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 ARCHIVE2009
株式会社ANALOG   場調査から戦略構築まで現場をサポートするマイクロシンクタンク 
  エリアマーケティング・商業開発・まちづくり 

   (sano@analog-corp.com
 2009年記事 ARCHIVE
 この年、政権交代が実現し,首相が鳩山さんになりました。アメリカではオバマさんが大統領に・・・・・2008年秋のリーマンショックの影響で世界同時不況の中にありました。日経平均の終値が7,054円とバブル後の最安値を更新・・・・・最近は14,000円から15,000円ですが株価が上がっても下がっても生活にはあまり影響はありませんね。とはいえ2008年から2009年にかけての「派遣切り」で40万人が失業するといわれていました。
 
 クライスラーとGMが経営破綻、1ドルが84円だった時代です。

 パナソニックが三洋を子会社化し、ファミリーマートがAM/pmを子会社化しました。

 ずいぶんと「昔」の話のような気がしますね。

(大阪の動き)
・3月  阪神なんば線開通
・5月  世界陸上開催
(開業施設)
・10月  あまがさき阪神

 (2014年6月)
 12月
■関西発の情報発信を 〜「失われた地位の復権」からの発想転換

 「関西復権」の呪縛を超えて

 当社創業から3年目の正月を迎えようとしています。それ以前から長谷工総合研究所さんの「CRI」に連載させていただいている「関西復権を考える」について、もう「関西復権」という失われた「日本2番目の都市」の地位の回復のような視点は変えるべき時期だろうと考えています。

 阪神淡路大震災の影響もありましたし、それ以前からの「関西の地盤沈下」傾向に対して何とか風向きを変えたいという気持ちで始めた連載です。大阪万博以降ひきずっている「東京への対抗意識」から、いい加減脱却する必要があります。東京に負けない、横浜に負けないといって頑張っても所詮2番手、3番手以上のものになれるはずもありません。・・・ということは随分前から感じていましたし、89年から5年おきに続けていた「なにわ考現学」調査での市民意識にも現れてきています。

 東京へのキャッチアップが我々の目標ではありません。

 日本の地盤沈下

 ここのところ顕著なのは「日本」が世界の中での「関西」になりつつあることです。来年はGDPで中国に抜かれ、もう追いつくことはないでしょう・・・・。おそらく東京では、中国に負けないで沢山高層ビルを建てて、(アマンリゾーツも東京大手前にできますしね)日本中の富を集めてでも張り合おう・・・・日本復権=東京復権論が台頭するでしょうね。

 関西が東京の似姿を目指さないように、日本も中国と同じ土俵での競争に労力をさくべきではないのだと思います。

 地方の問題の解決が日本の進む道を示す

 さて、それでは「日本の進む道は」どうある「べきなのでしょう」・・・・話が大きくなりすぎると嘘をついてしまいます(実感がないのでね)
 
 ですが、一ついえることは、いま地方で起きている問題の解決、今関西で起きていることの問題の解決が、大きく日本の進路、ひいては、世界の進路を示すもう一つの道を教えてくれるだろうと言うことです。

 ということで、関西を中心とした地方からの発信を、連載でも発信続けますし、このホームページでも発信して参ります。

 今年の更新はここまでです。来年もよろしくお願いいたします。

                                                          (2009年12月28日)

■異なる組織文化の融合の課題

 言葉を残すことの重要性

 出身母体が異なる事業体(第3セクター等)では、意思決定のルールが曖昧になることも多く、言葉の意味や。上司からの「指示」に含まれる含意などがうまく伝わらないことが業務遂行を遅らせる原因となることもあります。
 あらためて、日常生活での「非言語的なコミュニケーション」のウェートの高さが実感されます。

 ある人は、会議の議事録をうまく活用されています。会議は往々にして議論がでてもその場では何が決まったのかがわからないことが多いのですが、議事録の形で文章化し、それに承認をえてしまえば、決定事項として残るのだということです。

 小売業再編と組織文化の融合

 百貨店を中心とした小売業の再編が話題になっています。過去の事例を見る限り、企業の合併は一方の企業が、もう一方の企業の色に染まるというケースが多いようです。よりバイタリティがある企業のやり方について行けない人材が止めていくと言う形で吸収されていく・・・という事でしょうか。

 小売業ではGMS業界は、それを繰り返して大きくなり、全国チェーンを形成してきました。旧ニチイは地方百貨店を吸収し、かつての地方百貨店は今は影も形もありません。西武・そごうを傘下に置くセブン&アイグループは、業績不振の百貨店店舗を大きく整理しようと動き始めています。

 それに比べるとまだ。百貨店同士の合併は「紳士的」なのでしょうか?百貨店のブランド力、資産はお店についている「顧客」であることがわかっているので、慎重なだけなのでしょう。

 何年か先には全国ブランドの「伊勢丹」「島屋」「大丸」といくつかの総合小売業地域事業部のストアブランド「三越」「阪急」「松坂屋」「池袋西武」等しか残っていないかもしれません。GMSはトップの各社がそれぞれ「百貨店」をつくろうとしましたが、同じ小売業でも組織文化が違うのでしょうね。次の時代の「百貨店」はむしろ、「百貨店」にコンプレックスをもっていなくて、消費者とのつながりが深い、楽天やファーストリテイリング、宝島社(雑誌)、アスクルなどの新業態から生まれてくるのかもしれません。

 
鉄道グループの百貨店型の小売店経営も注目されていますね。(ルミネ等)
                                              (2009年12月24日)
■会社帰りに立ち寄る商業施設に見る 「価格だけでない消費」の変化

 会社帰りに「ヨドバシ」に何の用事?

 下記の図は、調査会社が大阪市内の通勤者に聴取した「会社帰りの立ち寄りに便利な商業施設」の回答です。駅ビルである「阪急三番街」「なんばシティ」「天王寺MIO」が選択肢に入っていないので比較は出来ないのですが。大阪のビジネス街である堂島、中之島から大阪駅・梅田方面へ向かう通り道である「ディアモール大阪」が30歳代の女性を中心に会社帰りに利用されている事がよくわかります。

 注目したいのは「ヨドバシ梅田」が男性と女性60歳代で「会社帰りの立ち寄りに便利」と高い評価を得ていることです。家電製品、おもちゃ、美容関連の用品、コムサストア、そしてそこそこリーゾナブルな飲食街・・・・梅田の大型店が切り捨ててきたモノが集積しています。

 確かにヨドバシの家電製品は安いのですが、これだけ幅広い層に支持されているのは、価格の優位性だけでは説明できません。

 既存の大型店が効率を追求して切り捨ててきたモノの集積で、新しい市場が生まれたのだと思います。都心の集積の中ではまだまだ「欠落している」市場」は沢山残されています。自店の売場効率の追求だけでは,その市場は見えてこないでしょう。

                                                           (2009年12月22日)


図ー会社帰りの立ち寄りに便利な商業施設は(大阪市内通勤者)

(なにわ考現学2005)
■「思い出」という時間軸に拡がる価値

 合理的な損得計算でははかれないシニアの住み替え

 シニアの一人住まいが多くなっています。安全性や安心感から考えると一人で大きな戸建てに住むよりも、ケアの行き届いた老人ホームや、シニアへの」サービスが行き届いた集合住宅に住まうことが合理的であるにも関わらず、一人で住まい続ける事を選択するシニアは少なくありません。

 シニアの住みかえ意向を分析したときには、周辺の知人、友人などのコミュニティの存在がその住まいを離れがたくしているのだと仮説を持ちました。「愛着のある住まいを離れたくない」といったような非合理的な理由を何となくスルーしてしまっていたのです。家の中にはそれまでの生活で楽しかったことや苦しかったことの「思い出」が刻まれていて、それは過ぎてしまった「過去」ではなく現在も生き続けているのだと思います。何十年も前の出来事が「ついこの間のこと」として空間の中に名残を残している・・・・そのような皮膚感覚はある程度の年齢にならないと理解できないものなのでしょう。

 昨年から、長寿命家具の世代を超えた引き継ぎというテーマに取り組ませていただき、そのようなことを考える機会が増えてきました。建築物の有効利用のための「住まい」の流動化を促進するためにも、「思い出」の「よりしろ」は不動産であるより動産である「家具」や「車」等であった方が「住宅」の移動がスムーズになるなとも考えています。

 テレビのリフォーム番組でも「思い出の柱」を「スリッパ立て」にしたりとかの「小ワザ」が使われていますが、すべての人がリフォームするお金があるわけでもないですしね。

 地方の「ダサイ」百貨店に顧客がついている理由

 地方都市に地元の百貨店と、東京系の百貨店があった場合。往々にして東京系の百貨店からみて地元の百貨店は「ダサイ」ものと蔑みを持って評価されることが多いようです。(そして、その東京系の百貨店が先につぶれるというのもよくありがちな話です)
 百貨店とうのは特にシニアのお客様が多いこともあり、その時点での品揃え等の「価値」だけでなく、過去の「思い出」を沢山持っているる。時間のつながりの価値を持っている存在です。そのことを無視し「現時点」で見えている価値だけで判断すると間違えてしまいます。

 百貨店だけでなく「都市」の開発にも、同じ事がいえます。かつてシャッター通りと言われた大阪の船場は、URの主催する「船場げんき提案」をきかっけに様々な地域団体のネットワークができて、少しずつ変わり始めています。
 これは、船場に愛着を持つ地域の学校の卒業生がまだまだ沢山残っていたことも大きいと思います。

 とはいえ、現実には地方の百貨店は減り続け、街の開発は地域に何の愛着も持たない人の欲(投資効率)だけで進みます。私が何故「東京的なもの」を攻撃し続けるかと言えば、短期の投資効率だけを考えて地域に何の愛着も無い人々が「街殺し」を続けているからです。

 それは長い目で見たときに都市の価値を高める行動ではありません。愛着を持つ人をいかに沢山創り上げるかが「持続可能性のある都市開発」のゴールではないでしょうか?
                                        (2009年12月21日)

 
2014年になると「里山資本主義」が注目されていて、何だか「持論」の裏付けが出てきたようで心強く思います。
■ハコか中身か〜愛着を持つ住まいとインテリア感覚

 アクタスに次いでザ・コンランショップも傘下に入れたコクヨの狙い

 アクタスと言えば北欧家具を中心とした輸入家具やインテリア雑貨まで取り扱うインテリアショップとして知られています。(先般再上陸したイケアの家具も以前はアクタスが扱っていました)昨年2月、コクヨは子会社でオフィス家具を扱っているコクヨファニチャアーを通じてアクタスを子会社化しました。法人向けの家具販売から消費者向け事業の強化が狙いとされています。
 そのコクヨが今度は東京ガスのオゾンにある「ザ・コンランショップ」を買収しました。

 「ザ・コンランショップ」と言えば英国のデザイナーで作家のサー・テレンス・コンランが選んだ商品を集約したライフデザインショップとして多くの人の支持を集めています。ステーショナリーからインテリアまで独自のセンスで選ばれたインテリアのセレクトショップです。英国ではレストランもプロデュースされています。こちらはコクヨの子会社のビジネス用のステーショナリーを扱っているコクヨS&Tを通じての買収です。

  ビジネス用品が中心で、品質基準も厳しい、どちらかと言えば堅いコクヨの社風がアクタスのデザイン重視の部分の良さを削いでしまい商品が面白くなくなったという声も一部にありますが、注目したいのはコクヨほどの大企業がBtoCで消費者のインテリアに関する市場に本格的に乗り出してきたと言うことです。

 日本の市場に置いてインテリアは遅れた分野であることは確かです。その意味で将来性はあると考える人が多いのでしょう。

 細かく対応しすぎて、使い回しが聞かない住宅

 欧米の場合、住宅の間取り等のパターンは13パターンほどに集約できるそうです。内装やインテリアで自分らしさ、自分の愛着を育むというパターンが多いようです。確かに、住宅は住み替えていくのが当たり前なので、あまりにも自分用の色をつけすぎると他人には使いにくくなる・・・ということはいえそうです。
 様式が確立されていないともいえますね。庭や外観や住宅の様式を揃えるというコンセンサスがないので、街がごちゃごちゃして見苦しくなりますしね。

  工務店での注文住宅に限らず、ハウスメーカーの規格住宅でさえ細かいオーダーに応えています。住宅をカスタマイズしすぎて応用が出来ないという仕組みになっています。その変わり、内装や家具へのこだわり、愛着を持った使いこなしに関しては随分無頓着であるような気がします。特に、戦後のライフスタイル変化の中で、生活の様式が失われ、家具が消耗品となってしまったように思います。

 愛着を持たれる住まいの自分らしさの拠り所は、外界との境界のスケルトンに近い部分にある・・・という視点で考えると、100年住宅のあり方がまた違って見えてきそうです。これからインテリア市場は成熟していくのでしょうかね。住宅政策は中古市場の確立に舵を取っていますから、建物ではなく、インテリアに自分らしさを求める人は増えては来るでしょうが。

                                            (2009年12月18日)
■アンリシャルパンティエ芦屋本店を売却・・・・ブランド価値の賞味期限について

 アンリシャルパンティエ芦屋の旗艦店を売却

 洋菓子の「アンリ・シャルパンティエ」を全国で展開するアッシュ・セー・クレアシオンが、本社所在地の芦屋市内にある、関西の旗艦店「メゾン アンリ・シャルパンティエ」を閉店(3月)し、10月末で売却したそうです。2005年にフランス人のデザイナーによって設計され、喫茶店も併設してました。

 「アンリ・シャルパンティエ」は1969年に創業者蟻田尚邦が阪神電鉄芦屋駅前に開いた喫茶店が始まりで。1975年に神戸そごうに出店以来、生菓子に加えて焼き菓子も扱うようになり、一時は高級ギフトの定番とまでいわれていました。蟻田氏は1999年に社長を退任、現在は西武百貨店出身の松村はるみ氏が社長を務めておられます。

 売却理由としては、同社は来年4月に横浜に新工場を新設する予定で、「ブランド戦略や生産体制の見直しの一環」としているようです。開業当初は地元住民をはじめ利用客が多かったが、「最寄り駅から徒歩で約15分かかるためか、ニーズに合わなくなっていった」(同社)としている。・・・とのことですが、芦屋というエリア(住民の移動ははほとんど自家用車を利用)とか、最近の関西で話題の洋菓子店の立地条件(決して駅前立地ではない)事を考え合わせると、住民のニーズを喚起する店・商品を作れなかったのが原因だと思います。

 神戸新聞の記事によれば、「2003年に開業した東京・銀座の旗艦店は好調で、営業を続ける」そうですし、外部に公表されている売上数値も伸びているので経営不振とかいうのではなくて、経営の軸足を首都圏に移し、地域イメージを活かした高級菓子からナショナルブランド化しようという戦略の転換なのでしょう。
                                 
 ブランド価値の賞味期限について

 洋菓子激戦区の中で、ブランドのステータスをあげて売り上げを伸ばしてきた時期を知っているだけに、パティシェブームやロールケーキブームに埋没し、「グラマシーニューヨーク」にトップブランドの地位を奪われたアンリの姿には寂しいモノを感じます。雑誌のスイーツの特集などにほとんど取り上げられなくなり、おすすめの手みやげのランキングでも、モロゾフやユーハイムと言った古くからあるブランドはあがっていても、アンリの名前はあげられなくなっていました。

 激戦区の中でブランド価値を維持できなくなったのは「作り手」の顔が見えなくなってきたからです。創業者が経営を離れてしまうとあっという間に劣化してしまいます。食品の市場は小さなモノです。小さい商圏で圧倒的な支持を得ていると全国展開もできますが、最初から全国を意識すると支持者が薄まってしまいます。

 それでも、市場の大きな首都圏ではまだブランドの鮮度が残っているようです。首都圏郊外の住民にはアンリブランドは絶大な支持を得ています。東京銀座をイメージのベースに( 旧 不二家みたいですね)全国相手の大きなビジネスを行うのも又、生き残る道であると思います。

 放置しておくと「ブランド価値」も賞味期限切れするという、ひとつの研究材料となるでしょう。

 「銀座」がブランディングのベースになるのでしょうか?かつてロフトの社長(当時)の安森氏は新宿三越にロフトを出店するときに、身震いするほど緊張したそうですが、例えば「三越」ブランドや「銀座」ブランドをいまだに、ありがたがるのは「田舎者」かさもなくば本当の「東京人」だけでしょう。

 限られた少数に深く愛される「ブランド」と、不特定多数に知られているだけの「ブランド」のどちらがより価値を生み出していくでしょうか?後者は「沢山の田舎者」が存在しないと機能しないといえば、言い過ぎでしょうか?

                                                     (2009年12月17日)

 
2009年1月にプレジデント社から刊行されている「洋菓子の経営学〜神戸スイーツに学ぶ地場産業育成の戦略」は神戸スイーツを語る上で必読文献です。
■ご当地から世界へ〜東京人が知らないJAPANブランド

 JAPANブランド育成支援事業が発信してきたもの

 「地域の歴史や文化の中で育まれた素晴らしい素材や技術などの地域資源を活かし」「現在の生活に適合させ、海外の市場にも目を向けて進化させる新しい商品やサービスを育成する」JAPANブランド育成支援事業というものがあります。地域の中小企業の連携を促すものです。

 おそらく塗り物や地域の織物などの地場産業、伝統産業を海外に売り込むようなものだろうなという先入観を持ってみてしまいますが。支援事業として採択されているモノには意外な切り口のものがあります。海外で評価されれば、国内の評価も高まり面白い新商品、新サービスが生まれるかも知れません。

 食の国際化

・「こんにゃくヘルシーダイエットバーガー」(群馬県昭和村)
  こんにゃくを原材料としたバーガーを沖縄のチェーンでテスト販売、アメリカ市場を狙っています。
・「日本の伝統色干物をレンジでチン」(三重県紀北町)
 「きほく」ブランドで中国(マカオ)とアメリカ(ニューヨーク)の成熟市場でのブランンド拡大を図る。
・「伝統的だが輝いている」(兵庫県龍野市)
 三大地場産業「薄口醤油」「手延べそうめん」「皮革製品」の三大地場産業のコラボレーションで龍野ブランド構築
 醤油とそうめんのつながりはわかるのですが、皮革製品をどうコラボレーションさせるのか、想像がつかないだけに興味深いモノがあります。
・「薩摩の飲茶」(鹿児島県)
 薩摩の飲茶を本場中国からヨーロッパに展開。焼酎、鹿児島牛、さつまあげ、塩干し、黒糖などの食材を活用。

 地域の素材、技術の現代化

・「花ござをヨーロッパへ」(福岡県大木町)
 環境・健康・安全面に優れた国産い草製品を「KUSAWAKE」ブランンドで欧州に展開。
・「SOGON STYLE PROJECT」(」愛知県三河仏壇振興協同組合)
 三河仏壇の技術を活かし、「荘厳華麗」をテーマによる職人による新商品を開発し、欧州及び北米へ販売。

 地場産業の融合

・「足利幕府プロジェクト」(栃木県足利市)
 足利地域の地場産業「繊維産業」と「アルミ産業」の融合技術やデザインを融合させた新商品開発。
・「NARUKOブランンドプロジェクト」(宮城県)
 こけしと漆塗りの融合。〜違った産業だったのですね。
・「磁気と真珠の融合」(熊本県)
 伝統産業である高浜焼きと天草パールのコラボでブランド確立。

 一つのブランドとして認知されるような一体感が演出できるストーリーを組み立てられればいいのですが。単に、一緒に名前を共有しましょう、一緒に宣伝しましょうでは弱いような気がします。

 事業仕分けでどう評価されたのかは知りませんが、地方が直接海外につながろうとする、いい刺激になると思います。
                                              (2009年12月16日)
■ご当地化粧品ブーム〜食から「美」へ堅い需要を狙った地方からの発信

 手堅い化粧品支出

 不況の中でも化粧品支出には底堅いものがあります。化粧品専業者だけでなく、医薬品メーカー、食品メーカー、
富士フイルムなどの全くの異業種まで数多くのメーカーが参入しています。

 化粧品はイメージが重要なので、従来は欧風または、東京の繁華街のイメージを強く打ち出すパターンが多かったのですが、最近はご当地コスメとでもいうべき地方独自の素材を原材料とする化粧品が増えています。

 ご当地スイーツからご当地コスメへ

 ご当地スーツという事で地域の産品を使ったお菓子が流行していましたが、ご当地コスメといってもいいほどのブームになっています。石鹸や化粧品は意外と簡単に作れるのと、地域の産品を使うことで安全、安心なイメージが生まれるのかも知れません。
 WEB通販など、流通チャネルが拡大し珍しい商材が求められているといった流通機構の変化もその背景にあります。
 悠香の「茶のしずく」(石鹸)が90億売り上げたので新規参入も増えたのです。
                                                (2009年12月15日)
表 ご当地化粧品の事例

日本粧業新聞の記事より
■大阪市内商業施設の利用者年代は北高南低?

 キタはサラリーマン・OLの街、ミナミは若者の街?

 ターミナルの後背地(キタの鉄道沿線はサラリーマン向けの郊外住宅が中心)や、事業所の性格(市内では北区、中央区に事業所が集中している)という背景からキタはサラリーマン・OL中心のハコ(建物内)の街で、ミナミは若者や何をして食べているのかよくわからない(自営業者)中心で建物内ではなく平面に拡がった街とよく対比されていました。

 4年前で、まだブリーゼブリーゼも出来ていませんし、ナビオもまだメンズ館ではなかった頃の調査ですが、大型商業施設のイメージ評価にもその特徴が出ています。

 20歳代に評価されているなんば、心斎橋、あべの の店

 20歳代に「おしゃれな人が多い」と評価されているのは「心斎橋OPA」「なんばパークス」「あべのHOOP」などミナミエリアの商業施設です。キタで同じようなパターンを示すのは「HEPファイブ」「ディアモール大阪」です。
 20祭から30歳代に評価されているのが「イーマ」「ハービスエント」。30〜40歳代に評価されているのが「ヒルトンプラザウェスト」。40〜50歳代に評価されているのが「ヒルトンプラザ」です。各年代でそれぞれ支持されている商業施設が存在するのがキタです。
(ブリーゼブリーゼはおそらくイーマに近い構造になっているはずです)

 ミナミ地区では路面店が欠落している年代のファッションに対応するのですが、阪神なんば線の開業で追い風が吹いているにも関わらず、中々まとまった力を発揮できていません。
 それぞれの事業者が個性を持っているのが魅了である反面、まとまりが悪い・・・・・それでもローカル市場で今までのやり方を変えずに何とか食べていけるので本当の危機感がない・・・この構図はキタに対するミナミ、東京に対する関西、世界に対する日本と相似形のような気がします。

 多極化の中でミナミに求められる発信力とホスピタリティ

 今、大阪市内の中でも注目されているのはキタとかミナミだけで分けられない生活に近いエリアからの新しい動きです。
 ミナミは幸いアジアからの観光客が訪れる観光エリアになっています。大阪の歴史と、大阪の中の各地にあるいいもの、楽しい場所を海外からの観光客、東京からの観光客に伝える発信拠点となれるポジションにあると思います。

 ローカルの魅力を活かしながら、ローカルな客だけを相手にした商売からの脱却が必要です。〜街の案内、案内の国際表記、治安の改善など、取り組みは始まっています。大きな資本が開発する街ではないので、市民の参加が必須です。

                                             (2009年12月14日)

図ーおしゃれな人が多い商業施設(市内通勤者のイメージ評価)

なにわ考現学05


■小さな組織が崩壊する時〜明確な役割分担とセクショナリズム

 「官僚制」と百貨店

 「官僚的」という言葉はネガティブな意味合いで使われることが多いが、縦割り組織とか役割分担の明確さはある意味大きな組織を公平さを保ちながら持続的に運営するためには合理的で、効率的なスタイルであることは間違いありません。

 そういった組織の中ででてくる「弊害」である機動性や融通のきかなさを、時間の掛かる正規の手続きを踏まずに、やりくりをする人がでてきます。問題意識のある有能な人が多いのですが、時にそれは「裏金作り」や「不正処理」という「不祥事」を呼び起こします。

 大きなピラミッド型の組織は今の時代には合わないのだと思います。(本来地場産業である百貨店が経営統合で大きな組織をつくろうとしているように見えるのは時代に逆行していると思います。今までに見た、元気な百貨店は、社長なり、店長がしょっちゅう店頭をうろうろしている(チェックしている)店でしたが・・・・・儲かっていたかどうかは定かではありませんが、課題解決は早かったと思います)〜肩書きが異様に長くなったら注意信号ですね。横文字の役職もね。

 小さな組織のフットワーク

 小さな組織であれば、お互いに何をやっているか、何をやろうとしているか把握しているものです。いい状態の時は、お互いの役割分担や担当領域を決めていたとしても、少しずつそれをはみ出させ重複して、お互いにオープンな議論が出来ています。
 そんな組織が、おかしくなりはじめるのはお互いがお互いの役割に閉じこもってしまい、相互の意見交換に越境が無くなったときです。特に会社の創業期や、成長期には自然に出来たことが、伸びが止まった停滞期になるとセクショナリズムが顔を出し始めます。

 おかしいなと思った経営者がトップダウンで強権発動して介入することが多いのですが、もその状態になると組織運営には逆効果でしかありません。
 「成果」「結果」を管理しようとするからです。「売上目標100%達成」とか・・・・。アウトプット=「成果」の管理はミドルマネジメントの仕事で、経営トップが管理するべきなのはインプット=「良い仕事のための動機付け」なのです。
 成果で管理すべきなのは、中間段階での管理がしっかりしている「官僚制」の組織で小さな組織にはそぐわないモノです。

                                                     (2009年12月11日)
■景気後退の影響を受けない市場もある〜開業1年目の阪急西宮ガーデンズの好調

 関西随一のマーケットの拠点である西宮という立地

 開業1年目を迎えた「阪急西宮ガーデンズ」が好調です。初年度売上高はSC全体で659億円。(さすがに玉川島屋ショッピングセンター全体の1,092億円には及びませんが、ららぽーとTOKYOBAYの653億円を上回っています)来館者数1,760万人。(玉川高島屋ショッピングセンターで1,680万人です)来館者数は予想の2,000万人を下回りましたが、買い上げ率や客単価は想定以上ということです。基本商圏である10km圏には芦屋や夙川、苦楽園といった関西有数の高級住宅地がありますし、有名私学も多い地域です。来館客数は平日4万人、休日6万人で、郊外ターミナルであるだけに電車の利用客が3割、車の利用客が3割とバランスのとれた分担率になっています。

 景気後退下の中で「上質なMD」を崩さないことを基本方針とし、「安いから売れているという傾向はみられない」そうです。

 デフレという声が聞こえるとメディアもいかにもそれらしい店舗を中心に取り上げるので、日本中が安売りでないと売れないような錯覚にとらわれますが、メディアの取り上げ方が次のメディアの論調に影響を与えるサイクルの中で「不況」が増幅されている様な気がします。

 確かに、百貨店の商品の価格は高すぎますし、ボーナスの支給金額が下がれば、財布のひもは締められますが、百貨店の高い商品を日常的に買える層は、本当はそんなにダメージを受けてないのかも知れません。
 店頭に並ぶ商品が無難で貧乏くさい商品ばかりになっているので、消費意欲をかき立てられないという側面も一方で存在するのだと思います。

「均質なマスマーケット」というのはもう無いことはわかっていながら、バブルであれば「富裕層」デフレであれば「低価格」へと一斉に右へなられしてしまうのは、考えて商売をしていないからでしょうね。

                                                     (2009年12月10日)
■再開発ビルの再開発の動き

 市街地再開発事業の低迷

 商業環境が厳しくなっていく中で、再開発ビルの商業施設はまとまった「経営」の意思が働かない分、厳しい状況に置かれています。駅前などの好立地にありながらも、区分所有者の集まりである管理組合と自治体が出資している3セクの管理会社、実際に商売をしている商業者の商店会と関係者が輻輳し意思決定のできる主体がありません。

 核店舗として入居している大型店が退店すると、とたんに破綻するケースが多くなっています。
 今年2月には阪急逆瀬川の商業施設「アピアさかせがわ」を運営する第3セクター「宝塚まちづくり」が破産しています。

 河内長野駅前の「ノバティながの」は核テナントの西友が撤退し、さらに専門店街を運営していた南海電鉄も撤退したことで存続が危ぶまれていましたが、再開発ビルの再開発を呼びかけるNPO法人「再開発ビルネットワーク」が改装を請け負い、新しいテナントを導入して再オープンにこぎ着けました。
 埼玉県久喜市の駅前の市施工の再開発ビル「サリア」は核店舗のダイエーが撤退し、空き店舗となっていたものを地元の不動産会社が取得し、ビル再生事業を展開している企画会社が生鮮三品を中心とした特徴あるテナントを集めて「クッキープラザ」として開業しています。

 大型テナント撤退であきらかになる「経営の不在」

 再開発の商業ビルの場合、核テナントの大型店に集客等を依存しているケースが多く、管理会社は商業施設の経営についてノウハウを蓄積してこなかったケースが多いので、(もちろん行政の外郭団体であっても経営をきちんと行っているケースもいくつも見ていますが)なんらかの形でPMの代行をする組織が必要になってきています。
 権利関係が入り組んで、オーナーと商売をしている人との利害が相反するケースも多いので、再開発事業を進めるのと同じぐらいのエネルギーが必要になります。

 多くの建物は設備も更新の時期に来ています。いくつかの成功事例をモデルケースにして再開発の再開発を考えていく時期に来ています。新しく建築物を建てるときにはそれなりの予算が捻出できましたが、ソフトだけの事業で、形になって見えない運営などのソフトにきちんと予算を投入する「習慣」ができればいいのですが・・・・・・。

                                                      (2009年12月10日)
■男性シニアは「口コミ」弱者?

 マスメディアだけでない情報ネットワークの重要性

 ネットの発達で若者のマスメディア離れが話題になっています。ただ、仲間内の口コミ情報を重視するという行動パターンはネットが発達する以前から若者の特性として現れていました。最近の調査では以下のような結果が現れています。

 性年代別に比較すると男性20歳代、女性30歳代を中心に40歳代ぐらいまでは口コミを参考にする人が多くなっています。

 ただ、その中でも男性の50歳代、60歳代ではその比率が大きく減少しています。ひとつには雑誌や新聞などのマスメディアへの信頼が厚いと言うこともいえます。また自分なりの価値観が確立していて他人の意見に流されないという見方も出来ます。

 一番ありそうなのは、信頼できると思われる口コミのネットワークがない(友達が少ない)ということもいえそうです。男性だけでなく女性の50歳代でもこの項目が低くなっているのは興味深い傾向です。
 4年前の調査ですから、団塊世代の多くが50歳代です。「団塊世代は群れることが好きな割に友達が少ない」という断定は差し控えさせていただきます。

 いずれにせよ、男性のシニアは口コミ情報に関しては情報弱者であることは間違いないようです。プライドが高いので「権威のない」回りの普通の人の言うことはすぐに受け入れられない・・・のかもしれません。団塊世代の特徴でしょうか・・・・。

                                    (2009年12月9日)
図−情報意識年代別の違い

なにわ考現学05より  (大阪市内通勤者対象のアンケート)
■予約が取れない農家レストランの人気と「物産催事」の陳腐化のスピード

 2ヶ月先まで予約が一杯の「農家レストラン

 奈良市の郊外のレストラン「粟」は2ヶ月先まで予約が一杯だといいます。オーナーは3年間、耕作放棄されていた茶畑を開墾し地場の伝統野菜を育て、200種類以上の野菜を栽培されています。ログハウスの粟は20席限定でランチのみの営業。メニューはお任せコースで2500円、3500円、5000円の3コース。和風の創作料理で都会のレストランと比べても遜色ないレベルだそうです。

 確かに農家レストランといえば手打ち蕎麦、イワナの塩焼き、山菜の天ぷら・・・・といったイメージがうかびますが、材料から手づくりでレベルの高い料理を出せば車で2時間かけて京阪神からお客様がやってこられるということです。

 最近は料理人を育てる専門学校でも、「農場カフェ」コースがあったり、自前で農場を持っているなどというところもあります。
「農業ブーム」とでもいえる農業の見直しが地域再生のひとつの希望であることは間違いありません。

http://kiyosumi.jp/awa/ へのリンク

 このレストランを新聞で紹介されている「かがり火」という地域づくり情報誌も面白そうなのでそのサイトもご紹介します。最近復刊されているようです。
http://www.kagaribi.co.jp/ へのリンク


 地域物産催事イベントは面白くないぞ

 地域物産展というのは百貨店の催事の定番で、特に北海道物産展はドル箱であるといえます。最近、百貨店に限らず、ショッピングセンターやスーパーなどでもイベント的に地方物産を売る業者さんが増えています。
 最初は珍しいのでよく除いていましたが、決して安くないし、新鮮でない(干物の味が濃い)、美味しくないのでかなり「陳腐化」が進んでいます。「珍しい」だけの価値では露出が増えると飽きられてしまいます。

 北海道の生キャラメルが瞬く間に陳腐化したように、個人の生業であれば価値が保たれるモノが「事業」になったとたんに駄目になるという事には多くの課題があります。

 公的補助や、電源立地対策などで地方の物産を販売する取り組みもありますが、もともと「小売業のセンス」がないエリートが地域の生産者を指導して行う事業なので、もとからうまく続くモノではありません。

 地域の生産者と都会の若い子を結びつける仕組みづくりが一つの鍵であると思います。

 
最近は同種の「楽天ランキング」も飽きられてきていますね・・・
                                                          (2009年12月8日)
■WEBで買えないモノの価値

 WEBによる情報の氾濫〜無料情報は90%がくず

 我々のような情報を商うような業種にとって、WEB上で簡単に情報(統計資料やアンケート結果、有価証券報告書等)があふれている時代は、商売がやりにくいじだいなのでしょうか?意外にそうでもありません。確かに統計情報を集めてきてまとめるだけの仕事は、お客さん自身が簡単にできるようになりました。ただ、必要な情報は(長期の時系列情報、もともと公開を目的としない調査、ピンポイントの絞り込んだ統計)はWEB上では手に入りません。民間の調査データは半分くらい「広告」です。
 WEB上にないデータは存在しないように思う人も多いのですが、探し方さえ間違えなければ、図書館その他で見つかることが出来ます。

 さらに言えば、情報を「どう分析」し「どう読み取る」かはそれなりのスキルが必要になります。WEB上のデータをコピペしていては事実には迫れないのです。・・・とまでいうのは手前味噌ですね。

 WEB販売していないモノに価値がある

 インターネットで何もかもが手にはいるという錯覚が蔓延しています。価格比較サイトで一番安いものを選ぶようなやり方でなんでも手にはいるのでしょうか?

 注文を受けてから漁に出て干物をつくっている魚屋さんがいます。送付日時とか魚種とかを指定して注文することはできません。その代わり、鮮度の高さ、味の良さは保証付きです。数を沢山作れるモノではないですから、WEB販売は行っていません。楽天のモールに出店するなどとんでもない話です。
 人の紹介で知る人は少しずつ増えますが、あまり拡がると今の品物が手に入らないと困るので、滅多なことで教えたくない店です。
 そんな商品、そんなお店はまだまだ世の中にいっぱいあるはずです。以前に、そんな品物を発掘して紹介するビジネスを考えたこともありましたが、それでは儲からないし儲けようとしてはいけませんよね、きっと。

 お金で売るのではなく、繰り返しやりとりをする信頼関係で成立する関係の上に成り立つ「交換」です。もちろん、通貨で支払いますが、高いお金を出して買いたたくようなものではないのです。京都のある種の老舗の商売もそのようなものなのかも知れません。

 WEBだからこそ、ロングテール商品が世の中に出るという「功」の部分と、隠れて知る人ぞ知る・・・と愛用されてきた商品がWEBモールに出品されると「価格で比較」される世界へ引きずり出されてしまうという、WEB販売の「罪」の側面を考えさせられます。

                                                      (2009年12月7日)
■ディスカウント路線とは一線を画するという島屋の動向

 百貨店各社の生き残りの方向性が見えてきた

 先ほど三越の希望退職者募集の記事が出ていました。正社員の五分の一が応募するという大幅なリストラです。ただ、地方店も直営で賃金水準が同じということとか、他社に比べて人員の過剰感が強いということですから、まだまだ「絞りしろ」はあるのかも知れません。

 考えてみれば、「百貨店」は20%の優良客の購買によって80%の貧乏タレに「リッチな気分の空間」「ただで使える都心の綺麗なトイレ」「ギフト解体品バーゲン商品」という豊かさのおこぼれを分けていてくれたのかも知れません。
 
 三越はその20%のお客様に向けて商売を集中し、我々のような貧乏タレからお金を吸い上げて会社に利益を残す工夫が足りなかったのでしょう。本社の経営者は、地方店から小型店まで20%の優良客にしか目がむいていなかったのだと思います。現場は大変だったでしょうね。

 島屋大阪店の方向性

 そごう・西武を経営しているミレニアムリテイリングはイトーヨカドーとの商品の連携を強めています。
 エイチツーオーリテイリングとの経営統合を発表している島屋はどうでしょうか。「時代変化に合わせたライフスタイル提案型出商品を提供し、地域別商品政策を敷き、地域密着ナンバーワン店を目ざし、ディスカウント型店舗の運営は考えていない」そうです。
 島屋日本橋店は三越と並び称されるハイグレードな店ですが、横浜店、大阪店、京都店はそれぞれ違ったポジションを持った店で成功しています。(新宿にもお店がありましたね)三越は本店しか地域一番店がなかったのと対照的です。

 特に大阪店は、呉服系百貨店でありながらターミナル立地の店特有の幅広い品揃えというか・・・・80%の大衆からもしっかり稼いでいるお店です。

 その大阪店には、2010年には128億円投資し、2010年3月に第一期、2010年秋に第2期、2011年春に本格開業する増床計画を進めています。
 第1期ではインポートの婦人衣料を編集した平場を拡大します。サロンルシックの平場は現在60歳以上の女性が中心顧客ですが(ということは70歳代が本当のお客さん?)、40歳代に新たな顧客獲得に向けて程良いトレンド感を加えた商品に刷新します。3階コンテンポラリーにはキャリア世代を対象とした新顧客を対象としたデザイナーブランドのセカンドラインを集約し、直接仕入れの買い取り商品で独自感を出していきます。・・・・それだけ、今まで対応できていなかった事の裏返しなのですが、価格訴求オンリーのニュースが多い中、少し新鮮な話題です。(元々が化石のような百貨店でしたからね)
 
 グランドオープン時には10階建ての新館が開業し、地階は食料品、地上1〜5階は婦人ファッション、6階は子供・玩具・文具など、7〜9階は東神開発が運営するレストランで開発コンセプトは「大阪テロワール」だそうです。テロワールという言葉はもうおなじみですね。歴史的な景観と、大阪固有の文化と人情が躍動する混沌としたなんばを訪問する人が、同地の誇り、親しみ、刺激を感じるように食い倒れ・芝居茶屋などの大阪の食文化と遊びを育んできた粋の街を形成する・・・・という事らしいです。

 大阪ミナミの町並みが大人が安心して遊べる街に再生するように大いに期待したいところです。・・・今まで難波周辺で落ち着いて食事できる場所がほとんどないというのが異常だったのです。

 激しい競争が展開されている梅田地区と違い、難波周辺はそのポテンシャルの割に競争が少なく、逆に魅力に乏しい街になっていました。なんばパークス、丸井の開業に次ぐなんば再生の起爆剤になるといいのですが。

                                                       (2009年12月4日)
■「貨幣」の価値が薄れていく中でマズローの欲求の5段階説の見直しを

 マズローの呪縛を逃れて

 心理学者マズローの欲求の5段階説はよく知られています。

マズローは、人間の基本的欲求を低次から
生理的欲求(physiological need)
安全の欲求(safety need)
所属と愛の欲求(social need/love and belonging)
承認の欲求(esteem)
自己実現の欲求(self actualization)
の5段階に分類した    ウィキペディアより引用

 低次なものが満たされてより高次なものに移行するというのが通説です。


 より高次なものはより「高級」でレベルの高いモノであると考えがちです。まず、お腹がいっぱいになってから「文化」に目覚めるとか自己実現に目覚めるというコトだと認識されていると思います。

 無料のコンテンツが普通になっている流れの中で「貨幣」以外の交換も当たり前になってきています。お金をどん欲に集めなくてもそこそこの収入があればデジタルコンテンツは享受できます。「稼ぐが勝ち」とか、「お金儲けは悪いことですか」という言葉はどんどん陳腐化しています。お金を集めても尊敬されなくなっているのですから。 
 
 人は何故ポトラッチ(贈与による蕩尽)を行うか

 ボランティアとか社会貢献は、自分の時間という貴重な資源を、直接見返りを求めずに贈与することです。お金を集めて生理的欲求とか安全や愛を求めるという段階を踏むのではなく、お金のない若い人達が社会のため、将来の地球の為にと活動している姿をよく見ます。淡路島で有機農業に取り組んでいる青年等。
 飢えることのない豊かな社会を理由に解説した人がいます。そうではないことは、昨年の派遣切りであきらかになっています。

 それでも世の中でさまざまな形での無償の贈与がおこなわれている・・・私は、承認の欲求や自己実現の欲求というのは「高次」のものではなく人間の根源的な整理に根ざした欲求ではないかと考えるようになってきました。
 多分、誉められるから、認められるからという対価を意識しているのではなく、本能に根ざしたもの、やりたいからやるという快楽ではないかと考えます。

 あ、もちろんそんな人ばかりではないですし、それを利用して儲けようという人も沢山いるでしょう。

 ビジネスを考えるときに単に「人より高級」とか「人より新しい」ということでしか差別化のポイントを見いだせないようではこれから大変ですよ、ということを申し上げたいだけです。
 
 ドルの価値が低下したのではなく、貨幣の価値が低下しているのです。貨幣の価値が薄まった社会では、マズローの理論のようなピラミッド構造は、もう無くなってしまったのです。

                                             (2009年12月3日)


 
追記、12月4日の繊研新聞のトップ記事は「ギャルに異変?ゴルフ、野フェス、農業、社会貢献」とでています。農業とか社会貢献が一部のインテリ層の「きれいごと」のお道楽ではないという事が。ここにも現れてきています。
■もう「消費」だけがビジネスのネタになる時代ではないのかも知れない

 無料のルール

 「フリー」無料からお金を生み出すルール(クリスアンダーソン)NHK出版は、色々なことを考えさせてくれます。「WEB2.0」のようなデジタル万歳の煽りの要素は意外に少なくて、歴史的な背景も押さえられた好著だと思います。

 そこでまとめられている「無料のルール」を私が理解できる範囲でまとめると以下の4つです。

1.デジタルのものは遅かれ早かれ無料になる。フリー化はとまらない
 (デジタルのもは無料が当然という世代の台頭に注目)
2.様々な企業がコアプロダクトを無料(または低価格)にして他のモノを売る方法を「みつけている。
  (航空会社から自動車まで)〜周辺ビジネスで収益を確保
3.「無料」からもお金儲けが出来る

4.デジタルコンテンツは製造費用がゼロに近くできるので、従来は製品の95%を売るために5%を無料で提供していたが、
  5%を売るために95%を無料にするモデルが可能。

本当は10原則としてまとめられているのですが、なにしろANALOGですからデジタルの事はよくわからないので、わからないことは保留としておきます。

 無料から出来お金儲けとは〜フリーのビジネスモデルとこれからの脱「消費」経済

 同書では無料かお金を儲けるパターンを3つに分類しています。(事例は私がアレンジしたものです)

1.直接的内部相互補助(別の形でお金を取り立てる)
 ・ひげそりの無料配布(替え刃でお金を払う)
 ・携帯電話(本体無料でも通話料でお金を払う)
 ・化粧品お試しセット(割高の商品を継続購入)
 ・携帯の家族通話は無料(携帯で家族と長電話はしない)
 ・スーパー玉出の1円豆腐(他の商品はそんなに安くない)
 ・郊外のショッピングセンターの駐車料金無料

2.3者間市場(第3者がお金を払ってくれるが、別の形で取り立てられる 例えば広告)
 ・フリーペーパー
 ・マスコミ(テレビは昔から無料、新聞代は原価に比べると安い=広告費で収益)
 ・アドビのアクロバット(リーダーは無料だけど製作ソフトは有料)
 ・クレジットカード(会費無料、店舗が手数料負担)

3.「フリーミアム」(一部の有料顧客が他の利用者の無料分を支払ってくれる)
 ・ウェブコンテンツは無料、印刷したものは有料
 (雑誌や本 「ほぼ日刊イトイ新聞」などはいつの間にか出版物や通販商品がふえていますね)
 ・オンラインゲームは無料で会員登録は有料
 ・コンピュータ同士の通話は無料、電話との通話は有料(スカイプ)
 ・閲覧は無料でビジネス利用は有料(グーグルアースプロ)

 これをながめていて、もいうひとつこれからの経済について考えていくポイントが浮かび上がってきました。

 貨幣経済の中に「贈与」の経済が入り交じってきている

 ・ニッポン・アクティブ・ライフ・クラブ(NALC)の時間預託(ボランティア時間を預託して交換する)のように貨幣でなく、時間で あったり、善意の奉仕を交換する仕組みが生まれてきています。
 ・見返りを求めない社会への貢献を行いたい人は少なくない。その善意につけ込んで“ビジネス”にする人達は論外(PR会社の仕掛けたホワイトバンド販売等)ですが、小さな善意をとりまとめて流通させる仕事には手数料が発生します。
 ・ウィキペディアのもともとの理念やリナックスなどもそうですが、「消費」することだけでなく「人の役に立つ」「必要とされる」「表現する」という欲望を充足させる持続的な仕組みづくりに「新しいビジネス」が生まれる可能性があります。


  私達が良く口にする「モノからコトへ」は「モノ消費」から「コト消費」(サービスへの消費)というフレームではなく、「消費」から「贈与」「社会的な認知」「自己実現」への欲望と理解しなければいけません。そしてそれをビジネスとするには「対価」ではなく別の形で収益をあげる工夫が必要なのです。

 その具体的方法は・・・有料コンテンツでご提供いたしましょう。(うそです)

                                                 (2009年12月2日)
■おばちゃん達の為の都心居住インフラを

 六本木ヒルズの漫画喫茶ルーム

 いまや、すっかりイメージダウンしてしまった六本木ヒルズですが、都心の住まいとして洗練された居住空間であることは間違いありません。ある雑誌でそこに住まうIT起業家系の富裕層?の経営者が壁一面にまんがの単行本をならべて漫画喫茶のように飾っているインテリアが紹介されていました。空間のデザインを使いこなすセンスを磨く時間もなくお金を掴んでいたんでしょうね。コンプレックスをむき出しにしたような、なんだか醜悪でもの悲しい風景でした。

 都心に住みたいシニア女性、田舎に帰りたいシニア男性

 都心のタワーマンションラッシュは一段落したようですが、都心の生活インフラも少しずつ再建され、「都心に住まう」ということが一つの選択肢として定着してきました。十数年前に調査したときには、かつて都心に住んだことがある人以外は「都心」に住むという事をイメージできないという結果が出ていました。

 都心に住まう人の中では「余裕のあるシニア層」がターゲットとして注目されています。私が行った調査では、シニア層でも男性と女性の間に大きなギャップがあることが明らかになっています。
 男性はリタイア後は田舎暮らしに憧れる傾向が強いのです。職場での人間関係に疲れたのか毎日の通勤で都心は堪能しつくしたのか、都心居住意向は低くなっています。
 反対に、女性ではどちらかというと都心居住意向が強くなっています。男性にとって都心は単に働くだけの場所であるのに対して、女性にとっては働くだけでなく、人と会い、食事をし、音楽を聴いたりお芝居を楽しんだりする場所なのです。

 過去から言われている男女の「文化ギャップ」=仕事しか楽しみのない男性と、消費の中で文化を楽しむスキルを身につけた女性のギャップ。特に団塊世代に顕著。がリタイア後に一気に露出しているのだと思います。

 都市の魅力はそこで楽しめる「文化」です。自分も参加し、あるいはお金を払うシニア女性を沢山都心に誘導することで大阪市内の文化のパトロンを育成することが急務です。

 大阪のおばちゃんというステレオタイプでは派手な服を身につけて商店街を傘立てをつけた自転車で闊歩しているイメージが強いのですが、文化的なスキルの高いシニア女性は沢山います。古典芸能、現代芸術、音楽など若者の呼び込みだけでなく、お金を持ったおばちゃんのポテンシャルを活用しない手はありません。ヒルズ族の品のなさに比べてはるかに質の高い街が形成されます。

 、プチ六本木ヒルズか「高級介護住宅」だけでない差別化のポイントが必要です。

                                                (2009年12月1日)
図ー大阪都心居住以降(大阪市内通勤者)

(なにわ考現学05)
図ー定年後に希望する暮らし方

(特定非営利活動法人 ニッポン・アクティブ・ライフ・クラブ「団塊の世代を中心とする”定年ビフォア・アフター”世代の生活意識調査2004年  当時54〜56歳が団塊世代というくくりで集計されています)


 11月
■半世紀ぶりに落ち込んだ世界のラグジュアリー市場と「無料」の時代の百貨店戦略

 世界のラグジュアリー市場は10年半ば以降に市況回復が予測されている

 イタリアのラグジュアリー企業が加盟するアルタガンマ協会の予測レポートによると、半世紀ぶりに落ち込みを見せた世界のラグジュアリー市場は2010年には日本を除いて前年を上回る見通しだそうです。欧州は前半は2%減ですが後半は4%増。北米は前半8%減、後半8%増。南米と中東は前半、後半とも5%増。日本を除くアジアでは前半、後半とも12%増と予測されています。ちなみに日本は前半6%減、後半2%減と唯一蚊帳の外らしいです・・・・。

 市場縮小の要因として「世界経済危機とそれに対するパニック反応〜過剰反応?」「成熟市場におけるラグジュアリー消費者の老化」などがあげられています。・・・・パニック反応は収まるとしても「老化」に対してどんな対応がなされるのでしょうね?より若い中東や南米、アジアの成長力に期待しているのでしょうか。

 レポートが分析する消費者の変化は次の4点

・ラグジュアリー商品を買い控える、購入を先送りにする
・見栄を張った商品から控えめな消費へ
・ラグジュアリーとチープの両極化それらのミックス&マッチ
・ラグジュアリー商品には本物の価値を認める

この動きをいち早く戦略に反映させることができる企業が10年に勝者となると分析しています。
                                                (繊研新聞11月30日)

 ラグジュアリー市場の定義をどうしているのかも気になりますが、ドバイショックが世界を駆けめぐっているように新興国の活況も成長への期待という脆い基盤の上に成り立っているだけに、回復の予測については何ともいえません。ただ、消費者の変化についての分析は世界的な傾向と日本国内の消費者トレンドが一致しているのが興味深いポイントです。

 新・百貨店モデルは次の「ラグジュアリー市場」を開拓する「お試しサンプル」を提供しなければならない

 「ラグジュアリーブランド」(?)の小物が雑誌の付録になっている時代です。今のマーケティングは、低価格のお試しセットや無料サンプルでまずお客様を掴んで、顧客名簿を集めて長期的なレンジで収益を上げていこうというものです。

 Jフロントリテイリングなどが行っている新百貨店戦略=価格帯の幅を広げて今まで百貨店に足を向けなかったお客様の来店を促すというのは、間違っていないと思います。ただし、拡げたラインの収益で食べていくのではなく、新しい顧客にラグジュアリーの本物の価値を認めてもらいユニクロの服とコーディネイトして着こなせる将来の顧客を育てることが戦略でないといけません。

 全身同じブランドで固めたような成金はいなくなっても、本当の価値を手に入れたい消費者は必ず存在しますし、百貨店はそのようなお客様に支持されることが必要な業態なのです。

                                                           (2009年11月30日)
■「料理の美味しいホテル評価」の世代ギャップ

 美味しい料理はホテルで・・・・の時代の終焉

 少し前までは、フランス料理などの美味しい料理、あらたまった料理を食べるときはシティホテルへという感覚が残っていました。格式があり無難な本格料理が食べられるという安心感が魅力のひとつでした。
 先日発売されたミシュランガイドでホテルのレストランの存在感は希薄でした。京阪神でもスターシェフの街場の料理店がファーストチョイスになります。三ツ星で評価された「ハジメレストラン」(江戸堀)はウィンザーホテル洞爺湖で修行したシェフ、そしてホールスタッフのホスピタリティが売り物ですし、二ツ星で評価された「ルポンドシエル(北浜)」はフランス人のシェフが常駐していることが売り物です。

 ファッションにおいて「無難な」「入門編」であったのが百貨店だとすると、食の分野でその機能を果たしていたのが都市ホテルなのでしょう。
逆に言うと百貨店同様、個別の売り物がないのです。
 
 関西のホテル「料理の美味しいホテル」世代別の特徴

 20歳代:全体に回答率が低くなっています。ホテル利用自体が少ないのだと思います。
 30歳代:リーガロイヤル、ヒルトン、ザリッツカールトン、ハイアットなど婚礼関係で利用が多いのかも知れません。
 40歳代:ヒルトン、帝国ホテル、ニューオータニといったバブル期の「新御三家」の割合が高くなっています。ウェスティン、スイスホテル、ホテ       ル阪急などこの年代だけで突出しているホテルもあります。若いときに楽しい思い出があったのでしょうね。
 50歳代以上:老舗ホテルリーガロイヤルへの評価が高い層です。


(11日の記事補足)

 東洋のラスベガスマカオのカジノリゾート

 アマンなどの隠れ家リゾートとは対象的ですが、人口54万人に年間3,000万人の観光客を集めるマカオ、わずか28.6`uの中に豪華絢爛なカジノリゾートが次々と建設されています。2007年にオープンしているのが「ザベネチアンマカオリゾートホテル」ですが、この7月には2つめの大規模カジノ「シティオブドリームオブドリームス」が開業し、一ヶ月で120万人の来場者があったそうです。
 華やかな施設の写真を見ていると、あちこちに誘致したがる知事が増えるでしょうね。
 カジノであぶく銭を掴みたい人はマカオへどうぞ。ラスベガスの観光客のイメージと違って中国人は賭博に真剣ですけどね。

 http://macaumacau.com/modules/macau_news/index.php?page=article&storyid=118 へのリンク


 http://www.venetianmacao.com/jp へのリンク
                                                      (2009 年11月27日)

図ー料理の美味しいホテル評価

(なにわ考現学05)大阪市内通勤者アンケート調査より
■ゼネコンの未来はどこにあるのか

 ハコモノから人へという政府の方針は大きな時代の流れ

 景気低迷下で民間の建築需要は低迷しています。公共事業も政府のハコモノから人への方針転換で今後減少していくことは明らかです。建築業界をリードしてきたゼネコンはこれからどこへ向かうのでしょう。

 ひとつは海外に活路を見いだすという方向性があるでしょう。また、今後も需要が見込める建築物の修理や再生市場を押さえる事も必要でしょう。それだけでは今の規模、今の機能を維持することは出来ません。

 広告、IT業界にもあった一括受注(丸投げ受注)のゼネコン的な仕組みは崩壊している

 建築業界だけでなく広告やシステム構築の分野でも、大手企業が丸投げで請け負い、企画から仕様書の作成、さまざまな面倒事の処理や企画ソフトの発注管理などをすべて代行する・・・・・そのような仕組みはなくなっていくんでしょうね。

 電通が媒体費だけでなく、人件費を算定して請求するようになったと言うことが示すように、必要な費用はきちんと項目をたてて細かく請求するようになるんでしょうね。コンストラクタ(請負業者)でなくコンサルタントに限りなく近づいていくということになりそうです。はっきりと施主サイドに入り込むコンサルタント機能と、請け負った工事を効率的かつ迅速にこなしていく工事部門がわかれていくのかもしれません。・・・・・それでも今の売上を維持は出来ないでしょう。世界でも最高水準にある建築技術を継承していくためには、定期的に「遷都」を行い、需要を創造するというのはどうでしょう(すいません、つまらない冗談です)

 AAFというネパールに学校を作るという建築家のボランティア団体のカレンダーをいただいたので、それを眺めていたらつまらないことまで考えてしまいました。
http://aaf.cool.ne.jp/ へのリンク

 ゼネコンに勤務されている若くて優秀な方・・・・彼らが能力を活かすためには、コンサルの仕事でできちんとお金を取れる取引の仕組みが必要なのだと思います。関西は特にそうですが日本ではソフトにお金を支払う習慣がないので、(そのうえ外資コンサルがやらずぶったくりの悪い事例を一杯作っているので「コンサル」の評判はすこぶる悪いのですが)
 成果をあげる事への成功報酬的な料金体系がとれれば可能性はあると思います。すでに電通さんはそうなりつつありますね。

                                            (2009年11月26日)

 
さて,2014年の景気回復局面で,建設業界は「人材不足」に直面しています。現場の作業者は外国人労働者を調達するのでしょうが、現場管理者や「まちづくり」を一から計画したことがあるスタッフも若手にはいないので困っているそうです。(海外のニュータウン受注時)

 地方の建設会社は生き残りの為に業態展開、事業縮小をすませています。今から事業を拡大しても2020年の東京オリンピックの後は、確実に需要は激減します。・・・・・


 (2014年6月)
■スローな大阪案内

大阪マルシェ
 「大阪マルシェ」ほんまもんという生産者と消費者がつながる産地直売のイベントがありました。残念ながら私は知らなかったのですが、ご近所のうつぼ公園でも開催されていたとのこです。
 面白そうな試みです。農林水産省のマルシェジャポンプロジェクトの一環らしいです。
主催者は2009マルシェド大阪テロワール実行委員会さん。テロワールは流行語になってしまいましたが、そのコンセプトには共感する人は多いでしょうね。
http://naago.kir.jp/osaka_marche/index.html へのリンク

こうや花鉄道「天空」
 南海電鉄が高野山で運行しているこうや花鉄道「天空」には鉄道マニアでなくても惹かれるものがあります。ゆっくりと時間をかけて高野山を登る展望電車です。

 7月に運行を開始して2万人の利用者があったそうです。展望キャビンで外気を感じることが出来るのが魅力です。
http://www.nankaikoya.jp/tenku/about/index.html へのリンク



秋の靫公園 四季それぞれの顔がありますがとりわけ秋が美しい公園です。
                                        (2009年11月26日)
■「無料」をキーワードに新しい価値を考える

 ディスカウント競争の行き着く先は「無料」なのか?

 「FREE」無料からお金を生み出す新戦略 クリス・アンダーソン(NHK出版)を書店で手に取ったとき、考えているいくつかのことに対して、「補助線」を引いたように整理が出来るような気がしました。

 私たちの身の回りには「無料」があふれています。あるいは10円とか100円と言った極端に安い・・・というか製造原価から考えると考えられない価格のついた商品は珍しくありません。材料を仕入れて、加工して付加価値をつけて販売するといったメーカーの発想が成り立たなくなってきています。

 無料にする、あるいは低価格にする販売サイドとしての狙いはいくつか考えられます

1.顧客名簿を作成する
 流通チャネルを新しく開拓するにはそれなりに時間とコストがかかります。広告宣伝費もマスへの発信の効果が薄くなった現在馬鹿にならない負担になります。(通信販売では売価の2〜3割は広告費が占めます)
商品に関心のある顧客の名簿を10万人分集めれば実際にやりとりが続く顧客は3割の3万人。その3万人にカタログを送れば10%の3,000人から反応があります。

2.形を変えて料金を徴収する
 携帯電話や、通信関係に多いパターンで、2年間契約すれば無料とか、100円でパソコンを販売とかいうものです。実際は通信料金でしっかり課金されており、途中解約すれば、その時に残額を請求されます。購入した人の気持ちになれば、詐欺のようなモノです。

3.昔ながらのSF商法(催眠販売)
 安いモノをばらまいて、桁違いに高額な商品(羽毛布団、健康器具)を売りつけるもの。対人関係の暗黙のルール、貸し借りのバランスを逆手に取った本当の詐欺。

4.顧客の囲い込み
 競争相手の顧客を自社に取り込んで、自社のシェアを最大にする。・・・マイレージポイントとか新聞拡販の景品とか

う〜ん、あまりポジティブな事例がおもいつかないですね。ただほど高いモノはないという「古い」倫理観が染みついている所為でしょうか。

(ちなみクリス・アンダーソンの本はまだ読んでいません。WEBが開く新しい可能性とか、グーグルが提供する無料OSとかの素晴らしさについて記述されているのかも知れません。同書についてはちゃんと読んでから論評します〜ここで論じているのはコンセプトに触発されて考えていることなので要約や書評ではありませんので念のため)

 ネットのヘビーユーザーはお金の無い暇人ばかりで、消費につながらないという極論もある一方で、20年前に比べて特に「情報コスト」については確実に変わってきている事も実感します。

 無料が当然だったものが有料化してきている

 一方で、従来無料が当然だったもの、公共性が高くて安い費用で提供されてきたものが有料化してきています。
 例えば駅のトイレ、横浜駅のエキナカ施設「リフレスタ」は女性のためのリフレッシュステーションをコンセプトにパウダールームのメーキャップラウンジ、フィッティングルーム、授乳室、無線LAN、携帯電話充電器を自由に使えます。
 メーキャップラウンジでは花王の化粧品やヘアケア用品、パナソニックのドライヤーなどを備え付けています。授乳室には試供品の紙おむつもあり、企業のショールーム、サンプリングの拠点となっていることもうかがえます。30分200円。同様の施設はJR大阪駅の「アンジェルブ」、東京メトロ池袋の「クリュスタ」なども開設されています。着付け教室やデイリーエステが提供されている施設もあるようです。

 今まで無料だったJALの機内サービスもこれから有料になっていくんでしょうね。

 「無料」を考えるときに1人の人間の長期間のレンジで支出の囲いこみとか(自由を売って無料を手に入れる?)、広告宣伝コストの負担とか考えることがつながっていきます。消費社会の転換期を分析する有効なキーワードだと思います。

                                              (2009年11月25日)
■地域の需要があるという強み〜国際競争力は内需があってこそ

 ラグジュアリー市場が好調な台湾百貨店

 アジアの勢いのある国々の中で韓国と台湾は対照的な違いがあります。韓国は「財閥」=大企業が強く、エリートは大企業で働く事を目指す傾向が強かったのです。とはいえ日本と違い、一つの会社で上り詰めると言うより他社に転職してキャリアアップを図る人が多かったのですが、台湾は中小企業の国というか、儲かりそうなビジネスであれば自分で独立して始める人が多いのです。(しばらく前の話なので、今はもう変わってきているかも知れませんが)

 台湾でも百貨店は衰退期に入ったとも言われているようですが、富裕層に支えられたラグジュアリー市場は堅調だそうです。中国本土からの観光客も伸びているようですしね。中間層に支えられた日系ブランドが円高や同質化競争で苦しんでいるといわれています。

 それでも、日系の百貨店や日系のアパレルは今まで強い支持を得てきていました。世界で一番品質基準にうるさい国内での激しい競争の中で鍛えられてきた為なのでしょう。

・・・・中国、台湾とか韓国では日本の百貨店が「ブランド」になっています。中国で実際にうまくビジネスを拡げているのは量販店系の大型店だったりするのをみていると、日本の百貨店は本当に自分たちの強みに自覚的でないし、活用できていないなあと思います。
 
 ジャパンブランドと日本市場という強み
 
 地域の資源をブランド化し、海外に売り込んでいこうというジャパンブランドという制度があります。地域の伝統工芸技術などを中心とした商品開発が多かったのですが、今少し違った切り口で展開できないか考えています。
 「市場」を特徴にした特徴付けをできないか?作り手の技術+使い手の選択を含めた日本製品の特徴を出せないか?

 景気低迷下で、これからの成長産業はどこにあるのか?迷走していますが、環境、農業、「介護」は単に税金から補助金がでそうな産業というだけでなく、海外に輸出できる技術、ソフトウェアが構築できるかどうかが鍵だと思います。
 
 「ものやサービスをやりとりする市場」から「IT技術だけでないソフトウェア」が体系化できれば国際競争力が強まる・・・という筋道を描き出せれば私の企画は成功なのですが。

                                                  (2009年11月24日)
■お客様に届く売り方〜投網をかけて一網打尽に出来る固まりは少なくなっている

 お客様に直接届けるダイレクトマーケティングの課題

 2008年の通信販売業界の売上げ高は4兆1,400億円。2007年の3兆8,800億円に比べて6.7%の増加でした。さすがにこの9月はー2.4%ですが、食料品、家庭用品は+のようです。
 
 景気低迷下で大きく需要が伸びない中で、顧客の固定化、囲い込みが小売業の喫緊の課題になっています。その意味で顧客の顔や購買履歴が把握できる通信販売、ダイレクトマーケティングに注目が集まっています。ネットモールを運営しているしている楽天の業績が好調なことからネット販売に参入しようという生産者の方も多くなっています。

 モール型WEBサイトは1to1マーケティングとはかけ離れたビジネスモデル

 楽天などに代表されるWEBモールでの通信販売は、確かに商圏を広げるチャンスではあるのですが、お客様とのコミニケーションの中で関係作りを深めて固定客かをはかるダイレクトマーケティングの考え方とはかけ離れたモノであることを覚悟して利用してください。

 出店して、最初は利用者を増やす=名簿を集めるために、採算度外視のセールを連発する必要があります。あわせて、広告出稿が求められます。(「楽天税」と揶揄されていますが)初年度は利益をほとんど広告につぎ込む必要があります。
 その上、集めたメールアドレスの利用にはその都度コストがかかり、退店時には持ち出せません。売上が上がっているテナントでも、利益が残らないので出店を取りやめるケースも少なくはありません。(もちろん、出店者側に小売業者の資質、適性がないという場合も多いでしょうが)

 通信販売事業者の営業利益が平均10%であるのに対しWEB中心の事業者は1%程度です。(それでも百貨店の低い利益率とあまり変わらないのですが)

 その上、セールで集めた価格目当ての客は固定客にはなりません。(実店舗と同じですね)

 一網打尽を狙うのではなくターゲットにあった商品と媒体選択が必要

 すごく当たり前のお話ですが、通信販売であってもターゲットにあったMDと、媒体の選択が必要です。化粧品は30〜50代ぐらいまでは通信販売で売れていますがそれ以上は健康食品との組み合わせが有効そうだとか、60代以上には新聞広告が強いとか折り込みチラシは意外に幅広い年代に有効そうだとか・・・・商品特性やお客様の顔を考えて工夫することが楽しいと思える人でないと小売業は難しいでしょう。

                                    (2009年11月20日)
図ー通信販売で購入した品目  「2008年通信販売の利用実態」

  社団法人 日本通信販売協会 2009年5月

表ー過去1年間の通信販売利用媒体

 社団法人 日本通信販売協会 2009年5月
■韓国の景気回復と百貨店の売上げ増加〜中韓の勢いにまどわれない未来戦略を

 韓国のGDPは前期比で+2.9% 消費者心理も高い水準に

 中国の+8.9%には及びませんが、韓国の7〜9月期のGDPも前期比2.9%の伸びを示しています。それにともない消費者心理指数(韓国銀行発表)も過去の最高値に匹敵する水準に回復しているといいます。特に中流層の消費心理が改善したようで、ロッテ百貨店で9%、現代百貨店で7.9%、新世界百貨店で9.7%の売上増となっています。(上半期でも4.8%は伸びていたので、2桁減を続ける日本の百貨店の事情とはことなりますが)

 ウォン安政策で輸出が伸びており、株式市況も活発化しています。庶民層はともかく、上位20%の階層の消費心理が改善したという見方が強くなっています。

 中国だけでなく、つお隣の韓国の景気回復を見ると、つい比較して気になりますね。GMS大手の減収減益とか、かつての「ナショナルフラッグシップ航空」の経営破綻状態のニュースを見ていますと・・・。

 少し景気が回復すると日本のマーケットも「昔みたい」になっていくものでしょうか?

 文明の次の局面の「価値観」への対応

 大量生産、大量消費モデルはもう行き詰まっている事は国民的な合意になっているように思います。「地球環境」という言葉がこれほど国内隅々まで行き渡っている国はおそらく、欧州などの一部の国ぐらいではないでしょうか。

 実際の消費の局面でよく使われる「モノ消費」から「コト消費」というのは別にものが有り余っているからではなく、日本国民が薄薄感じて共有している「文明の変化」への適応ではないかと思います。

 例えば、住宅はかつては「資産」として残しておけるものでしたが、特に都心部の集合住宅などは所有しているだけで新しいコストは発生しても、「値上がりする資産」ではありません。どれだけ、その住まいで楽しい暮らしが出来たか・・・その為の「コスト」が住宅取得費だったと考えるようにしないと、資産が目減りしていくという計算ばかりしているとちっとも楽しくない。
 自家用車もかつては次々と乗り換えて上級車に買い換えるので、中古車として高く売れる「白」の車ばかりでした。・・・・それが好きな色なのか?乗っていて楽しい色なのか?そう考える人も増えてきています。そのステップアップのサイクルが崩れた事も顕在化してきた一因です。

 日本は国力をあげる競争ではなくプロセスを楽しむノウハウを充実させる時代になっていきます(プロセスを楽しむのは女性が得意な分野ですね)。数字をあげてその達成率を競うのは男性にはわかりやすい原理なのですが、若い男の子も女性化している事からも時代の変化に日本人の価値観が適応しようとし始めているようです。

 価値観の変化が時代、社会を変えるのではなく、時代や社会の構造の変化が「価値観」を変えていくのです。その順番を間違えると、先の予測ができなくなります。

                                               (2009年11月19日)
■生活のない「生活遊園地」と、退化する宿命を持つ街について

 ラスベガスの事を考えていると、「生活遊園地」というコンセプトを思い出した

 ラスベガスの衰退は単に景気後退の中でのコンベンション需要の減少の影響を受けているだけで、あれだけ楽しいことが一杯詰まった街が駄目になるはずがない・・・・と考えている人も多いかも知れません。
 ラスベガスの独自性はカジノの集積だけで、後はその「集客力」をベースにして、いろんな才能が知恵を絞ってショー・エンタテイメント空間を作っているところにあります。

 エンタテイメント施設の特徴は、次から次へと「新しいアイデア」を投入し鮮度を保つ必要があることです。成功している間は追加投資も出来ますが、収益〜投資のサイクルが何らかの事情で滞ると悪循環が始まります。ラスベガスもカジノの収益は底堅いとしても、カジノの魅力を他の地域と差別化していたのはエンタテイメント機能ですから、エンタテイメント機能の革新がが詰まってしまうと、コンベンション機能も、コンドミニアムも魅力を失っていきます。

 「生活遊園地」というコンセプトで開発された大型ショッピングセンターがありました。1985年尼崎市に開業した「つかしん」です。開業当時は西武百貨店を中心に新しい街ができたようなエンタテイメント型のショッピングセンターでした。現在は平和堂や上新電機、温泉など地域住民の需要に対応したショッピングセンターに生まれ変わっています。西武百貨店はもうありません。完成したときは当時の最高のタレントが知恵を絞った施設でしたが、その時を100%とすると進化することなく、どんどん劣化していったように思います。街として進化する仕組みが組み込まれていなかったのが致命的です。
 当時「立地創造型ショッピングセンター」という言葉が使われていました。「つかしん」の立地はターミナルでもなく、交通の要所でもない本来は「人が集まる目的」の無い立地でした。

 開業時が100%の商業施設の未来は「退化」するしかない

 大抵の商業施設は開店時が一番魅力的です。何故かというと、ハードへの巨額の投資の中でソフトにも一定のお金をかけているからです。開店後のソフト投資は売上利益の中のやりくりになりますから、あまりお金をかけません。10年に一度ぐらい改装が必要なのは、ハードへの投資の中でMD変更を含めたソフトへの投資が出来るからです。

 ハコモノにしかお金をかけないのは別にお役所だけでなく日本の社会の特性です。

 街を持続させるのは「生活」という資源

 「つかしん」商圏としていたのは大阪、神戸という広域でした。そこから人を集めようとするとかなりの知恵=コストがかかります。周辺の住宅地についてはあまり意識されていなかったように思います。もし、「つかしん」のコンセプトに基づいた住宅開発が並行していたら、あるいは学校の誘致があれば、定期的にそこに居る人の「生活」から街の根っこがはえていたでしょう。 85年以降のバブル期は資金を詰めるにはいい時期だったでしょうが、そういったすぐに収益のあがらない不動産事業には不向きな時期だったのかも知れません。

 生活のない街は、一時的に人を集めることは出来ても「持続」しない。「退化するだけです」ごく基本的な話ですが、商業施設は「生活」と遊離しては成立しないのです。

 とはいえ「生活感」のないきらきらしたモノにも惹かれるのも事実

 ラスベガスや、生活遊園地のコンセプトに惹かれてしまうのは「生活感」のない非日常の魅力もあるからです。その要素は街の魅力の中心として固定することはできませんが、「期間限定」で提供されるニーズがあります。

 大阪市バス車庫跡地に信託事業で作られた「フェスティバルゲート」は建物の中をジェットコースターが走る、「奇想天外」な施設でした。少なくとも常識ある人ならば、必ず飽きられる「奇想天外」の補修や改築コストを考えると却下されるアイデアです。大阪の歴史をみても千日前にあった建物といったいとなった遊戯施設など、開業当時は流行っても飽きられた施設がたくさんありました。

 それでもなお、判断を間違うことがあります。当たり前のことを今更とも思いますが、繰り返し発信するしかないのだと思います。

                                              (2009年11月18日)
■旧そごうの致命的な欠陥とアメリカ村の衰退の風景

 14日に開業した大丸北館の背負う負の遺産

 まだまだ、変化する途上とはいわれていますが、大丸が志向する「新百貨店モデル」の形が見えてきています。地下の「うふふガールズ」は良くお客様が入っています。今までに取り込めていなかった客層をうまく捕まえました。
 1階、2階といった一番売場効率がいいはずのフロアがまだはっきりしないのが不安です。海外ブランドは契約も残っていたのでしょうが、賃貸条件はかなり百貨店にとっては悪いはずです。

 上層階はだいたい予想の範囲です。ABCクッキングスタジオが後付なので、しょぼいIHコンロしかおいていないようで(やっぱガスでしょう)規模も小さいモノでした。西宮ガーデンズのような広さと本格的なガスの調理設備があれば、人が集まるテナントなのですが・・・。

 何よりも再認識させられるのはこの建物が持っている構造的な欠陥です。上層階に上がったときに「商品が少ない」と感じるはずです。商品が集まらなかったの?と邪推しそうですが、これはそごう時代からの欠陥です。吹き抜けを大きくとりすぎていて「商品」が目立たない、売場が貧弱に見えるのです。

 ショッピングセンターであればテナントの店舗の中で商品を演出できますが、百貨店のオープンな売り場が拡がると「吹き抜け」のアメニティが逆効果なのです。大きな吹き抜けを持つ百貨店はたいてい失敗しています。百貨店のことがわかっていない人達がやってしまったのだと思います。

 大丸は梅田大丸で高層の百貨店をうまく作っていましたが、お下がりのハードの構造ではノウハウの活かしようもありません。

 新しいチャレンジのスタートはいいのですが、収益を上げていくためには地下フロア以外について時間をかけて見直しをしていく必要がありそうです。このままでは、どこで収益をあげるのかが見えていません。

 アメリカ村の惨状

 南船場のシャッター通り化の噂が心配で周辺を歩いてみました。もともと、店舗は点在していますし、さびれた街だったので、いくつかの空きがあってもそんなに心配しなくていいでしょう。強欲な地主?も空きが出れば家賃を下げるでしょう。中心がないような街なので、家賃の安い周縁に拡がればいいだけです。

 心配なのはアメリカ村です。かつての中心施設であったビッグステップ前に空き店舗がありますし、三角公園周辺の「ブルータスビル」も閉鎖されていますし、虫食い状態で人通りも少なくなっています。この町は良くも悪くも人や店が集まる「縁日状態」が活気の源だったはずです。阪神なんば線の大阪難波からの回遊が心斎橋活性化にもつながる大事なキーポイントなので、この衰退はちょっと問題でしょう。(ビッグステップも良くないと聞きますしね)

                                              (2009年11月17日)
旧そごうと大丸北館の比較




■景気後退と習慣の変化で逆風を受けるギフト市場

 個人ギフト市場は8兆5,570億円、法人ギフト需要は1兆7,785億円

 2008年は秋のリーマンショック以降急激に景気が後退しました。ギフト市場、その中でも返礼ギフトの市場は景気の影響を受けにくいと言われていましたが、もともと市場縮小の傾向にあったものが、さらに追い打ちを受けていると分析されています。

 母の日ギフトがクリスマスを上回っているとか、長寿祝いが伸びているとはいえ、敬老の日と合わせてもまだまだバレンタインデー+ホワイトイデー」ギフト市場には及ばないモノなんだなあと、業界関係者でなくても眺めていると色々と考えさせられます。
 推計をまとめた「月刊ぎふと」はギフト業者さん向けの専門誌で、2年に一度独自の推計でギフト市場規模を発表されています。

 返礼ビジネスは習慣変化の波を大きく受けている

 返礼品ギフトといえば、まず結婚式の引き出物ですが、最近は従来型の結婚式場やホテルだけでなく、ハウスウェディングやレストランウェディング、あるいは海外挙式など婚礼を行う会場が多様化しています。かつては婚礼カタログで一律に決めていたモノが多様化してきています。

 チョイスギフトとしてカタログで選ぶものも増えていますが、カタログの商品として最近はモノだけでなく「コトギフト」に業界の注目が集まっています。旅行や食事、お花や着付けの習い事など、体験型ギフトです。
 婚礼、出産、仏事などの返礼ギフトへの対応からパーソナルギフトでのチョイスギフトの拡大を意識したものです
 仏事のギフトは死亡者数は増加していますが、高齢化に伴い会葬者数の減少や香典額の減少傾向があり仏事ギフトも競争が厳しくなっているといわれています。

 近年は都市部を中心に家族葬や直葬など葬儀自体はコンパクトになっています。故人を悼み、思い出してもらような告知・お礼を兼ねたグッズを生前に予約してもらうとか違った形でのサービスが必要になってくるでしょう。

 ギフト市場は機会を掴めば大量に品物がはける「手間のかからない」市場であったのが、一つ一つに手間をかける「めんどう」なマーケットになってきています。

 この市場に限らず、「楽をして稼いできた記憶を引きずる」(まあ、実際は楽ではないのですが)既存業者が市場変化に対応するには時間がかかります。こんな市場には、新規参入事業者のチャンスがあるものです。

                                         (2009年11月16日)

2008年ギフトマーケット推計  (単位:億円)

(月刊ぎふと 推計)月刊ぎふと 2009年7月号より


■心斎橋の変化と広域ミナミの連携

 心斎橋が動き出す

 大丸心斎橋北館が明日オープンします。専門店中心のローコスト運営で百貨店本体では対応しにくい時代対応をスピーディーに行う役割と言う位置づけは当初の想像通りです。2月27日に書いたように、そごうからの買収価格379億円は高いと思います。運営形態がちがうのでしょうが、テナントの値入率2割というのは通常の取引より10ポイント以上引き下げた数字です。これからはこの数字がスタンダードにならないといけないでしょう。販管費を落とすしかないのです。

 大丸は島屋や三越、阪急、近鉄など同業他社に比べ専門店ビルの運営ノウハウが無いように見えますが、かつてはビッグステップの運営にも関わっていましたし、クリスタ長堀、日航ホテル内のホワイトアベニューなど心斎橋近隣の専門店の運営を行っています。
 白紙になっていた香川県事務所の新築ビルにも1フロア出店するなどエリア戦略を活発化させています。阪神なんば線で阪神間からのお客さんを掴むチャンスがうまれているので、しっかりと対応していこうと考えておられるのでしょう。

 なにわラグジュアリー再生に向けて島屋新館に注目

 大阪の持つ華やかな文化の伝統を最も体現してくれそうなのは来年3月に開店する島屋の新館です。なんばという立地で庶民的な利用者が多いのですが、伝統の蓄積はあなどれない底力があります。
 阪神間の上質なお客様が「阪急にはないかもしれない」と島屋の外商が訪問しても受け入れてくれると聞きました。今は各社とも売上が良くない呉服、美術、宝石ですが本当の富裕層相手の商売では無くなってしまうものではありません。

 天王寺阿倍野地区との連携を

 阿倍野再開発では東急ハンズ、イトーヨーカドーの出店と近鉄の大増床が控えています。天王寺となんばは歩いて20分の距離です。(誰も歩かないけれどね)新歌舞伎座が移転する上本町を含めて天王寺〜上本町〜なんば〜心斎橋を歩いて周遊することができれば、緑や歴史資源も活かせて、梅田とは又違った魅力のあるエリアができそうです。生玉神社、高津神社、四天王寺など結構時間が楽しめる資源も残っています。

                                                    (2009年11月13日)
■「なにわラグジュアリータウン」都市ブランド化のもうひとつの方向性

 ルイ・ヴィトンの売上が伸びている

 ルイ・ヴィトンの09年の1〜9月の売上が2ケタ伸びているようです。日本を除く全市場で伸びたとのことで、モンゴルのウランバートルに初出店し、年内には中国に2店、12月にはラスベガスとマカオに最大規模の店を出店するそうです。(ラスベガスは複合都市開発は停滞していてもギャンブルは減少率が低く、あぶく銭は消費に回りやすいのでしょうか?)
 増収要因は「ブランドイメージ向上に向けた販促に力を入れたこと」で「価格を下げて品質を落としたりせず、日本などではむしろ変わらぬ品質や耐久性を消費者に訴えてきた」そうです。日本では新規出店より、既存店への投資を増やすということです。
 CEOは「ラグジュアリーとは、製品を作るとき、売るとき、お客様が手にしたとき自然に人に伝わる物作りに込められた”思い”だと思う。それを欲する消費者の気持ちは無くならない。」と語ります。

 ラグジュアリービジネスの転機

 ラグジュアリービジネスの本質の変化について、ルイ・ヴィトンジャパンの創立社長であった泰郷次郎氏はこう語ります。
「ラグジュアリービジネスに金融資金が投入され、コングロマリット化した上場企業として経営するようになって四半期毎の利益を追求するようになって本質が変化した。創業ファミリーの経営だった頃は収益よりもじっくりと物作りに向かい合うことができた。この姿勢が長い時間続いて評価が積み上がり高級ブランドの地位が積み上げられた。常に短気に利益を追求し続けるには量産と拡販のサイクルが必要で、創業のスピリットや品質は希薄にならざるを得ない。
 日本には「安物買いの銭失い」というような品質の高いモノを長く愛用することが安い物を買うより価値があるとする文化がある。ラグジュアリーブランドが本来のアイデンティティであった商品やサービスのクォリティを希薄にしたことで、その点を最も重視する日本の消費者が離れた。それが不況を機に浮き彫りになった」(繊研新聞11月11日のインタビューより)

 もちろん金融資本の投入により、よりマスに広がる展開が可能になりましたし、ファミリービジネスで行き詰まったブランドもあります。外してはいけない本質は何かを考えさせられるご意見です。

 関西復権に必要なもう一つの視点

 工場三法のくびきが外れて、パネルベイ、グリーンベイと呼ばれる湾岸部を中心とした工業都市としての復活の方向は見えてきています。
 大阪の人の魅力、街の魅力を伝えるコミュニティツーリズムの動きも大阪の魅力を伝える素晴らしい活動です。安くてうまいもんが食べられる「食」の魅力も全国的に認知されています。

 江戸時代、江戸は武士(官僚)と日雇い職人(フリーター)の街であったのに対し、大阪は商家が中心で経営者と商家の「奉公人」(終身雇用のサラリーマンー中流階級)の街でした。江戸末期には大名への貸し倒れで大阪の商人は疲弊していましたが、それまでは「贅沢」をして資産を没収されたりする商人もいたぐらいですから「ラグジュアリー」文化はあったはずです。

 丁稚さんの虫養いのようなうどんばかりが強調され、庶民的、猥雑さが看板になるのは片手落ちでしょう。

 わびさびはカウンターカルチャー

 冷泉家の当主が雑誌の対談で「わび、さび」は当時のきらびやかな風潮に対するアンチテーゼであり、日本の文化ではそれまで華やかなものが主流であったと語っておられます。

 関西人の「派手好み」は東京人から嘲りをこめて興味本位で語られます。吉本の芸人の舞台衣装と区別がつかないのでしょうね。

 品のいい華やかさはそれなりに文化の蓄積が必要です。文化の蓄積に支えられたそれは、国際的にも通用する「価値」ではないでしょうか。

 「コテコテ」といった意味のわからないストックフレーズを払拭する情報発信が必要です。

                                             (2009年11月12日)
 
パネルベイは期待外れでした・・・・今度は「統合型リゾート」=カジノですか・・・・・。
 多様な産業の集積(働く場)が必要で、一発逆転に期待するのはやめませんか?  2014年6月
■シャッター通り化が懸念される南船場とHANAKO−WESTの廃刊

 HANAKO−WESTが12月に休刊(廃刊)するそうです

 90年の創刊以来、雑誌不毛の地で東京の出版社が雑誌を発行し続けていたのは大変なことだったと思います。最近は6万部から11万部という発行部数で悪くはないのですが、広告収入が減少していたのでしょうね。この2月の「Lマガ」の廃刊とあわせて、個性的で関西独自の情報発信を行っていた媒体がなくなってしまうことはとても残念です。

 広告に支えられている「雑誌」というビジネスモデルが変わってきていて、「おまけサンプリング+通信販売雑誌」「扇動的な政治広告雑誌」といった直接の効果を求める「店頭活用の販促媒体」に変わってきているように思います。元々の本好きが離れていくような店作りになるのはどうなんでしょうね。

 大阪南船場のシャッター通り化

 阪神なんば線の開通によって活気が出てきているはずの南船場地区でシャッター通り化が進んでいるという報道があります。アメリカ村では草分けであった老舗のジーンズショップ「サンビレッジ」が閉店するなど、個性派の企業の住みにくい環境になっていることは知られていましたが、坪1万円から、安くて5,000円という賃料であったものが、今では坪3〜4万円にまで高騰しているとか。
 「今や飲食店、ヘアサロンに支えられていると言う声も。新規開業する若者には手が届かないし、大手企業はもう少し集客力のある立地を選ぶので空き店舗が目立つという悪循環であるようです。

 長堀にあった「サザンクロス」(喫茶)の店が追い出されたように、注目され始めると賃料をどんと引き上げる不動産オーナーは街の値打ちを長期的に高めて利益をあげようとする発想が全くないようです。

 どこかに「京阪神広域の役割分担で、猥雑なモノはすべて大阪が引き受ける」とかいった人がいるらしいですが、文化人である市長さん(この頃は平松さん)は大阪市内中心部のゾーン別の用途規制、賃料規制を行って長期的に都市の値打ちをあげる政策をとるべきでしょう。
 

 (京都には京都の表の顔と悪場所があり、神戸には神戸の表の顔と悪場所があり、大阪には大阪の悪場所と矜持を保たないといけない場所があ。、それが地域の文化です)

 なんば〜天王寺に第2御堂筋を

 先日、なんばパークスで行われたイベントでなんば〜天王寺のエリアの模型が展示されました。私も歩いたことはありますが、夜中だったので意識しなかったのですが、なんば〜天王時間は徒歩で15分だそうです。
 この間には歴史資源や緑も豊ですので歩ける遊歩道を造って、安い賃料で若い子の店を誘導していけば面白くなるのではないかと思います。

                                                     (2009年11月12日)
■扇子のたたまれた姿が見えない〜戻るべき場所のない拡大の後に

 扇子商法とは

 大阪船場には「扇子商法」という言葉があります。景気は必ず循環します。いいときは時流に乗って拡げていた事業も、環境が悪化したときには扇子のようにたたんでコンパクトにしてしのぐ・・・・というような趣旨であったと思います。
 現在の多くの中小企業はその扇子をたたんだ状態で苦闘しているといえます。

 ラスベガスは、世界中のお金を「投資」?させることによってラグジュアリーの頂点を極めたのですが、高い成長率が続かなくなると「投資マネー」はすばやく逃げ出してしまったようです。MGMミラージュを訴えたのは中東のオイルマネーでした。
 
 話は少し変わりますが、昔は「インベストメントクロージング」という言葉がありました。高くても一生モノの良い洋服だから、「投資」のつもりで買っておきなさい・・・・という意味です。「投資」という言葉には短期的な利益ではなく、長い目で見てプラスになるモノへの出資というニュアンスがあったためです。いつのころからか、「投資」が短期的な利ざや稼ぎの「投機」と同義語になってしましました。

 ラスベガスの低迷は景気後退によるものでしょう。一時的に苦しいだけで我慢すれば回復するのでしょうか?「おまけ」のような付加価値(豪華なショー、ゴージャスな商業施設)ばかりを集積した街が、強みだけで勝負しようとしたときにどうなのでしょう。チョコエッグのチョコレートでゴディバと味の勝負をするような世界ですよね。戻りべきな場所がないまま肥大した街であるように思います。

 関西に投資を呼び込むには

 関西復権のためには地域内だけでなく国外を含めた地域外から「投資」を呼び込む必要があります。その為には、「手段」としてかつての「ユニバーサルスタジオジャパン」の誘致のような仕掛けも必要なことは確かです。

 ただ、「投資」の中身が長期的な利益を求めるのものなのか、短期的な利ざや稼ぎなのか、はっきりと見極める必要があります。開発計画は景気のいいときの重きって扇子を拡げたときの稼ぎ方と、景気が悪いときの扇子のたたみ方のイメージをはっきりもって計画されないといけない時代です。

                                                   (2009年11月11日)
■我々は何故「ラスベガス」を夢見たのか?〜砂上のラグジュアリー都市の崩壊

 ラスベガスの再びの凋落

 アメリカで今年7月から9月期に差し押さえられた不動産の都市別ワーストはラスベガスで、昨年同期比53%増。20件に1件が差し押さえられている勘定になるそうです。今年完成する予定だった「シティセンター」(総工費90億ドル。70エーカーのメガラグジュアリー空間〜一流の建築家、アーティストによるホテル、分譲マンション、商業施設の大型複合施設)は出資者のドバイ政府がMGMミラージュを「金をかけ過ぎ」告訴して計画は暗誦にのりあげているようです。(MGMミラージュには連邦破産法申請の噂がありましたが、株式と社債の発行によって一旦は回避された模様です)運営会社のMGMミラージュは「シティセンター」について。11.7億ドルの評価損を計上し、コンドミニアムの販売価格を30%さげても今年末には開業するそうです。

 7〜9月期はカジノ収入は1%減ですが、会議・展示会の予約源が響き、客室収入は21%減、食事・ドリンク収入は13%の減少となっています。
 分譲マンションが売れない、コンベンションの開催件数が減少する、商業施設が売れない・・・・負のスパイラルです。
(それにしてもギャンブルは強いですね。マカオのカジノ収入は10月には過去最高の15.9億ドルになったようです。中国で唯一賭博行為が法的に認められている特別行政区です。中国経済の改善に伴いこれからも伸びが期待されています)

 正直、ラスベガスは好きな都市ではありません。(いったことがないのでよくわかりませんが、パチ屋と吉本の劇場、ホテルが集積している大阪千日前に大きな会議場を設置したような、でかくてゴージャスな街なのでしょうね、きっと)都市としての魅力がどこにあったのか全く理解できません。

 何故、みんながあの時代に「ラスベガス」が好きだったのか?いまだに「カジノ」を誘致することが都市の活性化につながるという勘違いから抜け出せない知事も沢山おられることでもありますし、一度きちんと検証しておく必要があります。

 15年ほど前のラスベガスは、カジノの不振でしょぼいゲームセンターの街となっていました。今回は2度目の凋落というわけです。

 エンタテイメント都市は無から黄金を生むのか?

