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 ■商店街からアーケードが消えていく?北九州魚町、大阪肥後橋商店街
 
 近代アーケード発祥の地は北九州市魚町商店街

 商店街にアーケードはつきもののように思えますが、戦後公道上に設けられた商店街を覆うアーケードは1951年に北九州市小倉区の「魚町銀天街」に設置されたものが始まりだといわれています。
 当時、小倉は九州の玄関口として繁栄していて、朝鮮戦争の特需で儲けた商業者が小倉城の再建の次に取り組んだのが商店街へのアーケードの設置だったといわれています。
 その後全国に拡がったアーケードですが、西日本を中心に撤去されている商店街も増えてきています。
 
 「魚町サンロード」はその「魚町銀天街」の近くの商店街ですがアーケードの設置は1981年と比較的最近でした。それでもアーケードの老朽化が進み2015年にはアーケードを撤去することになりました。(銀天街のアーケードは健在です)

 アーケードは維持するのも費用がかかって大変ですが、撤去するにも費用がかかります。

 北九州市が規制緩和特区に認定されたことも有り、」あらたにアーケードの撤去が決断されました。薄暗く空き店舗が多かった商店街では空きビル空き店舗の管理会社がまちづくりを主導し、コンテナカフェやマルシェ、夜市などの仕掛けで若い人が集まり、新しい飲食店舗が増えてきました。夜市などの出店料をアーケード撤去費の一部にあてているそうです。

 日本一短い商店街のアーケード撤去

 大阪西区の肥後橋商店街は全長79メートルで日本一短い商店街を自称しています。かつては20以上あった店舗は今は10軒程度に激減、年間350万になる管理維持費が負担になっていました。2016年にアーケードを撤去しました。九州の事例のようにカフェが設置されたわけでは無いので、新聞記事にあるように客層が変わるほどの激変はありませんが、確かに町並みは明るくなりました。(一体感もないですけれどね)

 撤去費用の負担については不明ですが、規制緩和特区でも無いので自己負担でしょうね。それでもあえて撤去した方がプラスになっているように思います。元々周辺には若い人の新しい店が増えてきていますからね。

 ただ、行政もアーケードを設置することに補助金を用意できても、撤去だけでは援助の大義名分がたたなくてむずかしいところですね。

 このあたりは、今後の課題かも知れません。

                                                           (12月27日)


 ■岡山県には何故大阪からの観光客が少ないのか?~没となった提案書から
 

「関西圏における岡山観光のPR方法と観光客増加に関する提案」

1.岡山観光の関西圏における「強み」「弱み」と課題

(強み)・歴史、自然(海と山)、グルメ、文化、絶景スポットなど多様で豊かな観光資源に恵まれている(図2

           ・大阪から新幹線で1時間、車で2時間と京阪神に近接した立地

           ・天候が温順で晴天率が高い

 

(弱み)・「岡山県内」の移動に時間がかかる~県内の回遊が阻害され県内の「資源」がつながらない

           ・観光地としての「岡山」が一体となったブランドが形成されていない~倉敷、蒜山、日生、温泉がつながらない

           ・京阪神からの「日帰り観光」スポットが限定される 都市観光と県内東部地域

(課題)①「兵庫県」からは「自動車利用客」「日帰り客」は獲得できるが大消費地の「大阪府」からはとれていない

           (4)   

観光ポイントの「利用者層」「居住地」が分散されるため各ポイントの情報発信が個別ばらばらで

「岡山県」のリピーター獲得につなげにくい

「強み」をつなげられないため「京阪神」からの県内での「一泊二日」の観光ルートが認知されていない

距離が微妙に離れている~広域の観光地の競合(北陸、長野、九州)に対して差別化ポイント必要

2.関西圏におけるPRの方法

           「口コミ」「SNS」から「メディアへ」

「岡山」の情報発信量の増加=インスタグラムによる映像発信、ツィッター、フェィスブックでの拡散

  岡山県内の学生、若者層、県人会など関西在住の出身者などからの非公式の個人発信の拡大

                      「絶景」「グルメ」「温泉」「お城」「自然」「ファミリーレジャースポット」

②上記をベースに在関西テレビ局、ラジオ、新聞、雑誌への定期的なニュースリリース発信

旅行雑誌、温泉雑誌、ムックへの情報提供 記事にしやすい新しいネタの提供

 

3.関西からの観光客増加策

           「初めての利用者」を増やす=「岡山」を体感してもらう

           岡山を体感

           (若者層)「インスタ映えするスポット」、グルメ、絶景のSNSでの情報発信~地域情報誌にリリース

           (ファミリー層)「子供と遊べる自然」「スポーツ」のスポットを集約した情報発信~WEBサイト、パンフレット

           (シニア層)「温泉」と「グルメ」を中心にしたドライブマップ作成、大阪発のバスツアー企画

「リピーターの拡大」=定期的な来訪と岡山の他のスポットの利用拡大

           一度利用した人に再度利用してもらう、」」・さらに県内の他の観光スポットへ誘導する

           (若者層)利用者をWEB会員に登録し季節のニュース、イベント情報を配信する

           (ファミリー層)サマーキャンプ、クリスマスイベントなどファミリーイベントを恒例化し案内する

           (シニア層) 湯巡りクーポン、城巡りスタンプラリーなどで県内を回遊させる仕掛け


 DMOが主流になり、岡山県南部の海岸地区は広島県や四国が主導のDMO組織が、蒜山、真庭地区は鳥取県と一体なって集客活動が進んでいます。東京でのPR施設は鳥取と大山が一体となって事務所を構えています。

 利用者サイドからいえば、県の所轄は所轄は関係ないので、利便性が高い回遊ルートが整備されればそれでいいのですが、折角真庭や、西粟倉村、日生、倉敷、津山など観光資源に恵まれているにもかかわらず、岡山県としての発信が立ち後れているのは少し残念ではあります。

 ターゲットを明確にして、利用シーンにあわせた情報発信ができるともう少し改善されると思うのですが、大阪からみれば移動時間をかけるなら他の選択肢を選ばれてしまいます。いつまでもB級グルメの焼きぞばが「PR」の目玉では未来はないです。

 倉敷の食のブティック「平翠軒」も東京にだしています。倉敷に有りながら行政からの発信はなかったですよね。

  没になってしまった提案書をクリスマスプレゼントとして、ここに公開しますから、各府県の観光政策で参考になるようでしたらご活用下さい。

                                                         (12月25日)
 
 岡山県の観光データ

1.岡山県の観光の特徴(観光入れこみ統計 2015年 国土交通省)
 
図-1 近畿・中四国各県の観光入れこみ客数
・県内の日帰り客が増加しているが、宿泊客が少ない。~岡山駅前のイオン、倉敷のアウトレットなどが県内客を集客している。
OK1

図-2 近畿・中四国各県の観光目的イベント別観光入れこみ客数   3県比較(岡山、広島、香川)
・都市型観光(倉敷、岡山市)に特徴があるが、自然資源が弱い。その他観光資源はあるが特徴は無い。
OK2

2.近畿圏からの岡山の利用(2016年岡山県観光動態調査)

図-3 岡山県 発地別の観光入れこみ客数(千人) 2016年
・県内客は伸びているが、近隣で最大の市場である近畿圏からの観光客は伸び悩み。
OK3
図-4 岡山県への近畿からの発地別利用交通手段(千人)
・兵庫県からは自家用車での利用が多いが、大阪府からは自家用車では無く鉄道利用が多い。
=日帰りドライブ圏ではない。観光バスの利用も少ない。
OK4
図-5 岡山県内主な観光スポット別の観光客数(千人)

OK5
 ■天神橋筋商店街と心斎橋筋商店街の違いが面白い
 
 昨日、公益財団法人都市活力研究所主催の「第3回キタ再発見の会」~「線から面へー天六・天神倍筋商店街の歴史と商い」のお話を北区商店連合会特別相談役の吉村孝司氏から伺いました。

 天六商店街振興組合理事長を長くつとめられた方で、天神橋筋商店街の歴史を中心に興味深いお話を沢山聞かせていただきました。

その中で印象に残ったお話として、天神橋筋商店街は休日には5万人の人が訪れる活況を呈し、商店街周辺に新しい飲食店も沢山出来ていて賑わっているので商店街の路面店の賃料が坪3万円を超えているそうです。通常であれば、賃料負担力の高いナショナルチェーンが旧来の店に入れ替わるのですが、入居しても競争に負けてすぐにでていくそうです。
 この商店街は以前から「デフレ価格」とにかく販売単価が安い。その為、価格競争に勝てないということです。

 何年か前に英語、中国語、ハングルも使ったビジュアルなガイドブックを作成し、外国人観光客も多いのですが、日本人の利用者も多いそうです。もともと周辺の居住者が多いので、地元客の利用が定着しています。
 それぞれのお店はネットはおろかファックスも無い店が多くて、中国系の「銀聯カード」どころか通常のクレジットカードも使えない店が多いと言います。吉村さんは商店街のまとまりがない事例としてあげられたポイントですが、心斎橋筋商店街の現在と対照的な姿ですね。

 インバウンドバブルもいつまでも続きませんから、商店街、商業の未来の選択肢としてこんな商店街が元気で残っていてくれるのも興味深いですね。
                                                             (12月22日)
 ■インバウンドの増加で大阪の百貨店の売上が増加したことのプラスマイナス
  今朝の新聞で、インバウンド客が過去最大に増加したことが報じられています。お陰様で大阪の百貨店も好調です。
スタートで躓いていた近鉄あべのハルカスも売上を伸ばし、髙島屋大阪店は髙島屋グループのトップに躍り出たといいます。売上の2割がインバウンド客とか。
 とても喜ばしいことなのですが、これは裏返して言えば、国内の個人消費が落ち込んで伸びていないということがあらわれています。

 これから消費税があがりますし、高額所得者の所得税も増税されます。個人消費が伸びる要素が全くありません。

 ますますインバウンド客への依存率が高まっていきそうです。

 百貨店は地元客中心の郊外店をどう運営していくか?持続的な成長のためには8割を占める国内客の消費喚起策が必要です。売上が思うように伸びないときには対策も消極的で後ろ向きのモノが多く、益々お客様が離れるという悪循環に陥りがちです。

                                                                            (12月21日)
 ■「プリテンダー」~または不味いエッグベネディクトと「コンサル稼業」の類似性について
 
 中クラスの宿泊特化型ホテルの朝食で提供されたエッグベネディクトが恐ろしく不味かった件

 ホテルラッシュで沢山の事業者がホテル事業に参入しています。ホテル業界の人材は流動性が高いのでスカウトは可能だというモノの、人材の絶対量は果たして足りているのか、かねてから心配していました。(まあ私が心配してもどうなるものでもないですが)多くの作業はアウトソーシングの事業者がいますからハコをつくれば何とか体裁は整いますがさてうまく運営されているのでしょうか?
 
 久しぶりに中クラスのホテルに宿泊する機会がありました。ホテル専業では無くオフィスビルなどを手がける中堅企業で、まだ新しいホテルです。宿泊設備とカフェ、朝食とバーを兼ねたラウンジが併設されています。朝食は2,000円強で平均的な料金?卵料理とサラダバーがメニューです。
 キビキビと働く若い女性が手絞りのオレンジジュースを提供しなかなかおしゃれな雰囲気で期待が高まります。

 サラダバーは時節柄生野菜が高いのでやや寂しい内容なのは仕方ないでしょうが、メイン?の卵料理が残念でした。「エッグベネディクト」最近の人気メニューです。そのエッグベネディクトがキレイに飾られているのにも拘わらずおそろしく不味いものでした。卵を使ったシンプルな料理なのに何故、こんなんに不味く作れるのだろう?怒ると言うより不思議でした。

 調べると業務用の「とろとろ卵」のようなものが流通していてそれを使ったのでしょうね。
一般的にホテルの朝食バイキングなどででるメニューは業務用の半完成品です。鮭の切り身とかね…それでもメインになる料理はそれなりに手をかけています。オムレツを料理人がその場で焼くとか。コストを抑えても美味しいモノを提供するのが普通です。

 専門家で無い人がホテルのようなもの作るとき、それらしいしつらいはつくれても、肝心な部分が抜け落ちてしまうのですね。(これがスーパーホテルとか東横インならお値段から納得しますし、アパホテルは最初から選ばないです。なまじおしゃれな格好をつけたぶんだけ失望が大きくなりました)

 私はあのプロジェクトをやったという「コンサル」が未だに商売が続いているという

 思うところがあって、新規開拓の為に私の業務経歴を整理していて、タイトルだけ見ると結構スゴイじゃんと錯覚してしまいました。ただ、実際におこなったタスクは結構地味な作業の集積でした。調整のための資料づくりや調整、説得、沢山の不採用になった提案など沢山の雑用、様々な人の思惑や動きの中でプロジェクトというものは回っていきます。まあ、私が下っ端であるという証かも知れませんが。少なくとも多くの成功したプロジェクトが「個人」の力で成立することはあり得ないことはよくわかっているつもりです。(例外は旧セゾングループの独裁者堤清二さんぐらいです)

 だから私はあのプロジェクトを成功させたということをうりものにする「コンサル」をみると眉がツバキでべとべとになります。さすがに東京では少なくなっているようですが地方ではまだまだ商売が成り立つようですね。

 ひとの商売を邪魔することは当社のポリシーに反しますので、ひたすら敬して遠ざかるようにしていますが、最近はネットでセルフプロデュー-スするような事例も多く見かけるようになりました。特にネットでは目だったものが勝ちなので、「盛り」がエスカレートしがちです。

 実験的に当社もWEB広告をだしてみました。それに合わせて少しだけ、興味を引くようなコピー、構成に変更していましたが、来年は元に戻します。お見苦しくてすいません。

                                                                       (12月20日)
 ■「銀座シックス」が目指す方向が見えない
 
 4月20日に銀座6丁目に開業した「銀座シックス」の評判は

開業当初は色々と新聞報道がありましたが、今現在どうなのでしょう?

 ラグジュアリーブランドの大型旗艦店を軸に上質、高感度な「ワールドクラスクオリティー」のファッション、飲食店など241店が入る。開業初年度の売上高は約600億円、来館者数は2000万人を見込む。
 松坂屋銀座店跡地を含む街区と隣接の計約1・4㌶を一体開発する。施設は地下6階~地上13階・屋上で、延べ床面積約14万8700平方㍍。商業施設は地下2階~地上6階全体と13階の一部で、施設面積は約4万7000平方㍍。「銀座最大級」となる。
 ファッション・雑貨は国内ブランドやセレクトショップを含め、「従来よりも高単価で、ワンランク上の業態」を数多く揃える。大丸松坂屋百貨店は国内外の服飾雑貨の新業態セレクトショップ「シジェーム・ギンザ」を2階に出店、アートギャラリーも5階に出す。施設全体としてアートの発信も重視する。


 開業当時の繊研新聞の記事です。

 日経テレコムで検索したのですが、この3ヶ月間の記事ではヒットしませんでした。

 昨日やっと見ることが出来たので、観察からの感想をまとめておきます。

 旧、松坂屋銀座店の百貨店の匂いを完全に払拭した施設ですが、それでは何なのか?形容に困ります。
 大丸・松坂屋グループのjフロントリテイリングは専門店ビルの「パルコ」をグループ会社にしています。専門店を集めたパルコに似た施設になったのでしょうか。草間彌生のオブジェや館内のアートに少しだけパルコの匂いがします。パルコでも無いのですが。
 下層階のスーパーブランドのショップは銀座という立地でしっかり稼いでくれるでしょう。専門店も、一つ一つ見ると。あの店を誘致してきたのかと思える希少なテナントが入居しています。(倉敷の平翠軒やフィレンツエ仕込みの職人さんのアクセサリーなど)

 ワンランク上と自称する用にお値段も高いのですが、それ以上に感じるのは、それぞれのショップの関連性の薄さです。ショップはそれぞれの「世界」を奥ゆかしく主張していますが、そのゾーンが何をしたいゾーンかがわからない。

 それは売場の真ん中を大きな吹き抜け空間にしているのもひとつの原因です。まるでイオンモールのような吹き抜け…関西で言えばグランフロント大阪や旧そごう心斎橋新店に感じた、「売ること」「商品の紹介」よりも空間の規模でビックリさせようという建築家主導の商業施設に似ています。

 インバウンドの観光客が好きそうな店も少ないので、いったい何で収益を上げているんだろうと感じます。オフィスゾーンの賃料でもとがとれているのかもしれません。銀座最大級を持てあましているようにも見えます。

 ひとつひとつの店には光るモノもあるのに

 蔦屋書店はいつもの蔦屋書店ですし、チームラボの映像はいつものチームラボの映像です。
 部分部分は頑張っていても、トータルとしてどんな商業施設にしたいのかという「コンセプト」がありません。何故こんな店になってしまったのでしょう。
 未来に繋がる「商業施設」のありかたはここでは見つけることが出来ませんでした。

 大丸心斎橋店の建て替えに期待です。

                                                                    (12月18日)
 ■2017年のまとめと2018年への展望
 
 2017年のバズワード(流行語)から1年を振り返る

 繊研新聞さんから送られてきたメールマガジンで2017年の業界版流行語大賞トップ10を振り返ってみます。※コメントは当社の見解で繊研新聞様の見解ではありません。

 10位は「ウェアラブル」
 身につけられるという意味です。運動量、心拍数やカロリー消費量、など健康に関連する数値を日常に身につけている機器(時計や眼鏡)から衣服に組み込んだセンサーで測定し生活習慣を見直すというものです。血糖値や睡眠状態も計測で来るようになってきています。「病気」の状態の管理だけで無く「未病者」の予防や健康管理が注目されています。

 9位は「CtoC」
 ファッション関連では「メルカリ」や「ラクマ」「フリル」「ミンネ」などのフリマアプリが話題になっています。消費者から消費者の間の直接取引という概念で言えば、民泊紹介アプリやライドシェア、空き駐車場マッチングアプリなどが瞬く間に普及しましたね。このあたりは訪日外国人(中国、韓国からの旅行者)のほうが進んでいるので、「規制」が後手に回っています。
 優良な中古家具の流通サイトを立ち上げようとしていたのですが、システム構築に膨大な費用がかかるので中断しました。今の「メルカリ」などの仕組みを使えば簡単に課題がクリアされるようです。

 8位は「ビッグデータ」
 これこそいわゆる「バズワード」(実態があいまいなまま人口に膾炙する流行言葉)ですね。様々なソースからの大量のデータを集めて分析して答えを導くということでしょうが、「どんなデータを扱いどんな効果があるかは正確には知られていない、明確な定義も無い」と紹介されています。
 情報ベンダーさんは定期的にこのようなバズワードを使って営業ツールにしておられます。(INS、MIS、○○2.0、IOT、オムニチャネル、フィンテック)最近は行政もそれにのっかって流行言葉にするので何だかなあと思いますが。トップにプレゼンするときに何となくわかったふりをしてくださるので便利な言葉です。

 6位「プレミアムフライデー」
 個人消費喚起のためのキャンペーン。日本全体で働き方や、働く時間が多様化してきたのであまり普及していないように思えます。一つの場所で一斉に業務を開始し一斉に退社する工業化社会の働き方であれば効果があったでしょうけれどね。この手の官製キャンペーンでは「クールビズ」や「ウォームビス」があkじらかに職場でのカジュアル化を後押ししビジネスの風景を変えてきたと思います。

 6位「働き方改革」※同順
 職場や家庭、地域でで誰もが活躍で来る社会をつくろうというモノ。背景に労働人口の減少があります。「ノマドワーク」(古いバズワード)「テレワーク)の普及や保育所問題への関心の高まりが目に見える変化でしょうか。残業手当の廃止など賛否が分かれる議論もこの流れです。時間に縛られない働き方という概念は理解できますが、必ず悪用し残業代の抑制しかしない企業も出てくるでしょう。

 4位「ファーフリー」
 繊研新聞らしいランキングです。本物の毛皮を動物愛護の観点から利用しないで、あえて人造の毛皮を使用するというもの。グッチやパタゴニア、ユニクロなど著名ブランドで現れてきています。「偽善」という指摘もあるでしょうが、家畜を利用するとしても苦痛を出来るだけ与えないという考え方は知的エリートには支持されます。(欧米ではベジタリアンもすくなくありません)
 
 4位「IOT」※同順
 「モノのインターネット」様々なモノがインターネットに繋がり、情報交換しながら相互に制御する仕組み。ホームオートメーションが進化したものから衣料品(ウェアラブル端末)、ビッグデータ分析と繋がれば威力を発揮します。高齢社会での見守り機能や家事買い物の効率化、子供の見守り機能(通学、通塾状況等)など監視されているようで息苦しい感じもしますが、便利さになれるとてばなせなくなっていくでしょうね。

 3位「袖コンシャス」
 女性ファッションの世界で流行なのかな。多様な袖を」意識したスタイルだそうです。

 2位「AI」(人工知能)
 コンピューター(昔はコンピュータと表記されていましたが今はコンピューター)上で人類と同等の知能を実現させようというもの。コンピューターはあらかじめプログラムされた範囲以上には進化しないと言われてきましたが、学習機能をそなえて進化するようになってきています。将棋だけで無く囲碁でもコンピュータの方が強くなってきています。

 1位「SNS(インスタ)映え
 これは様々な分野で価値観を変えてきています。かつては飲食店で料理を撮影したら、店に怒られたのですが、今は大歓迎の店が多くなってきています。インスタで写真を撮るために旅行先を選ぶとか、有名人とあっても写真NGなら握手はいらないとか、現物よりも映像を優先するという困った価値観が蔓延しています。写真を撮るより五感で感じることの方が大事なのにと思うのは古いタイプの人間なのでしょう。
(繊研新聞の記事ランキングからメルマガ会員の投票による)

「食」の流行語をホットペッパーグルメさんから拾いだしてみましょう

5位 「抹茶スイーツ」
 海外のからの旅行者に日本らしい食材として「抹茶」が人気なので老舗の店舗が限定メニューをだしたり、海外から逆輸入されたりしたので人気が爆発しました。インスタ映えもしますしね。

4位「からあげ」
 からあげ専門店がふえましたね。食材の原価が低いので、一般店舗でも鳥を主体としたメニューが増えています。ハイボールやチューハイにも合いますしね。不況が生んだ人気メニューだと思います。

3位「チーズダッカルビ」
 これも食材は「鳥」です。チーズを絡めると少し新鮮な絵になります。韓国料理のダッカルビに溶けるチーズをからめたもの。

2位「甘酒」
 飲む点滴と言われる発酵飲料。健康志向から支持者が増えてきたのでしょう。ゼリーやチョコにも拡大中。そういえば、今年は「梅酒」は10位までにランクインしなかったようですね。

1位「スーパーフード」
 今年は「ゴジベリー」や「進化系スピルリナ」(藻)が人気だそうです。「チアシード」や「ココナッツオイル」は去年の流行。

1,2位は健康がキーワード、3位以下は健康はあまり関係ないようです。
(全国の20~30代の男女2,072人へのアンケートから)

2018年のトレンド予測(リクルート)から

 様々な事業を展開しているリクルートホールディングスは8つの領域で2018年のトレンドを予測しています。青文字予測に対するコメントは当社が付加したモノでリクルートホールディングス様の見解ではありません。

①美容領域「来るスマ美容師」
高齢者向けの美容健康サービスに注目しています。美容店舗の過当競争の中、美容室へ行くのは困難な高齢者に「スマイルを届けてくれる美容師」が増加すると予測しています
以前、資生堂の方にお話を伺ったことがありますが、高齢者施設を訪問して化粧をするとみるみる若返るというか、元気になるということです。健康は見た目を意識する気持ちの張りからもうまれるものでしょうね。

②アルバイト・パート領域「年功助力」
戦略的にシニアを採用し活かす企業が増加。年金金額の削減とともに、シニアの就労意欲が高まっています。かつては元気なのにリタイアしたシニアの時間の使い方が話題になりましたが、いまや「悠々自適」は「夢の世界」です。シニアの応募数は2倍に増加しているそうです。
求人数は2015年に比べて10倍になっています。とはいえまだまだ最低賃金すれすれの「低賃金」の求人が大半ですが。

③人材派遣領域「熟戦力」
人手不足を背景に実務担当の即戦力として定年後の人材を受け入れる企業が増加。
60代を中心に経験や専門性を持つ人材を派遣の形でマッチングさせるということでしょうね。シニアも雇用形態にはこだわらないようです。

④社会人学習領域「まなミドル」
成長機会を求めて会社の領域を超えて学び始めるミドルが増加。
今のミドル層(40~50歳代)が成長機会を求めて大学院や資格スクールに通い始めています
。成長機会を求めてだそうです。国からの社会人の学び直しの補助金も予算化されていますから今後将来不安を抱えたミドルの受講も増えていくでしょう。
昔は社会人向けは「教養講座」だったのですが「専門実践教育訓練給付金」の名の通り実践的なスキルアップが中心になるのでしょうね。

⑤人材マネジメント領域「ボス充」
生活を楽しみ社外活動が充実している上司はその経験を社内外に活かして活動の場を拡げる。ボスが充実している様子を「ボス充」と呼ぶ。
上司に対する若者の評価は社外活動が充実している上司の方が高い。

これは中間管理職へのリクルートさんからのエールでしょうね。頑張れボス。

⑥飲食領域「ピット飲食」
平日夜の早い時間に仕事と家庭、主務と副業の区切り、気持ちの切り替えをつけるために、「一人で利用しやすい」「ゆったりすごせる」「電源設備が充実」「生活動線に近い立地」のなどの条件を満たす「ピット飲食」が登場。
いわゆる「サードプレイス」なのでしょうね。残業抑制で会社にも居られずに家にも居場所のないお父さんのオアシスなのでしょうか。

⑦婚活領域「お見せ合い婚」
SNSでのプロフィールや趣味などの自己開示で自分をアピールしてパートナーを探す人が増加
オンラインでの自己開示にはハードルが低い世代が増えています。そんなことまで公開するのか?とかそれは盛りすぎ(良いようにアピールしすぎ)?とかSNSには真実ではなくても、そうありたい自分が投影されるのでしょうね。

⑧住まい領域「育住接近」
保育園や学童保育などをマンションや団地内に設置する住居が増加

保育園不足の中、これは需要がありそうです。

以上、年末になると各社の予測がこれからも沢山発表されるでしょうね。

今年は「ガンバ大阪」が絶不調で重い気分になる1年でしたが、来年はいい年になると信じています。

事情がありしばらく更新頻度は低下しますので、気が早いですがここで一旦ごあいさつ

2016年 1年間お世話になりました。皆様のおかげでなんとか1年間乗り切れました。
来年は皆様にとってもガンバ大阪にとっても良い年でありますように。

                                                                (12月12日)
 ■「BOP」から生まれる新ビジネス
 
 無料低額宿泊所規制強化「貧困ビジネス」対策から

 劣悪な環境に入居者を押し込めて生活保護費を吸い上げる「貧困ビジネス」への規制が強まっていくそうです。公園で生活する人をあまり見かけなくなったと思ったら、狭い住宅に入居させ生活保護費家賃相当の費用と食費を搾り取るブラックなビジネスに吸収されているのかもしれません。公的な施設は生活の制約があるので敬遠されるのでしょうね。

 規制ばかりがクローズアップされますが、高齢や障害などで一人暮らしの難しい人の受け皿として一時的な「無料低額宿泊所」ではなく継続的に暮らすことを前提に、生活支援のついた住居制度の検討を行っているそうです。(毎日12月5日東京版)食事の提供など必要な支援に関する具体的な基準を設けて優良施設を増やしていくようです。生活保護費の支給に関して現金支給からその対象者に応じた「支援策」に置き換えていく方針なのだと思います。
(障害者の就労支援の求人がやたら増えています。そこにビジネスチャンスをみつけている事業者が多いのかも知れません。ちなみに外国人の就労支援の事業者も多いです。日本語学校を経営している事業者さんとか…。社会的なニーズは高いと思いますが、法的にはグレーゾーンです。)

 子供の居る世帯の生活保護費を抑制するという事ですからその代わりに教育費の無償化や一部の自治体で行っている「塾クーポン」などの配布に支援を切り替えていくのでしょう。

 それでもお金が無い事は人をスポイルします。昔紙芝居はオッちゃんから駄菓子を買うことが観客になる前提でした。買えずにみていると「あのこただ見やでとチクられて遠く離れた場所から眺めることしかできませんでした。貧乏人は卑屈になってしまいます。
 
 BOP(ベースオブピラミッド)は経済ピラミッドの底辺という意味で、世界人口の7割が年間所得3000ドル未満であり、企業にとって有望な市場といあわれたのは2007年の論文です。利益をあげながら発展途上国の貧困問題解決に貢献できる、競争の少ないブルーオーシャンだと言う理屈です。今日の日経北関東版で中古タイヤリサイクルの事業をおこなう企業の事例が紹介されていました。

 バングラデシュやアフリカ諸国などの発展途上国でのビジネスだと考えていましたが、近い将来の日本の国内でのビジネスにもその考え方が必要になる気がします。特に大阪市内を見ていると。これからは貧困ビジネスやでと思います。

 本日のダイヤモンドオンラインの谷崎光さんの「中国人が日本人に絶対言わない日本旅行の意外な本音」はTVで「日本スゴイ」番組しか見ないひとには衝撃的でしょう。
 中国人は階層が大きく分かれているので先端層・富裕層の指摘とはいえ、これは事実でしょう。まあ、中国も今後急速に高齢化するので人口ボーナスの効果が無くなり「一人っ子政策」で親の面倒を見る子供が増えてきたときにあわてるでしょうが、それはそれとして、残念ながら「日本」が衰退している事は間違いないでしょう。現実を直視した上で子や孫の世代のためにも、何とかしないとね。

 国が貧乏になってもななんとかかんとか平和に楽しくくらせるように知恵を絞るのが国内の「BPO」ビジネスのポイントでしょう。

                                                          (12月12日)
 ■西梅田地区開発協議会30周年記念シンポジウム
 ~ワーカーや来街者に「選ばれるまち」「使いこなされるまち」とはへの所感
 
昨日12月6日、オーバルホールで標記のシンポジウムが開催されました。
阪神電鉄の木戸さんや角野先生が出席されるので、ぜひ聞きたいと思い参加させていただきました。

感想はゆっくりまとめますが、簡単な所感を記録しておきます。

30年間の知見の蓄積をもっといかさないと、と感じました。(これについては、またキチンと書きます)

角野先生が「公共空間のユーザー」として「地区内のワーカー」「地区を訪れるワーカー」「一般来街者・観光客」という区分で論を展開されていて、「おいおい西梅田にはもう一つ大事なユーザーが居るだろう」と心の中で叫んでしまいました。

シンポジウムの最後で、もうひとつ「都心居住者」と追加されたので少し安心しました。西梅田の後背地には福島や西区の新しい居住者がいます。昨年実施した調査でも毎日梅田に通われる福島のマンション住まいのご夫婦からお話を聞きました。30年前と違って都心の環境派変わっているのです。

あとシンポジウムにでられた女性の起業家の方の双子を育てた経験からの女性にとって使いやすい街というコメントも、少し前なら「女性の視点」」として充分だったでしょうが、今はそれだけではダメです。今の若い世代は父親も育児に参加するのが最先端です。

西梅田のオフィスワーカーは男性であっても「子育て」にコミットするのが正解です。「子育てに優しいまち」は女性だけにスポットライトをあてたものではないのです。

時代は変化しています。今まで積み上げてきたものをベースに新しいものを加えていかないと議論が10年、20年前のままのレベルで止まっています。

ちゃんと書きますねこのことは。

                                                                (12月7日)
 ■「コト消費」対応は鮮度維持が大変
 
 「コト消費」商品購入より体験や学びにお金を使う消費行動

 特にWEBでの購入が増えてきているので、店頭に人を呼ぶのにも有効だと注目されています。千葉県の「千葉そごう」では25日に別館「ジュンヌ」が開業しました。(以前にも御紹介しました)
 体験型のテナントが中核で、雑貨づくりが体験できる「メイカーズベース」には電動ろくろや溶接機など100種類以上の創作のための機器が整備されています。デスクワークや小規模オフィス対応の「コトコトワーキング」やインスタ映えするサンリオキャラをモチーフにしたカフェや芸術性の高いアメを作る工房なども併設されています。少し大人向けの「キッザニア」(子供向けの職業体験型のテーマパーク)ともいえそうな感じですね。「ごっこ遊び」のような」ネーミングですしね。

 千葉県内では12月に「千葉ポートスクエア」にノンバーバルのパフォーマンス「ギア」の公演を行う劇場がオープンします。中国系の「ラオックス」が訪日観光客を取り込む意図を持って京都から誘致したモノです。「体験と物販の両輪で地元の顧客と訪日客の双方を取り入れたい」と語るのは羅社長です。店内にはエアガンを打ちあうサバイバルゲーム場も併設されています。
 また千葉市臨海部の「ベイフロント曽我」ではスポーツクライミングの「ボルダリング」ができる施設を誘致、「話題性のある体験型消費を核として物販店の集客にも繋げたい」sぽうです。(日経新聞11月15日 千葉版)

 関係者が楽しく盛り上がっているところに水を差すようですが、これらの「コト消費」の目玉施設は今現在目新しさは全く感じられません。企画段階ではHOTな話題だったんでしょうか?ボルダリングジムなど簡単に作れるのでどこにでもありそうです。


 「長浜楽市」1988年

 コト消費で取り上げられるメニューを見ていると,1988年に滋賀県長浜市の湖岸に開店したSC「長浜楽市」を思い出します。当時、雑誌「「商店建築」の取材でお話を聞きに伺いました。西友が主体となり地元の商店会を巻き込んで開業した施設です。(ちなみに今でも話題の「黒壁」は商店街が郊外に移転したあと寂れた長浜市内をなんとかしようと商業者以外の地元企業で立ち上がったプロジェクトです。これも当時の社長笹原さんに取材したことがあります。黒壁ガラス館が開業したのは1989年です)

 「長浜楽市」は尼崎の「つかしん」に続く西武セゾングループの街作りがたの商業開発です。

 ここに集められた「コト施設」は次のようなモノでした。

・レーザーガンを使った迷路型体感シューティングゲーム「ワンダーウォー-ズ」
・全天候型モータースポーツ「スリックカート」
・洋蘭園(温室)
・ドライブインシアター
・時速300kmが体感できる「セガ・スーパーサーキット」
・長浜市内と連絡する「ボンネットバス」
・館内テレビ中継
・KBS滋賀の・楽市スタジオ

 1988年ですからバブルの恩恵があったとは言え、今見ても色褪せないメニューですね。(ほとんどなくなっていますけれどね)

 何というか、ここまで力を入れて整備したものでも、96年のアルプラザ開業、2000年のイオン開業などの影響で容積が低下し、2005年にはユニクロなどを導入した「普通のショッピングセンター」に改装されました。

 コト消費の魅力あるコンテンツをつくるのは大変ですし,魅力を維持するのも更に大変です。

 同じ時期に長浜市でスタートした「黒壁」が今でも人気を集めていることと比べて「長浜楽市」は少し人口的な要素が強すぎたのかもしれません。黒壁は既存の資源をうまく使っていますね。

 ということで千葉の施設には少し不安を感じます。千葉県内のあの施設のように飛び抜けて人口的であればそれはそれなりに成功するのでしょうが。
 
                                                         (11月27日)
 ■本気でシニア世代の取り込みを図る「イオンスタイル検見川浜」の挑戦
 1973年の「ニュータウン」千葉市美浜区検見川浜の「海浜ニュータウン」に健康とコミュニティをテーマとしてグランドオープン

 「海浜ニュータウン」は1973年以降に団地やマンションが分譲されたニュータウンです。店舗の500m圏にはマンションが6,600戸あり、入居時に30代だった住民が60~70歳になってお住まいです。まさに団塊世代ど真ん中ですね。

 23日にかつて「イズミヤ検見川浜店」だった店舗をを「イオンスタイル検見川浜」としてリニューアルオープンしました。イオンの言うGG(グランドゼネレーション=この言葉で使われる“グランド”は最上級を意味し、人生の中でも最上の世代と捉え、若々しく年齢を重ね、ゆたかな知識と経験ももちながら、人生をさまざまスタイルで楽しまれている時代の年長者を、敬意をもって表しています。シニア世代をターゲットにした店舗です。
 「健康」と「コミュニティ」をキーワードに、商品サービスを展開しています。

 「健康」では調味料などでの「減塩商品」の提案や野菜ソムリエの提案する「野菜メニュー」、飲用酢の品揃え、甘酒、甘酢、ビオワインの提供など幅広い食提案や、ウォー-キングシューズ、ステッキ、ストレッチパンツなど活動的なシニアのサポート商品が揃っています。

 「コミュニティ」ではラジオ体操の開催やコミュニティスペースの整備、暮らしのパートナーサービス、配達サービス、お買い物バスの運行、認知症サポーターの配備など商品サービスが融合してGG世代に対応しています。

 団塊世代も本格的に後期高齢者に突入し、それまで敬遠していた「シニア向けサービス」を利用せざるを得なくなってきました。

 前回記事にあるように、田無き世代にある「自分は従来の老人とは違う」という意識と現実に求める利便性にどう折り合いをつけていくのか?「いかにもシニアに必要なものサービスをあつめましたよ」という施設をどう受け入れていくか興味深い実験だと思います。

                                                                    (11月24日)

 先週、参加した講演会で「サードプレイス」についてあらためて考えさせられました。フラットで幅広い年代のコミュニティであれば有益で快適ですが、参加者の意識に現役時代の序列が残っている限りなかなかうまくはいかないかも知れませんね。

 ■あの世代は今~団塊世代は67~71歳,その他の世代は?
  
 「世代論」が広告業界、小売業界で盛り上がったのは「団塊世代」団塊ジュニア世代」が消費の主役だった時代です。
 「団塊世代」は67~71歳とこれからの介護業界のターゲットとして語られることが多いようですが、なかなか「グランドジェネレーション」として「豊熟消費」をしてくれません。彼らの多くはしっかり退職金をもらってかつ金融資産もおもちですから現在の株高の恩恵を受けているはずなのですが、親の世代の介護や子供世代(非正規社員も多い)への援助、何よりも将来への不安があり消費に向かわないのかも知れません。

 今、消費のターゲットを設定すると考えると、「バブル世代・ハナコ世代」(47~57歳)を中心にその親の「キネマ世代」(72~79歳)やすらぎの郷世代でまだ色気が抜けていません。と子供世代の「ゆとり世代」(22~28歳)が軸になるでしょうか。人手不足の影響で非正規でも正社員になる再チャレンジも可能です。何よりも若い時に消費する癖のついたバブル世代は仕掛けへの反応がいいです。

 時には、かつて流行った「世代論」を振り返ってターゲットを再確認することも意義がありそうです。いつまでも団塊+団塊ジュニアの幻想を追いかけても仕方ないですよ。

                                                                   (11月20日)

 博報堂「新しい大人文化研究所」が40~60代を”新しい大人世代”と読んで調査研究を続けておられます。「自分は従来の40/50/60代と違うという」と感じている人が84.7%と多数派です。まだこの段階で団塊世代は60代に含まれていますが、これから少しづつフェードアウトしていく時期に来ています。

 若い人から見れば中高年は等しく中高年なのでしょうが、実は隣り合わせの世代には溝があります。団塊世代はそれ以前の世代とは距離を置いています。
 取材や勉強会でお話をする「ポスト団塊世代」からは「団塊世代」への「恨み節」を沢山聞いています。一足先にリタイアし悠々自適の団塊世代に対してびっくりするほど冷ややかなコメントが発せられます。(私もその世代なので理解できるところがありますが)~ただ次の世代からは同じようにシニカルに見られていると思います。(私の世代は忖度されることもなく、団塊世代と若い世代の間でサンドバック状態にされていましたけれどね)

 組織に所属すると部下はある程度顔色をうかがってくれて「忖度」もしてくれます。「不機嫌」をあらわすことで他人をコントロールできたのです。組織を離れるとそれがなくなるので、子供のように「きれる老人」が増加するのだと思います。(団塊世代の糸井重里さんが神戸での世界一のクリスマスツリー計画に異論が出たときに、避難する人に切れたコメントをツィッターで発信されたのも象徴的ですね)

 「世代論」は単にその世代の特性だけに注目するのでは無く、世代間の関係性にも目を配る必要があります。(11月24日)
 表 世代区分と現在の年齢

世代名

生年

今の年齢

特徴

有名人

キネマ世代

193745

72~79

戦後復興期に育ち,高度成長期を支える。

映画を通じて文化を吸収。

石坂浩二、萩本欽一、三田佳子,中尾彬、

団塊世代

194650

6771

青年期に高度成長を体験。安保世代、集団就職世代。ニューファミリーを形成。

星野仙一、矢沢永吉、武田鉄矢、小泉純一郎、糸井重里、泉ピン子

ポスト団塊世代・DC世代

 

195159

5866

DCブランドブーム等モノによる個性の発揮と差別化を重視した最初の世代。三無主義、シラケ世代とも呼ばれる。

中島みゆき、松任谷由実、石田純一、水谷豊、明石家さんま、安部晋三、田中康夫

バブル世代・ハナコ世代

後期は「ばなな世代」

1960~70

47~57

バブル期に消費を謳歌。新人類とも呼ばれた。

女子大生ブーム、男女雇用均等法世代。

三浦知良、松岡修造、小泉今日子、奥田民生、斉藤由貴、天海祐希、

団塊ジュニア世代

197175

4246

ファミコン世代。社会に出たときにはバブルが弾けていた。フリマ、古着屋ブーム。

イチロー、SMAP、宮沢りえ、深津絵里子、貴乃花、椿鬼奴、友近

ポスト団塊ジュニア

1976~80

37~41

ポケベル世代。就職氷河期世代。非正規の派遣労働者が多いと言われる

中田英寿、堂本光一,aiko,椎名林檎、篠原ともえ,米倉涼子

プレゆとり世代

1981~88

 

29~36

 

好景気を全く知らない世代。MIXIや2チャンなどネットの交流が広がった。

古市憲樹、松山ケンイチ、鈴木奈々、吉高由里子、戸田恵梨香

ミレニアル世代・ゆとり世代

 

198995

22~28

バブル世代の子供。携帯からスマホ利用が当たり前で「ゆとり世代」とも呼ばれる。

西野カナ,佐藤健、浅田真央、石川佳純、きゃりーぱみゅぱみゅ

ポストミレニアル世代

199699

1821

シェアリングに抵抗が無い、ゆとり世代とは一線を引いている。

中条あやみ、芳根京子

世代区分は基本的に「JTB総合研究所」の区分に準拠している

 ■いざなぎごえ?の国での「空き空間ビジネス」に漂う「不況の香り」
 
 空間ビジネス?~矢野経済研究所さんのレポート

 矢野経済研究所さんからダイレクトメールが届きました。「空間ビジネス」とタイトルされていたので、おお「空前好景気」を受けての「バブル期の空間プロデューサー」が復活したかと思い目次を拝見しました。

 目次は以下の通り

スペースビジネスの概要
1.保管ニーズ
  ①トランクルーム市場  郊外に行くと結構沢山在りますね
  ②レンタル収納市場   
2.スペースニーズ
  ①レンタルオフィス市場  電話とデスクを貸してくれて営業所の代わりに使えるものです
  ②貸し会議室市場     地域によっては足りないですね
  ③レンタルデスク(有料自習室)市場  受験生だけでなく行き場所のないリタイア世代向けに市場はありそうです
  ④レンタルスタジオ市場  カラオケボックスで演奏練習したり自習したりする人も増えています
  ⑤複合カフェ(ネットカフェ、漫画喫茶、等)市場  
3.事業ニーズ
  ①保育所市場    パワーカップルが増えると保育所も多様な対応が必要です
  ②幼児教室市場   英会話、サイエンス教室などがテナンとしても引っ張りだこです
  ③学習塾・予備校市場
  ④カルチャースクール市場
  ⑤フィットネスクラブ市場 シニア女性向けのサーキットトレーニングや24時間利用できるセルフ型のジムが伸びていますね
  ⑥介護施設(通所サービス)市場 
  ⑦植物工場(施設園芸)市場
  ⑧コインランドリー市場  投資対象として駐車場経営よりも収益率が高いとのことです

 他に考えられるのは「子供向け写真館」とか「有料の遊び場」とか「猫カフェ」とかでしょうか、ゲストハウスもこの流れです。
※青文字のコメントは当社の文責です

 これは、空き室、遊休不動産の活用メニューですね。バブル崩壊後沢山やりました「不況」ビシネスでは無いですか。「いざなぎ越えの好景気」はいったいどこに行ったのでしょう。

 借り手の無い不動産物件を居抜きで活用するとか、格安で借りた土地に低コストの建築物で対応するとか,初期コストを抑えて利益の出る業種業態がほとんどです。団塊世代の退職金の運用先として開業あるいは投資できそうな業種も多いですね。いまでしたら銀行さんもお金を貸して下さいますしね。

 ここでは紹介されていませんが、最近の不動産関係の話題と言えば、

 「オフィスビルを転用した簡易宿泊施設」や「容積率一杯の宿泊特化型ホテル」など短期的利益の最大化を狙った案件が多いですね。(それだけにWホテルとかのニュースが新鮮です)同じ匂いがします。
 
 「メガ大家」「ギガ大家」さんへの注目

 個人投資家として安いマンション、アパートを購入し,最低限のリフォームをした上で、最低価格の賃料で貸し出して収益をあげている人を「メガ大家」「ギガ大家」というそうです。収益が上がるとそれを元に銀行からお金を借りてさらに物件を買い足して年間家賃収入を7億円上げているカリスマ投資家がセミナーを開いて活況なようです。

 オーナーは物件の購入と銀行との交渉に専念し,管理運営は人を雇って行うので労働時間はが短いというのが売り物です。

 低価格ですから入居者は「生活保護世帯」の方も多く、部屋で亡くなる高齢者もおられるそうです。入居者を集めにくい築古物件でも値段を下げれば入居者は集まるのでしょうね。シンプルに価格で勝負しているようで、生活保護者の囲い込みなど「貧困ビシネス」など手間をかけるようなことはしていないのでしょうね。

 「ギガ大家」で検索してみて下さい。セミナでは結構ハードボイルドな話題が出ていますよ。

 今後、都市部では空き家が増えますし、格差は拡大し貧困層も拡大します。

 投資家にとって「ワンルームマンションへの投資」とかよりは事業規模拡大によるリターンの大きさは「夢」があるのでしょうが、リスクもあるしリスクは自己責任であることは覚悟した方がいいですよ。

 世の中は本当に「好景気」なのでしょうか?

