを持った地元のキーパーソンがいない

 中心的な役割を担う人がいなくて何となく集団で運営したり、人事ローテーションで経営トップが入れ替わる企業に成功例はありません。キーパーソンの多くは有名大卒のエリートではなく、普通のキャリアを積んだ人が多いと言います。

3.外部コンサルタントに丸投げする

 地域にないノウハウを求めて外部コンサルタントにまとめて丸投げする。・・・・もし成功しても地域にノウハウは残りません。

4.商品に特徴がない=マスコミを通じた売り込みができない

 地域の特徴的な産品を利用した商品はマスコミに取り上げられることでブレイクすることが多いようです。伝統的な商品をそのまま売っていたり、他で成功したビジネスをそっくりそのまま真似た猿まねビジネスは失敗するケースが多いと言います。
 資本力があり宣伝広告が出来る企業でしたら「猿まねビジネス」も有りなんでしょうけれどね。

 身の丈に合わない事業計画が首を絞めるのですが、逆に地域の資源の魅力についてあまりにも過小評価して事業化できないというケースもありそうです。スモールビジネスこそマーケティングが大事です。

                                         (2011年04月20日)
■富を求めた人口移動の時代からの脱却〜産業構造の転換のための住みたいまち作り

 富を求めた人口移動

 戦後の人口移動は都市部の重化学工業の振興(三大工業地帯)への注力が、農村と都市部の所得格差を拡大させ、農村部の人口が都市に吸引されたことに起因します。1970年前後の「公害問題」(工場三法)や田中角栄の日本列島改造論により国土への分散が政策的に誘導されました。
 オイルショック後の経済の後退にともない人口移動数、人口移動率は減少を続けます。90年代以降は都道府県内の移動率のシェアが高くなっています。広域の移動が少なくなっているのです。

  全国的な傾向・・・(というか特に関西への移動者が少なくなっているのですが)とは裏腹に首都圏への集中だけが続きます。工場が制限されていても事務所などの制限が無く、事業所が集積すれば対事業所向けの専門サービスが充実するなど「善循環」が働きます。(関西では東京在住の中央官僚の東京へのえこひいきが原因という陰謀論も根強いのです・・・私は変われなかった人達の負け惜しみだと思います)とはいえ、住宅では東京都内と言うよりも周辺の県での居住が進んでいました。

 昨日の図ー2をご覧下さい。1997年以降東京都への転入超過数がプラスに転じます。バブル期には毎年5万人の転出超過であったのが一転します。この時期まで東京都の財政赤字が続き、財政再建団体への転落がささやかれていました。東京都への転入者数が増えるのとリンクして東京都の財政状況も劇的に改善します。丁度この時期に就任したのが石原知事で、知事の人気をささえているのが財政改善の時期と重なった事が大きいのだと思います。

 人口が集中することで不動産価格もあがりますし、消費も伸びます。東京の富は集中によって支えられているのです。だからこそ、都知事は首都機能の分散とか、「2眼レフ論」に対してあれほど冷ややかなのです。(橋下知事が尊敬する石原都知事にラブコールを送っても相手にしてくれませんよね)

 東京電力の原子力発電所の事故は本当は長引くという見解が(政府は口が裂けても肯定できませんが)支配的です。電力不足のリスクは数年間は続くでしょう。長引く余震への精神的なダメージも無視できないでしょう。

 官庁の地方への移転や企業の本社への移転はできないでしょう。それでもこの状態が長引けば企業判断あるいは生活者の判断によるリスクヘッジで中部以西への人口移動が進むでしょう。勿論、東京を愛する人は簡単にははなれないですし、移転しようとしても働く場所がなければ移転も出来ません。ボリュームは僅かです。ただ、流入が継続することを前提にした経済のシステムは変わらなければ衰退するばかりです。

 人口減少下での地域の競争力〜関西のモデルは東京ではない

 国土の分散化といっても働く場所、収入が見込める仕事がなければ人は居住しません。地方にとってはハイテク工場誘致と同時に、地域独自の産品(農産物、水産物、林業資源)を元にした商品、サービス(観光)が中心になると考えています。「商品」として完成させるためには「都市」のサポート、つまり都市でなければ成立しない対事業所向け専門サービスが必要になります。

 その中で、関西の都市がこれから競争力を獲得するのに、ミニ東京化してして周辺の人をとにかく集中させるのが得策かどうか考えると、あまりいい方法ではないように思います。

 京都、大阪、神戸の各市の資源を活かして「創造的な人材」を集めること。付加価値の高い産業を支える人材が住みたい街、働きたい産業を創出すること、そのためには「大阪府」や「大阪市」といった大きな行政単位ではなく「阪神間」「千里」「といった居住区単位での構想や連携をいくつもいくつも創る方が、大阪をひとまとめにして規模のメリットを追う「大阪都」構想より現実的であろうと考えています。少し落ち着いて整理してCRIの5月発行分の記事にするつもりです。

 アーティストが食える環境でないと関西に定住させられないよねという議論と同じく、創造的な人材が食える(能力を発揮できる)仕事が必要です。・・・・私はそれは地方の地域活性化の中にあると見ています。

                                                    (2011年04月19日)


図−1移動者数推移 〜戦後の高度成長期から日本列島改造論までは移動者増加 その後は首都圏集中が進む
図180
図−2 人口に対する移動者(移動率推移)と都道府県内移動率、都道府県間移動率の推移
図181
図ー3 移動理由(移動パターン別)   単位:%  〜他の都道府県に移動するのは進学と仕事がらみが多い
図182
(人口移動調査 2008年)
■大移動時代が始まる〜リスクヘッジには国土全体への機能の分散化が必要

 首都圏へ転入する人が多かった地域は?

 今回の震災で被害を受けた東北関東の府県は、首都圏とのつながりが強く、首都圏ではこれらの地域から人的資源を吸収してきたといえます。他にも北海道、北陸、甲信越、静岡、広島、山口、九州各県では転出先として首都圏がトップでした。

 人が異動する理由としては結婚、進学というのもありますが、職を求めてとか、転勤といった働く場所をもとめての移動が最も多いのです。東京一極集中といわれていましたが、2004年以降リーマンショックまでの間、自動車産業が活発な愛知県では転入者が増え続けていました。(図ー2)

 くすぶっている2眼レフ論より、国土全体への分散化が進む中での都市の魅力創出での競争力強化を

 関西では万博の頃から国土の核の「2眼レフ論」がくすぶっており、、今回も首都機能の万が一の時のためのバックアップ機能を大阪へという(ゾンビのような)声も上がっているようです。

 確かに首都圏〜東日本では「停電の不安」「地震の不安」が続いており、工場や事業所の西日本への移転が静かに進むモノと思われます。遷都は出来ないでしょうが、一部官庁の東北への移転は復興対策としてありそうです。(ただ、それは人口移動の主因にはなりません)おそらくは西日本の既存工場への人員シフトといった形で人口の移動が始まっていくでしょう。

 都市の魅力がクリエイティブな人材を惹きつけます。クリエィティブな人材が高度に集積しているからこそ、関西の企業(大丸や日清食品、サントリー、福助など)が首都に拠点を移してきたのです。その意味で関西の都市特に大阪、神戸、京都の都市、とりわけ大阪が首都圏の一部でも代替できるかと言えば???です。カジノで雇用を造ろうとか、大阪市の都市を分割して都市の力を弱体化させる方向で政策の議論が進んでいるのは、あきらかに間違っています。

 大阪市、神戸市、京都市及びその都市の間の居住地区の連携があってこそ首都圏とは違った魅力を持つ都市機能が形成できます。(それにしても首都のバックアップとは違ったものです)

                                                          (2011年04月18日)

図ー1都道府県別の転出者の行き先(%)〜北海道、東北、広島以西九州は東京圏への転出が圧倒的
図183
(住民基本台帳人口移動報告2009)
図ー2転入超過数の推移〜阪神大震災1995年に兵庫から大阪に移動した人は復興と共にすぐに戻っている
図184


 東京都の財政が黒字化したのは1998年以降です。首都圏でも東京都への人口集中が進んでいます。これは石原知事の就任時期(1998年)と重なり人件費カットだけでなく人口流入もプラスに働いていたのだと思います。この時期の財政改善のイメージが「石原人気」の背景にあるのでしょうね。

  
■ターミナル立地の強みを生かせるか?起死回生が期待される「なんばCITY」のリニューアルオープン

 4月26日「なんばCITY再生リニューアル計画」グランドオープン

 1980年(昭和55年)の開業から30周辺を迎えた「なんばシティ」が26日にリニューアルグランドオープンします。同じ日にはあべのキューズタウン(109、東急ハンズ、イトーヨカドー)がオープンします。ミナミが熱くなってきました。

 「なんばシティ」の改装は「新しい時代に相応しい都心型ターミナルSCの再創造」が基本コンセプトです。都心で働く女性に鮮度と感度の良いファッションを提案するということで、今までなんばに無かったセレクトショップやカフェをを導入します。

 この10年間の低迷は駅立地の強みを生かし切れていなかったところにあります。売上でも「天王寺MIO」にキャッチアップされています。下図にあるように「天王寺MIO」は20代女性に強く支持されています。「なんばパークス」は30代を中心に支持されていて「阪急三番街は」シニアに支持されています。立地に安住してどっちつかずのMDになってきていた証拠です。

 36億円の投資で325億円の売上を目指します。(2009年 283億円)

 南海電鉄のなんばまち作り

南海電鉄はなんばエリアの価値向上に積極的で、2010年にはサービスアパートメント「フレイザーレジデンス南海大阪」を、今年の「なんばシティ」、「島屋」のリニューアルの後も来年若者向けのライブシアター「Zeep Osaka」を南港から誘致しますし、再来年には大阪府立大学を誘致する予定です。

 梅田周辺の開発にばかり話題が集まっていますが、新大阪〜梅田北ヤード〜中之島〜難波〜関空を結ぶ関空アクセス鉄道が実現すれば難波の重要性はますます高まります。(中之島も良くなりますね)

 面的な拡がりがあるミナミですが、核になる施設は核としてしっかりしてもらわないといけません。

                                               (2011年04月15日)
図ー過去10年間の売上高推移〜2009年には天王寺MIOにキャッチアップされています
図185
                   (繊研新聞)

図ー好きな商業施設(大阪市内通勤者)〜20代女性は「天王寺MIO」「ディアモール」、30代女性は「なんばパークス」、シニアは「阪急三番街」がそれぞれ強みを持つ。「なんばシティ」は?
図186
(なにわ考現学)
■これからの変化への布石〜Jフロントリテイリングの決算から見る百貨店の未来

 百貨店業績低迷の要因は「マーケット対応力の弱さ」と「高コスト体質」

 大丸・松坂屋を経営するJフロントリテイリングの2011年度2月期の決算発表で、百貨店業績低迷の原因は、中高年、富裕層を中心とした既存の顧客に対応した既存の取引先を中心にしたブランド構成・品揃えの偏りによる「対象マーケットの縮小化・他社との同質化」といった「マーケット対応力の弱さ」と「高コスト体質」に集約しています。

 「高コスト体質」については老舗百貨店同士の合併でしたから、確かにまだまだ「過剰な人員」は存在するのでしょう。奥田会長も「百貨店の社員数はもっと減る可能性があると思う。社員数減が必ずしも接客サービスの質の低下にはならない。今までの仕事のやり方を変えたメリハリが大事」と語っています。

 2010年の7,500名体制を2012年には5,500名体制にまで圧縮する予定です。本社事務部門の効率化、売場特性に合わせたオペレーション確立と効率的人員配置、効率化した人員の再配置によって「雇用維持を前提とした要員構造の抜本的改革」だそうです。・・・「雇用維持」本社の事務のアウトソーシング会社や不動産、商品試験、通信販売、人材派遣などのグループ会社に人を振りわけて百貨店本体の人員を減らすのでしょうか?
 額面をそのまま受け取れば、これは「ローコストオペレーション」にはつながりません。(組合向けの配慮があり「雇用維持」とうたっているのでしょうが)

 百貨店内の発想ではなく、組織を変えるためには外部の人材を取り入れるべき

 経営再建の時には人件費×頭数の圧縮を考えることが先立ちます。外部の人材導入も銀行か投資会社の金勘定をする人が入ってコストカットすることはあっても、他業態の人材を幹部登用するという話は聞いたことがありません。

 以前、大丸や島屋の報道資料をみて「百貨店初」というテナントを大きくアピールしていたことに脱力したことがあります。「頭の固い当社がこのテナントをいれるとは画期的」という「どや顔」が目に浮かんだからです。きっと原稿を書いた若い人も「百貨店の論理」「百貨店の発想」が骨の髄まで染みこんでいるのだと思います。


 大丸松坂屋が戦略的にヤングを強化しようと「うふふガールズ」という売場を導入しています。決算では20代、30代の顧客が増加と記述されています。図にあるようにあきらかに18〜24歳のヤングは伸びているのですがアラ30はそこそこです。(もちろん伸び率なので客数は違います。ヤングは今まで来店していないのでしょう)
 株主に対して20代30代が伸びていると「強弁」するのは何故でしょう。まだまだ10代から20代初めの層に対する苦手意識が百貨店にあるからだろうと思います。(島屋大阪店の「GOKAI」にしても大丸の「うふふガールズ」にしてもそこだけ浮いていますものね)

 百貨店は、同じような小売りの店頭販売でも「ヤング」に対してのノウハウは「組織的には」持っていません。(ビッグステップ、ディアモール、マーケットプレースなど百貨店が関わった商業施設の運営経験は属人的に蓄積されても組織としては残っていません)だからこそ他業態の運営、営業がわかる現役の幹部クラス人材のスカウトが必要なのです。企業買収では大丸がボスになってしまいます。

 ましてや百貨店の人材が「WEB通販」「SM」などの小売りでも利益の出し方が異なった業態、グループ企業とはいえ「飲食業」「人材派遣業」など他の業種で持続的に収益を上げるのは無理です。人(=コスト?)を本体から移してもグループの収益はあがりません。経営をなめてはいけません。

 「百貨店が評価されている強み」は他の業態では「弱み」になる事をきちんと訓練してから送り出さないといけません。また同じ百貨店の建物にある小売でもそれぞれの強みを活かすには「組織」「報酬体系」など全く異なったモノを同居させないと力が発揮されません。
 組織が今の段階では「フォーエバー21」「ユニクロ」などのファストファッションや「うふふガールズ」と大丸本体が「百貨店」として一つの館に入るのはお互いにマイナスであると思います。もしこの路線を続けるなら都市型SCのブランド作りをしてその中に各業態を入れこむというイメージが必要です。

 

                                           (2011年04月14日)

 イオンがパートナーとしたいパルコは中国の都市型SCの展開を中心にシンガポールの不動産会社「CMA」と業務提携するようです。パルコとしては何としてもイオンの下に入りたくなのでしょうね。
図ー2010年  Jフロント店舗の買上実績〜「うふふガールズ」多店舗展開の効果

図187
■関西と関東東北の意外なつながり

  伊達政宗と堺の縁〜復活したすずめ踊り

 今回の震災の被災地である仙台は伊達政宗公で有名です。1601年に35歳で仙台へ移ります。若い頃は上方ですごすことが多かったようで、秀吉の好みであった華やかな桃山文化の影響を強く受けたそうです。
 秀吉の朝鮮出兵の時の伊達の軍勢の黒の具足に金の星を拝した母衣、紺地に金の日輪の旗差しなどの軍装は豪華絢爛で格好良く、「伊達男」の語源にもなりました。
 
 仙台開府の時には上方の文化を積極的に導入し、技師・大工らの招聘を行い、桃山文化に特徴的な荘厳華麗さに北国の特性が加わった様式を生みだしたといわれています。派手好きだった秀吉に取り入るための方便だけではなく本当に派手な物が好きだったんですね。

 「仙台すずめ踊り」の始まりは仙台城移転の儀式の時に堺の石工達が披露した即興の踊りに始まると言います。その姿が雀の餌をついばむ姿ににており、伊達家の家紋の竹に雀にちなんで、「すずめ踊り」とよばれるようになったそうです。
 仙台に定住した石工の子孫達によって伝えられ、太平洋戦争までは続いていました。1985年の青葉まつりで復活し、2003年にそれを見た堺の人達(よさこいソーラン踊りのグループ)が堺すずめおどりを復活させました。
 青葉祭と10月の堺祭でおたがい交流を深めていたといいます。

 むかしのつながりが現代になって新しいつながりをつくっていたのですね。

 西陣と桐生の絹織物

 群馬県桐生市は奈良時代から知られた絹織物の産地です。養蚕が盛んな土地ですが、東の西陣とまでいわれるようになったのは、1703年の大火で京都西陣が壊滅状態になり織職人が関東に移住し技術革新をもたらしてからです。それまで座って織る織機が主流でしたが、腰掛けて織る高機が導入され様々な文様が織り込むことが出来るようになってからです。

 その他にも千葉と和歌山の漁師のつながりはよく知られていますが、昔の藩主はよく藩替えをされることが多く、その時に藩の文化や産業がまるごと移転したケースも少なくありません。


 今回の震災で生まれ育った街を離れざるを得なくなる方も少なくないでしょう。ずっと伝わってきた生活文化も意外に他の地域との交流でうまれたものも多いので、新しく移り住んだ場所で新しい文化の交流を生むのだと考えて前向きにとらえていただければいいなあと思います。

 しばらく西日本で暮らすとか、西日本で新しい生活を始めるというのも意外に楽しいかも知れません。

 復興支援で自治体同士が助け合う動きが始まっています。関西の自治体も東北地方の自治体とあたらしいつながりができて、長期的には日本をリードする地域としてうまれかわるはずの東北との長いお付き合いをつくれればと思います。

 ※「藩と県 日本各地の意外なつながり」(草思社)の記事を一部引用参照させていただきました。江戸時代から明治にかけた地域同士の交流エピソードがまとめられています。面白い本なので是非現物をお手にとって下さい。

                                              (2011年04月13日)
 
■「インフレ」を知らない世代に〜私達の生活はどう変わるか

 始まっている物価の高騰

 経済学者の先生方の業界内の議論は別にして、小売店の店頭での物価の上昇は少しずつ始まっています。ガソリン価格も高値安定となっていますし、「インフレ」が始まっているといいでしょう。アルバイトの時給も少しだけあがっています。(関西の場合は大阪駅の商業ビル開業といった一時的な要因ですが)・・・原材料の高騰、円安による海外からの購買力の減少、人件費アップ等コストアップ要因は沢山あります。この上におそらく、復興のための国債の増発(日銀引き受けになるでしょうね)という形で資金が供給されます・・・・。

 ジンバブエのようなハイパーインフレにはならないとは思いますが、、一旦始まると制御できない暴走が始まる不安もあります。(杞憂であって欲しいのですが)かといって財政規律だけを守っても市民の生活は良くならない。

 戦後の高度差成長期の後、一番最近のインフレは1973年のオイルショックの後でした。石油価格が高騰しガソリンやビニールなどの石油製品やトイレットペーパーまでの製品が生産コストが上がることによって上昇しました。
 その後の時代では確かにバブル経済の時代に「不動産価格」が上昇し、派手な消費が話題になりましたが、あの時代でも普通の生活に必要な商品の価格は安定していました。(図 参照)

 インフレを知らない世代と過去とは違う未経験のインフレ

 今の社会の中にいる50代前半以下の世代は、実社会で「インフレ」を体感したことがない世代です。実際にインフレに直面したときにどのような行動をとるのかアトランダムに考えてみます。

 景気が回復しないままに物価の上昇が進む最悪のケースも想定されますが、東日本で失われたインフラや生産設備の再建などの実需がありますから、そうひどい状態にはならないと願っています。

 生活にはどのような影響があり、消費はどう変わるでしょうか?

 原材料費の高騰で、いわゆるデフレ業態といわれる「安売り店」の勢いが弱まります。低価格品の消費は「リサイクルショップ」などの中古品市場に向かうでしょう。

 収入増加が期待できない年金生活者の消費が縮小することになります。

 住宅に関しては「通貨の目減りへの不安」から需要が高まると見るか、「金利の高騰」から住宅所有をあきらめる世帯が増えると見るかでプラスマイナスがわかれます。(オイルショック直後にマンションブームが到来しています。ワンルームマンションが生まれたのもその時期でした)

 物価上昇率に見合うだけの賃金の上昇はしばらく期待できませんから、経験のない事態に一時的には消費がシュリンクしてしまう可能性はあります。ただ、お金を握りしめていても「価値」が下がる一方なので何らかの「財」に変えて資産の保全を図る動きに変わっていくでしょう。
 
 高度成長期の「物価高」は若い世代にとって毎年給与があがるという励みがあり、預貯金の金利も高かったのですが、今のまま無策であれば起こりうるインフレの中では物価の高騰に収入増は追いつかない不況下のインフレになりそうです。過去のインフレ時代の感覚では対応を誤る事も事実です。

 貨幣に対する信頼性が低下したときに、富裕層の消費がどのように変わるかがポイントです。震災で「不動産」への信頼が揺らいでいるのか?それともやはり土地神話が復活するのか?

                                           (2011年04月12日)

図ー物価上昇率 対前年比推移(総務省  統計局)
図188
■消費自粛の反動としての復調と忍び寄る東京の変化

 4月のファッション消費は通常モード

 震災後の過剰なまでの自粛モードは、計画停電の休止と共に通常モードに戻りつつあるようです。首都圏の百貨店では4日以降ほぼ全ての店舗が営業時間に通常に戻しました。街の中から消えていた外国人の姿もちらほらと戻ってきていると言います。大きく落ち込んでいた「ラグジュアリーブランド」などの高額品も顧客が戻ってきているといいます。

 いまのところただちに東京に置き換わる都市はありませんし、東京を中心とした首都圏が震災の復興に対して中心的な推進力になっていく必要があります。節電モードは相変わらずですが、衣料消費はこれまでの反動とも言える売れ行きが目立つそうです。ユニクロの柳井社長の言葉によると東日本の方が西日本より消費がいいのは「頑張らないといけなと努力する風潮が強くなっている」・・・事のあらわれだそうです。一生懸命消費して「景気」を良くしよう・・・ということなのでしょうか?一斉に自粛モードから一斉に消費モードというのは変ですね。

 東京に愛着のない「田舎モノ」は東京から出て行けばいい・・・のかな

 目に見えない放射性物質の恐怖の中で、東京まれで東京以外で生活することは想像できない・・・とう人は今の段階では、東京に住み続けるのがいいと思います。(私の生活している都市で同じ事があれば、私もそうすると思います。ただし子供や若い人はためらいなく避難させます)・・・一時東京では避難する人をあからさまにヒステリックに非難する言葉が飛び交っていました。そのようなヒステリー事態が異常事態であることをうかがわせるものでした。

 逃れられない用事のある人や、愛着を持って東京に住んでいる人はよほど具体的な危機が迫らない限り、東京を離れないと思います。東京に用事のない人や、愛着の薄い地方出身者は東京を離れて安心して暮らせると思える場所に移動する。それだけの話です。

 東京への一極集中が進んだのはそんな人達までが必要もないのに、何かいいことがありそうだと、東京に集中したことが原因です。沢山の人が集まればお金儲けもしやすいようにも思えますしね。そんな人達も意図せずにもひきつけるのが、かつての東京の魅力でもありました。

 リスクヘッジのための分散が東京の魅力を蘇られせるか?

 東北地方の復興が最大の課題なのですが、いまだに続く余震と東京電力の原子量区発電所の事故の行方がダイナミックな投資計画を躊躇させる、復興の阻害要因にもなっています。
 誰も口にしない最悪のケースにそなえて、オフィス機能の一部を西日本に移転させる動きが進んでいます。工場の再開も進んでいますが、最悪のケースに備えて今後、海外生産や西日本での部品調達も「準備」されるはずです。海外旅行者は日本全体で激減していくことは間違いないです。

 元気を出さなければいけない、見捨ててはいけないという当然の義務感と同時に、少しづつリスクヘッジされる部分が見えてくるでしょう。日本全国、世界への分散が進みます。集中することでパワーを発揮していた従来の東京の都市の魅力の源泉はすこしづつ損なわれ、今後ボディブローのように効いてくるでしょう。阪神大震災後の一時の神戸のように・・・・。

 焼け跡になったから高度成長を実現できた

 戦後の日本の高度成長は戦争でまけたから古い人材を一掃できたことと、古い生産設備を更新して生産力を高められたからであるという説があります。その論法で行けば(東京電力の原子力発電所の事故が安定さえすれば)東北地方は大きく発展するチャンスをむかえた・・・といえます。

 東京も変わるチャンスであったと思うのですが、昨日の都知事選の結果を見ると?????です。変革を求めなのですね。街に愛着のない田舎モノを惹きつける魅力を今後とも育めるのか?放射性物質の恐怖を超えて人を惹きつける魅力を都市に持たせられるのか?

 東北の復興は大変ですが、1次産業の復興、高齢化過疎化への対応など、日本の抱える今までの課題を突破する道をひらいてくれる予感があります。

 一方、東京の持っていた「輝き」は少しずつ、少しずつ毀損されていくように思います。

                                       (2011年04月11日)
■地方百貨店再生の一つの考え方

 地方百貨店アパレル不振の原因

 地方百貨店のアパレルが不振である原因は、メーカーによる逆選別で「効率」の悪い」地方百貨店に商品が充分に供給されないことにつきます。競合の激化という点は確かにあるでしょうが、百貨店のアパレルの主要顧客であるシニアミセスや通勤している独身女性は多少車の使い勝手が悪くても店には来てくれます。

 先日の新聞記事で東京の百貨店の営業が制約されているので、高級ブランドの商品が大阪にまわっていて、売上げ好調というニュースを見ました。(大阪も当然のように地方都市とランクされているのでしょうね)

 アパレル業界の1年サイクルでのファッションの開店が諸悪の根源だと考えています。その年の流行に基づく商品はその年に売り切ってしまい、シーズン終了時に値下げしても売り切ってしまう・・・・。昔は2〜3年は定価で売れる定番商品がもっと多かったように思います。最近は全ての商品が毎年新しくなることを前提としています。

 出来るだけ早く売れ筋商品を投入して売り切ってしまう「ファストファッション」の考え方だけが正解なのでしょうか?シーズンに売り切るために「回転率」のいい都心に集中して「回転率」の悪い地域は後回し、あるいは無難な商品を中心に販売する・・・・。

 消費者は、新しい商品だけを求めているのでしょうか?現にアウトレットや社販では昨年の商品が売れていませんか?(もちろん価格が安いと言うこともありますが)

 ライフスタイルが変わるこの時期こそ再生のチャンス

 大量生産大量消費の時代は本当に終わりつつあります。リサイクルショップで中古衣料店で洋服を求める若者の姿を見ると、いつも「さらっぴん」の高い商品ばかりを好むのではないことがわかります。

 アパレル業界はファッションの楽しさを発信する義務があります。ただ、商品のサイクルを1年単位でまわしていくような商品だけでなく、じっくりと売っていく定番商品を揃えることも必要ではないでしょうか。そのような「スローファッション」が充実してくれば、地方百貨店のバイヤーも落ち着いて商品を仕入れることができるでしょう。
 店頭ではどうコーディネイトするかの伝えていくことに重点が置かれれば、ファストファッションとの差別化は十分可能です。

 今後原材料の値上がりで価格のボトムは上昇していきます。また震災復興の応援で縫製の国内回帰も進みそうです。(もちろんコストダウンのための海外生産も一方で多くなりますが)ファストファッション一辺倒でなく「良いモノを長く使う」ように考え行動する人の比率は高まっていきます。

                                               (2011年04月08日)
■日本の企業文化〜職場環境はどう変わるのか?