 砂漠の上に作られたカジノの街、大人のショーの街からアミューズメントタウン、エンタテイメントタウン、ラグジュアリーとバケーションの街として生まれ変わったのが約15年ほど前。テーマパークのようなアトラクション付きのホテルや商店街などを整備し、宿泊施設の集積を活かしてコンベンションを誘致し多様な世代が街ごと楽しめるように変身した時なのだそうだ。(申し訳ありません、そのあたりは良く知らないので「ラスベガス」でググってみてください。いまだにラスベガスを絶賛するサイトが上位に並んでいます。みんな本当に好きなんですね)

 ふんだんにオイルマネーが流れ込み、一流のアーティスト、一流の建築家が腕をふるうという夢のような空間が実現するという事が私たちを惹きつけたのでしょうか?
  農地として使い物にならない荒れ地、鉱業の衰退から街に活気を飛び起こすためには「遊び」に特化することが必要で、「集客」が自己目的化して「成功した」街に私たちは何を学べば良かったのでしょうか?

 ギャンブル自体は撲滅すべき「悪徳」とは思いません。「適当」に遊べている範囲ではね。(ギャンブル社会学の権威である大阪商業大学の谷岡先生のご講演も面白く拝聴しました)

 手段であったはずの「集客」がいつの間にか「目的」になることで、手段のエスカレートに歯止めが聞かなくなったのだと思います。都市開発の面でもギャンブルのように「適当」を見失った・・・と言うことでしょうか?何故?

 訪問客には日常生活を忘れて「テンション」を上げて楽しんでもらうというのが「エンタテイメント都市」なのかもしれませんが、事業者の方までテンションがあがって現実を忘れてしまったのは何故なのでしょう。

 今は一時的に景気後退の影響を受けていても、世界にも類のない都市なので、また景気回復すれば復活し、盛り上がる・・・のでしょうか?それとも中国か中東に新しいラスベガスができるのでしょうか?

 私たちの深層心理には「派手好き」で「嘘でも楽しいことが長続きすれば嬉しい」〜その為には「だまされてもいい」、「だましてもいい」という気持ちがすべての人に共通して存在するのでしょうか?〜だまされた奴は自らだまされたがっているという詐欺師の論理ですねこれは。

 正直、考えれば考えるほど、何故「ラスベガス」が街づくりの「成功モデル」と、もてはやされてきたのかがわからなくなります。凋落してざまあみろと言う感情はありません。何でそのモデルが続くと錯覚していたのか(自分も)がわからない。


 おそらく、私のように「ラスベガス」の「良さ」が心底理解できない人も少なくないのだと思います。
 「成功している」という情報が知識として入ってきた事と、「派手好き」で「声が大きい」人の(悪意のない)思いが強かったのでしょう。それにつられて多くの人が「まあええか」程度の「のり」で「ラスベガス」が都市づくりのモデルとなったのでしょうね。

 「成功しているようだからから成功モデルだ」は循環論理であり、説明になっていません。

 
 すいません、このテーマはもう少し考えてみます。・・・
                                                     (2009年11月11日)
■小さくても強い、不況に勝つのは生鮮食品の販売力がある店

 生鮮食品の強い店が不況に強い

 安売り競争に疲弊するスーパー業界の中で、生鮮食品の安売りに強みをもって利益をあげているSMが「チェーンストアエイジ」11月号に紹介されています。

 中部地方に展開するKAT(カネスエ、アオキ、タチヤ)の3店です。

 多くのSMやGMSはグローサリーの低価格化、PB化を中心に安売り競争に走っています。当然、客単価は低下します。それでも客数が増えればいいのですが、競合店も安売りに打って出れば客数は増えません。メーカーをたたいたPB商品は量も少ないし、原材料の質も悪くなり、悪循環でお客様の信頼を失います。

 毎日の食卓づくりのお手伝いをするSMでは、購買頻度の高い生鮮食品、特に青果物の品質が良くて安い店が消費者に指示されます。

 販売管理費を下げて商品の質を落とさない

 タチヤの事例で言えば販売管理費は13.6%。経常利益率が4.6%。7%が目標だと言います。9店舗で120億円を売り上げています。従業員は250人ですが本部スタッフは数人。お客様に対して必要なことにはお金をかけても不要なコストは徹底的に省かれています。

 商品の仕入れは必ず売場の社員が行います。仕入れから販売までを1人の社員が担当することで商品知識や売り切る責任感が根付きます。社員の育成に時間をかけており、社員の給与は「とても高い」そうです。大手スーパーが職務を分断化し「効率」を追求してパート化をはかるのと対照的な戦略です。

 6時に閉店するとか、お刺身はロスが出ないように盛りつけではなく短冊でしか販売しないとか、必要なことと、そうでないことの選別がはっきりしています。

 競合のSMより2〜3割安い価格で販売することが基本で、お店は決してキレイなモノではありませんが、激しい競争の中でお客様をしっかりと掴んでいるようです。

                                                         (2009年11月10日)
■決断を急がせる人々の正体〜ゆっくり考えてちゃんと結論を出す

 判断を急がせるのは詐欺師のテクニック

 夏に大阪南港で行われた食博覧会で、新しいタイプの「詐欺的な商法」を見せてもらいました。ワインをずらりと並べて、少しずつ試飲させてくれるブースです。ちょっとしたうんちくを含め、色々なタイプのワインを味わった後に、「お買い得」なワインを進めてきます。試飲させてもらったお客さんは「時間をとらせて、試飲(といってもほんの少し)させてもらった手前、中々断りにく、しかも1本あたりは高くはない商品(安くもないのですが)なので、つい1ケース購入させられるのだと思います。

 沢山の販売員が試飲させていましたので、結構購入される方も多いのでしょうね。
 断ったとたんに豹変した態度を見たときに、ああこの人はこのようなビジネス=詐欺的商法の世界の人だなとわかりました。試供品をバラまいて高額な布団を買わせる。昔は「SF商法」とかも言われていましたね。

 よく電話がかかってくる「投資」話もそうなのですが、この人達は、今すぐ、その場での決断を求めます。チャンスは逃したら2度と来ないというのが口癖です。興味はあるけれどゆっくりと考える・・・といった話が通じないのが共通点です。

 その後、別のイベント会場でも見かけましたが、食博覧会でこの商法はまずいでしょう。次回は出展をご遠慮いただくことですね。

 スピード経営の時代?

 「IT時代」は経営判断のスピード化が求められる時代・・・・という風潮があったように思います。結果的に経営者が「よくわからないことに」判断を求められて、「コンサル」とか「経済学者」のいう言葉にのせられてわからないまま「流行」の乗せられてきたような気がします。(いつ頃からか「経済学者」が首相や知事のブレーンになるというパターンが定着していますが、これって変じゃないですか?まだ、経営学なら役に立つこともあるでしょうが・・・)

 最近ではマスコミのに外資系の投資会社とか証券会社の「アナリスト」のコメントが掲載されていますが、この人達はいったい何の専門家で、何に対して責任を負っているかを考えれば「偏り」があるのは明確であるので、一方的に垂れ流すのは有害無益です。

 責任を負って判断するのが経営者なので、腑に落ちないことは先延ばしにしてもいいのではないか・・・・と詐欺商法とか国政のこととかを考えていると感じます。

 自分で判断するためには、市場の調査・分析をしっかりと実施することが重要です。考えるための材料なしに、雰囲気や「権威」の言葉で意思決定するのは極めて危険です。

                                                  (2009年11月9日)
■「あまがさき阪神」開業によるJR三越伊勢丹包囲網

 「あまがさき阪神」10月20日グランドオープン

 JR尼崎駅はJR東西線、福知山線、神戸線の結節点であり駅北の開発計画とあわせて、最近注目されている立地です。その開発の商業ゾーンの核店舗のひとつである「あまがさき阪神」が10月20日にグランドオープンしました。

 H2Oリテイリングとして昨年の西宮阪急に続く郊外の拠点店舗の開業です。2.5万uとそれなりの規模を持つ西宮阪急に比べて5,000uとコンパクトタイプの店舗ですが売上げ目標を月坪換算すると月坪22万円と両店同じ売上目標を持って開業しています。

 同じく阪神間に立地する芦屋大丸が4,300uで約90億円をあげている(月坪57万円)のに比較するとずいぶん控えめな数字です。この景気後退期の中での消費低迷ということと、食料品やコト消費(サービス)などのウェートが高い店舗なので売上効率を低く設定しているのだと思われます。(ちなみに川西阪急では月坪36万円)

 JR三越伊勢丹を追い詰める包囲網

 注目したいのは、当初の売上げ目標が低くても採算がとれる店作り(投資、運営コスト)をして、かつ今の時代にお客様に支持されているサービスや食料品を強化していることです。

 図は梅田3店の食料品売場の評価です。阪神が高いですよね。

 30年かけて、阪急に対抗してようやく優位に立てたのが食料品売場です。阪神は食料品が強いからこそ梅田での存在感が維持できました・・・・しかし、経営統合の後、阪急のスタッフは、阪神の食料品売場の目玉である某売場の数字を見て驚いたそうです。「真っ赤っか」なのだそうです。

 阪神はバブルの時に多店舗展開しなかった経営判断(?)により、本店だけであったためにそれなりに成立していたのです。売場の数値管理に優れている阪急に対抗するには、あえて手を出さない、だけどお客様のニーズの高い分野から切り込むしかないのです。(例えば阪急の食料品売場では、うちは少量パックそうざいはやらないよと断言されていました)

 JR三越伊勢丹はファッションでは互角に戦える自信があるのだと推察します。お客様の流れを引き寄せるためには敢えて効率の悪い「食料品」や「サービス」「リビング」に目玉を作るしかないはずです。JRの高い家賃を支払って効率の悪い売場を抱え込む・・・・開業当初は間違いなく素晴らしい売場を見せてくれるはずですが、おそらく体力が持たないはずです。
 商圏内の元のところで阪急、阪神グループの百貨店が需要を押さえているので、効率の悪い売場でさえ売上数字を積み上げられないからです。

 ファッションに関しても、アウェイにはからきし弱いけれどホームではやたら強い「阪急」と互角のつもりでは・・・・・総合的に勝てないでしょう。

 かつて西武百貨店がつかしんに出店されたときに地元企業にさんざんいじめられたと愚痴っておられましたが、三越伊勢丹のそのようなみっともない姿は見たくないものです。

 あえて、売上数字目標を押さえた店舗を出店した深遠謀慮には背筋が寒くなる思いです。今後の百貨店業界の淘汰の方向性がこの2〜3年に梅田から明らかになるといっていいでしょう。

 (私が一番好きだったのは開店当時の大丸梅田店です。)


                                                   (2009年11月6日)

ニュースリリースでの店舗特性比較


図ー梅田3百貨店の「食料品売場充実度評価」比較 2005年 なにわ考現学より


■ファッションリーダーがマーケットリーダーでは無くなった時代

 過去の経験則からの脱却を急げ

 80年代の百貨店リニュアールブームの時代には、各地の百貨店のマーケティング戦略としては、新商品、新しいファッションに敏感で早く取り入れる「ファッションリーダー」層をどのようにつかむかが重要なポイントでした。
 調査結果をもとに地域の中のファションリーダーとそのフォロワーのボリュームと特性を把握さえすれば後はそこに合わせてどうMDを組み立てていけばいいかを考えればいい・・・・。随分沢山のお店をその手法で成功させてきました。古い体質を新しく変えるのはそれはそれで大変な作業なのですが、方向性については迷いは無かったという意味で「幸福な」時代だったのかもしれません。

 最近、世の中の風潮も(ファッション専門学校生の購入ブランドトップが「ユニクロ」であったり・・・)明らかに変わってきました、調査データを読み込んでいても、市場をリードしてるのはかつてのような「ファッションリーダー」でないことがはっきりと現れています。現在「新しいファッションを真っ先に取り入れる・・・」のはただのお調子者であって市場変化の先行指標とはなりません。
 今後、発表できるような独自調査を行った上でじっくり論じたいと思いますが。明らかな価値観の変化に対して舵取りの方向を変えなければいけない時期にきています。
 ファッションマーケティングの第一人者であるK氏がこれからは「ボリュームゾーン」と付加価値ファッションに否定的な見解を発しておられる事も世の中の流れを表しています。「ファッション」だけが持つ「ワクワク感」はどこに受け継がれていくのかとか「ファッションの○○○」とか勝ち組とされている百貨店はこれからどうなるのかとか・・・・k氏とは違い「ファッション」自体がなくなることはないと思いますが・・・・このテーマについては、もう少し詰めて公開します。

 
 世代論の再検討を〜追い詰められた50歳代と「政権交代」

 先日、提起した50歳代での活動意欲、行動力の減少は実務で扱ういくつかのデータでも顕著に表れています。何かと話題になりたがる「団塊世代」=60代とハイテンションのバブル時代の消費至上主義を引きずっている「HANAKO世代」40代のはさまれて、普通であることが落ち込んで見られるというところにその一因があるのではないかと思います。

 いわゆる「ロスジェネ世代」の主張する「団塊世代は不当に既得権にしがみつく世代」という論には与しないのですが、まだまだ団塊世代は社会のリーダー層にとどまっているケースが多いようです。どうしても風あたりが強いのは甘受されたいと思います。
 「今すぐ、田舎に転居して蕎麦打ちに生きがいを見いだせ」とか極端な暴論はいいませんが、過去の成功体験を持っている人ほど価値観変化に対応できないのは厳然たる事実です。
(それは、若い世代の中にもあります)

 価値観が変わる時代であることは確かなので、社会の中枢には「変化に対応できる」人材をおくべきでしょう。

                                                   (2009年11月5日)

■グッチグループの売上構造の変化〜「のれん」の商売でどう生き残るか

 ラグジュアリーブランドは中国で伸びる

 この7〜9月の四半期の売上で「グッチ」は前年に比べ7%売上を落としています。直営店は現状維持ですが、卸売り部門の売上が落ち込んだのが響いています。ただ、中国本土では22%の増加となり、全体の売上構成比の19%にまでなっています。日本を除くアジアやインドなどの新興国のウェートは37%にまでなっています。
 グッチグループ全体でも中国の伸びが37%増ですから、成長の勢いは中国にシフトしています。(繊研新聞11月4日)

 ラグジュアリーブランドの日本法人の撤退が相次いでいることが伝えられます。東京の高級ブランドのショップのお客様の中でアジアからの観光客が少なくない現状ですが、高級ブランドが直営店を中国にシフトすると日本の市場の衰退はますます進んでしまいます。

 台湾、中国の貧富の差は日本人の想像を超えています。厚い中間層に支えられていた日本ですが、その強みがなくなり中国と同じように貧富の差を広げる政策をとったので、人口ボリュームの多い彼の国との競争で負けてしまったともいえます。

 アウトレットは伸びている

 同じ日の新聞に、アウトレット専業デベロッパー「チェルシージャパン」の上期の売上が、4.6%増の2、010億円に届くと報道されています。スーパーでは800円台のジーンズが売られていますが、爆発的に売れているとは聞こえてきません。
 アウトレットで販売されている「ブランド」の商品にはやはりアイデアが詰め込まれています。ただ、安いだけでは継続的には売れないのです。

 百貨店はどう変わるのか(予測)

 この景況の中で百貨店の売上げはずるずると後退しています。これから景気の回復があったとしても、都市部と一部の地方の拠点以外の「百貨店」は形が変わっていくのだと思います。地域のお客さんがお金を支払わない限り、収入はないのですから、まずどの地域が商圏なのか、どの人がお客様なのかを明らかにした上で、自社の規模や扱い商品、サービスを見直す必要があります。
 地域の個店では必要とされる、商品やサービスを調達する事は困難であるかもしれません。今の百貨店の共同仕入れ機構もうまくは機能していないようです。
 大手百貨店で、他社にMDやマーケティングのノウハウを提供できる企業は極めて限定されます。資金力や商品調達力のある商社やメーカー、あるいは投資ファンドなど異業種を交えた新しい「卸」会社が形成されていくでしょう。

 地域の運営会社は地場の百貨店を中心に地域の企業、JR、エネルギー会社、行政などの出資で低コストで運営されるようになるでしょう。

 ・・・・・百貨店、地方店の分社化の流れやメーカーの動きを見た上での勝手な予測なのですが、「ホテル」業などもそれに近い形になっていますよね。「百貨店」が自社ののれんの価値や商魚運営のノウハウに自覚的にならないとうまくはいかないでしょうが。

 百貨店の「価値」をいかせれば、(都心旗艦店には)中国からの観光客も呼び寄せられますし、アウトレットにながれているお客様の一部も還ってくると思います。「モノの量」「ブランド品集積」だけでは勝てないことだけは確かでしょう。

                                                        (2009年11月4日)
■新しい「定番」と「流行モノ」の鑑定法〜簡単な時代の読み方

 「ライトビール」はどこにいったのか?

 かつて、ビール業界では新商品を毎年のように投入していた時期がありました。健康重視の「社会トレンド」から「ライトビール」というものが各社から販売されていたこともありました。私の師匠はそれを評して「すぐになくなる流行もの」と断言されました。その理由は「不味いから」といたってシンプルなものでした。その時は「酒好きの酔っぱらいじじいの妄言」とも思いましたが、「ライトビール」はあっという間に無くなってしまいました。
 一方「スーパードライ」は一部のビール好きには不評ですが、完全に定着しています。ビールもどきではなく、違ったジャンルのビールの味を提供したモノであったからだと思います。(他社から発売された追随ブランドは無くなってしまいましたが)

 「エコ」の流れは止められない

 成長のルールがより大きく、より強く、より高くを目指すのものでは無くなってきている事は薄々皆さんが感じておられる通りです。オリンピックを成功させて次は万博というコースをたどっている中国はまだ、昔のルールが適用されていますが、日本は変わっていく時期に来ています。
 政権交代で選ばれた新しい政権は個別の対症療法のレシピはあるが大きなビジョンがないと良く批判されています。ただ、一つ一つの政策の方向の先には環境重視であったり、ハコものからの脱却であったり、既得権益の排除であったり、「平成維新」と呼ばれてもおかしくない変革がさらりと示されています。たぶん、大きな時代の変革のビジョンなどが先行して意識されていないのでしょうが、時代の無意識がこのような政権交代を後押ししたのだと思います。

 私の感覚では、大きなビジョンを語る人はどこかうさんくさいところがあります。ビジネスの世界でも、キレイに組み立てられた緻密な論理に基づく企業改革より、現場でおかしいなあと思うことをつぶしていく事でラジカルに変わったケースの方が多いように思います。(後付で理屈をつけられることはありますが・・・・)

 さて、「「エコ」の大きな流れについてですが、「エコロジー」は「エコノミー」の裏付けが必要で、「エコノミー」は「エコロジー」に反しては成功しないと考えます。
 頭の中で組み立てられた「エコロジー」の理念には、反論する人はいないでしょうが、環境に優しいだけでは生活者はコストを負担しないのです。反面、ただ安ければいいかというと、デフレ局面の現在では背の腹を変えられないところがありますが、少し景気が改善されると見向きもされなくなります。600円から800円台のジーンズや安売りの靴、スーパーのPB商品などはすぐに使えなくなるので決して経済性が高いといえない。安売り弁当のお米やおかずはどこ作らたものかもわかりませんすぐに消えて無くなります。

 ある時期もてはやされるものとか、論理的に正しいものかどうかではなく、時代の無意識の流れにのっているかどうか、が「定番」として残るかどうかの分かれ目になると考えています。

 時代の無意識の流れを読むには

 集合的無意識などという概念はオカルトとして切り捨てられるかもしれませんが、そんなにおどろおどろしいものではなく、過去何十年かの時代の流れを整理して、その時に自分自身が何を感じて、何を考えたか、何を間違えたかを考えた上で、今の時代とこれからをトレースしていけば自ずから見えてくることです。

 答えは自分の心の中にある・・・・と考えれば、まあ間違えても納得できるかも知れません。

 多くの人は、周りの人の言説、経済新聞に掲載される「社会トレンド」、あるいは、全く過去を反省しない自分自身の思いこみ、過去の成功体験だけで先を読もうとしますから、それよりはまともな判断が出来るのではないかと思います。

                                                        (2009年11月2日)
 
 10月
■「関西復権」論から「日本復権」へ〜日本はアジアの「関西」か?

 地盤沈下する「日本」はアジアの「関西」となる

 「関西復権」をライフワークとして30年。最近、ようやく「東京」及び「東京的なモノ」への対抗意識から独自の関西のあり方が一般に議論されるようになってきました。かつては過去の影響のプライドばかり高くて、東京の悪口を言っていれば食べていけた「文化人」「知識人」も沢山いましたが、それではいけない、という意識が関西での共通理解になってきています。

 さて、最近は「日本」が地盤と沈下してきていると聞きます。海外有名ブランドが日本から撤退し、、中国市場に力をいれているとか、自動車ショーも東京ではなく、中国で盛り上がってきているとか・・・・成長力では明らかに「中国」がアジアのトップランナーです。
 日本の大企業も、中国市場に注力しています。大阪から東京に移転したN清食品とか、SントリーとかF助足袋も近い将来、上海か北京へ本社を移していくのでしょうね。

 日本という国全体が、かつての関西のように過去の栄光のプライドをよすがに他所の国の悪口をいいながら生きていくことになるのでしょう。

 「日本」は関西に学べ

 「日本」=「東京」は関西のパラダイムシフトに学べきでしょう。いたずらに中国に対抗心を燃やして、はりあうのではなく、中国の成長力を利用しながら、「体力勝負の成長」という幻想から離れた「口先三寸の成熟社会」のあり方を身につける事が必要です。

 体力でつくる製品は中国にまかせて、知恵と文化で勝負するんだと割り切って、重点的に其処に投資するのが正解です。

 かつて、地盤沈下した大阪を「文化首都」として位置づけようとした国土庁の構想に、関西の財界は猛烈に反発しました。それが、現在は「ナレッジキャピタル」に関西の浮上をかけています。

 これからの日本はアジアとのつながりの深い「関西」がリードする・・・・・なんて口にしたら、少しびびりながらも、だんだんその気になってきます。東京に対抗するのではなくアジアの「ナレッジキャピタル」としての関西と考えるとわくわくしますよね。

                                                     (2009年10月31日)


■スイーツの30年史〜お土産スイーツから自分へのご褒美へ

 90年代バブルの名残の「本場スイーツ」から「Jスイーツ」の時代へ

 90年代のスイーツ業界はティラミスブームで始まりました。クリームブリュレ、パンナコッタなど海外の本格的なデザートが次々と紹介されてきました。2000年代になると本場で修行してきたパティシエブームが目立ちますが、堂島ロールが先鞭をつけたご当地ロールケーキなど日本の風土に根ざした「Jスイーツ」の時代であるともいえます。生キャラメルや小樽のチーズケーキ、霧の森大福など東京発ではなく、地域発のスイーツが人気を集めています。

 お菓子業界も大手への集約化がすすむ?

 お菓子屋さんというのは昔から地域地域で小さな企業が沢山あります。安売りのお菓子屋さんに行けば、今でも聞いたことのない地方のお菓子メーカーの商品がたくさんあります。
 販売チャネルとしてコンビニエンスストアが中心になってくると、地方の小企業はどんどん苦しくなっていきます。
 また、有名企業であっても大手企業に買収されるケースが増えてきています。バレンタインチョコで有名なメリーチョコレートはロッテに買収されましたし、不二家は山崎パンの支援を受けて再建中です。銀座コージーコーナーもロッテの傘下にはいっています。
 中途半端な規模では生き残れないのかも知れません。大きくなるか、思い切り地域性にこだわるか。地域性にこだわることで全国区になる事例も少なくないですね。

                                                         (2009年10月29日)
表ースイーツの30年史




■都心から周縁へ・・・人口増のトレンド変化

 人口増はヒガシでも始まっている

 大型開発で都心居住が進む北区、中央区から、阪神なんば線の開業で開発が進む、浪速区やおおさか東線の開業で活気づく城東区、鶴見区といったヒガシエリアの人口増が目だちます。
 都心へのアクセスが意外に良く、生活基盤が整っていて分譲物件にも割安感があります。

 堅い会社が主導する堅いまちづくりの弊害

 ヒガシの商業拠点である京橋に今ひとつ活気がありません。京橋に隣接するOBPに土地を持つMID都市開発 が関西電力に買収されましたが、関西電力には商業のノウハウやセンスが乏しいので、(この会社だけでなく、異業種であるインフラ系やリース会社全般の特性ですが)
京橋から中之島エリアは今ひとつ堅苦しい街になりそうな予感がします。

 エネルギー関連の会社が堅い会社であるのは良いことです。堅い会社がまち作りとかすまいづくりを主導するのはどうなんでしょうか?
「中之島」が今ひとつ盛り上がらないのは、堅実な一流大企業だけが集まっているところにも一因があります。


 OBPと京橋が連携すれば面白い街になるのですがね。

                                                                     (2009年10月28日)



■コミュニティツーリズムで発見される地域という資源

 地域、人を活かす体験型観光

 今大阪で注目されている試みに「コミュニティ・ツーリズム」があります。これは大阪府立大学特別教授橋爪伸也氏らが提唱されている新しい観光のあり方で、神社仏閣、あるいは大きな施設といったハコモノを周遊するのではなく、「地域」を対象とした「まち歩き」や「まち遊び」といった体験型の観光のことです

 「まち歩き」は店員15名を案内役が先導して地域の「知られざる名所」を商店街から路地裏にまで分け入って案内するもので、「まち遊び」はそれに加えて地域ならではの体験をするというものです。震災後の神戸長田商店街から始まった、修学旅行などでの商店街体験をさらに拡げたものといえます。
 
 2008年10月に設立された「大阪コミュニティ・ツーリズム推進協議会」(愛称「大阪あそ歩」)〜大阪市、大阪商工会議所、(財)大阪観光コンベション協会、水都大阪2009実行委員会らが発足させた〜が主催し、2009年春には「まち歩きコース」25コース、「まち遊び」5プログラムでスタート。秋には60コース以上に増やしています。3年で300コースに増やしていくそうです。

 大阪は人が面白い

 大阪は街と人が面白いという着目点は、かつて経済同友会の提言をまとめられた阪南大学の故 堀川教授の持論を思い出しました。ハコ物観光が全盛だった90年代に広告代理店におられながら独自の視点を持っておられたなと、感慨深いモノがあります。

 佃、伝法、平野、鴫野、百済、そして放出など周辺部にはユニークで面白い街が沢山あります。都心でも堀江、中崎町、天神橋筋商店街、空堀商店街などターミナルや大きな繁華街から少し外れたエリアが元気になってきている事とも符合する動きで、水都大阪2009や大阪KAPPOの手作り感あふれるつつましさと合わせて、これからの時代を先取りするモノではないかと思います。
 けばけばしさや「コテコテ感」が大阪という誤解を一掃して欲しいものです。

 そのようなちんまりとした地道な動きの重要性と同時にまた世界に通用する創造性を発信する梅田北ヤード計画などのプロジェクトにも期待はしてるのですが・・・・・なんと言いますか  じれったいの一言です。


http://www.osaka-asobo.jp/ へのリンク

■集中だけが力ではない〜梅田は危機感を持たないといけない

 観光客の利用が多い阪神なんば線

 開業半年、景気後退や新型インフルエンザの影響で私鉄各社が苦戦を強いられている中、阪神電鉄の運賃収入は11.3%と、唯一2桁増を示しています。
「阪神なんば線」の1日あたりの輸送人員は、目標の6万7千人を8千人下回る5万9千人ですが、利用距離が長い定期外利用者が多く、4〜8月の運賃収入は当初予定を16%上回る15億円であるといいます。
 大阪難波駅でつながる近鉄も同じ期間に4億数千万円の増収効果があったそうです。神戸から難波、奈良への観光客の移動が増えているのでしょう。また、ドームや甲子園での試合があるときには利用者は1日あたり6万3千人にも増えるという。移動の「目的」が多い沿線がつながることで需要が喚起されたといえます。※21日当社HP記事再掲

 梅田の商業集積力は絶対ではない

 「阪神なんば線」沿線の駅利用者が増加している反面、梅田駅の利用者数が減少しています。これから進む地域間競争で、集積力のある梅田が絶対的な地位にあるというわけではないこと示す事実で注目すべきポイントだと思います。

 かつて南海電鉄の天下茶屋駅から堺筋線を通って都心にでられるバイパスが出来たときに、難波駅の利用者は落ち込んでいます。通勤通学だけでなく観光主体の阪神なんば線でも、商業集積の集積力のある梅田が経路として選ばれるばかりではない事は重要なポイントです。

 集積は地価があがる事には直結しますが、地価があがることは必ずしも街の魅力をあげることにはつながらないのです。



                                                 (2009年10月26日)
■「顧客」を持っているところが強い〜地方百貨店再生の方向性

 大和(百貨店)の新潟撤退

 雪の深い地域では、1年は12ヶ月ではなく、8ヶ月で商売をしなければなえらないと聞きました。中々、中央の百貨店では理解できない世界なので、地元の百貨店の強みに対抗できないと言われていました。

 大和は北陸の雄といわれた百貨店でした。新潟の店舗の閉鎖を聞いたときにはあの大和が・・・と声を失いました。三越、伊勢丹の新潟出店により売上を大きく落としてしまったのが原因と言うことです。

 新幹線が東京都の距離を縮めた結果、お客様の意識が変わったことと、自動車の利用で冬でも活動率が落ちなくなったこと。、それらの変化に店が対応できなくなったのだと思います。おそらく、年配層を中心に店へのロイヤリティは変わらずに残っていたはずです。(私は、少し前の大和の顧客についてはちょっと詳しいのです)
 金沢新幹線の開業は地元企業として喜んでばかりはいられません。

 顧客をつかんでいてもお客様の変化に対応できなければ退場をせまられます。

 あらためてお客様をつかんでいる企業は強いと実感

 先日ある地域のコープの事情に詳しい人のお話を伺いました。店舗の売上げの減少率は高いのですが、個別宅配を含む宅配事業があるので表向きの減少率が少ないということです。あと、興味深いのは、新規に葬儀の取次事業を始めたのですが、コープ会員の単価は、提携事業者独のお客の客単価の1.5倍だそうです。業者には警戒心があるものの、コープにだと安心して色々相談できる・・・ということです。

 顧客との信頼関係が資産であるとあらためて確信させられます。ただし、お客様も大きく変化しているので、今までと同じ対応では駄目だということです。

                                                          (2009年10月23日)
■飽和から成熟に向かうスイーツ市場のトレンド

 飽和状態にある「スイーツ市場」のこれから

 旭屋出版から発行されている「Sweets Business」という専門誌で「売れるスイーツ人気のスイーツ10の検証」という記事が掲載されています。その中からいくつかのポイントをピックアップして、私の感想を交えてご紹介いたします。

1.ライトカラースイーツ?

 30年以上前から定番で、今でも人気を保ち続けるスイーツ。ショートケーキ、シュークリーム、チーズケーキ、モンブラン、プリンの5大スイーツ。色合いがライトカラー(ホワイトやイエロー)で「ふわふわ」「やわらか」「しっとり」といったライトな食感が共通しています。
 有名店の看板メニューとなっているものも多い。若いパテシエがヨーロッパの修行帰りに開店したパティスリーで、お客様をつかむために看板メニューに定番を取り入れるのですが、生クリームやバター6などの素材がレベルアップし、同じスイーツでも昔に比べそのレベルは大きくあがっています。
 ただ、本場のフランス料理が塩辛いように、欧米のスイーツは甘ったるいです。果たして、修行の成果が日本の市場でどう生かされるのか?不明です。
 いずれにしても定番スイーツは固い人気です。

2.最近の人気商品はマカロン

 最近では、タルト、ブッセ、マカロンなどが人気を集めています。かつてカヌレ、ティラミス、ベルギーワッフルなど一時的に人気を詰めた商品がありましたが、ブームは割と早く過ぎ去りました。一世を風靡したロールケーキも最近少し食傷気味なきらいもあります。
 マカロンは色はキレイなのですが人工的過ぎるのが気になります。定着するのかな?
 次の定番商品をどう発見するかが私たちの課題です。

3.男のスイーツ

 コンビニのスイーツの購買者の多くは男性です。オフィスグリコという置き菓子のターゲットも男性社員が対象です。男性のスイーツブロガーも人気とのことで、ラーメンマニアののりでスイーツを評論するような風潮がもっと盛んになるのでしょうね。

4.パティシエ―ル効果

 2〜3前まではパティシエの女性形である、パティシエールという言葉を使う人は少なかったようですが、最近は多くなってきています。お菓子作りの現場は重い粉や砂糖を運ぶ重労働です。女性には厳しい職場だったようですが、最近おつきあいのあった某料理学校では洋菓子科は大半が女性でした。・・・プロ意識の高いパティシエールが増えていけば、もっと洋菓子の可能性が広がりそうです。

5.ネット通販への注目
 
 スイーツのネット販売が過熱しています。サイトのまめな更新、丁寧な商品紹介、宣伝だけでないメルマガの情報発信など、お菓子作り以外の「商売」の手間をいかに惜しまずにかけるかが成功の分かれ目です。楽天などのモールは広告費が嵩んで利益が残らないという声も無視できません。


 パテシエブームは一段落しても定番スイーツの人気はあいかわらずです。表面上は変わらない市場でも、その競争の中身は大きく変化していることに注目。他業界でも同じような変化はおきてはいないでしょうか?

                                          (2009年10月22日)
■明暗分かれる新線の利用率

 開業半年を過ぎて好調が伝えられる「阪神なんば線」

 9月20日で開業半年を迎えた「阪神なんば線」の運賃収入が予測を16%を上回る運賃収入で、好調のようです。乗客数は1日5万9,000人で目標を8,000人下回っているものの、予想より長い区間の乗車客(観光客)が多く、平均単価が高くなったようです。奈良では、神戸方面の観光客が増加しています。定期の比率が39.8%と低いのが悩みの種で、何とか50%台に乗せたいようです。

 京阪中之島線は苦戦

 一方、10月19日で開業1年を迎える京阪中之島線は1日あたりの利用客予測8万人を大きく下回る3万人と苦戦しています。中之島を舞台にしたイベントを仕掛けて頑張っているようですが、京阪が孤軍奮闘しているようなイメージがあり、中々「活性化」には結びついていないようです。
 延伸に活路を見いだそうとしているようですが、京阪だけの努力では限界があると感じられます。

                                                   (2009年10月21日)
図ー大手私鉄の4〜8月の運賃収入(前年同月比)



図ー4〜8月の乗降客(前年同月比) % 日経新聞地方経済面



■大阪「ヒガシ」が静かに存在感を高めている

 都心立地のタワーマンションから近都心の穴場立地へ

 都心のタワーマンション開発により、大阪市内の人口が増え、都心居住が見直されてきました。住民が増える事と比例するように公園が整備され、飲食店、食品スーパーなどが少しづつ充実してきています。
 淀屋橋、北浜、桜橋などのオフィス立地にも商業施設が設置されるようになったのは大きな変化です。(東京の都心開発とはスケール感は違うこじんまりしたものです。それでも、苦戦が伝えられますが、何とか頑張って続けて欲しいものです)

 都心部の開発が一段落した現在、都心からのアクセスが良い割に、開発が進んでいなかったエアポケットのような立地に動きがあります。

 おおさか東線、JR東西線が交差する鶴見区「放出」が穴場

 図にあるように、大阪市内では中央区、西区と言った都心エリアの人口の伸びが大きいのです。それに次いで伸びているのが鶴見区です。花博の会場があった区とか、地下鉄鶴見緑地線のイメージしかない町だったのですが。たまたま、じっくり歩いてみると意外にポテンシャルを秘めた立地であることに気がつきました。

 操車場の跡地に大規模マンションが建設されたことで人口が伸びているのですが、町並みは古い下町がそのまま残っています。スーパー「コノミヤ」の本店やイズミヤのデイリカナートの売場は決して洗練されてはいないのですが、その分物価が安いのが強みです。印象は高齢化したよくある「限界商店街」なのですが、住民の人口構成は意外に若い人が多いという不思議なギャップがある町です。

 東西線で北新地駅まで10分前後でいけるアクセスの良さと、おおさか東線が将来的に新大阪経由で梅田北ヤードにつながることを考えると確かに未開拓の「穴場」であるといえます。

 もともと低湿地でレンコン畑が並ぶイメージしか無く、「放出」といえば「中古車センター」の印象が強いだけに、これからの「町の色」の付け方、特徴付けには、仕掛けの余地があります。

 大阪で言われる南北軸は、新幹線という国土軸、京阪神のターミナルである梅田に直結している利便性で、圧倒的な存在感を示しています。
 大阪の「ヒガシ」エリアはそれなりに生活のインフラのベースがあるのですが、どこかに出かけるとき一旦、御堂筋線などの南北軸にアクセスする必要があり、乗り換えの煩わしさが敬遠されています。(余談ですが京阪中之島線の不振の要因の一つは乗り換えの利便性の悪さです。延伸も必要ですが、他の路線との直通運転を計画するべきでしょう)

 おおさか東線が新大阪につながれば大阪の東エリア全体への波及効果は少なくありません。また、梅田都心への乗換駅としての「放出」のターミナル性は高まっていきます。その時には、現在の「ヒガシ」のターミナルのひとつである「京橋」も何らかの改革が必要になります。  
 橋下知事の提唱で大阪の「ニシ」、湾岸エリアに関心が集まっていますが、大阪の「ヒガシ」にも静かに変革の時が訪れているようです。
                                
                                               (2009年10月20日)

図ー大阪市内区別人口増加数(2007年)




■クーポン活用の変わった着目点

 クーポン活用の落とし穴

 飲食店などを中心にの販売促進によく活用されている「クーポン券」の配布ですが、つまるところ、割引価格の常態化につながり、かならずしも効果を上げているというわけではありません。企業体力を疲弊させてやめてしまうところも多いようです。
 割引をするのなら、一品サービスされる方がお得感があり効果的としてきするコンサルタントもおられます。新規顧客の開拓につながればいいのですが、クーポンをまめに集めている人はクーポンのある時だけ利用し、固定客にならないといいます。かえって、普段利用している顧客に対して高い価格で提供することにもつながります。

 一定客数の利用が確定したら割引される「グルーポン」(アメリカ)という仕組み

 昨年11月にシカゴで創業された「グルーポン」という仕組みは、ある、商品やサービスが提示されて、規定の人数が集まったら割引されるというウェブサイトです。ユーザーとしては割引価格が提供され、企業側はある程度まとまった顧客を前提に割り引きサービスを提供するという合理的なシステムです。(10月19日繊研新聞 サイトはhttp://www.groupon.com/seattle/ へのリンク )

 割引は商品だけでなく、フィットネスクラブでのパーソナルトレーニング、劇場のチケット、レストランの食事券、バーテンダークラスの受講などサービスも多く、必ずしもスケールメリットで価格を下げるというものではないようです。
 なんだか、参加意識、オーダーしているような錯覚が生まれるのかも知れません。

グルーポンはその後おせち問題で悪名をとどろかせましたが、同種のサービスは健在のようです。

 クーポンではないですが、商品開発、復刻版の依頼など、ある程度の賛同者が集まったら生産されるようなシステムが日本 にありました。http://www.tanomi.com/info/what.html へのリンク
「たのみこむ」です。

 消費者の参加意識をうまくかきたてると、単なる割引ではない親密感が形成されます。

 「クラブツーツーリズム」の成功も、サークル化した参加者の希望から商品企画が生まれているといった点にあります。
                                          (2009年10月19日)
■広く伝えようとすると同じ言葉でも伝わらない〜親密な関係作りに着手する時

 広く投網をかけるような販促が機能しない

 新聞やテレビなどのマスメデァの広告出稿量が落ち込んでいると聞きます。媒体に魅力が無くなってきた所為でしょうか?ここにきて「R25」を始めにしたフリーペーパーも失速しているらしいです。広く伝えようとするメディアにのせた大きな声のメッセージが伝わらなくなってきたのではないかと考えています。

 最近、繰り返し経験したのですが、少し力を入れて広範囲に告知した景品付きのキャンペーンへの反応が極端に悪いのです。同じキャンペーンを顧客リストの顧客相手に実施したところ予想をはるかに上回る反応があったのと対照的です。
 少しメッセージ性の強い内容のキャンペーンでしたので、ある程度コンセプトに共通の理解のベースがある「顧客」には強烈にヒットした反面、全く同じメッセージを広範囲に伝えようとした時に、同じ言葉が伝わらないのです。

 現在、小売店がマスに向けて発信できるメッセージが共通のわかりやすさを持つ「価格」だけしかない・・・のも。価格競争のみに走っている原因かも知れません。他の大きな言葉を広居場所で叫んでも伝わらないので、わかりやすいモノに頼る。一定の反応がある。
 その結果、昨年、あれだけ話題を呼んだ「H&M」の新店を見た人が「新しい情報発信がない」「何だか価格が高いなあ」と感じるのようになります。それは、その後の強烈な価格破壊の流れと、「価格」だけでは新鮮な競争力は維持できないことのあらわれだと思います。

 マスメディアが読めない時代の気分も、自分のお客様の気分であるなら読み取れるはずです。現場を知らない上司が「日経新聞」(単なる比喩でこの新聞だけが悪いわけではないです)を読んで発信するとんちんかんな指示に左右されるのではなく、顧客の目線に立ち返る事が肝心です。

 「楽天」などのWEB通販を支えているのもほんの一部の「マニア」「固定客」

 マスといえば楽天などのWEB通販やテレビ通販が元気ではないかという反論があると思います。ネットは誰でもアクセスできるので誤解されすいのですが、ネット通販を支えているのは「通販マニア」「通販の固定客」です。確かにその数は増えていますが、そこに「マスマーケット」があるわけではありません。

 そこでやることは一つです。リアルな店舗でもWEB店舗でもまず、顧客との親密な関係をつくるのが先です。お客さんとの間でつたわる言葉やコンセプト、それを磨くことが競争相手への参入障壁になります。

  
                                         (2009年10月16日)
■仕掛けが上滑りする消費低迷の時代

 メディアでは読めなくなっている時代の気分

 先日の、選挙関連の報道でもあらわになってきていますが、マスメディアの取り上げる論点の重要性と生活者の実感のギャップが大きくなってきています。

 マスメディアが世論を誘導するのではなく、時代の気分がメディアの論調をリードするのが今までの「情報」の構造でした。50年代のアメリカの歴史学者ブーアスティン教授のの「幻影の時代」からほとんど変わっていなかったのが、微妙に「ずれ」が生じてきています。(とはいえ、ネット世論の中に時代の気分があるかといえばそういうわけでもありません)。
 例えば、「地デジ」、「ウンィンドゥズ7」など情報としては氾濫していますが、どこまで消費という形の行動に結びついているでしょうか?仕掛けられたメッセージが言葉がを尽くすほど「伝わらない」時代になっています。

 ニュースは現実を伝えきれない

 例えば、今ニュースになるのはドンキホーテの690円のジーンズでしょう。西友の850円を抜いて最安値です。表面的な報道ではデフレ経済の中での価格破壊しか伝わりませんが、一方で「クロスウォーク」などの機能性下着が1着数千円でも売れている事実との対比が必要です。百貨店で紳士服の低価格販売が話題になりますが、既存顧客は従来のブランドを購入している事実には触れられません。

 既成概念によっかっった今までの権威が「上から目線」で分析する議論には価値が無くなってきています。相反するような事実を集めて、自分なりの解を導き出していく作業が必要です。

 メデァ論を学んだときには「新聞」というのはその時の関心事をおいかける一過性の情報源なので、時系列的に追いかけることは苦手なメディアだと習いましたが、いつの間にか「権威」になってしまったようです。

                                                 (2009年10月15日)
■「上から目線」にご注意〜伝わらない想いの理由

 社員に伝わらない社長の想い

 最近中小企業の経営者の方とお半紙する機会が多いのですが、 まじめに経営を考えている経営者の方ほど、事業への想い、社員への想いが伝わらないことにもどかしさを感じておられるようです。景気低迷下で社員の生活を守るために厳しい判断を迫られたり、あえて新しい分野への投資を進めていく決断をしたことに対して、社内で表にでない不平不満が蓄積し、社員の動きが悪くなると感じる事はよくありがちなケースです。

 ブラックな企業で、社員を道具と割り切っている経営者でしたらそのような状況での葛藤はないと思います。「社員のため」「会社のため」という責任感が強い経営者ほど、想いが理解されないストレスに苦しむことが多いようです。

 立場が違えば見えてくる視界が違うのは当然の事です。「今わかってくれなくても、いつかわかるときもくるかも・・・」ぐらいの割り切りで粛々と思うところを遂行していく事が大事です。悪い例は中途半端に社員の不満に反応し、声の大きいモノ流されて「ぶれる」ことです。

 コミュニケーションを妨げる「上から目線」

 使命感が強いほど、つい「上から目線」で話すことが多くなります。想いが伝わらないことの主な原因はコミュニケ−ションの不足です。沢山話しているつもりでも、ついにじみ出る「上から目線」は相手の心にバリアをつくり、心をシャットアウトし話を聞いてもらえません。
 立派な演説が必要なシーンもありますが、それより、普段の会話の中で自分の考えを伝え続けることです。自分を売り込む営業トークは得意でも日常の会話が苦手な人は多いようです。相手の話を聞いて、その上で自分の考えを伝える毎日の会話の継続をいとわないことが大事な事です。

 相手に話をして説得しようとするとき、相手が黙ると「納得してもらった」と錯覚しがちです。その時は「相手をするのが面倒くさい」と考えているのかもしれません。注意が必要です。

                                                   (2009年10月14日)
■関西でミシュランの評判が悪い理由〜観光客を集める戦略

 ミシュランガイド京都・大阪2010今週発売の波紋

  「私たちは2009年10月に刊行される『ミシュランガイド京都・大阪』により、国際的な展開をさらに広げていきます。今回、私たちが赴く地は、日本で最も素晴らしい食文化が育まれている街の一つであり、1,200年以上にわたり料理の伝統を継承・発展させてきた京都と、天下の台所として豊かで多様性に富んだ食文化を育んできた大阪です」ということでいよいよ16日に発売されます。

 地元の料理界でのミシュランガイドの評判はかなずしもよくありません。その背景は。
   ・調査員の問題〜あの程度の熟練しかない人間に評価されたくない
   ・基準の問題〜東京版の事例を見ても店の格がばらばらで基準が見えない
   ・片意地なプライド〜外国人に日本の味がわかってたまるか?
   ・ブームで訪れる「観光客」のような客でお店があらされることへの反発
等々でしょうか。

 もともとは、タイヤメーカーが旅行需要を喚起するためにつくった旅行ガイドのようなものなので、「料理」の価値をはかるものではなく、観光客が知らない土地で、観光客として「美味しい」と思える料理を選ぶためのガイドブックなのですから、批判は的を得ていません。

 例えば、京都では観光客向けの商売用の京都と、身内が楽しむ京都ははっきりと線引きされバリアーが張られています。それだけに観光客も「裏京都」に興味津々というところがあります。一方、大阪は結構オープンなので、「裏大阪」というものはありません。強いて言えば「地元大阪」というか、ローカルで大衆的な世界なのですが、それも今や商品化されています。

 集客都市の戦略

 出版は、関西への国際的な注目度を高めるプラス材料になります。特に、中国の富裕層が関西で過ごすときに良い道案内になると思います。
 集客都市として特に大阪が考えないといけないのは。京都のように「裏がまだあると思わせる」戦略です。オープンでサービス精神が旺盛な大阪はリピーターをつくりにくい構造になっています。物珍しさが好きな人には、串カツやたこ焼きは一度食べたら十分なものです。一度訪れて、次はあそこへ行きたいと思わせるモノが少なすぎるのだと思います。その点、京都はその(お上りさんを又呼び込む)知恵に歴史的な蓄積があります。

 大阪は関西、西日本のハブとして周辺地区へ送客する装置を持つことと、「船場」等の中心地区の歴史、生活文化の掘り起こしが両輪として必要だと思います。

 奈良や高野山、姫路や生野銀山、有馬温泉など周辺の観光の拠点としてまず大阪へ訪れるというパターンを確立することが大事です。現在の観光案内は府県の観光協会単位であったり市町村単位でばらばらです。縦割りから離れて関西全体を紹介する事ができるのは大阪だけですから。

 ミシュランガイドは「正しい大阪の食の姿」を反映していないでしょう。しかし、旅行者から見た大阪の食へのひとつの評価を知ることはできます。観光地としての大阪が紹介されるきっかけとして利用し、「こてこての大阪」(?)以外の大阪を知ってもらい、リピーターをつくっていくためのチャンスだと考える必要があります。

                                                 (2009年10月13日)
■売り切る力と顧客接点

 バイイングパワーより売り切る力

 ユニクロの絶好調ばかりが話題になっています。コンビニエンスストアのセブンイレブンの売り上げは2兆7625億円と桁違いですがその他の業態の売り切る力はどの程度あるのか・・・・比較したのが図です。(専門店、通販等で話題の企業を抽出したモノでランキングではありません)
 ドンキホーテがいつの間にか大きな存在になってきています。当初は際物というかDSの中でも特異な店舗でしたが、長崎屋を買収し、改装したメガドンキホーテの店舗も増えています。

 アマゾンジャパンもネット通販1位のパワーで、話題のニトリ、シマムラと肩を並べる販売力を示しています。ジャパネットたかたやジュピターショップチャンネルなどの通販企業も扱い商品が絞られているわりに販売力があります。(絞られているから販売力があるともいえます)

 千趣会、ニッセンもそれぞれ全販売額に対してネットの売上がそれぞれ、46%、42%を占めます。

 よくバイイングパワーという言葉が使われますが、お金をかければ買い付けることはできます。必要なのは適正に利潤を上げて売り切る力を持つかどうかです。ユニクロにアウトレットはありません。

 顧客接点の数と深みが売り切る力を支える

 それぞれ、扱い商品や店舗数が違うので比較されることは少ないのですが、これらの店舗を見ていて感じるのは、お客さんとの接点の「数×深み」に売り切る力のポイントがありそうです。

 ネット通販はすべての参入者が儲かるわけではありません。広告宣伝費がばかにならないウェートを占めます。そこでは、リピーターを多くつかんでいる企業が残っています。
 ユニクロ、ドンキホーテは価格だけでなく独自の商品力を持った売場=商品という接点ががお客さんを惹きつける特徴です。

 売上規模で言えば百貨店のトップグループは8,000億から1兆円を売り上げています。今の勢いから考えると遠くない未来に下記のグループからも百貨店を超える企業がでてくるように思えます。

                         (2009年10月9日)

図ー最近の売上高(売り切る力)の比較 単位:億円   直近の決算データ


■「森ガール」が伊勢丹に登場〜WEB発のファッショントレンドという時代背景

 伊勢丹本店で「森ガール・アット・イセタン」を開催

 伊勢丹本店、2階のザ・ステージ2でナチュラルでガーリーなテイストの服・雑貨を集積した「森ガール・アット・イセタン」が開催されています。ナチャラルテイストの洋服や雑貨を集積して、ミクシィから生まれた「森ガール」と呼ばれる文化志向の強い女の子を対象にしたマーケットに対応したものです。ナチュラルには根強い支持があるとみて、売場をきちんと設けて対応していきたいとのことです。森ガールの定義は下記参照。

 雑誌ではなくミクシィ発信のファッショントレンド

 若者のファッションに元気がありません。すべてが小悪魔アゲハ好きではないでしょうが、おまけ付きの雑誌やデコラティブな表紙の雑誌が本屋の店頭に氾濫しています。(一部にはナチャラル系のライフスタイル誌も増えているのですが、ファッション誌ではないのですよね)
 若者にお金がないことと、若者自体のボリュームが少なくなっているので、メディアもアパレルメーカーもファッショントレンドを掬えなくなっているのだと思います。派手で目立つアゲハ系一色になるのは考えないから「勢いがありそうなものに迎合している」だけです。(考えないと言うことでは総合誌にも同じ傾向が見られます。)

 新しいファッショントレンドがマスメディアではなくWEB上のSNSから生まれたことは象徴的です。メデァや店舗がファッショントレンドをリードできていた時代は終わったのだと思います。
 東京ガールズコレクションなどのガールズイベントも従来のモードの流れとは違ったモノですね。

                                             (2009年10月8日)
森ガールとは・・・・こんなセルフイメージの人
・ゆるい感じのワンピースが好き
・シンプルよりどこかくせのある服がすき
 (でも派手派手してるのはそんなにすきじゃない)
・北欧系ファッションに興味津々
・友達に『森にいそうだね』といわれたことがある
・Aラインがでる服装をする  
(あまりシルエットを強調したくないんだ)
・ボルドー・深緑・茶色など、深い色合いが好き  
(妖精か?)
・暖色系が似合う
・ニットやファーで、もこもこした帽子が好き
・やわらかい雰囲気がでてるおんなの子
・透明感のあるおんなの子
・つねにゆるい雰囲気をだしている 
・革製のバックをもちたい
・ポシェットとかつい使ってしまう
・古いものに魅力を感じる
・懐中時計が好き
・動物モチーフ好き
・チェックやドットが好き
・タイツ・スパッツが好き 
(本当に妖精好きなんだ)
・ラウンドトゥが好き
・スニーカーを履くならスリッポンでゆるくかわいく 
(運動は嫌いみたい)
・マフラーもストールもぐるぐるまきにしたい
・童話が好き
・色白
・ゆるいパーマをかけている
・ボブ×パッツン
・ロシア人形と言われたい
 (マトリョーシカですか? )
・ロリータとはちがうの 
 (ひらひらフリルは嫌いなんですね)
・ガーリー
・雑誌でいうとspoon. ・ FUDGE ・ 装苑 ・ SPUR
 (ARUNEとかKUUNEL、天然生活ではないのですね)
・tsumori chisato ・ COCUE ・ cuccia のお洋服がすき
・felissimoが好き
(安物の雑貨?
・Q-potのお菓子の雰囲気がすき
・カフェでまったりするのが好き 
(話題は童話でしょうか)
・カメラ片手に散歩をするのが好き
・雑貨屋巡りをついついしてしまう
・本屋さんでかわいい本を見つけると嬉しい
・家具屋さんにいくとわくわくしてしまう
(絶対にニトリとか大塚家具ではないですね
・季節は秋と冬が好き 
(夏にはマフラーやや暖色は暑苦しいですからね)
・「ハチクロ」のはぐは森ガールだとおもう
・「ただ、君を愛してる」の里中静流も森ガール


MIXIの中で定義?されている森ガールのイメージ・・・らしいです。アゲハとは対極ですが、このようなセルフイメージに共感する層もいるという事です。
■元気なシニアが市場を動かす

 へこむ50代の活動性〜シニア層や20〜30代やアラフォー年代と対照的な特性

 最近、依頼された調査を読み込んでいて、50代の活動性が前後の年代に比べて低くなっていることが気になります。通常は年齢と比例、ないし反比例した数値の変化になるのが普通なのですが。その年代だけ低い数値になってしまっているのです。
 手持ちのデータで生活意識を比較したのが下の図です。すべてではないのですが、「トレンド」や「ブランド」というキーワードへの反応が、シニア層である60才代と、40代で高いのに比較して、50才代では低くなっています。(20才代、30才代はいつの時代もこれらの反応は高いです)

 年代的にも、子供の教育費で一番お金がかかる時期ですからある意味仕方がないのかも知れません。かつてはこの年代では、こどもが一人前になり消費活動が活発になる時期だったのですが、そのライフステージが、どんどんずれてきているのかも知れません。40代で初産という女性も増えてきていますしね。

※当初、世代論で説明できるかと思いロジックを拡げたのですが、データがそぐわなくて世代論での説明は一旦棄却しました。あらためて分析いたします。

 元気なシニアの関心事は健康、美容・アンチエイジング

 さて、この「めちゃめちゃ元気なシニア」の生活関心はどこにあるのでしょうか。NALC(ニッポン・アクティブ・ライフ・クラブ)と共同研究した結果では、「健康」「美容・アンチエイジング」に集中していました。テレビ通販の売れ筋もその2つに集約されています。

 団塊世代層をターゲットにした百貨店として旧心斎橋そごうがあげられます。上層階は大人の趣味の売場としてかなりこだわった店を集めていましたが大失敗でした。何故か?大人のホビーなんて団塊世代の「おっさん向け」の売場をつくっても、百貨店では買い物はしません。
 団塊世代のお姉様達は同世代のおっさんの趣味にはつきあうわけありません。団塊世代を集めるための正解は「韓流スターのグッズ集積」と「アンチエイジング」です。何故、それができなかったのか?マーケットの読み方が甘かったのでしょうね。

 老夫婦で買い物をされている姿を見かけることが多くなってきました。そこでの主導権はあきらかに女性です。

                                                           (2009年10月7日)

図ー1

図ー2


図ー3


データは「なにわ考現学05」  2005年1月調査より
■「特別感」の有る場所と建築の創造力の枯渇

 建築の創造性はバブルがつくったモノではない

 「建築業界」の人間ではありませんので、建築業界の事情には疎いのですが、何だか最近、「建築物」が話題になることが少なくなってきたように感じます。業界的にはどうなんでしょう。一般人が「何だかすごいモノができるよね」とか実際に入ってみて「わあすごい」と建築で強い印象を与えるものが無くなってきたように思いませんか?

 関西ではなく、東京ではまた違うのでしょうか?大きな建物、ビッグプロジェクトのニュースや建物のパースを見てもただでかいだけで、ハリウッドの対策CG特撮映画をみているような「退屈さ」が充満しています。海外、上海やドバイの映像を見てもただでかいなあと思うだけで、これは感動とは違うのですよね。

 大阪でバブルの時につくられた奇天烈な外観の有名建築家の「作品」は、次々解体立て直しされています・・・その時代は競って「お馬鹿」な建物を「芸術」の名のもとに施主に認めさせるかを競っていたように思います。T先生の西洋仏壇とかW先生の安物のガウディとかミナミからなくなっても、その変わりにフリーフォールや観覧車のついたパチンコ屋やバッタ屋のビルが奇抜さを代替してくれています。別に惜しまれている訳ではありません。バブルがあれば建築の創造性が担保されるわけではないようです。

 それでも、その時代までは、安藤忠雄作の天保山のサントリーミュージアムや港湾局長とかのフランス人の奥さんの鶴の一声?で決まったとかいわれているフンデルトヴァッサー作のゲージュツ的なゴミ工場(大阪舞洲)とか、一般人にも感動を与える建築物があったように思います。「創造力」のかけらがかいま見えていたように思います。

 
それはそうと3,000億円の工事費がかかる「新国立競技場」のフォルムは自転車のヘルメットみたいですね・・・・

 時代の精神が「より高く」「より大きく」「より奇抜な」ものを求めていない

 今の時代の「気分」「精神」がより高く、より大きく、より奇抜なものの追求に価値を認めなくなってきていると考えています。またそれらの「計数化」できる指標に「創造性」が発揮される余地もないのだと思います。

 梅田のヒルトンプラザのアトリウムを始めてみた時には、珍しくてそれを体験するために1日数万人の来店客がありました。だけど、もう吹き抜けでは人は驚きません。

 阪急百貨店の建て替え、大阪駅キタビル、ターミナルビルの増築、梅田北ヤード・・・・すざまじいまでの規模の高層ビルの開発が進んでいるにも関わらず、一般人の関心がどこか冷ややかなのは、競争のルールが変わった事のあらわれです。

 特別感のある場所

 高層ビルが集中するターミナルは「特別な場所」にならないというお話を伺いました。不特定多数がお金を払えば出入りする場所には「特別な場所」としての価値はありません。例えば、特別な日に食事をしたいレストランは、決して梅田や難波ではなく、北浜や淀屋橋、中之島、肥後橋など少し離れた場所にあります。
 単にレトロ趣味というわけではなく、そんな場所には「特別感」にマッチした建築物があり用途や利用者層にマッチした使われ方をしています。

 建築だけで「特別感のある場所」を創造できると考えるのは建築家の傲慢ではないでしょうか。

 景気後退の中で「建築」を目指す優秀な学生が減少しています。新しい時代に対応した「創造性」の方向を示さないと、ますます衰退が続いていくことでしょう。


建築マニアは多いですが、建築についてその社会性からの批評はまだまだ少ないですね。
                                                      (2009年10月6日)

■20代に特化したミナミ、大人をターゲットとしたキタ〜大人が楽しめる街へ

 キタは大人の街、ミナミは若者の街

 キタはサラリーマン,OL層を中心にした大人の街で、ミナミは若者向けの店が多い街というのはこの半世紀近く変わらないイメージです。大阪市内通勤者を対象にしたファッションビルの利用率でも、その特徴があらわれています。
 図ー2の特化指数での比較をご覧ください。ミナミ(なんば〜心斎橋)に立地する「心斎橋OPA」、「ビッグステップ」、「心斎橋パルコ」は極端に20代に集中しています。
 キタでは「HEPファイブ」に20代に集中する傾向があるものの、どちらかと言えば20〜30代に特化したパターンが多くなっています。(「HEPナビオ」は現在阪急メンズ館になっています)「ハービス」、「ヒルトンプラザ」といった大人全般をターゲットにした商業施設も目立っています。

 多世代が集まるターミナルビルのない天王寺、大人の居場所がないミナミ

 利便性のいいターミナルにはかならずオールターゲット層が安心して利用できる商業施設があります。梅田では「阪急三番街」、なんばでは「なんばシティ」誰もが安心して食事や買い物が出来る施設です。天王寺地区ではその公共広場的な役割を果たす商業施設がありません。百貨店がその役割を果たしているのでしょうか?中高年も多い街なのに中高年が落ち着ける場所がないのも不思議です。
 なんばもまた、大人が落ち着いて食事をできる場所が少ない街です。道頓堀からは老舗の店が逃げ出してテキ屋の屋台のような飲食店が目立ちます。島屋の増床でどんな対応が見られるのか注目されます。

 大丸心斎橋北館にスポーツミツハシが出店  本館との回遊性は必要か不要か?

 10階のフロアの6割を占める660平米に京都のスポーツショップ「ミツハシ」が出店するそうです。本館と通路がつながっている南館とは違い、もともと別の百貨店であった北館は、本館のターゲットやイメージと切り離して、通行量の多い若者をターゲットにするのだと理解していました。そうでないと「本館」の持つ「伝統」「本店」の価値を損なうからです。
 梅田大丸がスタイリッシュな店舗から価格訴求を強めるのはあるのかもしれない選択ですが、心斎橋店は時流に左右されない価値を提供するのだと・・・・勝手に思っていました。

 ミツハシの店舗は若者向けのスポーツよりウォーキングやランニングを中心にするそうです。ターゲットはそうなるとシニアです。この年代は本館のお客様でしょう。連絡ブリッジもないですしね。
 売場効率の良いモノだけを本館に集めて、その他をのものや安いものを北館にまとめようというのでしょうか?店舗サイドからすると効率がいいのでしょうが、お客様から見ると不便ではないのでしょうか?
 
 北館と本館は回遊を前提としてしまうと、コンセプトがぼやけて安い方に引きずられます。
 オペレーションの都合でお客様を引き回し、イメージを下げるのは得策では無いでしょう。

                                                 (2009年10月5日)

図ー1 過去1年間の大阪市内のファッションビル利用率(2005年1月 大阪市内通勤者対象の調査)


図ー2 ファッションビル利用率「特化指数」によるターゲット比較※女性全体を1.00とした時の利用率比較


データは「なにわ考現学05より、調査時期には茶屋町NUは未開店で、ナビオはまだメンズ館になっていません。


■まねっこされにくい新規事業の創造〜参入障壁の作り方

 簡単にまねっこできない秘密

 新しい事業を立ち上げるとき、少し儲かりそうに見えると、すぐに模倣される事になります。少なくとも、初期投資の回収を行うタイミングまでは競争相手の参入を防ぐ参入障壁を設定する必要があります。「この事業の新規性は?」「他社が直ぐにまねをして参入してきませんか?」公的な補助金を頂くためのご指導の場でのするどいご質問に、汗をかきながら答えながら考えたことがあります。

 その事業は、特に特許をとれるような新規事業に支えられているわけではありません。小売業ですが、衝撃的な低価格で提供できる業態でもありません。その業界は国内外の大手の大型店低価格を売り物に席巻している業界です。
 小さな小売店が一生懸命価格を下げてもたかがしれています。圧倒的な規模の調達力、原材料からリスクを持って仕入れている調達力、MD力、資本力なにを持ってもかないはしません。

 生半可は価格対応はあっさりつぶされるでしょうし、新しいアイデアも特許をとれるような画期的な技術でない限り簡単にまねされます。

 その中で、簡単に模倣されないようにするにはどうすればいいのか?
 競争相手が収益源としているポイントについて、全く反対の戦略をとるのです。例えそこに市場があるとわかっても自社の収益源である領域をおかすものには中々手をつけられません。「あれはニッチだから」という言い訳を使えば同じ価値観を共有する狭い社内は説得できます。(イノベーションのジレンマというやつでしょうか?)

 時代の変わり目こそ、この戦略を最大限にいかせるタイミングです。

 家具を売らない家具屋さん、家具屋の「脱・家具宣言」をうたった売場が今月ようやくオープンにこぎつけます。ニトリ、イケヤの低価格攻勢に壊滅的な打撃を受けている家具業界に一石を投じるプロジェクトです。・・・・詳細は23日にご報告いたします。

 はたして、考えている市場がブルーオーシャンなのか青っぽく見える水たまりに過ぎないのか・・・・確信はありますが、確定はしていません。

 他の業態でも、低価格を武器にした大型チェーンに苦しめられている店舗は沢山あります。例えばイオンは必要であれば農家の売場をつくりますし、自前の農場もつくります、大型SCにライフスタイルセンターをつつみこむのもお手の物です。この店舗に対抗するには、この店舗の弱みではなく、最大の強みを分析し、そこを徹底的についていくことです。

 簡単にまねっこできない「社内事情」を徹底的についていくしか対抗の途はありません。

                                                     (2009年10月2日)
■街機能を取り込んで増殖するSCと商店街再生の切り札としての自転車

 地域との距離を縮めるライフスタイルセンターの要素

 ショッピングセンターのタイプのひとつに「ライフスタイルセンター」というコンセプトがあります閉鎖的な建物ではなく、オープンエアーで、飲食店の比率が高く、小商圏対応、核店舗は生活必需品の大型専門店。といった特徴を持ちます。時間消費型で地域のコミュニティになる要素を持った小規模なショッピングセンターのパターンです。無料で楽しめる公共空間が、地域の社交の場になるという店と、食品スーパーや生活を彩る雑貨の大型店などで地域密着をはかっていることがポイントでしょうか。

 明確な定義はないのですが、東京江東区の「サンストリート亀戸」や三井不動産の「ららガーデン」などが国内では有名です。本家アメリカほどライフスタイルの階層差がないので意味ないよと言う意見もありますが、まあ、小さい商圏の地域密着型の低コストで建設できる少しおしゃれなSCと考えればいいのではないかと思います。

 広域から集客する大型のショッピングセンターの中に、オープンモールを取り入れたり、要素として一部取り入れる動きが増えています。「ららぽーと新三郷」などは体感型の時間消費型施設を取り入れると、オープン空間を大胆に取り入れています。

 中心市街地の空き店舗を駐輪場へ〜高松市の商店街の動き

 もともとは放置自転車対策として始まった駐輪場の設置とレンタサイクル事業が観光客集客の目玉になってきています。高松市は中心市街地の商店街の空き店舗を駐輪場に改装するコストを一部負担、現在303台ある無料駐輪場を将来的に900台まで増やすそうです。ランニングコストの一部も市が負担しています。観光客向けのレンタサイクル事業も行っていますので、交通アクセス改善のための財政負担が比較的軽くてすみ、コンパクトシティとしての魅力も高まっています。

 うどん店を巡る「うどんサイクリング」や四国霊場88カ所を9日かけて自転車で巡る「四国霊場88サイクル駅伝」など自転車をキーワードに観光客も増やしていく予定です。
 郊外に多いうどん店を巡っては車の駐車場で地元とのトラブルが多いため、自転車での周遊が最適といえそうです。

 愛媛県のしまなみ街道でも自転車出観光する動きが強まっていて、JR四国では自転車を乗せられる車両「サイクルトレイン」を運行しています。

 商店街にとって、商圏の住民の日常の足としての自転車の活用はもちろんですが、観光客を呼び込む目玉として、自転車が四国では盛り上がっているようです。

 小商圏をいかにつかむかを考えるときに、たまり場と、簡便な交通アクセスの整備が重要です。もうひとつ「飲食」の魅力も繰り返し人が訪れるための大事な要素かも知れません。

                                                  (2009年10月1日)
 9月
■急回復した中国からの観光客〜ビジネスとして避けて通れない中国対応

 夏休みには意外に海外旅行者が多かった?