                                                                         (11月17日)
 ■日本橋・新今宮で続く多文化交流の動き
 
 日本で働きたい外国人と企業の人材マッチング?

 13日に発表された新今宮駅北の南海電鉄の開発物件は、星野リゾートのホテル用地のすぐ隣になります。ニュースリリースでは「オフィス・コミュニティサロン・ゲストハウスを併設し外国人就労マッチング事業を本業とする(株)aimをパートナーと事業運営する計画です」とあります。大阪市浪速区恵比寿西3丁目59-3の4,873㎡の敷地に3,045㎡の建物を建築するそうです。

 http://www.nankai.co.jp/library/company/news/pdf/171113.pdf へのリンク

 (株)aimのHPを拝見すると訪日外国人向けメディアの運営及び英会話サービスの運営を本業として」人材派遣、人材紹介も手がけておられるようです。

 人手不足で悲鳴を上げている業界は多数在り、高いニーズはあるでしょうが,現在外国人の就労は(特に単純労働は)厳しく規制されています。これってOKなんでしょうかね。
 特区で家政婦さんが解禁されたり,厳しい条件をつけて介護業界で受け入れが始まっていたりしますが、厚生労働省では

在留資格に定められた範囲で就労が認められる在留資格18種類
   外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、投資・経営、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術、人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、技能実習、特定活動(ワーキングホリデー、EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士、ポイント制等)
 なお、一般の事務所での雇用のケースが多いと考えられるものは次の4種類です。
技  術………………… コンピューター技師、自動車設計技師等
人文知識・国際業務…… 通訳、語学の指導、為替ディーラー、デザイナー等
企業内転勤……………… 企業が海外の本店又は支店から期間を定めて受け入れる社員
(活動は、「技術」、「人文知識・国際業務」に掲げるものに限る。)
技  能…………………・ 中華料理・フランス料理のコック等


と限定しています。日本語学校の留学生という扱いなのかもしれませんが、少しグレーな領域である気がします。どうクリアしているのか?そのあたりの説明がプレスリリースには全くありません。誰も不思議に思わないのでしょうか?何故?

 日本商工会議所も外国人労働者の受け入れ緩和について要望書をだしています。将来的なゴールとして外国人を含めたオープンで自由な街になり多文化の交流が広がるのは素晴らしい事だと思います・

 外国人労働者を受け入れるならキチンとルールを決めて、サポートを含めて法的に真っ白な状態にしないと、なし崩し的に既成事実化すると、第2の日雇い労働者のまちになってしまう可能性があります。
 本来、「高度人材」の受け入れから始めるのが筋道でしょう。(わざわざ条件の悪い日本に来てくれるかどうかはわかりませんが)

 南海電鉄という公共的な企業が主体となっているので、杞憂ではあるでしょうが、賛否が分かれて議論になる領域なので少し前のめりになりすぎている気がします。これはカジノ(IR)について解禁誘致が決定すしていないのに「前のめりになっている」京阪電鉄さんなど関西の経済界の空気なのでしょうか?

 起爆剤が欲しい経済界の気持ちは良く理解していますし、趣旨に反対しているわけではありませんが、もう少し自制心を持って慎重にあたるべきでしょう。新聞報道もリスクを指摘しておかないとプレス発表のコピーだけですね。グローバル化、多様化は街の活力につながるとはいえ副作用の予防策は必要でしょう。

 「文化住宅」のリノベーション「FUN SPACE 日本橋」

 15日の開業を大阪日日新聞で紹介されていました。築70年の「文化住宅」(関西独特の連棟家屋・木造アパート)をリノベーションした「グランピング」をテーマにしたカフェやゲストハウス、インテリア関連店舗の複合施設です。なんばパークスの端っこに近いですし,南海の高架下開発も進んでいるので面白い立地ですね。

 http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/171115/20171115028.html へのリンク

1階の通りに面した前面部分(約150平方メートル)と2階の手前部分(約135平方メートル)は、約100席のカフェ&ダイニング「ファンスペースダイナー」に再生した。

 緑あふれる空間にリゾートソファが置かれ、自家製生ハムや肉をたっぷり使った「日本橋バーガー」、エビとブロッコリーのアヒージョなど、アウトドアシーンをイメージした約50種類の料理を提供する。

 1階奥側(約99平方メートル)は4部屋のゲストハウス「Glam Lodge(グラムロッジ)」。木製の二段ベッドが並ぶこだわりの作りで自炊も可能だ。

 2階奥側は、植物を暮らしに取り入れるボタニカルライフを個性的なシダ植物などで提案する「NOOSA(ヌーサ)」と、美想空間のショールームが入居。キッズスペースも開設し、子育て世代も訪れやすい施設を目指す。カフェを訪れた客にインテリアやリノベーションへの興味を持ってもらう相乗効果が狙いだ


 古い建物を壊して建て替えるより安くて開業できて、実験的な試みの方に注力できて面白いですね。小規模な土地活用でこのような複合施設を構想しますが、新築でテナントをあつめるとなると事業性のハードルが高くなってしまいます。リノベ物件で沢山成功事例がでてくれると新規開発案件でもチャレンジできるのですが…。こんなのやりたいですね。

 パークスに程よく近いのが絶妙です。

                                                                     (11月16日)
 
 
 bg22
  ■人手不足がこんな所にも波及~食品工場新設とぐるなびの減益
 
 人手不足が株価の重荷

 人手不足がコンビニエンスストア、外食産業の収益を圧迫しています。

 ローソンは2018年2月期は営業利益は7%の減益と見込まれています。ファミマも減益、セブンイレブンは微増益に止まりそうです。人手不足に伴うコストの増加が原因です。
 ラーメンチェーンの「幸楽苑」は採算が悪化して560のラーメン店の内51店舗を閉鎖します。北海道、滋賀、福井,京都、岡山から撤退します。低価格のラーメンが売り物ですからもともと利益率が低く、材料費の高騰や人件費の上昇が収益を圧迫しました。

 意外なところでは「ぐるなび」の経常利益が34%減の減益となるそうです。グルメ情報サイトとして中、小規模の飲食店から掲載料を受け取るのが収益源です。外食は不況には強いはずですが、顧客が掲載料を控えて一店舗当たりの課金額が想定以上に減少しています。人手不足により顧客の飲食店の業績が悪化した影響を受けているようです。

 人手不足で好調なのは?

 京阪神での工場立地での需要を調査していましたが、物流倉庫の他は食品関係の工場、物流センターの投資意欲が高いのが印象的でした。特に高速道路沿いの物流拠点になる立地では工場の設置が進んでいます。

 外食産業の人手不足を受けて手軽に作れるサラダ、惣菜や介護施設向けの介護食など現場での調理の手間のかからない食品の需要が増えていると言います。

 これからの外食は手間暇をかけた出来たて感を売りにするか、加工食品をその場で食べるイートインのような業態に2極化していくのでしょうね。
 ビールの安売り規制が「ちょい飲み」のビール価格を押し上げて、安く飲めることを売りにしているお店は大変なようです。

                                                                        (11月14日)
 ■大阪市内ホテル開発計画のその後

 前回は9月11日に開発計画を整理しました。その後、数としては増えていませんが、積水の「Wホテル」やHISの「変なホテル心斎橋」、南海電鉄の高架下のホステル計画などユニークなホテル計画が公表されています。

 京阪電鉄が中之島線を延伸し、IRが実現すればなにわ筋線との連絡を経由して九条で接続してIRまで繋ごうという計画を発表しています。

 おそらく、万博誘致は少し難しいでしょう。IRについては、今の流れでは賛否はあっても誘致に向かうのでしょう。当初はかなりオブラートに来るんで「統合型リゾート」として提案されていたのですが、実現性が高まるにつれて「カジノ」についての扱いばかりが(外国人だけ利用から、日本人の入場規制を緩和するなど)話題になって居ます。

 カジノ業者にインフラを整備させることが狙いの筈でしたが、鉄道整備も、展示場の整備もカジノ頼みでは計画が頓挫したときには何も始まらなくなります。
 
 バブルのあと幅広い層に利用されるパチンコ屋サン像を描きパチンコ屋サンを中心にした開発の絵図もかいたことがありますが、商業施設、文化施設との組み合わせはあまりうまくいきませんでした。道頓堀の「道頓堀極楽商店街」(セガサミー)や新世界の「韓流ミュージアム計画」(マルハン)は短期間で閉鎖や計画の中止、あるいはターミナルの場外馬券売場と商業施設等明らかに客層や来街目的が違うのです。
 もちろん本来「IRの核とされるカジノ」はパチンコとは客層も違いますし、動くお金も桁違いです。本当に世界のセレブのお楽しみというカジノであれば心配することはあまりないのですが。

 南北軸上に集中するホテル計画

 計画をプロットすると南北の都市軸上に計画が集中している事がわかります。大阪から東西にんぽびる都市軸が相変わらず存在感が薄いのが気になります。中之島~京橋/OBP~京都を「つなぐ京阪沿線上となんばから奈良~神戸に繋がる阪神・近鉄沿線上にもっと観光客を含めた回遊の核になるエリアを増やしていく必要があります。

 南海電鉄が宿泊可能は交流施設を新今宮に設置

 新今宮駅近くに外国人に仕事を紹介したり、研修したりする拠点を設置すると南海電鉄が発表しました。大阪市から4,800㎡の土地を1.6億円で取得しカフェなどの交流スペースや宿泊施設を備え、コンビニエンスストアやファーストフードの求人を留学生、観光客に紹介するそうです。
 2019年9月にオープンするようですが、どんな施設になるのでしょうね。
 譲渡価格は割安ですが、災害時には避難場所になるそうです。
 
                                                                              (11月13日)
 図ー大阪市内で今後開発予定のホテル計画分布
 fw1※円の大きさは 公表されている客室数
表ー大阪市内で今後開発予定のホテル計画 
fw2
※青文字は前回記事 9月11日以降に新たに判明した計画
新聞記事等を元にANALOGで集約
 ■訪日外客と為替変動の関連を検証~今後のリスクは?
 
 円安が加速させた訪日客の増加はどこまで続きそうか?

 日本への訪日外客は諸外国に比べてまだまだ低い水準にあります。2020年の東京でのオリンピック/パラリンピックさらに大阪への万博の誘致などで近年の増加の流れを継続させたいものです。

 日本政府が「ビジットジャパンキャンペーン」うぃお開始したのは2003年。図にあるように2005年は訪日外客数は伸びてきたのですが円高の進行で減速しマイナスに転じます。2009年は前年のリーマンショックの影響と鳥インフルエンザの流行でさらに減少。2011年の東日本大震災でまた減少しました。2008年から2012年にかけては対ドル。対ウォンtぽもに円高でしたので観光客数の回復にも勢いがありません。

 2014年以降は、円安と中国人へのビザ発給要件の緩和、中国の経済成長などの理由で大きく観光客が伸びています。(中国の為替レートは実質固定なので、為替と言うよりも中国人の購買力が高まってきた結果でしょう。)
 訪日客の多くは中国人ですが、ドル換算で考えてお安く買物が出来る日本に人気が集まっていると思われます。

 今後のリスクは?

 中国国内の政治体制は安定しています。米中関係も良好なので、カントリーリスクは少ないといえます。日本国内では中国人に限らず外国の観光客を受け入れる体制がようやく整ってきましたし、地方発の情報発信もSNSやネットを使って進んできています。

 訪日観光客が減少するリスクは「円高」「世界的な感染症の流行」「原発事故」「中国のバブルが弾ける」「北朝鮮関連」「外国人への排斥行為などの治安の悪化」などが想定されますが、一番可能性が高そうなのは「円高」による観光客数の減少でしょう。世界的に自国通貨の切り下げ競争になって来たときに、伸びが止まる可能性が高いです。

 「爆買い」?対応で安物を大量に売るビジネスモデルから,海外の「富裕層」をリピーターにしていく戦略が必要です。
                                                                        (11月10日)
 図1 対ドル(1ドル)対ウォン(1000ウォン)の為替レートと訪日外客数
 da
 ■リスク分散の為に「富裕層」を戦略的にとらえる
 
 個人消費が伸びないのは「不安」が消費を抑制しているから

 株価が高騰して好景気が続いている。といわれている割に個人消費の盛り上がりが見られない。なぜでしょうね。海外旅行客は円安を享受してかなりお得に日本を楽しんでくれているので、都市部の商業施設やホテルは一息ついていますが、7日の記事にあるように特に訪日中国人の消費スタイルが急速に成熟化していくなかで、商業施設側の対応も戦略が求められます。

 かつてバブル期でもすべての人が恩恵を受けていたわけではありません。それでもマーケットリーダーといえる層が複数存在し、高揚した気分の消費を牽引していました。「ニューリッチ層」とか「DINKS」(子供の居ない夫婦共働き世帯)、「ハナコ族」等々。
 現在、国内のマーケットリーダーはどんな層なのでしょう。

 厚生労働省の国民生活基礎調査による世帯所得の中央値(分布の丁度真ん中の値)は1993年、1995年では550万だったのが、2015年には428万円まで下落しています。これは団塊世代がリタイアして再雇用、再就職した結果年収が低下したという背景もありますが、世帯として可処分所得が縮小してきたことは間違いありません。
 年収2,000万円以上の高所得世帯は1.3%,63.9万世帯です。年代別には65歳以上が42.2%を占めており、地域では関東、東海地区に多いようです。(関西はここでもだめだめですね)

 ニッセイ基礎研究所がニュースレターで「パワーカップル」について分析しています。不動産業界で注目されているターゲット像で、もともとは2013年の「夫婦格差社会」で示された高学歴、高所得(世帯年収2,000万円以上)の「パワーカップル」と低所得の「ウィークカップル」の比較分析からきている言葉です。

 夫婦の合計年収が2,000万以上の世帯は11~22万世帯、全世帯の0.2~0.4%、共働き世帯の0.8~1.6%になります。もう少し枠を拡げて夫婦ともに年収700万以上の勢田うぃおパワーカップルとすると、25万世帯(全世帯の0.5%、共働き世帯の1.8%となります)夫婦tpもに、正規雇用で上場企業または公務員のイメージでしょうか。
 不動産業界のターゲットとなったのは高額マンションのローンが払える世帯という観点からなのでしょうね。

 保育所の待機児童の問題がここまで大きく社会問題になったのは、出産しても正規で働き続けないと世帯年収が激減するという切実な背景がありそうです。

 同レポートでは妻の年収や世帯金融資産が増えるほど経済的余裕感は強いが、これらと持ち家かどうかは必ずしも相関関係は無い。家を所有していることよりも、安定した収入や多くの金融資産があるほうが、経済的余裕感を高めるようだ。「使えるお金がある」という安心感が経済的余裕感につながる。と分析している。

 従来の富裕層研究では医者や中小企業経営者とその配偶者(専業主婦)とかDINKS(夫婦共働きで子供を作らない層)がわかりやすい家族像だったが、「富裕層のターゲットイメージ」は少し拡げる必要がある。
 確かに株価が高騰している中で株のオーナーの消費は活発化しているが、多くの中小企業の景気回復感は乏しい。(SCB産業企業情報11.7)資産家の多くも,バブル崩壊を経験しているだけに、内心の不安は隠せないでいる。それぞれのターゲットの「消費」を喚起するキーワードは一つでは無いでしょう。富裕層も多様化しています。

 百貨店などのアプローチが「従来の富裕層イメージ」に引きづられているように感じます。国内の富裕層を捉まえることは、海外の富裕層へのアピールポイントの発掘にもつながります。

 キャリアウーマンはどこへいった

 正社員でバリバリ働く女性が増えてきているにも拘わらず、「キャリアウーマン」の消費はどこに消えたのでしょうか。雑誌では「GU」と「しまむら」(ファストファッション)の着回し1週間コーデ等の記事が人気です。洋服にはお金をかけない、またはお金をかけたい洋服が無いということで百貨店に縁が無くなっています。昨日の記事で、若い女性も化粧品は百貨店で買うというレポートに思わず納得しました。身近な事例をみても、確かに普段洋服は百貨店で買わなくても化粧品は百貨店で購入していますね。
 
 百貨店やファッションビルもターゲットの意識や行動に関する研究を続けていかないと世の中の後追いになり商機を逃します。

                                                                                   (11月9日)
 ■波に乗るタイミングと乗り換えるタイミング~ダイヤモンドオンライン記事の化粧品戦争の明暗から
 
 銀座百貨店戦争の勝ち組と負け組~ダイヤモンドオンライン記事から

 インバウンドで賑わっている銀座の百貨店でも明暗が分かれているようです。

 ある時期までの「爆買い」と揶揄された大量の購入(転売や身内分の購入)が影を潜め、今売れている「高級化粧品」も購入のスタイルとしてが変わってきたそうです。観光客も日本人と同じく,対面で接客を受けて試して購入するようになってきたといいます。

 銀座の百貨店では「三越」と「松屋」が通訳や外国語で接客できる美容部員を配置して売上を伸ばしています。化粧品への注力は従来百貨店を敬遠してきた20歳代の日本人女性を呼び戻すきっかけにもなっています。

 一方「化粧品」の高い需要を取り込めていない百貨店、大型店が「負け組」と呼ばれています。
 旧プランタン銀座「マロニエゲート」は社員を減らしすぎて接客のレベルが下がったといわれています。化粧品はあるのですが、売れ行きは良くないようです。昔、数寄屋橋阪急から阪急系のモザイクとなっていた場所に建てられた「銀座東急プラザ」も「明らかに以前の高級品の爆買いを狙った」(別の百貨店業界関係者)8、9階のロッテ免税店は客の姿がまばらで、ロッテの撤退の意向までささやかれている。といわれています。

 ギンザSIXも「商品別の売り上げなどを公表していないため詳細は不明ながら、ブランド別に大きなブースで区切られた地下1階の化粧品売り場について、業界関係者の間では「全体的に外国人客は来ているが、地上から下ってくるエスカレーターから遠いブランドは苦戦している」「テナントが払う家賃が高過ぎて採算が厳しく、PR目的の出店と割り切っているブランドもある」などとささやかれており、オープン直後の“ご祝儀相場”後の実力が試されている。」厳しい状況だと報道されています。

 いつまでも続くはずがないとは」思うものの方向転換のタイミングが難しい?

 インバウンド、「爆買い」はいつまでもい続くはずが無いとみんな心の中では思っていながら、方向転換を図るタイミングをはかりかねていたのでしょうね。

 興味深いのは「負け組」(嫌な言葉ですね)と評される大型店は「百貨店」から業態転換した店です。好調なのは接客サービスという「百貨店」の強みを残している店ですね。

 まあ、これからも先の変化はわかりません。日経平均が高値をつけていますが、証券会社の海外担当者の言葉では欧米では「日本株」よりその他のアジア株の方が人気が高いようです。工業国としては伸びしろがあると判断されるようです。これから成長する付加価値の高いITサービス業も国際的に注目される日本企業はごく僅かです。

 国内外を含めて」自社の強みを活かして地道な顧客づくりを続けていくことが大事ですね。ITを活用した「合理化」「効率化」は必要ですが、「効率化した後」何を大事にするかは企業によって異なるのでちゃんと考えないといけませんね。

 人まねで無い事業計画を作り上げないと!

 最近。中小企業の経営者とお話ししていて思うのは「人的資源」の重要性です。

                                                                                        (11月7日)   
 ■サービス産業の生産性向上の課題~何に投資するのかの優先順位
 
 「ご当地リゾート」 アウトソーシング業者をマネジメントするノウハウをつくりあげる課題

 大阪のホテルラッシュについてずっと取り上げてきました。ハコを作るの簡単なのですが誰がどのように運営するのか?懸念を感じていましたが、宿泊特化型ホテルであれば、予約精算等はシステム化が可能ですし、清掃やリネン類はアウトソーシングの業者がちゃんといます。お客さんとの交流が売り物のホステル業態でない限り、積極の対応はマニュアル化できます。極端な話、社員1人で回せる業態です。(それでも人材は足りているのでしょうか?)

 問題は客室単価を少し上げた観光ホテル、リゾートホテルです。HISのホテルは「変なホテル」というブランドでロボットが接客することを売り物にしたりしています。当初は物珍しいのである程度それでカバーできるのでしょうね。観光ホテルの再生の事例ではフロントの係員が繁忙時はレストランの配膳を行ったり、「バイキング方式」の導入で配膳の人件費コストを抑えたりという効率的な人の稼働で利益率をあげています。基本的に「再生」の場合は居抜き物件でかつ物件を格安で購入するので改装投資をしてもペイするのです。

 ただ、均一価格の温泉ホテルでは無く高い料金を取ろうと思うとサービス人材の育成が必要です。

 連休に某「ご当地リゾート」を利用する機会がありました。バーブル時代に建設された豪華な建物は全館結婚式場のような内装です。古びてはいますが充分手入れされています。趣味は人ぞれぞれでしょうが…。

 このリゾートホテルの売物はレストランとスパ。残念なサービスはそのスパにありました。ホテル内の施設でかつ予約をいれていたのでお支払いは当然部屋につけてまとめて支払う気持ちでいたのですが、スパのフロント対応スタッフが、強固にその場での現金払いを主張して譲らなかったのです。お客様をご招待していたので、大変困惑しました。部屋に取りに帰ることすらダメで、そこで支払えの一点張りなのです。(接待は台無しになりました)結果的にお連れしたお客様に建て替えていただきました。
 その後、レストランでお支払いの時にそのことをクレームでは無くお話うした後で、お店からもフロントからもお詫びの連絡がありました。
 おそらく「スパ」ははっっきりと外部業者なのでしょうフロントスタッフにはホテルの施設としてのサービス教育が徹底されていなかったのだと思います。

 以前、ショッピングセンターのサービス研修のために「帝国ホテル」の人事部の女性にお話を伺ったことがあります。ホテルブランドを背負ったスタッフの接客へのi意識付けの訓練はすごいものだと圧倒されました。

 これからインバウンド客を拡大する為には,関西にも、もう少しグレードの高い,サービスがキチンとしたホテルが増えてくると思います。アウトソーシングスタッフの寄せ集めではホテルの「ブランディング」ができるほどのサービスが提供できるかどうか心配ですね。「サービス産業の生産性向上」と言えば人件費カットしか思いつかない経営者は淘汰されて欲しいものです。

 そういえば、百貨店の中に新しいファッションブランドがなかなかはいらなかった理由は若い子向けのブランド企業では「百貨店の要求する接客水準」を満たす販売員があまりいないということも理由に挙げられていました。

「感動するサービス」にhがそれなりの投資が必要です、日本の売り物は「おもてなし」だと言われていたことがありましたね。

                                                                                      (11月6日)

 「ご当地リゾート」は検索してみて下さい。マツコさんの番組で取り上げられていました。
 ■鉄道会社の生き残り戦略~高架下活用の宿泊施設、豪華列車の収益は
 
 南海電鉄高架下に宿泊施設

 鉄道の高架下と言えば倉庫や、駐輪場などの利用が多かったのですが、最近は商業施設の利用も増えてきています。南海電鉄も難波駅から新今宮までの高架下を「難波EKIKAN」プロジェクトとして飲食店やDIYショップ、クライミングジムなどの開発を進めてきました。来年2月をめどにゲストハウスを開業すると発表しました。
 1021㎡の敷地に個室3室、6人部屋12室、7人部屋4室を整備します。周辺では簡易宿泊所やゲストハウス、宿泊特化型ホテルが多く立地しているので立地にあった活用です。
 高架下では騒音や振動がさけられないので宿泊施設はなかなか難しかったのですが、技術的にクリアになったんでしょうね。

 高架下開発では阪神新在家のクラウドファンディングを活用した飲食店の開発や,東京の東急の中目黒高架下のように「飲食店」を設置するケースが多いのです。新橋の乃高架下のように騒音や振動も又「味」がそれなりの味になるからでしょうね。

 今は「円安」なので訪日観光客が増加していますが、この好況のうちに駅や街の案内での外国人対応を整備して外国人富裕層にリピーターになっておいてもらわないと、また円高になると大変なことになります。
 観光ルートのメニューとして十三から淀川を通って湾岸エリアのUSJまでの船便の開発を近畿地方整備局が実験したようです。日経の記事ではカジノが来ないと背負い率しないような書き方がされていましたが、別にカジノが無くても夜景が魅力的なルートになると思いますよ。清掃工場のエントツのタマネギとか…。アートの力は確かにあるなと思います。(著名な芸術家がデザインした清掃工場なのです)

 豪華列車の採算性は?

 本日の日経にはJR各社が運行する豪華列車の投資効果についての記事が掲載されています。各列車も高額料金にも拘わらず人気を集めていて予約は一杯ですが、当初の狙いである沿線開発には繋がっていないという記事です。
 JR東日本の「トランスイート四季島」は百億円規模の投資に対して利益貢献は限定的だそうです。
 何年かして車両が老朽化したときに改装コストが負担できずに廃止されていくんでしょうね。特にお金持ちの外国人を中心に富裕層にしっかりお金をおとしてもらう仕組み作りが大事ですね。

 豪華列車もマスコミで話題になったものを追随するブームのひとつだったんですね。(これを書いている今、ヤフーから有名ホテル半額セールのDMが来ています)
JR西日本の「トワイライトエクスプレス北斗星」も人気を集めていた列車は老朽化した時に廃止になりました。(今は別の企画列車が運行されています)

 そういえばしばらく前まで地方創生ブームで広告代理店さんが地方行政からプロモーションやイベントを沢山請け負っておられましたが、最近はブームが収まってというか地方行政への補助金が減少したんでしょうね。地方自治体向けのコンサルタントやポータルサイトを運営されていた(株)自治体ドットコムさの倒産のニュースで公共事業の予算が縮小されたことが売上減少の理由としてあげられていました。

 その時のブームに乗っかるのはある意味必要なことですが、事業性については厳しく検証しなければいけませんね。

                                                                    (11月2日)
 ■アメリカ村「トムズハウス」跡地のリーヴァイス出店と御堂筋の「wホテル」開業
 
 トムズハウス解体から1年

 アメリカ村のビッグステップの東隣のトムズハウスはかつてはピエロのお面が看板代わりになるなど、アメリカンカジュアルの香り漂う商業ビルでした。1983年の開業ですから、ビッグステップ開業1973年より随分前からの施設です。まだビッグステップは南中学校だった頃です。東西に走る周防町通りの御堂筋を超えた東側が「アメリカ村」に対比して「ヨーロッパ通り」と呼ばれ始めたのもこの頃です。
 「ブルータスビル」が開業したのが1989年、タワーレコードが開店したのは1990年。大手資本の開発はこの頃以降で、個人店舗が多かったサブカルチャーの街だった頃の大型店?(1,261㎡)でしたね。

 昨年解体工事が行われて跡地に「リーヴァイス」のビルが10月7日にオープンしています。アメリカ村のイメージにあった開発ですね。まだ見ていませんが。
 
 今はもう残念なテナントビルになっているブルータスビルは「エンポリオアルマーニ」や「オールドニュー」(カフェバー)など東京的な感覚でアメリカ村には全く会っていなかったので、やはり地域イメージというのは大事な要素です。(当社の「新なにわ考現学2015」をぜひビジネスにご活用下さい。トップページから無料ダウンロード無料ダウンロードできます)

 積水ハウス 「Wホテル」を御堂筋に

 スターウッドホテルグループの高級デザインホテル「Wホテル」が2021年に開業するようです。場所は難波神社の南のブロックで御堂筋に面しています。本町にスターウッド系の「セントレジスホテル」を開業している積水ハウスが開発します。

 ビルの高さは100㍍を超える見通しで、「(仮称)W Osaka」の客室数は200室超。低層階にはレストランなどの導入も検討している。

 ただの宿泊特化型ホテルでは無く超高級なデザインホテルです。日本ではみなとみらいに出店計画がありましたが、流れました。

 相変わらず安物の宿泊特化型ホテル計画が目白押しの大阪にあって、本当のビッグニュースです。

 円安が定着して、今の日本はかなり「お安く楽しめる」観光地として人気を集めています。海外のお金持ち向けのハイグレードなホテルが不足しているにも拘わらず安物のホテルが量産されているミスマッチに一石を投じるモノでしょう。

 外資系高級ホテルブランド「W(ダブリュー)ホテル」が、大阪・心斎橋の御堂筋沿いに2021年にも進出する見通しとなった。日本で初めての出店となる。宝飾などの高級ブランド店が軒を連ねるエリアで訪日外国人客も多く、周辺は一段とにぎわいそうだ。

 Wホテルは、世界的ホテルチェーンの米スターウッドホテル&リゾートが展開しており、米国やシンガポールなどにある。洗練されたデザインが特徴で、宿泊特化型ホテルとして若い世代に人気が高い。

 積水ハウスが、現在は駐車場として利用されている約2500平方メートルの敷地に、高さ100メートル超の高層ビルを建設し、誘致する。低層階には高級レストランなどを入れることも検討している。客室数は200室を超え、1泊数万円程度の価格帯を想定している
。         
                                                                           (読売新聞10月30日)    

 ターゲットは日本人ではありません。だからこそ出店が決まったのでしょうね。
                                                                                           (10月31日)
 ■エリアと業種を絞って差別化に成功した不動産事業者~テンポイノベーション
 
 東京の飲食店居抜き物件に集中し差別化を図る「テンポイノベーション」 東証マザーズに上場

 飲食店は開業数も多いが、廃業率も高いと良く言われています。図1の金融公庫の廃業率を見ても飲食店。宿泊業の廃業率がダントツです。

 利用者の視点から見ても飲食店の入れ替わりは結構多いですよね。 オフィスや住宅に比べて飲食業の賃貸者はかなりの頻度でいれかわります。厨房施設の中古品の売買業者さんも結構なビジネスになっています。

 一般社団法人証券リサーチセンターが10月27日に発表した新規上場会社(東証マザーズ)のレポート「店舗イノベーション」を紹介されています。

その事業内容は

店舗物件を不動産オーナー様から賃借し、飲食店テナント様に転貸する、店舗専門の転貸借事業です。
不動産仲介業や不動産管理業ではなく、また住宅でよくある建物を建築をして一括借り上げをするサブリース事業とも全く異なる事業です。
(同社HPより)  http://www.tenpo-r.co.jp/business/index.html へのリンク

 テンポイノベーション(以下、同社)は、東京都を中心に飲食店向けの店舗物件に特化した店舗賃賃事業を展開している。同社の店舗賃貸事業とは不勣産オーナーから賃借した物件を、出店を希望する飲食店経営者(以下、店舗出店者)に“転貸"するもので、自社では物件を保有していない。
一般的な案件については、1)店舗物件の情報収集を行い、2)物件の調査を経て候抽物件を絞りこみ、3)不勤産オーナーと賃貸借契約を締結し、4)契約した店舗物件への出店希望者を募り、5)希望者からの申し込みを受けたのちに、与信審査を経て、6)転貸借契約を締結し保証金等の契約金を受け取るというのが流れである。


 地域を限定し担当社員を固定することで地域情報をよりきめ細かく把握できます。紹介のステップがスピードアップされます。オーナーにとっても「飲食店」への賃貸は家賃滞納や設備関係のトラブルも多く、本来はあまり扱いたくない傾向にあります。キチンとした上場企業が責任を持って借り上げてくれることで運営の安心感もあり、空きテナントの補充も心配しなくても良くなります。居抜きを活用することで出店者の初期投資も軽減されます。

 東京地区に限定してスタートしているところが重要です。いきなり主要都市に拡げたくなりますが、より深く地域情やオーナー情報をつ噛むためには「顔の見える関係づくり」が差別化の大きなポイントになります。


 飲食業に関しては大手のチェーン店舗とともに、人手不足を背景に家業的な個人店舗も増えていくと見ています。個人事業主に対して様々なサポート事業が展開できそうです。面白いところに目をつけていますね。

                                                                     (10月30日)
  図1 業種別廃業状況(2015年末時点) 2011年に存続していた企業のうち廃業した企業の割合
  uy1
「新規開業パネル調査」 政策金融公庫 2016年12月28日
 ■「大阪」からときめきが失われた、誰も大阪の未来を語らなくなった
 
 (今日の記事はただの日記です)

 当社は小さいですが、「大阪」「関西」にこだわったシンクタンクとして生まれました。前職から考えると40年前後、そのスタンスは変わりません。関西でマーケティング企画やシンクタンクとしてやっていくのは大変です。大変だからあまり競争相手もなかったともいえます。
 大阪のイメージ調査「新なにわ考現学2015」もどこからもお金をもらわずに自費出版しました。無料で配った資料はあいこちで活用していただいているようです。(直接はきいていませんが)

 ずっと大阪をベースに大阪をウォッチングしていて感じる事ですが、「大阪の発信力?」は高まって全国放送で取り上げられる頻度は高まり、沢山の観光客が訪れてくださっているにもかかわらず、「大阪の未来」について熱く語る雰囲気はなくなってきました。
 おそらく発信力を高めた「都構想」を巡る対立以来、まず「敵」と「味方」を分断する空気を生んだことがきかっけでしょう。大学の先生や文化人があまり発言しなくなりました。

 関西の財界や文化人が「大阪」について論じなくなりました。へたに「敵」と認定されるとどんなとばっちりをくうかわかりません。全く。

 大阪のメーカーが東京にシフトし、地方の経済団体の中心がインフラ企業になってきたことも背景にあります。エネルギーや鉄道と言ったインフラ企業も「競争」が「自由化」されてはっきりと企業収益に結びつかない動きは全く無くなっています。(収益源も首都圏などより収益の上がる他の地域へシフトしていますからね)


 万博誘致、カジノ誘致、なにわ筋線整備など大きなプロジェクトが掲げられていますがあまり住民には関係ない動きですね。
ホテルラッシュで地価が上がることは結局地元の商売をしている事業者の賃料をあげることになります。心斎橋筋商店街はドラッグストアとファストファッションの街になっています。


 当社が創業した頃「うつぼ公園」の脇には90歳のじいさんがやっている蒸し寿司が名物の「寿司屋」がありましたが、今はもうありません。宿泊特化型のホステルが増え外国人観光客の姿も増えてきました。

 三井不動産S&E研究所が紹介しているシアトルのサウスレイクユニオンの事例をみて、都心居住と新しい産業誘致について考えさせられました。まちづくりでおえばポートランドが良くととりあげられますが、都心地区にマゾンの本社を誘致したシアトルは都心居住を好むミレニアムル世代を呼び込む歩いて楽しいまちづくりを行っています。シリコンバレーは車で無いと移動出来ませんし、住宅地が高騰してバランスが悪いのです。コンパクトなまちなかに仕事と娯楽、レストラン、ショッピング施設が集積している街は優秀な若い世代を集め、グーグルやフェィスブックの本社も移転してくるようです。そんな街になればいいなと提起してきたつもりです。

 タワーマンションや宿泊特化型ホテルが増えてもそこに魅力的な働き場所がないと街は続きません。大阪の若い子は「カジノ」で働きたいのでしょうか?

 大阪市民がそれを選ぶのなら、当社も「大阪」にこだわる理由は薄れてきました。まあ、当社は個人商店なので、気力が続く限り持ちこたえられますが、以前の会社のように数十人の社員を抱えていれば、続けられないでしょう。(その対策からの東京進出で失敗しましたが)
 
 「うめきた」「OBP~京橋開発」「中之島開発」には期待していますので、頑張って下さいね。
                                                                         (10月27日)
 事務所の向かいの木造家屋の解体が始まって、京町堀も新町や堀江のような商業地区になっていくのだなあと感じています。
 ■千葉駅前の通行量が27%アップ~駅ビルとそごう千葉店の別館開業効果
 
 千葉駅ビル「ペリエ千葉」9月7日開業

 千葉駅には昨年11月「エキナカ」商業施設がオープンしていましたが、今年の9月に駅ビル「ペリエ」本館をオープンしました。千葉銀総合研究所が通行量調査を行った結果。休日では平均27%増の5万人強、平日では4%の増加だったそうです。
 そごう千葉店では別館の「オーロラモール ジュンヌ」を開業させていて体験型の施設で親子連れの来店が増えていると言うことです。

 ペリエ千葉は、地上7階・地下1階に延床面積約7万3800m2を展開。うち駅施設・コンコースは約1万6400m2、エキナカ約8000m2、駅ビルは約4万9400m2。駅ビルのうち、売場面積は約1万4500m2となっている。
2011年11月から駅の建替え事業を進めており、駅ビルに先駆け、昨年11月にエキナカ商業施設が開業、今年4月にはエキナカ商業施設を増床していた。
2018年夏以降に、地下1階と1階をリニューアルし、駅ビル全体のグランドオープンを迎える予定で、地下1階はバラエティに富んだ店舗構成で商店街的なにぎわいを目指し、地下1階はフードフロアを展開する計画だ。
千葉駅周辺では、千葉PARCOが昨年11月末に、今年3月には三越千葉店が、相次いで閉店している。
(流通ニュース9月4日)

 千葉市としては大型店の閉店で暗いニュースが多かったのですが、駅ビルとそごうがタッグマッチを組んで新しい人の流れをつくることに成功しているようです。

 百貨店閉店の時に必ず理由として語られる「EC市場の伸び」「郊外店との競合」はただの言い訳であって、本質的な課題ではないことがここでも明らかになっています。

                                                                                    (10月26日)
 ■百貨店が消えた街に残る埋み火
 
 百貨店が撤退しても残る百貨店需要 

 西武百貨店が撤退した茨城県つくば市には、まだまだ百貨店へのニーズが残っているようです。地元の京成百貨店が小規模な店舗での再開を狙っています。

 本格的な夏の訪れを前に、県内でも百貨店による「お中元商戦」が始まった。2月末につくば市の西武筑波店が閉店し、“空白”となった県南地域に、県内唯一の百貨店となった京成百貨店(水戸市泉町)が販路を拡大しようと攻勢をかけている。京成百貨店は西武筑波店が入っていた場所に出店することも視野に入れ、県南地域に「京成ブランド」を浸透させたい考えだ。

 京成百貨店は9日から西武筑波店が入居していたつくばクレオ(つくば市吾妻)の1階に「お中元ギフトセンター」を開設。本店で扱う商品をつくば市でも注文できるようにした。担当者は「つくば市周辺はショッピングセンターなど、買い物をする場所は多いものの、百貨店の商品を買い求めている人が多い」と県南地域の消費動向を分析しており、「県内唯一の百貨店として、それに応えていきたい」と意欲を見せる。

 西武筑波店の閉店を受け、京成百貨店は先月に3日間、婦人服や紳士服を中心とした特別販売会をつくば市内で初めて実施。地理的に遠く、なじみの薄かった県南地域の買い物客に京成ブランドを認知してもらい、買い物客を取り込む狙いがある。

 決起集会後、斎藤貢社長(59)は記者団に対し「今後もつくば市で定期的に催事を行い、知名度を上げていく。旧西武筑波店のワンフロアに出店できないかも検討している」と明らかにした。

 一方の西武側は閉店後も、お得意さま向けに西武池袋本店(東京都豊島区)へのチャーターバスを用意して、買い物のサポートをしている。今後も年に数回実施していく方針で、店舗がなくても客が離れないよう工夫を凝らしていく。
 (産経新聞 関東版6/9)

 ECでも郊外SCでもカバーしきれない需要は確かにあります。つくば市は研究学園都市で住民層の質も高いですから余計それが色濃く残っているのでしょう。

                                                                                        (10月24日)
 ■近畿圏で消えていった百貨店~「そごう」「西武」が残した爪痕
 
 「西武」「そごう」グループの百貨店が消滅している

 バブル期前後の出店数が多かったのが「西武」「そごう」の両百貨店でした。図1の百貨店で赤のハッチングをされている「消えた百貨店」の多くは「西武」「そごう」です。正直、出店時から「ここに百貨店を出すの?」という立地が多かったです。
 都心部の百貨店は今回分析対象にしていませんが、「心斎橋そごう」の出店についても、大阪地区での「そごう」のブランド力への「過大評価」が気になっていましたが、あまり「聞く耳」を持たれなかったので自業自得でしょうか。

 枚方地区での百貨店の消滅についてはまた、しっかりと分析しておく必要がありそうです。

 地元百貨店では和歌山市の繁華街「ぶらくり町」にあった「丸正」のリニューアルの失敗による破綻が注目されます。外商も持たなかった店ですし、地元の商店街との連携もいまひとつなので「地元の老舗」とはいえ地域に根付けなかったのでしょうね。
 姫路の「ヤマトヤシキ」はラオックスに買収されました。正直、いつ潰れてもおかしくない売上でしたが不動産投資会社に救われて存続してきました。この店は地域商店街との連携にも熱心でしたし、地元の商店街も元気な方でしたからなかなか簡単には倒れなかったのでしょうね。

 首都圏を分析すると結構「百貨店」が消滅した街が多いのですが、近畿圏では苦し店が多いとは思いますが、簡単に「潰れない」のが興味深いですね。

 1990年頃に噂のあった百貨店出店計画

 堺市  「西武百貨店堺」(南海本線堺駅)33,000㎡、「西武百貨店中百舌鳥」(40,000㎡)※「そごう」という噂もありました。
 茨木市「茨木そごう」(今のイオン)85,000㎡
 西宮市「三越西宮」26,000㎡
 姫路市「髙島屋」(イオンのSCに出店検討の噂)
 明石市「大丸」20,000㎡
 大津市「髙島屋」11,545㎡

 この頃はまだバブルの余韻が残っていたのですね。

 大阪都心では「三越」が心斎橋とか梅田のヨドバシの場所とかにアプローチしていました。ヨドバシの国鉄用地は「パルコ」も狙っていましたね。あそこは一等地ですからね。

 噂にもなりませんでしたが、京橋のOBPとかJRの駅に外資系の百貨店(ブルーミングデールスとか)を誘致しようという話もしていましたから、やっぱり気分はバブルだったんですね。(そういえば、関西ではバブルの時にはしゃいでいたのは証券マンぐらいですが、あの当時東京の「商社」系の人々が異常にはしゃいでいましたね。ディスコとか「空間」とかを「プロデュース」してぶいぶいいわせてはりました。末端へのトリクルダウンは当時もありませんでしたよ)

                                                                                  (10月19日)
 図1 近畿地区郊外・地方百貨店の売場面積と売上(1990年)              図2 近畿地区郊外・地方百貨店の売場面積と売上(2016年)
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 データは有価証券報告書、百貨店調査年鑑、繊研新聞記事から抽出
 図1の赤の店舗は2016年現在閉店している店舗  図2の緑の店舗は1990年にはまだ無かった店舗 「北花田阪急」は現在閉店している。

図3 人口の増減(1990年~2015年) 国勢調査
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 ■エリア別好まれる外食業態比較~関西、東海、首都圏
 
 居酒屋業態の市場規模は首都圏で440億円/月と最大

 人口の多いエリアなので当然ですが、外食市場のシェアを比較した選好度(図2)でも関西や東海圏より首都圏で高く支持されています。

 その他に首都圏で特徴的にシェアが高いのは
 「フレンチレストラン」「アジアン料理店」「その他各国料理店」「スナックナイトクラブ」「牛丼カレーなど一品料理専門店」などです。元になった調査では性別、年齢等は偏りの内容に按分されていますが、単身者の多い首都圏の特徴がでているように思います。

 名古屋を中心とした東海圏では
 「和食料理店」「焼肉・ステーキ・ハンバーグ」「すきやき・しゃぶしゃぶ・おでん」「ファミリーレストラン・回転寿司」などが好まれています。
焼肉と言えば関西というイメージがありますが、上場している外食産業で言えば「ステーキ宮」「カルビ大将」などを経営している(株)アトムや、「あみやき亭」などを経営している(株)あみやき亭、「焼肉キング」の(株)物語コーポレーションは名古屋に本社があります。
 しゃぶしゃぶでは(株)木曽路も名古屋が本社です。意外ですが多くの人が日常的に利用する業態から上場企業がうまれてきたのでしょうね。

 関西はお好み焼き・鉄板焼きに特徴があります。他の地域の人はあまり食べはらへんのでしょうね。(広島県は調査エリアにはいっていませんし)

                                                                                   (10月17日)
 図1 エリア別業態別外食市場規模 2017年8月 (億円)                   図2 エリア別の外食業態選好度  全国平均を1.00として業態シェアを基準化
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 「外食市場調査」2017年8月 ホットペッパーグルメ外食総研 (株)リクルートライフスタイル  より作成 詳細は原データをご参照下さい

 ■つくばエクスプレス開業と「柏」「松戸」の乗降客数
  
つくばエクスプレスが変えた人の流れ


 2005年8月に秋葉原からつくばまで首都圏北東部を縦貫する「つくばエクスプレス」が開業しました。秋葉原からつくばまで最短45分で結ばれました。

 JR常磐線の混雑緩和を目的としたものでもあるので、JRと新柏駅を合わせた乗降客数は1日あたりにして5万人減少しています。10月2日の記事にあるようにその中で「柏髙島屋」は売上を維持しています。

 一方、1日阿たらいの乗降客数はほぼ横ばいで減少していない「松戸駅」からは「伊勢丹松戸店」が撤退することが決まっています。つくばエクスプレス開業による人口増をあてこんだ新しいショッピングセンターに売上を奪われたということになります。

 国土交通省の分析ではつくばエクスプレス駅周辺では夜間人口が増加しています。新住民の需要を柏の髙島屋と髙島屋SCは吸引することができていて、松戸ではたとえ伊勢丹であっても新住民を惹きつけることができなかったということでしょう。

 ちなみに、つくばエクスプレス沿線の「流山おおたかの森SC」も髙島屋系の東神開発が運営しています。

 他の系列のデベロッパーのSCでは輝かないが、自社系列のSCであれば百貨店業態が活きる?