 省エネ対策が変える職場環境

 震災の影響で日本の水産業の文化、農業の文化は大きく変わっていくでしょう。東電の原発事故のためしばらくは輸出は難しいでしょう。少なくとも安全性のエビデンスの確保が難しい素材を輸出することはあきらめることが必要です。

 東電の原発事故の影響が大きいのは都心のホワイトカラーの職場環境であり、今後企業文化を大きく変えるきっかけになりそうです。
 百貨店などに定休日が復活したり、営業時間が短くなる(ピーク時以外では節電は意味無いと思うのですが)傾向や照明が落とされる環境に対して「慣れてしまえばそんなに不便を感じない」という声も上がっています。

 年間ピークの夏場に向けて工場では操業時間をずらしたり夏休みの時期をずらしたりすることは比較的容易です。課題はホワイトカラーとその事務所です。

 エネルギーをできるだけ使用しないオフィス空間

 この夏から数年間の間に都心のオフィスビルでの省エネ対策は一層進みます。照明はLEDにリプレースされ、空調の熱源機も変わります。既存ビルでは難しいですが蓄熱空調(夜間電力で氷などで蓄熱して空調)が普及するなどハード面での転換はある程度予想できます。政府の補助金もでるでしょう。太陽光発電による無停電サーバーなども普及するでしょう。

 問題はホワイトカラーの働き方の問題です。リスクヘッジを考えて、外資系企業は香港に避難しているともいいます。国内でも関西あるいは名古屋などに一時的に機能を分散させている企業もあるかも知れません。ただ、多くの企業は(東京電力の原子力発電所の爆発がない限り)、拠点は東京に維持するでしょう。


 変わらざるを得ないホワイトカラーの働き方

 在宅勤務、あるいは時間差勤務などが常態化した場合、「そのひとの割り振られた仕事のないようと報酬とのギャップがあきらかになる」との意見があります。確かに、温存されている「無駄」があぶり出されることはありえます。ただ、日本のホワイトカラーの業務の多くは不定形であり、属人的でありながらかつ個人で完結しない=人とのやりとりが必要という特性があります。

 東京在住者はある程度の不便にはなれてきていますが、震災時の帰宅難民化の恐怖は身に染みついています。(必ず来ると言われている東海地震の時に為の予行演習になったという厳しい見方もあります。・・・もちろん関西でも大地震が到来する可能性はあるので他人事ではありません)

 すぐに起こる変化として、クールビズは間違いなく浸透します。政府の音頭取りではなく、実際に空調温度は耐えられる最低限の水準に抑えられるからです。

 移動のための電力のロスや通勤が集中することのピーク電力カットのため、仕事の中身を分析して在宅勤務で出来ることは可能な限り在宅勤務にシフトするでしょう。(女性、高齢者、障害者にとってチャンスが増えるかも知れません)その時に重要になるのはマネージャーの役割です。仕事の割り振りやコミュニケーションなどについて今とは違うスキルが求められます。

 どうしても個別に割り振りにくい業務のことを考えると、首都圏内でのオフィスの分散化が考えられます。より住まいに近い郊外の拠点や都内でも都心地区ではない小型のビルに拠点を分散化することです。(ちなみに小規模ビル内に事務所を構える当社は夏は窓を開けてクーラーはできるだけ使いませんし、冬は湯たんぽで暖をとり、年間の電力使用量は少ないです)

 永年の企業研究でホワイトカラーの生産性向上の阻害要因は「無駄な会議」と「必要以上の社内での飲み会」だと確信しています。社員がたくさんいると、念のためにと直接関係のない部署の会議に参加する機会が多くなると思いませんか?
 
 企業文化を変えるもう一つの要素

 今回、東京電力の労働組合はベースアップ要求をとりさげたようです。そんな場合ではないことを把握した見識です。実は、企業が危機に陥ったときに現在の社員の給与カットは理解が得られやすいのです。問題は企業年金です。

 松下電器がパナソニックとしてV時回復出来た要因のひとつはOBへの手厚い企業年金のカットです。JALの再生の課題のひとつもそこにあります。GMだってそうです。過去に約束したことですから簡単に反故にするわけにはいきません。

 東京電力が民間企業として存続するかどうかは不明です。もし一旦国有化されるのであれば、配電会社と電気の製造会社(原子力発電所等の)が分割されるのが道理だと思いますが、世の中理屈通りには進まないのが常です

 今後の企業としての再建の中で、現職の社員だけでなくOBの企業年金も削減されるのでしょう。当事者にとっては厳しいですね。世代間対立を煽るわけではないですが市民感覚としては当たり前のことです。
 
 大企業や公共機関のOBとしてはリタイアしたあとも出身組織に対して、退職後のケアや昔の約束の履行を要求をするばかりでなく、企業としてのコンプライアンスを求めたり、社会の中での振る舞いについて口うるさいお目付役になっていく必要がありそうです。企業が市民の一因として地域社会や国の中で役割をはたしていくためには第一線をしりぞいて市民としての生活に重点を置くようになったOBの果たす役割は小さくありません。

 「自立」が求められ「所属組織」以外のネットワークが求められる

 今後、会議に出席しただけで仕事をした気になれる(うらやましい)ホワイトカラーは絶滅していきます。社内のだけの飲み会は若い世代ではなくなりつつありすが、いまだにその習慣を残す大企業もあります(しかもほとんど毎日)。

 退職後も面倒を見てくれる会社(大企業では今でもそうみたいですね〜退職後のお葬式まで総務が仕切ってくれたりするのがとても不思議な光景です)は今後、本当になくなります。

 大企業や役所の仕事の進め方や職場文化が変わって個人が「自立」すれば、例え少し貧乏になっても楽しい世の中になるのかもしれません。今からでもNPOとか違った組織に身を置いてネットワークを拡げる必要があります。

                                       (2011年04月08日)  
■イオンとパルコのマリアージュの行方

 パルコと筆頭株主森トラストの対立

 セゾングループが解体されたときに、パルコは森トラストに増資を引き受けてもらい危機を脱しました。当初20%だった出資比率は33.2%に買い増され、5割強まで引き上げる提案をうけて、森トラストに支配されることを嫌ったパルコは政策投資銀行を引受先にした転換社債を発行します。政策投資銀行の森株比率が高まると森トラストの持ち株比率が薄まり影響力が弱くなります。パルコと森トラストの対立が深まる中で2月22日にイオンがパルコ株の12.3%を取得したことを発表しました。

 当初イオンと森トラストは牽制し合うのではと見られていましたが、3月17日にイオンから提起された子会社化をにらんだ業務提携の申し入れに基づく経営刷新について共同して議決権を行使するという流れになり、パルコの経営陣としては追い込まれた形になっています。

 イオンとパルコの業務提携はうまくいくのか?

 小売業はシステム化されたノウハウというより「人」と「立地」に左右される業態だと考えています(日本では)。店頭の販売では属人的な要素が少ないように見える「ニトリ」や「ユニクロ」にしても利益をだすための節目の役割(商品開発、発注管理等)は属人的な要素が強いのです。

 かつてGMSが百貨店を買収したケースでも、進駐してきたGMS出身者がリードすると、相乗効果を発揮できずに失敗します。今残っている店は数少ないでしょう。(セブン&アイホールディングスの傘下の西武・そごうは立地の良い店で百貨店出身者の発言力の残っている店は良いのですが・・・・)

 イオンの提案とパルコの見解

・海外ショッピングセンター事業の展開におけるアジア出店支援
 〜「イオンの海外事業は都心立地のSC事業の実績はなく具体性に欠ける」(パルコ)
・次世代ショッピングセンターの共同開発
 〜「イオンでも開発の検討を進めている段階なので具体性はない」(パルコ)
・パルコの既存店舗とフォーラスビブレの一体運営
 〜「個別店舗の状況が明らかでなく、不当な条件での移管を強要されるおそれがある」(パルコ)

 パルコにしてみれば良好な協力関係を話って決めると言うより数の力で支配しようとしていると感じているようです。
 都市型ショッピングセンターのありかたについてイオンにも迷いがあるためにパルコに興味を持っていたのでしょうが、高圧的な交渉でこじれてしまうと「人」が逃げ出してしまいます。


 旧ダイエーの「OPA」はパルコの実質的な創業者増田氏を招聘して徹底的にノウハウを吸収して成功しました。イオンにも優秀な人材は多くおられますが組織が急激に拡大したので体制が追いついていないのでしょう。

 パルコに関しては小島先生などは、昔からのテナントを引きずっているだけで新しいノウハウはないと言い切っておられます。確かに都心立地で、専門店空白地帯では抜群の強さを発揮しますが、例えば競合の激しい大阪市内に大型店を出店できていないとか郊外のコミュティ型店舗のフォーマットが確立していないとか、不安材料はあります。かつての成功体験が強く残っており、今も部分的に成功しているだけに余計やっかいです。

 都心型ショッピングセンターについては、私自身色々考えることがあり新しいフォーマットを作り上げるイメージを持っています。またおいおいその姿を提案していきたいと考えています。

                                             (2011年04月07日)
 
■ライフ土佐堀店オープン〜なにわ筋が明るくなってきました

 ライフ土佐堀店本日開業

 2,402uの層の店舗です。1階は食品、2階は衣料品雑貨などです。地下鉄肥後橋駅の西約500m、京阪中之島線「中之島駅」の南東500mに位置します。商圏設定は約700m圏と広い目の設定で、8,225世帯13,137人の人口がいます。オフィスも多いので昼間人口も馬鹿にはならないと思います。
 商圏内は20〜30代の比率が高く単身世帯比率も高い地域です。マンション開発が進み人口が増えている割にスーパーもなく、商店街も無い空白地帯でした。年間売上目標は20億円と設定されています。
 9:30から午前1時までと深夜営業が特徴です。開店のセールでは商品があふれており、最近のスーパーのすかすかの棚を見慣れている目には新鮮です。客層は幅広いのですが、ペット用品の充実が目立ちました。

 なにわ筋の賑わいが「中之島」を元気にする・・・

 土佐堀1丁目界隈なにわ筋に面したあたりは古いオフィスが目立ち、くすんだ印象がありましたが、マンション開発や新しいオフィスビルの開発で少しづつ活気が出てきました。梅田へのアクセスが悪いのがネックですが、梅田北ヤードから関空へのアクセス鉄道として有力視されている「なにわ筋線」が開通すれば、大きく変化するでしょう。大型ビルばかりで冷たい印象のある中之島にも人の集まる活気が生まれることと思います。

                                           (2011年04月06日)
■地域の産品を定番商品にするための課題

 地域産品へのニーズの拡大〜催事商品から店頭での定番商品への壁

 差別化のために地域と独自の特産品を開発する動きが各小売業で活発です。地方の生産者、メーカーのつくる「商品」は物産催事で扱われることが多いのですが、定番商品として安定的に取引に結びつけるにはいくつかの壁があります。

・価格
 産地で販売している価格と小売りマージンを乗せた店頭価格に乖離があると不信感を招きます。近年、産地でもWEBサイトを使った直接販売を行っているケースが多く、比較は容易です。
 また、地方の生産者も流通マージンに対する理解が浅く、納品価格について不満を持つケースが多いようです
・表示
 消費者がとても敏感になっている部分ですし、ある意味「地域産品」であることの強みでもあるのですが、「食 品衛生法」や「JAS法」などの法規制について意識の低い生産者が多いようです。
 特に添加物や賞味期限などの安全安心の要求水準が高いことについて注意すべきでしょう。
 催事であればある程度現場でコントロールできる在庫管理ですが、店頭に並べる商品についてはロス率を下げるために「冷凍」などの保存技術を積極的に取り入れる必要があります。産地直送のシズル感との兼ね合い が難しいのですが発想の転換が必要です。
・パッケージ
 店頭で説明しながら販売する催事と違い、パッケージで内容や美味しさを訴求する必要があります。素朴なパッケージで好感を持たれる場合もありますが、成功している商品は「素朴さを演出した」パッケージであることが多いです。それなりに実力のあるクリエイターに依頼する必要があります。
・仕様原材料
 地域産品の強みとして、「地元」で生産され、かつ「地域」「生産者」が特定される商品である事が強みになります。どこまでトレーサビリティを確保できるかがナショナルブランドとの差別化の鍵になります。
・生産ロット
 地域産品で魅力的な商品であればあるほど、「生産ロット」が小さくなります。原材料や製法にこだわりを強めれば強めるほど、安定して一定の商品量を供給することは難しくなります。流通ルートを選ぶこと、ある程度価格が高くなっても大丈夫で、品切れにも理解を得られる小売業に絞り込む必要があります。

 少し基準をゆるめたセカンドラインを自らつくっておく(輸入食材の利用など)ブランド戦略もこれからは必要かもしれません。他社にパチモノを作られる前の防衛戦略です。

                                                  (2011年04月06日)
■これからどこへ向かうのか?少し先を見ながら考える

 夏の電力不足対策の有効性

 野村総研が夏に電力不足について分析しています。検討されている「サマータイム」はピーク時の需要抑制には効果無し、「ピーク時間の料金値上げ」もピーク時のみの計測ができないので実施困難であることと夜間にシフトしにくい一般家庭や病院店舗によって効果が期待できないとしています。
 「総量規制」「輪番操業」などは効果があるのですが実施できるのは大企業に限られるので節電を行っても360万kwの供給力不足から計画停電が避けられないということです。

 首都圏の方々のマインドが静かなパニック状態であるようなのは、」被災された地域の方々への深い哀しみがあるのはもちろんですが、「放射性物質の飛来」と「計画停電」の継続が大きいものと考えています。なによりも「停電」の常態化が続く限り、心のスイッチが前向きモードに変わらない(阪神大震災の時に東京のメディアがすぐに冷ややかに変化しと感じられたことも、いち早く通常モードに切り替わった事の裏返しでした)

 
 経済復興プロセスと主要産業に与える影響

 昨日、産業調査の大手企業矢野経済研究所が主要産業別の影響と見通しをまとめています。無料で提供されているので同社のサイトからご覧下さい。
 いくつか当社にも関わりのある産業について同社の予測を踏まえて当社としてのコメントを提示しておきます。「 」内は矢野経済の分析を抜き出したもので、それ以外(ほとんどですね)は当社の視点です。

 建設業界

 「復興需要で当面は堅調」「人手不足、資材メーカーの被災による資材の手当不足などネガティブ要因も」「中長期的には地盤改良、防災対策などの需要も」・・・首都圏では職人さんが東北出身の方が多いので帰郷しているため一時的に人手不足の状況が続いているようです。外国人の労働者も帰国しているようですし、資材も不足しているので決してぼろ儲けという状態ではないでしょうね。土木、インフラ系はしばらくは需要があっても日本経済が長期的に低迷すると厳しくなってきます。津波や地震に怯える地域も少なくありません。「災害に強い街づくり」のパッケージを確立して海外に売り込めるだけの知恵を蓄積する必要があります。土木、建築、インフラ整備の総合パッケージとして商品化するということです。

 住宅業界

 「住宅の復興需要」「資材不足、人員不足による建築費高騰によるマンションの価格高騰〜中古マンション市場の活性化」「燃料電池、蓄電池など省エネ住宅の普及に弾み〜オール電化住宅の需要は足踏み」
 住宅を失った人々への供給が最優先ですが、新築マンションの高騰は都市部の住宅市場を変えていきそうです。「高層マンション」については「地震の揺れ」の恐怖や「停電」の不安の反面、多くの人が帰宅難民と化した体験から都心志向が強まるのではという見方が混在しています。津波の被害や、埋め立て地の液状化などの被害から都心の中での住宅地の「人気エリアの変化=地価の変化」がおこるのではという声も聞かれます。

 大阪も埋め立てて拡がってきた都市ですから他人事ではありません。

 在宅ワークの普及に弾みがつきそうですね。住宅地に近い拠点にサテライトオフィスといおう選択肢もあると考えています。業種や職種によるでしょうが、全ての人が定時に同じ場所に集合することにともなう社会資本整備の非効率も検討よすべき要素です。(基本的に色々な局面で”自立分散ネットワーク”と”顔の見える信頼関係”の両立が課題だと考えています)

 小売り・外食・レジャー業界

 「東日本の売上カバーのため西日本強化」「原発事故が長引けば外国人観光客は日本離れ」「国産回帰により日本産地ブランドの増加」などが指摘されています。長期的に見ればみんな東北を応援したい気持ちで一杯ですが・・・当面は需要の動くところにシフトせざるを得ません。
 日本産品の輸出もしばらくは難しいので内需主体でブランド化に磨きをかける時期だと思っています。

 開業1ヶ月を迎えたJR博多シティは予想を上回る売上、集客を示しています。アミュプラザ博多の売上は計画比28%増。博多阪急の売上高は予算比13%増と絶好調です。被災した岩手県の久慈市では海外実習生が帰国する中、地元雇用で縫製業を立て直そうとしています。メイドインジャパンを見直して被災地を復興させるためにも「自粛強制ムード」の嫌な流れを断ち切りたいものです。

                                        (2011年04月05日)

■電力供給の不安定化で生活はどう変わっていくか?

 1985年の水準・・・というのは

 事故の影響で電力供給量は1985年の水準に・・・いう話題がでていました。オイルショックのすぐ前ですから、それなりに「貧しくはない」というイメーはありますが、エアコン普及率が5割を超えた程度だったのですね。
 最近の機種は省エネ性能が進んでいますから、同じ電力消費量とはいいませんが、夏のピーク時に「計画停電」が実施されると高層ビルのオフィスではかなり厳しい状況になります。

 現在その状況を織り込んで考えられる対策は
 ・「在宅ワーク」の推進

 ・「フレックスタイム」による労働時間の分散化 ピークタイムの集中を防ぐ
 ・西日本、または海外への事業所へのシフト(大阪市内のオフィスビルにも動きがあるようです)
  〜外資系の企業が香港などに逃げ出さないように、なんとか大阪で引き留められればいいのですが
 ・海外への工場へのシフト

  等々です。

 観光、海外からの集客については原子力発電所の対策にめどをつけてからになります。「東北」をバックアップしたい気持ちはとても強いのですが、北海道や、沖縄九州などへの集客から再開することになります。買い物の魅力はベースのある西日本の都市部で対応せざるをえないでしょう。復興の投資は重点的に東北地域に振り向けられますから関西はその原資を稼ぐ役割を、(公共投資を期待せずに)果たさないといけないでしょう。

 通信ネットワークの幹線を充実(総務省「光の道」構想)できれば、中山間地や沖縄などに働く場所や考えるための拠点(研究施設、行政等)を分散して配置することができます。災害に強い通信網の整備が急がれます。

 生活の変化は

 現在、水やお米が店頭に不足している状況が続いています。一時的なパニックは落ち着いても、今後首都圏では「水道水」を飲用につかわない習慣が定着していくのだと思います。

 食料品の安全・安心への担保への要請がより一層高まります。生産者の顔がしっかり見える商品、安全性検査がきちんとされている商品を選ぶ事が機会が増えてきます。風評被害で東北産を忌避する動きと、逆に東北の農家生産者を直接支援しようとする動きが出てきます。

 最近注目が集まっているのは、太陽光発電と夜間電力の蓄電機能の役割を果たす「電気自動車」への注目です。家庭に常備できる蓄電池としてガソリン車からの転換が期待されています。エコカー減税に次ぐ消費拡大要素です。

 津波の被害がああた漁港の住宅について「高台」での整備などの構想が発表されていますが、産業構造の転換やコミュニティの再生の方向性を勘案する必要があるので一律に進められる方向性ではありません。住宅に関しては首都圏での「タワーマンション」への評価の動向です。阪神大震災の時もエレベーターの停止が話題になりましたが、影響はごく一時的なものでしたので住宅の需要構造を変えるほどではありませんでした。

 計画停電が23区内にも波及して継続した場合、「高層マンション」の存続さえ危うくなりかねません。〜都心居住が再認識されている動きもあるので、都心型の中低層の環境共生住宅モデルが必要でしょう。

 オフィスの停電や帰宅難民の体験から、女性の靴でウォーキングタイプが売れているそうです。自転車通勤も増えてくるとファッションもまた変わっていくことになります。

 停電の長期化とその先に確実に来る「電気料金等の高騰」は生活スタイルを確実に変えていきます。

 今後も注意深く追いかけていきたいと思います。

                                         (2011年04月04日)
図ー耐久消費財一般世帯普及率(クーラー・ルーエアコン)
図189

■地方から雇用を作り出す新しい仕組み作り

 ローテク産業が地方の雇用機会を増やす

 工場立地での雇用予定従業者数は自動車やハイテク産業などの輸出企業より、ローテクな食品関連産業の雇用者数が多いようです。
 地方の経済を支えていた建設・土木関連の公共事業は今回の震災復興で一時的・局地的に回復するとしても長期で見れば縮小していきます。介護事業などに取り組む動きもありますが、人材のミスマッチもありますし、なかなか難しいようです。農業への企業としての参入も考えられますが、大規模化して効率を上げても輸入品との競争には勝てません。

 農産物そのものではなく加工度を上げると利益率が高まります。またその地域の産品の「ブランド化」をはかることで差別化も可能です。6次産業化、農商工連携事業など国のバックアップ政策も進んでいますが、従来の地域の枠組や、「人材不足」などの理由でまだまだ課題が多いようです。

独立行政法人労働政策研究・研修機構が今年の2月に発表した「「中山間地の雇用創出」では大都市圏から離れた地域で雇用創出に成功した事例を踏まえて成功のための要因の分析を行っています。

 すっかり有名になった「上野町の葉っぱビジネス」や「馬路村のゆずビジネス」ではなく島根県吉田町の「たまごかけご飯のたれ」、長野県小川村の「おやき」、岐阜県明宝村の「ハム」について紹介されています。成功のポイントは、第3セクター事業であっても役所は口をださないことと、キーパーソンの存在、大都市でのメデァを使った売り込みのなどをあげています。
 「いいもの」おしつけではなく、消費者の嗜好をマーケティングして商品を練り上げていることも大きな要素です。

 「お取り寄せ」から「消費者参加型の協業」へ

 最近、生産者がWEBサイトを活用したり、楽天などのモールに出店し直接販売しようとする事例が増えています。産地直売所が人気を呼んだり、生産者からお取り寄せを行う人も増えてきています。食品の安全性への意識の高まりから「顔の見える生産者」とのつながりを求める人が増えてきている背景もあります。

 一対一でのやりとりや、売り買いといった流れからもっと違った双方向や多方向の流れをつくれないかずっと考えています。

 シニアNPO団体とお付き合いしていると同じ目的を持った人同士遠方でも友人交流している姿が見えています。フェィスブックやmixiでなくてもアナログ的な地縁血縁とは違ったコミュニティはかなり拡がっているように思います。(シニアはPCの「メールは結構使いこなしています)

 地方の生産者と調理を学ぶ学生さんをつないで学生のアイデアでの商品開発をお手伝いしたのも貴重な経験でした。地方の特産品を使った料理レシピや加工食品の開発に応用できると思います。例えばクックパッドなどの主婦のレシピ投稿サイトのように「消費者」が主体的にメニュー作りに参加するコミュニティも考えられます。

  消費者のネットワーク、生産者のネットワーク、レシピをつくる調理人や主婦のネットワーク・・・これらを重ね合わせてつなげていけばそれぞれのメリットを創れます。
 フードコーディネイターを目指す若い人達と「等身大の感覚」で新しい美味をつくる・・・「おしゃP」(おしゃれプロデューサー ※わからない人はググって下さい)じゃなくて「ぐるP」ブランドを創っていっても面白いですね。産地直送の食品開発というと、どうしても堅苦し雰囲気になるのでそれは避けたいですね。

 お米、お酒、野菜、樹木などの生産物は食料品や資材にとどまらず、健康食品や化粧品、美容ケア用品などにジャンルを拡げていくことが出来ます。

 マスメディアにも単に商品紹介のプレスリリースを送りつけるのではなく、「商品開発」の背景となる「物語」を紹介することで取り上げてもらえる確率はかなり高くなります。

 年度の切り替わりにこの1〜2年の仕事を棚卸ししてみると、トータルでこの構想を実現できる経験や人のつながりのストックが出来たように思います。

 新しい年度の初めですので今年の経営方針として提示いたします。

                                       (2011年04月01日)

図ー産業別・工場での雇用予定従業者数(2009年)
図190
(経済産業省 工場立地動向調査)


図ー当社が今年取り組む新しいビジネスモデル
図191

  analog−corp


 3月
■農林水産業の6次産業化と地域コミュニティの再生

 延期されたTPPの議論と「担い手の高齢化」「いずれ直面する貿易の自由化」

 高度成長期に労働力として都市が地方から多くの若者を吸い上げてきました。集団就職で上京してきた団塊世代にとって東北地方は「「心の故郷」なのだと思います。それだけに今回の震災での動揺は大きいモノがあります。あわせて、放射線の飛来の恐怖もあり政府やマスコミは正常な判断力を失っているようにも見えます。


 今回の震災で多くの漁港が被害を受けています。「復旧」作業を進めるとともに、水産物のサプライチェーンの再構築が進むと論じてきました。野菜などの商品作物が放射能によって汚染されて被害をうけていることや畜産農家の被害を考えると、東北、北関東地区の1次産業に関しては個別の対策ではなく、総合的なサプライチェーンの組み替えの社会実験を行うことができないでしょうか。

 生産と加工、商品化販売まで一貫したマネジメントの流れの中で「消費者ニーズ」を基点とした商品供給を実現します。(商社、小売業のノウハウ、資本を導入し迅速な立ち上げと地域での雇用の創出をはかります)農協、漁協の枠を超えて「食料品」「医薬品」「化粧品」など市場が求める商品を供給して、地域として競争力を高めていく・・・・大規模化、集約化でなにもかも解決するとは思いませんが、ある程度の商品はこの方法で元気になるはずです。・・・・。農工商連携事業はいままでもありましたが、はっきりいって「商品」としては「今ひとつ」のものが少なくありません。マーケティングの視点が圧倒的に欠けています。補助金の仕組み上、どうしても県単位、地域単位になるので事業規模が小さくなりがちです。東北・北関東の広域で考えると国際競争力のある商品ができます。

 もひとつの方向性は大規模化、集約化とは正反対の「ブティック化」です。一部の高級米にあるように生産者の顔や生産手法が見える形で消費者と生産者を結びつける方法です。水産物でも、注文してから釣りに出かけて干物にして送って下さる方がいます。
 そのような生産者と消費者をダイレクトでつなぐ事業も上記の「企業化」と並行して進める必要があります。
  
 林業については「木材」の商品の商品価格にばかり目が向きますが、「山林の健全化」は「農業」「水産業」に大きな影響があります。事業としては一体で経営されるべきものです。(良いお米をつくるために山林の間伐材を使って炭を焼いている生産者もいます。手入れされた山林が田に良い水を供給してくれます)

  地域コミュニティの再生の為に、集団就職や進学のために地元を離れた団塊世代のUターンを促進する必要があります。地方ではまだ「若手」で通るでしょうし、都市生活者のニーズを伝えたり、組織運営のノウハウを伝えたりやるべきことは沢山あります。今こそ、故郷に恩返しをするときです。

 この機会に「人材」が全国に分散化したり交流することで日本の国土がより強くなるように思います。

                                                 (2011年03月31日)
■復興への動きと消費マインドの回復状況

 低調な春物商戦

 首都圏のファッション商戦は相変わらず低調なようです。食料品や日用品に比べてファッションは不要不急と考えられている所為でしょうか。東京都ではお花見も自粛命令がでていると聞きます。
 百貨店では閉店時間が5時から6時、7時に回復してくるに従い、衣料品の需要が戻ってきていると言います。OL層に比べてシニア層の衣料品購入は厳しいようですが。外国人観光客も姿を消しているので本格的な回復にはまだ時間がかかりそうです。
 関西でも外国人観光客の姿は見られませんが、大丸心斎橋店では婦人服特選ブランドがそれにも関わらず堅調だそうです。「関東以東からの商品移動による品揃えの充実も影響」(繊研新聞)って普段からでも品揃えをちゃんとすれば売れるんだと言うことでしょうか?