 7月に発表されたJTBの予測では、今年の夏休みの日本からの海外旅行者は5.8%の減少と伝えられていました。テレビなどの報道もそのようなトーンでまとめられていましたが、日本政府観光局(JNTO)の発表によると、8月の出国日本人は前年同月比2.2%増の151.8万人と4ヶ月ぶりに増加したようです。燃油サーチャージの廃止や円高が景気後退による落ち込みをカバーしたということです。
 一度減少とすり込まれた印象がずっとすり込まれているので、随分意外に感じられます。・・・・先入観というのはこわいですね。

 訪日外国人は全体で減少〜その中で中国人の訪日客が2桁増の伸び

 日本を訪れる外国人について、この8月は前年同月比8.4%のマイナス。韓国からの訪日客が191,000人と2割減に対し、中国からの観光客が17%増の109,100人と増加しています。台湾からは114,800人と3.7%の減少です。
 アメリカ、カナダ、フランスからの訪日客も増えていますが、それぞれ58,000人、13,400人、13,900人と人数で見るとアジアからの訪日客のウェートの高さがわかります。(それぞれ1ヶ月間の訪日客数)

 昔からつながりの深い韓国・台湾だけでなく、渡航の自由化が進む中国からの訪日客は今後とも増加することが予測されます。

 銀聯カードなど中国のクレジットカードの導入など、中国対応は部分的に進んでいますが、まだまだ街全体として、どのように受け入れるか、受け入れのインフラは整っていません。

 中国人観光客の多いミナミでは中国人を対象にしたフリーペーパー・タウンガイドMAPが設置されています。「走遍大阪」(WEB版は無いようなので、パルコとかミナミの店舗でお探しください)。
 どんな店がどんな風に広告を出しているか、試行錯誤の途中でしょうが、見るだけでも面白いですよ。

                                                                      (2009年9月30日)
■小売業に拡がるリユース、リサイクルの流れ〜売るためのエコ

 販促手法としての下取りセール

 販売不振に苦しむ大型小売店各社の下取りセールが活発になっています。この夏以降の事例では
・大丸・松坂屋「ゆかたリサイクル回収キャンペーン」ゆかた1着で1,000円の呉服売り場買い物券
・西武・そごう「靴・」婦人服下取りセール」1品525円の割引券
・東急百貨店「紳士スーツ下取り」1着につき1,000円の買い物券
・小田急百貨店「衣料品、靴、バッグの下取りセール」特定の売場だけでなく、ファッション関連の全製品購入時に使える1,000円相当の割引券
・丸井「ブーツ、ビジネス靴、ブルゾン、コート」など回収1点につき1,000円相当のクーポン

 回収された品物は海外の難民に贈られるか破棄されるのが大半ですが、一部ブックオフの子会社が引き取って販売すると言うことです。中古品の市場も形成されていますのでリユースされるケースも一部あるのでしょう。自分自身が」捨てられないのである意味での免罪符のようなものなのかもしれません。
 単に割引ではなく、罪悪感なく「整理」できるところがポイントなのでしょう。

 腕時計を下取りして環境運動に寄付

 色々なデータを調べてみても「環境問題」には総論賛成でも、具体的な負担増には二の足を踏むのが消費者心理です。それでも、どこか気になっている事は確かで、「お得感」と「エコ」がセットになると財布のひもがゆるみます。
 パルコの子会社「ヌーブ・エイ」では腕時計の下取りを始め、1個につきその店舗で使える2,000円分のクーポンと交換します。引き取った時計は地球環境保全を目指す運動「MOTTAINAIキャンペーン」に寄付し、フリーマケットで販売、収益金をアフリカの植林活動に役立てるそうです。
 使えない下取り品は電池を外して廃棄処理。現在流通している大量生産の商品は、ほとんどが再生不能か、再生に大きなコストがかかるものばかりです。おそらく大半が破棄に回るはずです。

 エコな一点物

 資源再生という観点からは、手の込んだ細工をほどこした再生というのが見た目にわかりやすくスノッブな感じがします。古新聞から手提げ袋をつくる四万十町の「四万十とおわ」、ジーンズから腰掛けスツールを製作する名古屋市の「NOyes」、海図から便箋をつくる横浜市の「エクスポート」など・・・・

 家具の再生をうたっているお店もありますが、ほとんど一から作り直すような手間をかけています。これは
「愛着」を保存するコストですね。

 リサイクルのおすみつき

 ユニクロでもフリース素材の再生などのアピールはありましたが、指定された素材を使った商品を何年後でも回収し、再利用するシステム「エコログリサイクル」は国際的な取り組みです。

 http://moura.jp/ecologue/about/index.html#hh_all_in へのリンク

 94年にドイツで始まったこのシステムをファッション業界で初めて取り入れたのがファッション専門店の「バーニーズジャパン」。下取りセールの考え方をさらにおしすすめて、回収後どのように再利用されるかもわかるシステムでよりエコロジーを実感できるファッション提案をするそうです。

http://woman.nikkei.co.jp/news/article.aspx?id=20090928ax020n1 へのリンク

どのように実感できるかは記事ではよくわからないのですが、ちゃんとリサイクルしているよという認証が得られるのでしょうね。


エコだけでは売れませんが、売るためにはエコの要素を取り入れることが必要で、それは生産段階からの対応が求められています。

                                                        (2009年9月29日)

■小さい百貨店、地方の百貨店だからこそ変われる

 「グループ力を活かした新百貨店モデル」に取り組む「かつての大型百貨店」の頂点

 西武池袋店と言えば、かつて70〜80年代は日本の百貨店業界をリードする大型百貨店でした。生活文化提案の情報発信、海外の新しいブランドの紹介、そして「食品館」において関東の百貨店としては初めて市場的な対面販売を導入するなど、百貨店の革新をリードしていました。

 最近は話題の中心から離れていましたが、今朝の日経流通新聞で、グループ会社のヨークベニマルのノウハウを取り入れて、「さんま1匹100円」とか、「刺身盛り合わせ500円」とかの低価格商品を取り入れたり、セブン&アイのPB商品を取り入れたりして価格対応を強化したと言う記事が掲載されていました。「高級感を演出して店の品格維持に腐心する百貨店では従来の発送になかったもの・・・・」って日頃関西の百貨店を利用している私たちには今更目新しい光景ではありません。新聞記者の勉強不足でしょう。

 食品スーパーのノウハウを導入すれば価格を下げても、良い商品を提供し、収益を上げられる、売場が良くなる事例は「マックスバリュー」が「光洋」と提携して飛躍的に良くなったとか、「阪急アオシス」が「ニッショー」と一緒になり高価格スーパーから価格帯が拡がり良くなったというケースを見ていれば実感できます。
 ただし、食品スーパーに、大手グループのPB商品が導入されるときに、PB商品が前面に出て買い手側の選択肢を狭めるというマイナス面もありますが。

 食品に関しては当たり前の価格が提供されるというプラス面はあっても、イトーヨーカドーの商品であの大型の池袋西武が立ち直れるかというと疑問があります。イトーヨカドーの「ロビンソン百貨店」、ジャスコの「ボンマルシェ」、マイカルの「ダックシティ」、忠実屋の「FAM」などチェーンストが手がけた百貨店で成功した事例は皆無です。失敗理由は「百貨店商品が入らなかったコト」とされています。現在「百貨店商品のブランド」に魅力がなくなってきているのですが。きっと今やっても同じ理由を言うのでしょうね。

 百貨店の課題は高い値入率につきます。
 
 都心の大型旗艦店だからこそ、根本の部分に手をつけられずに「価格対応」の弥縫策に走っているように思えます。本来は店頭販売は百貨店の強みを発揮できる部分に大きく絞り込んだ上で、他の売り方で収益を上げるべきです。GMSだって決して収益の上がる事業ではないですから、店舗の何割かをイトーヨカドーにしたって立ち直れるわけありません。

 百貨店の資源は「顧客」

 かつて、各地域にあった「酒蔵」が地域の経済や社会インフラの中心になっていたそうです。郵便局を寄付したり、地域インフラの整備を率先して行っていたそうです。地方によっては今でも放送局や新聞社の大株主が地域の酒蔵だったりします。
 
 百貨店もある時期までは地域の商業の核としての役割がありました。地域では地元の百貨店への信頼や高いイメージは年配層を中心に、いまでも根強くあります。数多くあった地方百貨店が無くなっていった原因は「流通革命」であったり、「モーターリぜーション」であったと言われています。原因は変化に対応しようとしなかったにつきます。

 大きな企業、大きな店舗ほど変化への対応力が鈍ります。本日の繊研新聞の記事にあるように、競争相手は同業他社やリアル店舗の異業種、そして全く違ったチャネルにまで拡がります。(以前紹介した某百貨店のニュースリリースではブランドの百貨店初導入がニュースになっていました)アパレル会社がテレビ通販で売った商品は1時間で、百貨店1年分の売上を上げています。
 百貨店の取引先が百貨店を見限って来ている今こそ、新しい売り方、新しい商品サービスを展開するチャンスだと考えています。

 都心の大型店は取引先との様々なしがらみが強くお客様とのつながりが薄くなります。逆に地方の小さな百貨店はお客様とのつながりが濃いわりに取引先とのしがらみがありませんので、思い切ったことが出来るはずです。

 かつての都心百貨店の一方の雄であった池袋西武についての報道をみてあらためて考えさせられる事が多くありました。

                                                                   (2009年9月28日)
■「アンリシャルパンティエ」のブランド価値の衰退

 洋菓子ブランドのトップはどこだ

 この秋の、阪神百貨店、阪急百貨店の改装で、今勢いのあるデパ地下スイーツはどこなのかが見えてきました。スイーツは地域ブランドと結びついたところが強く支持されています。阪急での一押しは「HAMON」豊中の「ムッシュマキノ」と川西の「ファクトリーナカタ」と阪急百貨店のコラボレーションショップです。他には堂島ロールの「モンシュシュ」、モロゾフの「チーズケーキ専門店byモロゾフ」などのショップがあげられています。・・・・阪急と組んで大きくなったといわれている「アンリシャルパンティエ」の名前はニュースリリースにはでてきていません。

 阪神百貨店では群馬県高崎市で有名なラスクの店「ガトーフェスタハラダ」の売場に行列が出来ています。他に岡山のフルーツタルトの店「ハナフル」、クラブハリエの「焼きたてバーム」、西宮のフルーツケーキ「アローツリー」同じく、西宮のロールケーキ「ブラザーズ」などが一押しのようです。

 2004年の「2020AIM」誌で阪急百貨店で紹介されている、売上ランキングの1位は「グラマシーニューヨーク」、2位は「アンリシャルパンティエ」、3位はパテシェと組んでつくった「五感」でした。この時点で、トップはすでに「グラマシーニューヨーク」だったのです。

 確かに、露出度の低い、関東ではまだ「アンリシャルパンティエ」のイメージは高いようでしたが、関西ではもう過去のブランドになりつつあります。

 モロゾフの社長がうらやましいのはアンリではなくツマガリ

 偶然、神戸大学大学院のMBAの発表論文を拝見しました。2004年のものです。アンリシャルパンティエとモロゾフを比較してアンリのブランディングを論じたモノです。内容については、評論する立場にないので差し控えさせていただきます。石井淳蔵先生の指導ですから手法や論理構築はそれなりのものなのでしょう。
 ただ、学生さん達の洋菓子業界への知識と感受性は、生活者の実感とかけ離れているので、少し困った展開になっています。

 端的に言ってブランドのポジショニング設定に問題があります。(某百貨店独自調べ?だそうですがこのポジショニング設定は正確ではないと思います)ただ、洋菓子に知識が無く、好きでない人はそのようなポジショニングをすることもあるというひとつのモデルとして参考にはなります。

神戸大学MBAによるアンリシャルパンティエなど洋菓子ブランドのポジショニング
http://mba.kobe-u.ac.jp/life/minipro/2005/materials/team6.pdf へのリンク

 マスマーケットを対象とした「モロゾフ」の会長がうらやましがっていた企業は「アンリシャルパンティエ」のような「本場風」の高級菓子ではなく、甲陽園で地元に工場というか作業場を構える「ツマガリ」の生き方です。(取材で直接そのお話を伺いました)
 本場の味はパリで活躍するパテシェが日本で店を出す時代になれば、「本場風」は色あせます。そして、今、人気を呼んでいるのは地域限定の洋菓子、生産者の顔が見える洋菓子です。

 「アンリシャルパンティエ」はブランド戦略を間違えたようです。(某百貨店の独自調べのブランドマップに惑わされたのでしょうか)

 ・・・・そういえば、同社の新社長は関東地方の某百貨店のご出身ですね。

                                                                          (2009年9月25日)
■ギフト文化とブランディング〜縮小する市場で利益をあげる

 ギフト業界では「コト」ギフトに注目が集まっている

 中元歳暮という習慣がもっと盛んであった頃、儀礼ギフトは社会的地位の高い人のところ(医者、企業の役職者)のところに集中的に集まり、その自宅には1年前、2年前のギフトの在庫が残っていました。欲しいギフトのトップは商品券という調査結果もあり、贈る側は気持ちを込めていても、受け取る側にはその想いは伝わっていなかったようです。欧米ではチップという形で社会的上位の人から下位の人への心遣いを贈る習慣があるのに対し、日本でのギフトの多くは目上の人への貢ぎ物のような形をとっていた文化の違いがあらわれているように思えます。

 ギフト市場は11兆円と試算されていますが、法人ギフト、儀礼的なフォーマルギフトの市場は縮小し、カジュアルギフトが伸びていると言われています。(矢野経済研究所調べ)

 今、ギフトで人気なのは「フリーチョイスギフト」でカタログから好きな商品を選択できるギフトです。さらに業界で注目されているのは「コト」ギフトでエステプランや食事、旅行などを贈る市場に注目が集まっています。これもまたギフトのカジュアル化の流れを反映しています。

 縮小するフォーマルギフト市場にも商機が残っている?

 三越の包装紙、「虎屋」のようかんなどのように、実態ではなく記号が意味を持つ、フォーマルギフトも縮小しているとはいえ、まだ残っています。カジュアルギフトは新しいトレンド対応で目新しいアイデァを盛り込めますが、ファーマルギフトの世界に新しい商品を展開することはできないのでしょうか。

 和洋菓子の「老舗風」の新しいブランドに学ぶ新提案の可能性。「アンリシャルパンティエ」「叶匠寿庵」「たねや」「源吉兆庵」はそれぞれ、老舗でもなんでもありません。ブランディングの巧さによって、老舗風のステイタスを身につけることができました。

 とりあえず、何も考えなくてもこれを選んでおけば間違いないというブランドが必要な市場もまだ残っているという点にも注目が必要です。商品のライフサイクルが長いと投資に対する効果がながく持続していきます。

 ゼロベースで考えて利益をあげていく

 疲弊する地方都市の百貨店がどんどん倒れています。市場が縮小しているにも関わらず、企業が変われないためにどんどん収益構造を悪化させているのです。ただ、百貨店を求める市場は無くなってしまったのかというと、そうでもありません。商圏の縮小、人口の減少による市場の縮小はあっても「百貨店」を期待するニーズは一定規模あります。その市場規模にあわせて企業を変えていくことができない店が無くなっているのでしょう。大抵の店は身の丈に合わない設備投資をして見栄えを都市型百貨店にすれば再生できると誤解した結果であることが多いようです。
 

                                                         (2009年9月24日)
■「プロボノ」という社会貢献のあり方

 「For Good」公共的な善のために

 9月17日の繊研新聞に社会起業家でも、ボランティアでもない社会との新しい関わり方として「プロボノ」とおいう選択肢について紹介されていました。「プロボノ」というのはラテン語で「For Good」公共的な善のためにと言う意味で、専門知識を持つ専門職がその知識やスキルを活かして社会貢献をすることで、英米の弁護士や会計事務所、コンサルティングファームなどでは一般的に使われているそうです。

 お金に換算すると結構な価値になる専門的サービスを、社会貢献に取り組むNPOなどの団体に無償で提供することでスキルを活かした社会貢献を行うものです。確かにビジネスで涵養されたマネジメント能力をNPOや地域興しにとりくむスモールビジネスの現場で活かせればもっとうまく回るのにと思わされるコトは多々あります。実際にそのようなニーズも沢山あります。実際にマッチング活動を行っているNPOのサイトは下記です。

 http://svgt.jp/ へのリンク


 団塊世代リタイア層の社会的活用

 今までお仕事でお世話になってきた諸先輩がリタイアされる時期を迎えて、やはり何らかの専門知識を活かして仕事を続けたいとか、社会貢献したいという気持ちをもたれている方々が多いと実感しています。
 「起業」をすると面白いことはいっぱいあるのですが、中々踏み切れないというのが実態でしょう。ボランティアというのもうまくスキルを活かしたものにつければいいのですが、中々大変です。(参加する方の意識改革が必要・・・とよく女性の方から指摘されます。どいこまでいっても会社員意識が抜けないというか)

 プロジェクトマネジメント、経営計画、マーケティング、広報、ライターなど会社の中で身につけたスキルを必要とする団体は結構多いと思います。上記団体の他にもマッチングを考えている団体は結構あるようです。おそらく、リタイアした跡から始めるのでは駄目で、在職中の一番多忙な時期から社会的な活動を始めなければいけないのではと思います。

                                       (2009年9月18日)
   
■「名前」をチェンジして再生

 「名前隠し」から新しいイメージづくりへ

 以前、AERAの記者の方から住宅開発で「名前隠し」が進んでいるという「お話を伺いました。ある程度イメージのこびりついた街の大型開発で、地名をださずに全く新しい名前で分譲し、成功している事例が沢山出ているということです。特に開発が進む湾岸地区は倉庫街であったり、物流拠点のイメージが強いので、新しい街をつくるというコンセプトで分譲されているのでしょう。

 確かに、「大阪ビジネスパーク」(OBP)も当初は呼称だけでもずいぶんと新鮮なイメージがありました。
 古い地名を残すのは大事で、愛着を持っている人が多いエリアであれば、かならず活かしていくべきでしょうが、名前が変わるだけでリフレッシュする効果もばかにはできません。一時流行った企業のCIも広告代理店の儲けの種という裏がばれて下火になりましたが、本当は結構効果も会ったと思います。

 手垢のついた言葉をチェンジすることでプロジェクトに対する周りの目が変わる

 手垢のついたコンセプトはいつしか、人の耳を引かなくなってしまいます。たまたま所要で琵琶湖湖岸へでかけたのですが、以前は欲得がらみで出かけていたのでこの環境でどう儲けてやろうかとしか考えなかったのですが、単純に風景、環境はいいな・・・と感じました。「ウォーターフロント開発」という手垢のついた流行言葉の色眼鏡をはずしてしまえば、気持ちいい空間です。そういえば「水都大阪2009」も水辺空間とか、リバーフロントとか称していますが、「ウォーターフロント」とは誰も呼びませんね。

 そのような意味でそろそろ「RENAME」しコンセプトを一新した方がいいと思えるのは「梅田北ヤード開発」でしょうか。新しい街のビジョンもでてきているのですから、そろそろ国際的にも通用する新しい「名前」をつけていけばいかがでしょうか?(一旦、今までの投資を損金にしてしまい、一から出なおせばベストですが)

 
その後「うめきた」が愛称に決まりました。先行開発地域は「グランフロント大阪」・・・て何語ですか?フランスと英国のハイブリッドですね。海外に売るにはもう一工夫が必要でしたね。国際的に通用しなくてもガラパゴスでいいもん・・ですか。  2010年8月に追記

                                             (2009年9月17日)
■「予期しないつまずき」から再生したシニアコミュニティ「いきいき」の世界

 雑誌を中心としたシニアのコミュニティ「いきいき」

 「いきいき」と言う雑誌をご存じですか。店頭には並んでいませんが、50歳以上の女性を対象とした健康や趣味、生き方をテーマにした会員制の定期購読紙で、一時は43万部まで発行されていました。その出版元の「ユーリーグ」は日野原重明氏の「生き方上手」というベストセラーを出版し、シニア女性に大きな支持を得ていました。生活カタログ誌「ふくふく」での通信販売や読者をうまく動員するイベントの開催など、読者同士のコミュニティ作りをうまくつかってビジネスにしていたユニークな企業でした。趣味を同じくするシニア女性のコミュニティをつくれば、手堅いリピーターとなって収益の上がる商売になります。
 旅行業では近畿日本ツーリストから生まれた「クラブツーツーリズム」がそのパターンで成功しています。

 突然の経営破綻・・・「派手好きの社長」が原因か?

 この3月そのユーリーグが経営破綻したと聞いたときには我が耳を疑いました。サプライムローン破綻の影響を受けない「固い商売」「固いターゲット」に見えていたからです。
 破綻の原因は通信販売部門の商品在庫やシステム投資といった本業に関わることだけでなく、代表の積極的な投資(本業以外の株式投資)の含み損、多額の借入金の返済がネックになったようです。

 幸いその後、本業(出版業、通信販売業)についてはスポンサーも見つかり、発行が続けられているようです。(この会社には、クラブツーリズムも出資されています)

 仲間作り、コトづくりで肥沃な市場をがっちりつかむ

 シニアマーケティングについて、ずいぶんスタディしましたがやはり、男性より女性の購買力、消費力が圧倒的です。シニア女性にいかに楽しんでいただいて、その結果としてお客様になっていただくか・・・仲間作り、イベントづくりが鍵になります。いきいきの編集長には以前取材したことも」ありますので、稿をあらためてそのポイントをお伝えいたします。

                                                         (2009年9月16日)


■「ジャパネットたかた」に学ぶ百貨店生き残りのみち

 百貨店でパソコンを売る

 ずっと以前に、某百貨店の方に百貨店の売場でパソコンを売る方法についてお話を伺いました。初心者がすべて自分で学んでできるわけではありませんので、機種の選定から接続設定、周辺機器の接続まできちんと説明して販売すれば、百貨店でパソコンを購入する人は一定存在するという事です。
 メーカーとかプロバイダー、通信業者などの色がついていないという安心感があるのだと思います。回りに、知識のある人がいれば色々相談に乗ってもらいながら選べるのですが、そうでなければ家電量販店では中々選ぶことができません。
 そういったお客さんはシニアの方が多いのだと思いますが、若いからと言ってパソコンの知識があるわけではないので、友達がいないとか、上京したばかりで回りに知り合いが少ないとかいった若い人にもニーズはあるのではないかと思います。
 昔は、ファッションについても初心者は百貨店んで揃えるのが無難であり、安心を提供していました。今はもう、ユニクロで選べばお安いですし、そこそこ安心なので百貨店で選ばなくなっただけです。

 「ジャパネットたかた」が売っているモノ

 テレビを活用した通信販売でのびている「ジャパネットたかた」は大型液晶テレビ、デジタルカメラ、ノートパソコン、ビデオカメラなどを販売しています。大型家電量販店へいけば沢山の商品から選択できるにも関わらず、ジャパネットたかた出購入する人が多いのは、「モノをモノとして提案しない。その人の生活をいかに豊にするかを考えている」という社長の理念にあります。知識のある人間はついスペックと新しさで商品の優劣をつけてしまいます。
 沢山の商品から選ぶときにどんな使い方ができるか、どんな風に生活を楽しくするかという視点での提案は知識のある人間ほどできないという盲点があります。

 
「ジャパネットたかた」の購入者はリピーターが7割といわれています。

                                                           (2009年9月15日)
■大きくて強い物が生き残るのなら・・・・・

 包み込み戦略という「不安」

 大きくて強い物が必ず生き残るのなら、この世界はティラノザウルスレックスが今も支配していたはずです。
 かつて「包み込み戦略」という言葉がある種の権威を持っていたことがありました。旧そごうでは地域で一番大きな店をつくれば勝ち残るとばかりに、競合店よりも広い売り場、豊富な商品を備える事で一番店を目指していました。そうなればメーカーも商品を一番店に集めるので必ず勝てるという信仰があったようです。
 今も、信奉者が多い「ランチェスター戦略」でしょうか。

 ひたすらに自分の基準の中で「大きく」「強く」なることだけを考えれば、回りを見る余裕もなく、世の中の変化におびえることもないからでしょうから・・・・。

 環境の変化に対応する速度

 かつて、新しくできた某百貨店のトップが、かつては列車での移動中に、一等の客は食堂車で食事をしていた、今は新幹線のグリーン車の客でも、買ってきた物を自席で食べている。今までの百貨店は食堂車のサービス向上を追求してきたが、これからは自席で食事をするグリーン車の客を相手に商売をしなければいけない・・・となんだかわかったようなわからないようなたとえ話をされていました。

 とにかく環境の変化にいかに素早く対応するか、その中で残す物を何にするのか、捨てる物を何にするのか、走りながら判断する必要があります。何ともしんどい話ですが、それが出来てきた「種」だけが生き残ってこられたのでしょうね。

                                                           (2009年9月14日)

■「百貨店初」に何の意味があるのか?大丸大阪・心斎橋店「北館」11月14日オープン

 ヤングからアラサーまでウィングを拡げたターゲット

 本日の新聞記事で大丸大阪・心斎橋店「北館」のフロア概要が発表されました。379.1億円の取得額を含む420億円の投資で250億円の売上を目標にしています。(私の予想ではもっと大胆に大型専門店を導入すると予想していましたが)ターゲットをヤングからアラサーまでに拡げ、今まで切り捨ててきた子供服や趣味雑貨、スポーツまで品揃えをおこなうというある意味でオーソドックスな、商品としては「百貨店」の枠を超えていない店作りになっています。

 その証拠にニュースリリースには「百貨店初」というキャッチフレーズが沢山並んでいたからです。百貨店初かもしれませんが、「消費者」にとってそれがいったい何の意味があるのでしょうか?

 「関西初」というキャッチも良く意味がわからないものの、メディアによっては見出しに使いやすいと思うのかも知れませんが、「百貨店初」は社内では大事件かも知れませんが世の中的にはたいしたことはありません。完全に思考が内向きです。(かつて、新宿三越にマクドナルドのハンバーガーショップが入店したときは確かに、百貨店初のインパクトはありましたが・・・・)

 「新百貨店モデル」による革新と進化のスタート台

 今回の改装の意味は、社員を増やさずにテナントの従業員で運営する、社員を増やさないというところにあります。大丸は紳士服の「はるやま」との協業など異業種との連携に力を入れています。北館では値入率も駅ビルなみにさげて、いわばデベロッパー型の運営を取り入れていくことに「革新」の意味があります。(お客様には直接関係ないのですが・・・)

 百貨店の品質基準、サービス基準はあきらかに、多くの人にとってオーバースペックになってきています。ただし、そのオーバースペックに安心感、信頼感を持っている人もシニア層を中心に沢山います。従来の顧客を大事にしながら、新しい売り方を導入していかなければいけないところに、多くの百貨店の悩みがあります。

 旧そごうは「不動産業」と揶揄されたように、売場には社員がいませんでした。メーカーの派遣社員が販売していたのです。その意味では社員が売場にいないことに「革新」はありません。

 今回は時間もないこともあり、北館で実験をすることになったのかも知れません。本来は休館の商品も含め、社員が売るべき物、テナントの社員が売るべき物、アルバイトで対応する物、専門的な職能を持つ社員が売る物と仕分けをしていく必要があるでしょう。

 百貨店のしっぽを引きずっていては「エキサイティングな都心型ハイブリッドSC」への道は遠いでしょう。

 今回はたまたま大丸を引き合いに出しましたが、大丸は過去10年間、派手な改装、出店は少ない物の着実に利益をあげる体質をつくってきた百貨店の中でのトップランナーのひとつで、私は高く評価しています。・・・課題は多くの百貨店に共通した物です。

                                                          (2009年9月11日)
■食の嗜好の多様化は「和」をベースに拡がっている
 国際競争力のない?内需主導の「食文化」

 日本人ほど、他国の食文化に好奇心を持ち、日常的な食に取り入れている国民はないのかもしれません。留学で来日する若い子の多くは、普段食べていないものを中々食べようとしません。特に日本のスイーツは特殊な発展をとげているようで、「甘くない」と一口食べてもう口をつけようとしません。
 今のところ、日本のスイーツは内需に支えられているので国際競争力はありません。
 下図は梅田の商業集積の飲食店を業種別に拾い出したモノです。雑食性とはいえ基本は「和」で施設の性格により、カフェスイーツが多いパターンとお酒を出す店が多いパターンに分かれます。
 
 「和」とはいえトンカツや麺類も含んだ数字ですし、和風パスタや、和風カフェも増えてきているので正確に言うと「和」として取り込んだ多様性が日本の外食の特徴なのだといえそうです。

 観光客にとって食事は大きな楽しみです。これあkら海外の観光客を集客するのに、食についてはさらに工夫が必要です。


 モード和食は賛否両論

 一時「モード和食」の店に行列が出来ていました。とても変わった器に少しずつ盛りつけられた料理は、私にはとても美しいとは思えませんでしたが、好きな人も多かったと聞きます。最近はフレンチでも和でも過剰な装飾の流行は下火になったそうです。

 東京でならともかく、関西で流行っていたのは不思議でした。たむらけんじの焼き肉屋のようなものなのでしょうか・・・・。物珍しさを楽しむというのもまた、退廃の域に近づいた消費行動の成熟のあらわれといえそうです。

 デパ地下では「そうざい」がスイーツ化してきている

 先週オープンした阪急、阪神の地価の売り場を見ていて、スイーツの集積が一層進んでいるのと同時に、総菜売り場の総菜がスイーツのようにかわいらしく趣向を凝らしたモノになってきているのを感じます。
 多くの報道が安売り弁当などに関心を集中させていますが、現場の変化は違った方に「進化」?しているようです。
 素材より加工度の高い商品の方が利益率が高いのです。これから都心店の生鮮食品のウェートは下がっていくのでしょうね。

                                                             (2009年9月10日)



■サービスのモチベーション

 グランメゾンのサービスとイタリアンのサービス

 関西でも有数のグレードの高いフレンチで食事をする機会がありました。さすがに応対は格式を意識した丁寧なものでありました。反面、どこか型どおりでもう一歩踏みこんだアドバイスや、決して安くない食事を楽しんでもらおうという一言がないのが物足りなく感じました。
 たとえて言えば大きな組織の中のサラリーマンがサービススタッフをやっているとでもいいましょうか。減点するポイントはないのですが、サービスをこころから楽しんでいない、「苦役」であるように感じられます。

 少し前に、食事をした複数店舗を展開しているイタリアンのサービススタッフの応対が、料理の説明だけでなく、グループで食事をしていて事情があって食事の進み方が遅い人のお皿を温めなおす申し出をしてくれたり、開店前に店の前を通って除いて事を覚えていて話題にしてくれたり、フレンドリーでかつ、お客のことを考えていることがハッキリとわかる応対だっただけによりそう感じたのかもしれません。少なくともそのスタッフはサービスを楽しんでいました。

 格式なのか、将来が見えているモチベーションなのか

 もちろん、グランメゾンと街場のイタリア料理では基本的な「格式」がちがうので、サービスのあり方は違うという考え方もあります。そのイタリア料理店はその店から独立した人が多く店を構えていることでも知られてています。サービススタッフも将来自分の店をももった時のイメージがはっきりしているから真剣勝負のサービスができるのだと思います。

  もちろん、ホテルマン、グランメゾンのサービススタッフもステップアップして転職する道が開けているのですが、大組織の中をステップアップしていくというサラリーマンに近いキャリアパスとなります。

 百貨店がだめになりつつあるのも、似たような背景を抱えています。

                                                       (2009年9月9日)
■言葉と思考、スピード感のギャップを超えて

 経済合理性だけで動かない生産者の想い

 先日、ある自治体の補助金でとてもいい条件のモノを紹介されました。地元の生産者と加工業者、販売業者が組んで地場産品を商品化するプロジェクトに100%の補助金がでるのですが、締め切りが2週間後に設定されています。

 かねてから、地域産品の企画を相談していたその地域に縁のある方に急いで連絡したのですが、反応ははかばかしくありません。贈答用に使われる果物はロスが大きいのでそれを換金できれば農家はとても助かるはずです。「何故このチャンスを活かさないのか?」少し歯がゆい思いでした。

 長期的には絶対に必要な手だてなのですが、あいにく損お時期は収穫の時期なので、とてもそこまで手や頭が回らないということでした。
 ビジネスの感覚では目の前のチャンスを逃したくないということが何よりも優先しますが、良い商品をキチンと作る毎日の作業を優先するという生産者のペースを理解しないと、一方的な押しつけになってしまうと、多いに反省いたしました。

 反面、農業生産者は結構目先の利益に左右されやすいという傾向はあるのですが・・・・。

 マーケティングとクリエーションのバランス

 地域の産品を使った商品開発に、ある専門学校の学生さんにお願いすることになりました。あらかじめ、オリエンテーションシートが必要とのことなので、ターゲット、プライスライン、チャネル展開、コンセプトなどをまとめたシートを作成し、打ち合わせに臨みました。

 学生を指導する方からは、これでは学生に伝わらないと一蹴されました。もっと素材のイメージであるとか、風土を伝えることが必要で、頭で考えることから入ると萎縮した案しか出てこない・・・なるほど、プロ相手ではなく特に学生相手にはまずクリエーションを拡げる作業をしてもらう必要があります。その先の商品化は私たちプロの仕事なのですから。

 異なる発想、異なる言葉遣い、そして異なるスピード感を持った人々と協業しなければ新しいものが生まれません。それでも、ビジネスベースで考えるとついこちらのペースに引き込もうとしてしまいますが、それは慎まないといけないのだろうと思います。

                                                        (2009年9月8日)
■鈴なりのエスカレーターの光景と林立するクレーンの憂鬱

 鈴なりのエスカレーターに高揚する気分

 先週開業した阪急うめだ本店の賑わいは先週末にはピークに達したといえっます。阪神の改装、梅田大丸のセールとあわせて今のところ数少ない明るい動きだからでしょうか。
 売場面積が狭くなった阪急ではエスカレーターは人の鈴なり状態が続いています。整理にかり出された若手社員にとって、こんな賑わいは初めてではないでしょうか?高揚感のようなものが感じられます。

 昔、パルコを創業した増田氏はエスカレーターをわざと1人用の狭いモノにして、人為的に鈴なり状態をつくったという伝説があります。賑わっている姿を見てさらに人が集まるという理屈です。

 建設クレーンに昂ぶる人々

 高層用の建設クレーンが林立している光景に気持ちが昂ぶる人々は少なくないようです。高層ビルの建築写真を掲載している個人サイトは結構人気を集めていて、役所の人にもファンが多いということです。
 大阪駅ビル、北ヤード開発などプロジェクトが目白押しの梅田地区は格好のウォッチングポイントです。楽しそうですね。

 建物だけが増殖し、中身がいっこうに見えてこないプロジェクトは私にとっては「死の風景」にしか見えません。(バブル経済を経験した多くの同世代の方々は多かれ少なかれ同じ感想を持っているはずです)

 破綻した多くの百貨店は新店出店の投資が負担になっていました。多くのは百貨店は償却が終わった本店の収益で生き延びています。今、その本店の収益でさえ大変な状況です。これからできる新しい店は、投資の回収と共に本店以上の収益力が必要になります。容れ物ではなく中身の検討にもっとしっかりと知恵を絞るべきです。

                                                   (2009年9月7日)
    
■少しだけ見えてきた梅田の未来〜9月3日阪急うめだ本店T期棟オープン

 阪神をめいっぱい活用した阪急うめだ店の改装

 8月26日の阪神梅田本店の全館改装に引き続き、阪急百貨店うめだ本店の1期棟がオープンしました。投資額は阪神梅田本店に12億円。阪急は建て替え工事全体で600億円。売場面積は阪神が53,000u、阪急はT期棟が27,000u、メンズ館が16,000u、イングス館他が7,000u。阪急合計で50,000uとなります。
 売上げ目標は阪神860億円に対し、阪急は1,330億円・・・・・阪神は2〜3年前は1,100億を売り上げていたのですが。グループで利益をあげられればいいという割り切りというか、セクショナリズムにとらわれない機動力なのでしょうね。

 阪急は一段と売場面積が縮小しますが、紳士服をナビオに出したように、子供服をイングス館に出しています。婦人服のSサイズや食品フロアの一部テナントを阪神へ移転させています。

 JR大阪駅のジェイアール三越伊勢丹の開業までに何とか全館改装を間に合わせて行くため、無風状態の今の内はお客様や社員に不便を強いても、何とかやりくりしていかないと仕方がありません。
  
 阪神らしさは日常性と親しみやすさ

 阪神梅田本店は「暮らしやおしゃれを気軽に楽しみたい、百貨店が大好きな50代と30代の女性」に向けて、日常性と生活感そして、親しみやすさと値頃感、賑わいのある阪神らしさに磨きをかけて、幅広いお客様のニーズにお応えできる百貨店を目指すのだそうです。

 かつて、梅田地区の圧倒的な一番店であった阪急に対抗して、2番店として戦う分野を絞り込み、関西の百貨店の中ではいち早く専門店ブランドを取り込むなどそれなりに健闘してきたのですが、今現在の強みを集約すると、そういうことになるのでしょうね。

 そごう、西武、松坂屋など他の地域ではそれなりに一番店であっった百貨店が大阪商圏では全く歯が立たずに、店頭以外で売上をつくって辻褄を合わせようとしたのに比べ、店頭売上だけで、堂々と2番店の座を守り通したのは立派なことだったと思います。
(逆に言えば、外商が弱いんですけどね)

 バブルの時に新規出店をしていなかっただけに財務的には強かったのですが、長年単独店であっただけに、利益をあげるための社内システムは随分立ち後れていました。この改装で売上は落ちても(この時期ですからね)利益は高い目標が設定されていると思います。

 梅田の未来は・・・

 今回の改装で目を引いたのは、阪急と阪神の回遊導線がバリアフリーになったことです。地下を通じた両店の回遊がずっとスムーズになりました。今後全貌を見せる大阪駅北ビルはどうでしょう?駅という制約があえりますから回遊導線ははっきりって悪いと想像されます。駅ビル内だけで回遊を完結させる覚悟が必要です。

 一方、阪急と阪神は2店で一体となって収益を上げるという「スタンス」が明確になりました。全館完成後、阪神の売り場はまた大きく変わっていくと見ています。食料品も現在、阪急は3フロアですが、このままではないでしょう。その時に、阪神の業態がどうなるのか、心斎橋そごう跡の大丸北館がファッションビル化するその成果を研究する時間もあります。

 阪急の売上げを補完する役割が明確になっただけに、ジェイアール三越伊勢丹、梅田大丸が阪急の牙城にくさびを打ち込むニッチがどこに残っているかがますます見えなくなってきました。

                                                 (2009年9月4日)
  
■環境、建物、インフィルそれぞれの持続可能性

 NEXT21居住実験 長寿命住宅と暮らし・エネルギーを考える  の発表会から

 大阪では8月31日の月曜日、東京では9月3日木曜日、大阪ガスさんが94年から居住実験を続けている、実験集合住宅「NEXT21」の実験報告会がありました。

http://www.osakagas.co.jp/rd/next21/ へのリンク

 スケルトンインフィル、構造体と内装が分離できて、通常30年から50年で駄目になってしまう集合住宅を、しっかり100年持つ構造体をつくることで内装を入れ替えてライフステージが変わっても住み継いでいけると言う考え方でつくられた住宅の実験としても先導的な役割を果たしたプロジェクトです。

その中で興深かったのは、京都大学の高田先生が提示されたスケルトン100年の寿命を持つのに対し、300年の寿命持つインフィルもあるという問題提起でした。最近考えている住まいの中の長寿命製品のこと、大量生産の時代が終わった後の消費のあり方などの方向性からも腑に落ちるものがあります。

 生活の質をあげるのは住宅設備のスペックの向上だけではありません。湿度、温度、照度など環境のスペックをあげることはもちろん大事なのですが、数値化されることのない「愛着」が持続可能性を支えることもあるのだと思います。

 団地再生に「抵抗」する気持ちの背景

 ニュータウンが老朽化して再生が始まっています。働き盛りの時に入居した人々が高齢化し、オールドタウンとも揶揄されています。環境が良く、容積率にも余裕があるので事業としては比較的容易なはずなのですが、建て変えに反対する人が少なくありません。

 分譲住宅の場合、スペックが向上し、資産価値があがるのに例えば、容積率アップに頑なに反対したりされます。住まいの回りの環境についても持続性を求めているのでしょうね。

 街は変わっていものなのですが、根こそぎ入れ替えるのではなく、何らかの継続性が環境、建物、内装に必要なのでしょう。高齢者の施設で、昭和の時代の環境を取り入れて患者さんの気持ちのケアに活かしている事例がありました。

 愛着の「総和」が街の魅力

 ひとりひとりの住民の愛着の度合いが高く、かつ愛着を持つ人が多いほど街の持つ「魅力」が高くなっていくのかもしれません。大阪の船場地区などでは地元の小学校、中学校の卒業生の結束が強いので、シャッター通りと言われたこともありますが、街の風格を残しています。

                                                 (2009年9月3日)
■WEBとリアルのマリアージュのために

 編集のプロが指摘したWEB画面への工夫

 最近、WEB製作を仕事とされる方々にお会いする機会が多くなっています。HPの活用、HPを使ったビジネスについて、新しい手法や、新しいシステムについて沢山の事を語ってくださいます。なるほど、「新しい」手法は沢山あるのだなと感心するのですが、なんだか見にくい、見たくない画面が多いのも事実です。

 先日、紙媒体の編集をされている方がネット画面である工夫をすることで格段サイトが見やすくなったというお話を伺いました。
 このページをご覧ください。(すいません、あつかましくも私を紹介した記事を事例にして)
 http://gourmet.suntory.co.jp/zenkoku/trend/0812.html へのリンク

 画面の文章が2段組になっているでしょう。普通の雑誌では当たり前でも、ネット上ではまず見かけません。(当社のホームページも「ホームページビルダーのテンプレートを使っているので、よう変えられないのですが)
 ちょっとした工夫で、一覧できる情報量が増えて、わかりやすく読みやすい頁になっています。(ちなみにこのサントリーのグルメガイドのページはこの方編集するようになり、格段に閲覧者数が増えたようです。

 プロが馬鹿にして本気にならない中でWEBの影響力はどんどん大きくなる

 文章の配置や写真のレイアウトなど長年蓄積されたグラフィックデザインのノウハウを持ったプロの編集者の多くはWEBに冷淡です。従ってプロのノウハウが新しメディアで活かされることが少ないのです。

 また、WEBデザイナーの多くは、「新しい」技術の流行にはこだわりますが、今まで蓄積された知恵を学ぼうとはしません。結構頑固な人が多いのですよね。特にシステム系の人はシステムの都合に人を合わせようとさせる傾向が強いので、結果的に手間をかけてつくったシステムが使われないことが多くなります。

 それでも、WEBでの情報収集やWEBでの情報発信はますます増加し、そのウェートを高めています。

 百貨店とWEBの間にも同じようなギャップが

 小売業、販売のプロである百貨店の人とWEBショッピングにも同じようなギャップがあります。今、WEBで売れているのは、ロングテール商品ではなく、みんなが知っている商品を他と比較して安く売るサイトです。WEBクリエーターで販売のプロは、SEOをあげて、他と比較して安い商品を売ることで顧客のメールアドレスを集めることを戦略としています。
 「通販」のヘビーユーザーの名簿を集めるのと同じ理屈ですね。この分野のビジネスはありでしょう。いわばネット上のバッタ屋、ネット上のスーパー玉出、ネット上のアウトレットのようなビジネススタイルです。人のつくった「価値」で安売り商売をするパターンです。

 需要をつくり、新しいブランドを確立し、顧客との関係をつくっていく商売の王道はまだまだネットの世界では実現していません。たまに商売のうまいサイトを見ると元百貨店マンが独立して立ち上げた会社とかだったっりします。

 鳥取に万年筆を作りに行き、福井で眼鏡をオーダーメイドするのは楽しいのですが、もう少しだけ多くの人にその楽しみを分かち合える事が出来るのがWEBだと思うのですが・・・・あまりにもANALOGですか?

 当社にSEO対策のセールスをしてくるのは無駄です

 よく当社に、SEO対策とかそのようなもののセールスのお電話を戴きますがすべてお断りしています。
 このページは私がお顔を存じ上げかつ、お考えが共感できる方に向けて、少しでもお役に立てるように毎日更新しているものです。より、個人的な意味合いの強いお手紙のようなものですから、不特定多数の方にとっては「有害」な内容も含まれているからです。

                                                  (2009年9月2日)
■人が集まる理由と人を集める理由

 リピーターを動員できる集客施設が強い

 いくつかの種類の施設の年間の集客人数を比較してみました。都心のショッピングセンターの集客数が多いのは当然でしょう。郊外でも立地が良くて力のあるショッピングセンターは2000万人前後の人を集めています。このように種類の違う施設を比較するのは無茶なのですが、それでも入場料が必要な東京ディズニーランド、ディズニーシーはトップクラスの集客力を持っています。
 
 もうひとつ以外だったのは箱根温泉の集客数です。(施設と地域を比較してはいけないのですが)他の温泉地に比べて桁違いの集客人数を示しています。

 近い場所のリピーターをしっかりつかんでいるからこそこの数字になっているようです。箱根の2,000万人のうち、7割は日帰り客です。(ちなみに京都市の観光客5,000万人の75%が日帰り客です)

 神戸ルミナリエ 380万人動員には弊害も

 比較した中で、唯一のイベントが神戸ルミナリエです。短期間に380万人を集める動員力はさすがです。復興への祈りをこめて始まったイベントですが、地元ではそろそろその弊害を指摘する声も出始めています。
 百貨店ではこの時期万引きの数は増えるし、買い食いをした人が店の階段で座り込んで食事をするとかで、フェンスを建てて人が回遊できないようにしています。冬場のイルミネーションは各地で盛んになっていますが、ルミナリエの質はやはり圧倒的に高いモノですし、楽しみにしている人も多いと思います。
 とはいえ、ただ人が多いことで終わっているのは、神戸南京町の屋台の賑わいと重なる印象があります。人を集める事が目的となってしまっているように思います。テキ屋の屋台が儲かるだけでは街の成長にはつながりません。

 目的と手段を取り違えてはいけません。

                                                      (2009年9月1日)

 水都大阪2009は手作り感が横溢する親しみやすいイベントではあります。
 大切なの継続することです。市民に川を再認識してもらうことが大事なのです。まあ、あまり話題にならないとか、人が沢山集まらないことは、多分大した問題ではないような気がします。(あんまりお金を使ってませんしね)
   ・・・・何で夏真っ盛りにやらなかったのかな・・・・もう夏も終わりです。

  
図ー年間集客数の比較(2008年)


(月刊レジャー産業資料2009年8月号、販売革新、日経新聞等から収集加工)
 8月
■ETC特割の効果とマイナス面

 ETC特割でゴールデンウィークで遠方からの集客効果があったのは33.5%

 月刊レジャー産業資料8月号で「検証ETC特需」という特集が組まれています。その中で紹介されているアンケートで、「ETC休日特割」に伴い遠方からの集客効果があったかと全国の主要なレジャー集客施設に聴取しています。
 「非常に増えた」5.2%、「やや増えた」28.3%をあわせて、増えた施設は33.5%となっています。「ほとんど変わらない」が過半数の53.2%。減ったとの回答は13.3%となります。

 ゴールデンウィークはもともと人出が多い時期ですし、駐車場や施設規模のキャパシティが限られているので伸びしろ自体が少なかったのかもしれません。

 経営効率からは、繁閑差が大きくなるより足元商圏のリピーターが重要

 ETC特割の影響で休日に需要が偏り、平日の集客が前年に比べて減少している施設もあるそうです。繁忙時と閑散時の差が大きすぎると人員配置や設備面でロスが大きいので、好ましくありません。
 「大型レジャー施設でも基本は足元商圏。1回でも多くリピートしてくれた方が経営効率はいい」という声もあります。商業でもレジャーでも基本は足元商圏です。

 昨日の選挙で政権が変わったことで、2年間かけて高速道路の無料化が進みそうです。休平日をとわない政策で利用の平準化が進みそうです。(また業務用の車両の高速料金が無くなれば、産地直送品のコストが下がります)

 特に、高速道路を中心に移動距離ではなく移動時間で商圏を考え直すと「足元商圏」とそれに次ぐ「一次商圏」の設定範囲が変わってきます。
都市部では無料になっても、渋滞がマイナスになりますが、地方の高速道路は普段はがらがらなので無料になる効果はプラスに出てくるでしょうね。

                                                           (2009年8月31日)
 
■地方に逸品があるのは食べ物だけではない

 そこにしかないもの そこにしかない理由

 食品に関しては、風土との密接な関わりが認知されてきました。地域独自の美味しいモノは、その場所に行って食べるか、ネットで取り寄せるかしかないということですね。

 福井県は眼鏡の産地として知られています。そこに「田中眼鏡本補」というオーダーの専門店があり、眼鏡デザイナー、兵井伊佐男氏のフレームでレンズの形状も選べる眼鏡を販売しています。
 たまたま其処を取材に訪れた知人がつくったのを見せてもらい、強烈な物欲にとらわれました。

 店主のこだわりもかなり強くて、その為わざわざ眼鏡をつくるためだけに福井を訪れる人も多いといいます。フレームとレンズ込みで6万円。けして安くはないですが、東京だったら10万は超えるはずです。ツープライスショップの眼鏡は直ぐにだめになります。(ニトリの家具、ユニクロの服のように)
 デザイナーも生産地に近いからフレームの実験がしやすいのだと思います。

福井市 田中眼鏡本舗のhpはこちら  フラッシュが多くて閉口しますが、スタイリッシュではあります
http://www.t-honpo.com/ へのリンク

 お客さんがすくないからこそ丁寧に応対できる

 鳥取の「万年筆博士」については、ある人に教えていただいてからずっと気になっていました。月に20本しか生産でき無い為、わざわざこの店を訪ねてオーダーするお客様相手に「売ってからつくる」スタイルを貫けるのでしょう。「一生モノでなく二生モノ」という考え方はこれからの社会で増えていく価値観だと思います。

http://www.asahi.com/kansai/kokoro/yomimono/OSK200807180010.html へのリンク

http://www.fp-hakase.com/ へのリンク



                                                  (2009年8月28日)
■「水都おおさか2009」

 まったりとした「地蔵盆」的な手作り感あふれるイベントです。お忙しい方はせめて写真でお楽しみください。

                                                          (2009年8月27日)
      
http://www.youtube.com/watch?v=4KRD8e20fBo&eurl=http%3A%2F%2Fd%2Ehatena%2Ene%2Ejp%2FTomoMachi%2F&feature=player_embedded へのリンク

 CRIの記事でも触れた過激なイルカ保護団体のドキュメンタリー映画の予告編です。和歌山県太地町と豪州の都市の姉妹都市が縁切りされました。イルカ漁によってイルカショーのイルカが捕獲されます。インテリの白人に人気のある観光スポット京都の「京都水族館」でイルカショーはやはりまずいでしょうね。         (2009年8月27日)


■大阪の百貨店のイメージ調査から見たジェイーアール大阪三越伊勢丹の想定ポジショニング

伊勢丹ブランドが阪急ブランドと正面対決


 「流行に敏感」「新しい情報が手に入る」は阪急百貨店が他を圧倒しています。「伊勢丹」ブランドでこのあたりのイメージに重点を置いてくるものと思われます。百貨店の中では高感度ではありますが、阪急百貨店の強みは西宮阪急の開店時にもみられたように、同時におばちゃん向けのべたな商品も揃えていて、「中流層の店」といわれるバランスの良さにあります。伊勢丹には流行感度を追うあまりブレーキが効かない傾向もありますので、商圏にあわせたさじ加減が難しいところです。


 若い年代で流行感度の高い層は「NU茶屋町」「イーマ」と競合します。年配の層では「ハービス」の海外ブランドとの競合になります。40〜50歳代のアッパーミドル層を阪急百貨店と伊勢丹、大丸が取り合う形になります。大丸は神戸、京都、芦屋、梅田とそれぞれの地域に拠点があるだけに総合力で強みを発揮します。

高級イメージがどこまで必要か?
 
 高級イメージでは旧三越の評価が高いことが注目されます。世の中に進物は「虎屋のようかんでないと駄目」というような超コンサバ層が存在する限り「三越」ブランドは一定の力を発揮すると思います。ただし、若い層には三越は認知されていませんからあくまでも60代以上の年代での強みになります。

 三越、伊勢丹ともに日本を代表する素晴らしい百貨店ですが、中型店、小型店はすべて失敗しています。大阪店がどっちつかずの中途半端な店であると、かなり厳しいでしょう。
 自らの独善性については全く反省しないで、関西の排他性を業績低迷の原因に責任転嫁をして大阪から撤退した、旧西武(そごう)グループの轍をふむことになります。 

 逆に阪急や大丸も東京では成功していません。百貨店は地場産業なのですから、地道に実績を積み上げることです。
                                                          (2009年8月26日)
図−1 大阪の百貨店イメージ比較    (大阪市内通勤者対象の調査  なにわ考現学05)


図ー2 高級なイメージの百貨店「阪急」と「三越」の年代別比較




■隠れたプレイヤー交代〜サプライチェーンの仕組みが変わる

 流通機構の謎2009

 OEM(相手先の企画に基づいた相手先ブランドによる製造)はかなり一般化してきています。特に最近は小売業による低価格プライベートブランドの強化が進んでいるので、身近に感じられるようになりました。100円の第3のビールを国内メーカーが製造しているということがニュースにもなっていました。
 
 最近はODM(企画から商品開発までを請け負う)力をいれる商社が増えてきています。バングラデシュやベトナムで開発した提携工場の生産力を活かして、商社が企画した商品を生産して小売店に売り込むというものです。まとめて大きなロットで発注できない小さい小売店や、商品企画力のない店でも値頃感のある新しい感覚の商品を揃えることが可能になります。商社が持つトレンドについての情報力を商品の形で提供しているといえます。

 アパレルメーカーは海外での生産管理にノウハウを持ちません、これからは創造性、トレンドの発進力のないアパレルメーカーは競争力を失っていくことでしょう。

 テレビショッピングなどの通販事業も商社のコーディネート力によって支えられています。(総合商社でも財閥系の大手はリテール事業は苦手なように思えます)

 かつて、問屋不要論が席巻し、仲介業者のコストは不要なコストだと考えられていた時期がありました。メーカーと消費者をできるだけ短いルーとでつなぐことで価格破壊が実現すると信じられていました。価格対応と消費者ニーズへの対応を考えたときに、川上から川下までの情報を把握しているところの力が強くなってきています。

 産直業者が近郊の農家を押さえる

 野菜の流通では配送費コストが大きなウェートを占めます。単価の高いモノや流通ルートができあがっているモノは別にして、産直野菜を安く提供するには都市近郊の農家からの商品調達が必要になります。
 最近、農家を回った人に聞いた話ですが、近郊ではもう生産物はほとんど売り先が決まっているそうです。農協だけでなく大手小売店の直接買い付けも多いということです。農協も「商品化」についてのアイデァを持たないと取り残されていくでしょう。

 家庭菜園に毛の生えた規模の農家の有機野菜を集荷し、流通する仕組みなどまだまだ隙間が残されています。

 カタログギフトを支える専業ギフト会社

 カタログから自由に商品を選べるカタログギフトを比較的早い時期に始めたのは銀座の文具店「伊東屋」です。また、70年代の初めにシャディが始めたという説もあります。いずれにしても当時、百貨店にも提案したのですが中々実現しませんでした。

 利益のとれる商品と、原価の高い見せ筋の商品をミックスしうまく利益を確保するところにノウハウがあるようです。又、カタログは贈答機会に応じていくつかの組み合わせパターンを設定するのが普通です。
 商品の品揃え、物流管理、受注情報の管理などは専業者ならではのノウハウがあり、大手流通小売業のカタログギフトの多くは専業者への委託していると言われています。

 小売業が仕入れるモノ

 このように見てくると、店頭販売を中心とする小売業が仕入れるのは、単に商品だけではなく、「仕組み」であることがわかります。そして今強いと言われている小売業はその「仕組み」を自前でつくりあげている企業であるといえましょう。

                                                        (2009年8月25日)

■トップを取り巻く交友関係の質が企業の明暗をわける?〜サントリーミュージアム撤収の背景

 インフォーマルなコミュニティの重要性

 企業の大小に関わらずトップの回りには色々な人が集まってくるようですが、組織のトップに立てば、ある意味孤独な決断を迫られることが多いため、特に自分にとって気持ちのいいことを言ってくれる人を回りに置くことが多いようです。

 サントリーの先代の社長佐治さんはその意味で偏りが無く、多彩なジャンルの人との交友が拡がっていたように思えます。安藤忠雄さんが自由にサントリーミュージアムを設計できたのも、直接トップとの交流があったからでしょう。関西では圧倒的に世間が狭いだけに学者や文化人など異分野の才能との交流も深まっていったモノと思います。

 よく事例にだされるのは、京都大学でユニークな研究が生まれるのは、狭い京都市内で飲みに行くと必然的に他の分野の学者とのインフォーマルな交流が生まれ、自由な発想が拡がるためであるというものです。

 よく、関西の企業が東京へ移転するときに「情報量」が違うということを根拠に上げます。確かに情報感度の高い人、積極的に人とのつながりを広げるひとにはチャンスが多いのだと思います。異質な人との交流を避ける人は意外に多いです。人に会う機会が多いだけに、自分にとってわかりやすい、心地よい人とだけお付き合いすればよくなります。東京では知人の数は増えても人脈は拡がらないように思います。(結局、大学の同窓生とかゴルフ仲間といった範囲の同質性の高い「人脈」なのです)

 関西で異業種交流会を行っていた企画会社が東京へ本社を移して、東京で異業種交流会を開催すると「人の集まりが全く違う」とはしゃいで喜んでいましたが、ひとつも仕事に繋げられずに投資が嵩んで会社をつぶしてしまいました。残念ですね。
 大阪から東京へ本社機能を移した百貨店が情報量を活かして格段に強くなったかというと・・・どうなんでしょう私にはわかりません。

 小さな街だから異質な人達とのインフォーマルなコミュニティが活かせる

 そういった意味で小さい街、地方都市であればこそ様々な業種や職種との人とのインフォーマルなコミュニティが生きてくるように思います。学閥というのも高校レベルで分かれます。地方ではエリートがいく高校は大抵ひとつかふたつですしね。その同窓生から拡がる人脈は大きく拡がっていきます。

 サントリーミュージアムの閉鎖について

 先代が地域貢献をイメージした時に、多分、不特定多数の地域住民を想像したのではなくて、地元の友達をびっくりさせてやろうという気持ちが強かったのだと思います。(企業メセナのモチベーションなんてそんなものです)

 入場者数65万人はミュージムとして少ない人数ではありません。海遊館の入場者数が200万人ですから結構な数の回遊があるということです。「周辺に商業施設が整備されなかった」というコメントがありましたが、もともと周辺には開発用地はほとんどないことは当初からわかっていたはずです。赤字というならば東京の「サントリーミュージム」「サントリーホール」はいったいどれほどの赤字ですんでいるのか、どの新聞も報道していません。(かつてあった「西武美術館」は文化度の高い東京では今も続いていますか?大阪だから駄目だという論調はあまりにも予断にみちていませんか?)

 企業経営として判断するなら、文化施設関係はすべて官に寄付し、施設運営からは手を引くのが正しいのだと思います。

 サントリーは先般「サントリー不易流行研究所」から改名した「サントリー次世代研究所」を閉鎖したばかりです。大阪からの撤収は一見企業の合理的な判断と見えますが、トップとして「友達が多い場所で自慢できることがしたい」という動機からの撤収であると考えられます。大阪には自慢したい友達がいないのでしょう。多分。残念ですねとても。

 お客様とか地域住民という目に見えない相手より、具体的に目に見える友達の反応を重視してしまう。経済界に限らず2代目、3代目のリーダーがそれで失敗している事例が相次いでいます。

 もしカルロスゴーンのようにプロのマネージャーが撤収を指揮するととしたら、「大阪では文化施設は成立しない」というような地元にマイナスになるメッセージは極力避けるでしょう。世界的な建築家安藤忠雄の作品を大阪に寄付するというストーリーで物事をすすめるでしょう。そうでなければ、今後大阪の飲み屋では「アサヒ」や「サッポロ」のビールを指名する人が多くなってしまうからです。

 広告上手といわれてきたサントリーですが、トップの回りでちやほやしてくれる人が増えてくると、顧客の気持ちが見えなくなってきているのでしょうね。グローバル戦略で成功されることを祈ります。」・・・・・これからは中国市場だぜ・・・・
ということで2014年の新社長は大学の同窓生でゴルフ仲間のローソンの会長さんを選ぶという布石につながります。

                                                    (2009年8月24日)
■家庭内で急がれる環境対策〜遠い国のシロクマの問題ではない

 都市の粗大ゴミの2割は家具

 都市で排出される粗大ゴミの2割は「家具」です。(98年東京都調べ)家具の耐用年数は5年、長くても10年と言い切る人もいます。住宅では100年住宅、200年住宅という言葉が定着しています。住宅と同じ理屈で100年かけて育った木を使ってつくった家具は本来100年持つと言われています。

 国内の家具の需要はピーク時の半分でしょうか、出荷額が減少する中で輸入家具の比率が高まっています。中国やタイから輸入される安価な家具の材料の多くは、カンボジア、、ラオス、ミャンマーで違法伐採された木材です。

 森林資源の違法伐採も大きな問題ですが、地球環境というマクロな危機でなく直接的に影響を与えるのは、ホームセンターや大型安売りチェーンで販売されている安い家具からは大量のホルムアルデヒドやVOCが排出され続けていることです。

 小さなカラーボックスは床材2畳分の表面積がある

 住宅、住宅建材では現在厳しい規制がかかっている化学物質の放散ですが、家具業界では野放しになっていると言っていい状態です。国内ではもう生産されなくなったホルムアルデヒドの放散量が多い合板やボド類がアジア諸国ではまだ生産されています。安い家具を高密度高断熱の室内に置くと、空気が汚染されてしまいます。一部国産家具メーカーが「室内環境配慮マーク」を始めていましたが、全く話題にはなりませんでした。
 海外の大型家具店の進出で業界は安売り一色となっています。安くてデザイン性の高い商品も、その生産履歴や素材は明らかではありません。

 確かに購買時に消費者は「価格」を最重視するのかも知れません。それでも、中国の食材の不安が騒がれた時期から、少し価格が高くても国産材を選ぶ消費者が増えてきました。

 家具に関しても、何らかのきっかけで変わると思います。住宅業界の変化が必ず影響を与えます。
その時に○トリがいち早く、安くて環境によい家具を出すことができれば強くなると思います。

                                                          (2009年8月21日)

■利益をあげる仕組みと「納得がいくまでの商談」

 最終的に利益を出せる仕組みを持つところが残る

 ウォルマートの店頭では欠品がでても当たり前のように放置されているという記事が昨日出ていました。欠品をなくすために在庫を抱えることで企業の利益が圧迫されるので、ロジスティックスのロスをなくすためには合理的な考え方なのだそうです。

 価格競争の泥沼の中でも、単に他の店より安いモノを提供するだけではいずれ価格が横並びになり体力勝負の消耗戦となります。

 100円ショップのダイソーや回転寿司などでは原価率の高い商品と、儲かる商品をどのようにミックスするかで利益をコントロールしています。原価率の高い商品でお客様をびっくりさせる、「エーこの商品が」100円」と思わせて、原価率の低い商品を沢山買わせて儲けるのだそうです。同じような仕組みは結婚式の引き出物などで増えているカタログギフトの世界でもあるようです。表面的にその仕組みを真似しても、利益をあげる商品の組み合わせがうまくいかなければ、原価率の高い商品ばかりでて儲からないそうです。

 以前もご紹介したエピソードで、魚屋さんの経営するお寿司屋さんは儲かるが、お米やさんの経営するお寿司屋さんは儲からないという事例もそれにあてはまります。食材をいかにうまく活用しロスをなくすか?数円単位の利益の積み上げが明暗を分けることになります。

 イオンが進めている小型食品スーパーは、その点で不安が残ります。小型店では生鮮のバックヤードを持ったり、惣菜をインストアで調理するだけの人員体制がとれないからです。生鮮のロスをなくすには惣菜への加工が必須です。機動性を持たない店舗は利益を残しにくくなります。

 元気のいい店の利益を出す仕組み

 家電ディスカウンターは売り切る力を背景にメーカーへの値引き要求を強めています。その商談は、数人のバイヤーで担当者を取り囲む非常にシビアなモノだといわれています。大阪で何かと話題の「スーパー玉出」の社長も安さの秘訣を「納得いくまでの商談」だと語っています。(誰が納得するまで?)1円セールの商品は1日2万個売れるのだそうです。(それで、売上はなんぼやねん?)これはメーカーに取ってのチャンスだそうです。

 かつてのダイエーなども創業当時は業界秩序を乱すやんちゃな商売をしていましたが、規模が大きくなるとそのスタイルは続きません。社員も堅気のサラリーマンになってきますしね。

  ユニクロも初期には支払い代金の踏み倒しなどの悪い評判がありましたが、最近は次のステップへと抜け出した感があります。

 誰かがツケをはらう安売り家具

 外資系のイケアや北海道発のニトリの家具は驚異的な安さです。製造工程でのリスク負担とコスト管理を徹底し、価格とデザインで業界を席巻しています。家具業界は原価管理もできない遅れた業界なので、きちんとやれば他社を圧倒できます。ただ、どちらも製品は使い捨て仕様です。10年〜20年のレンジで考えると価格は決して安くはありません。ライフサイクルコストを考えたときにそのコストを負担するのは一体誰でしょう?

 お金を払ってくれる人を蔑ろにする商売は続かない

 冒頭のウォルマートにしても目先の価格だけで消費者をだませると考えるディスカウンターも、詰まるところ、自社の都合、自社の利益を最優先し、お金を払ってくれる人のことを考えてはいません。歴史的に見ればそのような企業が長く続いた試しはありません。
                                                          (2009年8月20日)
■無風地帯に始まった生鮮食品の戦いの行方

 競争の無かった千里中央地区

 大阪府の副都心、千里中央地区は開発されて40年近くなりますが、つい最近まで、商業施設の競争は制限されていて無風地帯であったエリアです。生鮮食品に関しては「阪急百貨店」「千里大丸プラザ(大丸ピーコック)」「ダイエー」の3店しか無く、ダイエー千里中央店はグループの中でも稼ぎ頭でした。

 ニュータウンの中央センターの位置づけなのですが、地区センターの商業がどんどん駄目になっていくなかで、日常の買い物の選択肢はきわめて限られたもになっていました。選べないのです。
 確かにニュータウン周辺部には箕面マーケットパークヴィソラ(カルフール)やイオン伊丹などの大型ショッピングセンターが開発されていましたが、食料品の買い物には不便です。

 7月13日、14日の記事でも紹介しましたが、デパ地下型の食品スーパー「阪急オアシス千里中央店」が7月7日に開業し、競争環境に変化がありました。さらに7月24日「せんちゅうパル」(よみうり文化センターの向かい)に、「八百屋モモタロー」と「肉工房千里店」(安売りの路面店)が開業しさらに競争に拍車がかかったように見えました。

 天候不順が出鼻をくじく

 この地区では、時たま行われる野菜の露天が多いに人気を集めています。モモタローは開店当時は沢山の商品を並べて安い価格をつけることで人気を集めていました。30坪程度の面積は広すぎたのかもしれません。沢山の売れ残りを安売りした後、だんだんと商品数が少なくなってきました。在庫がこわいのでしょう。
 そこにきてこの天候不順での野菜等の高騰・・・店頭に並ぶ安い商品はあきらかに質の悪い商品です。悪循環ですね。肉屋さんの肉は値段の安いモノはそれなりの質の肉という相関がはっきり出るモノですからそれなりに売れているとしかいいようがありません。
 寝屋川に本店のある地元では元気のいい店なのでしょう、何故地元の京阪沿線では成功して、千里中央で苦戦するのでしょうか。

 それは千里ニュータウンが高齢化している計画された都市だからです。都市環境は最高です。住民層は所得層で偏りができないようにアフォーダブルな住宅が計画的に配置されています。簡単に言えば、私のような貧乏人からお金持ちまでが住んでいて・・・・かつ、街の高齢化が進んでいる市場と言うことです。ここに大量販売型のディスカウンターとのミスマッチがあります。
 ディスカウンターは若い貧乏人がたくさん住んでいる街で、毎日沢山売ることで成立する業態なのです。

 お金持ちが絶対に足を踏み入れない店

 近隣の緑が丘とか北緑丘の高級住宅地に住む富裕層は「ダイエー」にさえ足を踏み入れません。(芦屋でダイエーが高級スーパー「イタリアーノ」を出店していたときさえ、地元の人も「あれはダイエー」でしょうと絶対に足を踏み入れませんでした)

 大阪の富裕層は東京の富裕層に比べ「気さく」で「気取らない」と思われがちですが、それは思い違いです。表面と腹の底は違います。

 ・・・・と言うわけで、開店以来生鮮の価格を抑えてかつ、高級感もある「阪急オアシス」が貧乏人から富裕層までをつかんで、一歩抜け出しています。富裕層だけを相手にしているピーコックは苦戦しているように見えます。
 ただ対面販売での魚コーナーの店員さんが、「店頭で処理を依頼されるのはセールの安い魚ばっかり」とぼやいているのが聞こえてしまうのはいただけませんが。

 
その後、価格は以前の中途半端な値付けに戻り、、一方安物の菓子を目玉にするなど残念な店になってしまいました。大丸ピーコックはそれなりに健闘しています。開店時の内容は中々続かないものですね。やれやれ。
 
ピーコックもイオンになり、よみうり文化センターの商業施設もイオンだそうです。イオンはもう「お腹いっぱい」です。

                                                (2009年8月19日)
  ■アウトレットモールが伸びている理由

 新しいテナントが無い事に失望する専門家の本末転倒

 郊外ショッピングセンターではアウトレットモールが好調です。りんくうプレミアムアウトレットやマリンピア神戸が売上を伸ばしています。その中で昨年11月に開業した阪急西宮ガーデンズの好調さが注目されます。阪急西宮ガーデンズの年間目標は全体で600億円(阪急200億円、専門店400億円)開業3ヶ月でハイペースでとばしています。(新聞記事)


 阪急西宮ガーデンズ開業時には、「ファッションマーケティング」(?)の大家が「失望もの」と酷評されていました。新しいテナントが少ないことがその判断理由です。関西初とか、日本初のテナントを集めれば新しい、エキサイティングなショッピングセンターができるという思考回路なのでしょう。ファッションの世界の方らしい発想です。

 市場の中で求められているのに、供給されていないサービスや商品を揃えることが一義であって、その結果従来のやり方、従来のテナントと違う新しいアイデアのテナントが入るというのが「マーケティング」の」の発想の筋道です。「新しい(テナント)から新しいというのは同義反復の循環論理です。
 論理より感性を重視するのがファッションですから別にケチをつけるのではないですが、これは本末転倒だなあと思います。

 アウトレットモールが「楽しい」理由

 アウトレットモールは安いから利用されていると考えてるのは短絡的です。それならば「シマムラ」や「ニトリ」はもっと流行るはずです。(今でも”勝ち組”らしいですが)

 ショッピングセンターも百貨店も景気後退の中で、思考停止状態でコストカットに走っています。販促にも、商品にもお金やコストをかけていません。売場が面白いはずがないじゃないですか。
 アウトレットで店を展開している「ブランド」店は商品のデザイン、制作段階で頭を使い、感性を使い、汗を流しています。その結果が商品に結実しています。アイデアのある商品が「適正」?な価格で手にはいるかも知れないからアウトレットモールは人を惹きつけるのです。

 農産物や工業製品の形で「水」を輸入しているといわれています。アイデアを「水」に置き換えると、顧客接点である店頭で水不足に陥っている中で、商品の形で「水」を含んでいる場所に「水」を求める人達が押し寄せている・・・・という図式でしょうか。

                                                          (2009年8月18日)

図ー大阪及び神戸の郊外型SCの売上高と前年比伸び率(核店舗除く専門店のみ)

繊研新聞全国主要SCアンケート2008年より加工
■大阪市内SCの売上と伸び率から今後の地域間競争を考える

 大型SCは飽和状態

 各ターミナルを代表する大型SCは飽和状態にあるのでしょうか、その伸び率は止まっており、景気後退の中での伸び率は減少傾向にあります。その中で天王寺MIOは大型改装もあり減少率が低くなっています。競争が少ない中で存在感を高めています。
 心斎橋OPAは好調です。売上が公表されていないビッグステップの苦戦が伝えられる中、前年比を伸ばしています。旧心斎橋そごうの改装はOPAを意識したものになるのでしょうか。
 阪急三番街も、なんばシティも雑誌で言えば総合誌のように幅広いターゲットを対象にしてきましたが、ゾーン毎に特徴を明確にしたリニューアルを行う時期なのかも知れません。

 業態間競合をにらんだ地域力の競合へ

 2011年問題と言われる商業の」競合激化の中で、百貨店、専門店ビルという業態だけでなく、大型店の中でも例えばヨドバシカメラや東急ハンズと言った異なった業態の集積状況や、路面店や小さな店舗の集積状況などを総合的に考えて地域力を評価する必要があります。
 今のところ百貨店業界の人は百貨店にし関心がないようです、せいぜい専門店ビルまでにしか関心が拡がらないので、地域のポテンシャルを偏った形でしか判断できません。
 街の流動者の日常生活のニーズ対応や、外国人観光客のニーズ対応(深追いして依存しすぎると火傷をしますが、ある程度の対応をしないと取り残されてしまいます〜好調なSCである成田のターミナルビルやアウトレットは中国人の富裕層をつかんでいます)
 これらも含めた街としての魅力作り、プロモーションが求められています。

                                                           (2009年8月17日)
図ー大阪市内主要SC売上高と前年比伸び率

繊研新聞全国主要SCアンケート2008年より加工  ※ビッグステップ数値は当社推計
■ネットで完結する「小宇宙」の住民達〜PRの作法

 WEB2.0はどこに消えたのか?