 以前にも触れましたが、いわゆるSCの核店舗として出店した百貨店はあまりうまくいかなくて退店することが多いのですが、自社、自社系列のSCに出店した百貨店は比較的うまくいくことが多いですね。

 二子玉川、柏、新宿タカシマヤ、阪急西宮、トキハわさだタウン、天満屋、京阪くすは店、等々。

 あべのハルカス店が好調な近鉄百貨店は不振な郊外店はSCをミックスしててこ入れされるのでしょうね。過去に「近鉄ハーツ」や「あべのhoop」など成功例もありますしね。
 阪急阪神が運営する「西武高槻」もグループのSC運営のノウハウがいかされるでしょう。

 駅は1日何十万人の人の流れがありますが、ほとんどは朝と夕方の移動者です。人の多さがお客様には直接繋がりません。

 「衰退しているように見えない、駅の乗降客数が変わらない街」でも、「百貨店」が成立しなくなることもあるのだなと「松戸」を見てあらためて考えさせられます。

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 (追加)
 ポテンシャルがあって百貨店が無くなっている「街」では必ずそれにかわって「役割」を果たす業態が生まれています。(八王子の駅ビルや川崎の都市型SCなど。松戸市にはそれは見当たりません。「松戸商工会議所」さんも真剣に考えないと、街が衰退していきそうですね。
 図1 柏駅1日あたり乗降客数推移
 wq1 ※各社発表値 乗車客数を2倍して「乗降客数」とした
図2 松戸駅 1日あたり乗降客数推移
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 図3 野田線 江戸川台、初石、豊四季から山手線神田・品川までの利用経路の変化」(定期客)
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 ■「大阪」周辺の動き~星野リゾートは新今宮にどこまで本気か?
 
 しばらく、百貨店と都市について分析するのに夢中になってしまいまして「大阪」周辺の話題に触れていませんでした。例え国政選挙中であっても大阪は動いています。

 「星野リゾート」JR新今宮駅北側のホテル開発についてホテルブランドの発表がありました。

 星野リゾートは、JR大阪環状線新今宮駅前で2022年に開業を計画しているホテルを、ビジネスホテルと対抗できる価格帯にする方針だ。温泉施設などを置かない「OMO(おも)」という新ブランドを使うという。
 11日、星野佳路代表が大阪市内で会見し、「観光客は、温泉旅館からビジネスホテルに移っている」と説明した。OMOは、「星のや」などほかのブランドより宿泊料金を抑えた都市型ホテル。18年に開業予定の北海道・旭川では、1泊1万円台を予定している。
 ホテル内のレストランも最小限にとどめ、周辺のレストランを紹介するサービスにも取り組むという。
(朝日10月12日)

 OMOブランドは館内サービスの充実度が0~9までランク分けされていて、館内サービスがどこまでのレベルかは不明ですが「ホステルタイプ」も可能性はあります。今の所中級クラスの宿泊特化型のホテルになる可能性が高そうです。「周辺の飲食店との連携を深める」のはいいのですが、確か春の発表では
 「星野リゾートは今年3月、大阪市から約1万4千平方メートルの土地を約18億円で取得した。建設するホテルは温浴施設やレストランを備え、20階建てで608室を予定。新今宮駅のホームから見える場所に、ホテルと一体になった緑地を整備するなど、地域の拠点としてにぎわい創出を図る。」(産経4月25日)としていましたから随分トーンダウンした内容になっています。

 周辺レストラン?串カツ屋さんや洋食グリル、あるいは「鯛よし百番」ですか?安くてうまい店もありますが、正直、「そうで無い店」の方が多いですよ。「リゾート」ではなくインバウンド客を中心とした宿泊特化型ホテルなので、現状の地域を変えるほどのインパクトはないでしょう。(地元の期待は大きいのでしょうがね)「星野リゾート」という社名で勘違いしてはだめですよ。

 星野リゾートは南港のハイアットリージェンシーを取得しています。

 星野リゾート・リート投資法人は、客室数480室のハイアットリージェンシー大阪(大阪市住之江区)を取得する。GCREF JapanⅠ特定目的会社(東京都中央区)から160億円で取得する予定だ。28日に契約を結んだ。物件の引き渡しは11月1日を予定している。星野リゾートグループは、ハイアットリージェンシー大阪の経営法人であるGCP Hospitality Japanを11月1日に完全子会社化する予定で、同社が引き続きホテルを運営する。(建設ニュース 2016年10月8日)

 おそらく、本命はIRの整備される予定の北港地区への出店でしょう。ラスベガスのホテルが意外に安いのは,お客さんを自社のカジノから逃がさないためです。どのような運営になるかわかりませんが、基本的に「身ぐるみはぐ」まで囲い込むのがビジネスモデルですよ。参入の余地はあるのでしょうか?

 心斎橋のホテルも購入

 星野リゾートのリート投資法人は投資会社なので、運営はインバウンド客の誘致に強いコアグローバルマネジメント社が行います。

「クインテッサホテル大阪心斎橋」の規模は、S造9階建て延べ2964平方㍍。客室数は132室。設計はデルフィ、施工は日本建設が担当した。賃借先は、コアグローバルマネジメント。所在地は、大阪市中央区東心斎橋1-8-21の敷地791平方㍍。ことし8月に竣工した。

 (追加)
 星野リゾートさんではありませんが、毎年大阪城での巨大ビニールプールで稼いでおられるHISさんが、心斎橋に「変なホテル」を2つも開業される予定だそうです。

 旅行大手のエイチ・アイ・エスのグループ会社、H.I.S.ホテルホールディングス(東京都新宿区)は、ロボットなどを活用して世界一の生産性を目指す都市宿泊型ホテル「変なホテル」を12月以降に日本国内10カ所で開業すると発表した。このうち、関西は大阪・心斎橋2件と京都1件の計3件で、いずれも約100室のホテルとなる。同社は2020年12月までに国内外で100カ所(1万4000室)のホテルを所有・運営する計画を掲げている。(建設ニュース10月17日)
 
 大阪が「商売の場」として注目され投資していただくのはありがたい話です。地域に沢山お金を落として下さいね。

 ヒルトン大阪改装

 大阪市北区のヒルトン大阪(フレデリック・ルクロン総支配人)は5日、1986年9月の開業以来、最大規模の改装を行うことを発表した。三つのレストランと二つの宴会場を新設し、35の客室を追加。総工費約28億円を投入し、来年7月の完了を予定している。
全面リニューアルする2階に新設予定のオールデイダイニング(イメージ)
 今年12月末までに10階フロアに客室を追加し、来年から3階フロアに約200平方メートルの宴会場を二つと、規模を拡大したエグゼクティブラウンジなどを完成させる。
 2階フロアは全面リニューアルを行い、116席のオールデイダイニング▽64席のグリル▽90席の日本料理-のレストランを新設。日本酒のバーカウンターやワインルームも追加する。
 ルクロン総支配人は「これまでずっと懇意にしてくださったお客さまを大切にする一方、新しい世代を魅了させるような革新的な進化が必要。食文化の宝庫である大阪のホテルとして、誇りを持って新しい食体験を提供していきたい」と話した。
(大阪日日10月6日)

 中之島の「コンラッド大阪」も開業後落ち着いてきましたから、本格的に改装に着手するようです。立地がいいですからね。「ヒルトンプラザ」も改装して下さい。免税店がいいと思いますよ。というのは…

 近鉄百貨店今期純利益上方修正

 今日の日経新聞に「あべのハルカス近鉄本店」の純利益が予想を2億円上回る純利益をあげたそうです。「化粧品を中心で子供服や婦人服を買う人も増えている」ということです。良かったですね。
 当社としては基本的に「顧客」という資産をもている老舗百貨店が目先の「インバウンド客」に影響されてぶれてしまうことには反対ですが、「あべのハルカス」に投資した「近鉄」には「観光客需要」をもっと掴んで欲しいなと考えていましたから、素直にお喜びも申しあげたいと思います。
 ただ、インバウンドの恩恵を被っていない郊外店の建て直しは急務です。「西武」でしたら近鉄沿線の「八尾」から撤退可能ですが、地元の百貨店としてはななんとか,他の業態を組み合わせても残って欲しいと地元は思うでしょう。「百貨店が消えた街」を分析して思ったのですが、関西地区の地元百貨店はなかなか合理的な判断で撤収しづらいのが良くわかるような気がします。

 その他の動き

 茶屋町の東急不動産の開発は低層部が商業、中高層部がホテル、オフィスになることが発表されました。茶屋町も良くなって欲しいですね。

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 ■百貨店が消えていく街と残る街②~千葉・東京・神奈川
 
 首都圏では市川市、松戸市、八王子市、川崎市、そして来年百貨店が無くなる松戸市は人口ボリュームとまあまあのポテンシャルはある

 周辺の百貨店のある都市と比較してそれ程遜色はないのに、何故百貨店が成り立たなかったのか?その不思議がこの分析のシリーズの出発点でした。

 九州、四国で百貨店が無くなった街は、戦前から戦後に羽振りの良かった地場産業が衰退してきたことが背景にあることが理解できます。北海道の都市もそうでしょう。東北のいくつかの百貨店は、活路を当時羽振りの良かったGMSの力を借りて再生しようとして失敗した店が多いです。いくつかお手伝いしましたが、GMSチェーンストアと百貨店では明らかに企業文化が違います。勢いのあった頃はそれなりに頼もしく見えても「顧客」「取引先」との関係づくりの発想が全く違うのです。

 百貨店が立地する中心市街地が衰退傾向にあったため、、郊外の大型SCへの出店に活路を求めた百貨店もあります。アメリカのショッピングセンターでは百貨店が核になっている所も多いので、真似したくなったんでしょうね。(例えば船橋にあったららぽーとでは「そごう」と「ダイエー」が2つの核となって店内の回遊を促進するといわれていました)ほとんどが失敗しましたね。
 数少ない成功例は百貨店自身がデベロッパーになった大分の「トキハわさだタウン」とか松本の「井上」ぐらいでしょうか西宮ガーデンズの西宮阪急やKUZUHAモールの「京阪百貨店」もほぼ身内が運営しているようなものですしね。二子玉川高島屋も子会社の東神開発の運営ですね。

 千葉県で百貨店が無くなった都市

 市川市は人口は40万人を超えていて、ポテンシャルもそこそこ高い文化都市です(そういえばこの街については某社のSC開発の時に調査しました)。ただ、東京のベッドタウンで流出率が高いのがネックだったんでしょうか?商業吸引力も低いですしね。5,000㎡ほどの「松坂屋」と「プランタン市川」(18,000㎡ 90年には113億売っていました)まあこの顔ぶれでは撤収は早いですね。
 木更津市は人口は少ないですが、アウトレットが出来て商業吸引力は高まっています。ここには「木更津そごう」(19,000㎡、売上185億円/90年)がありました。最近では地価も上がってきて人気のエリアですが,、当時ここに出店を決めたのは「そごう」ならではでしょう。茂原市も同様です。「茂原そごう」(14,000㎡)。もともと何でこの街にでたのと問い詰めたいところです。(ほとんどの百貨店のお手伝いをしましたが、「そごう」さんとは全く縁が無かったです。)

 来年百貨店が無くなる、松戸市はポテンシャルはそこそこでが人口や商業の流出が多いようです。「伊勢丹」なのにな何で逃がすの?と思いますが、市の援助を否決した市議会の判断ですから仕方ないですね。米子髙島屋は売場と駐車場の一部を行政に引き渡して継続しています。松戸市ではもう伊勢丹クラスのブランドは誘致できません。つくばエキスプレスがらみで人の流れが変わってきたのでしょうね。

 同じようにそこそこポテンシャルがあるのに何故百貨店が無くなったのかと思える「八王子市」「川崎市」ともに商業吸引力は低いです。低いから百貨店が無くなったのか、百貨店が無くなったから低いのかどちらが先でしょうね。

 ただ、八王子市も「そごう」あとに駅ビルができていますし、川崎市も「ラゾーナ川崎」があります。いわゆる郊外型のSCとは違う複合商業施設が「百貨店」が果たしてきた機能を新しい時代に合った形で展開しています。

 「百貨店」自体が時代に取り残されている側面は確かにあります。繁華街の状況から「百貨店」が続いていることが不思議な街が関西にもいくつかあります。(企業の理屈で言えば、本当は撤収したいのでしょうが)そこまでして「百貨店」を残したい「気持ち」はどこから生まれてくるのでしょうね。

                                                                                (10月12日)

 
市川市、木更津市、茂原市、八王子市、川崎市は百貨店がなくなった街、松戸市は百貨店がなくなる事が決まっている街
県庁所在地である千葉市、東京23区、横浜市は比較対象から省いてある。比較対象は百貨店協会のリストで百貨店が存在する街。

図1 人口の比較~昼夜間人口比が高いほど流入大                     図2 立地のポテンシャル ※武蔵野市は吉祥寺がある街
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図3 人口1人あたり小売り販売額~ポイントが高ければ商業吸引力が高い        図4 所在地マップ
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 ■百貨店が消えていく街と残る街①~水戸市・宇都宮市・つくば市
 
 都市型商圏のつくば市は新しい郊外SCの影響をうけやすい?

 「郊外SCへの流出」「ECの拡大による店頭消費の縮小」~百貨店の閉店ニュースの度に紋切り型の、そのような報道がされるいことが多いですね。同じような条件にあって、売上が縮小しても何とか踏みとどまって百貨店が残っている都市と、都市のポテンシャルがありながらあっさりと百貨店がが撤退する都市があります。

 基本的に人口減少、そして特に地方経済の疲弊が進んでおり百貨店は「淘汰」(嫌な言葉ですね)されるのは仕方ないにしても、百貨店が残る都市はどんな都市なのか分析してみたいと思います。もちろん「百貨店が無くなる=中心市街地の衰退=悪しきこと」…ばかりではないです。また、百貨店事業者の経営方針なども影響するのですが街の文化的アイデンティティにも係わる共通項が導き出せれば面白いかなと考えています。

 地域によって事情は違うかも知れませんので「北関東」から始めてみます。

 茨城県には1990年頃には百貨店が6つありました。今は「水戸京成」と百貨店では無いですが「丸井」だけになりました百貨店がかつて在ったけれど今は無くなっている土浦市とつくば市と比較しています。人口は夜間人口も昼間人口も県内一です。図3の商業吸引力も高くなっています。かつてはGMS系の「ボンベルタ伊勢甚」(イオン系)「西武」(西友が運営していた百貨店)などがあったのですが、今はもうありません。茨城県内では人口は少ないですが、つくば市の学歴水準、所得水準が群を抜いています。
 同じ県内でも立地が離れており、つくば市は都市型の商圏です。

 つくばエクスプレスの開業で秋葉原に45分という距離になったことと、「LALAガーデンつくば」(2004年)、「イーアスつくば」(2008年)、「イオンモール土浦」(2009年)、「イオンモールつくば」(2013年)の開業でファミリー層やシニア層が流出し1991年には248億あった売上が2015年には128億円まで半減していました。
 もともと「つくば博」に合わせて1985年に開店した時から利益があがりにくい店舗という認識でロボットの導入などローコスト運営が売り物でしたから、仕方が無いかも知れません。当時の「西武」と「そごう」は競って店舗を拡大していましたから多の企業よりも出店基準が甘かったのだろうと思います。(閉店するのもそごう、西武の店が多いでしょう)

 水戸市の「京成」は地方百貨店として無理をしなければ生き残れるでしょう。


 栃木県もほぼ宇都宮市の東武百貨店宇都宮店だけになっています。「福田屋」は郊外型のSCへ、1977年までは地域一番店だった「上野百貨店」は2000年になくなっています。「東武百貨店宇都宮店」は栃木市と大田原市のサテライト店舗を含めて300億円の売上を稼いでいますから、な何とか生き残りを図れたようです。

 百貨店が残っているとはいえ。水戸市も宇都宮市もかつては複数の百貨店が存在していたのですから「百貨店市場」がシュリンクしていることは間違いありません。

                                                                                     (10月11日)
 茨城県土浦市、つくば市、栃木県足利市は百貨店が無くなった都市 茨城県水戸市、栃木県宇都宮市、栃木市、大田原市は百貨店が残っている都市

図1 人口の比較~昼夜間人口比が高いほど流入大      図2 立地のポテンシャル  つくば市の所得水準が高い 研究学園都市は都市型の市場
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図3 人口1人あたり小売り販売額~ポイントが高ければ商業吸引力が高い  図4 所在地マップ
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表 1990年の百貨店売場面積と売上~2016年に残っている百貨店
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 ■名古屋「丸栄」閉店へ
 
 名古屋市栄地区の「丸栄」が閉店へ

 名古屋・栄の老舗百貨店丸栄が、閉店することが分かりました。
 閉店する方針を決めたのは、400年以上の歴史を持つ名古屋の老舗百貨店、丸栄です、これは、丸栄の親会社である「興和」の三輪芳弘社長が明らかにしたもので、店を閉めて建物を取り壊し、2020年を目途に新しい施設をオープンする予定だということです。
 閉店の時期はまだ確定しておらず、新しい施設の詳細は、今後明らかにされる予定で、屋号に「丸栄」を残すかについても未定です。
 今年7月、医薬品メーカー興和の傘下に入り、経営の立て直しを探っていた丸栄は、建物の老朽化も進んでいて、震度6強以上の地震で「倒壊の危険性が高い」と判定されています。
(10月10日 CBC配信)

 総合商社の興和は、傘下に抱える名古屋・栄地区のしにせ百貨店、丸栄を閉店して取り壊し、2020年をめどに新しい商業施設を開く方針だ。近くの所有ビル2棟も20年までに取り壊す意向。地盤沈下が指摘される栄地区の活性化をめざす。
 創業400年余りの丸栄は婦人服の低迷などから経営不振が続いており、17年2月期まで3年連続で純損失を出した。また、丸栄が入るビルは、震度6強以上の地震で倒壊の危険性が高いと判定されていた。
 興和の広報は「機関決定している事実はない」とするが、関係者によると同社の三輪芳弘社長はビルを取り壊し、20年をめどに百貨店ではない商業施設を開く方針だ。
 興和は、広小路通をはさんで北側にも「栄町ビル」や「ニューサカエビル」を所有しており、この2棟も20年までに取り壊す方針。丸栄と一体的に再開発したい意向だが、周辺の一部地権者と調整がついておらず、丸栄側を先行させる。(朝日10月10日)

 2011年にすでの百貨店事業からの撤退が表明されていましたか。名駅周辺の開発動向も踏まえて、戦前から在る十一屋呉服店と三星が戦時中1943年に合併して「丸栄」になりました。親会社は周辺にビルを多く所有しており、「一宮名鉄百貨店」の立ち上げ時や「豊橋丸榮」など百貨店や「スカイル」の運営も行っていた時期があります。

 名古屋では「松坂屋」「三越(旧オリエンタル中村)」などの地元大手の老舗に比べると、やや「百貨店」としての存在感にかけます。名古屋という都市の中でのローカルな「地方百貨店」といった印象がありました。それでも1990年頃には売上は791億円あり、名古屋三越の880億円に次ぐ売上はありました。

 2015年の売上は168.9億円。「千里阪急」(164億円)、「西武船橋店」(169億円)と同じくらいの売上ですが店舗面積が3.3万㎡ですから、効率は悪かったようです。

                                                                               (10月10日)
 
 ■百貨店が消えていく街⑤~県内の百貨店がひとつだけになった街
 
 百貨店が無くなった都市と百貨店が残っている都市を比較しようとリストアップ作業を始めています。

 都市どころか県内に「百貨店」がひとつだけになった都道府県がいくつかあるのでその背景も整理しておこうと考えています。

 ・秋田県  2001年に大館市の「正札竹村」が閉店して、秋田市の「西武秋田」のみになっています。
 ・茨城県  水戸市の「水戸京成」だけになりました。「つくば西武」は2017年の2月に閉店しました。つくばエクスプレスができて交通の便がよくなり競合施設が沢山できた         ためといわれています。秋葉原に45分という利便性が徒になった面もありそうです。学研都市住民はもともと地元民では無いので都心志向が強いのでしょうね ・山梨県  地元百貨店の「岡島」が頑張っています。
 ・福井県  地元百貨店の「西武福井店」はもともと地元百貨店の「だるまや」がベースです。
 ・和歌山県 昔は「丸正」「髙島屋」「大丸」があったのですが、「近鉄和歌山店」が孤軍奮闘しています。
 ・島根県  地元の「一畑百貨店」だけです。
 ・香川県  「高松三越」だけになりました。「琴電そごう」は「天満屋」になり2014年に閉店しました。

 ・徳島県  「そごう徳島店」、かつては地元の「丸新百貨店」もありました。1995年に閉店しています。
 ・高知県  「高知大丸」だけです。地元の「土電会館」は「とでん西武」「高知西武」と名を変えて2002年に閉店しました。
 ・佐賀県  「佐賀玉屋」~頑張ってはいますが,都心への人の流れが無くなって可哀相なお店になっています。福岡に近すぎるのでしょうね。
 ・熊本県  「鶴屋」が一人がちです。駅前に「岩田屋伊勢丹」~「県民百貨店」があったのですが閉店。地元の「大洋デパート」~「城屋」もダイエーになりました。
        熊本市はファッション感覚も高く,ポテンシャルも高いはずなのですが、不思議ですね。まあ、「鶴屋」さんが強いのですが。

 ・宮崎県 「宮﨑山形屋」が残っています。地元の「橘百貨店」はイオン系の「ボンベルタ橘」になりました。都城市の「都城大丸」も閉店しています。
 ・鹿児島県地元の「山形屋」が生き残っています。「鹿児島三越」は閉店しましたし、「丸屋」は「マルヤガーデンズ」という新業態になっています。駅ビルや新幹線の影響で
        大変ですね。
 ・沖縄  地元の「リウボウ」が頑張っています。

 地域のポテンシャルから考えて、「茨城県」「香川県」「熊本県」に百貨店がひとつというのは意外に感じます。

                                                                     (10月6日)
 表ー百貨店が無くなった都市  
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 ■市場が縮小するときに「人」を切るだけでは名経営者とは言えないかな
 
 「あの人は前任社長と違って人を切ることができたのが凄かった」という認識への「違和感」

 某百貨店のOBの方とお話していてたまたま、最近引退された経営者のお話になって、上記のようなご感想を伺いました。希望退職や関連会社への配置転換などで人件費をカットしたことを評価されているようです。そうでしょうか?
 (私自身も前職で、自分自身の手で何人もの社員に辞めていただいた事もあります。人件費を抑えれば一時的に黒字になりますが、本当はそこからが大事なのです。私の場合は、赤字が続く中コストカットからようやく単年度黒字にもどしたところで解任されましたが…)

 同じ百貨店の経営者で比較すると大丸のトップだった奥田さんは組織の再編成、人事評価の改革を並行させていました。少し前から店舗の売上げは伸びていなくても利益率が高くなっている事にも注目していました。来年からは会計基準を他の百貨店と変えていきます。
 
・フロントリテイリング傘下の大丸松坂屋百貨店では、2018年2月期(国際会計基準)から店長の評価指標に「総資産利益率(ROA)」を導入する。従来は店舗ごとの利益が評価軸だった。より具体的に、細分化して利益を上げる意識を高めることを狙う。

 ROAは利益を総資産で割り算出する。工場を持つ製造業では一般的だが、小売業で目標にするのは珍しい。Jフロントは不動産事業を強化するなど「脱・百貨店」を進める。


 人を変えて行くには「誰に気に入られることが評価されるか」ではなく「どういう行動をとることが評価されるか」を「見える化」することが大事です。

 その点で、従来の組織の枠組みを大きく変えないで、頭数を減らすことを優先するのか、枠組みを変えることも並行して変わる方向性を「見える化」するのか?という違いが現れています。

 経営コンサル的な発想では、「人情」を捨てて「人減らし」に踏み切るだけではだめですよ…というありがちな結論になります。      が、

 現状の百貨店の状況では「大丸・松坂屋」より件の某百貨店の方が好調なのは面白いですね。百貨店業は事業では無く,巨大な家業なのかもしれませんね。組織運営としては大丸が経営学の教科書通りで正解なのですが…。

 不動産業と百貨店業
すが、
 大丸・松坂屋(jフロントリテイリング)の「ギンザシックス」は森ビルとの共同プロジェクトで森ビルの「六本木ヒルズ」などの「ノウハウを勉強したんでしょうね。前にも書きましたが、大丸内部には不動産事業のノウハウの蓄積は不足しているので、ファッションビルはパルコの大型不動産事業は森ビルのノウハウを取り入れようとしているのでしょう。ギンザシックスでは百貨店はつくらないと早い時期に明言されていましたしね。

 心斎橋店の北館(旧そごう)はパルコになるようです。
丸心斎橋店は、大阪・心斎橋地区の活性化を図るアーバンドミナント戦略を進めているが、その一環として21年春開業予定の北館の核テナントとしてパルコを導入する。
 19年開業予定の新本館は百貨店の新たなビジネスモデルの構築を目指す一方、北館は不動産賃貸モデルに転換して、同地区の集客力向上と収益力強化を図る。パルコ出店はその一環で、北館の地下2階から地上7階に出店する。売り場面積は2万2000平方メートル。パルコの投資額は約40億円。
 大丸松坂屋百貨店が保有する店舗施設へのパルコ導入は、松坂屋上野店新南館の上野フロンティアタワーに続く2例目となる。
(繊研9月28日)

 心斎橋店の建替計画で「住宅」という言葉がB日経新聞の報道にあっったのでビックリしましたが、「六本木ヒルズ」みたいなものを取り入れたいのかも知れません。不動産価値の有効利用という評価基準とも平仄が合います。

 さてその成否はいかに…というところでこの稿は終わります。…不動産業がメインになれば、モノを売ることが好きな人は冷遇されるでしょうね。

 百貨店んが消えていく街をレポートしていて,地方百貨店のいくつかはGMSとにお連携に活路を求めていました。  今、ほとんどが残っていません。その一方、正直この街に?と思う立地でも営業を継続している百貨店も少なくありません。その違いはどこにあるのでしょうね。

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 ■百貨店が消えていく街④~戦前には百貨店があった街
 
 1930年代昭和初期に「百貨店の大衆化」が進む

 昭和恐慌(しょうわきょうこう)は、1929年(昭和4年)秋にアメリカ合衆国で起き世界中を巻き込んでいった世界恐慌の影響が日本にもおよび、1930年(昭和5年)から翌1931年(昭和6年)にかけて日本経済を危機的な状況に陥れた、戦前の日本における最も深刻な恐慌。(wiki)

 1900年前後にに日本でも「百貨店」が「誕生」したといわれています。1905年の「三越呉服店」の「デパートメントストア宣言」が始まりでしょう。品揃えの種類を拡大し一棟で販売するという脱呉服屋宣言です。ターゲットは従来の顧客である上流階級の顧客でした。
 百貨店は都市住民にとっての「娯楽場」として「屋上庭園」や「食堂」を設備、新柄の展示会や特売会などの物販だけでなく、美術展、博覧会、音楽会、映画会、演芸会などの「文化催事」もおこなわれており、モダンな生活文化を発信するメディアの役割を果たしていたのです。「時間消費」は当初から集客の目玉だったのですね。

1923年(大正12年)の関東大震災からの復興を契機に各百貨店が大衆市場の開拓に乗り出したと言われています。さらに大恐慌が大衆化にに拍車をかけます。鉄道資本からの百貨店参入が始まりターミナルデパートが生まれます。1920年代半ばには店への土足入場が採用され、入店へのハードルがさがります。

 都心での店舗の巨大化に伴いMDも贅沢品から実用品にまで拡がります。さらにサービスとして「夜間営業」「無料配達」「送迎車の運行」などが競って取りいれられ、競争を恐れた小売業者からの要請もあり、1937年に「百貨店法」が制定され、売場面積や営業時間、店舗の新設などに制約がかけられることになります。

 百貨店のスタートは贅沢品への憧れ消費ですが、1930年代に大衆化が始まった中では「憧れの高級品を買えなくても見ることが出来る場所で」かつ「比較的低廉で利便性の高い商業施設,娯楽施設」として定着しています。
 今「消えていく百貨店」として多くの人に惜しまれる店のイメージはこの頃に形成された「百貨店」の姿が原型になっていると考えていいでしょう。

 1930年代半ばには百貨店は都市部だけで無く地方都市でも展開されています。大手百貨店の支店や地方の呉服店など。人口10万人規模の都市にも「百貨店」が生まれていました。


 表1は1938年(昭和13年)の百貨店組合のデータにある百貨店のある都市の中で,現在「百貨店が無くなっている」都市を抽出したモノです。人口5万人未満(当時)でも多くの百貨店が地方都市で営業しています。福知山市や岸和田市のように戦後早々に店が無くなった都市もありますが、人口10万人前後でも結構最近まで店が残っていた都市も多いようです。おそらく都市の特性で流動人口が多いか富裕層が多いかなどの背景が在ると思います。(今後調べてみます)
 都市規模は小さくても,今でも百貨店が残っている都市にも何かの共通点があるはずです。

 岸和田市に百貨店があったんだ

 少しびっくりしたのは戦前、岸和田市に百貨店があったことです。「髙島屋岸和田店」が1929年から1944年まで営業していました。岸和田城のそばの堺町に立地していたそうです。(ネットでは戦前の百貨店はあまりでてこないので突き止めるのに苦労しました)

 「木造2階建て、延べ300坪(9,900㎡)の店舗を借りて正札販売をし、岸和田市では当時珍しい若い女店員もまじえて応対する姿が市民にも新鮮に映った」「昭和5年には一部増築して呉服・雑貨・日用品・食料品が中心で食堂が併設されていた」(岸和田市史)ということです。

 大阪で生まれ育ったのですが、岸和田市の昔の事は良く知りませんでした。大変お見それしました。表1の他の都市でも層ですが、戦前は紡績関係の事業は公共だったのでしょうね。

 当時人口10万人以上のボリュームがあっても百貨店が無かった都市は、布施市(今の東大阪市の一部)、堺市、高知市、尼崎市です。関西の3都市は大阪、神戸の商圏に包含されていたのでしょうね。

 今回は戦前まで戻りましたが、戦後に生まれてなくなった百貨店も多いので時間軸をもう少し進めて分析を続けます。

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  図-1岸和田市にあった百貨店  岸和田城の近くの堺町です
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表1 昭和13年(1938年)に百貨店があっった街  ~戦前の店舗の資料がない街もありますが,人口が少ない都市にも「百貨店」が進出していたことがわかります。
                                軍事関係の施設があると街に活気があったのかもしれません。
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※成城大学大岡聡氏の論文に引用されていた日本百貨店組合の調査データをもとにANALOGが作成
 ■百貨店が消えていく街③~宿場町の賑わいからの衰退10店舗からゼロへ「八王子市」
 
 人口58万人の八王子市にはかつて10店舗の百貨店があった

 表1にあるように地元百貨店だけで無く西武、伊勢丹、そごう、大丸といった大手百貨店が(時期は少しずれますが)10店舗ありました。「八王子そごう」が2012年に撤退した以降はゼロです。

 JR八王子駅周辺は学生の街だけあって新宿に似た雰囲気があります。人は賑わっているのですが百貨店はありません。

 八王子市は甲州街道の宿場町として栄えていました。戦前には下記の表にはない「八日町百貨店」が甲州街道沿いに存在していたようですが、1960年以降に百貨店が出店してきたようです。1964年の東京オリンピックの自転車競技開催、1965年の多摩ニュータウンの計画決定が出店を加速させたといわれています。戦後はベッドタウンとして街が変貌してきたのでしょう。図2にあるように住宅地価格は都内では低い方で、住宅価格、商業地の価格も伸びが低くなっています。

 駅に立つと山梨県の大学の看板が立っていたりして、都内というより山梨県に近い地方都市の側面もあるのでしょうね。

 そごうや西武が元気な時代は周辺都市にも多くの出店計画がありました。地方都市としての住民層とベッドタウンとしての住民層、大学の集積など住民層がくつかのクラスターにわかれているのでしょう。都市の広さもあって一体感が乏しい街になっています。

 百貨店を求める人は立川に流出しているようです。

                                                                                   (10月4日)
 図1 八王子市の位置図 立川駅の立川商圏に流出しているといわれている
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 図2 東京都内(10万人以上の都市)平均住宅地価及び住宅地、商業地の地価伸び率(2017年)
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表ーかつて八王子市内にあった百貨店 10店舗
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 ■百貨店が消えていく街②~東京でもない横浜でも無い街「川崎市」
 
 住宅地として伸びている川崎市

 政令指定都市でありながら百貨店がない街として話題になっている川崎市ですが、住宅地の価格、住宅地、商業地の地価の伸び率では神奈川県内でも高いレベルです。タワーマンションが乱立する武蔵小杉駅も川崎市中原区です。東京都の自由が丘の近くです。

 1990年には川崎市内(JR川崎駅前)には3つの百貨店がありました。地元百貨店の「小美屋」(1951年開業)、今でも本社は川崎市の「さいか屋」(1956年開業)、「川崎西武」(1988年 「川崎ルフロン」に「丸井川崎店」とともに入居)です。

 工業都市としてのイメージが強い川崎市ですが、東京にも横浜にも近いため、特に内陸部、東急沿線、小田急沿線では住宅開発が進み、新住民の地域への愛着は低いのだろうと思います。駅前のラゾーナ川崎プラザは都心型の大規模ショッピングセンターとして盛況ですが「百貨店」は姿を消しています。

 千葉県の柏市もそうであるように鉄道沿線沿いに東西に人が移動し、南北の南北の移動は少なく、JR川崎駅前(乗降客換算で約40万人/1日)への移動が少ないのでしょうね。行政区としては政令指定都市のポテンシャルが有りながら地域に愛着を持たれる百貨店を支えるだけのマーケットポテンシャルがなかったということでしょう。

                                                                                   (10月3日)
 図1 神奈川県内(10万人以上の都市)平均住宅地価及び住宅地、商業地の地価伸び率(2017年)
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 表1 川崎市内 1990年の百貨店の売場面積・売上と2016年の大型店の売上げ
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 ■百貨店が消えていく街①~柏・松戸は衰退しているのか?
 