 九州では天神地区は売上客数とも減少していますが、2日に開業したJR博多シティ(アミュプラザ、博多阪急)は開業記念の販促イベントが中止になっても計画以上の売上、客数だそうです。(店頭がきちんとしていれば、販促やイベントは不要なのかも知れません。
 昔、阪神百貨店の社長が、中元歳暮の広告出稿をやめても売上は変わらなかったと語っておられました。不要と言うことは無いのでしょう、広告やイベントの目的、求める効果は見直さなければいけないでしょうね)
 JR博多シティは平日20万人、休日は27〜28万人とすさまじい集客力を示しています。

 被災地である仙台市中心部ではまだ5割前後の大型店が休業状態です。「フォーラス仙台」、「仙台パルコ」(26日から一部再開)、「エスパル仙台」(4月上旬再開予定)など。百貨店は「藤崎」「仙台三越」「エマルシュ(旧さくら野百貨店)」など一部再開しています。郊外の「仙台泉プレミアム・アウトレット」は再開時期が明らかになっていません。
 茨城県の水戸の震災の被害も大きく駅前の「エクセル」や「丸井水戸店」は休業中です。水戸京成百貨店は23日には全館開業。ただし、エスカレーターが休止中で上層階への買い回りは少ないようです。

 原子力発電所事故への不安が尾をひいて引いて消費マインドが全開とは言いませんが、ファッションや娯楽は生きるための力です。首都圏の某知事の電力消費に無関係な「お花見自粛」命令は消費マインドを冷やすだけでしょう。

 製造業の復興状況

 茨城県日立市の日立製作所の工場は全面停止していましたが、29日から再開。当面6割程度ですが4月末には全面復旧する予定です。一部建屋の屋根や壁が崩落していましたが生産設備の損傷は軽微であったようです。インフラの復興需要が予想されるガスタービン(発電機)の受注に力を入れるそうです。今後、太陽光発電や風力発電などの関連機器の製造部門の人員増強をはかるそうです。

 福島県いわき市の日産の工場は4月中旬には一部操業を開始し6月始めにはフル稼働したいとのことです。製造業はかなり復元力があるだけに、原子力発電所の事さえなければ復興のスピードはもっとあがっていたことでしょう。被災地の港湾もかなり回復のピッチは速いようです。

 復興需要が見込まれる「鋼材」は復興需要のプラス以上に停電などによる製造業の落ち込みや、鋼材製品の放射能汚染の風評被害により減少という見方が強いようです。

 水産業再生の行方

 築地の市場の停電の影響もあり、生鮮の流通は縮小していくようです。北海道では加工品のウェートを高めて、従来弱かった関西地区での販路開拓に臨みます。被災地の漁港の再生には」まだ明確な方針が示されていません。当面は船を失った漁師の雇用対策、「浜離れ」(離職)の食い止めのために船の撤去や漁場の清掃に取り組む事になります。

 魚離れが進む中、海外への輸出も当面あきらめざるを得ないでしょう。漁港や水産加工工場の集約による製造業、流通業との連携と、全国的な漁師仲間の助け合いネットワークとの連携の中で新しい水産業の方向性がみえてくると思います。現在、築地か豊州移転かで議論されている東京の卸売市場のありかたにも関わってくるテーマになりそうです。(議論は豊洲の「土壌汚染」だけでなく卸売業者の集約=大手小売り業者の関与が強まる、という争点もあるのです)

                                                         (2011年03月30日)
■見たいモノしか見えない、聞きたいモノしか聞こえないその壁を越えるには

 バスケットボール試合中のゴリラ

 心理学の実験でバスケットボールの試合の映像で片方のチームのシュート数を数えさせるという課題を与えた試みがありました。実際の目的は試合中に画面にゴリラの着ぐるみを着た学生が乱入して画面に向かってドラミングしている姿を映し出し、何人がそれに気づいたかという事を調べるためのものでした。ほとんどの被験者がゴリラに気づかなかったそうです。

 その場面で想定していないものが目に入っても知覚しないのは何かに集中しているためでしょうか?むしろそれより、見えるはずがないものが見えない、聞かないというプログラムが我々の中にセットされているように思います。

 少し似た様な話に「テーブルの上のへら鹿」というたとえ話があります。パーティー会場のテーブルの上に(本来あるべきでない)ヘラジカの頭が乗っていても、あまりにも普通でなさすぎてパーティの参加者がだれもそのことんそのことに触れないで談笑しているというシーンのことで。企業の経営課題があきらかに大きすぎる時に誰もそのことに触れようとしない・・・という危機的な状況に陥っている企業の姿をあらわす経営学のテキストに使われている話です。

 阪神淡路大震災の後も、今回の時もそうでしたが一報が入ったあと後、一瞬の空白がありだんだん事態の大きさを知るいうのは知覚にには「日常性の繰り返しという惰性のバイアス」かかっているからかも知れません。津波への対応にも「自分は死なない」という根拠のない確信が避難の迅速性を損なっていたという指摘があります。緊急時に恒常性を維持しようというバイアスがかかるようです。

 日常では意識することはないのですが、このような緊急時に「デマ」が流通するプロセスを観察していると、興味深い減少が見えてきます。「わからない」「知らない」といえないテレビの有識者の存在です。「大学の先生」や「元新聞記者」だといっても全ての分野に精通し見識を持っているわけではないのですが、コメントを求められると答えます。
 原子力発電所のようにはっきりと立ち位置で評価が分かれる事項についてはどうしても無難な方、楽観的な方へ論調が流れがちです。受け手の方の空気にも「聞きたいこと」「見たいこと」=「安心させてくれる情報を得たい」という圧力がありますから、ついその空気に迎合してしまうのかも知れません。

 一部にあるような「陰謀論」、スポンサーである東京電力や政府の圧力などというものは。あったとしても「即効性のある効果」がでるものではないので報道管制はないでしょう。

 
 事故広報の危機管理

 記者会見では、原子力発電について批判的なスタンスでも推進派のスタンスでも「安心」「大丈夫」という言葉を聞きたいのだろうと思います。悲観的な観測を伝える必要はありませんが、最悪の想定とそこまでの段階、、今わかっている事と、とるべき対策など最初の段階でオープンにしておけば、当初はたたかれたり、「誤解」されることがあったりしても、状況が明らかになってきた後の対策についても「信頼」が高まったはずです。(すぐに伝わらなくても記録は残ります)


 原子力発電所の広報が「正しく理解してくれる」「シンパ作りと、「反原発の一部の偏った人達」に分断する形で進められてきたので、その中間の不安もあるけれど必要性も理解できるという中間的な多数の層に向けて語る言葉をもたずに、「クリーン」「低炭素」「安全」といったイメージ訴求だけに偏ってきたのが裏目に出ているように思います。

 「陰謀論」の標的になってしまうと、逆に伝えるべき言葉も伝わらなくなります。その時には根拠のない誹謗中傷が逆に信頼性を増してしまうリスクがあります。

 普段から顔の見えるオピニオンリーダーにきちんと情報を伝えていおくことが重要です。囲い込めるシンパだけでなく、ある程度批判的な立場の人に対しても「フェア」に情報を伝えておくことが危機管理に役立ちます。

 情報の受け手の聞きたいことや見たいモノとずれてしまった内容の情報を伝えるには、一方的な発信では伝わらないのだなあと感じています。

                                                  (2011年03月29日)
 このタイミングで関西電力の社長が「原発計画は粛々と進める」という発言をしたのは逆効果です。国民感情を背景に報道が「叩く相手」を探している中で格好の燃料を投下しているようなモノです。昨日、弁護士の郷原信郎氏の「組織の思考が止まるとき」を読んでいて、社会保険庁の「不祥事」(保険料未納者の報酬の遡っての改ざん)が自己保身ではなくそれなりに合理的な理由のあった行為であったことを知り、「民衆の敵」とされてしまうことの恐ろしさをあらためて認識しました。
  道理が通じなくなった時にどう対応し、企業を守るかが課題です。(別に電力会社に何お義理もないですし、個々の局面では随分高圧的なことをやっているのだなあとも思いますが、諸悪の根源をおしつけられる旧国鉄や、郵便局に似た構図です)
 
■これからの住宅とエネルギー〜ポスト「オール電化住宅」の成長分野

 成長市場であった首都圏市場の暗転〜オール電化住宅に変わるエネルギー源のセールスポイントを

 東京電力の資料によれば、阪神淡路大震災時のインフラ復旧は水道90日、都市ガス83日に対して、電気は7日間だったそうです。貯湯式の電気温水器のタンクの中には水がたまっていて生活用水の確保にも役だったといいます。
 電気温水器を中心としたオール電化住宅の普及にはこの知見が大いに寄与したのだと思います。エネルギー会社同士は表だってネガティブキャンペーンをしないことが不文律であったのですが、この時期から都市ガスと電気のエネルギー間の争いが熾烈になってきたように思います。

  家電製品の飽和に伴う新しい需要を開拓したかった家電メーカーやリフォーム事業者が電力会社の有形無形のバックアップを背景に「オール電化住宅の普及」に力を入れたこともあり、新築住宅のオール電化率は33.8%、、既築住宅を含めた普及率は8.8%にまで伸びてきました。2020年には19.8%と予測されていました。(富士経済)

 オール電化世帯数では東京、中部、関西が多いのですが、競合する都市ガスの事業者も大手なので、普及率ではまだまだ低い水準でした。とりわけ東京・関東といった首都圏は低い普及率で、今後の大きな伸びが期待されていたエリアです。

 今回の震災で、東日本では、長期にわたる停電が予想されます。この中で「地球環境」対策として「エネルギーを使わない社会」に転換していくという価値観が主流になっていくでしょう。

 太陽光発電は単独では解決策にはならない 

 今回の騒動であきらかになったのは「電気は貯められない」(正確には高い効率では貯められない)ということが意外に知られていないということです。深夜電力料金が安いのは夜間に出力調整できずに運転している「原子力発電所」の電気を垂れ流して捨てるよりはお湯をわかして保温する形で有効利用するためです。太陽光発電で発電した電気はある程度電池に充電できると思いますが、夜間や曇天時のの需要をまかなえるほどのにはストックできません。

 今の商品では太陽光+エコウィル(ガスエンジンでの発電)またはエネファーム(家庭用燃料電池)の組み合わせが考えられます。いずれも発電工程の中で温水が必要以上に出来てしまうのがデメリットですが、東日本の戸建てでは普及が進むと見られています。
 何を使うにしてもエネルギー消費は最低限に抑制されなければ続かないことは間違いないです。都市ガス、LPガス、石油を使ったコジェネもあくまでも当面のつなぎとしてリプレース需要が生まれるにすぎませんが。

 集合住宅の場合は個別の設置は無理なのですが、高層マンションの場合、エレベーター内の「閉じこめられ事故」が多発していましたので販売時のセールスポイントとして緊急時の自家発電設備は必須になるでしょう。

 ITを活用した住宅内の熱コントロール技術の進化が求められる

 住宅内の熱コントロールについて、従来は高気密・高断熱一辺倒で、その上でエネルギーを使って温度や湿度をコントロールするという考え方が主流でしたが、これからはエネルギー消費をおさえてかつ住宅内の気候をコントロールするために、断熱、通風換気、空気の対流による効率的な熱コントロールなど気候や室内の状況にきめ細かな対応を行う為の熱コントロール技術が進化していくものと思われます。

                                                            (2011年03月28日)


図ーオール電化住宅導入世帯数          図ーオール電化住宅普及率
図192


■「東京電力国有化」論」の先に見える「電力自由化」と「復興需要」の「開国圧力」

 「東京電力」国有化で一気に進む「電力自由化」


ロンドン共同】21日付の英紙フィナンシャル・タイムズは社説で、東日本大震災による福島第1原発の事故に関連した巨額の補償で、東京電力は「現在の形態で存続できないだろう。国有化される可能性もある」と指摘した。
 同紙は、2002年に発覚した原発トラブル隠しなどを例に挙げて、東電を「独占的な地位を乱用し、原子力行政となれ合いの関係を続けてきた」と痛烈に批判した。


 今まで、腫れ物にさわるように避けられていた「東京電力」への批判が解禁されています。(もちろん批判されるべき点は多々あるでしょうが)国民の怒りを「東京電力」に集中させようという意図せざるコンセンサスができつつあるのでしょう。

 巨額の保障金、発電施設の再建など、一企業では対応できない課題がありますから、巨額の税金が投入されます。一旦国有化されるという道筋はありえます。その後「原子力発電所」は企業として分離されるという観測がフィナンシャルタイムズ紙では掲載されています。現在の東京電力は実質的に「配電インフラ」を所有整備する「配電会社」となることを意味します。

 この時期に原子力政策は変わらないとおいう発表もありますが、、少なくとも復興の時期であるこの10年間の間に新しく新しく原子力発電所が稼働することは考えにくい状況です。大口需要者にとってはLNG火力、石炭火力発電が中心となります。計画停電に左右されるのを嫌って自前の発電施設を整備する企業も増えます。

 海外の投資家にとって大きいビジネスチャンスです。先日まで議論されていた「TPP」は単に農業の問題でなく、アメリカ企業にとっての日本市場の開放(医療保険、法律業界、公共事業への参入)が主目的であったことは多くの人によって知られてきています。

 発電事業に参入する機会が拡大する時に海外からの参入も開放することになると考えられます。インフラ整備に海外の投資資金を活用できてよかったね・・・という論調が増えると思います。(竹中平蔵さんがいいそうですね)

 震災で数十兆円のインフラが失われたと指摘する人がいますが、逆に言えば数十兆円のインフラ整備の需要がうまれたともいいます(勿論支払いは我々の税金です〜従って電力に限らず復興の需要は国内で回したいですよね)ついこの間まで、国内のエネルギー需要は飽和状態なので海外進出しかないといわれていたのですが、(税金)で再建の需要が生まれています。

 「民衆の敵」をたたくのは思考停止

 今は「東京電力」が民衆の敵としてバッシングOKとなっています。その勢いで「電力自由化」「市場開放」=無国籍企業による投資対象への途がまっすぐにしかれています。・・・・。独占企業による供給から競争原理による開放的な市場からの供給って一見「いいこと」のように思えるのですが、国のあり方を変えていく問題なのでしっかり議論して進めたいモノです。

 今の日本は家庭内の借金で家計を回しているのですが、外部の高利貸しにお金を借りると「返済」のために働く悪循環に陥ります。「海外からの投資を呼び込む」というのは、将来の成長の見込みが無い場合はサラ金で家計を維持するのと同じ事なのに誰もそうはそうは思っていないようです。

 省エネルギーと再生可能エネルギー活用での新しい都市像という声もありますが、今、中長期のビジョンを描く主体がないので、なしくずしに「復旧」のための借金を増やすことになります。

 なお、東京電力の国有化、さらにそのさきの経営形態については、震災以後に政府高官や米国政府高官によってなんらかのステートメントが発表されているわけではありません。今の段階では公式な情報はありません。
 ただし、今までの「対日改善要求」やNTT回線開放の要求、東京電力への国費投入の現状、今後の投資資金の調達からごく普通の再建手法として企業分割が議論されない理由ずはありません。今の状態では東京電力にはそれに抵抗する「政治力」は残っていないでしょう。そして東京電力での「電力自由化」は関西電力を始めとする地方電力会社にも波及すること必至でしょう。

  そのこと自体は悪いことばかりではないでしょうが、デメリットもあることを知っておく必要はあります。
(例えば、電気料金は安くならない・・・特に家庭用は(アメリカの事例)。地方の経済団体は中心となる担い手を失ってしまうとか、関西のローカルテレビ番組のスポンサーが減ってしまうとか・・・あまりたいしたことがない・・かな)
                                                          (2011年03月25日)
■「デマ」拡散のメカニズムと「デマ」を拡散する発信者のモチベーション

 報道されないことが不安を増殖させる

 新聞、テレビというメディアは読者の「気分」を濃厚に反映させる媒体です。通常は送り手が思う「受け手はこんな情報」を求めているだろうという直感によって情報が選択され、その論調が定まります。その結果、視聴率なり部数にそれが反映されます。
 新聞の部数の低下、特に若い読者の新聞離れはWEBでのニュースの流通が主たる原因ではなく、読者のニーズと提供される情報のミスマッチにあると考えています。

 今回の震災に関しては特に原発事故への不安が大きいにも関わらず、その情報が小出しにしかでてこない事で、様々な「デマ」情報がネットに流れていました。おそらく発表の時点では正確に把握できていなかったために公式発表できなかった「より悲惨な事態」がその後次々と現実化したため、政府及び東京電力の発表への不信感が高まってきます。

 今までの報道をみていると、パニックを抑えようとの配慮からか当初の記事は「大本営発表」といわれても仕方がないトーンでした。普段は読み手の気分とシンクロしていた論調がずれてきたときに読み手は敏感にそれを察知します。不安心理がそれを裏付ける「デマ」を求めます。

 常に一定程度存在する「いばんりんぼう」への反感に基づく言論

 平常時でも「大企業」や「国」「マスコミ」など大きなモノ、高圧的なもにに対する反感に基づく言論は一定程度流通しています勿論、その中には社会を健全に動かすための「批評」もあるのですが、その種のWEBサイトや掲示板を分析すると、「いばりんぼう」を批判する人自身が「いばりんぼう」であったりします。普段はそれなりに選別されて受け止められているのですが、マスメディアが受け手の不安に対応していない状況では、受け手の不安にシンクロした「デマ」がWEBを通じて拡散したのだと思います。
 (残念なのは独自の取材と日本のメディアの伝えない海外メディアの上位方をバランス良く発信していたフリージャーナリストの言説もデマ発信者扱いされていることです)

 普段から健全な批判に対してオープンにやりとりしていれば危機的な状況は緩和されていたはずです。隠そうとすること、押さえつけようとすることは破壊的な誹謗中傷を拡散させる燃料になってしまいます。

 「東京電力」たたきは人身御供

 今回の震災の被災者への悲しみが現在「東京電力」たたきに誘導されています。原子力発電所事故への対応の不手際は確かに人災といわれても仕方がないでしょう・・・・地域産業や避難住民への保証は今後企業として背負わないといけない十字架であることは間違いないです。ただ、今の「気分」はやりばのない怒りが「東京電力」に誘導されています。

 原子力政策は国策ですし、その展開や運営、安全管理には所轄官庁の意向が強く反映されているはずです。おそらく今後、国有化が議論され、所轄官庁かが経営に関与することになります。国家政策としての原子力政策を推進するためにも、事故対応の不手際の責任はすべて「東京電力」におわせることで幕引きが図られる・・・というのはうがった見方でしょうか。

 東京電力が一時的に「国有化」されることはエネルギー産業にとって大きな試練を与える。考えられるシナリオとして、「配電業者」と「電力製造業者」の分離が議論されることになります。何故ならば発電施設整備に関して外資を含む民間の資金を導入するという考え方が、間違いなく浮上してくるはずです。もし、そうなれば他地域の電力事業者にとって大きな脅威となるでしょう。当然、他地域にも波及します。
 その場合、大手の電力会社、エネルギー企業が地域を越えて統合される、という動きもでてくると思います。関西電力、大阪ガスにとって決してよそ事ではないのです。
 私としては省エネルギー社会へと転換することが長期的に日本のメリットになると考えていますが、どさくさまぎれに進められると危惧している消費税増税,TPP参加とあわせて国民的に議論されるべき課題だと考えています。

                                            (2011年03月24日)
■春物商戦報道に見る日常の回復状況

 首都圏は少しだけ復調

 震災後首都圏の消費マインドはかなり落ち込んでいたようですが、この連休ではファッション消費も少し持ち直したそうです。食料品やアウトドア用品な度は別にしてブライダル用品としてのアクセサリーに動きがあるといいます。池袋ルミネで8%減というのは営業時間短縮の中では検討しているとみていいでしょう。路面店だけでなくインショップでも休業していた海外有力ブランドも連休明けの22日頃から営業を再開しています。寄付金やチャリティー企画も多く、日本市場が見限られているという見方はあてはまらないのかもしれません。

 関西、名古屋など西日本は堅調

 名古屋は震災後の2〜3日は動きが鈍かったものの、この連休は盛り返していると言います。3月の売上は10.7%減と低調でしたが、この連休では売上1.6%減、客数1.5%減といいますから落ち込みから復調しています。

 関西は客数も多く阪急、阪神は入店客、売上共に前年並みだそうです。中でも16日に全館オープンした梅田大丸は連休の入店客は前年比82%増と大きく伸びています。婦人服は4割増と言いますから滑り出しは順調です。
 九州新幹線開業にわく福岡では天神地区の商業施設で客数、売上の減少が報告されています。おそらく震災の影響と言うよりJR博多シティの開業の影響でしょう。

 中国人観光客のツアー中止が報じられています。首都圏の放射能被害への危惧が落ち着いた段階で西日本を中心としたツアー企画を組み立てる必要がありそうです。海外から見れば日本全体が被災しているように受け止められているでしょうから、正しい報道が必要です。

 いずれ復興される東北地方の観光地で散財するためにしっかりと稼ぎましょう。

 理不尽な運命に直面したときの心理的なプロセスとして、日本全体が今、「現実を受け入れる」段階から「日常を取り戻すための空元」の段階になっています。いずれ「自責の段階」をへて「悲しみを受け入れる」時期が来ます。交通機関が回復し、停電が一旦中止される時期。原発が一応一段落する5月頃、おそらく国を挙げての「鎮魂の儀式」慰霊祭が行われると思います。(49日かな)

 その頃に気が緩んだ馬鹿な政治家がまた「失言」をすることでしょう。その時期にこそ「自粛」して悲しみを共有した上での次の社会のありかたが議論されていくのだと思います。

                                                 (2011年03月23日)
■東北地震の商業施設への影響〜自粛ムードのボディブロー

 被災した商業施設

 仙台地域は大型商業施設の激戦区でした。直接被害を受けたのは海に近い地域の「三井アウトレットパーク仙台港」で津波が直撃しましたが1階のテナントは壊滅したモノの、浸水の被害は2階には及ばなかったようです。死傷者もでなかったようです。「リゾートアウトレット大洗」も1階が浸水、両店ともしばらくは機能停止状態です。
 各大型店も店舗の点検や散乱した商品の整理対応に追われていましたが、19日に仙台の「藤崎」が再開しました。「さくら野百貨店」は再開のめどがたっていないようです。
 
 首都圏、東日本では震災の直接的な影響もさることながら「計画停電」」の影響で営業時間を短縮しています。照明の照度を落とすとか電飾を自粛するなどの動きがあり、派手な販売促進活動が控えられています。鉄道の運休も響いていて販売員の確保が難しいというという背景もあったようです。

 首都圏ではフランス、イタリアのラグジュアリーブランドのスタッフが帰国してしまい、百貨店の中でも店があけられないという話も聞きますが本当でしょうか?最近では中国人観光客が支えている需要ですから、しばらくは回復しないでしょう。
 (業界紙の記者のブログ情報なのでつい引用しましたが有力ブランドは22日から営業開始しています。長期的には中国シフトの傾向はあっても、あいついで震災への支援策を表明しているブランドの即時撤退はないでしょうね)

 自粛ムードの影響

 電力の問題はない西日本でもここしばらくは「自粛ムード」が漂っていましたが、テレビなどの放映が日常のパターンにもどるにつれ自粛ムードは薄らぐでしょう。一時的に避難してくる人が増えるとか、、工場生産が停電を避けて西日本シフトするとかいった理由で一時的に「賑わう」かもしれませんが、それはあくまでも一時的なモノなので日本経済全体が回復する中での消費回復を考えていかなければいけません。今後、直接の被災地のGDP分の減少以上に消費への影響は出てきます。
 
 被災地以外でのお祭りの中止なども増えてきているようです。プロ野球の興業は強行しても地域のイベントへの自粛を求めるというメディアがあると聞きます。震災直後であればともあれ、落ち着きかけた時期に「非常時モード」が強まることが危惧されます。

 マスコミでの派手な販促や大きなイベントが無くても「一定量」の消費が維持されている事からは「広告」は需要を促進することで価値の創出に寄与しているという「通説」を否定する減少かも知れません。・・・・停電の心理的影響の強い東京発のマスコミ情報での過度の自粛ムードの煽りがなければ、「普通」の生活ができるエリアの日常生活は回復していきます。
 9.11後のアメリカ社会が一時的に愛国モード一色に染まったようなメディアのミスリードがないことを祈るばかりです。