 インターネットの普及が私たちの生活やビジネススタイルを大きく変えたのは事実です。とはいえ、次から次へわけのわからないアルファベットの略語をつくりだし、「乗り遅れるな」「変わらないと」と脅迫する「オレオレ詐欺」のような輩は害毒をまきちらかすだけです。
 古くは「VAN」「INS」「CRM」「SCM」・・・「WEB2.0」等々。流行モノに弱い上司の説得材料としてはいいのでしょうが、現場のスタッフが使いこなすためにはその意味をキチンと日本語で説明させるべきでしょう。分からないことはちっともはずか恥ずかしい事ではありません。

 さて本日の本題はニュースリリースのお話です。

 メールで配信するニュースリリースはゴミでしかない〜一方的ないいっぱなし情報に価値はない

 最近、マスコミへのニュースリリースをメールで配信するという業者があらわれています。新聞社や雑誌編集部にいちいち郵送で送ったり、記者クラブへ投げ込んだり、知り合いの記者へ送ったりするという手間をかけるのではなく、一斉に沢山の送り先にコストをかけずに送付できるというサービスだそうです。

 かつて、某情報会社がニュースリリースをファクシミリで配信するというサービスを始めようとしていたことが頭に浮かびます。(アイデアだおれで効果が無く失敗しましたが)

 そのニュースはネットのニュースサイトにも送るというところが特徴です。・・・多分、そのようなサービスを考えた人は、リアルな人間関係をつくることがめんどうと考えるタイプの人なんでしょうね。

 PRの仕事をしていて思うのは、やはり直接あって話をするのが一番だということです。一方的に送りつけるだけであると、よほどの情報価値があるものでないと、毎日届く大量の案内の中からピックアップしてもらえないと考えた方がいいでしょう。

 メール配信の合理性はあくまでも送り手側の都合でしかありません。手を変え品を変え注目していただく工夫を無駄としか考えないのでしょう。

 また、ネットを使ったプロモーションでもWEBサイトを構築してもSEO対策をして検索の上位にあがればリアルな集客ができると考えるのは間違いです。他のメディアとの連携、他のメディアに取り上げてもらうためのツールの一つとして考えるのが妥当なところでしょう。ネットの普及とともに、ネットへの幻想は消えて、ビジネスの現場では現実的な活用法を考えるようになってきています。

  いまだにWEB万能の幻想を持っているのは、ネットで完結する小宇宙の住民か、いつもワンテンポ遅れて時代の流行を追う、大企業のトップぐらいのものでしょう。現場はもっと冷静になるべきです。

                                                     (2009年8月14日)
■中之島で一番存在感のあるビルのノブレス・オブリージュ

 安藤忠雄作の中之島の模型でわかること

 現在大阪市役所のロビーに安藤忠雄さんが作成した中之島の建物・将来変化を含めたものが飾られています。このあいだまでサントリーミュージアムで開催されていた「安藤忠雄建築2009」で展示されていたもの一部移したものだそうです。それを見ていて強烈な印象を与えるビルがありました。建物のボリュームが他を圧倒するほどの存在感がある計画です。フェスティバルホールという大阪を代表するホールと新聞社が入る文化の発信拠点となる建物です。

 こうして立体模型で見ないと素人にはピンとこないものですね。

 朝日新聞社が現在建築中の中之島フェスティバルタワーの2棟のビルがそれです。延べ床面積が東西合わせて26万u。これは梅田北ヤードの1期計画の4棟のビルの床面積合計22.5万uを上回ります。(2棟が完成するのは2019年以降ですし、梅田北ヤードも1期計画が2012年以降に完成した後には2期計画がスタートする?でしょうし、1期計画は全体の24haの内の7haに過ぎないので単純に比較できませんが)そのボリューム感の大きさはかなりのものです。

 中之島線とのつながりもいいので、完成によるインパクトはかなり大きいでしょう。民間企業単体開発だけに意思決定も早いでしょう。どのような内容のビルになるか?中之島全体、大阪全体、関西への影響は予想されていた以上に大きなものになるでしょう。

 「水都大阪2009」工事中

 中之島と言えば、「水都大阪2009」ですが、水辺の文化座や、川床などの工事が着々と進んでいます。?22日から10月12日までの開催ということで、色々と経緯があるのでしょうが、事情を知らない物同士では「何で天神祭にあわせへんねん」とか「水辺のイベントを8月末からやるなんてどういうこっちゃ」とかわいわいゆうております。

 そうそうたる大企業が名を連ね、大阪府と大阪市という関西オールスターで行うイベントなだけに「船頭多くしてなんとやら」でしょうか。とまれ・・・本当に楽しみなイベントなので、関係者の方は、大変でしょうが頑張ってください。

 ブリーゼブリーゼの「ル・コントワール・ド・ブノワ」は何故33階に舞上ったか

 西梅田のブリーゼブリーゼの最上階にフレンチの「ル・コントワール・ド・ブノワ」が入居しています。売上は好調らしいですが、お客さんの評判は悪いようです。というのは、もともとビストロとして1階に出店することを計画していたものが、天の声でフレンチなら高層ビルの上層だろう・・・と急遽最上階にあげられたという噂です。

 お値段が高いだけに、グランメゾンを期待した人は高い割にビストロで計画された店舗環境に不満を残し、ビストロ業態と知っている人はそのお値段の高さに不満を残し、2度といくもんかという事になってしまったようです。
 少し前であれば高層ビルの最上階はフレンチという時代もありましたが、今はそんな時代ではありません。眺望より料理を見て欲しいというのが料理人の本当の気持ちです。

 高層階にビュッフェレストランとかならいいかもしれません。業態と客層の想定をキチンと考えることですね。
                                                      (2009年8月13日)

    
■通勤者は大阪キタに楽しみと癒しを求めている

 大人が楽しめるアミューズメント施設は男女ともにニーズが高い

 多くの都市機能が集中しているキタ地区ですが、欲しい移設としてトップにあげられているのは「大人が楽しめるアミューズメント空間」です。男女ともニーズが高く、特に20代の男女でのニーズが高いです。パチンコ屋やカラオケボックスは十分に充足しています。遊園地的なものがイメージされているのでしょうか?ライブやショーが楽しめるエンタテイメント施設へのニーズも高いので、郵便局の跡地にオリエンタルランドが劇場の設置を予定していますが、かなりインパクトがあるかも知れません。
 ちなみに外国人に人気の市内のスポットは、「ポケモンセンター」「サンリオギャラリー」「ジャニーズショップ」「スパワールド」などです。・・・・・・梅田北ヤードをしばらく使わないのであればしばらく「仮設遊園地」(あくまでも仮設です。大失敗したフェスティバルゲートのように恒久施設にしてはいけません)でもつくって人の流れをつくってから計画してもいいでしょう。昔みたいに「博覧会」をやって企業からお金を集めるという時代でもないのですが、何らかのイベントで一般の市民に場所のイメージをつくる必要があるでしょう。

 女性で強いリラクゼーション施設へのニーズ

 特に女性では「温泉」「サウナ・エステ」へのニーズが高く見られます。美と健康の維持は年代を問わない大きな関心事です。既存の商業施設の中にも意外と少ないですし、街中の路面店は風俗系の施設と区別がつかないほどまちはが劣化しています。

 大阪駅の北側は完全に裏口になっています。計画されている梅田北ヤードは事務所、ショールーム、研究施設が中心で一般の流動者の回遊を排除した形になっています。イメージとしては新宿西口の高層ビル群やOBPのようなものが出来そうです。〜
六本木ヒルズのようなテナントビルらしいです。

 消費地に近い事が売り物であり、高い家賃の背景になっています。ショッピングセンターにする必要はありませんが、特に女性の回遊を意識した集客装置を複合しないと先行事例のように味気ないつまらない街になってしまいます。

                                                     (2009年8月12日)
図−大阪キタに欲しい機能(大阪市内通勤者アンケートより)

(なにわ考現学2005)
■2008年SC売上高ランキングに見るSCの課題

 百貨店、GMSだけでなくショッピングセンターも失速

 繊研新聞が毎年実施しているショッピングセンターの売上高アンケートが発表されました。百貨店や,GMSの落ち込みに比べ比較的検討していたショッピングセンターですが上位100施設の売上高は3期ぶりに減少しています。
 前年の売上を上回ったのは三分の一で、昨年6施設あっった2桁増の施設は3施設に半減しています。

 特に落ち込みが激しいのは価格帯の高いラグジュアリーブランドを扱っている施設です。
 ・「成田ターミナルビル」 769億円 -10.1%
 ・「玉川高島屋SC」540億円  -8.9%
 ・「六本木ヒルズ」385億円 -7.2%
 ・「ヒルトンプラザ(イースト・ウェスト)」246億円 -7.2%
 ・「丸ビル」218億円  -9.2%
 ・「セントレア」215億円 -7.8%
 
 国内の景気低迷と海外(中国・韓国等)の観光客の減少が」響いているようです。

 関西で好調なSCは・・・・

 関西で売上を伸ばしているショッピングセンターは
 ・「心斎橋OPA」187億円 +6.6%
 ・「くずはモール」182億円  +0.7%
 ・「マリンピア神戸」172億円 +3.0%
 その他「りんくうプレミアムアウトレット」278億円、「三田プレミアムアウトレット」165億円なども前年のデータが公表されていません
 が好調であると推測されます。

 70年代以前建築の古い駅ビルの改装の動き

 古い駅ビルの中でも立地のいい駅ビルには改装の動きがあります。「八重洲地下街」(65年)、「千葉ペリエ」(63年)、などに改装の予定があります
 関西では郊外の再開発ビル、西武(西友)の撤退した宝塚や西友の撤退した河内長野などの郊外の再開発ビルが再建に苦戦しています。都心では、大阪駅の増築に伴って、「GARE大阪」や「大阪ターミナルビル」に動きがありそうです。ミナミでは島屋の増築に合わせて、「なんばシティ」が改装します。また、近鉄の増床によって阿倍野の専門店も変わります。上本町もまた新歌舞伎座の移転などによって街の変化が想定されます。

 京橋の黄昏

 中之島線開通により沿線に投資を活発化させている京阪電鉄にとって京橋の開発は難しいところがあります。沿線で最大のターミナルではありますが、開発用地が限られており、JR用地や、OBP内の古くなったビルの建て替えなどをにらみながら考えていく必要があります。
 投資としては天満橋のてこ入れ、及び中之島への投資が優先します。沿線外の不動産投資に収益源を求めている背景もあり、京橋への投資の優先順位は低くなります。

 かつては、別会社であり、京阪モールの社長の存在感はかなり強かった事を懐かしく思い出します。中之島や天満橋がどうしても昼間の顔、オフィス街としての一つの顔しかないのに比べて、昼の顔(OBP)や夜の顔を持つ「人間の顔をしたターミナル」であるだけに、キタ対ミナミの競争の中に埋没していくのはとても残念です。
                                                          (2009年8月11日)

■大阪都心での充実要望〜シニア女性は文化を求める

 60才代女性で高い「音楽」「演劇」「美術」機能の充実

 ご紹介しているデータは、大阪市内通勤者対象のものです。従って、都心への通勤という活動のベースがあり、可処分所得を持っている人という前提があります。アクティブな層ですね。それにしても60才代女性の音楽、演劇、美術まどの文化への志向性は高いものがあります。
 団塊世代の学歴が高い女性が多くなってきている所為でしょうか?確かに百貨店の文化催事には高齢女性の来店率が高いですよね。またボランティア団体NALC(ニッポン・アクティブ・ライフ・クラブ)の活動でも女性のパワーはすごいです。
 ちなみに、専業主婦を含めた60才代以上の女性のレジャー活動を「レジャー白書」でチェックしてみると、「文芸創作」「コーラス」「絵を描く」「書道」「お茶」「お花」の活動率が高くなっています。10才代の活動率とパターンが似ています。60才を過ぎると「女学生」に戻るのでしょうか。

 20才台は消費中心、30才代「婚活女性」はアクティブ派、40才代はドラマの観客になる

 20才代の女性はショッピングやグルメ機能を求めています。街では消費者として活発に消費するターゲットになります。この年代は駅ビルとの競争で百貨店が弱い層です。ショッピング、グルメ機能へのニーズが高くなっています。
 30歳代は、スポーツ、音楽、グルメ、ショッピングなど活動が幅広く活発になります。モノ消費だけでなくコト消費が活発になります。その為ニーズでもショッピング機能以外へのニーズが強くなります。40歳代では自分が活動するというより、映画や演劇の観客としてのニーズが中心となります。現実の人生に限界が見えてきた?のでしょうか。

 この調査では、見るだけなのか、自分が活動するのかは明らかではありません。スポーツの中身や音楽や美術のアートの中身をもっとつっこんで知りたいところです。

 ちなみに60才代の男性での「音楽」への充実要望は7.1%とニーズはかなり低くなっています。女性とのギャップは大きいです。女学生に返った60才代女性は夫婦で活動するのではないのでしょうね。
                                                         (2009年8月10日)

図ー大阪都心に求める機能  (大阪市内通勤者へのアンケート調査より)


 (なにわ考現学05)
■知っていそうで知らなかった関西の小ネタ+梅田の専門店の盲点

 京都に原爆を落とす日

 京都にほとんど空襲がなかったのは、世界的に重要な文化財を保護するために米軍が破壊から救ったという伝説が随分長い間信じられていました。
 そのおおもとは、米軍の設置した「戦争地域に於ける美術的歴史的遺跡の保護・救済に関するアメリカ委員会」は戦争中の文化財保護というより、敗戦国が侵略国に損害賠償として換金できる美術品や歴史的公文書のリストだったといいます。簡単に言えば戦勝国が分捕れる財宝のリストであったようです。

 そのリストの存在があったため、歴史的文化的価値がある京都や奈良、鎌倉が空爆されなかったという誤解がうまれたようです。。

 事実は、京都を原爆投下の最有力都市として温存しておき、その効果測定のために通常爆撃の対象から外されていたということです。

 皮肉なことにその誤解が1950年の「京都国際文化観光都市建設法」につながります。

                                            〜京都大学人文科学研究所報 参照

 関西の夏、特に京都の夏は体が地面に焼き付けられるように暑い日が続きます。もうひとつの歴史世界では本当に焼き付けられていたのかも知れません。

 船場汁伝説

 「船場汁」というのは安い魚の代表である鯖の頭やあらと大根を塩味で味付けした汁物で、船場商人の合理性、けちんぼを象徴する惣菜として認知されています。元々は「煎場汁」が語源で、鶏肉などを煎りつけたものを塩味の汁物にしたものが変化して魚を素材にした汁物となったようです。「煎場(せんば)」が「船場」となったようです。
 どこかで、大阪人はケチだというキャンペーンの材料にされてしまったのでしょうか。確かに鰻の頭の「半助」や「ハモの皮」なども食べますがそれは美味しいからであって、決してドケちなわけではないのです。大津出身で同志社大学卒業の花登函の著作物の印象が強いのでしょうか・・・・・・。

 以前も御紹介しましたが東京の有名大学ご出身のプランナーが、高い価格帯の「飲食店」について、「けちな大阪のOLさんでなく京都や神戸のOLに利用してもらったらいい・・・」とマリーアントワネットばりのご発言をされた背景には、船場汁のように巧妙にすりこまれた「大阪人=ケチ」というパブリックイメージが影響しています。・・・まあ、確かに合理的ではあるのですが・・・それはやっぱりケチかな・・・

 意外に強いミナミの専門店集積

 大阪市内の通勤者に聞いたアンケートで、百貨店以外の商業移設への好感度を聞いたところ、意外にミナミ(なんば心斎橋)の商業集積の名前が上位にランキングされています。「なんばウォーク」(旧虹のまち)が「HEP」より高いなんて・・・・
 これは男女合わせた数字でかつ、50〜60歳代も含んだ調査であることのマジックなのですが、それにしても、梅田の商業集積でこれから新しく、おっさんやシニアを対象にしたべたな小売業をやるところはないでしょうね。そこが、盲点なのですが、分かっていてもやれないでしょう。梅田界隈では、阪神百貨店と駅前ビルでまったりするんでしょうね、おっさん達は。

 だから、面積がいくら増えても梅田はお互いの同質化競争から抜け出せないと言っているのです。

                                                   (2009年8月7日)
 
図ー大阪市内通勤者に聞いた好きな商業施設(百貨店を除く)

(なにわ考現学05)2005年1月調査なのでNU茶屋町は開業していません
■小売店出店計画に見る景気低迷期の小売業サバイバル

不況時には守りの体制

 不況が長引いています。小売業各社も新たな出店は抑制傾向にあり、既存店の改装を優先しています。出店も全国展開と言うよりも地元に出店を集中しているといわれています。

コンビニエンスストア

 タスポ効果が一巡した上に、セブンイレブンへの公正取引委員会の指導などからも客単価減少の傾向は続いていきます。客数は伸びているので生き残りのために出店計画は例年通り積極的です。
 病院や大学、企業内など特殊な立地への展開も今後注目されます。Ampmの買収先がファミリーマートになると業界の力関係が変わってきます。

GMS・スーパー

 低価格を売りにした新業態店の開発が進んでいます。イトーヨカドーはディスカウント業態「ザプライス」への転換を20店ほど進めると言われています。ディスカウント型のスーパーはかつても「ダイクマ」とか「トポス」「Dマート」「コウズ」とありましたが、一時的に話題を呼んでも続かないのですがね。低価格業態は、チラシ特売の廃止、店内作業の最適化、物流の最適化、商品数の絞り込みなどお客様に不便を転嫁して安くしているので、最初のインパクトがなくなると店としてチープなものになります。
 最近の傾向として、都心地区に食品スーパーが出店するケースが増えています。大阪ではライフが積極的です。
 又、高質スーパーをうたう「阪急オアシス」ですが、以前は「高額スーパー」と陰口をたたかれていましたが、最新の千里中央店は品揃えと価格の幅のバランスがとれてきて一皮むけたような気がします。ニッショストアとの統合効果でしょうか。大丸ピーコックが価格の幅を持たせられずに苦戦しているのと対照的です。対面販売をいつまで続けられるか?PB商品の押しつけがうざいとか、課題はありますが、価格対応がとれていてしかもチープな感じがしないいい店舗になっています。

 家電量販店
  2009年度の主要家電量販店の出店計画は前年に比べ14%減といわれています。積極的に店舗展開するケーズ電機が40店出店しますが、出店を抑制している企業も多く2極化しているようです。
 ヨドバシカメラは2009年には出店予定はないようですが2010年には京都の近鉄跡への出店が控えています。

 その他
 ユニクロ、西松屋チェーンの出店意欲は相変わらずです。ユニクロは新宿西口に都内最大店をオープンしましたが、今後都心大型店を積極展開し、3年以内に国内大型店を200店規模にするそうです。ユニクロの内装工事費はかなりお金をかけています。商品は安くてもチープな雰囲気がしないのは照明を始めとした内装によるものです。

 私たちの多くが貧乏であることは間違いないのですが、お店に貧乏人だからこれくらいでいいだろうという扱いをされるのはつくづく情けないものがあります。
 「エコ」も「アート」も「古着」貧乏を情けなくさせない効果があります。やせ我慢は美徳です。

                                                    (2009年8月6日)
2009年度小売業出店計画  (産業タイムズ社)
出店 閉店 純増 店舗数
セブンイレブンジャパン 1,000 720 280 12,578
ファミリーマート 550 350 200 7,604
ローソン 540 460 80 8,682
サークルKサンクス 319 280 39 5,302
セブン&アイホールディングス 12 1 11 342
イオン 10 0 10 569
ライフ 7 0 7 210
コメリ 31 4 27 976
ニトリ 32 6 26 208
ナフコ 15 0 15 251
ヤマダ電機 33 0 33 683
ケーズホールディングス 40 11 29 338
上新電機 8 0 8 174
ビックカメラ 1 0 1 71
ヨドバシカメラ 0 0 0 20
ポイント 88 5 83 634
しまむら 80 0 80 1,631
ファーストリテイリング 99 37 62 875
西松屋チェーン 65 4 61 686
パル 60 30 30 573
ハニーズ 50 40 10 914
ユナイテッドアローズ 22 6 16 184
サザビーリーグ 23 44 -21 348

((「商業施設新聞」 産業タイムズ社記事より加工しました)
■大阪と「アート」」の取り合わせが新鮮〜コムデギャルソン「Six」南船場にオープン

 大阪からアート的な展開を発信

 8月8日コムデギャルソンが南船場丁目の直営店の店舗の2階にアートを発信するスペースを開きます。132uの空間で年4〜5回、テーマを変えてエキシビジョンを展する予定だそうです。アートを発信するというコンセプトで作品を売るわけではないようです。

 初回は「草間彌生」さんの作品で本邦初公開の作品も展示されるそうです。8月8日から11月8日まで、正午から7時までの開館で月曜日はお休みです。

 アートが新鮮  何で大阪でアートやねん

 商業関係のニュースは「低価格」とかいったニュースが多いだけに、「アート」といった切り口が逆に新鮮な感じがします。大阪とメジャーなアートの取り合わせが今までにあまり無かったせいかもしれません。
 
 小売業界が本音むき出しの安売り競争に走っている中で、先日論じた「エコ」「グリーン」とか「アート」といった切り口が次の展開広げる切り口になるのかもしれません。
 草間彌生×川久保玲という取り合わせは特に目新しい物ではないのですが、このような取り合わせが新鮮に感じるのは、時代の気分の振り子に揺り戻しが来ているのかも知れません。(新鮮なのは大阪とのギャップかもしれません。これが東京青山とか京都であれば何となく流してしまうニュースなのですが)

 草間彌生さんは40年間現代アートを続けているけったいなおばさんですが国際的に知られたビッグネームです。
http://www.yayoi-kusama.jp/j/information/index.html へのリンク
 アートを活用したまち作り・・・というのはよくあるパターンなのですが、中々拡がりに欠けて難しいところがあります。
世界的にメジャーなお2人の組み合わせは、海外への発進力があります。

 ユニクロの失速に見られる潮目の変わり時

 不況下に売上を伸ばしてきたユニクロが失速しました。まだまだ消費に回すお金はないものの、安物を売る価格競争に飽きてきた気配がします。DCブランドが復活するとは思いませんが(ヨージヤマモトも身売りしますしね)、何か個性の強い物を求める気持ちが高まってくるように思います。短絡的にアートが売れるとは思いませんがね。はっきりと色のついていて人に認められる物(大阪のおばちゃん流の独りよがりではありませんが)が見直されると考えています。中古品が定着しているのもひとつの流れです。
                                                          (2009年8月5日)

 
ユニクロはその後も順調に事業を拡大しています。もっと安物を売る店が沢山増えてきたので、相対的にポジションを確立させたようにも見受けられます。それでも2年着たら、もうゴミなんですけれどね。
■都心居住が進んでも繁華街周辺の住イメージはまだ低い

 繁華街に近すぎず遠すぎず南堀江・北堀江に人気

 大阪市内通勤者へのアンケートで明らかになった住んでみたい街のトップは南堀江・北堀江地区です。環境がよいイメージがあってかつ都心の繁華街に近利便性も高いところが人気を集めています。逆に都心繁華街に近すぎると住んでみたくない街のイメージが強まります。
 都心居住が再び一般化し、通勤時間のロスを嫌う層が増えてきています。
 アンケートに設定された地名で分譲されているタワーマンションも多いのですが、地名だけでは住んでみたいという憧れをかき立てるまでのステータスは無いように感じます。(下記アンケートは5年前なので変化はあるはずです)

 「中之島」には今後のブランド力の向上の可能性が感じられます。緑も少しずつ定着してきて、イベント開催で徐々になじみも出てきています。飲食店は周辺にいい店があるのですが、生活利便施設の整備がまだまだなのがネックといえるでしょう。

                                                         (2009年8月4日)

図ー住まいとしての大阪市内の街イメージ


なにわ考現学2005より   

■これからはグリーンが利益を生む

ウォルマートとパタゴニアの連携〜あのウォルマートでさえ

 ウォルマートといえば、大量生産品を低価格で販売することで地域の商業者をたたきつぶしてきた「悪の帝国」のイメージが強い企業です。現在世界で2番目に大きい企業で、この会社を上回る経済規模の店は世界に10カ国しかないといいいます。
 一方パタゴニアはアウトドアを愛好する社長が創設した、環境に飼う別の配慮を払う自由な気風の会社であることで有名です。対極的なイメージにあるこの2つの会社が「環境配慮」と「持続可能性なビジネス」への共同の取り組みを進めています。

(パタゴニアとはこんな企業です)
http://www.patagonia.com/web/jp/home/index.jsp?OPTION=HOME_PAGE&assetid=6297&slc=jp_JP&sct=JP&src=rps_go018703


 パタゴニアのシュナイダー会長はウォルマートの幹部を前に次の2つの話をしたそうです。
「これからは商品を買ってくれるだけでなく、製品一つ一つについて社会的、環境的な監査をしなければならない」
「扱う全製品について、どのように環境に影響を与え二酸化炭素を排出しているかのついてグレードを数字で出す必要がある」
 そして、パタゴニアは「衣類に関するグレーディングマニュアル」をウォルマートと一緒に作成し、それぞれの商品がどのような影響を与えているか消費者に分かるようにすると言う協力を始めていきます。

 ジュエネレーションXのニーズに応えて

 アメリカの世代区分で言うジェネレーションX(75年〜89年生まれ)の価値観・行動基準は「環境に配慮した商品を欲し」かつ「広告を信用しない」事に特徴があります。オーガニック食品を愛用し、各企業の建前と本音を厳しく見抜く世代であるといわれています。
 パタゴニアもウォルマートも過去最高益を記録した数少ない企業です。その経済力を活かし、政府の行動をまたず、本気で変革を起こそうとしていると言うことです。

 「市場」が企業の行動基準を変革し、世の中を変えていく・・・・と言うことでしょうか。

 パタゴニアには日本支社長に一度講演会においで戴いたことがあります。出席者の大企業の方々は皆さん、パタゴニアの企業風土に憧れを持ったまなざしを向けておられました。(組織で苦労されているんですよね)
 ただ、この会社(日本では)悪名高い「シーシェパード」=実力行使をいとわない環境保護団体のスポンサーなんですよね。

 パタゴニアとウォルマートの組み合わせは「善意」を動機とする世界支配というアメリカ人らしい行動原理が透けて見えます。
 
 とはいえ、「環境対策」はこれからの企業にとって重要な行動基準になることは間違いないです。エコとかロハスとかという言葉の浸透には目を見張るものがあります。あの強欲なウォルマートでさえ・・・と言うことです。
  そう「持続可能性」(サスティナビリティ)の言葉の説明がいらなくなったのはついこの10年間のあいだです。

 10月にサスティナビリティをテーマにしたショップがオープンします

 この10月に大阪の某地区で「サスティナビリティ」を前面に出したある業態(食関連ではありません)の店舗がオープンします。オーナーさんとプロジェクトチームで1年かけて準備したものです。詳しい内容は順次お伝えしていきます。
                                                            (2009年8月3日)
 7月
■鰻谷丼池の残念な開発〜県事務所の風格

コンペ提案は政党の公約のようなものなのか?

 東心斎橋の鰻谷丼池筋に某県の県事務所がありました。その事務所の建て替えにあったってコンペが行われました。東心斎橋と言えばかつては大人のおしゃれな街として落ち着いたバーやブティックの路面店が建ち並ぶ街でした。近年、道頓堀〜宗右衛門町の風俗化に代表される街の劣化が北上し、安物の飲食店、「元気な居酒屋」などが増えた「残念な街」になりつつあっただけにその結果が大きく注目されていました。

 結果として関西の大手設計事務所を中心に、「大手一流不動産会社」、「老舗百貨店」の連合体が入賞しました。考えられる最高の組み合わせに街の復興の期待がかかります。私は別件で、2日間ほどこの近くでフィルドワークをしていましたが、このポイントが変わると街は変わると確信を持っていました。

 竣工が大きく遅れ、先日完成した姿を見ると、コンペ提案と大きく異なった建物が建っていました。百貨店の姿はなく、真っ赤なアクセントがある意味印象的な外観の建物のテナントとしてとして1件だけビューティサロンが大きな看板を出しています。

 それなりに大変な事情があっただろうと拝察されますし、他人の資産の運用にケチをつける気はありません。
 最近はコンペ提案は政党の公約の様なものになっているのだなと・・・・

(コンペ審査基準 抜粋)
建物の外観・デザインは、県の所有地に建設される施設であり、かつ県の業務拠点(大阪事務所)が入居するのにふさわしい風格を有しているか。
施設内容・構成は、県の業務拠点(大阪事務所)が入居するのにふさわしいもので、かつ近隣商店街と相乗効果が生じるよう十分に配慮されているか。

一旦衰退が始まった街は止めることができないのか

 そんなことよりも危機感を感じさせるのは、一旦劣化したし始めた街は、自治体+公共事業に強い大手設計事務所+元気のいい一流不動産会社+老舗百貨店という、がちがちに固い企業の組み合わせでもとどめることができなかったという事実です。
 見事に周辺に同化した施設になっています。ミナミの劣化を「外国人オーナー」による目先の利益追求の結果だとする議論がありますが、それが嘘であることがわかります。変の意味での「賑わい」のある街はその「賑わい」によって劣化していきます。
 現金商売、水商売、安っぽい飲食店、そして風俗、パチスロ等々。これらは大阪の庶民の持つ、下町の親しみやすい賑わいとは似て非なるものです。

 シャッター通りといわれるほど寂れた方がまだ再生の可能性がありそうです。

 御堂筋から心斎橋は大丸を中心に良くなる要素が沢山あります。昔、ここで遊んだ人が戻ってくるようないい街になる為には、東心斎橋はこのままでは駄目です。
                                                          (2009年7月31日)

 
その後、地域のランドマークである大手老舗百貨店の建替が発表されています。おそらく高層化しオフィスビルやホテル、コンドミニアムなどを併設した,外国人観光客相手の店になってしまう可能性が高いと見ています。本社を東京に移してから、なんだかなあ・・・・寂しいですね
 (2014年6月)


■「日本食」の魅力が外国人観光客を惹きつける

国別に違う観光目的

 日本への観光目的は国によって大きく違います。欧米では歴史文化への関心が強く、アジアではショッピング、温泉への関心が強くなっています。共通しているのは「日本食」への関心の高さです。2006年度の調査では19.4%だったのが、2008年度では37.0%にまで高まっています。(全体)

 ミシュランガイドでも日本での☆の数の多さが話題になっていました。関西版の刊行も関西人はあまり相手にしないでしょうが、観光客が押し寄せる可能性があります。

 下の図に掲載していない中国人では「日本食」は5位で21%です。まだ、日本食が口に合わないのかも知れません。食に関してはプライドが高いのかも知れません。

 食は風土と密接な関わりを持ちます。リピーターとしてもう一度来訪していただくためにも食の満足度を高めていかなければいけません。
日本の中でも食べることにどん欲な関西でこそ「日本食」の楽しみを味わっていただけるように思います。観光客向けの英文のパンフレットでは総花的なあたりさわりのない扱いですが、旅行者も意識した関西の日本食の情報発信が必要でしょう。
 ぐるなびは広告ですし、いわゆるタウンガイドは何故かあまり役に立ちませんし、情報誌は新しい店しか取り上げません。使い勝手の良い情報源が全くないのが現状です。
                                                           (2009年7月30日)
図ー訪日外国人観光客の観光目的
  

  

国際観光振興機構「JNTO訪日外国客訪問地調査2008」
天神祭も終わり水辺が気持ちのいい季節になりました。「水都大阪2009」は8月22日からなんですって?え〜夏が終わるやん。

    
■集積の規模でしか価値判断できない人達〜梅田があぶない

利便性が高い梅田〜集積すればますます利便性が悪くなる

 店舗の売上げを推計する方法として古くから使われているもに「ハフモデル」があります。売場面積の大きさと競合店への距離をベースに各居住区からの吸引率を算出するのが基本的な考え方です。基本的に規模がすべての考え方です。

 郊外のショッピングセンターの売上予測では実用的な精度を持っています。結構予測があたります。
 都心の商業集積ではあまり役に立ちません。

 2011年前後に梅田に大型店が集積する事によって、梅田が独り勝ちになると考えている人はいませんか?それは間違いです。少なくとも百貨店に関して言えば、数年の内に4店の内1つは「ビックカメラ」(のようなもの)になります。
 ヨドバシ梅田が成功したのは梅田にないものを持ってきたからです。百貨店の発想と行動パターンでは必ず同質化競争を起こして、体力の無いところから倒れます。

 今まで、はっきりと地域一番店と違うやり方2番店戦略を徹底し成功した百貨店は「阪神百貨店」しかありません。圧倒的な戦力(ヒト、モノ、カネ)の差がある「阪急」に対してある程度互角に戦える売場もあったのは、トップに2番店としての覚悟があったからです。

 プライドの高い老舗百貨店には絶対にそれは出来ません。従って、同質化競争が強まり、利用者にとっては全く便利ではない商業集積が増えることになります。

 梅田のウィークポイントは若い世代による「おしゃれな街」としての評価が低い事です。

 心斎橋を中心とした南船場〜堀江に伸びしろがある

 おしゃれな人が多いとか、新しいファッションが発見できるイメージの高い堀江、南船場ですが、ビジネス面では中々厳しです。ただ、御堂筋心斎橋が利便性とファッション性のバランスがとれていることに注目されます。

 大丸による旧心斎橋そごうの買収は大丸にとっては価格的に高い買い物だと思いますが、地域にとっては大きなプラスです。旧そごう経営陣には地域のポテンシャルが見えていなかたようですが、大丸がやろうとしている若い人向けの低価格ファッションは来街者の選択肢を広げます。阪神なんば線の開業で神戸方面からの来客が見込める堀江、南船場にとっては心斎橋大丸と御堂筋のブランド路面店と合わせた新しいショッピングエリアが形成できます。若い子が多いですし、わざわざ出かけたくなる魅力があります。

  
2011年の開業当初は影響があったようですが、3ヶ月経って落ち着いてきています。

 外国人向けの観光地化した心斎橋筋商店街も一部利用できるかも知れません。

 梅田は周縁部の魅力を掘り起こしていかないと集積することによって衰退が始まっていくことになります。

 
うめきた先行開発地域グランフロント大阪を中心に運行されている「うめぐるバス」はGJですね。
                                                           (2009年7月29日)

図ー1 「買い物に便利な街」

図ー2 「おしゃれな人が多い街」

図ー3 新しいファッションが発見できる街


「なにわ考現学05」より(大阪市内通勤者を対象にしたアンケート調査)


■生産者の思いと流通事業者の思い

 イオンの12%は高いか安いか

 23日の記事で農家の方のブログから事例として、イオンモールの場所貸しの価格がイオン12%、農協3%がとるという農家の方のぼやきを紹介いたしました。ある人にご指摘いただいたのですが、合計15%というのは催事販売の場所貸しとしては決して高くないようです。駅構内とか百貨店の催事販売で売上金額の2割ぐらいですから、むしろ大家さんとしては安めの設定なのだと思います。

 農家の方の不満は品だしを手伝ってくれないとか、一緒に売ろうとしてくれないという事に対する不満ですが、流通に対する理解がないため不信感があるのだと思います。

 地方産品流通の課題

 地方に埋もれたいい品物を発掘して流通させようという宿題をずっと抱えているのですが、地方の生産事業者との意識の齟齬がまだまだあります。ある方のところには地方の良い品物の持ち込みがあるようですが、流通マージンとして1割を出すことも法外だという意識があるようです。ロットが大きいものではなくロットが小さいことに値打ちがあるものだけに既存のビジネスベースには乗りにくいところがあります。

 ダイレクトマーケティングとプロモーションの場としての催事販売

 地方生産者が自分自身の思いを大事にしながら生産し続けるためにはWEB等のダイレクト販売が中心になると思います。ただし、広く知っていただくためには催事販売あるいは百貨店のWEBサイトでの限定販売を使うべきです。多少利益率が低下しても、マス広告を打てない小規模の生産者が良質のお客様に認知していただく為には広告費と割り切ってでも活用すべきです。

 流通事業者も品数限定、季節限定の商品を差別化商品として求めています。百貨店をメディアとして割り切ればまだまだ利用価値はあります。
                                    (2009年7月28日)
■梅田周辺の大型店の動向とこれからの変化

大阪駅北ビルのインパクト

 2011年開業予定のJR大阪駅北ビルは三越伊勢丹で550億円、専門店で300億円(推計)の売上を目標としています。ヨドバシ梅田は今までに無い需用を獲得できたのでエリア売上を1200億円ONできたましたが、「百貨店、専門店ビルの需要」は例え集積効果で他地域から吸引できたとしても、ほとんどは既存の商業施設との限られたパイの食い合いになります。

 
昨日の商圏図に明らかなように、鉄道沿線の商圏が基本ですから、大丸梅田店とジェイアール三越伊勢丹が基本商圏を奪い合う形になります。これは誰もが分かる自明の理なので、それを織り込んだ両店の戦略が注目されます。

 中国や韓国などの訪日外国人の需要は期待できても、富裕層の個人客は百貨店の売上げに寄与したとしても団体客はまた違った需要になり、今の百貨店では難しいと思います。・・・高級レストランでも中国人の団体客は傍若無人の振る舞いをする(まるで関西人のように?)ので敬遠されています。ミシュランに掲載されるのも善し悪しだねと話題になっています。

好むと好まざるに関わらず国際化の進む関西

 万博公園のエキスポランド跡地へのパラマウントリゾート計画や中央郵便局跡地のオリエンタルランドの劇場はあきらかにアジアの観光客をターゲットにしています。交流人口の増加は歓迎すべき事ですが、地域として何で収益を上げるかをよく考えて準備する必要があります。
(どちらも計画は進みませんでした)
 心斎橋筋は観光客で賑わっていますが、街としては劣化しています。観光客で食べていながら、自分たちの生活は頑固に守っている京都人の知恵を学ぶ必要があります。
                                                          (2009年7月27日)

 

図ー梅田周辺の大型店と開発計画



■百貨店にとって商圏とは何か

 大阪梅田の2011年問題

 2011年のジェイアール大阪三越伊勢丹の開業と阪急、大丸、島屋、近鉄などの市内の百貨店が増床します。単純に積み上げると売場面積が3割増加する計算になります。百貨店以外にも郵便局跡地のビルや富国生命ビル、梅田北ヤードの商業ゾーンなど多くの開発が同時に進んでいきます。

  私の持論では集中した立地に出店することは長い目で見たときには得策ではないと考えていますが、それでも多くの「元気のいい」企業は集中した立地に出店することにメリットを感じることは間違いありません。東アジア、特に個人旅行が解禁された中国の富裕層は今後の大事なお客様になります。ビジターにとってまとまったエリアで選択できることは大きなメリットです。観光客が便利になることはいいことでしょうね。

 とはいえビジターの動向には波があります。(現に、東京の外資系ラグジュアリーホテルには閑古鳥が鳴いています)足元の商圏の顧客をどれだけつかんでいるかが基礎体力を表す指標になります。

 大阪の百貨店の商圏

 島屋
 南大阪、東大阪が中心で近鉄と商圏が重なります。阪神なんば線の開業で今後は、阪神間からの集客に期待したいところです。東京の感覚で言えばもう少し広域からの集客があってもいいはずだと思われるでしょうが、店舗の立地している「なんば」の街のポテンシャルが変化して、百貨店の今までの客層が楽しめる街ではなくなってきています。増床によってどこまで街機能を充実させるかが楽しみです。

 大丸心斎橋店
 大阪のキタの住民が行動する南限が心斎橋と言われています。特にシェアが高いエリアがない分、商圏は薄く広く拡がっています。通行客でなく、大丸のファン層が利用している店になっていれば関西では貴重な「非ターミナル型百貨店」としてユニークな存在になります。心斎橋そごうの買収は(ちょっと高い買い物だったとはいえ)店の独自性を強めるチャンスです。

 阪急梅田店
 北摂、阪神間の肥沃な商圏を押さえていることがよくわかります。エリア外のブランド力・知名度がないので、地方の富裕層や外国人客をしっかりとつかめば、盤石となるのだと思います。三越や伊勢丹の知名度は田舎では高いはずですから・・・。従来、立地の良さで放っておいてもお客様やお取引先が集まってきていたので、ブランド力がないことに案外無自覚なようです。

 梅田大丸
 JR沿線の利用者が多いようです。ジェイアール大阪三越伊勢丹の商圏とそのまま重なるはずです。好きなお店なので頑張って欲しいものです。

 近鉄
 足元商圏の利用者が特に多いです。ベビー子供服が多いなど、都心型のSCのようにも思えます。阿倍野には東急ハンズ、イトーヨーカドーが開店しますので集積力は高まります。MIOという駅ビルもあるので、案外2011年問題の余波をくわない地域かも知れません。
                                                        (2009年7月24日)










    
    1990年に朝日新聞社が実施した百貨店来店客調査のデータから当社が独自に加工したものです。
    
■イオングループもアウトレット参入とか〜プロパー商品は誰が売るのか?
 
 イオンレイクタウン(埼玉県越谷市)隣接地に2010年秋開業予定

 景気後退化の消費不振の中でも、アウトレット施設の集客力は衰えていません。三井不動産とチエルシージャパンの2強が市場を制しているアウトレットモールに、あらたにイオンが参入の計画を持っているようです。日本最大規模のSC「イオンレイクタウン」の隣接した土地に計画しているもので、2010年秋か、2011年の春に開業が予定されています。

 大型SCの出店を抑制し小型SMに集中しているイオンですが、大型店でもローコストで建築運営できれば採算に合うと判断したようです。

 農家の取引条件ではイオンよりアウトレットに軍配

 イオンでも地元野菜の取り扱いに注力しています。地元農協と組んで地元農家の産物のコーナーを自前の売場とは別に設置しています。地元農家は、イオンには12%、農協には3%のロイヤリティを支払います。朝届けた商品は自分たちで陳列し、陳列しきれない分はバックヤードにストックします。陳列商品の補充はイオンのスタッフが行う約束ですが、それが中々守られていないようです。毎月2回のお客様感謝デーには5%の割引協力の依頼があります。農家にしてみれば売ることに協力してくれなくて要求ばかりがあるという感覚なのでしょう。

 そのイオンの近くにオープンしたアウトレットの対応は違います。自宅まで納品のお願いにきて、生産者の写真をとってPOPをつくります。納品のときに放送で案内してくれる上に商品の選別にも注文をつけてきます。品切れになれば農家の携帯をならして収穫の催促をしてくるそうです。
http://blogs.yahoo.co.jp/tabe/54419474.html へのリンク

 「売る」ための意気込みが違いますよね。農協があいだに入るのが良くないのかも知れませんが。組織が大きくなると商売の感覚が鈍くなってくるように思います。

i イオングループ野菜生産に参入

 昨日、イオングループが野菜の生産に参入することを発表しました。

http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090722/biz0907222155016-n1.htm へのリンク

 阪急百貨店も泉南でグリーンファームという有機野菜の農場をやっていましたが、農業が好きな人がやらないとサラリーマンでは厳しいかもしれません。・・・
結構好調らしいです。
                                                          (2009年7月23日)
■パラマウントリゾートは大阪を救うのか

 不甲斐ないガンバ大阪がスタジアム構想を遠ざける

 7月11日、ガンバ大阪は新スタジアム建設構想の現状について発表しました。基本的に寄付金で建設し行政に寄付する形を考えているようです。行政が建設資金を負担してくれる時代でもないですし仕方がないですね。建設場所は万博敷地内としています。(エキスポランド跡といわれています)サッカー専用の屋根つきスタジアムで、収容人員は32,000人。建設費は150億円と試算されています。30億円はファンの寄付、100億円は地域企業、スポンサー企業の寄付、20億円は行政の助成金と想定しています。

  この不景気で企業の財布は厳しいでしょうが、サポーターはお金を出してもいいと考えていました。その盛り上がりに水をさしたのはACLの敗退と、その後のガンバ大阪の不甲斐ない試合ぶりでした。

 平城遷都1300年祭の総事業費は100億円です。京都の水族館の事業費は65億円。屋根がなければ100億円で建設できるとはいえサッカー専用スタジアムは厳しいのかも知れません。(ちなみに京都水族館が計画されている梅小路公園にも京都パープルサンガのスタジアムをという夢があったそうです)

 パラマウントリゾート大阪の投資額1250億円

 7月16日に発表されたパラマウントリゾート大阪は万博公園、エキスポランド跡地40万uに計画されているものです。映画を題材にしたアトラクションでUSJ(1,600億円)と同規模で年間1,000万人を集めるそうです。(USJで年間870万人ですが)
 計画を発表したのは投資会社でこれからお金を集めるのでしょうが・・・・大阪のポテンシャルが投資家にどれだけ評価してもらえるかがポイントになるでしょう。

 パラマウントのソフトではスタートレック、インディジョーンズ、13日の金曜日などでしょうか?

 USJとの連携で実現すれば楽しいものになるでしょうが・・・・地元の人は投資しないでしょうね。唯一のマストラ大阪モノレールは結構乗車率が高くてピークには裁ききれないでしょうし、万博の外周道路も慢性的な混雑で車で利用したくないルートです。

 アクセスが便利なようで,あまり良くないので本当はテーマパークには不向きです。
 (もし、よければ梅田北ヤードで10年間限定の仮設店舗という線で手を打ってもらえるとありがたいのですが・・・・)

 会議場や高級スパを併設した施設を大阪に造っても、採算がとれるという評価が獲得できれば面白い展開になります。地元はまだまだ半信半疑ですが、投資してくださるものはありがたく頂戴していくべきでしょう。(税金は使わないでくださいね)

 
結局この土地の活用は三井不動産のショッピングセンターに落ち着きました

 高級スパといえば、先日発表された口コミサイトでの海外旅行者による日本の観光地ランキングでは、大阪市内のトップは「USJ」を押さえて「スパワールド」が上位にランキングされていました。
http://www.zakzak.co.jp/top/200904/t2009042036_all.html へのリンク


 大阪を含む関西の魅力がもっと伝われば、この地域への投資が増えるはずです。観光は大阪を知ってもらう、来てみていただくための重要なツールです、賑わいの中でしっかりと次の飯の種を考えて、世界から投資してもらえるようにならないと。

 (個人的にはガンバ大阪が国際的なクラブになり新スタジアムを満杯にする事を望んでいるのですが・・・・でも高槻は遠いな)

                                                (2009年7月22日)
■「観光資源」を持てあます奈良〜劣化コピーではなくどこにもない資源を活かせ

 観光客数が伸びている「京都」、横ばいの「奈良」

 阪神淡路大震災では直接の影響は無いものの、観光客数減という大きな打撃を受けましたが、「京都市」への観光客数は着実に回復しています。同じような古都として、京都・奈良とセットで語られることの多い「奈良市」への観光客数はその間、横ばい状況でした。先日の阪神なんば線の開通は明るいニューズですが、JR奈良駅前への外資の高級ホテル誘致は暗礁に乗り上げ白紙となってしまいました。

 外国人観光客は伸びている

 全体の観光客数は横ばいですが、外国人観光客の数は増加しています。歴史・文化はどこにもない観光資源なので強い集客力を持っていると考えていいでしょう。宿泊客が少ないので、外資ホテルの誘致をはかったのでしょうが、無理に奈良市内で完結させる必要も無いと思うのですがいかがでしょう。
 宿泊機能を充実させるにしても、遺跡の上に街があるような状況で、大型の建築物は難しいのですから低層で分散型の施設であってはいけないのでしょうか。

 平城京はわずか74年の間しか都ではなかったのですが、それ以前の藤原京や古代王朝は奈良盆地全体に分布しています。長い間徒都であった京都とは又違った古都の魅力がこの街の強みです。
 百貨店の誘致は結果的に失敗に終わりました。奈良そごうも閉店し、今は大型スーパーマーケットです。高級ホテル誘致もデベロッパーが破綻して頓挫しました。まだ、アウトレットモール誘致の計画が残っているそうです・・・・。
 地元の人達は他所にもあるものが欲しい、百貨店やホテルが駅前にないとかっこ悪いという思う人もいるのでしょう。

 遺跡とか文化財のおかげでどこにでもある街にならないで来ました。外国人旅行者が伸びてきているのは、どこにでもある街ではないからだと思います。

 平城遷都1300年祭はまっとうな計画

 平城遷都1300年祭は、関西にいてもまだその正体がよくわからなかったのですが、計画を見ると平城京跡から県内をネットワークする内容で、よくありがちな企業パビリオンが乱立する一過性のものではないようです。当初はパビリオンをいくつも立てる計画もあったようですが、埋蔵文化財のおかげでしごくまっとうなものとなったのかも知れません。

 京都水族館は京都のイメージダウンにならないか?

 京都水族館については、「イルカショー」に少し不安があります。京都への観光客は欧米人が多いのが特徴です。(大阪では外国人観光客の64%がアジア系ですが、京都では3割です)しかも、ビジネスマンというより文化に関心の高い人達が京都を訪れます。
 水族館のイルカショーのイルカは欧米の環境保護団体が残酷と評価している「突き網漁」で捕獲されたものです。シーシェパードなどの環境保護団体は日本では頭のおかしな過激派としか見られていませんが、欧米の知識層には一定の割合で支持されています。

 新しい水族館は建物はかなり環境対策が施されていますが、「イルカショー」に関しては欧米の環境保護団体のターゲットとされる可能性も強いです。今のうちに対策を考えておいた方がいいのではないかと思います。「京都」は国際的によく知られているだけに彼らの格好の宣伝材料になるはずです。〜そのリスクについて、誰も言及していません。

 
京都水族館は地元客中心に盛況のようです。恐れていた「シーシェパード」などの「過激な環境団体」の攻撃も無く(多分知らない)地域に定着していきそうです。

                                                           (2009年7月21日)

図ー1 京都市、奈良市の観光客数の推移(千人)


図ー2 京都市、奈良市の外国人観光客の推移



■逆風の中の船出の準備
 
 大阪梅田の2011年問題

 本当は、景気が悪い時期に計画する方が、足についた堅実な計画が出来るのかも知れません。2011年には景気は回復しているはずですしね・・・・と無邪気にクレーンが沢山立っている様を喜べません。

  阪急梅田本店は1期工事がほぼ完了した南側の建物(2.7万u)を9月3日に開業します。その前に現在営業している北側の建物(4.3万u)を8月30日で休業することになります。食品を3層にするということが話題になっていますね。現状で競争力のある売場面積を減らしたくないのでしょう。
 同じグループである阪神百貨店は8月26日「親しみやすさと値頃感」をテーマに洋菓子やジーンズの売場を広げる改装を行うようです。

 東京のとばっちりで着工が遅れていた郵便局の建て替えも進んでいきそうです。
(中断中・・・・)

 かつて梅田に阪急と阪神が2店しかなかった時代に「梅田百貨店戦争」と呼ばれて、3店はなりたたないという見解が大勢を占めていました。結果的に梅田商圏が広がったのか、それなりに共存していました。
 平成12年には大阪市内の大型商業施設の面積は2割増えるそうです。

 パイの拡大には限度がある。売上が伸びなくても収益を上げる仕組みづくりを〜って本気でできますか?

 今やらないと駄目なのは、百貨店が頭を使った商売を始めることです。「売場面積の規模」、「関西初のブランドの数」、「価格」競争力について一度にひとつのことしか考えられないのか?と思えるぐらい、同質的でピントのずれた「戦い」を行っています。

 収益をあげる為に頭を使えば、まだまだ出来ることは沢山あります。

 例えば、2012年以降、どこかの百貨店が撤退し、その後に例えば「ビッグカメラ」とか「ドンキホーテ」が出店したとしましょう。(買収価格は別にして)彼らは必ず単年度の利益は出してくるでしょうね。(その時にこの2社がまだ元気かどうかは知りませんが)

 
撤退するどこかの百貨店の代わりにお隣で好調な「駅ビル」が全館運営するようです。ドンキは東通りの方に出店しています。

・・・・・例え、人件費が削られても「面白くて」「やりがいのある会社」であるなら人材は活性化しますよ。


                                                    (2009年7月17日)
 
   
■「メトロポリタンライフ」と都心で暮らす事〜「私」は何に属する者なのか

 お祭りに子供達がもどり生活がもどってきている

 大阪市内でも西区は人口の伸び率が高い地域です。一時は存続が危ぶまれていたお祭りの行列も、沢山の子供達で賑わっています。郊外のニュータウンでは小学校の生徒数が減少し、統廃合が進んでいるのとは対照的です。
 
 大阪市内でも食品スーパーの出店が目立ってきています。京都でしたら昔からの商店がまだまだ健在ですが、大阪市内では小学校や商店街などのインフラが大きく減少していましたら、人がもどってくるにつれ再整備が必要になってきています。

 たかが、お祭りと思われるかも知れませんが、こどもを通じて新住民と旧来の住民が交流する貴重なイベントです。東京の江東区のように急激に住宅が増えてしまうと行政側のインフラ整備も大変ですし、住民の交流もなく、単に郊外住宅地を物理的に「都心」に移転させただけ・・・という結果になっています。

 かつて都心に住むというのは単身者や子供のいないカップルが多く、他人と関わりたくない、ムラ社会的な人間関係からとき離れたいという価値観を持っていた人が多かったように思います。特に地方から都会に出てきた人が多かった「団塊世代」で目立っていたように思います。

 メトロポリタンライフから郊外生活へ

 大都会での自由な暮らしのイメージは「メトロポリタンライフ」と呼べそうです。野心のある若い人が「村のしがらみ」を離れて大都会へ出て一旗揚げてやろうというのは昔からあるものです。団塊世代の若い時期はそれが国策で誘導されて、量も多く大量発生したことに特徴があります。

 大阪市内は大大阪時代に、工業都市大阪の環境悪化に耐えかねてお金持ちが「郊外住宅」に移動しました。団塊世代が家庭を形成する時期に開発されたのが千里ニュータウンや泉北ニュータウンなどのニュータウンでした。

 ニュータウンの高齢化と、コミュニティに足場を築けない戦後生まれのシニア層

 郊外住宅地、特に計画的につくられたニュータウンでの高齢化が進んでいます。環境の良い住宅地の大きな一戸建てにお年寄りだけですまれているケースが増えています。子供が少なくなった地域では地域の夏のイベントも中止になっていると聞きます。

 シニアの相互扶助と生きがい作りの全国的なNPO団体である「NALC」と永くおつきあいさせていただいています。団塊世代がリタイアするときに、社会意識が強いはずだったこの世代の会員が大きく増えるだろうと期待してたのですが、思ったより入会者数が少なかったそうです。

 団塊世代は数が多くて、群れるのが好きなわりに、会社といった利益共同体以外に主体的に参加するのが苦手なんではないかと言う仮説を持っています。(特に男性)

  過剰に敵視すること無く、この世代が自由な時間とお金をつかって社会参加する。自分の生活の場所に根ざしたコミュニティ作りを行うように誘導していくことが、次の世代の為にも必要なことではないかと考えます。大きな話をするばかりでなく、その場その場での責任を果たすことで世の中を少しでもよくするお手本とならなければいけないでしょう。

                                          (2009年7月17日)


   御霊神社夏祭り 西船場獅子請の行列 

■ビジネス街の風景が変わっていく〜人口減少社会を楽しんで暮らすには

 都市交通手段として見直される自転車とパーキングビジネス

 大阪市内は比較的平坦な道が多く自転車の移動は快適です。特に東西の「通り」は歩道の幅も広く、歩行者との共存が可能です。大阪市内でも自転車で移動する人が目立って増えてきました。都心居住が進んでいる事も背景にあるようですが、やはり不況下で節約志向が高まっているようです。

 時間貸し駐車場の稼働率が落ちてきているようです。ガソリン価格はありかわらず高い為、通勤や行楽にマイカーを活用する事を控えたり不況で、工事用車が減少していることが背景にあります。宅配便の会社もオフィス街に荷さばき場を設置しているケースが増えていますしね。

 そんな中で大手の駐車場会社があいついで、駐輪場運営に乗り出しています。駅周辺の不法駐輪は相変わらずの状況です。健康やお金の節約のために、自転車通勤を始める人が増えたり、企業が交通費削減のために営業マンに自転車を利用させるケースが増えていますので、駐輪場のニーズは高まる一方です。
 名古屋の支店者レンタル外車では法人需要が昨年に比べて5割アップしているそうです。(自動車道路で街が組み立てられているようなあの名古屋でさえです)

 シリコンバレーがグリーンバレーに

 アメリカ西海岸のシリコンバレーでは環境ベンチャーが集積し、グリーンバレーに変身中といわれています。通勤もマイカーでなくバスなどが推奨されている中で、「自転車通勤デー」が開催され、約20万人が移転者通勤したといわれています。「環境にも財布にも健康にもいい。自転車通勤はアメリカの抱える問題を一度に解決できる」そうです。
 もともとアメリカでの自転車人気を支えている地域で、自転車レーンが多く、鉄道に持ち込める制度もあるだけに簡単にシフトできる素地があります。

  ベルギーなどの欧州の都市でも自転車と都市がうまく調和している事例をみるたびにうらやましくてなりません。日本の都市でも東京や大阪の梅田地区といった高密度に集積した都市(アジアに多いのですが)では、アクロバティックな運転をするメッセンジャー以外は自転車を活用することは躊躇されます。

 幸い、人口密度が低い京町堀では自転車もペットも共生しています。(今日は御霊神社の行列も通る予定です)

 ペットとお仕事

 大阪市で賃貸マンションを手がける「エブリペット」者はペットと一緒に自宅にいるような環境で仕事が出来るオフィスの賃貸を始めたようです。

http://www.every-pet.com/kawaramachi/index.html へのリンク

1階にはペットコンシェルジュ!も常駐しているそうです。

 高密度に働く高密度に暮らす理由を棚卸しする

 さて、私たちは「容積率アップ」を無条件に資産価値向上に結びつけてぬか喜びする傾向があります。何故高密度になオフィスが望ましいのか、何故高密度な住宅が望ましいのか・・・・・数字しか見ないファンドマネージャーの視点以外の理由付けを考える必要があります。必然性は投資金額の回収だけ、しかも効率をおいかけると「街の使い勝手が損なわれる」というばかばかしいビットフォールから早く抜け出すことが必要です。

 もちろん高密度活用はそれだけで悪というわけではありません。都市計画のプロとしての「建築家」が自らの見識で答えを出す必要があります。素人は高層ビルが建つことをそれだけで喜ぶことができるでしょうが、プロにはプロとしての理路があるはずです。私は不幸なことに、いまだに投資した金の回収以外の理念を聞いたことがありません。

                                                  (2009年7月16日)
自転車用パーキング  中之島の公園工事
■住宅事情が消費行動を左右する

 住空間の制約が消費行動の枠を決める

 マーケティングの分類では例えば性別や年代別、といった人口統計学的な要因や可処分所得、ライフスタイルといった要素が消費行動を決めるという事が常識とされています。ある分野の消費についてはそれらの人に属する要素ではなく住空間の制約が消費行動を左右することを見落としてはいけません。

 関西でも郊外にはまだ農家が残っています。土地はもともと所有していますから結構大きな一戸建てを建てられます。住居は広いので必ず壁面には絵画が飾られています。フローの収入の多寡やご本人の価値観ライフスタイルに関わらず、壁を埋めるための(しかもご近所に見せるための高そうな)絵画の需要が生まれます。〜それは老舗百貨店の美術部の大切な収入源であったりします。

 都会に住んでいて、センスが良くて、それなりに収入が高い女性でも、都心のいい場所にマンションを購入または借りることが出来たとしてもその壁面は限られています。西武百貨店でデビッドホックニーの版画を購入しても飾る場所にはとても苦労する事になります。

 インテリア・家具ほど理想と現実のギャップが大きいジャンルはありません。まず、大きさの制約があります。首尾良く一部でも理想の空間を作っても、生活する事で毎日生まれるこまごまとしたジャンクが、理想のインテリアを破壊していきます。

 「オール電化住宅」が売っているのは生活感のないキッチンの幻である

 オール電化住宅というものが一部の層に人気を集めています。今まで持っている鍋や釜が使えない事や、調理に忙しい時間にコンロ、グリルをフル回転させてオーブンを使うと「ヒューズが飛んでしまう」=電気器具が全部ストップしてしまう・・・といったあきらかな不便さ(電磁波の恐怖の話はひとまずおいておいて)にも関わらずシェアをあげているのは、安心安全といった表面上の大義名分ではなく、電化キッチンの持つ「生活感の希薄さ」が何となくおしゃれな印象を与えているからです。

 実際レンジでチンするか、湯を沸かす以外に使わないキッチンであれば「オール電化キッチン」で十分ですしね。

 シャルドネホームは田舎で売れている

 高級天然家具のメーカー「シャルドネ」は住宅事業にも力を入れています。天然木、天然塗料でデザイン性の高いオーダー家具の販売から、その家具をいれる器である「住宅」へ事業を広げるのは利にかなっています。衣食足りて次に求めるのは住空間の充実ですから、住んでみたいと考える人も多いのではないかと思います。

 実際に売れているのは東京や大阪の都心部ではなく、地方であるということです。やはり、都会は地価の高さが住空間の充実のネックになっています。

 マルチハビテーション事業は空き屋対策、新規需要創造の切り札となる

 全国の住宅の12.2%は空き家です。これから人口は減少し、世帯数もやがて減少していきます。
 リタイヤしたシニアは自由になった時間で「都心に住んでみたい」「田舎に住んでみたい」「海外に住んでみたい」などといいた今までできなっかた「経験」を求めています。

 以前ご紹介したテーマパーク型賃貸住宅「株式会社明来」は極端な例としても、デザイナーズマンションには根強い人気があります。
http://akispirit.exblog.jp/i0/ へのリンク

 外国人ビジネスマン向けには高級家具付きの賃貸マンション、サービスアパートメントが存在しています。もう少し一般向けに趣味のいいインテリアがコーディネートされた賃貸住宅があれば、立地によっては一時的に試しに住んでみたいという層が必ずいます。今の生活用具は一式トランクルームに預かって、今の住まいは「移住・住み替え支援機構」に預けて賃貸に出すとかい手法もあります。
 農業にチャレンジしてみたいとか、工房アトリエで暮らしたいとか、自分の今の暮らしを完全にリセットしてチャレンジするには不安があっても一時的に「転職」を楽しめるサポートは面白い事業になるかも知れません。

 リバースモゲージは今ひとつ普及しませんし、いきなりシニア賃貸住宅へ転居というのはまだ若い60歳台にはキツイものがあると思います。今の生活の「生活感」をリセットし、理想の「住空間」に住んでみるというのはエキサイティングな体験になると思います。

 複数の住まいを持つことを総合的にサポートする事で新しい需要が生まれると思います。自分の好みの版画に囲まれて暮らせる(アートレンタル込みの)賃貸住宅というのも成立します。日本人はまだまだインテリアを自分でデザインするセンスは未熟であると思います。デザイナーズマンションを若い人だけの楽しみにするのはもったいないです。

                                                (2009年7月15日)
■デパ地下型のスーパー、その他

 阪急オアシス千里中央店についての補

 エイチツーオーリテイリングの新型店舗の実験店のようです。生鮮食品の量り売りや料理教室のスペースを取っています。対面販売を大幅に導入しているのが特徴で、このスタイルの店舗をグループの百貨店、具体的には来年3月に開業する阪神百貨店御影店にも導入するようです。
 売場面積は900uで売上げ目標は15億円だそうです。(日経 地方経済面 7月8日より)

 実験店ならば昨日述べた瑕疵を解消してフルラインで展開して欲しいものです。競合する千里阪急は中食や洋生菓子、イベント販売中心にならざるを得ないでしょうが・・・。阪急オアシスの目標値15億円のうち5億円は新しいマンション開発の新規需要を獲得したとしても、10億円は千里阪急の食料品の売上げを取り合うことになります。

 周辺地区でつい先日開店したばかりのディグラフォート千里中央の1階の大丸ピーコック千里中央 1,349uは距離にして500mしか離れていません。心なしか店頭の商品量を絞り込んできています。売上が伸びないときには、在庫を減らして利益率を確保したいところですが、店舗の魅力が低下していくと言う悪循環が始まってきたようです。万が一、撤退となれば、マンション群の資産価値も低下してしまいますので、困ったことになりそうです。〜よく考えれば、立て直しの方法はあります。

 高層マンションの住民にとって見れば低層階に商業施設が付帯しているのは利便性確保のために不可欠となってきています。かつては「下駄履きマンション」といわれ、都心部以外ではあまり見られなかった形ですが。

 どのような商業施設を入れるのか?開発の評価が決まってしまうこともあります。その為に、大型開発を行うデベロッパーは商業関連の企画、PM企業をグループに取り込む動きがありました。複合機能のあり方をもう一度見直す時期が来ているように思います。

 北海道物産展にそろそろ飽きているとの声が・・・

 百貨店の食品催事のエースはなんと言っても北海道物産展です。今年の秋は新宿の京王、小田急、伊勢丹で9月の頭に三つどもえの戦いになると言うことです。通常、お互いに日程をずらして開催するのですが、今年の秋は、昨年のサブプライムショックの影響で売り下が急減した時期に当たります。今までは前年割れもやむなしという雰囲気がありましたが、この時期以降は前年割れは許されない時期になります。

 経済が落ち込んでいる北海道からの売り込みも激しいようです。安易な拡大に質の低下を懸念する声もあげられています。
消費が縮小する中で今までと同じ購買意欲を刺激できるかは不透明という事です。

 人気の花畑牧場の生キャラメルは相変わらずの奪い合いですが、ネットで通販を始めている企業も出てきていますので、定番商品を集積するだけでない集客の工夫が求められています。               
その後、完全に終わったコンテンツになったのはご承知の通り。


                                                         (2009年7月14日)
■百貨店と高級食品スーパーの棲み分けの方向性?

 デイリー食料品を重視する百貨店

 百貨店の売場は基本的に取引先企業が運営するショップの集積と考えていいでしょう。「自主編集売場」が繰り返される永遠の課題であるように、自社でコントロールされている売場はごくわずかであるといえます。食料品売場も例外ではなく、「デパ地下」ブームで話題を呼んだ洋菓子にしても、すべて外部の業者の企画した商品です。
 一部の百貨店では生鮮などの売場を直営で運営し特徴をつけていますが、それは例外的なものであると言っていいでしょう。
 日配品やグロサリーなどの売場は関連会社のスーパーマーケットが運営しているケースも多いのです。大丸でしたら大丸ピーコック、阪急でしたら阪急オアシス、西武でしたらザ・ガーデン自由が丘など、運営者が表に出ているところもありますが、そうでないところもあります。

 かつては百貨店の食料品は手みやげ品、ギフトが中心でした。有名店のお菓子を揃えておけば良かったのですが、最近は惣菜、ワイン・酒、生鮮食料品、その他日常の食料品の品揃えが大事になってきています。

 景気の変動に左右されない日常の食料品がその百貨店らしい切り口で提供される必要があります。東京では80年代の西武百貨店の食品館が先駆けですし、大阪では梅田でしのぎを削る阪急と阪神の食料品売場の競争が百貨店の食料品売場の概念を変えてきました。

 千里中央での食品戦争(千里阪急、阪急オアシス、千里大丸プラザ)

 2009年7月7日。千里中央の高層マンション「ザ・千里タワー」の1階部分に阪急オアシスがオープンしました。
 阪急オアシスはかつては高級スーパーをめざしながらも今ひとつ「いかり」や「成城石井」に比べて高額ではあるが、質の高さが伝わりにくい、物足りない店舗でしたが、ニッショーストア等と合併し新しい会社になり変わりました。価格の幅も拡がり、こだわった食材も揃っているというバランスのとれた店舗になっています。新しい店は空間的な高級感もあり買い物客で賑わっています。

 千里中央には阪急百貨店の郊外店の優等生である千里阪急が立地しています。食料品は売上全体の約4割であるとはいえ、年間75億円売り上げています。ちなみに「北花田阪急」は52億円(55%)、「宝塚阪急」は63億円(60%)、「大丸山科」は41億(71.3%)です。京阪百貨店は全体で255億円(枚方、くずは、京阪モール等を含む)。売上の45%が食料品です。

 千里にはピーコックストアの旗艦店「千里大丸プラザ」があり、食料品中心にシフトしているダイエーの稼ぎ頭でもある「千里中央店」もあります。ダイエーは別にしてアッパークラスの食料品の競争は一気に激しいものになりました。

 
その後、イオン対阪急の気の抜けた一騎打ちになってしまいました。

 棲み分けできるか?

 阪急オアシスの店舗を見ていると、百貨店との棲み分けを意識しているのか、いくつかの瑕疵があります。

 ひとつは「パン」の品揃え、「ベイクドQ」の焼きたて導入しているのですが「食事パン」の品揃えが見劣りします。パスタやオリーブオイルに関してはかなり執拗なまでの品揃えをしているのに比べるとあきらかにバランスを欠きます。フレッシュチーズの品揃え、提供の仕方も同様です。生鮮は価格もこなれていて品揃えも充実しています。特に魚や肉、惣菜は加工プロセスもオープンしています。イオンに吸収されてしまったように見えるKOYOに見劣りしません。

 豆腐などの日配品がPBを中心に揃えられています。生産メーカーにこだわりのある人には物足りないでしょう。

 千里阪急は惣菜やお菓子などのショップはともかく生鮮、特に肉と魚は影響を受けるでしょう。野菜は自社の農場を持つなど力の入った分野なのでそれなりに共存出来そうですが、・・・できるだけ早い売場の再構築が必要でしょう。

 千里地区は住環境は高いレベルにありますが、住民層が偏らないように公営住宅なども計画的に配置された住宅です。阪神間の高級住宅地のように貧富の差がはっきりとわかれた市場ではありません。
 とはいえ大阪府下でも有数の高級住宅地が隣接しているなど「良い商品」への需要も潜在しています。高齢化が進行している事も無視できないファクターです。

 食料品に関しては高級品でもなく、低価格の商品でもない中途半端なものが「安くない価格」で販売されている歪んだ状態が続いていました。商業地区が限定されているので競争がなかったからです。

 「ザ・千里タワー」などの大型開発で新住民が増えることもありこれから変わっていく兆しが見えてきたように思えます。

                                                        (2009年7月13日)

■京都と奈良、古都を売り込むコトのマーケティング

 PRが下手な奈良

 「奈良の人は地域の美味しいモノを知らないし、売り込むのがへた。奈良で地元のモノを売り出しているのは大阪の人」「逆に京都の人達は地元のモノを商売にするのが上手・・・・よそ者が其処に手を出すと排除される」というお話を伺いました。

 2010年には遷都1300年を迎える奈良ですが、大阪への通勤通学が多く、ベッドタウン化しています。住民の12.8%は大阪へ通っています。

 観光客のうち3割弱は大阪人

 京都も奈良も観光客のうち3割弱は大阪人が占めています。奈良市の場合、県内の生駒市などは完全に大阪のベッドタウンですから大阪圏としてのウェートは高まるかも知れません。
 京都で多い兵庫県からの観光客(9.2%)を奈良としては「阪神なんば線」の開通で獲得していきたいところです。

 現在のところ奈良のネックは首都圏からの集客です。

 リニア新幹線が大阪まで開通すると・・・・

 現在、長野県内のルートでもめている「リニア新幹線」ですが、いずれ名古屋から大阪まで延伸されるでしょう。その時のルートは、岐阜から奈良を通って新大阪というルートが公表されています。

 奈良と言っても京都との境の学研都市を通過する可能性が強いです。

 大阪との距離感はあまり変わりませんが、奈良にとって首都圏との直通ルートが開けるのは大きなチャンスです。
 大阪、東京便がドル箱の伊丹空港は厳しい状況になるでしょう。橋下知事の主張にあるように関空に集約される可能性もあります。その時には新幹線JR新大阪駅周辺のビルの高さ制限がなくなり、駅周辺の高度利用が加速することになります。

 また、京都も首都圏や海外とのアクセスを改善する必要があります。京都〜梅田北ヤード〜なにわ筋線を経由した関空へのアクセスの強化や京都の南、下の方のリニア新幹線の「奈良駅?」よりのエリア(京田辺市等)にビジネスセンターが形成され、京滋バイパスを通って成長著しい滋賀県エリアにつなぐということが想定されます。

 京都の今の町並みがあまり「開発の波」にさらされることは好ましくないと思う人が多いので、周辺での開発が先行するでしょう。京都府と京都市が連携を深めて「京都」のブランディングをコントロールしていく事は可能でしょう?

 奈良は東京からの集客を増加させるためにも、熊野から高野山との連携したプロモーションを行う必要があります。また京都にまけない「物産展」のコンテンツをまとめあげ、東京の百貨店で催事を行うことも奈良の認知につながるでしょう。

                                                            (2009年7月10日)

表ー京都市と奈良市の比較
(国勢調査、観光統計から加工)
■京都駅周辺の回遊動線の課題

 京都駅周辺のぶつ切りの回遊動線

 2007年8月に開業したビックカメラは駅直結とうたわれていながら、中央改札からかなり歩かなければなりません。京都水族館の予定地である梅小路公園はさらにその先になります。ビックカメラは中央郵便局の向かいとはいえ、かなり「裏道感」の強いうらぶれた通りを歩きます。全国展開しているエコノミーホテルのチェーン店がどういうわけか2店舗並んでいるのも寂しい感じを強めます。伊勢丹とビッグカメラは大きな階段ではっきりと区分されています。

 京都市内の移動はバスが便利なのですが、地元に不案内な旅行者は歩くか、レンタサイクルの方が便利かも知れません。入り組んだわかりにくさも含めて京都の魅力なのかも知れませんが、駅の建物はもう少しつながりが良くてもいいのではないかと思います。2008年に開業した「SUVACO」は駅ナカ施設としてレベルの高い飲食・物販の集積になっています。改札の真ん前で便利です。東京の駅ナカ施設の匂いがします。
 京都人は関西の中で一番東京との「親和性」が高い理由は一度検証しておく必要がありそうです。

 乗降客が多くても中心になれない京都駅周辺

 どの都市でも街の中心は乗降客数の多い駅周辺か、地方では大型ショッピングセンターへと重心が移動しています。京都の場合観光客が多いのと、働く場所が面的に市内全域に分散していたり、古い商店が昔の商売を続けていたりしてることもあり、例えば梅田のように極端に集中することはありません。

 伊勢丹ができて大健闘して売上を伸ばしていますが、周辺に新しい商業施設ができるということもなかったようです。ビックカメラの開店で人の流れが変わるかとも思われましたが、開店後2年たってもあまり変わらないように見えます。


  京都水族館への道程

 京都水族館計画は民間の力で集客施設を造ろうという野心的な計画で、貧乏な京都市にはできないチャレンジです。現在、京都市で慎重な検討が進められていますが、この動線の悪さも一つのネックになります。途中の道は生活感があってある意味楽しいのですが、わくわくさせる非日常性に欠けます。
 大阪海遊館への駅からの動線も通りは当初よりかはかなり改善されています。
 歩くと優に20分はかかる道程なので、何らかの工夫が必要でしょう。

                                                 (2009年7月9日)
 西館をへだて階段  SUVACO     
■「京都水族館」計画に漂う詰めの甘さ

 京都に「水族館」?のサプライズと不安

 京都駅から西へ20分ほど歩いた場所に「梅小路公園」があります。都心には貴重な広大な芝生公園や蒸気機関車館があり、のんびりした場所ですが、広すぎてあまり手入れが行き届いていない緑地です。

 2008年の7月にオリックス不動産株式会社がこの公園の一部を賃借し「京都水族館」(仮称)を提案して話題になっています。敷地面積10,000u、延べ床面積14,000uの規模で2011年開業を予定し、200万人の集客を目論んでいます。

 何で京都に「水族館」という意味ではサプライズのある提案です・・・・・。近年は野生動物保護の観点から、厳しく教育機能が求められる水族館を「民営」で始めようというのは見上げた心意気です。・・・が、事業としての成立性についてはもっとシビアに計算し、ソフト面も練り上げる必要があるように思います。

 発送の「面白さ」というか「珍奇さ」で話題を呼びながら、事業性には当初から「?」があった大阪の「フェスティバルゲート」の二の舞になりそうな予感がします。民営なので京都市民の税金は痛みませんが、オリックスという国内でも数少ない意欲的な投資会社(外資系らしいですが)がダメージを受けると、他の開発にも悪い影響を与えます。やるんだったら成功して欲しいですし、持続できるアイデアがないのなら中止した方がいいと考えています。

 
 集客数200万人実現への道

 京都への観光入れこみ数は年間5,000万人です。日帰り客が3,700万人。就学旅行客が100万人。外国人観光客が94万人。日帰りの観光客である京阪神のリピーターが京都の観光を支えています。何故、京都で水族館なのか?・・・よほどの意味づけがないと1度は利用してもリピーターにはなりません。(大阪の海遊館でも2度目3度目のリピーターがかなりのウェートをしめています)

 「基本は教育施設で地元利用者中心」と地元からの質問に回答しています。地域の学校の教育機能として考えたときに、東山動物園の入場者数年間74万人を大きく超えることができるのでしょうか?ショー的な要素を強めることは一つの手段ですが、今後の地元との約束(教育施設色を強める)や、国際的な野生動物保護の流れから結構障害が多い道のりです。

 国内の水族館の入場者数はトップの「沖縄美ら海水族館」で268万人。2位の「海遊館」で235万人。3位の「名古屋港水族館」で152万人です。内陸型の水族館では「エプソン品川アクアスタジアム」で110万人。「サンシャイン国際水族館」で91万人。確かに開業時の海遊館で400万人を超えたこともありましたから初年度は200万人に近づく入場者数は獲得できるかも知れませんが、おそらく100万人前後で推移すると考えられます。その中で改装投資を続けていくことが求められます。


 最初にハードをよほど考えて作り込むこと、ソフト開発に手間をかけることが必要でしょう。

 単に利便性の高いところに遊休地があるから、不足している施設を造れば収益があがる・・・・という発想でかかると大変なことになります。

                                               ’          (2009年7月8日)

 京都水族館は開業2年目の2012年には海遊館218万人を抜いて231万人と堂々の2位です。〜大変失礼いたしました。この調子を維持できるようにお祈りしております。 海遊館は初年度400万人でしたけれどね・・・・・ (2014年6月)

 
■ギフト市場の変化で消費の行方を占う

 中元歳暮は普段取り組めない実験ができる機会

 中元・歳暮の市場規模は7,500〜8,000億円とまだまだ大きな市場です。ただ、実施率では5割を切っており、母の日の55%という実施率に比べて低くなっています。中元・歳暮の贈り先としても両親が一番多いのですから、かつてあった儀礼的な意味あいが薄れ、パーソナルギフトに近い物になってきています。

 中元歳暮は、かつては、タオルや敷物といいた非食品も多かったのですが近年、食品が中心になり、最近は自由に選べるカタログギフトも一般化しています。銀座の文具や伊東屋が始めた頃はとても斬新でしたが、結婚祝いなどを中心にカタログギフト専門の業者も多数存在しています。

 最近では「コトギフト」ということでエステ体験チケットや旅行などが注目を浴びています。モノとサービスをどう組み合わせていけば時めいていただけるか、知恵の絞りどころです。百貨店や大型店では普段の売場で出来ない実験が出来る機会ですから、」単なる話題作りではなく、これからの事業にどう取り組んでいくかの実験室として考える必要があります。

 「欲しいもの」つまり「喜ばれるもの」について、均質性があった時代から、無難な食品中心の時代を経て、もうモノでは喜ばれない時代になっているのでしょう。10年ぐらい前までは中元歳暮時期には「産地直送のお取り寄せ」や趣向を凝らした企画モノが話題をよんでいましたが、最近はあまり話題にもならなくなりました。

 近くで遅れるコンビニからの発送や、送付料割引などの利便性中心の訴求が目立っています。
 贈る側自体に「楽しみ」が無くなってきた中元・歳暮はどんどん廃れていく運命にあるのでしょう。「楽しみ」とはどんなものかを「考えて」それをこれからの事業の柱にしていかなければなりません。

 エンディング市場は静かに縮小していく市場

 2008年の死亡者数は114.3万人。出生者数は109.2万人で、お亡くなりになる方が多い状況が続いています。

 葬儀やその準備、法事などいわゆる「エンディング市場」(不謹慎な言葉ですね)はこれから拡大するというのが通説でした。先日ご紹介したように「直葬」など葬儀関係にお金をかけない傾向がますます強まっており、この周辺で消費されるお金は意外と少ないものになりそうです。

 図ー2の法事仏事関係のギフト市場3,032億円は多いと言えば多いのですが、子供関連、結婚関連のギフトのやりとりに比べて突出しているというわけではありません。家庭内のギフトのやりとりの最大のスポンサーであるおじいちゃん、おばあちゃんが無くなる時、80〜90歳代になるともう自分のことについてはそう派手なやりとりをして欲しくないと考える人も多いようです。資産があるはずと・・・変にかき回すような動きをしても反発されるだけでしょう。


                                          (2009年7月7日)

図ー1ギフト市場規模推計(2008年)    当社推計値  (億円)


図ーギフト市場規模推計(2008年)   当社推計値     (億円)


公開されている贈答率、贈答金額の単価をもとに当社が推計したもの

■「空間消費」の大衆化からファッションビジネスの再生へ

 そこに「居る」(be)事にお金を払う空間消費の誕生

 かつて、ゴージャスな内装や国内にいながらエキゾチックな雰囲気を味わえる商業施設が脚光をあびた時代がありました。美術館型百貨店とか、リゾートのようなホテルのロビー空間、ウォーターフロント・・・そうそうアーバンリゾート(死語)といかいうコンセプトも流行りましたね。ジオフロントなどというほとんど語呂合わせでしかないコンセプトでがっぽりお金を稼いだ人達がいました。バブル期には「カフェバー」という食事も飲み物も中途半端でかつ居心地も悪い飲食業が流行しました。

 それらは「非日常空間」に身を置くことで日常の憂さや貧しさを忘れさせてくれる効果があり、その場所でお茶を飲んだり、買い物をすることを主目的とする消費。つまり「空間消費」と呼ばれていました。

 日常空間を公共の場にずるずるとひきずる〜大衆型空間消費

 今、飲食や買い物自体を目的としないで、何となく時間を過ごす場所としての商業施設が席巻しています。カラオケボックス、ファミリーレストラン、ファーストフードの2階席、複合アミューズメント施設、まんが喫茶、居酒屋、深夜のドンキホーテそしてコンビニ周辺?等々・・・・そこで提供される食事や飲み物は決して美味しい物ではありません。

 その空間は非日常の刺激があるものではなく、どちらかと言えば日常空間の延長であることが多いようです。

 そういった場所で友人と何となく「過ごす」事に対して対価を支払っているという意味で「大衆化された空間消費」がそこにあるといってもいいように思います。

 公共の場に「日常生活」を求めると言う意味では「ケータイ電話」もその為のツールなのかもしれません。

 これからの商業施設の一つの方向性

 一方で、日常生活空間でも洗練された趣味でまとめられたものにあこがれる層も存在します。高級ホテルでも「カフェ店舗」に力を入れる動きがあります。「アロマ」は日常空間を少しでも洗練されたものにしようという趣味ですし、「スイーツ」ブームも食欲と言うより「かわいくて」「幸せな気持ちをもたらすもの」で満たされたいという気持ちが消費を後押ししていると考えています。

 大衆消費の「ずるずる」とこれらの「まったり」は裏表ではありますが、よりセンスのいい物を求める気持ちを喚起しないとファッションビジネスの基礎が崩壊します。これからの日本の産業の国際競争力は広い意味でのファッションビジネスが生み出す付加価値です。

 空間消費でにおいてもファッションビジネスが主導権をとって「ずるずる」ではなく「まったり」消費を創造していく事が必要になります。

                                                  (2009年7月6日)

■景気低迷下の新規開業施設の状況

 東京メトロ副都心線の開業効果

 2008年6月14日に渋谷から新宿、池袋経由で小竹向原を結ぶ地下鉄として開業した東京メトロ副都心線は、事前予測を上回る順調な滑り出しをみせているそうです。

 利用客数は1日平均25.9万人。(予想より5割多いそうです)並行して走るJRの利用客数減は1日8万人弱と予想を1万3000人回っています。定期券の割合が45%ですから買い物やその他の目的で利用する人が多いのかも知れません。

 池袋駅の利用者9.5万人は予想の倍です。駅の商業施設「エチカ池袋」にの集客力が高いようです。池袋西口の人の流れを増やしている効果があります。

 大阪の地下鉄は駅の構内の自前での活用が遅れています。一部のスペースを民間企業にも貸し出したりする事を始めていますが、市民の資産の活用として、これからもっとやれることがありそうです。

 好調が伝えられる「西宮ガーデンズ」逆風に耐える「イオンレイクタウン」

 昨年開業した大型ショッピングセンター「阪急西宮ガーデンズ」「イオンレイクタウン川口」は開業時にいきなり逆風にさらされました。(その後大型ショッピングセンター計画の多くが凍結、延期されています。)

 昨年11月に開業した「阪急西宮ガーデンズ」は開業半年で売355億円と年間目標の600億円をクリアする勢いです。もともと関西でも豊かな後背地を持つエリアですから目論見通りの展開でしょう。最寄りの阪急西宮北口駅の乗降客数は1日平均9.8万人、オープン前より2万人増えて、梅田、三宮に次ぐ乗降客数となりました。

 イオンレイクタウンについては詳しい数字の発表はありません。隣接する立地にららぽーと三郷が開業予定でIKEAやコストコも開業しています。つくばエクスプレス三郷駅が最寄りの駅・・・・。かなり競合が激しい立地ですね。開業時に面白そうなチャレンジを沢山しておられたので期待していました。頑張って欲しいものです。・・・・とはいうものの、ららぽーと三郷の施設構成も面白そうですね。

 大型のモール開発は終わったともいわれています。街の多様性を維持するための不採算施設の取り組みや、継続的なまちのマネジメントなどやることをきちんとやればその存在意義は無くならないと思うのですが。事業者としての収益管理だけでなく街を発展させる高い視点を持てるデベロッパーがどれだけいるのかが課題だと思います。
 
 JRおおさか東線部分開業(2008年3月)のこれから

 現在は直接市内に乗り入れていないため、あまりその存在感が意識されてませんが、2018年までに新大阪経由で梅田北ヤードに乗り入れる計画が発表されました。東大阪のものづくり企業が国土軸である新幹線やナレッジキャピタルに近くなることはエリアの発展のためには良いことでしょう。現在でも東西線放出駅での乗り換えが便利で、東大阪が意外に近いのですが、ものづくり以外での発進力が弱い?のであまり知られていません。この度お好み焼きのレシピのアイデァ募集をするそうですが、「東大阪で、何でお好み焼きやねん」感は否めません。

■大阪ホテルイメージランキング〜次に来る変化

 2010年夏 スターウッドの最高級ホテル「セントレジス」開業

 路線価の発表がありましたが、大阪の下落率は東京、名古屋ほど上がっていなかった為に、下落率も相対的に低いという皮肉な結果になっています。高級ホテルについても東京では国際級のラグジュアリーホテルが次々と開業していましたが、主な利用客である外国人ビジネスマンが激減しているだけにそのダメージは大きく、利益を稼ぐ代替市場も中々見つけにくいという苦境にあります。

 関西でも神戸に計画されていたホテル計画が半減するなどのダメージはあります幸い、まだ計画中であった為、白紙撤回で済んでいます。

 2010年のセントレジス開業時には景気も回復基調にあるではずですし、大阪のホテル宿泊客は中国、台湾や韓国といったアジアの成長市場お客様が多いので東京とは違った市場が形成されます。

 大阪のホテルのトップは?