 住宅地地価は堅調だが商業地地価が厳しい松戸市、柏市

 千葉県内の住宅地価は千葉市及び,西部地区房総地域では堅調に伸びています。木更津、君津や浦安が伸びています。一方。東部地区で、北部地区では伸びにばらつきがあります。柏市ではつくばエクスプレスの新駅の周辺の人口は伸びていますが、市内の南部地区は伸び悩んでいます。同じ行政区でも路線別に差があるようです。

 商業地の地価もほぼ同じ傾向ですが、柏市では下落幅が大きくなっています。松戸市もマイナスではないものの上昇率は低くなっています。

 百貨店が消えていく街

 柏市ではかつて一番店だった「そごう柏店」が昨年閉店しています。最盛期には500億円を超えていた売上は最終的に115億円にまで落ち込んでいました。2000年代に入ると、半径5キロ圏内に次々と大型のショッピングセンター(SC)が進出したことがダメージになったと言います。イオンモール柏、流山おおたかの森S・C、ららぽーと柏の葉棟です。
 柏市は人口も伸びています。(表1)元々東京からの流入人口で拡大してきたベッドタウンです。”千葉都民”ともいわれて消費の東京流出率は元々高いエリアでした。地元への愛着も薄いのかも知れません。地元で購入されるアイテムもSCの方が強かったのかも知れません。

 松戸市も東京都内通勤率が37.3%と高い街です。昔の宿場町として歴史の古い街ではありますが、東京都の繋がりが強い街です。人口の伸びは安定していて,住宅価格の伸びも悪くないのですが、近くのつくばエクスプレス沿線の活気に比べて停滞している印象が強いのでしょう。「伊勢丹松戸店」の売上げ181億円は「髙島屋泉北店」「岡山髙島屋」クラスなのですが、他店は2万㎡なのに対して3万㎡の規模なので、売場の一部を行政に借り上げてもらう縮小しての再生案の方向性はまちがっていなかったと思います。結果的に、議会で否決され閉店となりました。

 百貨店の経営状況は、どこも厳しくインバウンドの恩恵の無い郊外店、地方店は一層厳しいでしょう。「淘汰」は進むでしょう。

 その中で、同じような環境でも(例えば大都市から30分圏)でも「百貨店」が踏ん張れる街と、そうで無い街には何か共通の特徴がありそうです。

 もちろん百貨店サイドの経営判断もあるのですが、柏市は郊外SCの競合が明確ですが、松戸市にはそういった競合が見当たりません。
 首都圏でもほとんどの地域で市場調査を行っていますが、このエリアはエアポケットのように調べたことがありません。少しゆっくりと分析して最終的な仮説をご提示したいと考えています。伊勢丹の場合、良くも悪くも「新宿本店の風」が吹く地域で無いとブランド力が発揮できません。首都圏とはいえ「新宿が遠い」ことも影響しているかも知れません。
 
 
                                                                                   (10月2日)
 図1 千葉県内(10万人以上の都市)平均住宅地価及び住宅地、商業地の地価伸び率(2017年)

  wq1(国土交通省地価調査)

 図2 百貨店売上高比較 1990年~2016年                    
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 表1 柏市、松戸市、千葉市、人口と百貨店の年次比較 1990年と2016年         表2 柏市 SC売上(柏髙島屋を含むSCとつくばエクスプレス沿線のSC)
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 (ストアーズレポート、有価証券報告書よりANALOG作成)

yu5柏市は鉄道沿線沿で分断されている。松戸駅の乗降客数は20万人ある。
 ■そごう・西武友の会事業を廃業~募集は随分前に終了していましたが
 
 友の会、ポイントカードは経営の機動性を削ぐ

 本日の新聞にそごう・西武の「友の会」事業の廃業について告知されていました。そごうと西武がミレニアムリテイリンググループとして一体となったのは2003年です。2009年に社名が「西武・そごう」となりました。百貨店の友の会としては西武は「セゾンクラブ」、そごうは「ダリア友の会」として運営されていましたが、友の会も「そごう・西武友の会」となりました。ただ、正確な記事は見当たりませんが2010年頃には友の会の新規募集を居募集を終了していたようです。

 百貨店の友の会は12ヶ月積み立てて、一ヶ月分のボーナスが加算されるものです。ただしお買い物券なので、他の百貨店んでは使えません。百貨店の店舗はどんどん無くなっているので、お買い物券が手元にあっても使えないというケースも発生します。特にそごう・西武は全国に店が拡がっていましたから地方都市では影響も大きいのでしょうね。大阪でも使える店はほとんどありません。(高槻西武はまだ大丈夫かな)
 お金を預かっているので簡単に廃止できないと言うこともあり、時間がかかったのでしょうね。今回の廃業で積立額の額面に法定利息6%をつけて返金するそうです。そごう・西武も廃業のためのキャッシュを用意するのもたいへんだったでしょうね。

 友の会もそうですが、ポイントカードのポイントも廃業の時には大変なことになります。お金を預かっているようなものですから、簡単にはやめられない。

 百貨店は基本的に地域や顧客との長期の関係づくりがビジネスのベースですから「顧客の囲い込み」として「投資」の判断はありですが、リストラなどの経営判断の足かせになるという側面もあります。

 かつての「阪神」の社長三枝さんは「うちはポイントカード」はやらないとおっしゃっていました。これはこれでひとつの判断でしょう。周りがやっているからということで無批判に真似をするということだけは良くないです。

 伊勢丹松戸店閉店

 松戸市のバックアップ案が議会で否決されたことに伴い、「伊勢丹松戸店」の2018年3月21日の閉店が決まりました。JR松戸駅から徒歩5分の3万㎡の店舗ですが、ピーク時(97年)には336億円の売上がありましたが今年の3月期では181億円に落ち込んでいました。

 売上げ不振は郊外の大型店舳の顧客流出やEC市場の拡大、東京駅へ30分という時間距離からの都心流出などが売上げ不振の要因といわれています。

 JR松戸駅は1日20万人の乗降客数があります。(関西の郊外で言えば阪急西宮北口10万人、高槻市5.8万人、京阪枚方市9.2万人ですから充分市場はあるはずです)ファミリー層の集客のてこ入れに失敗したとのことですが、千葉県内では2016年に「そごう柏店」、2017年3月に「三越千葉店(旧ニューナラヤ)」が閉店。2018年に西武船橋店も閉店します。千葉県内の百貨店は「千葉そごう」「船橋東武」「柏髙島屋」の3店だけとなりました。

 22日の地価の分析でも千葉県北部や茨城県の一部の地価が下落しています。

 千葉県の北部で何が起こっているのでしょう?一度丁寧に分析しておく必要がありそうです。

                                                                                       (9月29日)
 ■平均住宅地価と地価の変動率から見た大阪圏のエリアのポジショニング
 
 京都市内では上京区が住宅地として安定的に伸びている

 京都市内では上京区の平均住宅価格がダントツで高くなっています。価格の伸びも商業よりも住宅の価格が伸びている大阪圏では唯一のエリアです。
京都御所と西陣織に代表される街です。
 中京区の地価がそれに続きます。繁華街を抱えていることも有り、商業地の価格の伸び率が高くなっています。

 京都駅周辺の下京区、東山区も地価は高いのですが住宅地と言うより商業地としての伸び率が高いです。最近増えている宿泊特化型ホテルもこのエリアでの新設が多いですね。(9月14日、21日の記事参照)

 京都市内では新参の山科区と伏見区ですが住宅価格は同じレベルですが商業地としての伸びは伏見区が伸びているのに」山科区は伸び悩んでいます。中心部へのアクセスはあまり変わらないのですが、観光スポットの知名度の差なのかも知れません。伏見稲荷や酒蔵の有名な伏見に比べて山科区は少し地味かもしれません。

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 大阪市内で広がる格差

 京都市内でも伸びている区とそうでない区の格差はありますが、大阪市内ではそれがより大きくなっています。
 住宅価格がトップなのは上町台地を抱える天王寺区です。商業地との価格の伸びは高いですが住宅地としての価格は高止まり傾向です。中央区は住宅価格も高いのですが、商業地の価格が大きく伸びています。
 住宅地として人気の福島区、西区は安定して伸びています。商業地の価格の伸びが一番高いのは福島区です。価格がお手頃な浪速区は大阪市内で2番目の伸びです。
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 星野リゾートが進出する事がが決まっている新今宮駅は浪速区です。すぐお隣は西成区なのですが、価格は上がって居らず、その恩恵は受けていないようです。この血創業の「イズミヤ花園店」が閉店しました。(2019年に改装して再開店)しばらくは地元の店は「スーパー玉出」だけになるのでしょうか。(たこ焼きの会津屋、お好み焼きのぼてじゅう、千寿製薬、チーズケーキのリクローも西成区に本社があります。

 ユニバーサルスタジオジャパンのある此花区も地価は上がっていません。工場地帯であるせいかも知れません。大昔、「行政がからむ3セク事業がクロしにならなくても周辺部の地価があがれば税収も獲得できて成果となる」という「理屈」を伺ったこともあります。ユニバや天保山の開発は周辺の地価もあげてくれませんでしたね。残念です。

 カジノにもあまり期待できないですね。全国的に湾岸部の地価が下がっているのは、みなさん本気で津波の心配をされている証です。津波と言えば、一時「伊丹空港」を廃止するという議論もありましたね。立ち消えになって良かったですね。」大阪湾を津波が襲ったとしたら関空も神戸空港も通常の機能が損なわれるかも知れません。

 兵庫県は神戸市北区、川西、三田が低調

 内陸部に開発されたニュータウンが住宅価格を落としています。新名神が開通すれば、また違った形でスポットライトがあたるでしょうね。神戸市中央区野甫かは灘区、東灘区が人気です。分譲マンションの価格もこのあたりから西宮北口までは高い人気を維持しています。以前も記述しましたがインバウンド景気の波が来ない分、実需に支えられているのだなと思います。「生活文化」があるのも強みです。(今度、何を持って生活文化が充実しているかの指標を考えて見ますね)

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 図1 市区別平均住宅地価   (2017)                                  図2 住宅地、商業地の地価伸び率(2016~2017)
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(国土交通省地価調査)

 ■25日 大阪キタに「吉本西梅田劇場」がオープン
 
 NGKシアター改装 (9月25日から2月21日)に伴い西梅田に「吉本西梅田劇場」がオープン

 「うめだ花月」が閉鎖された2008年以来久しぶりに梅田での常設小屋がオープンします。立地は大阪駅前の中央郵便局跡ですから暫定利用です。公園はNGKシアターの改装が終わった跡も継続するようです。

 大阪市内でもあちこちに劇場があった印象がありますが、なんばNGK周辺に集約されていました。漫才が中心になると訪日外国人の集客も難しいですしね。ある時期集客のコンテンツとして期待され全国あちこちに出店していたのですが、少しペースダウンしているのでしょうか。

 うめきたでグランフロントからスカイビルを繋ぐ地下道が12月に閉鎖されます。

 大阪駅北側の再開発エリア「うめきた2期地区」の地下を横切り、グランフロント大阪とインバウンド(訪日外国人)に人気の梅田スカイビルを結ぶ地下歩道「梅北地下道」が姿を消す。1928年完成の地下道は地下化されるJR東海道線支線と地下で交差するため、まず全長205メートルのうち東側の165メートルを12月に閉鎖。2024年ごろには残りも閉鎖され、1世紀近い歴史に幕を閉じる。(日経 9月22日)
 代わりに地上歩道が設置されるので人の流れに影響は無いのですが、1928年(明治42年)に完成というのはビックリしますね。貨物駅ができて通学路の確保のために作られたそうです。

 ヨドバシ梅田と大阪駅の連絡橋も完成し、梅田も少しづつ変化しています。注目されている敷地ですが大阪梅田の中央郵便局跡地の開発はまだ少し先になりそうですね。

 吉本などが始める「クールジャパンパーク」は大阪城公園?

 吉本と言えば、少し前に発表された「クールジャパンパーク」でのノンバーバルショーはいつ開業になるのでしょう。京都のノンバーバルパフォーマンス「ギア」は千葉でも公演が始まります。言葉がわからない外国人でも楽しめるステージです。

 吉本興業など民間12社と官民ファンド「海外需要開拓支援機構」(クールジャパン機構)は、「クールジャパンパーク準備株式会社」を組成し、大阪市内にて、2017年度を目標にエンタテインメント発信事業を開始する。候補地としては、大阪城公園を中心に、関係各所と協議を進めていくとしている。

同事業は、多目的に使える劇場集積型の文化施設拠点を設け、国内およびアジア各国をはじめ世界中から大阪を訪れる観光客を魅了する体験を提供。また、大阪に暮らす人々にも楽しんでもらうことに加え、共に育んでいくことのできる多様なエンタテインメントを生み出す拠点となることを目指す。

ここでは、最新のテクノロジーを駆使した音と光、映像とアニメーション、関西の名所風景とともに、歌舞伎、歌劇、殺陣、忍者、下駄タップ、イリュージョンなどのパフォーマンスがスペクタクルに展開される「COOL JAPAN VARIETY BANG!」(ノンバーバルバラエティショー)や、世界中のバラエティアクトを集めた「THE 舶来寄席」、オフブロードウェイ作品のオリジナルアレンジ、大阪・関西をテーマにした小説や映画の舞台化された作品も上演される計画となっている。

また、マルチメディア・エンタテインメント・スタジオ「MOMENT FACTORY」(本社:カナダ・モントリオール)と吉本興業による、都市におけるイルミネーションプロジェクトも計画されている。


                                                                                       (9月27日)
 ■縮小する小売業市場でも生き残る道はあるのか
 
 縮小する小売市場

 小売業の販売額は1996年の146.3兆円がピークで,2002年は132.2兆円に減少しています。2016年には139.9兆円となりました。ニッセイ基礎研究所の試算では、高齢化、人口減少を背景に2025年には1321.4兆円。2035年には117.4兆円にまで減少すると予測されています。

 EC市場のシェアは2016年で15.1%、5.4%のシェアです。現在2.3%の食料品のシェアが拡大するなど小売り販売額に占めるECのシェアは十数%以上のを獲得していくでしょう。

 小売業の店舗は厳しい競争にさらされます。いわゆる「好景気」は個人の可処分所得の拡大には繋がりません。世の中はますます年収400万円モードに突入しています。

 これらの環境の中で「小売店」はどうすれば生き残っていけるのでしょうか?

 全ての企業を救えるわけでは無いが「解」の方向性は見えている

 まちなかの商店が激減しているといわれています。近くの市場、商店街を見れば実感できます。商業統計から商店数の増減を拾いだすと、「写真屋さん」(デジカメ、スマホの影響でしょうか)「パン屋~販売のみ」(スーパーやコンビニにシェアを奪われたのでしょうね)、「お菓子屋~販売のみ」(スーパー、コンビニや安売りの量販店が目立ちます)、「お米屋」(昔は米穀通帳がなければお米は買えなかったのですが)、「本屋」「文具屋」「荒物屋」「建具屋」などが20年前(1994年)の3分の1になっています。

 伸びているのは「医薬品・化粧品小売業」「自動車小売業」「中古品」の店舗です。

 このグラフから生き残りのヒントがいくつかピックアップできます。

 1.その場で製造・加工して提供する 

 パン、菓子に関しては製造小売りが健闘しています。焼きたて、出来たては大量生産品の量販店と差別化できる鍵です。(もちろん、美味しいことが前提ですが)
やはり店舗が減少しているお米屋さんでも、店頭で、精米サービスを行い、自社のお米でつくったおにぎりの販売で大成功しているお客様がいます。店内で製造した和菓子やおにぎりは利益率も高いのです。

 ~ぼろ儲けできるわけではないですし、技術力も必要ですがそれだけに大手はすぐに真似が出来ません。

 2.リユース品も付加価値をつけて提供する

 家具屋さんも、まちなかから姿を消している業種です。百貨店でも家具売り場は縮小気味でニトリをテナントにしている百貨店もあります。イケアやニトリなどの量販店で安くてデザインの良い家具が入手できますから、あまり高い家具は売れないと思われています。かつての花形のたんすを中心とした婚礼家具もいまはほとんど見かけません。

 かつては家具屋さんは店頭で家具の組み立ての仕上げや調整を行っていました。技術力のある社員が販売していたのです。高度成長期の「婚礼セットブーム」の時代に販売と製作の分離が進み、店頭から技術力が失われてしまったのです。(それまでは一生モノと言われた無垢材から見栄えだけを重視した合板の家具が増加したのもこの頃です)

 リユース市場が注目を浴びています。メルカリでは主に、飽きたファッション商品を取り替えるために活用されていますが。(価格も安いですし)中にはアンティークや素材・仕上げの良い家具を自分でリペアして再生する若い人も増えてきています。

 中古流通の市場が確立すると、質の高い家具が見直されます。住宅市場では今後、リフォーム、中古市場が中心になるといわれています。その流れの中で家具や住宅関係の商品にも質が求められます。
 店頭で修理再生できたり、家具の修理再生についてアドバイスできる販売員を配置する事で、差別化を図ろうとしている家具小売店も出現しています。品質基準を定めて店頭で受け付けたリユース品にも保証を与えます。メーカーでは無い店舗では画期的な取り組みです。

 家具だけで無く、靴や雑貨でもこのような展開は考えられます。パタゴニアはこんなイベントを開催しています。

  パタゴニア日本支社は今秋、「パタゴニア」商品の修理に焦点を当てたキャンペーンを行う。リペアイベントなどを通じ、客に修理を身近に感じてもらい、商品を長く使う習慣を身に付けられるよう促す。

 同キャンペーンは、「新品よりもずっといい」をコンセプトに、米パタゴニアが長く取り組む修理・リサイクルプログラム「ウォーン・ウェア:着ることについてのストーリー」の一環。長く使用できる丈夫なものを作る一方で、客側にはそれを長く使い続けることを呼びかける。本国では年間4万点以上が修理されるほど定着している。日本でも、リペアセンターの体制が整ったため、積極的にPRすることにした。

 既に直営全店でプログラム内容を紹介するコーナーを設置し、イメージパネルや修理ガイド本などを展示している。目白店、京都店、渋谷店、横浜店では単日のリペアイベントを実施。ほつれ、小さい穴の補修、パーツ破損交換、スナップボタン取り付けなど簡単な修理を無料で受け付ける。

 イベント当日は3人のリペアスタッフが常駐し、1日約35点を修理する予定。15日には米本社幹部のリック・リッジウェイ氏が来日し、ウォーン・ウェアの意義などを語るイベントも都内で催す。



 3.モノとコトの融合をはかる

 旧来の産業分類ではくくれない物販とサービスの融合に活路はあります。

 集客のためのイベントとしての「コト」ではなく、物販がサービス利用を誘発し、サービス利用が物販を誘発する仕組みの構築です。

 アウトドアショップがグランピング運営に力を入れたり、ドラッグストアが運動施設中心のデイサービスを開設したり、ユザワヤがハンドクラフトの教室を店舗に併設したりする事例が思い浮かびます。呉服屋さんが着付け教室や着物を着用したイベントを開催したりなど昔からある手法ですが、これを行うには「人材」が必要なので、中途半端な店舗が多いように感じます。

 人材を確保して手間をかけて…大きく売上が伸びるかと言えば、詐欺的な商法でも無い限り大きくは儲かりません。ただし、顧客との強い絆が出来れば長期的な利用の継続で回収できます。小売業を取り巻く環境はとても厳しいのでそこまでやらないと生き残れません。

 4.「購買代理業」として事業を再定義する

 多くの小売り店は,商圏が縮小し、顧客数が絞られてきます。利用者数が減少した場合、対応策は「より広域から人を集める」策と「利用者を顧客化して,顧客内の需要 のシェアを高める」という2つの方向性があります。

 広域から人を集めるには競合より品揃えを多く(売場面積を拡げる)して吸引力を高めるか、来店目的を高める手段を講じるかです。前者はECに勝てなくなってきていますし、後者は今多くの小売り店がトライアルしている「コト重視」の店作りです。
 顧客内のシェアを高める為には顧客との関係性を強めて「ニーズ」を開拓していく,その為に業態・業種の枠を超えて対応力を強めていくことです。わかりやすい事例として「半径500m シェア100%」をうたった旧「ダイシン百貨店」(東京都大田区)がありました。競争環境の激化の中で今はドンキホーテに売却されましたが、中小小売店の生き残り策としてはもっとブラッシュアップされれば有効な戦略だと思います。ハードへの投資コストを下げて他のインフラに投資するとか失敗要因を分析すれば可能性はありそうです。


 最近流行のSNSを活用した顧客への情報提供も、本気やればかなり手間がかかります。

 立地や競合環境、自社資源を考えて、自社の生き残り策を考えて見て下さい。どこでも使える即効性のある万能薬はありません。

                                                                                             (9月26日)
 図1 小売業産業分類別 小売店舗数の増減率と商店数 (2014年 商業統計)  増減率は1994年から2014年の20年間
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 経済産業省商業統計からANALOG作成
 ■名古屋圏でも湾岸エリアの津波リスクは地価を押し下げている
 
 1.住宅地

 名古屋市内でも 中区、東区と言った都心部で住宅地の価格が上がっている。大学が多く立地し文教地区である昭和区の立地がランクインしている。少し前までは人口は減少気味だったのですが、マンション開発が進んできたのでしょうか。昭和区の八事は高級住宅地としても知られています。
 一方下落率が高いのは知多半島のウォーターフロント地区です。東京の三浦半島と同様に、津波に対する不安が価格を押し下げています。

 2.商業地

 名駅、栄周辺に加えて金山地区の価格も上がっています。商業地も湾岸部、知多半島の人気が低下しています。
 名駅周辺の上昇率が高いのが目を引きますが、実需を背景にしており、東京圏や名古屋圏に比べて大阪圏の京都市内や大阪市南部はやはり「異常」なのだと思います。

 3.工業地

 名古屋圏でも高速移動路沿いの地価が上昇しています。

 住宅、工業立地では津波への不安が地価を下落させる傾向がどのエリアでも強まっています。
                                                                                            (9月25日)
 
 名古屋圏

1.住宅地
 ・地価が上昇しているエリア                             ・地価が下落しているエリア
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青のグラフは上昇率,赤のグラフは下落率です。目盛りは地域によって違いますのでご注意下さい。※価格は円/㎡ 変動率は2016~2017年

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2.商業地
 ・地価が上昇しているエリア                             ・地価が下落しているエリア

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3.工業地
・地価が上昇しているエリア
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 ■東京圏の用途別地価動向から見える元気のいい立地
 
 1.住宅地

 東京都心の宅地価格の上昇は一息ついたのでしょうか、上位には意外に千葉県の木更津市が多くランクインしています。

 少し前の地元紙の記事では
 対岸の神奈川に比べ土地が割安で、アクアラインを使った通勤利便性が良く、東日本大震災以降は津波への意識から高台であることが見直され需要が高まっている
 という分析がなされています。都心へ45分~60分で高速バスが沢山運行されています。アウトレットモールがあることも魅力なのでしょうか

 一方、人口減少数が全国トップ(2013年)と言われた横須賀市の地価の下落は続いています。活断層が通り、かつ津波の心配があるのと、都心への通勤の便が悪いことで高齢化が進んでいます。入り組んだ海岸線や海軍の町のイメージで観光地としては栄えても,住民が少なくなって大型の商業施設の開発も進んでいません。かつては高級住宅地として知られてたのですが衰退が進みます。

 千葉県内でも北部、柏市の地価が下落しています。バブル期には高級住宅地として分譲された地域ですが、交通アクセスの不便さがマイナスとなっています。(昨日分析した大阪圏で言えば西宮北部や川西、奈良県生駒郡の下落と同じような背景を持っています)

 またつくばエキスプレス沿線が人気ですが、点と点をつなぐ路線で、路線からから少し離れるとその効果はなくなるということが読み取れます。

 2.商業地

 商業に関しては東京都心の人気は続いています。銀座、新宿、渋谷など価格も高いですし,伸び率も二桁です。
 東京圏では神奈川県、茨城県など周縁部の商業地の地価は下落傾向にあります。住宅地の人気がなかうなると市場も縮小するという循環になります。

 地価が低い場所に大型商業施設をつくって広域から集客するというビジネスモデルももう破綻しています。市場規模が小さいエリアでも成立する業態、フォーマットを創造していく必要があります。

 3.工業地
 伸びているエリアを図化しています。高速道路沿いの立地に集中していることが明らかです。事業継続性の観点から沿岸部とは別に内陸部に拠点を持つ企業が増えています。

                                                                             (9月22日)
 
東京圏
 1.住宅地

 ・地価が上昇しているエリア                           ・地価が下落しているエリア
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青のグラフは上昇率,赤のグラフは下落率です。目盛りは地域によって違いますのでご注意下さい。※価格は円/㎡ 変動率は2016~2017年
 2.商業地

 ・地価が上昇しているエリア                      ・地価が下落しているエリア
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  3.工業地

 ・地価が上昇しているエリア
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 ■大阪圏の地価動向に見る勢いのあるまち、停滞するまち
 2017年の地価調査 結果

 国土交通省から2016年7月以降の地価調査の結果が発表されています。
 http://tochi.mlit.go.jp/chika/chousa/2017/00.html へのリンク

 平成28年7月以降の1年間の地価について

全国平均では、全用途平均は下落しているものの下落幅の縮小傾向が継続している。用途別では、住宅地は下落しているものの下落幅の縮小傾向が継続している。商業地は昨年の横ばいから上昇に転じた。工業地は昨年の下落から横ばいに転じた。
三大都市圏をみると、住宅地は東京圏・名古屋圏でほぼ前年並みの小幅な上昇を継続している。商業地は総じて上昇基調を強めている。工業地は名古屋圏を除き上昇基調を強めている。
地方圏をみると、地方四市では全ての用途で三大都市圏を上回る上昇を示している。地方圏のその他の地域においては全ての用途で下落幅が縮小している。

 ANALOGでは大阪圏の地価の上昇率、下落率をMAP化しました。まちの勢いが読み取れます。

 住宅地

 上昇率が高いのは京都市の上京区、神戸市の灘区、大阪市の北区、福島区など都心エリアの人気が続いています。堺市も北区百舌周辺で2ポイントランクインしているのが目を引きます。
 地価が減少しているのは、西宮市の北部(山の北側)川西市、交野市、生駒、木津川、大阪狭山市、阪南市などかつての郊外住宅地です。関西で戸建て住宅が購入できるニュータウンとして人気のあったエリアですね。


 商業地

 京都市内でも下京、伏見など下のエリアが高騰しています.大阪市内では本町や浪速区などホテル建設ラッシュが続くエリアが高騰しています。下がっているのは川西市、の他は京都奈良などの都心から離れたエリアです。郊外住宅が不調なので商業にとって魅力はないですし、ホテル立地でもないので下落してきています。


 工業地

 城陽、宇治など京都府南部が上昇しているのは新名神開通を見越して物流拠点として注目されているからです。関東の圏央道ほどでは無いですが、西日本の新しい幹線となるエリアです。
 国土幹線から離れた大阪府南部エリアや都心では地価は下がってきています。


 住宅では「都心居住」、商業では「ホテルブーム」、工業では「物流」(倉庫だけで無く、メーカーの物流機能の集約も含みます)が関西の地価を動かしています。

                                                                                      (9月21日)
 1.「住宅地」

・地価が上昇しているエリア              ・地価が低下しているエリア

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青のグラフは上昇率,赤のグラフは下落率です。目盛りは地域によって違いますのでご注意下さい。※価格は円/㎡ 変動率は2016~2017年

2.「商業地」~ホテルラッシュで

・地価が上昇しているエリア                     ・地価が低下しているエリア
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u9大阪市内、京都市内の中心部価格の高騰は「異常事態」です。

3.工業地~新名神沿線地域が大きく上昇

・地価が上昇しているエリア                       ・地価が低下しているエリア
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2017年 都道府県地価調査 国土交通省土地・建設産業局地価調査課より作成
 ■全世帯の6割が年収400万円未満になる時代の小売業の生き残り
  
 2020年には全世帯の6割が年収400万円未満になる

 NHKが三菱食品の発表した予測を報道していました。
 https://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2017_0801.html へのリンク

 この2年間にわたって約6000人を対象としたアンケート調査やモニター約100人の食事の分析などを進めてきた結果、ニューエコノミカル層のある傾向が見えてきたと言います。
1つ目は「強い節約志向」です。アンケートでの声を見ると「外食はめったにしない」、「肉は基本的に買わない。特売の時に鶏肉は買う」、「スーパーのネットチラシで一番安い店を探す」など、日常での生活から出費を抑えようという意識を強く持っていることが伺えます。
2つ目は「こだわりを大切にする」ことです。例えば「スキンケア製品は自分らしくあるための砦(とりで)」、「健康のためトクホなど健康関連の食材は買う」、中には「夫の趣味のベンツは維持」という回答もありました。つまり、自由に使えるお金は少なくふだんは切り詰めているが、こだわりを大切にした消費行動を取るーーそれがニューエコノミカル層の姿です。


 1ヶ月の食費を2万円に押さえるという書籍を皇族とご結婚される男性が購入したことがニュースになるご時世ですから、ごく一部の層を除いて、生活が苦しい状況が普通になってきているのでしょう。(昨日、買い物に行ったスーパーでも肉類が沢山積み上げられた中で、比較的安く使い回しが効く、ミンチ肉だけが売り切れていました)

 百貨店やGMSの売上が低迷している中、ドンキホーテなどのディスカウントストアの売上げは好調です。先日放送されたコストコの紹介番組でも多くの人が開店前から行列を作っています。(コストコでは販売マージンを押さえて原価率を高めて安く売っても、利用者からの会費収入で収益があがるそうです。購買代行業なのですね)ECの普及のせいでモノが売れないのでは無く、「価格設定」が高すぎるのが小売業の課題なのかも知れません。

 商業施設ではドラッグストアも好調ですが、九州のコスモス薬品では食品の売上比率が55%にのぼる「医薬品も揃えた便利な小売店」となっています。郊外の小規模な商業地でもドラッグストアがまず第一のテナント候補になっています。

 DS業界は2016年は平均で前年比5%、ドンキホーテが6.2%、大黒天物産が5.9%と好調です。ドンキホーテは食品の扱いに力を入れています。

 アメリカのアマゾンが買収した高級食品スーパー「ホールフーズマーケット」は買収後、大幅に価格を下げたそうです。食の安全性や信頼性が損なわれなければいいのですが…。例え、価格を抑えても「本物」「質の高いモノ」を提供できる業態が勝ち残るでしょう。

 洋服や家具についてはメルカリなどの個人間の中古品取り挽きが増えていくでしょうね。駅ビルのファッション商品に百貨店が負けたのは価格が高いからです。若い子向けのアースミュージック&エコロジーのCMに鈴木京香が起用されているのはファストファッションとまではいかなくてもお手頃な価格でおしゃれを楽しみたい層を狙っているのでしょう。古着屋さんあるいはGUやハニーズではさすがにおばさんが着ると,みすぼらしいですからね。~昔は百貨店でもエスカレーター回りのハンガーやワゴンでお手頃な商品を販売していたのですが,最近見かけないですものね。「ニューエコノミー層」が着る服が市場に欠落しています。

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 ■小売店舗の生き残りは立地に合わせた柔軟性なカスタマイズが鍵になる
 
 EC(電子商取引)の拡大が小売店舗を変える

 17日の日本経済新聞の報道にあるように、アメリカのアマゾンを代表とするネット通販の攻勢に、欧米の小売業の株価が大きく下がっています。

 図-1にあるようにEC事業中心の企業、EC事業に参入したウォルマート(通販事業者を買収し、グーグルと事業提携)は株価を上げていますが,既存小売業は軒並み株価を下げています。背景にはJCペニーが68億の赤字と赤字幅が拡大したり、カルフールやテスコの大幅な純利益減があります。

 都心部以外の大型の不動産取引は、ショッピングセンターや製造工場では無く「物流施設」が中心です。新規工場立地でも圏央道沿道などで物流センターを兼ねた工場が多くなっています。モノの流れが、よりダイレクトになっていることを象徴しています。アスクルやアマゾンなどの商品センターが店舗の代わりに増加しています。

 「食」で人を売り場に呼ぶ

 もともと広大な国土に人が散らばっているアメリカではメールオーダーは一定の活用がされていました。それに比べて人口密度が高いエリアが多い日本ではまだリアル店舗も健闘しているように見えますが、徐々にシェアを伸ばしているECの大して店頭にお客さんを呼ぶ取り組みが強化されています。

 名古屋三越では婦人服フロアのど真ん中にビストロをオープンさせました。東京港区の業者が運営し東京の人気レストランのメニューが提供されます。かつては物販フロアに喫茶店を設置するだけで「冒険」でした。(賃料が低く、施設の配管、防火対策など効率が良くないのです)最近ではカフェ併設は当たり前になってきています。
 「母娘や友人同士での買物を好む名古屋の女性を意識している」そうです。

 大丸神戸店は改装した紳士服・雑貨フロアにカフェバーを設置しコーヒやカクテル、クラフトビールを楽しめるそうです。地元縁の素材を活用、神戸港の船大工の足場板を活用したフローリングや地元銀行で使われていた扉を活用した試着室など,滞在が楽しくなる空間づくりを目指します。地元へのこだわりは理解できます。バーとかシガーバーとかの雰囲気は図面上は格好いいでしょうね。神戸の人がどのように評価するか興味深いですね。

 食はその場所にいかないと楽しめない要素が強いので物販に食の要素を取り入れる動きは今後とも加速するでしょう。立地や客層、建物の設備などによって取り入れ方は異なるので「全国一律」での共通の勝ちパターンは存在しないでしょうが、それだけにわざわざ性を引き出す差別化のポイントになるでしょう。

 「強い」テナントを導入して弱点をカバー

 売上低迷をテナントの賃料収入で補いながら弱点をカバーする動きも続いています。

 ニトリは髙島屋港南台店、新宿タイムズスクエア続いて11月に髙島屋立川店のため4階、5階に5,950㎡の店舗を出店します。髙島屋立川店は売上が低迷しており,婦人服売場を3階、4階の2層から3階へと集約します。現在の売場面積を維持できなくなってきた為の対策でしょうか。

 3月には東武池袋店に出店していますし、10月には東急吉祥寺店にも出店します。ニトリの家具はカジュアルなデザインが多かったのですが、少し落ち着いたデザインのインテリア商品も増えてきています。

 京急百貨店は靴売場の強化の一環としてABCマートをテナントとして導入します。スニーカーの強化のようです。
 http://www.keikyu.co.jp/file.jsp?assets/pdf/company/news/2017/20170828HP_17103NS.pdf へのリンク

 京急百貨店のように店舗として戦略的に強化する分野で足りないノウハウを外部から導入するというのは前向きな戦略だと思います。本来の強みを活かすためにあえて身の丈を縮めるという髙島屋立川店の判断も悪くは無いのでしょうが、ニトリと髙島屋の客層がフィットするかどうかはよくわかりません。

 松坂屋上野店南館は複合ビル「上野フロンティアタワー」へ

 11月4日に松坂屋南館跡地に「上野フロンティアタワー」が4.1万㎡開業します。1~6階は「パルコ」、7~10階はシネコン、12~22階はオフィスになります。松坂屋上野店は呉服屋として開業して250年になります。1907年に座売りから陳列販売となり、百貨店になってから110年になる老舗です。今回建て変わる南館は1957年に建てられました。
 ちなみに名古屋栄の本店が百貨店になったのは1910年ですから。本店より業態転換は早かったともいえます。

 上野は上野公園等文化施設のある山の手と、御徒町、アメ横がつらなる下町が交錯するエリアです。かつては大きな半島の突端だったということで、台地上の山の上とかつては海面だった湿った沼地がその町の空気の違いを表しているのでしょう。大阪で言えば上町台地の南端の天王寺・阿倍野と新世界界隈の境目の違いに近いのでしょう。どちらにも動物園がありますね。

 東京以外のエリアの住民からすると東北からの集団就職で上京してきた高度成長期の団塊世代が郷愁を持つターミナルというイメージが強いです繁華街としては浅草通りを通って東側の浅草とまとめて「上野・浅草」として語られることが多いエリアです。新しい住民に開かれた町というより昔からの住民、利用者が多いまちだというイメージです。

 松坂屋上野店はカード会員の42%が65歳以上で、全店平均の27%を大きく上回る顧客が高齢化した店舗です。(実際はもっと高齢者の利用が多いのだと思います)かつては1,000億円以上あった売上は400億円と低迷しています。(都内の仕事が多い頃、主な百貨店はすべて見て回りました。浅草松屋は何度か見ましたが松坂屋上野店は未見ですのであまりわかったようなことはいえません)
 「上野フロティアタワー」には「パルコ」が運営する「パルコヤ」が入居します。8,200㎡には地元の老舗企業を2割ほど取り入れ、地元初出店の企業を導入し団塊ジュニアを中心とした30~50代をターゲットにしています。コスメと食を強化しています。ディーンアンドデルーカカフェなどのライフスタイル提案ゾーンも設定されています。衣料品のウェートは3割に押さえているそうです。

 「ギンザシックス」に比べて違った形での脱百貨店事業を狙っているようです。「ギンザシックス」はわざわざ見に行く気がしませんが、「パルコヤ」はどんな風に地域性を取り込んでいるか見てみたい気がします。
 
 9月18日の日経MJでは大丸心斎橋店は「マンション」などを組み合わせた複合施設になると報道されています。マンション???詳細は不明でなのでこれ以上のコメントは控えますが、もう少し考えればと、誰しもが思うでしょう。もし本当なら「残念な有効活用」ですね。心斎橋、大阪がどうなろうと関係ないのでしょう。~不動産の賃貸収入を収益の中心にするなら、大丸の高給取りの社員の首を沢山切って、本業を不動産管理会社に業態転換するのが「ベスト」な選択でしょう。
(格好つけてないで小売業の原点にもどれば…と外野からは思います。「先義後利」という社是はもうやめたのでしょうか)

 「ディアモール大阪」、梅田の「イーマ」のPMを受託

 大阪駅前の地下街「ディアモール大阪」が「イーマ」のPMを受託するそうです。不動産会社のザイマックスが運営していたファッションビルですが、ルクア、グランフロント大阪開業以来元気の無い施設でした。立地的、導線的にも「ディアモール大阪」と一体運営されるのがベストでしょうね。駅前ビルも一体運営されればもっと梅田の駅前がよくなるのでしょうね。
 ザイマックスさんは最近ホテル事業に軸足を移しているようです。
                                                                                        (9月19日)


 あなたの友人あ配偶者が脱サラして「ペンション」を始めるとか、早期退職金で「蕎麦屋」を始めるといったら,絶対に断念するように説得しますよね。
 百貨店さんの「不動産事業」や不動産会社の「ホテル事業」にはサラリーマンの「ペンション経営」や「蕎麦屋」開業に近い危うさがあります。
 もし、わけのわからない「コンサル」が煽ったりしていると目も当てられない状況になります。

 旧国鉄、JRが「ルミネ」や「ルクア」など商業施設で成功したのは、社員さんが優秀だと言うこともありますが、活用されていない「駅」という大きな資産があったからです。駅乗降者というブルーオーシャンの市場があったことも大きいでしょう。

 多くの老舗百貨店は本店の「不動産」という資産はあるでしょうが、「マンション」分譲するということは自分の住んでいる家を切り売りするようなものです。(日経の報道には続報が無いので真偽はわかりませんが)大丸が心斎橋改築で「マンション」という選択肢を考えているなら、それはアマチュアの発想です。

                                                                                   (9月21日)
 図-1 株価騰落率 2017年年初来 (日経2017年9月17日記事より作成)
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 ■キャパシティを超えたホテルラッシュ~京都市は何を目指しているのか?
 
 底が抜けている京都市内のホテル建設計画

 12日の大阪市内の計画の集計でもあきれていたのですが、京都市内のホテル計画を集計していて2018年が怖くなってきました。(図2)41件、4659室(※室数判明分のみ)が1年間で増加します。(大阪市内では29件でした)

 計画の中にはアマンリゾーツやフラッグシップ級のホテルもあるので一概には言えませんが、2018年は100室前後の宿泊特化型が多いのです。早く建てたモノ勝ちという心理でしょうか。市内は高さ規制や景観規制があるのであまり大きな建物が建てられません。カプセルホテルや10㎡も無い安物のホテルがどうしても多くなります。

 このリストではすべて拾えていない「簡易宿所」いわゆるゲストハウスが2016年に急増していましたが、(図3)おそらく、もっと増えています。オフィスビルをリノベーションしたり、社宅を改装している物件も少なくないのです。
 
 需要があるから供給が増えるという理屈でしょうが、この急激な増加は,良くない副作用を生みます。十分におもてなしできるインフラが追いつかなければ利用者の満足度が下がります。

 京都市は宿泊施設不足に対応するために「規制緩和」しています。今一度戦略を立て直して,適度な速度で増加させる方策を講じるべきでしょう。

 地元の人はどんな風に考えているのでしょうね。あまり声が聞こえてこないですね。そういえば、地元の昔からのシンクタンクの代表の方は今の京都の姿を嘆いておられましたが…大阪より賢い人が多いはずなのに大丈夫でしょうか。
 (私は生粋の大阪人です。この表現はあてこすりを含んだ自虐ネタなので大阪をDISっているなんて炎上しないで下さいね)

                                                                                     (9月14日)
 
 
図ー1京都市内2017年秋以降の開業ホテルの分布                              図-2 京都市内2017年以降の開業ホテル件数と客室数
 k1k2
表-1 京都市内ホテル開業計画
 k3新聞等公開データより ANALOG 作成 2017年9月現在

 図-3 京都市内宿泊施設数の推移 (2016年12月現在) 急増する簡易宿所(ゲストハウス、カプセルホテル)
 k4京都市保健福祉局医務衛生課調べ

図-4 京都市内旅館・ホテル客室数推移
 k6京都市保健福祉局医務衛生課調べ

 ■神戸三宮はこれからどう変わっていくか?
 
 オフィスの空室率も高く、ホテル新設計画をみても大阪市や京都市のような急激な変化がない三宮は「停滞」しているのでしょうか。

 繁華街を歩いていると、なんだかゆったりとしていて、居心地のいい街です。大阪の街ではもはや「異邦人」のような気持ちになりますからね。適度な街のスケール感と、適度な変化は住んでいる人間、訪れる人間を安心させてくれます。

 こレからの変化は駅ビルの改築からはじまりそうです。来年から始まるJR三ノ宮駅のターミナルビルの建替、神戸阪急ビルの建替えで人の流れが変わりそうです。神戸市の描くデザインではバスターミナル開発や、LRT設置などの構想があり三宮の重心はやや東に移りそうです。

 大阪市のホテル計画が常軌を逸するほど増加しているので、神戸市はどうなのか調べてみたのですが、それほど多くはありませんでした。地元に住んでいる人、働いている人にとっては大阪市のように「ビジター」が急激に増えることは好ましく無いかも知れません。都市政策で「交流人口の拡大」と言う言葉がよく使われますが、大阪の観光政策は「ビジター」はお金を使ってもらう金づるとしか考えていなくて、「交流」など、どこにもありません。考え直す時期なのかも知れません。
 少なくとも「交流人口」という言葉はもう使わないで欲しいと思います。

 神戸は歴史的に海外との交流の歴史が有り、定住している外国人も多彩です。南京町が「縁日化」している(一見さんねらいのぼったくり屋台の「テキ屋経済」)と分析したのは当サイトをスタートした頃ですから10年近く前です。それが都市全体に拡がっていなくて都市のゾーニングが徹底しているのは興味深い知恵です。あの京都でさえ「縁日化」している今日この頃、深く考えさせられるモノがあります。

 神戸三宮について論じるつもりが、つい「大阪」のことを語ることになってしまいました。電飾にいろどられた衰退中の縁日都市とは言え、愛着はなかなか断ち切れませんね。

                                                                                   (9月13日)
 
 図ー三宮・元町周辺の大型商業施設分布と今後の開発計画
 
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新聞等の公開データより ANALOG作成

 ■ホテル開発ラッシュへの憂鬱~全体を俯瞰して考えるリーダーの不在
 
 2018~19年の開業ホテルの増加~「儲けるなら今」なのか?