 ウォーターフロント地区出店のリスク

 津波に関しては、地域の歴史を100年単位で遡って調べれば、被災の可能性が予測できると言います。埋め立て地の液状化の被害がお台場や浦安で報告されています。液状化の被害は阪神淡路大震災でも埋め立て地で目の当たりにしました。
 自治体で「液状化マップ」を公開しているところもあります。地盤改良がされている地域ではそれほど大きな被害がでないので過度に神経質になる必要はないでしょう。ディスニーランドにしても「駐車場」での被害は報告されていても建物の倒壊とかにはいたっていません。

 津波で地盤沈下した地域の土地の権利関係は今後どのように調整されるのでしょう。前例のない大規模被害で、地域の再開発の断念も予想されるだけに気になるポイントです。継続して情報収集していきます。

 物資不足について流通の責任論

 災害時の小売業の対応は賞賛されてもいいと思います。一方で首都圏の品不足は店頭在庫を絞り込んでいる小売業のシステムが問題だという指摘がされています。物流ルートが乱れると「ジャストインタイム」での品物の流れが阻害されます。

  店頭でのあふれるばかりの商品の陳列にならされている消費者はすかすかの棚を見るとさらに不安感をかきたてられます。モノの流れの見える化(在庫状況等の)を消費者にもわかるようにもしなければいけないのでしょうか。
 買いだめは需要を先食いしているだけで、いずれその分だけ需要の縮小となってあらわれる。不効率な生産体制を強いられるメーカーは結果的に儲からないので、この時期は「値上げ」をして不要不急の購入を抑制させるべきとのSCMの専門家の見解もあるようです。理屈としてはなるほどです。ただし、その場合でも被災地及びその周辺地区には価格を抑えた供給が出来ればいいのですが・・・・。

                           (2011年03月22日)
■情報被害を最小限に抑える危機管理〜ジャスミン革命時代の企業広報

 情報統制から情報公開へ・・悪質なデマが駆逐される効果が進行

 北アフリカ、中東でおこっているフェイスブックやツィッターでの情報交換からのデモ〜国家転覆の教訓は何を示しているのでしょうか?彼の国の権力者は情報を遮断することによって事態の沈静化を図ろうとしてことごとく失敗しました。

 先週発生した危機に対して、特に原子力発電所の事故についてその後のツィッターの反応をモニターしてい感じるのは、感情的で先導するような言説が一時的に拡散してもそれに対する反論が流れることで収束していくことです。政府発表で「安心」と発表されても根拠が示されずに発表されると不安を煽ります。マスメディアや専門家についても一旦「あちら側」の人間と見なされると、受け手の信頼度が低下します。

 かつての原子力広報の定石であった「オピニオンリーダー対策」「マスメディアの理解者の拡大」といった理屈の通じると思われる相手への集中的な抱き込みが裏目に出てしまう可能性がでてきました。

 一番怖いのは「根拠のない風評被害」です。感情的な攻撃や根拠のないうわさは「信頼できる発信源」からの丁寧な発信で鎮火させることが可能です。その際、情報を隠したり小出しにしたりすることは逆効果になります。

 今回、本来信頼されるべき政府やマスメディアがヒステリックになっていたのが印象的です。この場合、情報を遮断するのではな、注意深く公開すべきであったでしょう。遮断すると目に見えないことでのパニックが拡大します。
 風評もまた可視化されたことで、自然におのおのの分野の専門家のコメンによって暴走が拡大しなかったと思います。また、ツィッターは注意深く読めばその発信者の感情の起伏を反映しますので、その情報の信頼性についての判断材料を得る事が出来ました。
 体温や気分も伝えるツールであることは再発見できたように思います。
                                                          (2011年03月18日)

  WEB上での攻撃と対応策
   図193
■危機管理と情報の流通についてのメモ〜流言飛語の流通とツィッター害悪論

 明日で1週間、情報を伝える組織、情報を伝える人の「癖」が見えてきた

 情報が怖いのは一旦世の中にでてしまうと、誰がどのような背景を持って解釈、発信したモノかが見えなくなり、「等価」のものとして伝搬してしまうことです。本来は「政府発表」「報道機関発表」がといった素性が信頼性を担保するのですが、発表が遅いことと、見通しが二転三転することで早い段階で信頼性を失ってしまった感があります。

 ツィッターの利点は「誰」が「どんな背景を持って」語っているかということと、発信者の「感情の動き」が伝わってくるメディアなので統制されたマスコミ報道とあわせることで自己判断ができることです。
 
 ただ多くの人がリアルタイムの「情報」を求めてツィッターを求めて、かつフォロワーの多いオピニオンリーダーがRTを繰り返した結果、下記のような弊害が指摘されています。

・NHKPRのつぶやき(NHK広報室)
最近より一層分かってきたこと。1)プロフィールは読まれない。2)ツイートは予想外のタイミングで読まれる。3)ツイッターをチャットと思っている人は意外に多い。4)ツイートは届いても、文脈は届かない。5)各人のタイムラインは異なる、を忘れがち。6)ツイッターは本気で使うものではない。


 時間軸が入り乱れているので解決したはずの救援要請が時間をおいて流れたりする混乱がみられます。ただ、初期段階で情報が途絶する中で被災状況や、原子力発電所事故に関する情報収集に大層役立ちました。官邸の記者発表に海外記者やフリージャーナリストが参加できるように改善されたので「本気」で使えるツールとして有効性は高まったと考えます。

 もちろん、「流言飛語」のたぐいが大量に垂れ流されてはいるのですが、大きなポイントはそれらが「可視化されていることです」。恐ろしいのは「見えない流言飛語」が蔓延することです。「政府発表」や「新聞報道」は混乱の中では間違いもありますし、修正いもあります。最悪の場合「報道管制」がひかれて急速に信頼性が低下します。その時に流れる流言飛語は押しと止めのない速度で拡がり悲惨な結果をまねくことになります。目に見えている不安についてはきちんと説明すれば「暴走」はおさまります。ほとんどの市民は「馬鹿」ではありません。


 もうひとつ、関西にいては感じないのですが「東京在住者」テンションが異様に昂ぶっているという異変を感じます。普段は論理的なコメントをされている文化人が、自己判断で東京から一時的に脱出する人を「逃げる」ととがめるような物言いをしだすのは危険な兆候です。・・普段から極端な語り口の人なら問題ないのですが。地域全体として停電などのせいで必要以上に「非常時モード」になっているのは危険な兆候です。もちろん、根拠を示さずに「絶対安心」としか言わないのもまた不安を煽ります。
 原子力発電所に関しては極端な反対派と、極端な推進派に2分され中間的な言論が少ないので判断に迷います。

(東京在住者の言論が平常心を失っていることに関する指摘)
・内田樹先生のつぶやき
疎開について、いろいろな方からご意見をいただきました。避難にとどまらず、救援拠点での資源負荷を軽減するためという積極的な意義をなかなかご理解いただけません。でも、「買い占め」をしている人たちは、他の市民の生活を犠牲にしても果たすべき緊急な仕事に従事していると言えるのでしょうか?

・安田登氏のつぶやき(能楽師)
上司の命令に逆らえずヤな事をしてしまうとか、関東脱出を「逃げる」と言われたりとか、事実を知りたいというと「ネガティブな事言うな」といわれたりとか、政府が情報秘匿したりとか、デマが流布したりとか、芸能芸術が中止になるとか、学校で習った戦争中の話に似てる。いい勉強になる。まとめとこ。



 危機管理の初動の遅れとこの国のこれからの形

 これだけの複合災害の場合、本来は11日の時点で「非常時体制」をとり既存の法規を超えた総動員態勢をとる(私権の制限、物資の徴集、情報の統制、自衛隊の全面投入等)必要があったのかもしれません。戦争に近い状態ですから・・・おそらくしばらく時間がたった復興後、そういった議論が強くなるでしょう。中央に権限を集めて意思決定を迅速に行うことのメリットに着眼すればそちらの方向性もあるでしょう。ただ、今回のように意思決定機能が集中した中央がパニックになっている時はとんでもない2次災害がおきます。

 ただし、例えば首都圏が消失する位災害が発生した場合、指揮系統が乱れ、情報が閉鎖されることで治安が悪化します。国内に基地を多く持つ米軍を中心とした国連の管轄下で統治されることになるでしょう。国のカタチがなくなります。

 経済や広域行政機能、エネルギーが地域ごとの単位で自立する地域主権の確立と自立分散ネットワークがこれからの国のあり方の骨格になります。

 原子力発電所事故対策の避難マニュアルの周知徹底を

 原子力発電所事故に関しては住民避難や首都圏への影響についてガイドラインや避難マニュアルは作成されていたはずです。自治体や有識者には「説明」しるはずです。原子力発電所へのアレルギーをおそれて一般への広報ではあまり伝えてこなかったのかも知れません。感情的な恐怖心を煽るのをおそれていたと思います。

 現在の避難勧告や首都圏への影響も事前に公開してた基準のこのレベルだから安心、この措置をとったとかいうことが伝えられないので不信を招いているのだと思います。特に新聞記者では普段からコミュニケーションがとれていて背景を理解してくれる科学部記者や政治部記者ではなく、正義の味方意識の強い社会部の記者にも伝わるような情報伝達が必要です。
(事故をおこした責任論や原発の必要性への賛否を別にして2次災害を起こさないため提案です)

 事態が最悪の展開になり80km圏にまで影響圏が拡がったときにパニックを起こさないためにもにも、事前にケーススタディしたマニュアルを公開して「場当たり」の対応でないことを理解していただくべきです。

                                                (2011年03月17日)
■水産文化の行方

 世界三大漁場と魚食文化

 漁業には「食糧供給」という役割の他に「生態系保存」「伝統文化の継承」「海洋環境の保全」にあるといわれています。日本人の魚食離れと業業従事者の高齢化によって、水産業は変わりつつある時期でした。農業と同じように加工や、サービス業など2次産業、3次産業の手法を導入して6次産業化への取り組みが始まっていました。

 漁村の多くは沿岸部に分散しています。その多くは崖や山が迫る狭隘地にあり、大地震や津波への脆弱性は農水省でも指摘されていました。

 日本の太平洋側は世界の三大漁場といわれるほど水産資源に恵まれた立地です。今後の放射能汚染の状況によってはこの海域の水産物は、(科学的根拠は別にして)少なくともイメージ上のダメージは受けます。

 今回被災した地域、、森、岩手、宮城、千葉は水産業の従事者、特に個人事業者が多いのが特徴です。わかめ、ホタテ貝、牡蠣の養殖が盛んな地域です。船や養殖場を失った人が多いのですが、街は水産業だけでなく水産加工業などい関連産業で成り立っているので政府のバックアップもあって再建はされるでしょう。失われた集落は立地的なデメリットもあるので放棄されることになります。農業でもいわれているように集団化、大規模以下がすすめられ漁協を中心とした団体で協業化を図りスケールメリットを追求することになると思います。

 かつて集落単位で水産資源を保護していた歴史は崩れていくでしょう。いずれ訪れる変化だったのでしょうが、流通資本が入り、株式会社による運営が増えていくという展開は「農業」という先例を見ればあきらかでしょう。

 今回の震災での対応はやむを得ないことでしょうが、それによって得るものと失うモノについては思いを巡らして決断する必要があるでしょう。
 沿岸での水産資源の管理は社会的共有財産です。その土地に根付いたコミュニティが管理すべきだと思うのですが、「既得権益」として切って捨てられる可能性が否定できません。
                                               (2011年03月16日)
図ー府県別水産業の経営体数   (左の目盛り:個人  右の目盛り:団体)  漁業センサス2009
図194


■再建の方向性

 喫緊の課題から

 大きく分けて2つありました。ひとつは孤立した被災者の救出活動。これについてはまだまだ充分ではないといえ方法は見えていますし、そのための支援体制も組まれています。
 今、現在進行系で先が見えないものが福島原発の問題です。今のまま収まれば20km圏の地域の立ち入り禁止で収まるかも知れません。50km圏でもまだ大丈夫、100km圏が汚染されると新幹線、、道路の国土軸が半永久的に寸断されます。

 ここまでの甚大で広域な被害の中では、限られた資源の中で、国土の再建に置いてもプライオリティを考えないといけません。医療におけるトリアージの考え方の導入です。いくつかのエリアは再建を放棄することになるはずです。

 その場合、岩手、山形、宮城の再建の方向性が変わります。生活再建は当然実施されるとしても産業の
 また、海洋部の放射能汚染の度合いによっては東北地方の水産業の再建は後回しにせざるをえません。

 東日本の電力供給の能力低下は今年いっぱいは続くと発表されています。西日本地域に向上がある企業は生産を当面、西日本にシフトすることになります。(電力供給の不安が収まれば、東日本で再建するので恒久的なものではないでしょうが)

 おそらく「電力供給」の自由化への圧力が強まると思います。原子力発電所の新規設置はしばらくは抑制されるでしょうし、今回の「停電」を教訓に電力供給源を自前化する企業が増えるでしょう。(配電線の問題があるので一般家庭ではエコウィルなどのコジェネ導入しか手段はありませんが)特に、直接の被災地でない首都圏で停電が続けばその傾向は強まります。

 被災者の生活再建

 阪神淡路大震災の時でもそうですが、コミュニティや家族と切り離されて暮らす事はストレスを高めます。一時的に被災していない近隣府県や西日本で受け入れることが必要ですが。生活基盤の再建の進捗に合わせて新しい生活を始めることになります。

 高齢者が少なくないので、家族との生活を維持した共同住宅を提案できないかと思います。長期的なケアが必要なので、あまり以前の家の再建にこだわるとケアがいきとどかないのではと危惧します。

 地場産業の自立的な再建という課題もありますし、一律に同じ方法論はとれないので、被災状況と再建可能性の調査分析が必要になります。

 いずれにしても福島原発の状況が落ちつかないと地域単位の計画は構築できないのですが。一律のばらまきでは再建できないので、「地域の力」と広域での利害調整を行う「政治のちから」が試されることになります。

                                                         (2011年03月15日)
■これからに向けての準備

 東日本大震災がもたらす影響についてのシュミレーション

 今でもなお、救出活動が続いていますし、原子力発電所の安全性も確認されていません。首都圏は輪番制の停電が発表されていて「非常時」の思考になっているはずです。
 何か出来ることがないかと焦る気持ちは全国民が共有しています。

 今、関西にいて出来ることは、少し冷静な気持ちで将来起きうることに対するシミュレーションを行い、何かが起きたときにあわてないで冷静に対応することです。阪神淡路大震災の経験も生かせるはずです。

 @万が一の時の為の首都機能のバックアップ

 ・在日の外国大使館が人員の引き上げを始めています。アメリカ大使館は西日本にシフトしています。放射能汚染については安全 であるという専門
 家の意見を信頼するしかないのですが、最悪の事態を想定したリスク管理であると考えられます。放射の汚染はともあれ、東日本の輪番停電が長引く 様であれば、企業や行政の機能の一部を一時的に中部や関西に移転することも考えられます。今、関西でその話題を出すと「火事場泥棒」とといわれて「不謹慎」だとおいわれるでしょうが、最悪の事態の想定は必要です。

 Aインフレと増税に対する備え

 ・復興事業の資金は当面「国債」の発行で調達するでしょうが、言ってみれば形を変えて紙幣を増刷するようなものなので、金利は間違いなく上昇します。「非常時」を口実に大連立が組まれるとインフレの中での「増税」が待っています。
 ・首都圏の停電が長引けば、消費者の消費マインドはしばらく回復しません。外国人観光客もしばらくは日本への観光を控えるはずなので、復興の公共事業中心の経済となります。(東京都は震災前に耐震補強工事への補助金支給の政策を打ち出していました)

 B消費への影響(首都圏消費者の意識の変化)

  ・首都圏の停電によりオール電化住宅への流れが一旦停滞します。複数のライフラインがないとこのようなときに不便です。
  ・タワーマンションのニーズについてどう変化するか注目されます。停電が3時間である時エレベーター停止の不便さへのネガティ
   ブな反応があらわれるかもしれませんし。帰宅難民があふれた状況で、都心居住が見直されるか?停電が長期にわたれば前
   者の動きが強く表れるでしょうが・・・。

  阪神淡路大震災の時にも感じたことですが都市機能は「集中」よりも「自立分散」のネットワークが基本で、ネットワークの情報パイプを太くすることがリスク回避につながると思います。

  被災された方々のことを思うといてもたってもいられませんが、例えば、今後「漁港」を再建するときに今までの形でよいのか、新しい形で再構築してしまうのか。生活の再建の際にコミュニティの再生をどうはかるかとか考えておかなければいけないことが沢山あります。また再生のために被害を受けていない地方がしっかりと稼いで資金を調達してこなければいけません。でき

                                                 (2011年03月14日)
■三越伊勢丹が目指す「百貨店」
 
 4月1日「三越伊勢丹」発足

 福岡ではすでに昨年の10月に岩田屋と福岡三越が経営統合していますが、この4月のには首都圏で「株式会社三越伊勢丹」、新潟で「株式会社新潟三越伊勢丹」、北海道で「株式会社札幌丸井三越伊勢丹」(丸井今井と札幌三越です月賦百貨店の丸井とは無関係です)がスタートします。

 狙いは統合による間接部門の経費削減、外商一本化、交渉力・商品調達力の向上とあわせて、カード、友の会の統合による「顧客情報の共有にあります。

 昨年の両本店のカードによる買い回り状況では、伊勢丹新宿本店の会員は40万人、三越日本橋本店の会員は20万人ですが、両店を利用した人は5万人にのぼります。それぞれの店での1人あたりの「買い上げ金額」の平均は12.8万円ですがですが両店を利用した人の平均は30.7万円と高くなっています。(2010年上半期)

 利用者のライフステージは40〜50代が半数をしめています。新宿では婦人服、ヤングの婦人服、日本橋では食品、ミドルの婦人服、特選、、呉服、美術、宝飾の利用をしていて店の特性に応じた使い分けをしているようです。

 今後、顧客内のシェアを高めることで、役に立つ顧客情報を集めること、アテンダント、宅配,WEB事業の強化からさらに流通から生活全般をトータルにアテンダントする機能を強化するようです。

 顧客情報の重要性はどの百貨店でも認識されていますが、それをきちんと使いこなす事に関しては「伊勢丹」が優れています。ポイント付加による割引競争といった販促手段の域をでていない百貨店が少なくありません。

 例えば関西でのシェアが高いH2Oグループはペルソナカードを戦略的に位置づけているでしょうか?私にはわかりません。

                                                  (2011年03月11日)
■開かれた美術館と凡庸な現代アートのミスマッチ〜金沢21世紀美術館の教訓

 年間250万人(2006年)を集めたこともあるという金沢21世紀美術館

 2004年に開業し開館から1年157万人を集めたという金沢21世紀美術館ですが、2006年には250万人を集めたと聞くとびっくりします。図の全国の施設の入館者数から見ても不思議です。実は無料ゾーンが広くて、実際にお金を払って入館する人は30%にすぎません。金沢の小中学生や教職員を無料で招待し、来館した子供達には無料チケットを2枚配るなど、まるでJリーグのサッカーチームのような動員策をとっています。

 初期投資は土地と建物で120億円。経済波及効果は初年度328億円。2年目以降も年間1数十億円の「経済波及効果」があったといいます。収蔵物が現代アートに限られているのは展示物を購入するお金がなかったからです。(だから・・・あんな作品が多いのか)建築は金獅子賞を取るなど海外で高く評価されているそうです。

 話題になっている「プール」と「空」の作品など一部を除けば、耐え難く凡庸な「現代アート」が展示されています。アートをテーマにした市民公園、市民会館と考えれば納得できます。

 入場料収入は年間2億円、市の予算が年間4〜5億円。初期投資が本当に償却されている?のなら経済波及効果の分、コスパは良かったと言えるのですが。

 コスパという観点ではなく、短期で回収できなくても、将来伸びる若手作家を育成する場である・・・というのも現在美術館の役割ではないかなあと思います。そのためにはやはり先達のいい作品に生で触れる機会が必要でしょう。

 「ルノワール」だのみで、おばちゃんしか動員できないような美術館にも困ったモノですが。

                                                 (2011年03月10日)
図ーミュジアム集客ランキング(2006年)
図195
(月刊レジャー産業資料2007年8月号)

■1日25万人の集客力を示すJR博多シティ

 目標の10万人を上回る25万人の集客力を示すJR博多シティ

 3月2日の先行開業、3日の本格開業でスタートしたJR博多シティには1週間で182万人。平日でも1日25万人を超えるペースで来店客が訪れています。現在の繁華街の中心地である天神地区の売上が5,000億円であったのに対して、博多駅前地区は1,000億円でした。延べ床面積で一気に6倍の20万u、売場面積で10万uの規模ですから目標の700億円をクリアするのはそう難しく無いと思います。

 話題が先行していて、まだまだ様子見のお客様が多いようですが、博多阪急では洋菓子を中心とした食料品と九州発のファッションや化粧品が好調であるようです若い女性を対象とした「ハカタシスターズ」のコーナーで「セシルマクビー」や「ハウス・オブ・ジルスチュアート」が賑わっています。20代ぐらいの女性は「天神へ行く回数が減りそう」と語る反面50代の女性は「手頃な婦人服は多いけれど慣れた天神の方がいい」と語っているのが店の特徴を現しています。

 天神ソラリア15%減、天神コア9%減 想定よりは影響は少ないが3ヶ月は影響が続く(西鉄 竹島社長)

 博多〜天神を結ぶ路線バスの乗客は33%増加したそうです。地下鉄の博多駅は28.5%増の22万人。天神駅も8.1%増の22万人。天神の百貨店岩田屋・三越の売上は12%増。博多大丸も売上は9%増と、お客様は博多駅と天神を買い回りされていることが伺えます。

 若い層を中心としたファッションビルが減少しているのは、JR博多シティの博多阪急とアミュプラザが、どちらかといえば若い女性にターゲットを絞っているからでしょう。とはいえ博多大丸も、JR博多シティの来店者がピークの32.5万人を数えた週末には来店客、売上共に5%減であったということですから、今後厳しい生き残り競争が始まることは間違いないでしょう。(岩田屋・三越の週末の数字は未公表)

                                                      (2011年03月09日)
■中之島を元気にする10の方法B

 3.20世紀サラリーマン「トモダチ化」計画

 かつて中之島の旧「ダイビル」に足を踏み入れたときに、そのエントランスや廊下、階段の雰囲気のなんとも懐かしい、レトロな雰囲気に胸を打たれた思い出があります。このビルで働くサラリーマン・OLはきっとお昼休みには屋上で輪になってバレーボールを楽しんでいるに違いない・・・。(実際のテナントさんは先端的かつエクセレントでグローバルな企業です。これは単に空間のイメージを語っているにすぎませんのでお間違いのないように)

 中之島には関西をリードする大企業、官庁、マスコミが集積しています。よき時代のサラリーマンの気風が残る最後の楽園かも知れません。毎日のように上司・同僚とだけ飲みに行くという美しい団結心は失われた時代の美風でしょう。これらの組織群が関西をリードしているのです。(やれやれ)

 それぞれの組織の組織文化はそれなりの歴史や必然性があってその姿を保っているのですから、一概に否定されるべきものではありません。全ての企業がフェイスブックやグーグルのような企業である必要性があるとは思いません。その為に組織が衰退してもそれはそれで仕方のないことです。

 ただし、これらの組織は働き盛りの男性にとっては組織と一体感を持って仕事を進められますが、若くて野心のある人や、女性、組織をリタイアした人達にとっては面白くない組織なのです。それ故に、中之島の街全体は、図にあるように「働いてみたい街」としてのイメージが20〜30代でとても低いのです。

 中之島の街を元気にして、ひいては大阪〜関西を盛り上げていこうという立場で考えると、いろんな人が街を訪れて大阪の美しい環境を楽しんでくれて、創造的な人達が集まって新しいビジネスを立ち上げて行く街になることが望ましいのです。その為に、中之島及び周辺の大企業(関西電力、NTT、三井物産、三井住友銀行、三井倉庫、東洋紡、朝日新聞等々)官庁(日本銀行、大阪市)は従業員を街の中に意識的に解き放つ必要があります。

 それぞれの企業が抱える有能な人材を「会社の中の人間関係」だけで抱え込むのはもったいないと思いませんか?大切な「中之島」の資源である「社員」をもっと社会のために活用しましょう。(会社の命令で街のお掃除をするとか、「異業種交流の勉強会」に強制参加させるとかいうのではないですよ。企業のひもは断ち切るのです。)

 社員さん達には、仕事のスキル、趣味のスキル等の色々なスキルが眠っているはずです。また、学校や出身地の個人的なネットワークがあるはずです。個人を単位としたネットワークを大阪〜関西〜日本〜アジアへ拡げていきましょう。

 例えば
 ・各企業から横断的に実務者が集まって、大学の先生をピンポイントでチョイスしてケ−ススタディを行う。実務者主導の
  「ナカノシマ産業大学MBAコース。(大阪の町人学者の伝統を活かしましょう)」
 ・中之島の従業員が出店するフリーマーケットデー(手作り商品、得意料理の屋台、ライブコンサート、県人会の故郷紹介、等)
 ・大学の同窓会事務局の誘致とサロン設置。当該大学の社会人向け講座の誘致。
 ・バイ中之島運動・・・社員が大学の同期と会食するときに中之島の飲食店を利用する事を奨励〜地域クーポン
   (地域の飲食業をバックアップする)

 等々、特に学校のネットワークが残る若手社員を中之島界隈で泳がせる(魅力のある)施設整備が必要です。

(後、小ネタをいくつか)

4.中之島周遊マラソンコーズの整備・広報
 (ミズノのランニングステーションがありますしね)

5.中之島AR建築博覧会
 中之島の現在の景観について、AR(拡張現実)の手法を使って、現在のビルを改変したり、空き地に建築物のイメージを移しこんだりする博覧会。アイフォンなどでその場所でかざすと、現実の映像に重ね合わせて現実の映像のように移しこまれる。
〜ニンテンドー3DSでおなじみの映像。※ARがわからなければ検索してください

                                                     (2011年03月08日)

 久しぶりに新聞記事データベースを検索したのですが「中之島」で検索しても新しいニュースがあまりありません。ナカノシマ大学とか月刊島民の発行とか頑張っておられますが、継続することに加えてもっと多様な発信が必要なのかも知れません。エコシティも結構ですし、近代美術館も大変結構ですが、もっと人のつながりで拡げていく手法を強化したらいかがですか。
 特に「美術館」はハコと展示だけでなく、人と人をつなぐ道具として考えていかないと、どこかの偉そうな人に赤字を垂れ流す「金食い虫と」こきおろされますよ。