 最近はホテルの運営会社が変わる度にホテルブランド名が変わり、いったいどんなレベルのホテルか判別不能のケースが多いのですが、大阪市内のホテルは地元鉄道系が多いの比較的イメージ評価は安定しています。

 かつてはリーガロイヤルホテルとホテルプラザ(99年廃業)の地元の名門ホテルが最高の格式を誇っていましたが、1986年には大阪ヒルトンホテル、ホテルニューオータニ大阪が進出し大阪の御三家としてリーガロイヤルと並んで君臨しました。1996年の帝国ホテル大阪の進出、さらに97年のザ・リッツカールトン大阪の進出でホテルのランキングは大きく変動しました。

 大阪のホテルランキング
                                      (大阪市内通勤者を対象にした調査)
      
(好きなホテルベスト3)

1.ザ・リッツカールトン大阪   22.4% 2.リーガロイヤルホテル    14.1% 3.大阪ヒルトン 12.1%

(料理の美味しいホテルベスト3)

1.リーガロイヤルホテル 17.4% 2.ヒルトン大阪 11.2%  3.ザ・リッツカールトン大阪 10.4%

(結婚式で利用したいホテル)

1.ザ・リッツカールトン大阪   21.3% 2.リーガロイヤルホテル 16.6% 3.帝国ホテル大阪 11.0%

 フランス料理に関してはザ・リッツカールトンの「ラ・ペ」の評価が高いのですが総合的なイメージはロイヤル、ヒルトンの後塵を拝しています。店舗のバラエティが影響していのかもしれません。東京と客層が違うので、フランス料理のシェフが憧れる「ブルジョア相手のレストラン」というのが関西においては少なくとも洋食では成立しないのかも知れません

 
                                           (2009年7月2日)

図ー大阪ホテルランキング(2005年)


(データ出所:なにわ考現学05)

■景気変動と食シーンの変化

 時代のアドレナリンと激辛ブーム

 30年間の世相と食シーンの変化を眺めていると。社会が大きく前向きに動いていてアドレナリンが沢山でている時代には、激辛ブームとか高級食品ブームとかテンションの高い食品が好まれていることが分かります。
 不況の時期には激安食品だけでなく何かまったりとしたやさしい食品が好まれているようです。

 時代は「野菜」だ

 いつか、パタゴニアのスタッフにこれからの時代のトレンドを急に聞かれたことがあります。その時に口から出まかせ、もとい直感的な洞察で答えたのが「野菜」の時代というコンセプトであります。
 
 地域の「風土」に強く味が左右される点とか、自然なうまみとか、作り手の人柄がそのまま反映される商品への注目とか、その後の大きな時代の流れは「野菜」に向かってゆっくりと確実に進んでいきました。

 いつか又ビールに昂ぶる日

 この30年間に「ビール」は大きくその位置づけを変えてきました。かつてはキリンとかアサヒとかいったメーカー名で呼ばれていたドラフトビール(「加熱処理したビール)が、生の缶ビール、ドライなどを経て一時は毎シーズン5〜6種類の新ブランドが発売されて覚えきれない状態でしたが・・・プレミアムビールのブームも景気後退で発泡酒、第3のビールの前に存在感がありません。お酒を飲まなくなった若い子達は、口当たりの良いチューハイなどへ流れていますし、道路交通法の改正で郊外でお酒を飲むことも少なくなっています。一時流行った「地ビール」も割高なのが敬遠されて下火になっています。

 お父さん達も経済的な理由と健康への配慮で焼酎へ流れてしまったので、ビールへのテンションは下がっています。

 いつかまた、夏の暑い日にいっぱい働いた後に、からからに渇いた体にビールを流し込む昂ぶりが復活する社会は来るのでしょうか。ビールを冷やして飲む習慣がなかった中国の人達は今、そんなビールを飲んでいるのかも知れません。

                                                           (2009年7月1日)

食に関する出来事推移
世相 食の動き
1975年 第2次ベビーブーム 千円ウィスキー
ミニサイズワイン
1976年 ニューファミリー ほっかほか亭1号店
1977年 自立を求める女 焼酎ブーム
マインブロイ・メルツェンビール
冷凍ピザパイ
1978年 結婚しない女
円高・舶来品ブーム
生ビール人気
1979年 第2次石油ショック
高齢化社会が議論に
ワイン、清酒にマイルドブーム
1980年 省エネブーム
冷夏
スポーツドリンク、健康食品、キリンライトビール
ファミリーレストラン
1981年 ポートピア81
カラー大型冷蔵庫カラー商品
家庭用料理ワイン、高級即席麺
1982年 健康ブーム継続 ビタミンブーム、豆乳、プルーン、1分間カップラーメン
1983年 ストレス社会 輸入ビール、天然水、和風アイスクリーム
ライトウィスキー サントリーペンギンズバー
1984年 ニューメディア
INS、キャプテン
美味しい水ブーム、缶入りウーロン茶、
1985年 金妻症候群 覆面ブランド「ピュアモルト」「ニューズビア」
1986年 男女雇用機会均等法 激辛ブーム、麦芽100%ビール、高級アイスクリーム
1987年 ハイグレード商品 1000円の即席麺、自動パン焼き機
1988年 リゾートマンション ドライビール、エスニックブーム
1989年 バブル景気 ナチュラル&ヘルシー志向
大型カップ麺、はちみつレモン、ワインなどイタリアンブーム
1990年 地球環境問題 水不足(ミネラルウォ^ター、家庭用浄水器)
1991年 バブル崩壊 無洗米、ミネラルウォーター、プレミアムアイスクリーム
1992年 不況深刻 値頃感のある商品(特盛り牛丼、もつ鍋、デカビタC)IH炊飯器
1993年 賃金ボーナス減少 食べ放題レストラン、ナタデココ、マグヌードル
生タイプカップ麺、浅漬けの素
1994年 各地で最高気温 平成米騒動(大凶作)、屋台村ブーム
輸入割安食品ブーム、PB商品、ビール
1995年 就職氷河期始まる
1996年 緩やかな景気回復 健康茶、食器洗浄機
1997年 金融不安 オーガニック食品、イタリアン食材、赤ワイン、ベルギーワッフル
1998年 景気後退
携帯の普及率5割を超える
100円ショップ、半額バーガー、
1999年 地域振興券 エスプレッソ
2000年 アウトレットモール
ユニクロ
2001年 小泉ブーム デパ地下、有名店カップ麺、缶チューハイ(氷結果汁)
2002年 道交法改正
サッカーワールドカップ
食品業界偽装
讃岐うどんブーム、ホテイチ
2003年 自由が丘スイーツフォレスト
2004年 冬ソナ 狂牛病 鳥インフルエンザ 伊右衛門 芋焼酎
2005年 第3のビール
2006年 ライブドア騒動 プレミアムビール、高級豆腐
2007年 メガマック、メガ牛丼、食品偽装
 6月
■地域物産のブランド化は東京を見てはいけない〜東京からは日本が見えないD

 WEBに対する対照的な態度

 かつて、企業に経営情報システムを導入し、サプライチェーンネットワークを完備すれば未来はバラ色だと明るく語っていたのはシステムを売り込む商売をしている人達でした。現在、WEBの可能性を明るく語るのは「本」を売りたい人達で、、WEBの現場でで商売をしている人達は、WEB2.0の可能性に冷笑的です。集合知とか、顧客とのインタラクティブな関係作りなどの理想と現実のギャップに苦しんでいる為でしょうか。「ネットのヘビーユーザーは暇人」とか、「アルファブロガーはマーケットリーダーではない」とか確かに言われてみればそうかも・・・・と思える決めつけが強くなります。

 そうはいうものの、実際の仕事で、お客様とのやりとりや情報収集、定期的な情報発信にインターネットは欠かせません。実際の商売を補完する道具としてはとても便利です。WEBに対する態度の違い、期待の違いはWEBを他の活動の一部と割り切るか、WEB上ですべてを完結させようと無謀な努力をする(させられる)かで、分かれてくるのかも知れません。


 余談ですが
 WEBは簡単な調べ物をするのには便利なのですが、少し古いことに遡ったり、今の社会では少数派に属する知見をを参照する時にはとても不便です。大きな流れの中で考えないと見えてこないことが沢山あります。現在最悪の状況にある「百貨店についてもせめて10年〜20年の流れをみて考えると、同じ失敗を何度も繰り返していることがわかります。

 地方の生産者は美味しい物を食べているか?

 「地方の生産者は美味しい物を食べている」はず・・・という事で地域の食材や、地域だけで流通している加工品を何とか発掘できないかと情報収集してきました。
 地域の特産品を食べても必ずしも美味しいものばかりではありません。料理の下手な地域も沢山存在します。
「地方の生産者は美味しい物を食べている」というのいは幻想では無いかとさえ思うようになりました。

 先日、ある人に「地域の生産者は美味しい物を食べていても自分たちでは気がついていない」のだと教えていただきました。・・・・それは確かにありそうなことです。

 気がついていない「美味しい物」「地域の価値」は他者という鏡を通じてしか見えないのでしょう。今までは大消費地であり、マスコミが集中する東京にいかに発見してもらえるかが大事なポイントだったのかもしれません。東京に地域の産品を売り込むのが知事の仕事と勘違いする人も世の中にはいます。

 地域産品のブランド化はビジネスベースには乗せにくい

 農林水産省や大手広告代理店が地域産品のブランド化や商品化に乗り出していますが、東京の市場にのせること前提にすると、量がまとまらない物が多く、安定供給に不安のあるという点で困難が多いようです。何よりもかけたコストにみあうリターンが少ないので東京から出向いて商売にするのは難しいと思います。

 まずは周辺の都道府県を巻き込んだ広域の地域圏で足元を固め、ネットで全国的に発信するというステップが有効なのではないかと考えています。

 冒頭に記述したようにいきなりWEBだけで完結させようとするとお客様の顔が見えなくなります。

 例えば、北海道小樽のチーズケーキ「ルタオ」は小樽の店舗〜催事販売〜ネット販売の強化というステップを踏んでいます。
                                             (2009年6月30日)
■「本物」と「本物らしきもの」の虚実の間(あわい)

「本当は古くさい本場パリのお菓子」

 フランスではお菓子に生クリームを使うことはあまり無いそうです。昔にパリで修行した職人さんはロールケーキに巻き込むのもバタークリームを使います。最近の日本での流行は甘みを抑えた生クリームたっぷりのロールケーキですが、本格的なフランス流を意識した職人さんは頑固にバタークリームを使います。

 そういった頑固さは一概に悪いことではないのですが、やはり選ぶとしたら美味しい生クリームのケーキを選びます。(去年の夏に滞在していたアメリカ人の高校生の女の子は甘さの少ない生クリームのケーキは全く受け付けなかったようです。オレオクッキーを油で揚げて食べているようですから、はっきりした甘みがあるのが好きなのでしょう)

流行遅れで開業当時は評判の悪かった近代建築ビル

 中之島のダイビル本館(大正14年)はいよいよ取り壊されます。ビル内の昔のオフィスビルの匂いのする品のある雰囲気とともに、外部の手の込んだ装飾物などはもう取り戻せない物なのでとても残念ですが、建築家、建築史家の業界での評価は意外に低いようです。建築当時そのスタイルはすでに「流行遅れ」で新しい物ではなかったというのがその理由です。

 その意味では大阪中央郵便局の建物(昭和14年)の評価が高いのと対照的です。陰気くさく、人気のないビルでありながら一部保存という折衷案をとられた因縁のビルですが、これから100年愛される新しいデザインのビルであって欲しいと考える素人と、正当な本物を保存すべきとする専門家のギャップはここにも見られます。

本当の本物とは

 大阪のシンボルである大阪城も、浅草のシンボルである雷門もあとから建てられたコンクリート製の「非本物」です。

 それらはかつては確かにそこにあった「何か」のシンボルとして機能し、本物でなくても愛着を持たれているのだと思います。その分野に詳しい専門家や「オタク」はトリビアルな正当性や歴史の事実にこだわることで「価値」の本質が見えていないのだと思います。

 フランスのお菓子でかつて、生クリームが何故使われなかったのか、その理由を考えればこれからのお菓子はどんな新しい価値を持つべきかわかるはずです。中央郵便局の保存が一部の専門家以外に何故拡がりを持てなっかったのか?その理由を考えれば「市民」に守られる町並みのあり方に回答がえられるはずです。

 表面にあらわれている「トレンド」の移り変わりに右顧左眄するのではなく日々「本質」をみる訓練を続けなければと自戒しながら堂島ロールをつまみます。マダムシンコのブリュレは口が曲がるほど甘いのでアメリカ人にも、うけるでしょうか。


                                                       (2009年6月29日)

■ブランドが消えていく中で、新しくブランド化されていくもの

 ブランドが消えていくと小売業が変わる

 ブランドが消えていく市場について水口健二先生は2つの分野をあげられています。

 ひとつは商品の「部品化」 料理をしない人が増えてくると、例えば醤油という商品はお弁当だったり、総菜の肉じゃがだったり、めんつゆと言う形で生活者に消費されます。同じようなことは自動車のスピーカーやタイヤ、システムキッチンのレンジやオーブン、携帯電話のカメラ、レンズなどにも現れてきています。この「需要」が伸びてくると確立したはずの商品ブランドの足場が崩れてきます。

 もう一つは折角ブランド化したのにまたもとの「その種商品」(コモデティ)に戻ってしまう場合です。
事例として、ミネラルウォーターがあげられています。「六甲の天然水」「南アルプスの天然水」「エビアン」などブランドを気にしていた物ですが、最近は確かに価格で選ぶようになってきています。最近は低価格PBが台頭しています。カップラーメンやハムソーセージといった加工食品にもその傾向はあらわれています。商品自体が選択される違いをもたなくなってくると、価格とどこで買うかという利便性だけが選択基準となってきます。

 ここでポイントとなってくるのは、「買う」という行為は楽しみか、義務的な役務かという違いです。家庭における毎日の食材や消耗品の調達と考えればそれば苦役でありできれば時間をかけずにすませたい・・・・。郊外の大型ショッピングモールのGMSやSSMは広い売り場ではあるけれど「効率化が徹底されていて」商品数が絞られ同じ商品が大量に陳列されいて選ぶ楽しさがまったくありません。 そこに並ぶのは必然的に安い価格のPBで、できればネットで注文し宅配してくれるならそれですませたい商品群です。

 新しくブランド化されていく物

 反面、ブランド化が進んでいるのが農林水産物です。農林水産省知的財産戦略本部という組織もあり、かなり強力に後押ししているようです。
 農林水産物は本来、多品種少量生産物であり、自然条件に左右され規格化になじまないものでした。高度成長期にスーパーマーケットガ台頭し、コールド・チェーン等の物流が整備されてきたなかで、産品の規格化・大量生産化が進みブランドが登場するようになったといわれます。(とよのかイチゴ、桃太郎トマト等)
 80年代頃から大量生産品・規格品との差別化として特別な生産法や、地域の特徴などを前面に出した農産物のブランド化が始まりだし、近年は「黒豚」とか「○○牛」でからさらに細分化され生産者がブランドになるところまで進んでいます。

 小売業の店頭でそのこだわりを情報発信をするとかなりうるさいので、やはりネット販売など顧客との関係が密なチャネルが中心になるのがこのブランド商品の特徴でしょう。

 ただマニアックになればなるほど一般的な生活者の中での存在は希薄になってしまいます。テレビドラマ化された「神の雫」はその細部にわたるうんちくがマニアにはヒットしてもテレビ視聴者には受け入れられないので視聴率が低迷したのだと考えています。マニアに評価される正しいもの、価値のある物を一般的に広めるには、もうひとつインターフェイスが必要です。

 インターネット上のアルファブロガーにはその役割は無理です。閉じた情報回路の中のオピニオンリーダーであっても一般生活者との接点はないからです。

 そのインターフェィスの役割はやはり顧客との顔をつきあわせた接点の人間にあると思います。

 コストダウンの為にパート化された店頭ではその役割ははたせません。

                                                 (2009年6月26日)
■「コスパ」の高い店の意味を考える

 最近増えてきた「コスパ」という評価

 情報誌などで、コスパ=コストパフォーマンスの高い店という表現が多く見られる様になってきました。グルメ関係のブログでも多用されています。先だっての不況の時は「食べ放題」とか「激安」といった特集が多かったのですが、安ければいいというものではないというニュアンスなのでしょうか。

 値段の割にお得ということは、値段の割に美味しいとか、値段の割にボリュームがあるといった意味が複合しバランスがとれているという事なのでしょう。

 値段の割に特に美味しくなかったり、値段の割にボリュームが少なかったりする店が数多くあることへの不満の裏返しなのでしょう。

 デフレの中で小売店も消費者も折り合いのつく価格帯を探しあぐねている

 グルメだけでなく、ファッション商品でもお財布の状況が厳しくなる中で、単に安ければいいのではないという意識が現れ始めていると思います。昔のように百貨店でなければとかとかこの位の価格でないと安物と思われるといった先入観はなくなっていますが、安い商品はそれなりの素材、縫製であることもよく分かっています。


 アウトレットモールが盛況なのは名の通ったブランドであれば安心、恥ずかしくないというお値打ちの保証をもとめているように思います。最近増えてきた「リユース」=中古品のショップでも有名ブランド品が売れ筋だと聞きます。

 今の時点では売上の低迷の中で小売り各社とも低価格品に一斉にシフトしていますが、少し落ち着いてきたときにコストパフォーマンスの「パフォーマンス」の部分で選別されることになります。

                                                (2009年6月25日)
■「主張する売場」は何だか小うるさい〜顧客接点での過剰発信

 書店の店頭がこざかしいPRの場になってきている

 チェーン書店の店頭がなんだか安っぽいPRの「仕掛け」の場になってきています。出版社の本のポスターやPOPはまだ理解できます。書店員さんのおすすめというPOPも好感が持てます。本や、雑誌への愛情が伝わるからです。

 本好きとして気に障るのは、特定の思想や宗教を宣伝する手段として刊行されている「雑誌」や「本」が長期にわたって平積みされそのPOPが前面でたままになっていることです。雑誌などはバックナンバーを含めて平積みになっているので明らかに何らかの場所代が支払われている事が伺えます。(別に政治思想や宗教に文句をつける気はさらさらないのですが)
 〜(淀屋橋O内のB堂で観察した事例です。微妙に偏りのある品揃えはこの店のポリシーなのかもしれません。まあ、大手のJ堂でもその傾向はみられますが・・・)

 PR会社のたてたPR戦略(笑)があからさまに透けて見えていてマクドナルドの行列騒ぎと同じようなあざとさを感じます。

 最近、雑誌は昔の少年まんが雑誌のような、おまけ付きの雑誌が増えていたり、著者の顔写真がやたら目立つ書籍がベストセラー上位をしめていて店頭がやたらにぎやかなのですが・・・・はっきりいいて品がなくて落ち着きません。

 書店は平積みする本のセレクトで控えめに主張をしてもらいたいものです。そうでなければ、いっそヴィレッジバンガードのようにサブカルチャーの本と雑貨がミックスされた主張が強すぎる店のほうが潔いでしょう。

 あざといPRの場で小金を稼いでいると思うと利用者としては馬鹿にされているような気がします。

 スーパー店頭での情報提供の進化は小うるさいだけ

 食品の安全安心への保証、生産者のこだわりの訴求などを狙って、店頭でのPOPでの生産者紹介は今や目新しい手法ではなくなっています。小型液晶テレビでの映像での紹介や、バーコードを読み取ると生産履歴が表示されるなど先端の部分はどんどん先に進化しています。

  http://www.blwisdom.com/btrend/01/ へのリンク
 
 対面販売の店舗では販売員が口頭で説明できますが、セルフサービスのチェーン店では店頭でできるだけ多くの情報を伝えようという意図なのかも知れません。ただ、店頭でそれを語られても小うるさいだけです。

 安心・安全は当たり前です。企業としてのメッセージを伝える媒体と、店頭で生活者が商品選択のために欲しい情報を提供する媒体は違います。チェーンストアで買う普段の買い物で、例えば牛肉を選ぶ際「近江牛」であれ「山形牛」であれ美味しい肉が選びたいので、「肉のうんちく」とか「生産者の顔」などは関係ない情報なのです。

 ましてや、店頭に液晶ビジョンをおかれるとメーカーのコマーシャル映像が大量に流れるブレードランナー状態になることは目に見えています。


 私もPRの仕事をしますから送り手の思考回路はわかりますが、相手に求められていない情報を押しつけるのはPRの本道ではないでしょう。

                                             (2009年6月24日)


 その後、本屋の店頭はますます「荒野」と化し、「下劣なヘイトスピーチ本」が並べられたり、「本屋大賞」というプロモーションの場になったり、POPのぼりが立ち並ぶ下品な「楽天市場化」が進んでいます。・・・・・多分、書店員もそれでは嫌だと思っているんでしょうね・・・・このあいだB堂で実施していた講談社学術文庫フェアは良かったですよ・・・・・。(2014年6月)
■縮む市場と拡大する市場〜ボリュームではかれない市場規模

 エンディング市場は成長産業ではない

 高齢社会が進む中で「葬儀」関連産業は安定して需要が発生し、お金を持った高齢者が多い「成長産業」だと思われてきました。(不謹慎な表現ではありますが、人の死に関わる「エンディング」を事業機会としか考えない人は世の中に多く存在します)

 この市場に対する錯覚として、「高齢者」が増加しているということは「お亡くなりにならないで」生きて生活しているという事実です。今までなら60代〜70代で無くなっておられた方が80代から90代まで元気に過ごされることで「ビジネスチャンス」(不謹慎)が先送りされているという事があげられます。〜80歳の方の余命が20年といわれても不思議ではないですよね

 その事の影響は「葬儀」にも現れています。リタイヤして20年以上たった人の葬儀は身内だけで行う「家族葬」が増えており葬儀の規模の縮小化が話題になっていました。最近では葬儀を行わず病院から火葬場へ直行する「直葬」(ちょくそう)が東京23区内では10〜35%を占めるといわれています。
 今までの葬儀が「死者の魂を鎮め、祟らないようにする」とおいう宗教的な儀礼の範疇を超えて華美に流れすぎていたいたのかもしれませんが、「粗大ゴミ」の処理のような扱いもいかがなものかと思います。高齢者の生活不安が深刻な事もあり「葬儀」関連市場の縮小は避けられないものであるようです。

 子供市場は拡大市場

 対照的に「ベビー・子供」市場は少子化が進む中で拡大しています。6ポケットといわれて、両親、両親それぞれの両親のお財布から子供にお金が使われるといわれていましたが、最近では「ひいおばああちゃん」「ひいおじいちゃん」もお元気ですし(高齢化社会)、未婚のおじさん、おばさんもお金を使ってくれるので12ポケットぐらいはある状況です。

 少子化+高齢化+未婚者の増加が生み出した市場拡大といえましょう。

 今そこにある貧困ビジネス

 誰もが、何かのきっかけで滑り台を滑り落ちるように「貧困」にからめとられる社会になってしまいました。少なくとも多くの人がそのような不安の中で暮らしています。

 まじめに働いても年収200万円に満たない下流層を対象にした貧困ビジネスが拡大しています。

 コスパの高い「メガマック」・・・・「メガマック」は価格で割ったカロリーが高いのでコスパの良い食材として愛用されているそうです。確かにお金があれば単品メニューをがっつり食べるより、いろんな種類の物を食べたいですよね。


 180円のスニーカーと180円のポロシャツ・・・・靴のヒラキの定番アイテムです。中国の山奥で生産するのが秘訣とか・・・・。ユニクロは高級ブランドになってきました。

 携帯無料ゲーム・・・・無料サイトで集められた名簿が商売になります

 ファッション消費0円・・・おしゃれ好きのファッションスクール学生でさえ!!
 繊研新聞社が全国のファッションスクール学生2、023人を対象にした「ファション意識調査」を発表しています。1ヶ月のファッション消費額を0円と回答した人が4%。1万円未満の合計は25%弱となっています。5万円以上使う学生は5.2%。おしゃれ好きのファッションスクール生でさえこの数字ですから服が売れないはずです。福の購入先としては古着屋、ネットオークション、フリーマケットが目立っているそうです。

 賢い選択、合理的な選択をしてよりシンプルで無駄を省いた生活を選択していたつもりが、いつの間にかそれしか選べなくなっている事が多くなってきています。お金を使わなくても「豊かな暮らし」は実現できるのだと思いますが、お金がないから「ジャンクフードしか食えない」という貧しさはやるせないものがあります。
                                                          (2009年6月23日)
■大規模マンションの商業開発〜立地にあったMD、販促の開発を

 千里中央の商業の変動

 大阪北摂の副都心である千里中央は永い間新しい店舗の出店が無く無風状態の中にありました。2008年のヤマダ電機「LABI千里(売上目標300億円)の開業を契機にいくつかの動きが見られます。

 現在建設中の「ザタワー千里」の下層階に阪急オアシスが7月に開店するようです。規模等は不明ですが、マンション住民を対象にした小規模な店舗になるようです。昨年、駅から5分の立地のDグラフォートに開業した大丸ピーコックも当初はピーコックの最新のMDで総菜や加工品などでも質の高い品揃えをおこなっていたのですが、最近は徐々に普通の品揃えに変わってきました。「高質スーパー」をうたう阪急オアシスがどのような店をつくるのか、そしてどれだけ続くのか注目されます。

 千里中央から南へ5分ほどの上新田のパークヒルズと呼ばれるマンション群の「スーパーノダヤ」が撤退しその跡が埋まっていません。高質な品揃えを続けるのも大変ですが、普通の品揃えになると千里中央の既存の集積に勝てないというジレンマがあります。

 マンション開発に付帯する食品小売業のありかた

 ザ北浜タワーの食品スーパー「フレスト」も開業してまだ結果は出ていませんが、近隣住民の声では少し残念、離れていても南森町の「コーヨー」を利用するという評価も聞かれます。レベルとしては「パントリー」が欲しかったということです。

 大規模マンション開発には商業やサービスなどの付帯施設が整備されることが多くなっています。特に、都心部では生活のインフラが失われていることも多いので、商業は必須となります。

 住民の利便性に為にはコンビニエンスストアより少し大きな施設が望ましいのですが住民の利用だけに頼っていてはリスクの低いおもしろみの少ない店舗になってしまいます。周辺部の人を引きつけるMDやサービスを組み込んでいく必要があります。そんな立地が生まれてきたのは最近なので商業者にそのノウハウがまだまだ少ないのかもしれません。

                                                  (2009年6月22日)
■集客装置・文化機能と街の活性化について@〜文化は商売になるか?

 心斎橋は文化不毛の地?

 心斎橋そごうの閉鎖に伴い、心斎橋劇場も幕を閉じると言われています。容積率アップの為に設置された劇場と陰口をたたかれながらも、意欲的な公演を続けていたのですが、地元での盛り上がりに欠けていたせいでしょうか?いまひとつ注目されずに終わってしまった気がします。

 心斎橋にはかつてパルコにイベントスペースがありイッセー尾形の公演もされていました。どういうわけかホール、映画館、大型書店が根付かない地域です。アメリカ村ビッグステップや道頓堀が近く、ホール・劇場の利用がそちらへ流れてしまう所為でしょうか。繁華街とビジネス街のエッジで人通りが多くても客層が定められない地域です。

 いずれゆっくり検証いたしますが、「心斎橋筋商店街」が「一見の客から現金を吸い上げる」事にしか興味のない商売人が集まる街になってしまった事と深い関係があると思います。・・・・・これから、大丸はここで孤軍奮闘しなければなりません。

 問題はビジネスの時間軸だと思います。儲けなくてもいいと言う話はないのですが長期的なレンジで利益をあげるという視点がどこかに組み込まれる必要があります。

 明暗分けるお笑いの殿堂(週刊大阪日日新聞6/20)

 大阪日日新聞と聞くと、かつて大阪梅田の地下街の壁にはりだされた地元夕刊紙の競合をなつかしく思い出します。いくつかの夕刊紙が競合して見出しの強烈さではりあっていました。今、「大阪日日新聞」は日本一安い日刊の朝刊紙と、無料配布される週刊新聞の形で発行されています。

 6月20日付の紙面で「明暗分けるお笑いの殿堂」として京橋の「京橋花月」と天神橋の「天満天神繁昌亭」の事例が取り上げられていました。
 座席数500,年間30万人の集客を目標としていた「京橋花月」はこれまでのところ予想を下回る集客数でかつ、花月の客は地元には金を落とさないと言われています。
 上方落語協会が自ら募金活動を行って建設した「天満天神繁昌亭」は2006年9月のオープン以来44万3901人の入場者を集めており。土日の人出が1.5倍になったといわれています。(3年間で50万人というのは京橋花月の目標と比べて人数的には多いというわけでもありませんが)会場1周年の経済効果は116億円と試算されています。

 もともと天神橋商店街は会長の土居年樹(たまいち土居陶器店社長)氏を先頭に空き店舗対策、地域でのイベントに熱心な地域でありまとまりも良かったことがプラスに働いたのでしょう。

 紙面では地域の劇場に対する思い入れの温度差がこの差を生んでいるとしています。


 地域に根を持たない「集客装置」などありえない

 少し時間をかけて後日、文化機能と街の活性化についてまとめておきたいと思います。 
京都駅近くの水族館計画についても、頭の中を整理して妥当性を論じたいと思います。「フェスティバルゲート計画」を聞いたときのような「?」が頭に浮かびます。繁華街では昔からあのようなアミューズメントの仕掛けを含んだビルはあったのですが、飽きられたときに改装が大変なのでたいがい永くは続きません。

                                                       (2009年6月19日)
■沈み行く「黒船たち」〜景気後退下の外資系小売業のこれから

 エディバウアーの破産法申請

 今朝のニュース速報でアメリカのエディバウアー社の破産法申請が報道されていました。2006年のアメリカのタワーレコードの店舗閉鎖でも日本法人は別会社なので事業を継続しているように、直ぐに店舗が無くなってしまうわけではありません。
 ただ、先日のオフィスデポの店舗の一斉閉鎖の例もありますし、カルフールのイオンへの売却などの例もあります。かつて外資の進出が日本のの小売業界を壊滅的な状況に追い込むと思われていたことが、まるで嘘のようです。

 赤字の続く大型店

 日本の小売業も決して安泰ではないのですが、最もおそれられた「ウォルマート」も7期連続で最終赤字ですし、進出当時は「黒船」の象徴ともいわれた「トイザらス」も業績は低迷しています。
 本国の事業も不振が続く中、なかなか収益の上がらない日本市場よりインドや中国といった伸び盛りの国に重点を移しているようです。

 参入障壁はなんだったのか?

 日本の市場への参入障壁は閉鎖的な流通構造、旧弊な取引慣行だといわれていました。はたしてそうだったのかと思います。日本の消費者は世界一品質にうるさいともいわれます。

 外資系企業のスタイルはマニュアル遵守です。一度考え尽くして決めたマニュアルを正確に実行する。現場で余計なことを考えて時間を浪費しない・・・・かつて「流通革命」を標榜した日本のチェーンストアはその教えを忠実に守ったから成功したと語るグル(尊士)もおられます。

 一方、小売業、外食産業の経営者がよく嘆かれるのは「現場のマネージャー、スタッフ」が考えて仕事をしないということです。もっと考えて仕事をすることをもとめています。

 考えてみれば日本のあらゆる現場(建築現場、新聞販売店の毎日の配達、工場)はトラブルに際して現場が何とか帳尻をあわしてなりたっていたように思います。「現場での工夫」「現場での責任感」が日本社会の特徴なのだと思います。

 グローバルスタンダードにあわせて決められた仕事だけをこなす、労働力のパーツ化の蹉跌がいわゆる「派遣問題」をうんだのでしょう。社会コストを含めると「派遣」や「外国人労働者」を増やすことは」短期的に企業のコストを低減させても社会コストの負担として企業及び、従業員に跳ね返ってくるというつけを支払わされているのが今の姿なのかも知れません。

 タイトルにうたっっている「外資系小売業」のこれらについては稿をあらためます。

 バブルの時にはサックスフィススアベニューを日本に持ってくるとか、Xホテルを日本に持ってくるとかのお話が沢山ありましたが、今となっては・・・・。

                                                        (2009年6月18日)
■シニアと洋生菓子市場

 低迷する店舗は高齢者層が増加している


 味覚に関しては若者層や女性の新しい物への柔軟さに比較して男性、高齢者層の保守性が際だっています。
とはいえ男性に関しては今までカミングアウトしてこなかった「甘党」が堂々と自分の嗜好を主張できるほどになっています。コンビニでのスイーツの売上げは7割方男性が占めているともいわれています。

 さて、高齢者層ではどうでしょう。洋生菓子を好んで食べる層は確かに増えては来ていますが、幼少時の味覚体験からうまれた好みは時代に合わないものなのかもしれません。「高齢者が増えた店」の売上げは横ばい、減少している店が多いようです。

 団塊世代が高齢者になった現在でもこの傾向は変わらないと思います。

 味覚の保守性は「お米」や「野菜」「魚」などの昔の時を覚えているという面では、本物の味を求める若い世代にも影響力があると思います。ただし、嗜好品の好みは世代間のズレはなかなか埋まらないのかも知れません。         
                                                       (2009年6月17日)
図ー洋生菓子店の売上げの伸び高別購入者層

(1998年 需要動向調査)
■コモデティ商品のブランディングの課題〜お米をプロデュース?

 コモディティ商品(日用品などの必需品でメーカーの違いではなく価格だけで選択されるようになった商品)の増加

 この経済環境の中、流通各社の低価格PBの強化などにより、ブランドとして確立していた商品がどんどんコモディティ商品になってきています。インスタントラーメン、マヨネーズなどの調味料、ジーンズ、機能性肌着、洗剤等々。

 また、高級ファッションブランドもアウトレットモールでの販売額が増えるにつれ、本来の在庫処理機能ではなく、アウトレット用の低価格商品の販売にウェートがかかるようになり本来のブランド価値が薄まってきています。

 かつてはブランドは「資産」ともいわれていました。「強いブランドは破壊的な価格競争に巻き込まれずにすむ唯一の手段だ」と説明している学者もいます。「確立されたブランドは安泰ではない」と喝破したのは昨年なくなった水口健二先生です。

 ブランドは認知とイメージ?

 ブランドとは認知とイメージであるというとらえ方が従来の主流です。単品の商品の認知率をあげて、イメージを徹底すればブランドの価値があがるという「商品単品」を中心にした発想です。

 「ブランドは選択のてがかり、信頼の根拠である」という水口先生の定義に従うと、ブランド価値は商品単品だけではなくもっと幅広い「接点」が形成するものだという視点がひらけます。

 「お米をプロデュース」

 私たちのもっとも身近な商品。「お米」を事例に考えてみましょう。お米のブランドとして「コシヒカリ」「ササニシキ」が出回ったときに始めてお米に「ブランド」が出現しました。「美味しいご飯を食べたい時、少し贅沢してコシヒカリ」を買ってみようという選択の手がかり、信頼の根拠がうまれたわけです。

 今、店頭にならんでいる商品はほとんど「コシヒカリ」という状態になると、ブランドが選択基準にならなくなってしまいます。さらに「新潟産のコシヒカリ」「新潟県魚沼産のコシヒカリ」とブランドの説明がながくなってきています。

 最先端の部分では新潟県の魚沼のこの田んぼで、カリスマ生産者A氏がこだわりの特別な農法で生産した2008年の当たり年のお米で、1kg1万円・・・・といったビンテージワインのような世界に入っています。(ここまで極端でなくても、こだわり農法のお米は美味しいのですが)・・・・・・・これは日常の生活用品とは違う世界のビジネスです。

 「単品の商品」だけでなく「接点」が形成するブランド価値?

 ソリューション型の物販店、カテゴリーを超える品揃えとサービスの店での情報発信
 お客様は毎日の食卓を豊かな物にしたいと考えているので「コシヒカリ」を求めているわけではありません。日本の家庭の食卓が「壊れかけている」という衝撃的なレポートもありました。最近ではノッケメシということでご飯の上におかずになる物をのせただけの食事も話題になっています。
 一方で、伝統的な食生活への回帰もまちがいなくあります。流行にも対応しながら、良い食事習慣を創り上げる事が、お米の生産者、流通業者の使命であるかも知れません。ご飯のかかちでの提供、ABCクッキングスタジオなど料理に関心のある人が集まる場での商品供給、高齢者向けの冷凍食品通販での提供等々、今までとは違ったチャネルで接点を広げていく事が必要です。

 情報接点でのブランド化

 お米の選択基準について、私たちはほとんど情報を持っていません。食に関心がある人が調べてみても実に沢山の生産者が自分のところのやり方が一番だと主張しています。実際に食べ比べて自分で選ぶしかないのでしょうが、料理によっても適切な品種が違うでしょうし、保存方法によっても味がまった全然違います。

 今、世の中にあるお米の情報は「品種」の特徴であったり「生産方法」の特徴と言った生産者がわの伝えたいことばかりです。あきらかにずれがあります。

 生活者が欲しい情報をきちんと伝えるポータルサイトになれば、生産者、流通業者としてのブランド確立への道が開けると考えます。

 「通念への反論」水口健二著 プレジデント社を基本テキストに、最近急速に進んでいるブランドの行きすぎたコモディティ化 への対策を考えてみました。                                  (2009年6月16日)
■大阪の「下町」といったらどこ?

 山の手と下町を大阪にあてはめると

 山の手と下町と言った対比で都市を語ることができるのは「東京」独特の分類なのだと思います。
 土地の高低差によって区分する分類する基準に従えば、神戸でも、京都でも大阪でもより高い場所に裕福な人が居住し、街の雰囲気も落ち着いたイメージがあるという法則性があります。
 東京の人に京阪神の街の構造や性格を説明するときに「山の手」「下町」に無理矢理でも例えると伝わりやすい面もあります。

 大阪市内では、難波の宮や大阪城のある上町台地から阿倍野、帝塚山あたりが東京でいう「山の手」に近いのかも知れません。ただ、近代になって工業都市化した大阪の生活環境の悪化に伴い、お金持ちはさっさと「芦屋」や堺の「浜寺」に住宅を移してしまったので大阪市内の「山の手」は「高級住宅地」としての面影は薄れています。

 辞書で調べると「下町」の定義は次のようになされています。

 都市の市街地のうち、低地にある地区。主に商工業者などが多く住んでいる町。東京では東京湾側に近い下谷・浅草・神  田・日本橋・深川などの地域をいう」ただし、現在のイメージでは千葉県に隣接する葛飾区の柴又や亀有も下町に含まれ、昭和35年に新設されたコンクリートづくりの「浅草雷門」が「下町」のシンボルになっていますから。今の時代に即した「下町」の定義が必要なのかも知れません。
 懐かしく人情の温かい街という「幻想的な印象」に強く支配されています。善悪2元論で語られるときに山の手は偽善で下町は善となります。何故このようなイメージが形成されてきたのでしょうか?

 ダウンタウンと下町

 英語のダウンタウンは「都市の商業地」「繁華街」を意味しています。土地の高低差は関係なく、地理上の位置関係で「ダウン」(下ル)という言葉が入っているため、よく混同されるようです。
 浅草は雷門周辺は繁華街であり、「つくられた観光地」ではありますが、少し離れると「太鼓屋」さんがあったり、地場産業の職人さんや地域住民の生活の場が残っています。
 大阪で対比されるのは「ジャリンコちえ」のイメージの強い、通天閣周辺の新世界から天下茶屋界隈でしょうか。なんば千日前界隈は大衆的な繁華街ではあっても住んでいる人はいないですし、生活文化も残っていません。
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 商業と工業、住宅が混在し、古くからの住民が今でも居住し、生活の文化も残っている。そいて「かつて賑やかだった商業地」(そして遊郭のあとも)を抱えているというポイントで東京の下町に似たエリアを探すなら、阪神なんば線の沿線なのかも知れません。昔は西の心斎橋ともいわれた九条商店街。市電やガス会社、紡績工場などの近代大阪発祥の地の集積など・・・・尼崎まで伸びている沿線は、東京の下町の一部と似ているかも知れません。尼崎出身の漫才師も意識してか「ダウンタウン」というコンビ名をつけていますね。

 無理にこじつける必要はないのでしょうが、関東の人に土地の特性をご説明しているうちに「似ているところ」と「違っているところ」を考え始めるようになりました。何故違う形で発達したか?地政学や社会組織、産業構造などの相関が見えてくれば、将来の街の発展の方向性が見えてきそうです。

                                                         (2009年6月15日)

 今人気沸騰の万城目先生の「プリンセストヨトミ」の舞台「空堀商店街」は東京で言うところの「下町」のイメージに近いですね。福島とか中崎町はちょっと違うような気がします。阿倍野区昭和町とか松虫あたりでしょうか。東住吉区駒川商店街は・・・・?  

 東京では物価の安い足立区とかを「新下町」と呼ぶらしいです。大阪では西成区、堺市、岸和田市だとか・・・。何か違うような気がしますが。


■経営破綻の教訓を活かす〜失敗にこそ未来への糸口がある

 大阪市第3セクター経営破綻の教訓

 誰もいまさら触れたくはないでしょうが、過去の失敗についてきちんと精査して次の計画に活かさないと、羮に懲りて膾を吹いたり、性懲りもなく同じ失敗を繰り返す事では次の世代への責任も」果たせません。
 これらの計画の一部には深く関わってましたし、時代の雰囲気というのもありました。誰かを責めるための検証ではなく、よりよい計画をつくるために振り返っておく必要があると思います。

 アジア太平洋トレードセンター(ATC)と大阪ワールドトレードセンター(WTC)の破綻について大阪市立大学のワークショップで取り上げられていますので、それをベースにこれからの課題をまとめていきたいと思います。
(
(大阪市立大学創造都市研究科hp 立命館大学 森裕之氏のワークショップより)
http://www.gscc-upp.jp/2004Japanese/20041105.doc へのリンク

 ATCの設立経緯
 (3セクとなった理由)
 ・ATC事業は「国際物流拠点」「アメニティゾーン(集客機能)」の構築を目指す。この分野の民間の営業・経営上の
  専門的ノウハウを活かす。
 ・世界の中小企業が大阪を舞台とするビジネスチャンスを拡大することで大阪経済の国際化・活性化に資する。その為
  公共セクターとして関わる。

 (失敗の原因)
・バブル崩壊による景気失速
・公共交通アクセスの整備の遅れによる低調なテナント入居
・「会員制の卸売りマート」事業の見込み違い。(バイヤーを集めきれなかった)方針転換で小売り導入
 「卸売り」機能自体が転換点にあった・・・・
・資本金に比べて多額の借り入れを行って事業資金を調達した結果、収益低下の中で利子負担が経営を悪化させる悪循環
 を呼んだ事が最大の理由。

 私は中核となる「会員制卸売りマート」事業という新しい形態のビジネスについて、コンセプト及び事業計画のフィジビリティスタディが十分でなかったのだと思います。
 卸売り機能は役割は変わってもまだその社会的機能は必要とされています。新しい役割が描き出せれば、この立地で良かったのか、この建物で良かったのか、必要なソフトは何なのか仕込んでおくことが出来たはずです。

 梅田北ヤード計画についてのチェックポイント

 今現在の動きはあまり詳しく発表されていません。先日、事業期間が延びたので借入金を増やすと言う記事をみて少し心配になってきました。そうそうたる民間デベロッパーが集まったプロジェクトですが、核になるコンセプトをもう少し詰める必要があります。ATCは3セクだから、お役人が入ったから失敗したとは思っていません。最近の風潮で「官から民へ」が正しいと思われていますが、役人でも民間人でも優秀な人は優秀ですし、そうでない人はそうでないというのは当たり前の事実です。

 問題は組織が寄り合い世帯になり大きくなると、あまり波風をたてたくないという空気が組織を覆うことです。

 「ナレッジキャピタル」について私はまだよく分かりません。(恥ずかしながらついこないだまで、知識集約型産業へ投資する投資会社だと思っていました)
 
・どんな機能を集約したどんな組織ですか
・似たような機能は」どこにありますか、そこと違うのはどの点ですか
・何故、この立地が最適と考えますか
・シナジー効果はどの業種のどんな事業にあらわれますか
・見込める収益の最小金額と最大金額はどのくらいの幅がありますか

・投資どれくらいの期間で回収しますか
・今入居を表明している企業の将来性をどう評価しますか

・鉄道や環境整備のインフラは誰がどのように負担しますか

 箱物開発は不要だとは思いません。ただし、箱物にかかる経費以上にソフト開発や都市機能のメンテナンスに
お金は必要です。関西のプロジェクトに対して「国」は助けてくれません。空港やオリンピック誘致の大阪や名古屋への対応と首都圏の対応の違いは身にしみているはずです。
 地方分権を逆手にとって自助努力を求められますよ。

 大阪だけでなく関西、地方復権の試金石となる事業なのでぜひとも成功してもらいたいと願います。計画に関してタブーのない議論が必要です。                         (2009年6月12日)

■街ナカ店舗に求められる日常性と回遊性

 ザ北浜タワー商業施設は「フレスコ」

 北浜の三越跡地に建設されているタワーマンションの低層部商業施設は、食品スーパーの「フレスコ」に決まり来週オープンするようです。当初、京阪百貨店や阪急百貨店の出店がとりざたされていましたが、最終的にコナミのスポーツクラブと食品スーパーに落ち着いたというところでしょうか。
 大阪市内都心部では先日、松屋町に「スーパーライフ」がオープンしたように、タワーマンションなどで都心回帰が進む中で食品スーパーの新規出店が目立ちます。

 都心で犬を散歩させている方の姿が多く見られるように、都心部で夜間人口が増加している実感はあります。本町や淀屋橋界隈のビジネス街でも個人営業の飲食店、パン洋菓子店などは多く見られるようになっています。食品スーパーももう少し都心よりに出店する店も増えてくるでしょう。
 淀屋橋オドナの「人の出入り」を見る限りファッション関係の店舗や、価格帯の高いチェーン展開の飲食店は苦戦しているように見受けられます。今の経済環境が厳しいのと、少し日常性からずれているのかもしれません。書店「文教堂」は店舗の形状も不規則で気の毒な側面があります。

 都心の変化はまだこれから

 ビジネス街に居住者も増えて夜の人通りは幾分増加したように思います。
 ただし、休日などに外からの人が吸引できているかと言えばまだまだです。日曜日は閉めている飲食店も多いです。うつぼ公園の整備がすすんだように、中之島公園が水都2009がらみで整備されれば、休日の人通りはまだ増えます。

 個別店舗の吸引力だのみから脱皮し、エリアとしての回遊の楽しみができればいいのですが。   (2009年6月11日)

■不況下で注目される「リユース事業」が需要を創造する

 「リユース市場」は3,400億円規模

 「リサイクル」という言葉は中古品の流通にも使用されていますが、正確には「再資源化」を意味する言葉で、中古品の流通は正確には「リユース」と呼ばれています。自動車、自転車、本、骨董品では中古市場は既に確立していますが、それ以外の生活用品でも中古市場が注目されています。既に市場の確立している自動車などの4品目を除いたリユース市場は2007年度には年間3,400億円といわれています。(経済産業省「商業統計」)
 2002年度に比べて60%も伸びています。

 「ハードオフ」 総合リユースショップ  年間売上げ 418億円  613店舗

 http://www.hardoff.co.jp/index.html へのリンク

 「コメ兵」  ブランド品リユース   年間売上げ 221億円  9店舗

http://www.komehyo.co.jp/ へのリンク
 
その他カー用品、ゴルフ用品のリユース業者、8社が「日本リユース業協会」をこの4月に設立しています。今後、業界共通の査定資格の設定や、行政が発行する事業者免許の創設などを検討していくそうです。

 環境意識、もったいない意識の高まり、若い層を中心に「中古品」への抵抗感が薄らいでいること、ゴミの処分費用負担などの要因に加えてこの不況下での節約志向も市場拡大を後押しする要因になっています。

 家庭の中古衣料をリユース販売する古着店への注目高まる

 今までの「古着屋」は海外の中古品を輸入し、個性が強くお客さんを選んでいるところがありました。最近は家庭内の普通の中古品を買い取り、販売しているお店が伸びてきています。
 「ブックオフ」の子会社が運営している古着屋「ビンゴ」やトレージャーファクトリーの中古衣料雑貨専門「トレージャーファクトリースタイル」など、商品は数百円からブランド品では10万円と極端に安いわけではない。
 家庭内のたんす在庫を「お金に換えられれば」「他人に活用して欲しい」というニーズが急増しているとか。

 買取条件は「状態の良さ」「デザイン」「丈」が基本で「ブランド」は関係ないそうです。何か、ブックオフの本の扱いに似ていますね。

 百貨店などでも「靴の下取りセール」「スーツの下取りセール」などの販売促進策が効果を上げています。これらのリユースショップを店舗やSCに導入すると家庭内の在庫が整理されて、新しい商品の販売につながることでしょう。

                                                      (2009年6月10日)
■価格を抑えて収益を上げる「産直市場」の可能性と百貨店の経営形態の進化

 ローコストの店舗に産地直送の生鮮食料品を集めた「産直市場よってって」(和歌山)

 http://www.yottette.jp/ へのリンク

 粗利は低い物の販売管理費を抑えて高い収益をあげているのが、和歌山をベースに店舗展開している「産直市場よってって」です。売場面積150坪で地元産の青果を中心に鮮魚、精肉、日配、グロサリー、弁当、総菜、パン、生花を扱っています。集中レジで精算しますから基本的に小型スーパーと変わらないイメージがあります。
 青果の価格は市価の2〜3割引ですが、低価格商品ばかりではなく産地直送の価値を訴求している面があります。

 月商4,000〜5,000万円。粗利益率は17.5%ですが、販売管理費は10.4%におさえられており営業利益率は7.1%確保しています。(ちなみにイトーヨカー堂の食品の祖利益率は2割程度、連結では営業利益率数%ですが本体だけでは1%を切っていますいます)http://www.otsu-international.com/contents_setthement_02.html へのリンク

 社員1〜2人とパート5〜6人で回せるのは、商品の搬入、値付け、品だしまでを生産者が自ら行っているからです。また初期投資を7,000万円と低く抑えていることも利益をあげるい要因です。

 生産者は店舗への委託手数料15〜15.5%支払っても、JAに出荷するより手どり収入が3〜4倍増えると言います。

 消費者にとっても、生産者にとってもメリットのある仕組みで、今後FC展開を拡大していくということです。
(販売革新2009年5月号の記事をベースにしています)

 流通業は不動産業と融合するのか?〜小売業のオペレーションと所有、経営の分業化がすすむ

 「産直市場よってって」の運営会社 株式会社プラスはある意味でデベロッパーといえるのでしょうy、物流の共同化や売れ行きのいい生産者のスペースを拡大する調整など全体のバランスの調整を行うが毎日の運営の多くの部分は出店する生産者が行います。

 前述のイトーヨカ堂もグループのコンビニはFC収入で営業利益率は10%を超えています。イオングループも本体よりもイオンモールの利益で支えられていることは周知の通りです。

 百貨店でも島屋グループは東神開発によるデベロッパー収入を2本目の柱としていますし、昨日論じた「大丸」の売場も一部はテナント的な性格が強まります。阪急阪神グループでも今後「阪急商業開発」」の役割が高まっていくはずです。

 これからの百貨店は「ブランディング」「MD」「経営」機能に特化し、日々のオペレーションは「元気のいい新しいテナント」と「百貨店としての売り方を継承するプロ販売員によるプロパー売場の運営事業体」に委ねられるようになっていくでしょう。
 投資に関しては短期のリターンを求めるファンドではなく、長期的に街の価値をあげることで利益を得る地域あるいは、長期的なリターンを求める政府系ファンドが出資するという形になると思います。今のシティホテルがちょうどそのような経営形態です。

 百貨店の内部の人からは「うちにそんなノウハウがあるのか?」と謙虚な疑問があがってくると思いますが、実は気がついていないだけで本当は「あるのですよ」。

                                                           (2009年6月9日)
■様変わりする梅田の変化を勝手に予測する-2

 「口あんぐり」の梅田北ヤード〜空想から科学への道程

 「梅田北ヤード」には関西経済の命運がかかっています。しかし「大阪をアジアの首都に」とか「東京を凌駕する知的創造拠点へ」とかいった「高い」目標は掲げられても、具体的な道程はまだ見えていません。
 都心に近く、交通の要所にある立地ですから、細切れの開発になってもつまらないし、高い土地価格に見合った良い機能が集約されて、素晴らしい街になること」を願ってやみません・・・・ただ、あまり完成を急いで多くの借金を抱えると還って、いい街の形成にマイナスになると思います。ぼちぼちやったらええのではないでしょうか。

 さて、現在予測される商業集客機能ですが、最悪のパターンでは「新宿西口」とか「汐留」「OBP〜大阪ビジネスパーク」のパターンでなると思います。大阪駅に近い、」ごく一部の地域を除いて通常の商業施設では出店に二の足を踏みます。
 オフィス就業者向けの利便施設が中心になるでしょう。堂島から淀屋橋あたりの商業施設、特に物販は検討しているとはいえ、爆発的に成功しているわけではないので、出店者は集まりにくいと思います。「なんばパークス」等のように自然と建物を融合させた環境作りがまち街全体でできれば集客機能も強化されますが、おそらく、今の経済状況の中で「効率的」な建築物を考えると集客施設としては魅力の無いものになるでしょう。

 梅田北ヤードはナレッジキャピタルとして都心に近い場所あることで、技術者やアジアの情報拠点となる優位性を持とうとしているのですから、多くの人が自然に集まるような環境、仕組み作りが生命線だと思います。

 そうそうたる事業者が集まって計画を検討しています。不動産事業の今までの経験則や常識を一旦捨てて、新しいビジネスモデルをつくる・・・・というのが「裏のテーマ」かもしれません。

 百貨店は不動産事業か?

 大丸は心斎橋北館の駅ビル並みの取引条件でブランドを入れるようにされたようです。通常、消化仕入れで百貨店の値入率=取り分は35〜40%です。(結構取りますね)駅ビルでは15〜20%ですから新しいブランドや中小のメーカーでは百貨店には出店できません。

 大丸はこの何年かコスト削減で実績をあげてきています。奥田さんのメルボルン店での経験が活かされて、札幌出店の成功要因もローコスト経営のノウハウによるものです。

 大丸単体の祖利益率は26%です。戦略的に強化する部分であれば家賃換算で駅ビルなみに設定しても何とか利益はでます。(心斎橋店では北館開業でも人員は増やさないことが発表されています)
売上仕入れをベースとしながらテナント契約に近いものだそうです。

 梅田大丸の増床に当たっても同じような取引条件が導入されることと思われます。

 島屋の今期決算では本体の利益減少を、子会社の東神開発の利益が支えたといわれています。二子玉川ショッピングセンターなどショッピングセンター運営に実績のある東神開発はこれからの経営の2本目の柱となるそうです。

 それぞれの事情があって、いくつかの3セクのショッピングセンターの運営から百貨店からの出向者がいなくなりました。その後、売上が一段と減少しているという話を聞くと、やはりショッピングセンターの運営には現場の経験者が必要なのだと思います。

 次に来る「駅ビル」の試練

 梅田の将来を考えたときに、百貨店が大丸に見られるような取引条件の改革を進めていくと「テナント企業」は百貨店への出店を選択する可能性が高くなります。
 百貨店も多くはターミナル立地ですから立地での優位性は同じですから、「プロ」を相手に厳しい戦いになって行くはずです。
                                                         (2009年6月8日)
 
駅ビル「ルクア」は絶好調で三越伊勢丹の後始末も引き受けるようです。
■様変わりする梅田の変化を勝手に予測する

 梅田の百貨店のポジショニング変化

 20011年以降、梅田の百貨店は現在の阪急、阪神、梅田大丸に加えて、三越伊勢丹が開業し4店体制となる。阪急は2012年完成の増床が終わると8.4万u、阪神が4.7万u、梅田大も増床後は6.4万uになります。三越伊勢丹は5万uですがJRの運営する専門店が2万u、そしてシネコンが入居します。その時に各百貨店のポジションはどうなっているのでしょうか?

 以下の予測は、新聞記事や今まで公開されている経営判断からの勝手な推測です。断言口調でが「具体的な情報」に基づくものではありません。外れたらごめんなさい。〜多分、本当にまだ決まっていないと思います。〜でもきっとこうなります。
 
 経済情勢の悪化の中で、低価格・セール路線にウイングを広げだした梅田大丸

 東京駅の大丸が競合の中で、セールで売上確保に舵をとっています。同じターミナル立地の梅田大丸でもこの経済情勢化で低価格対応、セール重視に活路を見いだしかけているように考えられます。先日からスタートした紳士服量販店「はるやま」の導入、そして食品の期限切れ直前商品のセール販売を始めたとの報道・・・・・。

 心斎橋そごうの跡地は今まで取り込めていなかった若い世代のカジュアルな商品を中心にまとめるとの発表がありました。梅田の競合の中で、いかに大丸といえども思うようにブランドが揃わないでしょうから、増床部分は心斎橋のそごう跡=
心斎橋北館と似たような路線に進む可能性が高いです。

 おばちゃん向けのセールも強化すると想定すると、生き残りのためにコンセプトが拡散した百貨店となる危惧があります。(つまり、安物の多いセールの店というイメージが強くなります)
 
かつて梅田大丸が開業した時真新しい店舗環境と、スタイリッシュな商品構成で多分当時、日本一美しい百貨店だったと思います。(後日、同じ店舗設計者がデザインした「伊勢丹新宿店」を見たとき、ファッションフロアのビジュアルプレゼンテーションは美しい反面、建物が古いためかほころびが・・・・美しいメイクで決めている人の、目尻のしわ、首のたるみ、手のしみなど老化・・のようなものがとても気になりました。日本橋の三越、島屋ならばその「しわ」が風格になるのでしょうが・・・)

 大丸はステイタスを残して幅を広げる意図なのでしょうが、「ステイタス」の部分で生活者の感覚にあっった「価格ライン」を形成出来ない限り、「安い商品を売る店」という方向にイメージは流されていくと思います。

 阪神百貨店の食料品売場は無くなるの?

 かつて「日本一の食料品売場」を自称していた阪神百貨店の食料品の扱いについて、「大きく縮小されるのではないか」「なくなるのでないか」という噂が飛び交っています。

 心斎橋で大丸が買収したそごうの食料品売場をなくしたように、阪急阪神がグループ会社ではなく一体となった以上、合理的な判断では重複している売場を集約する・・・・という考え方になります。
 特に売場の効率を重視する阪急の食料品売場の考え方では、阪神の売り場は非効率の固まりに見えるはずです。(・・・ただ、その判断が小売業・サービス業で正解かというと、私はそうでないと考えています)

 
 阪急阪神の経営陣がどう考えているかはわかりません。まだ決めていないかも知れません。今の時点で想定されるのは、ギフト関連の有名店は阪急に集約。生鮮、そうざい、イートインは利便性が勝負ですから阪神に残すと思います。
 
梅田の地下は人通りが非常に多いですから、縮小して空けたスペースに若いOL向けのカジュアル衣料、雑貨など開店の早い商品・テナントを設置するでしょう。(地下鉄構内のユニクロは売れていますからね)

 阪神にしかない商品でファンも多かったのですが、売場面積縮小以上に魅力はなくなるでしょう。喜ぶのは梅田の「食料品市場」に食い込む隙間が見えてくる三越伊勢丹でしょう。

 三越伊勢丹は京都の成功体験ではなく小倉の失敗体験に学ぶべき〜JRの独り勝ち?

 5万uとは大きさが少し中途半端かも知れません。全館を新宿伊勢丹と同じ店舗政策で固めれば、店舗環境も新しいですし、かなりの競争力があるのですが、「富裕層」といった伊勢丹らしくないターゲット設定や、大阪商圏を意識した地域対応の「低価格商品」が売場の一部を占めて、「伊勢丹」のにおいはかなり薄まるはずです。

 そごう=西武のように唯我独尊で市場を読まないのも間違っていますが、発表されているコンセプトを見る限り、沢山調査をしすぎて逆に市場の読みに正確さを欠いています。
 「京都」での成功体験は競合のない市場での成功です。参考にはなりません。

 小倉伊勢丹では多分、競争相手の井筒屋をみて「これなら勝てる」と見くびったのだと思います。コンパクトタイプの伊勢丹とテナントで失敗しています。何故、うまくいかなかったか?再検証することが必要です。

 このままだと「ミニ伊勢丹」+「商圏対応の色々」となって5万uの力は発揮できないでしょう。

 JRの商業施設は新しい駅ビルと中央郵便局建て替えの商業ゾーン、エスト1が一体として運営されるでしょうから、美味しいところを全部持って行くことになります。〜若いOLさん等の手頃なファッションのテナントに対しては百貨店よりJRの方が強い立場にあります。

 梅田北ヤードのにぎわいは・・・・?

 遅々としてすすまない様に見える、梅田北ヤードの「にぎわい機能」についての予測も書くつもりでしたが、それは次回とします。

この「予測」は過去の各社の行動パターン分析と新聞情報に基づくものです。 百貨店関係者の方記述に気分を害されたらごめんなさい。本当は、予測がはずれる事を強く望みます。

                                                         (2009年6月5日)
■「キャベツ焼き」と「10円饅頭」〜不況に強いおやつの市場

 10円饅頭の利用者は?

 大阪の軽食市場を席巻していたのは100円の「キャベツ焼き」(メリケン粉をといたものの上に刻んだキャベツと天かす、紅ショウガ、卵をのせた物〜昔の洋食焼きのようなもの)でした。庶民の食べ物である「たこ焼き」や「お好み焼き」の価格が高騰する中で出現した「粉もの」界のユニクロといった趣があります。
 十三などの地域の商店街やミナミの屋台で多く見られます。ちょっとした「虫養い」に手頃な食べ物だったのでしょう。一時ほどの勢いはないものの、まだまだ屋台は多いようです。

 「焼きそば焼き」「トンカツ焼き」など高付加価値商品の品揃えにはしったこともりましたが、この不況でプレーンな商品中心に回帰したようです。

 さて、この粉物はおそらく関西の局地的な流行でしょうが、全国的に浸透している低価格おやつとしては、10円饅頭があります。小さな蒸し饅頭で10個以上からの販売とはいえ、安くて手頃なおやつとして多くのFCチェーンが林立しています。

 購買者層は50歳以上の中高年が中心ですが、女子高校生のおやつなどにも利用されているようです。

表ー「10円饅頭」購入者層
某チェーンFC資料より


 平均客単価400円。低価格商品なので原価率は52%。店頭での調理は蒸すだけなので、立地さえ良ければ収益はあがります。

 不況に強いお菓子業界でも、消費の気分の落ち込みへの対応が必要

 去年までは「パティシエ」「ショコラティエ」が話題になり、デパ地下食品ブームでした。洋菓子、和菓子などのお菓子類は不況に強い業種です。2008年の売上もそう落ち込んではいません。ただ、消費の気分としては高いお菓子からよりリーズナブルなお菓子を楽しむ方向にシフトしていくことが考えられます。

 表ーお菓子の小売り市場規模
 

 
 まとまった時間に、まとまった金額をかけて「贅沢」を楽しむことが難しくなってきた経済情勢でも、職場や路上などの空間も含めて少しほっとした時間をもとめているのが、時代の気分かもしれません。
                                               (2009年6月4日)

■「同質化競争」を産むメカニズム

 「同質化競争」を産むメカニズム

 小売業界では10年一日のごとく「同質化競争」からの脱却が「課題」になっています。

 ファッション専門店業遺体ではここしばらくSPA(製造小売業)化が進行してきた。値入率をあげて祖利益率を高めるという利益への貢献と、より早いスピードで売れる商品を入手するための有効な手段としてOEMを使いながらの自社生産の比率を高めてきたのです。
 最初は店独自の個性ある商品を調達するために始めたSPA化ですが、だんだん売れ筋狙いの同質化が進み、在庫リスクが高くなってきたということです。(繊研新聞6/2より)

 百貨店、スーパーと言った大型小売店はこの厳しい情勢下で低価格対応に追われています。競争の軸が「ひとつ」になってしまうと「同質化競争」がどんそん進みます。
 お互いに不利益になることがわかっていながら繰り返される同質化競争は、商圏の環境、自社のポテンシャルが、自社の顧客像を理解していない事から生まれます。
 実態をみないで抽象的な概念である「市場」での「最適解」を求めると、プレイヤーはみな同じ結論を出し、同じ戦略で利益をあげようとするのです。
 「現実」を見ないで「市場」しか見ない、「形になった結果を見てから自分の行動を決める」その基本的な行動パターンを替えない限り「同質化競争」はずっと続いていきます。


 百貨店はバイヤーの出張費をカットして「仕入れに外出できない」と愚痴混じりに語られていましたが、最近、電話代にもコストカットの波が押し寄せているという噂です。メーカー的なロジックでのコストダウンはサービス業には完全にはあてはまりません。レストランのサイゼリアのように調理の工程管理や素材の調達・物流つまりサプライチェーンマネジメントには応用できても、商談や情報収集(今風にいえばインテリジェンス)と接客活動には合理的な指標での効率化ほどそぐわないものいはありません。

 理系的な効率化のロジックが同質化競争を生み出すとも考えています。
                                                          (2009年6月3日)
                    
 
■「生活提案」と「逝きし日の面影再生」

 「生活提案」型の売場で定着した新しいライフスタイル

 百貨店人にとって「生活提案」という言葉は手垢がついてしうほ昔から聞いていながら、いまだにクリアできていない課題です。団塊世代「ニューファミリー」「ニューサーティ」呼ばれていた時代(1970年代後半から1980年初め頃〜金妻は1983年)に例えば、ワイン飲む習慣、ナチュラルチーズを食べる習慣、団地から郊外のマンションへ転居してインテリアにお金をかける事が夢となったの(イケアの最初の日本進出は1974年、一時撤退しアクタスに引き継がれます。インテリア雑貨の先駆けオレンジハウスの開店は1974年)は百貨店を初めとする小売業の「生活提案」「ライフスタイル提案」が加速させ、定着させた物といえましょう。(その当時の小売業のトップランナーが文化戦略をとっていた西武セゾングループでした)

 かつては欧米風の生活様式や、その当時紹介されていなかったサブカルチャーを取り上げるだけで人々の関心を呼ぶことが出来ました。今、世界的にみて魅力のあるライフスタイルは「環境に配慮した」「持続可能な社会」をつくるための生き方や道具なのですが、購買に結びつけるだけのストーリーを描けている小売業はほとんどありません。(破綻したGMが最期までエコカーをメイン商品にできなかったのを教訓にしてください)

 シニアの住まいには最新の機能と「懐かしい暮らし」の共存を

 高齢者の住まいのあり方についていつも考えています。住宅に関していつも思うのは「設計者」と「居住者」の意識、感覚のギャップの大きさです。特にシニアの場合、多くは若い世代の設計者が「シニア」にはこれがいいだろうと頭で考えて設することになります。安全、安心、・・・バリアフリー・・・機能については類推できても、どんな暮らし方が快適かを考える想像力はありません。結果的に「施設」のような住まいになってしまいます。

 「居住者」は自分の希望をうまく言葉に出来ません。なんとなく違和感を感じても、提供される物の中で選択していしかないのです。

 昭和30年代をCGで再現した疑似過去の映画が話題になりました。・・・30年代を知るものとして、あれは嘘です。昭和30年代前半はまだ戦争の影を引きずっていましたし、貧乏による生活苦が大きな重しとなっていました。朝鮮戦争の拡大におびえて毎日次の戦争が近づいている予感の中で暮らしていました。(この実感も「嘘」ですが)

 世の中が先行きに「明るい希望」を持ち出したのは昭和40年代にさしかかってからです。公団の大規模開発団地での暮らしが「新しい生活」のシンボルであったように思います。今、シニア住宅のユーザーとして注目される団塊世代(都市部)にとって「懐かしい暮らし」は団地のイメージではないかとの仮説をもっています。

 居住空間はコンパクトで、適度にプライバシーが守られ、緑は豊かで徒歩圏に買い物施設もある・・・・。地面から離れた高層マンションで、毎日見守りという名の監視をうけて暮らす・・・。少なくともそんな施設のような居住空間にはあこがれる事はないでしょう。

 人間というのは思った以上に保守的なものです。これからの人生の住まいについて、新しい冒険が出来るほど革新的な人はそんなに多くありません。「一番楽しかった時の記憶」がどこにあるのかを考えれば「シニアの住まい」に必要な要素が見えてくるはずです。

 「生活提案」には対象の根源的な欲望にひっかかるフックが必要です。シニアの老後の住まいは「銀座」の「高級老人ホーム」で入居者同士のラブアフェアを楽しみたいと妄想する老人は、あまり良い人間関係を築けてこなかった日経新聞の愛読者だけでしょう。

                                                         (2009年6月2日)
■「立地創造型SC」と「ブックオフ的ただのりビジネス」の終わり

 「立地創造型ショッピングセンター」が信じられた時代

 かつて、今まで人が集まらない場所(郊外や工場地帯)に大型の複合商業施設をつくり、大型店の集積に加えてアミューズメントやスポーツカルチャー施設を集めて新しい人の流れをつくる・・・という広域商圏のショッピングセンター開発を「立地創造型SC」という呼び方で、これからの商業施設のあり方として喧伝されていたことがあります。

 その時に、例えに出されるのは「東京ディズニーランド」で「入場料売上」と「物販・飲食売上がほぼ同じで1,300億円以上あるという事例でした。ディズニーはソフトの蓄積が半端ではないですし、レジャー消費の一環として考えるべきで「入場料の取れるショッピングセンター」であるというのは大きな誤解であったと思います。

 当時は「生活遊園地」をキャッチフレーズにしたショッピングセンターがいくつかつくられましたが、狙いとした広域からの集客は一時的には実現しましたが、ソフトの革新が続かないで飽きられてしまいました。「遊園地」はリピーターを確保するために常に新しい情報を発信していく必要があります。その追加投資を小売業の販売促進経費でまかなうのは無理です。

 今の広域商圏のショッピングセンターは「商品」「サービス」が人を呼んでいる

 今、人が集まらない立地で成功しているショッピングセンターは、都会にはある手頃でセンスのいいブランドショップとスターバックスコーヒーに代表される都会的な飲食、シネコン集積し、無料駐車場を沢山備えた「イオンモール」のような地方立地の大型ショッピングセンターかあるいは、有名ブランド品を集積したアウトレットモールかのどちらかです。

 地方都市にはなかった都会的な「商品」「サービス」が人を集めるか、都会では「高くて買えないブランド商品」がディスカウント価格で購入できるアウトレットモール。どちらも「商品」「サービス」のもつ情報性が人を集めているのです。

 かつては「商品」「サービス」とは別のところで「情報発信」することで集客しようとしていたものが、「情報発信性のある商品・サービス」が集客のエンジンとなっています・・・・・。さて、ここにひとつの問題があります。

 ブックオフ的「ただ乗り」ビジネスがオリジナルな「創造力」の資源を枯渇させる

 ブックオフ(新古書店)の所為で新刊書が売れないという議論があります。著作者が報われないので新しい出版物が生まれないという仕組みを指摘したものです。出版物で「独創的な新しい物」をつくっても報われないため、お手軽で回転率の早い「レベルの低い本」が大量生産されるという影響がでるというものです。

 今、人を読んでいる「商品」「サービス」の魅力は都会性であったり、何らかの独創性に支えられています。地方の大型モールやアウトレットモールは「どこかで」生産されている「オリジナリティ」=「情報性」をうまく2次利用というか「ただ乗り」しているともいえます。消費するだけで再生産のベースになっていませんからね。
 魅力的な、新刊がでなければブックオフは成立しません。

 経済情勢が厳しくなってくると都会で、新しいファッションを購入する人が少なくなってきます。高級ブランドが苦戦するとアウトレットに一時的に商品が流れてきても、来年はもう新しい商品は生産されないかも知れません。

 スターバックスコーヒーがドトールコーヒーのようなショップと認知されるようになったときにその魅力は喪失し、ただ高いだけのコーヒ屋となります。

 地方からの情報発信、小さな市場からの情報発信

 かつて、百貨店は情報発信基地でなければいけないという主張が一世を風靡しました。西武、伊勢丹、三越、島屋それぞれの百貨店の個性によって売場での「生活提案」であっったり、「美術展」だったり身近な場所で文化に触れる機会を提供してくれていました。

 今は、各社とも疲弊しその発信力が衰え、かつ時代にあわなくなってきています。

 「食」の市場では地方の隠れた良い品物を発掘する動きが拡がっています。インターネットの普及で、個人レベルでかなり質の高い情報発信をしている人達も増えてきています。

 都会に最先端があるのではなく、地域にも新しい情報が沢山ある・・・・という考え方から組み直していくべきというのは、あまりにもロマンチック過ぎるのでしょうか?

                                                       (2009年6月1日)

 5月
■消費はどこに消えたか?〜勝ち組、負け組分類でだけでは見えてこない消費の変化

 百貨店の売上げの行方はどこへ

 大阪では、バブル崩壊後の1994年から比較しても2004年までの10年間に5,500億円の百貨店の売上げが消滅しています。全国的な動向では、「郊外の大型SCの開業による都心の地盤沈下」という論調で語られますが、大阪の場合(その間のショッピングセンターの開業状況を見ても)その影響はきわめて局地的ではないかと思われます。
 売上予測に使われる「ハフモデル」での商業集積同士の床面積のボリュームによる綱引きではなく、消費の内容が変化しているように思えます。

 駅ビルとの競合?

 アパレル企業では伸び率の高い「駅ビル」へのシフトが話題になっています。首都圏ではルミネなどのJR系の駅ビルが元気なようですが、大阪の場合表ー3でみるように「天王寺MIO」の開業がミナミの百貨店には影響を与えたと思われますが、主要な駅ビルの伸びは縮小傾向にあるところが多いようです。〜駅ビルは犯人ではないようです

 食品スーパーとの競合?

 この間、大きく売上を伸ばしている業態は「食品スーパー」です。近年、「イカリ」「成城石井」といった高級スーパーの多店舗展開が進んでいます。「デパ地下」の一部の売上は大きな影響を受けているでしょう。ただし、食品スーパーの影響を受けているのは総合スーパーだと考えられます。
 先日発表された各社の決算では好調な企業と減速した企業がはっきりと分かれてきたようです。「業態」としての勢いは落ち着いてきたようです。


 大型専門店やネットなどの新しい競合?

 ユニクロ、しまむら、ABCマート、ニトリといった価格競争力のある大型専門店の勢いは相変わらずです。ファッションでも「ファストファッション」と呼ばれる流行を取り入れながら低価格の業態「ZARA」「フォーエバー21」「H&M」が話題になっています。また、雑誌とタイアップしたネット販売も伸びています。
 ただし、いずれも、百貨店の方から切り捨ててきた客層、商品です。

 「ハレの消費」の縮小とファッション入門者向けの水先案内機能の喪失〜商業統計にあらわれない百貨店の劣化
 
 百貨店は多くの品種を同じ「ブランド」で販売しています。様々な競合局面があることは事実です。元気のいい競合に学ぶべきことは多いと思います。また、「切り捨ててきた」ターゲットについてそれでいいのかどうかの検証も行うべきです。次世代の顧客の育成を怠ると「後輩」に大きな損失を与えます。〜今の百貨店の顧客は60歳代、70歳代のミセスです。20年後にはどうするのでしょう。

 部門別の売上推移を詳細に分析する必要がありますが、百貨店の強みであった「中元歳暮」「冠婚葬祭がらみのギフト」「呉服・美術工芸品・宝石貴金属」のハレの消費の売上が縮小しているのだと思います。(市場が消滅したのではなく、支出内容が変わってきた中で百貨店が獲得できていないと言い換えるべきでしょう)

 日常の消費に関して、品目別に出現している新たな競合に少しずつ浸食されてきているのでしょう。

 ファッションに関して言えば「自分のファッションセンスに自身がないが、おしゃれをしたい」そんな人達の入門窓口としての機能がなくなっています。先端のファッションを自分でコーディネイト出来る人は「百貨店」でなくても商品をチョイスできます。
百貨店のファッションの顧客像を見誤ってはいないでしょうか?