 前回は今年の春に開発情報を集約しました。久しぶりに情報を集約してみると,2018年から2019年の開業ホテルが増加しています。水面下で動いていたモノが表面化したのでしょうが、この間のホテル計画の増加は少し過熱しすぎだと考えています。東京であれば「オリンピック」までに荒稼ぎという理屈はわからなくもないのですが、簡単に建てられる安物のホテルばかり増えてどうするのでしょう。

 確かにホテル不足ではあるでしょうが、今の業界の課題は「富裕層」をどうリピーターにするか?ということです。

 乱立する安物物件は、狭い敷地にエレベーター1基しかありません。この建物は用途変更もきわめて困難です。

 今の需給状況で瞬間的に採算がとれても、こんなに安物ホテルが増えた時に、差別化できる強みを持っているのでしょうか?多くの宿泊特化型ホテルにはそのビジョンはなさそうです。一見さんねらいのぼったくり屋台の「テキ屋経済」化が進んでいます。


 誰か「止めたれや」と思うのですが、従来こういうときに先をみてブレーキをかけてきた「官僚機構」が機能しなくなっています。
 規制緩和=無条件で善という信仰が日本社会を呪縛しています。特に大阪市の惨状は目に余ります。

 「競争」の中で淘汰されるのだから事業者は自社のリスクで勝手にすればいいのかもしれません。経営者が市場環境や競合環境がどう変化するかを考えることを放棄してはダメでしょう。 目先のことしか見えていないと事業は持続できません。

 宿泊需要の拡大要素として、万博やカジノに期待している人がいるかもしれませんが、たとえ万博の誘致が成功したとしても数週間だけの需要です。(大阪万博の後、関西の観光客は増えていません)

 本来議論が分かれるはずですが、「なし崩し的に」カジノが導入されたとして、カジノ事業者は自社のホテル内に顧客を取り込んで搾り取るというのが基本的なビジネスモデルです。お客さんはIRの外には出てきません。

 ひとつひとつのホテルがマーケティングをきちんと行って、事業計画を立てていればまだしも。スピードが勝負と「ハコを安く早く」つくることを優先したホテルは将来「街の負債」になります。
 ※もちろんリストアップしたホテルが全てダメダメホテルというわけではありません。
                                                                                (9月11日)

 韓国のホテル業界は現在厳しい経営環境におかれています。10年ほど前から中国人観光客が急増し、政府が2012年に特別法を制定しホテルの容積率と、高さ、駐車場制限を緩和した結果、ホテル客室数が2015年時点で10万室を超え、まだまだ増加しています。(ちなみに「大阪府」のホテル客室数は4.8万室 旅館を合わせても7.6万室です 2014年)
 2016年以降、高高度迎撃ミサイルシステムの配備に反発した中国政府の締め付けで中国人観光客が激減、空室率が3割を超えるホテルが続出しています。それでもホテルの新築は続くようです。

 事業者はホテル事業で収益をあげるより、敷地の資産価値をあげるためにホテル物件を開発することが多いとのことです。(商業施設新聞 2017年9月12日号より)

 ちなみにソウルには外国人向けのカジノのあるホテルが沢山あります。カジノは集客には何の役にも立たないと言う事実は認知しておくべきでしょう。

                                                                          (9月12日)

 毎月,明らかになるホテル計画が増えていますね。
 表ー大阪市内のホテル開発計画  10月11日更新  9月11日分の表から追加した案件は赤字表記
 HH1
図-1 ホテル計画 分布図(9月11日作成)
  ht1   ht39月11日作成

 新聞雑誌記事、等から(株)ANALOGが作成
 ■「百貨店」がなくなっていく街
 
 政令指定都市で唯一百貨店の無い街

 今年8月末、タワーマンションが建ち並ぶ川崎市、武蔵小杉駅前の「グランツリー武藏小杉」内の西武・そごうのショップが閉店しました。

 そごう・西武広報によると、武蔵小杉SHOPは2014年11月にオープン。ブランドコーナーと、アクセサリーや靴などの売り場を組み合わせ、傘下に入っているセブン&アイ・ホールディングスの大型商業施設「グランツリー武蔵小杉」2階の一角に展開。百貨店ならではの上質なファッションや化粧品を提供するコンセプトを打ち出した…ニュースを伝えた5月17日付けの朝日新聞では高級路線が受け入れられなかった?と報じています。

 川崎市は2015年5月に地元百貨店「さいか屋」が閉店して以来、人口140万人の政令指定都市である川崎市から「百貨店」が無くなっていました。かつては「西武百貨店川崎店」もあったのですが、商業ポテンシャルの無い街なのでしょうか?川崎駅前のSC「ラゾーナ川崎プラザ」は年間774億円を売り上げて全国のSCでも ベスト3(核店舗除く)にランクインしています。ポテンシャルはありますが、東京都内や横浜にあまりにも近いために「百貨店需要」が流出しているのでしょう。
 関西で言うと尼崎市(人口45万人)のポジションに似ていると感じます。尼にもかつては「つかしん西武」がありましたが、現在は「尼崎阪神」がかろうじて残っているだけです。広域集客する商業施設は「コストコ」がトップですね。

 政令指定都市の規模が有り百貨店が無いのは「川崎市」だけです。地形的にも縦長で、おそらく武蔵小杉の住民は「川崎市民」だと思っていないでしょう。川崎市は「川崎フロンターレ」やアメフトの「富士通フロンティアーズ」が強いので、スポーツによるまちづくりを掲げています。それでも地元に「百貨店」が無いのは寂しいですね。

 他の政令指定都市でも,浜松市は「遠鉄百貨店」だけですし、熊本市はかつては「岩田屋伊勢丹」「城屋」「鶴屋」と3つの百貨店がありましたが、今残っているのは「鶴屋」だけです。(それぞれ強い百貨店です)複数の百貨店は持たなくなってきているのでしょうか。熊本は「ファッション感覚」は大阪以上という自負心を持っていますから、JR野駅ビル開発に期待がかかっています。

 他にも堺市から「北花田阪急」が撤退すると残るのは「髙島屋」(堺店、泉北店)だけになります。北九州市では地元の「井筒屋」が2店舗営業していますが、かつてあった「玉屋」や「そごう→伊勢丹」はなくなりました。  町にイオンモールがあるからそれでいいというものでは無いでしょうね。

 千葉県から百貨店が消えていく

 千葉県内で百貨店の閉鎖が続きます。2016年に柏市の「そごう柏店」が閉店、今年3月に千葉市内の「千葉三越」が閉店しました。来年2月に「西武船橋店」が閉店すると発表されました。柏市には「柏髙島屋ステーションモール」がありますし、千葉市には「千葉そごう」が残っています。船橋市には「船橋東武」はまだ営業中です。

 松戸市は「伊勢丹松戸店」を引き留めるために地代の負担まで検討していましたが、営業継続は難しいかも知れません。

 都心の旗艦店も営業不振で苦しんでいる中、郊外都市の店舗は一層厳しい状況にあります。

 ショッピングセンターやEコマースなどとの競争が激しくなったこともありますが、やはり「百貨店」の商品の価格が高いのが衰退の原因だと思います。中流層が少なくなってきたといわれていますが、昔を振り返ると、子供の頃からの百貨店の利用は、「大食堂」か「バーゲン」しか覚えていません。贈答くらいしか定価で買い物した覚えはありません。(一応中流層の利の目安として下さい)~バブルの時期に「高い商品」が幅広い層に売れたことで百貨店の「バランス感覚」が狂ったのではないかと考えています。(これは、どこかで,計量的に検証しておこうと思います)

 ECでは得られない「買物」の快楽をどう取り戻すのか?昨晩TVで放映されていた「コストコ」の店内の映像を見て、あらためて考えさせられました。

                                                                (9月8日)
 ■アウトレットモールも無敵では無い~再生の方向性
 
 大手2強に集約されるアウトレットモール

 大型商業施設で好調なのは、アウトレットモールですが、最近は三菱地所・サイモンの「プレミアムアウトレット」と三井不動産の「三井アウトレットパーク」の2強に集約されてきた感があります。関西でも新名神沿線の城陽市に城陽市に「プレミアムアウトレット」の出店計画が発表されています。

 国内では若い世代を中心に節約志向が強く「ラグジュアリーブランド」の人気がいまひとつで、食料品やスポーツ・アウトドアブランドまで幅広いニーズに応える必要がありますが、海外ではアウトレットが少ないため、訪日観光客には人気が高いのです。ITC化により在庫管理が徹底され、メーカーも自前のECサイトで在庫処分を行うようになっった為、「掘り出し物」が少なくなったのも国内客が離反してきた要因でしょう。

 内外の利用者のニーズに応えるため大規模な店舗が必要で、中小のアウトレットモールではアウトレットモールからの撤退や一般SCやアミューズメントとの複合に生き残り策を見いだしているようです。

 ATC「マーレ」は1万㎡の半分を室内遊技場「あそびマーレ」に

 大阪南港のATCに立地する「マーレ」は2014年の夏には半分のスペースを室内遊技場に業態転換しました。

 日遊べて安い…子連れに人気の室内遊園地「あそびマーレ」

 4月下旬の平日夕方、あそびマーレの「トドラーゾーン」(未就学児専用のコーナー)で、親子4人が満足そうな笑顔で帰り支度をしていた。たまたま夫婦の仕事が休みになり、5歳と3歳の兄弟を連れて初めて来場。母親の会社員、麻生涼子さん(38)は「値段も安いし、フードコートやゲームセンターなどいろいろあって楽しい。また来ようと思います」。
 麻生さんによると、子供たちが一番楽しんだのが別のゾーンにある「フワフワアスレチック」。エアの入った高さ約2・7メートルのアスレチックと滑り台が一体になった遊具で、親子で一緒に体を動かせるのが特徴だ。前田勝寿店長は「お子さんと一緒に滑った親御さんの方が楽しくなって、何度も滑っているパターンが多いです」とほほえむ。

 同じゾーンにはローラーの中に入って転がして遊ぶ「ローラーズ」や、巨大なボールプールなども。休日にはこのゾーンだけで約300人の親子が遊び、げた箱がいっぱいになるほどの人気だ。事故を防ぐため、ボールプールは身長100センチ以上の子供用とそれ以下の乳児用の2カ所設置し、休日は5人のスタッフが目を配っている。

 ATC株式会社によると、26年夏のオープン当初は集客が伸び悩んでいたが、国内最大級の親子のお出かけ情報サイト「いこーよ」にクーポンを掲載したところ、27年度には年間入場者数が23万人を突破。「いこーよ」が集計した昨年1年間の人気ランキングでは、全国約4万3千カ所の遊園地や動物園を抑えて第1位に輝いた。

 前田店長は「何度でも再入場でき、1日中遊べるのが重宝されているようです」。雨の日でも子供が体を使って遊べる多彩な遊具に加え、他の室内施設に多い10分ごとの課金設定がなく、長く遊べば遊ぶほど“もとがとれる”システムが関西人の心を打ったのだろうか。ATC株式会社の担当者は「年間10万人の入場を目指していたが、うれしい誤算だった」と笑った。

年間集客数は3年間で5万人増、借金401億円→213億円に

 ATCが家族連れ重視の方針を明確に打ち出したのは26年に迎えた開業20周年がきっかけだ。担当者は「商業施設である以上、ファミリー層は当然、開業当初からターゲットにしていた」と振り返るが、この年に「親子三世代」をキーワードに掲げ、野外にカラフルな遊具を設置。持参した弁当が食べられるようテーブルなどを配したピクニック広場、家族で花と緑を楽しめるミニチュアガーデンも作った。夏にはあそびマーレが開業し、子育て世代から注目される存在へと変貌した。

 (産経 2016年 5月29日 「関西の議論」)

 クーポンを使えば1日中遊んでも平日600円、休日900円という料金設定が最大のポイントでしょう。最近は子供が遊べる室内遊技場を併設するケースが増えていますが、ボーネルンドの「「キドキド」では時間制になっていて最初の30分500円+100円/10分です。平日の1日利用クーポンで1700円ですから、お得ですね。雨でも遊ばせられますし)

 無料又は格安で子供を遊ばせることが出来る施設の設置は広域集客の定番です。例えば愛知県の「刈谷ハイウェイオアシス」年間998万人で全国4位集客数(総合ユニコム2015)は無料で利用できる施設内に50円であそべる子供遊具があり近くのトヨタの従業員ファミリーで賑わっています。「レゴランド」も格安利用券を設定すれば,集客数が増加し,周辺の店舗も潤うのでしょうが。

 ATCは超格安室内遊戯施設でガッチリ  ですね。

 四国唯一の「アウトレットモール」 東温市「クールスモール」は劇場関連施設に

 四国にはアウトレットモールはひとつしかありません。松山市のベッドタウン東温市には「レスパスシティ クールスモール」という地元資本のアウトレットモールがあります。ベルメゾンのアウトレット店などがありますが長年空き店舗に悩まされてきました。

 温浴施設や、地元産品の産直市場、全国大会も開催されるフットサルコートがあり、集客機能は申し分ないのですが,アウトレットモールとしては規模が小さくテナントが埋まらなかったのです。

 ここにはもうひとつユニークな集客施設があります。オリジナルのミュージカルを上演する「坊ちゃん劇場」です。オリジナルミュージカルは人気が高くレベルも高いと評価されています。これだけ集約機能があっても小売りの集積が薄ければモールは成立しません。(松山市には大規模SCも多いですしね)

 行政のバックアップも有り、劇場の関連施設が増床するようです。

 小規模異な事業者では「アウトレット」と標榜できるテナント集めも困難だったのでしょうね。

 「広島マリーナホップ」~「マリホ水族館」

 広島市西区、中心部から車で20分の立地にある「広島マリーナホップ」は敷地面積11万㎡、売場面積3.5万㎡のアウトレットモールでした。、2005年に開業後、2008年に運営会社のミキシングが経営破綻。」2012年から元のビルメンテナンス業者(株)第一ビルサービスが運営しています。海沿いのプロムナードの整備、レストランの充実、ペット関連施設の導入など脱アウトレット化をはかり、2010年には30億円だった売上を2016年には74億円まで回復させています。そして今年2017年には小型水族館「マリホ水族館」をオープンしています。夜の運営を強化し、ファミリー層に加えてデート利用の開拓を目指しています。今後の売上目標は100億円だそうです。

 その他の撤退事業者


 茨城県の「大洗リゾートアウトレット」(60店)は日常遣いのSCに業態転換。大阪府の「岸和田カンカンベイサイドモール(106店)」も,アウトレット業態からは撤退しています。

 アウトレット機能を残しながらも他の業態を複合するのは、「ヴィーナスフォート」(36店)+一般商業となります。町田の「グランベリーモール」(100店)改装中で一般商業も含め拡張計画を進めています。~どちらも首都圏の立地なので商業立地として地の利は悪くないですね。

 郊外立地で従業員の確保や平日の集客に課題が多い業態ですから、平日も利用が見込める「訪日観光客」の動員が見込める「ラグジュアリーブランド」なども揃った大型施設で無いと「アウトレットモール」としての生き残りは難しいのでしょうね。店舗数が200以上ないと厳しいようです。

                                                                              (9月5日)
 ■「大丸」旗艦店の変調の背景は社内の「脱百貨店」の風なのか
 
 Jフロントリテイリンググループが目指す「脱百貨店化」

 「松坂屋銀座店」の跡地に開業した「GINZASIX」は同グループの「脱百貨店」化の象徴のような店です。「百貨店業態」の全体の市場規模は縮小しています。その中で,生き残るためには「百貨店」にとらわれない事業に投資の比重が移るのは当然でしょう。

 Jフロントが進める脱百貨店はもう1つある。今2018年2月期決算から国際会計基準(IFRS)に移行することだ。
同社は4月10日に2017年2月期決算(日本基準)を発表。売上高1兆1085億円(前期比4.7%減)、営業利益445億円(同7.2%減)の減収減益だった。
百貨店事業で売り上げ構成比の4割を占める衣料品の販売不振が続き、大丸東京店以外がすべて前年割れとなったことや、大丸心斎橋店本館建て替え工事に伴う売り場面積の減少や訪日外国人観光客の購買単価の低下も影響したためだ。
IFRS基準の今2018年2月期の見通しでは、売上高に該当する売上収益は4690億円(IFRSで概算した2017年2月期比で3.5%増)、営業利益は445億円(同6.6%増)となる。

 (東洋経済オンライン4月20日~)

 会計基準を変更することで「同業他社」との比較はできなくなりますし、社内的にも「百貨店」から脱却するのだという意識が徹底されるでしょう。


 おそらく、全国的に「百貨店」の店舗数はもう少し絞られるのでしょう。とはいえ、「百貨店」の持つ集客力、販売力は他の業態を上回ります。残れた百貨店はそれなりに存在感を保つだろうと考えていました。

 大丸グループの中で、残るだろうよみていた百貨店として「大丸京都店」「大丸神戸店」「博多大丸」の3店があります。それは店舗の環境と優良な「顧客」の存在です。(大丸心斎橋店は「改装中」なので評価を保留します)
 
 全国広域の富裕層からの「支持」があるのは「髙島屋」「三越」「大丸」の3つのブランドです。「伊勢丹」「阪急」は商圏内では高い評価を得ていますが、商圏外の富裕層に届くブランドイメージはありません。

 その店で買い物をすることが「エンタテイメント(時間消費)」になり「コト」である為には長い年月に積み上げられた「伝統」が必要です。「顧客との関係づくりのノウハウ」は顧客が変わって形を変えても差別化の武器になります。

 「大丸」でも東京店は順調に伸びていますし、マスコミに取り上げられる回数も多くなっています。

 もちろん経営者として「百貨店を切り捨てる」判断はされていなと思いますが、「オーセンティックな百貨店」の継続についての社内の関心は薄まっているのだろうと推測します。

 もったいないな,とは思いますがそれもまた「経営判断」なのでこの路線は続いていくことでしょう。インバウンド熱が引いた後も頑張って踏みとどまってくださいね。

                                                                                       (8月30日)

 どの業種に限らず、企業の中で「日の当たる部署」とそうで無い部署があります。総合商社で言えば最近までは「エネルギー部門」が稼ぎ頭で、例えば「繊維部門」などは少し勢いが無かった時期がありました。某総合商社の面接で、応募した学生が当時繊維部門のトップだった人、「何故、繊維部門を志望するのか?「食品」や「エネルギー」ではないのか?と聞かれたといいます。その方は実力者だったので後に社長になられましたが、部門の組織内には「頑張っても成果があらわれない」という空気があったのでしょうね。総合商社の繊維部門は子会社の専門商社をうまく使って赤字を抑制していました。

 百貨店の中でもかつての花形は「婦人ファッション」部門で、「食料品部門」は傍流だったと聞きました現在は百貨店は「食料品」が大きな柱になっています。

 10年以上前にオフィスビルを中心とした再開発で商業ゾーンの企画パートナーのコンペをやることになりました。設計事務所や企画会社だけでなく、将来のPMをにらんでPMも出来る商業者をリストアップする事をおすすめし、そのお手伝いをしたことがあります。

 施主様のご意向で「百貨店」には声をかけたいということで何社か御紹介いたしました。当社は選考には参加していませんが、後で聞くと、提案書の内容や積極性では「大丸」系の運営企業さんは、他の百貨店さんと同様、高い評価を得られなかったそうです。当時は他の百貨店と同様に、あまり専門店運営に力をいれておられなかったのです。(ホテルのショッピングアーケードの運営は各百貨店が対応されていましたが)
 ちなみに、百貨店をリストアップするときに情報収集したときに、業界の中で百貨店系で「SC運営」の評価が高かったのは二子玉川SCを運営する子会社「東神開発」を持つ「髙島屋」さんでした。

 「大丸」さんも神戸大丸周辺の「ブロック30」や心斎橋周辺での「ビッグステップ」「クリスタ長堀」の運営をされるなど実績は十分でしたが「専門店の集積」を運営する「組織としてのノウハウ」の蓄積ができていなかったのかも知れません。ノウハウが属人的で誰が担当するかで提案に差があったのでしょう。当時は企業グループとしてもPMはあまり重視していなかったのでしょう。~当時はほとんどの百貨店がそうだったのでこれは「大丸」だけの問題では無いです。

 注目したいのは、この10年間に「大丸梅田店」での専門店導入の成功、「大丸東京店」改装での専門店導入の成功により、都市型SCの最新型「GINZASIX」に結実した変化のスピードです。おどろくべきパワーですね。そして、専門店シフトの方向性はまったく間違っていないと思います。

 最近の大丸の社内については全く知りませんが、社内の空気としてオーセンティックな「百貨店事業」への関心が薄れているように見えます。それがもったいない。

 「三越」「伊勢丹」「髙島屋」「阪急」でしたらダントツの稼ぎ頭である地域一番店をもっています。その店の骨格はうかつにはいじれません。「大丸」には地域一番店,稼ぎ頭が無いので良くも悪くも「変えられない」制約は無いのでしょう。~本社を大阪から東京へ移したことも少なからぬ影響があると思います。
 現在建て替え中の「大丸心斎橋店」がどのようなバランスの店になるか。もちろん、従来の顧客層への対応は意識されていると思いますが、目の前に勢いがあるインバウンド市場があるときに同バランスをとるのか楽しみですね。

 建築マニアの反対を押し切ってヴォーリスの建物を解体した時は、耐震補強を考えると、新しい歴史に残る建物をつくればプラスにもなると思いましたが(中之島ダイビルの建て変わった新しい建物は格調が高くて気に入ってますしね)思えば、あれがターニングポイントだったのかもしれません。

 大丸の関係者の方、気い悪しはったらごめんなさい。「GINZASIX」をわざわざ交通費を使って見に行きたいとは思いませんが、新しい「心斎橋店」は楽しみにしています。

                                                                                         (8月31日)
 図-1 京都の百貨店の経年の伸び率                       図-2 神戸の百貨店の経年の伸び率
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図-3 福岡の百貨店の経年の伸び率
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 ■「八尾西武」跡の「再利用」施設9月15日開業
 
 西武百貨店八尾店(八尾西武)は今年2月に閉店

 1981年開店の百貨店が36年の歴史を閉じました。ザイマックスが運営を引き継ぎ、9月15日に「リノアス」として再スタートします。「再生」という表現をしている報道もありますが「再利用」ですね。従来からあった「ロフト」や「パントリー」(高級食品スーパー)は残り、「無印良品」は拡張し再開業します。

 テナントの顔ぶれは「ニトリ」「ユニクロ」、「エディオン」、「ライトオン」、「ABCマート」、「JINS」、「H&M}「セリア」などおなじみのメンバーです。ここに出店していない「ドンキホーテ」とか「ツタヤ」「GU」などとの順列組み合わせでどこにでもあるSCができあがりそうですね。
 4万平米の規模ですから、出店者を集めるのは大変だったでしょうね。近鉄八尾駅前でショッピングセンター「アリオ」にも連結しているので地元の人にとっては便利なので床を埋めるのは苦労しなかったのかもしれません。その所為か、最近必須の「コト消費」的なテナントは思ったより多くありません。

 西武が関西に進出したときに何故「八尾」を選んだのでしょうね。「西武」のカラーからすると地元色の強い「八尾」より、新住民の多い北摂等のエリアの方が「西武ファン」を育てることができたでしょう。「高槻西武」は(エイチツーオーに売られましたが)、そこそこ売上は上げていました。

 こういう商売をしていながら「八尾西武」は西武時代を含めて,一度も足を踏み入れたことが無いことを思い出しました。用事が無ければいかないエリア(悪い意味ではなく地元住民中心の生活エリアだということです)に広域型の店舗を出店しても人の流れは創造しにくいのだと思います。観光地でも無いですしね。

 おなじみのテナントさんたちが支持される背景

 いつもおなじみのメンバーはまず「価格」で商品を選択される業種業態です。どこの地区でもそれらのテナントが繁盛するのは,この国のデフレが常態化しているからです。特に「大阪市」はインバウンド景気で目立たないですが、他地区よりも街の生活荒廃が進んでいます。(先日、用事が出来て久しぶりに「神戸三宮」を「観察してあらためてそう感じます)

 シニアの多い郊外住宅地ではリタイヤした高齢者が「ユニクロ」や「GU」のファッションを愛用しています。似合っていないよそれは。若い子であれば,古着等でコーディネートできるのでしょうが、高齢者のユニクロファッションは寒々しい風景です。

 商業施設の「再生」は、その先に地域の利用者の「豊かな暮らし」をサポートできるものでないと街全体が衰弱し、商業者としても持続性が維持できません。例えば「子育てサポート」のように、注目されていなくても眠っている需要はまだまだあります。
 「カーブス」であれば「カーブス」をいれるだけでなく,そこから拡げられる需要はあるでしょうという話です。「賃料負担力の順番でテナントを入れると雑居ビルになりますよ」ということです。大阪駅前ビルみたいにね。

                                                                                     (8月28日)
 ■名古屋、福岡~駅前と中心市街地繁華街のバランスはどう変化したか
 
 名駅の存在感が高まっていくといわれる名古屋だが

 今年4月のJRゲートタワーの開業で、さらに名駅への集中が進むのかも知れません。ここで集計した数値は大型店だけなので、地下街やトヨタのオフィスの商業施設を含める少しバランスは変わるかも知れません。2022年のリニア開業に向けてこれから「ささしまライブ24」(今秋開業)など駅の西側・南側の開発が進みます。
 リアにを意識したのかオフィスやホテル、高層マンションなど「ハコ」の中での開発が多く。「街」としては地元に定着していくのに時間がかかりそうです。


 東海財務局が1日に発表した名古屋の大学生の消費行動に関する調査結果によると、魅力を感じ、行ってみたい地域として全体の43.1%が栄地区を選んだ。再開発で商業施設の開業が相次ぐ名古屋駅地区の16.5%や首都圏、関西圏などを上回った。

 4月には複合ビル「JRゲートタワー」が全面開業した名駅の「独り勝ち」が指摘されるが、学生には栄が支持されている様子がうかがえた。担当者は「栄には、若者に魅力的な店舗が多く、回遊性がある」と分析。緑も多く、大須が近いことも強みのようだ。

 調査は6月上旬から中旬に実施し371人が回答。1年前と比較して名駅周辺への訪問頻度は47%が「とても増えた」か「少し増えた」と答えた。ただ、今後、名駅を訪れたい学生は、男子18.3%、女子11.8%にとどまった。一方、栄に行きたいのは、男子42.7%、女子44.1%。(中日新聞 8月2日)

 また、国土交通省から名古屋市の住宅都市局長に就任した官僚さんが「名古屋らしさは栄にある。にぎわいは2つの拠点がないとうまれにくい」と指摘しているように外から来た人にとっても名駅の街の魅力の欠陥を指摘しています。栄には久屋大通公園という大きな公園があり、お金の無い人も時間が過ごせますが、名駅ではお金の無い人の居場所がありません。昔に比べ薄れてきたとはいえ、地元意識の強い名古屋ではやはり「栄」なのだと思います。
(リニア新幹線自体、「成功」するかどうか不明瞭な部分を残していますしね)

 「JR名古屋髙島屋」について「JRに利益を吸い取られて永遠に赤字」といった裏話を聞いたこともありますが、「JR名古屋髙島屋」は「JR京都伊勢丹」と並んでJRと百貨店が組んで成功した事例でしょう。

 天神と博多~猛追する博多だが百貨店の集積はやはり強い

 昨年4月、博多駅前の郵便局跡のKITTEに開業した「博多マルイ」など話題の多い博多駅前ですが、やはり岩田屋、三越、博多大丸と百貨店が揃い、路面店も充実している天神地区のとの差はまだ倍近くあります。伸び率(図-5)でみると「博多阪急」「アミュプラザ」が2年連続伸びており勢いがあります。

 天神地区で意外なのは「博多大丸」の低迷です。かつて、岩田屋が本店、新館、ジーサイドと3館体制でMDがぶれていた頃、売上金額はともあれグレード感では地域ナンバーワンだった印象がありました。確かに岩田屋は伊勢丹のてこ入れがあっていい店になりましたが、図-4にあるほど「博多阪急」に迫られるとは
予測していませんでした。

 Jフロントリテイリンググループ(大丸、松坂屋)でオーセンティックな百貨店として残るのは「名古屋の松坂屋」と「大丸京都店」「大丸神戸店」そして「博多大丸」だろうと考えていました。「大丸神戸店」も(8月21日記事 図-2)失速しています。これはどういう事なのでしょうか。「オーセンティックな百貨店」の市場は店が絞られる以上のスピードで縮小しているのか、jフロントの経営資源がこの業態に投入されていないのか?どうなんでしょうね。

 「福岡パルコ」では市ナックン5階にシェアオフィスを導入し,文化・情報の発信基地とします。流行への感度が高い「インフルエンサー」を呼び込み、館自体の魅力を日置上げるのがねらいです。面白い取り組みですね。紹介している日経新聞地方版ではセゾングループ創業者の堤氏パルコ=の「公園造り」思想への原点回帰と紹介しています。(今はjフロントリテイリンググループなんですけれどね)

 天神、神戸を分析してあらためて「大丸」さんの奮起を期待したいと思います。頑張って下さいね。

                                                                        (8月25日)
 図-1 名古屋地区名駅と栄地区売上と営業面積比較 2016年         図-2 名古屋地区 名駅の店舗と栄の店舗売上と営業面積の比較 2016年
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図ー3 福岡地区天神と博多(駅前)の売上,面積比較2016年      図-4 福岡地区 天神の店舗と博多の店舗売上と営業面積の比較 2016年
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図-5 天神・博多地区 売上伸び率 2015年×2016年
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いゾーンが一昨年、昨年と続けてX前年比マイナスの店舗 =危険ゾーン
 黄色いゾーンが昨年はプラスだったが今年はマイナスの店舗 =要注意ゾーン

(繊研新聞記事から作成 同社が実施した企業へのアンケート調査に基づく)



 ■東京都内ターミナル繁華街のポジショニング~渋谷、新宿、池袋、日本橋・銀座の盛衰
 
 新宿がトップである事は揺るがないが日本橋・銀座エリアが大きく伸びている

 図-1はあくまでも公開されている大型店の売上げを集計したものです。路面店が強いエリアもありますので、これだけで力関係は語れないでしょう。それでもひとつの目安としてして有効だと思っています。
 都内のターミナルでは新宿エリアが合計6,588億円とトップです。百貨店の売上げはやはり大きいです。「伊勢丹新宿店」は伸び率を落としていて勢い陰りが見えますが、図抜けたパワーを持っています。「京王」「小田急」もやはり伸び率は低迷してもターミナル百貨店としてベースを確立しています。「髙島屋新宿店」は伸び率は高いのですが、売場面積のわりに金額が低いように見えます。もともlと「髙島屋タイムズスクエア」として都市型のショッピングセンターとして開業したので、百貨店よりSCとして考えてもいいかもしれません。(紀伊國屋書店の退店は賛否在りますが、床をより高く売ろうという経営判断でしょう)百貨店で大きい外商の売上がどう配分されているかも影響します。
 ルミネは安定していますね。

 銀座・日本橋を一つのエリアとしてまとめるのに異論があるかも知れません。歴史的に日本橋から銀座有楽町の回遊はひとつの人の流れとしてまとめています。(日本橋から銀座有楽町までの距離は大阪で言えば難波から心斎橋ぐらいの距離です)
 2016年の売上は6,123億円。昨年から今年に開業した「銀座東急プラザ」(目標330億円)「GINZA SIX」(目標600億円)が目標通りの売上をあげると百貨店・SCの売上では新宿を超えるエリアになります。(「GINZA SIX」はちゃんと見てからコメントしますが、今の所、賞味期限が短い店舗ではないかと危惧しています)

 池袋は、「西武池武本店」に比べて「東武池袋店」の坪効率が悪いことが目立っています。今年の秋から食料品売場を大改装するそうです。開店の時にリサーチしましたがあらためて周辺地区及び沿線の資源を洗い直して床の使い方を考え直す必要がありそうです。

 渋谷では東急電鉄(株)、JR東日本(株)、東京地下鉄(株)の共同開発「渋谷スクランブルスクエア」の計画が進められています。2027年度をめどに延べ床27.6万㎡、商業施設7万㎡の整備が進められます。
 周辺でも青山・原宿への面的な拡がり、恵比寿や代官山、六本木とも徒歩圏なのでこの周辺の変化は楽しみです。

 都内では、表参道、上野、秋葉原、品川、錦糸町など、注目したいポイントはありますが、それらについてはまた別の機会に分析します。

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 図ー1東京都内ターミナル 大型商業施設の売上と売場面積(2016年)
 OP
                                          
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(繊研新聞記事から作成 同社が実施した企業へのアンケート調査に基づく) 当サイト8月18日の伸び率の比較記事とあわせてご覧下さい
 ■「子育てファミリー」市場は突然あらわれたわけではないのに~ちゃんと対応すれば市場は動く
 
 縮小している「子供市場」に向けた対応が相次いでいる

 2014年に開業した大阪府和泉市の「ららぽーと和泉」は子育てファミリーをのお母さんをターゲットにしたショッピングセンターです。

開業時のプレスリリースではこう表現されています
 “ママwithららぽーと”子育て中のママたちの意見を取り入れコンセプト化、ママに優しい多数のメニューを実現

・‘ママ社員’が中心となり、ママたちのショッピングセンターへの期待を反映した新たな取り組み“ママwithららぽーと”
・充実のアメニティゾーンや遊び場、イベントなど、ママの「あったらいいな」を集積した「キッズパーク」、お子さま連れでも快適に食事が楽しめるようフードコート内に「キッズ エリア」を設け、配膳サービスを実施(予定)
・荷物が多いママも安心して快適にショッピングが楽しめる、お荷物預かり・ポーターサービス
・店舗とのコラボレーションによる、ママ・ファミリー向けイベントやサービスを充実


 売上は順調に推移しています。

 隣接する和泉ニュータウンのセンター地区のSC「エコール・いずみ」も今年になって30代子育てファミリーへの対応を強化しています。6月下旬に各店舗のイズミヤがこの層をターゲットにしたリニューアルを行いました。

 核店舗のイズミヤは、食品では近郊農家の農産物などを集積した「さんさん市場」を設けるなど生鮮品を強化した。3階は、キッズレストスペースの新設、会員制ダンボール遊具の「ニコグラウンド」の導入、学用品を豊富に揃える文具売り場の刷新などを実施した。同店の改装後約1カ月間の売り上げは前年同期間比約20%増と好調に推移している。
 このほか、東館3階に5月から7月にかけて、子供向けの「ウイング体操教室」、女性専用の「カーブス大阪」、スポーツクラブの「アクトスWill・G」を導入しており、順調に会員を獲得しているという。来春にも新規テナント導入を検討している。

 同施設は、B級グルメグランプリやよさこい祭り、ジャズライブなど地域密着型イベントに力を入れており、4月から毎週木曜の夕方に無料音楽ライブを新たに開始した。今夏には同施設店舗会主催の盆踊り大会も実施する。
(繊研新聞8月16日)

 和泉ニュータウンは高齢化した泉北ニュータウンに比べて若い世代が多い事は確かです。大阪府の南部地区の中では数少ない人口増加地区です。

 とはいえ「子供市場」は子供人口の減少の中で縮小しています。ここにきて「各地で子育てファミリー」をターゲットにし商業施設が増加しているのはどういう背景があるのでしょう。

 枚方T-SITEは子育てファミリーがターゲット

 各SCで集客装置のモデルとなっているツタヤのT-SITEは書籍や雑貨、教室など子育てファミリーを強く意識したものになっています。多くのSCがツタヤを導入しベンチマークにしています。枚方のSCの売上をプロットした昨日の図でも、「枚方近鉄」が大きく伸びています。本気でやれば効果はあるのです。

 「保育園」の待機児童の解消が社会的なテーマとなったのはごく最近です。実際の問題はもっと以前から存在していたのですが、後回しになっていた課題が「保育園落ちた日本死ね」問題でクローズアップされて初めて,大変な課題だと多くの人が気がついたのです。

 「子供市場」といえば「高価なブランド子供服」という先入観にとらわれていた既存の商業施設が「子育てファミリー層」についてわかっていて対応しなかったのは単に、「面倒くさい」「やったことがない」からに過ぎません。「6ポケット消費」ということばで高額消費のターゲットとしてしかとらえきれていなかったせいです。

 特に百貨店は自分達の従来のスタイルにあてはまる形でしか「市場対応」をしようとしません。最近になって「コト消費」対応をトップがいいだしてようやく新しい市場への対応が進み出しています。子どの向けの教室や遊び場、ファミリーで楽しめる飲食などかなり整備が進んでいます。

 実は他の「市場」でも本気でやり方をかえれば活路がひらけると考えています。「シニア」「介護対象者」「単身者」「学生」「ワーキングウーマン」等々、立地にあった切り口で本気で取り組めば「集客」は可能です。市場規模が大きければあまり考えていない「ノープラン」でも「数撃てばあたる式」にまぐれで成果が得られるでしょう。
 
 今学ぶべきは、他社の表面的なまねっこではなく、取り組みの本気度の取り入れでしょう。市場は縮小しても商機の開拓の余地はあるということは勇気づけられる「トレンド」です。

                                                                                   (8月23日)
 ■京阪神郊外と地方拠点の商業施設の赤信号・黄信号
 
 順調に数字を伸ばす「西宮阪急」「ピオレ姫路」

 百貨店の郊外店舗は2015年、2016年と売上を減少させている店舗が多いようです。インバウンド需要が期待できないだけに「消費の不振」の影響を直接的にうけてしまいます。2年連続減少している中で「堺北花田阪急」は閉店します。姫路市中心部のヤマトヤシキはファンドの経営で再建中です。
 都新店舗は好調な「髙島屋」も郊外店では苦戦が続きます。「泉北店」は「ららぽーと和泉」「コストコ」開業(2014年)の影響が大きいかもしれません。今年3月の泉北パンジョのリニューアルが起死回生になればいいのですが。大阪市と堺市を隔てる大和川。大和川の南での唯一の百貨店(堺店含む)なので持ちこたえて欲しいものです。

 近鉄百貨店は郊外店も厳しい状況です。先日のテレビでバブルの時に開発され、今は人通りも少ない住宅地の店舗を1,000万で購入してケータリングの仕込みの場所で使っている「ボンビーガール」が紹介されていました。奈良県の住宅地?番組内では地名は明らかにされていませんでしたが,ネットでは「生駒市」と紹介されていました。近鉄沿線の住宅地ではおしゃれ度ナンバーワンと言われたこともありましたが、寂しいですね。中流階層が一戸建てを購入するときに選ばれていた(手の届く)住宅地でしたが、若い人達は都心の利便性を選ぶので「郊外住宅地」は厳しいのでしょうね。高齢化も進んできますし。

 「西宮阪急」の好調は、 西北の住宅地としての人気とも連動しています。同じ、北摂の「阪急」でも「川西阪急」「千里阪急」あそれぞれ、赤信号、黄信号ゾーンにあります。店舗改装にあまりお金をかけていない事も影響しています。「京阪枚方店」は今年大きく伸びています。これは以前に書いたように「T-SITE」効果しか考えられません。新しいチャレンジをした取り組みがあれば人は集まります。
 それでも、そこそこ売上金額があり、減少率が他と比べて低ければあまり投資したくないのでしょうね。

 「ピオレ姫路」駅ビルが開業する前は、姫路商圏は「車社会」だから都心の専門店ビルは厳しいよといわれたものでした。百貨店も不振でしたしね。依るが早いし、駐車料金を払って買い物する習慣が無いし、毎日電車を利用する人も少ないし…グリーンオーシャンがそこにあったのですね。

 確かに大阪を筆頭として関西経済は低調ですし、人口も減っています。高齢化も進んでいますが、まだまだちゃんと考えてマーケティングすればブルーオーシャンは眠っていると考えています。
 回りの店舗も,業界も売上が減少しているので,その中で相対的に悪くない数字があることで安心している企業が一番危ないでしょう。


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 図-1 郊外店・地方店の売上げ伸び率 2015年×2016年
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赤いゾーンが一昨年、昨年と続けてX前年比マイナスの店舗 =危険ゾーン
 黄色いゾーンが昨年はプラスだったが今年はマイナスの店舗 =要注意ゾーン

(繊研新聞記事から作成 同社が実施した企業へのアンケート調査に基づく)
 売上高・店舗面積に関しては8月10日の当サイトの記事もご覧下さい。
 ■神戸・京都エリアの商業施設の赤信号・黄信号
 
 京都エリア

 「大津パルコ」は今月末で閉店します。「大丸山科店」「西武大津」も危ないラインです。昨年良かった「JR京都伊勢丹」も今年は大きく売上を落としています。昨年は4月に「京都鉄道博物館」が開業しましたがその勢いが続かなかったようです。JR京都駅周辺は宿泊特化型ホテルの出店ラッシュが続きます。今年の4月には「京都タワー」に「京都タワーサンド」が開業していますが、これもまた「観光客」対象の施設なので「百貨店」の集客にはあまり関係ないのかも知れません。

 大型店では「アウトレット業態」に勢いがあるように感じますが、京都・滋賀エリアの「三井アウトレットパーク滋賀竜王」が調子を落としています。京都府内では城陽市のインター沿いに「プレミアムアウトレット」の出店計画が発表されています。「アウトレット」も業態としての強みだけでは無く、個別の立地毎のマーケティングが必要になります。

 神戸エリア

 神戸エリアでは「神戸アウトレットパークマリンピア神戸」と「神戸三田プレミアムアウトレット」の明暗が分かれています。前者は連続してマイナスなのに対して,後者は連続してプラスになっています。

 神戸市内では圧倒的な一番店となった「大丸神戸店」が2年連続マイナスです。「大丸」 ブランドの百貨店の「旗艦店」として大阪心斎橋店が工事中の間は,広域エリアの大丸ファンをフォローしなければいけない店舗ですが、「大丸さん」と親しまれていた「大丸京都店」も不振です。企業が生き残るために新しい業態へのチャレンジは必要ですが、「百貨店業態」の強みを活かすことが後回しになっているのかも知れません。「芦屋店」「須磨店」も不振です。「選択と集中」病が発病したら、このあたりの小型店は閉鎖されていくのでしょうか?そういえば「大津パルコ」は今は西武セゾンではなくjフロントリテイリンググループでしたね。

 経営者が「選択と集中」を口にし出したら危ない兆候です。もちろんコストを抑えたり,在庫を圧縮することは必要ですが、ほとんど何も考えてない時に、なんだか戦略を立てた気分になれるマジックワードですからね。

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 図-1 京都・滋賀エリア売上伸び率 2015年×2016年
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図-2 神戸エリア売上伸び率 2015年×2016年
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赤いゾーンが一昨年、昨年と続けてX前年比マイナスの店舗 =危険ゾーン
 黄色いゾーンが昨年はプラスだったが今年はマイナスの店舗 =要注意ゾーン

(繊研新聞記事から作成 同社が実施した企業へのアンケート調査に基づく)
 ■商業施設の赤信号、黄信号~東京都内ターミナル繁華街編
 
 新宿エリア

 「新宿ミロード」「フラッグス」など小田急電鉄ゾーンが2年連続でマイナス。今年は小田急百貨店もマイナスです。小田急グループとして新宿ターミナル開発のビジョンの作成と実行が急がれます。伊勢丹新宿本店が失速したのは三越伊勢丹グループとして大きなダメージです。髙島屋新宿店がプラスを維持しているのと対照的です。「ルミネ」は「NEWOMAN」のたちがりは苦戦しているようですが今年はどうでしょう。

 渋谷エリア

 「渋谷パルコ」は2019年のオープンに向けて改築中です。「渋谷109」はAKBのイベントなど販促スタイルを変えてきましたが、厳しいかもしれません。東急電鉄グループとしてのまちづくりは評価できますが、商業施設はお客さんの見極めが大事です。

 池袋エリア

 「東武池袋」「池袋パルコ」が要注意ゾーンです。「東武池袋」は大きな売場面積を持てあましています。「東武鉄道」の資源を洗い出せば、ターミナルと沿線を活性化する道具として活用できるはずです。売場面積を埋めようと考えると失敗します。関西の「あべのハルカス近鉄本店」ににた課題を持つ店舗ですね。
 「西武池袋店」もフラッグシップ店舗として,将来展望を持たない赤字の継続は避けなければいけません。親会社のセブンアンドアイの戦略が見えないので不安を抱えます。池袋ターミナルをどう発展させていくのか?今の所リーダー不在に見えます。

 日本橋・銀座エリア

 インバウンド需要の影響を大きくうけていることがわかります。昨年は、そのために大きく伸びていたのですね。
 図にはない「東急プラザ銀座」が免税店の不振で日経新聞にも叩かれていましたが、現在は団体客から個人客へのシフトで売上は伸びているようです。
 4月に開業した「GINZA SIX」は」目標の売上600億円を獲得できるのでしょうか?

 これらはあくまでも「伸び率」からの比較です。インバウンド需要は伸び率の確保のためには必須ですが。図4のように大きく変動します。

 ベースになる顧客からの売上を算出して、適正な規模で事業を継続するという視点を忘れてはいけません。売上金額を絞っても生き延びる策はあります。
 米子髙島屋は2期連続赤字ですが,売場面積を絞り9,400㎡の床と立体駐車場を行政に「無償譲渡」しました。市の中心部の活性化に役立ててもらうためです。

 また、営業時間を短縮し,休業日を増やしました。これは経費削減のためのリストラでしょうか?
 郊外店・地方店の場合販売員とお客様の関係が深いため、シフトで交替するよりも一直勤務にすることで、店が開いている時にはいつも馴染みの販売員が応対することができます。質のいい従業員の確保にも役立ちますしね。これは都心店でも考えるべきポイントかも知れません。

 前年比だけがすべてではありません。ただ、連続して前年比がマイナスを続けるようならば,何らかの対策を講じる必要があります。漫然と、他所も悪いから仕方が無い、またいつか神風が吹くと、無策で放置している企業は残念ながら消滅していくでしょう。

                                                                            (8月18日)
 
 図-1 新宿エリア 売上伸び率 2016年×2015年       図-2 渋谷エリア 売上伸び率 2016年×2015年    
 AG1 AG2
図-3 池袋エリア 売上伸び率 2016年×2015年    
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図-4 日本橋・銀座エリア 売上伸び率 2016年×2015年    
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赤いゾーンが一昨年、昨年と続けてX前年比マイナスの店舗 =危険ゾーン
 黄色いゾーンが昨年はプラスだったが今年はマイナスの店舗 =要注意ゾーン

(繊研新聞記事から作成 同社が実施した企業へのアンケート調査に基づく)
 ■「大型ショッピングモール」業態の終末の始まり~新しい事業フレームを創造する事業者が生き残る
 
 廃墟モールは海外だけ?

 ショッピングセンター協会では「核テナントがぬけて閑散とした廃墟モールは海外だけ」とコメントしていますが、本当にそうでしょうか?マスコミには話題にならないですが、廃墟にちかいモールを知っていますよ。

 2014年からのショッピングセンターの開設状況を調べていて、2014年までは6万㎡を超えるメガモールの開業が多かったのですが、この1~2年大きく減っています。開業の適地が少なくなってきたのでしょうか。今は小規模で食料品などが中心のモールが増えています。

 デベロッパーもイオンモールか三井不動産などに限られてきています。かつてはGMS系だけでもダイエー、マイカル、イトーヨーカドーなどが開発を競っていたのですが、米国流の巨大ショッピングモールを開発するのはイオンモールだけになりました。

 勝ちパターンを持っていますし、自前のアミューズメントや酒、自転車、書店などの専門店を持っているのも強みです。

 必勝パターンが足かせに?