 
図ー働いてみたい街
図196
■中之島を元気にする10の方法A

 2.中之島発の情報発信〜サラリーマン・OLの昼休みの楽しみ

 中之島には関西を代表する大企業やお役所が集中しています。。現在改築中のフェスティバルホールの地下は、当初ABCホールと呼ばれていた朝日放送の公開録画に使われていたホールがありました。(1958年)
 1966年に朝日放送が移転したあとはSABホールと改称、1989年以降はリサイタルホールと名前を変えました。

 このABCホールからは数多くの公開録画番組が生まれています。「蝶々裕二の夫婦善哉」「スチャラカ社員」(今はお好み焼きを経営している?CEOである富士純子が女子社員で働いていた事で知られる海山物産大阪支店を舞台にしたビジネスドラマです)「てなんもんや三度笠」「新婚さいらっしゃい」毎日放送の「ヤングオーオー」関西テレビの「パンチDEデート」等々。
 テレビ初期の人気番組がこの場所から発信されていました。公開録画の収録は昼休みに行われることが多く、客層は近くのサラリーマン.OLの昼休みの利用が多かったようです。

 「スチャラカ社員」は中小企業を舞台にした人気コメディですが、1966年に朝日放送が移転して収録が別の場所になったとたんに客層がオフィスワーカーから老人に変わりギャグの質が変化。その為に番組が終わってしまったようです。お客さんが舞台の芸人をつくる?という好例でしょう。ライブの場合、目の前のお客様の反応で、うける方向に芸を変えていきますからね。

 オフィス街での「公開番組」は「都市住民」の、「大人の反応」を舞台に伝えるインキュベーション装置であったのです。

 例えば、吉本の劇場は「女子高校生」か「地方の観光客」「閑な高齢者」が観客の大半です。これでは新しい、質の高い「芸」が生まれるはずもありません。見巧者の客が芸人を育てる・・・とかいう話は昔からいわれています。

 舞台芸術とか大きく構えた仕掛けではなく昼休みや朝にカジュアルに楽しめるステージがあれば若手の芸人や劇団、演奏家にとっていい修行の場になると思うのですが・・・。ホワイトカラーが集まる街という特性をもっと活かすべきでしょう。
 
 そこにいる「人」もまた街の資源なのです。

                                             (2011年03月07日)
           

図ー中之島及び周辺エリアの都市イメージ (大阪市内通勤者対象の調査)
図197

図198

図199

図200

図201

(なにわ考現学2005)より
■中之島を元気にする10の方法@

 1.堂島川沿いの堤防に季節限定の路面電車を走らせる

 水辺の景観は大阪でも有数の美しさです。その景観を楽しみながら東西の移動が出来得るように、桜宮から中之島^中央卸売市場まで,春〜秋限定でミニタイプの路面電車を走らせて水辺の景観を楽しめるようにすれば東西のアクセスが改善され、しかも桜の季節から水辺の景観を楽しめて人気を呼ぶこと間違い無しです。現在でも水上バスが運行しており、体験した人はその楽しさを理解していただけると思いますが、いかんせん料金が日常の利用にはお高いので、お客様をご案内するときしか利用できません。

 期間限定ですから「LRT」でなくてもお猿の電車のようなものでもいいでしょう。できれば通勤にも使えるキャパシティは欲しいものですが・・・。

 さて、中之島西部地区の開発で待望のマストラであった京阪中之島線ですが、特急の運行が中止される事が発表されました。時期を前後して開業した「阪神なんば線」と何かにつけて比較されますが、新駅の乗車客に関してみれば両者とも差はほとんどありません。中之島地区の事業所の従業者数から見れば,想定の範囲なのだと思います。


 正直な話、地域内の移動や地域の発展を考えるとこの路線は「LRT」にして淀屋橋、または渡辺橋をターミナルとして開発した方がまちづくりには即効性があったように思います。

 将来的な西九条、さらに新桜縞または阪神との乗り入れが視野にあって投資が行われたのだと思います。もともとの戦略がそうであった今の段階で成功かどうかを議論してもはじまらないでしょう。今の形では「中之島」にプラスにはなっていないと考えていますが趣旨が違うモノなのでしょうね。

 ただし、中之島にはあまりにも何も「目的」がない。がんばってイベントをしかけたりされていますが、定期客が少ないですし、イベントは一過性のモノです。

 中之島1丁目のバラ園や東洋陶磁美術館から中之島4丁目の国立国際美術館、市立科学館さらに中之島5丁目の大阪国際会議場を回遊するのにとても不便です。さらに普通の人はその先の中央卸売市場まで足を伸ばせますか?
 中之島の魅力は東西に拡がっています。水と緑の環境を、楽しみながら移動できる回遊手段が必要です。

 桜並木を駆け抜ける季節限定のお猿の電車が中之島を元気にします。(船もいいけれど乗り降りしにくいですし・・・)
 

                                                     (2011年03月04日)  

図-1京阪中之島線駅 1日あたりの乗車客数(2008年〜2009年平均) 
図202
図-2阪神なんば線駅 1日あたり乗車客数(2009年3月)
図203
(大阪市統計書 2009年 平成21年版より)

図−3 町丁別従業者数 2006年事業所統計調査
図204
■本日オープン「博多阪急は、暮らしの学校」だそうです

 1日の乗降客34万人。九州新幹線の開業で広域の拠点性が高まるJR博多駅

 九州はバス路線が発達した街です。広域の移動も自家用車か高速バスの利用が多いという特徴があります。JR博多駅周辺は新幹線などの広域の移動拠点であり、西鉄のバスターミナルも隣接していますが、オフィスの集積が中心で、九州最大の商業集積を誇る「天神地区」に比べて、商業機能は大きく差を付けられていました。

 天神地区には様々なレベルの商業が集積しており、繁華街としても楽しい街です。ただ、最近の都市の傾向ではオフィス立地、ターミナル立地での商業が元気です。休日に買い物すると言うより、通勤帰りに買い物をすませるという行動様式が定着してきているからです。ひとつには「買い物」が楽しみでは無くなってきている事と、雑多な人が集まる「繁華街」の魅力が相対的に低下してきていることにあると考えています。(2つの原因の根にあるものはひとつですが)

 JR九州の駅ビル「アミュプラザ博多」は女性を主な対象に229の専門店を集めます。有力セレクトショップや九州初出店のショップを集め、核店舗に「東急ハンズ」が出店します。大阪駅では梅田大丸の中のサブテナントとして出店しますが、やはり専門店ビルの中のテナントのほうがしっくりしますね。

 「楽しいから来た、親切だから買った。博多阪急は、暮らしの学校」

 3日に開業する博多阪急は42,000uの売場面積で370億円の売上げ目標を立てています。ストアコンセプトは見出しの通りで、ターゲットは「若々しい感性を持つ女性とその家族」ということで、いつまでも若々しいハナコ50と、旬のおしゃれを楽しむOL25がメインだそうです。・・・一番お金を使ってくれそうな層ですね。

 コスメとOL向けのショップの充実、食のフロアの充実が目立ちます。食は阪急と阪神の強みがミックスされていていますターミナル立地のデパ地下というのは今までの福岡市内にはあまりない「市場」です。(福岡三越ぐらいですか)

 また島屋との共同開発商品が前面にアピールされています。(島屋も九州進出を悲願としていましたしね)

 福岡市内の、九州の「ブルーオーシャン」を市場にしているので、大きな成功を望まなければ「失敗」はしないと思います。外商の対象となる富裕層は「博多大丸」「岩田屋」からスイッチしないでshじょうが、九州全域にきめ細かい対応をして、梅田本店からの「発信」をしていけば「都会の百貨店」として「地元百貨店」との使い分けをしていただけるでしょう。新幹線開業はその手助けになります。

 5年後の大阪の百貨店のポジショニング

 昨日の続きです。

 「島屋」は王道の百貨店としての進路が明確になりました。その為の「資源」(歴史、伝統)も持っていますし、他社にはまねができないポジションを確立できます。問題は「なんば周辺」の劣化でした。千日前、道頓堀、心斎橋筋はまっとうな大人は立ち入れない世界になっています。但し、南海電鉄の開発(シティ、パークス)や木津市場のリニューアル、「ゼップ大阪」の移転など明るい材料はあります。堀江=近鉄難波との回遊導線が整備されれば良くなるでしょう。伊勢丹新宿でも回りの地区の治安は決してよくないですしね。

 「近鉄百貨店」は名称から「百貨店」をとってもいいという都市型SC路線です。(東京の東武百貨店のように)後発の百貨店なので「百貨店」へのこだわりはないですし、改装で大増床しても「百貨店ブランド」では売場が埋められないこともあります。・・・・「梅田大丸」もテナント導入の都市型SC路線です。梅田に関しては5年後にはテナント専門店の比重がもっと高まり「百貨店部門」が縮小されているでしょう。

 大丸としては「京都」「神戸」の店の一番店の力を大阪でも維持する必要があります。百貨店部門は「梅田」より「心斎橋店」の強化に注力していく判断をすることになると思います。難波の「大阪島屋」との回遊創出が生き残りの鍵です。
 
 JR大阪三越伊勢丹は伊勢丹カラーがもっと強くなります。狭い売場面積での戦力の分散では競争に勝てません。おそらく、競争力のある伊勢丹カラーが強まります。

 阪急梅田本店は地域一番店として大きな変革への舵がとりにくいポジションにあります。本当は未来の百貨店像を示す大胆な改革をしなければいけないのですが、「変えられない」のでしょうね。少し残念です。河原町を閉めて、おそらく神戸阪急も賃貸契約が切れた時点でしめるでしょうから、京都、神戸での顔が無くなります。

 博多阪急で強化されている「コトコトステージ」(サービス機能)が強化される位しか先の展望はみえていないのですが・・・・。阪急沿線の中産階級のおばちゃん達の支持がある限り大負けはしないのが強みでしょうか。

 阪神は唯一無二の「大衆百貨店」として独自のポジションを維持するでしょう。

 以上の記述は当社の経験と公開情報に基づく分析です。各百貨店それぞれに友人・知人はいますが全くこのコメントに関与していません。というか、何よりも百貨店内部の人間(経営者)は「百貨店の危機」について何も理解していませんので彼らにコメントを求めても無意味ですよ。(大学の先生や株屋のアナリストも同様)

                                         (2011年03月03日)
■ここにしかない大阪のラグジュアリー3月3日「大阪島屋全館グランドオープン」

 より島屋らしく、より百貨店らしく

 ある意味で、オーセンティックな「百貨店」として変に時代対応仕様としないことで個性が際だつ店になってきました。ゆったりとした空間でお買い物を楽しむ、百貨店の基本に忠実なお店になりました。

 島屋は日本橋の店のイメージと大阪本店の実態にはずいぶんギャップがありました。レストラン街も貧弱で、一部のブランドショップ以外の売場はいい商品と安物が混在する「地方百貨店」のような印象が強かったのは事実です。

 今回の一連の増床で、売場面積は56,000uから78,000uへと拡張されました。レストランは3倍、紳士服・紳士雑貨は70%増、時計宝飾品も70%増となりました。婦人ファッションの強化は当然として、呉服売り場も10%増加しているところが島屋らしいといえるかもしれません。

 「歴史性と伝統が醸し出す、たたずまいや風格を感じさせる建物」「百貨店としての圧倒的な品揃え」という考え方は他に真似の出来ないコンセプトです。
 岡本太郎のタイル画(1952年に制作され、日本橋島屋の地下通路に壁面に設置されていたもの)を7階レストランロビーに修復展示することや、その原画を新設される島屋史料館ウィンドーで展示する事や美術品の充実などは島屋にしかできないでしょう。

 商圏としても市内の帝塚山から上町台地の高級住宅ゾーン、大阪南部〜和歌山や奈良県、そして阪神なんば線でつながる阪神間までの富裕層をつかめる立地にあります。従来、「「なんば」では大人が食事をする場所も無かったですし、買い回りをする上質な店も少なかったので、そのポテンシャルがいかせなかったのですが、「なんばパークス」「丸井」の整備や「なんばシティ」の改装により環境は整備されてきています。

 


                                              (2011年03月02日)
■上向きかけた個人消費と原油高の影響

 商業販売統計では駆け込み需要の反動減から持ち直しの動き

 昨日公表された2011年1月の商業販売統計速報(経済産業省)では小売り販売額は前年比0.1%増の11兆1,340億円となったそうです。但し、この数字は生鮮食品の大幅な価格上昇など物価高騰の影響が強く物価変動の影響を除くと-0.7%(ニッセイ基礎研究所試算値)と減少しています。
 エコカー補助金の終了ややエコポイントの半減などの影響での自動車や家電の落ち込み幅は縮小しています。雇用所得環境の改善で消費者の消費マインドは改善傾向にあり緩やかに回復していくとニッセイ基礎研究所は分析しています。

 消費マインドは改善傾向が続く(内閣府)〜家計支出の構造変化

 内閣府の分析では「消費動向調査」あらえわれている消費者マインドは長期的に改善傾向にあると分析しています。2007年の秋のリーマンショック後大幅何落ち込んでいたのですが2009年後半から回復基調に転じているトレンドが続いていると見ています。
 
 家計の節約志向は緩和傾向にあるのですが、百貨店は依然厳しい状況が続いています。(その間、専門店は堅調に推移しています)品目別に家計支出の特徴を見ると「衣料品」は高級品にシフトしつつ、購入数量は減少しています。百貨店にとって今後に向けて悪い傾向ではないです。
 政策的な誘導で、耐久消費財や自動車に向けられた家計支出が、今後他の財やサービスに向かう事が予測されますので、購入数量の増加が期待されます。

 原油100ドルの影響と相続税の影響

 北アフリカ・中東の政変の影響及び新興国、産油国の国内需要の増加に伴って、原油価格は高止まりになります。当面は灯油やガソリン代、電気、ガス代の値上がりに現れますが、今後食料品や日用品などに広範囲に拡がる事が見込まれます。回復基調にある消費マインドを抑制する懸念があります。

 一方で「増税」が消費に与える影響も無視できません。「消費税」については景気が回復している時期でないと実際の導入は難しいでしょうが、相続税の課税強化は着々と進みます。

 住宅の施設着工戸数が2年ぶりに増加し、都市部では在庫調整が進んだマンション市況に回復の兆しが見えています。消費税が上がる前に相続対策での不動産購入、不動産移転が住宅市況を後押しする事も考えられます。北大阪の状況では、立地が悪く仕様をおとした物件は売れ残りが目立ちますが駅から徒歩圏で環境の良い千里ニュータウン内の物件はある程度の価格でも完売しています。(家具の販売もここ最近は好調といいます)

                                              (2011年03月01日)

 





 2月
■アメリカSC業界の3つの動向

 SC開発の最新動向

 先月発売の「販売革新」2月号でアメリカのショッピングセンターの最新動向として次の3つの動きが紹介されています。

 ひとつは「デモーリング」。モールを否定するという意味で、旧来のモール屋根を撤去し、オープン構造のプロムナードを創造するという動き。同じタイプの型にはまった退屈なモール空間から「街」の」の歴史性やにぎわいを感じさせるオープンな空間をつくるというもの。

 どこにいっても同じような空間構造、同じようなテナント構成の巨大ショッピングモールは日本でもおなじみです。地方に住んでいれば、初めて見るそれは都会的で楽しい異次元空間ですが、まあ、すぐに飽きるのです。巨大化のよる差別化から街の歴史性に注目する動きが日本でもあらわれてくれば楽しいのですが。ロサンゼルスの「サンタモニカプレース」が2010年にオープンモールになったそうです。

 二つ目は「アーキテクチャーブランディング」。どこでも同じ建物でなく、ダイナミックなデザインを施された質の高い建物で印象づけ、お客様を呼び込もうというモノということです。ボストン郊外の「ネイティックコレクション」が典型的な事例。雑誌の写真ではニーマンマーカスの曲がりくねったユニークな建物が紹介されています。日本でもバブルの時代に都心部の小さなSCを「有名建築家」が手がけた事例がありましたね。もう影も形もありませんけれど。

 3つめが「マステージ現象」。マス((大衆向け)とプレステージ(高級店)がテナントミックスされた商業空間。大型SC内に「ニーマンマーカス」「ノードストローム」などの高級店とディスカウントストア「ターゲット」が同居している事例が紹介されています。銀座なども老舗の並ぶ町並みにファストファッションの大型店が建ち並んでいますから、世界的にこのようなミックスが進んでいるのかも知れません。社会階層がはっきり分かれていて階層によって利用する店舗が違っていた欧米でもその境界が崩れてきているようです。
 詳しくは雑誌記事をご覧下さい。

 アメリカのラグジュアリー市場は回復傾向

 アメリカの大手小売業の1月決算は「ノードストローム」が前期比12.7%増収。「サックス」もリストラが進み5.9%増収で大幅黒字に転換しているそうですここのところ中東情勢が不安定で原油も高騰する状況ですが、それはそれなりに、逆に儲ける投資家もいるのでしょうね。

 アメリカの小売業は一頃のように目が離せない面白さはなくなりましたが、多様性があり、参考になることも少なくありません。ウォルマートなどのようにアメリカで良くても日本進出が必ずしもうまくいっていない業態も少なくありません。かつてのように横文字を縦に起こして日本に紹介することで何かを創造したような錯覚を起こさせるビジネスモデルは成立しませんが。何が違うかを考えることは良い刺激になります。

                                                         (2011年02月28日)
■顔の見えるネットワークが地方を活性化させる〜安売り競争からの脱却

 「口bフ食卓」(仮称)企画がいくつかの百貨店マンの賛同を激しく得る理由・・・
 
 NPO法人ニッポン・アクティブライフ・クラブ(NALC)は全国に137の拠点と3万人の会員数を持つアクティブシニアのネットワークです。定年退職後の生きがい作りというスタートからボランティアや生涯学習、子育て支援などの活動を行っています。全国的なネットワークを持つNPO団体というのは珍しいですし、中央官僚の天下りの受け皿になるような団体でもありません。

 この団体のユニークな取り組みに「時間預託制度」というものがあります。これはサービスの必要な会員にサービス出来る特技を提供し、このサービスを提供した活動時間を点数としてNALCに点数預託(貯蓄)しておき、いずれ自分にサービスが必要になったときや、配偶者・両親・子供(但し、介助・介護なしには通常の生活が出来ない子に限る)のために預託した点数(貯蓄)を引き出し、サービスを受けるなど。活用する制度です。全国どこでも交換できますし、ポイントをためておき将来活用することも可能です。

 グローバル化の進行で貨幣経済の信頼感が揺らいでいる(いくらこまごま節約しても為替の変動で利益が大きく上下するのではまじめに働く意欲が失われます)中でこれからますます注目される考え方だと思います。預託した時間はどこに担保されているのか?という野暮なことを考える人はこの仕組みに参加しない方がいいです。

 NALCさんにはエンディングノート制作のお手伝いから、色々な形でお世話になっていますが、かつて(以前関わっていた会社)「口福の食卓」(仮称)という企画を考えたことがあります。各地域に眠っている「美味しいモノ」・・大量生産、大量消費を前提とした流通ルートにのらないその地域ならではの美味をお互いに紹介しあって小さな流通ネットワークをつくりましょう・・という趣旨です。宅急便の発達は「物流」の問題を解決しています。

 会員相互がお互いに自信を持って推薦するー顔が見える物同士が推薦するということを質の担保にして、そのおすそわけを流通させましょうというものです。その企画書をつくっていろんな企業をまわりましたが、なかなかビジネスとしての金額がまとまるようにみえない事もあり、立ち消えにしてしまいました。(その節はすいませんでした)

 百貨店やGMSは地方の美味しいモノ発掘には熱心です。地方の産品を紹介する商談会は盛況だと言います。政府の農工商連携事業などへの後押しもあって地方でも全国展開できる商品の開発に熱心な生産者が増えています。・・・・そういった大きな流れの中でも、この企画はやはりかなり特殊な考え方でありすぐに儲かるとは思えないのでしょう。それでも有力百貨店の中で必ず一人は激しく共感していただく人がいました。今までのビジネスのあり方に限界を感じている内部の人がどこにでもいるのだと思います。(とはいえ、この経済環境下では経営陣に入っている人でも、この計画への投資にまではいたりませんでしたが)

 百貨店に並ぶ品物で「お金で買えるモノ」による差別化はもう限界

 かつては雑誌で見るだけであった「世界の三大珍味」や「三つ星レストランの料理」などはある程度のお金を出せばどこでも手に入ります。(そのお金が無いことは別問題)
 特に「食」は風土環境と強いつながりがあります。

 「食生活は住んでいる地域の風土に大きく依存するモノである。それを無視して「抜け目ない戦略」(経済合理性の追求 筆者注)を単独に追求するなど非現実的であるからである。むしろ解(最適な食事の)は、地域で伝統的に培われた食様式と漁業や農業や牧畜業での習慣的な生産制度との兼ね合いから導き出される、といっていいだろう」(数学的思考の技術 小島寛之=人間行動と環境についての鋭い考察がされた名著です)

 東京築地の卸市場の移転の議論のひとつの争点は卸業者を集約して(効率化される?)大規模GMSや外食産業にとって使い易い卸市場にしようという経済合理性に基づい考え方です。小さな卸がなくなっても「老舗のお寿司屋さんは大手GMSから仕入れればいい」と副知事がおっしゃたとかおっしゃらなかったとか・・・・。これは「非東京」の事業者にとってはビジネスチャンスです。

 現在、地方でとれる一番美味しいモノは「築地」に集まると言います。一番お金を使う市場が近く、一番商品が集積するので良い買い手が集まってくるからです。そしてその中で「信頼できる目利き」が品物を選ぶのですから質が担保されるのは自明です。大手企業が中心になると性格が変わります。

 地域から地域への流通と質を担保する信頼される「顔」が重要に・・・
    
 小売りの話と卸の話が混在して話が見えにくくなってすいません。ずっと考えていたことを一度に語ろうとすることが間違いかも知れません。「質」に対して保証する信頼感をつくるのは「顔が見えている人」です。人と人のつながりが今までにない「モノの流れ」をつくるということが始まっています。
(地方百貨店の生き残りの鍵もそこにあります)

 地域発の単品通販、テレビショッピングでのタレントによる、百貨店催事での「バイヤー」の「キャラクター化」、お取り寄せ、生産者の産直市場の活性化、全ての動きが中央を介さない人と人を通したモノの流れへとの変化を指し示しています。

 今後、ツィッターやフェイスブックなどSNSが幅広い世代に普及すると「東京への一極集中」を食い止める力になるように思います。関西は決して沈みゆく東京の小型版を目指してはいけません。(と結論も唐突ですが、当サイトのすべての論考は関西の復活のための企みの為のものです)

                                            (2011年02月25日)
■米どころが全て日本酒派というわけでもない?

 日本酒vs焼酎 購入量の多い都市は

 焼酎といえば南の地方を連想します。九州沖縄では佐賀県を除いて焼酎への志向性が強いですし、札幌や森も焼酎が日本酒を上回っています。お米もお酒も地産地消の割合が高いので、お米の美味しい地方は日本酒派かと思うのですが、何故か秋田市、盛岡市は焼酎の購入が日本酒を上回っています。(秋田はお酒の購入量の多い地域なのですがね)

 日本酒の購入量が多いの都市として新潟が高いのはわかりますが、松江が全国トップです。まだまだ日本のことを知らなければと思いました。

※下記グラフは指数の比較 全国平均を100とした数値です。日本酒は全国平均8,293リットル、焼酎は10,997リットルなので購入量そのものではなく相対的な指向性としてお読み下さい。

図ー日本酒と焼酎の購入量比較(全国平均を100とした指数)
図205

(2009年家計調査 )
■2011年のキーワードは「再編成」〜せっぱつまると協力関係が生まれる

 イオン、パルコ株を12%取得 大都市部でのSC運営で協業模索

 大都市マーケットには弱いイオングループが大都市部でのSCウン運営のノウハウを求めてパルコとの協業を考えているようです。イオンはフォーラスなどの業態を持っていますし、、大分市の店はかなりいいのですが姫路の店はかなり劣化してきているなど、安定した運営ノウハウを持っていません。今回パルコの株を12%取得することで、イオンが運営するフォーラス(5店)とビブレ(15店)をパルコの運営する既存店舗と一体的に運営する事と、海外事業展開でパルコのノウハウを活用し海外事業の早期展開をはかるという狙いがあります。

 イオンでは大阪の食品スーパーの「コーヨー」を傘下に入れて一部の食品の売場の質が大きく改善された実績があります。

 ノウハウといっても日本の企業の場合ほとんどが「人的」な信頼関係で決まります。いきなり株の取得から入るやり方がパルコ側の反発を呼ぶ可能性もありますが、イオンとしてのラブコールなのでしょうね。

 いきなりいきなり資本提携といったドライな手法が必ずしも異なった企業文化の融合にはつながりません。街場の景況は少し良くなってきているようです。但し、先行き増税が待ちかまえていますし、原油高や食料品価格の高騰もあり、このまま順調に回復するかどうかは不透明です。

 JR大阪三越伊勢丹の概要発表〜大丸大阪梅田店との絶妙な棲み分け

 昨日、5月4日に開業するJR大阪三越伊勢丹の概要が発表されました。先日の大丸大阪梅田店の概要と比べると、絶妙な棲み分けがされています。大丸で力が入っていない「紳士服」は2フロアで展開されています。大丸の「うふふガールズ」が高校生から専門学校生の若い女の子をターゲットとしているのと対照的に「イセタンガール」は同じ年代でも「大学生」を対象にしています。

 打ち合わせしてもこんなにうまく棲み分けできないぐらい、ガチンコ勝負のバッティングが避けられています。相互に資本関係もありませんし、今後もないでしょう。ただ、お互いに自社の最大利益を考えると棲み分けが最適と判断したのだと思います。情報収集にも熱心だったと思います。

 資本関係がなくても、せっぱ詰まって生き残る為には「協力関係」が形成されるのですね。

 JR大阪三越伊勢丹は出店に備えて、お客様の声市場調査を何度も繰り返したそうです。三越、伊勢丹のそれぞれの強みもを活かす売場をきちんと整備しながら、売上げ目標も固く低めに抑えています。例えていえば重心が低くあたり負けしない店舗といえます。比較して申し訳ありませんが、今までに東京から進出してきた流通企業は始めから「大阪」「関西」を見下して望んでいた企業がほとんどです。

 ただし、失敗した西武そごうに限らず、東京で有名な小売店の関西進出では、先進的な品質管理やMD力に絶対的な自信を持つような「重心の高い」企業が多く、それらの企業はことごとく失敗してきたという事です。(GMSの大手でもそうでした)

 さて、相手の手の内があきらかになったところでの阪急百貨店の動向が注目されます。圧倒的な一番店であり、大阪の百貨店のひとつの標準であったのですが、未来に向けてどのような百貨店像を示してくれるのでしょうか。楽しみですね。

 (JR大阪三越伊勢丹のWEBサイト、格好いいですね・・・少し重いけれど。今までの大阪の百貨店にはなかったセンスです)

                                                                  (2011年02月23日)
 jフロントリテイリングが「プラザ」(「旧ソニープラザ」の株式を取得して関連会社化するようです。
雑貨、化粧品、お菓子など楽しい商品が揃っていて憧れの店でした。関連会社化で売場編集力の向上、若年顧客層の拡大など百貨店事業の競争力強化やグループ全体の成長力に活かせると判断した・・・ということです。

■1983年の梅田百貨店戦争

 1983年4月大丸梅田店の出店で京阪神の百貨店需要は140億円拡大?