 ユニクロで洋服を選ぶ人は、そこそこ安くて、無難なおしゃれができるからユニクロで選びます。その証拠に、同じような価格であったとしても、決して量販店では購入しません。

 百貨店の売り下の減少は、強力な競合業態に売上を取られたというより、自ら得意領域、得意な市場を狭めてきた結果だと思います。全体の消費が縮小する中で、あらためて自社の強みをベースにした売場の再構築が必要です。売上金額は伸びないのであれば「利益」をどのような確保するかがポイントです。

                                                 (2009年5月29日)

表ー1商業統計 小売り販売額(大阪)時系列推移

 (百万円)
表ー2 1994年を基準とした小売り販売額の増減(商業統計)
(百万円)


表ー3 専門店集合商業施設売上高推移(繊研新聞)
(百万円)

■「時間を楽しむ」消費の開拓が人を集める〜カフェ化する社会

 超高級ホテルのダイニングに新しい変化

 今年の4月に、ハイアットリージェンシー東京の2階フロアに朝食から深夜まで食事やスイーツが楽しめるオールディダイニング「カフェ」がオープンしました。イタリアンテイストの食事は軽いものから本格的なものまで選べます。
 テーブル席だけでなく、ゆったりと落ち着けるソファ席も設けられ、「自然な風合い」をモチーフにゆったりと安らげる空間を提供しています。3月にはシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルのオールディダイニング「グランカフェ」もリニューアルオープンしています。
 「カフェ」としてのゆったりとした空間で軽い食事、飲み物、スイーツが楽しめる・・・といった飲食業の流れは超高級ホテルにもあらわれてきているようです。

 ミシュランガイド東京版ではホテルのフレンチも多く取り上げられ、、一時はメインダイニングから高級フレンチがなくなるとまでいわれた状態から盛り返したと聞きます。その当時の有名シェフの対談本では「ブルジョア対象のフレンチ」の必要性が語られていました・・・・・・。

 「繁盛している飲食店?」お客さんの居る店には入りやすい

 ターミナルの繁盛店を調べてみると「食事」と「デザート」がメニューに混在していて、ある意味「だらだらと楽しめる。つまり、食事が終わったら居場所の無いような店ではない店が流行っていました。繁忙時には回転率が悪いのでしょうが、アイドルタイムにもお客さんが店にいるので、入りやすい感じはします。
 喫茶店でも食事やスイーツなどのメニューが集客の鍵になります。キッチンスタッフを育成する専門学校でも専門料理よりカフェの調理を学ぶコースの人気が高いそうです。
 
 ほんの少しの異次元空間

 商店街の空き店舗対策とか、シニアや地域団体の拠点として「カフェ」をうたった空間を設けることがあります。あまりお金をかけない関係か、お茶を出す事務所といった殺風景な場所になりがちです。
 手作りなのはいいのですが、日常性を少し離れて過ごせるようなほんの少しの「異次元空間」を提供できれば利用率が増えるように思います。

                                                  (2009年5月28日)
■スイーツによる「町内活性化」計画

 スイーツブームを支えるのはご町内の名物

 ケーキや洋生菓子はかつては繁華街の有名店で購入する物が「上等なもの」でした。今でも、東京の百貨店では1個あたり700円から1000円を超える工芸品のような洋菓子があるそうですが、現在人気の「自分へのご褒美」や「家族でのごちそう内食」に使われる「スイーツ」の人気店は自宅の近くや、都心でも繁華街から離れた場所に立地している店が多いようです。

 行列で有名な「堂島ロール」も北新地に近いもののオフィス街に立地しています。スイーツブームに火をつけたのは「デパ地下」ですが、よりお手頃で、美味しい物(原価率が高くて、職人の手がかけられている物)を求めようとすると、家賃が高く、そのことが味や価格にストレートに反映する繁華街やターミナルよりも、少し離れた立地の小規模な店舗でのいい品物を選ぶのでしょう。(口コミランキングはマニアックな人が投票しているという偏りもあります)
 また、持ち運びにあまり時間をかけると「劣化」するという洋生菓子の特性も大きいでしょう。

 ご当地スイーツで「ご町内活性化」

 「堂島ロール」に始まり「苦楽園ロール」「北ロール」「中津ロール」「天神ロール」など地名をつけたロールケーキが多数出現しています。ご町内の商店街や郊外の地区センターなど、とりたてて自慢する物がない地域でも、オリジナルの名物があると地域住民のちょっとした自慢にもなります。まちづくりの視点からも、「その場所でつくられるスイーツのブランド化」に学ぶべきところが沢山あります。

                                                        (2009年5月27日)
表ー口コミサイトで人気のスイーツランキング
「スイーツ情報検索サイト @スイーツ(アットスイーツ)」の口コミ数(5以上)のスイーツショップリスト
※数字は口コミ数
(大阪)
15 五感北浜本館 大阪府大阪市中央区今橋2丁目1-1 収穫栗
12 パティスリーリョーコ 大阪府東大阪市荒本北130 ケーキ
12 デリチュース 大阪府箕面市小野原東5丁目1-27 チーズケーキ
11 レスポワール 大阪府大阪市中央区難波5丁目1-60-1101 喫茶
11 ムーラタルト 大阪府大阪市北区天神橋3丁目1-6 ロールケーキ
9 Flat 大阪府豊中市上野東3丁目18-8 ロールケーキ
8 パレドオール 大阪府大阪市北区梅田2丁目2-22-4F ショコラ
8 シェ・アオタニ 大阪府東大阪市西石切町1丁目5-37 チーズケーキ
8 ル・ピノー 大阪府大阪市西区北堀江2丁目4-12 ケーキ
7 マダムシンコ 大阪府箕面市今宮4丁目10-44 バウムブリュレ
7 グランデコ 大阪府吹田市山田西4丁目1-2-201 シフォンケーキ
7 なかたに亭 大阪府大阪市天王寺区上本町6丁目6-27 チョコ系ケーキ
6 本高砂屋 大阪府茨木市永代町1-5-212
6 クレープリー・アルション 大阪府大阪市中央区難波1丁目4-18 クレープ
6 クレマンティーヌ 大阪府岸和田市宮本町2-1 ショコラクレマンティーヌ
6 ココリコ 大阪府大阪市中央区心斎橋筋1丁目8-30 ケーキ
6 丹波屋 大阪府東大阪市花園本町1丁目6-32 みそだんご
6 エストサブロン 大阪府箕面市小野原東5丁目8-51 極上なめらかプリン
5 パティスリーアンブラッセ堂島本店 大阪府大阪市北区曽根崎新地2丁目4-7 堂島プリン
5 HIDETOWA 大阪府茨木市真砂1丁目10-11 ロールケーキ
5 esola 大阪府大阪市北区梅田3丁目1-1 黒いチーズケーキ
5 香楽味庵 大阪府大阪市北区山崎町5-12 まるごと苺大福
5 ル・プレジタン 大阪府大阪市中央区南船場3丁目8-16 ケーキ
5 バティシエオカダ 大阪府八尾市八尾木北2丁目16 ケーキ
5 高山堂 大阪府大阪市西成区天下茶屋1丁目10-23 とら焼き
5 アリコルージュ 大阪府和泉市箕形町3丁目9-7 ケーキ
5 アルション 大阪府大阪市中央区難波1丁目6-20 ケーキ
5 パティスリートロワ 大阪府茨木市真砂1丁目9-31 チョコ系ケーキ
5 神戸ベル 大阪府大阪市北区芝田1丁目1-4 マロングラッセ
5 ホルン洋菓子 大阪府大阪市淀川区十三東3丁目24-6 ロールケーキ
(神戸)
17 プルチーノ 兵庫県神戸市灘区森後町1丁目3-19-1F-A タルト
14 モンプリュ 兵庫県神戸市中央区海岸通3丁目1-17 タルトフロマージュ
13 神戸フランツ 兵庫県神戸市中央区三宮町1丁目10-1 半熟チーズケーキ
13 パティシエエスコヤマ 兵庫県三田市ゆりのき台5丁目33-1 小山ロール
13 オ・タンプル・デュ・グゥ 兵庫県西宮市南郷町7-12 ロールケーキ
12 モリナカ 兵庫県神戸市灘区日尾町3丁目1-26 天使のふんわりロールケーキ
11 ユーカリプティース 兵庫県神戸市北区北五葉1丁目6-7 季節のケーキ
10 ケーキハウスツマガリ 兵庫県西宮市甲陽園本庄町6-38 チーズケーキ
10 シェ・ノグチ 兵庫県尼崎市若王寺2丁目36-1 たまごロール
10 ファクトリーナカタ 兵庫県川西市火打2丁目10-8 ケーキ
10 ランプリール・オクシジェーヌ 兵庫県神戸市北区大原3丁目20-10 北ロール(純生)
9 ラ・ヴィエルジュ・マリー 兵庫県神戸市中央区浪花町64 居留地フォンダンチーズケーキ
9 アマレーナ 兵庫県芦屋市業平町1-5 アマレーナ
9 メゾンアンリ・シャルパンティエ 兵庫県芦屋市楠町10-17 フィナンシェ
9 ポワソンダブリル 兵庫県西宮市南越木岩町3-13 苦楽園生チョコロール
9 菓子sパトリー 兵庫県神戸市中央区二宮町4丁目20-5 ミルキッシュジャム
9 パティシエゲンタロウ 兵庫県小野市王子町260-1-203 ロールケーキ
9 トゥールブラン 兵庫県芦屋市宮塚町16-2 広夢ロール
9 ミッシェルバッハ 兵庫県西宮市久出ケ谷町2-28 夙川クッキーローゼ
9 ブルシェ 兵庫県神戸市垂水区桃山台4丁目4-12 たまごロール
9 エルベラン 兵庫県西宮市相生町7-12 生チョコふたつ
9 セセシオン 兵庫県神戸市東灘区御影町御影字城ノ前1486 ケーキ
9 サント・アン 兵庫県三田市南が丘2丁目7-10 ケーキ
8 シーホース 兵庫県神戸市垂水区塩屋町1丁目2-18 チーズケーキ
8 ウォルターピークファーム 兵庫県尼崎市武庫之荘1丁目19-3 ケーキ
8 エストローヤル 兵庫県神戸市中央区栄町通1丁目3-16 シュー・ア・ラ・クレーム
8 クロカンブッシュ 兵庫県神戸市長田区房王寺町4丁目7-20 シュークリーム
7 ファクトリー・シン 兵庫県神戸市中央区小野柄通6丁目1-9 まごころーる
7 コピーヌ 兵庫県相生市向陽台1-2 ケーキ
6 パティスリーリッチフィールド 兵庫県神戸市西区樫野台5丁目4-6 ケーキ
6 テテアテテ 兵庫県神戸市灘区山田町1丁目1-22 ケーキ
6 シュターン 兵庫県芦屋市東山町1-10 バームク−ヘン
6 ダニエル芦屋 兵庫県芦屋市松ノ内町3-14 ケーキ
5 ライト洋菓子店 ?兵庫県西宮市甲子園口2丁目3-30 スフレ
5 パティシエ・エイジ・ニッタ 兵庫県西宮市高木西町23-5 西北ロール
5 パオデロ 兵庫県神戸市中央区元町通5丁目6-4 ケーキ
5 豊助饅頭 兵庫県神戸市北区淡河町淡河754-1 饅頭
5 明月庵本舗 兵庫県神戸市須磨区飛松町2丁目4-4 生クリーム大福
5 シュプレーム 兵庫県伊丹市北野3丁目4-103 ケーキ
5 ミオール神戸 兵庫県神戸市中央区三宮町1丁目10-1 はちみつロール
5 カッサレード 兵庫県神戸市東灘区住吉宮町7丁目2-10 ケーキ
5 ボンポアン 兵庫県神戸市北区筑紫が丘1丁目6-9 純生ロール
5 シンフォニーナガノ 兵庫県神戸市東灘区田中町3丁目18-22 ケーキ
■家族の変化と消費の行方 1

 少し落ち着きを取り戻した大阪の町並み、そして変わる女性のキャリアプラン

 インフルエンザパニックで、学校や保育所が休校・休園になった関西の町並みは、学校の再会によってようやく。、落ち着きを取りもどしています。マスクをしているビジネスパーソンの姿はまだまだ多いのですが、テレビ映像の厳重な検疫風景にも慣れてきました。一時は、、一体どんな災厄が訪れているのかと思わせる風景でした。それでも首都圏ではマスクをしている人も少なく、町並みはとてものんびりしていたそうです阪神淡路大震災の時の中央での他人事ムードを思い出させます。

 今回のパニックで神戸の「さんちか」と「コウベデュオ」が臨時休業しました。理由は、来街者が減少している事と、保育所が休園したために従業員が確保できなかったことです。

 あらためて、子供を育てながら働く女性の存在感が注目されます。

 女性が出産後も当たり前のように仕事を続けることができる世の中はいいことなのですが、同時に「格差の拡大」によって専業主婦と子供を養っていけるだけの収入を獲得できる男性が減少していることの裏返しでもあります。

 厳しい戦いの中で選ばれる戦闘服

 女性の場合、好きな人と結婚したいという選択肢を確保しようとすると、キャリア選択の段階でずっと続けられる仕事を選ぶ必要があります。雇用機会均等法で入り口は開いている物の、不況になると真っ先に削られるのは女性の採用です。

 女性向けのリクルートスーツが紳士服専門店でよく売れているのは、実用的でかつ手頃な価格だからです。百貨店が提供するスーツは婦人服メーカーのどこかまだ「かわいらしさ」を意識したものでかつ価格も高いというミスマッチがあります。

 食卓の変化だけでない消費の変化

 親子4人の標準家族が「標準」ではないという議論から、食卓の変化については様々な研究がされています。それ以外の消費についても「家族像の変化」が影響を与えているものがあります。
 試みに、いくつかの分野について検証してみたいと思います。

                                                     (2009年5月26日)
■「関西復権」が目標とするものの再確認
 2006年に「関西復権」を大阪で申し立てる理由

 長谷工総合研究所様の研究誌CRIに「関西復権を考える」を連載させていただいて3年になります。建築家でもなく都市計画プランナーでもない私には、生活者研究のマーケッターの視点からの都市再生についての問題提起が求められているのだろうと思います。関西復権と銘打ちながら題材は「大阪」を扱った記事が多いのですが、それはたまたま大阪をベースに生活しているので「大阪」のことから語り始めて、京阪神、関西、そして「東京的な物」から切り捨てられていた地方の復権を考えていきたいと思ったからです。

 CRI過去記事レジュメ
 
 当時、小泉政権が総辞職しました。小泉さんの功罪は議論があるでしょうが、その負の側面である「格差拡大」「地方切り捨て」は東京への一極集中と地方経済の疲弊を加速度的に進行させました。本当に「構造改革」が必要だったのは「地方経済」だったのかもしれませんが、その道筋への知恵や財政の裏付けがないまま自己責任といわれても、それは中々大変です。

 新しい市長、知事を選んだ大阪人の草の根の叡知

 そんな時期に、大阪市長、大阪府知事は今までの官僚出身者から民間人にチェンジしました。言動に色々問題のある知事ですが、ただのタレント知事と違うのはより広域の視点で関西を考えているところです。

 大阪市長も民間出身に変わったこともあり、今まであまり連携の良くなかった府と市の共同の動きも多くなっています。いいタイミングでトップを選んだのは大阪人の知恵なのかもしれません。

 この時期に中央からお金を引き出す事ばかり考えても将来の展望は開けません。まず自分達でできることを始める。その時に単独の自治体だけでできないことは周辺の連携の中で地域のパワーを創っていくことが重要です。

 地域の強みを引き出した上で、韓国、中国、などのアジア諸国やロシア、オセアニアとの交流が深まっていけば「地方の活性化」のモデルとなります。

 「関西復権」のゴール

 関西復権のゴールは、かつての「天下の台所」や「東洋のマンチェスター」を復活させることとは少し違います。京都に遷都し天皇陛下にお帰り頂くことでも無いような気がします。

 京阪神がお互いの街の魅力を尊重しあって連携して「そこにいけば元気になる場所」を創り上げ、それぞれの地方が元気になるノウハウを提供できるようになる事が大きな目標になります。

 その意味で沿線の文化が交流する私鉄の乗り入れは重要なインフラになりますし、地域の生活文化が集約された地方百貨店は大事な拠点となります。
                                               (2009年5月25日)
■必ず失敗する「新規事業開発」の研究

 「空間プロデューサーみたいな」
 今から20年近く前のお話です。老舗料亭の新規事業開発の依頼で大きな失敗をしてしまった経験からの教訓を書き残しておこうと思います。私もごく一部加担していた話なのであまり偉そうなことはいえませんが、当時の時代の気分とトップの間違ったリーダーシップによって失敗した経緯からの留意点を次の世代に書き残しておくことは意味があることだと思います。

 大阪のビジネス街の新しいビルの1階のスペースの活用がテーマでした。当初はオフィスサービスのコンビニで検討されていたのがいつの間にか「テイクアウトの豚まん屋」の開発計画になっていました。それは施主側の想いではなく、請け負った企画会社社長の趣味での思いつきだったのです。

  失敗要因1:当事者の想いではなく、無責任な人間の思いつきでのフレーム設定
  失敗要因2:市場調査をやらずに経験のない事業に参入したこと〜勘で始めてはいけません

 

 専門家を集めても専門家集団にはならない

 事業計画に当たっては、多くの分野の専門家が集められました。(ここまでは、何か7人の侍みたいですね)
大手百貨店流通グループのフードビジネス部門の元役員。その元役員氏の紹介のその流通グループで活躍されたというフードコーディネイター、インテリアデザイナー、グラフィックデザイナー、等々クリエィテブな人材を集めました。

 ただ問題はそのクリエイたーをまとめるリーダーが存在しなかったことです。その社長は「豚まんをやりたい」だけプロジェクトをまとめる役割は自分の仕事ではないと考えていたようですです。銘々のクリエイターがそれぞれの専門分野について精度をあげることに注力し、事業の枠組みを整理する役割の人はだれもいなかったのです。
 元役員氏はもう実務的な事業の現場から離れてずいぶんになるようで「オペレーションがマニュアル化されていないのではチェーン展開はできない」等の感想は的を得ていてもその時には、もう店が立ち上がっているという有様でした。

 フードコーディネイターさんにに対してもずいぶん役割を誤解していて、メニューレシピを作る人ではあっても、「商品」を作る人ではなかったのです。

 失敗要因3:専門家をまとめるプロデューサーがいないとプロの力をいかせない
 失敗要因4:無責任な「偉い人」を実務に口を出させてははいけない
 失敗要因5:立派な肩書きでその人の現在の「能力」を信用してはいけない

 現場が一番重要〜結果持ち逃げされて信用も失う

 それでも何とか新しいタイプの豚まん=「包子」(パオズ)の店はオープンしました。開業計画担当スタッフは大変な思いでチラシ配布やデリバリーなどに忙殺されました。伝手をたどって「トレンド情報誌」で紹介もされ、それだけで大成功した気になったものです。

 実際の現場でのオペレーション計画ができていないため、商品は一つ一つ手作りになります。したがって仕上がりに時間がかかり販売機会を逃すことも多く、ご祝儀で注文してくださったお客さんへの配達もとどこおっていました。
 立地も悪く、売上はなかなか伸びません。それでもオーナーさんはかなり我慢をしてくださいました。

 最後にとどめをさしたのは大手流通グループの元役員氏の紹介で現場経験があるということで雇った店長の売り上げ持ち逃げでした。オーナーさんには可愛がってもらっていましたが、売上管理が丼だったので、つい魔がまがさしたのでしょうか?オーナーをはじめ、事業を立ち上げるときに出資してくださった方々にも大きな迷惑をかけてその店は閉店しました。

 失敗要因6:現場のオペレーションが利益を生む〜オペレーションのプロが必要
 失敗要因7:人とお金の管理は情実だけでなくシステムを導入する

 その時は、傍観していた私自身の責任も少なくありません。今でも顔から火が噴き出すほど恥ずかしい話ですが、若い人たちの参考になればと思います。

 それ以来、新規事業計画にの手順はきちんと基本的なステップを省かないようにしています。
 また施主さんには経験のない新規事業の事業コンペの際には企画書作成やプレゼンテーション術にたけた企画会社だけでなく、実際に現場で運営する事業会社を組み込むようにアドバイスしています。

                                                 (2009年5月22日)
■もうひとつの生活拠点ともうひとつのアイデンティティ

 リストラで受ける心の傷

 縮小する経済の中で多くの人が職を失っています。派遣社員から始まったリストラは正社員の削減にまで及んでいます。人を削減したほうが株主の評価があがるという株主重視の風潮は少し収まったようにも思えますが、現在の状況は企業としては背に腹は替えられない・・・・のかもしれません。リストラされた人間が受けるダメージは経済的なダメーが大きいのはもちろんなのですが、「会社」にとって、「会社で一緒に働いていた仲間にとって」自分が必要とされていないという喪失感です。

 かつては仕事の場の他にも家庭や、地域社会、そして故郷という、自分を必要とする、あるいは受け入れてくれる場所が複数ありました。「故郷」であるところの地方も大きく疲弊しており、セーフテイネットとしての機能を十分に果たせていません。家族も、多くは会社からの給料を生活のベースにしているのでリストラのダメージは自分と共有しています。
 
 「農業」が再認識される背景

 ここのところどこへ行っても、「農業」に注目している人、企業が多くなっています。慢性的な人手不足の業界なので雇用の受け皿として期待されていることと、環境問題や食の安全・安心への関心の高まりから社会的な使命感を持って農業に関わりたいという若い人が増えていることもその背景にあります。

 マルチハビテーション(複数の生活拠点)の効用

 「住まい」という観点から考えると、会社に雇用されるという働き方では通勤に便利な場所に住まいを持つことが合理的なのでですが、会社だけを中心に自分や自分の家族の生活を縛られることの無意味さを実感した人が増えてきた時に、会社中心のアイデンティティだけでなく、会社とは別に自分を必要とされる場を持つ人が増えてくるでしょう。

 複数のアイデンティティを形成するのに最も早い方法は、複数の生活拠点を持つことです。

 都市農園に「もうひとつの生活拠点を持つ〜デンマークの「コロニーガーデン」

 デンマークには都市の住宅地中に滞在型の都市農園が点在しています。20世紀初頭、産業革命の中で劣悪な住宅環境にあっった労働者の余暇の場を獲得する市民運動からうまれたそうです。
 デンマークの人口550万人に対し、約6万2,000戸のコロニーガーデンが存在します。その7割は夏の間だけ寝泊まりが許容されるオーバーナイトガーデンです。
 元は、退職した夫婦の利用が多かったようですが、若い夫婦の利用も多くなってきています。

 東京や大阪の都市部では「都市農園」の設置は難しいかも知れません、それでも1時間から1時間半の通勤圏で「都市農園」は可能かも知れません。専門学校や学習塾などが農園を所有しているという話も良く耳にします。

 経済面だけでなく心のセーフティネットとして「農」を中心として自然と向き合うもう一つの「暮らし」を構築することが社会を豊にする道筋ではないでしょうか。
                                            (2009年5月21日)
■「安売り店」ほど営業利益が高い?
 
 ユニクロ17%vs島屋2.5%営業利益率の差

 一般的に安売り業態と思われている業態の営業利益率は決して低くありません。ユニクロで17%、しまむら、西松屋で10%前後、ニトリで13%、ABCマート20% 、100円ショップのダイソーは公開していませんが10%以上と推計されます。

 百貨店では島屋が2.5%、大丸が2.3%であるのに比較して大きな差をつけられています。スーパーでも最も高いセブン&アイで5.0%となります。

 ディスカウント業態は新しく参入する企業が多く、人件費や店舗にお金をかけていません。管理費が低い分だけ営業利益が高くなるのは当然かも知れません。社員も若いスタッフが多いため総人件費も低くなるでしょう。固定費に影響してくる店舗環境や立地の違いなのでしょうか?どうも、それが当たり前であるという考えはしっくりと来ません。

 百貨店はかけたコストを売上に転嫁できていない?
 
 百貨店の強みはなんでしょう。商品への信頼性。販売員の高いレベルのサービス。豊かな環境での買い物という楽しみ・・・。それらのために販売管理費のコストをかけているはずです。問題があるとすれば、そのコストを販売価格に反映出来ていないか、コストのかけ方を間違っているかのどちらかです。

 この経済情勢の中でどの企業もコストダウンが至上命題になります。百貨店も売上が伸びなければ販売管理費をカットする方向での動きが強まるでしょう。その時に「今の間違ったコストのかけ方」をそのままにして、百貨店の強みを減少させる方向でコストカットが進むことを危惧します。
 例えば、ユニクロの店舗環境やクレーム対応のシステムは百貨店と遜色ありません。その中で百貨店が「バーゲン商品強化とか商品在庫の圧縮」「販売員の縮小・パート化」「リニューアル改装等の先送りでの環境劣化」が進んでいけばますます競争力を失っていきます。

 大事な事はシステムを変えることと価値に見合う対価をとれるようになることです。企業として必要な利益額は、一部の業態を変えてでも確保しながら百貨店の強みを守ることが生き残りの鍵だと考えます。

                                                  (2009年5月20日)
■雇用創出と農による働きがいの創出

 人材教育コンサルが流行る理由

 世の中にはコンサルという看板を掲げる人は多いのですが、中でも幅広い需要があるのが、「人材教育」とか「人事評価」など人の活用に関わるコンサルタントでしょう。大きな企業から中小企業まで、人材活用については迷うことが多いようです。
 特に、新しく起業した企業では営業のプロ、財務のプロまでは初期に集めたとしても、人材活用のプロとおいうのは後回しになる・・・というか、起業の初期のある種の一体感のある組織から、持続性のある組織への切り替えに悩みが発生するようです。

 以前、非常に伸びているベンチャー企業の経営者に人材評価をどのようにされているか質問したことがあります。「市場価値で決定する」という一言でお返事が還ってきました。その時は「成果主義」が全盛の時代でしたから、いったんは納得しましたが、「そんなにうまくいくのかな」何となく違和感がありました。今、その企業も一時の伸びは止まっています。

 「人」は財産だと口にする経営者は多いのですが、人の活用に真剣に取り組む企業は少ないです。日本を代表するトップ企業の「派遣労働者」への対応を巡るドタバタに強くそれを感じます。大企業であっても人を雇ってビジネスを行うスキルが意外と定着していないのかも知れません。

 「経営」は一種の専門技能だと思います。それは誰にでも出来る物ではありません。ただ、会社は「経営者」の私物ではありません。規模が大きくなったりすると「雇う側」と「雇われる側」に分かれて、溝が深まると様々な問題が発生します。

 農業を通して形成される仕事観

 「農」に関わる人のお話を聞くと「人生には自分の力ではどうにもならないこともある」という達観が身につくとおっしゃいます。どんなに頑張っても、天候や天災は自分の力ではどうしようもない、ましてや他人の責任に転嫁もできない。かといって手を抜けば、確実に生産物のできが悪い・・・・。作物にはには生産者の人柄がでます。
 もうひとつ、感じるのは「農業」は人と共同しなければ出来ないということです。

「多様な働き方」というめくらまし

 日本の人材サービスの最大手企業が「フリーター」に代表される「多様な働き方」というコンセプトを主導してきました。
 雇う側、雇われる側にとってそれぞれ都合の良い夢を投影できる言葉です。その結果、雇う側も雇われる側も「運命共同体」としてふんばる力が失われたのだと思います。「多様な人」が「それぞれの事情」を抱えながらも同じ目的に向かって共同する「農」の仕事観の再生が必要です。雇う側と雇われる側が、お互いに部分的に関わる、部分的に利用しあうというめくらましは、結果的に立場の強いものの都合の良い部分だけ利用されることになります。

 商業コンサルタントが主導する?「農」

 F総研という商業コンサルタントがあります。主催者のF氏と同じコンサルをすべてのスタッフが提供するというシステマティックな大手コンサルタントです。外食産業の人事コンサルなども広く手がけておられます。
 その企業が「農業」のコンサルに乗り出す・・・・らしいです。最近、確かに「農業」はブームであります。

 F社のシステム化、パッケージ化されたコンサルの仕組みが「農」を巡る事業にどのように活かされるか、私にはわかりません。「農業」の2次産業化、3次産業化は」確かに進んでいくでしょうが、同時に2次産業、3次産業での「農」的な価値観の進行もまた進んでいくと考えるからです。

 もし、遅れた「農業」を指導してやろうという発想であれば失敗するでしょうし、そうでなければ自社のアイデンテイテイを組み直していく必要があります。本気でやるのですか?

雇用を創出するのではなく「働きがい」を再創出するために「農」の価値観が重要なのです。

                                                  (2009年5月19日)
■ネット販売でも必要な「商売人のスキル」とマーチャンダイジングの重要性

ネット販売でも必要な商売人の基礎スキル
 
 インターネット店舗というと、一旦サイトを立ち上げてショッピングモールのサイトに出店すればば後は自動的に品物をさがしている人が訪れて、注文があれば発送すればいいだけで、店舗に比べて随分楽だと言う錯覚に陥りがちです。

 実際は毎日売れ筋をチェックし、在庫の状況の応じて補充またはマークダウンで売り切りを急ぐなどの判断を迅速に行い、毎日頁を更新し季節毎の変化をつけたり、購入者経送りつけるだけではなく、ひとつひとつコミュニケーションをとり接客をおこなうなど、店頭販売と同じだけの作業を、迅速に毎日休み無く繰り返す必要があります。商売人のセンスがない人はネット販売もできない・・・・ネット販売を甘く見てはいけないなと思いませんか。片手間ではできません。

 日曜日の朝テレビをぼーっと見ていたら、四国の「霧の森大福」の話が紹介されていました。ネット通販で販売もしているのですが、注文を受けたら必ず、その人へのメッセージを送り、返信があって始めて発送するそうです。お客さんとの対話を成立させてから商談に入るということで、店頭での接客を代替する物です。

マーチャンダイザーの仕事

 家具や家庭用品の安売りで急成長しているニトリでは「マーチャンダイザー」の育成が成長のポイントだといわれています。マーチャンダイザーは素材の買い付けから工場加工、物流からパッケージ、そいて店頭の陳列、売り方まで熟知しており、それぞれの段階でも実務的な人的ネットワークを持っています。
 それだけの人材を何人も抱えているからこそ、安い価格で品質の安定した商品を持続的に供給できるのですね。

 料理のツマにつかう葉っぱを売って高収入を得ている過疎地のおばちゃん達の話がよく話題になります。地域興しの成功事例というのは少ないので何度も取り上げられています。あの葉っぱについても、どの時期にどのような葉っぱの需要があるかを予測し、おばちゃん達にファクシミリで連絡してとりまとめている人がいます。商品価値のあるはっぱの生産指導も行っています。

 〜その人はつまの営業開拓を行い、商品としてのツマとなる素材を選別し、その時期の需要予則も行っています。さらに生産者であるおばちゃんたちのモチベーション管理まで対応しているのですからこれもまた立派なマーチャンダイザーの仕事といえそうです。

カリスマバイヤーの負の遺産

 百貨店出身の有名カリスマバイヤーが、百貨店時代に創った自主編集の雑貨売場があります。お客さんには大変好評な売場なのですが、そのバイヤーの買い付けた商品の在庫が退社から数年以上たった今でも沢山倉庫に眠っているそうです。
 数々の企業のトップに迎えられるほど有能な百貨店バイヤーでも商品を売り切るだけの眼力はなかったのでしょうか?カリスマバイヤーの責任というより「販売現場」のプロからの発言力を持たせておく仕組みが必要だったのだと思います。

 販売現場も知らない、素材や製造現場も知らない、顧客も知らない・・・会社に業者を呼びつけて商談するだけというバイヤーがもし存在するなら、そんなバイヤー制度を持っている百貨店は無くなっても仕方がないでしょう。

 「商売人のスキル」は時代が変わっても基本的な資質は変わらないのだと思います。こんな面白い仕事の次の時代のリーダーはどの業態、どの企業になるのでしょうか。百貨店にだってまだまだ可能性はあると思うのですが。

                                                      (2009年5月18日)
■大阪の街角から

 阪神なんば線その後

 阪神なんば線の開業で奈良公園の利用者が5割アップしたとか。近鉄大阪なんば駅から奈良方面に乗っても先客が結構多い(なんば以西から乗ってくる人が多い)とぼやいている人がいました。

 ペット受難の季節

 近所を犬を連れて散歩されていた方が迷い犬のトイプードルをつれて帰ってこられました。ペットショップのお話ではこの季節、引っ越しなどで引きとりてがなく、捨てられる愛玩犬も多いとか。そういえば、別の知り合いも飼い主が放棄したらしいミニチュアダックスフンドの子犬を拾って育てているとか・・・・。バブルの後にシベリアンハスキーが野良犬になっていたと話題になっていましたが、室内小型犬は野生の生活力もなさそうで人なつこいぶんだけより可哀相です。

 魚屋さんの寿司屋が成功する理由

 お寿司は米と魚を材料としますが、お米やさんが寿司屋をやってもうなくいかないが、魚屋さんがお寿司さんをやると成功すると聞きました。
 すし職人さんは端材を気前よく捨ててしまうので材料費のロスが多くなるのですが、魚屋さんは魚の使い方を知っているので、その材料をうまく使い回しして無駄がないから・・・・だそうです。
 
 JR尼崎駅前の商業施設名は「COCOE」(ココエ)、そして大阪駅の空中宮殿

 今年の10月にJR尼崎駅前に開業する複合商業施設。57,800uに阪神尼崎店5,800u、平和堂9,900u、シネマコンプレックスで構成されます。

 先日発表されたJR大阪駅の伊勢丹三越のターゲットは芦屋の富裕層を対象にする?らしいのでバッティングはしないでしょうが、商圏の足元は競争相手に固められつつあります。空中に浮かんだ宮殿のような百貨店になるんでしょうね。それはそれで好きなんですが。
 

 心斎橋そごうから「今半」の店が撤退

 売却が決まっている心斎橋そごうの地下から、目玉の一つであった肉の「人形町今半」が撤退しました。牛肉にはうるさい関西で東京の店を目玉にする度胸には感心しましたが、閉店をにらんで早々に撤収が始まっています。
 以前も申し上げましたが「今半」を持ってくるなら総菜(コロッケ、メンチカツ※関西ではミンチカツと表記、フライなど揚げ物など)の店を持ってくれば成功したと思います。確かにうまいもの・・・・。

 大丸に買収された後は、周辺で好調なOPAのような店にする模様です。そごうの食料品売場はおそらく閉鎖されるでしょう。

 そごう元社長の和田サンは百貨店はローカルな地場産業だとはわからないまま引退されたのでしょうね。
                                                          (2009年5月15日)
■「和田金のホルモン」?

 松阪牛「和田金」のホルモンはどこにあるのか?

 かつて、某電鉄の役員さんが松阪牛「和田金」は肥育した牛のホルモンをどうしているか気になって調べたそうです。さぞや美味しいに違いないと考えれば考えるほど食べたくて食べたくてたまらなくなり手を尽くしたそうですがとうとう見つからなかったそうです。
(追記:ちなみに人工的な肥育牛の内蔵は美味しくないそうです・・・・)

 ホルモンではないですが、「神戸大井肉店」の細切れ肉とか「はり重」のお晩材用の細切れ肉はさすがに脂肪分も美味しくてすき焼きには愛用しています。
 大阪では、昔、細切れ肉は「潜行艇」といったそうです。・・・・「なみ(波)(並)の下」ということで・・・。

 農産物でも商品になるのは約6割程度だそうです。特に贈答用の果物など傷がつけば終わりですし、しかも日持ちはしません。何とかフレッシュなまま沢山の人に食べていただくのにどうしたらいいのか?いくつか考えないといけません

 アウトレット,SPA・・・ファッションの楽しみはどこへ?

 ファッション用品のアウトレットもまあ、その種の一流品の傷物といえなくもありません。それでも定価で買う人々がいなくなればアウトレットには商品は流れてきません。和田金ですき焼きを食べる人がいなくなれば、ホルモンも提供されません。
 最近、低価格で流行の先端をいく商品を提供するというふれこみの欧米のSPAが進出してきていますが、縫製がチープでそれなりのものです。

 このままではファッションの楽しみがとてもやせ細ったものになりそうです。今後景気が回復したときに市場をリードするのはどのような人々でしょう。バブルの時の不動産屋さん、ITバブルの時のオタク風成金(ホリエモン氏)、あるいは得体の知れない金融業者さん・・・・一過性の富裕層ではなく趣味の良い人達が沢山お金を使ってくれるといいですね。
 そうしたら、アウトレットにも趣味のいい商品の傷物が流れてきてくれるでしょうから・・・・(どこまでいっても定価で買う気はないのか)。

 美味しい物を食べたいし、流行のセンスのいい物も身につけたいけれど、それだけにお金を使う気はない(使えない)。それが今の消費者の最大公約数の意識でしょう。ユニクロや100円ショップを使っていても満足しているわけではない、かといって伊勢丹では買わない。どの業態、どの店が残るのかその見極めがポイントです。
                                                            (2009年5月14日)
■船場の元気にもう1段階のブースター点火を
 船場に火をつけた「船場げんき提案」

 大阪船場地区は大阪市中央区。北は中之島の土佐堀川、南は長堀川(現在長堀通り)東は東横堀川、西は西横堀川(現在は阪神高速道路)に囲まれた南北2.1KM東西約1.1KMの約230haの区域を言います。
 かつては商都大阪の心臓部として、商社、薬品会社が軒を並べ大阪の繁栄を支えてきていました。江戸時代から商人が街を支えてきた伝統は市民の誇りでもあります。

 その船場も産業構造の変化による、関西の地盤沈下によって問屋街にはシャッターがおりて「シャッター通り」と呼ばれるまでに街の活力が低下していました。

 2001年UR都市機構が主催し、関西の気鋭の学識経験者が関わった街の活性化のアイデア募集「船場げんき提案」はその退潮傾向に歯止めをかけ、船場地区を再浮上させるきっかけになったものです。

http://www.semba-genki.net/genki/sug/index.html へのリンク

 船場地区にはもともと地域で何とか街を良くしていこうと活動している団体が多かったのですが、それがひとつにまとまる結果になり、以後各種のイベントでのまとまりに繋がっていきました。

http://www.semba-genki.net/genki/info/events_past.php へのリンク


 また、この時期から「都心居住」に再注目が集まり、民間の住宅開発も促進され、定住人口が増加し始めています。

 北船場地区ではケイオス澤田氏らのプロデュース活動により、オフィス街の中での飲食店の開発が進み「淀屋橋ウェスト」は地域開発の成功事例として雑誌にも取り上げられ、「淀屋橋odona」の開業につながります。

 船場はこれで再生への道を進んでいるのでしょうか。

 最近の話題は「船場吉兆」のスキャンダルであったり大阪を代表する高級フレンチ「シェワダ」の破綻であったりと決して明るい物ではありません。船場GENKIの会など民間事業者の立場でまちづくりを支えた「辰野」の辰野元彦氏のご逝去も大きな傷手であります。

 サザンクロスの閉店が示すもの

 御堂筋と長堀通りの角にあった喫茶店「サザンクロス」の解体工事が始まっています。
 長堀21世紀計画の会を長く支えておられた成松孝氏の経営されていた店舗です。長堀21世紀計画の会の活動は長く、地元市民の立場から地下鉄長堀鶴見緑地線計画やクリスタ長堀の計画などにも提言し地域のまとまりを牽引してきました。成松氏は理事長を退かれ後任には元大丸の吉田正雄氏が就任されています。

 成松氏は会の活動の為に家何軒家分の私財を投入されていました。先述の辰野氏もかなりの私財を投入されているはずです。お上にだけ頼らない大阪の伝統と言えば格好がいいのですが、これでは民間の個人が倒れてしまえば、大きく中断してしまいます。そこで終わりになります。〜もちろんそれぞれの団体の後継者は人格識見とも最高の人材と言える方が引き継がれています。

 サザンクロスの閉店が土地オーナーの賃料引き上げ要求にあると聞いて大きな懸念を持ちます。船場地区が活性化しかけて中途半端に賃料相場があがると、新しい企業、意欲的な起業家が離れていってしまうの事です。

 民間だけにまかせるのではなく、公共のセクターの力を使ってもう一段ロケットに点火する時期に来ていると考えます。お金はないでしょうけれどね。

                                      (2009年5月13日)
■「みんなの意見」はどこまで正しいか?
 楽観的な「集合知」信仰と「専門家」の「独善」の狭間に

 永らくこの業界に身を置いていると「WEB2.0」と言うキャチコピーはその登場の仕方から、どこまでいっても商売のための「流行物キャッチコピー」に見えます。
 インターネット上で発信されている情報の多くは単にマスメディア情報のコピーであったり、極度に政治的なプロバカンダとしか思えないものがあふれているように感じます。ネットメディアの内側にいるスタッフのシニカルな内幕本も沢山出版されています。「ネットのヘビーユーザーは暇人でありマーケットリーダーではない」・・・・・巨大掲示板での誹謗中傷や、有名人ブログの炎上書き込みなどを毎日みていると、そのように感じるのも無理はないかも知れません。

 「みんなの意見は案外正しい」という書籍では少数の「専門家」の意見より、多数の「素人」の意見の集合の方が正しい結論に近いという事例を検証した本です。〜市場調査の仕事を続けてきた経験から、ある種うなずける点も多いです。「お客さん」は専門家より先入観なく店への評価をされる分、その意見は概ね正鵠をえていました。

 問題は「みんな」の集合のランダム性がどこまで確保され、予断を与えられていないかです。「専門家」は知識があるだけ、「予断」にとらわれやすいということもいえます。

 ネットを活用したコミュニケーションのコツ

 インターネットの場合「「少数派の意見」が濃縮され、共通の考え方をもったコミュニティの中で独特の雰囲気が形成され炎上します。「少数派」の意見が間違っているというわけではありません。現在は少数派でも、通常は時間をかけて浸透していき、ある程度のシェアを持った中で社会に受容されていきます。そのプロセスをへないで意見や考え方、情報はきちんと浸透しません。

 広告メディアとして「ネット広告」に注目が集まっています。ネットにはマスメィアの欠点を補う良い特性がありますが、不特定多数を相手にして「PV数」を競うより、企業にとって「特定された顧客」との双方向のやりとりに使うことがその活かし方であると考えています。不特定多数は相手にしない方がいいでしょう。

 農薬問題は原発の議論に似た様相を示している

 農業のことを調べていると「無農薬」というのは知識がない素人の感情的な反発だという言説が見られます。野菜の毒性はもともと自然界に存在する物であるとか、農薬に変わる天然由来の「木酢液」などもその成分には毒性がある、とか農薬会社は殺虫したあと無害化されるように安全性に配慮してつくっているとかいう議論です。すべては「無知」な素人の感情的な反応であるとするものです。(何か原発を巡る議論に似ていますね)

 「有機肥料」についてもその功罪は議論が分かれます。一部の人が「有機」「無農薬」というだけで高い価格をつけて「不当」な商売をして儲けているという意見もあります。(正論を貶める論法は、地球温暖化に対する懐疑派の意見に似ています)

 正直、この件に関しては正確な結論を出す材料は持ち合わせていません。かといって判断を専門家にだけまかしていてはろくな事がない事も事実です。
 今のところ農薬や化学肥料をたっぷり使った野菜は気持ち悪いという生理的な判断をもとに、一人一人が情報を集めて考えて行かなければいけないでしょう。食べることは基本ですし、子供や孫達のためにも正しい判断をしていかなければならないと考えます。

 その為にも、実際に生産者の信念に基づいてつくられた農産物の流通が「公益性」の点でも「ビジネスの持続性」の点でも重要な役割を果たします。
                                                          (2009年5月12日)

 
■「婚活」時代の次は「産活」「終活」の時代?
 
 「自分の生き方は自分で決める」のが正しいのか?

 未曾有の経済危機の中で「就活」(就職活動)中の学生(大学3年生)は毎日、エントリーシートで自分の「価値」と「応募企業での仕事への熱意」をアピールしています。プレゼンテーションは職業の業務遂行上に必要なスキルですが、表現技術のマニュアルにとらわれて、自分自身の内面の見直し、本当に何がしたいのかを考える機会になっているかというと、疑問ではあります。
 最近は「婚活」が流行しています。かつては、ある年齢になると何となくみんな結婚する、できるものだと信じられていました。親戚や職場でお世話をする人もいたり、お世話をされる側も何となく適当なところで手を打っていたということなのでしょうか?楽しく遊んでいたら、気がつけばいい年になって回りには適当な相手もいない・・・・。自分の望ましい結婚生活を実現するためにはそのための準備をして、結婚相手との出会いも計画的に行わないといけなくなっています。

 婚活で首尾良く望みの条件で結婚したとしてその次は出産を計画的に行う「産活」でしょうか。初婚年齢が高齢化していますから、安全な出産のための計画が大事になる・・・・・・。

 「婚活」にまつわる諸々を眺めていて感じるのは、「自分」にふさわしい相手、「自分」の求める生活イメージの実現など、「自分」は変わらずに相手や環境が自分に合わせることを求めているようなニュアンスが強いことです。「自分はかわらなくて回りに求める」というのは自律的な人生なのでしょうか?

 仕事にしても結婚にしても「自分を活かす」だけでなく、相手によって自分が変わり、自分の影響で相手が変わるという渾然一体となったところに醍醐味があるように思います。

 余談ですが仕事に関して強い影響を受けた言葉は「自ら仕事を創りだし、仕事によって自分を変えよ」という某社の社是?です。社会人になる前にしばらくお世話になり、その言葉の印象は私の一生の職業観に影響を与えています。

 エンディングノートは誰のためのもの?

 最後にあげた「終活」は、NPO法人NALCが発行した「エンディングノート」の人気から思いついた造語ですです。自分の最期の時に家族が困らないように連絡事項を書き残すことや、友人知人の連絡先、葬儀のイメージなどの希望を書き残すノートでNALCのメンバーの方々が主体となって制作をされるのをお手伝いしました。7万部発行される隠れたベストセラーです。最近、類似の本が多数出ています。

 会員の方々は純粋に、残された家族が困らないように書き残したいという動機が強いようです。

 ただ、興味深いのは、もう少し若い世代(団塊世代前後)での受け取り方は、家族のためというよりかは「自分」のことを書き残し、死後の自分への評価を自分で飾っておきたいという「偽自分史」的なニュアンスが強い事です。まだまだ自分の死が身近な実感ではなく、リタイア後そして将来の自分の死後の「社会的な評価」が気になる「現役未練世代」なのでしょう。

 NALC等のボランティア団体に参加すると生まれ変わった人生が実感できるのですが、中途半端に現役時代の「鎧甲」を身につけたまま自分の最期と、その後の周囲の評価が気になるのでしょう。人のためとか世の中のためというより「自分」が大好きなのでしょうね。棺の蓋をおいたあとの評価まで自分でデザインしたいのです。

 実は、NALCのメンバーの方に「エンディングノート」の続編として「自分史」を書き残す「自分史ノート」の作成をおすすめしたことがありましたが、今ひとつ「のり」が悪く実現しませんでした。確かに、どの世代でも一部には「自分史」好きのひとはどこにでも存在しますが、過去の肩書きを捨てて参加する「NALC」会員には、現役に近い世代の中にある「自分を美しく飾って残したい」というニーズはあまりなかったようです。

 特に男性には定年後の人生を心楽しく生きる「隠居活動」への意識変革マニュアルが必要なのかもしれません。

                                              (2009年5月11日)
 ■駅チカ立地の飲食店における繁盛の条件について
 沢山あっても「ここという」決め手にかける駅チカの飲食店

 少しグルメを気取る人にとって、駅に近い商業施設(大阪であれば阪急三番街やなんばシティ)の飲食店は特にここと選べないといいます。確かに、立地がいいので、どんな店でもそこそこ人が入っています。特に店の特徴を出す必要はないのかもしれません。
 賃料も高いので、どうしてもチェーン展開している資本力のある店が中心になっています。グルメの人には物足りないかも知れません。

 それでも、よく観察していると、流行っている店とそうでない店の差はあります。その条件はどのあたりにあるのでしょうか。

 飲食店の4つのパターンと客層

@コンセプトに新鮮さはないが味に定評のある店
 和食店や「インディアンカレー」などの店のブランド化ができていて定評のある飲食店。年配層を中心に幅広い層に利用されていて安定しています。食事中心の店は、定番になると強いようです。
 また居酒屋業態でもおしゃれな居酒屋より昔ながらのおじさん向けの居酒屋が老若男女で賑わっています。

Aコンセプトに新鮮さがなくありきたりの店
 喫茶店業態で多いのですが、特に特徴のあるメニューを出すわけでなく、旧態依然とした商売を続けている店。有名店であってもこの業態では飽きられるのが早いようです。ターミナルに近いのでピーク時は人が入っていますが、オフピーク時は閑散としています。
 有名店ではあっても定番としてのブランド性が確立していないのでしょう。特にターミナルの近くの飲食店は若い利用者も多いので昔の有名店でも知られていないのでしょう。

Bコンセプトは新しいが入店客が少ない店

 同じようなコンセプトの店(例えばパスタ専門店)が複数あっても流行っている店と、流行っていない店があります。一つ一つ検証したわけではありませんが、おそらく味、ポーション、価格、環境のバランスが悪いのだと思います。
 また、良い店であってもターミナル立地になじまない店もあります。イタリア料理のサバティーニは味何の評判はいいのですが、価格帯が高く回りの店舗とあっていません。
 阪急三番街では面白いコンセプトの店でも、価格設定の高い店はやや苦戦しているように見えます。ある程度ゾーニングはわけているのですが、フロアや店舗環境がわかれているのでないので、損をしているのかも知れません。

Cコンセプトが新しく、流行っている店

 立地上、利便性で利用している人が多いため喫茶プラス軽食というかカフェ業態がまんべんなく集客しています。女性向けの1プレート程度の軽い食事とデザート類の充実が流行る条件です。健康志向や和スイーツなどの流行の要素をとりいれて、お得感のある価格設定の店が強いようです。

良い店が流行る店、儲かる店とは限りません。立地に合わせた業態選択が必要でしょう。また、いい店を誘致したいのならば、それなりの店舗環境作りが必要です。

 食博覧会のジレンマ

 現在、インテックス大阪で「食博覧会」が開催され、盛況です。
 これだけの規模の食企業が集積するのは圧巻です。運営には大変なご苦労があると思います。盛況なのはいいのですが、人が多すぎてゆっくり試食できる場所が不足しているのはとても残念です。折角のリーガロイヤルホテルのフォアグラ丼も、但馬屋のステーキも地べたに座り込んで食べるのは残念です。
 食は素材だけでなく人と環境も大事な要素なのですが、どのように宴のコンセプトを活かしていくのがいいか、色々考えさせられました。

 普段、競争している企業が一堂に集まる貴重なイベントですので、4年後に向けて知恵を絞って、頑張って継続されることをお祈りいたします。
                                      (2009年5月8日)
 ■市民農園とスモールビジネスそして「あたたかいお金」についての考察
 
 失業対策から始まったドイツの市民農園の存在感

 ドイツの市民農園(クラインガルテン)には200年の歴史があります。もともとは失業対策から始まったもののようです。
http://www.umwelt.jp/index_kleingarten.html へのリンク

 あるサイトではドイツの野菜の50%が市民農園で生産されているという記述があります。永田農法で有名な永田さんの著書ではこれからの農業は大規模化された農業法人による生産と、「市民農園」のような小規模生産に2極化していくだろうと述べています。その中でドイツの農業生産の3分の一はクラインガルテンによると記されています。ただし、その生産物は「販売」してはいけない(自家消費?)なのだそうです。
 
 これらの事実関係については私自身、もう少し調べてからご報告しますが、今までレジャーの1種だとしかみていなかった「市民農園」に思った以上の可能性があるように感じています。

 定年帰農は小さく始めて「高い価値」を持つ農産物から始める?

 定年後昔食べていたような美味しくて、安全な食物をつくりたいとか自然に向きあった暮らしがしたいと就農を考える人が増えています。今の農業の仕組みでは補助金や貸し付けは整備されますが、一定の規模以上の生産をする。つまり借金を抱え、かつ人を雇わないといけない規模で始めざるを得ないようになっています。
 借金を返すために思ったような自然な生産物がつくれない可能性が高いのです。

 生活のベースとして年金があるのなら、大きく始めるのではなく、自家需要+おすそわけ程度で、自分が納得いくような農法(さまざまな流儀があるようです。私には今のところどれが正しくて、どれが間違っているかは断言できません。)で生産物をつくり、少しずつ「おすそわけ」を広げていくというやり方に可能性を感じます。

 芦屋のおばちゃん経営の「専門店」方式

 阪神間には、かなりこだわったグレードの高い「ブティック」「飲食店」「教室」が点在しています。オーナーのこだわり趣味が色濃く出ていて、ハイエンドのニッチともいうべきジャンルを形成しています。
 経営者の多くは資産家であったり、資産家の奥様、お子様が経営しているモノです。とても「借金」をして始めて軌道に乗せるのでは破綻しそうな店ばかりです。
 「道楽」でやる店は直ぐにつぶれますが、「こだわり」を続けることで差別化ができ競争力を高めることが可能になります。
 このようなブティック型の農業で徹底的にこだわったものが生産できれば、国内だけでなく、国際的な競争力を持ったジャンルのモノが開発出来るかも知れません。

 団塊世代は年金もあり、退職金ももらえる最後の幸せな「プチ資産家」が多いので、そのようなブティック型の農業生産が可能ではないか思います。

 資産家ではない我我貧乏人がもし、農業を始めるのであれば、やはり借金はしない範囲で小さく始めて、少しずつひろげていくしかないのですが。商業ベースで考えるのではなく、生産物の交換という発想もあり得ると思います。

 顔の見える「あたたかいお金」での交換

 「通貨」というものへの不信感が拡がっています。こつこつと爪に火をともして節約してひねり出した利益が、為替の変動であっという間に吹き飛んでしまうとか。長年積み立ててきた貯金がインフレであっという間に価値が急落してしまうとか。

 地域通貨とかエコマネーといった「通貨」によらないサービスや物の交換の動きがあります。顔の見える相手同士の交換なので「あたたかいお金」と表現されることもあります。

 永く、ご厚誼を賜っているNPO団体「ニッポン・アクティブ・ライフ・クラブ」の時間預託制度は、ボランティアの活動時間をポイントとしてためておいて、将来自分が手助けが必要になったときにそのポイント分手助けを得られるというユニークなシステムをとっています。

http://nalc.jp/ へのリンク

 日本全国どこでも会員がいる地域ならサービスを受けられます。

 市民農園的なスモール農家の農産物でもこのような相互交換システムがとれないかと考えます。自然な農産物は旬にはどさっと大量に収穫されて自家消費では食べきれません。時には出荷しても「値崩れ」するとして廃棄されることもあるようです。
もったいない。

 農業というのは保護されてきた業界だけに考えると色々と面白い事業アイデァが生まれてきます。高齢社会での高齢者の働く場の提供。食糧自給率の向上など、今までの仕組みから発想を切り替えれば、出来ることは沢山あります。

                                                     (2009年5月7日)
 ■儲ける仕組みのチェックポイント
 儲からない「プライスダウン」としっかり儲ける「プライスダウン」

 商品・サービスの絶対的な価格は競争の中で、基本的には下がっていきます。その中でどのようにして利益を確保していくのかが「儲ける」ためのポイントになります。

1.市場導入時の価格を十分な利益の取れるモノにする〜市場を創造する

 この世の中で全く新しい商品というのはそうそうありません。既存の市場の中で、どのジャンルの商品として位置づけるかそのフレームで、その価格が「高い」か「安い」か判断されます。
 最近、紳士服専門店で「女性向けのスーツ」の扱いが増えています。従来の百貨店の「リクルートスーツ」というジャンルの中では割安感がありますが、決して低価格品ではありません。素材、縫製など紳士服の基準でつくられていますからしっかりしています。
 リクルート時だけでなく営業職の女性にはスーツは必需品にして消耗品です。百貨店が扱っていた婦人服では、そのような実用スーツの発想はなく、割高になります。
 一見、ありふれた商品ですが「ブルーオーシャン」(競合のない新しい市場)を開拓すれば無理のない価格設定ができます。

2.利幅を下げても販売量でカバーする〜薄利多売

 現在、多くの企業が採用しているディスカウントの根拠が販売量の確保です。1点あたりの「利益額」は下がったとしてもお買い上げ点数が増えれば「トータルの利益額」は増える。また来店客が増えれば「シナジー効果」で他の商品も売れるので、店全体としてはプラスになる・・・・というのがその理屈です。
 「高級フレンチ」より「餃子」「お好み焼き」「たこ焼き」の方が儲かるという理屈です。はたしてそうでしょうか?価格を下げなければお客さんが来店しない状況というのは競合店にも影響のある「不景気」の時期です。競合店も価格を下げてきたとき、利益を削る消耗戦は共倒れの道への一里塚のように思えます。

3.流通の無駄を省いてコストカット

 それでは自社の利益を削らないで「低価格」を実現するにはどのような方法があるでしょう。「流通の無駄を省く」という言葉が良く聞かれます。
 「産地から直接大量に買い付ける」=中間マージンをカットして商品の価格を下げるやり方です。ただし、その際中間の流通業者が負っていた「在庫・返品リスク」を小売業者が負うことになります。
 徹底したコストダウンをはかる事業者は「商品企画」「原材料」の調達も自社で行い、メーカーは加工作業を賃仕事で受けるという形で供給する事もあります。この場合大幅に超すとカットできますが、「商品企画」「材料調達」のスキルを持った小売業者はそんなに多くありません。総合商社がその機能を担うことになりますが、小売り段階でこそわかる「消費者ニーズ」に知見のある総合商社もそんなに多くありません。
 簡単に「流通の無駄」を省くといいますが、「優越的な地位を濫用」して取引先に値引きを迫るというような安易な対応は長続きしないことは胸に刻む必要があります。。

4.「製造工程」「流通コスト」を購入者に「楽しみ」として負担してもらう

 アクタスの家具は組み立て前のキットで届きます。購入者は自分で組み立てて完成品にします。その為商品の価格は抑えられます。
 産地直送の野菜はたいてい品物は選べません。サイズもばらばらのものが混在しています。サイズを選別したり、泥を落としたり、旬でたくさんとれるもの以外の野菜を揃えたりする手間のコストをおさえて提供することで価格を抑えているのです。ちなみに居酒屋チェーンで焼き鳥を串に刺すのをやめて皿で提供している店があるそうです。原価の半分は材料費でもう半分は「串」と肉を串に刺す人件費なのだそうです。「サイゼリア」では調理の工程を分析し作業量を減らし効率的に調理する仕組みをつくることで低価格を実現しています。
 ロスカットによって利益率を下げずに価格ダウンを実現することは、必要な対応です。製造工程の一部を消費者が「楽しみで」担うことができればなお効果的です。
 例えば、「自分で組み立てるログキャビン」とかは組み立てを自分でやるわけです。また「産地での野菜の直売」はいわば、」物流を自分で行っているようなものです。リピーターをつくるとか、アメリカのCSAのように自分で産地まで取りに来る仕組みができればコストは大きくカットできます。

5.商品の販売から別の収益源を得る

 商品自体は安い価格で販売しても、その跡のメンテナンスや消耗品んで結構お金を取られるケースは多くありますよね。パソコンのプリンターや携帯電話の通話料など・・・。そこまで露骨だと少しあくどいと感じますが。商品に関連するスクール事業や、中古品の流通事業、ツアー事業等。商品の購入をきっかけにできた「顧客」とのご縁を収益源にしていく事が出来れば、商品の価格ダウンを十分補える利益を確保できます。
 

6.「価値」に共感するお客様を対象に商売をする

 同質化した商品を顔の見えないマスを対象に売っている限り。価格ダウン圧力は果てしなく続きます。
 商品のコンセプトに共感して「価値」を認めてもらえる購入者を「顧客」として獲得できれば、(価格ダウンの努力は必要としても)持続性のあるビジネスに取り組めます。
 毎日食べるお米。私たちは通常1kg300円程度のお米を食べています。百貨店で売っている、こだわりのお米で1kg700〜800円。思い切って1,000円でしょうか。ある店では1kg5,000円のお米を売りたいという要求があるといいます。そこまでこだわるお客様をつかんでいる自信のあらわれでしょうね。産地や農法だけでなく、どの畑で誰が作っているか?でずいぶん味が違います。さらにどの年が当たり年であるかという違いもあるそうです。ワインなどの事例をみればそういうこともあるのでしょう。

 この事例は極端にしても、時計や靴などには強いこだわりを持つという人は沢山います。「富裕層」というくくりかたはしたくありません。長年の観察で例えばシニア、例えば富裕層という分類で商品に共感する人を選別できないという結論に足しいています。
 もちろん、高価なものを高頻度で購入できるのは「富裕層」でないとできませんし、その人は結果的に「シニア層」かもしれませんが・・・・。

 「理念」とか「コンセプト」などを抽象的な遊びとして受け付けない人がいますが、実は儲けるための重要な鍵なのです。

                                                (2009年5月1日)
 ■GWはおうちでカフェ気分 〜ホリディスペシャル 特別版
GWどう過ごしますか?

今年のGW(4月25日〜5月6日)は長期休暇を取りやすい曜日配列です。JTBによると燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)の下落、円高傾向など好材料がそろった海外旅行は前年比10.1%増の50万人と2けた増加、国内旅行は2.9%増の2140万人。東・中・西日本高速道路会社によると、ガソリン価格の安定、ETCの休日割引制度の導入などもあり、車による旅行が増え、10キロ以上の渋滞は372回で、昨年の1.7倍発生すると予測しています。
旅行は楽しいですが、出先の混雑や往復の渋滞を考えると自宅でのんびり過ごしたい、ペットを飼っているので出かけにくい、不況だし節約志向で過ごしたいという人も多いはず。でも、長い休暇を普段の休日と同じように過ごしてしまうのも、気分転換できずもったいないですね。

自宅バルコニーをカフェに

おうちで手軽にリゾート気分を味わえる過ごし方をご紹介しましょう。
自宅のテラスやバルコニーに、小テーブルを広げ、カラフルなクロスを掛けてパリのカフェテラスを作ってしまいましょう。イスはアウトドア用の折りたたみ椅子で十分。リクライニング機能が付いていればのんびり昼寝もできてさらに快適です。洗濯物やガラクタの山が見える、隣の家の窓が近いという場合は、背丈のある観葉植物かラティスでも置いて、視界を遮るのがいいでしょう。床にウッドデッキを敷けば、裸足で歩けて気持ちいいですよ。とにかく一角だけでも非日常空間を作り上げてしまいます。
 ランチメニューはテイクアウトのお惣菜でも、自分でサッと作ったおつまみでも、何でもいいです。ワインを片手に、のんびり味わいましょう。オリーブの実やナチュラルチーズ、野菜のバーニャカウダーがあれば、パリを飛び越えて南欧気分に浸れます。外食ではワインを何本も飲むと酔って足元がふらついたり、支払いのときに青ざめたりしますが、家ではたくさん飲んでもへっちゃらです。お腹がいっぱいになったら、そのままお昼寝するもよし、読書タイムにするもよし。青空と風を感じながら、好きなだけだらだらしましょう。たとえ別荘地などに行ったとしても、同じように食べて、寝て、だらだら過ごすのがリゾートなのですから。
このおうちカフェの良いところは、小さな子どもがいてもペットがいても一緒に過ごせるところです。最近はカフェランチを楽しむ幼児づれファミリーをよく見かけますが、食べ終わると、子どもがむずがる前にそそくさと出て行きます。ドッグカフェも増えてきていますが、人間も犬も両方満足できて、ここまでゆっくりくつろげるところはないでしょう。
風が冷たくなってきたら、今日のカフェテラスは店じまい。
明日のランチメニューを考えるのも楽しいです。ボイルドソーセージ、ベーグルサンド、シュウマイなど中華もいいし、ベトナム風生春巻き、焼き鳥や串カツもビールに合いますね。もっとも、パリのカフェのはずが、いつの間にかアジアや日本の屋台になってしまいますが。
これで長いGWのうち3日くらいはリゾート気分が味わえるのではないでしょうか? あとの何日かは、本当のカフェに足を運んでみましょう。おうちカフェに何をプラスすればもっと快適になるか見えてきますし、家ではやはり味わえないスペシヤリティを感じることでしょう。
           (written by Mrs.analog)  (2009年5月1日)
 4月
 ■何が売れているか?ではなく、何故売れているか? への切り替え
 クイックレスポンスで流行商品を提供する「フォーエバー21」

 4月29日に原宿にオープンした「フォーエバー21」は流行のデザインの商品を安く提供するところに特徴があります。商品の品質には「?」と言う声も多いのですが、流行のモノを身につける「高揚感」を楽しみたいがお金に余裕のない層には歓迎されるかも知れません。日本では駅ビルに出店している専門店の多くが、すでに流行したモノをいち早くコピーして安く提供するビジネスモデルを確立していますから、事業として成功するかどうかはわかりません。
 売れている物をコピーしたり、売れている売場を模倣している企業の多くが必ずしもうまくいっていないのは何故でしょう。

 ユニクロの利益率、百貨店の利益率

 ユニクロの高い利益率が話題になっています。15%?百貨店では三越が0.6%。一番利益率の高い京王百貨店で4.2%です。昨年の冬は「ヒートテック」が大変好調でした。同じような商品を並べていた他の小売業はそれだけの利益をあげていません。表面的に売れている商品を模倣することは簡単ですが、利益を上げる仕組みは簡単には作れません。

 「何故売れているか」を問い詰めないと「利益を上げる仕組み」への改革はできない

 「利益を上げる仕組み」づくりには今の仕組みを組み替える覚悟が必要です。お取引先との関係の見直し、リスクを引き受けるだけの「売り切る事への成算」、原材料の見直しなど、保守的な現場を説得しサクセスストーリーをつくって確信を共有する事が必要です。その為には自社の「顧客」の声を徹底的に聞くことと、バリューチェーンの中の課題を外部の力を借りてでも徹底的に洗い直すことです。
 「何故売れているか」「何故儲かっているか」について、マーケットと供給サイドの両面から突き詰めて、思い切って改革することが必要です。

 「儲ける仕組みのチェックポイント」についてはGW特別企画として明日掲載します。     (2009年4月30日)
 ■地方百貨店が地域文化を守る〜シニアが望む百貨店像
 地方百貨店の存在意義

 今までに全国各地の百貨店と一緒にお仕事をさせていただきました。都心の全国を商圏とするような百貨店から人口5万人の都市の地場百貨店まで。かつては、地方には地方独自の文化があり、その土地に親しまれている百貨店が沢山ありました。
 都心の百貨店のご担当者には「泥臭い」「垢抜けない」店も少なくないでしょうが、その土地においては、その土地の土壌に応じた百貨店のあり方があると思います。
 このサイトでも、「東京の百貨店」や「全国展開の大型ショッピングセンター」に対して辛辣な意見を述べることが多いのは、そのあたりの認識のギャップを埋めたいと強く思っているからです。

 経済紙などの論調では、地方の多くの百貨店が絶滅するかのようにいわれています。確かに状況は厳しいのですが、特に「昭和」の時代を生きてきた世代には「百貨店」への期待はまだまだ大きいものがあります。旧態依然とした販売技術を改善しながら、期待に応えていく百貨店に生まれ変わる事が「地方文化」を守ることにつながると考えています。

 ニーズ対応には知恵を絞る必要〜シニアのわがまま対応が鍵

 図は全国規模のシニアのNPO団体、特定非営利活動法人ニッポン・アクティブ・ライフ・クラブが生活研究アドバザーモニターを対象に行った調査です。
 効率追求の考え方からは逆行するでしょう。要望をいわれたまま今までのやり方で対応していれば、確かに利益率は下がります。「不満がでてしまう環境」はそれなりの理由があってそうなってしまっているのですから。
きちんとニーズに答えてかつ、利益を上げる仕組みをつくれば、地方百貨店としてのコアコンピタンスとなり競合環境の激化に勝ち残れる鍵となります。                    (2009年4月28日)
 図ー 都心の百貨店に対するシニアの不満上位10項目  (N=465)

特定非営利活動法人ニッポン・アクティブライフ・クラブ
NALCシニア研究所 2004年調査
 ■大阪の重心は西へ〜御堂筋の西が変わる
 御堂筋を渡らせるのは至難の業といわれたのは過去の話

 20年前までは御堂筋を西に渡って回遊させるのは至難の業だといわれていました。それでもアメリカ村が話題になった80年代以来、西側の堀江や南船場がファッションゾーンとして注目されるようになり、利便性では劣るモノの、「おしゃれな街」としてのイメージは完全に定着しました。阪神なんば線が開業して、道頓堀の護岸工事も完成し、大阪なんば駅周辺は回遊動線も環境も飛躍的に良くなっています。
 堀江はもともと兵庫県や大阪北部からの来街者の多い街です。阪神間からのアクセスが良くなることで来街者も増えていくことでしょう。南海なんば駅のなんばパークスへも直進できるアクセス動線があえり、意外に便利です。(「なんばパークス」は年間売上げが274億円と市況が厳しい中で健闘しています。)

 心斎橋周辺でも御堂筋の西側の「心斎橋OPA」が比較的好調です。大丸が買収した心斎橋そごうの跡地は、価格を抑えたヤングファッション中心になるようで、OPAのラインに近づくのかも知れません。

淀屋橋ウェスト、西梅田・・西が元気な理由

 淀屋橋周辺でもオフィス街であった西側の「淀屋橋ウェスト」の店舗が話題になっています。梅田地区での西梅田周辺のポテンシャルの向上も、都市の重心が西へ動いている事を示しています。
 便利で無い分、少しだけ効率追求をゆるめることができるのが、良い循環を産んでいるのだと思います。賃料が高くなると、施設の魅力は低下していきます。すべての店がうまくいっている訳ではありませんが、チャレンジしている店はこの経済情勢の中でも健闘しているようです。                  (2009年4月27日)
 図−1   大阪市内通勤者の大阪都心の街イメージ(なにわ考現学05) n=806

 ■ゆっくり熟成させる100年の計
 「味噌」も「○そ」も同じ?

 名古屋地方で好まれている赤味噌の原料は大豆で、その熟成には3年の歳月がかかるといわれています。日本の味噌の多くは米を主原料とした米味噌ですが、こちらの味噌は比較的短時間で熟成されています。現在、米味噌が主流となった理由です。

 有機肥料として使われる堆肥もまた、本来は熟成発酵に3年ぐらいの歳月が必要だといいます。最近は家畜の糞尿を短期間で発酵させ肥料としていることが多く、植物の根をいため、臭いが残ったりするようです。「有機農法」という看板だけで、安全安心かつ美味しい農産物が手にはいるわけではありません。

 自然農法には様々な流儀があります。それぞれの土地や作物、そして生産者の考え方との相性もあり、素人の私たちにはどれがいいのかの判断は難しいモノがあります。極端な話、農業自体が「自然破壊」の行為であるとまで主張する人もおられます。ほどほどのところで折り合いをつけるしかないでしょう。

 地方の再生、農業の再生は100年の計

 最近、地方の産品を独自に発掘し、都会に紹介したり、全国に流通させようという動きをする人が増えているように思います。また、それぞれの手法で作られた自然農法の産地直送品を直接宅配する組織も多くなってきています。
 考え方は共感できることも多いのですが、それぞれが個別に活動してもばらばらで広がりがないので、連携とまではいいませんがどこかで客観的な評価を加えたり、共有できるインフラが整備できないかと思います。どう考えてもひとつひとつの動きは採算には乗らないものです。

 若い人向けの専門学校で、就農支援学科や、ファームカフェ(農場カフェ)のコースがあると聞いて今の「農業ブーム」はこれからもまだまだ拡がると感じます。

 実際、今の失業率の高さと求人数の少なさは驚くべき水準です。企業の中にいるとコストカット圧力や、ボーナスカットぐらいしか実感が無いと思いますが、実際に求人がほとんど無い実態をみると、農業での雇用創出の必要性を強く感じます。今、実感のない企業にしてもその基盤は随分脆弱のいなってきてます。

 農業の2次産業化、農業の3次産業化は確実に社会の大きな趨勢となっていきます。自然な農法を普及させるにしても、農薬や肥料で疲弊した土作りに3年から5年はかかるといいます。農作物の収穫が1年に1回としたら、一人の人間が試行錯誤して満足のいく作物をつくるのに一生にどれだけのチャンスがあるでしょう。イノベーションされつべきことと同時に継承されることが沢山存在します。
                                                  (2009年4月24日)

 ■「一生もの」と「もったいない」の間に
 理由あって安い?

 長谷工の分譲マンションで、価格を抑えるために玄関の下駄箱や、設備の一部がついていないマンションが発売され好評だそうです。
 ベビーカーを使う人など玄関スペースは広い方がいいのでかえって使いやすい。わざわざ取りはずして使っているというケースもあるそうですから、無駄になるモノが省けていいのかもしれません。最近はオプションで選択できる設備や建具もありますが、決められたもの中での選択ですし、カットするという選択がないのは不便です。
 スケルトンイインフィルといって構造躯体と内装・設備を分けて分譲するという手法もありますが、そこまでいかなくてもある程度の選択余地が提供されることはいい事かも知れません。

 そういえば塗料会社の中国市場での店舗展開計画をお手伝いしたときに、中国では集合住宅は壁紙や内装はしないまま分譲されると聞きました。購入した人は自分で塗料を購入して自分達で塗装することも多いそうです。

 捨てるに捨てられないお仕着せの設備

 私自身、昔は古い団地を改装した住宅に入居していましたので、建具や窓枠な選んだものだったので、狭いながら、大きなガスオーブンのあるキッチンを中心にした暮らしはそれなりに快適でした。
新築分譲マンションに転居したときにずいぶん困ったことがあります。
 まず、キッチンにガスオーブンが装備されていない・・・・真新しいキッチンを使用せずに入れ替えるのももったいないので、不自由な調理を強いられています。
特に室内の建具、扉が安っぽいのには閉口します。見た目は新しくきれいなのですが、・・・・。資金さえあれば立派な設備の高級マンションを買えばいいのですが、ごく普通のファミリータイプのマンションではいたしかたありません。
 少しづつお金を貯めていいものを揃えていくのがいいのでしょうが、例え安っぽくてもまだまだ使えるものを捨てて入れ替えるのにはしのびないものがあります。
 新婚当時に、当座の間に合わせで買ったつもりの安い家具を、結局何十年も使い続けていたりすることもよくあります。
衣料品でしたらユニクロの服はさすがに3年目には捨てる決心ができますが、家具は捨てるのもお金がかかりますからつい使い続けることも多いようです。安い家具は中古でも売買されません。

 一生モノの住まい

 一生モノといえる価値のあるインテリアに囲まれていれば日本の住生活もずいぶん豊かになるはずです。何も新品ばかりでなくていいのですが、今流通している家具は再塗装もできないものになってしまっています。
 質の高い家具、修理メンテナンスが出来る家具であれば、中古市場も形成されますが。まだまだ普及率が低いです。
 伝統家具では、一生モノといわれていた婚礼タンスはライフスタイルの変化の中で今やもてあまされた粗大ゴミになっているというマイナスの要素もあります。

 家具業界の課題については先週も述べましたが、「価格対応」の住宅の供給の中で、基本性能を落とした物件があふれると、住宅でも再生の出来ない粗大ゴミがあふれることになります。ライフスタイルの変化の中でリノベーションされて使い続ける基本性能がとても大事です。100年住宅、200年住宅と言った高性能な構造体でなくても、なんとかやりくりできればいいのです。〜その意味で昔住んでいた昭和42年築の団地はいくつかの不満はあるものの気にいっていました。

 冒頭に紹介した、設備をカットすることでコストダウンした物件というのは良い選択なのだな思います。          
 (2009年4月23日)

 ■21世紀の流通革命に向けて〜身土不二は正しいか?
 洋生菓子を安く入手する妄想から流通革命を考える

 サラリーマンの昼食費が300円台に突入しようかというこの不況の中で、デパ地下の洋生菓子が1個700円以上するとか・・・・たかがロールケーキが1本2000円前後で販売されているというのは正気の沙汰とは思えません。
 原価を積み上げていけば原価率は2割前後だと思います。
 売れ残りの廃棄率を見込んで値付けされており、多くの場合閉店まで売り切れはしまうことが、店にいやがられていた為です。
 最近でこそ、売り切れごめんの希少価値を売りモノにする店も有りますが、一番の上客であるOLさんが店に来る時間帯に豊富に揃っていなかったら機会損失するという発想ですね。

 コンビニエンスストアの本部が売れ残るとわかっていても弁当を仕入れさせるようなものです。

 安くて美味しい洋生菓子を楽しむようにするにはどうすればいいでしょう。まず、家賃のかからない店で営業していて、オーナーが家族だけで経営していて、売り切れごめんの店を探すしかないでしょうか?近くにそんな店があればいいですけどね。
 ネット販売では冷凍物とか日持ちのする焼き菓子は入手できても「洋生菓子」は配送できません。
 今の流通の仕組みの中で考えると「予約販売」で注文し、自宅近くのコンビニへ配送されるという仕組みがつくれればある程度リーズナブルで美味しい洋生菓子が安定的に入手できるように思います。

 これは安くて安心安全な食品を流通させる一つのモデルです。流通段階でのロスの低減と物流コストの提言の対応策として考えられそうな気がします。(最もコンビニへの配送がデリケートな洋生菓子に対応できるかどうかは疑問ですが)

 ロマンチックだけれど都市住民の思いこみが先行する地域主義コンセプト

 「身土不二」だとか「地産地消」、あるいは「スローフード」「LOHAS」という言葉は私たちの心の奥底のロマンチックな琴線に触れる響きがあります。特に地方から都会に出てきた団塊世代には特に強くアピールするのかもしれません。
 確かに地域の食物は地域の風土に育まれた財産です。大事にしなければいけませんし、食生活のベースになるでしょう。それでも1年間にわたってそれぞれの季節の美味しいモノ、新鮮なモノが手にはいるのは都会の住民の特権です。
 さすがに、最近は全国に色々な地域の食品が配送されていますが、一級品は東京へ集中します。

 ある季節には同じ食材ばかり食べなければいけなかったり、地域の風土自体が健康にいい風土でなかったり、お料理が決定的に下手な地域だったりする中で、豊かな食生活を享受するには今の流通システムを変える必要があります。

 地域の中で生産者と消費者の連携を強めるだけでは終わらない課題があります。先週も延べました「地産地消」を超えた拡がりを構築していく必要があります。団塊世代のUターンや地方移住がひとつのチャンスでもあると考えています。

                                            (2009年4月22日)
 ■低成長経済での「価格破壊」のリスク〜バイインパワーの錯覚
 「バイイングパワー」が「価格破壊」を実現するという誤解

 かつてダイエーは「流通革命」を標榜し、「価格破壊」といわれるまでの商品のプライスダウンを行いました。「バイイングパワー」と呼ばれる大量に買い付ける力がメーカーや卸に対しての交渉力を高めた結果であるといわれています。
 沢山買うと安くなる・・・・何となく説得力のあるような理屈ですが、大きな落とし穴があります。

 高度成長期に「価格破壊」が実現したのはメーカーの生産性向上により商品が大量に出回ったこと、そして大量に買いつけたダイエーに「売り切る力があったこと」の2つの要素に支えられています。生産能力の高い工場では大量の商品を生産することがコストダウンになります。従って大量にコンスタントに引き取ってくれる売り先はとてもありがたいので安く売っても採算がとれます。大量に仕入れることと、従来の流通機構の仕組みにとらわれない、新しい方法で仕入れを行ったダイエーには価格競争力という新しい差別化の武器がありました。

 その背景を押さえないで「バイイングパワー」という言葉だけで理解すると大きな間違いを犯します。

 低成長経済での「価格破壊」の仕組み

 今、多くの流通業界は不況下で低価格戦略にシフトしています。今、価格を抑えられる原資はどこにあるでしょう。一つは生産段階、流通段階それぞれのステップにある無駄のカット、つまり習慣的に継続している売れ残りなどのロスを見込んだ余裕部分の縮小によるコストダウン。(ちょうどパソコンのメモリーのデフラグのようなイメージでしょうか)。
 もう一つは高度成長を続けているセクター、中国などからの調達。(色々リスクもありますが)
 そしてPB商品として小売業が買取を保証して発注することでのコストダウン。

 「バイインパワー」で大量に買い付けると言うことは、最終的にリスクを小売店が負うことでコストダウンを実現している構図でです。高度成長期は「売り切る力」を背景にした「バイインパワー」でしたが、低成長経済でしかも、競争が激化している中での「価格破壊」競争です。最後のつけはだれが払うことになるのでしょう。

 流通革命の次のステージ

 低成長経済が普通の状態になった中で、消費者がよりコストを抑えて、しかも安心安全な商品を手に入れるにはどのような解決策が必要でしょうか?しかも、安っぽいものや装飾を押さえた無機質なものばかりでなく、生活を楽しくするものが欲しい。今のユニクロや無印良品、H&M、ニトリでは満たし切れていないやり方があるはずです。

 生産、流通、消費そしてその後までのバリューチェーンを組み直すことでその解決策があると思っています。
                                                     (2009年4月21日)

 ■喫茶店の進化の先は・・・
 街の喫茶店が消えていく

 20年ぐらい前まではまだ、街の中に個人営業の喫茶店が沢山ありました。80年にチェーン店のドトールコーヒーが開店して以来、喫茶店の内容が変わってきたように思います。1人でコーヒーを楽しむ人や、オフィスへテイクアウトするスタイルが定着しました。
 スターバックスコーヒージャパンが設立されたのは1995年。「カフェ」のゆったりとした店内はお客さんの滞留時間も長く、回転が悪いように思えますが、図ー2の飲用場所にあるようにオフィス、学校での飲用機会が増大しています。テイクアウトの比率が高いのだと思います。

 喫茶店からカフェへ

 一方、街の個人営業の喫茶店はますます少なくなっています。地域の常連さんにささえられた社交場か、ほとんど、趣味でやっているような店しか残っていないのではないかと思えます。
 都心から、少し離れたロケーションでは、空間的にゆったりとしてデザインされたカフェ業態が増えています。回転率は悪そうですが、食事やスイーツなどを提供して客単価をあげています。料理学校でも、カフェのキッチンスタッフのコースに人気が集まっているようです。専門料理店よりカジュアルに取り組めるイメージがあるのでしょうか。

 ブックカフェやトラベルカフェなどカルチャーと複合したカフェもあらわれています。お客様が滞留する、お客様が人と会うといった機能に新しいビジネスチャンスを探っているのでしょう。

 ターミナルではどうしても回転率が勝負になりますが、これからの競争環境の変化の中で、人を呼び込み、滞留させる機能の配置が必要になるでしょう・・・・というか使う側の立場では落ち着いて座れておしゃべりできる場所が欲しいなあと常々思います。
 
 高い賃料を考えると全く無理なのですが・・・・。          (2009年4月20日)
 図ー1 喫茶店数の推移(事業所・企業統計)


図ー2 飲用場所別の週1人あたりの飲用杯数(日本コーヒ協会)
表−カフェ業態の類型

人気ショップ 「ピカソルカフェ」(代官山) 人気焼き菓子店の新業態
「トラヤカフェ」(六本木ヒルズ等) 和菓子の虎屋のカフェ業態
コラボカフェ 「フィアット」(青山) フィアット車とイタリア料理のカフェの組み合わせ
「フランフランカフェ」(渋谷) ペリエとコラボしたカフェ
「トラベルカフェ」 各業種とコラボした店舗を展開
「映画カフェ」(JR) 軽食と映画前売り券の販売
「ブック&カフェ」 ドトールの書店内店舗
「高野山カフェ」(青山) 写経、瞑想体験、精進料理が楽しめる
新業態 「カントリーパンケーキハウス」(越谷) パンケーキ専門店
「銀座 菓楽」 フランス料理店のスイーツ専門店
「パスタカフェカプリチョ−ザ」(田端) ライト感覚をテーマにした新業態
「カフェシェーキーズ」 シェーキーズの新業態
「カフェプラネット」(横浜) ナチュラルをキーワードにしたスイーツカフェ
「和茶房 夢見屋」(鎌倉) イタリアントマトの和風カフェ新業態
変わり種カフェ 「cat caf? Nyanny」(神戸) 13匹の猫と遊べる
「とりみカフェ ぼこの森」 (鶴見区) インコ、文鳥など鳥を見ながら紅茶が楽しめる
「美ライフ」(鴫野) ダイエットカフェ
「アナハイムカフェ」(城東区) プラモデルカフェ
「Cafe Fpeye」(OBP) 証券カフェ
「英会話カフェCentral Villege香里園本店」 外国人スタッフと自由に英会話
「妖怪堂」(京都) 妖怪話、怪談が聞ける
「チェアカフェ」(新宿) 50種類のデザイナーチェアが選べる
カルチャーカフェ 「ギャラリーカフェ・バール」(西区立売堀) ギャラリー付きのバール
「ブックストアカフェThe Lobby」(梅田) セレクトされた本と雑貨が複合したカフェ
「エコロジーカフェ Label caf? te to te」(西天満) 端材を使ってデザインされたエコがテーマのカフェ
「器ギャラリーカフェ OKU」(祇園) 料理店のオーナーがプロデュースした器を試せるカフェ
べーカリーカフェ 「a bientot 箕面店」 ブーランジェリーに併設されたブラッスリーカフェ 28席
「ブーランジェリーブルディガラ大阪」 イートイン28席
「PAUL本町店」 イートイン82席
「Victoire」(クリスタ長堀) イートイン20席

 ■「地産地消」を超えた新しいつながり
 大手スーパーも取り組んでいる地元農家とのつながりは流通を変えるのか?