 ただ、必勝パターンがあるとその枠から離れにくいという足かせがあります。成功体験が新しいチャレンジを妨げるのです。

 もちろん、イオンモールのトップは理解していますし、地域貢献や地域密着の取り組みはどこよりも熱心です。OPAなど都心業態にもチャレンジしています。とはいえ、関連会社お存在や幹部スタッフの「成功体験」が変化を望まないベクトルを生み出します.当面、ライバルがいないことも仇になります。

 真面目で、優秀な社員がいても一番手企業が「変われない」のは百貨店の三越伊勢丹の例をみても明らかです。(言葉が過ぎているならごめんなさい)

 大規模なSCはやがて時代遅れになります。この業態はアメリカのSCがモデルですから、お手本の衰退を後追いしていきます。

 これからのSCをリードしそうなのは「食料品」と「蔦屋書店」「ニトリ」「ドンキホーテ」「リクシルビバ」などの新しい業種・業態でしょう。

                                                                                 (8月17日)
 表-1 2014年~2017年に開業した大型ショッピングセンター(約3万㎡以上)
 auG1

 SC協会のhp及びWEB検索で作成
 2017年に開業が予定されていながら時期未定で新しい情報が無いものは割愛している

 ■大阪市内「赤信号がでている商業施設」、「黄色信号がでている商業施設」
 
 対前年比マイナスで事業は継続できるのか?

 本当は,対前年比がマイナスでも事業構造を変化させて収益を上げられる事業体が強いのですが、日本の企業はそうはなっていません。大抵の企業では「経営計画」というのは「前年○%の売上増」という形で積み上げられています。思いあたるでしょう。

 百貨店業界はずっと前年割れが続いていますが、たまに「バブル」とか「インバウンド」とか「競合がこけてくれる」などの「神風」が吹いてプラスになる事もあります。とはいえ、前年比をわったマネージャーは死に物狂いで、売上を「創ります」。ということで、2年続けてマイナスの店舗はもう何らかの「厭戦感」がただよういやな職場になり、悪循環に陥ります。

 図-1に2015年の売上伸び率と2016年の売上伸び率を落とし込んだ図を作成しました。赤のゾーンが2年間連続マイナスの危険地帯です。
 「阪神梅田本店」と「大丸大阪心斎橋店」は改築工事中なのでとりあえず分析の対象外です。「HEPファイブ」と「茶屋町Nu」に危ない空気が漂っています。ともに「阪急村」の中核店舗なだけに、心配です。阪急阪神ビルマネジメントは「グランフロント大阪」で手一杯なのでしょう。

 黄色ゾーンは2015年はプラスでありながら2016年はマイナスになった店舗が分布しています。2015年はインバウンドで息をついたのですが、観光客のニーズが変わってあわてている?…のでしょうか。MDを機動的に再編成しなければいけません。ビッグデータ分析もいいですけれど自店の顧客の濃密なマイクロデータを分析していますか?

 三越伊勢丹さんはツタヤのTカードを止めました。大西前社長はカードは販促ツールとしか考えていなかったのでしょうか?かつて伊勢丹の顧客政策部にはとびきり優秀なスタッフがいて顧客データの解析でするどい切れ味を発揮されていました。大丸にも阪急阪神のペルソナカードにも素晴らしい分析をされるスタッフが居られました。今はどういう体制なのかは知りませんが、顧客データを外部に委ねるのは自殺行為ですよね。

 図の右上のゾーンは堅実な店舗が分布するエリア、右下のゾーンは回復してきた店舗が分布しているエリアです。

 人口減少が続く中で右肩あがりはありえないとしても

 漫然とマイナスを放置していてはいけません。例えば下の図に無い商業施設西梅田地区の「ブリーゼブリーゼ」や「イーマ」は物販中心の商業ビルから少し構成が変わってきたと考えています。「商業ビル」でなくても不動産事業であれば「家賃の収入」が確保されれば続けられます。

 さて、各店舗はどんな戦略をうってくるでしょう。
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 図-1 売上伸び率 2016年×2015年
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 赤いゾーンが一昨年、昨年と続けてX前年比マイナスの店舗 =危険ゾーン
 黄色いゾーンが昨年はプラスだったが今年はマイナスの店舗 =要注意ゾーン

(繊研新聞記事から作成 同社が実施したアンケート調査に基づく)
 ■大阪市内の商業施設陣取り合戦の行方~2016年度店舗別売上から
 
 ルクア大阪は「百貨店業態」を捨てることで成功

 2016年の大阪市内の百貨店、SCの売上を整理していてJR大阪ステーションシティの「ルクア大阪」(ルクアとルクアイーレ=旧JR大阪三越伊勢丹)の健闘ぶりが目につきます。三越伊勢丹の名残であった地下食料品売場をを改装し、百貨店の痕跡はほとんど残っていません。現在地下の改装工事中なので昨年は売上をダウンさせています。(改装時の売上目標が770億円だったということは誰も覚えていませんよ。726億円。立派ですよ。とはいえ、「目標」というのは何なのでしょうね?気合いでしょうか?)

 回遊動線から「百貨店」が無くなった売上は同じ駅ビルにある「大丸大阪うめだ店」が吸収出来るかと思っていましたが思ったよりパワーがありません。2016年の売上を見る限り「阪急うめだ本店」が一人勝ちのように見えます。

 図-2の2012年の売上状況と比較して改装中の「阪神梅田本店」と無くなった「JR大阪三越伊勢丹」の百貨店需要を吸収していることが伺えます。阪急うめだ本店が改築工事をしている間には阪神の売上げが好調でしたからその裏返しでしょう。

 なんば・心斎橋地区の「髙島屋大阪店」は堅調ですし、「大丸大阪心斎橋店」も改築中なので昨年の伸び率は大きくマイナスになっていますが、(図-3)それでも、一定の売上は確保しています。
 あべの天王寺地区の「あべのハルカス近鉄本店」は大幅に売場面積を増加させた割に売上は上がっていませんが、ある意味、伸びしろはまだありそうです。あべのキューズモールなど周辺地区のSCが好調です。(図-3)

 これからの変化~競争が変化を生む

 梅田地区では「ヨドバシ梅田」とJR大阪駅の陸橋が完成しました。今後ヨドバシの増築計画が完成するとまた人の流れが変わるでしょう。「阪急三番街」「HEPファイブ」「Nu茶屋街」など「阪急村」が失速している事にどんな対策が打たれるのか注目されます。西梅田地区のハービス・ハービスエントやディアモールがやや回復基調なのは期待できそうです。阪急電鉄とは違った、阪神電鉄らしい都市マネジメントが復活するのでしょうか。

 また、阪神百貨店が改築されますが、最大の強みである「食料品」の強化が予想されます。阪急百貨店の食料品売場は、テナントの顔ぶれが固定されてきていることが課題なっていると観察しています。
 思い切って新しい取り組みができる阪神百貨店の食料品売場が待ち望まれます。ある程度力が均衡したライバルがないと、消費者にとっては面白みのない街になります。

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 図ー1 2016年の大阪市内主要商業施設の売上金額(億円)と売場面積
 au1阪神梅田本店、大丸大阪心斎橋店は改装工事中
 図ー2 2012年の大阪市内主要商業施設の売上金額(億円)と売場面積
 au2 グランフロント大阪ショップ&レストランは2013年の開業

 (繊研新聞記事から作成 同社が実施したアンケート調査に基づく)

図-3 各店の売上げ伸び率 2015年から2016年
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表ー1 2016年 市内商業施設売上高、売場面積、伸び率
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 ■京阪神のショッピングセンター 最新売上動向から見えてくる課題
 
 2016年のSCの売上の伸びは2015年より減少

 立地によって異なりますが、都心のSCやアウトレットモールはインバウンドの動向に影響を受けます。図-2にあるように基本的に昨年より伸び率は減少しています。8月1日の百貨店の売上げと同じ傾向です。

 図-1では売上では「ルクア大阪」がトップです。核店舗を含んだ売上で比較すると「阪急西宮ガーデンズ」が736億円を超えますのでトップになるでしょう。「ルクア大阪」は昨年度は図-2にはいりきらない119.3%の伸びを示しました。JR大阪三越伊勢丹を吸収したためですね。今年は-4.6%となっています。
 
 阪急三番街やなんばCITYなどターミナル立地のSCの伸び率に変動が激しいのは改装・増床などの影響が大きいようです。都心のテナントビルの場合、リニューアルのタームが短くなっています。こまめに変えていかないと数字が落ちるのでしょう。競争が激しい中、新しい話題を発信し続けるために改装、テナント入れ替えをまめに行う必要があります。
 なんばCITYを運営する南海電鉄には新今宮駅まで街を拡げていく構想があります。阪急三番街を運営する阪急阪神には、うめきたや阪神の建て替えだけでなく茶屋町や中津方面にも拡げる余地があります。今後の改装、増築や新しい街機能の導入に「種地」を持っています。
 JRの駅ビルにも周辺のJRの土地や郵便局建て替えなどに参画の余地があるはずですが、あまり連携するビジョンが見えません。民鉄以上に縦割りで、それぞれの部門の「社長さん」がグループ内にお沢山おられるから、まとまらないのかなと外野で推測しています。ただ、そのおかげであのごちゃごちゃした「新梅田食堂街」が未だに生き残っているので、ありがたい話なのですが。(東京ならあの「一等地」はとっくに改装されて「バル」ストリートとかになっていますよ)

 そういえば大阪の「京橋」の開発でようやくJR西日本と京阪電鉄の協議が始まったようです。誰が考えても「京阪電鉄」「JR西日本」「OBP」が連携しないと変わらないと思うはずです。30年以上前から京阪電鉄のトップに提案してきた課題がようやく動きそうです。NTTの研修施設の土地や大阪城公園マネジメント、大阪府庁周辺の整備などあのエリアの周辺をまとめて変えていけば、大阪も面白い街になります。

  郊外立地SCでは「ららぽーとエキスポシティ」に注目

 土日の客数の落差やターゲットとのミスマッチなど課題がたくさんあるのですが、537億円の売上は評価されていいでしょう。ニフレルやアメリカンビレッジなど沢山の非物販や万博公園という集客施設、吹田スタジアムとの連携も徐々によくなっています。それと同時にミリカシティなど足元の住宅開発も進んでいるので「広域」だけでな足元市場があります。周辺部が公園、住宅地なので開発余地が少ないのですが,もう少し夜型の飲食店が揃えばもっと人を集められます。
 (郊外型のモールでは、くずはモールで448億円。売上を公開していないイオンの大日で409億円、堺北花田で366億円,四條畷で360億円なので核店舗がなくて500億円超えは,以下に優良な後背地を持っているかのあらわれでしょう)
 新しい店舗で非物販コト消費をわざわざ取り入れていますが、ここではその要素が周りにあります。

                                                                               (8月10日)
 
図-1 京阪神主要SC 2016年 売場面積×年間売上げ
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「阪急西宮ガーデンズ」は核店舗を含むと736億円 107,000㎡
「くずはモール」は核店舗を含むと448億円 72,000㎡    ※2015年の発表 2016年mの数字は後日記事になると思われます。
ちなみに「あべのキューズモール」は454億円 68,000㎡と「くずはモール」を上回ります。※2015年

図-2 京阪神主要SC 売上高伸び率推移  2015年、2016年
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(繊研新聞 記事より  2016年は8月10日号 2015年は2016年8月10日号) 
 ■新店及び・改装SCのコミュニティ機能・コト消費対応

 大型のショッピングセンターの開業が少なくなりましたね。新しく開業するSCでは子供と遊べる施設の導入が目立ちます。立地的に商圏人口が少ない常滑では大規模なアミューズメント施設が整備され,、集客をに注力しているようです。廃墟モールから「再生した」といわれている滋賀県の「ピエリ守山」も屋外スレチックやジップラインや小型動物園などのアミューズメント機能で集客しているという事例もあります。

 既存店の改装では蔦屋書店 T-SITEのように「本」「カフェ」を中心としたサービス機能の集約が目立ちます。

 サービスの提供には高いレベルの接客スキルが求められます。人材教育のシステムも変革が必要でしょうね。
                                                                            (8月9日)
 
 表-1 開業ショッピングセンターの「コト機能」の導入状況

 

概要

コミュニティ機能・コト消費対応

イーアス高尾(八王子市)

 

(開業)2017622

八王子市東浅川町550-1

・大和ハウス工業() 4,900㎡ 駐車台数1,840万台

・商圏 5km圏 33万人 メインはファミリー 220億円目標

 

3つの広場と会議室

・地元由来のテナント「高尾の桜」「EN TABLE」

・ICI「石井スポーツ」(地元高尾山の観光客需要)

・スポーツクラブ「NAS」大規模店舗

・「MOFアニマルカフェ」ふくろうやウサギなどの小動物とふれあいカフェ

ニッケパークタウンミーツテラス

 

(開業)2017720

加古川市加古川町寺家街

・日本毛織()

・既存の別館の改装 11,000

・来館者は850万人 ミーツテラスのみで110万人想定

・「ツタヤブックストア」2,026㎡ 児童書に注力

 トレーディングカードのコーナーでは販売とあわせて対戦テーブル設置

 女性向けの文具の充実

・「ピュアハートキッズランド」3,305

 1990円で1日中遊べる 大型滑り台やカフェ、ラウンジの充実

子供連れのファミリーが1日楽しめる施設(有料)

プライムツリー赤池

 

(開業)201711月下旬

日進赤池箕ノ手土地区画整理事業地11街区

()イトーヨーカ堂 43,600

・「日進赤池ヒルズ」40.56ha 1,440戸の開発エリア内

・「ひつじのショーンファームカフェ」

・「ボーネルンドあそびのせかい」室内遊び場「キドキド」とショップ

・「セガ」アミューズメント施設

・名古屋学芸大学との産学連携の取り組み

 

イオンモール神戸南

 

(開業)2017630日~

9月グランドオープン

神戸市兵庫区中之島2-1-1

・イオンモール株式会社 39,000

・商圏 自動車20分圏 27万世帯 50万人

・食特化型モール

 

・神戸中央卸売市場とのコラボでの新鮮な野菜、鮮魚の提供

・イオン夢みらい保育園

・地域の大学、地下鉄とのコラボ

イオンモール常滑

 

(開業)201512

愛知県常滑市りんくう町

・イオンモール株式会社 82,800㎡(外部施設18,800㎡)

・商圏 自動車30分圏 17万世帯 48万人

 

20177月イオンシネマ常滑開業(9スクリーン)

・屋外体験型エンターテイメントパーク「ワンダーフォレストきゅりお」

・シーサイドサーキット(カート)BBQガーデン、フィールドアスレチック

 スケートリンク・ボートプール・トランポリン,サイクルコミュニティ、温浴施設、広場など敷地2.6万㎡


表-2 改装ショッピングセンターのコト機能の導入状況

 

概要

コミュニティ機能・コト消費対応

パトリア桶川

 

(改装)20159

埼玉県桶川市若宮1-5-2

・新都市ライフ 27,000

・核店舗「東武ストア」(おけがわマイン)

 

 

・GMSを4層から2層に圧縮

3階を桶川市と丸善G、新都市ライフが連携した

「桶川honプラス」に改装

3階フロアに新たに誕生する『OKEGAWA hon プラス+』は図書館と大型書店を中心にカフェ、リラクゼーションの4つの機能で構成される “次世代の知の広場”を目指した文化・交流施設です。

50 万冊の豊富な品揃えを行う大型書店の「丸善」と丸善グループが指定管理者として運営を行う「桶川市立図書館」とが連携することにより、本を借りる人と購入する人の双方のニーズに即した複合的なサービス展開が期待されています。

4階を保育施設と医療モールに転換

アピタ新守山店

 

(改装)2017224

名古屋市守山区新守山

52000

・半径2㎞圏内人口:約11万人/世帯数:約 46,000世帯

「草叢 BOOKS

・営業時間:10002300

・売り場面積:約 2,800

・テナント:TSUTAYA、ドラッグユタカ、ホットヨガスタジオ LAVA

レストランコート(肉処ゼロハチ、ZerOtto Pizza&pasta、ごまクレ)、保険クリニック

・カフェ座席数:計 308 席(書籍エリア 29 席、スターバックス 125 席、レストランコート 154 席)

リーフウォーク稲沢

アピタ稲沢東店

(改装)201768日「

愛知県稲沢市下津穂所

・営業面積 50,000

・半径5㎞圏内人口:約16万人/世帯数:約61,000世帯

「暮らしカフェ」660㎡ ユニーのGMS改革第2

「暮らしカフェ」では、“ゆったりくつろぎながら暮らしの困りごとを相談できるカフェ”をコンセプトに、お客様の暮らしのさまざまな問題やご相談におこたえできるサービス窓口をカフェラウンジのまわりに配置しました。コンシェルジュデスク「暮らしの総合窓口」を始め、近年関心が高まっている介護・健康やリフォーム・不動産・保険などの7つの専門窓口を取り揃え、お客様の多様なニーズにおこたえすることで“生活解決”を目指してまいります。

カフェとサービスで年商約2億円、SCへの相乗効果として年間約2万4千人の客数増を見込む。

「暮らしカフェ」はカフェラウンジエリアとコンシェルジュエリアの2つで構成。カフェラウンジエリアは約70坪。80席を用意し、Wi―Fi機能も完備した。カフェは「珈琲館」(ユーシーシーフードサービスシステムズ)が運営する。

(新聞記事、ニュースリリースよりANALOGが作成)
 ■ショッピングセンター未来に生き残る道~プレイヤー不在の競争の行方
 
 話題の都心施設の不振要因

 昨年、開業時に話題になった東京都心の商業施設の開業後の売上が芳しくないようです。5月26日の日経MJの記事によると、銀座の「東急プラザ銀座」(来場数1,000万人、売上330億円目標)は目玉テナントだった「ロッテ免税店」が全くの見込み違いだったようです。インバウンドを当てにした海外高級ブランドも不振だったようです。その後、MDの修正で5月の前年同月比が240%となったようです。
 また、国内の客層も銀座では50~60歳台の女性が中心で、渋谷で成功した感度の高い30~40歳台のキャリアをターゲットとしたファッション、雑貨店もターゲットのギャップに苦戦しているようです。」これはアパレル不振と言うより単純にエリアのターゲット層の読み違いですね。
 50~60歳の女性やカップルと言った来店客層にはまった店舗は売上げ好調だと記事には記述されています。

 これは5月26日の記事ですが、4月20日に開業した「GINZA SIX」(来場者数2000万人 売上600億円)はどうなんでしょうね。検索しても開業景気の好調は報道されていますが…。jフロントリテイリングの大丸心斎橋店の計画にも影響してきそうですね。

(追記8月8日)
 日経MJの記事を鵜呑みにして上記コメント書きましたが、その後の調べで、「ロッテ免税店」は今年業績が急回復したそうです。団体客目当ての品揃えから、個人旅行客の入店率と客単価をあげる戦略にシフトし回復基調になったといいます。高額品から化粧品、小型電化製品へ、今は20%の日本ブランドの比率を50%にあげていく方針です。東急プラザギンザの初年度売上目標330億円のうちロッテ免税店は150億円ですから、全体の売上も回復基調でしょうね。(ソースは業界紙「商業施設新聞」8月8日)
日頃、日経新聞だけを情報源にしてはいけないと言っていながら、恥ずかしい間違いをしてしまいました。すいません。
 ロッ免税店は2019年をめどに大阪市と福岡市に出店するようです。

 多分,取材のタイミングが悪かったのでしょうね。それにしても,回復の兆しは見えていたはずですが…。

 「NEWOMAN」については詳しい記事がありませんが、苦戦していることは確かなようです。年間売上目標200億円。インバウンドと40代を中心とする大人の女性がターゲット。客単価は、インバウンド客は32,000~35,000円とれていますが、日本人客は2万円前後で想定していた3万円を下回ります。数字は届いていないようです。それでも横浜駅西口のJRの駅ビルは「NEWOMAN」で出店するようです。

 「東急プラザGINZA」について「高い賃料の割に館としての集客力が弱い、他に出店している商業施設に比べると販売促進が不十分だ。GINZAという一流の看板に甘えている」と厳しいテナントの飲食店からの指摘があります。デベロッパーは「ターゲット層の把握」と「集客」の力が無いとテナントに選別されていきそうです。

 ルクア大阪にユニクロ、GUが9月に開業

 JR大阪駅の「三越伊勢丹」跡に「ユニクロ」と「GU」が開業するそうです。JR大阪駅の梅田大丸には「ユニクロ」はもう入店しています。そんなにニュースになるような話題でもないですね。
 ルクアでは他にも子育て世代向けの店舗を導入します。ベビー用品店「マールマール」やカフェ「スタジオカフェーズアドベンチャー」(子供の遊び場)などです。「梅田は大人が買い物する商業施設が多い中で、子供が楽しめる店作りをして子育て世代の誘客につなげる」ということです。
 枚方「T-SITE」や広島の「レクト」など新しいSCでは子育て世代の取り込みがキーになっています。大変結構な視点ですが、同じ大阪駅のビル内で梅田大丸が「トミカ」や「ポケモン」を既に導入して実績をあげているので、是非連携して集客されることをおすすめします。

 それにしても、どこも同じようなテナントが並びますね。梅田ではニトリは阪急三番街に出店しましたが、もうひとつ位どこかに出店するかも知れませんね。


 「フライングターガーコペンハーゲン」は地方に出店(7月19日 日経MJ)

 2012年にアメリカ村に出店した雑貨店「フライングターガーコペンハーゲン」は低価格のおしゃれ雑貨で、フレッシュなテナントとして注目されましたが、300円均一の「3COINS」や「ダイソー」等の100均のアップグレードで影が薄くなって来ました。
 都市部の好立地の路面店で採算が悪化。これからは地方都市の幹線道路の沿いに大型の旗艦店を出して、小型店を駅ビルやSCに出店するそうです。

 東京や大阪の都心部にあってこそ「安くて」「おしゃれ」な店のイメージを維持できていますが、あの品揃えでは郊外の雑貨店、「ハンプティダンプティ」や100均などの品揃えに勝てないでしょうね。ブランド戦略のミスです。

 郊外SCの複合化の流れ

 イオンが自社施設内への郵便局の誘致を増やしているそうです。地方では銀行より郵便局のネットワークが重要ですね。老朽化が進んだ郵便局の建て替えの代わりにイオンに出店することにメリットは大きいのです。
 「核テナントなど施設全体の集客価値向上につながる事業者の家賃は他よりも安くなる」とイオンの副社長は述べています。破格の条件だったのでしょうね。

 郵便局もキッコーナーなどの集客施設を併設していますから、にぎわいにはつながります。

 イオンでは医療、体験型レジャー、行政機能などの誘致も進めています。関連会社のイオンペットでは「ふれあい動物園」を併設した店舗も増えています。動物園だけで無く、動物病院、ペッとホテル、トリミングサロン、猫用の里親募集などペット関連サービスをワンストップで受けられる売場づくりを実験しています。

 ショッピングセンターの再生については、全国一律の特効薬はありませんが、その地域、客層にあわせた集客機能の充実をはからないと,数少ない「稼いでくれるプレイヤー=テナント」にも相手にされなくなりそうです。

                                                                                          (8月7日)
 ■茶屋町の再開発に東急不動産が参入~阪急村への新しい刺激
 
 茶屋町再開発に動き

 梅田の茶屋町は随分前から再開発の動きがありましたが、バブルの時期に変に地上げされたせいかなかなか計画が具体化しませんでした。阪急の本社にも近く、いわゆる阪急村の一画なのですが、破綻した中堅デベロッパーのビルがたったり、結構混沌としたまま少しづつ虫食い的に開発されてきました。

 今は5つの地区に分かれた再開発が都市計画決定されています。そのうちB-2地区(北区茶屋街38-1他)の0.4haについて再開発準備組合は事業協力者として東急不動産を決めました。(今は梅田東コミュニティ会館、ジャンカラ茶屋町店、「ふくろうパーキング」茶屋町店があるあたりです。

 茶屋町の再開発地区は全体で2.2haです。そのうちの0.4haですからそれほど大きなウェートを占めていません。せいぜい1.3万㎡弱の床面積ですから無難に「ホテル」でしょうかね。基本方針では「B地区では低・未利用地の有効活用や敷地の共同化を促進するとともに、都市機能の更新・拡充を推進し業務、商業、文化、宿泊、アミューズメント、地域機能、居住機能等の導入をはかる」とされています。

 阪急の強みJRの弱点

 JRグループの商業施設はどこも好調なようです。売上も伸びています。各駅の開発にも意欲的で小さい駅でも面白い駅ビルをつくっています。それでもJRの弱点と思えるのは駅の周辺への拡がりがないことです。
 駅ビルの中で全て完結させようとしているので拡がりに欠けるのです。今後の施設の拡張や建替のための種地もあまりありません。あまり沿線だとか駅周辺のことを考えていなかったのでしょうね。(同じ駅ビルの中でも北ビルと南ビルの連携は良くないですしね)

 阪急の強みは「阪急村」と呼ばれていた駅周辺のヒンターランドの存在でした。はばひろいグレードの商業施設だけで無く、次の世代が学んだり働いたり、新しく商売をはじめたりする場所がありました。今、阪急にとって梅田で資源を集中するのは「グランフロント」であり「阪神」の建替なのでしょう。
 本当はターミナルのビルでやっているインキュベーション機能はもう少し地べたに近い「茶屋町」でやるほうが成果が出ます。東急電鉄が渋谷周辺で行っているアクションをみれば理解してもらえると思います。

 茶屋町は専門学校生も多く、中小企業も多いので次のビジネスのインキュベーションの実験場として活用したかったですね。

 梅田地区で「グランフロント」を頂上とするならそれをささえる底辺というか分厚い補完機能がまわりに必要なのです。(対企業向けサービス業、下請け企業、ビルにははいれない個人営業の飲食店,ショップ等々)

 「東急」に少し期待

 東急が参画というコトで少し期待したのですが、今までにもホテルは展開していました。規模も大きくないので無難なホテル中心だろうなとも思います。渋谷で行っている経験を活かして、新しい風を吹かせてくれたらうれしいなと思います。

 茶屋町には大阪工業大学のキャンパスもできましたし、何か新しいビジネスが生まれる(グランフロントとはまた違った)まちになって欲しいですね。中津や中崎町にひろがっていきますよ。

                                                                                (8月3日)
 ■商業施設に求められる「遊び場」の要素~ファッションから体験へ「ジュンヌ」の改装
 
 商業施設の現状打開策は「遊び場」の提供

 そごう・西武は「そごう千葉店」の別館「オーロラモール ジュンヌ」を若者向けのファッション売場からコト消費を中心とした体験型の専門店に改装すると発表しました。7割を占めていたファッション売場を4割に縮小し、かつ売上は2016年の25%アップの90億円を目指します。もう、売場効率とかいってられないほど落ち込んでいたのでしょうね。

 本格的なスイーツが作れるクッキングスタジオや加圧トレーニングが出来るテナントが入居します。スイーツは自分んが作って楽しむだけでなく、友人への手土産、SNSでの拡散を期待して設置しています。ルームシアターを併設した16の専門書店を設置。専門の託児所を置きます。子供連れの客にもゆっくり過ごしてもらうのが狙いとか。

 新ジュンヌ館は1~4階のフロア分類をカテゴリーをミックスしたテーマ別に改編する。1階は食、雑貨、ファッションを組み合わせて構成する。スナイデル、ジェラートピケを揃えた「ライフストア・ルーム903」のセレクトショップ、「キャスキッドソン」の雑貨ショップなどを配置し、ライブ感ある飲食と合わせて買い回り性を高める。2階はビューティーに特化し、美と健康をサポートするサロンを揃える。施術中の母親のため、一時預かり専門託児所を導入する。サービスの提供のほか、10月以降に卓球場、有料オフィススペースを開設する。
 3階はコト消費型体験フロアにする。16の小さな書店とルームシアターを配置し、文化発信の起点とする。タブレットを活用したクッキングスタジオ、工房を常設した手芸店など自分再発見をテーマにした様々な体験を提供する。4階は大型ライフスタイルショップを導入する。
地下1階はアクティブスポーツとして16年4月に先行オープンしている。
 環境面では1~3階の中心部に新編集ゾーンを設ける。放射線状に什器を配し、吹き抜けから360度見渡すことができるレイアウトを採用した。また店内で提供する飲み物は持ち歩きできるようにし、買い物をしながら楽しめる。(
繊研新聞の紹介記事を一部引用しました)


 百貨店内でも遊びの要素が重視されています。小田急新宿店では店内各階にトリックアートを展示しています。家族で楽しみながら館内を回ってもらいSNSでの投稿をよびかけています。
 以前指摘したように若い人の消費はSNSでの映像発信での「見せびらかし」が大前提です。ジャニーズのアイドルが写真撮影は駄目だけど握手はいいよと街頭で「ファン」にいったところ握手ならいいですと拒否されてショックを受けたと話していましたが、消費者一人一人が自分の発信がどう絵になるのかを強く意識していることは無視できません。飲食店でも商業施設でも、昔の感覚では「写真撮影はお断り」が普通でしたが、今はどんどん撮影して発信して下さいというのが普通です。スマホの普及は意外なところでマナーを変えてしまっています。

 郊外SCはどうなんだろう?

 最近、郊外での大型開発の話題が少なくなりました。郊外SCも踊り場に来ていて次の一手が求められているように思います。すくなくともより大きい店舗の開発でライバルに勝てる時代ではなくなっています。

 「ららぽーと立川立飛」はやや苦戦していると聞きます。中大の先生の調査では、購買力のある高年代層ほど物販・飲食店への満足度が低く、有料の休日駐車場や施設内の移動には全ての世代が不満を持っています。子供の遊び場・トイレや子供関係の物販店の充実には30歳台が不満を持っています。

 中央大学の細野教授は「人口密度や平均所得が比較的高いJR中央線東側、南部線南側に住む人達の取り込みが不足している」「品揃えの充実に加え、無料の子供遊び場など子連れ環境の充実、施設面でのエンターテーメント性の強化もかかせない」とコメントしています。(日経 東京地方経済面8月3日)

 「ららぽーと磐田」は2015年の改装で共用部を刷新子育てファミリーからシニア層まで快適に過ごせる休憩スペース「タタミラウンジ」を設置しています。66㎡ほどのタタミのまで読書や囲碁将棋ができて、手荷物が多い母親客が買物途中に荷物を広げてゆっくり休める場になっています。絵本も置いてあり子供向けの絵本の読み聞かせイベントも行われています。なんだか温浴施設の休憩室みたいで日本的な風景ですね。

 SC協会の統計では開業施設は中規模化し、2016年開業のSCではサービス系のテナントが2割を超えています。都心にJRセントラルタワーズやギンザシックスが開業して話題に放っていますが、既存SCの売上はマイナス0.2%となっています。

 海外の廃墟SCが話題になっていますが、国内のSCも古いタイプのSCは業態のあり方を考えないといけない時期にきています。今後スクラップされるSCが増えてきて社会問題となるかもしれません。

 4月28日に広島市西区に開業したイズミの新業態SC「レクト」は西日本発の「広島Tサイト」が導入され、「居心地のいい空間作り」に成功し計画通りの集客だそうです。全体は39,000㎡、イズミの食品館と専門店ゾーンが2万㎡、ホームセンターのカインズが1.2万㎡、Tサイトが6,000㎡です。
 郊外SCには少ない20~30歳台の来店が多く、広域から車で来店しています。従来のSCとは違って平日でも若者の夜からの来店が多いのが特徴です。

 イベントもキャラクターショーよりも親子で楽しめる陶芸や工作など毎日どこかで何かしていることを重視していて(阪急のコトコトステージですね)、販促もSNSが中心です。地方の郊外SCであってもいわゆるショッピングモールとは違ったスタイルで成功しています。イズミは「ゆめタウン」を沢山出していますが、従来の手法をガラッと変えたコトで成功しています。おそらくイオンモールも同じような業態をすぐに開発するでしょうね。

 テーマパーク業界が活況を呈しています。TDLの物販は大きな収益源といわれていましたが、商業施設とテーマパーク的なアミューズメントの融合はもっと強まるかも知れません。ららぽーとエキスポパークではテナントの「ニフレル」(海遊館が運営する小型動物ふれあい館)や「大観覧車」が人気を集めています。{ポケモンスタジアムは失敗でしたけれどね)

 コト消費、とりわけ子育て世代の集客がポイントになりそうですね。夏休みです。子供さん(又はお孫さん)と一緒に遊びに出かけてビジネスのヒントを見つけて下さいね。

                                                                               (8月3日)
 ■京阪神の郊外百貨店の現況~枚方市政70周年記念
 
 本日は「枚方市」70周年のお誕生日です おめでとうございます

 ということで、枚方駅前の「T-SITE」をやっと見に行くことができました。もともとは枚方近鉄があった場所です。昨年5月に開業しています。

 今も昔も「特別な時間を過ごす場所」として親しまれてきた“百貨店”。日々の必要なものをそろえるだけでなく、休日に家族と遊びに来たり、人生の節目に生活用品を悩みながら選んだり。多くの人にとって、人生に寄り添う場所であったはずだ。
2016年5月16日(月)、枚方市駅前にあった近鉄百貨店跡地に、そんな愛おしい記憶や思いを再認識させてくれる新名所「枚方T-SITE」が誕生する


と同社のサイトにあるように新しい時代の百貨店を意識したお店です。夏休みなので、親子づれで賑わっていました。
 昨年11月には知覚に宿泊施設も開業しています。

 京都まで直通電車で30分、大阪市内まで30分で行けるという観光に便利な地にドミトリー「GOEN LOUNGE&STAY」が誕生した。カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の初となる宿泊施設だ。
駅から300歩、話題のHIRAKATA T-SITEから100歩、コンビニから30歩と利便性も高い


 オーナーの出身地でもあるので力が入っていますね。床効率を考えると通常の企業では実現できない店舗です。集客装置としてはすぐれているので、ショールームなどのテナントに床を貸すことで収益改善の方向がみえてくるでしょう。

 京阪電鉄も枚方市駅周辺の開発を本格的に始動させるようです。

 京阪ホールディングスの中核子会社、京阪電気鉄道の中野道夫社長=写真=は枚方市駅(大阪府枚方市)の周辺に商業施設やホテルなどが入居する複合ビルを建設する考えを明らかにした。5年以内の完成を目指し、「沿線の人口減に歯止めをかけたい」と意気込む。
 中野社長は6月に就任した。京阪はインバウンド(訪日外国人)の増加が追い風となり業績は堅調だが、沿線の活性化が課題となっている。
 枚方市駅の平均乗降者数は1日9万2千人と京橋、淀屋橋に次ぐ3位で、駅周辺に1万3千平方メートルの土地を持つ。近隣に大学が多いため「観光や学会目的の宿泊
需要が高い」という。駅ビルの大規模改装も計画しエキナカ店舗を充実させる。
(日経7月27日 地方経済)

 図-1にあるように京阪神の各百貨店で京阪枚方店だけが昨年は伸びています。これはあきらかに「T-SITE」効果ですね。京阪はCCCにお金を払わなければいけませんね。
 これを見て、やればできる立地だと開発の判断が後押しされたのかもしれません。※もともと枚方市は駅周辺の開発計画を進めていました。大学が多くて、沿線の高級住宅地も後背地にあるので、好立地です。かつては枚方近鉄と三越と2つの百貨店がありましたしね。京阪は隣のくずはの開発を優先していましたから後回しになっていたのです。

 和歌山近鉄の強み

 今日、堺北花田阪急閉店に関することでツィッターのやりとりがあったようです。図-1にあるように北花田阪急は売上は伸びなくて閉店はしかたないでしょう。堺市という行政区の問題では無く、立地の問題です。髙島屋泉北店、堺店は減少率が改善されています。インバウンド需要がないので厳しいことは厳しいですが。
 そのやりとりの中で閉店する百貨店として「和歌山近鉄」の名前があったのでビックリして調べてみました。

 和歌山証券ではイオンモール等の影響で地元のオークワが苦戦しているようですが、和歌山近鉄は減少してきたとはいえ200億円売っている店です。おそらく「髙島屋和歌山店」の閉店と混同してつぶやかれたのでしょうね。髙島屋は店も小さかったですし、もろにイオン開店の影響を受ける和歌山市駅に立地していましたからしかたないですね。(2014年8月に閉店)
 和歌山市にはかつて大丸、髙島屋、丸正(地場百貨店)、近鉄と4つも百貨店がありました。近鉄以外はなくなりましたが。

 図-2で売上上位の近鉄奈良店、近鉄和歌山店の商圏には西宮阪急とはまた違ったタイプの百貨店のお客様が存在します。お客様が都心に流出することがあってもイオンモールにお客様が流出することはありません。

 図を眺めていると次に「整理される店」はどこか見えてきますね。

 「松坂屋高槻店」はjフロントリテイリングなのですから、店を続けるなら「大丸」ブランドにリブランドすればいいのにと思います。大阪、京都ともに大丸のブランド力は強いですからね。「西武高槻」は「阪急」になればもう少し売上を伸ばせます。

 3万㎡を超える店舗であれば、賃料の取れるテナントだけで無く「T-SITE」のような集客装置をうまく取り入れる事が必要ですね。地域によって形は違いますが。

                                                                                  (8月2日)

 図ー1京阪神の郊外百貨店 対前年比売上の伸び率
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図-2 京阪神の郊外百貨店 売上金額×売場面積
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(繊研新聞2017年7月26日記事より作成) アンケート及び公開情報への同社の調査により集計された売上
 ■2016年百貨店売上数字から見える生き残りの条件
 
 百貨店の売上げはピーク時の2/3まで縮小

 2015年にはインバウンド需要で都市部の百貨店は増収していましたが、今年はことごとくマイナスとなっています。(図2)
 プラスを維持しているのは新宿エリアでは「髙島屋新宿店」ルミネのニューマンの開業(2016年3月)で人の流れが変わったのでしょうか、三越伊勢丹の稼ぎ頭である新宿本店のマイナスは社長交替の引き金になっています。小田急、京王は百貨店の枠にとらわれない業態開発が急がれます。勢いのいいテナントを入れる不動産事業は、失敗すると雑居ビル化を招きます。

 池袋では東武百貨店の落ち込みが激しいです。昨年も減少していましたしね。大きな売場面積の活用を急ぎます。(東急のようにグループ上げての新しい百貨店像の開発が急務ですね)

イオン系の東武百貨店池袋店は13日、7階子供服・玩具売り場に幼児とそのファミリーを対象にした知育施設「にこはぴきっずNHKキャラクターとあそぼう」をオープンする。NHK・Eテレの人気幼児番組の世界を体験できる遊びと学びの場を提供する。 イオンファンタジーが開発・運営する新業態で、テナント出店する。店舗面積は340平方メートル。「遊びによるからだ・こころ・あたまの成長空間」をコンセプトとした親子向けのキャラクターパークとなる。(繊研)

 売場にテーマパーク的な要素が取り入れられるのが今後の商業施設のトレンドかも知れません。

渋谷は東急の開発など街全体に活気がありますし、東急グループの新しいまちづくりが動いているので落ち込みを押さえることができているようです。

 日本橋・銀座は大丸東京店が立地の良さからか好調です。大丸ブランドの首都圏での認知は低かったので大丸グループの中ではやや「みそっかす」のイメージがあったのですが、売上でも梅田店を上回っています。見事です。銀座は銀座シックスが開業したので話題はそちらにさらわれがちですね。プランタンも専門店ビルになりましたし、どう変わっていくにでしょうね。

 梅田阪急の一人がちは、かつてのライバル阪神が改装中という追い風もありますが、ぶれない政策が成果につながっています。

阪急うめだ本店は、21年度までに売上高2500億円の達成を目指す。12年11月の全館改装オープン以降、着実に売り上げを伸ばしており、16年度実績は2205億円。広域からの集客力を高める「40のスペシャルティーコンテンツ」(荒木直也阪急阪神百貨店社長)を確立するとともに、阪急ビューティー事業(化粧品)で開始している広域型ビジネスモデルを推進していくことで、さらに300億円の上乗せは可能とみている。(繊研)

 あと図には入っていませんが髙島屋大阪店もプラス1.6%と好調です。インバウンドの好調もありますが、髙島屋東別館の修復活用など百貨店としての価値の意味を理解していることが大きいと思います。

 百貨店の不振は婦人ファッションの販売低調が主な要因です。百貨店と一蓮托生だった百貨店メーカーもブランドを絞り込むなどあまり前向きな動きが取れない状況です。リスクの取り方など百貨店とメーカーで調整する必要があります。今流行の百貨店の不動産事業=テナント導入はかけているMDの補完、ダウンサイジングの手段としては有効ですが、本来は縮小しても百貨店の強みを保持する戦略的な判断が必要です。
 賃料を当てにし出すと雑居ビルになります、必ず。

 価格帯を適正にするのと規模を適正にしていきながらブランドをどう維持するか?それをやりきった企業が生き残ります。

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図ー百貨店2016年売上と対前年比伸び率

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(繊研新聞2017年7月26日記事より作成) アンケート及び公開情報への同社の調査により集計された売上

図ー百貨店売上げ前年比(2015年、2016年比較)

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 ■鹿鳴館と明治の監獄~リノベーションされる美しい奈良監獄
 
 明治の五大監獄

 奈良県にある「旧奈良監獄」(奈良少年刑務所)が新しくホテルを中心とした複合施設に生まれ変わります。
 「監獄ホテル」監獄とを利用したホテルは海外では多くの事例がありますが、日本国内では初めての事例になります。何故、わざわざ「監獄」にとまりたいのか?と思うむきもあるでしょうね。「旧奈良監獄」は明治五大監獄のひとつで、とても美しい煉瓦造りの建物です。設計した山下啓次郎は辰野金吾のお弟子さんでジャズピアニスト山下洋輔氏のおじいさんです。建物は欧米の刑務所を研究し、奈良監獄はヴィクトリア調のゴシックを基調にしながら古典的(ギリシャ・ローマ)なつくりを加味し、東方的、イスラム的な異国趣味が加味されている。いろんな要素が混ざっているようですが山下の師匠の辰野金吾は両国国技館!、浅草国技館にイスラム様式を取り入れています。東方的な趣はシルクロードの起点である奈良らしいといえば奈良らしいですね。

 明治新政府は欧米列強に追いつくために、「富国強兵」と「文明開化」路線をおしすすめました。「文明開花」を象徴する建築物で言えば鹿鳴館を思い出しますね。鹿鳴館は1883年(明治16年に完成した迎賓館)。

 1853年安政5年に幕府が諸外国と結んだ「安政五カ国条約」は関税自主権もなく治外法権(犯罪を犯した外国人は日本政府では無く本国の領事が本国の法律に基づいて行う)といった不平等な条約でした。
 政府がこの条約の解消を求めても、「日本にはろくな牢獄も無く、近代的な司法制度も整っていない」と拒否されたのでした。

 そこで政府は司法体制を整えるのと並行して西欧諸国の刑務所を視察して新しくつくられたのが五大刑務所でした。(千葉、金沢、奈良、長崎、鹿児島)石づくりの鹿児島を除いて、煉瓦造りで放射状の舎房と西洋中世風の城門をもった「過剰に美しい」刑務所でした。

 奈良監獄の竣工は1908年(明治41年)ですが、奈良県には翌年「奈良女子高等師範学校」(現奈良女子医大学)と「奈良ホテル」(西の迎賓館ともよばれた国営ホテル)が竣工しています。

 西洋においつけおいこせと、精一杯背伸びした設備が相次いで作られた時代でした。

※奈良監獄のプロジェクトについては12日、19日の記事をご参照下さい。

「奈良監獄」については「写真集 美しい刑務所~明治の明煉瓦建築 奈良少年刑務所」(西日本出版社)の記事を参考にさせていただきました。

 バブル以降の建物は、奇をてらっていたり、豪華であっても「堂島ホテル」のように取り壊されるケースがあまりにも多いですね。この違いはどこにあるのでしょうね。

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 ■「堂島ホテル」が通り過ぎた時代~1984年からの32年間
 