 JR(当時国鉄)大阪駅の駅ビルに大丸梅田店が出店した当時、新聞紙面では「梅田百貨店戦争」という見出しが踊っていました。百貨店業界では「冬の時代」と呼ばれ、DCブランドブームの中、若者向けの専門店に勢いのあった時代です。

 大丸梅田店は「未来の百貨店を先取りした店舗」といわれ、中心ターゲットを「趣味の良さと若い感覚をも行った35〜45歳の女性に定めていました。丁度団塊世代がニューサーティとかニューファミリーとか呼ばれていた時代ですから、「ボリュームゾーン」として目を付けたのです。平日7万人、休日13〜14万人の来店客を集めていましたが、売上は目標の650億円には手が届かず(今でも550億弱ですが)438億円にとどまりました。

 いまから考えるとスタイリッシュな店舗を支持していたのはその下の世代30歳前の独身者であったように思います。売上げ不振に軌道修正された店舗は35歳以上の主婦を対象とした量販商品を導入しましたが、逆に売上を落としてしまいました。

(今回の増床で、総花的に幅を拡げて”保険”をかけまくっているのはこの時の痛い経験によるものでしょう。有りモノを少しだけ形を変えて導入するのではなくもっとチャレンジをしなけれ百貨店は変われない・・・と思うのですが)

 一方、受けに回った阪急百貨店は82年に阪急イングを開店させスポーツとAVを強化しました。また婦人ファッションフロアを改装しキャリアとニューサーティの商品を強化し、かろうじて前期比トントンを維持していました。

 阪神は当初、大丸の集客力の恩恵をうけて婦人衣料品の売上げを伸ばしていましたが、その後の伸びは前年並みということでした。結局梅田の店舗は売上げを落としてはいないということでしょうか。当時の日経新聞では京阪神で140億円のあらたな需要が生まれたという説を紹介しています。(日経新聞1984年4月25日地方経済面)  

 その後96年に三越出店の話が出たときに「第2次百貨店戦争」とかも話題になりました。その後も梅田への商業の集積は進んでいます。ただ、91年の大阪商工会議所の調査をもとに「集客力は、ターミナルとしては難波・日本橋地区に抜かれ、周辺都市からもの吸引力も衰えている」(91年12月6日 日本経済新聞)という指摘もされています。「各社が同じような施設を造っても活性化にはつながらない」との大手百貨店の首脳の声も伝えています。

 さて、2011年の「百貨店戦争」はどのような結末を迎えるのでしょうか。半世紀前以上に「百貨店冬の時代」として業態の将来性に危機感を持たれていながらバブル期に性懲りもなく体質改善ができなかった「百貨店」の未来を示す革新的な店舗展開が見られるのでしょうか?

  個人的には1983年に一瞬だけ見せられた「梅田大丸」の「未来を先取りした店舗」が最も印象に残る店舗です。伊勢丹新宿店や西武池袋店が一番勢いがあったときでさえ店舗の躯体はは当時でさえ老朽化し、あちこちに綻びが見えました。・・・その意味で新しく創り上げるJR大阪三越伊勢丹には大いに期待しています。(JR京都伊勢丹は、商業としての建築が駄目です)



                                                           (2011年02月22日)
表ー1983年前後の梅田の商業動向
図206

 ANALOG 佐野作成
■梅田春の陣、先鋒大丸大阪・梅田店の「コト・サービス」

 「コンテンポラリーなマルチコミュニケ−ションストア」として顧客層の拡大に挑む大丸大阪・梅田店

 Jフロントのサイトでプレスリリースが発表されています。新聞でも報道されていますから、詳しくはそちらをご覧下さい。

 全体を見た感想としては「デイリーーユース」「利便性」と「コンテンポラリー」の要素が分離して融合していないのではないかと思えます。オープン後にきちんと店を見て分析しないといけないのですが、「てもみん」とか「つるたんとん」(うどん)とかいった入居店舗の「ストアブランド」は確かに百貨店としては画期的ではありますが、正直にいってSCの空きテナンスペーストに、はいるような店が新店から入っている・・・・という印象がいなめません。「ダイソー」がどこかに入っていても違和感がないかもしれません。(100円ショップが入居している百貨店の先例もありますし)

 もちろん、ちゃんと自分の目で見ないと評価は出来ませんが、新しい店への期待を高めるメッセージにはなっていない事は確かです。

 春は梅田に沢山の新しい店が生まれます。「期待感」がなければ、まず店に来店してもらえません。確かに上記の店は機能として必要でしょうが、目的性の高い施設ではないので、今後も前面に出す必要はないでしょう。

 注目したいの「コト・サービス・おもてなし」

 「ファッションナビ」客の印象やバランスを診断し、ファッションの専門資格を持つスタッフが似合ったスタイリングやカラーをアドバイスし、店内のブランドからお奨めのブランドを紹介するそうです。今までのサービスをバージョンアップし「有料サービス」としてリニューアルするものです。価格帯は1,000円から・・・百貨店のスタッフが提供することで「リーズナブルな価格」「気軽に」「質の高いサービスを実現」するのだそうです。

  「印象診断」PCを使った診断後アドバイス(20分 1,000円)
  「パーソナルカラー診断」 カラーアナリストの資格を持つスタッフが診断。アドバイス(50分 3,000円)
  「バランス診断」着ている服を診断しアドバイス(50分 3,000円)
  「ショッピングナビ」売場を一緒に回って洋服や小物選びのお手伝い(50分 2,000円)
 百貨店が「定価」で販売できた理由の一つは質の高いおしゃれのアドバイスサービスが「無料」だったからです。さて、うまく有料サービスとして事業化できるか?注目したいところです。

 「レディスメンバーラウンジ」7階に設けられた女性限定のメンバーズラウンジ。年間50万円以上買い上げ客限定で「メイクアップラウンジ」「無料ドリンクサービス」「IーPAD」の無料化貸し出しなど・・・良くあるお客様サロンですね。その他「「フットナビ」&インソール販売、「お稽古ルーム」などお買い物を楽しむためのサービスが提供されています。

 上層階にはビュッフェレストランなども整備され、ポケモンセンターなどもあわせて、今まで百貨店んが取り逃がしていた層を取り込もうという意欲が伺えます。

                                                        (2011年02月21日)
■ひっそりと姿を消す地方百貨店〜長崎大丸閉店

 人口44万人都市の百貨店〜長崎大丸(博多大丸長崎店)の閉店

 Jフロントリテイリングは7月31日をもって「博多大丸長崎店」を閉鎖することを発表しました。「博多大丸長崎店」は地元で創業150年を迎える老舗百貨店「岡政」が前身で1988年に大丸の支援を受けて「長崎大丸」として再出発しました。2003年に「博多大丸」に吸収合併され、8,428uの売場で49億円を売り上げています。98年がピークで85億円を売り上げていましたから営業黒字は出していても経常損益では赤字が続いていたと言います。

 閉鎖後は建物を取り壊し、小売業のノウハウを生かした再利用を考えるということです。

 長崎市内には浜屋(21,375u 160億円)、佐世保玉屋長崎店など3つの百貨店が競合しており、都市規模のわりに競争が激しい商圏です。郊外SCや駅ビルとの競合もあり苦しかったのだろうと思います。
 
 博多大丸の開業が九州の百貨店に地殻変動を引き起こしている?

 1月には宮崎県都城市の都城大丸(Jフロントリテイリングの大丸とは無関係です) (14,615u 46億円)が民事再生を申請しました。宮崎県の百貨店は「宮崎山形屋」だけになりました。
 今回の長崎大丸の閉鎖も本体の博多大丸の体質強化策の一環です。(そこそこ黒字で続いている店を閉めるのですからね)
 熊本県の「くまもと阪神」は2月23日に「県民百貨店」と名前を変えます。元々は岩田屋グループの店舗で「岩田屋伊勢丹」と言う店でした。2003年に岩田屋が撤退した時に地元資本で「県民百貨店」を設立、阪神百貨店の支援を受けて「くまもと阪神」として再生しました。

 阪神阪急の統合により阪神色が薄れ、島屋ハイランドグループの傘下に入ることになったようです。(もともと当時の阪神百貨店の社長が主導した案件でしたから、博多阪急との連携という方向には進まなかったようです)

 新幹線の全面開業で九州の一体感が強まる中で、九州の百貨店業界も変わっていくのでしょうね。熊本鶴屋、大分のトキハ、鹿児島の山形屋、小倉井筒屋など地場の百貨店には頑張って欲しいものです。

                                                       (2011年02月18日)
■兼業コンビニで買い物難民対策
 
 ファミリーマート 高齢化社会に対応した宅配サービスを開始

 「買い物難民」対策については大手スーパーやコンビニンスストアが解消のための対策に乗り出しています。ファミリーマートは過疎地や無店舗地帯の高齢者を対象とした小型店舗の開発に散り組んでいます。損益分岐点を下げるためにコストダウンをはかり、加盟者も「農家や自営業を営みながら家族で運営できる人」を見込んでいます。
 営業時間や休日も加盟者の都合にあわせるなどハードルを下げている事が特徴です。おそらく担い手は相対的に若い高齢者・・・たばこやのおばあちゃんみたいな人を想定しているのでしょうか。

 コンビニやファーストフードなどシステムを形成することで低価格で均質なサービスを提供する業態は、そこで働く人にもシステムの一部としてのシスレムに会わせた働き方を求めます。、人間は機械ではありません。特に人を雇って運営する場合、システムに会わせたシフトを組むために「誰か」にしわ寄せがいきます。FCのオーナーであったり、責任感の強い人のいいバイトであったりします。

 サービスの提供を受ける側からすると、きちんとシステムが機能して、いつでも同じ質のものが提供される事を望みますが、そのために裏で誰かにしわ寄せをおしつけるなんて気持ち悪いですよね。

  このニュースは「買い物難民」対策という側面からも興味深いのですが、システムが人に合わせるという、今までの進化とは違う動きに注目したいと思います。

 高齢社会が進むと60代、70代で働く人が増えてきます。シニアを活用するにはシニアの都合やわがままに合わせる柔軟なシステムが求められます。グローバル経済の効率優先とは違った、ローカルな仕組みを創ることで若い世代に負担をかけないで、やりくりしていけるのでないでしょうか。

                                                 (2011年02月17日)
■「もの消費」から「サービス消費」の時代のビジネスモデル

 モノからサービスへシフトしている日本の家計消費(by国民生活白書)

 この20年間の変化は興味深いモノがあります。通信費や、旅行、外食費、保健医療費のウェートが高まり、その分、被服費や家具家事用品の支出のウェートが下がっています。百貨店などの「モノ」を売る商売は人口が減っているうえに支出が減って大変だなあと言う結論を導き出すのは簡単なのですが、「食料費」のウェートも下がっています。それにも関わらず、「デパ地下」のスイーツや惣菜、「高級食品スーパー」は活況を呈しているのですから、「市場の縮小」は百貨店等の売上げ不振の理由にはならないと思います。

 国民生活白書では」海外との比較で、欧米ではサービス支出のウェートが高いと論じていますが、スウーエデンとの品目別の比較をみると、「旅行、趣味」の比率は成る程と思うものの、住宅とか交通のインフラのコストが高い事が影響していると思えるのは気のせいでしょうか?

 データ出所は平成20年の国民生活白書です。公表されたころから「モノかえらコト」やでと言い出した百貨店のトップが少なくないような気がします。サービス消費を店舗で販売しても手数料収入にしかなりませんが、モノを売るためにサービス、コトを仕込んでいくことが必要であることには全く異論はありません。

 百貨店が定価で販売していた理由

 企業として(コンサルなどの)「サービス」に支出する体質の無い、百貨店(や量販店)にはサービスをビジネスにする「想像力」はありません。せいぜい「ABCクッキングスタジオ」に場所貸しをするのが関の山でしょう。

 最近でこそポイントで割引をするのが当たり前になっていますが、少し前までは「定価」で販売していました。何故定価で販売できるか?そのことを考えると、百貨店のサービスと物販の融合や新しい販売手法の確立、あふれるばかりの豊富な人材の有効な活用方法がすべて解き明かされることでしょう。

                                                                   (2011年02月16日)
                                      
図−家計支出の変化
図207
(家計調査年報より )
図ーサービス支出ともの支出の比較
図208

図ー海外との家計支出の比較
図209
(スウェーデンは2006年 日本は2007年)
■春節商戦は堅調〜〜中国人観光客は団体客から個人客へ

 中国国内の春節商戦は前年比19%増

 2月2日から8日の春節(旧正月)は旧正月を祝う習慣がある中国や韓国、東アジアの国々での消費が一番盛り上がる時期です。中国国内の今年の小売店、飲食店の売上げは5兆1,000億円と前年比19%の伸びでした。今年は高価格帯の商品「貴金属・宝飾品」「家電、デジタル機器」の売れ行きが好調だったようです。

 訪日観光客は団体客から個人客へ

 2010年には前年比4割増の141万人の中国人が日本を訪れました。中国人の買い物決済の三分の一を占める「銀聯カード」の売上が480億円といいますから、訪日中国人の消費は年間1,440億円の市場なのでしょうか?
 今年の特徴は団体客の比率が下がり個人客が増加したことです。その結果、,1人あたりの購買単価があがり、ゴールデンルートだけでなく、地方を訪れる観光客が増えてきたことです。団体客を受け入れてきたホテルの売上が減少し,りんくうプレミアムアウトレットなどでも中国人の団体客は前年比」20%減だったようです。

 ・三越銀座店  客数7%増 客単価39%増で売上は48%の増加 時計宝飾品、化粧品、有名ブランドの衣料・雑貨が売れ筋
 ・東急本店   客数38%増 客単価3.6倍 婦人服、服飾雑貨、バッグなど
 ・大丸心斎橋店 売上5.15増 時計宝飾品に加えて1万円台の婦人服雑貨が売れ筋 一方カルチェの時計など100万円以上のブランド品も好調
 ・ラオックス(秋葉原)   売上2割アップ 10万円以上のデジタル一眼レフカメラなど

 今後の不安要因

 中国の景気を不安視する見方として、次の3つの要因があげられています。

  自動車販売の抑制。年間1,806万代と3割増加で世界最大の市場となりましたが,購入支援、買い換え支援の施策が終わったのでその揺り戻しや、都市部での購入抑制策(交通渋滞の解消目的)で増加率が前年比10〜15%に減速する見通しです。(それでも伸びているじゃない)
 政府が不動産バブルの抑制策をとり、金利を上げている事やインフレへの懸念がささやかれています。

  一旦生まれた格差は,その格差を固定,拡大する方向で社会が動きます。国内の消費意欲は減退しても、富を得た富裕層は資産を海外に分散するでしょう。中間層が多いともわれる団体の訪日客から、個人で旅行する「富裕層」へ収益源をシフトしておく必要がありそうです。

                                                       (2011年02月15日)
■経営数値は「目標」ではなく以上を知らせる「体温」や「血圧」のようなもの

 目標管理という名前の数値管理〜客観性の衣をかぶった経営のサボタージュ

 従業員の評価、および毎年のモチベーションをあげるために「目標管理」システムを導入したことがありました。売上、利益目標と同時に、個々人の目標を数値化してその達成度合いで給料やボーナスを査定するというものです。

 客観的な基準で公平な「評価」をするとともに、企業としての「利益」をあげていくための仕組みとして、当時流行っていた手法です。数値化するといかにも客観的な「評価」をしているみたいで、システムの考え方は何となく社員も経営者もより「まし」な方法だと思っていました。たかが十数人の会社でしたが、そのために1年の内3ヶ月間忙殺され、やりとりをしていた社員と私お互いに徒労感だけが残りました。
 時間をかければかけるほど、「数値」の意味や精度のやりとりに焦点がしぼられて、本来の目的である経営の方向性と社員の方向性のすりあわせとやる気の喚起がどこかに消え失せてしまったからです。

 先日、お取引を戴いている企業の社長さんから社員の方の「目標管理」の数値が以上に低下している・・・・本来はもっと高いパフォーマンスを持っている人の数値が異常に低くなっている表を見せていただきました。数値目標を達成するように叱咤激励するのではなく、そのスタッフが何らかの理由でモチベーションが下がっていることを察知され、前向きのモチベーションを高めるために新たな役割を与えて対応されているのをみてとても感心しました。
 
なるほど、あらためて認識しましたが、「経営数値」は身体の異常を知らせる「体温」や「血圧」のようなもので、「体温」だけを下げる、「血圧」だけを下げることを目的とした対応ではなく、「体全体」の治癒力を高めることが大事なのです。
                                                                                                                                                   (2011年02月14日)

■上海ディズニーランドは中国観光の救世主になるか?

 黒字なのは東京ディズニーランドだけ?

 香港ディズニーランドは毎日満員であっても、毎年赤字が続いているそうです。総工費の90%を香港特別行政区政府が出資したにも関わらず、57%の株しか保有できず、チケット収入の割当はあるものの関連商品の販売は全てディズニーのものとなっているようです。
 よく、東京ディズニーランドは巨大な商業施設だともたとえられます。チケット販売で客単価約4,000円に対し、物販販売で3,000円、飲食販売で2,000円といった構成比です。

  東京ディズニーランドがパリや香港と違うのは、
 世界のディズニーリゾートでは唯一ライセンス契約による経営・運営であり、経営・運営会社にディズニーの資本が全く入っていない。なおディズニー関連の著作権や商標権ビジネスはウォルト・ディズニー・ジャパンが担当しており、オリエンタルランドは東京ディズニーリゾートの経営・運営のみ担当している。(ウィキペディア)という点にあります。

 テーマパークへの追加投資や周辺整備、キャストのもてなしが「東京ディズニーリゾート」の価値を高める事につながっているようです。(初期のアイデァの独創性はなくても品質管理を行って改良していくというのが日本人に適したビジネススタイルなのでしょうか)

 2014年に開業が予定されている上海ディズニーランドはより幅広く集客しないと成立しない市場です。中国政府はポスト万博の目玉として期待しているのでしょうが、香港の失敗が活かされるのでしょうか。

 中国人はしたたかな商売人というイメージがあったのですが、アバウトさが裏目に出ているのかも知れません。

 ものづくりにしてもサービス業、小売業にしてもちまちまとしたきめの細かさ、システム化によるコストダウンなどは「競争力」、強みなのだなあと思います。小売業でもホールセールクラブのような大ざっぱな安売り店より、日本式のコンビニエンスストアや百貨店がなんだかんだいっても生き残っていますしね。

                                                     (2011年02月10日)
■大型店の改装で街の客層が変化している?吉祥寺の若返り

 住みたい街ナンバー1 吉祥寺

 吉祥寺は東京都武蔵野市のJR吉祥寺駅を中心としたエリアで商業集積と、それをとりまく高級住宅地、文化施設、公園の集積で」住みたい街ランキングのトップになることが多い街です。(田舎者なので昔「きっしょうじ」と読んで嗤われましたが、「きちじょうじ」と読むそうです。珍しい読み方ですね)乗降客数は1日平均29万人。

 昨年3月に伊勢丹吉祥寺店が閉店し、その跡地に「武蔵野開発公社」が開発し「三菱商事都市開発」が運営委託を受けた「コピス吉祥寺」という複合商業施設が10月にオープンしました。駅ビル「吉祥寺ロンロン」は「アトレ吉祥寺」と名称変更してリニューアルし、9月下旬にグランドオープンしました。

 10月以降街全体の客数が伸びて、吉祥寺駅の乗降客数もハッキリと増加していると報道されています。新宿方面や逆方向の立川方面に流出していた消費者が戻り、まちあるきの観光客が増えたそうです。(東京都の調査でも多摩地区での立川の利用率が高いのですが吉祥寺からの距離で見ると立川〜伊勢丹、島屋、駅ビルがある〜の集積に「流出」しているとは思えないのですが・・・立川商圏からの「流入」が増えた・・・・という理屈でしたら理解できます。

 アトレの食品は圧倒的強いものの目標には届いていないとのこと、(ザーガーデン自由が丘、ディーン&ディルーカ、ナチュラルハウス等)ファッションは若返りの結果、ターゲット層の20代後半から30代の女性が増えて、ミセスが減少しているようです。売上げ目標は達成見込み。

 コピスはセレクトショップとキッズゾーンが好調ですが、雑貨、食品は予想の売上に届かないようです。(食品は三浦屋、雑貨は?)某大家には、「雑居ビル」と酷評されていました。地権者店舗が多いことと、フロア内にばらけた市民センター的な役割の施設が一体感のある商業ビルとしての構成になっていないので一等地に再生されたファッションビルという期待には応えていないという評価です。駅から2分の好立地です。伊勢丹が撤退したのも面積的な制約もあるのでしょうが、再開ビル特有の悪癖に辟易したのかも知れません。ジュンク堂,ICI石井スポーツは好調です。

 吉祥寺パルコは都市型ファッション中心の都心店舗グループから、地域密着性を重視ずる関東店舗グループに移行。デイリー重視の路線でスイーツなどの食物販に力をいれるそうです。

 伊勢丹顧客であるアダルト・シニア層は東急百貨店に吸収されています。売上は前期比12%の伸びです。丸井も上層階にユザワヤ、啓文堂を上層フロアに導入、40〜70代の顧客も一気に増え、前年実績を超え続けているようです。

 駅前は自動車の乗り入れが制限されて歩きやすい街で隠れ家的な路面店、専門店が多く分布しています。ファッション分野では30代女性を中心とする女性向けにシフトし、ミセスや男性は買い場が減って新宿に流れている・・・と報じられています。

 今まで街に来ていなかった若い女性やファミリーの来街者が増えているのでしょうね。新宿も巨大な集積がありながら意外に買い場はないのです。伊勢丹は燦然と輝く頂点ですが、そこのファッションの次が「京王」となるとその間の大人の買い物の場所があまりない。多分店はあるのでしょうが集積されていない・・・。新宿への流出はもとから多いでしょうが、吉祥寺をはじき出された人達が新宿へ逃げ出しているとも思えません。

                                                         (2011年02月09日)
 
表ー主要商業施設売上
09年売上
旧 吉祥寺ロンロン 216億円
アトレ吉祥寺(目標) (276億円)
東急百貨店吉祥寺店 275億円
吉祥寺パルコ 107億円
丸井吉祥寺店  64億円
(伊勢丹吉祥寺店)08年 (174億円)

(繊研新聞)
■今年の流通業界の動きについて-2

 ショッピングセンター

 今後は、年間50〜60のSCが誕生し、20近くが閉鎖するというトレンドになりそうです。2010年は百貨店からSCに転換した事例が目立っています。郊外の大規模モールの出店余地が少なくなってきています、中小商圏をねらったSCがトレンドになっているようです。

 今年も西武有楽町店あとのルミネや河原町阪急あとのマルイなど専門店の集積が百貨店にとって代わる傾向は続きます。梅田大丸もポケモンセンター、東急ハンズを店舗に取り入れ、、うふふガールズなどを展開している戦略は「ショッピングセンター化」といっていいと思います。

 テナント側の出店先の選別が厳しくなっており、「基本調査を十分せずに、とりあえずオープンするSCは淘汰されやすくなる」そうです。地方中核都市の駅前という比較的良い立地のデベロッパーもテナント誘致に不安を持っています。大都市の駅立地といえども安泰ではないのですが、やはりきちんと立地と市場をおさえて、テナントとコミュニケーションを深めるべきでしょう。

 駅前再開発でできた地権者が区分所有している再開発型のショッピングセンターについては劣化が激しいので、再開発の再開発を進める事業スキームが必要です。事業者の高齢化というのは中心市街地と同じく街の停滞をまねきます。

 コンビニエンスストア

 出店の主戦場が国内から中国をはじめとする海外に競争の主戦場が移っています。・・・・日本の企業はGMSとかコンビニエンスストアといった工場のようなシステムを売ることには強みがありますね。

 国内は中高年や主婦層を狙って、総菜や生鮮食品などでSMの顧客の取り込みを狙うそうです。買い物難民の議論でも中山間部のコンビニに定期的鮮魚の巡回販売が組み合わさるとか、都市部では配達に力を入れるとか、インフラとしての役割が期待されています。
 病院などでも「食堂」が廃止されていてコンビニが入店し弁当などを販売しているケースも見られます。

 ドラッグストア

 改正薬事法で、ディスカウントストアやSMで薬の販売が可能になりました。境界線が薄まる中で、徹底的な安売りによるディスカウントストア化といった方向や調剤薬局化など専門性の向上、そして在宅介護への動きもあります。中国市場は許認可問題がネックで参入は困難なので話題にはなっていません。施設介護から在宅介護へというのが役所の方針のようですから、在宅介護、在宅医療の市場はこれから伸びていくでしょう。


                                                           (2011年02月08日)
■今年の流通業界の展望について

 消費低迷下で成長に向け正念場・・・だそうです  商業施設新聞1月11日号から

 流通業界のビジネス戦略専門紙「商業施設新聞」が1月11日号で主要7業界の2011年度の展望をまとめています。当社としての見解を交えながら簡単にご紹介いたします。

 百貨店

 百貨店は合従連合が進み「三越伊勢丹HD」「jフロントリテイリング」「そごう・西武」「島屋」の4大グループに落ち着いたという事で、売上高は低空飛行にあるものの以前低空飛行と評しています。今年は大阪梅田の「大阪11年戦争」に注目。百貨店は大都市圏の旗艦店へ投資が集中し、地方の中小百貨店の閉館、SCへの衣替えが進むとしています。(岩田屋旧館→パルコ、鹿児島三越→マルヤガーデンズ等)若年層を取り込む為に高級志向からファストファッションなどの低価格の専門店を導入する動きが強まっています。(弊社要約)