 近年、大手スーパーも地域との共生に取り組まざるを得なくなってきています。先日も、テレビで紹介されていた事例では、大手スーパーの青果担当者が、地元農家のコーナーをつくり、農家自身に運営させたり、農家のおばちゃんの手作りの総菜を100円で売り出すイベントを行ったりして奮戦されておられました。大変な努力をされているなあと感心しましたが、この方が異動または退職されたらなくなってしまう、属人的なものなんだろうなと感じました。

 ビジネスの仕組みの中に生産者、そして消費者の関わり方を変える要素が組み込まれていないと、催事に終わってしまいます。定期的にトラックをチャーターして朝市をやっているとか、催事として農業市、漁業市を開催するとか・・・生協でも昔から店舗では地域の農家のコーナーを設置しています。もう少し先へ進みたい。

 地産地消からの拡がりが食卓を豊かにする

 地域の産品を地域で消費するのが一番といわれると何となく逆らえない雰囲気があります。「風土」が育てた味わいはその土地で味わうのが一番です。でも、何か閉じた感じがしませんか?お料理の下手な地域はありますし、他の地域の食材と組み合わせて劇的においしくなる素材もあります。伝統料理も他の地域と交流でうまれたものも少なくありません。

 ネット販売の世界でオイシックスが先駆者として多くのことを実現しています。リアルな店舗事業者や生産者、消費者との関係を組み替える事業を構築できれば、属人的な閉じられた世界の地域産品の販売や、開かれているが「想いが伝わりにくい」ネット販売とは全くちっがた、新しいつながりが生まれます。        (2009年4月17日)
 ■阪神なんば線〜大阪のニシのざわめきの予感
 なんばの水辺が再発見される

 なんばといえば南海なんば駅周辺から千日前界隈のアナーキーな賑わいをしますが、JRなんば駅、近鉄難波駅の周辺の道頓堀川で大がかりな改修工事が完成し、キャナルテラス堀江(複合飲食施設)が完成、歩行者専用橋「浮庭橋」で対岸の湊町リバープレースと結ばれ、若い子達の集まる親水空間が生まれています。

 道頓堀川は戎橋界隈では水面にネオンを映し、カーネルサンダースの人形が沈められるなどややこしいイメージがありますが、このあたりに来ると落ち着いた感じがします。今年は「水都2009」が開催されるそうですが、本当に水辺が美しいまちなんだなと再発見させられます。(水はまだ汚いんですがね)

 完成したときは孤立していた「湊町O-CAT」もホテルやマンションの高層ビルの中でひっそりとうもれているようです。当初の構想とは違ったモノになったとはいえ、若い人の回遊がうまれて、まずますの成果がではじめています。

 色々とプロジェクトには批判がでているよううものもありますが、行政の関わる開発は短期間で成果の出るものではありません。次の世代へのプレゼントと割り切る必要があると思います。逆に短期間で成果を求められる商業開発は民間に任せた方がいいのですが)
http://www.sumitomo-soko.co.jp/news/20090202.html へのリンク

 木津川の向こうに見える「大大阪」の残像

 阪神なんば線のには「京セラドーム大阪」のある「ドーム前駅」があります。この界隈は「大阪ガス発祥の地」であり、「大阪市電発祥の地」でありかつ「近代紡績発祥の地」です。明治以降「東洋のマンチェスター」とよばれた工業都市大阪の心臓部であったのです。

 少し北の川口には外国人居留地があり、安治川河口が外国に開かれた窓口となっていました。この間までもめていた「大阪府庁」も江之子島に庁舎がありました。元気な頃の大阪は外に向かって拡がっていこうというメンタリティがありました。

 現在の府庁は、保存するに値する歴史的な価値のある建物ですが、もし府庁の移転が実現していたら関西空港や神戸空港にも近く世界に開かれた大阪のシンボルとなっていたことでしょうね。  それはさておき。

 ドーム周辺にも木津川、尻無側などの水辺に気持ちのいい空間があります。(時折水が臭いますが)対岸の堀江に住民が増えていますし、大型ショッピングセンターの開発も大変結構なのですが、水辺を活かした面白い仕掛けができればいいですね。

 阪神なんば線開業効果

 今のところ開業効果について発表されている資料はすくないのですが、島屋大阪店が入店客を2〜3%増加させたらしいです。百貨店各社が、低迷する中で明るいニューズといえます。
 乗車客数も結構多いようです。甲子園のタイガース戦への動員効果も高かったと聞きます。先に開業した京阪中之島線が、周辺の開発がこれからということもあり、少し寂しいのに比べると、もともと集客力のある都市をつないでいるだけに沿線への波及効果も早くあらわれるでしょう。                  (2009年4月17日)
 
 ■環境・健康対応に住まいは変わる〜「家具」はついていけるのか
 環境・健康対応が住宅トレンドのキー

 住宅分野では環境。健康対応に大きくトレンドが動いています,長寿命住宅、100年住宅など住宅の耐久性や、シックハウス対策などの住宅内の環境への配慮、エネルギー効率の向上や、建材のリサイクル、リユースなど様々な対応が見られます。
日本の住宅は耐用年数が低く、使い捨てと言われてきましたが、量の供給が一段落し、量的には過剰と言われていく中で質の重質が求められています。

 「家具」業界の対応の遅れ

 家具はかつては婚礼家具の売上に依存し、市場対応が遅れた業界です。バブル時期は高額商品も売れていましたので、売上金額自体は伸びていましたが、バブル崩壊後、住宅着工戸数が伸びている時期でも年々、売上金額を縮小させてきました。収納機能は作り付けのクロゼットに置き換わり、ドレッサーは洗面化粧台が」代替機能を果たすようになり、フローリングの普及で絨毯の普及率は大幅に低下しています。生活の変化についていけなかったのです。

 今、家具業界で元気なのは「ニトリ」や「イケア」などの低価格商品、ホームセンターで販売される使い捨てのような家具のジャンルです。これらの商品は安いもとは安いのですが、修理やメンテナンスができないつくりになっています。修理をしてもおそろしくコストがかかります。使わなくなったら廃棄するしかないのです。

 無垢材、天然塗料を使用した修理できる家具もありますが、業界ではまず少数派ですし、価格も高いです。中古家具の流通も有名ブランド品などで一部ありますが、アンティークものに限られています。

 折角環境に優しい住宅に居住していても、住宅の中で、ホルムアルデヒドをばらまく環境に優しくない家具に囲まれて暮らすのはいやですよね。
                                              (2009年4月16日)

図−1 耐久消費財普及率推移(内閣府)〜ドレッサー、応接セット、じゅうたん、タンスの所有率は減少


図ー2 家具市場の売上げ推移(商業統計)〜バブル崩壊後縮小し続ける家具市場


 表-住まいのトレンド

ライフスタイルニーズ

住生活ニーズ

生きがい実現志向

・バリアフリー

・遠隔健康管理

・高齢者の自立支援、在宅介護

健康快適性志向

・温熱環境

・シックハウス対策

・五感の快適性

・健康管理、ストレスフリー

・快眠

安全・安心志向

・災害に強い住宅

・防犯性の高い住宅

・非常時エネルギー供給のバックアップ

楽しさ・便利さ・情報化志向

・ペット共生

・ホームアスレチック機能

・情報化、ユビキタス

・ホームアミューズメント

・使用が容易な設備機器

自然志向

・経年美

・マルチハビテーション

・家庭菜園、ビオトープ

・自然素材を用いた住宅

・自然環境の創出

もったいない志向

・省エネ住宅

・高耐久性、高耐候性

・自然エネルギー

・燃料電池

・リサイクル、リユース建材

・長寿命住宅

・ローコスト住宅

生き方創造志向

・家事の合理化、利便化

・在宅勤務

・居住の個性化

・自走式移動型住空間

・子育てしやすい住宅、子育て支援

・ライフスタイルや子供の成長にあった住宅

コミュニティ重視志向

・交流空間

グローバル志向

・海外居住


「今後の住宅産業のあり方に関する研究会」(経済産業省)より
 ■ミシュラン騒動とわんこの贖罪〜自分の物差しに謙虚であるということ
 何故ミシュランは京都・大阪を採点したいのか
 
 ミシュランガイド京都・大阪2010がこの10月に発行されるようです。
 東京版では多くのレストランが掲載を喜んでいますし、ミシュランに紹介されることで高級フランス料理の再認識が進んだという風に言われています。それにも関わらず、京都、大阪では掲載を辞退する店が続出していると報道されています。

 折角、世界3大料理の一つを生み出した文化的なフランスのガイドブックに評価していただけるのに何と不遜なことでしょうか・・・・というか、どうしてミシュランや東京のマスコミはそっとしておいてくれないのでしょうか。

 ハイエンドな「グルメ」は経済力のあるところに集まります。高い素材や、野心のある料理人や、新しい食情報は間違いなく東京へ集中しています。もう食べ物は東京が一番でいいでしょう。

 よくわからない他人に星を一杯つけて欲しい料理人や、効率的に沢山儲けたい料理人、「大阪ケンミンの喜ぶ珍しいローカルフード」で東京の人の笑いを取りたい料理人はもう東京に店を出しています。わざわざ関西まで出張費を使ってランク付けする必要はないでしょう。
 残っているのは地域に根ざした地域の人に愛される店、顔の見えるお客さんに喜んでもらえる事を大事にする店なので、同じ基準で評価はできないでしょう。料理は料理人だけで完成するモノではなく、素材を提供する生産者、流通業者、正しく評価するお客さんによってなりたっています。
 (もちろんフランスの料理界においてもパリの店舗だけでなく地域に根ざした地域の素材を活かした若い料理人の動きがあり、本国版のミシュランではそれを含めて評価する実績はあるのですが)

 風土が産んだ地域独自のおいしいものを少しだけ分けてくださいねという姿勢〜謙虚に生きる

 今、企んでいる地域の食材や食べ物の流通促進計画では、地域独自で愛されている美味しいものを、他の地域に住んでいる私たちにも少し分けてね・・・というスタンスで取り組んでいます。そこでする評価はあくまでも、その食べ物への思い入れやなじみのない私たちでも楽しめる味ですね・・・・という視点で評価としようと思っています。「謙虚さ」が大事です。

 もし私がガイドブックの編集者なら「フランス料理」に絞って全国各地、山の中の一軒家レストランを含めて「フレンチとして正しいか」という視点で評価します。自分のよって立つ基準をあきらかにします。

 あなたの地方のこの品物は何点、このお店の味は何点とかランクづけするのはちょっと違うかなと思います。少なくとも無責任な匿名での評価などはネット上でのグルメブログとあまり変わらない・・・・・・というかブログの方があくまでも個人的な感想であることが前提なのでまだ判断材料になります。何か客観的な基準があるという前提に無理があります。

 採点されるのがいやなもうひとつの理由

 ミシュランガイドの評判が悪いもう一つの理由は、リサーチャーの質がよくわからない。今まで食に関して何の実績もない人が評価しているということがあると聞きました。「なんであんなやつに評価されないといけないんだ・・・」という事ですね。まあ、批判されることをいやがるのもどうかと思います。ただ、個人のグルメブログとは違って影響力がありますから、無視することもできないのかも知れません。
 
 出版されるとそれはそれで、それぞれの店の自慢のたねに使われるのでしょうね。

 できれば、安くて美味しい店に星をつけて混雑させるのではなく。高級フレンチの某有名シェフの新しい店を紹介して東京から沢山、お客さんを呼んできてあげてください。 
 現在、閑古鳥がないていて、痛々しくて見ていられません。キッチンで飼っている(?)わんこも可哀相です(キッチンに犬をいれている無神経のせいじゃないのかとかいわないの)。
 もう一度日の当たる場所にでて一見さん相手の商売をされればいいのです。 きっと東京だっら成功されていたでしょうに・・・。 わんこに罪はありません。 たぶん・・・・・・・・・。                     
                                                   (2009年4月15日)
 ■農業の3次産業化は若者が主役
 食ビジネスへの関心の高まり

 食ビジネスを志す若い人が増えているなあとは感じていました。本格的な専門料理の料理人を目指す人ばかりではなく、飲み物や簡単な軽食が中心のカフェのキッチンスタッフを目指していたり、「フードコーディネーター」を目指す人が多くなっていきています。食事は毎日必ず取るものですし、食べて喜んでいただける反応を直ぐに感じることが出来るのがやりがいにつながっているのかも知れません。

 調理だけでなく、農業での食物の生産にも関心が高まってきているようです。
 自ら有機栽培した野菜を産地直送で配送し、調理して総菜屋兼レストランで提供し、年商5,000万円を売り上げている新規就農者は「農業には宝の山が眠っている、誰も注目しないから掘り起こされないだけ」と語ります。

 「農家はつくるだけという意識が強すぎる。広告戦略や販売手法に工夫を凝らせば付加価値が高まる」という言葉には強い説得力があります。だからといって素人がなめてかかると大失敗するのでしょうが・・・・。

  ファッション×農業?

 昨日付の繊維業界の専門紙「繊研新聞」では「最近、”ファッション×農業”がじわじわもりあがっている」と称してマルキュー系のアパレルメーカーが社員の自己啓発の一環として農業一日体験ツアーを実施している事の紹介と社員の「アグリファッション」を写真紹介していました。マルキュー系はともかくナチュラル系のファッションと「農業的なモノ」との相性はいいだろうなと思います。

 長野県東御市で玉村豊男さんがやっておられるヴィラデストガーデンファーム&ワイナリーはワインやレストランの売上もさることながら雑貨類の小物の売上げがばかにならないでしょう。

 農業は自然との闘いなのでチャラチャラしたファッションなんかで遊ぶな・・・と怒る人もいらっしゃるでしょうが、時代のライフスタイルの流れが、自然との一体感、その地域ならではの風土との融和性への関心が高まっている事は間違いないようです。農業を3次産業化できれば国際競争力も高まります。

 美味しいものを食べるために

 有機野菜だから自動的に美味しいモノができるわけではなく、生産者の「性格」が味にでるそうです。丁寧につくられた美味しい農作物を手に入れるために私たちにできることは何でしょう。
 農産物は収穫時期に大量にできてしまい廃棄されるモノも少なくありません。生産者の方の生活が安定するように、その沢山出来た時期の美味しい農産物を使った美味しい食品加工品ができないでしょうか?

 生産者と食を志す若い人達とのコーディネートができないかと動き出しています。うまくいけば、面白い拡がりがでてきそうです。

                                             (2009年4月14日)

 ■「わかっているけど変われない」状態からの脱出
 コンサルタントは当たり前のことしかいわない?

 コンサルタントを始める前に、お客様の業界の市場環境、競合環境、外部からみたその企業の問題点を整理して提案書を提示します。課題を洗い出す為の共通認識づくりのためのもので、最初から答えを出すためのシートではありません。
 たいていの場合はそこから、トップが考える課題の優先順位を率直に語っていただきやりとりがスタートするのですが。ごくまれに、「そんなことはいまさら言われなくてもわかりきっている。また、できもしないあるべき論をきかされるのか・・・」と言外に拒否反応を示すトップもいます。
 基本的にコンサルタントは当たり前のことの確認から出発します。みんなが思っている課題に対して何故前向きに戦おうとしないかを明らかにすることが解決の出発点だからです。

 いきなり、魔法のような解決策を提示してくれて、(経営者自身はいやな思いはしないで)問題が解決する・・・かも知れないという幻想を利用して荒稼ぎしたのは過去の(悪い)コンサルタントです。
悪いコンサルタントは三つの呪文を使います

 第一の呪文は横を縦にするめくらましの呪文
 海外の最新の経営理論、マーケティング手法。をいち早く輸入してその教祖になる方法です。そのバリエーションが外資系コンサルタント」というブランドです。自分が「当たり前」と思っていることと同じ事をその人達に言われると「おれはやっぱり間違っていなかったんだ・・・」と安心するようです。

 第二の呪文はITソリューション
 基本的に経営者は「IT用語」に弱く、ITソリューションが何もかもいやなことを肩代わりしてくれると錯覚するようです。

 第三の呪文は「女性の視点の活用」
 もちろん、古い体質の企業で女性が当たり前に活躍できないのが一番の問題点なのですが、そんな企業に限ってトップが思いついたように「女性の視点」を活用し出すことがあります。抜擢されるの方が海外ブランドであったりIT系であったりしたら鬼に金棒です。抜擢された女性が存在感を示すためにだす素っ頓狂な意見が重みを持って議論され、まとまな社員はやる気をなくします。

 さすがに、最近はそのような事例は影を潜めています。そのかわり、(悪い)「コンサルタント」へのアレルギーがあちこちにあって、やりにくくってしょうがないです。

 専門家の使い方

 昨年、不覚にも「飼い犬に手をかまれるような悪質な詐欺」に会い始めて法律の専門家に依頼したときに感じたことがあります。
 基本的に「何とか助けてくれ」という頼み方で相談されても、専門家は経緯を理解するまでに時間がかかります、選択肢もたくさん想定するだけに、答えがあいまいで、判断が遅くなります。

 問題を抱えた当事者が、自分で調べて方針を決め、その方針についての法律的なアドバイスを確認するというおつきあいの仕方が最も経済的で、短期間でベストの答えがでてきます。(インターネットも活用すれば判例を調べるのも以前に比べて簡単です)

 そして、解決に向けたいやなこと(直接交渉)は他人まかせにしないことです。

 これは、経営、マーケティングの専門家の使い方にもあてはまる事です。経営者の多くは目に見えて自分手柄になる営業や、対外活動は好みますが、社員の評価や銀行との交渉などはいやがることが多いようです。

 私が、おつきあいしている経営者の方は例外なく、この未曾有の経済危機の中で、現場のコストを押さえながら、それでも安易な首切りにたよらず、現場の社員の士気を高めることに注力している尊敬できる方ばかりです。

  逃げないで、あたリ前の事を徹底してやり抜くことが大事ですね。

 この時期は、多くの経営者、マネージャー、現場スタッフが苦しみながらも、毎日頑張っておられると思います。あなたにとって「いやなこと」から逃げずに前向きに戦い、良いパートナーを選んで活用してください。苦しいときにこそ、その人の真の価値が試されます。

 当社3年目を迎えるにあたって自戒をこめて・・・・
                                               (2009年4月13日)
 ■「産地直送」にも落とし穴がある?
 地産地消は正しいのだけれど「お料理のへたな地域もある」

 地方出張の楽しみはその地域の特産物で地域独自のの調理法でつくられた料理を楽しむことです。最近は「ラーメン○○」とかいった地域の名物を集めたフードコンプレックスも多いですし、百貨店の物産展でも競って新しい商品の開拓に血眼になっています。
 地方の生産者組合などが定期的に野菜や手作り食品などを直接販売する催しもあちこちで、開かれています。先日、そのような市で、「おばあちゃんのてづくり味噌」を買いました。食品メーカーの提供する味噌に比べてきっと美味しいに違いない・・・・。結果は・・・・・。タコヤキスト熊谷先生がおっしゃっていた「お料理の下手な地域もある」という言葉を身にしみて感じさせられました。
 目で見て確認していてもこれですからネット通販で販売されている産地直送商品もあたりはずれが多いのだと思います。

 徳島県の県産品をローソンが販売したり、ホームセンターのコーナンが産地直送の野菜売場コーナーを設けたり、今までの流通ルートとは違った業種が食品の産地直送に参入しています。以前、物流が課題とお話ししましたが、近くの朝日新聞の販売所から「新潟県南魚沼産コシヒカリ100% 小杉農場 小杉豊さん生産の品5kg=3,480円というチラシが入っていました。配達は販売エリア内限定らしいです。

 既存の流通ルートへの不信感が強まっているのでしょうか。さて、「産地直送」だけで信頼できるのでしょうか?
 
 必要なのは品質の保証と味の保証

 産地直送は「品切れもあり」「季節によってとれる作物が違う」「その年によて出来不出来がある」「不揃いだったり、形がいびつなのもある」といったあたりの事は利用者にも理解されてきていると思います。
 ただ、品質はどうなのか(うそはないか)、味は美味しいのか、それは誰も確かめてはくれていません。

 以前のすまいによく、境港直送の市場への納品帰りの「魚屋」さんというトラックが良く販売に来ていました。良く見ると、魚はすべて小振りで、卸市場で売れ残った品物を安く集めてきたようにも見えました。〜後に某宗教団体が資金稼ぎにそのような移動販売を行っていると聞きました。オフィスを訪問する珍味売りと同じだったのですね。

 そのような犯罪は別にして、スーパーの店頭で大根にわざと泥をつけて高く売るとかいう噂もありましたがスーパーの商品は信頼出来ないが、産直なら信頼できるなんて何故思えるのか?冷静になって考える必要がありそうです。 
 
 そういえば、某流通グループの外食事業担当の元役員が、冷凍コロッケにパン粉をもう一度つけ直して「手作りコロッケ」として高く売ると儲かって仕方がないんだよ・・・と自慢しておられましたっけ・・・・・そんな商売は東京に帰ってやってくださいね。

                                                    (2009年4月10日)
 ■「新しいコンセプト」を広く浸透させるコツ〜一方的な訴求では想いは伝わらない
 ターミナルの商業集積の飲食店を観察していて気づいたことがあります。

 飲食店の集積におしゃれな内装の落ち着いた雰囲気の居酒屋と、昔ながらの庶民的な居酒屋が混在している場合。人が賑わい、流行っているのは必ず親父くさい庶民的な居酒屋の方ですです。おじさんだけでなく若い子たちも、ほっこりと楽しそうに飲んでいます。 ダークダックスと呼ばれる、体を斜めにして詰め合わせないと入れない立ち飲みの居酒屋や串カツ屋さんはさすがにおじさん中心ですがそれでも幅広い世代が利用しています。これは、不景気であるとか、どうとかとは関係がないような気がします。
 (若い女性客が顧客の中心の喫茶店の場合は、基本的に古くさいタイプの純喫茶より新しいタイプのカフェが流行っているのと対照的です)

 昔ながらの居酒屋に慣れ親しんだ年配客にとって、新しいデザインの内装に凝った居酒屋には、親しみを感じる糸口がないのだと思います。お金さえあれば、雰囲気は洗練されている方が気持ちいいですし、料理も素材にこだわったモノに手間をかけたものの方が美味しいに決まっています。料金が高すぎるとアウトですが、少しだけ高くてもいいものであればたまには利用するはずなのですが・・・・。

 デザイナーの独りよがりの思い込みがそのようなお客さんを拒否しているのかもしれません。

 どのような業種に限らず。新しい業態、フォーマットを幅広い層に受容してもらうためには、どこかに既視感をおぼえさせるような親しみの糸口が必要です。〜かといって、狙ったようなレトロデザイン、嘘くらい昭和風とかには嫌悪感が先立ってしまいますが・・・・。                                  
  (2009年4月9日)
 ■「価格のピラミッド」の組み直しが始まった〜高額品の成功と低価格訴求への取り組み
 お洒落も「より安く」が気分の時代

 景気悪化を受けて、小売り各社は一斉に価格をひきさげています。あのコムデギャルソンでさえ伊勢丹と組んで「個性ある値頃」をコンセプトにした「ブラック・コムデギャルソン」を5月から発売します。(4月8日繊研新聞 南青山で1月にやっていた期間限定ショップとはまた違うようですが)ジャケットで35,000〜42,000円。シャツ1万円。生産は日本製、値頃な価格で日本製のクォリティ個性的な内容で新しい顧客開拓に繋げていく事が狙い。百貨店では伊勢丹本店の平場のみで1年間の期間限定のゲリラ的なブランドです。

 ラグジュアリーブランドのプロパーのショップでも値下げが相次ぎ、ザラやギャップといったファストファッションの店でも値下げが相次いでいます。ユニクロのグループ会社の「ジーユー」は990円ジーンズで人気を集めています。
 最近の価格志向の高まりは低所得者にではなくトレンドに敏感な層ほど色濃くあらわれています。
 今の「安い」は我慢のイメージではなく「賢い」「おしゃれ」といったプラスイメージでとらえられ「メリットアイテム」「着回し感の広さ」などお得感が加わったと言われています。(繊研新聞4月8日記事)

 不況下で売れる高額化粧品

 一方化粧品業界では、」高額品が相次いで発売されヒットしています。資生堂の最高級ライン「クレド・ポー・ボーテ」のさらに超高額帯を狙って発売した新「シネルジェックライン」は最高価格12万円,5点で195,000円という価格でも計画比2桁の伸びを示している。ターゲットはアラフォー世代のリッチキャリア層と子育てを終えた40代後半以降の高感度シニア層。「自分を高めたいというターゲット層の感覚は思った通り。高機能でありながらシンプルで簡単。それで有意義な自己投資につながるなら惜しみなく投資するニーズはあった」販促手法もイメージの高級さより、投資に対するリターンとしての効能を訴えるためにマス型のイメージ広告はしないで、スタッフを育成し体験イベントと店頭接客に重点を置く体験型販促に投資したようです。

http://www.shiseido.co.jp/synergique/ へのリンク

 今までの「価格体系」今までの年齢区分でのエイジ×グレードでターゲット設定し、今までの売り方、今までの販促手法、今までのお取引先との取引条件では生き残れない時代になってきました。特に、百貨店はこの時期に大きな改革をしなければ景気回復後に元の黙阿弥になりますます衰退していくことでしょう。(2009年4月8日)
 ■40万都市での地方百貨店の再生B〜和歌山市 失われた繁華街
 紀州藩城下町の伝統の衰退と再生 

 和歌山市の繁華街「ぶらくり丁」は1830年以来の伝統を持ち、紀州藩の城下町として栄えていました。
 かつては地元百貨店の「丸正」、「大丸和歌山店」「ビブレ」などの大型商業施設や映画館が4館立ち並び、和歌山県内だけでなく大阪府南部まで商圏を広げていましたが、90年代のバブル崩壊以降次々と店舗が閉鎖され、シャッター通りとなっています
 98年に「大丸和歌山店」が閉店。店舗跡は現在「ドンキホーテ」となっています。2001年には「和歌山ビブレ」がマイカル破綻の中で閉店。同じ都市に地元百貨店「丸正」が破綻し、その跡地の活用に様々な案がありましたが、地元企業の和島興産が複合施設「フォルテワジマ」を運営しています。地下1階は温浴施設「ふくろうの湯」、3階にはニット編み機の世界的なメーカーとして有名な株式会社島精機製作所が、」ニットとおもちゃが融合した世界で初めてのミュージアム「フュージョンミュージアム ニット×トーイ」をこの4月に開業しました。
 メリヤス編みを中心とするニット産業は和歌山の地場産業です。そのリーディングカンパニーが空洞化する中心市街地活性化の文化的コアとしてこのミュージアムを設置しています。

http://www.shimaseiki.co.jp/irj/news/pdf/20090403data.pdf へのリンク

 中心市街地の歩行者通行量は1992年には休日で64,000人であったのが2006年には24,000人に減少し、空き店舗率も1992年には11.5%であっったのが2006年には22.7%と倍増しています。確かに空洞化という言葉がふさわしい状態です。

 確かに郊外店舗の進出やJR駅前の和歌山近鉄の増床などの競合環境の激化はあるでしょうが、何故ここまで急激に落ち込んでしまったのでしょうか?

 老舗百貨店の誤算

 昨日紹介した大分市や姫路市と異なり、「ぶらくり丁」は南海電鉄の和歌山市駅からもJR和歌山駅からも、離れた立地にあります。マストラも整備されておらず、バスか車が主な交通手段となります。
 和歌山近鉄が新しい店舗になった時、「丸正」は売上の落ち込みを挽回するために思い切って改装しました。無印良品や高級ブランドを導入して都市型の百貨店への変身をはかったのです。

 地方都市の老舗百貨店としてkぽの店に無いものが2つありました。店内のエスカレーターと外商組織です。改装後もそれは変わりませんでした。「丸正あってのぶらくり丁、ぶらくり丁あっての丸正」といわれたほど、ぶらくり丁と密接な関係にあった丸正でしたが、無理な投資がたたった丸正の破綻と共に、地元商店街の衰退にとどめがさされたのかもしれません。

 ブラクリ丁周辺部は昼間人口は多いのですが、JR駅前や和歌山市駅駅前に比べて飛び抜けているわけではありません。ある調査では来街者の買い物目的客の多くは中高生であったともいわれています。ビブレが目的だったんですね。

 まず、交通手段がないことは致命的です。(ちなみに和歌山のタクシーの運転手の接客態度は最低です)
 
 老舗百貨店も地元商店街も、伝統や、かつての賑わいの名残で現実が見えていなかったのでしょう。かつての賑わいに愛着や郷愁を感じるはずのシニア層をどのように呼び込むか、それを考えれば、シャトルバスの運行などアクセスの改善、店内動線の改善、街で提供するサービス機能・ホスピタリティの改善など先に打つべき手は沢山あったはずです。

 確かに郊外のショッピングセンターへの流出はあるでしょう。しかし、それはどこの地域でも起こっていることです。

 幸い、地元企業が危機感を持ち新しい動きもあるようです。地域の人々に支えようという意識をもたれない中心市街地、老舗は無くなってしまってもしかたがないのでしょう。                      (2009年4月8日)

 ■40万人都市での地方百貨店A〜大分市、姫路市それぞれの動き
 大分市「トキハ」のサバイバル戦略

  大分市は、70年代にGMSが都心に集中的に出店し全国でも有数の激戦区で有名でした。
大分市の百貨店「トキハ」は、かつて「ピンキリ戦略」と呼ばれた高級品から日常の安い商品までの品揃えの幅の広さで、商圏を包み込む圧倒的な強さで地域の顧客の支持を獲得していました。

 90年代に入ると車での買物が一般化し、量販店の立地が郊外にシフト、都心の店舗はあいついで閉店又は業態転換が進みました。(ジャスコ→フォーラス、西友→パルコ)
 現在、郊外の複合型の大型開発(トキハわさだタウン、パークプレイス大分)や大型専門店の出店で、都心商業は厳しい状況にあります。

 大分市は人口46万人。岐阜、高松、金沢、福山、姫路などの都市と類似した規模です。
JR駅前と都心繁華街が隣接しているという構造は、広島県福山市、兵庫県姫路市に似ています。

 都心店だけでなく郊外型の店舗として「トキハわさだタウン」を開発し、百貨店と専門店が融合した新しいタイプの商業集積をつくりあげています。
 また関連会社のトキハインダストリー(食品スーパー)を核にして「明野アクロスタウン」という地域密着型のSC業態も展開しています。地方百貨店の生き残りとして考えられる方向性を実現しています。

 ただし、下記の表で「大分パークプレース」と比較すると飲食、カルチャーを中心とした非物販部門の時代対応が遅れています。百貨店の基準で収益が低いという事情は推測できますが、施設の魅力は「駐車場」だけではないと実感します。もう一歩踏み込む必要があります。

 姫路市の駅前開発と商店街の未来の命運

 大分市中心部の1日平均の通行量は5,000人弱。(11:00〜19:00 8時間)大分駅の1日の乗降客は3.4万人です。一方、同じ程度の人口規模の兵庫県姫路市では駅を1日10万人が乗降し、3万人が商店街を通行しています。(※10:00〜18:00の8時間)姫路市でも郊外のショッピングセンターの影響は課題になっていますが、大分市に比べると都心に人が回遊しています。

 駅の利用が多いというのは逆に神戸、大阪への通勤者の流出が多いと言うことでもあるのですが、姫路駅は鉄道の高架化が進む中で、高架下の商業施設が開業し、従来のくすんだ雰囲気から、明るい雰囲気に変身してきています。

 駅前の山陽百貨店は地下の食料品売場を改装し、神戸などの都心店にまけないデパ地下売場をつくりあげました。さらに「ロフト」をテナントとして導入することで大きくイメージアップしました。

 大分市「トキハ」の本店で売上は433億円。姫路市は駅前の山陽百貨店が240億円、商店街の中に立地する「ヤマトヤシキ」が約100億円。(加古川店をあわせて合計230億円)です。店舗面積も姫路の2店をあわせて「トキハ」の本店の規模をやや上回ります。(トキハ42,000u、山陽百貨店28,000u、ヤマトヤシキ17,500u)

 今後、駅ビルを始め、姫路駅前の商業集積が進む中で「ヤマトヤシキ」の今後の方向性が注目されます。地元商店街の活性化の成功も「ヤマトヤシキ」の活性化にかかっていると思います。官主導の中心市街地活性化にはあまり大きなものを期待してはいけません。商店街が一体となって支えないと、旧繁華街立地の百貨店の再生は困難です。和歌山市の「丸正」や「和歌山大丸」は昔の繁華街「ぶらくり丁」からなくなってしまいました。繁華街が駅から離れている和歌山市に比べ、姫路市では駅への来街者は繁華街も回遊します。
 駅前にない魅力をどうつくっていくか、店のブランドへの愛着を活かしながらも新し特徴付けが必要になります。
                                                  (2009年4月7日)
表ー大分市の主な商業施設

中心市街地

郊外

トキハ本店

大分
フォーラス

トキハ
わさだタウン

大分パーク
プレイス

あけのアクロスタウン

概要

10:0019:00

・売場面積42,563u

・駐車台数1,080

・売上433億円(05)

10:0020:00

・売場面積12,097u

・駐車台数3,000台(契約)

・売上 非公開 
推計6080億円

10:0020:00
 (トキハ)

・店舗面積64,505u(トキハ29,732u)

・駐車台数3,200

・売上全体259億円(05)
(トキハ142億円)

10:0022:00
 (専門店街)

・店舗面積44,235u(ジャスコ
   13,800u)

・駐車台数4,000

・売上246億円(05)
(ジャスコ72億円)

9:0021:30

・店舗面積23,729u

(トキハインダストリー
    13,525
u)

・駐車台数1,043

ファッション

234ブランド

市内唯一の百貨店企業とpして海外スーパーブランドからヤングブランド、子供まで揃っている

44ブランド

カジュアルからセクシー系までヤング向けのブランドが揃っている。

72ブランド

専門店、百貨店、量販店を混在させている。本店とのすみわけを意識してかやや若い層へターゲットをシフトしている。郊外SCに増えているファミリーブランドは少ない。

43ブランド

都市部郊外でも展開しているファミリーブランドが中心。

68ブランド

ユニクロ、ライトオン、コムサイズム他は量販店内のショップ中心

業種の特徴

かつて地方百貨店のお手本となった「ピンキリ戦略」(高いものから安いものまで揃える)を継承している幅広い品揃え。

食料品にも力をいれているが、最近の「デパ地下」の華やかさはない。また百貨店として化粧品が弱い。

GMSジャスコから業態転換。立地も良く1020才台の支持を得ている。

「シマムラ楽器」「ジュンク堂」「タワーレコード」など

ジュンク堂は市内一の規模

「ケーズデンキ」「スポーツデポ」など別棟に

トキハの売上は伸びているがその分、本店の売上が減少しておりグループ内の共食い状態。

「リブロ」(大型書店)

・ペットショップ

「ケーズデンキ」「スポーツオーソリティー」。

「くまざわ書店」「HMV」

・ペットショップ

「紀伊国屋書店」

「ホームセンターグッディ」

・ペットショップ

飲食

19店舗
百貨店の規模のわりに飲食店数は少ない店のグレードも混在している。

3
カフェ

55店舗ファーストフード、軽食の店舗が多く新しい業態が少ない。

34店舗
ファミリータイプの飲食店の新しい業態が多い。
飲食は23:00まで営業。

23店舗フードコート及び軽食が中心

サービス

エステサロン、ネイルケア、写真館、JTBトラベランド、生花、ブライダルサロン

結婚式場「トキハ会館」を併設、バンケットルームあり

・ヘアサロン

・ネイルサロン

・エクステンション(つけ毛)

・美容室・ウェルネスわさだ
・ヤクルトセルフメディケーション(生活習慣病予防セミナー)
・リフォームステーション
・保険ショップ「アフラック」

・リラクゼーションサロン
・子供写真館
・美容室 
・保険市場
・PTSトラベルナビ

・明野アサヒ温泉
ビジネスホテル、エステ、美容室、コインランドリー併設
・旅行会社
・保険ショップ「アフラック」

エンタテイメント

特になし

・カラオケ
・シネマコンプレックス
・囲碁クラブなど

・シネマコンプレックス
・ゲームセンター
・観覧車
・室内遊園地

・OBSボウル

・ゲームセンター

カルチャー

・トキハ分文化教室

・パソコン教室
・家庭教師のレッツ

・パソコン教室
・子供英会話「セイハ英語学院」
・幼児教室「ドラキッズ」
・JEUGIAカルチャーセンター

・コナミスポーツ
・カワイ音楽教室

その他

・チケットぴあ

・保育所{ちびっこランド」
・整体「リフレッシュ工房」
・歯科

・クリニカルエステ・歯科「丘の上の歯医者さん」
・都市型保育園

・歯科

  図ー姫路市内の百貨店の売上げ推移

    
 ■40万人都市での地方百貨店@〜風土と愛着の再生へ
 
40万都市で百貨店は成立するのか

 百貨店の新規出店の目安として100万都市という都市規模があげられます。(先日、大丸の出店撤回が発表された浜松市で人口は80万人規模です)
 地方の中核都市は40万人から50万人規模の都市が多く、歴史的にその地域の中心都市でしたので、地場の地方百貨店が残っているところも多くなっています。
 「中心市街地の再生」では「かつて栄えた中心的な商店街」とその核になる「かつて栄えた地方百貨店」が次の時代に生き残れるかどうかが重要な要素です。新しく郊外にできる大型ショッピングセンターは、全国的にチェーン展開しているテナントによって「新しい、東京と同じ情報を提供しています」また地方都市は自動車社会なので、駐車場が無料で活駐車台数が豊富な郊外ショッピングセンターとい昔ながらの街では大きく差がつきます。

 都心からなくなっている「映画館」もシネマコンプレックスという形で郊外に整備されています。ファミリー層だけでなく若い世代も、シニアも郊外ショッピングセンターにいけば用が済みます。

 地方百貨店の生き残りは地域の商業の生き残りに強い関わりを持ちます。宇都宮市の「福田屋」のように郊外への出店に活路を見いだそうとする店舗もあります。昔から地方都市にある有力な婦人服専門店でも郊外店舗に力を入れている店も多くなっています。

風土と愛着の再生が地方都市を蘇らせる

 当社の思考のベースは、「非東京」である「大阪」を出発点としたオルタネイティブなまち作りの提案です。大阪を語ることで地方都市の再生に役立つヒントを導き出したいと考えています。
 今までに日本各地の百貨店のマーケティングのお手伝いをしてきました。これから何回かに分けて、地方百貨店の再生という切り口から地域再生のヒントになるポイントを導き出してみたいと思います。

 次回は、姫路市と大分市の比較からまとめていきます。
                                               (2009年4月6日)
 図ー人口及び小売り吸引人口
 ■おしゃれな街の世代間ギャップ〜中心市街地活性化の課題
 「百貨店が街の中心」でなくなった世代の台頭

 大阪市内で「おしゃれな街」イメージを聞いたのが下記のグラフです。20代の女性と50代の女性の世代の違いがはっきり出ています。
 20代の女性にとって「おしゃれな街」としてイメージされる街には「百貨店」の存在感は強くはありません。それだけではなく、数多くのファッションビルが建ち並ぶ梅田周辺ではなく、南船場や堀江といったエリアへの評価が高くなっています。
 そこにあるのはセレクトショップであったり、カフェであったりし、時間をゆっくり過ごせる機能です。

 中高年層及び百貨店業界人は街の中心には「百貨店」がなければいけないと考えていますが、若い世代にはその意識はありません。
 
 百貨店に対して親しみや、愛着を持つ世代はもう中高年以上の世代に限られてきているようです。次世代の顧客を育成する事を怠ったつけが現れてきています。

 「おしゃれな街」というのは地域の資産価値を高めます。世代によるギャップがこんなにまで大きいと、将来の街の構造をも大きく変えてしまうことになります。
 

 中心市街地の商業の再生のターゲット設定

 地方都市の中心市街地の商業の衰退にも同じような構図があらわれていると考えます。百貨店または歴史のある商店街への若い人の愛着が今まで形成されてこなかったことが大きな問題です。

 駐車場の整備なども大事でしょうが、「今現在なぜか地価だけ高い中心の商店街」に投資するより、その周縁部で若い人の創造性を発揮できる場を提供していく仕掛けの方が効果をあげるように思います。

 既存の商店街は、その商店街に懐かしい思い出を持つ「シニア」に絞り込んで集客策をたてるのが得策でしょう。
ただし、シニアだけでは街は衰退するばかりです。ファミリー層は郊外の大型店に流出しますが、次の世代を獲得する魅力作りは必ず必要です。

 地方都市の場合、既存の市街地にそのような集積の余地がない時は、郊外立地のロードサイドの路面の専門店が若い人を引きつける役割を果たしているようです。大型ショッピングモールが中高生と子供連れのファミリー客で一杯になった時に、そこは果たして「おしゃれ空間」といえるかどうか?
かといって、中心地の商店街はドラッグストアやアミューズメント施設、全国チェーンの居酒屋ばかりでは・・・行き場所がなくなってしまいます。
                                    (2009年4月3日)

 図ーおしゃれな街としてのイメージ評価  (大阪市内通勤者対象のアンケート調査より)
 ■まぼろしの大阪城
 「こてこて」でない大阪と「逝きし日々の面影」

 今、一番面白いお話をつくる作家、万城目学先生の新作「プリンセストヨトミ」の舞台は大阪の空堀商店街と、もうひとつの大阪城ですが、辰野金吾氏設計のビル(国会議事堂を含む)が大きな役割を果たしています。
 早速、辰野金吾についてYhooで検索して見ましたのでご紹介します。辰野金吾のデザインは「歴史主義」と呼ばれるスタイルに属し、古典的な建築からモチーフをとる懐古的な様式で、多分、専門家的には「通俗的」と見られているようです。日本で多くの人に愛されていヴォーリズも歴史主義に分類されているデザインの作品があります。
 今から見ても、懐かしい建物ですがその時点ですでに「懐かしい」(といっても日本にはなかったデザインですが)ものだったようです。ヨーロッパの都市景観を代表する建物の多くはこの歴史主義の建築物ということですから、欧米人も日本人も、どこか懐かしいデザインに愛着を持つのかもしれません。

 とはいえ、世代が変わる中で、それぞれが懐かしいと思う風景は変わっていきます。その中で継承されて残るモノと、全く変わってしまうモノがあります。それを一つづつ丹念に仕分けしていく作業が必要です。
 時代の変化の中で変わらずに愛着を持たれるモノと、愛着を持たれないモノは何なのか?まち作り計画の中で考えてみる事がこれから先に長く愛される街をつくる為に重要なポイントになります。

 大阪中央郵便局の中に入っても、威圧感は感じますが、近代建築=ダイビルや心斎橋大丸の建物の中に入った時に感じる「ほっとした」感覚がありません。その理由を明らかにするのは「建築家」の専門領域ではないのかもしれません。

 安藤忠雄氏の「チャーミングなすごさ」と「究極の住まい」

 テレビのバラエティ番組で、建築家安藤忠雄氏の住吉の長屋が紹介されていました。出演者から先生もご自分でザインされた家にお住まいですかと問われた安藤氏は「いえ。3DKのアパートです。住ためにはよく出来てますもの」とあっさりと、回答されていました。にっこり笑ってしれっとそう言えるだけ、自己の作品を相対化できる懐の深さはさすがす。
 
 以前、豊中緑が丘の様々な個人住宅をご紹介いたしましたが、広くて立派ですが、自分の内面がむき出しになっているようで、住みにくいのだとうなあと感じたのを覚えています。毎日の暮らしは、公団の低層の3DKの団地が一番住みやすいのではないかと思います。(不便もありますが)〜私自身生まれ育ちは団地ではないのですが、集合的無意識レベルで懐かしさを感じるのでしょうか?

 「大阪」のシンボルは「本物」なのか

 大阪の経済史を勉強し直しているのですが、元禄時代に「天下の台所」として栄えた大阪は明治時代には人口が三分の一減少し、衰退していたといわれています。幕府の米価格の統制や緊縮財政、大名貸しの利回り低下が原因です。
 昭和初期に工業都市として繁栄した大阪は戦争中の空襲と戦後の工場三法による工場の地方移転により衰退します。

 「いつも東京に弾圧される」「いつも昔は繁栄していた」というのが大阪人の心の奥底にすりこまれているのかもしれません。
その大阪人の心のよりどころとして形になっているのが、徳川幕府によってつくられた「大阪城」(しかも戦後のコンクリート製)なのは皮肉な話です。

 そんな偽物の「大阪城」でも大阪人が他府県人や外国人に紹介するランドマークとなり、アジアの観光客の観光スポットになっているという事実を考えたとき、「本物」とは何だろう?「本物の建築」とは何だろうと考えさせられます。
 
 例え「フェィクぽい」ものでも多くの人の気持ちを集めれば「本物」になります。      (2009年4月2日)
 
 
トヨトミプリンセスでは地下の幻の大阪城が舞台になっていましたね。
図ー大坂が誇るもの

(自由回答・回答件数)
民間調査期間が大阪市内通勤者806人に聴取

 ■少し前の近未来予測〜時代の行き先はどこへ
 予測は振り返り検証することに意味がある 

 下記の表は、昨年の春の時点で各方面から発表されていた近未来予測を集約したものです。
 実際の予測は2007年頃に各社で予測分析がされていたわけですから、「未曾有の経済危機」の不安がまだ表れていない頃の予測です。
 一覧表としてまとめる際に、当時喧伝されていた「プチ富裕層の出現云々」はかなりカットしたつもりなのですが。(関西では新しい富裕層が出現している実感があまりありませんでしたので) それでも、その時点では、マスコミで話題になっていた「富裕層」に全く触れないわけにはいきませんでした。
 現在、富裕層を上顧客としていた企業が苦戦していると聞くと、とても、申し訳ない思いです。(まあ、各社とも私がコンサルして業績不振となったわけではありませんが)マーケティングコンサル、広告、シンクタンク業界もやはり、反省や相互批評は必要だと思います。(先月、他業界〜建築家業界〜に厳しいことをいっておいて自分たちのことはほおかむりするわけにはまいりません)

 確かに「富裕層」は社会に存在し、その消費をターゲットにした事業はニッチとしてあるのだと思います。ただし、商売の基本は、品質の良い商品サービスを、お値打ち価格で提供することであることはいつも忘れてはならないと思います。

 「個人家計消費」から「新拡大家族家計消費」への転換

 中高年フリーターについてはここまで「社会問題化」するとは予測していませんでした。ただ、派遣スタッフの高齢化は指摘されていましたから、いずれ何らかの形でそのつけが回るとは思っていましたが・・・。
 団塊世代のリタイアによる「消費押しだし効果への期待」は、この不況の先行き不安に押しつぶされてしまった感があります。
 ただし、今の不況で日常生活の生活費を支えているのはこのあたりのシニア〜高齢者のストックなのでしょう。(「オレオレ詐欺」でポンと振り込むだけの手持ち現金があるわけですから)

 高度成長期以降「分衆の時代」「個衆の時代」に「消費行動」は家庭から個人に分解されてきました。(1人1台のテレビとかオーディオとか・・)
 従来は家計で家庭単位で購入されていた商品が、個の欲望を喚起することで市場を押し広げてきたといえます。
 その張本人である大手広告代理店が「拡大家族の親子消費」を提起するということは親のストックを含めた「家族資産」(=親の援助)の裏付けがなければ、消費が拡大しない時代となったのでしょう。

 
 確実に変化すること

 この手の予測は、発表されるときは大々的にマスコミに流されますが、その検証がされることはあまりありません。外れていることを認めるのはかっこ悪いですからね。
 ただし、「予測はあたらないこともあって当然」と開き直ってしまってはだめなのです。当たっていてその理由は何か?外れていればその理由は何か?その繰り返しが予測の精度をあげます。

 確実に変化する数字と、大きなレンジでのトレンドを中心に将来を予測することで、短期の表面的な変動はあっても必ず、世の中はそちらの方向へ進むという方向は読めます。

 例えば、環境対策の重要性の増大、就業者の高齢化の進行、都市部でも進む人口減少と空き家の増加が生み出す問題は「変動する景気の回復時期」に関わらず、今後のライフスタイル、住まいを考えていく上での重要なキーとなります。
                                           (2009年4月1日)
 

2009

2010

2011

近未来のトレンド


人口      12、740万人

世帯数    4,997万世帯  

人口  12,718万人

世帯数 5,014万世帯

人口  12,691万人

世帯数 5,022万世帯

2015年人口 12,543万人  

2025年 11,927万人

2015年    5,048世帯   

20254,964万世帯

世帯数は2015年をピークに減少していく


会のマクロ動向

未曾有の経済危機が継続?

・薄型テレビの需要が世界の需要の50%を超える

・間伐材や建設廃材を燃やして発電する大規模な「木質バイオマス」施設が営業運転を開始

・中東ドーハで温室効果ガス排出権取引所がオープン

後半には景気回復?

・看護士や助産師が全国で15,900人不足

・バイオ燃料普及

・健康福祉、医療、介護ロボットが日本の中核産業に  75兆円市場

・シニア派遣社員が80万人から100万人に増加

・団塊世代の大量退職で家計貯蓄率が大きく低下

・国内の環境ビジネスが472,266億円に拡大

・日本の観光産業が358,000億円の付加価値を生む

65才以上のシニア市場が60兆円規模に(2000年は44兆円)

・ドイツの退職年齢が67才に

 〜日本でも将来は退職年齢70才へ

・社会の高齢化により日本の施設給食市場が19,299円に

・この年まで団塊世代の消費押し上げ効果が8兆円規模に(波及効果は15億円)

35才以上の中高年フリーターが132万人に達する

60才以上の離職就農者が6万人に

・地上派デジタル放送

@「地球環境」対策が大きなテーマに

 ・バイオ燃料、バイオマスプラスチック

 ・排ガス規制

 ・CO2排出権取引

A団塊世代大量退職のインパクト

 ・オフィス需要激減

 ・リフォーム市場

 ・働く高齢者の増加

B「空き家の増加」

 ・地方集落の集約

 ・都市の郊外 老朽化した団地

  〜「減築」へ

 ・国内での自動車需要の縮小

  〜免許を取らない若者

    高齢者の免許返上


イフスタイル動向

・内閣府の調査でも国民意識の「社会志向」が年々増加傾向。「社会への貢献意識」も高まっている。

(団塊世代大量退職)

・「史上最裕福な退職生活者群」

・「商品価値を知る消費者」

 ↓

拡大家族(子供、親)を含めた消費

+団塊世代への相続による資産継承(財の移動〜団塊世代親子への資産集中)

=「プチ富裕層の出現」??

相続されても

居住されない「家」の増加

・テレビの買い換え需要でリビングのスタイルが変わる

   

■この4年間の重点ターゲットは

  「団塊世代」と「団塊ジュニア

拡大家族の親子消費(電通)

(消費キーワード) 電通のレポート

・休日はとりあえず親の家

  近居での日常的な交流

・近場のセカンドハウスの親の家

 新たな耐久消費財購入へ

 〜大画面テレビ等

・家電新製品

 同調的購入で2世帯に普及

・趣味を楽しむための「半個室空間」

・「基礎的消費の高度化」ワンランク上、高くても品質の良い物??


宅・建築関連の動向

・「減築」推進制度の検討結果がまとまる(国土交通省)

・特定瑕疵担保責任履行確保法の施行

・改正消費生活製品安全法が施行(老朽化した家電ガス器具の事故対策)

・新築住宅着工数がピークに達した90年代の物件がリフォーム時期を迎え、リフォーム支出世代の人口比率が高まり、リフォーム市場が88,000億円に拡大

・日本の都心部でオフィスビルが供給過剰に(ビルの2010年問題)

・東京の通勤圏内、都心から60分以上の地域で人口減少が始まる

・新築住宅の省エネ基準達成率66% (2010年)

200年住宅」が1万棟普及

・テレビ放送地上波デジタル放送へ転換

 (20117月)

2011年まで

・住宅性能表示実施率 新築で50%へ(04  年で16%

・既存住宅への「火災報知器設置」 義務づけ期限

(政策の方向性

@住宅の寿命を長くする

A中古住宅を流通させる

 =居住水準のミスマッチ解消

B既存住宅への省エネ

  バリアフリー対応が進む

 =新築住宅は全住宅の2%

Cまちなみを改善、減築も導入

  スラム化を防ぐ 

                

 3月
 ■梅田vsなんばターミナル比較@ターミナルの飲食機能の違いに見る街の特性
 ターミナルの飲食店で来街者の特性が読み取れる

 梅田ターミナルの最大の商業施設「阪急三番街」となんばターミナルの「なんばシティ」「なんばパークス」という似たような駅立地の商業施設を比較するとキタとミナミの違いが現れてきます。本格的な食事や、ゆっくり時間を過ごすカフェは駅から離れた立地の路面店を利用するのですが、日常の利便性で選ぶときに駅に近い立地で選択します。ターミナルの駅立地飲食店の特性を眺めれば、その街がどのようなお客さんを呼び込もうとしている街であるかがわかります。

 女性客の居場所が少ない「なんば」

 ミナミ(なんば)に多いのは焼肉・エスニックとお酒の店、少ないのは「カフェ・スイーツ」。それにともない客単価や席数の平均もなんばの方が高くなっています。若い女性、中年女性ともになんばでの居場所は梅田に比べて少ないという事を表しています。
 駅近くのなんば」・千日前は飲食店の密集しているエリアですが、女性だけでゆったりと楽しめる店はほとんどありません。かなり「親父くさい」街です。これでも「なんばパークス」が出来てかなり変わってきたのですが、まだまだ十分ではありません。
 なんばシティの改装、島屋の増床でこれからも変わっていくでしょうが、ターミナルの商業はまず女性に評価されないと成功しません。遅れを取っているという自覚を持って計画されなければなりません。

 駅周辺に選択肢が多い梅田、堀江など近鉄難波周辺にしか居場所がないなんば

 ここにピックアップした阪急三番街以外にも「かっぱ横丁」「阪急32番街」「茶屋町NU」など阪急梅田駅周辺には阪急系列の個性の違う飲食集積があります。南海なんば駅周辺にはそのような集積がありません。(ちなみに阪急三番街の全体の売上は年間427億円。なんばシティは327億円。なんばパークスは284億円です。なんばの駅周辺では他になんなんタウン、丸井などの商業集積がありますが南海電鉄の経営ではありません。)

 若い女性は堀江や南船場など近鉄難波駅から西へ居場所を探すことになります。おばちゃん達は難民となってお茶も飲めずにそそくさと用事をすませて帰るのでしょう。余談になりますが、大阪市内のオーナーシェフイタリア料理店の分布を調べてたことがありますが、心斎橋以北に比べて心斎橋以南では極端にその数が少なくなっていました。 やはり、親父くさい・・・・ (2009年3月31日)
図ー1 なんばと梅田ターミナル施設の飲食店業種構成
(ANALOG作成)
図ー2 なんばと梅田ターミナル施設の飲食店平均単価  (円)
(ANALOG作成)

図ー3 なんばと梅田ターミナル施設の平均客席数  (席)
(ANALOG作成)
 ■100年愛される 街の顔になる建築物とは
 大阪中央郵便局をめぐる議論

  東京中央郵便局の建て替え問題のあおりで大阪中央郵便局の建てかえ計画が中断しています。東京中央郵便局は「朱鷺を焼き鳥ではなく剥製にする」という趣旨で、現在の建物をできるだけ保存する形に計画が変更されるようです。
 白亜のタイル張りの外観を持つ東京中央郵便局は、地域の人々にそれなりに愛着を持たれているのだろうと推測します。
 
 大阪中央郵便局についてはどうなのでしょう。何年か前のシンポジウムで一般参加者から「戦中に建てられ建物で暗くて印象が悪い」という指摘が年配の市民から指摘されています。大阪の都市開発を紹介している個人のブログでも、建て替え発表があった時に、現在の建物は都市景観として美しくないという理由で建て替え歓迎の声が大勢を占めています。確かに灰色の威圧的な外観は、他の「近代建築」と呼ばれている歴史的な建物とは違った雰囲気があります。あまり愛着を持たれているとはいえないようです。

 先週、中央郵便局の保存を訴えるシンポジウムがあったようです。「建築家業界」の方々は構造などに歴史的な価値がある主張されていますが、一様に「一般にわかりにくいかもしれないが」というエクスキューズをつけています。
 不特定多数が利用している建物のわりに「惜しむ声」は一般市民からはあまり聞こえてきません。

大阪中央郵便局の建て替えも、一部保存という形で決着するのでしょう。あまり美しくない外観を一部ひきついで、「建築的に価値のある」特徴的な構造を保存するのでしょうか。

 「用の美」を持つ近代建築

 果たして、それは長く愛着を持たれる建築物になるのでしょうか。「梅田駅の駅前の都市の景観としてふさわしいデザインか」、とか「容積率をいっぱいに使った高層建築物はこれからの都市の機能としてどうなのか」とか、これから100年愛される街をつくるための問題提起ではなく、単に「昔の偉い建築家」の「作品」を保存しようという議論に終始するのは部外者には理解できません。

 これからの新しい建物を設計する現代の設計者に対してもずいぶん無礼な議論ではないかと思います。

 「建築家業界」はバブル前後に「現代の巨匠」が設計した「作品」が今、次々と取り壊されていく現実をどう考えるのでしょうか?大阪の中心部に次々と建てられている安普請で有名なビジネスホテルについてどう考えているのでしょうか?
 戦前までに建てられた建築物を、東京では「歴史遺産」と呼ぶことが多く、関西では「近代建築」と呼ばれることが多いと聞きました。(本当かどうかは知りませんが)その理由は「遺産ではなく今なお「使用されている」建物が多いということです。オーナー、使用者が愛着を持って手入れされている建物(団地やオフィスビルなど)はまだまだ現役です。

 例え無名の建築家の建てた建物でもその生命を保っています。逆にバブル期に金に飽かして「有名建築家」に建ててもらった「作品」の多くが「粗大ゴミ」になっています。それは何故なのか?「建築家業界」が考えて答えを出さなければいけない宿題であると思います。
 
 切り捨てた市場で成長産業が生まれる〜ホテル業界の事例

 今ささやかれるホテルの危機

 ホテル業界は、昨年まで1兆円規模で堅調に推移していました。外資系ホテルの進出ラッシュが続いた2007年問題もクリアし、東京の外資系ホテルのラウンジには行列が出来ていたといいます。17万円もするホテルがあのように沢山立ち並んで成立するとうのは関西でビジネスを行う我々には信じられない光景でした。

 2008年以降、振興不動産、ホテル開発企業が次々破綻し、秋のリーマンショックを経て、外資系の超高級ホテルでは稼働率5割を切るホテルが続出しているそうです。
「日本には海外に比べて超高ホテルが足りない」などといっていたのは誰なんでしょう?

 東京、名古屋地区は外国人ビジネスマンの出張利用が多かったのでダメージが大きいようです。大阪地区はもともと、外国人ビジネスマンの出張が少なく(それもまた情けない話ですが)、韓国、中国からのレジャー利用客が大きく落ち込んでいます。ウォン安で来日する観光客が減り、逆に日本からの買い物客で韓国の百貨店が売上げを伸ばしています。 

 何故今更「同窓会プラン」に驚くのか?

 25日の日本経済新聞で「同窓会ホテルに集合」という記事が掲載されていました。シティホテルが、料金を抑えた同窓会パックでシニアを中心とした宴会需要を獲得しているというものです。今更という感じです。96年に大阪に進出した帝国ホテル大阪が、その当時から宴会需要を獲得するために開発していた商品ではないですか。

 元々、市場がビジネスより個人客、観光客に依存している大阪では目他らしい話ではありません。東京の新聞記者には目新しい動きと感じられると言うことは、東京のホテル業界では地元客、リピーター開拓をしばらく怠っていたということなのかも知れません。

 切り捨てた市場で成長するニューカマー

 ホテル業界ではブライダルは儲かる商品ではないので、できれば敬遠したいというお話を聞いたことがあります。名古屋では法人需要の落ち込みをブライダルが支えているともいいますがどうなのでしょう。ゼクシーが調査している結婚式場のシェアではホテルのシェアが年年低下し、ハウスウェディングのシェアが上がっています。

 邸宅貸し切り型などで単価の高い結婚式を獲得しています。平日は営業しないなどのコストダウン策で利益をあげているといいます。ホテルではその割り切りが出来ない・・・・その為市場を切り捨てているという事になります。(切り捨てた市場で成長している企業が出現するなんて、何か百貨店に似ていますね)

 都市の中のホテルの機能が形成する市場は、分解されてより効率的で、顧客に役立つサービスを提供できる専業の事業者に吸収されていくのかもしれません。例えば、温浴施設、カラオケ、レストラン、ディスパなどブランド可が進み認知されると機能は分解され、宿泊特化型ホテルだけが残るのかも知れません。  (2009年3月27日)

 その後、ホテル業界の稼働率は回復しています。近日中に一度検証しておきましょう。(2014年6月)

図ー1 結婚式場のシェアの推移(ゼクシィ調べ)
 単位:%
図ー2 ホテル・旅館市場規模の推移
  単位:億円
 ■阪神なんば線開業への期待と現実
 阪神間〜なんば

 3月20日」に阪神なんば線が開業しました。事前の認知度でみても非常に期待の大きいプロジェクトであることがわかります。
 京阪中之島線の開業ではシニアの来街が増えてリーガロイヤルホテルがかなり潤ったといわれています。シニアに強い島屋などは阪神間のシニア層の来店に期待したいところです。今のところ、開業の混雑もあり鉄道利用を目的とした利用者が多く混雑を嫌う層には敬遠され、まだ期待された層の来店にはつながっていないようです。
 今のところなんば周辺には大人が落ち着いて食事のできる店も少ないですし、なんばパ−クスができて環境は改善されたとはいえ、商店街の殺伐とした人通りはゆっくりと歩いて楽しみたいシニアには敬遠されているのかも知れません。

 阪神間中では阪神電鉄沿線住民のなんばの利用率は増加している比率が最も高いのですが・・・・。以前ご紹介したように堀江、南船場へ流れているのかも知れません。

 島屋増床の認知率も低いので、これからもっと積極的な告知を行っていく必要があるでしょう。

 奈良〜大阪・三宮

 奈良県の消費の3割は県外へ流出しているという調査結果が発表されています。年間4,850億円が流出しており、その5〜6割が大阪となっています。「婦人おしゃれ着」「服飾雑貨」「友人との外食」は4〜5割が県外流出しています。今後は神戸・三宮への流出も増えることが想定され対策が急がれます。

 逆に奈良への日帰り観光客も増加するので、リピーターを獲得できる「外食店の質」「地域産品」の開発が求められます。

                                         (2009年3月26日)
図ー1「ターミナルエリアでの開発、新線についての認知度」


図ー2 「5年前と比べて利用機会が増えたエリア」

2008年6月 株式会社三菱総合研究所の調査 沿線住民へのネットアンケート
 ■「スター生産者」と「CSA」〜エンドユーザーによる生産者の選択
 「スター生産者」が誕生しているフランス

 フランスのレストラン業界でもトレーサビリティへの対応が求められるようになり、レストランの食材である野菜やバター、肉などの分野で生産者の名前を前面に打ち出して質の高さと安全性を強調するケースが増えています。
 野菜ではパリ近郊で野菜を生産しているジョエル・ティエボーは長い間生産が行われていなかたった古い種子探しだし復活させたり、ニンジンだけで10を超える品種を育てるなど多様な野菜を丁寧に育て姿勢が評価され、パリのトップシェフが通っています。日本の野菜を育てている山下農園が日本通のグランシェフに人気を集めています。
 どこの誰が生産している野菜を使うかが高いステイタスを与えている。日本でもお米の生産者などでそのような動きがありますし、地場野菜の再現などに力を注ぐ生産者もおられますが、まだレストランのステイタスというほど認知はされていません。ビオワイン(有機ワイン)などが差別化のポイントになっていますから、シェフの名前だけでなく生産者の名前で店が選ばれる事も増えてくるでしょう。素材の力を謙虚に受け止めるシェフの姿勢が求められます。

 消費者が地元農家を支援する青果流通の新たな仕組み「CSA」

 CSA(Community Supported Agriculture)地域支援型農業は、アメリカに生まれた新しい青果流通の仕組みです。各農家が決めたルールに従い消費者が「一定量の作物を、一定の頻度で、一定の期間」直接取引する仕組みです。農家は契約者数に応じて生産量を管理し、経済的な安定を得て小規模でも成り立つ農業を実現できます。一方消費者は農家から仕入れた安全で新鮮な食材を味わうメリットがあります。
 仕組みは毎週または隔週で約15種類の青果が詰まったバスケットを購入者側が農家まで取りに行く仕組みです。(バスケットは31ドル)生産者側と購入者が運命共同体となって始めて成り立つ仕組みです。〜日本で応用しようと言うときやはり物流がネックになりそうですね。私も以前、丹波で生産している若い夫婦の野菜を購入していました。2週間に1回、ご主人が届けてくれていたのですが、地域の購入者が減ってしまって届けてもらえなくなりました。岡山の山奥の天然酵母パンなども配達してくれていて楽しみにしていたのですが・・・・さすがにこちらから取りにいくのは大変ですし、宅配便を使うと野菜の値段以上の料金がかかることもありますし。

 個人のがんばりではなく、仕組みとして整備されれば安心・安全かつ美味しい野菜の定期購入を利用したい人も少なくないでしょう。

                                        (2009年3月25日)
 ■最後の1マイルが遠すぎる〜ネットスーパーの収益源
 ネットスーパーの収益を圧迫する高い配送コスト

生協の個別宅配がかなり普及してきました。特に都市部では協同購入というグループ単位での配達に置き換わってきています。 利用者にとっての利便性は高いのですが、配送コストの負担については中々シビアで、特に人人口密度の低い地方部では個別宅配を採算に乗せるのは大変です。

 大手流通の地域食品のお取り寄せ便でも、地方の水産物など、定価のはっきりしないものについては宅配コストを乗せても割安感があるのですが、日常的に利用する定価のついたような商品は配達料の方が高くつきます。
 ネットショッピングでドリンク1本19円とかいうセールスがありますが、配達コストを考えると近くのディスカウントストアで購入するのとあまり変わらない金額になります。

 アマゾンの中古本が1円で売られているという事で、何で儲けているのかということが話題になっていましたが、請求される配送料と、年間契約している実際の配送料との差額で収益を上げているようです。

 ネットスーパーに注目が集まっています。2007年には150億円の市場規模が2008年には300億円へ倍増したという推計があります。スーパの販売額は2008年で13兆750億円。将来的にはその1割、1兆3000億円強のマーケットが形成されるという皮算用がありますが、まだまだ普及への道のりは遠いようです。「独りがち」といわれているイトーヨーカ堂のアイワイネットで会員数30万人。配送エリア1都1道1府6県、平均客単価6,500円、1日1店舗の平均受注件数は80件、08年度売上が120億で2位の西友の会員数16万人、売上40億円を大きく引き離しています。それでも単独事業ではなく店舗サービスの域をでていません。
 生協の個別配達は週1回配送で配達料105円。玄関先に置いて直ぐに立ち去る「神風配送」を行っています。それに対してネットスーパーは当日配送で、購入金額が3000〜5000円以上で無料のところが多いのです。配送コストは事業の大きなネックになっています。

 ちなみに、私たちの身の回りで「配送料」を表立って聴取していない宅配業者として新聞があります。折り込みチラシ、及び新聞への広告料で収益を上げているので配達コストは新聞購読者ではなく広告出稿者が負担しているといえます。広告費で配送コストを軽減するのもひつの手段です。(広告付きのハガキのような商品もありますしね)

 配送インフラの担い手整備がこれからの鍵に

 生活者への物流のラスト1マイルをきちんと抑えておけば、商品の受け手または送り手から「配達料」という収益があげられます。エリアを小さく区切ってなおかつ一定のドミナントを抑える・・・・たぶんそれが出来るのは毎日地域を巡回している配送インフラを持つ宅配業者か、地域地域にデポとなる拠点を持つコンビニエンスストアチェーンでしょう。 

 セブンイレブンのネットで書籍を購入した場合、店頭で受け取れば配送費は0円です。宅配になると1500円以上購入しないと配送費がかかります。〜生活者へ届ける最後の1マイルの配送コストがネックになっていることが伺えます。また顧客が受けとりの手間をいとわなければ配送コストが低減できます。

 冷蔵商品の配達もコンビニへの配送網を利用すれば効率化できます。店に取りに来てもらうことをベースにしておいて、店舗からの配送も併用すれば効果的です。(コンビの商圏はせいぜい500m圏です。宅配サービスを始めているコンビニもあります)

 以前も述べましたが、「マンション住民へのカウンターサービス」や「地域住民へのコンシェルジュサービス」というビジネスにはとても難しい面があります。情報提供サービスではお金は取れませんし、わずかな手数料収入では収益源としてはあてにはできません。その意味で地域のコンシェルジュサービスを事業として成立させるには、生活者への配送のラスト1マイルをカバーできれば「配送料」収入を獲得できるので強みになります。また、一定のドミナントを押さえれば広告収入も獲得可能です。(地域のコンシェルジュをうたったコンビニがありましたがうまくいかなかったようですが)

 一方、地域を毎日巡回している配送業者として、日本郵政がネットを活用した宅配型の小売業に本格的に取り組めば既存の事業者にとって脅威となります。

                                          (2009年3月24日)

 ■「東阪」鉄道沿線イメージ〜そっくりさんはどこだ
 関西人の悪い癖で、たとえば東京へ行っても「ここは大阪でいうと○○のような街だな」と自分の知っている街に置き換えて街を理解しようとする癖があります。成り立ちが違うモノを主観的な「似ている」という判断でとらえると間違えることも多いのですが、利用者のイメージ構造が似ているモノを比較対象とすることで直感的に理解するときの助けになる側面もあります。 関西と関東で同じ項目で鉄道沿線のイメージ調査データをもとに、「だいたいイメージが似ているかな」という鉄道沿線を比較してみました。

(あくまでもイメージ評価の結果を基に「似ている」としたもので、沿線資源や住民層については私の知見の範囲で比較しています)

「住宅・不動産情報ポータルサイトHOME`S調査」から各沿線のイメージ上位5項目について4項目以上同じ項目があてはまり、その順位も似通った鉄道沿線を対比しています。

1.北大阪急行は東急東横線のイメージに似ている

 環境、住み心地の良さのイメージが高くかつ、安心・信頼、親しみが上位にあげられています。大きく違うのは「おしゃれ」というイメージが東急東横線にはあるのに北大阪急行には無いことです。北大阪急行は豊中市の緑地公園から千里ニュータウンの千里中央までを通っています。閑静な住宅地として関西でもトップクラスの人気エリアですが、確かに自由が丘のある東急東横線のおしゃれなイメージはありません。


2.阪急千里線は東急目黒線に似ている

 閑静な住宅街ですが、庶民的な親しみ安さが魅力の阪急千里線は、住み心地の良さなども東急目黒線のイメージに似ています。阪急ブランドの安心・信頼はありますが、東急目黒線の環境評価には後れを取っています。

 淡路や豊津といった下町を通って関大前から千里ニュータウンの北千里駅までバラエティにあふれた沿線風景を持つ阪急千里線は、下町の目黒から自由が丘や田園調布までつなぎ、沿線に昭和大学、東京工業大学を擁する東急目黒線に似通ったイメージがあります。




3.阪急神戸線は東急田園都市線に似ている

 関西でも有数の高級住宅地のイメージを持つ阪急神戸線は、東急田園都市線とイメージが似ています。閑静な住宅地が多く、住み心地がよい。環境がよい上に親しみがある点が共通しています。阪急ブランドの安心・信頼が高いのですが「おしゃれ」という評価はやはり上位5項目にはあがってきません。


4.近鉄奈良線は相鉄本線に似ている

 近鉄奈良線は住宅開発が進み、関西のアッパーミドル層が住宅を取得しやすいエリアとしてしられています。庶民的で、親しみが持てるファンミリー向けの住宅地。無難で住み心地が良いというポイントが共通です。確かにどちらも若いファミリー層の多い沿線です。


 ベースにした調査は東阪の比較を意図したものではないので、少し無理もありますが、私自身ある程度土地勘のあるエリアで比較していますので、大きく外れてはいないと思います。

 東京の方が関西を調べるときになんらかの目安にしていただけると幸いです。(雑誌記事などでは随分見当外れなものも多いので、関東の人は本当に関西に興味がないのだな思います。知らなければ知らないと言えばいいのに・・・)

 ちなみに、なんば線が開通して今話題のあの鉄道については、イメージの似た鉄道は首都圏には無いようです。

「住宅・不動産情報ポータルサイトHOME`S調査」様から使用許諾をいただいて当社が独自に分析したものです。文責は当社にあります。

                                             (2009年3月23日)

 ■様々な期待を乗せて明日20日開業する「阪神なんば線」
 明日開業する「阪神なんば線」に関して様々な思惑が発表されています

(阪神)
・初年度の利用は1日67,000人 一定期間経過後の定常時の利用者数は1日84,000人
・阪神線や他社線からの移転を除いた新規需要が1日45,000人
・運賃収入は年間38億円   (総事業費900億円強)

6月に閉鎖する「新歌舞伎座跡」(2,145u)の商業開発に興味を持っているといわれています。

〜JRなんば駅周辺(湊町地区)では近鉄や旧マイカルでも大型店の構想がありました。南海なんば駅kとの回遊性の悪さがネックでしたので、新歌舞伎座及びその周辺のダークな部分が整理されると「なんば」の街の厚みがまして地域が良くなります。

(近鉄)
・姫路(山陽電鉄)〜伊勢志摩間の観光特急の実現を構想
〜南海電鉄もなんば経由で高野山をアピールしていくことでしょう。地域の観光資源には地元民は意外と冷淡ですが、少し距離を置くとその魅力が発見されます。相互の沿線の活性化につながります。

(JR)
・奈良〜尼崎間の直通快速を運行し始めているが、神戸〜奈良の需要はあまりないと様子見
・ICOCAのポイント割り増しキャンペーンを実施?
〜13日に述べたように「JR」には「沿線分化」という発想がそもそも存在しません。これは良いとか悪いとかいうものではなく、ひとつの企業文化だと思います。JRは少し広域の地域移動からの需要創造に強みを発揮すべきです。


(学校)
・西宮の「武庫川女子大学」は奈良県の志願者が前年比22.5%増加 急遽試験会場を確保
・奈良市の名門私立高校「東大寺学園中」は兵庫県内からの受験者が2.4倍に増加
〜中高一貫の進学校は阪神間〜大阪市内南部〜奈良に固まっています。意外と北摂方面には少なく、この沿線に集中しています。

(ホテル)
・ホテル日航奈良は兵庫県民対象に室料半額プラン〜兵庫県からの客数を全体の1.5%から2.5%へと拡大
・神戸メリケンパークオリエンタルホテルは奈良県在住者を対象に飲食代金25%割引キャンペーン

(百貨店)
・島屋大阪店は尼崎市や大阪西部からの来店客数を20%アップする目標
〜大阪北部、阪神間に拠点を持たない島屋としては絶対にものにしないといけないチャンスです。伝統的で保守的な価値観を持つ富裕層を確実につかむ必要があります。

 27日にはキッザニアが甲子園でオープンします。日本橋のオタクロードではメードのパレードを開催し、16万人の人出を見込んでいます。


 沿線の「大阪ドーム」(京セラドーム大阪)は地元民でさえ意外に場所が知られていません。今年はバファローズもいいところまで行きそうです。タイガースとバファローズのなんば線シリーズが実現すると楽しいのですが。・・・利用経験率は高いのですが用事のあるときしか利用されない地域です。今後の開発で時間消費型の機能を充実すれば、もう少しこの存在感が活きてくるでしょうy。

 阪急電鉄が「マンハッタン計画」を構想しながら塩漬けになっていた西淀川区の「中島地区」(21ha)の開発も進みそうです。沿線は古い町並みですが意外に知られていない資源も沢山あります。大阪府庁が南港に移転すれば、都市の重心も西に動きます。連携が深まる関西の兵庫〜大阪〜奈良、そして伊勢志摩や名古屋を結ぶ「阪神なんば」線は沿線に眠っている資源が多いだけに想像以上に重要な役割を果たす事でしょう。
                                               (2009年3月19日)
 ■「付加価値を高めるマーケティング」からの発想の転換
 「付加価値」を高める=少しでも高い価格で売りつける方便なの? 

 この不況が落ち着いて、社会が次のステージに向かうときにはマーケティングは大きく変わっていくのだと思います。右肩上がりの成長を前提とした「ネズミ講のような経済システム」が、その本家本元であるアメリカで否定されてきています。
 「成長のエネルギー」が量の拡大ではなく、違った方向に向かうのは間違いありません。とはいえ、昭和30年代の社会にもどり、古き良き時代の価値観を取り戻した「清貧」の暮らしというのも一種のファンタジーであり、現実的なものではありません。

 「働き方」においても「ワークシェアリング」が現実的に議論されるなど、社会の骨格が変わろうとしています。その中で、マーケティングもまた、従来の「言葉」「概念」の使い方を、新しい変化にあわせて吟味しておく必要があります。

 今の時点では、流通各社は市場の値頃感にあわせた「低価格」のPB商品を不況への緊急対応として大量投入しています。2〜3年後には「付加価値の高い商品で差別化」という方針で様々な理由をつけて価格の高い商品へ切り替えていくことになるはずです。

 マーケティングの世界では「付加価値」という考え方は、「基本的な価値」にプラスして他にない価値やサービスをつけて高く売れるようにしようということと理解されています。・・・・・それでは「一般的な価値」とは何を基準に誰が決めるのでしょう?

 西友のPB商品として出発した「無印良品」は西友の考える余計なモノをそぎ落とした基本的な価値を提供するという哲学がありました。同じ時期に開発された他社の価格対応PBは今は残っていませんが、「無印良品」は西友を離れても広く支持されています。
 最近、某社の低価格PBの「食パン」を口にしたときそのあまりの味と、そのパンしか購えない自分の貧しさに情けなくて涙が出ました。これは人を幸せにする商品ではなく、人を幸せにする店ではない・・・・。景気が落ち着いた将来、このベースにいくら付加価値のトッピングを振りかけても良い商品はできないと断言できます。

 完成された一つの宇宙としての「塩むすび」

 と、いうような事を考えさせられたのは「塩むずび弁当」を口にした時の「新しい天体」の発見によるものです。
 当初、紹介された時はよくある「駅弁の復刻版」のようなノスタルジー狙いとか、不況時に流行る、清貧ごっこの匂いがして、どうなんだろうと期待半分不安半分で食べたのですが、塩むすび2個と目刺し挽き、漬け物2切れで350円の「塩むすび弁当」はもうそれだけで完成、完結していて何も余計なモノを足す必要がありません。お米のちからでしょうか。しかも決して値段が高くない。

 この弁当に「付加価値」をつけるというのはどのような作業になるのか、そこにどんな素晴らしい宇宙が拡がるのか・・・・?