 堂島ホテル2017年末に閉鎖~建替へ

 「堂島ホテル」は1984年にビジネスホテルとして開業しました。北新地の入り口でサントリーのお隣ですから、おじさん達の利用も多かったのでしょうね。同じ都市に北新地無いに「大阪全日空ホテルシェラトン」が開業しています。まだ北新地が元気だった時代なのでしょうね。心斎橋の「ホテル日航大阪」はs1982年に既に開業していましたが、「大阪ヒルトンホテル」「ホテルニューオータニ大阪」が開業したのは1986年でした。
 80年代後半は第5次ホテル戦争と呼ばれ、新しいホテルが生まれ競争が激しくなった時代です。

 「堂島ホテル」はそれらの大型ホテルとは違って規模も小さいですし、少し趣が違います。噂ではその筋の人が経営しているという話もありましたが、空間的にはアンティークな雰囲気のゴージャスからおしゃれなホテルへと改装が繰り返されていて、ユニークなポジションを占めていました。最近では、ここの中華がうまいという評判も聞いています。オーナーが次々替わり、「堂島ロール」の本家争いのトラブルなども面白おかしく報道されて話題が絶えないホテルでした。

 あまり北新地のことは詳しくないのですが北新地らしいホテルなんだったのでしょうね。お客さんに一度だけ連れて行ってもらった北新地のラウンジで、「今日は堂島ロールがあるよ」とうやうやしく出されたのを覚えています。(バブルの時を含めていわゆる新地のお店にいったのは3回ぐらいなので、大阪人とは言えあまり新地事情にはくわしくないので「新地らしい」という表現は適当です)~おういえば、その時N証券さんが接待していたO阪k銀の人がATCはうちが作らせたと言ってましたが、どこまで本当だか…

 堂島ホテルは、バブル景気が近づきつつあった昭和59年、高級飲食店が立ち並ぶ歓楽街の北新地からほど近い立地で開業。石造りの外観にアンティーク風の調度品は欧米のブティックホテルを思わせ、同業者も驚かせた。開業から10年後の平成6年には大規模な増改築とともにインターナショナル堂島ホテルに改称し、客室の内装も豪華にすることで「いつかは泊まりたい憧れのホテル」として定着していった。

 ただ、改装費などの借入金が足かせとなり、経営母体の日本都市企画(大阪市)が11年に約580億円もの巨額負債を抱えて倒産した。所有者や運営者、名称が変転した(イタリア村で大失敗したセラヴィリゾートが運営した時期もありました)後、食肉卸のシンワオックス(大阪市、現アスモ)が18年に運営権を取得。再び堂島ホテルに改称し、芸術家らが暮らす米ニューヨークのロフト風に仕上げ、現在の若者向けのホテルに一新された
(産経BIZ2016年12月)

 「なにわ考現学」でも一度だけ「堂島ホテル」についてイメージ調査を行いました。
 図ーホテル利用経験率
 eee21(なにわ考現学2005)市内通勤者の大阪イメージ調査

 スタイリッシュに改装した時期ですから 成熟したキャリアウーマンに支持されていたのですね。

 今は大阪にはあんな、スタイリッシュなホテルは皆無です。バブルの遺跡がまたひとつなくなっていきますね。

 跡地は2020年をめどに300室のホテルに建て替えられるそうです。

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 ■ビッグイベントのその次に向けた観光戦略
 
 急激なインバウンド客の増加に対応が後手に

 京都、大阪でのホテル建設ラッシュは急激に増えた外国観光客の受け皿の整理という後手に回った対応が目立ち、結果的に質の低い宿泊施設が増えて付加価値の高いホテルの建設が遅れています。最近の識者の論調では量では無く、富裕層に選ばれる質の高い対応で単価の取れる需要をカバーしなければいけないという指摘が多く見られます。奈良県で進んでいるいくつかの高級志向のホテル建設は、いままで宿泊立地として出遅れてきた事がプラスにはたらいていると思います。

 さて現在2020年の東京オリンピックに向けて東京での建設ラッシュは、過労による自殺者を生み出すほどになっています。3週間のイベントが終わった後に、次の都市戦略はどうあるべきなのか?新しいと知事と、もうすぐ交替しそうな内閣の次のトップがどのように考えているか、離れている大阪からは見えません。イベント期間中は展示場が使えませんし通勤の移動も制限されるはずなので、首都圏広域に首都のビジネス機能が分散するはずです。いくつかの方向性があるでしょうが、どう決めるのでしょう.。今は間に合わせるのに一杯一杯のようですね。

 名古屋市内のホテルの明暗

 2027年のリニア新幹線の東京~名古屋間の開業にむけて名駅周辺での開発が進む名古屋ですが、本日の日経新聞の報道ではホテル稼働率に関しては好不調がわかれているようです名古屋市内の中高級ホテルの6月の稼働率は84.2%。栄・金山地区は減少し、名駅付近が増加しています。商業施設でも栄の地盤沈下が顕著ですから人の流れはますます名駅に集中しているのでしょうね。割安さを求めてビジネスホテルや郊外のホテルにも宿泊客が流れているようです。

 稼働率を押し上げていた中国人団体客の勢いが落ち着き、東南アジアからの観光客が増加しています。爆買いといわれたモノ消費から体験、コト消費に消費が移行していることからも4月に開業した「レゴランド」の効果も大きいといわれています。

 新聞記事の末尾では「稼働率確保のためには中国の団体客依存からの脱却が重要になる」と結ばれていますが、これはあまり論理的な文章では無いですね。「既存のホテルが将来的に安定した収益を確保する為には一部のターゲット、特に団体客への依存から脱却し、コト消費に対応したサービスを強化すべき」+「名古屋エリアとしてインバウンドのニーズに応えるためには多様なバリエーションの宿泊機能の整備と、周辺地区、ホテル業態間のネットワークを整備し来訪者の利便性をはかるべき」と説き空かさないと親切ではないでしょう。現場は目の前のニーズ対応に振り回されて必死でしょうね。今の売上を確保しながら先への展望をしめしておく必要があります。

 大阪経済界の「カジノ依存症」になりつつある

 新聞報道を追うだけですが、大阪の経済界は「カジノ(IR)」の誘致には必ずしも積極的ではなかったように思います。(賛否両論ありましたね)本日の日経新聞の地方経済面の記事を読むと、風向きは変わってきたのかも知れません。
 2025年の万博誘致について政府のバックアップが進み慎重だった経済界が前向きになった頃から、だんだん万博とカジノ(IR)がセットで語られるようになってきたからです。関西経済の地盤沈下は目を覆うばかりです。その中で。、うめきたと関空のアクセス鉄道、なにわ筋線が具体にむけて進み始めたことが経済界の「気分」を後押ししているのだと思います。

 2025年の万博についてはまだまだ未確定ですが、カジノについて有力候補の「横浜」が市長選の争点となって先行き未定ですし、東京はオリンピックが片付いあとの対応になるでしょう。海外の事業者にとって本命は首都圏でしょうが、先行的な実験としては大阪は手頃と判断されるので、法案の審議が進み合意形成がされれば決まるのでしょう。

 本日の記事ではカジノ(IR)の誘致が決まればと言う前提ですが、京阪の中之島線を地下鉄中央線に接続し、夢島~京都間のアクセス鉄道にするそうです。地下鉄中央線はコスモスクエア駅から夢洲まで延伸し24年に運行開始します。夢洲~祇園四条が1時間で結ばれます。JR西日本はUSJにつながる桜島線を夢洲まで延伸することを検討するようです。

 大阪港天保山にある「海遊館」は大規模改修の時期を迎えて、夢洲への移転も選択肢のひとつだということです。

 日経新聞と経済界の気分ではもう「カジノ誘致」には後戻りできない雰囲気ですね。横浜市ではカジノ推進派の市長が苦戦し、初期の有力候補だった沖縄も辞退しているように必ずしも住民に歓迎されるわけではない施設なのですが、今後どのように進んでいくのでしょうね。(一方では愛知県のセントレア周辺での誘致の動きもあるようです。)

 いまのところ、現在のインバウンド客への対応も十分に進んでいないので、あわてずにカジノ誘致のプラスマイナスをよく考えて判断したほうがいいと考えますが、「空気」で決まる事柄はろくな結果をうみませんからね。

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 横浜ではカジノ反対の市民が65%だそうです。大阪市ではどうでしょう。とにかく税金はカジノに使わないで下さいね。リスクは業者持ちでね。
 
 ■人は増えても売上増にはすぐに繋がらない京都の百貨店
 
 四条通歩道拡幅事業の効果

 2015年10月末、「歩くまち・京都」の京都市基本計画の一環として進められてきた四条通の歩道拡幅事業が完成しました。通行者数は大幅に増えたといいます。2016年の京都市内の百貨店にはどんな影響があったでしょうか。

 髙島屋京都店(入店客数2.3%増 売上1.3%減)
 大丸京都店(入店客数 2.4%%減 売上3.8%減)
 藤井大丸(入店客数 5~10%増 売上 微減)   
 河原町OPA(入店客数 増加)
 
 四条河原町に近い、髙島屋、藤井大丸は入店客数は増えていますが、売上増にはなかなかつながっていないようです。

 京都駅前地区はどうでしょう。2012年の京都水族館の開業に続き、2016年4月には京都鉄道博物館、2017年4月には京都タワーの商業ゾーンが全面改装しています。駅周辺の集客装置がそろうなか、で2016年の動向は次のような結果です。

 JR京都伊勢丹 (入店客数 微増 売上高微減)
 イオンモールKYOTO(入店客数 増)
 ザ・キューブ 京都駅前地下街ポルタ 入店客数増

 人の動きが売上につながらないのは苦しいですが、これからの対策で挽回していくでしょう。

 大丸は町屋でのエルメスの出店やグループ会社の「京都ゼロゲート」(2017年開業)との連携、髙島屋は隣接地での京阪ホールディングスのホテルなどの複合商業施設との連携など新しい店作りの芽はあります。

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 ■MUJIホテル国内第2弾は奈良監獄ホテル
 
 (仮称)HISTERRACE 奈良プロジェクト 2020年開業

 12日にも取り上げた奈良監獄のリノベーション事業です。保存活用を前提に史料館と3つのタイプのホテルが設置されますが、簡易宿泊型ドミトリー「仮称MUJI HOSTEL」を良品計画が運営すると言うことはあまり報道されていませんね。

 来年銀座にオープンする「MUJI HOTEL」は運営は小田急電鉄の子会社が行うそうです。内装デザインの監修とベッド、リネンを提供し、「アンチゴージャス、アンチチープ」なホテルを開業します。世界最大の売場面積3,300㎡の旗艦店の6~10階がホテルになります。
 商業施設でカフェや飲食を融合させることは当たり前になってきていて、これからはホテルとの大規模な融合が進む時代になってきたようです。「無印」の世界観を体感できるショールームでもあるのでしょう。
 複合施設で商業とホテルが同居することはあっても運営主体は別です。今回の案件は商業とホテルが同じブランド、運営者で運営されることが画期的なのです。小規模の専門店で宿泊施設を併設している事例はありましたが、「コト消費」はここまで進化してきています。

 「MUJI HOTEL」は今年中国で2店オープンします。国内より先に海外でスタートです。

 「奈良監獄」は建築物として興味深い建物です。HOTELではなくHOSTELで滞在型の業態です。14日に紹介した髙島屋東別館のサービスレジデンスといい「歴史」「文化」が体感できる「場」は貴重な資源です。

 尼崎城?プロジェク

 歴史・文化と言えば、兵庫県尼崎市では2018年の築城400年をめどに、かつて実在した「尼崎城」を再現しようというプロジェクトが進んでいます。大坂夏の陣の後、西国支配の拠点として大坂が幕府の直轄地になりました。大坂の西の守りとして築城されたのが尼崎城です。甲子園球場の3.5倍の敷地に3重の堀と4層の天守閣というかなり立派なものだったといいます。

 尼崎市の一体感を作るために「お城」の再現というのは面白いアイデアです。(地元発祥の家電量販店のオーナーの寄付です)コンクリーづくりでエレベーターも設置しますが、できるだけ等Y時の素材工法を再現するそうです。

 姫路城のような本物では無いですが、結構ワクワクするプロジェクトですね。尼崎城のことを知らない人も多いでしょうから、これをきっかけに尼崎の歴史や文化に強身をもつ人も増えるでしょう。よい着眼点です。

 無印再出店

 撤退した八尾西武の跡地が「LINOAS」という専門店ビルとして9月にオープンします。ニトリが6階に出店し、撤退した無印良品が売場面積を拡張して6階にオープンするようです。

 いまから考えれば西武百貨店は何故八尾に出店したのでしょうね。関西では成功しませんでしたが「西武百貨店・セゾングループ」はある時代の空気を代表する輝くがありました。今は「無印良品」とか「ロフト」にその名残が感じられます。

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 ■商業施設の跡地活用~フォーラス、ジョルノ、髙島屋東別館
 
 「姫路フォーラス」跡はホテルとマンションに

 1971年に「ジャスコ姫路店」として姫路市の中心部に開業しました。当時はGMSの勢いがいい時代で、都心部に各社の店舗が競って出店されていました。2016年揚津に閉店しています。東館と西館の2棟に分かれています。東館は分譲マンション、西館はビジネスホテル「ダイワロイネットホテル姫路駅前」になります。JRの駅ビルができて、競合が激しくなったのと建物の老朽化が進んでいたことが閉店の理由でしょう。
 同じ頃1973年に大分市内に建てられた「大分ジャスコ大分店」が1993年に業態転換した「大分フォーラス」は改築して「OPA」になるようです。70年代に都心部に沢山出来たGMSの店舗は規模的に中途半端なのと駐車台数の確保に課題を抱えているので、無くなっていく運命にあります。

 姫路フォーラスは明らかに建物が老朽化していましたが大分フォーラスは比較的状態は良かったように思います。(大分にあった大分パルコと比較して見た所為かもしれません)
 イオンは都市型の店は食料品に特化させるか、「OPA」業態に変えていくのでしょうね。「金沢フォーラス」も運営はOPAなのでどこかで「金沢OPA」に改名するのかもしれません。唯一最初からフォーラスとして出店した店です。

 堺東駅前「ジョルノ」再開発の再開発がようやく動き出す

 堺市の中心街である堺東駅前の再開発ビル「ジョルノ」が解体工事に入り、2019年の完成を目指しています。24階建ての高層ビルになり、地下1階から地上3階まで小偉業施設になります。堺市役所の高層ビルの向かいです。
 かつては核店舗に「ダイエー」が入っていて賑わっていましたが、近年は数店舗ぐらいしか」営業していませんでした。再開発の再開発の交渉中だったのでしょうね。堺市の顔になるエリアに廃墟ビルがあるのはかっこ悪かったでしょうね。
 堺東駅には「髙島屋堺東店」と専門店街がありますが、駅前の堺東銀座商店街は寂れていました。ここにもかつては、長崎屋、イズミヤ、などのGMSが軒を連ねていました。

 髙島屋東別館はサービスレジデンスにリニューアル

 百貨店はもともとの造りがしっかりしていて建物に味があるためか、髙島屋東別館はリニューアルして利用されます。髙島屋の家具売場や結婚式場などで利用されていましたが、1937年(昭和6年)に松坂屋大阪店として建てられた建物は耐震性に難があるため耐震補強してサービスレジデンスとして利用されます。運営はシンガポールのアスコット社(キャピタランド社傘下)外国人の方が建物価値をわかってくれるような気がします。
 かつて堺筋は「北浜三越」「白木屋大阪支店」「長堀髙島屋」「「松坂屋大阪店」が立ち並ぶファッションストリートでしたが、今は当時の面影はありません。

 この建物が立地のいい心斎橋にでも建っていたらたちどころに取り潰されて高層ビルとなっていたことでしょう。

 宿泊施設と商業テナント、髙島屋の史料館の複合施設となるようです。開業は2019年。

 耐震補強にはコストがかかるでしょうが、天井の高さや素材感、それらが醸し出す空気はなににも代えがたいものがあります。

 産経新聞で高岡先生が次のように紹介されています。

 設計をしたのは名古屋に事務所を構えて松坂屋の設計を数多くこなした鈴木禎(てい)次(じ)。外観はクラシックな3層構成で、何といっても堺筋に沿って続く67メートルものアーケード、11連のアーチが圧巻だ。装飾にはアカンサスの葉をモチーフにしたテラコッタが用いられ、アーケードに面してガラス張りのショーウィンドウが並ぶなど、百貨店らしい華やかさを今に伝えている。

 内部もエレベーターと階段廻りに濃密な装飾が施され、全体にアール・デコ調のデザインでまとめられている。かつて屋上には「松坂遊園」があり、夏はプール、冬はアイススケートで大変賑わったという。


 このような都市の記憶が残されるというのは懐古趣味ではなく未来に繋ぐ「場」の価値の活用だと思います。耐震補強のコストは馬鹿にならないでしょうが、外資だからこそそのコストの価値を認めてくれるのでしょうね。

                                                                                        (7月14日)
 ■メガドンキホーテの店舗別のインバウンド比率で道頓堀がワンツーフィニッシュ
 
 道頓堀は租界地に 

 インバウンドについて語られるときにドンホーテの道頓堀店で5割を超えていると良く聞いていました。ドンキはそんな免税店みたいな店なんだと思っていたら、5割を超えているのは道頓堀店と道頓堀御堂筋店の2店舗だけではないですか。全店平均は5.9%だからドンキの店の特徴ではありませんね。

 大阪では5店舗がベスト20にランクイン。以外に新世界店はインバウンド比率が低いですね。スーパー玉出なみの安い弁当を売っていますから、地元の激安が大好きな「大阪県民?」がお店を支えているとか?

 道頓堀はインバウンド客の租界地になっているようです。儲けるときはしっかり儲ければいいのかもしrてませんが、いつかお客さんが引いた後に何が残るんでしょうね。ドンキも大阪の店という感じはしませんから、他所の人が他所の人相手に商売している場所なんですね。

 大阪に新しい風が吹くことで、新しい魅力のある街に進化することを祈るばかりです。

 それにしても圧倒的やね。

                                                                                   (7月13日)
 図ー2015年7月~2016年6月 免税品売上構成比ベスト20
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 ■ホテル開業ラッシュの中、奈良でのホテル開発に注目
 
 京阪神でのホテル開業ラッシュ

 特に京都市内、大阪市内での開発件数の多さが目だっています。開発を急ぐあまり、カプセルホテルやゲストハウスの件数も多く、富裕層をターゲットにしたホテル開発が霞んでいます。
 そんな中、日帰り観光県として宿泊市場の動きに取り残されていた奈良県での2020年に向けての動きが注目されています。

 ひとつは奈良県が主体となって進めている県営プール跡への「JWマリオットホテル」(150室)の2020年の開業です。オフィス街で有り奈良公園などの観光施設からは離れていることもあり立地への疑問もありますが、んもありましたが、コンベンション施設や観光振興施設も整備されるので、これからの「変化に期待できます。

 「JWマリオットホテル」は世界でも最大のホテルチェーン、米マリオット・インターナショナルが展開する最高級ホテルブランドだ。現在世界25カ国に75施設があり、アジアの大都市だけでなく、地方都市にも多く進出しているが、日本には未進出だった。

 建設場所は、奈良市の平城宮跡に近い県有地の一角。森トラスト側が敷地約4千平方メートルを4億8千万円で購入し、29~31年度にかけて完成させる予定だ。

 ホテルは地上6~7階建てで、延べ床面積約1万5千平方メートル。国賓級が宿泊する部屋やスイートなどを含め全150室あり、レストランやバー、プールなども設ける。外観は古都の街並みに調和するよう、神社仏閣のデザインをモチーフに奈良らしさを表現するという。森トラストの担当者は「新ホテルは格付けで5つ星と認定されるだろう」と予想する。
(産経West3月21日)

 他の地区のように激しい動きはないものの、奈良県観光のの潜在ポテンシャルは高いものがあります。

 もうひとつは、奈良少年刑務所跡のホテル開発。民間のコンペです。

 3月末で閉鎖された奈良少年刑務所(奈良市)の保存・活用方法について、民間から事業提案を募集していた法務省は、全国で「チサン」ブランドなどのホテルを展開するホテル運営会社「ソラーレホテルズアンドリゾーツ」や清水建設など8社で構成する共同事業体が優先交渉権者として選定されたと発表した。収容棟をホテルに転用する案で、2020年中の開業を目指している。奈良少年刑務所は明治政府が造った「5大監獄」の一つで、旧奈良監獄として知られる。赤レンガ造りで2月に国の重要文化財に指定された。刑務所だった施設のホテルへの転用は国内で初めて。

 提案では、収容棟を活用したホテルや、簡易宿泊型ドミトリーなど三つの宿泊施設を整備。工芸品や雑貨を取りそろえたテナントエリアや旧奈良監獄の歴史を学べる史料館も併設する。


 建物はとてもユニークです。是非画像を検索して下さい。

 敷地内には」3つの異なるスタイルのホテル、レストラン、カフェバー、温浴施設、商業が整備されます。無印良品が「MUJI HOSTEL」を銀座に続いて出店します。キッチンを完備し、長期宿泊への対応や、工房・アトリエも整備すしアート活動や伝統工芸体験を支援します。


 全国的にも、関西でもあまり大きな話題になっていませんが、京都、大阪への交通の便も良く、歴史資源、自然資源も豊富な奈良がゆっくりですが、確実に変身していくと見ています。

                                                                            (7月12日)
 ■シェアリングエコノミーとモバイル決済の拡大~「商業施設」の未来は
 
 ファッション関連のテナント需要が減少する中「食」と「ドラッグストア」の需要が堅調

 不動産仲介の情報会社CBREのレポートによると、東京のギンザ・シックスのテナント応募以降、テナントの需要が減少しているようです。特にアパレルをはじめファッション関連業者の需要が低下しているといいます。ファッション、アパレルの需要低下は国内だけで無く世界的な傾向である事に注目したいと思います。

 ちなみに需要が高いのは「食物販」「飲食店」などの食関連と国内では「ドラッグストア」です。インバウンドにも強く、コスメや健康関連は若い女性にもニーズが高いのがポイントです。ショールーム系も需要が高いようで、「コト消費」業態が強いことがわかります。

 阪急うめだ本店ではECを含めた「阪急ビューティ事業」を3~4年後には300億円規模にすると発表しています。アパレル関連がなかなか伸びない中で、成長分野で商圏拡大をはかります。ECサイトの「阪急ビューティ」は本店の品揃えの9割をカバーしています。コミュニティサイトも立ち上げて消費者との接点を拡げます。同時にサテライト店を多様に展開していきます。ビューティーサロン、エステなどのトータルビューティサイトを店舗外の梅田に開設するとか、インバウンド対応のショップを開設するようです。

 エステ等の業者は経営母体の信用評価が難しいので(多額の前払い金を支払わせる類の商法が横行していましたからね)百貨店での展開があまり進んでいなかったのですが、業界も育ってきたのでしょうね。百貨店顧客のコト消費として最適な業態です。

 アパレル関連の業態の低迷はファストファッションやラグジュアリーブランドにも及びます。百貨店、GMSでも食は堅調でもアパレル部門が不振です。一番利益率が高い稼ぎ頭でした、ということは購入者にとっては「高く買わされている」ということですね。
 若者を中心に「おしゃれ」への支出が低下しています。「おしゃれ」へのニーズが全くなくなっているのでしょうか?「ファストファッションを賢く着回す」だけでない「おしゃれ」の楽しさを提供する働きかけが必要です。
 市場の数字としてはあらわれない、または小さくなるのですが、メルカリなどの中古品販売サイトやファッションレンタルが浸透してきているのではないかと考えています。
 木製家具の中古品流通の事業計画を構築したときに消費者調査を行ったのですが、ファッション感度の高い(特に若い)層には中古品の使用の抵抗感がありません。特に若い女性はSNSで自撮り映像を広めることが定着していますから、安物で無いファッションのシェアリングサービスはやりようによっては消費喚起につながります。

 シェアリングエコノミーはモバイル決済の浸透によって発展する

 「中国ではモバイル決済の浸透がシェアリングエコノミーの発展を後押ししている」という記事が6月6日のエコノミストに掲載されています。北京ではシェアリング自転車が普及していて、個人所有の自転車ははほとんど見かけないそうです。スマホのアプリが鍵代わりになり、決済もスマホで行います。
 モバイル決済は毎月伸びており、2016年の10~12月は前年同時期の2倍になり215兆円まで拡大しています。車の共有や駐車場の共有、民泊などのシェアリングサービスを考えると決済をスマホで完結することが必要条件であることが理解できると思います。
 銀行口座からの引き出し金額が減少し銀行・現金を中心とした既存の決済システムに大きな影響を与えています。「お金」が見えなくなってきています。

 日本でのシェアリングサービスの市場規模は1兆1,800億円

 (株)情報通信総合研究所が6月28日に発表したレポートで、インターネット上でモノやサービス(空き部屋、中古品、タクシー、スキル等)について貸したい人と借りたい人をマッチングするサービスの市場規模を推計しています。提供側が得ている収入は年間で1兆1,800億円。利用側が支出している金額は年間で4,400億円だそうです。なんだか数字が合わないような気もしますが。訪日外国人の利用やリテラシーが高いモニター調査なので事業意欲が高いからではと説明されています。

 20~30歳台の若い人の提供意向、利用意向の高さが目立ちます。「経済」が変わっていく兆しかも知れません。

 モバイルであっても最終的には通貨決済となるのですが、「地域通貨」や「エコマネー」のように通貨を介さないサービス、財の交換が定着すれば通貨を基盤とした経済は大きく変容します。

 さて、その中で商業施設はどこに向かうべきでしょう。例えば「マイレージやポイント制」というのは通貨の形を取らない「キャッシュバック」ですよね。
 「売上金額」にはあがらなくても利用同士のサービスや財の交換に介入する役割が果たせるかも知れませんね。例えば伊勢丹の顧客を仕入れ先としてサービスや財を提供するといおうイメージが描けるでしょうか?そう「伊勢丹クローゼット」(伊勢丹テイストのファッション)を共有する?お客さんの変化は、はるか先にすすんでいますよ。

 変われる事業者だけが生き残れます。小手先の対策で、その時の流行り物をとりれるだけでは限界がもうすぐきます。ビジネスモデルを見直すのです。

                                                                               (7月6日)

 国が発行する通貨の未来も不確定要素が多いですね。紙や硬貨に価値があるのでは無く、その背景の「信用」が問われます。積極財政論者が日本の財政は「家計」ではない、国の借金が増えても最終的には日銀が紙幣を印刷すればいいような与太話をまき散らかしていますが
最終的には国の「信用」がなくなれば「超インフレ」になて経済は破綻します。その時に日々の生活は「エコマネー」のようなものに頼るしかないでしょう。
■駅ビルじゃない路面型商業ビルの可能性~109の再生
 
 駅ビルに「買物」よりも「居場所」を求める時代に~(株)ジェイアール東日本企画駅消費研究センター+船場

 好調を伝えられてきた駅ビルもやや翳りがみえてきたようです。

 アトレの2017年3月期の既存店ベースの売上高は、前の期から2%弱減る見通しだ。衣料の販売が不振だった。昨年4月オープンの「アトレ恵比寿西館」など新規開業の効果で、全店売上高は同4%増の見通し。既存店の伸び悩みを新規店舗のオープンで補った。

 この構図はJR東日本のグループ全体にも当てはまる。昨年11月、静岡県の熱海駅に駅ビルの「ラスカ熱海」が開業。同じ月に千葉駅はリニューアルし、改札内に「ペリエ千葉エキナカ」がオープンした。だがこれまで主要駅で開発が進んでおり、同社の鉄道エリア内で、さらに再開発する余地は乏しくなりつつある。

 鳴り物入りで新規開業した施設も、必ずしも計画通りの売り上げを出せているわけではない。昨年3月、東京・新宿駅前に開業した大型商業施設「ニュウマン」。30~40代の女性にターゲットを絞り、飲食・サービスなど、衣料品の物販以外の消費者ニーズへの対応も狙ったが、初年度200億円の売り上げ計画は達成できない見通しだ。同施設を運営する、ルミネの新井良亮社長は「(商業施設がひしめく)新宿で顧客に受け入れられるのは容易ではない。売り場を作り込んで、顧客の支持を得ていく」と話す。

(日経ビジネス3月4日 記事)

 大阪・京都のファッションビル、駅ビルの2016年の売上もほとんど前年比マイナスです。客数は伸びても減収というパターンが多いようです。

 株式会社ジェイアール東日本企画は利用者の来店意欲を高める滞在時間を延ばすためのフロアコンセプトを船場と共同で研究し7月3日に発表しています。背景には商業施設(おそらくJR東日本の駅ビル)から来店客数の減少という課題が投げかけられたからだそうです。
 レポートの原本は「エキシューマー」「来店を促す場づくりとは」で公開されています。検索してみて下さい。

 ◆調査研究結果の概要
・駅ビルの来店冒は、買物目的の方より自分らしく過こせる“居場所″を求める方か多い。さらに居場所″を求める方は、来店頻度、使用金額も高い
・駅ビルが居場所となるために必要な要素は下記の2つ

①日々の忙しい自分を受け止め、落ち着かせてくれる
②自分をアップデートできる・発見があるような情報との出合いかある一生活者には「今の自分と理想の自分との距離縮めたい」というインサイトがある
◆コンセプト
理想の自分に近づくための情報を キュレーションし、提案してくれる開放感のあるフロア″ライフキュレーションホール″

上層階に設置しシャワー効果を狙うそうです

・物販コーナー=ギャザリングスペースを兼ねたカフェを中央に配置、カフェの回りにコスメや健康グッズといった美と健康をテーマとした物販コーナーを設置。
(サービスの特徴)販売を目的としないコンシェルジュがおり、利用者へ理想の自分に近づくための情報をキュレーションし提案する。商品カテゴリー毎にスペシャリストである「ソムリエ」(その商品の)を配置する。
・アクティビティコーナー=物販の外側にはヨガスタジオ、ボルダリングなどの身体を動かすアクティビティやオーガニックレストランを配置

 買物・消費の行動が基本的に変わってきているので、このような機能の複合は上層階の「特別な場所」ではなく各フロアで展開されなければ意味が無いと思いますが、賃料の高い駅ビルではそうもいかないのでしょうね。蔦屋書店を上層に誘致すればいいのですか?この提案はあきらかに間違っています。

 この企画に先立って行われた来店動機調査(2016年ネット調査)では駅ビルの来店動機には次の5つの動機があると分析しています。

1.「人の関係性・自己確認派」~(自分らしく過ごしたい、コミュニケーションしたい) 39.4% 1週間平均2.5回来店 1ヶ月に27,672円と消費金額も高い
2.「気分転換買物派」~(家や職場から離れ気分転換に買い物したい)18.1% 1週間平均1.9回来店 1ヶ月に18,921円消費
3.「買物功利派」(欲しいものを見たいお得に買いたい)16.7% 1週間平均2.0回来店 1ヶ月に16,2373円消費
4.「気分転換買物派」(家や職場から離れて気分転換に買い物したい)1週間平均1.9回来店 1ヶ月に18,921円消費
5.「無関心・暇つぶし派」(時間つぶし)14.5% 1週間平均1.7回来店 1ヶ月に10,182円消費

最も消費言金額が高い層は物販と言うより、ぶっちゃけて言うなら「喫茶」「会食」「習い事・スポーツ」を駅ビルで行う層なんでしょうね。

 駅商業施設の同質化に対抗する109の再生~モノ・コト提案型商業施設に

 近年の109はソフト面・ハード面ともに劣化が進み売上高はピーク時の2008年度の280億円から161億円(2015年)と低迷しています。※渋谷109

 「若者の今を輝かせ、夢や願いを叶える存在」と再定義し8階と地下2階に新業態を導入、単なるファッションビルに止まらず、モノやコトを提案する商業施設として生まれ変わりました。(それにしても最近の商業施設のコンセプトは同じようにキラキラしたワードが並びますね。これでMDが組めるのかしらん)

 アパレル雑貨が9割であったテナント構成を7割に押さえて飲食、サービスを導入するそうです。

 新業態とは8階の「DISP!!!」エンタテイメントとカルチャーのコラボ2~3週間の短期サイクルのイベントスペース。スタートは「欅坂46」とのこらぼで若い男性が来館したそうです。地下2階は「IMADA MARKET」まだ世に出ていない個人やブランドスタートアップ企業の商品を「今まさに」販売するイベント店舗のようです。将来的にはフロア全体をイマダマーケットに拡大したいそうです。(新しいクリエイターのインキュンベーションという意味でしょうね)テナントで埋めていくというデベロッパーの従来の手法からの大きな転換ですね。

 「駅立地は賃料の兼ね合いも有り出店できる企業は限られていおり駅商業施設の同質化が進んでいると思う。駅だけでは街の魅力は」発信できないし、街のパワーが落ちてしまう。109は駅から外に人を引っ張り出し、街を回遊するためのエンタテイメント機能を担う」と語るのは渋谷109の運営専業新会社として今春設立された
「(株)SHIBUYA109エンタテイメント」代表取締役の木村知郎氏です。

 渋谷キャストといい最近は東急系のまちづくりが面白いですね。

 関西の私鉄もターミナル周辺開発を頑張ってくださいね。

                                                                              (7月5日)

 一晩考えたのですが、これらの方向の変革はテナントビル業態よりも百貨店業態の方が適応しやすいかもしれません。ただし、社員の給与体系は押さえる必要がありますが。
 ■ネットで何を購入しているか~全体を俯瞰する年代別の傾向
 家計消費状況調査(2016年)でみたインターネットを利用した支出 

 家計消費状況調査は、世帯を対象として、購入頻度が少ない高額商品・サービスの消費やICT関連消費の実態を毎月調査しています。調査結果は、個人消費動向の分析のための基礎資料として利用されるとともに、我が国の景気動向を把握するための基礎資料としても利用されています。

 従来の家計調査ではわからない領域です。年代別に絞ればもっと違ったアイテム(アクセサリー雑貨とか衣料品でも中古衣料とか)をクローズアップすべきなのでしょうが、市場の全体像を掴むのにはまずここから押さえておく必要があります。

 22品目の調査対象からどこかの年代で500円以上(平均値)支出されているアイテムをピックアップして図化しました。

 支出総額でインターネットの利用が多いのは、50~59歳で40歳代、30歳代がそれに続きます。20歳代は意外に低く、60歳以上では大きく平均利用金額は下がります。
単身世帯では35~59歳が利用金額が高いです。収入も高く、消費支出が高い年代がインターネットのショッピングも多いということですね。

 最も多いのは「旅行」関連の支出です。70歳台までの各年代でトップです。20歳台では「音楽・映像ソフト、パソコンゲーム」がトップに続きます。30歳台では「家電」、40歳以上の年代では「食料品」が多くなります。日常の食料のまとめ買いなのか、お取り寄せなのか中身が気になりますね。

 こうしてみるとインターネット上でも「モノ」より「コト」の消費の比重が高くなっていますね。(グラフ破線がコト消費)

                                                                                      (7月4日)
 図ーインターネットを利用した品目別の1ヶ月の支出
 LLP1支出総額は右の数値、品目別は左の数値
家計消費状況調査 2016年版
 ■インバウンドからコト消費へ~「千葉ポートタウン」失敗した再開発の再生
 
 「千葉ポートスクエア」の商業施設「千葉ポートタウン」が7月1日に再スタート

 「千葉ポートスクエア」というのは1993年に「千葉中央卸売市場」跡に開業した複合施設です。 千葉ポートサイドタワー(オフィス棟)、千葉ポートタウン(商業棟)、ホテル棟、千葉ポートアリーナ(体育館)で構成されています。開業時の運営は「千葉都心開発」(川崎製鉄(現・JFEスチール)、間組を中心に、三菱商事、日本長期信用銀行(現・新生銀行)などの出資により設立された不動産管理会社。大型商業ビル「ポートサイドタワー」(同社が不動産10分の1を保有)の運営・管理を手掛ける。「ポートサイドタワー」は地上29階、地下3階で隣接にホテル、体育館を有する大型商業施設。開業当初は不況を反映して入居率が低迷していましたが、千葉市など官公庁関係への勧誘で公共団体や優良企業の支店がテナントとなり、オフィスは何とかうまっていたのですが、債務超過に陥り、いくつかの所有者を経て中国の不動産会社がとラオックスが周遊しています。(2015年12月発表 流通ニュースより)

  商業施設「千葉ポートタウン」は以前にも御紹介しましたが核店舗のトイザラスが退店していらい「廃墟モール」になっていました。昨年2月にかつて家電量販店として入居していた「ラオックス」(免税品店)が中国の不動産会社と信託受益権を取得しました。ホテルも隣接し成田空港にも近いので免税品中心の商業を計画していたのでしょう。通常の商業施設としては鉄道からのアクセスが悪いのが難点です。

 「千葉ポートタウン」の開業時のテナントは
-1階-
「ラオックス」(家電) 「新星堂」(CD・書籍) 「楽器ロックイン」 「フルヤマ薬局」 「千葉メガネ」 「ジャストスポットコンビニ」
-2階-
「トイザらス」(玩具)
-3階-
「ラオックス」(PC館)
-4階-
「アミューズメントスパークタカラ島」(ゲーム)
-5階-(レストラン街) 
「からり」 「満亭」 「杵屋」 「オールドスパゲティファクトリー」 「つヽゐ」 「THE丼」 「コロラド」 「はや」 「味の一丁」
-6~7階-
「セントラルフィットネスクラブポートスクエア」
 外部には東京電力のPR館とマクドナルドが出店していました。

ホテルは、「ホテルパシフィック」から「ウィシュトンホテル千葉」さらに「東横イン」そして「ホテルグリーンタワー」を経て今は「カンデオホテルズ」になっています。波瀾万丈の経歴ですね。

 7月1日に新しい「千葉ポートスタウン」が開業しました。

1F:ラオックス/3minutes kitchen /日本いいもの物産展/Pet Spice
 化粧品、雑貨などの「ラオックス」のほか、「日本いいもの物産展」(商品の5割は千葉の物産)、カップ麺の専門店「3ミニッツキッチン」、屋内ドッグラン付きの「ペットスパイス」で構成する。

2F:ベビーキッズファッションフロア
ベビー・キッズを中心としたアウトレット価格のファッションフロア。「ホットビスケッツ」「ダッドウェイ」「ANAP」などを並べる。メンズ、レディスのそれぞれ8ブランドを揃えたコーナー「オンワードジェイブリッジ」も設ける。小学生までの子供を持ったファミリー層に対応する。

3F:リンクパーク
 乗り物体験、段ボールアート、英会話のワークショップなど有料の子供の遊び場やカフェとヨガ、ダンススタジオ、カルチャーサロンなど。

4F:AIRSOFT ZONE DELTA
 エアガンを撃ち合う、サバイバルゲームの楽しめる「アクティビティスポーツフロア」ドローン競技やコスプレ撮影会など。

5F:THE NEW YORK BAYSIDE KITCHEN
 ビュッフェレストラン「ザ・ニューヨーク」アジアの観光客に人気のあるビュッフェスタイルのレストラン。和食から洋食、中華など千葉の食材を活用した幅広いメニューを提供。カフェベーカリーも設置。

6-7F:セントラルフィットネスクラブ(既存施設)


 「小売りにコトをプラスしたい」(岡野智彦執行役員新規事業本部本部長)として、自前で新たに開発した機能を盛り込んだ。独自のコト提案で個人客を中心としたインバウンドと、足元の千葉市を中心としたファミリー層を集客する。12月までの初年度で70万人の来客と、14億円の売り上げを計画している。

 今年の秋にはエンタテイメント施設「千葉ポートサークル」を開業。京都で人気を呼んでいるパフォーマンス「ギアーGEAR」が上演されます。

 日本発×日本初のノンバーバル(=言葉に頼らない)パフォーマンス『ギア-GEAR-』。
光や映像と連動したマイム、ブレイクダンス、マジック、ジャグリングによる迫力のパフォーマンスで感動のストーリーを描くと共に、セリフを使わない “ノンバーバル”という演出により、小さなお子さまから大人まで、そして外国の方までもが、言葉の壁を越えて楽しんでいただけます。
『ギア-GEAR-』は大きさや形、色の異なる歯車が噛み合い、大きなうねりを生み出す日本独特の和の文化である「調和」をテーマとして公演を開始。
2017年4月に京都ロングラン6年目に突入、同年4月には100席限定の劇場で観客動員数13万人を突破しました。


 爆買いの反動での売上減は落ち着いてきたようですが、モノ消費からコト消費への流れはインバウンド主体の施設でも進んでいきます。

 廃墟モールの再生「ピエリ守山」も大型ファストファッションとともにコト消費が集客の鍵になっていますし、「奈良そごう」跡の「イトーヨーカドー奈良店」跡も娯楽性の高い商業施設になります。エンタテイメントの質が問われますね。(廃墟モールではありませんが「ららぽーとEXPOCITY」も「海遊館」の運営する「ニフレル」や観覧車の存在感が大きいですね)

 いまから考えると,道頓堀でパチンコ屋さんが開発していたテーマパーク「道頓堀極楽商店街」はよく出来ていましたね。
 http://gigazine.net/news/20081020_dotonbori_gokuraku/ へのリンク

 
 ところで、昨日、観光で淡路島の「淡路夢舞台」を拝見しました。http://www.yumebutai.co.jp/ へのリンク

 2000年に完成した、大阪の至宝安藤忠雄先生の代表作…なんですね。ネットで悪い評判も流れていないし、そこそこ人は居ましたが、大先生の作品にありがちなメンテナンス費なんぼかかんねん的な手の込みようと、利用者に最大限の不便を強いる導線の構成に、もうこのような建築物はたたないだろうなという感慨を持ちました。ところどころにみられる打ちっぱなしコンクリートのヒビや水が流れない「泉」のなごりは味わい深いモノがあります。
 株式会社夢舞台(兵庫県が出資している第三セクター)が運営しているそうです。おりしも兵庫県知事選挙でしたが無事に現職が当選し、まだしばらくはこの作品を楽しめそうですね。
 ただ、国際園芸・造園博「ジャパンフローラ2000」が閉会した跡は、不採算エリアを縮小してコンパクトな形で運営するように切り替えた方が良かったでしょうね。コスプレイベントなどに利用されているようですが、だんだん日銭稼ぎの「安い」イベントが増えていくと安藤忠雄先生も浮かばれないでしょうね(まだご存命ですが)。
 
 バブル期に多い建築家の作品群の多くは撤去されたり、零落した安い使われ方をしています。兵庫県知事が維新でなくて良かったですね。彼らは、文化の価値を貶めることに生きがいを関してますからね。一方それにしても維持管理の税金がもったいないと言う気もします。
 ちゃんと税金で維持するか思い切って縮小、または撤去するかですね。

                                                                                   (7月3日)

 もし「淡路夢舞台」の運営が民営化されたら…きっとこうなる

・ 「結婚式場」ウェスティンホテルが色々なプランで活用していますが、ハウスウェディング業者に貸し出す?
・百花苑を「樹木葬」の墓として定借で貸し出す
・「クラインガルテン」として区画割をして京阪神の都市居住者に貸し出す
・グラマラスキャンプを設営する(スノーピーク) バーベキューサイト設置
・ハウステンボスのプールを夏場に誘致する
・ドローン撮影の教習所を開校~ドローンレースのイベント
・山頂からスライダーで滑降できる遊具を設置  ジップラインですね
・温浴施設を設置(湯快リゾートか大江戸温泉物語)
・クリスチャンラッセンとかそういった類の「アーティスト」の美術館を設置しコピーやグッズを売りまくる
・トミカ博、プラレール博、レゴ博、アンパンマン博などのイベントを定期開催
・コスプレの聖地として定期イベントを開催する
・オルゴールミュージアム、北原照久さんのおもちゃミュージアムの巡回(もうやっていますね)
・大衆演劇の劇場
・断食道場、泊まり込みエステ
・レッドブルの何かのレースの誘致
・女子プロレスの興行

   素晴らしい眺望と、眺める分にはきれいな建築物なのですがね。

と書いていたら、神戸市が六甲山のにぎわい創出事業を募集していました。発想はあんまりかわらへんやん。

■募集のねらい
六甲山上の企業保養所等の遊休施設を対象に、行政と連携し、提案者自身が建替や耐震等の改修、解体・植栽等を主体的に行い、六甲山の魅力向上
に効果が期待できる「賑わい創出事業」を募集します。
■遊休施設を活用した「賑わい創出事業」の例
・外国人観光客向け体験ツアーや市民向けの健康増進ツアー等を企画・実施するサービスの拠点施設
・外国人観光客向けゲストハウスなど体験型宿泊施設
・グランピング等を楽しめる、レストランや温浴施設等を併設したキャンプ場
・景観に配慮したオーベルジュやカフェ・レストラン等
・市民や観光客にひらかれた工房、若手アーティストを応援するギャラリー・ホール
・観光客やハイカー、地域住民が気軽に集える情報交流・コミュニティスペース など

 六甲山・摩耶山もすばらしいながめなんですけれどね。
http://www.city.kobe.lg.jp/information/project/industry/rokkomaya/index.html へのリンク


                                                                              (7月4日)

 「淡路夢舞台」ではこの夏「クレヨンしんちゃん」のイベントやジップラインが設置されて賑わっているそうです。竹中平蔵さんが会長のパソナが運営しておられるのですね。
 この記事を書いている段階では知りませでした。死亡フラグが立ちましたね。
 順調に民営化路線が進んでいるようです。

 ■お客様の「Wi-Fi環境の整備」のニーズを軽く見てはいけない
 
 インターネットの利用率は国民の83%

 総務省の調査では8割の人がインターネットを利用しています。スマートフォンの普及率が72%となり携帯電話・PHSの普及率95.8%に迫っています。
 スマホを使ってインターネットを利用する人は54.3%。PCを使ってインターネットを利用する人56.8%と拮抗しています。

 年齢別に見ると60歳代までは7割以上がインターネットを利用していますが、70歳代では5割、80歳維持用では2割が利用しているということです。

 PCとスマホではインターネットの使い方が違います。スマホは「広告」の固まりです。映像を手軽に楽しめたり、友人と連絡を取ったり、出先で軽い調べ物をするのには便利ですが、一方で、画面が見にくく、情報に検索しにくい上にすぐに広告サイトに誘導されるのでストレスが貯まる…と感じるのは古い世代だからでしょうね。スマホを使って無料で情報収集したり、時間つぶしが出来るのだから「広告」はある程度我慢しなければいけないのでしょうが、とにかくストレスが蓄積されます。

 さて、スマホがこれだけ普及している中で、食事の店を選んだり、お目当ての店を探すのに、街の中ではスマホは重要なツールです。(先日、阪急にあったお気に入りのショップがなくなっていたので、検索したら梅田大丸にあるという結果が出たので、梅田大丸に行っても見当たりません。よくよく検索するとそのブランド自体が春前に無くなっていたということがあります。飲食店などでも検索した店に行ってみれば潰れていたということもありがちです。そこにある「情報」はあくまでも広告なので更新されないこともあれば、正確性も劣ります。リクルートが発行する広告雑誌の記事の信頼性のようなもので真剣に当てにする方が馬鹿なのでしょうね)

 商業施設の来店者へのニーズ調査で「無料Wi-Fiの整備」「充電環境の整備」が高い順位であげられていることは以前も御紹介いたしました。いくつかの商業デベロッパーさんにお話ししてもあまり関心が無いようで「みんなスマホは持っているでしょう」とか「観光客用の無料Wi-Fi」や「鉄道とかソフトバンクなどのWiーFiがあるでしょう」と整備には乗り気ではありません。インフラ的な投資になるし、販促にも直接つながるイメ-ジがないからでしょう。

 スマホの「データ使用量」は想像以上にはやく消費しますし、電池の持ちも悪いです。できるだけデータ使用量は節約したいし、充電はこまめにしたいというのがユーザーのニーズです。

 「無料でそれらを提供すればただ乗りしようとする貧乏人ばかりが集まってきて、コストがかかるばかり」というのが懸念材料でしょうが、渋谷キャストの「広場空間」やSMのイートインスペースなどのようにパブリックな空間をうまく運営・演出することは集客の鍵です。
 うまく活用すれば来店者の行動パターンをリアルタイムに把握することも可能です。

 観光庁が訪日観光客に聴取したアンケートでr「旅行中困ったこと」のトップは圧倒的に「公衆無線LAN環境」で36.7%です。海外での公衆無線LANの環境はどうなっているのでしょう?