 百貨店は全国チェーンであることのスケールメリットはありません。地域内のシェアが大事です。

 ただし、グループ化することで自主開発商品で差別化できるとか、それぞれの地域の特産品を相互に流通させられるメリットがあります。現在残っている地方の百貨店では鉄道系の百貨店はエリアのドミナントを抑えていることや、グループにSMやSC運営会社を抱えているので闘える力は残っています。〜さらに時代に合わせた体質転換もその気になればできるコンパクトさがあります。 (とはいっても、変われない会社が多いのですが) 不安はむしろ、巨大グループにあるように思います。(「店舗ブランドへの過信」「立地や店舗の顧客層に会わない専門店の導入」「百貨店業態からの転換の遅れ」「親しまれていた企業文化の放棄〜例えばサブカル展の中止等」)

 厳しいのは、地方の百貨店専業店でしょう。SC化は避けられないでしょうが、店舗の遺伝子を残したものであればいいのですが。大手に関しても解体的な再構築をしてでも残さないといけないものがると考えるのですが・・・・。

 GMS

 中国市場になだれをうって展開し、成長の原動力とする。年間の出店数が国内と逆転するのもそう遠くないということです。国内ではPB商品の認知が拡がり利益を担保。今後は専門店強化やディスカウント店の展開、衣料系のカジュアル商品の強化に取り組む。ネットスーパーなどで高齢者ニーズを取り込む。

 WEBニュースで「ネットスーパー」は「コスト高になるのが大きな課題という記事が・・・・それもそうなのですが、一番必要としている買い物弱者はWEBを使いこなせないのです。スーパーの商品配達だけでなく「介護見守り」「成年後見人」としての資産管理」までカバーできなければ事業として回らないと思います。エリアを絞って配送を徹底的に効率化すれば成立する地域もあることはありますが。

 大量のアイテムが揃う大規模店を支えるシステムはとても進化しています。中国に進出して成功するのは仕入れから物流、在庫管理のシステムを輸出しているようなものです。ただバックグラウンドのシステムに比べて店頭で物を売る現場のノウハウ、スキルが整っていない事が、飽和した日本市場で売上が伸びない原因でしょう・・・いいかえると「優秀な官僚」はそろっていても「商売人」が揃っていないという事でしょう。GMSが主体となった大型モールの成功は「現場」はテナントの専門店が「売っている」からといえます。
 地球環境への貢献や、買い物弱者対策など良いことも一杯やっておられるのに・・・・・。


 SCやコンビニについては明日以降・・・

                                                     (2011年02月07日)
■「大梅田」に対する様々な動き

 3月16日サウスゲートビルオープン 5月4日大阪駅新北ビルオープン

 新しい大阪駅がその姿を一般にも公開されたようです。大阪の玄関口なので賑わいのある建物になればいいですね。
 ・阪急百貨店       1440億円
 ・阪神百貨店        922億円
 ・梅田大丸          541億円
 ・JR大阪三越伊勢丹   550億円(目標)
 ・「ルクア」          250億円(目標)   すごい集積になりますね。


 周辺地区ではそのインパクトに備えて様々な動きが始まっています。

 郊外地区では「ららぽーと甲子園」が開業依頼の大規模改装をおこない「H&M」「ZARA」「GAP」など世界的なSPAが揃います。イオンは既存のイオンモール伊丹テラスから4kmしか離れていない伊丹市内に7.2万uの「イオン伊丹昆陽SC」を3月22日にグランドオープンします。
 平日など足元商圏の徹底を謳っており、グループで地域を押さえ込む戦略のようです。

 

 阿倍野地区では4月26日には「あべのマーケットパーク・キューズモールに「シブヤ109アベノ」がオープンします。ティーンズ、大学生にターゲットをしぼったもので地元の若者需要を取り込むようです。阿倍野天王寺は高校生が多い街なのでターゲットにはあっています。

 難波では3月3日に全館改装オープンする島屋の動向も注目ですが「なんばパークス」が都心型でありながら上質な環境整備され車客も集めています。(15%)これは梅田の施設では実現できていない強みです。
 (梅北と名付けられた梅田北ヤードの商業施設がもし成功するとしたら、なんばパークスや博多のキャナルシティのようなパターンなのですが〜別にジョンジャーディーでなくていいんですが〜土地代が高すぎるので難しいでしょう)

 注目は南港のイベントスペース「ZEEP OSAKA」が2012年春になんばの旧大阪球場の南に移転することでしょう。スタンディングで2、000席のキャパを2,500席まで拡大し椅子席も充実させるそうです。なんばには湊町にリバープレースもあり若者のイベントがもっとい活発になっていく仕掛けが出来そうです 仕掛けを行った南海電鉄の戦略的な街づくりが光ります。梅田にない街の魅力をミナミ全体に拡げていけそうです。

                                                         (2011年2月4日)
■日本の食はどうなっていくのか〜輸入食品への抵抗感

 輸入食品の拡大と米

 一時は市場にあふれていた中国産の野菜は「毒入り餃子」騒動を潮目に影を潜めています。漬け物などの加工食品も国材使用と明記した物が増えています。日本政策投資銀行が「消費動向調査」を昨日発表しました。「輸入食品」の安全性、美味しさ、見た目については評価が低く、低価格の印象も定着しています。「米」「野菜」「きのこ」「卵」などは3割高くても国産品を選ぶという人が国産品へのこだわりはないという人を上回ります。

 食料品を購入するときに国産品にこだわる人は少しづつ減少しているとはいえまだまだ多数派です。(73.4%)ただし外食するときは国産品にこだわらないという人が6割と逆転します。食生活では「中食」「外食」が増えつつあります。安ければ材料には目をつぶる・・・ということでしょうか?

 協同購入クーポンなどでおせち問題のトラブルが起きていますが、普通に考えてあの価格で、あの写真のグレードの食材が揃うと考える方がおかしいでしょう。・・・100円のハンバーガーや250円の牛丼が何故可能なのか?こわくて食べられません。(大量生産の工業製品であればコストダウンの理由が納得できますが、外食では食材の原価を下げて安い人件費でつくる以外にコストダウンの方法はありません)

 現在話題になっているTPPへの参加により、アメリカの食品が関税ゼロになって輸入され、我が国の食料自給率は大幅に低下するという意見があります。現在、関税が高いのは「米」だけでその他の食料品の関税は低い水準にあります。もし自由化されるとブランド米は生き残りますが、ホームセンターで売られているような安売りの屑米や、外食産業の米が輸入米に置き換わることになります。

 米に関しては何らかの保護策が強化されることで農家を懐柔するのだと思いますが、問題の本質は其処にあるのではないでしょう。


 本当に怖いのは表向きの食料自給率低下ではない

 TPPによってアメリカが期待しているのは、金融、医療保険、弁護士、医師などのサービス産業の市場開放だといわれています。自由競争の機会が増えてチャンスが増えると見るか、アメリカの価値観をおしつけてくると見るかは価値観次第で評価が分かれるでしょう。

 それよりも、おそろしいのは狂牛病の牛肉の輸入再開と、遺伝子組み換え食品の規制撤廃でしょう。遺伝子組み換え食品の種子や、農薬については開発した会社のものを永遠に使い続ける必要があります。多知恵、野菜を国内で作っていても、その種子やその作物への農薬は永遠にアメリカの企業から購入し続けなければなりません。(遺伝子組み換え食品が安全かどうかは別の問題です)コンピュータのOSがマイクロソフトかマックであるように、根っこのところで稼ぐビジネスです。・・・・・日本語を使っている限りパソコンよりワードプロセッサの方がはるかに便利で、ストレスが少ないのに何故1社残らずワードプロセッサから撤退したのでしょうね。

 中身を検討せずに「平成の開国」というキャッチフレーズだけで物事が決まるのはどうかと思います。最終生産物は国内で造られていても「種子」が国内で再生産されない「自給率」議論は一種のトリックでしょう。(確かに例えば国産牛肉の飼料は国産ではないので自給できていませんがすが、どこから調達するかは生産者が選べます)

 輸入品への抵抗は主に「中国産」への不信感です。中国人でも加工食品は日本産を選ぶという事もあるそうです。ただ、主食の米に関しては強く「国産」「産地」への強い信頼感がうかがえます。自分で買うときは外国産は買わないでしょうが、外食の時は・・・何が使われているかはわかりません。

                                                      (2011年02月03日)

図−輸入食品と国産品価格差許容度
図210
(日本政策金融公庫 2011年2月2日発表「消費動向調査」
■走る人を応援する分譲マンション

東急不動産が江東区東雲にランニング生活を応援するマンションを開発

 立地は銀座、新橋に10分圏というウォーターフロント地区で公園も整備されています。先日もご紹介しましたが賃貸マンションでテーマ性の高い物件はあらわれていますが、分譲マンションでここまでハッキリとしたテーマを打ち出すようになってきたんですね。

 ランニングは手軽な健康管理として若い世代で続けている人が増えています。公園などの環境も都心の方が整備されています。(大きい公園にはランナーズステーションも整備されているところが増えていますしね)マンション市況は回復基調にあるとはいえ、まだまだ先行きの不安が大きいのですが、これからもこのようなと入り組みで目的性の高いお客さんを獲得することが必要になります。

 昔、スポーツクラブや専用温泉を併設したマンションが流行りましたが、維持管理費が高いので、入居後は施設維持費負担がお荷物になっていました。ランニングサポートなら維持費はかからないので面白い取り組みかもしれません。

東急不動産が、東京・東雲で分譲中のマンション「ブランズ東雲」(総戸数144戸)では、「ランニング」をテーマにアシックスとタイアップ企画を行っている。

 同物件では、中庭にランニング前のストレッチコーナー「ランナーズデッキ」を設け、ランニングを通じた入居者の体力作りと、コミュニケーション促進を提案する予定だ。そのテーマに合わせた販促活動として、モデルルーム来場者には、物件用に作成したオリジナルハンドタオルなどをプレゼント。契約者には、アシックスのランニング商品交換券を提供する。また、ランニングについての情報や健康に関する独自のホームページも作成する
(住宅新報1月31日)

http://www.branz-shinonome.com/run/index.html へのリンク

 標準世帯は減少しても標準世帯に暮らす人はまだまだ多数派

 マンションの商品開発に関連して、家族4人の標準世帯が多数派ではないという論調も多いのですが、大阪ガスエネルギー文化研究所の豊田氏のコラムで面白い指摘がありました。確かに標準世帯は減っているが、標準世帯で生活している人はその世帯に属している人は多数派であるという事実です。データをきちんと読んで自分の頭で考えることが大事ですね。

 世帯人員が平均2.55人と発表されている所為か。スーパーの魚の切り身がやたら中途半端で、3つとか2つが多くて、4人家族だとトレイばかりが増えて困ります。世帯単位が基準となる住宅はもっといろんなバリエーションが増えてもいいと思うのですが、魚の切り身はばら売りをして欲しいなあと思います。


http://www.osakagas.co.jp/company/efforts/cel/column/management/1191761_1647.html へのリンク

                                                                       (2011年02月02日)
■ライブ公演が人を惹きつける〜大阪のホールの個性

 おばあちゃんに支持される「新歌舞伎座(旧)」「大阪松竹座」「梅田コマ劇場」
  
 60代以上の女性の利用率が高いのはある程度予想通りです。意外なのは「ザシンフォニーホール」の利用です。大阪では大衆的な娯楽しか受けないと思いこんでいるひとは少なくないと思います。・・・ホールは演目の企画次第で客層は変わりますが・・・・。

 存続が決まった「大阪厚生年金会館大ホール」ですが結構幅広い層に利用されています。改築中のフェスティバルホールですが40〜50代中心ですが30代の利用率もトップです。

 一番市場の大きい2000席クラスのホールがとても少ないのでかなり機会損失しているはずです。堺市民会館が駅前に移転して2000席の大ホールをつくるという話が立ち消えになったのは、公営施設が地元市民という利用層しか想定できない(税金を投入する以上はね)限界を現しています。

 いわゆる「大阪都構想」では大阪市と一体となって分区するという話が出ていましたが、そうなった方が前に進んでいたのかも知れません。(「大阪都構想」は思いつきの寄せ集めという評判もありますが、大阪府と大阪市の二重行政の解消といった大きな目標など行政間の壁をたたき壊すことには共感する市民も多いことでしょう)

                                                                     (2011年02月01日)
図ー過去1年間に利用したホール(女性年代別)
図211
(なにわ考現学2005)
 1月
■「長浜楽市」と「黒壁」〜人を集める仕組みの落とし穴

 西友の立地創造型SC長浜楽市

 1988年。滋賀県長浜市の駅前にあった「西友」が郊外に移転。「長浜楽市」と名付けられたショッピングセンターが建設されました。開店当時、体験型シューティングゲーム(器具を付けてレーザー銃の撃ち合いをするアトラクション)やハーブティーが提供される蘭の温室など当時としては珍しい集客装置を備えた「立地創造型」の複合施設でした。

 随分不便な場所にあるのでバスを乗り継いで取材に訪れた思い出があります。駐車場1,000台は当時としては大規模な駐車場でした。地盤沈下を始めた長浜市の中心市街地の店舗が数多く移転したのを覚えています。
 
 その後「アルプラザ」や「ジャスコ」の大型ショッピングセンターが開店し、大きく売上を下げました。現在はユニクロや100円ショップが入店する普通の郊外型ショッピングセンターになっています。

 人工的に人を集める仕掛けが「西友」の低迷と共に続けられなくなったのが「衰退」の原因だと考えています。出来たときはとても楽しかったのですけれどね。

 長浜黒壁の持続的な成功

 同じ時期、低迷する中心市街地で市街の古建築の保存と再生のための博物館都市構想を掲げた第三セクター(長浜市と地元民間企業8社が出資)「黒壁」が1988年に設立されました。

  「黒壁」設立の主目的である旧第百三十銀行の保存と再生は同建築が1989年に黒壁一號館「黒壁ガラス館」としてオープンすることにより達成された。 さらに「黒壁」はこの一號館の周囲の古建築を、次々と美術館、ガラスショップ、工房、ギャラリー、カフェ、レストランへと再生してその数10館、「黒壁まちづくり」に参画する館を合わせると計30の古建築の再生に携わった・・・(ウィキペディア)

 最初の計画の時に調べると歩行者はほとんどいなかったと初代の代表の笹原氏は語っていました。ガラスの工房は長浜とは全く縁もゆかりもない物ですが、本物を持ってくることで「おばちゃん層」に圧倒的に支持されました。外部から誘致した集客装置とともに地元資源としての「建築物」、「盆梅が有名なお寺」など地域の資源がかみあったのが、年間300万人の観光客を集める成功の秘訣です。(新快速が停車するようになった交通の利便性拡大も大きな要素です)

 スタート時には地元の商店主は全く参画しないで、郊外の大手資本の開発である「長浜楽市」に移転していったそうです。


 都市開発、都市経営にマーケティングが不在なので、首長は派手なアドバルーンが好きで「集客装置」の誘致を公約に掲げます。過去の失敗を総括しないから同じ過ちを繰り返すのだと思います。

                                              (2011年01月31日)
■「シェア」が重要になる社会でビジネスはどう変わるか?

 リサイクル古着店「ドンドンタウン・オン・ウェンズディ」埼玉新所沢パルコに3月5日オープン

 関西では馴染みがないのですが、中古ファッション衣料の買取販売、毎週水曜日には値段を下げていく得意な販売手法で、関東・東北地域で路面店を出店している「ドンドンタウン・オン・ウェンズディ」が埼玉県の新所沢パルコに出店します。これからファッション感度をあげて駅周辺の路面店に出店していくそうです。

http://www.dondondown.com/ へのリンク

ブックオフの洋服版のような感じでしょうか?

 このような業態の発展は「ファッションビジネス」を破壊するのでしょうか?わたしはそうは思いません。ユニクロやH&Mの服は1年着ればもうゴミのようになってしまいます。リサイクル、リユースしようと思えば、しっかりとしたつくりの質の高い衣料品である必要があります。
 
 有名ブランド品の中古が流通しているのはそういった質の高さが評価されているからです。この出店を報じた繊研新聞では別の紙面で「パタゴニア」の「CTキャンペーン」(コモンレッズ・イニシアテブ)の開始を報じています。包括的に商品の循環・再利用を実現するキャンペーンです。顧客との相互の協力で。リサイクル、リデュース、リペア、リユースの仕組みを構築するというものです。


 100年家具の考え方

 ニトリ、イケアなどの安くて使い捨ての家具が氾濫する業界で、家具の履歴管理を行い、修理しながら使い継いでいく仕組みを構築しようという試みも始まっています。

http://www.harmonichouse.com/policy/index.html へのリンク

 シェアが注目されています。ルームシェア、カーシェア等々。商品の「リユース」は時間軸の中でのシェアといえるでしょう。

                                                  (2011年01月28日)
■「有名である」事が成果を担保してくれるわけではない

 外部の専門家を登用するとき「有名」な人を選ぶ理由

 親会社が固い企業の子会社である某リゾートホテルの支配人として招聘されたのは、海外では有名チェーンであるホテルのアジア圏の「マネージャーというN氏。関係者は、その素晴らしい経歴と、国内のホテルにないノウハウに大いに期待した物でした。

 N氏の要求する領収書をとらない「枠を定めない交際費」についても「何か変だな」とは思うものの、自信を持って断言するN氏の口調に何となく「日本にないノウハウ」の幻影を見てしまい承諾してしまいました。

 就任後のN氏はホテルのレストランで自分のお客さんと会食し酔っぱらう姿は見受けられましたが、その人脈で海外からの誘客を果たすわけでもなく、有名リゾーとホテルの接客ノウハウをスタッフにたたき込むわけでもなく、いつの間にか解雇されていました。
 
 某地方都市の3セクリゾートホテルの計画では、人員配置や営業手法などで新しい考え方でホテル運営をする事業者の強力を得て、何とか採算に乗せられる事業計画が構築されました。・・・計画の最後になって地元の老舗ホテル出身のマネージャーが承知され、老舗ホテル流の運営手法、営業スタイルに切り替わって事業は大赤字になりました。

 意思決定者は、最後の最後に「老舗ホテル」の知名度で失敗のリスクを回避したのだと思います。有名ホテルの経験者がやっても駄目なのだから「担当者」が責任をとらされることはない・・・。よくある話です。

 D通に発注しておけば上司に責められな

 企画コンペなどが沢山あった時代、企画が良くても大手広告代理店に負けることがとくありました。発注先のご担当者が「もしD通以外に発注して失敗したら、責任を追及されるが、D通に出して失敗しても、D通がやってもだめだから仕方がないと責められない」と語っていました・・・本当かどうかわかりません。でも、いかにもありそうな話として伝えられています。

http://www.sendenkaigi.com/mastercourse/comic01.html へのリンク

(H堂が流した都市伝説だったのでしょうか・・・・)


 サラリーマン経験者として「リスク」を負いたくない気持ちは理解できますし、有名であって能力のある人も少なくないので、社内調整に時間をとられるよりその選択肢を選ぶという判断もありかもしれません。ただし、そのような意思決定しかできない組織は腐っているので、早めに見切りを付けた方がいいかもしれません。
                                                      (2011年01月27日)
■「京都水族館」計画」の今

 専門家の提言を受けて計画変更

 京都水族館は来年の春開業を目指して着工されています。水族館が建てられる梅小路という立地はJR京都駅が最寄りの駅ですが、微妙に離れています。鉄道博物館が整備されるようなので今後注目されるエリアではあります。

 オリックス不動産が国内最大級の内陸型の水族館を市から土地の提供を受けて建設する計画が発表されてから、「何故京都に水族館なのか?」「目玉であるイルカショーは野生生物虐待として国際的に非難される」「市有地の提供の是非」などについて市民から多くの疑問が出されていました。
 オリックス不動産は新江ノ島水族館での運営実績もありますし、そこでは「グリーンピース」(環境保護団体)とも折り合いをつけてイルカショーで集客していましたから、土地使用料が入り、「集客施設」が整備できる行政としては「悪い話」ではなかったのでしょう。

 昨年7月に着工した跡、専門家の提言を受けて計画変更が昨年末に発表されました。

 「完全」なものではないかもしれませんが、事業者として精一杯の対応をしていると思います。

 京都地域の環境を表現するための「地元淡水業の展示の拡大、イルカは野生のイルカを捕獲(映画で糾弾されていましたね)するのではなく他の水族館から譲り受ける。タッチプールの廃止。イルカの水路拡大・・・。この変更に忠実に対応していると「教育施設」としての色合いは強まります。ただし、興業施設としては制約を多く抱える事になり。事業としては厳しいと思います。

 この計画についてはお隣の大阪府の府民にも知られていません。できることなら欧米の観光客には知られないようになればいいなあと思います。些細なことでもクレームを受けると「京都」の国際的なイメージが損なわれてしまいますから・・・・・・。

オリックス不動産の発表資料
http://www.orix.co.jp/ore/press_101227.pdf へのリンク

 

                                                   (2011年01月26日)
■ニューヨークの摩天楼と「世界ふれあい街あるき」

 映像に見える「ニューヨーク」の「落日」?

 映像はいくらでも印象操作できますし、自分自身が老化して情報の受信力が衰えている所為かもしれません・・・。ただ、昨日たまたま放送されたニューヨークの映像で目にする高層ビル群(クライスラービル、エンパイヤーステートビルAT&T〜ソニ−プラザ)、はほうれい線やのどのシワが目立つかつての美女のような「老い」を感じさせる映像でした。・・・あくまでも主観になってしまうのですが。

 WTC跡のビルは2014年に完成するそうですからその時には印象が違って見えるのでしょうが、新しいエキサイティングな建築物があまり見あたらない所為かもしれません。中東や中国で奇天烈な高層ビル(中身はないけれど)が沢山建っている所為かもしれません。これらの街に街の中の魅力はあまり伝えられていません。(中国では貧富の差が激しくて上海の街の印象も地域によってかなり差があるようです)→現地を訪れる人は結構がっかりするようです

 ニューヨークの街の魅力は沢山の人種が流入しそれぞれの文化が融合した街にあります。足元の魅力があった上で、歴史的な建築物と最先端の建築物がミックスされたところが他にない特徴付けになっていました。街場の魅力と「見た目のインパクト」が相乗効果を発揮していたといえます→リアルなコンテンツの充実と伝わるイメージ作りの相乗効果

 一旦閉鎖されていた「FAOシュワルツ」も再開したようですし、「ブルーミンデールス」などの高級百貨店の売上げも回復基調にあるようです。とはいえ、強烈な吸引力がないのはアメリカという国の基本的な勢いが衰えているのだと思います。「内向き」と揶揄される日本人の海外留学生も単に、ハーバードへの留学生が減っているだけで、ヨーロッパーやアジアへ向かう留学生が増えて入るにすぎません。「世界の多極化」というのはこういう所に現れているんだなあと実感させられます。→アメリカのトレンドやデザインをいち早くコピーすれば日本で成功できた時代はもう終わりです

 「世界ふれあい街歩き」のファンが多いようですが、日本人の「海外への憧れ」も名所旧跡やランドマークとなる建物を訪問するスタイルから変化しているように思います。→見た目やイメージの疑似的体験からリアルなコンテンツへ

 一方「街」の楽しさをアピールするために「目に見えるインパクト」も必要です。新しい大阪駅も頑張っていますが、梅田北ヤードの建物の絵を見ると・・・・・。バブルの時に都心に投資して文化施設とかも整備しておけばと・・・(どうせ借金を背負うなら)思えます。地価が安くて人の行かない場所にいっぱいつくってもね。→フンデルトワッサーのゴミ工場など都心に作れば名所になったでしょうに

 「立地創造型」とか「アーバンリゾート」という「コンセプト」の功罪を総括して、次の世代に教訓として引き継いでおくのが責任だと思います。→二番煎じを自分で使い回して金を稼ぐのは恥ずかしい事です

                                                (2011年01月25日)

■どんな目的を持ったどのような人を集めるのか〜集客の質と量について

 ・「たこやき屋」の正しい立地とは〜テキ屋的産業からの脱却

 ・中止された梅田北ヤード「巨大サッカースタジアム構想」の暴走は何故とまらなかったのか?

 ・巨大イベントスペース「大阪ドーム」への集客が周辺地域に波及効果がなかった理由

 ・地盤沈下といわれる「大阪」のライブエンタテイメントの市場規模が神奈川、愛知を上回る理由〜人口規模だけでない市場

 ・海外観光客集客の目玉として「ライブエンタテイメント」が提起されているが、ターゲットは国内だろう。

 ・大阪に「ハコモノ行政」の恩恵がなかった理由?「文化」より「実利」を優先した愚を繰り返してはいけない。

 ・「立地創造型」 商業開発の通念からの脱却〜この四半世紀で新しく出来た「百貨店」で成功しているのは「京阪」「京急」など
  駅立地だけ。


 といった事柄を考えながらデータを読み込んで原稿作成中です。CRIの来月号には発表。話が拡がりすぎているので整理する必要があります。
 
                                         (2011年01月24日)
図ーライブエンタテイメント市場規模比較(2008年)    〜ぴあライブエンタテイメント白書データから当社が加工
図212
■「終の棲家」ではない住宅開発が新しい需要を生むかも知れない

 若い世代に顕著な「終の棲家」でない立地への居住意向

 住宅を選択する基準として「通勤の便」「買い物施設」「環境」あたりがオーソドックスな基準です。リクルートなんかの調査でもそれらが上位にあげられています。確かに子育て環境や、毎日の生活の利便性はとても重要です。

 すんでみたい地域の回答を見ていて、はたしてそれだけが全てなのかと考えさせられます。

 「住む」というベースは働いたり、遊んだり、勉強したりという活動の基軸なので、その活動にあわせた住まいというのがあってもおかしくないと思います。研究活動や創作のアトリエ、音楽スタジオの中での居住等々・・・

 終の棲家ではないにしてもある時期の活動に最適な住まいの立地と住宅の仕様があれば街がもっと面白くなるように思います。(まあ、普通の日常生活の繰り返しが大事なので、ラブホのようなテーマパークマンションは避けたいとも思いますが)

 URや大阪ガスの「実験住宅」、立地の悪い場所での特徴付けとしての「ペットと共生できる賃貸住宅」や「二輪ライダー向けの賃貸住宅」などもありますが、都心のまち作りと連動したコンセプトをもった、「立地の良い」場所での産業や研究、ファッション等のクリエーター活動と結びついた住宅開発が有効なのではないかと思います。

 一部にある「シニア住宅」や「サービスアパートメント」などが近いのかも知れませんが、「機能」での特徴付けにとどまっており「コンセプト」「まち作りコンセプト」とのつながりが薄いように思います。・・・単にお金持ちを呼びたいだけ?みたいな。


以前にもご紹介したテーマパークマンション 明来
http://www.aki-club.co.jp/designers_apartments/index.html へのリンク

まあ、これあはあくまでもネタでしょうが

                                                  (2011年01月21日)

図 一度は住んでみたいエリア(なにわ考現学2005)
図220
■JR大阪三越伊勢丹の開業が5月4日に決まったことがわかった

 株価の持ち直しで富裕層の消費が活性化?