 基本的な価値を高い水準で完成させるいうことで、全く新しい展開が拡がるように思わされました。
 そのおにぎり屋さんはJR新大阪駅にあります。

http://www.kikutaya.co.jp/shopinfo/index.html へのリンク

                                                   (2009年3月18日)

 ■「中之島」「梅田北ヤード」の開発計画は「OBP」の停滞に学べ
 忘れられたOBP

 大阪ビジネスパーク(OBP)は大阪城の北東に位置する26haの敷地に開発されたビジネスを軸にする複合都市です。就業人口は38,000人。開発は70年代から進められていましたが、脚光を浴びたのは86年のツイン21完成以降です。

 OBPは大阪市内では貴重な「水と緑のアメニティ」と「国際性を感じさせる一流企業の集積」で、ある時期まではキレイな大阪を象徴する街として高い好感度評価を得ていました。
 ビジネスの街としては整備が進んでいるにも関わらず、最近はその存在感を急速に萎ませています。図ー1にあるように好感度が急落しています。実感としてエリア内の商業施設「IMP」「ツイン21の下層部分」の商業ゾーンの勢いがひどく衰えています。(ご承知のように、このゾーンの開発には西武セゾングループが大きく関わっています。私は別に西武セゾンをグループを毛嫌いしているわけではありません。むしろ好きなのですが、今この時期にセゾン流の仕掛けがことごとく破綻している〜つかしん、長浜楽市、心斎橋そごう、河内長野西友まで〜のと根っこは同じ問題なのだと思います)

 OBPのゾーン自体は地形的にも孤立しています。最寄りのターミナルである京橋との連携もうまくとれなかった。また機能構成が、ビジネスに傾斜し、商業や住宅などの街の変化の源泉や、街の固定客を育成してこなかった。等 、いくつか課題があげられます。
 デートスポットとして環境的には高い評価を得ながら食事の場所、感じの良いカフェなどを育成できなかったというのは不思議な気がします。

 市民の期待を集め、大阪市内の大規模プロジェクトとして先導的な役割を果たしてきたOBPですが(不動産事業として成功しても)街のイメージがこのまま停滞すると、それに続く「中之島西部地区」「梅田北ヤード」にも大きな不安をもたらします。

 水と緑、そして大阪城の眺めは最大の資源

 大阪府庁の移転が話題になっています。
 大阪市の観光資源として、その独自性と美しさで最大の資源となっているのは「大阪城」です。その大阪城を眺められるポジションの一つににあるのは大阪府庁です。地形上、その他の地域ではOBPが唯一最大のビューポイントなのです。

 大阪の美しい景観を紹介するとき、御堂筋と並んで大阪城とOBPの高層ビル群が定番になっています。この「イメージ資源」を大阪の未来を描くときに何故、もっと活用しようとしないのでしょう。中之島西部の開発、梅田北ヤードの開発の未来の一つのモデルとしてOBPのありようが目安になるように思います。(開発主体は違うとしても大規模で公共性の高い都市開発として市民から見たイメージは近いモノがあります)
※梅田北ヤード=24ha OBP=26ha 規模はよく似ていますね

 緑の景観の育成には歳月が必要です。中之島西部地区も北ヤードも整備はこれからなので、まだキレイな風景にはなっていません。(今現在、中之島に水と緑を期待して訪れると少しがっかりします)

 開発は建物が出来て終わりではありません。これから建設される新しい開発にばかりスポットライトがあたりがちですが、創り上げてきたいいもの育んでいく事がなければ、新しい街に夢は持てません。   (2009年3月17日)

図ー1「好きな街」
民間調査機関調べ 市内通勤者の街イメージ


表ー1 OBP開発の動き   ANALOG作成

OBPの動き

大阪市内他地域の開発

社会の動き

交通環境

1970年代

71「住友生命事務センター」

74「松下電工ビル」

72「阪急ターミナルビル」

76「大阪駅前第2ビル」

76「大阪マルビル」

77「阪急グランドビル」

70「万国博覧会」

1980年代

86「ツイン21

  「ホテルニューオータニ大阪」

88「KDDI大阪ビル」

  「讀賣テレビ放送」

  「OBPキャッスルタワー」

80「大阪駅前第3ビル」

82「ホテル日航大阪」

83「アクティ大阪」

  「大阪駅前第4ビル」

86「ヒルトン大阪」

83「大阪城ホール」

    「大坂城築城400年祭り」開催

83「環状線大阪城公園駅」

87「国鉄分割民営化」

1990年代

90「松下IMPビル」

  「住友生命OBPプラザビル」

  (いずみホール)

  「クリスタルタワー」

  「大阪東京海上ビルディング」

99「劇団四季大阪劇場」

  〜MBS大阪劇場

92「茶屋町アプローズ」

93「新梅田シティ」

94「ATC」

95「WTC」

96「帝国ホテル大阪」「OAP」

97「ハービス大阪」

  「ザ・リッツ・カールトン大阪」

  「大阪ドーム」

90「国際花と緑の博覧会」

95「阪神・淡路大震災」

  「APEC大阪会議開催」

90「地下鉄鶴見緑地線」

  (京橋〜鶴見緑地)

94「関西国際空港」

96地下鉄長堀鶴見緑地線(心 

  斎橋まで延伸)

  「大阪ビシネスパーク駅」

97JR東西線(京橋〜尼崎)

2000年代

01「住友生命大阪本社ビル」

  (事務センター建替)

05「マルイトOBPビル」

  (ホテルモントレラスール大阪)

06MBS大阪劇場がイオン化粧品 

  シアターBRAVAに

00「大阪国際会議場」

01「ヨドバシ梅田店」

03「なんばパークスT期」

04「ハービスエント」

  「ヒルトンプラザウェスト」

01「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」

02「FIFAワールドカップ」

図ー2 大阪市内 街イメージ(2004)



 ■本当に都心の商業は飽和状態なのか?
 巨大な梅田には何もかもが揃っているのか?

 現在3つの百貨店がしのぎを削っており、さらにもう一つ増える大阪梅田地区は日本でも有数の激戦区と言われています。確かに店の数は多いのですが、ここで用が足りるかといわれれば案外そうでもありません。
 昨年、梅田地区のレストランについて調べたことがあります。飲食店という切り口に限っても、まず、専門的でかつ手頃なレストランがありません。「フードビジネス」にカテゴライズされるチェーン店が圧倒的に多い。それでいながら、小さい子供をつれてゆっくり食事ができるお店が皆無です。
 
梅田は効率を求めるあまり、なんだか巨大なコンビニエンスストアになったような印象があります。

 百貨店からいわゆる「大食堂」が消えたのが家族の食事の場が失われた一因かも知れません。

 都心での「家電の店」のニーズにフィットしたヨドバシカメラ

 かつて、梅田地区の商業施設へのニーズを調査したことがあります。必ず、上位に「家電量販店」があげられていた事を覚えています。既存の小売業者では梅田地区で家電を売るにも販売力の限界があり、一部の売場では取り入れても全面的に展開する事は出来ませんでした。
 その梅田地区に進出したヨドバシ梅田は1200億円の売上をあげていると言われています。
 
 梅田地区の飲食店で家族連れの利用が最も多いのも「ヨドバシ梅田」です。

 変わる都心の商業〜ファミリー対応の施設も必要

 都心居住が進んできたこともあり、都心の百貨店の食料品売場の活性化や、都心での食品スーパーの出店が話題になっています。都心に住み始めた人々は今はまだ子供のいない人も多く、ペット連れでの散歩が多いように思います。今後、子供が生まれて大きくなるにつれ、ファミリーで利用する店舗が物販でも飲食でも必要になってきます。

 確かに売上規模、利益率から考えると「F1層」か「シニア」が中心的なターゲットになるかも知れませんが、みんなが同じ獲物を追いかけていてかえって、腹を空かせているように見えます。最近の若者の中に都心に出なくて地元で1日を過ごす層が増えていて、その層独自のファッションがあると言われています。

 将来の利用者を開拓するためにも、小さな頃から都心の商業、百貨店に親しんでもらう必要があると思います。

  都心の店舗で切り捨ててきた商品やサービスをもう一度再構築する時期に来ています。

                                                                                    (2009年3月16日)
 ■阪神間3線比較〜東京からは見えない落とし穴
 
阪神間を結ぶ3つの鉄道とそのヒエラルキー

 大阪と神戸を結ぶ鉄道は阪急神戸線、JR神戸線、阪神と3つの鉄道が並行して走っています。最も山の手側を阪急走り。最も海の手側を阪神が走り、JRはその中間を走っています。大ざっぱな言い方になりますが、一般的に山の手側は高級住宅地で、海に近づくほど庶民的な住宅地というイメージが強く、図ー1の鉄道沿線イメージにもそれがあらわれています。(実際には海沿いにも高級住宅地は開発されているのですが、工場の立地が臨海部に集中するのでより庶民的なイメージが強いのです)

歴史的な背景を持つ阪急阪神とエリアでの存在感が希薄なJR

 関西の私鉄はそれぞれ初期から郊外住宅地の開発を行っていますし、沿線のレジャー開発にも積極的です。一方JRは国鉄時代から広域の交通をベースにしていましたので、どうしても沿線とのつながりも希薄で、ターミナルでも沿線通勤者と言うより広域の旅行者を対象にした施設、サービスが目立ちます。図ー2にあるように「無難」という沿線イメージがトップになります。

東京の感覚でJRの駅立地を判断すると大きく間違える

 東京では都心の交通機関で山手線を初めとするJRの役割が大きいです。また東京駅を始め、上野、新宿なども「始発駅」としての存在感があります。関西のJRの駅は「単なる通過点」です。
 かつて関西に進出した東京の企業は環状線の駅立地が山手線の駅と同じだという感覚で判断し大きく間違えたといわれています。(弁天町や桜宮の都市ホテルの関係者から直接その感想を伺いました)

  新宿ルミネや天王寺MIOのように流動性の高いヤングが中心の商業施設であればJR大阪駅で成功するでしょうが、東京の感覚で百貨店を持ってくるとかなり危険です。JRが今後駅を活用した事業を展開するのであれば、「沿線のおばちゃん」を捕まえる仕掛けが必要です。                  (2009年3月13日)
図ー1 大阪市内通勤者の鉄道沿線イメージ(阪神、阪急、JR神戸線)
民間調査機関調べ

図ー2各鉄道沿線居住者の沿線イメージ

「住宅不動産情報ポータルサイトHOMEs調査」
 ■沿線顧客の地盤を持たない百貨店は脆い〜大阪駅の沿線開拓の必要性
  ターミナル立地の百貨店は沿線顧客が地盤

 ターミナル立地の百貨店は鉄道沿線の住民、乗降客が大事な顧客となります。梅田地区で圧倒的な存在感がある阪急でも阪神沿線の居住者の利用では阪神百貨店にトップをゆずります。図ー1は三菱総合研究所が実施した大阪圏における鉄道沿線住民の外出行動調査(2008年)から月1回以上利用する百貨店ベスト3を抜き出したものです。

 この図を見て気づくことが2点あります。ひとつは阪神沿線で「阪神にしのみや」の利用が梅田大丸をおさえて3位にランキングされていることです。この時点では調査対象になっていなかった「阪急西宮ガーデンズ」は今後かなりのシェアを占め、3番手の梅田大丸を苦しめると予想されます。
 もうひとつはJR沿線で梅田大丸のシェアが3位にとどまっていることです。これはターミナル百貨店の地盤である沿線顧客をとらえ切れていないことを示しています。

「いい店」が成功するとは限らない

 開業当時の梅田大丸はとてもいい店でした、隅から隅まで筋が通った品揃えで、変な吹き抜けもなく、神経の行き届いた店だったと思います。私が今まで利用した中でもベストの部類に入る百貨店です。

 それだけいい店でも、このポジションは不本意なものでしょう。その理由はMDの問題だけでなく、「JR」の問題だと思います。「JR」には沿線という概念が希薄です。利用者にも「この沿線の住民」だという意識が希薄です。従ってターミナルの施設に対する愛着も格段に低いモノとなっています。(この検証は明日詳しく行います)
 名古屋の島屋のように一番店であれば全く問題はありませんが、規模的に劣る店は毎日利用してくれる地盤がなければアウトです。

  そこでJR大阪駅の「三越伊勢丹」です。彼らは必ず「いい店」をつくろうとしてきます。これは業とか本能としかいいようのないものです。その結果がどのような悲劇を呼ぶかは私が論じるまでもないでしょう。
今ならまだ間に合います・・・・。
                                                                             (2009年3月12日)

 
結論は早く出てしまいました。あれほど言ったのに・・・・・・・。関係者のWEB閲覧記録を確認したので届いたかとも思っていたのですが・・・・・・。
 
残念ですね本当に。

図ー1 沿線居住者の百貨店利用(月1) 三菱総研      図ー2 各百貨店の年間売上げ(07)   億円
 ■「届く言葉」をどう語るか〜小売店のコミュニケーション戦略のこれから
 
 新聞広告は力を失ったのか?

 以前、阪神百貨店の社長をされていた三枝氏にこんなお話を伺ったことがあります。「うち(阪神)は、ある時期から中元歳暮の新聞広告を止めた。それでも売上は全く変わらない。お客さんはだいたい習慣で決めているので、広告を見て店を変えることは少ない」・・・・阪神百貨店では他社が取り入れていたポイントカードの割引も、値引きはしないという意図を持って取り入れていませんでした。バブル崩壊以降、他社が売上を落としている中でコンスタントに売上を維持していたのは、このユニークな経営方針と単店経営であったことの身軽さによるものでしょう。一方で不動産事業としては一等地でありながら地価に対して収益率が低いという厳しい見方もできるのですが・・・・。(阪急、阪神の百貨店の企業文化の考察は時間をかけてまとめて、稿をあらためます)

 関西ではまだそれほどではありませんが、東京では夕刊での百貨店の新聞広告が激減していたといいます。
 新聞購読者は減少しているとはいえ、シニア層ではまだまだ新聞への信頼性が高いので、商圏の拡がりが違う関西ではまだ新聞広告に効果があるのだろうと思います。ただし、冒頭の阪神の事例にあるようになんとなく惰性で続けるのではなく、効果をねらい絞っていく必要があります。昨今の事情で、コスト削減に関する圧力も強くなっており、今後かなり削減が進んでいく事でしょう。

 インターネットは強力だが万能ではない〜ネットスキルは江戸時代と明治、昭和、平成が混在している?

 飲食店のオーナーさんに話を聞くと、広告媒体として「ホットペッパー」は有力なのですが、今は「ぐるなび」等に勢いがあるようです。自店のHPを作成する暇がないオーナーにとって、メニューや価格帯をカラー写真と一緒に表示できるインターネットサイト(ぐるなび、yahooグルメやサントリーグルメサイト)はコストパフォマンスのいい媒体であるようです。
 ホットペッパーはターミナル立地では有効なのですが商圏が限定された地域の飲食店では使い勝手が悪いようです。
 
 ブロガーの影響力に注目し、ブロガーを通じた口コミ情報発信を始めている企業もありますが、「仕掛け」の「からくりが見えてくると逆効果にもなります。

 送り手側の企業(百貨店に限りませんが)のインターネット活用の戦略的な位置づけや対応は進んでいるところと、遅れているところで、10〜20年の差があり、それが普通に混在しています。受け手の方もまた10〜20年位の対応力の格差がありそれが混在しています。通信回線、ハードが普及してもコンテンツがついてきていません。
 この中で最先端の手法を駆使ししても十分に効果を発揮しません。(システム屋さんにだまされちゃいけませんよ。昔の空間プロデューサーやアーキテクトのようなもんですから)まだ衰退傾向にあるマスメディアにとって変わるほどのパワーはありません。

 小売業は何らかの情報発信を続ける必要があります。ある人が猫に対して猫じゃらしを振り続けると表現しましたが、商品やイベントでの変化を演出しそれを伝える必要があります。中高生ならケータイサイトを使えますが、中高年ミセスにはネットだけでは届きません。

 (余談ですが)
 それにしても、各百貨店のWEBサイトのショップが、折角のツールなのに、リアルな売場の縦割りの縄張りを忠実に守っている事には苦笑を禁じえません。安いコストでもっと面白い冒険が出来るはずですよ。

 当面は中規模のメディアと顧客への個別のコミュニケーションが有効

 百貨店のコミュニケーション戦略としては、顧客に近いところ(エリア、メディア)にしぼった中規模のメディアと顧客にしぼり込んだコミュニケーションツールに資源を絞り込むことが必要でしょう。
・・・回答編は有料です。   (2009年3月11日)
 ■使う人がセレクトした商品を流通させる仕組みが求められる
 食品だけでない既存流通の商品への不安 

 食品に顕著に表れている消費者の「安心・安全」へのニーズは今後強まりこそすれ、薄まっていくことはありません。建材や家具などのホルムアルデヒドによる健康被害など、どこでどんな風につくられた商品なのかが見えなくなってる為、小売業の店頭で生産者の顔やバイヤーの顔を掲示することで少しでも安心感を与えようとする動きが強まっています。

「安心安全」だけでない「良いモノ」を選ぶ指標が必要

 数値でコントロールできる安心安全を最低基準としてさらに「良いモノ」つまり「美味しいモノ」「センス良く室内を演出できるモノ」「若々しくおしゃれな装いのコーディネート」を実現するための情報源が変化してきています。かつては新聞、雑誌、テレビなどのマスコミがその役割を果たしていましたが、最近はその裏側の仕組み、つまりスポンサーがお金を出している関係で「送り手側」「供給者側」の都合で情報提供されているこが見透かされてきています。(無料情報紙誌と情報の質が変わらないと判断されているのです。ホットペッパー等の方が逆に情報が一覧できるよう整理されていて使い勝手が良いということなのでしょう)

 ブロガーによる口コミ情報が注目されているのは、基本的には自分のお金で消費した商品を、制約のない中で評価しているという信頼性があるためです。(ただし、プロモーション手法として注目され供給者がわに操作されているという疑念をもたれた瞬間に逆効果になってしまいますが)

レストランの「賄いの食事」的な、農家の自宅で消費する「無農薬野菜伝説」的な・・・・

 例えばレストランの「賄いの食事」、スタッフ用の日常食に高い関心が集まったり、農家は出荷する野菜には農薬を沢山使っているが、自家用には農薬を使わない野菜を食べている・・・という伝説や、その道のプロが自分で消費するために選んだものなら「質」の面で間違いないという「イメージ」が拡がって、その希少性に人気が集まっています。

 プロが自分が使うために選んだ商品というのには安全・安心だけでなく、セレクトされた「良いモノ」であるというイメージがあります。
「一流ソムリエが日常愛飲するために選んだワイン」とか・・・・。

スタイリストが撮影用に選んだ商品を販売する「レスカショップ」

 大阪吹田市に「レスカショップ」という中古インテリア雑貨の店があります。骨董屋ではなく、系列の「サンガレン」という撮影用の家具インテリアのレンタル会社が使用したユーズド商品を専門に扱っている小売店です。倉庫の一角のそれほど広いスペースではありませんが、スタイリストが撮影用にチョイスした商品が並べられており粒ぞろいのグッズが揃っています。北摂の富裕層や、個人オーナーの飲食店の内装用によく利用されています。
※その後、リース業界大手に売却され,お店もほとんど開店していません
http://reskashop.com/index.php

個人ユーザーが自分のお薦めの商品を買い付けて販売する「バイマ」

 プロではなくても一般のユーザーが自分のお気に入りの商品をおすすめするだけでなく商品を買いつけて販売する仕組みがあります。海外の未輸入ブランド品などの新品を店頭で購入してマージンを乗せて販売しています。

 http://www.buyma.com/ へのリンク

新しい流通のしくみ「ユーザーセレクト市場」構想

 特に料理のプロに限定しなくても、多くの人々は「食べること」「家族の毎日の食事を調理する」事に関してはプロです。
消費者と生産者、流通事業者の間に一方通行の流れしかない現在の流通の仕組みに、情報提供の仕組みに違ったルートが生まれてくる可能性を感じています。

 ネットの情報には信頼感がありません。マスメディアが信頼できない以上にチェック機能が無いからです。流通事業者の役割はそこにあります。単に「売れ筋」という指標ではなく、目利きのユーザが選んで愛用しているという点がポイントです。

 ユーザーが使っていて選んだ商品、食品、インテリア、雑貨、ファッション等、特に大量生産、マス流通からはこぼれ落ちてしまう「生産ロット」の小さなモノをどのように流通させるか・・・・ネットだけでない顔の見える売り方を考えていきたいと思っています。
                                         (2009年3月10日)
 ■団塊世代リタイア後に生まれる「お試し人生サポート」マーケット〜賃貸住宅編
  団塊世代680万人(1947年〜1949年生まれ)のリタイアにともなって生まれる市場については、私たちも色々研究してきました。実際のところはどうなのでしょう。検索サイトで「団塊世代」「リタイア」で探してみると「自殺の増加」という項目が上位を占め、なかなかこの市場が爆発したという話はでてきていません。
 確かに、街の中ではシニアのご夫婦づれの姿を多く見かけますが、これはこう少し上の年代のアクティブシニアです。全共闘世代とも呼ばれた「社会意識の高い」世代なので、ボランティアのNPOへの参加も増えるかと思われましたが、アクティブシニアの全国的な活動を行っているNPO、ニッポン・アクティブライフ・クラブ「NALC」へも団塊世代の参加は思ったより少ないそうです。
 百貨店、不動産関係の業界の関係者の話でも期待された動きは見られないということです。

 身の回りの諸先輩のお話を伺っていると、定年後も60代前半はまだ働いている人も多く、今は、この後の人生を考えるモラトリアムの時期にあるようです。海外で試しに暮らしてみるとか、田舎暮らしを始める準備の為に都会と地方を行き来して暮らし始めているとか、小さな仕事を始める準備をしているとか・・・・いきなり生活を変える前のお試し期間であるようです。

 本格的な次の人生の設計を考えるために、実際に違った暮らしをお試しで2〜3年体験できるサービスがあれば、市場は活性化するでしょう。若いときと違ってやり直しがききにくい中で、いきなり「田舎暮らし」とか、いきなり「都心住まい」とかにはなじめるかどうかはわかりません

 賃貸住宅で、家具や家電製品など生活用品をセットで提供している物件があります。
 学生や派遣社員、単身赴任者などテンポラリーな居住が前提となっている居住者対象の比較的安い物件だけでなく、外国人ビジネスマン向けの高級タイプなどは家具のデザインもとても洗練されています。デザイナーズマンションなど長期定住は無理かも知れないけれど2〜3年ぐらいだったら住んでみたいなという気持ちは私にも理解できます。今のデザイナーズマンションは子供のいない夫婦や単身者しか対象にしていませんが、好奇心が強く気持ちの若い団塊世代にそのような住宅、インテリアを体験してもらうと、意外に購買に結びつくだろうと考えています。

 とはいえ最近大阪で話題の「テーマパーク マンション」は過激すぎてで・・・・・シニア層には無理かも知れませんが。
 
http://www.aki-club.co.jp/designers_apartments/index.html へのリンク
                      (2009年3月9日)
 ■「美味しいもの」はつまみ食いでは食べられません
 全国各地の隠れた美味しい物を「新しい流通」の形で消費者に届けたい・・・という趣旨の企画を長い間試行錯誤しています。
 その中であらためて「美味しさ」の尺度について考えることがあります。

 何故、そこそこ美味しいけれど際だって美味しいわけではない某Dロール(生クリームたっぷりのロールケーキ)に毎日人が行列するのか?
 何故、「本当は美味しくできるけれど、まずいぐらいの方がお客さんが沢山来てくれてもうかるんだよ」とうそぶく飲食店オーナーの言葉をしたり顔で受け売りする自称コンサルタントがいたのか?
 「人間の味覚というものはあてにならないものだなあと」決して美食家ではない身で隠れた美味を探すのは無理かもと自信を失いかけていました。

 地方の特産品を使った創作料理や地方の料理が必ずしも美味しい物ばかりではない・・・料理のうまい人ばかりではないということを教えてもらいました。確かに当たり前の話ですが、鮮度の高い素材自体は美味しくても加工度が高くなるほど、不味くなるリスクも高くなるのかもしれません。
 そういえば、先日生産者がこだわったという2kgで3,150円のお米を食べました。これは本当においしかった。予備知識の無い子供に食べさせてもはっきり「美味しい」と違いがわかったようです。(私自身は値段を知っていたので多少バイアスがかかっていましたが)

 味覚を科学的に分析して極められるものなら「味の素」をなめてればいいので、「美味しさ」は化学物質だけで説明できるものではなく、育った環境でのなじみや、楽しかった思い出と一体となったものです。日本国内で、パンやワイン、チーズなどといった食品が、まがいものから始めて、ようやくこまともに食されるようになったのには長い時間がかかっています。
 一部の例外を除いてご当地ラーメンなどのフードコンプレックスは決して美味しい物を提供しているわけではありません。時間をかけないで物珍しさだけがを先行させたローカルフードの紹介は、情報として消費されて、あきられお終いとなることは目に見えています。

 物珍しい地方の食品をつまみ食いするだけでない売り方の構築が必要です。配送ネットワークがあるから優位という事業計画だけでは解決できない課題があります。

 例えば、美味しいお米を作るためには里山の木を手入れしなければいけない(野生動物の問題、治水の問題等)。その為に間引いた木を使って炭を焼いている農家がいます〜炭を焼くのが目的ではなく、美味しいお米を作るためです。
 都会に住む我々はおしいお米を食べるために、その炭を購入する、または里山の手入れを手伝いに行く・・・・そういった商品の周辺へのコミットメントが必要だと思います。そのことを含めた流通のあり方というのは単にインターネットでの販売強化では無理なのだろうと思います。・・・・・さて、どのような構想を組み立てたものか・・・・・。(2009年3月6日)
 ■「顧客囲い込み」の幻想〜ネット宅配スーパーが成功するために
 「顧客囲い込み戦略」という言葉がよく使われます。(私も使ったことがあります)

 私は企業はいつも新しい市場を創造するチャレンジを続けるべきだと考えています。狩猟型のマーケティングとして次から次へと新しい客を求めていくという戦略には懐疑的です。 ブルーオーシャン(新しい枠組みの市場)はいつも顧客の中にあると考えているからです。にも関わらず「顧客囲い込み」という発想には、企業側の一方的な思いこみ、「幻想」があるように思います。

 マンション販売時に様々な住民向けのサービスを付帯することが流行しました。フィットネスクラブの併設宅配便の受付に始まり、チケットの手配、ポータルサイトでの地域情報の提供などコンシェルジュサービスの充実で継続的に利益を上げようという考えです。
 その多くは手数料稼ぎの取次だけで価格的にも、サービス内容でも競争力がなく、敬遠され廃止となっています。
 お客様に一番近い場所でのサービスの提供・・・・机の上の計算ではうまくいくはずだったのですが、物理的な距離ではお客様を「囲い込む」ことができなかたようです。

 鉄道企業で「駅」を活用しようというアイデアがありました。毎日定期的に通勤通学で利用する人の需要を取り込むことで大きなビジネスチャンスが生まれるというものです。物販だけでなく託児所やサービス機能なども沿線住民の需要を取り込もうというものです。
 確かに物販や一部のサービスについては成功していますが、生活に関わるサービスをカバーしきれているかというと疑問です。

 かつて「生活総合産業」を標榜した百貨店がありました。物を売らないサービスを売るフロアが何フロアかある実験的な店舗もありましたが、今は影もありません。本業でないサービスでは採算がとれなかったのです。

  お客様の立場では「囲い込まれる」というコンセプトには強い違和感があります。 その企業への信頼性と「めんどくささの解消」(利便性)と価格の兼ね合いの中で自由意思で選びたいのです。

 今流行のネット宅配スーパーですが、採算を取るためには顧客の消費のかなりのシェアを獲得する(=利用金額を上げる)必要があります。その為には高度にシステム化された受発注管理、効率的な物流システム、スケールメリットによる低価格など精緻で大規模な仕掛けがされるでしょうが、それだけではコスト倒れになります。おそらくトラブルがいっぱいおこります。

 高度なシステム、抽象的な企業ブランド力では顧客の消費の中でのシェアはあがりません。人の顔をしたインターフェイスが必要です。いわば「生協の配達のおにいちゃん」のようなものです。食品だけでなく、保険の相談や、布団の購入をしているではないですか。高度なシステムはその「生協のおにいちゃん」を助けるためにあるべきで、パソコンやケータイだけの接点ではいくらきめ細かく分析しても、お客様の信頼を獲得するサービスは提供できません

 これからはそのインターフェイスはコンビニの店主が担うのだろうと考えています。今ほど本部の規則に縛られず、時間の使い方が自由になれば宅配機能を持つコンビニは街のコンシェルジュになれるはずです。
 店頭でも受け取れるし、宅配もする。システムの不具合も現場でなんとかする。生活に近い場所でのコンビニを窓口にすれば顧客に当てにされ、囲い込まれる存在となれるはずなのですが・・・・・。(2009年3月5日)
 ■「心斎橋」の今後を左右する東心斎橋1丁目
 大型専門店の集積が強いターミナルと路面店の拡がりがある心斎橋界隈

 百貨店退潮と対照的に駅ビルの売上げが伸びていると言われています。価格帯が低いことと、百貨店がしっか相手をしてこなかった若い層への対応がしっかりしていることがひとつの原因です。
 図ー1に見られるように梅田地区は百貨店の集積だけでなく、阪急三番街、HEPといった大きな集積があり、かつディアモール、イーマ、NU茶屋町、エストといった多彩なSCがそれぞれの顧客を相手に売上を上げています。
 なんばでは「なんばシティ」のウェートが高いのですが、残念ながら周辺部への拡がりにかけます。なんばパークス、丸井の開業で大型店の選択肢は増えたとはいえ、路面の魅力が無くなってきています。後述する「歓楽街の荒廃」がネックになっています。

 心斎橋ではOPAが気を吐いています。アメリカ村、ビッグステップは売上が低迷しています。事業形態が変則的で商業施設としての継続的な投資がなされてこなかったつけが回ってきたのでしょう。東急ハンズやZARA、ユニクロの大型店、御堂筋沿いのブランドの直営店など専門店集積ではない大型店、そして南船場〜堀江の路面店の拡がりがあるので街としての高い好感度が維持されているのでしょう。ただし、その好感度は御堂筋を渡った西側のエリアで支えられています。

東心斎橋(ヨーロッパ通り)の再生が心斎橋筋商店街浮上の鍵となる

 心斎橋周辺は夜間人口(居住者)が少なく、通勤者も長堀通りの北(南船場)は多いのですが、長堀通りの南側では極端に少なくなります。
 (図ー2)
 周辺部では一般事務職より、小売業、飲食業の従事者が多くなります。(図ー3)
 特に東心斎橋2丁目からその南の宗右衛門町は市内でも有数の歓楽街で働く人はほとんどが飲食店従業者です。もちろん、それらの職業の従業者は百貨店にとっても良いお客様なのですが(最近北新地のホステスさんがひったくりにあった給料の額にはびっくりしました)、最近は街の荒廃が進み、老舗が廃業したり移転し、その後に無料の風俗案内所が立ち並ぶなど、千日前〜道頓堀から北上してきた街の「賑わいの中での衰退現象」が進んでいます。

 心斎橋の今後を左右するのがかつてヨーロッパ通りとよばれ、ミナミの中でも大人の街としておしゃれであった「東心斎橋1丁目」の今後です。奇抜なデザインの「チルドレンミュージアム」はとっくに廃業し、ワールドのセレクトショップ「ジエンポリアム」も、もうありませんが、飲食店でも物販店でも大阪の先端であった地域が見る影もありません。

 ただ、工事中の建物が多く、これからまた変わっていく要素もあります。住宅建設が進み夜間人口も増えてきています。オフィスゾーンと歓楽街の境界にあるだけにこれからどちらの色を強めていくがポイントです。このエリアも安っぽい歓楽街になってしまうと、心斎橋の重心は一気に西にシフトすることでしょう。心斎橋筋商店街、大丸にとってこのエリアのステータスを保てるかどうかが大きな分かれ目になると考えます。

 シリーズとなってしまった、心斎橋に関する勝手な提案はこれで終わります。(3月4日)
図ー1 梅田、心斎橋、なんばの専門店の売上げ推移  (単位:百万円)

繊研新聞 専門店集合商施設調査 特集から (株)ANALOGが作成


図ー2 心斎橋周辺の従業数と夜間人口〜足元商圏のボリュームは?

図ー3 心斎橋筋周辺の従業者における卸小売業、飲食業従事者の比率〜何をして働いているのか


(国勢調査、事業所統計から(株)ANALOGが作成)
 ■ミナミは西へ〜心斎橋再生に求められる商店街の奮起
 神戸、京都から人を集める「堀江」が今後の変化の起点となる

 阪神なんば線が開通すると近鉄なんば駅に隣接した湊町リバープレース、キャナルテラス堀江のポジションが面白い位置になります。休日の来街者を見ると、堀江地区は大阪北部、兵庫県、京都など広域のエリアから人を集めています。三宮=阪神間からの直接のアクセスの入り口として堀江から南船場などで面白い仕掛けが出来そうです。
 ミナミの繁華街の重心は御堂筋から西へ移動していきます。エリアのイメージとして「かっこよく」「おしゃれ」なのは心斎橋より堀江の方が高く評価されています。

過去の遺産を基盤に新しい顧客開発が求められる心斎橋

 エリアのイメージを比較しても、心斎橋筋は「街になじんでいる」といった過去の遺産で持っているところがあります。確かにその街に楽しい記憶を持っている顧客がいることは高いアドバンテージであるのですが、それを活かすには課題が多くあります。街のパトロールなど努力はされていますが、大人が楽しめる街ではなくなっているようです。
 天神橋筋商店街が天満繁昌亭(落語の定席)であれほどまとまっているのと比較して、せっかくの「そごう劇場」を街の資産として活かせなかったのは「そごう」だけの問題ではないと思います。

 大丸がどれほど投資したとしても商店街の荒廃を食い止めるのは一つの企業では難しいでしょう。昔のように百貨店業態がオールマイティーである時代ではありませんからなおさら厳しい。
 関西の中での心斎橋、日本の中での心斎橋、アジアの中での心斎橋がどうありたいか、もう一度どん底から立て直す気持ちが必要でしょう。

 この調査の時点(2001年)では最低の評価であっったあった難波がその後の「なんばパークス」の開業や現在増築中の島屋新館などにより力を蓄えつつあります。梅田の集積との競合、あべの、上本町の充実などかの競合状況から考えると、心斎橋周辺は堀江〜南船場を中心とした西のエリアへのシフトが自然に進んでいくでしょう。
 大丸としては御堂筋とその西の開発との連携が得策なのですが・・・・・。
                                                (2009年3月3日)
 図ー1 来街者の居住地(2001年調査)  %

図ー2 よく行くようになったエリアのイメージ(2001年調査)  %
 
サントリー不易流行研究所「大阪ミナミに見る盛り場のダイナミズム」2003年刊行よりデータを加工
(活動を終えられた同研究所の大阪の街研究に深い敬意と感謝を持ってデータを活用させていただきます)
 ■心斎橋再生には百貨店業態の進化が必要
 心斎橋筋通り商店街の通行量は1日5〜6万人といわれています。外国人観光客の姿が目立つなどら街の雰囲気はずいぶん変わってきています。かつての大人の街のイメージがやや薄れてきており、ミナミから浸食してきている街の荒廃(風俗やディスカウントストア、アミューズメント等)に対して、かろうじて持ちこたえている感があります。

 心斎橋のイメージでのポテンシャルはまだまだ高く、大阪市内の通勤者を対象にしたアンケート調査では梅田に次ぐ、利用率、好意率を獲得しています。なんばについてはどうしても利用者の居住エリアに偏りが生じポイントが低くなります。

 今回のそごう心斎橋店の大丸への売却は心斎橋が上質の繁華街としての地位を維持する最後のチャンスだとみています。99年には心斎橋の好意率は梅田を逆転しています。
 心斎橋OPAの開業が94年、御堂筋にシャネルの路面店が開業したのが96年、クリスタ長堀の開業が97年、東急ハンズ心斎橋店の開業が99年。そしてそごうの破綻により2000年には心斎橋そごうが閉店しています。
 その間に心斎橋大丸の売上げも大きく低下しています。心斎橋への好感度及び街の利用率アップは「百貨店」によるものではなかったのです。

 心斎橋そごうは末期でも500億円の売上がありました。200億を投資して改築した新店はついに、その水準に達しないまま閉店となります。

 心斎橋周辺はこのままではますます荒廃していきます。このデータでもあきらかなように、大丸の営業力がいかに素晴らしいとはいえ、「百貨店業態」だけではこの立地を再生することはできないと思います。

 賃料がとれなくても「街」を活性化させる業態はいくつかあります。その機能を導入するためにも、もっと安く購入しておく必要がありました。
                                                      (2009年3月2日)
 
図ー1年間の利用率(大阪市内通勤者対象の調査)  民間調査機関調べ  (%)

図ー2 好きな街(大阪市内通勤者対象の調査)  民間調査機関調べ  (%)

図ー3 地下鉄御堂筋線乗降客数  (大阪市交通局)    (人/日)

図ー4 百貨店売上高 (百貨店調査年鑑)   (億円)
 2月
■マーケットインでもプロダクトアウトでもなく〜ファッション売場の再生にむけて
 ファッションビジネスはユニクロの一人勝ちのように見えます。百貨店の売上げも落ち込んでいますし、量販店の売上げも落ち込んでいます。駅ビルの専門店売上げは好調なので,こなれた価格帯の品揃への取り組みが、とそれぞれの業態で進んでいます。

 百貨店は今まで利益率の高い「富裕層」や「20代女性」向けの品揃えにシフトしすぎており、そのターゲットから離れたお客様への取材では「娘と一緒に駅ビルの店」を見ることも多い。という声が良く聞かれます。

 売れ筋商品を素早く安く提供する。クイックレスポンス(QR)とローコストという市場対応のやり方がチェーン店の基本戦略となっています。
 一方でその対極にある線略が、デザイナーや店のポリシーに共感してくれるお客さんだけを相手にしていますよという供給者側だけの論理で展開される高ビーな店のやり方です。今のファッションの店舗はその2つの方向性に極端に分化しているように思います。
 「お客様」の欲しいといったモノを、欲しいと言った形で提供することに資源を注ぎ込むやり方か、自分たちのクリエィティブな価値観を信奉する信者だけを相手にするやり方か?どちらにも共通するのはお客様との「対話」の中で新しい価値をつくろうという努力の放棄です。

 休日の朝のテレビ番組で、30〜40歳代のファミリーがダサイワードローブで出演し、スタイリストが華麗に変身させるというコーナーがあります。登場者は世代として若い頃はお洒落に無縁であったわけではないのですが子育てでお金と時間を搾り取られ、「現役感」がなくなっています。
注目したいのは変身した後の「家族」のうれしそうな笑顔です。(スタイリストのセンスが悪くて失敗の時も少なくないのですが) つくづくファッションは人を幸せにする商売なんだなと思います。

 基本的にお客様は自分の欲しいものを言葉に出来ないことが多いのです。
 お客さんが自分の知らなかった自分の欲望に気づく場所、気づく接客ができている店舗がどれだけあるのでしょう?ファッション感度が高く、可処分所得の高い富裕層や若い人を対象にした店ではそれが出来ているでしょうが、それを一番必要としている30代から50代前半のお金に余裕がないけれど、お洒落を楽しみたい人への対応ができる店舗がひとつもありません。

 ユニクロやGMSの販売員にはその接客は期待できません。

 百貨店のお客さんは店員さんが歌ったり、踊ったりすることを望んでいるのではなく、お買い物をする中で新しい自分を発見させてくれる接客を楽しみたいのです。

 GMSや地方の百貨店のファッション売場でそれができれば、新しい市場が開けます。
(2009年2月27日)
 
 ■「心斎橋そごう」は安い買い物なのか?
 新聞報道によると、「心斎橋そごう」の店舗は大丸に379億円で売却されるようです。1999年には旧店舗を350億円で売却したい意向が報道されていました。また、2000年には三越が300億円で購入するという記事も掲載されています。
 
 旧店舗を取り壊して新築する際に200億円投資しているとはいえ、年間440億円しか売れていない店舗への値付けとしてはやや高く感じられます。(かんぽの宿はバルクセールで109億円でたたき売られています)
 
 そごう心斎橋店はサックスフィスアベニューやバーグドルフグッドマンといったアメリカの高級百貨店の出身者をアドバイザーとして雇っていたのですが、日本の百貨店としてはできが良くない店で、建築構造的にも1階の高級ブランド店のフロアはすばらしいものの、吹き抜けが店舗の中心になり商品が目立たない、商業施設として使いにくい構造です。商業計画をきちんと行っていればもう少し頑張れたと思います。

 売場面積として大丸心斎橋店とあわせて78,000平米となりますが、百貨店の別館というのは扱いが難しいモノです。大丸南館も子供などの試行錯誤を繰り返して今の形になっています。

 370億円で購入した場合、取りつぶして新築するわけにもいきません。想定される使い道としては専門店ビル(名古屋三越の隣のラシックのようなもの)、メンズ館、あるいは一部フロアを家電量販店やABCクッキングスタジオなどにサブリースするなど考えられますが。どれも大丸心斎橋店のような坪効率は見込めません。

  大丸としても、心斎橋の地盤沈下を食い止める意味でも、例えばパチンコ屋さんなどに買われてしまうよりもベターな選択だったと思いますが、この購入金額は少し高すぎます。もう少し安く買っておけば、使い方の選択肢が拡がったのにと思います。   (2009年2月26日)

(追記)
 ローソンがAMPMを買収した金額が145億円。もし私が大丸のトップであれば、そごうは200億円以下に値切って、そのお金でAMPMを買います。今現在各社が参入しているネットスーパーは今後、配送コストの負担に耐えきれず撤退が増えるはずです。その時、消費者へのラストワンマイルとしてコンビニの役割が相対的に高まりビジネスチャンスが増えます。(現在AMPMも宅配サービスを行っています)。

 心斎橋そごうの購入は防衛でしかないですが、先に つながるのはAMPMのネットワークです。今は、パチンコ屋さんも投資ファンドも、あのオリックスさんさえも、資金に余裕が無い時期ですから競合もなく十分買いたたけたはずです。いずれにせよ心斎橋の再生がかかったプロジェクトなので大丸さんの健闘を祈ります。
                                       (2009年2月27日)
 ■潮が引いた後に残るモノが大事〜低価格PB商品の手仕舞いの時
 「不況で消費が冷え込む」と言われている中で、生活必需品の低価格PB商品の拡充の動きが活発になっています。特に、今は価格に対して厳しい目が向けられていますので、「低価格」に対する小売業としての対応は必要でしょう。ただ、中には「価格」にあわせて味や品質を落とした商品も少なくないようです。

 小売業はメーカーではありません。質の低い商品は遠からず多くの在庫になります。今までの事例からすると在庫が膨らみ。PB商品の大幅縮小という時期が必ず来ます。非食品ではメーカーへの返品という事もおこります。過去からのこの繰り返しの中で残っている商品は価値と価格のバランスがとれた商品です。

 もちろん量販店、百貨店の担当者は馬鹿ではないですからこの理屈はわかっているはずです。わかっていても同じ事を繰り返す「組織」に問題があるのだと思います。百貨店業態、量販店業態にかかわらず、その当たり前のことができるように組織を変えたところが生き残ります。

 「百貨店は終わった」とか「量販店に未来はない」とか業態論で語ることは無意味であると考えます。

 今この時期には生活必需品に関しては少しでも安い商品が求められているのかもしれませんが、 「低価格PB商品」は期間限定の緊急対応であることを明示しておかないと、質の悪い商品をつかまされたお客様は必ず覚えていますよ。
                          (2009年2月25日)
 ■今振り返ると見えてくる「時代の節目」とやり残した仕事
 「アラフォー」だとか「婚活」とかが話題になっている現在。想像もつかないことですが、かつて若い女性の結婚時期を「クリスマスケーキ」に例えられた時代がありました。24歳、おそくとも25歳をひとつのリミットとしてそれ以降は「売れ残り」として価値が下がると言った大変失礼な喩えです。やがていつからかその言葉は死語になり、30歳代での初婚どころか、40歳代の初婚だって珍しくありません。
 
 その原因は大学進学率の上昇によって大卒女性の就職時期が22歳頃にまで上昇した為かと思ってしまいそうですが、そうではありません。ターニングポイントは1985年です。

 、1985年に「派遣法」が成立し、翌年「男女雇用機会均等法」が施行されます。
 かつては大企業では男性社員のお嫁さん候補として一般事務職を採用していました。その一般事務職の仕事は「派遣」に置き換えられ、正社員の女性は男性社員と同じように滅私奉公でばりばり働く事が求められるように変化してきたのです。
 雇用機会均等法は能力と意欲がありながら活躍の機会を制限されてきた女性にチャンスを与えるチャンスですし、「派遣法」も企業などのしがらみに縛られないで能力で評価されるという働き方を選ぶ人を守るためのものであるはずでした。

 85年以降、女性の非正規労働者は10ポイント以上増加していますが、男性はそれほどでもありません。2000年に小泉さんが首相になった以降、男女とも非正規社員の比率が大きく高まります。私も派遣事業をやっていましたから、「派遣」という働き方の企業、社員それぞれのメリットはよく理解しています。「フリーター」という言葉にあった「好きな事を第一にしながら」時間単位で能力を買ってもらうことの自由そうな気分も理解できます。

 1985年はバブル経済を前にして世の中が活気のあった時期です。「HANAKO世代」と呼ばれる(1959〜1964年生まれ)の華やかな消費生活を謳歌した最後の層が社会人となった時期です。「分衆」「少衆」の時代が叫ばれ大衆消費が家族単位の消費から個人消費へ大きくシフトした時代でした。家族に売っていた商品を個人に売るわけですから市場が3倍、4倍に膨らむ?わけです。生活者の価値観や生活意識が大きく変わった節目だったのでしょう。(いいことも悪いことも含めて)
 
 開放感と将来への明るい見通しに酔いしれていたこの時代に、ばりばり働く女性も結婚出産ができるワークライフバランスのサポート体制の整備や、派遣でも能力に見合った報酬が得られる同一労働同一賃金などの社会的公正の担保があのタイミングでなされていれば、今起きている深刻な社会問題は幾分緩和されていたかも知れないと考えます景気急降下の後にこれから再建される社会のデザインを考えるときには、過去の歴史をきちんと検証しておきましょう。

 明るく楽観的な雰囲気であれ、暗く、悲観的な雰囲気であれ、世の中の雰囲気に流されず必要なときに必要な手だてを講じる冷静さが必要です。
 逆に言えば、みんなが俯いている今だからこそ、先につながる夢の土台を築く時期なのだと思います。

 時代の節目を考えているうちにずいぶん脱線してしまいましたが、「経験に学ぶより歴史に学べ」という言葉をモットーにこの先に見えない時代を考察していきたいと思います。
(2009年2月23日)
図ー女性初婚率の年次推移(人口千対比)  人口動態統計 厚生労働省


図ー非正規労働者比率  労働力調査


 ■ダウンサイジングの時代を生き抜くたった一つの冴えたやり方
 東京都庁の大規模補修費が建設費の約半分という記事がでていました。ついこの間鳴り物入りで完成した建築物ですが、今後必要な負担は次の世代につけがまわっていくのでしょうね。

 大阪心斎橋にあっったキリンプラザは高名な建築家の設計で「西洋仏壇」と称されたユニークなデザインでランドマークになっていましたが、補修費がかかるために建て変えられたといわれています。

 バブル経済の時に建てられた建築物、商業施設の多くは姿を消しています。

 大和ハウス工業が郊外ショッピングセンターの再生事業を始めたようです。売上が落ちてテナントの抜けたショッピングセンターの規模を縮小させて高齢者賃貸住宅や医療施設を設置し「需要」を創出しようというものです。

 以前に国土交通省とのおつきあいが深い土木専門の大学教授にお話を伺ったことがあります。都市の高速道路はそう遠くない将来に耐用年数が来る。補修費に莫大な費用をかけ続けるか、いっそ自転車道にきりかえるしかないね・・・という冗談が道路関係者の中で話されていると。

 人工減少が進むこれからは新しい開発よりも過去に投資された建築物などのメンテナンスやスクラップに建築の需要はシフトしていきます。環境対策、エコへの対応は経済合理性とは相反すると見られてきましたが、経済合理性を追求するためにサスティナビリティを重視した環境への配慮が必要になります。
 
 高齢者社会が進み、消費の減退が課題になっています。「若者が高齢者を養っている」という通念がいまだに支配的です。実感的にはシニアのストックが若者の消費を支えている・・・・ではないでしょうか。オレオレ詐欺に数百万円支払う?なんてお金を持っているからできることです。
 高齢者がお金を使えないのは将来に対する不安があるからです。もし、将来に対する不安がなければ高齢者の消費を活発化させることは可能です。その為には「社会福祉」を充実させる事が重要です。「福祉にお金をかける」=経済の活力をそぐ・・・という通念を捨てる必要があります。
経済合理性を追求するために社会福祉に資源を配分する。
 
 この不景気の先に景気回復があっても、大量生産される生活必需品の低価格はとまりそうにありません。パソコンは5万円台になっていますし、毎日の食品は安価なPB商品、車は乗らないか小型車へシフト・・・・その人がこだわりを持つ分野にはお金をかけるようになるでしょうが(例えば最近売り出された高級携帯電話とか、お取り寄せ食品とか)マスマーケットを対象にしたコモディティは徹底的に機能を絞り安く提供されるでしょう。
 強く欲望をかき立てるモノ、サービスでないと高付加価値商品は売れないでしょう。
 強く求められる価値とは希少性であったり、美意識であったり、スタイルの独自性であったり、広い意味の「文化」を背景にした商品であることが必要です。
「文化なんか金にならない、クソの役にもたたない」という通念を捨てることが必要です。
これからは「文化」がないと金にならない・・・のです。

 ダウンサイジングの時代を生き抜くたったひとつの冴えたやり方というのは「今までの通念をすてて、新しい時代に適応する」ということです。
                      (2009年2月20日)
 ■「トレンド」なんかよりもあなたのお客様はどうなのかが大事
 農薬が混入していた事件の性で「冷凍食品」の売上が低迷していました。この不景気の中で外食を控えて家庭内で食事をする傾向が強まり、かつ価格に対する要求がシビアになっている事もあり「冷凍食品」の売上が回復しているというお話を某流通企業の現場から伺いました。
 一方で、大手経済新聞の記事では消費者はまだまだ「冷凍食品」の安全性に不安を持っているという報道がされています。今後も利用は回復しないだろうと結論づけられています。〜2月18日の日経新聞

 百貨店などの不調は「富裕層」向けの高額商品が売れなくなったからだと報道されています。一方で2月19日付けの繊研新聞では次のような事例が紹介されています。
●帯広のメンズ専門店が富裕層といえる「業従事者の若手経営者」相手のビジネスに成功し、1人の顧客で数百万円の買い物も珍しくない。
●高額所得者の40代以上のミセスを中心とした全国に展開している縫製教室はこの不況でも生徒数や事業規模は減少していない。
●富裕層向けのチャリティーパーティーの企画会社が今年は不景気なのでカジュアルなパーティに縮小したところ申込者が激減。せっかくドレスを新調したのにとクレームがついた。一方で某大使館主催の参加費5万円のパーティにはウェイティングがでている・・・・とか。


確かに不景気なのは間違いないのですが、小売業界は必要以上に臆病になっている気がします。先が見通せないため、いつもにまして「回りを伺う」ような動きが強まっています。

 大手流通業者がショッピングモール開発を縮小して「食品スーパー」に力をいれるとか、再建途中のGMSも食品スーパーに力をいれていますよね。そんなに食えるか!

 時代を読むことは大事ですが、日経新聞を読んでも時代は見えません。もう少し長いスパンで歴史をみる必要があります。(せめて20〜30年のレンジで)

 他社の動向や一般的な大きな流れで意思決定を行うのではなく、あなたのお客様はどうなのか何に困っていて、何を楽しみにしているのか、徹底的に分析することが必要です。

 マスマーケティングの時代は終わったと言われて久しいのですが、特に今のように経験では対応できない変化の時代には、自分自身のお客様はどうなのかを考え抜くことが必要です。簡単な答えはありません。小売業だけでなく、住宅、建設業、サービス業、行政、メーカーすべて同じです。

                                          (2009年2月19日)
 ■消費が快楽ではなくなった時代の「内需拡大」策
 かつて、お金を使って欲しいものを手に入れることは「生理的な快楽」であった時代があります。物が行きわたり「成熟」したからなのか、現金払いからカード払いが当たり前になり、「消費」の実感が薄れたからなのか、何かのトラウマのようにお金を使うアラフォー世代を最後に、お金を使うこと、物を手に入れることは快楽では無くなっているのです。

 「モノ消費」から「コト消費」という表現をされることがありますが、「コト消費」という言葉はその変化を誤解させる表現です。「消費」は快楽では無くなり動機付けにはならないのです。

 従って、輸出依存型の経済からシフトし内需を拡大しようとする時に「現金」をばらまくのは適当な策ではないのです。支給された現金が必需品の購入に回る要因は先行きへの不安だけではありません。お金を使うこと自体が愉しいとは考えないからなのです。

 例えば、携帯電話は毎回お金を精算するわけはありません。ただ必要と思って使っていて月末に請求書が送られてきます・・・・。お金を使うという実感が薄れてきている一例です

 モノであれ、サービスであれ「やってみたい」「経験してみたい」という気持ちをいかにかき立てるか、心をどうつかむかが内需拡大の鍵なのです。顧客の心の動きをつかむマーケティング、そしてつかんだ心をはなさないでリピーターにしていくマーケティングが今求められているといえます。

 「コト消費」という言葉から脱却する事が生き残りの鍵となります。(2009年2月18日)
 
 ■春を待つ中之島〜次の世代に残す遺産としての景観
 今年の夏に開催される「水都大阪2009」にむけて中之島公園をはじめとする界隈の整備が進んでいます。パリのセーヌ川にも例えられる水の景色は「猥雑なまち」という固定観念を持たれている大阪の街の中でも最も美しい街の一つです。それは大阪を愛する先輩達が残してくれた「遺産」であると思います。
 
 大阪の復権について、大阪市長と大阪府知事がかつてない緊密な連携をとるようになり、工場三法のくびきがとれベイアエリアでの開発の盛り上がりでさあこれから・・・と言う時期に世界経済が失速してしまい、出鼻をくじかれた感はありますが、大阪の中心部である中之島の景観が日本全国、そして世界への顔として整備されてきています。
 
 写真の八軒屋浜港周辺には結構ギャラリーが多く存在します。また、大阪では少ないフランス料理の高級店(路面店)は天満橋から淀屋橋の間の中之島近くに集積しています。OBP内のフランス領事館や天満の日仏会館など意外にヨーロッパの文化の香りも集積しています。
 朝日新聞社の建て替えでも「フェスティバルホール」は民間の力で維持されますしね。
 「文化」が街の「活力」や「競争力」を与えてくれるということは、世界的な不景気の中にある今だからこそ強く実感させられます。
 もちろん、お金は大事です。それでもこつこつ稼いだお金は為替の変動という自己が責任を取りようのない要因で半減したりします。景観とか文化の価値は絶対に目減りしないし、世界が大量生産大量消費から文明が転換する21世紀において最大の競争力の資源となることは間違いありません。
 
先輩からうけついだ遺産を発展させて、次の世代に何を残していくのかが考えると政策の優先順位が見えてくることでしょう。大阪の場合は見た目を綺麗にして街としての身だしなみに気を配ることから始めるのがベストでしょう。(2009年2月18日) 
  
 ■「100年持つ家」から「100年使い続けたい家」へ
  「センチュリーハウジング」が提唱されたときに住まいを100年持たせるための耐久性に関する基準が制定されました。欧米の住宅に比べ日本の住宅は寿命が短いのは、戦後の復興のために質より量を重視して供給されてきたからといわれています。

 高級住宅に建設される豪邸は、注文建築であり、建築主は資金に余裕があるため個人的な嗜好が強く表現される事が多いようです。趣味がいいなあと感心させられるものも多いですが、いくらなんでもこれはないだろうという悪趣味な装飾のものも少なくありません。
 但し、趣味性が強いので、性能的には十分でも、住民が変わるときには立て替えられてしまうことが多いです。いくら性能がよくても、住み次がれることがなく産業廃棄物となってしまうのはもったいないですね。
 
 100年使われる家は数値から得た性能だけでなく持続して愛着を持たれる要素を考えていかなければいけない時期にきています。

 昭和40年代に建てられた公団の団地は、性能的には問題がありますが、住戸の配置、共有部分の環境など今から考えればよく考えられているところが多いように思います。制約された空間の中で工夫して自分らしさを表現する「俳句」表現のようなライフスタイルが日本人にあっているのいかもしrてません・・・・団塊世代とかHANAKO世代など消費を生きがいにしている世代にとっては「欲望」を抑制するのは「苦痛」をともなう行為ですが、今の20代はもともと「欲望」が希薄ですからそのような「エコ」とか「ロハス」とかストイックなライフスタイルとは親和性が高いように思います。

 これからはどんどん「新築」の建築物が建てられる時代ではありません、次世代のライフスタイルを考えると、今あるものの中で「愛着」を持てる物ををうまく使い回すための建築ビジネスを考えていく必要がありそうです。

 今ある建築ストックの中で「愛着のもてるもの」ははたしてどのくらいあるのでしょうね。
                                      (2009年2月16日)
 
 ■現時点の断面しか見えない「プロの目」〜東京からは日本が見えないC
  阪神間の富裕層に圧倒的に支持されていた高級食品スーパーに「いかりスーパー」があります。芦屋の店の駐車場にはベンツがずらりと並んでいるというのが伝説でした。自社製の総菜や当時は珍しかった輸入食品なども揃っていますが、東京青山の紀ノ国屋や最近日本でも店舗展開を行っているディーン&デルーカのように尖った品揃えをしてるわけではありません。普段使いもできる食品スーパーです。

 東京の某社の依頼で「いかりスーパー」について調べたことがあります。(もう20年以上前の話です)地元の生活者にグループインタビューを行いました。当時、元気のよかったダイエーが高級食品スーパー「イタリアーノ」を出店していました。中内さんもかなり力を入れて、店舗にもお金をかけて、海外の食材を揃えていました。それでも地元住民は「ダイエー」は利用しない、コープこうべと「いかりスーパー」を使い分けているという調査結果を報告しました。「いかりスーパー」へのブランドロイヤリティは地元民、とりわけ重要な「富裕層」で高いという結果を伝えたつもりでした。

 某社の調査部門を通じて、そのスーパーのバイヤーにはエリアマーケティングの調査結果は伝えられたのですが、彼らは自分達の目で店舗の商品を自店と比較して下した判断は次のようものでした。

 「いかりの商品と当社の商品を比べて、当社の商品は全く遜色はない。負けてはいない。高質スーパーを掲げる当社の路線で十分対抗できるであろう・・・」

 商品の専門家としては「大きく間違っていなかった」のかもしれません。その時点の断面でひとつ一つの商品の「材料」「評判」「価格」「量」など計数化できるものを比較して「負けていない」と判断したのでしょう。「味だって負けていないぜ・・・・」と思ったのでしょうね。

 生活者の商品の価値判断は、ある時点の断面での経済合理性によってなされるものではありません。その「商品」や「店」、「街」についての過去の思い出、楽しかったことの記憶、体験の蓄積が大きな影響をあたえます。

 特に「美味しい」という感覚は科学的に計量化できる「化学成分」だけで決まるものではありません。専門家は知識と体験が豊富なだけに、そのような非合理的なメンタルな要素を軽視していく傾向にあるようです。特に、当時首都圏から精力的に全国展開していた某社にとって「遅れた地域の住民を時代の先端をいく当社が啓蒙してやろう」というぐらいの「奢り」があったのかもしれません。

 某社は現在経営再建中。他店より安いという「価格訴求」を店舗の価値と定めているようです。再起をお祈りいたします。

 プロの知識、経験は時に本質を見誤らせるものです。その時点での「経済合理性」では動かない生活者に対して、色々な角度から分析し、その結果を謙虚に受け止めることが必要です。
                                                                               (2009年2月9日)
 ■「思い出が残る街」から「いつか思い出になる街」の育成へ〜勝手に改装@−2
 「阪神なんば線」効果で神戸を復活させよう(2)
 神戸をもう一度元気にするためには2つのターゲットが考えられます。ひとつはかつて「アンノン族」として異人館やミナト神戸を楽しんでいたシニア層。神戸に良い思い出を持っている層です。この層へのアプローチは前回も述べました。神戸都心だけでなく、六甲山、有馬温泉と結びつければ神戸への宿泊も期待できます。
 
 神戸の街でもヤング層に支持されているエリアは元気があります。都心でもミント神戸などの大型集積が開業しています。これからもう少し拡がりを持たせると面白くなっていきます。もりろん地元のリピーターがベースではありますが、姫路から京阪神の若い層にとって「憧れになり」「街へ遊びに行くことが思い出になる街」になるためには、もっと「店」や「人」をアピールする必要があります。

 駅ビルやチェーン店の価格とは違った価値として「雰囲気・環境」だけでなく「人」を前面に押し出していく事が有効でしょう。小売業、飲食業のシステム化はかなり進んできていますが、これからの差別化のピントはやはり人でしょう。その場所で働いていることがちょっとした「自慢になる」そんな魔力を持つ地霊が神戸の北野にはかつて残っていたように思います。

 大阪ではかつて東心斎橋「鰻谷・ヨーロッパ通り」にそんなステイタスがありました。今で言うと堀江、新町あたりでしょうか。

 神戸の元町と大阪の堀江界隈がつながることで若商業や飲食、アート関係の若い起業家がつながることで、梅田とは又違った都市の魅力が生まれるはずです。行政はエリア外の連携が難しいのですが、私鉄各社は沿線活性化の為に連携できる可能性は強いだろうと見ています。
                                                                                     (2009年2月6日)
 ■失敗が約束されていた百貨店の蹉跌
  本日、「そごう心斎橋本店」の売却の報道がありました。この秋以来の景気後退による売り上げ不振が理由として挙げられています。それはあくまできっかけにすぎません。
 当ホームページでも何度か触れましたが、新店計画の段階から間違っていたのです。「市場を見ようとしない計画」「トップの独走を止められない組織」「地域に対する侮蔑」それらが相まって「売ろう」という意思が見られない百貨店となっていました。遠からず破たんすることは、関係者はわかっていたはずです。

 北海道の「丸井今井」が民事再生を申し立て事に、大丸の浜松出店が中止になったこととあわせて「地方百貨店」はもうだめだという新聞論調があります。大丸の出店中止については単に地域の再開発計画の中断という事情が大きいと思います。業態としての「地方百貨店」の衰退とは切り離して考えた方がいいでしょう。
 
都市部の百貨店は「入れ替え可能」な部分があります。競争激化の中で数は絞られるでしょう。地域に密着した「地方百貨店」はまだ収益を上げるための改革の余地があります。
 「地方百貨店」の「のれん」の価値はあまり過大評価しても危ないのですが、無形の価値があります。地域に住む人々の「昔、楽しかった記憶」はばかにならない強みでもあります。
 捨てるべきものと残しておくべきものを峻別し、その地域の中でのプライスライン、とあえて泥臭いMDをどう残すかがポイントです。

 大阪は都市でもあり田舎でもあります。心斎橋そごうの店づくりでは、東京の百貨店のエッセンスを水で薄めるような「なんとなくお洒落ぽい」店で成功すると錯覚したのが間違いのもとで、あらかじめ失敗が約束されていたといえるでしょう。

                                                                                    (2009年2月3日)

 ■「阪神なんば線」効果で神戸を復活させよう(1)〜勝手に改装@
 今月発行予定の「CRI」(月末発行)に神戸と阪神なんば線について寄稿しています。

 先日もこのHPに神戸南京町の屋台を憂う記事を掲載しました。同じ様な観測をする人も少なくないようで、あらためて神戸の観光について考えてみました。先日計画されていた7つの新設ホテルのうち4つの計画の中止が伝えられました。ハーバーランドのホテルニューオータニ神戸の年内閉店も決まっています。神戸の都市観光は深刻な状況にあると思います。このままではせっかくの空港開業も市民の重荷になります。

 下記のイメージ調査にあるように関西人の「神戸」に対する都市イメージ評価は依然高いものがあります。憧れに似た感情さえあります。とはいえ、「最近、神戸に行ってないよね」という大阪人、京都人は少なくないです。震災以後、神戸市への観光客は「ルミナリエ」効果で入れ込み客数は持ち直していますが、その時期だけの集客では、復活とはとてもいえません。京都が一時の伸び悩みから持ち直したのと対照的です。あの、お洒落な神戸はどこへいったのでしょうか?
 確かにハードの面での復興は短期間に大きく進展しています。ただ、「魂」が入っていないと感じます。詳しくは「CRI」記事での分析をご覧ください。

 記述しきれなかった「神戸」の都市観光復活のための方策を少し考えてみます。
 神戸のシンボルというべき「異人館」は1970年代後半にNHKのテレビドラマ「風見鶏」で取り上げたころに遡ります。そのころ安藤忠雄設計のおしゃれな商業施設が北野周辺に続々とオープンしています。時代背景としてアンノン族が全国を徘徊していた時期です。

 都市観光はリピーターで支えられています。「阪神なんば線」の開業は、かつておしゃれな神戸にあこがれていた「団塊世代」を中心としたシニアのカップルを呼びもどすチャンスです。本当に中国人の人たちが自分たちで使っている「中華料理店」のガイドもつければ、かなりの需要を創出できると見ています。ターゲットはやはり、お金と時間のあるシニア層とヤングの集客です。

 ヤング層については「神戸」はまずファッションエリアの受け皿が欠落していることを認識すべきでしょう。今の大型店ではヤング対応が、圧倒的に欠落しています。このままでは大阪梅田と西宮のショッピングセンター、アウトレットなどとの競合に埋没していくことでしょう。そうならないためにも「阪神なんば線による大阪ミナミとのネットワークは重要な意味があるのです。     〜この項 続く
                                            (2009年2月2日)
 
京阪神3都市イメージ 2005年「なにわ考現学05」より
 1月
■「価格訴求」業態にも必要な「商人のスキル」
 高級ブランドの並行輸入ショップが話題になった時。「高級品を販売するにはそのための、販売スキルが必要だから、
ある程度までGMSや並行輸入ショップで売れかもしれないが大きな脅威ではない」というお話を聞きました。
 確かにブランドのポリシーがはっきりした店舗では販売員がそのブランドの商品を心から慈しんでいることが伝わります。
正規の販売店ならでは本物の安心感と買い物をする楽しみは安売り店では得られないものです。
 
 先日ある家具、インテリアショップの経営者にお話を伺いました。
その社長は3つのタイプのお店を経営されています。
 ひとつめは国産の天然木と天然塗料にこだわった少し高めのブランドの商品をおいた店、
 2つめは同じように健康にこだわった天然木と天然塗料の家具を社長自らセレクトした店。一つ目のブランドの店ほどではありませんが
価格的にはやや高めの設定です。
 3つめは大手メーカーの軽快にデザインされた手頃な商品と、均一価格のカーテンの店。
 ニトリやイケア等の大型量販店が話題になっている昨今、景気低迷下での消費者のシビアな価格意識から考えると3番目の店が一番売れていそうですよね。
 
 予算を大きく割り込んでいるのは3番目の価格訴求の店だそうです。天然素材、健康志向の店には店主の強い思いが感じられますが、価格訴求の店は
そういわれれば、なんとなく「世の中の流れ」に合わせたような所が感じられました。どこにでもありがちな店といえばわかりやすいでしょうか。

 大きな市場の動きは「価格コンシャス」です、ただし、その中でも自店の方針はこうであるとはっきりと主張できる店が強みを発揮します。

 今年の冬のヒット商品であるユニクロの「ヒートテック」と同じ商品を「イオン」も開発しています。売れ行き不振のGMSの衣料品の中ではヒットした商品だそうです。
それでもユニクロでの「ヒートテック」の売れ行きとはケタが違う事実は何を示しているのでしょうか?
 「価格で訴求する業態」であっても販売員など店に係るスタッフには「商人としてのスキル」が必要なのだと思います。

 先日テレビ放送されていた安売りの家族経営のスーパーの風景で、食品担当の責任者が実にまめに商品の配置に手を入れていたのが印象的でした。

 GMS業態の衣料品の売り方には、考えるところがありますのでまた機会をあらためてまとめます。
                                                                                   (2009年1月29日)

 
■梅田戦争の行方は
 2011年以降の梅田地区での消耗戦ともいわれる商業集積の開業はどのような状況を招くのでしょうか。
下図は繊研新聞が毎年集計している専門店集積の売上げ推移です。(単位:100万円、核店舗=百貨店の売上げは含まず)
キタ、ミナミともかつてはターミナルの巨大集積(阪急三番街、なんばシティ)の売上が高いシェアを占めていました。それぞれの街に多様な店舗が開業した結果、
梅田ではディアモール、ハービスなどを核とした「西梅田」地区と阪急三番街、HEPナビオ、NU茶屋町を中心とした「梅田東」地区の2極にわかれています。

 それぞれの地区は鉄道ターミナルを起点とした活動を行う沿線住民の利用がベースになります。昨年7月に三菱総研が発表した沿線住民調査では、阪急沿線住民の百貨店利用率のトップは「阪急百貨店」、阪神沿線の住民の百貨店利用率トップは「阪神百貨店」となっています。

 JRの開発する駅ビルが開業したときにこの構図はどのように変わるでしょうか?前述の調査で、JR沿線の住民の利用率トップは「阪神百貨店」でほぼ同じ頻度ですが「阪急百貨店「大丸」と続いています。梅田大丸も増床しますし、三越伊勢丹と専門店ビルの集積で新しい核が形成されますが、東梅田にも西梅田にも回遊が便利なこともあり、沿線顧客の需要を囲い込むことはかなり困難ではないかと見ています。よほど特徴的な売場、品揃えでない限り目的をもった回遊の創出は難しいのです。

 京都での「JR京都伊勢丹」の好調は、京都南部及び成長していた滋賀県の沿線の未開拓の市場「ブルーオーシャン」を取り込めたことが大きいのです。「伊勢丹」ブランドは魅力的ですが、決して圧倒的な集客力があるわけでは無いのです。JRの駅ビルの専門店、百貨店は大丸とも連携し、沿線の需要をしっかりと抑えなければ、とても厳しいことになるでしょう。

                                                                                       (2009年1月21日)

■「大阪からの発信」〜南港は関西圏の”首都”になれるか
 日本ショッピングセンター協会の全国大会が本日から3日間、南港のインテックス大阪で開催されています。トレードセンター前まで地下鉄で270円、。以前に比べてお安くなっています。街のことを考える時に商業は大事な要素です。日本を代表する商業関係者が集まっています。入場無料なので、商業にあまり縁のないかたもぜひ訪れてみてください。テーマは「大阪からの発信」です。

 会場のインテックス大阪は老朽化しているため、建て替えが予定されています。縮小して建て替えるのか、大きくして機能強化するのか意見が分かれているようです。確かに規模は大事ですが、人が集まり交流するイベント・展示会をどう誘致していくかというソフトの強化に知恵を絞るべきでしょう。


 東京からの情報発信は圧倒的な規模です。対抗するには、少数派であっても熱烈に支持されるコンテンツをもっと大事にして大阪発の発信を増やしていくことが重要でしょう。(例えば、サッカーの「ガンバ大阪」はACLで優勝し、クラブワールドカップで健闘することで、ヨーロッパや中南米などの世界に「大阪」「パナソニック」を大いに知らしめる快挙を果たしています。〜地元のスポーツ紙では阪神タイガースが1面でしたが) フィギュアモデル製作の「海洋堂」、自転車部品の「シマノ」など世界に誇れる地元ブランドから全国、世界に独自の情報発信ができるはずです)

 観光客誘致のためのイメージ調査で海外の人に「神戸」「京都」は知られていても「大阪」は全く知られていないという結果が出ているようです。当然、今までから指摘されていたことですから色々な手だてを講じてきた課題なのでしょうが、成果を上げていない以上やり方が間違っていると考えるしかないでしょう。

 京阪中之島線での京都と大阪のつながり、阪神なんば線での神戸、大阪、奈良の連携、さらに山陽電鉄を通じた姫路や伊勢志摩との連携など、民間では自社の沿線を超えた動きが始まっています。

 展示会、全国会議、国際会議など人が集まる仕掛けを「大阪」「神戸」「京都」がはりあって足の引っ張り合いをするのではなく、「関西」として取り組む時期に来ています。今の大阪府知事と大阪市長が在任中に大きく進めておいく事が必要です。「関西からの発信」が待望されています。
                                       (2009年1月20日)
■2009年の関西の動き〜阪神なんば線開通と中之島周辺に注目〜
 今年の関西の動きの中で注目したいポイントは以下の3点です。
 まず第一に3月の阪神なんば線の開業。神戸と奈良が直通で80分で結ばれます。大阪市内西部の開発も進み、やや沈滞気味の大阪ミナミの活性化の起爆剤にもなりそうです。来年は奈良で遷都1300年のイベントが開催されます。今後、新しい観光周遊ルートが生まれることが期待されます。また沿線の大学が学生獲得のための積極的な攻勢をかけているようです。外部からの流入者が増えると豊かな歴史資源を持つ、「奈良」のまちも活性化するはずです。

 阪神なんば線は近鉄なんば駅につながります。近鉄なんば駅に近い道頓堀に面した低層の商業施設「キャナルテラス堀江」はすでに開業した東館に加えてまもなく西館が開業します。水辺空間というと中之島周辺が話題になりますが、道頓堀川も整備が進んできています。阪神なんば線の開業で「なんば」周辺の人の流れも変わっていく事でしょう。

 次に大阪市内中之島周辺の北浜から中之島での大型オフィスビルとタワーマンションの開業です。京阪中之島線が開通し、インフラは整備されてきましたが、まだまだ御堂筋の南北の人の流れに比べて寂しいものがあった中之島地区で人の流れの起点と終点が形成され流動が活発化するでしょう。

  最後に「鳥取自動車道」の開通に注目しておきたいと思います。人や物の交流が拡大で「関西」を考えるときにまた違った目線がうまれるはずです。実際の人の動きや、物の動き以上につながる事による効果は大きいでしょう。

 (2009年1月15日)
 道頓堀川 ホテルモントレ
■2009年の業界展望

@全般の景気動向
 年頭の各社トップの見通しでは「景気回復時期」について2009年末から2011年以降までと見方が分かれています。基本的に景気は右肩上がりを永続的に続けるものではなく循環するものです。「回復」の位置をどのように設定するかで時期の判断はわかれるでしょう。明らかに「バブル」の頂点であった一昨年の状況を到達点とするのなら「回復」は数年かかります。
 経営者はあきらかに方向性を見失って先が見えないパニック状態にあります。その為、現場では一種の思考停止の中で恐怖感が先走り、投資抑制、経費カットのマイナスのスパイラルに入っています。
 アメリカの次期大統領が正式に就任し、日本でも選挙によって政権の枠組みがかたまって、新しい政策が打ち出される頃、(今年の中頃?)には落ち着いて将来のことを見据えた動きが見えるでしょう。
 気分が高揚するような「バブル状態」のピークがが戻ってくる?のは数年先になるかもしれませんが、
「景気回復」を同じ場所に戻るのではなく違う場所へ方向転換し前へ進むことと考えるなら、そんなに先のことではないと思います。

A流通業界
 ウォルマートの不振などの報道をみていると、「低価格」だけが切り札になるわけではないようです。
 一方で高額品の販売不振から百貨店の経営統合が加速すると見られています。縮小するパイの取り合いで少しでもシェアをあげておくことで生き残りをはかる動きです。
 投資効果の高い大都市の都心への出店に目が向くのは当然ですが、同時に地方都市、郊外でどう収益をあげるかの百貨店としてのモデルを作れた企業が残るでしょう。大手GMSが作った百貨店業態がことごとく失敗しているのは、百貨店にはまねの出来ない強みがあるからです。(30年以上構造不況業種といわれ続けている、百貨店の現場の人々は自分たちの強みを過小評価する傾向にあるようです)
 郊外ショッピングセンターは投資ファンドが撤退する中で、運営力、独自の魅力を作れるところが残ります。昨年開業した中ではイオンレイクタウンと阪急西宮ガーデンズが注目です。
 阪急西宮ガーデンズでは阪急百貨店が開業時に入口近くで婦人服の均一セールを行っていたことは、この企業のしたたかさを象徴しています。 阪神間という、豊かな商圏に安住しないビジネスの姿勢は脅威です。開業1ヶ月で78億円を売上、本店の売上に影響しているといわれていますが、地域商圏の需要を囲い込んだ効果は大きいでしょう。都心店は別の領域、商圏で売上を回復できる手だてがありますが、地域の限られた市場は「取るか」「取られるか」がはっきりします。

B関西のプロジェクト

・「梅田北ヤード」
 景気後退で動きが鈍っています。立地は素晴らしいのですが、リスクを回避し効率を上げようと容積を上げて巨大なビルをつくることが逆に「単に賃料の高い普通のビル」になり魅力がない物件となり、競争力をさげてしまうジレンマに陥ってしまっているように見えます。
 各方面から提言のある(=経済界、学識経験者、専門家がみんな思っているように)ように緑地を整備し環境共生型の先進的なまち作りを実現できないと大失敗する不安があります。
 「関西州」(?)の顔になる立地だけに市長と知事の強力な政治力が期待されます。不景気だからこそ、その可能性があると考えます。

・「パネルベイ」
 液晶、プラズマテレビの需要急減で投資先送りの動きもありますが、太陽電池は今後の成長分野なので、関西の経済を牽引する鍵のプロジェクトであることは変わりません。
 環境関連産業は今後期待感、投資が集中する分野であることは間違いありません。                           
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 → 
  「歴史から未来へ京阪間の都市軸が生み出す価値は?」
■道に迷った時は基本に立ちもどる〜エキサイティングな1年の始まりへ
 サブプライムローンの破綻に端を発した世界同時不況は、消費マインド、経営者のマインドを大きく悲観的な方向に誘導しています。「記録的な高業績」から一気に奈落の底に突き落とされた企業が多いため、企業の意思決定がストップし、思考停止に陥っているように感じます。
 意思決定がストップしている背景には、経営者にとって景気落ち込みの影響による、最悪のシナリオへの不安がちらついている事があります。市場bのダウンサイジングによりそれぞれの業界の「最大手企業」のうちのいくつかが「淘汰される」=(破綻する)という噂がまことしやかにささやかれています。どこがつぶれてもおかしくない恐怖に足がすくんでいるようです。

 確かに舵取りをあやまれば、大手企業であっても危うい状況です。大手企業であればあるほど、しがらみや、従来の慣行が邪魔をして「あるべき姿」から遠ざかってしまう事が多いようです。「動きがとれない」中でタイタニックのようにゆっくり沈んでいくのを待つだけという状態ではないでしょうか。何もしなければ、他所が転んでくれて自社は助かるのではないか?

 「あるべき姿」とはなんでしょうか?企業や業界によって細部は違うかも知れませんが、基本は「お客様に喜んでいただく会社」「従業員が仕事に誇りと、喜びを感じられる会社」である事は間違いないと考えています。企業に「利益」をもたらすのは投資家ではなく「お客様」です。そして、大事な「お客様」との接点が「従業員」です。

 年末に「三越伊勢丹が正月休みだけでなく定休日復活を検討」というニュースが報道されていました。百貨店の現場からは「開店していても経費がかかるばかりなので定休日や、営業時間の短縮をするべき」という声はずいぶん以前から聞こえていました。いち早く決断されたのはさすがであります。
 これに限らず、「これっておかしいよね」とか「トップの言っていることと実際の政策が違うよね」という「ずれ」は沢山あるはずです。
 今までは意思がなくても市場(=周辺の流れ)にのいっていればより目先の利益があがった・・・のかもしれません。「起こったことはすべて正しい」とおいう結果論から「正しいことを自分達が起こす」とシフトチェンジしなくてはいけません。
 もし、今の景気の中で「何をやってもじり貧」に見えるのなら、そんな時こそ、思い切ってしがらみとか、声の大きさとか、「目先の利益」ではなく、会社の中の「これっておかしいよね」を根絶して「あるべき姿に」立ち返って、次の時代に存在意義のある会社に変えていきませんか?今すぐ売上増加につながらなくても、次のチャンスに利益をあげる強い会社に変わっているはずです。(どの企業のトップも同じような事を語っておられます。社員を鼓舞するための希望的な観測ではなく、シンプルな事実なのだと思います)
 
 厳しい状況はまだまだ続きますが、こんな時が本当の改革のチャンスなのだと思います。エキサイティングな1年になります。共に前に進んでまいりましょう。
 今年も皆様のお役にたてる情報発信を続けていきますのでどうかよろしくお願いいたします。
                                       (2009年1月4日)
 
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