 海外での公衆無線LANの取り組み

 アメリカで�はスマホが普及する2010年以前、2000年代中頃から地方自治体レベルで公衆無線LANサービスが計画されていましたが財政的課題や民業圧迫の懸念から今は下火です。ニューヨーク市では公衆電話を置き換えた「LinkNYC」が設置されています。公衆電話の代わりに設置された幅89cm×高さ290cm×奥行き28cmのパネルで「無料Wi-Fiスポット」「通話(国内無料)」「緊急通報」「タッチパネルディスプレイでの情報検索」に加えて「USBを使った充電機能」が装備されています。広告パネRが収益源となっています。面白い仕組みですが、広告価値のあるエリアでしか成立しない仕組みですね。設置数は648台。
 当初はホームレスが専有しているとか、ネットでわいせつ画像を長時間見ている人がいるとか、通話の音量が大きいとか色々課題があったようですが、現在はかなり改善されており市民の評価も高いようです。
 その他商業施設(ホテル、飲食店、空港、物販店)での提供は無料のものと有料のものがあります。ネットワーク事業者は自社サービス加入者には無料で、加入者以外は有料。仕組み自体はあまり日本とかわらないようですが、何か運営上の違いがあるのかもしれません。

 アジアの方が進んでいるのです。

 韓国ではスマートフォンの普及スピードが早かったため無線LANスポットの整備も進んでいます。通信事業者の公衆無線LANは加入者向けのサービスではあるもののホットスポットも多く、通信速度も100Mbpsと早いのが特徴です。
 ソウル市と釜山市では自治体独自で無料公衆無線LANのホットスポットを整備しています。
 2011年以降は国が通事業者と共同で無料公衆LANホットスポットを全国に整備しています。
 韓国からの訪日観光客も多いので、自国と比べて使いにくいと感じているのでしょうね。

 中国では通信事業者が主導で公衆無線LANを整備しています。外国人はプリペイドカードや国際ローミングでの利用になります。国策としてインターネットに力を入れているのでこれからどう変わっていくのか?かなり大きく変化していくと思われます。

 台湾では公共空間では国による公衆無線LANが整備されています。また自治体独自でも無料公衆LANサービスが提供されており、登録すれば外国人でも利用できます。
 これらの国からの訪日観光客からすれば、日本の公衆無線LANは使いにくいでしょうね。

 パーソナルデータ

 じすれガイドラインが定められてWI-FIの利用状況での位置情報から移動状況が解析可能になります。商業施設にとって外国人だけで無く利用していただくお客様へのサービス、集客のツールという役割はもちろん顧客の回遊状況も把握できます。
 
 将来にわたって、よりよいサービスを提供するためにもお客様の事を知る事が大事です。

                                                                                    (6月29日)    

 図-1は今回のテーマとは関係ないのですが、昔、山の中でやっているショップで通販事業を考えたときに、ブロードバンド環境が整っていなかったので断念したことがあって都道府県別の最新データを調べてみました。年に一度テレビの電波も入らない山奥に滞在するのですが、地上波テレビは見えなくても 、ネットは繋がるのでネット配信で「ミニオンズ」を楽しく視聴できました。(なんでそんな山奥まで行ってわざわざ「ミニオンズ」を見るのか)ネットはすごいなあと思いました。

 国内でブロードバンドと宅配便が普及したので、どこでもビジネスができると移転する企業もぼつぼつ発生しています。徳島県は企業誘致で有名ですが個人のネット利用率は低いですね。ケーブルテレビの普及率が89.7%と全国平均の53.6%を大きく上回っているのでサテライトオフィスの誘致に成功しているようです。     
 図ー1都道府県別のインターネット利用率(パソコン、スマホ) 2015年
 OP1総務省「通信利用動向調査」
図ー2 世帯年収別インターネット利用率
 OP2
 ■小売業はまちとつながらないと生き残れないのか~渋谷キャスト(クリエイターの集う場所)
 
 かつて「渋谷」をリードしたのは西武・セゾングループ

 70年から80年代にかけて渋谷周辺で時代をリードする商業施設を仕掛けていたのは西武セゾングループでした。渋谷駅からNHKに向かうルートが最も賑わっていました。坂が急で最も渋谷らしい景観の地区で道玄坂周辺は一等地でした。

 バブルが弾けて西武セゾングループが解体されたあと、駅周辺の再開発が進む中で東急グループによる開発が渋谷をリードしています。2012年の渋谷ヒカリエ「ShinQs」の開業と東急電鉄の新駅の設置は人の流れを大きく変えました。2013年の調査では「伊勢丹新宿店」につぐ2位の利用率を得ています。(日経商圏センサス調査)

 一時はIT起業家が集まるビットバレーともいわれた渋谷に新しいスポットが4月28日にオープンしています。大型小売店ではなく住居を中心にした複合施設です。

 「渋谷キャスト」~クリエーターの集う場所

 4月28日に渋谷の宮下町アパート跡地にオープンした大型複合施設「渋谷キャスト」はアパレル、飲食、スーパーなどの商業だけで無く、オフィス、シェアオフィス、住宅、サービスアパートメントが一つになった施設です。渋谷に珍しいたまり場としての「広場」も設定されています。地下2階、地上16階延べ床面積は3.5万㎡です。
 東京急行電鉄株式会社、大成建設株式会社、サッポロ不動産開発株式会社、東急建設株式会社の4社が出資する渋谷宮下町リアルティ株式会社が事業主体です。

 13~16Fは1Rから3LDKタイプまで80戸の共同住宅になります。13階には、居住空間に加え、キッチンやリビングダイニングなど、居住者同士のコミュニティ活動をサポートする共用スペースがあります。また、14階は、「サービスアパートメント」として渋谷を訪れる国内外からのビジネスマンやクリエイターなどの短中期滞在者に提供されます。
 2~12Fは事務所です。渋谷に数多く集積するIT系、デザイン、アパレルなどのクリエイティブ産業の集積を支える基準階約400坪の大規模賃貸オフィスです。ビットバレーといわれたIT産業の集積もありますし、旧渋谷川遊歩道(キャットストリート)の起点でもあります。ストリートカジュアルの聖地とも言われて古着屋インディーズの個性的なショップが多く集まっています。メインテナントとして、渋谷に拠点を構えるベイクルーズグループ本社オフィスが移転します。

 1~2Fはシェアオフィスとカフェ。東京都内を中心にシェアオフィスを展開する「co-lab」が入居。フリーランスや企業人のクリエイターが集まり、交流・連携し、コラボレーションにより高度なアウトプットを創出します。ワークスペースの提供だけでなく、メンバーのマッチング、起業業・法務支援などのサポート機能も備えています。2Fには「デジタルハリウッドSTUDIO渋谷」(社会人向けのデジタルクリエイター養成スクール)が入居します。
1階にカフェも併設。気軽に使えるカフェとして、一般客利用のほか、イベント、ミニギャラリーショップとしての利用も可能になります。

 住まいと働く場所が一体となったコンセプトで構成されています。さらに地下には商業施設として、渋谷にありながら落ち着いた空間を提供するスパニッシュイタリアンのレストランやキャットストリートの空気感をつなぐファッション雑貨店「セレクトショップPULP」「デリカフェPULP」、株式会社東急ストアが展開する小型スーパー「東急フードステーション」「カフェオーレ」などの店舗が入居します。

 注目したいのは「多目的スペース」と「広場」の設置です。「展示会やギャラリー、セミナー、トークショー、レセプションなど、様々な用途に活用できる多目的スペースも完備。屋外には大勢の人が行き交う通りに面した広場もあり、多目的スペースと広場の一体利用もできる」ということですが、運営者が設定され、キチンと管理されていることです。フードトラックも配置され緑やイスなども整備されています。渋谷という繁華街に近い場所で有りながら落ち着けるたまり場を提供します。

 オープンな空間を維持管理するのは大変ですが、この立地ならではの差別化ポイントです。

 商業的な空間は小さいのですが、これからの小売業はこのように他の都市機能と組み合わせて、その立地ならではの価値を作っていくことが生き残りの鍵となると考えています。

 国内の小売り大手の半数が減収している中で、アマゾンジャパンの売上がはじめて1兆円を超えました。jフロントリテイリングの1兆1,085億円を抜いて6位の1兆1,747億円を2016年度に売り上げています。実店舗は無くなりはしませんが、マーケティング再構築とともに、収益のあげ方、組織体制など大きく見直していく必要があります。

 JR大分駅前のパルコの跡地は大分市が取得するようです。「花や緑、噴水、カフェを備えた祝祭の広場」として当面利用するようです。公共との連携をどのように図るかが商売のポイントになるかも知れません。小売業・商業デベロッパーは「まちづくり」に独自の提案が出来ないと生き残っていけないでしょうね。(小売業の皆さん口ではおっしゃいますが腰が引けてますよ)


 今、大学誘致に自治体が多くの税金を投入していることが話題になっています。今話題になって居る案件で無くても、土地の無償提供、事業費の提供などあちこちの自治体でも行われています。

 もちろん補助金頼みでは持続しませんが、元気を取り戻したい地方から誘致される対象になる総合的な生活サービスを提供するノウハウを構築し、低コストで運営できれば「百貨店」を是非誘致したいという自治体は少なくないでしょう。

 人件費、運営コストを押さえて、地域の実需にあった商品揃えができれば「ブランド力」「ネットワーク力」を地域のために活かせるのですが…社内でも最も優秀な人材を投入しないといけませんね。長く組織(会社)に所属すると組織固有の思考パターンにはまってしまうので、できるだけ外の人と仕事をした方がいいんでしょうね。

                                                                           (6月28日)
 表ー70~80年代の渋谷周辺の商業開発(西武セゾンと東急の比較)
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図ー「渋谷キャスト」の立地~渋谷・表参道・原宿の結節点
 eee1   fff1主要大型店売上高

 ■顧客満足評価と「世評」のギャップ
 
 顧客満足度の高い企業は

 昨日紹介しました、公益財団法人日本生産性本部の サービス産業生産性協議会のJCSI調査(日本版顧客満足度調査)の2017年版で気になったことがあったので昨年の報告書を読み返しました。広告を大量に投入したり、経済新聞などでの評価は高いのに「顧客満足度」が低い企業はどこなのか?「世評」と「顧客満足度」にギャップがあるとしたらどこに課題があるのかを知りたかったからです。

 昨年度の企業ランキングでは
 1.「宝塚歌劇団」(エンタテイメント)
 2.「劇団四季」(エンタテイメント)
 3.「ヨドバシ.com」(通信販売業)
 4.「リッチモンドホテル」(ビジネスホテル)
 5.「コープ共済」(生命保険)
 6.「帝国ホテル」(シティホテル)
が上位にランキングされており、顧客満足度評価が80点を超えています。(100点満点)

業界別(業種医・業態別)に見ると
 1.エンタテイメント
 2.ビシネスホテル /旅行
 4.シティホテル
の満足度が高いようです。
その業界の数値をさらに分析すると満足度が高くて業界内の企業の格差が小さい業界(業界全般に満足度が高い)と業界の中位数は高くても企業の格差が大きい業界があるようです。

 知名度が高いのに満足度が中位数を下回っている(業界の評価分布の真ん中より下位のものです)企業があります。

 例えば

 通信販売では
 「QVC」「ショップチャンネル」「セシール」「ディノス」「ニッセン」「フェリシモ」「ベルーナ」「YAHOO!ショッピング」「楽天市場」などの評価が低くなっています。高いのは「ヨドバシ.com」「オルビス」「JOSHIN WEB」「ファンケルオンライン」「通販生活」「アマゾン」などです。どこで評価が分かれるのか通販ユーザーにもっと突っ込んで聞いてみたいですね。

 ビシネスホテルでは
 「アパホテル」「サンルート」「東横イン」「ルートイン」「ワシントン」が低くなっています。

 エンタテイメントでは
 「東京ドームシティ」「ナガシマリゾート」「USJ」が相対的に低くなっています。(とはいえそれぞれ70点以上の評価なので他業界と比べると悪い評価ではありません)評価の高い「宝塚歌劇団」(86.8)「劇団四季」(86.7)「東京ディズニー-リゾート」(77.1)が突出しているので上位との差が大きくなっているのでしょう。

 飲食では
 「かっぱ寿司」「ガスト」「ココス」「ジョナサン」「デニーズ」「バーミヤン」「ロイヤルホスト」「餃子の王将」「すき家」「マクドナルド」「松屋」「吉野家」が低く、「木曽路」「くら寿司」「サイゼリヤ」「ジョイフル」「スシロー」「びっくりドンキー」「KFC」「幸楽苑」「coco壱番屋」「丸亀製麺」「モスバーガー」「リンガーハット」の評価が高くなっています。
 TV広告や店舗数だけでない「特徴」の強いへの評価が総じて高いのが興味深いところです。
 
 宅配便では
 「佐川急便」「西濃運輸」の評価が低く「日本郵便」「福山通運」「ヤマト運輸」の評価が高くなっています。格差はありますが全体的にボトムでも70点を上回っているので悪い業界ではありません。

 携帯電話業界は全般に満足度が低いのですが、なかでも「au」「ソフトバンク」「ドコモ」の評価は低く、「Y!モバイル」への満足度が高いようです。ガラケーに限ると「au」「ドコモ」の評価はあがりますが「ソフトバンク」は低くなっています。

 売上や規模などの経営指標と合わせて各企業の評価を見ると将来の業績変化が見えてくるかも知れません。

                                                                                 (6月27日)

 身内のスマホ舳の切り替えのため、携帯電話会社の窓口を一巡しました。なるほど、調査結果は間違っていないですね。担当者でまともな接客会話ができていたのは中年女性が応対していた某社のショップだけでした。この業界はかなり問題を抱えていますね。
 図ー業種業態満足度からの業界ポートフォリオ 満足度水準×業界内企業格差
 FF14
公益財団法人日本生産性本部 サービス産業生産性協議会 2017年度 JCSI調査(日本版顧客満足度指数)から作成

■ 顧客満足評価は経営改善の通信簿~2017年JCSI調査結果を読む
 
 JCSI調査業種業態別の顧客満足度

 日本生産性本部のサービス産業生産性協議会が、業種横断的な顧客満足度調査を行っています。6月20日にその第一弾としてコンビニエンスストア、シティホテル、ビジネスホテル、飲食、カフェ、事務機器の調査結果がリリースされています。詳しくは報道資料をご覧下さい。
 ここではそのレポートから考える業種別の特徴を簡単にまとめておきます。

 調査結果は順次発表されていくそうです。先に、昨年度2016年度の調査を見ていて興味深いのは

 全体的に顧客満足度が低いのは「携帯電話」業界です。店頭の対応もそうですし、サービスサポート、契約変更でも嫌な思いをした人が多いと思います。業界では問題意識があまりないのでしょうか?ものを配れば満足してもらえると考えているのでしょうね。

 業種内での満足度の格差の幅が大きいのが、「国際航空」、「近郊鉄道」、「証券会社な」どです。中位数で見ると「銀行」の顧客満足度も高くはありません。サービスのお手本として「エアライン」や「銀行」などの接客がお手本と言われ、サービス教育のコンサルさんも航空会社のサービススタッフの方が多いのですが、さぞかし耳が痛いでしょう。

 業種として顧客満足度の水準が高いのは「エンタテイメント」(宝塚歌劇とかTDLです)「シティホテル」「ビジネスホテル」などです。やはりサービスが商品の企業は顧客接点が勝負なだけに、全般的に強いですね。

 2017年調査の特徴

 コンビニエンスストア
 北海道中心の「セイコーマート」が強いですね。エリアを絞っていて、顧客のニーズに合わせた品揃えが早いことそして安いこと、店内調理の水準が高いこと、さらに損益分岐点が低く設定されていることなど地域に密着することで可能なMDが強みです。王者セブンイレブンもかなわないですね。

 シティホテル
 「帝国ホテル」がトップを独占。これは納得できます。かつての御三家のイメージは盤石です。その中でも「ホテル日航」が2位にランクインしています。利用者ベースの調査なので高級外資系ホテルは対象外です。
 関西の老舗「リーガロイヤルホテル」利用した人にコスパも含めて評価されています。ブランド資産はまだまだ活きているのですね。いつも気にかけて叱咤激励しているつもりですが、本当に頑張って下さいね。
 
 ビジネスホテル
 広告をガンガン流して、出店スピードも驚異的なあのホテルが全く評価されていませんね。
 サービスを絞って展開している「スーパーホテル」が健闘しています。

 カフェ
 スターバックスはイメージは高いのですが顧客満足度は低いという結果になっています。 最近のスタバはどうでしょう?

 積極的に出店している企業は「顧客満足度」がなかなか追いついていないように思います。

 先週の記事にも書きましたがやはり「人が売上をつくるのです」

                                                                              (6月26日)
 
 mm3 顧客満足度とその原因、結果の指標を聴取それぞれ利用者が対象

表 業種別の評価順位  各業種の利用者を対象に評価を聴取  各評価の中位数以上の企業をランキング 数字は順位
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 公益財団法人日本生産性本部 サービス産業生産性協議会 2017年度 JCSI調査(日本版顧客満足度指数)より
 調査結果のリリースは上記調査名で検索下さい
 ■人がものを売る~人手不足時代には立地と客層をとらえた営業時間設定を
 
 営業時間を短縮して売上を伸ばした「ピオレ姫路」

 6月20日の繊研新聞に興味深い記事が掲載されています。JR姫路駅のエキビル「ビオレ姫路」が今年4月から閉店時刻を午後9時から午後8時に1時間短縮したにも拘わらず、売上げ高も入館者数も増加しているそうです。店舗別に見てもほとんどの店舗が前年実績を上回っています。

 テナントからは「繁忙時に手厚いシフトが組めるようになった」と好評だそうです。姫路駅周辺は夜は早いです。20代女性とファミリー客が対象なら8時までも十分でしょう。お客さんからしても馴染みのショップスタッフがいつも店にいるなら話がしやすいですしね。

 「人出不足」が流通を変える?

 宅急便のヤマト運輸が配達の人手不足のために、取引先を絞り込んだり、配送時間帯を縮小しています。最近新設が多い物流倉庫も、かなり機械化が進んでいるのですがそれでも、人手不足だといいます。人材確保のために、非正規写真を正社員かすることで、コストがアップし経営を圧迫している企業もあるようです。
 運送コストは今後間違いなくアップします。
 ECでの競争は「低価格」だけが売り物の店は駄目になります。

 大きなハコやしコンピュータシステムがものを売るのではなく人がモノを売るのです。

 ホテルラッシュへの不安~人手では無く人材不足がボトルネック

 いつも論じていますが、ホテル開業ラッシュは運営スタッフの不足がネックになります。ハウステンボスのホテルのようにロボット化で乗り切れるかと言えば、そうでもありません。サービス業は物販以上に「人」が事業の質を左右します。

 外国人観光客相手のホテルであれば外国人スタッフを雇用すればいいのかも知れませんが、多様な人材をマネジメントするスタッフが不足するでしょう。まあ、日本の企業で、どんな分野であれ「マネジメント」をできる人材がどの分野でも不足しています。そのための教育が行われてこなかったのです。

 最近話題になっている「暴言国会議員」さんも立派な学歴があっても「マネジメントスキル」は身につけられなかったのです。

 日本人相手でもマネジメントできないのに、外国人をマネジメントできるわけないでしょう。(外国人実習生でもトラブルがあいおつでいますよね)「移民」で人手不足を解消できると本気で考えている人は阿呆では無いかと思います。外国人のマネージャーをちゃんと雇うなら別ですが(サッカーの監督のようにね)。

 不動産事業も「人材問題」を本気で考えないと収益はあげられません。事業リスクは需要や資金だけではないのです。需要が赤字を呼ぶこともあります。

 商業施設の営業時間は商圏特性と顧客特性に合わせて、個別に考えないといけません。

                                                                                         (6月23日)
 ■ピエリ守山 元祖「廃墟モール」の復活~ファミリー層とシニア層を掴む仕組み
 
 2014年12月 「廃墟モール」の復活

 TVでも再生が紹介されていましたね。日本国内で「廃墟モール」として有名になった滋賀県守山市の「ピエリ守山」が改装後順調に売上を伸ばしています。

 商業的には「ZARA」や「H&M」といった滋賀県内に無かったファストファッションが好調なのと、雑貨業態の導入(アレックスコンフォート NU茶屋町にも出店している高感度な雑貨業態です)「マツモトキヨシ」「久世福商店」さらに「+CASA」「ニトリ」といった家具業態も導入されています。
 核テナントであるファストファッションやスポーツの「ヒマラヤ」、「生鮮食品館「TOKUYA」が順調に売上を伸ばしています。目標の150億円を超えて、当初の開業期の目標180億円に届きそうです。

 琵琶湖畔に面しているという立地は商圏的には制約されるのですが、開放的な屋外空間と景観に恵まれているため、体験型附帯施設である「めっちゃさわれる動物園」や「びわ湖スカイアドベンチャー」もファミリー客を集客する鍵になっています。琵琶湖畔ではびわ湖を一周するサイクリング「ビワイチ」が注目されたり、びわ湖を眺める「びわこ テラス」が新しい観光スポットとして人気を集めるなど「琵琶湖」のもつ魅力がクローズアップされています。

 今後、「ビワイチ」と連携したサイクリスト企画や温浴施設の開発なども計画されているそうです。

 顧客層は20~30歳代の子育て世代が2割で、それだけでなく60歳代のシニア層もボリュームを形成しているそうです。

 特定の年代では無く広い年代層に支持されているのがポイントですね。

 もともとは「ワンワン王国」という観光施設があった立地なのですが観光商業に舵を取ったことで成功したと言えます。

 今年閉店する「イトーヨカドー奈良店」(旧 奈良そごう)も来年春には、観光型複合商業施設「奈良平城プラザ」(仮称)としてスタートします。東京のコンサルタント会社野企画なので少し心配ですが、複合商業施設に食料品店のほか、スポーツ施設や簡易宿泊施設も整備する予定で、「売り上げ目標は現状の倍の年間150億円、来場客2千万人」を目指しています。

 注目したい所です。

 「好景気」のかけ声とは裏腹に進むデフレ化

 現在、「好景気」だと言われています。団塊世代のリタイアに伴う人手不足からの求人倍率の高まりが根拠とされています。株価は生活の質の向上とは何の相関もなくなっています。

 商業分野でも安売りの「ドンキホーテ」が好調であったり、居酒屋業界が一斉に「焼き鳥屋」に参入し始めているのがデフレを現しています。食材の原価が安い「鳥」は居酒屋に限らず外食産業では人気です。以前から近くのお店で、鳥料理ばからいがランチのメインになっているのを実感していましたがやはりという感じですね。

 焼き鳥屋は下ごしらえの手間だけで熟練が必要なく、少ない人数で調理が出来るので儲かるようです。(以前焼き鳥の大吉さんにそんな話を伺いました)

 百貨店中心のアパレルメーカーも安いブランドにシフトしています。レナウンも百貨店ブランドの「シンプルライフ」より低価格の「エレメントオブシンプルライフ」が好調で,ファミリー層を中心に衣料品と靴をあわせて8,000円から1万3,000円の価格帯で提供できる新ブランドを開発し50億円の売上を目指します。レナウンは百貨店販路が6割で売上高は676億円。~これは百貨店アパレルが百貨店に見切りをつけて低価格ファッションにシフトしはじめる兆しです。

 (某百貨店の郊外店ではアパレルがSC向けに開発しているブランドを導入しはじめています。百貨店の価格は高すぎるのです。百貨店が不振なのは。、高すぎるから売れないというシンプルな理由しかありません。)

 前述のピエリ守山が再生できたのも価格の安ファストファッションの大型店を複数導入し、その店に固定客がついたからという理由が一番大きいのです。

 小売業界は非物販の楽しさも導入しながらも、「価格対応」を強化する必要があります。
 
                                                                                  (6月20日)
 ■アメリカの小売売上は「ノンストア」が牽引~アマゾンがグルメスーパーを買収することで加速?
 
 アメリカの小売業売上高(5月)はマイナス0.3%

 昨年の大統領選挙の時期(11月)に下落したものが反発し、今年1月の新大統領の就任のタイミングでマイナスになった小売業の売上高の伸びは5月にまたマイナスに転調しました。自動車ローンの貸し出し基準が厳格化され新車販売台数が5ヶ月連続で減少していることも大きいようです。

 前年比で見れば+3.8%なので小売業売上高は「堅調」ととらえる見方もあります。雇用環境の改善による消費者マインドの改善、株高による資産効果などをその背景にあげています。(まるで日本国内の「好景気論」のようですね)
 日本と同じく一部指標が「好景気」であっても消費者の「消費マインド」は「改善」されていないのではと思えます。

 小売業で断然好調なのは「ノンストア」です。」ついで「食品飲料」「建材・造園」と続きます。ノンストアのシェアは小売業全体の11%にまで高まっています。

 ノンストアの最大手のアマゾン・ドット・コムがアメリカの高級グルメスーパー「ホールフーズ・マーケット」にお買収を決めたとのニュースが発表されました。

 ホールフーズ・マーケットは

 アメリカ合衆国を中心に、カナダとイギリスを含めて、合計270店舗以上を展開(2007年9月現在)する。グルメ・フード、自然食品、オーガニック・フード、ベジタリアン・フード、輸入食品、各種ワイン、ユニークな冷凍食品も品揃えし、いわゆる「グルメ・スーパーマーケット」と呼ばれる比較的高級志向の食料品小売店に分類されている。(wiki)

 です。

 アマゾンは自前でも生鮮の宅配を行っていますが、鮮度管理や,在庫ロスなどのコントロールなど独特のノウハウが必要なので、収益源とはなっていませんでした。アメリカ、カナダ、英国の460店舗の売上げはもちろんですが、生鮮販売のノウハウがアマゾンのビジネスにとってプラスになります。
 
 ウォルマートはアマゾン対策として通販企業を買収していますが、アマゾンの発表で株価を4.65%下落させています。市場の評価は厳しいですね。

 日本では宅配体制の課題が注目されていますが、それでもなお、ノンストア業態の比重は確実に高まっていくでしょう。

 宅配の利便性はともかく、消費者としての不満点、活用しない理由は沢山在ります。ネット店舗がどう対応できるか、実店舗がそのあたりの不満点をどうすくい上げられるかで生き残る企業が決まってくるでしょう。

                                                                                        (6月19日)
 ■再開発ビルの再開発~阪急尼崎駅塚口さんさんタウン建替へ
 
 1978年開業の再開発ビル「塚口さんさんタウン」の3番館建て替えが決定

 兵庫県尼崎市の北部の玄関口として賑わっていた阪急塚口駅前の再開発ビル「塚口さんさんタウン3番館」の建替が決まりました。再開発ビルは区分所有者が分かれるので合意形成が難しいのですが、所有者の5分の4の賛成が得られたようです。1978年開業ですが周辺地区の商業環境が大きく変わりましたし、駅の乗降者数も2000年の7万人/日から2015年の59,602人/日へと減少傾向にあります。核店舗の「ダイエー」もかつては京橋店、堺東店、吹田店などと並ぶ優良店舗だったのですが,現在はその勢いもありません。

 駅ビルであればオーナーの阪急電鉄が決断すれば新しいタイプの駅ビルへの転換ができたしょうですが、再開発ビルは区分所有者と賃貸事業者の利害が入り乱れてスムーズに再々開発が進む事例は希です。課題を抱えている再開発ビルも全国に多いので、先行事例として成功すればいいですね。

 年内に解体工事を進め、2022年の完成予定です。地上16階建ての地下1~地上2階が商業、3階以上は387戸の大型マンションになります。野村不動産がマンションの開発を行い,残る店舗以外の商業テナントも誘致するようです。
 住宅が主体ですね。空港が近いのでタワーマンションが建てられないのが残念でしょうが、阪神間のマンションは人気があるので事業リスクを負っても建替に参画したのでしょうね。尼崎市は工場が多くて庶民的なイメージがありますが、塚口、武庫之荘は高級住宅地です。

 
 阪急塚口駅に近いJR塚口駅では駅ビル「ビエラ塚口」が開業し飲食店が賑わっています。1日の乗降客数は1.8万人ですから、阪急塚口駅にもそれ以上のポテンシャルはあるでしょう。
 JR塚口駅前では森永の工場跡地で,今回の野村不動産、JR西日本、長谷工などがZUTTOシティという住宅開発を行っています。駅ビルのビエラとか万代(食品スーパー)とは違った魅力で新しい住民を顧客として獲得しなければいけませんね。
                                                                                         (6月16日)
 図ー阪急塚口駅周辺の大型商業施設
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図ーJR塚口駅前 ZUTTOCITY (HPより)
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 ■未来のショッピングモールは「小売店なし」の衝撃

 ウォールストリートジャーナル6月13日号の記事「未来のショッピングセンターは小売り店無し」では店舗閉鎖が加速しているアメリカでの新しい動きを紹介しています。

 ミシガン州の「フェアレーンショッピングセンター」の空き店舗空間にフォード・モーターのオフィスが入居したというものです。エンジニアリング部門と購買部門のスタッフのオフィスで約2.2万㎡の 新しい「テナント」として入居しています。

 小売業の店舗閉鎖が続く中で、ショッピングモールのデベロッパーは小売業以外のテナントの可能性を模索しています。「教会や営利目的の学校」「レストラン・オフィス。住居」のい混合用途のまちづくり、建物を壊して娯楽施設や工業団地に変える事例もあるようです。テナントスペースを取り壊して庭園にしているケースもあります。

 CRIの原稿に書いたように売場が廃墟化して悪いサイクルに陥るのなら、別の不動産活用用途を組み込む方が良い選択です。図書館、保育所などの公共機能、ドッグラン,ランニングトラックなどの公園機能など、どのように組み合わせることが計画全体の「不動産価値」を高めるのか?新しいノウハウの構築が求められます。

 ウォールストリートジャーナルは下記のリンクへ
 http://jp.wsj.com/articles/SB10450239983503033595904583204722003076306 へのリンク


                                                                                       (6月15日)
 ■彷徨う「お金」~東京では信用金庫の貸し出しの4割が不動産業
 
 2016年度の信用金庫の不動産業向け貸し出し金残高は15兆3,945億円と前年を5.4%上回る

 信用金庫と言えば地域密着の金融機関で中小企業の味方というイメージですが、貸し出し金は不動産業向けが年々増加し、過去最高になったようです。(国内の銀行の貸し出し先も不動産業向けが71兆8,218億円で前年比6.0%の増加です。)

 地域別に見ると、東京、関東がその貸し出し金の半分を占めています。

 東京地区では貸し出し金の38.4%、つまり約4割が不動産業向けになっています。

 今回銀行、地方銀行のデータを拾えていないですが、金融機関の不動産融資へののめり込みが、統計値でも実証されました。
 気になるのは北海道です。経済規模から考えると不動産業への融資に傾きすぎです。

 元データを発表した信金中央金庫のニュースリリースでも、不動産業向け融資のリスク管理の強化を訴えています。

 当サイトでも大阪のホテル開業ラッシュについて、箱もの(安物の)先行で、ソフト整備が不在だと論じていますが、驚くほどの箱もの建設ラッシュは金融機関の融資があってこそだと考えられます。

                                                                                      (6月14日)
 図ー1 信用金庫 不動産業向け貸出残高
 qp1
図-2 信用金庫 不動産業向け貸出残高の全貸し出し金に占める比率
 qp2
(信金中央金庫 地域・中小企業研究所 2017年6月2日~日本銀行業種別貸し出し金調査表のデータに基づく)
 ■コンラッド大阪 6月9日開業
 
 6月9日 中之島のフェスティバルタワーウェストの33階から40階にヒルトンホテルの最高級ブランド「コンラッド 大阪」が開業しました。

 ロビーフロアの40階からの眺望は今までにない視界がひろがっています。関電本社などの中之島の高層ビル群がはるか下方にならんでいます。

 客室や設備はちゃんと取材されているサイトをご覧下さい。とりあえずアフタヌーンティーを御紹介しておきます。ちょっとムース系が重なっていましたが,美味しかったです。

 っk1和箪笥の引き出しを利用して、和のテイストを打ち出しています。東京の相場からすると安いのですが関西ではお高い方です。4,000円+税サ

 中之島の新しいビル群の中でリーガロイヤルホテルが小さく見えます。
 以前、リーガロイヤルホテルでのこの朝日新聞社の改築パーティーにこっそり紛れ込ませていただいた時に、お招きいただいておりながら、リーガロイヤルのパーティの運営やソフトが昭和の時代から深化していないなどとひどい記事をここに書きました。
 
 かつては関西の迎賓館として頂点に君臨していたのですが、ハードもソフトもリセットの時期に来ているのでしょうね。MICEを戦略として取り入れるなら、関西財界としてはリーガロイヤルホテルの再興かあるいは別のホテルの育成かを考えるべきでしょうね。ホテルのブランド資産についてはあまり重視されていないのが不思議です。

 このコンラッドは素晴らしいホテルですが、宿泊特化型で大宴会はできません。

 IR(カジノホテル)で代替するつもりでしょうが、国際会議とそれにともなうパーティでああれば、中之島かうめきたあるいはOBP・大阪城エリアでしょうね。

 都市戦略が思いつきの羅列のようで、繋がっていないのはもどかしいですね。

                                                                       (6月12日)

 ■「繁忙」が都市の体力を消耗させる?~シティホテルと百貨店の運命
 
 ハコを作って魂入れず

 昨日の記事にあるように,大阪市内でも2020年に向けて新規参入者を中心としたホテル計画が目白押しです。運営はどうなるのでしょう。宿泊に特化したバジェットホテルであれば核になるマネージャを中心に、ワンオペも可能です。清掃はアウトソーシングできますし、精算もカード等による自動精算を導入すれば多くのスタッフは不要です。人材派遣を活用すれば最小限の人数で運営可能です。

 ホテル用地の取得コストの高騰から考えると,建築コストの抑制と運営コストの抑制による固定非圧縮で早い時期での投資回収が必要になります。レストランや宴会といった早期に採算の取りにくい機能は最低限に押さえられます。(温浴施設やレストランもテナント導入でカタチを整えることも可能です)大量出店しているホテルは広告費やシステム管理費も共有化でコストダウンできます。

 商業施設で言えばしまむらやGUのような「ファストファッション」にあたると考えてください。

 急激な宿泊ニーズの拡大、しかも価格にはシビアなお客様が増えることへの対応としては、合理的でしょう。滞在者が増えて、ホテルのある街で食事をしてくれればまちも潤います。(ホテル内にはレストランもありませんからね)

 違法な民泊が増えてコミュニティとトラブルがおきる(例えば,ゴミを近くのマンションのゴミ捨て場に不法投棄するとか)よりも、管理者が法人として明確な方が責任の所在が明確でよろしいでしょう。地域の雇用も増えますしね。

 交流人口拡大・都市集客の目標はMICE

 定住人口が少なくなる中で,交流人口の拡大での地域経済の活性化が課題になっています。お買い物や遊園地の利用などの物見遊山は大事な魅力ですが、良質な顧客を集客してリピーターとするにはMICEの拡大という目標設定が必須です。

 MICEとは、Meeting(会議・研修・セミナー)、Incentive tour(報奨・招待旅行)、Convention またはConference(大会・学会・国際会議)、Exhibition(展示会)の頭文字をとった造語で、ビジネストラベルの一つの形態。参加者が多いだけでなく、一般の観光旅行に比べ消費額が大きいことなどから、MICEの誘致に力を入れる国や地域が多い。日本でも、インバウンド振興策の一環として、国や自治体により誘致活動が盛んに行なわれている。(JTB総合研究所のより)

 テーマパークの充実やIR(カジノ計画)はあくまでもその為の手段です。ラスベガスはカジノの収益ではなくコンベンションの集客で街としての利益をあげています。今の議論はカジノにばか焦点があてられ本末転倒です。

 国際化議場について政府観光局の統計を見ると(図-1)福岡市の開催件数が多くなっています。九州地区では医学やエネルギー分野でのアジア関連の会議が多く開催されています。表-1の今後の新設・増設計画を見ても九州地区での計画数がかなり多くなっています。参加人数から見て規模は小さいのでしょうが件数は多い。

 京阪神では京都市が多いですね。大学も多いですし国際会議場もありますし。

 ホテルの件数が少ない神戸市も開催件数や外国人参加者数では大阪市と肩を並べます。千里地区はライフサイエンスセンターや大阪大学の関連で会合が多いのだと思います。

 大阪市内で国際会議開催が可能なホテルは少ない

 大阪市でも2017年からMICE推進委員会がスタートしていますが、2025年度(万博開催)が目標年次となって出遅れ感は否めません。ベイエリア夢洲のIR開業が「目的」になっているのか、今すぐ出来ることすらスケジュール化出来ていません。うめきた~中之島~なんば・新今宮~阿倍野天王寺~大坂城・府庁周辺と大阪市内だけでも今できることは沢山あります。

 行政は、買物観光客・遊び目的の観光客の急増への対応に追われているのかも知れません。

 悪貨は良貨を駆逐するのか?

 悪貨というのは言い過ぎでしょう、ただ短期間に投資を回収したいバジェットホテルが増えることは、いいことばかりではありません。今後、円高等で稼働率が落ちると,価格競争が激化します。宿泊料金の大きな値崩れがおきます。

 ユニクロが誕生したときに百貨店は客層が違うと脅威と感じていませんでした。GMSの実用衣料が影響を受けるだろうとみていたのです。GMSの衣料品は壊滅しました。そして百貨店も衣料品の売上げ不振でユニクロをテナントに入って戴いています。家具ではニトリ、家電は家電量販店など…・百貨店という業態が時代遅れになったという事が一番大きいとはいえ周縁部から百貨店の売上げベースが浸食されてきたのです。(市場環境の変化もありますから単純な話でもないのですが)

 ホテル業界もこの建設ブームで従来のビシネスホテルが影響を受けるでしょう。それだけではなく、シティホテルつまtり表-2にあるように国際会議が出来る,宴会場という「不採算部門」を抱えたシティホテルの客室料金も低下していきます。業界の収益力が落ちてきます。(リーガロイヤルホテルのことを考えるといつも切ない思いがします)ブームが終わったときに落ち込むのは業界全体です。

 新しい高級ホテルも「宴会場」や「レストラン」よりも宿泊に重点が置かれています。伝統的なシティホテルは社会的使命を終えたのでしょうか?商業施設における百貨店がそういわれるように。

 おそらく「カジノリゾート」のホテルにに宴会場の設置が義務づけられるのでしょう。

 市場は変わって,企業の周年パーティーや派手な結婚式はホテル以外のレストランでの開催が多くなってきました。古くさいシティホテルは時代に取り残されいまったのでしょうか?

 世界的に見てMICE市場の重要性は今後も変わりません。オリンピックは2週間だけですし,次は30年以上先の開催になります。サミットのよう会議を開催後は潰してしまう施設で行うのは合理的ではありません。

 MICEの誘致は持続的な発展のために必要な目標です。その為に「シティホテル」がどんな変化をして市場に対応するか真剣に考えて、しっかりとした官民のサポートが必要だと考えています。老舗ホテルはホテルマンの人材供給を行う孵化装置の役割も果たしています。

 ホテル建設ラッシュの中で、ハコを作って魂が入らない現況が心配です。ブームが終わったときに何が残るのか?せめて「人材」を残せるようにしないといけませんね。