 景気が良くなってくるとテレビ番組で「おばかな金持ち」の「おばかな浪費」を見せびらかす番組が登場します。春闘のやりとりを見ていると大企業の収益は良くなっているようですし、株高で富裕層の消費意欲が活発化してきているという声も聞かれます。そういえば大阪府の税収も法人税が回復してきて予想以上に好調なようです。
(お金を持っている人は節約に飽きてきているのだと思います)

 JR大阪三越伊勢丹開業

 景気が悪い時期に計画された新店であるJR大阪三越伊勢丹の開業が5月4日に決まったようです。本日からWEBサイトがオープンしていますが、伊勢丹らしいファッショナブルなイメージですね。

 そういえば、開業当時の梅田大丸はすみからすみまで洗練されていて美しい店でした。今でもはっきりと覚えています。3月に増床オープンする梅田大丸はどのような姿を見せてくれるのでしょうか。(先行して改装した売り場のテナントさんからは厳しい話も聞こえてきますが全面開業すればきっと変わるでしょう・・・変わってね)

 売場効率とか利益確保が先立って、ある意味無難な売場になっている大阪の百貨店業界に風穴をあけてくれることでしょう。
 三越の本格的な店舗も関西では久しぶりなので阪神間の高齢富裕層は楽しみにしていることと思います。(競合は神戸大丸ですね)阪急では物足りないようで、阪神間では「島屋」の外商の方が結構歓迎されていると聞きます。

 百貨店業界の再編の噂が飛び交っています。「島屋」と「丸井」の統合の話もあるようですね。関西では「なんば」と「四条河原町」で隣接しているだけに局地的には補完関係があると思いますが、首都圏で統合のメリットがあるのでしょうか?島屋の立場で考えると「神戸」に拠点が欲しい所ですが・・・・・・。

                                                 (2011年01月20日)
■お金をかけるのではなく手間をかける「広報」を

 マスメディアへのアプローチは農耕的なアプローチ

 最近でこそ広告出稿はかなりお手軽な価格で出来るようになりましたが、マスコミへの広告出稿はかなりのコストがかかります。また広告での「売り込みの言葉」より客観的な第3者語ってもらう方が説得力があるので、マスコミを中心とした「広報」に力をいれる企業が増えてきています。

 横文字名前の「外資系ぽい」「IT企業ぽい」PR会社に莫大な費用を払っている企業もありますが、費用対効果はいかほどでしょうか?格好いいプレスリリースや盛大なレセプションより、メディアのスタッフとの人間関係の構築が「記事」として取り上げられる確率を高める事を沢山見ていますので、正直無駄金を使っているなとしか思えません。

 これだけネット環境が整備されて情報が一瞬にして全世界を駆けめぐる中で、なお「東京」への集中が続くのはマスメディアが東京に集中しているためです。

 かつて、大手PR会社と一緒に、毎月定期的にキーマンとなる編集者を招いて「勉強会」をの事務局をお手伝いしていましたが、ひとえにマスメディアと広報部の人間関係の構築が目的でした。その「キーマン」の持つ「人間関係」「ネットワーク」をそのたびに対価を払って活用しようと思えば、莫大なそして税務署に対して説明しにくい費用が発生します。「情報交換」をかねて少しづつ費用を発生させる地道な努力が必要です。

  関西の超一流レストランでは、レセプションに大勢を招くのではなく、毎月サービスの覆面モニターという仕事のお願いをマスメディア関係者に行っていました・・・これも関西の業界に顔の広いキーマンの人間関係を少しお借りする手法をとりました。「ご招待」ではなく「お願い」であることが重要なポイントです。

 都市開発にも事前PRによる差別化を

 多くのプロジェクトが並行して進む都市開発でも、単にプレスリリース発信だけでないPR活動が必要です。単に建物スペックや「関西初」とかの自己満足だけでなく、「人の顔が見える」「物語が見える」情報発信が記事として取り上げやすいモノになります。

 マスメディアや地域メディアだけでなく、高層ビル関係のブロガー(結構楽しみに見ている人が多いようですよ)への案内やツィッターなどでの情報発信(平松市長も始めています・・・)も組み合わせると相乗効果が出るように思います。

                                               (2011年01月19日)
    
■「元気のある企業」「勢いのある企業」に何を学ぶか?

 「元気な企業」のその後

 バブル以降2005年頃まで「元気な企業」「元気な事業」の方を招いてお話を伺う勉強会のお世話をしていたことがあります。」関西ではそのような機会が少ないのでなかなか好評ではありましたが、主催企業が東京に軸足を置く方針に転換し(立ち消えになりました)

 「CCC」や「ミスミ」、「オイシックス」「パタゴニア」などその後成長を続ける会社も少なくないのですが、その後破綻した企業も少なくありません。経済新聞や、雑誌などから「元気な企業」をピックアップして選択するのですが、話題になっていても怪しい会社の特徴がいくつかあります。

 ・各社のお買い物ポイントをまとめて一つのポイントとして使える新しいシステム・・・という触れ込みのFC事業
  (真偽は定かではありませんが、ソニーの元役員も出資というのがもっともらしい)
 ・小規模の住宅型介護事業のFCシステム
 ・シニア富裕層を読者に持つ会員制情報誌・・・(架空上場詐欺で社長が逮捕)

 それらしいビジネスプランで「出資」や「FC事業」でお金を集めることが目的であることが特徴です。

 また、社長は元気でも社員が「元気でない」企業も要注意です。小さい企業なのに、若くて美しい秘書を侍らせている社長もNG。自説を述べるのに雄弁であって、他人の話を聞かない、高圧的に遮るというのも危ない。・・・これはまともな大企業でも結構多いパーソナリティーですが

 私が担当して取材講演依頼した企業ではないうというものの、富裕層の講演会を聞いて下さった会員様には大変申し訳ないことをしてしまったと思います。 基本的に他人に儲け話で出資を募る人はまず疑ってかかるという事が必要です。「そんなに儲かるんなら自分でやれよ」というつっこみを忘れてはいけません。・・・・「私は自分で儲けるよりお手伝いをするのが好きなんです」という言葉を信じてはいけません。

 「グルーポン」騒動の後もNHKがニュースで「元気な新事業」というスタンスで紹介していました。別に出資を募っている企業ではありませんが割引前の「定価」があいまいで、詐欺とはいいませんが購入者を惑わすサービスなので、もっと中立的な紹介をすればいいのにと危惧した次第です。急成長企業はひずみを修正しながら成熟していくので、長い目で見守っていきたいと思うのですが・・・。ただ元気である、勢いがあるから何かいいことがあるのだろうというような思考停止での評価はどうなんでしょう・・・「エンロン」とかの事忘れてしまったのかしらん。

                                  (2011年01月18日)
■情報とシステムだけでは価値は創れない〜グルーポンおせち騒動から考える

 WEBマーケティングの暴走

 インターネットの普及により、ロングテール(通常の市場では需要が大きくないが、長いレンジでみれば需要のある商品)が日に目を見るという幻想に惑わされていましたが、実際に起きていることは「売れ筋商品」への集中現象です。

 WEB通販の指南書やWEBモール、クーポン業者のセールストークでは
 ・価格を訴求してお買い得感を訴える〜セールの乱発(低下を偽装してでも割引率を高める)
 ・売上ランキングの上位であることを訴求(そのために自前で偽装のランキングをつくる)
 ・購入者へのリピート販売、周辺商品販売(うるさいほどのダイレクトメール)
が売上向上の秘訣といわれています。


 おせち料理で失敗したカフェも、店舗で食べる分にはそこそこ美味しい料理を提供していたのかもしれません。
身の丈に合わない注文数が発生した時に、グルーポンへのキャンセルも発生するので自社だけでは撤収を判断できなかったのだと思います。

 WEBを使えば思わぬビジネスの拡大のチャンスが得られる場合もありますが、その需要に応えられるだけの対応力がなければアウトになります。・・・・食品の企業は中小企業が多いのですが、対応できるのは大企業しか残りません。「量」が売れることが「値引き」の担保になっていますし、「量」が売れないと購入者に知られることがない(モールでの表記の順番や検索での順番があがらない)以上、零細業者に勝ち目はありません。

 WEBを活用した新しい販売手法に対して商品やサービスを供給する方の対応力が追いついていないようです。・・・・食品に関して言えばこのシステムに対応できるベンダーの商品は、あまり美味しくなさそうですが。

 東京より新潟のイタリアンが美味しいというつぶやきは負け惜しみばかりではない

 たまたま、みていた新潟の森ゆう子議員のツィッターで、「東京より新潟のイタリアンの方が美味しい」というつぶやきに、単に地元びいきの負け惜しみではないリアリティを感じました。

 地方の最高の食材は東京の築地に集まりますが、その次の食材は地元で消費されますし、何よりも鮮度が高い。東京の良い立地であれば店舗の維持コストや人件費がONされます。料理や洋菓子は本気のシェフやパティシエがいればいいので、地方でも美味しいモノがつくれます。儲けたい事業者は東京で商売をすべきですが、美味しいモノを提供したい事業者は東京へ出店する事のデメリットが大きいように思います。
 
 都会で商売をするメリットは人との交流によって得られる情報です。ものづくりの企業で技術力に自信があれば逆に人の方が会社に近づいてきます。・・・関西の企業で東京に本社を移す企業は「消費財メーカー」や「百貨店」など・・・何かを創造しようということが目的の企業ではなく、人からどう思われるかを大事に思う企業が多いようです。

 記号化されたイメージや情報は企業の飛躍のいためには大事な要素です。ただ、「価値を生み出す力」というのいはそれとは別の次元で存在していて、それはそれで大事に育てる必要があるという気がしています。

                                         (2011年01月17日)
■行列を厭わなくて良く歩くのが都会人の条件?〜秘密の東京ケンミン特性

 行列をして昼食にありつく東京人の変わった性癖

 東京へ出張して奇異に思えた風景は、オフィス街などで昼食時に行列をして食べる習慣でした。(特に評判のラーメン屋さんとかいうわけではありません)最近はオフィス街の商業施設も増えてきていますし、コスト削減のためにテイクアウトを利用することが増えてきているので、以前ほどの混雑はないのかも知れません。〜もう過去の風景なのかもしれませんね。

 かつては東京人の「ケンミン性」で従順で我慢強い人達が多いのだなあと思っていました。よく考えると人口の集中度が桁違いに高いので需要と供給のミスマッチが常態かして、並ばなければ食べられなかったというだけにすぎません。当たり前の話ですよね。
 
 同じように指摘されているのは「東京の人はよく歩く」「広い範囲を移動する」という行動パターンです。街の中もそうですし、かなり離れた盛り場間も(もちろん電車や来るまでですが)回遊します。

 大阪のOLは通勤定期がある範囲しか行動しない・・・という議論の裏返しともいえます。地方都市の場合は「車」で移動が多いので逆に歩かないですしね。

 何故移動するのか?

 街の中を歩くのはやはり人口の密集度と関連すると考えています・・・街が薄く広い。大阪の梅田と東京の銀座を比較するとイメージできます・・・・それでは大阪のミナミは?

 繁華街間の移動はこれは確実に人口密度に関連しています。鉄道の料金が大阪に比べて安いのです。そして友人の居住地が千葉佐、埼玉、横浜と広域にわたるためにそれぞれのホームグラウンドで遊ぶ事が多いので、交流が深まるのだと思います。

 大阪梅田の回遊は?

 さて大阪梅田の商業集積は一体とした集積力があるのでしょうか?野村総合研究所さんが以前発表した調査でもターミナル百貨店は鉄道沿線客の利用が中心です。

 地下街は茶屋町近くから泉の広場、西梅田は福島近くまで拡がっていますし、南では中之島にまで拡がっています。鉄道駅を中心に用事がある方向に向かって人が流れていくつかのブロックが形成されるでしょう。
 大阪のOLさんは歩いて回遊してくれませんからね。・・・堀江、新町、南船場にしても利用する店は決まっているので広く歩き回らない・・・そのため今ひとつ爆発的に拡がらないのです。

 ジュンク堂が梅田の周辺で3店目を茶屋町に出店したのはそれを想定した結果でしょう。

 何度も言いますが、単に梅田の商業施設の面積が増えるから単純に集客力が高まるという事はありえません。同じような店が増えても魅力の向上にはつながらないからです。

 今、同質化競争している梅田の大型店は今年以降大きく変わると(勝手に)分析しています。既存店舗にフロア単位で「大型書店」「大型ユニクロ」「フランフラン」「ビックカメラ」が入るとか、フロアごと「丸井」または「パルコ」の運営になるとか・・・個人的な思い入れとかしがらみを排除して考えれば、誰もが簡単に予測できるはずです。
 (梅田北ヤードのサッカースタジアム計画にしても、本当は誰もが実現は不可能だと知っていたでしょう)

                                              (2010年01月14日)
■何故か集客効果の高い「文化ホール」に投資しない大阪の行政

 「公」であればこそ整備できる文化ホール

 以前にも指摘しましたが、関西には2,000席クラスの音楽ホールが無くてプロモーターが困っているそうです。工事中のフェスティバルホール、旧厚生年金会館の他に、大阪には大型のスペースはありません。
 大阪ドームは多目的ドームとして活用が考えられますが、ここをコンスタントに埋められるのは「嵐」か「AKB」位しか思い浮かびません。大阪城ホールも少しでかすぎます。

 商業関係の調査をしていて確信しているのは、近隣から都市に人を集めるのに、商業だけでは力不足で文化レジャーアミューズメントのライブエンタテイメントが必要だということです。(商業はどこも同質化していて都心の施設での感動がありません)

 大阪市に隣接している堺市(電車でなんばから20分)の駅前に堺市民会館が移転し、2,000席の大ホールが設置されると聞いて大いに期待していたのですが結局とりやめになったようです。
 大阪都市圏で市内から近く他にない規模なので、広域の集客が期待されていたのですが、駅から離れた現在の敷地では市外からの集客は難しいでしょう。堺市が存在感を示す千載一遇のチャンスを逃したといえます。

 何度でも言いますが・・・・梅田北ヤードに音楽ホールを

 大阪府知事が北ヤードに関して「大阪市の所有する関西電力株を売却して土地を買い公園に・・・」という発言をされましたが、これはなかなかいい着目点です。膠着している梅田北ヤード開発を進めるために土地を購入し、その代わりにデベロッパーに音楽ホールを建設させればいいのです。
 サッカースタジアムとは違い公演内容によって多くの世代を呼び込むことが可能です。京阪神、関西全域からコンスタントに人を集めることも可能です。(来場者が周辺にお金を落としてくれるかというと・・・そう甘いモノでないですが)観光客の誘致にライブエンタテイメントを活用することは関経連も提言されています。ぜひご参照下さい。
 とにかく、最後の一等地に人の流れをつくれば色々なビジネスチャンスがうまれます。

                                        (2011年01月13日)

 さすがにサッカースタジアムの建設は見直しをされたようです。平松市長のご英断をたたえたいと思います。万博のエキスポランド後へのガンバ大阪のスタジアム建設が推進されることを強く期待します。毎年少しぐらいなら寄附しようという気持ちを持つサポーターも多いと思います。

その後サポーターなどの募金で万博のスタジアムの建設が始まっている

表 全国の公立文化施設大ホールの座席数が1,500席以上のもの
図221

■ガラパゴス化していなイカ?日本のスイーツ

 韓国のスイーツ事情

 私が実際にソウルに通っていたのは1988年のオリンピック前後でしたから、最近はかなり事情が変わっていると思いますが、いくつかのブロガーの方のレポートを見ていて韓国のスイーツは日本とは似ているようで違うなあと思います。特にここ数年のデパ地下スイーツブーム、コンビニスイーツブームで妙にローカルな進化が進んでいるので余計にそう感じるのかも知れません。


 韓国ではケーキ屋さんというより「インストアベーカリー」でケーキ類が提供されることが多いようです。一般的に見た目や味が今ひとつという評価も多いようですが、百貨店の地下ではかなり水準の高いケーキが提供されているようです。コンビニや街のケーキ屋さんが日本ほどこだわったケーキ類、スイーツを提供していないという事なのだと思います。市場の広がりがないという事が言えます。

 昔からデコレーションケーキはホールで購入する習慣があるようで、みんなで箸でつついて食べる・・・・という事例が報告されています食習慣は文化と深く結びついています。文化交流が進むみ表面的には日本人の好みに近く見える韓国でさえ、これだけ違います。ソウルの百貨店の課長さんをご案内したときも「豚のスープ」の匂いが駄目とラーメンには抵抗を示されました。(韓国のスープは牛肉でとります)日本に住む人とはまた違った好みがあるのだと思います。

 甘くないスイーツ?

 アメリカがルーツのミスタードーナツのドーナツもアメリカ人の女の子の評価では甘くなく、美味しくないそうです。クリスピークリームドーナツとか、シナボンとかやたら甘い洋菓子は一時的に話題を呼びますが日本では定着しません。

 本場ヨーロッパで修行したパティシエのお店が話題になっていますが、日本国内でのレシピはかなり変えているのだと思います。「生クリーム」という鮮度管理が要求される素材を中心にした日本の洋生菓子は、職人の技術と共にそれを支える密度の高い日本の市場、日本の流通システムが無い限り「商品化」できないものなのでしょう。

 将来的に中国や海外へ輸出するとしたらコールドチェーンなどの流通システムが整った流通ルートに冷凍の形で乗せていくしかないでしょう。その際、あの繊細な飾り付けは犠牲にせざるを得ないかも知れません。

 クールジャパンの一環としてスイーツをグローバル化するためには商品単体ではなく、人材育成を含めたシステムを売っていく発想が必要になります。

                                                 (2011年01月12日)

■「若者市場」は色褪せたのか?

 本当は内向きになっていない日本の若者

 よくある報道ではハーバード大学へのい留学生が僅か1人であることを事例に、日本の若者は他国に比べて海外へ出る意欲が低く「内向きである」といわれています。

 実際は北米への留学者数は減っているモノの、97年に比べても20%増と決して留学者数は減っていないといいます。(リクルートエージェント キャリアに関するデータの真相より〜

http://www.r-agent.co.jp/kyujin/knowhow/tatsujin/20101118.html へのリンク

 いくつかの新聞記事では「内向き志向」が進んでいるという前提で集められた取材記事が掲載されていますが、これはいったいどういうことでしょうか?取材者が意図的にストーリーに沿った「声」を集めている・・・という事なのでしょうか?

 現代の「若者」を語るときにある種の先入観を持った決めつけが行われている、と言う傾向は確かに否定できないモノがあります。

 若者市場の衰退について

 若者市場のボリュームが縮小しているだけでなく、車にお金を使わない、お酒を飲まないなど消費行動がシュリンクしていることについて分析されたレポートがいくつか発表されています。

その内容については後日整理してまとめたいと思いますが、消費意欲は決して減退しているわけではないようです。親と同居している若者の支出は決して縮小しているわけではないのですが、20代の世帯の世帯年収が低くなってきていて、消費よりは貯蓄に回っているようです。生活不安が消費を抑制しています。

 団塊世代の大量退職で労働力人口が減少するので雇用機会は増えるはずでしたが、新卒者の就職率の低下が社会問題になっているのはどういうことでしょうか?
 ひとつには、年金支給時期が65歳に引き上げられたことを背景に、企業が65歳まで雇用を延長している事が指摘されています。2012年にはその世代が本当にリタイアするのでこんどこそ求人が増えるはずと言う見方があります。

 ただし、団塊世代は「集団就職世代」でもあります。進学率が高まり「大卒者」が増えたことに雇用のミスマッチがあります。多くの大卒者はみんなが名前を知っている大企業を志望しています。中卒の労働者が担っていた業務での求人があっても応募することはまずありません。

 就活についてはWEBサイトでの求人や採用が、一部の企業に新卒者が集中する原因にもなっています。

 「内定率が低い」という心理的プレッシャーが大学生の消費(レジャー・文化)にも悪影響があるように思います。

 若者論については「俗流若者批判」「俗流若者批判への批判」など多くの議論があります。若者市場というのは商業施設にとっても生命線であるので少しじっくりと考えておきたいと思います。新聞の見出しだけで判断するのは危険であることは確かです。

                                         (2011年01月11日)


 昨年ご紹介した岸和田の会員制ホールクラブ「WR」が1月4日に事業停止しました。アウトレットモールが巨大化した今、ブランド品が安く買えると言うだけでは会員はあつまらなかったのですね。

■梅田地区内のゾーン間競争が始まる〜チャスカ茶屋町のMARUZEN&ジュンク堂書店

 富国生命ビル改築(2010年10月)は地下街の印象を変える

 昨年改築された富国生命ビル(生保で名前が変わる会社が多いので昔ながらの社名に安心しますね)は地味ですが。久しぶりの海外有名建築家の「作品」でもあり、梅田の交通の要所にいい感じの環境を作っています。

 梅田地下街とつながった地下の飲食店、かつては地味で大衆的なものであったのですが、かなり印象が変わっています。梅田地下街もこのレベルのモノと比べて見劣りしないような対策が必要です。

 大学関連のテナントが入居している点など、阪急のオフィスタワーの完成とあわせて梅田の東地区に静かなインパクトを与えることでしょう。商業開発の開業は派手でわかりやすいのですが、街を変えていくのは基本的に毎日行き来する学校やオフィスの人の流れの変化が重要です。

 今年春のJR大阪駅の商業開発が注目されていますが、広域梅田のゾーン別の競争がどうなっていくか、住宅やオフィス、学校の人の流れをあわせて考える必要があります。

 茶屋町はどう変わるか

 梅田の東地区、茶屋町周辺は積極的に投資していたデベロッパーの破綻もあり開発が中断していました。昨年12月に「チャスカ茶屋町」にようやく商業テナントが入居しました。「MARUZEN&ジュンク堂」が大規模書店を出店したのです。観察では出足は好調のようです。ジュンク堂は西梅田地区にも出店しています。客層が重ならないという判断なのでしょうね。

 富国生命ビルだけでなく阪急梅田駅の西側にもサテライトキャンパスがあります。中之島のオフィス街を背景とした「西梅田」に対して梅田の東地区は違った個性を持つ街になっていくのでしょうか?

 2005年の調査ではミナミのアメリカ村に近い客層であることが判明しています。その後のNU茶屋町の開業や、タワーマンションの建設などでどのような変化が起きているのか注目されます。

 JR大阪駅の施設もとても魅力的ですが、それぞれのゾーンの特徴を強く打ち出さないと同質化競争では梅田の集積規模の効果は発揮されないでしょう。

 その意味でも、中之島〜西梅田、梅田東地区の今後の変化に目が離せないと考えています。

                                              (2011年01月07日)
図ー梅田周辺の街イメージ(なにわ考現学2005)※NU茶屋町開業前
図223


■「食」の事業化の課題〜グルーポン「おせち騒動」から考える

 簡単に参入できそうで、本当は怖い食ビジネス

 最近のテレビに出る「イタリアンのカリスマシェフ」はカラオケ屋の料理人出身のかたです。B級グルメやカリスマ主婦のアイデァ料理がもてはやされる時代ですから、それはそれでいいのですが、あたかも美食の権威者のように持ち上げるマスコミの扱いは、首をかしげざるを得ません。

 食の世界は身近なものなので簡単に参入できるビジネスに思えますが、生業として小さなビジネスを行うのはいのですが事業として展開するのには大きな壁があります。

 お正月早々話題になった共同購入クーポンでおせちを販売した「カフェ」のトラブル。見本と比べて極めて貧弱な内容だったとか、1日に届かなかったとか、腐っていたとかいう・・・のはその教訓を教えてくれます。

 http://www.geocities.jp/gurupon7/ へのリンク

トラブルの原因は次の3つ

・500セットのおせちの調理詰め合わせが予想以上に大変であったこと
・年末のおせちの食材の価格高騰、品薄について無知であったこと
・産業としての食品製造の品質管理、作業環境が整っていなかったこと〜バイト感覚

「カフェ」めしを店舗で提供する分には素人に毛が生えた程度でも対応できますが。短期間に大量の食品を製造販売するにはそれなりのノウハウが必要になります。
 本当の老舗料亭や有名レストランでもおせちは限られた顧客のためにごく少数しか受注しません。百貨店やコンビニで売っているのはお店で職人さんが作っているモノではなく、食品メーカーが早い時期に作ってレトルトや冷凍で保存しているものです。・・・今回そのことにあらためて気づいた人もいるでしょうね。

また共同購入クーポンという仕組みに対する不信感も広まっています。WEBサイトで募集し、人数が集まればお得な割引クーポンが購入できるという仕組み。前払いでお金が入ってくるお店にとってはありがたい仕組みですが、クーポンの価格がもともとの価格=割引になっていないという「価格設定への不信」が持たれています。また、クーポン販売後お店が倒産して使えなくなるという取り込み詐欺のリスクも顕在化しています。

 まあ、本当に美味しい店は、顧客が離れるクーポン販促は行わないのですが、「お得感」にだまされる人も多いのでしょう。

 地方発の食の「事業」のジレンマ

 創業以来、地方に埋もれた本当に美味しいモノを掘り起こしたいという事業の「企画書」を考えているのですが、〜自分が美味いものを食べたいだけなのですが〜共感してくれる人は多いのですが具体化はなかなか難しいものがあります。

 大量に流通できないのでビジネスのラインに乗りにくいのと、地方のメーカーと話をしても「流通コスト」に対する不信感があって商談にならないのです。5〜10%のマージンでは責任を持って仲介できないのです。

 最近食品スーパーに地方の無名メーカーのお菓子が流通し始めていますが、その多くは有名商品をまねたものでしかも質の割に高い・・・・地方発のヒット商品は沢山あるのですが(ラスクやルタオのチーズケーキなど)なかなか2匹目のどじょうはいないようです。


 一時に大量に流通させようとするとやはり「無理」があるので少しずつファン層を拡げていくしかないのだとおもいます。ある時期に一気にひろめる時には「食品産業」しての生産体制を整える必要があります。農商工連携の補助金もありますからそれを活用すればいいと思います。

 楽天などのネット販売は、安く、大量に販売することが求められますから。、体制が整わないうちは出店は見合わせたほうがいいと思います。生産余力がある企業が出店すべきだと思います。

                                             (2011年1月6日)
トップページ                              Copyright(C) 2009 analog All Rights Reserved.)